JP2005008805A - 水性接着剤組成物、製造方法および積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、残留モノマー臭及び重合時に発生する凝集物が少ない接着剤であって、光沢、耐水性に優れる積層物を形成し得る接着剤を提供することである。
【解決手段】エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)等を必須とするラジカル重合性モノマー、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマーに対して特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)を滴下し、乳化重合してなるポリマーエマルション(F)、
及び2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする水性接着剤組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)等を必須とするラジカル重合性モノマー、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマーに対して特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)を滴下し、乳化重合してなるポリマーエマルション(F)、
及び2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする水性接着剤組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱硬化ないし室温硬化し得る水性接着剤組成物および該型接着剤組成物の製造方法ならびにそれを使用した積層体に関する。詳しくは書籍に代表される出版印刷物や包装用のラミネート品を製造する際に、プラスチックフィルムと紙、プラスチックフィルムとプラスチックフィルムとの積層に好適に用いられる水性の接着剤組成物および該接着剤組成物の製造方法並びに該接着剤組成物の利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から接着剤を用いて、プラスチックフィルム、紙、金属等を貼り合わせてなるラミネート品(積層体)が様々な分野で使用されている。プラスチックフィルム同士、即ち同種素材同士を貼り合わせることも、プラスチックフィルムと紙のように異種素材を貼り合わせることもある。また、さらにプラスチックフィルムや紙を積層し、3層以上の多層構成とすることもある。
出版印刷物や包装用材料は、一般に意匠性、美観、強度、耐性等を向上させる目的で、印刷面に接着剤を介して透明なプラスチックフィルムがラミネート(積層)される。
【0003】
出版印刷物の場合、コイル巻きにされたプラスチックフィルム上に接着剤を塗工し乾燥した後、印刷層を設けた紙もしくはプラスチックフィルムを貼り合わせて、接着剤を硬化させラミネート品を得る。また、包装用材料の場合は、同様にコイル巻きにされたプラスチックフィルムもしくはプラスチックフィルム上に形成された印刷面に接着剤を塗工し乾燥後、コイル巻きされた紙もしくはプラスチックフィルムを貼り合わせて接着剤を硬化させ、包装用ラミネート材料を得る。
従って、ラミネートする際に用いられる接着剤は、塗工時には水性特有の濡れ性、レベリング性、ハジキ等のトラブルがなく、かつラミネート後は柔軟で光沢が良いことが要求される。
【0004】
接着剤に用いられる樹脂の分子量を下げることによって光沢を向上できることが一般には知られている。分子量調整用の連鎖移動剤としてはメルカプト基含有化合物がよく知られている。
しかし、実際には連鎖移動剤の使用量が多いと乳化重合時の安定性を損ない、凝集物が発生し易くなり、その結果光沢が低下し易い。つまり、分子量低下に伴う光沢向上が期待される反面、凝集物発生に伴う光沢低下も生じるので、結果として光沢向上に対する要求を満たすことはできなかった。
【0005】
また、ラミネート後には、高光沢の他に耐熱性、耐水性、耐溶剤性等も要求される。これらの要求を満足するためには、架橋性モノマーの使用比率を上げ、硬化後の接着剤層の硬度、強度を高めることが考えられる。
しかし、架橋性モノマーは一般に比較的共重合性が低く、重合安定性を欠きやすく、凝集物が発生し易い。
【0006】
接着剤に用いられる樹脂のガラス転移温度を下げることによって、光沢を向上し、柔軟性を付与することも知られている。しかし、ガラス転移温度を下げると各種耐性が低下するので、高光沢と高耐性を両立する事は困難であった。
【0007】
また、特許文献1には、カルボニル基を含有する不飽和単量体を必須成分とする不飽和単量体を、連鎖移動剤の存在下に乳化重合してなる樹脂水性分散液に、ヒドラジン誘導体を配合してなる、光沢等に優れる塗膜を形成し得る樹脂水性分散液が開示されている(特開平5−51559号公報参照)。
しかし、特許文献1に開示される樹脂水性分散液は、凝集物が多く、光沢も極めて不十分で出版印刷物や包装用のラミネート品を製造する際に使用する接着剤としては使用し得なかった。
特許文献1に開示される樹脂水性分散液は、建築用塗料に好適なものであって、塗布時の膜厚は150μm程度と極めて厚い。他方、出版印刷物や包装用のラミネート品を製造する際に使用する接着剤の場合、厚みは2〜15μmとはるかに薄い。従って、厚膜の場合には問題とはならない程度の凝集物であったとしても、薄膜の場合には光沢に大きな影響を及ぼす。尚、生じた凝集物を濾過で取り除くことは工業的に煩雑で生産性の点から好ましくない。
【0008】
さらに、出版印刷物や包装用のラミネート品に要求される光沢は、極めて厳しい。
一般に出版印刷物や包装用のラミネート品の構成は、透明なプラスチックフィルム/接着剤層/印刷層/紙、プラスチックフィルムもしくは金属層という積層構成をとる。このようなラミネート品の場合、透明なプラスチックフィルム及び接着剤層を通して、印刷層や印刷層のない部分については下地の紙等が艶やかに鮮明に見えることが要求される。これがこれらラミネート品の接着剤に要求される光沢の意味である。
要求される光沢は極めて高度なレベルにあり、しかも特殊であるので、一般に光沢評価の指標とされる60°光沢では評価し得ない。即ち、ラミネート品の透明なプラスチックフィルム側の60°光沢を求めても、本発明でいう光沢は評価できない。
【0009】
また、特許文献2にも、カルボニル基を含有する不飽和単量体を必須成分とする不飽和単量体を、連鎖移動剤の存在下に乳化重合してなる特定分子量及び分子量分布の合成樹脂エマルジョンに、ジヒドラジン化合物を配合してなるドライラミネート用接着剤が開示されている(特開平11−315262号公報参照)。
しかし、特許文献2に開示される接着剤は、残存モノマー臭が強く、また凝集物も多いので、積層物の光沢に難があった。
【0010】
さらに特許文献3にも、カルボニル基を含有する不飽和単量体を必須成分とする不飽和単量体を、特定の連鎖移動剤の存在下に乳化重合してなる樹脂水性分散体に、ヒドラジノ基を有する化合物を配合してなる水性硬化型接着剤が開示されている(特開2001−354933号公報参照)。
しかし、特許文献3に開示される接着剤は、凝集物が多いので、積層物の光沢に難があるばかりでなく、積層物は耐水性の点で満足できるものではなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−51559号公報
【特許文献2】
特開平11−315262号公報
【特許文献3】
特開2001−354933号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、残留モノマー臭及び重合時に発生する凝集物が少ない接着剤であって、光沢、耐水性に優れる積層物を形成し得る接着剤を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマー(a5)及び必要に応じてその他のラジカル重合性モノマー(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して0.3〜1重量部の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)を滴下し、乳化重合してなるポリマーエマルション(F)、
及び2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする水性接着剤組成物に関する。
【0014】
また本発明は、モノマー(a1)〜(a6)から形成されるポリマーのガラス転移温度が−40〜0℃であることを特徴とする上記発明に記載の水性接着剤組成物に関し、
さらに本発明は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、(メタ)アクリル酸(a5)及びその他のモノマー(a6)の合計を100重量%とした場合、(a1)/(a2)/(a3)+(a4)/(a5)/(a6)=1〜20/0.1〜5/1〜40/0.1〜10/50〜95(重量%)であることを特徴とする上記いずれかの発明に記載の水性接着剤組成物に関する。
【0015】
また本発明は、ポリマーエマルション(F)中の重合性カルボニル基1モルに対して、ヒドラジノ基が0.25〜2.5モルとなるように、2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする上記いずれかの発明に記載の水性接着剤組成物に関する。
【0016】
また本発明は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマー(a5)及び必要に応じてその他のラジカル重合性モノマー(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して0.3〜1重量部の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)の混合物を滴下し、乳化重合してポリマーエマルション(F)を得、
該ポリマーエマルション(F)と2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)とを混合することを特徴とする水性接着剤組成物の製造方法に関する。
【0017】
また本発明は、上記いずれかの発明に記載の接着剤から形成される接着剤層を介し、プラスチックフィルム、紙及び金属からなる群より選ばれる少なくとも2種が積層されてなることを特徴とする積層体に関し、
さらに本発明は、プラスチックフィルムが透明であり、印刷層が接着剤層と紙との間に設けられてなることを特徴とする上記発明に記載の積層体に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の接着剤を構成する成分の1つであるポリマーエマルション(F)について説明する。
ポリマーエマルション(F)は、上記したようにモノマ−(a1)〜(a6)を特定の方法で乳化重合してなるものである。
【0019】
ポリマーエマルション(F)の重合に使用するモノマー(a1)は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するものである。
該モノマー(a1)は、重合性カルボニル基、すなわち、ヒドラジノ基を含む化合物(G)と架橋反応する、ケト基(狭義のカルボニル基)あるいはアルド基(アルデヒド基)を、ポリマーエマルション(F)中の分散粒子、即ちにモノマ−(a1)〜(a6)から形成される共重合体に導入する機能を担う。モノマ−(a1)〜(a6)から形成される共重合体中に導入された重合性カルボニル基は、積層物を形成する際に後述するヒドラジノ基を有する化合物(G)と反応し、接着剤層の硬化に寄与する。
【0020】
モノマー(a1)としては、具体的には、
(メタ)アクロレイン;
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、さらに長鎖もしくは分岐したアルキルビニルケトンなどのアルキルビニルケトン;
ホルミルスチロール;
ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのケト基を有する(メタ)アクリレート;
ダイアセトンアクリルアマイド等が例示できる。特に好ましいのはダイアセトンアクリルアマイド、アクロレイン等である。これら単量体は共重合体中に2種以上併用してもよい。
【0021】
本発明で使用するモノマー(a2)は、アクリルアミド,メタクリルアミドないしマレイン酸アミドであり、特にアクリルアミドが好ましい。これらモノマー(a2)は重合時に一種の保護コロイドとして機能するので、凝集物低減には必須成分である。
【0022】
本発明で使用するモノマー(a3)は、スチレンないしビニルトルエンであり、特にスチレンが好ましい。これら芳香族ビニル化合物は、特に光沢への効果から必須成分である。
【0023】
本発明では、共重合性の観点からモノマー(a4)としてメチルメタクリレートを使用することが必須である。メチルメタクリレートを使用しないと共重合性が低下する結果、残留モノマー臭が強くなるばかりでなく、凝集物も多くなる。
【0024】
本発明で使用するモノマー(a5)は、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマーであって、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−メタクリロイルプロピオン酸等が挙げられ、特にメタクリル酸が好ましい。
【0025】
本発明では、その他上記モノマー(a1)〜(a5)の他に必要に応じて、形成され得る共重合体のガラス転移温度(Tg)が、−40〜0°となるような範囲でその他種々のモノマー(a6)を使用することが好ましい。例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;
メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の各種カルボン酸のエステル類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;
ビニルピロリドンの如き複素環式ビニル化合物;
塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等の如きハロゲン化ビニリデン化合物;
エチレン、プロピレン等の如きα−オレフィン類;
ブタジエンの如きジエン類;
グリシジルメタクリレート,アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有モノマー;
ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー;
N−メチロールアクリルアミドまたはメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸の置換アミド;
ジメチルビニルメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物;
ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレートの如き1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体なども挙げる事ができる。
【0026】
モノマー(a1)〜(a6)としては、ダイアセトンアクリルアマイド、アクリルアミド、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸ブチルを使用する事が望ましい。
【0027】
本発明では上記モノマー(a1)〜(a6)を、(a1)/(a2)/[(a3)+(a4)]/(a5)/(a6)=1〜20/0.1〜5/1〜40/0.1〜10/50〜95(重量%)の割合で共重合することが好ましく、(a1)は2〜15(重量%)、(a2)は0.2〜3(重量%)、(a5)は0.2〜5(重量%)の割合で共重合することがより好ましい。
【0028】
重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)の使用割合が2重量%より少ないと、プラスチックフィルム等を積層する際の接着剤の架橋速度が低下するばかりでなく、得られる積層体を構成する接着剤層中に十分な架橋密度が確保しにくくなり、耐溶剤性、耐水性などが不十分となる傾向にある。他方、使用割合が15重量%より多いと、粘着性の低下を招きやすく、コスト高を招く。
【0029】
(メタ)アクリルアミド等のモノマー(a2)の使用割合が0.1重量%よりも少ないと重合安定性に問題が生じる場合がある。他方、モノマー(a2)が5重量%よりも多いと得られるポリマーエマルション(F)の粘度が高くなりすぎたり、得られる積層体の耐水性の低下をきたす場合がある。
【0030】
モノマー(a3)と(a4)は、合わせて1〜40重量%使用することが好ましい。
さらにモノマー(a3)と(a4)の重量比は、(a3)/(a4)=7/3〜3/7であることが好ましく、より好ましくは5/5である。モノマー(a3)が7割を超えると、光沢の添は有利であるが、残留モノマー臭気及び凝集物の悪影響が懸念される。逆にモノマー(a4)が7割を越えると光沢の点で好ましくない。
【0031】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a5)の使用割合が、0.1重量%未満であると重合安定性に問題が生じる場合がある。他方、10重量%よりも多いと、得られるポリマーエマルション(F)の粘度が高くなりすぎたり、積層体中の接着剤層の耐水性が低下する傾向にある。
【0032】
その他のモノマー(a6)は、上記したように形成されるポリマーのガラス転移温度が−40〜0℃となるよう範囲で使用することが好ましく、−30〜−10℃となるような範囲で使用することがより好ましい。
ポリマーフィルム等を積層、即ちラミネートする際には、接着剤は柔軟であることが望まれる。従って、モノマー(a1)〜(a6)から形成されるポリマーのガラス転移温度が0℃よりも高いと、接着剤が硬くなり、柔軟性が不十分となり易い。他方、ポリマーのガラス転移温度が−40℃未満の場合、積層体の耐熱性、耐水性、耐溶剤性等が低下する傾向にある。
【0033】
ポリマーエマルション(F)は、上記したモノマー(a1)〜(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部を取り分け、このモノマーエマルション(A)の一部、特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を反応容器中に仕込み、モノマーエマルション(A)の残りに特定の連鎖移動剤(E)を加えたものを上記反応容器中に滴下し、乳化重合してなるものである。このような重合方法を採ることによって、凝集物の著しく少ないポリマーエマルションを得ることができ、光沢に優れる積層物が得られる。
モノマーエマルション(A)の一部を反応容器には仕込まずに、特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を反応容器中に仕込み、ここにモノマーエマルション(A)全量及び特定の連鎖移動剤を滴下した場合、凝集物が発生し、粒度分布が二山になりエマルジョンの外観が不良となる。
あるいは、上記したモノマー(a1)〜(a6)、乳化剤(a7)、水性媒体(a8)及びさらに特定の連鎖移動剤(E)をも含有するモノマーエマルションの一部を取り分け、このモノマーエマルションの一部、特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)、及び水性媒体(D)を反応容器中に仕込み、特定の連鎖移動剤(E)入りのモノマーエマルションの残りを上記反応容器中に滴下し、乳化重合した場合には、特に重合初期の反応性低下を引き起こし、残留モノマー臭及び凝集物が発生し易くなる。
また、特定量の重合開始剤(B)を反応容器に仕込むのではなく、モノマーエマルション(A)の残り、特定の連鎖移動剤(E)及び特定量の重合開始剤(B)を反応容器中に滴下し、乳化重合した場合には、初期一括仕込みと比較して、重合初期の反応性低下を引き起こし、残留モノマー臭及び凝集物が発生し易くなる。
【0034】
本発明において使用される重合開始剤(B)について説明する。
本発明において用いることが出来るラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。
また、これらラジカル開始剤と還元剤とを併用し、レドックス重合することもできる。併用可能な還元剤としては、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等が挙げられる。
【0035】
開始剤の使用量は、モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対し0.3〜1重量部であることが重要であり、好ましくは0.4〜0.8重量部である。即ち、1重量部よりも多い量を用いると耐水性の低下をきたす。また0.3重量部未満の量であると重合安定性に問題が生じる。
【0036】
本発明において使用される乳化剤(a7)、(C)は、乳化重合で使用されているものであれば如何なるもので用いることができる。
代表的なものをあげると、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ジアルキルスルホサクシネートの塩類等のアニオン乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤などが挙げられる。
勿論、これらに限定されるものではなく、乳化重合に用いることが出来る乳化剤であれば上記骨格に限定せず、如何なるものでも用いることが出来、また、これらを複数種併用することも可能である。
これら乳化剤としては、内分泌攪乱作用物質(環境ホルモン物質)に該当しないものを使用することが好ましい。形成される塗膜の耐水性及びインキ退色性等の観点より反応性乳化剤が好ましい。
【0037】
反応性乳化剤の具体例としては、ビニルスルホン酸ソーダ、アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸アンモニウム、メタクリル酸ポリオキシエチレンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルケニルフェニル硫酸ソーダ、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、メタクリル酸ポリオキシプロピレンスルホン酸ソーダ等のアニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメタクリロイルエーテル等のノニオン系反応性乳化剤などが挙げられる。
【0038】
例えば、反応性乳化剤としては、アクアロンHS−10、KH−10、 ニューフロンティアA−229E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープSE−3N、SE−5N、SE−10N、SE−20N、SE−30N〔以上、旭電化工業(株)製〕、AntoxMS−60、MS−2N、RA−1120、RA−2614〔以上、日本乳化剤(株)製〕、エレミノールJS−2、RS−30〔以上、三洋化成工業(株)製〕、ラテムルS−120A、S−180A、S−180〔以上、花王(株)製〕等のアニオン型反応性乳化剤。
アクアロンRN−20、RN−30,RN−50,ニューフロンティアN−177E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープNE−10、NE−20,NE−30、NE−40〔以上、旭電化工業(株)製〕、RMA−564,RMA−568,RMA−1114〔以上、日本乳化剤(株)製〕、NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G〔以上、新中村化学工業(株)製〕等のノニオン型反応性乳化剤等が挙げられ、
非反応性乳化剤としては、1118S−70、エマ−ル10〔花王(株)製〕等が挙げる。これらを複数種併用することも可能である。
尚、反応性乳化剤は、本発明にいうエチレン性不飽和モノマーには含めないものとする。
【0039】
乳化剤(a7)、(C)の合計の使用量は、モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対し0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。即ち、5重量部を超えると耐水性の低下をきたす場合があり、また0.1重量部未満であると重合安定性に問題が生じる場合がある。
また、乳化剤(a7)と(C)とは、同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良い。乳化剤(a7)と(C)とは、(a7)/(C)=0.1〜5/95〜99.9(重量比)であることが好ましく、1〜3/97〜99重量比)であることがより好ましい。
【0040】
本発明において使用される水性媒体(a8)、(D)としては、水が挙げられ、本発明の目的、効果を損なわない範囲で親水性の有機溶剤も必要に応じて使用することができる。
【0041】
次に連鎖移動剤(E)について説明する。
連鎖移動剤としては,例えば、チオール基や水酸基を有する化合物が一般に知られている。
本発明においてはチオール基を有する化合物を使用することが必要である。メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いた場合には、臭気の点で難がある。
本発明においては、連鎖移動剤としてチオール基を有する化合物のうち、さらにメルカプトプロピオン酸のエステル化物(E)を使用することが重要である。チオール基を有する化合物としては、例えば、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類や、メルカプトプロピオン酸n−ブチルやメルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキルや、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが挙げられる。臭気及び凝集物の点からメルカプトプロピオン酸アルキル及びメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが好ましく、メルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルがより好ましく、特にメルカプトプロピオン酸メトキシブチルが好ましい。
連鎖移動剤(E)は、上記したように反応容器中には仕込まないことが重要であり、滴下分として取り分けた前記モノマーエマルション(A)の残りとあらかじめ混合しておき、これを反応容器中に滴下することが好ましい。
【0042】
連鎖移動剤(E)の使用量は、モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対し0.1〜3重量部であることが好ましく、0.2〜2重量部であることがより好ましい。即ち、3重量部を超える量を用いると耐水性、耐熱性等の低下をきたす場合があり、また0.1重量部未満の量であると接着不良の問題が生じる場合がある。
【0043】
ポリマーエマルション(F)は、上記モノマー(a1)〜(a6)を40〜90℃で重合することによって得ることができる。
ポリマーエマルション(F)の固形分濃度は、広い範囲にわたって変えられるが、円滑な製造および実用上の制約の両面から考えて、30〜70重量%が適当である。
本発明に使用するポリマーエマルション(F)の水分散粒子の平均粒径は、粒子の凝集および沈降せずに分散安定性を保つという観点から0.03〜3μm程度であることが好ましい。
【0044】
ポリマーエマルション(F)は、揮発性塩基化合物で中和して使用することが好ましい。
揮発性塩基化合物としては、アンモニア;アミン類として、モノエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミンなどが使用される。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
次に、本発明の接着剤を構成するもう1つの成分である一分子中に2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)について説明する。
一分子中に2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)は、プラスチックフィルムと紙等とを積層する際に、上記ポリマーエマルション(F)を構成するポリマー、即ちモノマー(a1)〜(a6)を共重合してなる共重合体中のモノマー(a1)に由来するカルボニル基と反応する。カルボニル基とヒドラジノ基との反応により接着剤層中に架橋構造が形成され、その結果、接着力、耐熱性、耐溶剤性等に優れる積層体を得ることができる。
ジヒドラジン化合物(G)の配合量は、ポリマーエマルション(F)中の重合性カルボニル基1モルに対して、ヒドラジノ基が0.25〜2.5モルとなるように配合することが好ましく、0.5〜1モルとなるように配合することがより好ましい。
ジヒドラジン化合物(G)の配合量が0.25モル未満では、架橋効率は上がらず、耐熱性、耐溶剤性が向上し難い。また、ジヒドラジン化合物(G)の配合量が2.5モルより多い場合は、ジヒドラジン化合物(G)が析出したり、架橋が速すぎる結果却って接着不良を起こす場合がある。
【0046】
本発明において用いられる一分子中に2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)としては、例えば炭素数が1〜18の多価カルボン酸のジヒドラジド類、たとえばコハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジもしくはトリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。好ましく使用できるのはアジピン酸ジヒドラジド及び1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインである。
【0047】
次に本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、上記接着剤を用いて、プラスチックフィルム、紙及び金属からなる群より選ばれる少なくとも2種を積層してなるものである。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタンなどが挙げられる。
紙としては、例えば、合成紙、セルロース系フィルム、不織布などが挙げられる。
金属としては、種々の金属箔の他に、プラスチックフィルムに各種金属を蒸着等したもの等が挙げられる。
【0048】
積層体としては、プラスチックフィルム同士、紙同士、金属同士を貼り合わせたものはもちろん、プラスチックフィルムと紙、プラスチックフィルムと金属、紙と金属とを貼り合わせたものも挙げられ、さらに3層以上の積層構成とすることもできる。これらのうち、プラスチックフィルムと紙とを貼り合わせてなる積層体が好ましく、透明なプラスチックフィルムと紙とを積層してなるものがより好ましく、特に印刷層が接着剤層と紙との間に設けられてなるものがさらに好ましい。
【0049】
【実施例】以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の部及び%はいずれも重量に基づく値である。
【0050】
実施例1
容積2Lの4つ口フラスコに還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口を用意。イオン交換水230部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕1部、ハイテノール08E〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕1部を入れ、窒素を導入しつつ攪拌しながら、内温を73℃に加温した。一方イオン交換水230部、アクリル酸2−エチルヘキシル(以後、2−EHAと略す)50部、メタクリル酸メチル(以後、MMAと略す)23部、アクリル酸ブチル(以後、BAと略す)364.5部、スチレン(以後、Stと略す)22.5部、メタクリル酸(以後、MAAと略す)10部、アクリル酸(以後、AAと略す)5部,ダイアセトンアクリルアマイド(以後、DAAmと略す)20部、アクリルアミド(以後AAmと略す)5部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕9部、ハイテノール08E〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕9部をホモミキサーで乳化し、モノマーエマルジョンを作製した。
上記の容器中に、モノマーエマルジョンの2%をプレチャージし、同時に5%過硫酸アンモニウム水溶液70部を添加して乳化重合を開始した。
次いで10分後に、別途モノマーエマルジョンの残りにメルカプトプロピオン酸メトキシブチル5部添加し再乳化したものを4時間かけて滴下した。この間容器内は80℃に保った。滴下終了後、3時間80℃に保ち、熟成を行った。その後冷却を開始し、30℃まで冷却しポリマーエマルジョンを得た。
この得られたポリマーエマルジョンに、アンモニア水を10部、アジピン酸ジヒドラジド20.6部(DAAm1モルに対して1モル)を添加して一液型水性接着剤を得た。得られた一液型水性接着剤の固形分濃度は50.6%、pH7、粘度260mPa・sであった。単量体組成、性状、及び樹脂のガラス転移点(計算値)を表1に示した。
【0051】
実施例1〜5、比較例1〜9の単量体組成、性状、及び樹脂のガラス転移点(計算値)を表1に示した。
【0052】
実施例2
実施例1において、ポリマーのガラス転移点(計算値)を−15℃に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0053】
実施例3
実施例1において、5%過硫酸アンモニウム水溶液を40部に減量した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0054】
実施例4
実施例1において、AAmを10部に増やした以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0055】
実施例5
実施例1において、StとMMAの比を変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0056】
比較例1
スチレンを使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0057】
比較例2
メチルメタクリレートを使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0058】
比較例3
アクリルアミドを使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0059】
比較例4
実施例1において、MMA、AAm未使用に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0060】
比較例5
実施例1において70部用いていた5%過硫酸アンモニウム水溶液を10部に減量した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0061】
比較例6
実施例1において70部用いていた5%過硫酸アンモニウム水溶液を600部に増量した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0062】
比較例7
実施例1においては反応容器に5%過硫酸アンモニウム水溶液を70部添加していたが、反応容器にはこれを10部添加し、残りの60部はモノマーエマルジョン、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルと合わせて滴下槽から4時間かけて滴下した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0063】
比較例8
実施例1において用いていたメルカプトプロピオン酸メトキシブチルをイソプロピルアルコールに変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0064】
比較例9
モノマーエマルジョンの残りと共に滴下槽から滴下していたメルカプトプロピオン酸メトキシブチルを、反応容器に先に仕込み、次いでモノマーエマルジョンの残りを滴下槽から滴下し乳化重合する方法に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0065】
各接着剤組成物の評価は、以下の通り行った。評価結果を表1に示した。
(粘度:mPa・s) 得られた接着剤組成物の粘度をBL型粘度計により25℃、30rpmにて測定した。
【0066】
(経時安定性) 50℃、1週間経時後に外観を確認した。
◎:沈降、2層分離、増粘共に見られない。
○:沈降、2層分離はないが、2倍程度以下の増粘が見られる。また、微量の沈降物が見られるが撹拌、塗工後の表面への外観異常は見られない。
△:沈降、凝集物発生もしくは増粘が大きく実用不可。
×:沈降、増粘によりゲル化。
【0067】
(凝集物評価) 得られた各接着剤を5ミクロン濾過布でろ過し、濾過布上に残った残滓の乾燥重量を下記の基準で評価した。
○=接着剤1Kgあたり0.1g未満
△=接着剤1Kgあたり0.1g以上〜1.0g未満
×=接着剤1Kgあたり1.0g以上
【0068】
(臭気評価) 得られた各接着剤を官能的評価及びガスクロマトグラフィーにより残留モノマー量を測定し、下記の基準で評価した。
○=殆ど臭わない及び200ppm以下
△=やや臭う及び200〜600ppm
×=臭い及び600ppm以上
【0069】
(光沢;ラミ構成OPP/印刷紙) 得られた接着剤組成物をバーコーター#6にてOPPフィルムへ塗工し、オフセットインキを印刷したコート紙とラミネートし目視により光沢を判定した。(塗布量3g/m2)
◎:優秀。インキ表面の凹凸による微細な空気泡による墨色の濃度低下がほとんど見られない。
○:良好。墨色の濃度低下がやや見られる。
△:やや不良。墨色の濃度低下がかなり見られ実用下限レベルである。
×:不良。実用不可。
【0070】
(接着性;ラミ構成OPP/印刷紙)上記と同様にラミネートし、ラミ一日後の室温(約20℃)でのラミネート強度を測定した。T型剥離。単位:N/25mm
◎:優秀。ラミ強度2.0(N/25mm)以上、かつインキ層のOPPフィルムへの移行率が30%以上である。
○:良好。ラミ強度1.5〜2.0または、インキ移行率30%以下である。
△:やや不良。ラミ強度1.5〜2.0及び、インキ移行率30%以下である。
×:不良。ラミ強度1.0以下、インキ移行率10%以下のいずれか、もしくは両方が△のレベル以下である場合。
【0071】
(耐温水性;ラミ構成OPP/ボール紙)ラミ後一日後のラミ物を50℃水に浸漬した後、40℃で乾燥し外観変化を評価する。
◎:優秀。大きな外観変化なし。
○:良好。やや光沢低下あり。
△:やや不良。小さなトンネリング(デラミ現象)が発生し、実用不可。
×:不良。大きなトンネリングが発生し、実用不可。
【0072】
(耐溶剤性;ラミ構成OPP/クラフト紙)ラミ後一日後のラミ物をインキ溶剤に浸漬し、取り出して乾燥した後、外観変化を評価する。
◎:優秀。大きな外観変化なし。
○:良好。やや光沢低下あり。
△:やや不良。小さなトンネリング(デラミ現象)が発生し、実用不可。
×:不良。大きなトンネリングが発生し、実用不可。
【0073】
(耐熱性;ラミ構成OPP/印刷紙)ラミ直後(1時間以内)に60℃オーブンに2時間入れ、外観変化を確認する。
◎:優秀。大きな外観変化なし。
○:良好。やや光沢低下あり。
△:やや不良。小さなトンネリング(デラミ現象)が発生し、実用不可。
×:不良。大きなトンネリングが発生し、実用不可。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
本発明によって、凝集物が少なく、光沢及び耐温水性に優れるラミネート品を提供し得る水性接着剤組成物を提供することができるようなった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱硬化ないし室温硬化し得る水性接着剤組成物および該型接着剤組成物の製造方法ならびにそれを使用した積層体に関する。詳しくは書籍に代表される出版印刷物や包装用のラミネート品を製造する際に、プラスチックフィルムと紙、プラスチックフィルムとプラスチックフィルムとの積層に好適に用いられる水性の接着剤組成物および該接着剤組成物の製造方法並びに該接着剤組成物の利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から接着剤を用いて、プラスチックフィルム、紙、金属等を貼り合わせてなるラミネート品(積層体)が様々な分野で使用されている。プラスチックフィルム同士、即ち同種素材同士を貼り合わせることも、プラスチックフィルムと紙のように異種素材を貼り合わせることもある。また、さらにプラスチックフィルムや紙を積層し、3層以上の多層構成とすることもある。
出版印刷物や包装用材料は、一般に意匠性、美観、強度、耐性等を向上させる目的で、印刷面に接着剤を介して透明なプラスチックフィルムがラミネート(積層)される。
【0003】
出版印刷物の場合、コイル巻きにされたプラスチックフィルム上に接着剤を塗工し乾燥した後、印刷層を設けた紙もしくはプラスチックフィルムを貼り合わせて、接着剤を硬化させラミネート品を得る。また、包装用材料の場合は、同様にコイル巻きにされたプラスチックフィルムもしくはプラスチックフィルム上に形成された印刷面に接着剤を塗工し乾燥後、コイル巻きされた紙もしくはプラスチックフィルムを貼り合わせて接着剤を硬化させ、包装用ラミネート材料を得る。
従って、ラミネートする際に用いられる接着剤は、塗工時には水性特有の濡れ性、レベリング性、ハジキ等のトラブルがなく、かつラミネート後は柔軟で光沢が良いことが要求される。
【0004】
接着剤に用いられる樹脂の分子量を下げることによって光沢を向上できることが一般には知られている。分子量調整用の連鎖移動剤としてはメルカプト基含有化合物がよく知られている。
しかし、実際には連鎖移動剤の使用量が多いと乳化重合時の安定性を損ない、凝集物が発生し易くなり、その結果光沢が低下し易い。つまり、分子量低下に伴う光沢向上が期待される反面、凝集物発生に伴う光沢低下も生じるので、結果として光沢向上に対する要求を満たすことはできなかった。
【0005】
また、ラミネート後には、高光沢の他に耐熱性、耐水性、耐溶剤性等も要求される。これらの要求を満足するためには、架橋性モノマーの使用比率を上げ、硬化後の接着剤層の硬度、強度を高めることが考えられる。
しかし、架橋性モノマーは一般に比較的共重合性が低く、重合安定性を欠きやすく、凝集物が発生し易い。
【0006】
接着剤に用いられる樹脂のガラス転移温度を下げることによって、光沢を向上し、柔軟性を付与することも知られている。しかし、ガラス転移温度を下げると各種耐性が低下するので、高光沢と高耐性を両立する事は困難であった。
【0007】
また、特許文献1には、カルボニル基を含有する不飽和単量体を必須成分とする不飽和単量体を、連鎖移動剤の存在下に乳化重合してなる樹脂水性分散液に、ヒドラジン誘導体を配合してなる、光沢等に優れる塗膜を形成し得る樹脂水性分散液が開示されている(特開平5−51559号公報参照)。
しかし、特許文献1に開示される樹脂水性分散液は、凝集物が多く、光沢も極めて不十分で出版印刷物や包装用のラミネート品を製造する際に使用する接着剤としては使用し得なかった。
特許文献1に開示される樹脂水性分散液は、建築用塗料に好適なものであって、塗布時の膜厚は150μm程度と極めて厚い。他方、出版印刷物や包装用のラミネート品を製造する際に使用する接着剤の場合、厚みは2〜15μmとはるかに薄い。従って、厚膜の場合には問題とはならない程度の凝集物であったとしても、薄膜の場合には光沢に大きな影響を及ぼす。尚、生じた凝集物を濾過で取り除くことは工業的に煩雑で生産性の点から好ましくない。
【0008】
さらに、出版印刷物や包装用のラミネート品に要求される光沢は、極めて厳しい。
一般に出版印刷物や包装用のラミネート品の構成は、透明なプラスチックフィルム/接着剤層/印刷層/紙、プラスチックフィルムもしくは金属層という積層構成をとる。このようなラミネート品の場合、透明なプラスチックフィルム及び接着剤層を通して、印刷層や印刷層のない部分については下地の紙等が艶やかに鮮明に見えることが要求される。これがこれらラミネート品の接着剤に要求される光沢の意味である。
要求される光沢は極めて高度なレベルにあり、しかも特殊であるので、一般に光沢評価の指標とされる60°光沢では評価し得ない。即ち、ラミネート品の透明なプラスチックフィルム側の60°光沢を求めても、本発明でいう光沢は評価できない。
【0009】
また、特許文献2にも、カルボニル基を含有する不飽和単量体を必須成分とする不飽和単量体を、連鎖移動剤の存在下に乳化重合してなる特定分子量及び分子量分布の合成樹脂エマルジョンに、ジヒドラジン化合物を配合してなるドライラミネート用接着剤が開示されている(特開平11−315262号公報参照)。
しかし、特許文献2に開示される接着剤は、残存モノマー臭が強く、また凝集物も多いので、積層物の光沢に難があった。
【0010】
さらに特許文献3にも、カルボニル基を含有する不飽和単量体を必須成分とする不飽和単量体を、特定の連鎖移動剤の存在下に乳化重合してなる樹脂水性分散体に、ヒドラジノ基を有する化合物を配合してなる水性硬化型接着剤が開示されている(特開2001−354933号公報参照)。
しかし、特許文献3に開示される接着剤は、凝集物が多いので、積層物の光沢に難があるばかりでなく、積層物は耐水性の点で満足できるものではなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−51559号公報
【特許文献2】
特開平11−315262号公報
【特許文献3】
特開2001−354933号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、残留モノマー臭及び重合時に発生する凝集物が少ない接着剤であって、光沢、耐水性に優れる積層物を形成し得る接着剤を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマー(a5)及び必要に応じてその他のラジカル重合性モノマー(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して0.3〜1重量部の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)を滴下し、乳化重合してなるポリマーエマルション(F)、
及び2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする水性接着剤組成物に関する。
【0014】
また本発明は、モノマー(a1)〜(a6)から形成されるポリマーのガラス転移温度が−40〜0℃であることを特徴とする上記発明に記載の水性接着剤組成物に関し、
さらに本発明は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、(メタ)アクリル酸(a5)及びその他のモノマー(a6)の合計を100重量%とした場合、(a1)/(a2)/(a3)+(a4)/(a5)/(a6)=1〜20/0.1〜5/1〜40/0.1〜10/50〜95(重量%)であることを特徴とする上記いずれかの発明に記載の水性接着剤組成物に関する。
【0015】
また本発明は、ポリマーエマルション(F)中の重合性カルボニル基1モルに対して、ヒドラジノ基が0.25〜2.5モルとなるように、2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする上記いずれかの発明に記載の水性接着剤組成物に関する。
【0016】
また本発明は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマー(a5)及び必要に応じてその他のラジカル重合性モノマー(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して0.3〜1重量部の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)の混合物を滴下し、乳化重合してポリマーエマルション(F)を得、
該ポリマーエマルション(F)と2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)とを混合することを特徴とする水性接着剤組成物の製造方法に関する。
【0017】
また本発明は、上記いずれかの発明に記載の接着剤から形成される接着剤層を介し、プラスチックフィルム、紙及び金属からなる群より選ばれる少なくとも2種が積層されてなることを特徴とする積層体に関し、
さらに本発明は、プラスチックフィルムが透明であり、印刷層が接着剤層と紙との間に設けられてなることを特徴とする上記発明に記載の積層体に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の接着剤を構成する成分の1つであるポリマーエマルション(F)について説明する。
ポリマーエマルション(F)は、上記したようにモノマ−(a1)〜(a6)を特定の方法で乳化重合してなるものである。
【0019】
ポリマーエマルション(F)の重合に使用するモノマー(a1)は、エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するものである。
該モノマー(a1)は、重合性カルボニル基、すなわち、ヒドラジノ基を含む化合物(G)と架橋反応する、ケト基(狭義のカルボニル基)あるいはアルド基(アルデヒド基)を、ポリマーエマルション(F)中の分散粒子、即ちにモノマ−(a1)〜(a6)から形成される共重合体に導入する機能を担う。モノマ−(a1)〜(a6)から形成される共重合体中に導入された重合性カルボニル基は、積層物を形成する際に後述するヒドラジノ基を有する化合物(G)と反応し、接着剤層の硬化に寄与する。
【0020】
モノマー(a1)としては、具体的には、
(メタ)アクロレイン;
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、さらに長鎖もしくは分岐したアルキルビニルケトンなどのアルキルビニルケトン;
ホルミルスチロール;
ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのケト基を有する(メタ)アクリレート;
ダイアセトンアクリルアマイド等が例示できる。特に好ましいのはダイアセトンアクリルアマイド、アクロレイン等である。これら単量体は共重合体中に2種以上併用してもよい。
【0021】
本発明で使用するモノマー(a2)は、アクリルアミド,メタクリルアミドないしマレイン酸アミドであり、特にアクリルアミドが好ましい。これらモノマー(a2)は重合時に一種の保護コロイドとして機能するので、凝集物低減には必須成分である。
【0022】
本発明で使用するモノマー(a3)は、スチレンないしビニルトルエンであり、特にスチレンが好ましい。これら芳香族ビニル化合物は、特に光沢への効果から必須成分である。
【0023】
本発明では、共重合性の観点からモノマー(a4)としてメチルメタクリレートを使用することが必須である。メチルメタクリレートを使用しないと共重合性が低下する結果、残留モノマー臭が強くなるばかりでなく、凝集物も多くなる。
【0024】
本発明で使用するモノマー(a5)は、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマーであって、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−メタクリロイルプロピオン酸等が挙げられ、特にメタクリル酸が好ましい。
【0025】
本発明では、その他上記モノマー(a1)〜(a5)の他に必要に応じて、形成され得る共重合体のガラス転移温度(Tg)が、−40〜0°となるような範囲でその他種々のモノマー(a6)を使用することが好ましい。例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;
メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の各種カルボン酸のエステル類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;
ビニルピロリドンの如き複素環式ビニル化合物;
塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等の如きハロゲン化ビニリデン化合物;
エチレン、プロピレン等の如きα−オレフィン類;
ブタジエンの如きジエン類;
グリシジルメタクリレート,アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有モノマー;
ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー;
N−メチロールアクリルアミドまたはメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸の置換アミド;
ジメチルビニルメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物;
ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレートの如き1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体なども挙げる事ができる。
【0026】
モノマー(a1)〜(a6)としては、ダイアセトンアクリルアマイド、アクリルアミド、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸ブチルを使用する事が望ましい。
【0027】
本発明では上記モノマー(a1)〜(a6)を、(a1)/(a2)/[(a3)+(a4)]/(a5)/(a6)=1〜20/0.1〜5/1〜40/0.1〜10/50〜95(重量%)の割合で共重合することが好ましく、(a1)は2〜15(重量%)、(a2)は0.2〜3(重量%)、(a5)は0.2〜5(重量%)の割合で共重合することがより好ましい。
【0028】
重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)の使用割合が2重量%より少ないと、プラスチックフィルム等を積層する際の接着剤の架橋速度が低下するばかりでなく、得られる積層体を構成する接着剤層中に十分な架橋密度が確保しにくくなり、耐溶剤性、耐水性などが不十分となる傾向にある。他方、使用割合が15重量%より多いと、粘着性の低下を招きやすく、コスト高を招く。
【0029】
(メタ)アクリルアミド等のモノマー(a2)の使用割合が0.1重量%よりも少ないと重合安定性に問題が生じる場合がある。他方、モノマー(a2)が5重量%よりも多いと得られるポリマーエマルション(F)の粘度が高くなりすぎたり、得られる積層体の耐水性の低下をきたす場合がある。
【0030】
モノマー(a3)と(a4)は、合わせて1〜40重量%使用することが好ましい。
さらにモノマー(a3)と(a4)の重量比は、(a3)/(a4)=7/3〜3/7であることが好ましく、より好ましくは5/5である。モノマー(a3)が7割を超えると、光沢の添は有利であるが、残留モノマー臭気及び凝集物の悪影響が懸念される。逆にモノマー(a4)が7割を越えると光沢の点で好ましくない。
【0031】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a5)の使用割合が、0.1重量%未満であると重合安定性に問題が生じる場合がある。他方、10重量%よりも多いと、得られるポリマーエマルション(F)の粘度が高くなりすぎたり、積層体中の接着剤層の耐水性が低下する傾向にある。
【0032】
その他のモノマー(a6)は、上記したように形成されるポリマーのガラス転移温度が−40〜0℃となるよう範囲で使用することが好ましく、−30〜−10℃となるような範囲で使用することがより好ましい。
ポリマーフィルム等を積層、即ちラミネートする際には、接着剤は柔軟であることが望まれる。従って、モノマー(a1)〜(a6)から形成されるポリマーのガラス転移温度が0℃よりも高いと、接着剤が硬くなり、柔軟性が不十分となり易い。他方、ポリマーのガラス転移温度が−40℃未満の場合、積層体の耐熱性、耐水性、耐溶剤性等が低下する傾向にある。
【0033】
ポリマーエマルション(F)は、上記したモノマー(a1)〜(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部を取り分け、このモノマーエマルション(A)の一部、特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を反応容器中に仕込み、モノマーエマルション(A)の残りに特定の連鎖移動剤(E)を加えたものを上記反応容器中に滴下し、乳化重合してなるものである。このような重合方法を採ることによって、凝集物の著しく少ないポリマーエマルションを得ることができ、光沢に優れる積層物が得られる。
モノマーエマルション(A)の一部を反応容器には仕込まずに、特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を反応容器中に仕込み、ここにモノマーエマルション(A)全量及び特定の連鎖移動剤を滴下した場合、凝集物が発生し、粒度分布が二山になりエマルジョンの外観が不良となる。
あるいは、上記したモノマー(a1)〜(a6)、乳化剤(a7)、水性媒体(a8)及びさらに特定の連鎖移動剤(E)をも含有するモノマーエマルションの一部を取り分け、このモノマーエマルションの一部、特定量の重合開始剤(B)、乳化剤(C)、及び水性媒体(D)を反応容器中に仕込み、特定の連鎖移動剤(E)入りのモノマーエマルションの残りを上記反応容器中に滴下し、乳化重合した場合には、特に重合初期の反応性低下を引き起こし、残留モノマー臭及び凝集物が発生し易くなる。
また、特定量の重合開始剤(B)を反応容器に仕込むのではなく、モノマーエマルション(A)の残り、特定の連鎖移動剤(E)及び特定量の重合開始剤(B)を反応容器中に滴下し、乳化重合した場合には、初期一括仕込みと比較して、重合初期の反応性低下を引き起こし、残留モノマー臭及び凝集物が発生し易くなる。
【0034】
本発明において使用される重合開始剤(B)について説明する。
本発明において用いることが出来るラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。
また、これらラジカル開始剤と還元剤とを併用し、レドックス重合することもできる。併用可能な還元剤としては、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等が挙げられる。
【0035】
開始剤の使用量は、モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対し0.3〜1重量部であることが重要であり、好ましくは0.4〜0.8重量部である。即ち、1重量部よりも多い量を用いると耐水性の低下をきたす。また0.3重量部未満の量であると重合安定性に問題が生じる。
【0036】
本発明において使用される乳化剤(a7)、(C)は、乳化重合で使用されているものであれば如何なるもので用いることができる。
代表的なものをあげると、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ジアルキルスルホサクシネートの塩類等のアニオン乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤などが挙げられる。
勿論、これらに限定されるものではなく、乳化重合に用いることが出来る乳化剤であれば上記骨格に限定せず、如何なるものでも用いることが出来、また、これらを複数種併用することも可能である。
これら乳化剤としては、内分泌攪乱作用物質(環境ホルモン物質)に該当しないものを使用することが好ましい。形成される塗膜の耐水性及びインキ退色性等の観点より反応性乳化剤が好ましい。
【0037】
反応性乳化剤の具体例としては、ビニルスルホン酸ソーダ、アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸アンモニウム、メタクリル酸ポリオキシエチレンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルケニルフェニル硫酸ソーダ、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、メタクリル酸ポリオキシプロピレンスルホン酸ソーダ等のアニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメタクリロイルエーテル等のノニオン系反応性乳化剤などが挙げられる。
【0038】
例えば、反応性乳化剤としては、アクアロンHS−10、KH−10、 ニューフロンティアA−229E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープSE−3N、SE−5N、SE−10N、SE−20N、SE−30N〔以上、旭電化工業(株)製〕、AntoxMS−60、MS−2N、RA−1120、RA−2614〔以上、日本乳化剤(株)製〕、エレミノールJS−2、RS−30〔以上、三洋化成工業(株)製〕、ラテムルS−120A、S−180A、S−180〔以上、花王(株)製〕等のアニオン型反応性乳化剤。
アクアロンRN−20、RN−30,RN−50,ニューフロンティアN−177E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープNE−10、NE−20,NE−30、NE−40〔以上、旭電化工業(株)製〕、RMA−564,RMA−568,RMA−1114〔以上、日本乳化剤(株)製〕、NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G〔以上、新中村化学工業(株)製〕等のノニオン型反応性乳化剤等が挙げられ、
非反応性乳化剤としては、1118S−70、エマ−ル10〔花王(株)製〕等が挙げる。これらを複数種併用することも可能である。
尚、反応性乳化剤は、本発明にいうエチレン性不飽和モノマーには含めないものとする。
【0039】
乳化剤(a7)、(C)の合計の使用量は、モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対し0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。即ち、5重量部を超えると耐水性の低下をきたす場合があり、また0.1重量部未満であると重合安定性に問題が生じる場合がある。
また、乳化剤(a7)と(C)とは、同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良い。乳化剤(a7)と(C)とは、(a7)/(C)=0.1〜5/95〜99.9(重量比)であることが好ましく、1〜3/97〜99重量比)であることがより好ましい。
【0040】
本発明において使用される水性媒体(a8)、(D)としては、水が挙げられ、本発明の目的、効果を損なわない範囲で親水性の有機溶剤も必要に応じて使用することができる。
【0041】
次に連鎖移動剤(E)について説明する。
連鎖移動剤としては,例えば、チオール基や水酸基を有する化合物が一般に知られている。
本発明においてはチオール基を有する化合物を使用することが必要である。メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いた場合には、臭気の点で難がある。
本発明においては、連鎖移動剤としてチオール基を有する化合物のうち、さらにメルカプトプロピオン酸のエステル化物(E)を使用することが重要である。チオール基を有する化合物としては、例えば、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類や、メルカプトプロピオン酸n−ブチルやメルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキルや、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが挙げられる。臭気及び凝集物の点からメルカプトプロピオン酸アルキル及びメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが好ましく、メルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルがより好ましく、特にメルカプトプロピオン酸メトキシブチルが好ましい。
連鎖移動剤(E)は、上記したように反応容器中には仕込まないことが重要であり、滴下分として取り分けた前記モノマーエマルション(A)の残りとあらかじめ混合しておき、これを反応容器中に滴下することが好ましい。
【0042】
連鎖移動剤(E)の使用量は、モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対し0.1〜3重量部であることが好ましく、0.2〜2重量部であることがより好ましい。即ち、3重量部を超える量を用いると耐水性、耐熱性等の低下をきたす場合があり、また0.1重量部未満の量であると接着不良の問題が生じる場合がある。
【0043】
ポリマーエマルション(F)は、上記モノマー(a1)〜(a6)を40〜90℃で重合することによって得ることができる。
ポリマーエマルション(F)の固形分濃度は、広い範囲にわたって変えられるが、円滑な製造および実用上の制約の両面から考えて、30〜70重量%が適当である。
本発明に使用するポリマーエマルション(F)の水分散粒子の平均粒径は、粒子の凝集および沈降せずに分散安定性を保つという観点から0.03〜3μm程度であることが好ましい。
【0044】
ポリマーエマルション(F)は、揮発性塩基化合物で中和して使用することが好ましい。
揮発性塩基化合物としては、アンモニア;アミン類として、モノエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミンなどが使用される。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
次に、本発明の接着剤を構成するもう1つの成分である一分子中に2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)について説明する。
一分子中に2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)は、プラスチックフィルムと紙等とを積層する際に、上記ポリマーエマルション(F)を構成するポリマー、即ちモノマー(a1)〜(a6)を共重合してなる共重合体中のモノマー(a1)に由来するカルボニル基と反応する。カルボニル基とヒドラジノ基との反応により接着剤層中に架橋構造が形成され、その結果、接着力、耐熱性、耐溶剤性等に優れる積層体を得ることができる。
ジヒドラジン化合物(G)の配合量は、ポリマーエマルション(F)中の重合性カルボニル基1モルに対して、ヒドラジノ基が0.25〜2.5モルとなるように配合することが好ましく、0.5〜1モルとなるように配合することがより好ましい。
ジヒドラジン化合物(G)の配合量が0.25モル未満では、架橋効率は上がらず、耐熱性、耐溶剤性が向上し難い。また、ジヒドラジン化合物(G)の配合量が2.5モルより多い場合は、ジヒドラジン化合物(G)が析出したり、架橋が速すぎる結果却って接着不良を起こす場合がある。
【0046】
本発明において用いられる一分子中に2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)としては、例えば炭素数が1〜18の多価カルボン酸のジヒドラジド類、たとえばコハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジもしくはトリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。好ましく使用できるのはアジピン酸ジヒドラジド及び1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインである。
【0047】
次に本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、上記接着剤を用いて、プラスチックフィルム、紙及び金属からなる群より選ばれる少なくとも2種を積層してなるものである。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタンなどが挙げられる。
紙としては、例えば、合成紙、セルロース系フィルム、不織布などが挙げられる。
金属としては、種々の金属箔の他に、プラスチックフィルムに各種金属を蒸着等したもの等が挙げられる。
【0048】
積層体としては、プラスチックフィルム同士、紙同士、金属同士を貼り合わせたものはもちろん、プラスチックフィルムと紙、プラスチックフィルムと金属、紙と金属とを貼り合わせたものも挙げられ、さらに3層以上の積層構成とすることもできる。これらのうち、プラスチックフィルムと紙とを貼り合わせてなる積層体が好ましく、透明なプラスチックフィルムと紙とを積層してなるものがより好ましく、特に印刷層が接着剤層と紙との間に設けられてなるものがさらに好ましい。
【0049】
【実施例】以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の部及び%はいずれも重量に基づく値である。
【0050】
実施例1
容積2Lの4つ口フラスコに還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口を用意。イオン交換水230部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕1部、ハイテノール08E〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕1部を入れ、窒素を導入しつつ攪拌しながら、内温を73℃に加温した。一方イオン交換水230部、アクリル酸2−エチルヘキシル(以後、2−EHAと略す)50部、メタクリル酸メチル(以後、MMAと略す)23部、アクリル酸ブチル(以後、BAと略す)364.5部、スチレン(以後、Stと略す)22.5部、メタクリル酸(以後、MAAと略す)10部、アクリル酸(以後、AAと略す)5部,ダイアセトンアクリルアマイド(以後、DAAmと略す)20部、アクリルアミド(以後AAmと略す)5部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕9部、ハイテノール08E〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕9部をホモミキサーで乳化し、モノマーエマルジョンを作製した。
上記の容器中に、モノマーエマルジョンの2%をプレチャージし、同時に5%過硫酸アンモニウム水溶液70部を添加して乳化重合を開始した。
次いで10分後に、別途モノマーエマルジョンの残りにメルカプトプロピオン酸メトキシブチル5部添加し再乳化したものを4時間かけて滴下した。この間容器内は80℃に保った。滴下終了後、3時間80℃に保ち、熟成を行った。その後冷却を開始し、30℃まで冷却しポリマーエマルジョンを得た。
この得られたポリマーエマルジョンに、アンモニア水を10部、アジピン酸ジヒドラジド20.6部(DAAm1モルに対して1モル)を添加して一液型水性接着剤を得た。得られた一液型水性接着剤の固形分濃度は50.6%、pH7、粘度260mPa・sであった。単量体組成、性状、及び樹脂のガラス転移点(計算値)を表1に示した。
【0051】
実施例1〜5、比較例1〜9の単量体組成、性状、及び樹脂のガラス転移点(計算値)を表1に示した。
【0052】
実施例2
実施例1において、ポリマーのガラス転移点(計算値)を−15℃に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0053】
実施例3
実施例1において、5%過硫酸アンモニウム水溶液を40部に減量した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0054】
実施例4
実施例1において、AAmを10部に増やした以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0055】
実施例5
実施例1において、StとMMAの比を変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0056】
比較例1
スチレンを使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0057】
比較例2
メチルメタクリレートを使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0058】
比較例3
アクリルアミドを使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0059】
比較例4
実施例1において、MMA、AAm未使用に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0060】
比較例5
実施例1において70部用いていた5%過硫酸アンモニウム水溶液を10部に減量した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0061】
比較例6
実施例1において70部用いていた5%過硫酸アンモニウム水溶液を600部に増量した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0062】
比較例7
実施例1においては反応容器に5%過硫酸アンモニウム水溶液を70部添加していたが、反応容器にはこれを10部添加し、残りの60部はモノマーエマルジョン、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルと合わせて滴下槽から4時間かけて滴下した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0063】
比較例8
実施例1において用いていたメルカプトプロピオン酸メトキシブチルをイソプロピルアルコールに変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0064】
比較例9
モノマーエマルジョンの残りと共に滴下槽から滴下していたメルカプトプロピオン酸メトキシブチルを、反応容器に先に仕込み、次いでモノマーエマルジョンの残りを滴下槽から滴下し乳化重合する方法に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性接着剤を得た。
【0065】
各接着剤組成物の評価は、以下の通り行った。評価結果を表1に示した。
(粘度:mPa・s) 得られた接着剤組成物の粘度をBL型粘度計により25℃、30rpmにて測定した。
【0066】
(経時安定性) 50℃、1週間経時後に外観を確認した。
◎:沈降、2層分離、増粘共に見られない。
○:沈降、2層分離はないが、2倍程度以下の増粘が見られる。また、微量の沈降物が見られるが撹拌、塗工後の表面への外観異常は見られない。
△:沈降、凝集物発生もしくは増粘が大きく実用不可。
×:沈降、増粘によりゲル化。
【0067】
(凝集物評価) 得られた各接着剤を5ミクロン濾過布でろ過し、濾過布上に残った残滓の乾燥重量を下記の基準で評価した。
○=接着剤1Kgあたり0.1g未満
△=接着剤1Kgあたり0.1g以上〜1.0g未満
×=接着剤1Kgあたり1.0g以上
【0068】
(臭気評価) 得られた各接着剤を官能的評価及びガスクロマトグラフィーにより残留モノマー量を測定し、下記の基準で評価した。
○=殆ど臭わない及び200ppm以下
△=やや臭う及び200〜600ppm
×=臭い及び600ppm以上
【0069】
(光沢;ラミ構成OPP/印刷紙) 得られた接着剤組成物をバーコーター#6にてOPPフィルムへ塗工し、オフセットインキを印刷したコート紙とラミネートし目視により光沢を判定した。(塗布量3g/m2)
◎:優秀。インキ表面の凹凸による微細な空気泡による墨色の濃度低下がほとんど見られない。
○:良好。墨色の濃度低下がやや見られる。
△:やや不良。墨色の濃度低下がかなり見られ実用下限レベルである。
×:不良。実用不可。
【0070】
(接着性;ラミ構成OPP/印刷紙)上記と同様にラミネートし、ラミ一日後の室温(約20℃)でのラミネート強度を測定した。T型剥離。単位:N/25mm
◎:優秀。ラミ強度2.0(N/25mm)以上、かつインキ層のOPPフィルムへの移行率が30%以上である。
○:良好。ラミ強度1.5〜2.0または、インキ移行率30%以下である。
△:やや不良。ラミ強度1.5〜2.0及び、インキ移行率30%以下である。
×:不良。ラミ強度1.0以下、インキ移行率10%以下のいずれか、もしくは両方が△のレベル以下である場合。
【0071】
(耐温水性;ラミ構成OPP/ボール紙)ラミ後一日後のラミ物を50℃水に浸漬した後、40℃で乾燥し外観変化を評価する。
◎:優秀。大きな外観変化なし。
○:良好。やや光沢低下あり。
△:やや不良。小さなトンネリング(デラミ現象)が発生し、実用不可。
×:不良。大きなトンネリングが発生し、実用不可。
【0072】
(耐溶剤性;ラミ構成OPP/クラフト紙)ラミ後一日後のラミ物をインキ溶剤に浸漬し、取り出して乾燥した後、外観変化を評価する。
◎:優秀。大きな外観変化なし。
○:良好。やや光沢低下あり。
△:やや不良。小さなトンネリング(デラミ現象)が発生し、実用不可。
×:不良。大きなトンネリングが発生し、実用不可。
【0073】
(耐熱性;ラミ構成OPP/印刷紙)ラミ直後(1時間以内)に60℃オーブンに2時間入れ、外観変化を確認する。
◎:優秀。大きな外観変化なし。
○:良好。やや光沢低下あり。
△:やや不良。小さなトンネリング(デラミ現象)が発生し、実用不可。
×:不良。大きなトンネリングが発生し、実用不可。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
本発明によって、凝集物が少なく、光沢及び耐温水性に優れるラミネート品を提供し得る水性接着剤組成物を提供することができるようなった。
Claims (7)
- エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマー(a5)及び必要に応じてその他のラジカル重合性モノマー(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して0.3〜1重量部の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)を滴下し、乳化重合してなるポリマーエマルション(F)、
及び2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする水性接着剤組成物。 - モノマー(a1)〜(a6)から形成されるポリマーのガラス転移温度が−40〜0℃であることを特徴とする請求項1記載の水性接着剤組成物。
- エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、(メタ)アクリル酸(a5)及びその他のモノマー(a6)の合計を100重量%とした場合、(a1)/(a2)/(a3)+(a4)/(a5)/(a6)=1〜20/0.1〜5/1〜40/0.1〜10/50〜95(重量%)であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性接着剤組成物。
- ポリマーエマルション(F)中の重合性カルボニル基1モルに対して、ヒドラジノ基が0.25〜2.5モルとなるように、2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)を含有することを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の水性接着剤組成物。
- エチレン性不飽和二重結合および重合性カルボニル基を分子中に有するモノマー(a1)、(メタ)アクリルアミドないしマレイン酸アミド(a2)、スチレンないしビニルトルエン(a3)、メチルメタクリレート(a4)、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有するモノマー(a5)及び必要に応じてその他のラジカル重合性モノマー(a6)、乳化剤(a7)及び水性媒体(a8)を含有するモノマーエマルション(A)の一部と、前記モノマー(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して0.3〜1重量部の重合開始剤(B)、乳化剤(C)及び水性媒体(D)を仕込んだ反応容器中に、前記モノマーエマルション(A)の残り及びメルカプトプロピオン酸エステル化物(E)の混合物を滴下し、乳化重合してポリマーエマルション(F)を得、
該ポリマーエマルション(F)と2個以上のヒドラジノ基を含む化合物(G)とを混合することを特徴とする水性接着剤組成物の製造方法。 - 請求項1ないし4いずれか記載の接着剤から形成される接着剤層を介し、プラスチックフィルム、紙及び金属からなる群より選ばれる少なくとも2種が積層されてなることを特徴とする積層体。
- プラスチックフィルムが透明であり、印刷層が接着剤層と紙との間に設けられてなることを特徴とする請求項7記載の積層体。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006219511A (ja) * | 2005-02-08 | 2006-08-24 | Daicel Chem Ind Ltd | ラミネート用一液型水性接着剤組成物 |
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