JPH08284263A

JPH08284263A - アンカー部材

Info

Publication number: JPH08284263A
Application number: JP8500795A
Authority: JP
Inventors: Yosuke Yoshino; 洋右吉野
Original assignee: NOZOE GIKEN KOGYO KK; YOSHINO SEIKI KK
Current assignee: NOZOE GIKEN KOGYO KK; YOSHINO SEIKI KK
Priority date: 1995-04-11
Filing date: 1995-04-11
Publication date: 1996-10-29

Abstract

(57)【要約】【目的】壁面補修等において、下穴内の空気排出不良に
よるシーリング材の充填不良を解消して、固定強度の向
上・安定並びに信頼性の向上を図る。【構成】アンカー部材２には、先端部に縮径部４とスリ
ット６が形成されたアンカー本体８と、このアンカー本
体８内を先端側に向けて打ち込まれ先端部を拡開するロ
ックピン１２が備えられている。ロックピン１２には、
軸方向に貫通するシーリング材流路としての貫通孔１６
が形成されており、アンカー本体８の後端から注入され
るシーリング材２８は、貫通孔１６を通ってアンカー本
体８の先端から吐出し、下穴２６の奥行の空隙部３０の
空気を後方へ押し出しながら先端から緻密に充填され
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、コンクリート構造物等
に埋設状態で固定して用いられるアンカー部材に関し、
特に、モルタル等の外装材の落下防止のための壁面補修
に好適なアンカー部材に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば図１０に示すように、コンクリー
ト下地１８に外装材として複数のモルタル層２０，２
２，２４が形成された壁面構造において、層境に剥離部
位Ｐ₁，Ｐ₂，Ｐ₃が生じた場合には、外面からコンク
リート下地１８に至る下穴２６を形成し、アンカー部材
５０で一体的に結合して補強する壁面補修が行われてい
る。

【０００３】このような補修に用いられるアンカー部材
５０は、例えば、先端部に周方向の縮径部５２と軸方向
に延びるスリット５４を有するアンカー本体５６と、こ
のアンカー本体内を後端側から先端側へ向けて打ち込ま
れるロックピン５８とから構成されている。ロックピン
５８を打ち込むと、先端部が拡開して下穴２６に固定さ
れるようになっている。そして、アンカー部材５０の固
定後、エポキシ樹脂等のシーリング材２８（接着剤、ス
ラリーの概念を含む。以下同じ）をアンカー部材５０の
内外及び剥離部位Ｐ₁，Ｐ₂，Ｐ₃に充填するようにな
っている。符号２７はシーリング材２８の注入器を示
す。

【０００４】また、下穴２６は、アンカー本体５６の後
端がロックピン５８の打ち込み時にのめり込んだとして
も固定機能が有効に得られるように、或いはシーリング
材２８の固化による固定機能が十分に得られるように、
アンカー本体５６の先端側に空隙部３０が存在する余裕
の長さに形成される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、本出願人の
実験によると、上述のような従来のアンカー部材５０で
は、ロックピン５８を打ち込んで先端部を拡開した後に
シーリング材２８を充填しても、十分な引っ張り強度を
有しないことが起こり、引っ張り強度にバラツキが生じ
ていることが判明した。原因を追求してゆくと、先端部
の内方流路はロックピン５８の外面に縮径部５２が密接
して閉塞された状態となるために、後端から注入された
シーリング材２８は、ロックピン５８の後端側における
スリット開口５４ａからアンカー本体５６の外方へ流出
し、それから先端側へ向かうことになるが、空隙部３０
等における空気の逃げ道がなくなり、空気は圧縮され
る。

【０００６】このため、シーリング材２８は圧縮空気の
抵抗を受け、空隙部３０に充分に充填されないままで折
り返して剥離部位Ｐ₁，Ｐ₂，Ｐ₃に流入されるためで
あった。かかる状態ではシーリング材２８が空気圧によ
ってアンカー部材５０の開口部へと押し戻され、開口部
から外装材の表面に流出することとなる。シーリング材
２８の固化後であっても、温度上昇に伴って圧縮空気が
膨張してシーリング材を押し戻して下穴開口から表面へ
流出することが起こる。そのうえに、係止力が必要な先
端部にシーリング材２８が充填されていないため、結果
としてアンカー部材５０の引っ張り強度の低下をもたら
している。

【０００７】さらに詳述すると、引っ張り強度のバラツ
キは、スリット開口５４ａがロックピン５８の後端より
も長く形成されている場合に多く起こることが判明し
た。即ち、２つ割りのスリット開口５４ａから流出した
シーリング材２８は、スリット５４とロックピン５８と
で形成されるスリット通路５４ｂに沿って先端の空隙部
３０に流入しようとするが、スリット開口５４ａが長く
形成されて開口面積が大きくなっているために外周囲で
の回り込みが早くなり、先端側での空気の逃げ道を閉ざ
すためであった。本出願人の実験によれば、アンカー部
材寸法や拡開率等で相違するが、ロックピン５８の長さ
に対してスリット開口５４ａの長さが約３０％以下、好
ましくは１５％以下であれば、スリット通路５４ｂの流
入が最初に良好に行われることを見いだした。

【０００８】そこで、本発明は、下穴２６の内部空気を
良好に排出してシーリング材を隈なく充填することがで
き、よって引っ張り強度の向上ひいては信頼性の向上を
図ることができるアンカー部材の提供をその目的とす
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成すべく創案されたもので、その特徴は、アンカー本体
の後端から注入されるシーリング材を軸方向に導いてア
ンカー本体の先端から吐出させるシーリング材流路が形
成されている構成にある。

【００１０】請求項２に係る発明では、シーリング材流
路を、ロックピンに軸方向の貫通孔として形成すること
ができる。

【００１１】請求項３に係る発明では、シーリング材流
路を、ロックピンの外面に螺旋溝として形成することが
できる。

【００１２】請求項４に係る発明では、シーリング材流
路を、ロックピンの外面に直線状溝として形成すること
ができる。

【００１３】請求項５に係る発明では、シーリング材流
路を、打ち込みされたロックピンの軸長よりも僅かに長
い小さなスリット開口から形成することができる。

【００１４】請求項６に係る発明では、前記スリット開
口を、ロックピンの軸長の約３０％以下、好ましくは１
５％以下の長さに抑えることが望ましい。

【００１５】

【作用】下穴を形成した後、アンカー本体が挿入され、
ロックピンが打ち込まれる。ロックピンの打ち込みによ
り先端部が拡開し、アンカー部材が下穴に固定される。
かかる状態で、アンカー本体の後端側からシーリング材
が充填されると、シーリング材はシーリング材流路を通
ってアンカー本体の先端から空隙部に吐出し、これによ
ってアンカー本体の先端側の空気は後端側へ押し出され
て排出される。空気の排出とともにシーリング材がアン
カー本体の内外全体に亘って隈なく充填される。

【００１６】請求項２に係る発明では、シーリング材は
ロックピンに形成された貫通孔を通って先端から吐出さ
れる。

【００１７】請求項３に係る発明では、シーリング材は
ロックピンの外面に形成された螺旋溝を通って先端から
吐出される。

【００１８】請求項４に係る発明では、シーリング材は
ロックピンの外面に形成された直線上溝を通って先端か
ら吐出される。

【００１９】請求項５に係る発明では、シーリング材は
打ち込みされたロックピンの後部に開口するスリット開
口から吐出され、スリット開口の外周囲に回り込む前に
スリット通路を通って先端の空隙部に流入する。

【００２０】請求項６に係る発明では、シーリング材流
路はロックピンの軸長の約３０％以下、好ましくは１５
％以下の長さのスリット開口から吐出され、スリット開
口の外周囲に回り込む前にスリット通路を通って先端の
空隙部に流入する。

【００２１】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１乃至図３に基
づいて説明する。

【００２２】この例に示すアンカー部材２は、図２に示
すように筒状（薄肉パイプ状を含む）のアンカー本体８
から構成される。アンカー本体８には、先端部に絞り加
工によって複数の縮径部４８（外周に装着したリングも
含む）が形成されているとともに軸方向に延びるスリッ
ト６，６が形成され、このアンカー本体８の筒内には係
止凸部１０，１０を介して抜け止めされた状態でロック
ピン１２が内蔵されている。

【００２３】上記各縮径部４の外周端面には下穴の側面
に食い込むエッジ４ａが形成されている。また、アンカ
ー本体８の後端には径方向ヘ延びる鍔部１４が形成され
ている。

【００２４】ロックピン１２には、軸方向に延びるシー
リング材流路としての貫通孔１６が形成されている。貫
通孔１６は軸芯に沿って貫通され、シーリング材が流入
容易な程度の口径に形成されている。

【００２５】次に、アンカー部材２による壁面補修工程
を説明する。

【００２６】図１に示すように、コンクリート下地１８
とモルタル層２０，２２，２４に亘る下穴２６を形成し
た後、アンカー本体８を挿入してロックピン１２を打ち
込む。ロックピン１２の打ち込みにより、先端部は拡開
し、エッジ４ａが下穴２６の側面に食い込んで強固な係
止状態が得られる。この先端部の拡開による係止と後端
の鍔部１４との挟み付けによってコンクリート下地１８
と各モルタル層２０，２２，２４は強固に一体的に結合
される。

【００２７】かかる状態で、アンカー本体８の後端から
注入器２７でシーリング材２８を注入すると、シーリン
グ材２８は、ロックピン１２の貫通孔１６に誘導されて
先端から吐出される。これによって、下穴２６の奥行端
の空隙部３０に溜まっていた空気は、矢印で示すよう
に、アンカー本体８の後方へ押し出され、アンカー本体
８と下穴２６との間の隙間を通って良好に排出される。

【００２８】従って、図３に示すように、シーリング材
２８はアンカー本体８の内外及び剥離部位Ｐ₁，Ｐ₂，
Ｐ₃に隈なく行き渡り、固化する。これにより、アンカ
ー部材２による機械的ロック機能及びシーリング材２８
の完全充填による固化固定機能によって、強固な固定強
度が得られる。

【００２９】次に、図４及び図５はシーリング材流路の
変形例を示すもので、この例におけるロックピン３２の
外面には、図５に示すように、シーリング材流路として
の螺旋溝３４が形成されている。アンカー本体８の後端
から注入されたシーリング材２８は、図４に示すよう
に、螺旋溝３４に誘導されてアンカー本体８の先端から
吐出される。これによって、前記例と同様に空隙部３０
の空気が後方へ良好に排出され、シーリング材２８は全
体に隈なく行き渡る。なお、螺旋溝３４は複数条として
もよい。

【００３０】次に、図６及び図７はシーリング材流路の
別の変形例を示すもので、この例におけるロックピン３
６の外面には、図７に示すように、シーリング材流路と
しての直線状溝３８が複数形成されている。この例にお
いても同様に、アンカー本体８の後端から注入されたシ
ーリング材２８は、図６に示すように、直線状溝３８に
誘導されてアンカー本体８の先端から吐出される。これ
によって、空隙部３０の空気が後方へ良好に排出され、
シーリング材２８は全体に隈なく行き渡る。

【００３１】次に、図８及び図９はシーリング材流路の
さらに別の変形例を示すもので、この例におけるロック
ピン４０は、中実でその外周には、シーリング材流路と
してのスリット通路４１ｂ，４１ｂが一対形成されてい
る。この場合にスリット４１はロックピン４０の軸長よ
り約８％程度長く形成されていると同時に剥離部位Ｐ1
に到達しない長さに形成され、ロックピン４０の打ち込
み後に僅かな長さのスリット開口４１ａが形成される。
ロックピン４０の打ち込みに伴って、図９に示すように
大断面のスリット通路４１ｂ，４１ｂが形成されるの
で、シーリング材２８はスリット開口４１ａから吐出さ
れ、最初にスリット通路４１ｂ，４１ｂに流入すること
となり、空隙部３０の空気が後方へ良好に排出される。
図８において、４２は螺合して取付される注入治具、４
３はこの注入治具４２に螺合して取付される逆流防止部
材であり、高圧注入に際して用いることができる。図示
しない注入ポンプによって注入されたシーリング材２８
は、逆流防止部材４３のボール弁４４とバネ４５とによ
って逆流を阻止されるので、高圧状態で内部まで充填さ
れる。

【００３２】なお、上記各例では、シーリング材流路の
形成位置と形状をそれぞれ特定したが、これに限定され
る趣旨ではなく、ロックピンを打ち込んだ後、後端から
注入されるシーリング材をアンカー本体の先端から吐出
させる機能を満足する範囲で適宜に設計変更可能であ
る。また、高圧充填のほかに低圧充填することも可能で
ある。

【００３３】

【発明の効果】本発明によれば、アンカー本体の後端か
ら注入されるシーリング材をアンカー本体の先端から吐
出させて下穴の奥行部の空気を良好に排出しながら全体
に亘って緻密に充填できるので、シーリング材の充填不
良による固定強度の低下を図ることができ、よって信頼
性の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るアンカー部材の一実施例における
シーリング材注入途中の状態を示す縦断面図である。

【図２】図１で示した例のアンカー部材の斜視図であ
る。

【図３】図１で示した例におけるシーリング材注入完了
直前の状態を示す縦断面図である。

【図４】他の実施例におけるシーリング材注入途中の状
態を示す縦断面図である。

【図５】図４で示した例におけるロックピンの斜視図で
ある。

【図６】別の実施例におけるシーリング材注入途中の状
態を示す縦断面図である。

【図７】図６で示した例におけるロックピンの斜視図で
ある。

【図８】さらに別の実施例におけるシーリング材注入途
中の状態を示す縦断面図である。

【図９】図６で示した例におけるＡーＡ線断面図であ
る。

【図１０】従来例におけるシーリング材の充填不良状態
を示す縦断面図である。

【符号の説明】

６，４１スリット８アンカー本体１２，３２，３６ロックピン１６貫通孔（シーリング材流
路）１８コンクリート下地２０，２２，２４モルタル層２６下穴２８シーリング材３０空隙部３４螺旋溝（シーリング材流
路）３８直線状溝（シーリング材
流路）４１ａスリット開口４１ｂスリット通路（シーリン
グ材流路）Ｐ₁，Ｐ₂，Ｐ₃ 剥離部位

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】先端部に軸方向に延びるスリットが形成さ
れた筒状のアンカー本体と、このアンカー本体内の先端
部に打ち込まれアンカー本体の先端部を拡開するロック
ピンとが備えられているアンカー部材において、前記アンカー本体の後端から注入されるシーリング材を
軸方向に導いてアンカー本体の先端から吐出させるシー
リング材流路が形成されていることを特徴とするアンカ
ー部材。
【請求項２】前記シーリング材流路が、前記ロックピン
に形成された軸方向の貫通孔としてなる請求項１記載の
アンカー部材。
【請求項３】前記シーリング材流路が、前記ロックピン
の外面に形成された螺旋溝としてなる請求項１記載のア
ンカー部材。
【請求項４】前記シーリング材流路が、前記ロックピン
の外面に形成された直線状溝としてなる請求項１記載の
アンカー部材。
【請求項５】前記シーリング材流路が、打ち込みされた
前記ロックピンの後端より開口するスリット開口である
請求項１記載のアンカー部材。
【請求項６】前記スリット開口が、前記ロックピンの軸
長の約２５％以下、好ましくは１５％以下の長さである
請求項５記載のアンカー部材。