JP2005009255A - アンカーボルト及びアンカーボルト固定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、アンカーボルトを母材に対して固定でき、2つの層状部が形成されている母材に固定する場合でも、母材に対するアンカーボルトの固定状態を維持でき、又、2つの層状部間の界面又は母材における微細クラック等に接着剤を注入できるので、2つの層状部間の界面が剥離することを防止できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、母材17、18の下孔19内に挿入されるネジ部2を有するアンカーボルト本体4と、ネジ部2の外周に設けられ、アンカーボルト本体4の回動によって下孔19内面を押圧するように拡開される、スリーブ状の拡開部材6とを有し、アンカーボルト本体4の内部には接着剤通路21が形成され、アンカーボルト本体4の下孔19に挿入される先端とは逆の後端側から、接着剤通路21を介して、下孔19内に接着剤20を注入するアンカーボルト1である。
【選択図】 図7
【解決手段】本発明は、母材17、18の下孔19内に挿入されるネジ部2を有するアンカーボルト本体4と、ネジ部2の外周に設けられ、アンカーボルト本体4の回動によって下孔19内面を押圧するように拡開される、スリーブ状の拡開部材6とを有し、アンカーボルト本体4の内部には接着剤通路21が形成され、アンカーボルト本体4の下孔19に挿入される先端とは逆の後端側から、接着剤通路21を介して、下孔19内に接着剤20を注入するアンカーボルト1である。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート、モルタル等の母材に設けられた下孔の中に挿入された状態で固定されるアンカーボルトに関し、特に、母材が2つの層状部に分かれている場合であっても、その界面に挿入されて、2つの層状部が形成されている母材の固定状態を安定して維持することが可能なアンカーボルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コンクリート、モルタル等の母材に穿孔した下孔のなかに挿入したアンカーボルトを、下孔のなかに予め入れておいた、接着剤によって固定する技術が知られている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
また、従来から、コンクリートの打継ぎ部における界面に補修材を注入するため、コンクリートに補修材を注入する注入穴を開け、注入穴に注入具を挿入し、その後、注入具におけるボディ管に嵌合されている弾性チューブを拡径させて、注入具をコンクリート孔内に固定し、その後、注入穴を介して、打継ぎ部における界面に補修材を注入し、補修材の注入後、ナット管を取り外すことにより、高圧注入した補修材が逆流することを防止しつつ、次の作業に、すぐに移ることができるようにした技術が知られている(例えば、特許文献3等参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−295864号公報
【特許文献2】
特開2001−234084号公報
【特許文献3】
特開2002−70319号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、始めに述べた上記従来の技術では、下孔にアンカーボルトを挿入した後、接着剤が硬化するまで、アンカーボルトが固定されないため、アンカーボルトを静止状態に保つ必要がある。
特に、天井面に施工する場合は、アンカーボルトの自重により、アンカーボルトが施工穴内から抜け落ちてきてしまうため、テープや針金などで、アンカーボルトを固定する必要があり、手間がかかった。
また、母材の下孔内に接着剤を注入する際、下孔の孔径が小さいため、エアーが巻き込まれて、下孔の奥の方のエアーを外に出しにくく、これにより、接着性が悪くなるという問題があった。
【0005】
また、後に述べた上記従来の技術では、打継ぎ部における界面は、補修材のみにより継ぎ止められ、ボルト等の機械的な力による継ぎ止め力が働かないため、界面が剥離する力に対する抵抗力が弱いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、容易に、アンカーボルトを母材に対して固定できると共に、たとえ、2つの層状部が形成されている母材に固定する場合であっても、充分に、母材に対するアンカーボルトの固定状態を維持することができ、又、2つの層状部間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することができるので、2つの層状部間の界面が剥離することを防止できるアンカーボルトおよびその固定方法に関するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的のため、本発明は、母材の下孔内に挿入されるネジ部を有するアンカーボルト本体と、前記ネジ部の外周に設けられ、前記アンカーボルト本体の回動によって前記下孔内面を押圧するように拡開される、スリーブ状の拡開部材とを有し、前記アンカーボルト本体の内部には接着剤通路が形成されており、該アンカーボルト本体の前記下孔に挿入される先端とは逆の後端側から、前記接着剤通路を介して、前記下孔内に接着剤を注入することを特徴とするである。
【0008】
また、本発明において、前記ネジ部の外周に設けられ、前記ネジ部の回動に応じて、前記ネジ部に対して相対移動することにより、前記拡開部材の一端部を内側から外側へ押圧することで拡開させる第1の押圧部材、を備えていても良い。
また、本発明において、前記ネジ部の外周に設けられ、前記ネジ部の回動に応じて、前記第1の押圧部材の移動方向に対し反対方向に移動することにより、前記拡開部材の他端部を内側から外側へ押圧することにより拡開させる第2の押圧部材と、を備えていても良い。
また、本発明において、前記母材には、界面を有するコンクリート製の2つの層状部が形成されており、前記アンカーボルト本体は、前記母材の下孔に挿入することにより、母材表面から、一方の層状部および前記界面を貫通して、他方の層状部に挿入される長さを有しており、このアンカーボルト本体のうち、前記一方の層状部に挿通される部分が、前記拡開部材の拡開によって前記一方の層状部に固定され、前記他方の層状部に挿入される部分が、前記接着剤通路を介して下孔内に注入される接着剤によって、前記他方の層状部に固定されることで、該アンカーボルト本体によって、前記界面が形成された前記2つの層状部を引き留めるようにして連結、固定できるようにしても良い。
また、本発明において、前記接着剤通路を介して前記下孔内に注入された接着剤が、前記界面にも注入されることにより、前記2つの層状部における対向する面の間に付着力をもたらすようにしたものであっても良い。
また、本発明において、前記アンカーボルト本体における、前記下孔へ挿入される先端側とは逆の後端側に、前記下孔に注入された接着剤が母材表面に漏れ出すことを防止するシール部材を母材表面に押し付ける増し締めナットが螺着されていても良い。
また、本発明において、上記の何れかに記載のアンカーボルトを母材の下孔内に挿入し、前記拡開部材を拡開することにより、前記アンカーボルトを下孔内に固定した後、前記接着剤通路から母材の下孔内を介して、二層の母材間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することを特徴とするアンカーボルト固定方法であっても良い。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1を示す斜視図であり、図2は、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1を示す断面図であり、図3は、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1における各構成部品を分解した状態を示す図である。
【0010】
図1〜3において、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1は、ネジ部2およびネジ部2と連なる頭部3を備えたアンカーボルト本体4と、このアンカーボルト本体4に外挿され、複数本(4本)の軸方向に延びるスリット5を有する筒状の拡開部材6と、この拡開部材6よりも、アンカーボルト本体4の前記頭部3とは逆側である先端側にてアンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されており、アンカーボルト本体4の回動によって、アンカーボルト本体4の軸方向に移動されることで、拡開部材6の一端部9に押圧して拡開させるコーンナット7(第1の押圧部材)と、拡開部材6と薄肉部8を介して一体に設けられ、拡開部材6の他端部10に押圧して拡開させるための筒状の第2の押圧部材11と、アンカーボルト本体4に、拡開部材6よりも頭部3側にて、アンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されているナット(増し締めナット)12と、この増し締めナット12と拡開部材6との間にてネジ部2に外挿されているドームワッシャー13およびパッキン(シール部材)14およびワッシャー15とを有する。
また、アンカーボルト本体4の頭部3には、ニップル16が螺着されており、このニップル16を介して、アンカーボルト本体14内に形成されている接着剤通路21に接着剤を流入させることができる。なお、ニップル16は後付けで頭部3に螺着しても良い。
【0011】
後述する図4〜7に示すように、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1は、コンクリート製躯体17(建物等の躯体)と、この躯体17外面に形成された外層18とからなる母材における下孔19内に挿入され、コンクリート製躯体17と外層18との固定状態を安定して維持するために用いられるものである。
【0012】
アンカーボルト本体4に形成された接着剤通路21は、一端が頭部3に開口され、他端が、アンカーボルト本体4のネジ部2の前記頭部3とは逆側の先端部(以下、ボルト先端部とも言う)に開口されている(出口開口部22)貫通孔である。
図2等に示した例では、出口開口部22は、ボルト先端部33におけるネジ部2の側面にのみに形成されているが、これに加えて、ネジ部2の他の位置にも形成して構わない。
【0013】
アンカーボルト本体4における、下孔19に入り込む先端部30に対し反対側(後端側)の頭部3には、接着剤通路21の一端を拡張した形状に形成され、ニップル16のネジ部23が螺合される螺着穴24となっている。
【0014】
拡開部材6は、両端部9、10から拡開されることで、外層18の下孔19に嵌まり込んで固定されるものである。尚、拡開部材6としては、両端部9、10のみが拡開されるものでも良いが、ここでは、拡開部材6は、複数本の割り溝の内の1本が、該拡開部材6の軸方向に貫通(貫通している割り溝は、符号5a)しているため、断面C形になっているスリーブであり、全体が拡開して、母材17の下孔19に嵌り込んで固定される構成になっている。
拡開部材6の一端部9内側は、拡開部材6の中央部27の側に行くほど狭くなるテーパ状部28となっている。また、拡開部材6の他端部10は、内側がアンカーボルト本体4の外周部との間に隙間29を形成するように、切り欠かれている(薄肉に形成されている)。拡開部材6の他端部10先端は、後述の第2の押圧部材11と薄肉部8を介して一体となっている。
【0015】
第1の押圧部材7は、内周面がネジ部2の外周部と螺合していると共に、外周面は、拡開部材6側が細くなるテーパ状部30となっている。
【0016】
第2の押圧部材11は、先端部がテーパ状部31となっており、最先端部が薄肉部8を介して、拡開部材6の他端部10と一体となっている。第2の押圧部材11の外面には、下孔19内周と接触して、母材17の下孔19に対して回動することを妨げる回り止め部材32が突設されている。
【0017】
ドームワッシャー13、パッキン14、ワッシャー15は、アンカーボルト本体4の頭部3に近い側から、ドームワッシャー13、ワッシャー15、パッキン14の順で、ネジ部2に外挿されている。ドームワッシャー13は、椀形に湾曲成形された部材であり、椀の開口側に相当する側である外周部がワッシャー15に臨み、この外周部とは逆の湾曲の頂部が頭部3側となる向きでアンカーボルト本体4のネジ部2に挿入して設けられている。
【0018】
次に、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1を母材に固定する手順を、図4〜7を参照して説明する。
図4におけるように、まず始めに、母材17、18に形成された下孔19内に、アンカーボルト本体4のネジ部2を挿入する。これにより、パッキン14側部が母材表面34に接し、アンカーボルト1におけるパッキン14側部よりも先端側の部分が母材17、18の下孔19内に挿入される。
【0019】
次に、頭部3に螺着しておいたニップル16又は頭部3をインパクトレンチ等を使って回動させる。これにより、アンカーボルト本体4が回動されることで、図5に示すように、ネジ部2と螺合している第1の押圧部材7(コーンナット)が、ネジ部2に沿って拡開部材6側に移動して、拡開部材6の一端部9のテーパ状部28内周面に入り込んでいき、拡開部材6の一端部9を外側に拡開させる。
【0020】
このとき、第2の押圧部材11に固定されている回り止め部材32が母材17の下孔19内に嵌まり込み、第2の押圧部材11、それと一体の拡開部材6、拡開部材6のテーパ状部28内周面と接している第1の押圧部材7は、アンカーボルト本体4がインパクトレンジ25により回動しても、それに伴って、回動することはない。
【0021】
拡開部材6の一端部9が、下孔19内面に圧接して、第1の押圧部材7が、拡開部材6に、それ以上、入り込むことができなくなると、第1の押圧部材7と螺合関係にあるネジ部2が、母材17、18の下孔19の奥側へ移動し始める(図6参照)。そうすると、アンカーボルト本体4における頭部3と接して、ネジ部2に螺合している増し締めナット12もアンカーボルト本体4の移動方向へ移動し始める。これにより、増し締めナット12と第2の押圧部材11後端部との間に挟み込まれているドームワッシャー13が、押し潰される。第2の押圧部材11の後端部は、パッキン14、ワッシャー15を貫通して、ドームワッシャー13の内部空間に突出されているため、ドームワッシャー13が押し潰されると、第2の押圧部材11は、ドームワッシャー13からの押圧力により、母材17の下孔19の奥側に移動し始め、これにより、拡開部材6と第2の押圧部材11に介在している薄肉部8が破壊され、第2の押圧部材11の先端部のテーパ状部31が、拡開部材6の他端部10の隙間29内に入り込む。これにより、第2の押圧部材11の先端部が、拡開部材6の他端部10を外側へ拡開させる。
【0022】
以上により、拡開部材6の両端部9、10が、拡開して、母材17の下孔19内に嵌まり込み、アンカーボルト1が、下孔19内に、安定して固定されることとなる。
【0023】
その後、増し締めナット12を工具等で回動することにより、増し締めナット12でドームワッシャー13を奥側へ押し込み、パッキン14を母材表面34に押し付けるようにして、パッキン14により、下孔19の母材表面34における開口部を、下孔19に注入した接着剤(後述)が漏出しないように、しっかりとシールする。
【0024】
図7におけるように、その後、頭部3の接着剤挿入開口部から接着剤通路21に接着剤20を入れ込み、接着剤通路21を介して、下孔19内に接着剤20を注入する。このとき、接着剤20は、躯体17の下孔19のみならず、二層の母材17、18間の界面26にも入り込ませる。また、二層の母材17、18の内に、微細クラックがある場合には、接着剤20は、微細クラック内にも入り込ませる。また、接着剤20は、外層18側の下孔19内にも充填することが、二層の母材17、18間の一体化、固定強度の確保の点で好ましい。
【0025】
次に、本発明の第2実施の形態につき、図面を参照して、説明する。図8は、本発明の第2実施の形態によるアンカーボルト1を示す断面図である。
図8において、本発明の第2実施の形態によるアンカーボルト1は、ネジ部2およびネジ部2と連なる頭部3を備えたアンカーボルト本体4と、このアンカーボルト本体4に外挿され、複数本の軸方向に延びるスリット5を有する筒状の拡開部材6と、この拡開部材6よりも、アンカーボルト本体4の前記頭部3とは逆側である先端側にてアンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されており、アンカーボルト本体4の回動によって、アンカーボルト本体4の軸方向に移動されることで、拡開部材6の一端部9に押圧して拡開させるコーンナット7(第1の押圧部材)と、アンカーボルト本体4に、拡開部材6よりも頭部3側にて、アンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されているナット(増し締めナット)12と、この増し締めナット12と拡開部材6との間にてネジ部2に外挿されているパッキン(シール部材)14およびワッシャー15とを有する。
また、アンカーボルト本体4の頭部3には、ニップル16が螺着されており、このニップル16を介して、アンカーボルト本体14内に形成されている接着剤通路21に接着剤を流入させることができる。なお、ニップル16は後付けで頭部3に螺着しても良い。
【0026】
本発明の第2実施の形態において、本発明の第1実施の形態と相違する点は、本発明の第2実施の形態においては、第2の押圧部材が備えられておらず、第1の押圧部材7のみにより、拡開部材6が拡開されることである。この構成によっても、拡開部材6による拡開により、拡開部材6を下孔16に嵌り込ませて、アンカーボルト1を下孔16に固定することができる。
【0027】
また、本発明の第2実施の形態において、第2の押圧部材を拡開部材6の他端部10に嵌り込ませるものではないため、本発明の第1実施の形態において、第2の押圧部材を押し込むために設けられたドームワッシャー13は備えられていない。
【0028】
本発明の第2実施の形態では、第2の押圧部材が設けられていないため、第1の押圧部材7により、拡開部材6の一端部9を拡開する工程の後で、第2の押圧部材により、拡開部材6の他端部10を拡開する工程は実施されるものではないが、他の工程は、本発明の第1実施の形態と同様に実施される。
【0029】
尚、本発明の第1および第2実施の形態によれば、まず、拡開部材6の拡開により、アンカーボルト1を下孔19内に安定して固定した後に、アンカーボルト本体4における接着剤通路21を通して、接着剤20を下孔19内に注入するので、アンカーボルト1を下孔19内に安定して固定することができる。
また、接着剤20が硬化するまで、アンカーボルト1の位置ズレ等を確実に防止できるため、所望の位置、向きでのアンカーボルト1の固定を確実に実現できる。
【0030】
また、本発明の第1および第2実施の形態によれば、下孔19にもたらされた接着剤20が母材表面34に漏れ出すことを防止し、母材表面34に接して設けられたパッキン14を備え、ネジ部2に螺合する増し締めナット12を設け、増し締めナット12を回動することにより、増し締めナット12がネジ部に対して相対的に移動して、パッキン14を母材表面34に押し付ける。もし、増し締めナット12がなければ、パッキン14を押し付けるために、アンカーボルト本体4の頭部3を回動することにより、第1の押圧部材7が更に移動してしまい、拡開部材6を更に拡開させようとして、拡開部材6の破損等の恐れがあったが、増し締めナット12がネジ部2に対して相対的に移動するため、このような不具合を回避できる。
【0031】
本発明の適用対象の母材としては、コンクリートやモルタルで形成されたものに限定されず、例えば、鋼板、石材(天然のもの又は人工のもの)、合成樹脂の少なくとも何れか1つを使用して形成したものなど、様々なものを採用できるものである。
また、本発明の適用対象の2つの層状部が形成されている母材としては、コンクリート製躯体17(建物等の躯体)と、この躯体17外面に形成された外層18とからなる、2つの母材を一体化させたものの他、元々は一層の母材であった射体が、界面剥離によって、層が分離したものも含んでいる。そのため、これらを包括して、母材は、一方の層状部18および他方の層状部17の2つの層状部が形成されているものと定義した。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明によれば、容易に、アンカーボルトを母材に対して固定でき、たとえ、2つの層状部が形成されている母材に固定する場合であっても、充分に、母材に対するアンカーボルトの固定状態を維持することができ、又、2つの層状部間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することができるので、2つの層状部間の界面が剥離することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルトを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルトを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルトの構成部品を示す図である。
【図4】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図5】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図6】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図7】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図8】本発明の第2実施の形態によるアンカーボルトを示す断面図である。
【符号の説明】
1‥‥アンカーボルト、2‥‥ネジ部、3‥‥頭部、4‥‥アンカーボルト本体、5‥‥スリット、6‥‥拡開部材、7‥‥第1の押圧部材、8‥‥薄肉部、9‥‥一端部、10‥‥他端部、11‥‥第2の押圧部材、12‥‥増し締めナット、13‥‥ドームワッシャー、14‥‥パッキン(シール部材)、15‥‥ワッシャー、16‥‥ニップル、17‥‥母材(コンクリート製躯体、他方の層状部)、18‥‥母材(外層、一方の層状部)、19‥‥下孔、20‥‥接着剤、21‥‥接着剤通路、22‥‥出口開口部、23‥‥ネジ部、24‥‥螺着穴、26‥‥界面、27‥‥中央部、28‥‥テーパ状部、29‥‥隙間、30‥‥テーパ状部、31‥‥テーパ状部、32‥‥回り止め部材、33‥‥先端部、34‥‥母材表面
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート、モルタル等の母材に設けられた下孔の中に挿入された状態で固定されるアンカーボルトに関し、特に、母材が2つの層状部に分かれている場合であっても、その界面に挿入されて、2つの層状部が形成されている母材の固定状態を安定して維持することが可能なアンカーボルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コンクリート、モルタル等の母材に穿孔した下孔のなかに挿入したアンカーボルトを、下孔のなかに予め入れておいた、接着剤によって固定する技術が知られている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
また、従来から、コンクリートの打継ぎ部における界面に補修材を注入するため、コンクリートに補修材を注入する注入穴を開け、注入穴に注入具を挿入し、その後、注入具におけるボディ管に嵌合されている弾性チューブを拡径させて、注入具をコンクリート孔内に固定し、その後、注入穴を介して、打継ぎ部における界面に補修材を注入し、補修材の注入後、ナット管を取り外すことにより、高圧注入した補修材が逆流することを防止しつつ、次の作業に、すぐに移ることができるようにした技術が知られている(例えば、特許文献3等参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−295864号公報
【特許文献2】
特開2001−234084号公報
【特許文献3】
特開2002−70319号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、始めに述べた上記従来の技術では、下孔にアンカーボルトを挿入した後、接着剤が硬化するまで、アンカーボルトが固定されないため、アンカーボルトを静止状態に保つ必要がある。
特に、天井面に施工する場合は、アンカーボルトの自重により、アンカーボルトが施工穴内から抜け落ちてきてしまうため、テープや針金などで、アンカーボルトを固定する必要があり、手間がかかった。
また、母材の下孔内に接着剤を注入する際、下孔の孔径が小さいため、エアーが巻き込まれて、下孔の奥の方のエアーを外に出しにくく、これにより、接着性が悪くなるという問題があった。
【0005】
また、後に述べた上記従来の技術では、打継ぎ部における界面は、補修材のみにより継ぎ止められ、ボルト等の機械的な力による継ぎ止め力が働かないため、界面が剥離する力に対する抵抗力が弱いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、容易に、アンカーボルトを母材に対して固定できると共に、たとえ、2つの層状部が形成されている母材に固定する場合であっても、充分に、母材に対するアンカーボルトの固定状態を維持することができ、又、2つの層状部間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することができるので、2つの層状部間の界面が剥離することを防止できるアンカーボルトおよびその固定方法に関するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的のため、本発明は、母材の下孔内に挿入されるネジ部を有するアンカーボルト本体と、前記ネジ部の外周に設けられ、前記アンカーボルト本体の回動によって前記下孔内面を押圧するように拡開される、スリーブ状の拡開部材とを有し、前記アンカーボルト本体の内部には接着剤通路が形成されており、該アンカーボルト本体の前記下孔に挿入される先端とは逆の後端側から、前記接着剤通路を介して、前記下孔内に接着剤を注入することを特徴とするである。
【0008】
また、本発明において、前記ネジ部の外周に設けられ、前記ネジ部の回動に応じて、前記ネジ部に対して相対移動することにより、前記拡開部材の一端部を内側から外側へ押圧することで拡開させる第1の押圧部材、を備えていても良い。
また、本発明において、前記ネジ部の外周に設けられ、前記ネジ部の回動に応じて、前記第1の押圧部材の移動方向に対し反対方向に移動することにより、前記拡開部材の他端部を内側から外側へ押圧することにより拡開させる第2の押圧部材と、を備えていても良い。
また、本発明において、前記母材には、界面を有するコンクリート製の2つの層状部が形成されており、前記アンカーボルト本体は、前記母材の下孔に挿入することにより、母材表面から、一方の層状部および前記界面を貫通して、他方の層状部に挿入される長さを有しており、このアンカーボルト本体のうち、前記一方の層状部に挿通される部分が、前記拡開部材の拡開によって前記一方の層状部に固定され、前記他方の層状部に挿入される部分が、前記接着剤通路を介して下孔内に注入される接着剤によって、前記他方の層状部に固定されることで、該アンカーボルト本体によって、前記界面が形成された前記2つの層状部を引き留めるようにして連結、固定できるようにしても良い。
また、本発明において、前記接着剤通路を介して前記下孔内に注入された接着剤が、前記界面にも注入されることにより、前記2つの層状部における対向する面の間に付着力をもたらすようにしたものであっても良い。
また、本発明において、前記アンカーボルト本体における、前記下孔へ挿入される先端側とは逆の後端側に、前記下孔に注入された接着剤が母材表面に漏れ出すことを防止するシール部材を母材表面に押し付ける増し締めナットが螺着されていても良い。
また、本発明において、上記の何れかに記載のアンカーボルトを母材の下孔内に挿入し、前記拡開部材を拡開することにより、前記アンカーボルトを下孔内に固定した後、前記接着剤通路から母材の下孔内を介して、二層の母材間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することを特徴とするアンカーボルト固定方法であっても良い。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1を示す斜視図であり、図2は、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1を示す断面図であり、図3は、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1における各構成部品を分解した状態を示す図である。
【0010】
図1〜3において、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1は、ネジ部2およびネジ部2と連なる頭部3を備えたアンカーボルト本体4と、このアンカーボルト本体4に外挿され、複数本(4本)の軸方向に延びるスリット5を有する筒状の拡開部材6と、この拡開部材6よりも、アンカーボルト本体4の前記頭部3とは逆側である先端側にてアンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されており、アンカーボルト本体4の回動によって、アンカーボルト本体4の軸方向に移動されることで、拡開部材6の一端部9に押圧して拡開させるコーンナット7(第1の押圧部材)と、拡開部材6と薄肉部8を介して一体に設けられ、拡開部材6の他端部10に押圧して拡開させるための筒状の第2の押圧部材11と、アンカーボルト本体4に、拡開部材6よりも頭部3側にて、アンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されているナット(増し締めナット)12と、この増し締めナット12と拡開部材6との間にてネジ部2に外挿されているドームワッシャー13およびパッキン(シール部材)14およびワッシャー15とを有する。
また、アンカーボルト本体4の頭部3には、ニップル16が螺着されており、このニップル16を介して、アンカーボルト本体14内に形成されている接着剤通路21に接着剤を流入させることができる。なお、ニップル16は後付けで頭部3に螺着しても良い。
【0011】
後述する図4〜7に示すように、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1は、コンクリート製躯体17(建物等の躯体)と、この躯体17外面に形成された外層18とからなる母材における下孔19内に挿入され、コンクリート製躯体17と外層18との固定状態を安定して維持するために用いられるものである。
【0012】
アンカーボルト本体4に形成された接着剤通路21は、一端が頭部3に開口され、他端が、アンカーボルト本体4のネジ部2の前記頭部3とは逆側の先端部(以下、ボルト先端部とも言う)に開口されている(出口開口部22)貫通孔である。
図2等に示した例では、出口開口部22は、ボルト先端部33におけるネジ部2の側面にのみに形成されているが、これに加えて、ネジ部2の他の位置にも形成して構わない。
【0013】
アンカーボルト本体4における、下孔19に入り込む先端部30に対し反対側(後端側)の頭部3には、接着剤通路21の一端を拡張した形状に形成され、ニップル16のネジ部23が螺合される螺着穴24となっている。
【0014】
拡開部材6は、両端部9、10から拡開されることで、外層18の下孔19に嵌まり込んで固定されるものである。尚、拡開部材6としては、両端部9、10のみが拡開されるものでも良いが、ここでは、拡開部材6は、複数本の割り溝の内の1本が、該拡開部材6の軸方向に貫通(貫通している割り溝は、符号5a)しているため、断面C形になっているスリーブであり、全体が拡開して、母材17の下孔19に嵌り込んで固定される構成になっている。
拡開部材6の一端部9内側は、拡開部材6の中央部27の側に行くほど狭くなるテーパ状部28となっている。また、拡開部材6の他端部10は、内側がアンカーボルト本体4の外周部との間に隙間29を形成するように、切り欠かれている(薄肉に形成されている)。拡開部材6の他端部10先端は、後述の第2の押圧部材11と薄肉部8を介して一体となっている。
【0015】
第1の押圧部材7は、内周面がネジ部2の外周部と螺合していると共に、外周面は、拡開部材6側が細くなるテーパ状部30となっている。
【0016】
第2の押圧部材11は、先端部がテーパ状部31となっており、最先端部が薄肉部8を介して、拡開部材6の他端部10と一体となっている。第2の押圧部材11の外面には、下孔19内周と接触して、母材17の下孔19に対して回動することを妨げる回り止め部材32が突設されている。
【0017】
ドームワッシャー13、パッキン14、ワッシャー15は、アンカーボルト本体4の頭部3に近い側から、ドームワッシャー13、ワッシャー15、パッキン14の順で、ネジ部2に外挿されている。ドームワッシャー13は、椀形に湾曲成形された部材であり、椀の開口側に相当する側である外周部がワッシャー15に臨み、この外周部とは逆の湾曲の頂部が頭部3側となる向きでアンカーボルト本体4のネジ部2に挿入して設けられている。
【0018】
次に、本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト1を母材に固定する手順を、図4〜7を参照して説明する。
図4におけるように、まず始めに、母材17、18に形成された下孔19内に、アンカーボルト本体4のネジ部2を挿入する。これにより、パッキン14側部が母材表面34に接し、アンカーボルト1におけるパッキン14側部よりも先端側の部分が母材17、18の下孔19内に挿入される。
【0019】
次に、頭部3に螺着しておいたニップル16又は頭部3をインパクトレンチ等を使って回動させる。これにより、アンカーボルト本体4が回動されることで、図5に示すように、ネジ部2と螺合している第1の押圧部材7(コーンナット)が、ネジ部2に沿って拡開部材6側に移動して、拡開部材6の一端部9のテーパ状部28内周面に入り込んでいき、拡開部材6の一端部9を外側に拡開させる。
【0020】
このとき、第2の押圧部材11に固定されている回り止め部材32が母材17の下孔19内に嵌まり込み、第2の押圧部材11、それと一体の拡開部材6、拡開部材6のテーパ状部28内周面と接している第1の押圧部材7は、アンカーボルト本体4がインパクトレンジ25により回動しても、それに伴って、回動することはない。
【0021】
拡開部材6の一端部9が、下孔19内面に圧接して、第1の押圧部材7が、拡開部材6に、それ以上、入り込むことができなくなると、第1の押圧部材7と螺合関係にあるネジ部2が、母材17、18の下孔19の奥側へ移動し始める(図6参照)。そうすると、アンカーボルト本体4における頭部3と接して、ネジ部2に螺合している増し締めナット12もアンカーボルト本体4の移動方向へ移動し始める。これにより、増し締めナット12と第2の押圧部材11後端部との間に挟み込まれているドームワッシャー13が、押し潰される。第2の押圧部材11の後端部は、パッキン14、ワッシャー15を貫通して、ドームワッシャー13の内部空間に突出されているため、ドームワッシャー13が押し潰されると、第2の押圧部材11は、ドームワッシャー13からの押圧力により、母材17の下孔19の奥側に移動し始め、これにより、拡開部材6と第2の押圧部材11に介在している薄肉部8が破壊され、第2の押圧部材11の先端部のテーパ状部31が、拡開部材6の他端部10の隙間29内に入り込む。これにより、第2の押圧部材11の先端部が、拡開部材6の他端部10を外側へ拡開させる。
【0022】
以上により、拡開部材6の両端部9、10が、拡開して、母材17の下孔19内に嵌まり込み、アンカーボルト1が、下孔19内に、安定して固定されることとなる。
【0023】
その後、増し締めナット12を工具等で回動することにより、増し締めナット12でドームワッシャー13を奥側へ押し込み、パッキン14を母材表面34に押し付けるようにして、パッキン14により、下孔19の母材表面34における開口部を、下孔19に注入した接着剤(後述)が漏出しないように、しっかりとシールする。
【0024】
図7におけるように、その後、頭部3の接着剤挿入開口部から接着剤通路21に接着剤20を入れ込み、接着剤通路21を介して、下孔19内に接着剤20を注入する。このとき、接着剤20は、躯体17の下孔19のみならず、二層の母材17、18間の界面26にも入り込ませる。また、二層の母材17、18の内に、微細クラックがある場合には、接着剤20は、微細クラック内にも入り込ませる。また、接着剤20は、外層18側の下孔19内にも充填することが、二層の母材17、18間の一体化、固定強度の確保の点で好ましい。
【0025】
次に、本発明の第2実施の形態につき、図面を参照して、説明する。図8は、本発明の第2実施の形態によるアンカーボルト1を示す断面図である。
図8において、本発明の第2実施の形態によるアンカーボルト1は、ネジ部2およびネジ部2と連なる頭部3を備えたアンカーボルト本体4と、このアンカーボルト本体4に外挿され、複数本の軸方向に延びるスリット5を有する筒状の拡開部材6と、この拡開部材6よりも、アンカーボルト本体4の前記頭部3とは逆側である先端側にてアンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されており、アンカーボルト本体4の回動によって、アンカーボルト本体4の軸方向に移動されることで、拡開部材6の一端部9に押圧して拡開させるコーンナット7(第1の押圧部材)と、アンカーボルト本体4に、拡開部材6よりも頭部3側にて、アンカーボルト本体4のネジ部2に螺合されているナット(増し締めナット)12と、この増し締めナット12と拡開部材6との間にてネジ部2に外挿されているパッキン(シール部材)14およびワッシャー15とを有する。
また、アンカーボルト本体4の頭部3には、ニップル16が螺着されており、このニップル16を介して、アンカーボルト本体14内に形成されている接着剤通路21に接着剤を流入させることができる。なお、ニップル16は後付けで頭部3に螺着しても良い。
【0026】
本発明の第2実施の形態において、本発明の第1実施の形態と相違する点は、本発明の第2実施の形態においては、第2の押圧部材が備えられておらず、第1の押圧部材7のみにより、拡開部材6が拡開されることである。この構成によっても、拡開部材6による拡開により、拡開部材6を下孔16に嵌り込ませて、アンカーボルト1を下孔16に固定することができる。
【0027】
また、本発明の第2実施の形態において、第2の押圧部材を拡開部材6の他端部10に嵌り込ませるものではないため、本発明の第1実施の形態において、第2の押圧部材を押し込むために設けられたドームワッシャー13は備えられていない。
【0028】
本発明の第2実施の形態では、第2の押圧部材が設けられていないため、第1の押圧部材7により、拡開部材6の一端部9を拡開する工程の後で、第2の押圧部材により、拡開部材6の他端部10を拡開する工程は実施されるものではないが、他の工程は、本発明の第1実施の形態と同様に実施される。
【0029】
尚、本発明の第1および第2実施の形態によれば、まず、拡開部材6の拡開により、アンカーボルト1を下孔19内に安定して固定した後に、アンカーボルト本体4における接着剤通路21を通して、接着剤20を下孔19内に注入するので、アンカーボルト1を下孔19内に安定して固定することができる。
また、接着剤20が硬化するまで、アンカーボルト1の位置ズレ等を確実に防止できるため、所望の位置、向きでのアンカーボルト1の固定を確実に実現できる。
【0030】
また、本発明の第1および第2実施の形態によれば、下孔19にもたらされた接着剤20が母材表面34に漏れ出すことを防止し、母材表面34に接して設けられたパッキン14を備え、ネジ部2に螺合する増し締めナット12を設け、増し締めナット12を回動することにより、増し締めナット12がネジ部に対して相対的に移動して、パッキン14を母材表面34に押し付ける。もし、増し締めナット12がなければ、パッキン14を押し付けるために、アンカーボルト本体4の頭部3を回動することにより、第1の押圧部材7が更に移動してしまい、拡開部材6を更に拡開させようとして、拡開部材6の破損等の恐れがあったが、増し締めナット12がネジ部2に対して相対的に移動するため、このような不具合を回避できる。
【0031】
本発明の適用対象の母材としては、コンクリートやモルタルで形成されたものに限定されず、例えば、鋼板、石材(天然のもの又は人工のもの)、合成樹脂の少なくとも何れか1つを使用して形成したものなど、様々なものを採用できるものである。
また、本発明の適用対象の2つの層状部が形成されている母材としては、コンクリート製躯体17(建物等の躯体)と、この躯体17外面に形成された外層18とからなる、2つの母材を一体化させたものの他、元々は一層の母材であった射体が、界面剥離によって、層が分離したものも含んでいる。そのため、これらを包括して、母材は、一方の層状部18および他方の層状部17の2つの層状部が形成されているものと定義した。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明によれば、容易に、アンカーボルトを母材に対して固定でき、たとえ、2つの層状部が形成されている母材に固定する場合であっても、充分に、母材に対するアンカーボルトの固定状態を維持することができ、又、2つの層状部間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することができるので、2つの層状部間の界面が剥離することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルトを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルトを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルトの構成部品を示す図である。
【図4】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図5】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図6】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図7】本発明の第1実施の形態によるアンカーボルト固定方法を示す図である。
【図8】本発明の第2実施の形態によるアンカーボルトを示す断面図である。
【符号の説明】
1‥‥アンカーボルト、2‥‥ネジ部、3‥‥頭部、4‥‥アンカーボルト本体、5‥‥スリット、6‥‥拡開部材、7‥‥第1の押圧部材、8‥‥薄肉部、9‥‥一端部、10‥‥他端部、11‥‥第2の押圧部材、12‥‥増し締めナット、13‥‥ドームワッシャー、14‥‥パッキン(シール部材)、15‥‥ワッシャー、16‥‥ニップル、17‥‥母材(コンクリート製躯体、他方の層状部)、18‥‥母材(外層、一方の層状部)、19‥‥下孔、20‥‥接着剤、21‥‥接着剤通路、22‥‥出口開口部、23‥‥ネジ部、24‥‥螺着穴、26‥‥界面、27‥‥中央部、28‥‥テーパ状部、29‥‥隙間、30‥‥テーパ状部、31‥‥テーパ状部、32‥‥回り止め部材、33‥‥先端部、34‥‥母材表面
Claims (7)
- 母材の下孔内に挿入されるネジ部を有するアンカーボルト本体と、
前記ネジ部の外周に設けられ、前記アンカーボルト本体の回動によって前記下孔内面を押圧するように拡開される、スリーブ状の拡開部材とを有し、
前記アンカーボルト本体の内部には接着剤通路が形成されており、該アンカーボルト本体の前記下孔に挿入される先端とは逆の後端側から、前記接着剤通路を介して、前記下孔内に接着剤を注入することを特徴とするアンカーボルト。 - 前記ネジ部の外周に設けられ、前記ネジ部の回動に応じて、前記ネジ部に対して相対移動することにより、前記拡開部材の一端部を内側から外側へ押圧することで拡開させる第1の押圧部材、を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンカーボルト。
- 前記ネジ部の外周に設けられ、前記ネジ部の回動に応じて、前記第1の押圧部材の移動方向に対し反対方向に移動することにより、前記拡開部材の他端部を内側から外側へ押圧することにより拡開させる第2の押圧部材と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のアンカーボルト。
- 前記母材には、界面を有するコンクリート製の2つの層状部が形成されており、前記アンカーボルト本体は、前記母材の下孔に挿入することにより、母材表面から、一方の層状部および前記界面を貫通して、他方の層状部に挿入される長さを有しており、このアンカーボルト本体のうち、前記一方の層状部に挿通される部分が、前記拡開部材の拡開によって前記一方の層状部に固定され、前記他方の層状部に挿入される部分が、前記接着剤通路を介して下孔内に注入される接着剤によって、前記他方の層状部に固定されることで、該アンカーボルト本体によって、前記界面が形成された前記2つの層状部を引き留めるようにして連結、固定できることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアンカーボルト。
- 前記接着剤通路を介して前記下孔内に注入された接着剤が、前記界面にも注入されることにより、前記2つの層状部における対向する面の間に付着力をもたらすようにしたものであることを特徴とする請求項4に記載のアンカーボルト。
- 前記アンカーボルト本体における、前記下孔へ挿入される先端側とは逆の後端側に、前記下孔に注入された接着剤が母材表面に漏れ出すことを防止するシール部材を母材表面に押し付ける増し締めナットが螺着されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアンカーボルト。
- 請求項1〜6の何れかに記載のアンカーボルトを母材の下孔内に挿入し、前記拡開部材を拡開することにより、前記アンカーボルトを下孔内に固定した後、前記接着剤通路から母材の下孔内を介して、二層の母材間の界面または母材における微細クラック等に接着剤を注入することを特徴とするアンカーボルト固定方法。
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JP2003177276A JP2005009255A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | アンカーボルト及びアンカーボルト固定方法 |
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
JP2021021281A (ja) * | 2019-07-30 | 2021-02-18 | 株式会社ケー・エフ・シー | あと施工アンカー及びその施工方法 |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003177276A patent/JP2005009255A/ja active Pending
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