JP2005009546A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】通過トルクの急変動時に、無用な変速動作に基づいてハンチングが発生する事を防止し、違和感のない構造の実現を図る。
【解決手段】パワーローラを支持したトラニオンの揺動角度を同期させる同期ケーブル20、20を、通路59a、59a内に配設する。これら各同期ケーブル20、20の外表面と、これら各通路59a、59aの内面とを摩擦係合させる。上記トラニオンの揺動変位が緩徐に行なわれる様にして、通過トルクの急変動時に変速比が急激に変化する事を防止し、上記課題を解決する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係る無段変速装置は、自動車用の自動変速機を構成する変速ユニットとして利用する。特に本発明は、伝達するトルクが急激に変動する状況下でも、構成各部材の組み付け隙間や弾性変形に基づく変位に拘らず、変速状態が不安定になるのを防止する事を目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用自動変速装置として、図5〜7に示す様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、入力軸1の両端部周囲に1対の入力側ディスク2、2を、ボールスプライン3、3を介して支持している。従ってこれら両入力側ディスク2、2は、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持されている。又、上記入力軸1の中間部周囲に出力歯車4を、この入力軸1に対する相対回転を自在として支持している。そして、この出力歯車4の中心部に設けた円筒部の両端部に出力側ディスク5、5を、それぞれスプライン係合させている。従ってこれら両出力側ディスク5、5は、上記出力歯車4と共に、同期して回転する。
【0003】
又、上記各入力側ディスク2、2と上記各出力側ディスク5、5との間には、それぞれ複数個ずつ(通常2〜3個ずつ)のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6はそれぞれ、特許請求の範囲に記載した支持部材であるトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。上記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図5、7の上下方向、図6の表裏方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた枢軸9、9を中心として揺動変位自在である。これら各トラニオン7、7を傾斜させる動作は、油圧式のアクチュエータ10、10により、これら各トラニオン7、7を上記枢軸9、9の軸方向に変位させる事で行なうが、総てのトラニオン7、7の傾斜角度は、油圧式及び機械式に互いに同期させる。
【0004】
即ち、前記入力軸1と出力歯車4との間の変速比を変えるべく、上記各トラニオン7、7の傾斜角度を変える場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を、それぞれ逆方向に、例えば、図7の右側のパワーローラ6を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ6を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ6、6の周面と上記各入力側ディスク2、2及び各出力側ディスク5、5の内側面との転がり接触部に作用する、接線方向の力の向きが変化(転がり接触部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板11、11に枢支された枢軸9、9を中心として、互いに逆方向に揺動(傾斜)する。この結果、上記各パワーローラ6、6の周面と上記入力側、出力側各ディスク2、5の内側面との当接位置が変化し、上記入力軸1と出力歯車4との間の変速比が変化する。
【0005】
上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ10、10の数に関係なく1個の変速比制御弁12により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの変速比制御弁12にフィードバックする様にしている。この変速比制御弁12は、ステッピングモータ13により軸方向(図5の表裏方向、図7の左右方向)に変位させられるスリーブ14と、このスリーブ14の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール15とを有する。又、上記各トラニオン7、7と上記各アクチュエータ10、10のピストン16、16とを連結するロッド17、17のうち、何れか1個のトラニオン7に付属のロッド17の端部にプリセスカム18を固定しており、このプリセスカム18とリンク腕19とを介して、上記ロッド17の動き、即ち、軸方向の変位量と回転方向との変位量との合成値を上記スプール15に伝達する、フィードバック機構を構成している。又、上記各トラニオン7、7同士の間には同期ケーブル20を掛け渡して、油圧系の故障時にも、これら各トラニオン7、7の傾斜角度を、機械的に同期させられる様にしている。
【0006】
変速状態を切り換える際には、上記ステッピングモータ13により上記スリーブ14を、得ようとする変速比に見合う所定位置にまで変位させて、上記変速比制御弁12の所定方向の流路を開く。この結果、上記各アクチュエータ10、10に圧油が、所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ10、10が上記各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。即ち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、前記各枢軸9、9の軸方向に変位しつつ、これら各枢軸9、9を中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向及び揺動変位)が、上記ロッド17の端部に固定したプリセスカム18とリンク腕19とを介して上記スプール15に伝達され、このスプール15を軸方向に変位させる。この結果、上記トラニオン7が所定量変位した状態で、上記変速比制御弁12の流路が閉じられ、上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排が停止される。
【0007】
この際の上記トラニオン7及び上記プリセスカム18のカム面21の変位に基づく上記変速比制御弁12の動きは、次の通りである。先ず、上記変速比制御弁12の流路が開かれる事に伴って上記トラニオン7が軸方向に変位すると、前述した様に、パワーローラ6の周面と入力側ディスク2及び出力側ディスク5の内側面との当接部に発生するサイドスリップにより、上記トラニオン7が上記各枢軸9、9を中心とする揺動変位を開始する。又、上記トラニオン7の軸方向変位に伴って上記カム面21の変位が、上記リンク腕19を介して上記スプール15に伝わり、このスプール15が軸方向に変位して、上記変速比制御弁12の切り換え状態を変更する。具体的には、上記アクチュエータ10により上記トラニオン7を中立位置に戻す方向に、上記変速比制御弁12が切り換わる。
【0008】
従って上記トラニオン7は、軸方向に変位した直後から、中立位置に向け、逆方向に変位し始める。但し、上記トラニオン7は、中立位置からの変位が存在する限り、上記各枢軸9、9を中心とする揺動を継続する。この結果、上記プリセスカム18のカム面21の円周方向に関する変位が、上記リンク腕19を介して上記スプール15に伝わり、このスプール15が軸方向に変位する。そして、上記トラニオン7の傾斜角度が、得ようとする変速比に見合う所定角度に達した状態で、このトラニオン7が中立位置に復帰すると同時に、上記変速比制御弁12が閉じられて、上記アクチュエータ10への圧油の給排が停止される。この結果上記トラニオン7の傾斜角度が、前記ステッピングモータ13により前記スリーブ14を軸方向に変位させた量に見合う角度になる。
【0009】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、エンジン等の動力源に繋がる駆動軸22により一方(図5、6の左方)の入力側ディスク2を、図示の様なローディングカム式の、或は油圧式の押圧装置23を介して回転駆動する。この結果、前記入力軸1の両端部に支持された1対の入力側ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ6、6を介して上記各出力側ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
【0010】
上記入力軸1と出力歯車4との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、上記各アクチュエータ10、10により上記各トラニオン7、7を上記各枢軸9、9の軸方向に移動させ、これら各トラニオン7、7を図6に示す位置に揺動させる。そして、上各パワーローラ6、6の周面をこの図6に示す様に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の中心寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の外周寄り部分とにそれぞれ当接させる。
【0011】
反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン7、7を図6と反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ6、6の周面を、この図6に示した状態とは逆に、上記各入力側ディスク2、2の内側面の外周寄り部分と上記各出力側ディスク5、5の内側面の中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各トラニオン7、7を傾斜させる。これら各トラニオン7、7の傾斜角度を中間にすれば、入力軸1と出力歯車4との間で、中間の変速比(速度比)を得られる。
【0012】
更に、上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機24を、トロイダル型無段変速ユニットとして実際の自動車用の無段変速装置に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、特許文献1〜4等に記載されている様に、従来から提案されている。
【0013】
図8は、上記各特許文献のうちの特許文献4に記載された無段変速装置を示している。この無段変速装置は、所謂パワー・スプリット型と呼ばれるもので、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機24と遊星歯車式変速機25とを組み合わせて成る。そして、低速走行時には動力を上記トロイダル型無段変速機24のみで伝達し、高速走行時には動力を、主として上記遊星歯車式変速機25により伝達すると共に、この遊星歯車式変速機25による速度比を、上記トロイダル型無段変速機24の速度比を変える事により調節自在としている。
【0014】
この為に、上記トロイダル型無段変速機24の中心部を貫通し、両端部に1対の入力側ディスク2、2を支持した入力軸1の先端部(図8の右端部)と、上記遊星歯車式変速機25を構成するリング歯車26を支持した支持板27の中心部に固定した伝達軸28とを、高速用クラッチ29を介して結合している。上記トロイダル型無段変速機24の構成は、次述する押圧装置23aの点を除き、前述の図5〜7に示した従来構造と、実質的に同様である。
【0015】
又、駆動源であるエンジン30のクランクシャフト31の出力側端部(図8の右端部)と上記入力軸1の入力側端部(=基端部=図8の左端部)との間に、発進クラッチ32と油圧式の押圧装置23aとを、動力の伝達方向に関して互いに直列に設けている。又、上記入力軸1の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸33を、上記入力軸1と同心に配置している。そして、この出力軸33の周囲に前記遊星歯車式変速機25を設けている。この遊星歯車式変速機25を構成する太陽歯車34は、上記出力軸33の入力側端部(図8の左端部)に固定している。従ってこの出力軸33は、上記太陽歯車34の回転に伴って回転する。この太陽歯車34の周囲には前記リング歯車26を、上記太陽歯車34と同心に、且つ、回転自在に支持している。そして、このリング歯車26の内周面と上記太陽歯車34の外周面との間に、複数の遊星歯車35、35を設けている。これら各遊星歯車35、35は、それぞれ1対ずつの遊星歯車素子36a、36bにより構成している。これら各遊星歯車素子36a、36bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車素子36aが上記リング歯車26に噛合し、内径側に配置した遊星歯車素子36bが上記太陽歯車34に噛合している。この様な各遊星歯車35、35は、キャリア37の片側面(図8の左側面)に回転自在に支持している。又、このキャリア37は、上記出力軸33の中間部に、回転自在に支持している。
【0016】
又、上記キャリア37と、前記トロイダル型無段変速機24を構成する1対の出力側ディスク5、5とを動力伝達機構38により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この動力伝達機構38は、上記入力軸1及び上記出力軸33と平行な伝達軸39と、この伝達軸39の一端部(図8の左端部)に固定したスプロケット40aと、上記各出力側ディスク5、5に固定したスプロケット40bと、これら両スプロケット40a、40b同士の間に掛け渡したチェン41と、上記伝達軸39の他端(図8の右端)と上記キャリア37とにそれぞれ固定されて互いに噛合した第一、第二の歯車42、43とにより構成している。従って上記キャリア37は、上記各出力側ディスク5、5の回転に伴って、これら出力側ディスク5、5と反対方向に、上記第一、第二の歯車42、43の歯数及び上記1対のスプロケット40a、40bの歯数に応じた速度で回転する。
【0017】
一方、上記入力軸1と上記リング歯車26とは、この入力軸1と同心に配置された前記伝達軸28を介して、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。この伝達軸28と上記入力軸1との間には、前記高速用クラッチ29を、これら両軸28、1に対し直列に設けている。従って、この高速用クラッチ29の接続時にこの伝達軸28は、上記入力軸1の回転に伴って、この入力軸1と同方向に同速で回転する。
【0018】
又、図8に示した無段変速装置は、クラッチ機構を備える。このクラッチ機構は、上記高速用クラッチ29と、上記キャリア37の外周縁部と上記リング歯車26の軸方向一端部(図8の右端部)との間に設けた低速用クラッチ44と、このリング歯車26と無段変速装置のハウジング(図示省略)等、固定の部分との間設けた後退用クラッチ45とから成る。これら各クラッチ29、44、45は、何れか1個のクラッチが接続された場合には、残り2個のクラッチの接続が断たれる。
【0019】
上述の様に構成する無段変速装置は、先ず、低速走行時には、上記低速用クラッチ44を接続すると共に、上記高速用クラッチ29及び後退用クラッチ45の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチ32を接続し、前記入力軸1を回転させると、トロイダル型無段変速機24のみが、この入力軸1から上記出力軸33に動力を伝達する。この様な低速走行時には、それぞれ1対ずつの入力側ディスク2、2と、出力側ディスク5、5との間の速度比を、前述の図5〜7に示したトロイダル型無段変速機単独の場合と同様にして調節する。
【0020】
これに対して、高速走行時には、上記高速用クラッチ29を接続すると共に、上記低速用クラッチ44及び後退用クラッチ45の接続を断つ。この状態で上記発進クラッチ32を接続し、上記入力軸1を回転させると、この入力軸1から上記出力軸33には、前記伝達軸28と前記遊星歯車式変速機25とが、動力を伝達する。即ち、上記高速走行時に上記入力軸1が回転すると、この回転は上記高速用クラッチ29及び伝達軸28を介してリング歯車26に伝わる。そして、このリング歯車26の回転が複数の遊星歯車35、35を介して太陽歯車34に伝わり、この太陽歯車34を固定した上記出力軸33を回転させる。この状態で、上記トロイダル型無段変速機24の速度比を変える事により上記各遊星歯車35、35の公転速度を変化させれば、上記無段変速装置全体としての速度比を調節できる。
【0021】
即ち、上記高速走行時に上記各遊星歯車35、35が、上記リング歯車26と同方向に公転する。そして、これら各遊星歯車35、35の公転速度が遅い程、上記太陽歯車34を固定した出力軸33の回転速度が速くなる。例えば、上記公転速度とリング歯車26の回転速度(何れも角速度)とが同じになれば、上記リング歯車26と出力軸33の回転速度とが同じになる。これに対して、上記公転速度がリング歯車26の回転速度よりも遅ければ、上記リング歯車26の回転速度よりも出力軸33の回転速度が速くなる。反対に、上記公転速度がリング歯車26の回転速度よりも速ければ、上記リング歯車26の回転速度よりも出力軸33の回転速度が遅くなる。
【0022】
従って、上記高速走行時には、前記トロイダル型無段変速機24の速度比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の速度比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機24に、入力側ディスク2、2からではなく、出力側ディスク5、5から力(トルク)が加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、前記高速用クラッチ29を接続した状態では、前記エンジン30から入力軸1に伝達されたトルクは、前記伝達軸28を介して前記遊星歯車式変速機25のリング歯車26に伝達される。従って、入力軸1の側から各入力側ディスク2、2に伝達されるトルクは殆どなくなる。
【0023】
一方、上記伝達軸28を介して前記遊星歯車式変速機25のリング歯車26に伝達されたトルクの一部は、前記各遊星歯車35、35から、キャリア37及び動力伝達機構38を介して各出力側ディスク5、5に伝わる。この様に各出力側ディスク5、5からトロイダル型無段変速機24に加わるトルクは、無段変速装置全体の速度比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機24の速度比を減速側に変化させる程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機24に入力されるトルクが小さくなる。
【0024】
更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸33を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ44、29の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ45を接続する。この結果、上記リング歯車26が固定され、上記各遊星歯車35、35が、このリング歯車26並びに前記太陽歯車34と噛合しつつ、この太陽歯車34の周囲を公転する。そして、この太陽歯車34並びにこの太陽歯車34を固定した出力軸33が、前述した低速走行時並びに上述した高速走行時とは逆方向に回転する。
【0025】
尚、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて成る無段変速装置としては、上述の様なパワー・スプリット型の他、ギヤード・ニュートラル型と呼ばれるものも、特許文献5等に記載されて従来から知られている。このギヤード・ニュートラル型と呼ばれる無段変速装置の場合、低速モード時には、トロイダル型無段変速機の変速比を変える事により、無段変速装置の入力軸の回転速度を一定としたまま、この無段変速装置の出力軸の回転速度を、停止状態を挟んで、前進状態と後退状態とに変換自在である。
【0026】
上述した様な無段変速装置に組み込まれる場合を含め、トロイダル型無段変速機24のフィードバック機構を構成するプリセスカム18として従来は、図9に示す様に、カム面21の傾斜角度(=カムリード=ゲイン)が一定のものを使用している。そして、図10に示す様に、このカム面21にリンク腕19を構成する第一の腕片46の先端部を突き当て、同じく第二の腕片47の先端部を、変速比制御弁12を構成するスプール15の端部に突き当てている。
【0027】
上記プリセスカム18のカム面21の傾斜角度は、トロイダル型無段変速機24の安定性確保の面から重要である。例えば非特許文献1には、上記傾斜角度が小さい程、変速動作を安定させられる事が記載されている。又、特許文献6には、プリセスカムの設置位置を工夫する事により、トロイダル型無段変速機を通過するトルクの急変動時に於ける変速比制御弁の無用な動きを抑える発明が記載されている。又、特許文献7〜9には、カム面の両端部で通常時にリンク腕が接触する部分から外れた部分の傾斜角度を急にする事で、トラニオンの傾斜角度が過大になった場合に、これを迅速に元に戻す発明が記載されている。又、特許文献10には、変速比の変化率とエンジンの回転速度変化との関係の最適化を図るべく、カム面の傾斜角度を連続的に変化させる発明が記載されている。更に、前述した同期ケーブル20の具体的構造に就いては、特許文献11等に記載されている。
【0028】
【特許文献1】
特開平1−169169号公報
【特許文献2】
特開平1−312266号公報
【特許文献3】
特開平10−196759号公報
【特許文献4】
特開平11−63146号公報
【特許文献5】
特開2000−220719号公報
【特許文献6】
特開2001−317601号公報
【特許文献7】
特開平5−26317号公報
【特許文献8】
特開平11−37241号公報
【特許文献9】
特開平11−325210号公報
【特許文献10】
特開平1−295070号公報
【特許文献11】
特開平4−327051号公報
【非特許文献1】
田中裕久、「トロイダルCVT」、株式会社コロナ社、2000年7月13日、第63頁
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
上述した各特許文献及び非特許文献に記載されている様に従来から、トロイダル型無段変速機のフィードバック機構を構成するプリセスカムの配置や形状を工夫する技術が各種知られている。但し、この様なプリセスカムの配置や形状の工夫のみで変速動作を安定させる事には限界があり、この変速動作の安定化の為の他の手段の実現が望まれている。特に、遊星歯車式変速機と組み合わせて無段変速装置を構成するトロイダル型無段変速機の場合には、モード切換時に、このトロイダル型無段変速機を通過するトルクの大きさと方向とが急激に変化する。
【0030】
トロイダル型無段変速機の構成部品は、動力を伝達させる事に伴って(通過トルクに応じて)弾性変形する他、組み付け隙間に応じて変位する。このうちの弾性変形に基づく変形量は、通過トルクの大きさに応じて変化する。又、組み付け隙間に基づく変位の方向は、トルクが通過する方向に応じて変化する。そして、これら弾性変形及び組み付け隙間に基づく変位により、その時点での変速指令の有無に関係なく、上記トロイダル型無段変速機の変速比が変動し、更にはこの変速比が細かく変動する、所謂ハンチングが発生する。
【0031】
例えば、各パワーローラ6、6をその内側面に支持しているトラニオン7、7(図7参照)は、これら各パワーローラ6、6が入力側ディスク2から受ける回転力、及び、これら各パワーローラ6、6から出力側ディスク4(図6参照)に回転力を伝達する事の反作用とに基づいて、それぞれの両端部に設けた枢軸9、9(図7参照)の軸方向に押される。又、この様に上記各トラニオン7、7を枢軸9、9の軸方向に押す力の方向は、上記トロイダル型無段変速機を通過するトルクの方向が変化するのに伴って変化する。従って、上記無段変速装置を構成するトロイダル型無段変速機の場合には、モード切換時に上記各トラニオン7、7を押す方向が逆転し、これら各トラニオン7、7が、僅か(例えば0.1mm程度)とは言え、上記枢軸9、9の軸方向に変位する事が避けられない。そして、この変位に伴って、上記トロイダル型無段変速機の変速比が変動する。
【0032】
図11は、通過トルクの変動に伴う、トロイダル型無段変速機の変速比変動の状況を知る為に、本発明者が行なった実験の結果を示している。この実験では、図5、6に示した様な、ローディングカム式の押圧装置23を備えたトロイダル型無段変速機を、図8に示した様な、パワー・スプリット型の無段変速装置に組み込んだ事を想定して、ダイナモ装置により行なった。具体的には、上記トロイダル型無段変速機を最大増速状態(変速比0.5)とした状態で、入力軸を2000min−1 を目標に回転させつつ、上記トロイダル型無段変速機を通過するトルクを、0.5秒弱の間に、+350Nmから−280Nmにまで変動させた。プリセスカムのカム面のカムリード(カム面の傾斜角度)は、20mm/360度とした。尚、通過トルクが正(+)であるとは、入力側ディスクから出力側ディスクに動力が伝達される状態を、負(−)であるとは、出力側ディスクから入力側ディスクに動力が伝達される状態を、それぞれ言う。
【0033】
この様な条件で行なった実験の結果を表した図11中、(A)の実線は入力軸の回転速度と経過時間との関係を、同じく破線は出力軸の回転速度と経過時間との関係を、(B)の実線は入力軸のトルクと経過時間との関係を、同じく破線は出力軸のトルクと経過時間との関係を、それぞれ表している。この様な実験の結果を表した図11から明らかな通り、プリセスカムのカムリードが小さい(20mm/360度)場合には、通過トルクの急変動に伴って、トロイダル型無段変速機の変速比が、大きくしかも短時間の間に脈動的に変化する、ハンチングが発生する。尚、実験では、入力軸と出力軸との間に変速歯車を設けている。又、押圧装置による押し付け力を過大にしている。従って、トロイダル型無段変速機の伝達効率が実際の場合よりも低くなっている。
【0034】
この様なハンチングの発生に就いて、本発明者は次の様に考えた。前記通過トルクの変動に伴って、各部の弾性変形及び内部隙間に基づく変位の量及び方向が変化し、各パワーローラが、変速比制御弁のスリーブが変位していないにも拘らず入力側、出力側両ディスクの周方向(転がり接触部の接触方向)に中立位置から変位する。この変位の結果、これら各パワーローラの周面とこれら各ディスクの内側面との転がり接触部でサイドスリップが発生し、枢軸を中心としてトラニオンが傾斜する、上記トロイダル型無段変速機の変速動作が行なわれる。そして、この変速動作に基づき、上記プリセスカムが変位して変速制御弁のスプールが軸方向に変位し、上記各部の弾性変形及び内部隙間に基づく上記各パワーローラの変位に見合う分だけ、上記トラニオンが本来の位置から傾斜した(変速比が変動した)状態で、上記トラニオンが停止する事になる。
【0035】
この様な場合に、上記プリセスカムのカムリードが小さいと、上記トラニオンが大きく傾斜し、上記トロイダル型無段変速機の変速比の変化量が大きくなる。例えば、上記各部の弾性変形及び内部隙間に基づいて上記トラニオンが、上記変速比制御弁のスリーブが変位していないにも拘らず、その両端部に設けた枢軸の軸方向に1mm変位した場合に就いて考える。この場合、上記プリセスカムのカム面のカムリードが20mm/360度であれば、上記トラニオンは360度/(20mm/1mm)=18度分、上記枢軸を中心として傾斜して、トロイダル型無段変速機の変速比が、短時間の間に大きく変化する。言い換えれば、トロイダル型無段変速機の変速比がそれ以上変化するのを停止させるべく、上記トラニオンを中立位置に戻す為には、上記プリセスカムが18度分回動する必要があり、その分上記トロイダル型無段変速機の変速比が大きく変化する。
【0036】
そして、この様にトロイダル型無段変速機の変速比が短時間の間に大きく変化すると、出力軸側に繋がった大きな慣性(ダイナモ装置を使用した実験では出力ダイナモ側の慣性、実際の場合には車両総重量に基づく慣性)により発生する慣性モーメントに基づいて、上記トロイダル型無段変速機に過大トルクが入力される。この結果、このトロイダル型無段変速機の変速比制御が不安定になり、図11に示す様なハンチングが発生する。この様なハンチングを抑える為には、上記各部の弾性変形及び内部隙間に基づく、上記トロイダル型無段変速機の変速比の変動量を低く抑える事が考えられる。そして、この変速比の変動量を抑える為には、上記プリセスカムのカム面のカムリードを大きくする事が考えられる。但し、単にこのカムリードを大きくした場合には、前述した非特許文献1の記載からも分かる様に、通常状態での変速制御が不安定になる為、好ましくない。
本発明の無段変速装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、入力側ディスク及び出力側ディスクと、複数の支持部材と、複数のパワーローラと、複数の油圧式のアクチュエータと、変速比制御弁と、フィードバック機構と、同期ケーブルとを備える。
このうちの入力側ディスク及び出力側ディスクは、それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持されている。
又、上記各支持部材は、上記入力側ディスク及び出力側ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する。
又、上記各パワーローラは、上記各支持部材に支持された状態で上記入力側ディスク及び出力側ディスク同士の間に挟持されたもので、その周面を球状凸面としている。
又、上記各アクチュエータは、上記各支持部材を上記枢軸の軸方向に変位させる為のものである。
又、上記変速比制御弁は、上記アクチュエータへの油圧の給排を制御するものである。
又、上記フィードバック機構は、上記各支持部材の変位に応じてこの変速比制御弁の弁構成部材を変位させるものである。
更に、上記同期ケーブルは、上記各支持部材同士の間に掛け渡されて、上記枢軸を中心とするこれら各支持部材の揺動変位を互いに同期させるものである。
そして、上記フィードバック機構は、何れかの枢軸と同心に結合され、この枢軸と共に軸方向及び回転方向に変位するプリセスカムと、このプリセスカムのカム面の変位を上記弁構成部材に伝達してこの弁構成部材を軸方向に変位させるリンク腕とを備えたものである。
【0038】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記同期ケーブルの一部に、この同期ケーブルが変位する事に対する抵抗を付与する為の抵抗付与手段を設けている。
この抵抗付与手段として具体的には、請求項2に記載した様に、上記同期ケーブルを、上記各アクチュエータを収納したシリンダボディーに設けた通路内に配設し、これら同期ケーブルの外表面と通路の内面との間に作用する摩擦力により、この同期ケーブルが変位する事に対する抵抗を付与する構造が考えられる。
或は、請求項3に記載した様に、上記同期ケーブルを、上記各アクチュエータを収納したシリンダボディーに設けた通路内に挿通し、この通路の一部内周面で上記同期ケーブルの変位方向に離隔した位置に固定された、それぞれの内側に上記同期ケーブルを挿通する少なくとも1対の固定側仕切り部材と、この同期ケーブルの中間部でこれら固定側仕切り部材同士の間部分に固定された移動側仕切り部材との間に介在する潤滑油の粘性抵抗により、上記同期ケーブルが変位する事に対する抵抗を付与する構造が考えられる。
【0039】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機の場合、同期ケーブルに、変位に対する抵抗が付与される分、この同期ケーブルを架け渡した各支持部材の、枢軸を中心とする揺動変位が緩徐に行なわれる。言い換えれば、変速比を或る一定の値だけ変動する為に要する時間が長くなる。この為、トルク変動時にトロイダル型無段変速機に生じる、変速比の不用意な変動を抑える事ができる。この理由に就いて、以下に説明する。
【0040】
先ず、トロイダル型無段変速機を通過するトルクの変動に伴う弾性変形や微小隙間分の変位に伴って、各パワーローラの周面と入力側、出力側各ディスクの内側面との転がり接触部(トラクション部)が中立位置からずれると、サイドスリップに基づく変速動作が開始される。即ち、上記各支持部材が枢軸を中心として揺動変位し始める。但し、上記抵抗に基づいて、これら各支持部材の揺動速度は、抵抗付与手段を設けない場合に比べて遅くなる。
【0041】
一方、トロイダル型無段変速機は、入力側ディスクに繋がる入力部と、出力側ディスクに繋がる出力部との回転速度に応じて制御器が変速比制御弁を切り換え、変速比を所望値に規制する。従って、上記弾性変形や微小隙間分の変位に基づく変速動作が緩徐に行なわれた場合、この変速動作に基づいて上記変速比が大きく変動する以前に、上記制御器からの指令による上記変速比制御弁の切り換えに基づく、変速比を所望値に維持しようとする修正動作が開始される。この結果、図11に示す様なハンチングが発生しないか、発生した場合にも低く抑える事ができる。
【0042】
又、上記抵抗付与手段により上記各支持部材が枢軸を中心として揺動変位する事に対する抵抗を付与する事は、変速比をそのままの状態に維持する(変速比を安定させる)事に繋がる。従って、変速比の安定的制御を考慮しつつ、プリセスカムのカムリード(カム面の傾斜角度)を大きくする事が可能になる。このカムリードを大きくする事は、通過トルクの変動に伴う弾性変形や微小隙間分の変位に基づく、上記トロイダル型無段変速機の変速比の変動量を低く抑えて、上記ハンチングを抑える事に効果がある。
本発明の場合には、これらにより、通過トルクの急変同時に於けるトロイダル型無段変速機のハンチングを抑える事ができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、同期ケーブルを介して各トラニオンに、それぞれの両端部に設けた枢軸を中心として揺動変位する事に対する抵抗を付与して、通過トルクの急変動時に於けるハンチングを防止する点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様であるから、図示並びに説明を、省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分及び前述した従来構造と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
本例の場合、ケーシング48内の下部にシリンダボディー49を固定し、このシリンダボディー49内に設けた複数のアクチュエータ10、10により各トラニオン7a、7aを、それぞれの両端部に設けた枢軸9、9の軸方向(図1の上下方向)に変位駆動自在としている。これら各枢軸9、9をそれぞれの軸方向及び回転方向の変位を自在に支持する為の、上下1対の支持板11a、11bは、上記シリンダボディー49の上面と、上記ケーシング48の天板部50の下面に支持した結合板51との間に掛け渡した支持ポスト52の上下両端部に支持している。
【0045】
又、上記各トラニオン7a、7aには補強ステー53、53を、それぞれの内側面に回転自在に支持したパワーローラ6、6を跨ぐ状態で設けている。この様な補強ステー53、53は、トロイダル型無段変速機の運転時に上記各パワーローラ6、6を介して上記各トラニオン7a、7aの内側面に加わるスラスト荷重により、これら各トラニオン7a、7aが弾性変形するのを防止する。そして、この弾性変形に基づく、変速比の変動を抑える。又、上記各パワーローラ6、6を回転及び入力軸1aの軸方向(図1の表裏方向)に関する若干の変位自在に支持する為の支持軸8a、8aは、スラスト玉軸受54、54の外輪55、55と一体に構成している。
【0046】
又、上記各トラニオン7a、7aの下端部から連続し(図示の例では一体に形成され)て、上記アクチュエータ10、10のピストン56、56に連結したロッド57、57の基端部(図1の上端部)に、それぞれプーリ58、58を固定している。そして、これら各プーリ58、58同士の間に、同期ケーブル20、20aを、襷掛けで掛け渡している。これら各同期ケーブル20、20aのうち、図2の上下方向に掛け渡した同期ケーブル20、20は、同一キャビティ(互いに対向する1対の入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間部分)に配置された1対のトラニオン7a、7a同士の間で揺動角度を一致させる為のものである。これに対して、図2の左右方向に掛け渡した同期ケーブル20a、20aは、異なるキャビティに配置されたトラニオン同士の間で揺動角度を一致させる為のものである。この様な同期ケーブル20、20a自体の機能は、前述した特許文献11に記載される等により、従来から広く知られている。
【0047】
特に、本例のトロイダル型無段変速機24aの場合には、上記各同期ケーブル20、20aのうち、同一キャビティに配置された1対のトラニオン7a、7a同士の間で揺動角度を一致させる為の同期ケーブル20、20の中間部を、前記シリンダボディー49の上面に設けた通路59、59内に配設している。これら各通路59、59は、上記各同期ケーブル20、20の中間部を上記シリンダボディー49の上面から突出しない状態で収納できる深溝状で、上記各同期ケーブル20、20の外径よりも僅かに大きな幅を有する。尚、図2には、これら外径と幅との差を誇張して(実際よりも大きく)描いている。又、上記各通路59、59の平面形状は、上記各同期ケーブル20、20の配設状態に合わせて、X形としている。
【0048】
上記各トラニオン7a、7aが前記各枢軸9、9を中心に揺動変位すると、上記各同期ケーブル20、20の中間部が上記各通路59、59内でそれぞれの長さ方向に変位する。上述した様に、上記同期ケーブル20、20の外径と上記各通路59、59の幅との差は極僅かである為、これら各同期ケーブル20、20の外表面と上記各通路59、59の内面とは、組み付け誤差や変位に伴う同期ケーブル20、20の微小な撓みに基づいて接触する。従って、これら各同期ケーブル20、20の外表面と上記各通路59、59の内面との間に作用する摩擦力が、これら各同期ケーブル20、20が変位する事に対する抵抗として働く。
【0049】
この様に本例のトロイダル型無段変速機24aの場合、上記各同期ケーブル20、20の中間部外表面と上記各通路59、59の内面とを摩擦係合させる事で、これら各同期ケーブル20、20に、変位に対する抵抗を付与している。そして、この抵抗分だけ、これら各同期ケーブル20、20を架け渡した前記各プーリ58、58を固定した、上記各トラニオン7a、7aの、上記各枢軸9、9を中心とする揺動変位が緩徐に行なわれる。この為、トルク変動時に弾性変形や微小隙間分の変位に伴ってトロイダル型無段変速機24aに生じる、変速比の不用意な変動を、前述した理由により低減して、ハンチングを抑える事ができる。
【0050】
次に、図3は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、シリンダボディー49の上面に設ける通路59a、59aの幅を、これら各通路59a、59aの中間部で両端部よりも狭くしている。そして、この狭くなった部分の幅を、同期ケーブル20、20の自由状態での外径よりも僅かに小さくしている。これら各同期ケーブル20、20の中間部は、外径を弾性的に縮めた状態で、上記狭くなった部分に配設されている。この様な本例の場合には、上記各同期ケーブル20、20が変位する事に対する抵抗を安定して大きくできて、ハンチングの抑止効果が、より確実且つ大きくなる。その他の部分の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。
【0051】
次に、図4は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、各同期ケーブル20、20を、シリンダボディー49の上部内側に設けた通路59b、59b内に挿通している。本例の場合、これら各通路59b、59bは、閉じられた断面形状を有する管状である。又、これら各通路59b、59bの内径は、上記各同期ケーブル20、20の外径よりも大きくしている。本例の場合、図4にX字形に記載した上記各通路59b、59bは、互いに捩れの位置に存在する、2本の直線状部分から成る。
【0052】
そして、上記各通路59b、59bの一部内周面で上記各同期ケーブル20、20の変位方向に離隔した位置に固定側仕切り部材60、60の外周縁部を、それぞれ対となる状態で固定している。これら各固定側仕切り部材60、60の内径は、上記各同期ケーブル20、20の外径よりも少しだけ大きい。一方、これら各同期ケーブル20、20の中間部で上記各固定側仕切り部材60、60同士の間部分に、移動側仕切り部材61、61を固定している。これら各移動側仕切り部材61、61の外径は、上記各通路59b、59bの内径よりも少しだけ小さい。又、上記シリンダボディー49が存在する、ケーシング48(図1参照)の底部には、潤滑油(トラクションオイル)が存在するので、上記各通路59b、59b内にも、この潤滑油が入り込んでいる。
【0053】
そして、各トラニオン7a、7aが枢軸9、9(図1参照)を中心として揺動変位する場合には、上記対となる固定側仕切り部材60、60と上記移動側仕切り部材61、61との間隔が、一方で拡がり他方で狭まる。これに伴って、これら各仕切り部材60、61同士の間に存在する各空間の容積が変化し、これら各空間内の潤滑油が押し出されたり、これら各空間内に潤滑油が吸引される。この様な潤滑油の移動は、その粘性により緩徐に行なわれる為、上記各同期ケーブル20、20の変位、延いては上記各トラニオン7a、7aの揺動変位も緩徐に行なわれる。この結果、前述した第1〜2例の場合と同様に、トルク変動時に弾性変形や微小隙間分の変位に伴ってトロイダル型無段変速機24aに生じる、変速比の不用意な変動を低減して、ハンチングを抑える事ができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、変速動作を安定させて、運転者に違和感を与えないトロイダル型無段変速機の実現に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】図1のA−A視図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【図4】同第3例を示す、図2と同様の図。
【図5】従来から知られているトロイダル型無段変速機の1例を示す断面図。
【図6】図5のB−B断面図。
【図7】図5のC−C断面図。
【図8】トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の1例を示す略断面図。
【図9】従来使用されていたプリセスカムを取り出して示す斜視図。
【図10】このプリセスカムを含むフィードバック機構部分を説明する為の断面図。
【図11】従来構造で行なった実験の結果を示す線図。
【符号の説明】
1、1a 入力軸
2 入力側ディスク
3 ボールスプライン
4 出力歯車
5 出力側ディスク
6 パワーローラ
7、7a トラニオン
8、8a 支持軸
9 枢軸
10 アクチュエータ
11、11a、11b 支持板
12 変速比制御弁
13 ステッピングモータ
14 スリーブ
15 スプール
16 ピストン
17 ロッド
18 プリセスカム
19 リンク腕
20、20a 同期ケーブル
21 カム面
22 駆動軸
23、23a 押圧装置
24、24a トロイダル型無段変速機
25 遊星歯車式変速機
26 リング歯車
27 支持板
28 伝達軸
29 高速用クラッチ
30 エンジン
31 クランクシャフト
32 発進クラッチ
33 出力軸
34 太陽歯車
35 遊星歯車
36a、36b 遊星歯車素子
37 キャリア
38 動力伝達機構
39 伝達軸
40a、40b スプロケット
41 チェン
42 第一の歯車
43 第二の歯車
44 低速用クラッチ
45 後退用クラッチ
46 第一の腕片
47 第二の腕片
48 ケーシング
49 シリンダボディー
50 天板部
51 結合板
52 支持ポスト
53 補強ステー
54 スラスト玉軸受
55 外輪
56 ピストン
57 ロッド
58 プーリ
59、59a、59b 通路
60 固定側仕切り部材
61 移動側仕切り部材

Claims (3)

  1. それぞれが断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側ディスク及び出力側ディスクと、これら入力側ディスク及び出力側ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する複数の支持部材と、これら各支持部材に支持された状態で上記入力側ディスク及び出力側ディスク同士の間に挟持された、その周面を球状凸面とした複数のパワーローラと、上記各支持部材を上記枢軸の軸方向に変位させる為の複数の油圧式のアクチュエータと、これら各アクチュエータへの油圧の給排を制御する変速比制御弁と、上記各支持部材の変位に応じてこの変速比制御弁の弁構成部材を変位させるフィードバック機構と、上記各支持部材同士の間に掛け渡されて上記枢軸を中心とするこれら各支持部材の揺動変位を互いに同期させる同期ケーブルとを備えたものであり、上記フィードバック機構は、何れかの枢軸と同心に結合され、この枢軸と共に軸方向及び回転方向に変位するプリセスカムと、このプリセスカムのカム面の変位を上記弁構成部材に伝達してこの弁構成部材を軸方向に変位させるリンク腕とを備えたものであるトロイダル型無段変速機に於いて、上記同期ケーブルの一部に、この同期ケーブルが変位する事に対する抵抗を付与する為の抵抗付与手段を設けた事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 同期ケーブルを、各アクチュエータを収納したシリンダボディーに設けた通路内に配設し、これら同期ケーブルの外表面と通路の内面との間に作用する摩擦力により、この同期ケーブルが変位する事に対する抵抗を付与する為の抵抗付与手段を構成した、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
  3. 同期ケーブルを、各アクチュエータを収納したシリンダボディーに設けた通路内に挿通し、この通路の一部内周面で上記同期ケーブルの変位方向に離隔した位置に固定された、それぞれの内側に上記同期ケーブルを挿通する少なくとも1対の固定側仕切り部材と、この同期ケーブルの中間部でこれら固定側仕切り部材同士の間部分に固定された移動側仕切り部材との間に介在する潤滑油の粘性抵抗により、上記同期ケーブルが変位する事に対する抵抗を付与する為の抵抗付与手段を構成した、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
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