JP2005008142A - 車両用ホイール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 スポーク部とスポーク部間に形成される窓部を有するディスク部、並びにリム部からなる車両用ホイールにおいて、前記スポーク部の裏面側には、鋳抜き部と、窓部側のリブが形成され、かつ前記リブの輪郭は鋳抜き部側に向う凸形状を有することを特徴とする車両用ホイールとする。スポーク部の幅が広いものは、スポーク部の裏面には径方向に沿った中央リブが設けることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
この場合、ハブ固定部11及びリム部15は車体やタイヤとの取回しの点から大幅な形状変更はできないので、スポーク部13を薄肉化するなど、ハブ固定部11以外のディスク部の形状変更による軽量化が行われているが、一体鋳造の場合、湯流れ性や指向性凝固性能を考慮する必要があるので大幅な軽量化は極めて困難である。
また、特許文献2には、スポーク部の裏側に巾方向に中リブを設け、かつスポークの両端部に飾り穴リブを設けたスポーク部の形状が記載されている。鋳造後にフライス加工によりこの形状にすることで、鋳造欠陥がなく軽量化を実現することができるとしている。
これらの形状最適化はノウハウの塊であり、鋳造方案毎によって最適形状が異なる。このようなことから最も一般的に行われるスポーク部の最適形状化は図3に示す斜線部分の肉厚(天井肉厚)tや、端部のリブの肉厚を一律に増減させるものである。
従って、本発明の目的は、スポーク部の両端から押し湯を効かせる鋳造方案に最適な、高強度でかつ軽量化した車両用ホイールを提供するものであり、特に回転曲げに強い形状を提供することである。
つまり、本発明は、スポーク部とスポーク部間に形成される窓部を有するディスク部、並びにリム部からなる車両用ホイールであり、前記スポーク部の裏面側には、鋳抜き部とその鋳抜き部の窓部側に形成されるリブとが形成され、かつ前記リブの輪郭は鋳抜き部側に向う凸形状を有するものである。
本発明者らの検討によれば、W/Lが0.7以上となると、リブも一律に厚くしていく必要があり、後述する中央リブを設けるスポーク部形状のほうが、同じホイール重量でもスポーク部の機械的強度を高くできる。また、W/Lが0.1未満のスポーク部の幅が細いものであると、鋳抜き部自体を形成しないスポーク部形状とした方が強度的に好ましいものとなる。
この0.1≦W/L≦0.7となる一般的な車両用ホイールとは、スポーク部の本数が9〜14本、スポークの幅は最小部分で25mm以上であり、ホイール径がビードシート部で16インチ以上のものに最も適用されている。
ここでスポーク部の幅とは図1に示すように、一方の窓部から他方の窓部までの距離Wであり、最も狭い部分とする。またスポーク部の長さとは径方向の長さであり、図1に示すように窓が形成される回転軸側の径からリム側の径までの長さLとする。
この0.7≦W/L≦1.3となる一般的な車両用ホイールとは、スポーク部の本数が3〜8本、スポークの幅は最小部分で65mm以上であり、ホイール径がビードシート部で16インチ以上のものに最も適用されている。
中央リブの輪郭形状はストレートなものでよいが、曲部を設けるなど、適宜最適化することも可能である。この中央リブを設けることで回転曲げ試験に対する機械的強度だけでなく、13度衝撃試験に対する機械的強度を向上させることができる。また、中央リブを設けた重量の増加分以上に両端のリブ幅を狭くすることができ、同じ機械的強度でありながら軽量化した車両用ホイールを製造することができる。
また、アルミ溶湯は厚肉のリブキャビティ内は流れやすいものの、薄い天井部分は冷えて固まりやすく、溶湯が流れにくい。そのため、中央リブを設けて鋳抜き部の天井部分を分割し、薄い天井部分の面積を小さくすることで、不廻りが発生しにくいスポーク部キャビティ形状とすることができ、鋳造性を向上させることができる。
また特に湯流れ性を考慮すると、鋳抜き部の内周側の底部が、40〜60mmの曲率Rを有することが好ましい。曲率Rが40mm未満であると天井肉厚の薄い部分が長くなり過ぎ、湯流れ性が悪くなるだけでなく、内周側のリブを厚くしても強度的に要求される数値を満足し難い。逆に60mm超であると、意匠面側の形状は完全に顧客からの指定で変更できないために、駄肉部が多くなり、本発明の目的である軽量化が困難となる。
本発明における解析の手法は以下の手順にて行った。まず解析モデルとして3次元のホイール形状を3次元CADで作成する。意匠面の形状は、主に顧客であるカーメーカなどから指定されるものであり、通常ホイールメーカでは変更できない。ホイールメーカ側は、意匠面の裏側の鋳抜き形状やリブ形状を最適化することで、良好な鋳造性と機械的強度の仕様を満たし且つ軽量なホイールをカーメーカなどに供給する。
次に強度解析により得られた結果を画面上で視覚化し、さらにリム、スポークなどホイール各部位に作用している応力を確認する。応力が許容値を超えている場合は、強度に余裕を持たせるために部分的に応力集中が発生する部分の肉厚を厚くするように肉盗み形状を変更する。また、各部位での応力が許容値よりも十分に低い場合は、軽量化のために肉厚を薄くするように、肉盗み形状の変更を行う。
車両用ホイールの代表的な強度試験方法として、13度衝撃試験や回転曲げ試験がある。これらの強度試験をクリアするため、従来は通常の当業者であれば意匠面に沿って一律な肉厚を製造し、そのスポーク端部の肉厚を変えることにより対処していた。実施例に記載するスポーク部の両端から指向性凝固を行う鋳造方案のものは溶湯の湯流れ性が良いため、従来よりもスポーク部の薄肉化が可能である。さらにスポーク部が幅広のものでは、スポーク部の鋳抜き部の中央に径方向に凸形状の中央リブが備えられた形状にすることにより、強度と鋳造性を確保しつつ軽量化できることが、発明者等の膨大な解析検討の結果わかっている。
図1のスポーク部の裏面形状を持つ車両用ホイールの3次元データを作成した。図2にリブ1の輪郭が略3次関数形状となる部分の拡大図を示す。但し、図2では、リブ1の輪郭が従来と異なることを示すために、輪郭の極率を大きくしている。実際のリブ1の形状は図1に示すものである。リブ1の輪郭5は、従来の単純な丸みをもつ形状ではなく、鋳抜き部側に向ってRbを半径とするカーブを持ち、その少し下の部分では逆の方向に向かってRaを半径とするカーブを持っている。このカーブの方向が反対となる場所が変曲点3となり、全体として略3次関数的な輪郭を形成している。
この実施例におけるスポーク部の幅Wは93.5mm、スポーク部の長さLは90.5mmである。この形状は顧客から要求されたものであり、ホイールメーカ側では変更できない寸法である。よってこのL,W及び意匠面の凹凸形状に沿って、最適な天井肉厚を考慮して解析を繰り返した。
その結果、最もリブの細い部分の幅w1は12.5mm、変曲点でのリブの幅w2は19.0mmとし、天井肉厚tが5mmと薄い車両用ホイールを得ることができた。径方向に切ったスポーク部の断面図(図1のA−A矢視図)を図3に示す。
この形状による車両用ホイールの13度衝撃試験、回転曲げ試験の各々に対する解析を行ったところ、両者とも顧客要求を満足する機械的強度が得られた。また、この形状での車両用ホイールの製品重量を計算したところ、17インチのサイズで9.60kgと軽い形状であることが解かった。さらに、後に詳述する比較例1の車両用ホイールと比較して、回転曲げ試験の強度解析を行った結果では、スポーク部にかかる最大応力は16%も低くなっていることが確認できた。
また、湯口をリム部キャビティに設け、ディスク部中央に押湯手段を設けた鋳造方案、および湯口をリム部キャビティとディスク部中央に設けた鋳造方案を仮定した溶湯の湯流れ解析においても良好な鋳造設計であることが確認できている。ディスク部中央にのみ湯口を設けたセンターゲート方案で同様の湯流れ解析を行っても、スポーク部の断面積が小さすぎるため、インナーリムにまで溶湯を充填させることは生産上困難である。
図6に示すスポーク部の裏側形状を持つ車両用ホイールの強度解析を行った。リブの鋳抜き側の輪郭形状が変曲点を持たず、鋳抜き部の輪郭が常に外側に膨らんだ凸の形状となっている。
この比較例におけるスポーク部の幅Wは93.5mm、スポーク部の長さLは90.5mmと実施例1と同じであり、意匠面の形状も実施例1と同様である。このL,W及び意匠面の凹凸形状に沿って、リブの最も細い部分と厚い部分との比率や、全体的な太さを変更して最適なリブ形状を設計した。
まず、リブの最も薄い部分を12.5mm、厚い部分を19.0mm、天井肉厚を5mmとし、軽量化を重視した設計を行った。このリブ形状とした場合は、車両用ホイールの製品重量は9.51kgとなり非常に軽いものが製造できる。但し、これは回転曲げ試験に対する顧客要求仕様に対して限界に近い形状である。しかしながら、リブの厚さを厚くしていっても回転曲げ試験に対する機械的強度の向上はほとんどなく、製品重量だけが増大する傾向にあり、このリブ形状のまま設計変更を進めても軽量かつ機械的強度が高く、かつ鋳造性のよい車両用ホイールの設計はできないとの確証を得た。
図1の車両用ホイールをさらに軽量・機械的強度の向上を図るため、図4のスポーク裏面形状を持つ車両用ホイールの強度解析を実施した。図4のスポーク部の裏面形状を持つ車両用ホイールの3次元データを作成した。リブ1の輪郭5は、従来の単純な丸みをもつ形状ではなく、鋳抜き部側に向ってカーブを持ち、その少し下の部分では逆の方向に向かってカーブを有する形状である。このカーブの方向が反対となる場所が変曲点3となり、全体として略3次関数的な輪郭を形成している。
また、実施例1と異なり、スポーク部裏面の中央には中央リブ4を形成し、鋳抜き部2が実質的に1つのスポークに対して左右に2分割されるスポーク部33とした。
この実施例におけるスポーク部の幅Wは93.5mm、スポーク部の長さLは90.5mmである。この形状は顧客から要求されたものであり、ホイールメーカ側では変更できない寸法である。よってこのL,W及び意匠面の凹凸形状に沿って、最適な天井肉厚を考慮して解析を繰り返した。
その結果、リブ1の最も細い部分w1は8.6mm、変極点でのリブの厚さw2は15.5mm、中央リブ4の幅を12.0mmとすることで、図3に示す天井肉厚tが5mmと薄い車両用ホイールを得た。
前記の形状による13度衝撃試験、回転曲げ試験の各々に対する解析を行ったところ、両者とも顧客要求を満足する強度特性が得られた。さらに、実施例1の車両用ホイールと全く同じ製品重量でありながら、13度衝撃試験を行った解析結果では、部位にかかる最大応力値は実施例1のものと比較して5%も低くなっていることが確認された。
また、鋳造性の面から見てみると、アルミ溶湯は厚肉部であるリブは流れやすいものの、薄い天井部分は冷え固まりやすいために流れにくくなっている。そのため、実施例1及び比較例1は薄い天井部分の幅が広く、アルミ溶湯の不廻りが発生しやすい形状になっている。しかし、本実施例では中央リブがあるために薄い天井部分が分割され、全体的な面積が狭く、不廻りが発生しにくい形状となっており、鋳造性では有利である。さらに、中央リブは補強の役割も果たしており、両端のリブ幅を減らすことが出来る。このことから、本実施例は実施例1と比べて鋳造性、強度、軽量化に有利であることが解る。
また、湯口をリム部キャビティに設け、ディスク部中央に押湯手段を設けた鋳造方案、および湯口をリム部キャビティとディスク部中央に設けた鋳造方案を仮定した溶湯の湯流れ解析においても良好な鋳造設計であることが確認できている。
スポーク部の幅Wが42.7mm、スポーク部の長さLが90.5mmのスポーク形状を持つ車両用ホイールの強度解析を実施した。W/Lは0.47と実施例1および2よりも幅の狭いスポーク部形状である。実施例1と同様に鋳抜き部の外周輪郭が全体に渡って外側に凸の曲線ではなく、窓側の中心部よりの部分で内側に向って凹んでいる形状とした。その少し上の部分では他の部分と同様に外側に向って凸形状を持っている形状とした。この凸部と凹部の間が変曲点3となる。
さらに、スポーク部の中央には中央リブを形成し、鋳抜き部が実質的に1つのスポークに対して左右に2分割されるスポーク部形状とした。
その結果、最もリブの細い部分w1は6mm、変曲点でのリブの厚さw2は12mmとすることで、天井肉厚tが5mmと薄い車両用ホイールを得た。
この形状による13度衝撃試験、回転曲げ試験の各々に対する解析を行ったところ、両方の強度試験において顧客要求を満足する機械的強度が得られた。比較として、リブの鋳抜き側の輪郭形状がすべて凹んだ従来形状とした以外は同じスポーク部形状の車両用ホイールの強度解析を実施した。その結果、ほぼ同重量でありながら、13度衝撃試験を行った強度解析では部位にかかる最大応力値が従来形状のものより4%低くなった。幅が狭いホイールに中央リブを設けた場合、従来方案と比較して軽量化は困難であるが、機械的強度を向上できることが確認できた。
また、湯口をリム部キャビティに設け、ディスク部中央に押湯手段を設けた鋳造方案、および湯口をリム部キャビティとディスク部中央に設けた鋳造方案を仮定した溶湯の湯流れ解析においても良好な鋳造設計であることが確認できている。
図6のスポーク裏面形状を持つ車両用ホイールの強度解析を実施した。リブ1の輪郭5は、従来の単純な丸みをもつ形状ではなく、鋳抜き部側に向ってカーブを持ち、その少し下の部分では逆の方向に向かってカーブを有する形状である。このカーブの方向が反対となる場所が変曲点3となり、全体として略3次関数的な輪郭を形成している。
この実施例におけるスポーク部の幅Wは56.7mm、スポーク部の長さLは100.5mmである。この形状は顧客から要求されたものであり、ホイールメーカ側では変更できない寸法である。よってこのL,W及び意匠面の凹凸形状に沿って、最適な天井肉厚を考慮して解析を繰り返した。
その結果、リブ1の最も細い部分w1は7.1mm、変極点でのリブの厚さw2は12.6mmとすることで、天井肉厚tが5mmの車両用ホイールを得た。この形状による13度衝撃試験、回転曲げ試験の各々に対する解析を行ったところ、両者とも顧客要求を満足する強度特性が得られた。
比較として、リブの鋳抜き側の輪郭形状がすべて凹んだ従来形状とした以外は同じスポーク部形状の車両用ホイールの強度解析を実施した。その結果、従来方案のリブ形状を持つ車両用ホイールで製造したものより2.7g軽量化したものであるにも係わらず、スポーク部にかかる最大応力値は、従来方案の車両用ホイールに比べて12%も低くなることが確認できた。
また、湯口をリム部キャビティに設け、ディスク部中央に押湯手段を設けた鋳造方案、および湯口をリム部キャビティとディスク部中央に設けた鋳造方案を仮定した溶湯の湯流れ解析においても良好な鋳造設計であることが確認できている。
Claims (7)
- スポーク部とスポーク部間に形成される窓部を有するディスク部、並びにリム部からなる車両用ホイールにおいて、
前記スポーク部の裏面側には、鋳抜き部と、窓部側のリブが形成され、かつ前記リブの輪郭は鋳抜き部側に向う凸形状を有することを特徴とする車両用ホイール。 - スポーク部とスポーク部間に形成される窓部を有するディスク部、並びにリム部からなる車両用ホイールにおいて、
前記スポーク部の裏面側には、鋳抜き部と、窓部側のリブが形成され、かつ前記リブは変曲点を持つ輪郭を有することを特徴とする車両用ホイール。 - 前記リブは、最も薄い部分におけるリブの幅w1が5〜10mmであり、かつ前記変曲点の位置におけるリブの幅w2との関係が1.5≦w2/w1≦2.3の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の車両用ホイール。
- 前記スポーク部の径に垂直な断面は略C字型形状であり、かつ前記スポーク部の周方向の幅をW、径方向の長さをLとすると、前記スポーク部の形状が0.1≦W/L<0.7となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ホイール。
- 前記スポーク部の裏面には径方向に沿った中央リブが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ホイール。
- 前記スポーク部の周方向の幅をW、径方向の長さをLとすると、前記スポーク部の形状が0.7≦W/L≦1.3となることを特徴とする請求項5に記載の車両用ホイール。
- 前記鋳抜き部の底部の肉厚が6mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ホイール。
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