JP2005008471A - 複合酸化物粉末の製造方法、複合酸化物粉末、誘電体磁器組成物、及び積層型電子部品 - Google Patents

複合酸化物粉末の製造方法、複合酸化物粉末、誘電体磁器組成物、及び積層型電子部品 Download PDF

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【課題】微粒かつ正方晶性の高い高純度の複合酸化物粉末を製造することができるようにする。
【解決手段】Ca変性チタン酸バリウム((Ba1−xCa)TiO)等の複合酸化物粉末を製造する場合、混合・粉砕工程1で、セラミック素原料を湿式で混合・粉砕し、その後乾燥工程2を経て仮焼工程3で仮焼処理が施されるが、斯かる仮焼工程3で、仮焼合成反応の反応開始温度(例えば、400℃)から仮焼最高温度(例えば、1100℃)に到達するまでの時間、昇温速度を30℃/min以上に設定して仮焼処理を行なう。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複合酸化物粉末の製造方法、複合酸化物粉末、誘電体磁器組成物、及び積層型電子部品に関し、より詳しくは、セラミックコンデンサ等の電子部品材料に使用される複合酸化物粉末の製造方法、該製造方法により製造された複合酸化物粉末、該複合酸化物粉末を主成分とする誘電体磁器組成物、及び該誘電体磁器組成物を使用して製造された積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、電子部品用材料として、一般式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末が広く知られており、その中でもBaTiO(チタン酸バリウム)粉末は、積層セラミックコンデンサ等のセラミックコンデンサ用材料として、広く使用されている。
【0003】
この種のBaTiOの製法としては、従来より、BaCO(炭酸バリウム)とTiO(二酸化チタン)とを混合し、仮焼合成して製造する固相法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1では、ボールミルを使用してBaCOとTiOとを湿式で混合粉砕し、得られたスラリーを乾燥した後、プッシャー型電気炉やロータリーキルンを使用して仮焼処理を行ない、これにより、BaTiOを製造している。
【0005】
【非特許文献1】
佐々木喬一著「チタン酸バリウムとその複合粒子の製造法とプロセス」粉体工学会誌Vol.34 No.11(1997) p.39−40
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記積層セラミックコンデンサでは、小型化・大容量化や低コスト化の観点から、誘電体セラミック層(以下、「誘電体層」という)の薄層化が求められており、また、内部電極材料についてもAgやPd等の貴金属材料に代えてNiやCu等の卑金属材料が使用されるようになってきている。
【0007】
そして、誘電体層の薄層化に伴い、誘電体層を形成するBaTiO等の複合酸化物粉末には、微粒かつ正方晶性の高いことが要求される。
【0008】
通常、誘電体層となるべきセラミック層には、特性改善や焼結性向上等を図る観点から、希土類元素やケイ素化合物等種々の添加物が含有されるが、複合酸化物粉末の正方晶性が低い場合、卑金属材料を内部電極に用いて還元雰囲気で焼成すると、前記添加物の複合酸化物粉末への固溶が過剰に進行し、このため静電容量の温度特性が悪化したり、セラミック粒子の異常粒成長が生じ、信頼性の低下を招く。
【0009】
一方、正方晶性が高くても複合酸化物粉末の平均粒径が大きくなると、セラミック粒子の平均粒径も大きくなるため、厚さ5μm以下の薄層化された積層セラミックコンデンサでは信頼性が低下する。
【0010】
したがって、薄層化された積層セラミックコンデンサを得るためには、誘電体層を形成する複合酸化物粉末が微粒かつ高正方晶性であることが要求される。
【0011】
しかしながら、上記非特許文献1に記載されているような従来の固相法では、プッシャー型電気炉やロータリーキルンを使用して仮焼処理を行なっているため、仮焼処理時間が長く、複合酸化物粉末の粒径を優先して微粒化した場合は正方晶化性が低くなる。このため還元雰囲気で共焼成した場合に、前記添加物の複合酸化物粉末への固溶が過剰に進行し、その結果、静電容量の温度特性が悪化したり、セラミック粒子の異常粒成長が生じて信頼性低下を招くという問題点があった。しかも、長時間の仮焼処理により所望の複合酸化物粉末以外の異相が生成しやすくなるという問題点もあった。
【0012】
一方、複合酸化物粉末の結晶性を優先して正方晶性を高くしようとすると、平均粒径が大きくなり、このため、セラミック粒子の平均粒径も大きくなって積層セラミックコンデンサを薄層化した場合に信頼性低下を招くという問題点があった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、微粒かつ正方晶性の高い高純度の複合酸化物粉末を製造することができる複合酸化物粉末の製造方法、複合酸化物粉末、誘電体磁器組成物、及び積層型電子部品を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究したところ、仮焼合成反応が開始する反応開始温度から仮焼最高温度に到達するまでの間、昇温速度を30℃/分(以下、30℃/minと記す)以上の高速に設定することにより、異相が生成されることもなく、微粒かつ正方晶性の高い高純度の複合酸化物粉末を製造することができるという知見を得た。
【0015】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法は、一般式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末の製造方法であって、Aサイト元素を含有したAサイト元素化合物とBサイト元素を含有したBサイト元素化合物とを少なくとも含むセラミック素原料を混合し、湿式粉砕する混合・粉砕工程と、該混合・粉砕工程で得られた混合粉末に仮焼処理を施す仮焼工程とを含み、前記仮焼工程は、前記混合粉末が合成反応を開始する反応開始温度から仮焼最高温度に到達するまでの間、昇温速度を30℃/min以上に設定することを特徴としている。
【0016】
また、上述の高速昇温による作用効果は、Aサイト元素がBa、Ca、Bサイト元素がTi、Zrであって、Aサイト元素及びBサイト元素の総計が3種以上の場合に顕著である。
【0017】
そこで、本発明の複合酸化物粉末の製造方法は、前記Aサイト元素はBa及びCaのうちの少なくとも1種を含み、前記Bサイト元素はTi及びZrのうちの少なくとも1種を含み、さらに前記Aサイト元素と前記Bサイト元素との総計が3種以上であることを特徴としている。
【0018】
また、複合酸化物粉末のうち、BaTiOのBaの一部をCaで置換したカルシウム変性チタン酸バリウム(Ba1−xCa)TiO(以下、「Ca変性チタン酸バリウム」という)は、BaTiOに比べて静電容量の温度特性が良好であるが、上記高速昇温により得られたCa変性チタン酸バリウムは微粒かつ高正方晶性を有しており、したがって温度特性が良好で微粒領域での誘電率が高い、信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることが可能となる。さらに、特性を改善する観点からは、Ca変性チタン酸バリウムにY、Dy等の特定の希土類元素を必要に応じて添加するのも好ましい。
【0019】
すなわち、本発明の複合酸化物粉末の製造方法は、前記複合酸化物粉末は、一般式(Ba1−x−yCaReO)mTiO(ただし、ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択された少なくとも1種であり、0.992≦m≦1.005、0<x≦0.20、0≦y≦0.06)であることを特徴としている。
【0020】
すなわち、高正方晶性を維持しつつ、より微粒のCa変性チタン酸バリウムを得るためには、mは0.992≦m≦1.005とするのが好ましく、また、異相の生成を完全に排除してより高純度なCa変性チタン酸バリウムを確実に得るためには、x、yは、それぞれ0<x≦0.20、0≦y≦0.06であるのが望ましい。
【0021】
また、正方晶性を維持しつつ、より微粒の複合酸化物粉末を得るためには、仮焼工程を減圧雰囲気下、例えば7.98×10Pa以下で行うのが好ましい。
【0022】
すなわち、本発明の複合酸化物粉末の製造方法は、前記仮焼工程を減圧雰囲気下で行うことを特徴としている。
【0023】
また、本発明に係る複合酸化物粉末は、上記いずれかの方法で製造されたことを特徴としている。
【0024】
上記複合酸化物粉末は、高速昇温で製造されているので、仮焼処理時間も短く、微粒かつ正方晶性の高い高純度で誘電体材料として好適な複合酸化物粉末を容易に得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る誘電体磁器組成物は、上記複合酸化物粉末にマグネシウム酸化物、マンガン酸化物、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1種以上が含有されていることを特徴としている。
【0026】
上記誘電体磁器組成物によれば、微粒かつ正方晶性の高い高純度な複合酸化物を主成分としているので、誘電率が高く、静電容量の温度特性の良好な誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0027】
また、本発明に係る積層型電子部品は、上記誘電体磁器組成物からなる磁器内に、内部電極が埋設されると共に、前記磁器の表面に外部電極が形成されていることを特徴としている。
【0028】
上記積層型電子部品によれば、薄層化しても静電容量の温度特性が良好で、セラミック粒子が異常粒成長することもなく、各種特性の良好な信頼性に優れた積層セラミック電子部品等の積層型電子部品を得ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0030】
図1は本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法を示す製造工程図である。
【0031】
混合・粉砕工程1では、所定のセラミック素原料を秤量し、部分安定化ジルコニア(Partial Stabilized Zirconia ;「PSZ」という)等の粉砕媒体が収容されたボールミルに投入して混合し、湿式粉砕する。
【0032】
すなわち、セラミック素原料として、Aサイト元素を構成するBa又は/及びCaを含有した化合物(例えば、BaCO、CaCO)、Bサイト元素を構成するTi又は/及びZrを含有した化合物(例えば、TiO、ZrO)、及び必要に応じてDy等の希土類元素化合物を、それぞれ所定量秤量し、前記秤量物を水と共に粉砕媒体が収容されたボールミルに投入し、湿式で十分に混合粉砕し、セラミックスラリーを作製する。
【0033】
次いで、乾燥工程2でセラミックスラリーを蒸発乾燥して混合粉末とし、続く仮焼工程3で大気圧(1.01×10Pa)下、所定の仮焼プロファイルで混合粉末に仮焼処理を施す。
【0034】
図2は仮焼プロファイルであって、横軸は仮焼時間(hr)、縦軸は仮焼温度(℃)を示している。
【0035】
仮焼開始から合成反応が開始する反応開始温度T1(例えば、400℃)に到達するまでは任意の昇温速度で仮焼炉を加熱してゆき、反応開始温度T1から仮焼最高温度T2(例えば、1000〜1100℃)に到達するまでの時間t1、昇温速度を30℃/min以上に設定して高速昇温し、その後、仮焼炉を前記仮焼最高温度T2で所定時間t2(例えば、0.5時間)保持し、その後降温させ、これにより仮焼物を得る。
【0036】
このように時間t1における昇温速度を30℃/min以上にしたのは以下の理由による。
【0037】
通常、この種の仮焼処理は、仮焼炉の仮焼最高温度T2が1000〜1100℃となるように昇温し、所定時間(例えば、2時間)、仮焼最高温度T2に保持し、その後仮焼炉を降温させている。
【0038】
しかしながら、昇温速度が30℃/min未満の場合は、昇温速度が遅いため仮焼最高温度に到達するまでに長時間を要し、このため異相が生成したり、異元素が複合酸化物に固溶して原子配列に乱れが生じ、その結果、微粒になると結晶軸の軸比c/aが小さくなって正方晶性が低下し、微粒で正方晶性の高い高純度な複合酸化物粉末を得ることができなくなる。
【0039】
これに対して昇温速度が30℃/min以上の場合は、昇温速度が速いため仮焼処理に要する時間も短く、短時間で所望の複合酸化物が合成され、その結果、異相が生成され難くなり、微粒かつ正方晶性の高い高純度な複合酸化物粉末を得ることができる。
【0040】
そこで、本実施の形態では、時間t1における昇温速度を30℃/min以上に設定して仮焼処理を施し、これにより、微粒かつ正方晶性の高い高純度の複合酸化物を得るようにしている。
【0041】
尚、昇温速度は30℃/min以上であれば、上限は特に限定されるものではないが、設備面等の関係から昇温速度の上限は120℃/min以下が好ましい。
【0042】
次いで、解砕工程4に進み、ジェット粉砕機等で仮焼物に解砕処理を施し、これにより複合酸化物粉末が製造される。
【0043】
そして、上述した製造方法は、複合酸化物粉末のうち、BaTiOのBaの一部をCaで置換した下記一般式(1)で示されるCa変性チタン酸バリウムに適用するのが実用的であり、好ましい。
【0044】
(Ba1−x−yCaReO)TiO …(1)
すなわち、Ca変性チタン酸バリウムは、チタン酸バリウムに比べて静電容量の温度特性が良好であり、微粒になると比誘電率が高くなることから、高誘電率系の薄層化された積層セラミックコンデンサのセラミック原料として最適である。
【0045】
ここで、希土類元素Reは特性改善のために適宜添加され、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択された少なくとも1種を使用することができる。
【0046】
また、Aサイト元素(Ba,Ca,Re)とBサイト元素Tiとのモル比mは0.992≦m≦1.005が好ましい。すなわち、モル比mをこの範囲とすることにより、高い正方晶性を維持しつつ、より微粒のCa変性チタン酸バリウムを得ることができる。
【0047】
また、Aサイト中のCaのモル比xは0<x≦0.20、Reのモル比yは0≦y≦0.06が好ましい。すなわち、モル比x、yがこの範囲外になるとCaやReの含有量が過剰となり、CaTiO等の異相が生成され易くなるためである。
【0048】
また、上記実施の形態では仮焼工程3を大気圧(1.01×10Pa)で行っているが、減圧雰囲気(例えば、7.98×10Pa以下)で行うのも好ましい。すなわち、仮焼処理を減圧雰囲気で行うことにより、BaCO等のセラミック素原料の分解開始温度が低下し、結晶性の向上や、より一層の微粒化が可能となる。
【0049】
また、セラミック素原料には、不純物として、通常、アルカリ金属、Zr、Al、及びSiが含有されるが、これら不純物は総計で0.5wt%未満とするのが好ましい。すなわち、セラミック素原料の不純物が総計で0.5wt%を超えると、これら不純物がセラミック主成分に固溶し、高結晶化を阻害するおそれがあるからである。
【0050】
図3は、本発明に係る積層型電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【0051】
該積層セラミックコンデンサは、Ca変性チタン酸バリウムを主成分とするセラミック焼結体5に内部電極6(6a〜6f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体5の両端部には外部電極7a、7bが形成され、さらに該外部電極7a、7bの表面には第1のめっき皮膜8a、8b及び第2のめっき皮膜9a、9bが形成されている。
【0052】
具体的には、各内部電極6a〜6fは積層方向に並設されると共に、内部電極6a、6c、6eは外部電極7aと電気的に接続され、内部電極6b、6d、6fは外部電極7bと電気的に接続されている。そして、内部電極6a、6c、6eと内部電極6b、6d、6fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0053】
上記積層セラミックコンデンサは以下のようにして製造される。
【0054】
まず、上述した一般式(1)で示されるCa変性チタン酸バリウムに加え、マグネシウム化合物、マンガン化合物、焼結助剤としてのケイ素化合物、及び必要に応じてバリウム化合物やホウ素化合物等の添加物を所定量秤量し、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダやエタノール等の有機溶剤と共に前記秤量物をボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製する。次いで、ドクターブレード法等により前記セラミックスラリーに成形加工を施し、所定厚みのセラミックグリーンシートを作製する。
【0055】
次いで、Ni等の卑金属材料を主成分とする内部電極用導電性ペーストを前記セラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等で印刷し、内部電極用導電パターンを形成する。
【0056】
次に、内部電極用導電パターンの形成されたセラミックグリーンシートを、該導電パターンの引き出し部が互い違いとなるように適宜所定枚数積層して積層体を形成する。
【0057】
次いで、積層体を還元雰囲気下、温度350〜500℃に加熱して脱バインダ処理を行ない、その後酸素分圧10−9〜10−12MPaのH−N−HOからなる還元性雰囲気中で温度約1300℃で2時間程度焼成処理を行ない、内部電極6が埋設されたセラミック焼結体5を作製する。
【0058】
次いで、Ag等を主成分とする外部電極用ペーストをセラミック焼結体5の両端部に塗布し、還元雰囲気下、約600℃で焼付処理を行ない、外部電極7a、7bを形成する。
【0059】
そして、この後電解めっき等を行ってNi等からなる第1のめっき皮膜8a、8b及びSnやSn合金等からなる第2のめっき皮膜9a、9bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0060】
このように上記積層セラミックコンデンサは、セラミック焼結体5が、微粒かつ正方晶性の高い高純度なCa変性チタン酸バリウムを主成分として形成されているので、Ca変性チタン酸バリウムに添加される添加物(マグネシウム化合物、マンガン化合物、及びケイ素化合物等)のCa変性チタン酸バリウムへの固溶が適度に抑制され、静電容量の温度特性が悪化するのを回避できると共に、高い比誘電率を確保することができ、各種特性が良好な信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0062】
〔第1の実施例〕
(実施例A)
セラミック素原料として、BaCO、CaCO、TiOの各粉末を用意し、モル比でBaCO:CaCO:TiO=0.95:0.05:1.00となるように秤量した。
【0063】
そして、この秤量物を水と共に、直径2mmのPSZが収容されたボールミルに投入・混合し、72時間湿式粉砕してスラリーを作製し、次いで、このスラリーを蒸発乾燥させて混合粉末を得た。
【0064】
次に、この混合粉末を仮焼炉に入れ、異なる3種類の仮焼プロファイルで仮焼処理を実行し、複合酸化物粉末を得た。
【0065】
すなわち、まず、炉内温度が混合粉末の反応開始温度である400℃から1000℃に到達するまで、5℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、次いで、温度1000℃で2時間保持し、その後降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号1の複合酸化物粉末を作製した。
【0066】
また、炉内温度が400℃から1100℃に到達するまで、30℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、次いで、温度1100℃で30分間保持し、その後降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼粉末を解砕し、試料番号2の複合酸化物粉末を作製した。
【0067】
さらに、炉内温度が400℃から1100℃に到達するまで、5℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、次いで、温度1100℃で2時間保持し、その後降温させることによって仮焼粉末を得、この後乾式粉砕機で仮焼粉末を解砕し、試料番号3の複合酸化物粉末を作製した。
【0068】
次に、このようにして得られた各試料を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察して平均粒径を測定し、また、X線回折装置(X−Ray Diffraction:XRD)で構成相を確認した。
【0069】
表1は仮焼条件と測定結果を示している。
【0070】
【表1】
Figure 2005008471
この表1から明らかなように、試料番号1は、平均粒径0.3μmのBa0.95Ca0.05TiOが得られたものの、昇温速度が5℃/minと遅いため、BaCOやCaTiO等の異相の生成が認められた。
【0071】
これに対し試料番号2は、昇温速度が30℃/minと速く、したがって仮焼処理時間も短くて済むため、平均粒径が0.3μmのBa0.95Ca0.05TiOからなる単一相が得られた。
【0072】
また、試料番号3は、仮焼最高温度を1100℃と高くしたことにより、Ba0.95Ca0.05TiOの単一相が得られ、異相の生成は認められなかったが、昇温速度が5℃/minと遅く、仮焼最高温度を高くしたことにより仮焼処理時間も長くなり、解砕後の平均粒径が0.4μmと粗くなった。
【0073】
(実施例B)
セラミック素原料として、BaCO、TiO、ZrOの各粉末を用意し、モル比でBaCO:TiO:ZrO:=1.00:0.80:0.20となるように秤量した。
【0074】
次に、実施例Aと同様の方法・手順で湿式粉砕した後、蒸発乾燥させて混合粉末を得、さらに、実施例Aと同様、3種類の仮焼プロファイルで仮焼処理を実行し、その後乾式粉砕機で仮焼粉末を解砕し、試料番号4〜6の複合酸化物粉末を作製した。
【0075】
次いで、各試料についてSEMで観察して平均粒径を測定し、XRDで構成相を確認した。
【0076】
表2は仮焼条件と測定結果を示している。
【0077】
【表2】
Figure 2005008471
この表2から明らかなように、試料番号4は、平均粒径0.3μmのBaTi0.80Zr0.20が得られたものの、昇温速度が5℃/minと遅いため、BAZrO等の異相の生成が認められた。
【0078】
これに対し試料番号5は、昇温速度が30℃/minと速く、したがって仮焼処理時間も短くて済み、平均粒径が0.3μmのBaTi0.80Zr0.20からなる単一相が得られた。
【0079】
また、試料番号6は、仮焼最高温度を1100℃と高くしたことにより、BaTi0.80Zr0.20の単一相が得られ、異相の生成は認められなかったが、昇温速度が5℃/minと遅く、仮焼最高温度を高くしたことにより仮焼処理時間も長くなり、解砕後の平均粒径が0.5μmと粗くなった。
【0080】
(実施例C)
セラミック素原料として、CaCO、TiO、ZrOの各粉末を用意し、モル比でCaCO:TiO:ZrO:=1.00:0.65:0.35となるように秤量した。
【0081】
次に、実施例Aと同様の方法・手順で湿式粉砕した後、蒸発乾燥させて混合粉末を得、さらに、実施例Aと同様、3種類の仮焼プロファイルで仮焼処理を行ない、その後乾式粉砕機で仮焼粉末を解砕し、試料番号7〜9の複合酸化物粉末を作製した。
【0082】
次いで、各試料についてSEMで観察して平均粒径を測定し、XRDで構成相を確認した。
【0083】
表3は仮焼条件と測定結果を示している。
【0084】
【表3】
Figure 2005008471
この表3から明らかなように、試料番号7は、平均粒径0.3μmのCaTi0.65Zr0.35が得られたものの、昇温速度が5℃/minと遅いため、CaTiO等の異相の生成が認められた。
【0085】
これに対し試料番号8は、昇温速度が30℃/minと速く、したがって仮焼処理時間も短くて済み、平均粒径が0.3μmのCaTi0.65Zr0.35からなる単一相が得られた。
【0086】
また、試料番号9は、仮焼最高温度を1100℃と高くしたことにより、CaTi0.65Zr0.35の単一相が得られ、異相の生成は認められなかったが、昇温速度が5℃/minと遅く、仮焼最高温度を高くしたことにより仮焼処理時間も長くなり、解砕後の平均粒径が0.5μmと粗くなった。
【0087】
すなわち、実施例A〜Cから明らかなように、反応開始温度(400℃)から仮焼最高温度(1000℃〜1100℃)に到達するまでの時間、昇温速度を5℃/minに設定して仮焼炉を昇温させた場合は、仮焼処理時間が長いため、異相が生成されるか、又は粒径が粗くなったのに対し、昇温速度を30℃/minに設定して仮焼炉を昇温させた場合は、仮焼処理時間が短いため、より微粒で異相が生成されることのない高純度の複合酸化物粉末を得ることができることが分った。
【0088】
〔第2の実施例〕
セラミック素原料としてBaCO、CaCO、TiOの各粉末を用意し、組成式(Ba0.946Ca0.060)TiOの複合酸化物粉末が得られるように各粉末を秤量し、第1の実施例と同様の方法・手順で混合粉末を得た。
【0089】
次に、この混合粉末を仮焼炉に入れ、異なる3種類の仮焼プロファイルで仮焼処理を施し、複合酸化物粉末を作製した。
【0090】
すなわち、まず、炉内温度が400℃から1000℃に到達するまで、5℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度1000℃で2時間保持した後、降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号11の複合酸化物粉末を作製した。
【0091】
また、炉内温度が400℃から1050℃に到達するまで、10℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度1050℃で1時間保持した後、降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号12の複合酸化物粉末を作製した。
【0092】
また、炉内温度が400℃から1100℃に到達するまで、30℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度1100℃で30分間保持した後降温させることによって仮焼物を得し、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号13の複合酸化物粉末を作製した。
【0093】
次に、セラミック素原料として、BaCO、CaCO、及びTiOの各粉末に加え、Dy粉末を用意し、組成式(Ba0.926Ca0.060Dy0.020)TiOの複合酸化物粉末が得られるように各粉末を秤量し、上述と同様にして混合粉末を得た。
【0094】
次に、この混合粉末を仮焼炉に入れ、異なる2種類の仮焼プロファイルで仮焼処理を施し、複合酸化物粉末を作製した。
【0095】
すなわち、まず、炉内温度が400℃から1000℃に到達するまで、5℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度1000℃で2時間保持した後、降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号14の複合酸化物粉末を作製した。
【0096】
また、炉内温度が400℃から1100℃に到達するまで、30℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度1100℃で30分間保持した後、降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号15の複合酸化物粉末を作製した。
【0097】
次に、試料番号11〜15について、SEM観察により平均粒径を測定し、さらにXRDで回折パターンを求め、リートベルト解析を行って結晶構造を解析し、結晶軸の軸比c/aを算出した。
【0098】
表4は各試料の組成成分、仮焼条件、平均粒径、及び軸比c/aを示している。
【0099】
【表4】
Figure 2005008471
各試料共、平均粒径は0.30μmであった。
【0100】
試料番号11は、昇温速度が5℃/minと遅いため、仮焼処理に長時間を要し、このため軸比c/aが1.008と小さく、正方晶性が低いことが分かった。これは、仮焼処理時間が長いため、BaTiOの規則正しい原子配列に、異元素であるCaが固溶し、その結果、原子配列に乱れが生じ、軸比c/aが小さくなったと考えられる。
【0101】
また、試料番号12は、昇温速度を10℃/minと上昇させてはいるものの、昇温速度は未だ不十分であり、このため軸比c/aが1.008と小さく、正方晶性が低いことが分かった。
【0102】
これに対して試料番号13は、昇温速度を30℃/minに上げて仮焼合成反応を生じさせているので、平均粒径の粗大化を招くことなく、軸比c/aを1.009と大きくすることができ、正方晶性を向上させることのできることが分った。
【0103】
さらに、試料番号14は、試料番号11と同様、昇温速度が5℃/minと遅いため、仮焼処理に長時間を要し、このため軸比c/aが1.008と小さく、正方晶性が低くなることが分かった。
【0104】
これに対し試料番号15は、試料番号13と同様、昇温速度を30℃/minに上げて仮焼合成反応を生じさせているので、平均粒径の粗大化を招くことなく、軸比c/aを1.009と大きくすることができ、正方晶性を向上させることのできることが分った。
【0105】
〔第3の実施例〕
昇温速度30〜60℃/min、仮焼最高温度1050〜1100℃、保持時間0.5hrの仮焼条件でCa変性チタン酸バリウム(BaCa)TiOからなる試料番号21〜26の複合酸化物粉末を作製した。
【0106】
なお、本第3の実施例では、y値を一定とし、Aサイト元素である(Ba,Ca)とBサイト元素であるTiとのモル比mを0.991〜1.006の間で異なるように、Ba/Tiを変えている。
【0107】
また、比較例として、試料番号23と同一組成成分の混合粉末について、試料番号11、12と同様の仮焼条件で仮焼処理を施し、試料番号27、28の複合酸化物粉末を作製した。
【0108】
次に、各試料について第2の実施例と同様、平均粒径を測定し、また結晶軸の軸比c/aを算出した。
【0109】
表5は各試料の組成成分、仮焼条件、平均粒径、及び軸比c/aを示している。
【0110】
【表5】
Figure 2005008471
表5から明らかなように、試料番号21〜26は昇温速度を30℃〜60℃/minに設定して高速昇温を行っているため、軸比c/aはいずれも1.009と高い正方晶性を得ているが、さらにモル比mが0.992≦m≦1.005に調製された試料番号22〜24、27は、平均粒径が0.25μmとなり、試料番号21及び25に比べてさらに微粒化しており、したがって高正方晶性を維持しつつより一層の微粒化を図る観点からは、モル比mが0.992≦m≦1.005が好ましいことが分った。
【0111】
また、試料番号27、28は昇温速度がそれぞれ5℃/min、10℃/minと遅いため、仮焼処理に長時間を要し、このため軸比c/aが1.008となり正方晶性が低下することが分った。
【0112】
尚、本発明者らが、別途実験を行ったところ、CaのTiに対するモル比xが0.21の場合、及びDyのTiに対するモル比yが0.07の場合は、いずれもTiに対するCaやDyの含有量が過剰となり、昇温速度を30℃/minに上げて仮焼処理を行なってもCaTiO等の異相の生成が確認された。
【0113】
〔第4の実施例〕
まず、BaCO、CaCO、TiOの各粉末を(Ba0.938Ca0.060)TiOが得られるように秤量し混合した。
【0114】
次いで、炉内圧を大気圧(1.01×10Pa)に設定し、炉内温度が400℃から950℃に到達するまで、5℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度950℃で30分間保持した後、降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号31の複合酸化物粉末を作製した。
【0115】
また、炉内圧を7.98×10Paに減圧し、試料番号31と同様の仮焼条件で仮焼処理を行なって仮焼物を得、その後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号32の複合酸化物粉末を作製した。
【0116】
また、炉内圧を大気圧(1.01×10Pa)に設定し、炉内温度が400℃から1050℃に到達するまで、30℃/minの昇温速度で仮焼炉を昇温させ、その後、温度1050℃で30分間保持した後、降温させることによって仮焼物を得、この後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号33の複合酸化物粉末を作製した。
【0117】
また、炉内圧を7.98×10Paに減圧し、試料番号33と同様の仮焼条件で仮焼処理を行なって仮焼物を得、その後乾式粉砕機で仮焼物を解砕し、試料番号34の複合酸化物粉末を作製した。
【0118】
次に、各試料について第2の実施例と同様、平均粒径を測定し、また結晶軸の軸比c/aを算出した。
【0119】
表6は各試料の組成成分、仮焼条件、平均粒径、及び軸比c/aを示している。
【0120】
【表6】
Figure 2005008471
試料番号31は、大気圧下、昇温速度が5℃/minで仮焼処理を行なっているため、平均粒径は0.25μmと微粒ではあるが、軸比c/aが1.007と小さく、正方晶性が低下することが分った。
【0121】
また、試料番号32は仮焼炉の炉内圧を7.98×10Paに減圧させることにより、軸比c/aは1.008と向上するが、未だ正方晶性が不十分である。
【0122】
これに対して試料番号33は、仮焼炉の炉内圧は大気圧であるが昇温速度を30℃/minにしているため、軸比c/aは1.009と大きくなって高い正方晶性を得ることができる。
【0123】
さらに、試料番号34では、仮焼炉の炉内圧を7.98×10Paに減圧しているため、軸比c/aも1.009と高正方晶性を維持しながら平均粒径も0.20μmと更に微粒化しており、したがって、炉内圧を減圧することにより、より一層微粒で正方晶性の高い複合酸化物粉末を得ることのできることが分った。
【0124】
〔第5の実施例〕
試料番号11(第2の実施例、表4)と試料番号13(第2の実施例、表4)の複合酸化物粉末、及び試料番号23(第3の実施例、表5)と試料番号34(第4の実施例、表6)の複合酸化物粉末を用意した。
【0125】
次いで、これら複合酸化物粉末100重量部に対し、Yを1.86重量部、MgOを0.336重量部、BaCOを1.28重量部、SiOを0.74重量部、MnOを0.327重量部、及びBを0.312重量部添加し、さらにポリビニルブチラール系バインダ及びエタノール等の有機溶媒を加えてボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。
【0126】
次に、このセラミックスラリーをドクターブレード法により、成形加工を施し、セラミックグリーンシートを作製した。
【0127】
次に、上記セラミックグリーンシート上にNiを主成分とする内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極層を形成し、さらに、内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートを、内部電極層の引出部が互い違いとなるように複数枚積層し、積層体を作製した。
【0128】
そして、この積層体をN雰囲気中にて350℃の温度に加熱し、バインダを分解させて脱バインダ処理を行なった後、酸素分圧10−9〜10−12MPaのH−N−HOガスからなる還元性雰囲気下、1300℃で2時間焼成し、セラミック焼結体を得た。
【0129】
次いで、B−LiO−SiO−BaO系ガラス材を含有したAgを主成分とする外部電極用導電性ペーストを用意し、該外部電極用導電性ペーストをセラミック焼結体の両端面に塗布し、N雰囲気下、温度600℃で焼付処理を行ない、これにより外部電極を形成し、試料番号11′、13′、23′34′の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0130】
尚、作製された積層セラミックコンデンサの外形寸法は縦1.6mm、横3.2mm、厚み1.2mmであった。また、積層セラミックコンデンサの誘電体層の厚みは、5μmであり、有効誘電体層の層数は100層であった。また、一層当たりの対向電極面積は2.1mmであった。
【0131】
次に、上記各試料について、室温での誘電率、誘電損失、温度変化に対する静電容量の変化率(以下、「容量変化率」という)及び高温負荷寿命試験を行なった。
【0132】
ここで、誘電率及び誘電損失は自動ブリッジ式測定器で測定した、
また、容量変化率は、25℃での静電容量を基準値とし、125℃における静電容量の変化率を測定した。
【0133】
さらに、高温負荷寿命試験は、温度150℃、電界強度15KV/mmとなるように印加電圧を調整し、絶縁抵抗の経時変化を測定することにより行った。すなわち、各試料を30個ずつサンプリングし、絶縁抵抗が200kΩ以下になったときの時間を試料の寿命と判断し、その平均時間を算出し、高温負荷寿命を評価した。
【0134】
表7はその測定結果を示している。
【0135】
【表7】
Figure 2005008471
試料番号11′は、軸比c/aが1.008と小さく(表4参照)、したがって正方晶性が低いので、YやMgO等の添加物が複合酸化物粉末に過度に固溶し、したがって比誘電率は2750と高いが、誘電損失は4.6%と大きく、また容量変化率も−16.8%と大きい。すなわち、EIA(米国電子工業会)の規格によると、高誘電率系の積層セラミックコンデンサでは、25℃を基準に−55〜125℃での容量変化率が±15%以内であることが必要とされているが(X7R特性)、試料番号11′では−15%を超えて温度特性が悪化し、X7R特性を満たさないことが分った。しかも、高温負荷時の平均寿命も17.6時間と短く、高温負荷時の耐久性にも欠ける。
【0136】
これに対して試料番号13′、23′及び34′は、いずれも軸比c/aが1.009であり(表4、表5、表6参照)、正方晶性が高いので、YやMgO等の添加物の複合酸化物粉末への固溶が適度に抑制され、したがって容量変化率も−12.5〜−12.8%であり、−15%以内に抑えることができる。しかも、比誘電率や誘電損失、高温負荷時の耐久性も満足できるものである。
【0137】
尚、試料番号13′、23′及び34′は、良好な静電容量の温度特性を確保することができ、比誘電率や誘電損失、高温負荷時の耐久性も良好であるが、試料番号13′の平均粒径は0.30μmであり(表4参照)、試料番号23′の平均粒径は0.25μmであり(表5参照)、試料番号34′の平均粒径は0.20μmであり(表6参照)、平均粒径が細かくなるに伴い、誘電損失や小さくなり、また、高温負荷時の平均寿命も長くなっている。
【0138】
すなわち、試料番号13′、23′及び34′から、平均粒径が微粒化すればする程、誘電損失が低下すると共に高温負荷時の耐久性が向上し、信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができることが確認された。
【0139】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法は、一般式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末の製造方法であって、Aサイト元素を含有したAサイト元素化合物とBサイト元素を含有したBサイト元素化合物とを少なくとも含むセラミック素原料を混合し、湿式粉砕する混合・粉砕工程と、該混合・粉砕工程で得られた混合粉末に仮焼処理を施す仮焼工程とを含み、前記仮焼工程は、前記混合粉末が合成反応を開始する反応開始温度から仮焼最高温度に到達するまでの間、昇温速度を30℃/min以上に設定して前記混合粉末に仮焼処理を施すので、仮焼時間が短時間で済み、異相が生成されることもなく、微粒で正方晶性の高い高純度な複合酸化物粉末を製造することができる。
【0140】
また、前記Aサイト元素はBa及びCaのうちの少なくとも1種を含み、前記Bサイト元素はTi及びZrのうちの少なくとも1種を含み、さらに前記Aサイト元素と前記Bサイト元素との総計が3種以上である場合に、上記効果を容易に奏することができる。
【0141】
また、本発明の製造方法は、前記複合酸化物粉末は、一般式(Ba1−x−yCaReO)TiO(ただし、ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択された少なくとも1種であり、0.992≦m≦1.005、0<x≦0.20、0≦y≦0.06)であるので、微粒領域で高比誘電率を有する積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品に好適な複合酸化物粉末を得ることができる。
【0142】
また、本発明の製造方法は、前記仮焼工程を減圧雰囲気下、例えば7.98×10Pa以下で行うことにより、高い正方晶性を維持しつつ、より一層微粒化された複合酸化物粉末を製造することができる。
【0143】
また、本発明に係る複合酸化物粉末は、上記いずれかの方法で製造されているので、異相が生成されることもなく、微粒かつ正方晶性の高い積層セラミックコンデンサ等の電子部品に好適な高純度の複合酸化物粉末を得ることができる。
【0144】
また、本発明に係る誘電体磁器組成物は、マグネシウム酸化物、マンガン酸化物、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1種が、上記複合酸化物粉末に含有されているので、マグネシウム酸化物等の添加物が複合酸化物粉末に過度に固溶するのを抑制することができ、静電容量の温度特性が悪化するのを防止することができえる。
【0145】
また、本発明に係る積層型電子部品は、上記誘電体磁器組成物からなる磁器内に内部電極が埋設されると共に、前記誘電体磁器組成物の表面に外部電極が形成されているので、高比誘電率を有し、温度変化に対する静電容量の容量変化率も小さく、誘電損失や高温負荷時の耐久性等、各種特性が良好な信頼性に優れた積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図である。
【図2】仮焼工程における仮焼プロファイルを示す図である。
【図3】上記複合酸化物粉末を使用して製造された積層型電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 混合・粉砕工程
3 仮焼工程
5 セラミック焼結体
6a〜6f 内部電極
7a、7b 外部電極

Claims (7)

  1. 一般式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末の製造方法であって、
    Aサイト元素を含有したAサイト元素化合物とBサイト元素を含有したBサイト元素化合物とを少なくとも含むセラミック素原料を混合し、湿式粉砕する混合・粉砕工程と、該混合・粉砕工程で得られた混合粉末に仮焼処理を施す仮焼工程とを含み、
    前記仮焼工程は、前記混合粉末が合成反応を開始する反応開始温度から仮焼最高温度に到達するまでの間、昇温速度を30℃/分以上に設定することを特徴とする複合酸化物粉末の製造方法。
  2. 前記Aサイト元素はBa及びCaのうちの少なくとも1種を含み、前記Bサイト元素はTi及びZrのうちの少なくとも1種を含み、さらに前記Aサイト元素と前記Bサイト元素との総計が3種以上であることを特徴とする請求項1記載の複合酸化物粉末の製造方法。
  3. 前記複合酸化物粉末は、一般式(Ba1−x−yCaReO)TiO(ただし、ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択された少なくとも1種であり、0.992≦m≦1.005、0<x≦0.20、0≦y≦0.06)であることを特徴とする請求項1記載の複合酸化物粉末の製造方法。
  4. 前記仮焼工程を減圧雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複合酸化物粉末の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする複合酸化物粉末。
  6. マグネシウム酸化物、マンガン酸化物、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含有する請求項5記載の複合酸化物の焼結体からなることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  7. 請求項6記載の誘電体磁器組成物からなる磁器内に、内部電極が埋設されると共に、前記磁器の表面に外部電極が形成されていることを特徴とする積層型電子部品。
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