JP6146718B2 - 人工血管の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、人工血管の製造方法に関し、より詳しくは、長期間開存させることが可能な人工血管の製造方法に関する。
人工血管は、例えば、手術の際に一時的に血液の流路を確保する用途や病変血管の代替血管としての用途に用いられる。
かかる人工血管の素材としては、ポリエステル、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)等が開発されている。
これらの中でも、人工血管の機能的要件(例えば、強度、弾力性等)を比較的満足する素材として、ポリエステル糸を用いて編物又は織物とし、これを管状に編成したものが市販されている。
ところが、ポリエステルやPTFEを用いた人工血管は、内径が6mm未満のいわゆる小口径人工血管の場合、開存率が著しく低くなるという欠点があり、実用化に至っていない。ここで、開存率とは、生体内に移植した場合の人工血管が開存している割合を意味する。すなわち、開存率が低いとは、人工血管が詰まり易いことを意味する。
ところで、近年、ポリエステルの代替素材として、外科用縫合糸として用いられている絹を用いた人工血管の開発が行われている。
例えば、絹フィブロイン糸が多層に組み紐編みされて形成された多層の筒状構造物が絹フィブロインで被覆されてなる小口径人工血管(例えば、特許文献1参照)、絹フィブロイン繊維が編、組、織及び絡から選ばれる1又は2以上の方法により巻かれてなる管状構造物の外壁表面に、平滑化処理を施して得られるセリシン除去された管状構造物(特許文献2参照)、絹フィブロイン溶解液を用いてエレクトロスピニング法により形成された絹ナノファイバーを、樹脂製チューブを被せた回転支持棒の周囲に収集させ、その後、支持棒を抜いて作製された管状構造物の製造方法(特許文献3参照)等が知られている。
特開2008−73408号公報 特開2009−279214号公報 特開2010−137041号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の絹を用いた人工血管は、内皮細胞が定着し、且つ血栓が形成され難くなる点で、ポリエステルからなる人工血管よりも優れているものの、開存率が十分とはいえない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間開存させることが可能な人工血管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、絹フィブロイン繊維をダブルラッセル編みにて管状とし、これを絹フィブロインで厚く表面を覆った、非クラック性の構成とし、且つ、所定の含水率を有するものとすることで、意外にも上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、(1)非クラック性の人工血管の製造方法であって、表面に絹セリシンが付着した絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とし、該絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成し、絹セリシンを除去して基部を得る工程と、該基部の表面を絹フィブロインで覆っスポンジ状の被覆部を形成する工程と、を含み、基部の表側部分の被覆部の厚みが0.8mm以上であり、人工血管の含水率が60%以上であるようにする、人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(2)人工血管のISO7198に準じて測定された透水率が70〜240ml/cm/minである上記(1)記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(3)人工血管の弾性率が0.05〜0.09N/mmである上記(1)又は(2)に記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(4)絹フィブロイン繊維には下撚りがかけられており、絹フィブロイン繊維束には上撚りがかけられている上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(5)上撚りの撚り数が、下撚りの撚り数よりも少ない上記(4)記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は(6)繭糸で構成される生糸を精練して、絹フィブロインの表面に絹セリシンが一部残存した絹フィブロイン繊維とする精練工程と、絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とする製糸工程と、絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成し管状体とする編成工程と、管状体に残存する絹セリシンを除去し、基部とする除去工程と、基部の表面に絹フィブロインで覆ったスポンジ状の被覆部を、基部の表側部分の被覆部の厚みが0.8mm以上となるように形成し、仮人工血管とするコーティング工程と、仮人工血管を純水中に浸漬する浸漬工程と、を備え、コーティング工程後、仮人工血管の湿潤状態を維持した状態で浸漬工程が行われる人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(7)浸漬工程が、仮人工血管を純水中に1時間以上浸漬することにより行われる上記(6)記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(8)浸漬工程が、人工血管の移植直前まで行われる上記(6)又は(7)に記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(9)コーティング工程が、基部を絹フィブロイン溶液に浸漬して凍結乾燥することにより行われる上記(6)〜(8)のいずれか1つに記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明は、(10)コーティング工程が、基部に、孔源材料を用いて絹フィブロインスポンジコーテングすることにより行われる上記(6)〜(8)のいずれか1つに記載の人工血管の製造方法に存する。
本発明の人工血管は、含水率を60%以上とすることにより、長期間開存させることが可能となる。
長期間開存させることが可能となる理由については定かではないが、含水率を上記範囲内とすることにより、生体移植時にコーティングされたスポンジ状の被覆部が移植時に基部表面からはがれることを防止し、且つ、移植後に人工血管のスポンジ状の被覆部の壁を酸素や水分及び生体物質がスムースに通過できるようになるためと推測される。
また、上記人工血管においては、ダブルラッセル編みの基部の内側の表面も、被覆部によって覆われるので、内皮細胞が定着しやすく、且つ血栓が形成され難くなる。
さらに、上記人工血管は、基部全体がスポンジ状の被覆部で覆われているので、U字状に曲げた場合であっても屈折しにくい。
このとき、弾性率が0.05〜0.09N/mmである場合、U字状に曲げた場合であってもより屈折しにくくなる。
さらにまた、上記人工血管は、被覆部を厚くし、非クラック性とすることにより、耐久性が向上する。ここで、非クラック性とは、例えば、人工血管の含水率を一時的に低下(例えば60%未満)させた場合に生じるひずみやクラックの発生が抑制されていることを意味する。
本発明の人工血管は、ISO7198に準じて測定された透水率が70〜240ml/cm/minである場合、スムースに移植することができ、移植後に器質化が進むという利点がある。
本発明の人工血管は、絹フィブロイン繊維には下撚りがかけられており、絹フィブロイン繊維束には上撚りがかけられている場合、絹フィブロイン繊維同士の適度な集束効果が得られ、編成時に断面が潰れることも抑制できる。
また、接触摩擦が低減化されるので、糸切れ、毛羽立ち等の問題を防止できる。
このとき、上撚りの撚り数が、下撚りの撚り数よりも少ない場合、回転トルクのない安定した状態の絹フィブロイン繊維束が得られる。
本発明の人工血管の製造方法によれば、上述した人工血管が得られるので、長期間開存させることが可能となる。
また、上記人工血管の製造方法においては、被覆部を厚くし、且つ、コーティング工程後、仮人工血管の湿潤状態を維持した状態で浸漬工程が行われるので、仮人工血管の含水率を一時的に低下(例えば60%未満)させた場合に生じるひずみやクラックの発生を抑制することができる。なお、浸漬工程が、人工血管の移植直前まで行われると、ひずみやクラックの発生を極力抑制した状態で、人工血管を移植できる。
本発明の人工血管の製造方法においては、浸漬工程における仮人工血管の純水中への浸漬を、1時間以上とする場合、純水が十分に仮人工血管の内部に浸透させることができ、また、得られる人工血管は乾燥されにくくなる。
図1(a)は、本実施形態に係る人工血管を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)の部分Pを示す拡大図である。 図2(a)は、(圧縮)弾性率を測定する装置を示す模式図であり、図2(b)は、図2(a)の写真である。 図3(a)は、吻合保持強度を測定する装置を示す模式図であり、図3(b)は、図3(a)の写真である。 図4は、多孔率を測定する装置を示す模式図である。 図5(a)は、周軸強度を測定する装置を示す模式図であり、図5(b)は、図5(a)の写真である。 図6は、本実施形態に係る人工血管の製造方法を示すフローチャートである。 図7は、ダブルラッセル機のオサ、ニードル、編成糸の位置関係を示した部分説明図である。 図8は、ダブルラッセル編みにおけるダブルデンビー組織を拡大して示した組織図である。 図9は、ダブルラッセル編みにおける逆ハーフ組織を拡大して示した組織図である。 図10は、実施例の評価3で得られた固体13C DD/MASスペクトルである。 図11は、実施例の評価4で得られたH縦緩和時間(T)と横緩和時間(T)の2次元スペクトルである。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1(a)は、本実施形態に係る人工血管を模式的に示す斜視図である。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る人工血管10は、絹フィブロインからなり、管状の基部1と、該基部1の表面を覆ったスポンジ状の被覆部2とを備える。
人工血管10は、例えば、両端を血管に縫合することにより、基部1内を血液が流通するようになっている。
人工血管10は、生体適合性に優れる絹フィブロインからなるので、体内に移植した場合、内皮細胞が定着しやすく、且つ血栓が形成され難くなる。
基部1は、絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とし、該絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成したものである。
ダブルラッセル機にかける前の絹フィブロイン繊維は、表面に絹セリシンが付着した構造となっているので、絹セリシンにより、絹フィブロインが保護される。これにより、例えば、編成時において、ガイドやニードル等との接触があっても絹フィブロインの損傷が抑制されるので、結果として強度が優れる高品質な人工血管が得られる。
また、絹セリシンは、保湿性に優れるので、潤滑剤の役割を果たす。このため、編成時における糸切れや毛羽立ち等の問題も防止することができる。
絹フィブロイン繊維束は、絹フィブロイン繊維が複数本合わされて束となったものであり、ダブルラッセル機によるダブルラッセル編みにて管状に編成される。ダブルラッセル編みにすることにより、従来の絹からなる人工血管では得られない、ほつれ難さ、弾力性、柔軟性を得ることができる。
そして、ダブルラッセル編みで管状に編成された後、絹セリシンを除去することにより、基部1が形成される。なお、製造方法の詳細については後述する。
人工血管10においては、絹フィブロイン繊維には下撚りがかけられており、絹フィブロイン繊維を複数本合わせた絹フィブロイン繊維束には上撚りがかけられている。すなわち、下撚りがかけられた絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とし、これに上撚りがかけられている。なお、絹フィブロイン繊維にかける下撚りと、絹フィブロイン繊維束にかける上撚りとは逆向きとなっている。
絹フィブロイン繊維に下撚りがかけられていると、絹フィブロイン繊維同士の適度な集束効果が得られるので、絹フィブロイン繊維束としやすい利点がある。
また、編成時に断面が潰れることを抑制でき、絹フィブロイン繊維同士の接触摩擦も低減化されるので、糸切れ、毛羽立ち等の問題も防止できる。
絹フィブロイン繊維束には上撚りがかけられていると、強度が向上すると共に、上記同様、絹フィブロイン繊維束同士の接触摩擦も低減化されるので、糸切れ、毛羽立ち等の問題も防止できる。
このとき、絹フィブロイン繊維束にかける上撚りの撚り数が、絹フィブロイン繊維にかける下撚りの撚り数よりも少ないことが好ましい。この場合、回転トルクのない安定した状態の絹フィブロイン繊維束が得られる。
被覆部2は、基部1の裏側及び表側の表面を絹フィブロインで覆ったものである。なお、絹フィブロインにセリシンやその他の脂肪分が含まれている場合は、これらを除去して用いる。
除去方法は、特に限定されないが、例えば、マルセル石鹸を用いて、煮沸洗浄を行えばよい。
被覆部2は、絹フィブロインを基部1に付与することによって形成される。このとき、基部1は、ダブルラッセル編みにより編成されているので、絹フィブロイン水溶液が編み目を通過して、基部1の裏側の表面に達し易くなっている。これにより、基部1の裏側の表面がスムースになるので、内皮細胞がより定着しやすく、且つ血栓がより形成され難くなる。なお、製造方法の詳細については後述する。
人工血管10は、スポンジ状の被覆部2を備えるので、屈曲性が向上する。例えば、人工血管10をU字状に曲げた場合であっても屈曲が維持され、屈折しにくい。
これにより、人工血管10を屈曲する位置に移植した場合であっても、屈折して血液の流通が滞ることを抑制できる。
人工血管10において、被覆部2の厚みは、基部の表側部分の被覆部の厚みH1が0.8mm以上とする(図1(b)参照)。基部の表側部分の被覆部の厚みH1が0.8mm未満であると、孔が少なくなり閉塞率が向上してしまう欠点がある。
また、人工血管10は、非クラック性となっている。すなわち、ひずみやクラックの発生が抑制されている。なお、人工血管10を非クラック性とするためには、乾燥させないことが好ましい。具体的には、含水率を60%未満としないことが好ましい。
一度含水率を低下させると、後に含水率を60%以上としたとしても、ひずみやクラックが生じることになる。
このように、人工血管10は、被覆部を厚くし、且つ非クラック性とすることにより、耐久性が向上する。
人工血管10は、含水率が60%以上であり、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。特に、飽和状態が最も好ましい。
ここで、含水率とは、含水した人工血管の重量から十分に乾燥させた人工血管の重量を引いた値を、含水した人工血管の重量で割ることによって算出される。
含水率が60%未満であると、長期間開存させることができないという欠点がある。
人工血管10は、ISO7198に準じて測定された透水率が70〜240ml/cm/minであることが好ましい。
透水率が70ml/cm/min%未満であると、透水率が上記範囲内にある場合と比較して、移植後に器質化が進みにくいという欠点があり、透水率が240ml/cm/min%を超えると、透水率が上記範囲内にある場合と比較して、移植後に血液がもれる恐れがあるという欠点がある。
人工血管10は、(圧縮)弾性率が0.05〜0.09N/mmであることが好ましい。
ここで、(圧縮)弾性率は、図2(a)及び図2(b)に示すように、一対の圧縮台A1,A2を用いて測定される。すなわち、下の圧縮台A2に長手方向の長さが1cmのサンプルP(管状の人工血管)を長手方向が水平となるように載置し、上の圧縮台A1を稼動セル5N、降下速度2mm/minで降下させ、サンプルPの内径の25%まで上の圧縮台A1が圧縮したときの値から算出される。
弾性率は、0.05%未満であると、弾性率が上記範囲内にある場合と比較して、U字状に曲げた場合、屈折しやすくなる欠点があり、弾性率が0.09%を超えると、弾性率が上記範囲内にある場合と比較して、縫合し難くなる欠点がある。
人工血管10は、吻合保持強度が4.9N以上であることが好ましく、4.9〜6.5Nであることがより好ましい。
ここで、吻合保持強度とは、図3(a)及び図3(b)に示すように、長手方向の長さが2cmのサンプルP(管状の人工血管)を長手方向が垂直となるようにクリップで挟んで台に固定し、吻合糸Q(手術用糸)をサンプルPの端から2mmのところに吻合して吻合部P1とし、吻合糸の吻合部P1から2cm先を吻合部P1から離れる方向に、稼動セル100N、速度3mm/minで引っ張ったときの破断時点での強度から算出される。
吻合保持強度は、4.9N未満であると、吻合保持強度が上記範囲内にある場合と比較して、吻合中に破断する恐れがある。
人工血管10は、多孔率が66〜77%であることが好ましい。
ここで、多孔率とは、全体の体積のうち、孔の部分(空隙の部分)の占める割合を意味する。例えば、図4に示すように、ヘキサンをメスシリンダーに入れ、その量(V1)を測り、その中にサンプルPを入れて、500hPaの減圧下に10分置いた後、その全体量(V2)を測る。そして、サンプルPを取り除き、残存するヘキサンの量(V3)を測る。そして、下記計算式にて、多孔率を算出することができる。
ε(多孔率)(%)=(V1−V2)/(V2−V3)×100
多孔率は、66%未満であると、多孔率が上記範囲内にある場合と比較して、内皮細胞の定着性が不十分となる恐れがあり、多孔率が78%を超えると、多孔率が上記範囲内にある場合と比較して、強度が不十分となる恐れがある。
人工血管10は、周軸強度が30N以上であることが好ましく、30〜48Nであることがより好ましい。
ここで、周軸強度とは、図5(a)及び図5(b)に示すように、長手方向の長さが5mmのサンプルPの内部に、二本の棒B1,B2(例えば、六角レンチ等)を挿入し、棒B1,B2を互いに反対方向に、稼動セル100N又は1kN、測定速度2mm/minで引っ張ったときの破断時点での強度から算出される。
周軸強度は、30N未満であると、周軸強度が上記範囲内にある場合と比較して、破れ易くなる。
人工血管10は、含水率を保持するために、純水で満たされた袋の中に保存することが好ましい。なお、人工血管10の移植は、含水率を保持した状態で行われる。
本実施形態に係る人工血管10は、大口径人工血管とすることもでき、内径が6mm未満の小口径人工血管とすることもできる。なお、人工血管のみならず、人工気管、ステントグラフト、その他生体の管状構造物の代用品としても用いることができる。
次に、人工血管10の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る人工血管の製造方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、人工血管10の製造方法は、繭糸で構成される生糸を精練して、絹フィブロインの表面に絹セリシンが一部残存した絹フィブロイン繊維とする精練工程S1と、絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とする製糸工程S2と、絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成し管状体とする編成工程S3と、管状体に残存する絹セリシンを除去し、基部1とする除去工程S4と、基部の表面に絹フィブロインで覆ったスポンジ状の被覆部2を形成し、仮人工血管とするコーティング工程S5と、仮人工血管を純水中に浸漬する浸漬工程S6と、を備える。
本実施形態に係る人工血管の製造方法によれば、人工血管10が得られるので、長期間開存させることが可能となる。
以下、各工程について更に詳細に説明する。なお、上述した人工血管の説明と重複する部分は説明を省略する。
(精練工程)
精練工程S1は、繭糸で構成される生糸を精練して、絹フィブロインの表面に絹セリシンが一部残存した絹フィブロイン繊維とする工程である。
繭糸は、蚕が吐口から吐出する糸であり、一対の絹フィブロインが絹セリシンで覆われた芯鞘構造となっている。
かかる繭糸から表面の絹セリシンが一部残存した絹フィブロイン繊維が得られる。なお、残存させる絹セリシンの重量は、絹フィブロインを保護する観点から、全重量の20〜40%であることが好ましい。
精練の方法としては、特に限定されないが、酵素を用いることが好ましい。かかる酵素としては、プロテアーゼが挙げられる。
精練をした後は、洗浄工程や乾燥工程を行うことが好ましい。これにより、汚れや無駄なセリシンを除去することができ、乾燥によるカビ等の発生も防止できる。
(製糸工程)
製糸工程S2は、絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とする工程である。
絹フィブロイン繊維には下撚りをかけ、絹フィブロイン繊維束には上撚りをかけることが好ましい。
具体的には、絹フィブロイン繊維に、左撚りで1100t/mの下撚りをかける。
そして、下撚りをかけた絹フィブロイン繊維を少なくとも2本合わせて、右撚りで900t/mの上撚りをかける。これにより、いわゆる諸撚りの絹フィブロイン繊維束が得られる。なお、上記した撚り加工の範囲としては、後述する撚り効果の観点から、下撚りは900t/m〜1200t/m、上撚りは、700t/m〜1000t/mが好ましく採用される。
ここで、下撚りと上撚りの撚り方向を逆にするとともに上撚り数を下撚り数より少なくすることが好ましい。この場合、回転トルクのない安定した状態の絹フィブロイン繊維束が得られる。なお、上撚り数を下撚り数よりどの程度少なくするかについては、回転トルクのない最も安定した状態となる数に決定される。
また、撚りをかけることにより、編成時に断面が潰れることを抑制でき、絹フィブロイン繊維同士の接触摩擦も低減化されるので、糸切れ、毛羽立ち等の問題も防止できる。これにより、内径が6mm以下のいわゆる小口径人工血管であっても製造することが可能となる。
(編成工程)
編成工程S3は、絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成し、管状体とする工程である。
ここで、「ダブルラッセル編み」とは、ダブルラッセル機によって織られ、弾力のある繊維を柱状になるように編み込む編み方を意味する。ダブルラッセル編みを施すことにより、従来の織物に比べて、ほつれ難さ、弾力性、柔軟性が向上するという利点がある。
ここで、絹フィブロイン繊維束を用いたダブルラッセル編みの例について説明する。
図7は、ダブルラッセル機のオサ、ニードル、編成糸の位置関係を示した部分説明図である。
図7に示すように、絹フィブロイン繊維束を編成糸Y(Y1〜Y6)として使用し、6枚オサのダブルラッセル機R(28ゲージ)により、管状体を編成する。なお、ゲージとは1インチ(2.54cm)間に存在するニードルNの本数である。
図8は、ダブルラッセル編みにおけるダブルデンビー組織を拡大して示した組織図である。
図8に示すように、編組織としては、ダブルデンビー組織B(オサL1で1−0/1−2を、オサL3で1−2/1−0を編成)を採用している。なお、ダブルデンビー組織Bは、デンビー組織Dを2枚同時編成して得られる。
図7に戻り、オサL1、L3で編成糸Y1、Y3を制御し、フロントニードルFNによりダブルデンビー組織Bのフロント編地K1を編成する。
そして、オサL4、L6で編成糸Y4、Y6を制御して、バックニードルBNによりダブルデンビー組織Bのバック編地K2が編成される。
このようにそれぞれ編成された2枚のダブルデンビー組織Bの編地K1、K2をオサL2、L5によって制御される編成糸Y2、Y5により連結して管状の管状体Wが形成される。
このダブルデンビー組織Bの場合は、編成時にニードルからニードルへと編成糸を振るので上述した撚り効果や被覆効果が更に発揮できる。
(除去工程)
除去工程S4は、管状体に残存する絹セリシンを除去し、基部1とする工程である。すなわち、除去工程S4においては、管状体の製造工程においては付着させていたセリシンを、完全に除去する。
除去方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。例えば、マルセル石鹸と炭酸ナトリウムとの混合水溶液を100℃に加熱し、管状体を入れ、撹拌しながら数時間煮沸洗浄し、その後、炭酸ナトリウム水溶液、蒸留水の順序で、共に煮沸洗浄し、乾燥することにより、セリシンが除去された基部1が得られる。なお、これらの煮沸洗浄は複数回繰り返し行ってもよい。
(コーティング工程)
コーティング工程S5は、基部の表面に絹フィブロインで覆ったスポンジ状の被覆部2を、基部の表側部分の被覆部2の厚みH1が0.8mm以上となるように形成し、仮人工血管とする工程である。なお、被覆部2の厚みH1については、上述したことと同様であるので説明を省略する。
例えば、コーティング工程S5は、基部1を絹フィブロイン溶液に浸漬して、基部1の裏側及び表側の表面に、絹フィブロインを付着させ、凍結乾燥することにより行われる。
ここで、絹フィブロイン溶液は、絹セリシンを除いた後、絹フィブロイン繊維やスポンジ、フィルムをリチウムブロマイドや塩化カルシウムのような中性塩に溶解後、透析によって中性塩を除去することにより得られる。
または、コーティング工程S5は、基部1に、孔源と絹フィブロインの混合液をコーティングすることにより行われる。このとき、該混合液は、基部1の編み目を通過して、基部1の裏側の表面にも達する。その後、凍結させ、次いで、水中に十分に浸漬することによって孔源材料を除去すれば、コーティング部分は、絹のスポンジとなる。かかる孔源材料としては、例えば、ポリグリコール類等が挙げられる。
なお、両工程における絹フィブロイン溶液には、さらにヘパリンなどの抗血栓剤を含有させることもできる。
また、コーティング工程S5を経た基部1は、その後、120℃20分間でのオートクレーブ滅菌を施してもよい。
コーティング工程S5を施すことにより、基部1の表面にスポンジ状(多孔質状)の被覆部2が形成される。
(浸漬工程)
浸漬工程S6は、コーティング工程S5後、仮人工血管の湿潤状態を維持した状態で、仮人工血管を純水中に浸漬する工程である。
コーティング工程S5後、仮人工血管の湿潤状態を維持するため、速やかに浸漬工程S6を行うことにより、仮人工血管の含水率を一時的に低下(例えば60%未満)させた場合に生じるひずみやクラックの発生を抑制することができる。
浸漬工程S6は、例えば、純水で満たされた袋の中に浸漬することにより行われる。
純水に浸漬される期間は、特に限定されないが、1時間以上であることが好ましく、1時間〜1週間であることがより好ましい。浸漬される期間が1時間未満であると、浸漬される期間が上記範囲内にある場合と比較して、十分な含水率とならない場合があり、浸漬される期間が1週間を超えると、浸漬される期間が上記範囲内にある場合と比較して、人工血管表面の絹スポンジが取れてしまうか硬化する恐れがある。
浸漬工程S6は、人工血管10の移植直前まで行われることが好ましい。この場合、ひずみやクラックの発生を極力抑制した状態で、人工血管10を移植できる。
これらの工程により、上述した含水率を有する人工血管10が得られる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る人工血管10においては、絹フィブロイン繊維には下撚りがかけられており、絹フィブロイン繊維を複数本合わせた絹フィブロイン繊維束には上撚りがかけられているが、必ずしも必須の構成ではない。
本実施形態に係る人工血管10は、屈曲性を向上させるために、蛇腹加工等を施すことも可能である。
また、湿潤状態を保つために、グリセリンでさらにコーティングされていてもよい。
本実施形態に係る人工血管10の製造方法において、図8にダブルラッセル編みにおけるダブルデンビー組織を示したが、これに限定されず、デンビー組織であってもよく、逆ハーフ組織等であってもよい。
例えば、図9に示す逆ハーフ組織H(オサL4で1−2/1−0を、オサL6で1−0/2−3を編成)は、デンビー組織Dとコード組織Cとで形成される組織でダブルデンビー組織Bに比べてコード組織CのシンカーループS1がデンビー組織DのシンカーループS2に比べて1針分だけ長く、その分、密な編地が得られ、管状体Wとして使用する場合には血液の漏出防止等に効果がある。
この逆ハーフ組織Hの場合は、編成時におけるニードルへの編成糸の振り方が、前記デンビー組織に比べて大きくなるので、一層撚り効果や被覆効果が発揮される。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1,2及び比較例1,2)
まず、水に、繭糸で構成される生糸と、プロテアーゼ(「Esperase」(商品名);ノボザイムズ ジャパン株式会社製)とを加え、温和な条件下で精練を行い、絹フィブロインの表面に絹セリシンが一部残存した絹フィブロイン繊維を得た(精練工程)。このとき、残存した絹セリシンの重量は、全重量の10〜15%であった。
洗浄及び乾燥した後、絹フィブロイン繊維に、左撚りで1100t/mの下撚りをかけ、その絹フィブロイン繊維を30本合わせて絹フィブロイン繊維束とし、更に、右撚りで900t/mの上撚りをかけ、絹フィブロイン繊維束を得た(製糸工程)。
次に、絹フィブロイン繊維束を、図8に示すダブルデンビー組織の通りに、ダブルラッセル編みにて管状に編成し、管状体を得た(編成工程)。
次に、管状体を、95℃に加熱した、12w/v%マルセル石鹸と8w/v%炭酸ナトリウムとの混合水溶液に入れ、120分煮沸し、その後2w/v%炭酸ナトリウム水溶液で10分煮沸し、更に95℃に加熱した蒸留水中で洗浄する操作を3回、温水で洗浄する操作を3回、行うことにより、管状体に残存する絹セリシンが除去された基部1を得た(除去工程)。
次に、絹フィブロインを、9モルの中性塩水溶液(臭化リチウム、塩化リチウム、塩化カルシウム又はチオシアン酸リチウム)に溶解し、その後、透析により、中性塩を除去することにより、絹フィブロイン溶液を得た。
そして、基部1を、4w/v%濃度の絹フィブロイン溶解液に常圧下で30分間浸漬し、基部1の裏側及び表側の表面に、絹フィブロインを付着させ、−20℃で1時間放置した。それを凍結乾燥機に一晩入れた後、水とともにパウチに入れ、オートクレーブで滅菌後、蒸留水中に保管することにより被覆部2が形成された仮人工血管を得た(コーティング工程)。
次に、湿潤状態を維持するため、直ぐに、仮人工血管を純水に浸漬させた。浸漬時間を調整することにより、口径3.5mmのサンプルを得た(浸漬工程)。得られたサンプルの物性データを表1に示す。
(実施例3)
上述したコーティング工程の代わりに、基部1を、4w/v%濃度の絹フィブロイン水溶液にポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを重量比で1:1となるように混合したコーティング溶液に常圧下で10分間浸漬し、基部1の裏側及び表側の表面に、絹フィブロインを付着させ、−20℃で1晩放置した。室温で解凍後、水中に3日間浸漬しポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを除去することにより被覆部2を形成したこと以外は実施例1と同様にして、口径3.5mmのサンプルを得た。得られたサンプルの物性データを表1に示す。
(比較例3)
浸漬工程を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、口径3.5mmのサンプルを得た。得られたサンプルの物性データを表1に示す。
(表1)
Figure 0006146718
(評価1)
実施例1〜3及び比較例1,2で得られたサンプルを犬の頚動脈に移植する手術を行い、2週間経過後の開存率をエコーにて評価した。評価は、開存しているものを「○」、開存しているものの閉塞のおそれがあるものを「△」、閉塞しているものを「×」とした。得られた結果を表2に示す。
(評価2)
実施例1〜3及び比較例1,2で得られたサンプルを犬の頚動脈に移植する手術を行い、開存期間を測定した。得られた結果を表2に示す。
(表2)
Figure 0006146718
(実施例4)
生糸の代わりに、アミノ酸であるAla、Tyr、Gly及びSerの炭素を13C、水素を重水素でマーキングした同じ組成の生糸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、口径3.5mmのサンプルを得た。なお、マーキングは、[3−13C]Tyr及び[3−13C]Serを人工飼料に混ぜ、5齢期の家蚕に経口投与することによって行った。
(比較例4)
浸漬工程を行わないこと以外は、実施例4と同様にして、口径3.5mmのサンプルを得た。
(評価3)
実施例4のサンプル(含水状態)及び比較例4のサンプル(乾燥状態)に対し、絹の局所構造や運動性の変化について調査した。具体的には、両サンプルに対し、Bruker Biospin Avance DSX400 NMR装置を用いて、固体13C DD/MASスペクトルを測定した。得られた結果を図10に示す。図10中、「wet」は実施例4で得られたサンプルを用いて測定した結果であり、「dry」は比較例4で得られたサンプルを用いて測定した結果である。
図10に示すように、実施例4で得られたサンプルにおいては、比較例4の得られたサンプルにおけるブロードな成分に加え、Ala−Cβ、Tyr−Cβ、Gly−Cα、Ser−Cβにシャープなピークが認められた。
これは、実施例4で得られたサンプルが、構造中に水がアクセスしやすい部位を有していることを意味する。
また、セリン残基は主に結晶領域に存在し、チロシン残基は半結晶領域に存在することから、その部位は、半結晶領域だけでなく、結晶領域にも存在することを意味する。
したがって、これらのことから、本発明の人工血管は、容易に含水率60%以上とすることができ、また、浸漬工程を経ることで、効果的に水分を保持できることがわかった。
(評価4)
実施例4のサンプル(含水状態)に対し、絹中における水の運動性について調査した。具体的には、実施例4のサンプルに重水を浸漬させ、Varian Unity 200 NMR装置を用いて、H縦緩和時間(T)と横緩和時間(T)の2次元スペクトルを測定した。得られた結果を図11に示す。図11中、各ピークは、重水の量(logスケール)を示し、上部に行くほど多いことを意味する。
図11に示すように、実施例4で得られたサンプルにおいては、系中に4種類の水分子が存在することが確認された。すなわち、絹と最も強く相互作用し運動が束縛された状態の重水は、T=0.14s、T=0.01s、相関時間τc=2.2×10−8sであった。
これは、実施例4で得られたサンプルが、多くの水と相互作用していることを意味する。
したがって、このことから、本発明の人工血管は、確実に水と相互作用するので、含水率60%以上とすること、また、浸漬工程を経ることが重要であることがわかった。
以上より、本実施形態に係る人工血管によれば、長期間開存させることが可能であることを確認できた。
本発明の人工血管は、手術の際に一時的に血液の流路を確保する用途や病変血管の代替血管としての用途に用いられる。
また、本発明の人工血管は、大口径人工血管とすることもでき、内径が6mm未満の小口径人工血管とすることもできる。
本発明の人工血管によれば、長期間開存させることが可能となる。
1・・・基部
2・・・被覆部
10・・・人工血管
A1・・・上の圧縮台
A2・・・下の圧縮台
B・・・ダブルデンビー組織
B1,B2・・・棒
BN・・・バックニードル
C・・・コード組織
D・・・デンビー組織
FN・・・フロントニードル
H・・・逆ハーフ組織
H1・・・厚み
K1・・・フロント編地
K2・・・バック編地
L1〜L6・・・オサ
N・・・ニードル
P・・・サンプル
P1・・・吻合部
Q・・・吻合糸
R・・・ダブルラッセル機
S1・・・コード組織のシンカーループ
S2・・・デンビー組織のシンカーループ
W・・・管状体
Y(Y1〜Y6)・・・編成糸

Claims (10)

  1. 非クラック性の人工血管の製造方法であって、
    表面に絹セリシンが付着した絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とし、該絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成し、前記絹セリシンを除去して基部を得る工程と、
    該基部の表面を絹フィブロインで覆っスポンジ状の被覆部を形成する工程と、
    含み
    前記基部の表側部分の被覆部の厚みが0.8mm以上であり、
    前記人工血管の含水率が60%以上であるようにする、人工血管の製造方法。
  2. 前記人工血管のISO7198に準じて測定された透水率が70〜240ml/cm/minである請求項1記載の人工血管の製造方法。
  3. 前記人工血管の弾性率が0.05〜0.09N/mmである請求項1又は2に記載の人工血管の製造方法。
  4. 前記絹フィブロイン繊維には下撚りがかけられており、
    前記絹フィブロイン繊維束には上撚りがかけられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法。
  5. 前記上撚りの撚り数が、前記下撚りの撚り数よりも少ない請求項4記載の人工血管の製造方法。
  6. 繭糸で構成される生糸を精練して、絹フィブロインの表面に絹セリシンが一部残存した絹フィブロイン繊維とする精練工程と、
    前記絹フィブロイン繊維を複数本合わせて絹フィブロイン繊維束とする製糸工程と、
    前記絹フィブロイン繊維束をダブルラッセル編みにて管状に編成し管状体とする編成工程と、
    前記管状体に残存する前記絹セリシンを除去し、基部とする除去工程と、
    前記基部の表面に絹フィブロインで覆ったスポンジ状の被覆部を、前記基部の表側部分の前記被覆部の厚みが0.8mm以上となるように形成し、仮人工血管とするコーティング工程と、
    前記仮人工血管を純水中に浸漬する浸漬工程と、
    を備え、
    前記コーティング工程後、前記仮人工血管の湿潤状態を維持した状態で前記浸漬工程が行われる人工血管の製造方法。
  7. 前記浸漬工程が、前記仮人工血管を前記純水中に1時間以上浸漬することにより行われる請求項6記載の人工血管の製造方法。
  8. 前記浸漬工程が、前記人工血管の移植直前まで行われる請求項6又は7に記載の人工血管の製造方法。
  9. 前記コーティング工程が、前記基部を絹フィブロイン溶液に浸漬して凍結乾燥することにより行われる請求項6〜8のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法。
  10. 前記コーティング工程が、前記基部に、孔源材料を用いて絹フィブロインスポンジコーテングすることにより行われる請求項6〜8のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法。
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