JP2005008546A - 殺菌消毒綿 - Google Patents
殺菌消毒綿Info
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Abstract
【解決手段】溶剤紡糸セルロース繊維を主体として構成された繊維シートに、薬液が含浸された殺菌消毒綿において、前記繊維シートは、多数の凸部と、該凸部間を繋ぐ凹部とを具備し、該凸部は該溶剤紡糸セルロース繊維相互間が緊密に交絡されて形成されており、一方、該凹部は隣接する該凸部間を繋ぐ溶剤紡糸セルロース繊維で形成されていると共に、該凸部に比べて単位面積当たりの溶剤紡糸セルロース繊維の量が少ない殺菌消毒綿。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚を殺菌消毒する際に用いる殺菌消毒綿に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、薬液を含浸させた脱脂綿は、注射する部位の皮膚を殺菌消毒するために用いられている。また、皮膚や粘膜等に付いた血、膿又は体液等を拭き取って、当該部位を殺菌消毒する際にも用いられている。脱脂綿が用いられる理由は、吸水性が高く薬液を吸収・保持しやすいこと、肌触りが良いこと、天然繊維であるコットン繊維からなるので人体に優しいこと等が挙げられる。
【0003】
薬液を含浸させた脱脂綿は、注射する部位の皮膚を殺菌消毒するだけであれば、特に問題無く使用することができるが、皮膚等に付いた血や膿等を拭き取り、殺菌消毒する場合には、使用しにくいということがあった。これは、脱脂綿の表面が平滑であるため、血や膿等を除去しにくいためである。また、脱脂綿は、脱脂綿繊維が単に集積されたものであるため、皮膚等を強く擦ると、脱脂綿繊維が脱落して皮膚等に付着するだけで、血や膿等は除去されにくいのである。
【0004】
一方、脱脂綿表面にエンボス加工を施して、圧縮部と非圧縮部とを形成させ。脱脂綿繊維の脱落を防止する殺菌消毒綿が実用新案文献1に開示されている。
【0005】
【実用新案文献1】
実開昭61−18149号公報
【0006】
本発明者等は、このようなエンボスされた脱脂綿であると、非圧縮部が凸部となり、圧縮部が凹部となって、脱脂綿表面に凹凸が形成されるので、皮膚等に付いた血や膿等を拭き取りやすくなるのではないかと考えた。
【0007】
しかし、エンボスされた脱脂綿に、薬液を含浸させると、圧縮部が膨らみ、脱脂綿表面の凹凸が消失しやすくなることが判明した。従って、皮膚等に付いた血や膿等を拭き取りやすくなるということは期待できなかった。また、エンボスされた脱脂綿であっても、脱脂綿繊維は単に集積されているだけであるため、脱脂綿繊維が脱落して皮膚等に付着しやすい点は、エンボスされていない脱脂綿と同様であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本件発明者等は、薬液を含浸させた状態で表面が凹凸を維持しており、しかも繊維の脱落が少ない殺菌消毒綿を得ることを課題として、種々研究を行った。その結果、繊維相互間を絡み合わせながら、繊維量の多い箇所と少ない箇所とを設け、多い箇所を凸部とし少ない箇所を凹部とすれば、上記した課題を解決しうることを見出し、さらに、殺菌消毒綿を構成する繊維として、特定の繊維を選択すると、繊維が脱落しにくくなることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、溶剤紡糸セルロース繊維を主体として構成された繊維シートに、薬液が含浸された殺菌消毒綿において、前記繊維シートは、多数の凸部と、該凸部間を繋ぐ凹部とを具備し、該凸部は該溶剤紡糸セルロース繊維相互間が緊密に交絡されて形成されており、一方、該凹部は隣接する該凸部間を繋ぐ溶剤紡糸セルロース繊維で形成されていると共に、該凸部に比べて単位面積当たりの溶剤紡糸セルロース繊維の量が少ないことを特徴とする殺菌消毒綿に関するものである。
【0010】
本発明に係る殺菌消毒綿は、繊維シートに薬液が含浸されてなるものである。本発明における繊維シートは、溶剤紡糸セルロース繊維を主体として構成されてなる。溶剤紡糸セルロース繊維とは、従来のビスコースレーヨンやキュプラレーヨンとは、基本的にその製造方法が異なり、得られる繊維の性能も異なるものである。すなわち、ビスコースレーヨン等は、セルロース原料を化学的に変化させて、それを分散溶解させた原液を紡糸して得られるものであるのに対し、溶剤紡糸セルロース繊維は、セルロース原料を化学的に変化させずに、特殊な溶媒に溶解させた原液或いはこの原液を乾燥させたチップを紡糸して得られるものである。これは、溶剤法によるセルロース繊維とも呼ばれ、高結晶性で高配向性であり、湿潤時における初期ヤング率の高いものである。例えば、コートルズ社(CourtauldsFibre Ltd.;イギリス)から「テンセル(Tencel)」或いはレンチング社(Lenzing AG;オーストリア)から「リヨセル(Lyocell)」なる商標で販売されている。また、繊維シートを構成する繊維のすべてが溶剤紡糸セルロース繊維からなるものであってもよいが、本発明の目的が損なわれない範囲で他の繊維が混合されていてもよい。
【0011】
繊維シートに含浸される薬液としては、殺菌消毒用に用いられているものであれば、どのようなものでも使用することができる。例えば、従来公知の日本薬局方イソプロパノール、エタノール、アクリノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、ヨードチンキ等の溶液乃至は水溶液等を用いることができる。また、薬液の含浸量も、従来と同程度で良く、例えば、繊維シートの自重に対して2.5〜7.5倍の含浸量が好ましく、特に5倍程度の含浸量が最も好ましい。
【0012】
繊維シートは、多数の凸部1と、凸部1,1,・・・間を繋ぐ凹部2とを具備するものである。凸部1は、溶剤紡糸セルロース繊維相互間が緊密に交絡されて形成されている。緊密に交絡されているとは、単に繊維が集積されているだけではなく、水流交絡法等によって、積極的に繊維が交絡していることを意味している。従って、凸部1において、溶剤紡糸セルロース繊維相互が固く結ばれており、繊維が脱落しにくくなっている。凸部1の形状は任意でよく、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形、菱形、線状、畝状等であってよい。
【0013】
多数の凸部1,1・・・は、凹部2によって繋がれている。凹部2は、隣接する凸部1,1を繋ぐ溶剤紡糸セルロース繊維3で形成されている。つまり、一本の溶剤紡糸セルロース繊維は、凸部1,1に跨がって存在しており、結果的に、凸部1,1間がこの溶剤紡糸セルロース繊維で繋がれた状態となっている。凹部2における繊維も、その相互間は一般的に交絡されている。そして、繊維シートは、全体としてシート状に形成されている。凹部2は、凸部1に比べて、単位面積当たりの溶剤紡糸セルロース繊維の量が少なくなっている。換言すれば、凸部1の単位面積当たりの溶剤紡糸セルロース繊維の量は、凹部2に比べて多くなっている。このような構成にするには、例えば、本来凹部2に存在した溶剤紡糸セルロース繊維を、凸部1に移動させることによって行うことができる。そして、このような構成になっているため、薬液を含浸させても、凹部2が膨らむことなく、薬液を含浸させた状態で表面の凹凸状態を維持することができるのである。なお、凹部2の一部には、溶剤紡糸セルロース繊維の存在しない開孔部があっても良い。開孔部があると、この開孔部に薬液を保持でき、保液性が向上すること、血や膿等を除去する場合には、この開孔部から血や膿等が外部へ通過する等の点から、好ましいものである。
【0014】
凸部1の大きさ(面積)は任意であるが、一定形状(例えば、4cm×4cmの正方形)の殺菌消毒綿に、数十個から数百個の凸部1,1・・・が存在する程度が良い。具体的には、一個一個の凸部1の面積が0.5〜6mm2であるのが好ましい。一個の凸部1の面積が0.5mm2未満であると、凸部1,1間の間隔が狭い場合表面が平滑な状態となり、また凸部1,1間の間隔が広い場合凸部1が有効に働かず、血や膿等の拭き取り性が低下する傾向が生じる。また、一個の凸部1の面積が6mm2を超えると、凹部2が少なくなって凹凸状態が低下し、血や膿等の拭き取り性が低下する傾向が生じる。なお、凸部1,1・・・の個数は、3〜25個/cm2程度であるのが好ましい。
【0015】
凸部1の高さも任意であるが、一般的には0.8mm以上であるのが好ましい。そして、凹部2の高さは、凸部1の高さよりも0.5mm以上低いことが好ましい。ここで、凸部1の高さとは、図3のh1で示した距離をいう。また、凹部2の高さとは、図3のh2で示した距離をいう。従って、h1≧0.8mmであり、h1−h2≧0.5mmということである。また、凸部1の高さと凹部2の高さの差を求める場合には、近接している凸部1と凹部2の高さの差を求める。更に、凸部1に近接している凹部2であっても、繊維が存在していない開孔部である場合もあるが、この場合、凹部2の高さは0mmとする。凹部2の高さが、凸部1の高さよりも0.5mm未満しか低くない場合には、凹凸状態が低下し、血や膿等の拭き取り性が低下する傾向が生じる。なお、凸部1の高さの上限については、特に限定しないが、繊維シートの目付等によっても左右されるので、目付、コストを考慮して、3mm程度であればよい。
【0016】
本発明に係る殺菌消毒綿は、例えば、以下の方法で得ることができる。まず、溶剤紡糸セルロース繊維が集積されてなる繊維ウェブを準備する。そして、繊維ウェブを孔開き支持体に坦持する。孔開き支持体としては任意のものを採用しうるが、例えば、メッシュ織物等を用いる。この後、繊維ウェブ側から高圧水流を施す。そうすると、高圧水流は繊維ウェブに衝突して、セルロース繊維に運動エネルギーを与える。この運動エネルギーにより、溶剤紡糸セルロース繊維は、相互に交絡しながら、孔開き支持体の孔方向へ移動する。この結果、孔開き支持体の孔部に対応した繊維ウェブの箇所が凸部となり、孔の開いていない非孔部に対応した繊維ウェブの箇所が凹部となった繊維シートが得られる。そして、この繊維シートに、従来公知の薬液を含浸させ所定の形状に裁断して、或いは所定の形状に裁断し従来公知の薬液を含浸させて、本発明に係る殺菌消毒綿が得られるのである。
【0017】
孔開き支持体の孔部の大きさは、得ようとする繊維シートの凸部の大きさに基づいて決定することができる。例えば、メッシュ織物を使用した場合には、一般的に、メッシュ織物の目開き(孔部)が6〜20メッシュ程度のものを用いる。目開きが6メッシュ未満であると、孔部が大きすぎて、高圧水流を施したとき、溶剤紡糸セルロース繊維が孔部から流出してしまい、繊維量の多い凸部が形成されにくくなる。また、目開きが20メッシュを超えると、孔部同士の間隔が狭すぎて、孔開き支持体の孔部に溶剤紡糸セルロース繊維が移動しにくくなり、凸部が得られにくくなる。
【0018】
高圧水流は、水を噴射孔から高圧力で噴射して得られるものである。具体的には、孔径0.05〜2.0mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.05〜10mmで一列又は複数列配置されている噴射装置を用い、水を噴射孔から1.9〜39.2MPaの圧力で噴射して得られるものである。従って、この高圧水流は大きな運動エネルギーを持っており、これが繊維ウェブに衝突すると、セルロース繊維の運動エネルギーに転換され、セルロース繊維が孔開き支持体の孔部に移動しながら、相互に交絡するのである。
【0019】
本発明に係る殺菌消毒綿は、従来公知の用途に用いることができ、例えば注射をする前の皮膚の殺菌消毒に用いられる。また、血、膿又は体液等が付着した皮膚等から、血や膿等を取り除きながら、その箇所を殺菌消毒するためにも用いられる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、特定の凸部と凹部を持つ繊維シートに薬液を含浸させた殺菌消毒綿は、その使用時において、繊維が脱落しにくく、しかも血や膿等を取り除きやすいとの知見に基づくものであるとして解釈されるべきである。
【0021】
実施例1
平均繊度1.7デシテックス、平均繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製 登録商標「リヨセル」)を用いて、ランダムカード機にて、目付125g/m2の繊維ウェブを準備した。この繊維ウェブを、目開き10メッシュのプラスチック製メッシュスクリーン〔プラスチック線を用い、平織組織にて製織されたメッシュ織物(粗目織物)〕上に坦持し、繊維ウェブ側から高圧水流を施した。高圧水流は、孔径0.1mmの噴射孔が孔間隔0.6mmで一列配置され、かつ、その列を三列備えた噴射装置を用い、脱脂綿ウェブの上方(即ち、金属製メッシュスクリーンの位置する反対側上方)30mmの位置から9.8MPaの圧力で水を噴射させて得られたものである。繊維ウェブに、この高圧水流を施すことにより、溶剤紡糸セルロース繊維はプラスチックメッシュスクリーンの孔部に移動しながら、相互に交絡し、孔部に対応する凸部と、非孔部に対応する凹部を持つ繊維シートが得られた。そして、繊維シートから過剰水分を除去し、乾燥した。その後、繊維シートを所定の形状に裁断し、日本薬局方イソプロパノールからなる薬液を、625g/m2含浸して、殺菌消毒綿を得た。
【0022】
実施例2
目開き10メッシュのプラスチック製メッシュスクリーンに代えて、目開き8メッシュのプラスチック製メッシュスクリーンを使用する他は、実施例1と同一の方法で殺菌消毒綿を得た。
【0023】
実施例3
目開き10メッシュのプラスチック製メッシュスクリーンに代えて、目開き6メッシュのプラスチック製メッシュスクリーンを使用する他は、実施例1と同一の方法で殺菌消毒綿を得た。
【0024】
実施例4
繊維ウェブの目付を80g/m2とした他は、実施例3と同一の方法で殺菌消毒綿を得た。
【0025】
実施例5
脱脂綿ウェブの目付を150g/m2とした他は、実施例3と同一の方法で殺菌消毒綿を得た。
【0026】
参考実施例1
目開き10メッシュのプラスチック製メッシュスクリーンに代えて、目開き25メッシュのプラスチック製メッシュスクリーンを使用する他は、実施例1と同一の方法で殺菌消毒綿を得た。
【0027】
実施例1〜5及び参考実施例1に係る方法で得られた繊維シートについて、凸部の高さ(h1)、凸部と凹部の高さの差(h1−h2)、凸部の面積、厚み、嵩密度、保液性及び毛羽立ち性を評価した。また、厚み及び嵩密度については、殺菌消毒綿の厚み及び嵩密度も評価した。この結果を表1に示した。
【0028】
ここで、上記各評価項目の測定方法は、以下のとおりである。
(1)凸部の高さ(h1)及び凹部の高さ(h2)
走査型電子顕微鏡(トプコン社製:型式ALPHA−254)を用い、繊維シートの断面写真を撮影した。そして、写真に基づき、図3に示したh1及びh2の距離を、各々10個測定し、その平均値をh1(mm)及びh2(mm)とした。更に、この値に基づき、h1−h2(mm)を算出して凸部と凹部の高さの差とした。
(2)凸部の面積
万能投影器(日本光学株式会社製:型式PROJECTOR V−12)を用い、繊維シート表面を観察し、凸部の面積を求めた。そして、50個の凸部の面積を求め、その平均値を凸部の面積(mm2)とした。例えば、凸部が長方形の場合、縦及び横の長さを測定し、縦×横で凸部の面積を求めた。
(3)厚み
(a)繊維シートの厚み:繊維シートから、試料幅10cm、試料長10cmの試料片を採取し、厚み測定器(株式会社大栄科学精機製作所製)にて、1.96kPaの圧力を印加して、厚みを測定した。そして、5個の試料片について厚みを求め、その平均値を繊維シートの厚みとした。
(b)殺菌消毒綿の厚み:殺菌消毒綿から、試料幅10cm、試料長10cmの試料片を採取し、繊維シートの場合と同様の方法で厚みを測定した。
(4)嵩密度
(a)繊維シートの嵩密度:上記で測定した繊維シートの厚みを用い、以下の式にて嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm3)=〔繊維シートの目付(g/m2)/繊維シートの厚み(mm)〕×1000
(b)殺菌消毒綿の嵩密度:上記で測定した殺菌消毒綿の厚みを用い、以下の式にて嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cc)=〔繊維シートの目付(g/m2)/殺菌消毒綿の厚み(mm)〕×1000
(5)保液性
繊維シートから、幅15cm、試料長15cmの試料片を採取し、この試料片の質量(X)を測定する。次いで、試料片を蒸留水中に5分間浸漬する。その後、試料片を取り出し、5分間吊り干した後の質量(Y)を測定した。そして、5個の試料片について、以下の式で保水率(質量%)を算出し、その平均値を保液性(質量%)とした。
保水率(質量%)=〔(Y−X)/X〕×100
(6)毛羽立ち性
繊維シートに水を200重量%含浸保持させた試料を準備した。この試料を用いて、学振型摩擦試験機にて、JIS L−1084 摩擦堅ろう度の記載の方法に準じ、50回の往復摩擦を繰り返した。この結果、試料表面の摩耗の状態を観察し、JIS L−1906 テーバ形法(摩耗による外観変化を見る方法)に記載の判定方法に準じ、限度写真と比較して等級付けを行い、5段階で毛羽立ち性を評価した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から分かるように、実施例1〜5及び参考実施例1に係る方法で得られた繊維シート及び殺菌消毒綿は、保液性及び毛羽立ち性が良好であり、使用時においても好適であり、また溶剤紡糸セルロース繊維の脱落が少なくなることが分かった。また、繊維シートの厚みと、繊維シートに薬液を含浸させた殺菌消毒綿の厚みとを比較すれば分かるように、薬液を含浸させても、その厚みが減少しにくい。これは、凸部において溶剤紡糸セルロース繊維が緊密に交絡されて形成されているからである。また、実施例1〜5と参考実施例1結果を対比すると、参考実施例1の場合は、凸部と凹部の高さの差及び凸部の面積が、実施例1〜5のものに比べて小さくなっている。これは、孔開き支持体として、実施例1〜5では比較的目開きの大きいものを採用し、一方、参考実施例1では比較的目開きの小さいものを採用したからである。即ち、目開きが大きいと、それだけ繊維が孔部に移動しやすく、高さの高い凸部となり、凸部の面積も大きくなるのである。また、このため、凸部と凹部との差も大きくなり、ここに薬液が保持されるので、保液性も良好となる。
【0031】
【作用及び発明の効果】
本発明に係る殺菌消毒綿は、凸部において、溶剤紡糸セルロース繊維が相互に緊密に交絡されているため、皮膚等を擦って使用する際でも、溶剤紡糸セルロース繊維の脱落が少ないという効果を奏する。そして、殺菌消毒綿を構成する溶剤紡糸セルロース繊維は、湿潤時における初期ヤング率が高いため、ウエット状態での耐摩耗性に優れ、使用の際に繊維がより脱落しにくい。また、凸部と凹部では、凸部の方が単位面積当たりの繊維の量が多くなっており、凹部では単位面積当たりの繊維の量が少なくなっている。従って、薬液を含浸させても、凹部が膨らみにくく、良好な凹凸状態を保つ。依って、皮膚等を擦って、皮膚等に付いた血や膿等を除去する際にも、その除去性にも優れるという効果を奏する。
【0032】
更に、本発明に係る殺菌消毒綿は、凸部と凹部の高さが一定の差を持っているので、この部分にも、ある程度薬液を保持でき、保液性を向上させることができる。そして、凸部の高さを凹部の高さよりも0.5mm以上高くすると、より保液性を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例に係る殺菌消毒綿の模式的平面図である。
【図2】図1に示した殺菌消毒綿のA−A線断面図である。
【図3】図2に示した断面図の一部拡大図であり、凸部と凹部の高さの意味を示したものである。
【符号の説明】
1 凸部
2 凹部
3 溶剤紡糸セルロース繊維
Claims (3)
- 溶剤紡糸セルロース繊維を主体として構成された繊維シートに、薬液が含浸された殺菌消毒綿において、前記繊維シートは、多数の凸部と、該凸部間を繋ぐ凹部とを具備し、該凸部は該溶剤紡糸セルロース繊維相互間が緊密に交絡されて形成されており、一方、該凹部は隣接する該凸部間を繋ぐ溶剤紡糸セルロース繊維で形成されていると共に、該凸部に比べて単位面積当たりの溶剤紡糸セルロース繊維の量が少ないことを特徴とする殺菌消毒綿。
- 一個一個の凸部の面積が0.5〜6mm2であり、該凸部の高さは0.8mm以上であり、凹部の高さは該凸部の高さよりも0.5mm以上低い繊維シートを用いる請求項1記載の殺菌消毒綿。
- 凹部の一部が、溶剤紡糸セルロース繊維が存在しない開孔部となっている繊維シートを用いる請求項1又は2記載の殺菌消毒綿。
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