JP2005008779A - 脂環式構造含有重合体樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】印刷性に優れる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性に優れた樹脂組成物に関し、さらに詳しくはフィルムに好適に供される透明性、印刷性に優れ、摩擦係数が小さい樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
包装材料として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系重合体や、ノルボルネン系重合体などに代表される脂環式構造含有重合体が用いられている。
中でも、脂環式構造含有重合体は、比重がポリエチレンテレフタレート(PET)より小さいことから、樹脂のリサイクルの際に水中でのPETとの分離が容易なため、ペットボトル等のシュリンクラベルに用いられてきている。
これらのポリオレフィン系材料や脂環式構造含有重合体からなるフィルムは、そのフィルム表面が平滑なため、フィルム同士が密着(ブロッキング)しやすいという問題があった。このブロッキング性を改良するために、二酸化ケイ素粉末やシリカアルミナ等のブロッキング防止剤を重合体に添加してフィルム表面に突起を形成させることが行われている。
特許文献1には、ポリプロピレンと、平均粒径が0.5〜10μmの二酸化ケイ素粉末と平均粒径が0.1〜5μmでかつ粒子径10μm以下の粒子が98重量%以上のアルミノシリケート粉末とを含有するポリプロピレン組成物が開示され、この組成物によって、耐ブロッキング性の良好なフィルムが提供できると述べられている。
特許文献2には、ポリスチレン系樹脂と、平均粒径が0.3〜2.0μmであり、且つ、平均粒径の3倍の粒径を有する成分が2重量%以下である球状アルミノシリケートとからなるポリスチレン系樹脂組成物が開示され、この組成物を成形してポリスチレン系延伸フィルムが提供されることが示されている。
また、特許文献3には、平均粒径が1〜6μm、特に2〜5μmである球形の二酸化ケイ素やケイ酸アルミニウム等のブロッキング防止剤を添加したシクロオレフィンポリマーが開示され、このポリマーを成形してポリオレフィンフィルムを得ることが示されている。
【特許文献1】
特開平5−9349号報
【特許文献2】
特開平8−157666号報
【特許文献3】
特開平9−272188号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報に記載されているフィルムに印刷を施すと、所々に印刷されない部分、すなわち、色抜けが発生することがわかり、さらなる改良が求められていた。従って、本発明の目的は、印刷性に優れるフィルムを与える樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、色抜けした部分のフィルム表面を精査した結果、色抜けがフィルム表面の円形状の凸凹(以下「ブツ」と略す)で引き起こされていることを見出した。そして、該ブツが、ブロッキング防止の為に添加したブロッキング防止剤の一次粒子及び一次粒子が凝集した二次粒子により発生し、フィルムの延伸によってブツの大きさが拡大する事を解明した。そこで本発明者は、ブロッキング防止剤と樹脂を更に検討し、その結果、特定の体積平均粒径と粒度分布を有するブロッキング防止剤(B)と脂環式構造含有重合体樹脂(A)とを含有する樹脂組成物により、上記目的を達成できることを見出し、この知見によって本発明を完成するに至った。
【0005】
かくして本発明によれば、
(1) 脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物、
(2)脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ノルボルナン構造以外の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(b)を含有してなり、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対して繰り返し単位(b)が10重量%以上である1記載の樹脂組成物、
(3)1又は2記載の樹脂組成物を少なくとも一層有するフィルム、及び
(4)1又は2記載の樹脂組成物を一軸又は二軸延伸してなる層を少なくとも一層有するフィルムがそれぞれ提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物は、脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなるものである。
【0007】
本発明の樹脂組成物は、脂環式構造含有重合体樹脂(A)とブロッキング防止剤(B)とを含んでなっている。
本発明で用いられる脂環式構造含有重合体とは、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)を有するものである。
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性及びフィルム成形性の各特性が高度にバランスされる。本発明に使用される脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)の割合がこの範囲にあると透明性および耐熱性が良好である。
【0008】
こうした脂環式構造含有重合体の具体例としては、
(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、(1)、(4)及びこれらの水素添加物が好ましい。
【0009】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、(ア)開環重合によって得られるものと(イ)付加重合によって得られるものに大別される。
(ア)開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ならびにこれらの水素添加物、(イ)付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0010】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0011】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、前記ノルボルネン系モノマーは、置換基を2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
中でも、ジシクロペンタジエンとノルボルネンの組み合わせ、ジシクロペンタジエンとテトラシクロドデセン誘導体の組み合わせ、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン及びメタノテトラヒドロフルオレンの組み合わせ、テトラシクロドデセンとメタノテトラヒドロフルオレンの組み合わせによる開環共重合体が好ましい。
【0012】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0013】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0014】
ノルボルネン系モノマー、又はこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
【0015】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、特にエチレンが特に好ましい。
【0016】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを共重合する場合は、共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0017】
脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対する、ノルボルナン構造以外の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(b)の割合は特に限定されないが、その割合が、10重量%以上であると好ましく、30重量%以上であるとより好ましく、50重量%以上であると特に好ましい。割合がこの範囲にあると防湿性、機械強度が良好である。
繰り返し単位(b)の割合の調整について以下に説明する。
ノルボルナンは、式(1)
【化1】
で表される二環系の橋かけ環式飽和炭化水素である。このような環構造をノルボルナン構造という。
ノルボルネンは、式(2)
【化2】
で表される二環系の橋かけ環式不飽和炭化水素(環状オレフィン)である。ノルボルネンが開環重合すると、式(3)
【化3】
で表される繰り返し単位が形成され、橋かけ環式構造がなくなり、主鎖に炭素−炭素二重結合が形成される。この二重結合を水素添加すると、飽和重合体が得られる。これに対して、ノルボルネンが付加重合すると、式(4)
【化4】
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、ノルボルナン構造を有することになる。
テトラシクロドデセンは、式(5)
【化5】
で表される環状オレフィンである。テトラシクロドデセンが開環重合すると、式(6)
【化6】
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、1個のノルボルナン構造を有することになる。テトラシクロドデセンが付加重合すると、式(7)
【化7】
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、2個のノルボルナン構造を有することになる。
このように、ノルボルネン系モノマーの種類と量、重合方式により、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対する繰り返し単位(b)の割合が決定される。
例えば、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水素添加物は、繰り返し単位中にノルボルナン構造を持たない。したがって、開環共重合とその水素添加物においては、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの共重合割合を調整することにより、繰り返し単位(a)全体に対する繰り返し単位(b)の割合を調節することができる。ノルボルネン系モノマーの付加共重合体の場合は、例えば、共重合モノマーのシクロオレフィンなどの共重合割合を調節することにより、繰り返し単位(b)の割合を調節する。
【0018】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0019】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素添加物などを用いることができる。
【0020】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素添加物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0021】
脂環式構造含有重合体(A)の重量平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。分子量がこの範囲であると、樹脂の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好ましい。本発明において重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値である。
【0022】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)は、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以上であると好ましく、60℃〜90℃の範囲であると特に好ましい。Tgがこの範囲であると、耐熱性・耐久性の点で好ましい。本発明においてTgは、JIS−K7121に基づいて示差走査熱量分析法(DSC)で測定した値である。
【0023】
ブロッキング防止剤(B)は、その体積平均粒径が、0.8〜3.2μmの範囲にあり、中でも、その体積平均粒径が1.0〜2.2μmの範囲であると好ましい。体積平均粒径がこの範囲であると樹脂組成物の外観が良好である。本発明において体積平均粒径は、コールターカウンター法(パーチャーチューブ50μm)に基づいて測定した体積粒度累積分布図から求めた値である。
ブロッキング防止剤(B)は、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を持つものであり、中でも、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.005体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.005体積%未満の粒度分布を持つものであると好ましい。粒度分布がこの範囲であると樹脂組成物の表面にブロッキング防止剤由来の凸凹が発生せず、外観、印刷性が良好である。本発明において粒度分布は、
粒径0.7μm以下の粒子、及び粒径10〜15μmの粒子については、
コールターカウンター法によりアパーチャーチューブ(50μm)を用いて測定した値である。
粒径15μm以上の粒子については、
レーザー回折法により、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製 島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3000)を用いて測定した値である。
【0024】
ブロッキング防止剤(B)は、その見掛比重が、0.5〜0.8g/cm3の範囲である。中でも0.6〜0.8g/cm3の範囲であると好ましい。見掛比重がこの範囲であるとブロッキング防止剤の分散性、ペレット成形性が良好である。本発明において見掛比重は、JIS−K6220−2001−7.7に基づいて、見掛比重測定装置で測定した値である。
【0025】
ブロッキング防止剤(B)は、その屈折率が、前記脂環式構造含有重合体樹脂(A)の屈折率との比がA/Bで0.98〜1.02の範囲にあると好ましく、0.99〜1.01の範囲であると特に好ましい。屈折率がこの範囲にあると樹脂組成物の透明性が良好である。本発明において樹脂の屈折率は、JIS−K7105に基づき測定した値である。また、ブロッキング防止剤の屈折率は、Larsenの油浸法に基づいて測定した値である。
ブロッキング防止剤(B)は、その強熱減量が、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下の範囲である。この範囲であると加工性が良好である。本発明において強熱減量は、JIS−K0067−4.2に基づいて測定した値である。
【0026】
ブロッキング防止剤(B)としては、金属の酸化物、フッ化物、窒化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、およびこれらの複合塩を挙げることができる。具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、ゼオライト、ケイソウ土、タルク、カオリナイト、セリサイト、モンモリナイト、ヘクトライト、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等が挙げられる。中でも、透明性、樹脂組成物中での分散性の点で、酸化ケイ素及びアルミノシリケートが好ましく、アルミノシリケートがより好ましい。なお、これらは、その表面をステアリン酸等の高級脂肪酸、チタン・カップリング剤、シラン・カップリング剤等の表面処理剤により処理されたものでもよい。
【0027】
アルミノシリケートとしては、結晶質又は非晶質の合成アルミノシリケー卜微粉末、天然鉱物のアロフェン、イモゴライト、ハロサイト等を粉砕・焼成して得られる微粉末等が挙げられる。
アルミノシリケートは、そのシリカ/アルミナ比(重量比)が、4/1〜1/3の範囲であると好ましく、3/1〜1/1の範囲であると特に好ましい。シリカ/アルミナ比がこの範囲であると、ブロッキング防止剤の樹脂への分散性及び樹脂組成物の透明性が良好となる。
【0028】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)とブロッキング防止剤(B)との比率(重量比)は、特に限定されないが、A/Bで99/1〜99.95/0.05であると好ましい。中でも99.5/0.5〜99.9/0.1の範囲であると好ましい。比率がこの範囲内であると、透明性、光沢性及び耐ブロッキング性が良好である。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、その他の公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で含有されていてもよい。その他の公知の添加剤としては、滑剤や分散助剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、防曇剤、顔料、有機物充填材、中和剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0030】
滑剤としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸; 脂肪酸とリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属とからなる脂肪酸金属塩; オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ステアリルエルカマイド、オレイルパルミトアマイド等の脂肪酸アマイドが挙げられる。中でも、脂肪酸金属塩が好ましく、特にステアリン酸カルシウムが好ましい。
分散助剤としては、シラン系又はチタン系カップリング剤等が挙げられる。
このような滑剤や分散助剤の量は特に限定されないが、脂環式構造含有重合体樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.4〜0.001重量部、より好ましくは0.1〜0.01重量部である。比率がこの範囲にあると、樹脂組成物中のブロッキング防止剤(B)の分散性、樹脂のやけ防止の点で良好である。
【0031】
潤滑剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート及びジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
【0032】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0033】
帯電防止剤としては、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤がある。分散剤としてはビスアミド系分散剤、ワックス系分散剤、有機金属塩系分散剤が挙げられる。難燃剤としては、リン酸系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マグネシウムの炭酸塩、赤リン等が挙げられる。
【0034】
その他の樹脂としては、非晶性樹脂や結晶性樹脂などが挙げられる。中でもフィルムの機械的強度、防湿性の観点からは特に結晶性樹脂を用いることが好ましい。
非晶性樹脂としては、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、及びこれらの水素添加物、非晶性ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル等が挙げられるが、フィルムの防湿性、機械強度等の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0035】
結晶性樹脂とは、上記非晶性樹脂の項において例示された一部の樹脂を含むものであるが、その区別は熱測定において結晶融点が観測され得るものとして示され区別される。その具体例としては、直鎖状、または分岐鎖状の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン系結晶性樹脂、直鎖状、または分岐鎖状の高密度ポリプロピレン、低密度ポリプロピレンなどのポリプロピレン系結晶性樹脂、および、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリメチルブテン、ポリメチルヘキセン、ポリビニルナフタレン、ポリキシレン等からなる群で示されるポリオレフィン系結晶性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリエステル等からなる群で示されるポリエステル系結晶性樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、ポリアミドイミド等からなる群で示されるポリアミド系結晶性樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からなる群で示されるフッ素系結晶性樹脂や、その他として、ロジン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、セルロース、アセタール樹脂、塩素化ポリエーテル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、液晶ポリマー(芳香族多環縮合系ポリマー)等の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、防湿性、機械強度の観点からポリオレフィン系結晶性樹脂、ポリエステル系結晶性樹脂、ポリアミド系結晶性樹脂が好ましく、ポリオレフィン系結晶性樹脂がより好ましく、ポリエチレン系結晶性樹脂および、ポリプロピレン系結晶性樹脂が特に好ましい。本発明において、結晶性樹脂としては樹脂全体が結晶化しているもののみではなく、部分的に結晶化しているものも含む。
【0036】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、SEBS、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、SEPSなどが挙げられる。
【0037】
本発明に用いる樹脂組成物はその調製法によって特に限定されない。
生産性の点で好ましい方法としては、例えば、脂環式構造含有重合体樹脂(A)に、ブロッキング防止剤(B)及び必要に応じて用いる添加剤を高濃度で混合し、混練してマスターバッチ化し、その後、該マスターバッチと脂環式構造含有重合体樹脂(A)を所望の割合で混合し、次いで溶融混練する方法が挙げられる。マスターバッチ中のブロッキング防止剤(B)、及び各種添加剤の濃度は、特に限定されないが、最終生成物中の濃度の10〜30倍であることが好ましく、15〜25倍であることがより好ましい。
【0038】
混合方法は特に限定されないが、例えば脂環式構造含有重合体樹脂(A)、ブロッキング防止剤(B)、及び必要に応じて用いる添加剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合器を用いて混合することによって、又は更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練することによって樹脂組成物が得られる。
樹脂組成物の形状は、特に限定されないが、フィルムを成形しやすいように、造粒あるいは粉砕、又はペレット化すると好ましい。
【0039】
また、本発明の樹脂組成物は、フィルムとすることもできる。
フィルムの成形方法は特に限定されないが、例えばTダイ法、インフレーション法、プレス成形法など公知の方法によって得られる。フィルムの厚さは特に限定されないが、5〜500μmの範囲であると好ましく、40〜300μmの範囲であるとより好ましい。
本発明の樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるフィルムは、透明性が高く、摩擦係数が小さい。更に、表面にブロッキング防止剤由来の凸凹(ブツ)が無いので、印刷性が良好である。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、未延伸フィルムとした後、一軸又は二軸延伸することができる。本発明の未延伸フィルムはブツがないので延伸によってもブツの拡大、発生がない。
未延伸フィルムを延伸する方法は、特に限定されず、例えばロール方式、テンター方式、及びチューブ方式のいずれの方式で行うこともできる。延伸温度は、未延伸フィルムを構成している脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも0〜60℃、好ましくは10〜40℃高い温度であることが好ましい。本発明においては、一軸又は二軸延伸のどちらでも良いが、一軸延伸(横方向;TD方向)に延伸するのが好ましい。延伸倍率は特に限定されないが、TD方向に1.2〜10.0倍の範囲であると好ましく、2.0〜6.0倍の範囲であると特に好ましい。一軸延伸においても必要に応じて、例えば長さ方向(縦方向;MD方向)にも、低い延伸倍率(例えば1.5倍以下)で延伸処理を施すことができる。
【0041】
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物の層(I)だけからなる単層フィルムであっても良いし、他の樹脂からなる層(II)を積層した積層フィルムでもよい。積層フィルムの積層態様は特に限定されないが、例えば層(I)/層(II)、層(I)/層(II)/層(I)、層(II)/層(I)/層(II)のように積層することもできる。中でも、フィルム表面に層(I)を積層することが好ましい。更に、前記積層フィルムは層(I)と層(II)の間に接着層を含んでも良い。
【0042】
前記層(II)に用いる他の樹脂としては、低密度又は高密度ポリエチレン系結晶性樹脂、ポリプロピレン系結晶性樹脂、ポリエステル系結晶性樹脂、ポリアミド系結晶性樹脂、フッ素系結晶性樹脂及び、その他の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系結晶性樹脂およびポリプロピレン系結晶性樹脂が、フィルムの防湿性、機械強度等のバランスの点で良好である。
接着層を構成する接着剤としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、酢酸ビニルーエチレン共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤、ポリアミド樹脂系ホットメルト接着剤、ニトリルゴムなどのゴム系接着剤などが挙げられる。
【0043】
前記積層構造のフィルムは、製法によって特に限定されない。
積層構造のフィルムが未延伸フィルムの場合は、例えば、(ア)前記樹脂組成物の単層フィルムに、他の樹脂からなるフィルムを貼合することによって、(イ)前記樹脂組成物の単層フィルムに他の樹脂からなる溶液を塗布して、乾燥することによって、又は、(ウ)前記樹脂組成物と他の樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
また、前記積層構造のフィルムが延伸フィルムの場合は、(ア)前記樹脂組成物の単層未延伸フィルムに、他の樹脂からなるフィルムを貼合した後延伸することによって、(イ)前記樹脂組成物の単層未延伸フィルムに、他の樹脂からなる溶液を塗布して乾燥した後延伸することによって、(ウ)前記樹脂組成物の単層フィルムを延伸し、それに他の樹脂からなる延伸又は未延伸のフィルムを貼合することによって、(エ)前記樹脂組成物の単層フィルムを延伸し、それに他の樹脂からなる溶液を塗布して乾燥することによって、又は、(オ)前記樹脂組成物と他の樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
【0044】
前記樹脂組成物の層(I)と他の樹脂からなる層(II)の厚さの比は特に限定されないが、例えば、層(I)/層(II)で1/16〜8/1であると好ましい。
積層フィルムの厚さは、5〜500μmの範囲であると好ましく、40〜300μmの範囲であると特に好ましい。厚さがこの範囲にあると、耐裂性、透明性が良好である。
【0045】
延伸フィルムは、熱収縮性フィルムとして用いることができる。
熱収縮性フィルムは、フィルムを構成する脂環式構造重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも20℃低い温度から80℃高い温度の範囲内、例えば、Tgが60℃の樹脂を用いたときは、40〜140℃の範囲の温度雰囲気下に保持した場合に熱収縮が起こり、その際の延伸方向の熱収縮率は通常30〜90%の範囲にあり、50〜80%の範囲であると好ましい。熱収縮率がこの範囲にあると、該フィルムの被包装体への密着性およびフィルムの諸物性が高度にバランスされる。
【0046】
本発明のフィルムは、防湿性、機械強度、透明性に優れ、摩擦係数が小さくロール状に巻き取った際にもフィルム同士の張り付きが少ない。更に、印刷を施す際に色抜けの原因となるブツが少ない。このような特性から本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の包装材料に適している。
特に熱収縮性を持たせたフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の熱収縮性包装材料;キャップ、栓等の開封防止用シール包装材料;ボトル、容器等の熱収縮性ラベル材料に適している。
更に、熱収縮性のフィルムは、耐熱温度が高く、透明性且つ収縮性も良好なため耐熱のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどのラベルにも好適である。
【0047】
熱収縮性のフィルムによって、被包装体を収縮包装する方法は特に限定はない。一般的な方法としては、当該フィルムによって被包装体を大まかに包み、次に熱風トンネル(以下、シュリンクトンネルという)を通して加熱するとフィルム自体に収縮力があらわれて収縮し、シートやフィルムが被包装体に密着して包装されるような方法が用いられる。
【0048】
本発明のフィルムには、印刷加工を施すことができる。印刷加工の方法は特に限定されず公知の方法を使用すればよく、例えば、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷が挙げられる。印刷に適用される印刷インキは、前記印刷の方法に応じて最適なものを選択して使用すればよい。例えば、凸版インキ、フレキソインキ、ドライオフセットインキ、グラビアインキ、グラビアオフセットインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ等が挙げられる。
【0049】
印刷インキは、色料(顔料、染料等が挙げられる)、ビヒクル(油脂、樹脂、及び溶剤との混合物で、油脂としては乾性油、半乾性油、不乾性油、加工油等;樹脂としては一般的な天然樹脂、合成樹脂;溶剤としては炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、水系溶剤が挙げられる)及び補助剤(コンパウンド類、ドライヤー類、その他分散剤、反応剤、消泡剤等の添加剤)からなるものが好ましく、印刷される本発明のフィルムを構成する脂環式構造含有重合体樹脂の種類、フィルムの使用目的に応じて、印刷インキの種類及び組成は適宜選択される。また、印刷する前に、インクの密着性を高めるために本発明のフィルムを表面処理することが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理、エンボス加工処理、サンドマット加工処理、梨地加工処理等が挙げられる。
【0050】
【実施例】
本発明を、参考例、及び実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)体積平均粒径
200mlビーカーに試料1gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下、超音波で2分間分散させる。この分散液をコールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製;TA−II型)法により、アパーチャーチューブ(50μm)を用いて測定し、得られた体積粒度累積分布図から体積平均粒子径(μm)を求める。
(2)粒度分布
(粒径0.7μm以下の粒子の体積%、粒径10〜15μmの粒子の体積%)200mlビーカーに試料1gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下、超音波で2分間分散させる。この分散液をコールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製;TA−II型)法によりアパーチャーチューブ(50μm)を用いて測定し、得られた体積粒度累積分布図から求める。
(粒径15μm以上の粒子の体積%)
200mlビーカーに試料1gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下、超音波で1分間分散させる。この分散液をレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製 島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3000)を用いて測定し、得られた体積粒度累積分布図から求める。必要であれば分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを0.1重量%の割合で添加する。
(3)見掛比重
試料5gをJIS−K−6220:2001−7.7に基づいて、見掛比重測定装置で測定する。
(4)屈折率
(樹脂)
JIS−K7105に基づいて測定する。
(ブロッキング防止剤)
予めアッベの屈折計を用いて、屈折率既知の溶媒を精度0.005で複数調製する。次いでLarsenの油浸法に従って、ブロッキング防止剤数mgをスライドガラスの上に採り、屈折率既知の溶媒を1滴加えて、カバーグラスをかけ、溶媒を十分浸漬させた後、光学顕微鏡でベッケ線を観察する。顕微鏡の筒を下げたときベッケ線が粒子の内側に移動し粒子が明るく見え、筒を上げたときベッケ線が外側に移動し粒子が暗く見えるときは溶媒の方が粉末よりも屈折率が大きい。粉末よりも屈折率の方が小さいときは逆の現象が見られる。複数の溶媒で測定し粉末より大きい屈折率をもつものと、小さいものとを選び出し、この二種の溶媒の屈折率の中間の値として粉末の屈折率を求める。
【0051】
(5)ガラス転移温度(Tg)
JIS−K7121に基づいて、示差走査熱量分析法(DSC)で昇温速度10℃/分で測定する。
(6)水素添加率
重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、1H−NMRを測定し算出する。
(7)二軸押出し性
脂環式構造含有重合体樹脂のペレットと、最終生成物中の濃度の20倍の濃度となる量のブロッキング防止剤及びその他の添加物とをブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、二軸押出機(東芝機械社製TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32)を使用し、スクリュー回転数200rpm、樹脂温度230℃、フィードレート20kg/時間の条件で混練し、次いでストランド(棒状の溶融樹脂)を押し出し、水冷しながら、ペレタイザーにてカットし、マスターバッチのペレット(M)を得る。その際の、押し出し性、ペレットの成形性を目視観察により以下の基準で判定した。
○;ペレットが成形できる。
×;ペレットが成形できない。
(8)ヤケ異物
脂環式構造含有熱可塑性樹脂のペレット及びマスターバッチのペレット(M)をブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥する。次いで、スクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備え、Tダイの手前に溶融樹脂を通すようにしたそれぞれ40、80、120メッシュのフィルター3枚を設けた混練機を有するハンガーマニホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、ダイリップを0.5mm、溶融樹脂温度を220℃、Tダイの温度230℃、Tダイの幅300mm、キャストロール温度60℃、冷却ロール温度50℃の条件で、厚さ100μmのフィルムを2時間連続して押出し成形し、ダイス部のヤケ異物の有無を目視で観察する。ヤケ異物とは、メヤニ状の有色物のことである。
(9)フィルムの厚み
マイクロゲージを用いて測定する。
【0052】
(10)透明性
フィルム(厚さ100μm)をJIS−K7136に基づいてヘイズメーター(日本電色社製:NDH 200A)で測定する。ヘイズ値(%)が小さいと透明性が良好であることを示す。
(11)摩擦係数
フィルム(厚さ100μm)をJIS−K7125に基づいて、摩擦試験機(ヘイドン社製:HEIDON 14D)を用いて、静摩擦係数および動摩擦係数を測定する。数値が小さいと耐ブロッキング性が良好であることを示す。
(12)ブツ
フィルム(厚さ100μm)を縦210mm、横297mmのシートに切断し、10枚のシートを光学顕微鏡で観察してブツの個数を数え、シート1枚あたりのブツの平均個数を計算する。本明細書でブツとは、ブロッキング防止剤に由来するシート上の凹凸である。
【0053】
(参考例1)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)160部と、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン、以下、「NB」と略記する。)40部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、併行して2時間かけて連続的に添加しながら重合し、更に1時間かけて重合した。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
【0054】
次いで、前記反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/NB開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去し、次いで前記水素添加物100部あたり0.1部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(吉富製薬社製;トミノックスTT)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、次いで水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを得た。このペレット化された開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは70℃、比重は1.01、屈折率は、1.52であった。
【0055】
(実施例1)
参考例1で得られたペレット100部、ブロッキング防止剤B1(アルミノシリケート:体積平均粒径1.7μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.001体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.65g/cm3、屈折率1.51)8.09部、ステアリン酸カルシウム1.13部、ワックス(花王株式会社製 花王ワックス85P)4.41部を、ブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、2軸押出機(東芝機械社製;TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32)を使用し、スクリュー回転数200rpm、樹脂温度230℃、フィードレート20kg/時間)の条件で混練し、次いでストランドを押し出し、水冷しながら、ペレタイザーにてカットし、円柱状のペレット(M1)を得た。
ストランドの押し出し及びストランドのカットは良好であり、2軸押し出し性は良好であった。
【0056】
参考例1で得られたペレット95部及びペレット(M1)5部を、ブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、スクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備え、Tダイの手前に溶融樹脂を通すようにしたそれぞれ40、80、120メッシュのフィルター3枚を設けた混練機を有するハンガーマニホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、ダイリップを0.5mm、溶融樹脂温度を220℃、Tダイの温度230℃、Tダイの幅300mm、キャストロール温度60℃、冷却ロール温度50℃の条件で、厚さ100μmのフィルム(F1)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B2(アルミノシリケート:体積平均粒径1.0μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.001体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.60g/cm3、屈折率1.51)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M2)及びフィルム(F2)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B3(アルミノシリケート:体積平均粒径2.0μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.007体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.75g/cm3、屈折率1.50)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M3)及びフィルム(F3)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B4(アルミノシリケート:体積平均粒径1.9μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.12体積%、15μm以上の粒子0.01体積%、見掛比重0.67g/cm3、屈折率1.50)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M4)及びフィルム(F4)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B5(酸化ケイ素:体積平均粒径2.0μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.080体積%、15μm以上の粒子0.02体積%、見掛比重0.80g/cm3、屈折率1.47)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M5)及びフィルム(F5)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
(比較例3)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B6(酸化ケイ素:体積平均粒径2.9μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.008体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.29g/cm3、屈折率1.47)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M5)を得ようとしたが、ストランドが脆く、ペレットを形成できなかった。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から以下のことがわかる。本発明の脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物は、二軸押出性が良好であり、ヤケ異物がなかった。また、該樹脂組成物からなるフィルム(実施例1〜3)は、ブツがなく、かつ透明性が高く、動摩擦係数及び静摩擦係数が小さかった。
一方、ブロッキング防止剤として、体積平均粒径が0.8〜3.2μmの範囲にあるが、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満の範囲にないブロッキング防止剤を用いた場合(比較例1、2)は、フィルムにブツがあり、透明性も低かった。ブロッキング防止剤として、見掛比重が0.5g/cm3より小さい酸化ケイ素を用いた場合(比較例3)は、二軸押出性が悪く、ペレットを成形できなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、防湿性、機械強度、透明性に優れ、摩擦係数が小さくロール状に巻き取った際にもフィルム同士の張り付きが少ない。更に、印刷を施す際に色抜けの原因となるブツが少ない。このような特性から本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の包装材料に適している。
また、特に本発明の熱収縮性を持たせたフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の熱収縮性包装材料;キャップ、栓等の開封防止用シール包装材料;ボトル、容器等の熱収縮性ラベル材料に適している。
更に、本発明の樹脂組成物からなる熱収縮性フィルムは、耐熱温度が高く、透明性且つ収縮性も良好なため耐熱のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどのラベルにも好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性に優れた樹脂組成物に関し、さらに詳しくはフィルムに好適に供される透明性、印刷性に優れ、摩擦係数が小さい樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
包装材料として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系重合体や、ノルボルネン系重合体などに代表される脂環式構造含有重合体が用いられている。
中でも、脂環式構造含有重合体は、比重がポリエチレンテレフタレート(PET)より小さいことから、樹脂のリサイクルの際に水中でのPETとの分離が容易なため、ペットボトル等のシュリンクラベルに用いられてきている。
これらのポリオレフィン系材料や脂環式構造含有重合体からなるフィルムは、そのフィルム表面が平滑なため、フィルム同士が密着(ブロッキング)しやすいという問題があった。このブロッキング性を改良するために、二酸化ケイ素粉末やシリカアルミナ等のブロッキング防止剤を重合体に添加してフィルム表面に突起を形成させることが行われている。
特許文献1には、ポリプロピレンと、平均粒径が0.5〜10μmの二酸化ケイ素粉末と平均粒径が0.1〜5μmでかつ粒子径10μm以下の粒子が98重量%以上のアルミノシリケート粉末とを含有するポリプロピレン組成物が開示され、この組成物によって、耐ブロッキング性の良好なフィルムが提供できると述べられている。
特許文献2には、ポリスチレン系樹脂と、平均粒径が0.3〜2.0μmであり、且つ、平均粒径の3倍の粒径を有する成分が2重量%以下である球状アルミノシリケートとからなるポリスチレン系樹脂組成物が開示され、この組成物を成形してポリスチレン系延伸フィルムが提供されることが示されている。
また、特許文献3には、平均粒径が1〜6μm、特に2〜5μmである球形の二酸化ケイ素やケイ酸アルミニウム等のブロッキング防止剤を添加したシクロオレフィンポリマーが開示され、このポリマーを成形してポリオレフィンフィルムを得ることが示されている。
【特許文献1】
特開平5−9349号報
【特許文献2】
特開平8−157666号報
【特許文献3】
特開平9−272188号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報に記載されているフィルムに印刷を施すと、所々に印刷されない部分、すなわち、色抜けが発生することがわかり、さらなる改良が求められていた。従って、本発明の目的は、印刷性に優れるフィルムを与える樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、色抜けした部分のフィルム表面を精査した結果、色抜けがフィルム表面の円形状の凸凹(以下「ブツ」と略す)で引き起こされていることを見出した。そして、該ブツが、ブロッキング防止の為に添加したブロッキング防止剤の一次粒子及び一次粒子が凝集した二次粒子により発生し、フィルムの延伸によってブツの大きさが拡大する事を解明した。そこで本発明者は、ブロッキング防止剤と樹脂を更に検討し、その結果、特定の体積平均粒径と粒度分布を有するブロッキング防止剤(B)と脂環式構造含有重合体樹脂(A)とを含有する樹脂組成物により、上記目的を達成できることを見出し、この知見によって本発明を完成するに至った。
【0005】
かくして本発明によれば、
(1) 脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物、
(2)脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ノルボルナン構造以外の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(b)を含有してなり、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対して繰り返し単位(b)が10重量%以上である1記載の樹脂組成物、
(3)1又は2記載の樹脂組成物を少なくとも一層有するフィルム、及び
(4)1又は2記載の樹脂組成物を一軸又は二軸延伸してなる層を少なくとも一層有するフィルムがそれぞれ提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物は、脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなるものである。
【0007】
本発明の樹脂組成物は、脂環式構造含有重合体樹脂(A)とブロッキング防止剤(B)とを含んでなっている。
本発明で用いられる脂環式構造含有重合体とは、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)を有するものである。
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性及びフィルム成形性の各特性が高度にバランスされる。本発明に使用される脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)の割合がこの範囲にあると透明性および耐熱性が良好である。
【0008】
こうした脂環式構造含有重合体の具体例としては、
(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、(1)、(4)及びこれらの水素添加物が好ましい。
【0009】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、(ア)開環重合によって得られるものと(イ)付加重合によって得られるものに大別される。
(ア)開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ならびにこれらの水素添加物、(イ)付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0010】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0011】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、前記ノルボルネン系モノマーは、置換基を2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
中でも、ジシクロペンタジエンとノルボルネンの組み合わせ、ジシクロペンタジエンとテトラシクロドデセン誘導体の組み合わせ、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン及びメタノテトラヒドロフルオレンの組み合わせ、テトラシクロドデセンとメタノテトラヒドロフルオレンの組み合わせによる開環共重合体が好ましい。
【0012】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0013】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0014】
ノルボルネン系モノマー、又はこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
【0015】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、特にエチレンが特に好ましい。
【0016】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを共重合する場合は、共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0017】
脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対する、ノルボルナン構造以外の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(b)の割合は特に限定されないが、その割合が、10重量%以上であると好ましく、30重量%以上であるとより好ましく、50重量%以上であると特に好ましい。割合がこの範囲にあると防湿性、機械強度が良好である。
繰り返し単位(b)の割合の調整について以下に説明する。
ノルボルナンは、式(1)
【化1】
で表される二環系の橋かけ環式飽和炭化水素である。このような環構造をノルボルナン構造という。
ノルボルネンは、式(2)
【化2】
で表される二環系の橋かけ環式不飽和炭化水素(環状オレフィン)である。ノルボルネンが開環重合すると、式(3)
【化3】
で表される繰り返し単位が形成され、橋かけ環式構造がなくなり、主鎖に炭素−炭素二重結合が形成される。この二重結合を水素添加すると、飽和重合体が得られる。これに対して、ノルボルネンが付加重合すると、式(4)
【化4】
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、ノルボルナン構造を有することになる。
テトラシクロドデセンは、式(5)
【化5】
で表される環状オレフィンである。テトラシクロドデセンが開環重合すると、式(6)
【化6】
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、1個のノルボルナン構造を有することになる。テトラシクロドデセンが付加重合すると、式(7)
【化7】
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、2個のノルボルナン構造を有することになる。
このように、ノルボルネン系モノマーの種類と量、重合方式により、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対する繰り返し単位(b)の割合が決定される。
例えば、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水素添加物は、繰り返し単位中にノルボルナン構造を持たない。したがって、開環共重合とその水素添加物においては、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの共重合割合を調整することにより、繰り返し単位(a)全体に対する繰り返し単位(b)の割合を調節することができる。ノルボルネン系モノマーの付加共重合体の場合は、例えば、共重合モノマーのシクロオレフィンなどの共重合割合を調節することにより、繰り返し単位(b)の割合を調節する。
【0018】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0019】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素添加物などを用いることができる。
【0020】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素添加物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0021】
脂環式構造含有重合体(A)の重量平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。分子量がこの範囲であると、樹脂の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好ましい。本発明において重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値である。
【0022】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)は、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以上であると好ましく、60℃〜90℃の範囲であると特に好ましい。Tgがこの範囲であると、耐熱性・耐久性の点で好ましい。本発明においてTgは、JIS−K7121に基づいて示差走査熱量分析法(DSC)で測定した値である。
【0023】
ブロッキング防止剤(B)は、その体積平均粒径が、0.8〜3.2μmの範囲にあり、中でも、その体積平均粒径が1.0〜2.2μmの範囲であると好ましい。体積平均粒径がこの範囲であると樹脂組成物の外観が良好である。本発明において体積平均粒径は、コールターカウンター法(パーチャーチューブ50μm)に基づいて測定した体積粒度累積分布図から求めた値である。
ブロッキング防止剤(B)は、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を持つものであり、中でも、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.005体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.005体積%未満の粒度分布を持つものであると好ましい。粒度分布がこの範囲であると樹脂組成物の表面にブロッキング防止剤由来の凸凹が発生せず、外観、印刷性が良好である。本発明において粒度分布は、
粒径0.7μm以下の粒子、及び粒径10〜15μmの粒子については、
コールターカウンター法によりアパーチャーチューブ(50μm)を用いて測定した値である。
粒径15μm以上の粒子については、
レーザー回折法により、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製 島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3000)を用いて測定した値である。
【0024】
ブロッキング防止剤(B)は、その見掛比重が、0.5〜0.8g/cm3の範囲である。中でも0.6〜0.8g/cm3の範囲であると好ましい。見掛比重がこの範囲であるとブロッキング防止剤の分散性、ペレット成形性が良好である。本発明において見掛比重は、JIS−K6220−2001−7.7に基づいて、見掛比重測定装置で測定した値である。
【0025】
ブロッキング防止剤(B)は、その屈折率が、前記脂環式構造含有重合体樹脂(A)の屈折率との比がA/Bで0.98〜1.02の範囲にあると好ましく、0.99〜1.01の範囲であると特に好ましい。屈折率がこの範囲にあると樹脂組成物の透明性が良好である。本発明において樹脂の屈折率は、JIS−K7105に基づき測定した値である。また、ブロッキング防止剤の屈折率は、Larsenの油浸法に基づいて測定した値である。
ブロッキング防止剤(B)は、その強熱減量が、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下の範囲である。この範囲であると加工性が良好である。本発明において強熱減量は、JIS−K0067−4.2に基づいて測定した値である。
【0026】
ブロッキング防止剤(B)としては、金属の酸化物、フッ化物、窒化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、およびこれらの複合塩を挙げることができる。具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、ゼオライト、ケイソウ土、タルク、カオリナイト、セリサイト、モンモリナイト、ヘクトライト、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等が挙げられる。中でも、透明性、樹脂組成物中での分散性の点で、酸化ケイ素及びアルミノシリケートが好ましく、アルミノシリケートがより好ましい。なお、これらは、その表面をステアリン酸等の高級脂肪酸、チタン・カップリング剤、シラン・カップリング剤等の表面処理剤により処理されたものでもよい。
【0027】
アルミノシリケートとしては、結晶質又は非晶質の合成アルミノシリケー卜微粉末、天然鉱物のアロフェン、イモゴライト、ハロサイト等を粉砕・焼成して得られる微粉末等が挙げられる。
アルミノシリケートは、そのシリカ/アルミナ比(重量比)が、4/1〜1/3の範囲であると好ましく、3/1〜1/1の範囲であると特に好ましい。シリカ/アルミナ比がこの範囲であると、ブロッキング防止剤の樹脂への分散性及び樹脂組成物の透明性が良好となる。
【0028】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)とブロッキング防止剤(B)との比率(重量比)は、特に限定されないが、A/Bで99/1〜99.95/0.05であると好ましい。中でも99.5/0.5〜99.9/0.1の範囲であると好ましい。比率がこの範囲内であると、透明性、光沢性及び耐ブロッキング性が良好である。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、その他の公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で含有されていてもよい。その他の公知の添加剤としては、滑剤や分散助剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、防曇剤、顔料、有機物充填材、中和剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0030】
滑剤としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸; 脂肪酸とリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属とからなる脂肪酸金属塩; オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ステアリルエルカマイド、オレイルパルミトアマイド等の脂肪酸アマイドが挙げられる。中でも、脂肪酸金属塩が好ましく、特にステアリン酸カルシウムが好ましい。
分散助剤としては、シラン系又はチタン系カップリング剤等が挙げられる。
このような滑剤や分散助剤の量は特に限定されないが、脂環式構造含有重合体樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.4〜0.001重量部、より好ましくは0.1〜0.01重量部である。比率がこの範囲にあると、樹脂組成物中のブロッキング防止剤(B)の分散性、樹脂のやけ防止の点で良好である。
【0031】
潤滑剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート及びジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
【0032】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0033】
帯電防止剤としては、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤がある。分散剤としてはビスアミド系分散剤、ワックス系分散剤、有機金属塩系分散剤が挙げられる。難燃剤としては、リン酸系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マグネシウムの炭酸塩、赤リン等が挙げられる。
【0034】
その他の樹脂としては、非晶性樹脂や結晶性樹脂などが挙げられる。中でもフィルムの機械的強度、防湿性の観点からは特に結晶性樹脂を用いることが好ましい。
非晶性樹脂としては、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、及びこれらの水素添加物、非晶性ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル等が挙げられるが、フィルムの防湿性、機械強度等の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0035】
結晶性樹脂とは、上記非晶性樹脂の項において例示された一部の樹脂を含むものであるが、その区別は熱測定において結晶融点が観測され得るものとして示され区別される。その具体例としては、直鎖状、または分岐鎖状の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン系結晶性樹脂、直鎖状、または分岐鎖状の高密度ポリプロピレン、低密度ポリプロピレンなどのポリプロピレン系結晶性樹脂、および、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリメチルブテン、ポリメチルヘキセン、ポリビニルナフタレン、ポリキシレン等からなる群で示されるポリオレフィン系結晶性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリエステル等からなる群で示されるポリエステル系結晶性樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、ポリアミドイミド等からなる群で示されるポリアミド系結晶性樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からなる群で示されるフッ素系結晶性樹脂や、その他として、ロジン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、セルロース、アセタール樹脂、塩素化ポリエーテル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、液晶ポリマー(芳香族多環縮合系ポリマー)等の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、防湿性、機械強度の観点からポリオレフィン系結晶性樹脂、ポリエステル系結晶性樹脂、ポリアミド系結晶性樹脂が好ましく、ポリオレフィン系結晶性樹脂がより好ましく、ポリエチレン系結晶性樹脂および、ポリプロピレン系結晶性樹脂が特に好ましい。本発明において、結晶性樹脂としては樹脂全体が結晶化しているもののみではなく、部分的に結晶化しているものも含む。
【0036】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、SEBS、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、SEPSなどが挙げられる。
【0037】
本発明に用いる樹脂組成物はその調製法によって特に限定されない。
生産性の点で好ましい方法としては、例えば、脂環式構造含有重合体樹脂(A)に、ブロッキング防止剤(B)及び必要に応じて用いる添加剤を高濃度で混合し、混練してマスターバッチ化し、その後、該マスターバッチと脂環式構造含有重合体樹脂(A)を所望の割合で混合し、次いで溶融混練する方法が挙げられる。マスターバッチ中のブロッキング防止剤(B)、及び各種添加剤の濃度は、特に限定されないが、最終生成物中の濃度の10〜30倍であることが好ましく、15〜25倍であることがより好ましい。
【0038】
混合方法は特に限定されないが、例えば脂環式構造含有重合体樹脂(A)、ブロッキング防止剤(B)、及び必要に応じて用いる添加剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合器を用いて混合することによって、又は更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練することによって樹脂組成物が得られる。
樹脂組成物の形状は、特に限定されないが、フィルムを成形しやすいように、造粒あるいは粉砕、又はペレット化すると好ましい。
【0039】
また、本発明の樹脂組成物は、フィルムとすることもできる。
フィルムの成形方法は特に限定されないが、例えばTダイ法、インフレーション法、プレス成形法など公知の方法によって得られる。フィルムの厚さは特に限定されないが、5〜500μmの範囲であると好ましく、40〜300μmの範囲であるとより好ましい。
本発明の樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるフィルムは、透明性が高く、摩擦係数が小さい。更に、表面にブロッキング防止剤由来の凸凹(ブツ)が無いので、印刷性が良好である。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、未延伸フィルムとした後、一軸又は二軸延伸することができる。本発明の未延伸フィルムはブツがないので延伸によってもブツの拡大、発生がない。
未延伸フィルムを延伸する方法は、特に限定されず、例えばロール方式、テンター方式、及びチューブ方式のいずれの方式で行うこともできる。延伸温度は、未延伸フィルムを構成している脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも0〜60℃、好ましくは10〜40℃高い温度であることが好ましい。本発明においては、一軸又は二軸延伸のどちらでも良いが、一軸延伸(横方向;TD方向)に延伸するのが好ましい。延伸倍率は特に限定されないが、TD方向に1.2〜10.0倍の範囲であると好ましく、2.0〜6.0倍の範囲であると特に好ましい。一軸延伸においても必要に応じて、例えば長さ方向(縦方向;MD方向)にも、低い延伸倍率(例えば1.5倍以下)で延伸処理を施すことができる。
【0041】
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物の層(I)だけからなる単層フィルムであっても良いし、他の樹脂からなる層(II)を積層した積層フィルムでもよい。積層フィルムの積層態様は特に限定されないが、例えば層(I)/層(II)、層(I)/層(II)/層(I)、層(II)/層(I)/層(II)のように積層することもできる。中でも、フィルム表面に層(I)を積層することが好ましい。更に、前記積層フィルムは層(I)と層(II)の間に接着層を含んでも良い。
【0042】
前記層(II)に用いる他の樹脂としては、低密度又は高密度ポリエチレン系結晶性樹脂、ポリプロピレン系結晶性樹脂、ポリエステル系結晶性樹脂、ポリアミド系結晶性樹脂、フッ素系結晶性樹脂及び、その他の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系結晶性樹脂およびポリプロピレン系結晶性樹脂が、フィルムの防湿性、機械強度等のバランスの点で良好である。
接着層を構成する接着剤としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、酢酸ビニルーエチレン共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤、ポリアミド樹脂系ホットメルト接着剤、ニトリルゴムなどのゴム系接着剤などが挙げられる。
【0043】
前記積層構造のフィルムは、製法によって特に限定されない。
積層構造のフィルムが未延伸フィルムの場合は、例えば、(ア)前記樹脂組成物の単層フィルムに、他の樹脂からなるフィルムを貼合することによって、(イ)前記樹脂組成物の単層フィルムに他の樹脂からなる溶液を塗布して、乾燥することによって、又は、(ウ)前記樹脂組成物と他の樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
また、前記積層構造のフィルムが延伸フィルムの場合は、(ア)前記樹脂組成物の単層未延伸フィルムに、他の樹脂からなるフィルムを貼合した後延伸することによって、(イ)前記樹脂組成物の単層未延伸フィルムに、他の樹脂からなる溶液を塗布して乾燥した後延伸することによって、(ウ)前記樹脂組成物の単層フィルムを延伸し、それに他の樹脂からなる延伸又は未延伸のフィルムを貼合することによって、(エ)前記樹脂組成物の単層フィルムを延伸し、それに他の樹脂からなる溶液を塗布して乾燥することによって、又は、(オ)前記樹脂組成物と他の樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
【0044】
前記樹脂組成物の層(I)と他の樹脂からなる層(II)の厚さの比は特に限定されないが、例えば、層(I)/層(II)で1/16〜8/1であると好ましい。
積層フィルムの厚さは、5〜500μmの範囲であると好ましく、40〜300μmの範囲であると特に好ましい。厚さがこの範囲にあると、耐裂性、透明性が良好である。
【0045】
延伸フィルムは、熱収縮性フィルムとして用いることができる。
熱収縮性フィルムは、フィルムを構成する脂環式構造重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも20℃低い温度から80℃高い温度の範囲内、例えば、Tgが60℃の樹脂を用いたときは、40〜140℃の範囲の温度雰囲気下に保持した場合に熱収縮が起こり、その際の延伸方向の熱収縮率は通常30〜90%の範囲にあり、50〜80%の範囲であると好ましい。熱収縮率がこの範囲にあると、該フィルムの被包装体への密着性およびフィルムの諸物性が高度にバランスされる。
【0046】
本発明のフィルムは、防湿性、機械強度、透明性に優れ、摩擦係数が小さくロール状に巻き取った際にもフィルム同士の張り付きが少ない。更に、印刷を施す際に色抜けの原因となるブツが少ない。このような特性から本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の包装材料に適している。
特に熱収縮性を持たせたフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の熱収縮性包装材料;キャップ、栓等の開封防止用シール包装材料;ボトル、容器等の熱収縮性ラベル材料に適している。
更に、熱収縮性のフィルムは、耐熱温度が高く、透明性且つ収縮性も良好なため耐熱のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどのラベルにも好適である。
【0047】
熱収縮性のフィルムによって、被包装体を収縮包装する方法は特に限定はない。一般的な方法としては、当該フィルムによって被包装体を大まかに包み、次に熱風トンネル(以下、シュリンクトンネルという)を通して加熱するとフィルム自体に収縮力があらわれて収縮し、シートやフィルムが被包装体に密着して包装されるような方法が用いられる。
【0048】
本発明のフィルムには、印刷加工を施すことができる。印刷加工の方法は特に限定されず公知の方法を使用すればよく、例えば、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷が挙げられる。印刷に適用される印刷インキは、前記印刷の方法に応じて最適なものを選択して使用すればよい。例えば、凸版インキ、フレキソインキ、ドライオフセットインキ、グラビアインキ、グラビアオフセットインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ等が挙げられる。
【0049】
印刷インキは、色料(顔料、染料等が挙げられる)、ビヒクル(油脂、樹脂、及び溶剤との混合物で、油脂としては乾性油、半乾性油、不乾性油、加工油等;樹脂としては一般的な天然樹脂、合成樹脂;溶剤としては炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、水系溶剤が挙げられる)及び補助剤(コンパウンド類、ドライヤー類、その他分散剤、反応剤、消泡剤等の添加剤)からなるものが好ましく、印刷される本発明のフィルムを構成する脂環式構造含有重合体樹脂の種類、フィルムの使用目的に応じて、印刷インキの種類及び組成は適宜選択される。また、印刷する前に、インクの密着性を高めるために本発明のフィルムを表面処理することが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理、エンボス加工処理、サンドマット加工処理、梨地加工処理等が挙げられる。
【0050】
【実施例】
本発明を、参考例、及び実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)体積平均粒径
200mlビーカーに試料1gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下、超音波で2分間分散させる。この分散液をコールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製;TA−II型)法により、アパーチャーチューブ(50μm)を用いて測定し、得られた体積粒度累積分布図から体積平均粒子径(μm)を求める。
(2)粒度分布
(粒径0.7μm以下の粒子の体積%、粒径10〜15μmの粒子の体積%)200mlビーカーに試料1gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下、超音波で2分間分散させる。この分散液をコールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製;TA−II型)法によりアパーチャーチューブ(50μm)を用いて測定し、得られた体積粒度累積分布図から求める。
(粒径15μm以上の粒子の体積%)
200mlビーカーに試料1gを計り取り、これに脱イオン水150mlを加えて攪拌下、超音波で1分間分散させる。この分散液をレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製 島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3000)を用いて測定し、得られた体積粒度累積分布図から求める。必要であれば分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを0.1重量%の割合で添加する。
(3)見掛比重
試料5gをJIS−K−6220:2001−7.7に基づいて、見掛比重測定装置で測定する。
(4)屈折率
(樹脂)
JIS−K7105に基づいて測定する。
(ブロッキング防止剤)
予めアッベの屈折計を用いて、屈折率既知の溶媒を精度0.005で複数調製する。次いでLarsenの油浸法に従って、ブロッキング防止剤数mgをスライドガラスの上に採り、屈折率既知の溶媒を1滴加えて、カバーグラスをかけ、溶媒を十分浸漬させた後、光学顕微鏡でベッケ線を観察する。顕微鏡の筒を下げたときベッケ線が粒子の内側に移動し粒子が明るく見え、筒を上げたときベッケ線が外側に移動し粒子が暗く見えるときは溶媒の方が粉末よりも屈折率が大きい。粉末よりも屈折率の方が小さいときは逆の現象が見られる。複数の溶媒で測定し粉末より大きい屈折率をもつものと、小さいものとを選び出し、この二種の溶媒の屈折率の中間の値として粉末の屈折率を求める。
【0051】
(5)ガラス転移温度(Tg)
JIS−K7121に基づいて、示差走査熱量分析法(DSC)で昇温速度10℃/分で測定する。
(6)水素添加率
重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、1H−NMRを測定し算出する。
(7)二軸押出し性
脂環式構造含有重合体樹脂のペレットと、最終生成物中の濃度の20倍の濃度となる量のブロッキング防止剤及びその他の添加物とをブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、二軸押出機(東芝機械社製TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32)を使用し、スクリュー回転数200rpm、樹脂温度230℃、フィードレート20kg/時間の条件で混練し、次いでストランド(棒状の溶融樹脂)を押し出し、水冷しながら、ペレタイザーにてカットし、マスターバッチのペレット(M)を得る。その際の、押し出し性、ペレットの成形性を目視観察により以下の基準で判定した。
○;ペレットが成形できる。
×;ペレットが成形できない。
(8)ヤケ異物
脂環式構造含有熱可塑性樹脂のペレット及びマスターバッチのペレット(M)をブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥する。次いで、スクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備え、Tダイの手前に溶融樹脂を通すようにしたそれぞれ40、80、120メッシュのフィルター3枚を設けた混練機を有するハンガーマニホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、ダイリップを0.5mm、溶融樹脂温度を220℃、Tダイの温度230℃、Tダイの幅300mm、キャストロール温度60℃、冷却ロール温度50℃の条件で、厚さ100μmのフィルムを2時間連続して押出し成形し、ダイス部のヤケ異物の有無を目視で観察する。ヤケ異物とは、メヤニ状の有色物のことである。
(9)フィルムの厚み
マイクロゲージを用いて測定する。
【0052】
(10)透明性
フィルム(厚さ100μm)をJIS−K7136に基づいてヘイズメーター(日本電色社製:NDH 200A)で測定する。ヘイズ値(%)が小さいと透明性が良好であることを示す。
(11)摩擦係数
フィルム(厚さ100μm)をJIS−K7125に基づいて、摩擦試験機(ヘイドン社製:HEIDON 14D)を用いて、静摩擦係数および動摩擦係数を測定する。数値が小さいと耐ブロッキング性が良好であることを示す。
(12)ブツ
フィルム(厚さ100μm)を縦210mm、横297mmのシートに切断し、10枚のシートを光学顕微鏡で観察してブツの個数を数え、シート1枚あたりのブツの平均個数を計算する。本明細書でブツとは、ブロッキング防止剤に由来するシート上の凹凸である。
【0053】
(参考例1)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)160部と、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン、以下、「NB」と略記する。)40部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、併行して2時間かけて連続的に添加しながら重合し、更に1時間かけて重合した。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
【0054】
次いで、前記反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/NB開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去し、次いで前記水素添加物100部あたり0.1部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(吉富製薬社製;トミノックスTT)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、次いで水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを得た。このペレット化された開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは70℃、比重は1.01、屈折率は、1.52であった。
【0055】
(実施例1)
参考例1で得られたペレット100部、ブロッキング防止剤B1(アルミノシリケート:体積平均粒径1.7μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.001体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.65g/cm3、屈折率1.51)8.09部、ステアリン酸カルシウム1.13部、ワックス(花王株式会社製 花王ワックス85P)4.41部を、ブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、2軸押出機(東芝機械社製;TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32)を使用し、スクリュー回転数200rpm、樹脂温度230℃、フィードレート20kg/時間)の条件で混練し、次いでストランドを押し出し、水冷しながら、ペレタイザーにてカットし、円柱状のペレット(M1)を得た。
ストランドの押し出し及びストランドのカットは良好であり、2軸押し出し性は良好であった。
【0056】
参考例1で得られたペレット95部及びペレット(M1)5部を、ブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、スクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備え、Tダイの手前に溶融樹脂を通すようにしたそれぞれ40、80、120メッシュのフィルター3枚を設けた混練機を有するハンガーマニホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、ダイリップを0.5mm、溶融樹脂温度を220℃、Tダイの温度230℃、Tダイの幅300mm、キャストロール温度60℃、冷却ロール温度50℃の条件で、厚さ100μmのフィルム(F1)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B2(アルミノシリケート:体積平均粒径1.0μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.001体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.60g/cm3、屈折率1.51)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M2)及びフィルム(F2)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B3(アルミノシリケート:体積平均粒径2.0μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.007体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.75g/cm3、屈折率1.50)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M3)及びフィルム(F3)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B4(アルミノシリケート:体積平均粒径1.9μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.12体積%、15μm以上の粒子0.01体積%、見掛比重0.67g/cm3、屈折率1.50)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M4)及びフィルム(F4)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B5(酸化ケイ素:体積平均粒径2.0μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.080体積%、15μm以上の粒子0.02体積%、見掛比重0.80g/cm3、屈折率1.47)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M5)及びフィルム(F5)を得た。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
(比較例3)
ブロッキング防止剤B1に代えて、ブロッキング防止剤B6(酸化ケイ素:体積平均粒径2.9μm、0.7μm以下の粒子0.001体積%未満(測定限界値以下)、10〜15μmの粒子0.008体積%、15μm以上の粒子0.01体積%未満(測定限界値以下)、見掛比重0.29g/cm3、屈折率1.47)8.09部を用いる他は、実施例1と同様にしてペレット(M5)を得ようとしたが、ストランドが脆く、ペレットを形成できなかった。得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から以下のことがわかる。本発明の脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物は、二軸押出性が良好であり、ヤケ異物がなかった。また、該樹脂組成物からなるフィルム(実施例1〜3)は、ブツがなく、かつ透明性が高く、動摩擦係数及び静摩擦係数が小さかった。
一方、ブロッキング防止剤として、体積平均粒径が0.8〜3.2μmの範囲にあるが、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満の範囲にないブロッキング防止剤を用いた場合(比較例1、2)は、フィルムにブツがあり、透明性も低かった。ブロッキング防止剤として、見掛比重が0.5g/cm3より小さい酸化ケイ素を用いた場合(比較例3)は、二軸押出性が悪く、ペレットを成形できなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、防湿性、機械強度、透明性に優れ、摩擦係数が小さくロール状に巻き取った際にもフィルム同士の張り付きが少ない。更に、印刷を施す際に色抜けの原因となるブツが少ない。このような特性から本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の包装材料に適している。
また、特に本発明の熱収縮性を持たせたフィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の熱収縮性包装材料;キャップ、栓等の開封防止用シール包装材料;ボトル、容器等の熱収縮性ラベル材料に適している。
更に、本発明の樹脂組成物からなる熱収縮性フィルムは、耐熱温度が高く、透明性且つ収縮性も良好なため耐熱のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどのラベルにも好適である。
Claims (4)
- 脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
0.8〜3.2μmの範囲の体積平均粒径を有し、且つ、粒径が15μm以上の粒子が0.01体積%未満、10〜15μmの粒子が0.02体積%未満、及び0.7μm以下の粒子が0.01体積%未満の粒度分布を有し、且つ、0.5〜0.8g/cm3の範囲の見掛比重を有するブロッキング防止剤(B)とを含有してなる樹脂組成物。 - 脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ノルボルナン構造以外の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(b)を含有してなり、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対して繰り返し単位(b)が10重量%以上である請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の樹脂組成物を少なくとも一層有するフィルム。
- 請求項1又は2記載の樹脂組成物を延伸してなる層を少なくとも一層有するフィルム。
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