JP2005008448A - 難燃性光ファイバ心線及び難燃性光ファイバテープ心線 - Google Patents

難燃性光ファイバ心線及び難燃性光ファイバテープ心線 Download PDF

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浩由 山本
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Abstract

【課題】被覆工程において光ファイバの伝送特性を損なわず且つ生産性がよい、難燃性の光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線を提供する。
【解決手段】光ファイバ(裸ファイバ)11の外周にUL94 V0規格条件を満す難燃性紫外線硬化型樹脂(硬化後ヤング率が50〜1000MPa)の被覆12を形成し、光ファイバ心線1を構成する。また、光ファイバの外周に、非難燃性紫外線硬化型樹脂の一次被覆、前記難燃性紫外線硬化型樹脂の二次被覆を順次形成し、光ファイバ心線を構成する。被覆された複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、前記難燃性紫外線硬化型樹脂の共通被覆を形成し、光ファイバテープ心線を構成する。被覆された複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、非難燃性紫外線硬化型樹脂の共通被覆を形成した光ファイバテープ心線の外周に、前記難燃性紫外線硬化型樹脂の外層共通被覆を形成し、光ファイバテープ心線を構成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単心の光ファイバ心線又は多心の光ファイバテープ心線の外周部を難燃性樹脂で被覆した難燃性光ファイバ心線及び難燃性光ファイバテープ心線に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の光通信の発展と需要増大に伴い、屋内外のネットワーク構築などに光ファイバが多用されている。この光ファイバは、配線スペースの省力化の点から細径化が求められていると共に、火災防止の点から難燃化が求められている。また、センサ等に使用される光ファイバに対しても、同様に細径化及び難燃化が求められている。
【0003】
光ファイバは、一般に、線引き直後のガラスの裸ファイバに、紫外線硬化型樹脂等による被覆(以下、素線被覆という)を施すことで形成されている。この素線被覆は、傷やガラスの脆性破壊が生じるのを防止するためのものであり、1層に限らず2層以上の多層で形成される場合もある。また、光ファイバを取り扱う際の識別や接続作業に必要な強度をもたすために、素線被覆を施した光ファイバに、さらに紫外線硬化型樹脂等により外層被覆を施して、光ファイバ心線とされる。また、複数本の光ファイバを平行一列に並べ共通被覆で一体化して光ファイバテープ心線とされる。
【0004】
図2は、単心の光ファイバ心線の断面構造の例を示す図で、図中、2は光ファイバ心線、21は裸ファイバ、22は素線被覆、23は外層被覆を示す。光ファイバ心線2は、裸ファイバ21の外周に素線被覆22、外層被覆23が順次施されたコーティング構造をもつ。例えば、裸ファイバ21の外周に被覆される素線被覆22には、比較的ヤング率の小さい軟質のウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂(例えば1.2MPa)が用いられ、外層被覆23には、比較的ヤング率の大きい硬質のポリイミド系の紫外線硬化型樹脂(例えば885MPa)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、通常の光ファイバ心線では、裸ファイバ21は標準外径125μmのガラスで形成され、厚さ37.5μmの素線被覆22が施された状態で標準外径200μm、さらに厚さ22.5μmの外層被覆23が施された状態で標準外径245μmとなる。なお、特許文献1に記載の光ファイバ心線は、外層被覆として、ヤング率が1179MPa以上の紫外線硬化型樹脂を用い被覆厚を25μm以上としている。低ヤング率の素線被覆22はガラスヘの応力を緩和し、高ヤング率の外層被覆23は外力の影響を防ぐ役割を有しているが、一般的に使用されている紫外線硬化型樹脂は難燃性を持っていないため、光ファイバ心線2として難燃性を有することできない。
【0006】
図4は、多心の光ファイバテープ心線の断面構造の例を示す図で、図中、4は光ファイバテープ心線、41は裸ファイバ、42は素線被覆、43は共通被覆、44は外層共通被覆を示す。光ファイバテープ心線4は、裸ファイバ41に素線被覆42が施された光ファイバ素線(光ファイバ心線という場合もある)を複数本平行一列に並べ、これを紫外線硬化型樹脂の共通被覆43でテープ状に一体化した構造をもつ。また、共通被覆43の外周部には、さらに必要に応じ外層共通被覆44が施される。共通被覆が1層のみの場合もあるが、図4のように共通被覆43をヤング率の小さい軟質の紫外線硬化型樹脂等により形成し、外層共通被覆44に硬質の紫外線硬化型樹脂を用いる場合がある。
【0007】
光ファイバの難燃化を図る場合、光ファイバ素線又は光ファイバ心線に抗張力体を縦添えし外層被覆で覆った光ファイバコードにおいて、外層被覆に難燃剤を用いることが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0008】
特許文献2に記載の光ファイバコードは、光ファイバの上に紫外線硬化型樹脂よりなる内層被覆と外層被覆とを設けた光ファイバ素線を複数本平行に配置した光ファイバテープ心線と、抗張力繊維束とを、紫外線硬化型樹脂よりなる外部被覆層により一体的に被覆したコードであり、外部被覆層又は光ファイバテープ心線の被覆層に、透明な液体状難燃剤又は反応型難燃剤を配合することで、難燃性を得ている。
【0009】
また、特許文献3に記載の難燃高性強度光ファイバ心線は、光ファイバの外周に、順次、紫外線硬化型樹脂の一次被覆及び二次被覆を設けた光ファイバ素線の両側に2本の高抗張力繊維からなるテンションメンバを縦添えした後、これらの外周に紫外線硬化型樹脂からなる一次一括被覆を設け、更にこの外周に難燃性材料からなる二次一括被覆を設けることで、難燃性を得ている。ここで用いられている難燃性材料は、ポリエステルエラストマーに臭素系の難燃剤と難燃助剤の三酸化アンチモンを配合した被覆剤(ハイトレル(R))である。
【0010】
また、抗張力体を縦添えしない難燃性光ファイバ心線も提案されている。この難燃性光ファイバ心線は、通常紫外線硬化型樹脂で被覆された光ファイバ、或いは熱硬化型樹脂(非難燃性)で被覆された光ファイバの上に、難燃性ポリエステルエラストマ等の熱硬化型難燃性樹脂を被覆したものである。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−19144号公報
【特許文献2】
特開平11−72669号公報
【特許文献3】
特開2002−29784号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のごとく、汎用の紫外線硬化型樹脂で被覆した光ファイバ心線は、難燃性を有さない。また、特許文献1,2のごとく単心である光ファイバ心線又は多心である光ファイバテープ心線に、抗張力体を縦添えし、難燃化のための外層被覆をさらに付加することは、コスト増となり、断面寸法が大きくなり好ましくない。
【0013】
また、熱硬化型の難燃性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化型難燃性樹脂と比較して高温を長時間かけて硬化させる必要があるため、生産性が悪い。さらに、紫外線硬化型樹脂で被覆された光ファイバ心線の上に熱硬化型難燃性樹脂を被覆する場合には、その工程において紫外線硬化型樹脂の上に数百度の高温をかけて熱硬化型樹脂を被覆するため、下地である紫外線硬化型樹脂がその熱により柔らかくなり、側圧の影響を緩和しきれずガラスに微小な歪を発生させ、伝送損失が増加することが懸念される。従って、光ファイバは、単に被覆樹脂に難燃剤を添加したり難燃性の樹脂を用いたりするだけでは、被覆樹脂の密着性や物理特性等によって光ファイバの伝送特性を損なってしまう可能性がある。
【0014】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、被覆工程において、光ファイバの伝送特性を損なわず且つ生産性がよい、難燃性光ファイバ心線及び難燃性光ファイバテープ心線を提供することをその目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明による難燃性光ファイバ心線は、ガラス光ファイバの外周に、UL94V0の規格条件を満す難燃性を有する硬化後のヤング率が50MPa〜1000MPaの紫外線硬化型樹脂からなる被覆を形成することを特徴とし、ガラス上に難燃性紫外線硬化型樹脂を被覆することで、被覆工程において光ファイバの伝送特性を損なわず且つ生産性がよく、難燃性に優れた光ファイバ心線の実現を可能としている。
【0016】
また、本発明による難燃性光ファイバ心線は、ガラス光ファイバの外周に、順次、非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなる一次被覆、及びUL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなる二次被覆を形成することを特徴とし、通常紫外線硬化型樹脂被覆された光ファイバ上に難燃性紫外線硬化型樹脂を被覆することで、被覆工程において光ファイバの伝送特性を損なわず且つ生産性がよく、難燃性に優れた光ファイバ心線の実現を可能としている。
【0017】
また、本発明による難燃性光ファイバテープ心線は、被覆された複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、UL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaの紫外線硬化型樹脂からなる共通被覆を形成することを特徴とし、複数本の光ファイバ素線を難燃性紫外線硬化型樹脂で共通被覆することで、被覆工程において光ファイバの伝送特性を損なわず且つ生産性がよく、難燃性に優れた光ファイバテープ心線の実現を可能としている。
【0018】
さらに、本発明による難燃性光ファイバテープ心線は、被覆された複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなる共通被覆を形成し、さらに共通被覆の外周に、UL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなる外層共通被覆を形成することを特徴とし、通常紫外線硬化型樹脂で共通被覆された光ファイバテープ心線上に難燃性紫外線硬化型樹脂を被覆することで、被覆工程において光ファイバの伝送特性を損なわず且つ生産性がよく、難燃性に優れた光ファイバテープ心線の実現を可能としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、光ファイバ心線の断面構造の一例を示す図で、図中、1は光ファイバ心線、11は裸ファイバ、12は素線被覆を示す。以下、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る光ファイバ心線の構造を説明する。
【0020】
光ファイバ心線1は、ガラス光ファイバ(裸ファイバ)11の外周に被覆(以下、裸ファイバ上に直接施される被覆を素線被覆という)を形成したものである。素線被覆12に使用する材料は、難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなる。また、ここで使用する紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が50MPa〜1000MPaであることが好ましい。ここで、難燃性紫外線硬化型樹脂のヤング率の調整は樹脂を構成する成分によって決まり、一般的には、樹脂の骨格を形成する多官能オリゴマにモノマをどの程度合成するかによって決まる。この時、モノマ成分の内訳を多官能モノマ(反応基が2個所存在)を多くするか単官能モノマ(反応基が1個所存在)を多くするかによってヤング率を自在に調整することができる。また、素線被覆12として用いられる難燃性紫外線硬化型樹脂(例えば、後述するAC B900)はUL94 V0規格条件を満たしている樹脂であることが好ましい。また、ガラス光ファイバ11としては、石英系ガラス,フッ化物ガラス,多成分系ガラスなどが挙げられる。
【0021】
ここで、通常の光ファイバ心線では、裸ファイバは標準外径が125μm程度のガラスで形成され、被覆が施された状態で標準外径が245μm程度となる。従って、本実施形態に係る、素線被覆12を施した光ファイバ心線1(一般的には光ファイバ素線と言われている)においても、裸ファイバ11は標準外径が125μm程度のものを使用し、難燃性紫外線硬化型樹脂による素線被覆12の被覆厚(樹脂厚)を55μm〜70μmとし、最終的な難燃性光ファイバ心線の外径Fを235μm〜265μmであるようにすることが、コスト面からも好ましい。例えば、裸ファイバ11であるガラス(標準外径:125μm)の上に素線被覆12(高ヤング率難燃性紫外線硬化型樹脂,標準外経:245μm(厚さ:60.0μm))をコーティングした構造とすればよい。
【0022】
本実施形態によれば、難燃性を有する樹脂として熱硬化型樹脂を用いずに紫外線硬化型樹脂を用いているので、被覆工程において、光ファイバの伝送特性を損なうこともなく、且つ、良い生産性で、光ファイバ心線を難燃化することができる。
【0023】
以下、図2を参照して、本発明の他の実施形態に係る光ファイバ心線の構造を説明する。本発明の他の実施形態に係る光ファイバ心線2は、形状としては従来技術において上述した図2と同様で、ガラス光ファイバ(裸ファイバ)21の外周を、順次、一次被覆(素線被覆22)で被覆し、素線被覆22の外周を二次被覆(外層被覆23)で被覆して構成される。素線被覆22は、非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、外層被覆23は、難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなる。
【0024】
そして、素線被覆22に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が0.5MPa〜3.5MPaと低ヤング率であり、外層被覆23に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaと高ヤング率であるようにすることが好ましい。ここで、難燃性紫外線硬化型樹脂は一次被覆(素線被覆22)用の低ヤング率樹脂と二次被覆(外層被覆23)用の高ヤング率樹脂が必要となる。上述したように、このヤング率の調整は樹脂を構成する成分によって決まり、低ヤング率が必要となる一次被覆用途には単官能モノマを多く配合し、高ヤング率が必要となる二次被覆用途には逆に単官能モノマを少なく配合すれば良い。また、外層被覆23として用いられる難燃性紫外線硬化型樹脂(例えば、後述するAC B900)はUL94 V0規格条件を満たしている樹脂であることが好ましい。
【0025】
また、通常の光ファイバ心線では、裸ファイバは標準外径が125μm程度のガラスで形成され、厚さ37.5μmの一次被覆が施された状態で標準外径が200μm程度、さらに厚さ22.5μmの二次被覆が施された状態で標準外形が245μm程度となる。従って、本実施形態に係る、素線被覆22及び外層被覆23を施した光ファイバ心線2においても、裸ファイバ21は標準外径が125μm程度のものを使用し、非難燃性紫外線硬化型樹脂による素線被覆22の被覆厚(樹脂厚)を25μm〜35μmとし、難燃性紫外線硬化型樹脂による外層被覆23の被覆厚(樹脂厚)を25μm〜35μmとし、最終的な難燃性光ファイバ心線の外径Fを235μm〜265μmであるようにすることが、コスト面からも好ましい。例えば、裸ファイバ21であるガラス(標準外径:125μm)の上に、素線被覆22(低ヤング率非難燃性紫外線硬化型樹脂,標準外経:200μm(厚さ:37.5μm))、外層被覆23(高ヤング率難燃性紫外線硬化型樹脂,標準外経:245μm(厚さ:22.5μm))、を順次コーティングした構造とすればよい。
【0026】
本実施形態によれば、難燃性を有する樹脂として熱硬化型樹脂を用いずに紫外線硬化型樹脂を用いているので、被覆工程において、光ファイバの伝送特性を損なうこともなく、且つ、良い生産性で、光ファイバ心線を難燃化することができる。また、本実施形態によれば、通常紫外線硬化型樹脂と同等の生産ラインでの使用が可能であることから、特殊な工程を経る必要が無いので、さらに生産性向上が可能となる。
【0027】
なお、図1に示す光ファイバ心線1は、素線被覆12による一次被覆のみであり難燃性は高いが、高ヤング率であるためガラス本体に直接力が伝わってしまい、外力或いは応力を緩和することが図2に示す光ファイバ心線2に比べて難しくので、側圧に敏感なファイバヘ適用する場合には図2の光ファイバ心線2を採用した方がよい。すなわち、図2に示す光ファイバ心線2は、低ヤング率紫外線硬化型樹脂を一次被覆(素線被覆22)として使用し、二次被覆(外層被覆23)に難燃性を有する紫外線硬化型樹脂を使用した構造をもっているので、図1に示した光ファイバ心線1に比べ、ガラスヘの応力を緩和する(側圧の影響を緩和する)ことが可能である。しかし、最終的な光ファイバ心線として同じ径を採用した場合、図2の光ファイバ心線2は、難燃性紫外線樹脂厚が図1の光ファイバ心線1と比較して薄いので難燃性が多少低下するので、高難燃性が要求されるファイバへ適用する場合には図1の光ファイバ心線1を採用した方がよい。このように、図1に示す光ファイバ心線1と図2に示す光ファイバ心線2とを、設置場所や使用条件に応じて使い分けるようにすればよい。
【0028】
図3は、光ファイバテープ心線の断面構造の一例を示す図で、図中、3は光ファイバテープ心線、31は裸ファイバ、32は素線被覆、33は共通被覆を示す。以下、図3を参照して、本発明の一実施形態に係る光ファイバテープ心線の構造を説明する。
【0029】
光ファイバテープ心線3は、裸ファイバ31に素線被覆32等の被覆が施された複数本の光ファイバ心線(光ファイバ素線である場合も含む)を平行一列に並べ、共通被覆33を形成したものである。なお、図3では4本の光ファイバ素線を用いた例を示している。共通被覆33は、難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなる。また、ここで使用する紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaであることが好ましい。ここで、難燃性紫外線硬化型樹脂のヤング率の調整は上述した通りである。また、共通被覆33として用いられる難燃性紫外線硬化型樹脂(例えば、後述するAC B900)はUL94 V0規格条件を満たしている樹脂であることが好ましい。
【0030】
ここで、通常の光ファイバテープ心線では、裸ファイバは標準外径が125μm程度のガラスで形成され、被覆が施された状態で標準外径が245μm程度となり、最終的なテープ高さ(共通被覆を何層か設けた後のテープ高さH)が360μm程度となる。従って、本実施形態に係る光ファイバテープ心線3においても、裸ファイバ31は標準外径が125μm程度のものを使用し、素線被覆32の被覆厚(樹脂厚)を55μm〜70μmとし、光ファイバ心線の外径Fを235μm〜265μmとし、難燃性を有する共通被覆33の被覆厚を47.5μm〜62.5μmとして最終的な難燃性光ファイバテープ心線のテープ高さHが360μm程度とすることがコスト面からも好ましい。
【0031】
テープ高さは、Telecordia GR−20 5.1.2 R5−2の規定に準拠すれば360μm以下、国際標準IEC6094−3の規定に準拠すれば480μm以下であることから、これらも当然満足させることができる。例えば、裸ファイバ31であるガラス(標準外径:125μm)の上に素線被覆32(低ヤング率非難燃性紫外線硬化型樹脂,標準外経:245μm(厚さ:60.0μm))をコーティングし、それらを複数本平行一列に並べ、共通被覆33(高ヤング率難燃性紫外線硬化型樹脂,標準テープ高:360μm(厚さ:57.5μm))をコーティングした構造とすればよい。
【0032】
本実施形態によれば、難燃性を有する樹脂として熱硬化型樹脂を用いずに紫外線硬化型樹脂を用いているので、被覆工程において、光ファイバの伝送特性を損なうこともなく、且つ、良い生産性で、光ファイバテープ心線を難燃化することができる。また、上述の素線被覆32は紫外線硬化型樹脂であることが生産工程の共通化の点から好ましい。
【0033】
以下、図4を参照して、本発明の他の実施形態に係る光ファイバテープ心線の構造を説明する。本発明の他の実施形態に係る光ファイバテープ心線4は、形状としては従来技術において上述した図4と同様で、裸ファイバ41に素線被覆42等の被覆が施された複数本の光ファイバ心線(光ファイバ素線である場合も含む)を平行一列に並べ、これを紫外線硬化型樹脂で共通被覆43を形成し、さらに共通被覆43の外周に紫外線硬化型樹脂で外層共通被覆44を形成したものである。
【0034】
そして、本実施形態においては、共通被覆43は、非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、外層共通被覆44は、難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなるものとする。ここで、共通被覆43に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が0.5MPa〜3.5MPaと低ヤング率であり、外層共通被覆44に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaと高ヤング率であることが好ましい。ヤング率の調整は上述した通りである。また、外層共通被覆44として用いられる難燃性紫外線硬化型樹脂(例えば、後述するAC B900)はUL94 V0規格条件を満たしている樹脂であることが好ましい。
【0035】
ここで、通常の光ファイバテープ心線では、上述のごとく最終的なテープ高さ(共通被覆を何層か設けた後のテープ高さH)が360μm程度となる。従って、本実施形態に係る光ファイバテープ心線4においても、裸ファイバ41は標準外径が125μm程度のものを使用し、素線被覆32の被覆厚(樹脂厚)を55μm〜70μmとし、光ファイバ心線の外径Fを235μm〜265μmとし、共通被覆43の被覆厚を17.5μm〜32.5μmとしてテープ高さが300μm程度とし、難燃性を有する外層共通被覆44の被覆厚Dを30.0μm程度として、最終的な難燃性光ファイバテープ心線のテープ高さHが360μm程度とすることがコスト面からも好ましい。
【0036】
また、外層共通被覆44の被覆厚Dが3μm未満では、十分な難燃性を得ることができず、被覆厚さDが30μmを越えると製造速度を遅くしたり、複数回の被覆を繰り返したりして所定厚みとする必要があり生産性が悪くなる。従って、難燃性を有する外層共通被覆44の被覆厚Dを3μm〜30.0μmとすることでテープ高さHを360μm以下に抑えることができ、Telecordia GR−20 5.1.2 R5−2の規定及び国際標準IEC6094−3の規定も当然満足させることができる。例えば、裸ファイバ41であるガラス(標準外径:125μm)の上に素線被覆42(低ヤング率非難燃性紫外線硬化型樹脂,標準外経:245μm(厚さ:60.0μm))をコーティングし、それらを複数本平行一列に並べ、共通被覆43(低ヤング率非難燃性紫外線硬化型樹脂,標準テープ高:300μm(厚さ:27.5μm))、外層共通被覆44(高ヤング率難燃性紫外線硬化型樹脂,標準テープ高:360μm(厚さ:30.0μm))、を順次コーティングした構造とすればよい。
【0037】
本実施形態によれば、難燃性を有する樹脂として熱硬化型樹脂を用いずに紫外線硬化型樹脂を用いているので、被覆工程において、光ファイバの伝送特性を損なうこともなく、且つ、良い生産性で、光ファイバテープ心線を難燃化することができる。また、本実施形態によれば、通常紫外線硬化型樹脂と同等の生産ラインでの使用が可能であることから、特殊な工程を経る必要が無いので、さらに生産性向上が可能となる。また、上述の素線被覆42も紫外線硬化型樹脂であることが生産工程の共通化の点から好ましい。
【0038】
次に、上述した本発明の各実施形態に係る光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線の難燃性を確認するため難燃試験を実施した結果を説明する。
難燃性紫外線硬化型樹脂の一例として、紫外線硬化型難燃性光ファイバ被覆剤AC B900を実験に用いた。AC B900は、難燃性を特徴とする65μm〜100μm厚のフィルム(UL94 V0規格相当)である。この材料の硬化前の物性は、粘度が25℃で23Pa・s〜29Pa・s、保管温度が15℃〜25℃、保管期間が6ヶ月(但し、開封前は20℃〜25℃で保管)となっている。
【0039】
この材料の硬化後の物性は、吸収率が0.5%(100℃飽和)、硬化収縮率(線形)が0.3%未満、ショア硬度が56D、ガラス転移点(DMA法)が82℃、ガラス転移点未満,ガラス転移点以上の線膨張係数(75μm厚フィルムを熱機械分析)がそれぞれ54×10−6−1,232×10−6−1となっている。また、25℃,50%RH(ASTM D638)での物理的性質は、引っ張り伸びが14%、引っ張り破断強度が41MPaとなっており、推奨される硬化条件(UV積算光量)は、Flood cure system,空気下硬化,相対湿度40%未満で、1.6J/cm〜2.0J/cmとなっている。
【0040】
AC B900の難燃性について、Addison Clear Wave社にて、UL94 V0規格試験方法に則り、上述の材料の燃焼性試験を行った。UL94 V0適用条件としては、(1)試験片は、いずれの試験炎照射後も、10秒以上の間、炎を伴い燃焼しないこと、(2)炎を伴う燃焼時間は、計10回の試験炎照射に対し(5試験片×各2回)、合計50秒を越えてはならないこと、(3)試験片は、炎を伴う場合も伴わない場合も、保持部まで燃焼してはならないこと、(4)試験片は炎を伴い液下してはならず、また、液下した試験片により乾燥吸収綿を発火してはならないこと、(5)試験片は試験炎除去後30秒以上に亙り燃焼してはならないこと、とした。
【0041】
試験片としては、長さ125mm×幅13mm、厚み65μm〜100μmのものを用いた。なお、実際のUL94 V0規格試験では、試験片の厚みは0.7mm厚,1.5mm厚,3.0mm厚のいずれかと指定されているが、光ファイバへの適用を想定して、ファイバ径に合わせた厚みにて試験片を作製した。
【0042】
また、試験条件として、(1)試験片を23℃〜25℃,50%RHにて48時間放置すること、(2)試験片は長軸方向を垂直に固定すること、(3)試験片の下端部が、ブンセン型バーナー口より10mmの位置となるよう固定すること、(4)高さ20mmの青色試験炎を試験片の下端中央部に10秒間照射後、試験炎を除去し、30秒以内に燃焼が止った場合には追加で10秒間試験炎を照射すること(但し、試験片が滴下する場合、滴下物は試験片の下に置かれた乾燥吸収綿の上に落ちるものとする。)、とした。
【0043】
上述の試験片を用い、上述の試験条件の元、燃焼性試験を行った結果、試験片の燃焼は試験炎を除去直後に止まり、上述した何れのUL94 V0規格条件も満たした。以上の結果、上述のごとき難燃性紫外線硬化型樹脂を、本発明の光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線の外側の被覆に用いる(外層として形成する)ことで、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線を難燃化できることが明らかとなった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、被覆工程において、光ファイバの伝送特性を損なわず、且つ良い生産性で、光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線を難燃化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ファイバ心線の断面構造の一例を示す図である。
【図2】光ファイバ心線の断面構造の他の例を示す図である。
【図3】光ファイバテープ心線の断面構造の一例を示す図である。
【図4】光ファイバテープ心線の断面構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1,2…光ファイバ心線、3,4…光ファイバテープ心線、11,21,31,41…裸ファイバ、12,22,32,42…素線被覆、23…外層被覆、33,43…共通被覆、44…外層共通被覆。

Claims (9)

  1. ガラス光ファイバの外周に被覆を形成した光ファイバ心線であって、前記被覆は、UL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなり、該紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が50MPa〜1000MPaであることを特徴とする難燃性光ファイバ心線。
  2. 前記紫外線硬化型樹脂による被覆厚は55μm〜70μmであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性光ファイバ心線。
  3. ガラス光ファイバの外周に、順次、一次被覆及び二次被覆を形成した光ファイバ心線であって、前記一次被覆は、非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、前記二次被覆は、UL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とする難燃性光ファイバ心線。
  4. 前記一次被覆に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が0.5MPa〜3.5MPaであり、前記二次被覆に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaであることを特徴とする請求項3記載の難燃性光ファイバ心線。
  5. 前記一次被覆の被覆厚は25μm〜35μmであり、前記二次被覆の被覆厚は25μm〜35μmであることを特徴とする請求項3又は4に記載の難燃性光ファイバ心線。
  6. 被覆された複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、共通被覆を形成した光ファイバテープ心線であって、前記共通被覆は、UL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなり、該紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaであることを特徴とする難燃性光ファイバテープ心線。
  7. 被覆された複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、共通被覆を形成し、さらに該共通被覆の外周に外層共通被覆を形成した光ファイバテープ心線であって、前記共通被覆は、非難燃性の紫外線硬化型樹脂からなり、前記外層共通被覆は、UL94 V0の規格条件を満す難燃性を有する紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とする難燃性光ファイバテープ心線。
  8. 前記共通被覆に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が0.5MPa〜3.5MPaであり、前記外層共通被覆に用いる紫外線硬化型樹脂は、硬化後のヤング率が983MPa〜1966MPaであることを特徴とする請求項7に記載の難燃性光ファイバテープ心線。
  9. 当該難燃性光ファイバテープ心線のテープ高さは480μm以下であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の難燃性光ファイバテープ心線。
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