JP2005004971A - 平面型表示装置及びその組立方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1パネルと第2パネルとがそれらの周縁部において枠体を介して接合されて成り、気密性不良が生じ難い構成、構造を有する平面型表示装置を提供する。
【解決手段】平面型表示装置は、第1パネルCPと第2パネルAPとが、それらの周縁部において枠体30を介して接合されて成り、該第1パネルCPと該枠体30の第1面、及び、該第2パネルAPと該枠体30の第2面とは、それぞれ、封止層31A,31Bによって接着され、封止層31A,31Bは、封止剤32及びスペーサ粒子33から成る。
【選択図】 図1
【解決手段】平面型表示装置は、第1パネルCPと第2パネルAPとが、それらの周縁部において枠体30を介して接合されて成り、該第1パネルCPと該枠体30の第1面、及び、該第2パネルAPと該枠体30の第2面とは、それぞれ、封止層31A,31Bによって接着され、封止層31A,31Bは、封止剤32及びスペーサ粒子33から成る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面型表示装置及びその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン受像機や情報端末機器に用いられる表示装置の分野では、従来主流の陰極線管(CRT)から、薄型化、軽量化、大画面化、高精細化の要求に応え得る平面型(フラットパネル型)の表示装置への移行が検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)、冷陰極電界電子放出表示装置(FED:フィールドエミッションディスプレイ)を例示することができる。このなかでも、液晶表示装置は情報端末機器用の表示装置として広く普及しているが、据置き型のテレビジョン受像機に適用するには、高輝度化や大型化に未だ課題を残している。これに対して、冷陰極電界電子放出表示装置は、熱的励起によらず、量子トンネル効果に基づき固体から真空中に電子を放出することが可能な冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と呼ぶ場合がある)を利用しており、高輝度及び低消費電力の点から注目を集めている。
【0003】
電界放出素子を利用した冷陰極電界電子放出表示装置(以下、単に、表示装置と呼ぶ場合がある)の模式的な一部端面図を図14に示し、カソードパネルCPの模式的な部分的斜視図を図4に示す。図示した電界放出素子は、円錐形の電子放出部15を有する、所謂スピント(Spindt)型電界放出素子と呼ばれるタイプの素子である。この電界放出素子は、支持体10上に形成されたカソード電極11と、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、絶縁層12上に形成されたゲート電極13と、ゲート電極13に設けられた第1開口部14Aと、絶縁層12に設けられ、第1開口部14Aに連通した第2開口部14Bと、第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11上に形成された円錐形の電子放出部15から構成されている。一般に、カソード電極11とゲート電極13とは、これらの両電極の射影像が互いに直交する方向に各々ストライプ状に形成されており、これらの両電極の射影像が重複する部分に相当する領域(1画素分の領域に相当する。この領域を、以下、電子放出領域EAと呼ぶ)に、通常、複数の電界放出素子が設けられている。更に、かかる電子放出領域EAが、カソードパネルCPの有効領域(実際の表示画面として機能する領域)内に、通常、2次元マトリクス状に配列されている。
【0004】
一方、アノードパネルAPは、基板20と、基板20上に形成され、所定のパターンを有する蛍光体層22(カラー表示の場合、赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)と、その上に形成された反射膜としても機能するアノード電極24から構成されている。
【0005】
1画素は、カソードパネル側のカソード電極11とゲート電極13とが重複した領域に設けられた電界放出素子の一群と、これらの電界放出素子の一群に対面したアノードパネル側の蛍光体層22とによって構成されている。実際の表示部分として機能する領域である有効領域には、かかる画素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列されている。尚、蛍光体層22と蛍光体層22との間の基板20上には隔壁21が形成されている。
【0006】
そして、アノードパネルAPとカソードパネルCPとを、電界放出素子と蛍光体層22とが対向するように配置し、周縁部においてガラス板から成る枠体130及びフリットガラス層131を用いて接合することによって、表示装置を作製することができる(例えば、特開平7−142015号公報の図8参照)。有効領域を包囲し、画素を選択するための周辺回路が形成された無効領域には、真空排気用の貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔には真空排気後に封じ切られたチップ管(図示せず)が接続されている。即ち、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体130とによって囲まれた空間は高真空となっている。そして、アノードパネルAP及びカソードパネルCPには大気によって圧力が加わるので、この圧力によって表示装置が破損しないように、アノードパネルAPとカソードパネルCPとの間には所謂スペーサ25(図5参照)が配置されている。尚、図14においては、スペーサの図示を省略した。
【0007】
また、上述した特開平7−142015号公報には、アノードパネルAPとカソードパネルCPとに間の距離が0.2mm程度と非常に狭い場合には、枠体を使用すること無く、粒状体若しくは棒状体が混入されたフリットガラスのみを用いてアノードパネルAPとカソードパネルCPとを接合する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−142015号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図14に示した構造を有する表示装置を組み立てる際、アノードパネルAPと枠体130との間に未焼成フリットガラス層131bを配し、カソードパネルCPを構成する支持体10と枠体130との間に未焼成フリットガラス層131aを配し、アノードパネルAPを構成する基板20とカソードパネルCPとの間に圧力を加えた状態で(図15の(A)の模式的な一部断面図を参照)、フリットガラス層131a,131bの焼成を行う。このとき、フリットガラス層131aの流動状態や潰れ具合とフリットガラス層131bの流動状態や潰れ具合との間に偏りが生じることが屡々有る(図15の(B)の模式的な一部断面図を参照)。そして、このような現象が生じると、気密性不良が発生する虞がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、第1パネルと第2パネルとがそれらの周縁部において枠体を介して接合されて成り、気密性不良が生じ難い構成、構造を有する平面型表示装置及びその組立方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の平面型表示装置は、第1パネルと第2パネルとが、それらの周縁部において枠体を介して接合されて成る平面型表示装置であって、
該第1パネルと該枠体の第1面、及び、該第2パネルと該枠体の第2面とは、それぞれ、封止層によって接着され、
封止層は、封止剤及びスペーサ粒子から成ることを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の平面型表示装置の組立方法は、第1パネルと第2パネルとが、それらの周縁部において枠体を介して接合されて成る平面型表示装置の組立方法であって、
該第1パネルと該枠体の第1面、及び、該第2パネルと該枠体の第2面との間に、それぞれ、未硬化封止層を配した後、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させて封止層を得る工程を具備し、
封止層は、封止剤及びスペーサ粒子から成ることを特徴とする。
【0013】
本発明の平面型表示装置の組立方法においては、第1パネルと枠体の第1面との間に未硬化封止層を配するが、未硬化封止層を配する具体的な方法として、枠体の第1面にペースト状の未硬化封止材料(未硬化の封止剤及びスペーサ粒子から成る)を塗布し乾燥する方法、第1パネルの所定の部位にペースト状の未硬化封止材料を塗布し乾燥する方法、枠体の第1面及び第1パネルの所定の部位にペースト状の未硬化封止材料を塗布し乾燥する方法、シート状の未硬化封止材料(未硬化の封止剤及びスペーサ粒子から成る)を予め作製しておき、第1パネルと枠体の第1面との間に係るシート状の未硬化封止材料を置く方法を例示することができる。第2パネルと枠体の第2面との間に未硬化封止層を配する方法も同様とすることができる。あるいは又、枠体の第1面及び第2面に未硬化封止材料を塗布した状態で乾燥し、予備焼成(脱バインダーを目的として酸化雰囲気で焼成)することで枠体の第1面上及び第2面上に未硬化封止層を形成し、第1パネルと第2パネルとの間に係る枠体を配置することで、第1パネルと枠体の第1面との間に未硬化封止層を配し、且つ、第2パネルと枠体の第2面との間に未硬化封止層を配してもよい。
【0014】
本発明の平面型表示装置、あるいは、本発明の平面型表示装置の組立方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、封止剤としてフリットガラス焼成体を挙げることができる。ここで、フリットガラスとして、B2O3−PbO系フリットガラスやSiO2−B2O3−PbO系フリットガラスを挙げることができる。そして、これらの場合、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させて封止層を得る工程は、具体的には、フリットガラス及びスペーサ粒子を主成分とする未硬化封止層を焼成することで、フリットガラス焼成体及びスペーサ粒子から成る硬化封止層を得る工程から構成することができる。
【0015】
一方、スペーサ粒子を構成する材料は、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させる際に、破損や変形等が生じない材料であればよく、ガラス、セラミックス、金属や合金を例示することができる。スペーサ粒子は中実構造を有していてもよいし、中空構造を有していてもよい。スペーサ粒子の外形形状は球形であることが好ましいが、これに限定するものではない。
【0016】
また、本発明においては、第1パネルと第2パネルとの間の距離をD0、枠体の高さをH0、スペーサ粒子の平均径をD1としたとき、好ましくは、
0.1[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2]
より好ましくは、
0.5[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2]
一層好ましくは、
0.7[(D0−H0)/2]≦D1≦0.85[(D0−H0)/2]
を満足することが望ましい。言い換えれば、
D1=α[(D0−H0)/2]
としたとき、0.1≦α≦0.9、より好ましくは0.5≦α≦0.9、一層好ましくは0.7≦α≦0.85を満足することが望ましい。一般に、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させるときの未硬化封止層の粘度が高い場合、小さなαを有するスペーサ粒子を用い、粘度が低い場合、大きなαを有するスペーサ粒子を用いることが好ましい。
【0017】
尚、スペーサ粒子の外形形状が球形の場合には、スペーサ粒子の平均径とは、スペーサ粒子の平均直径である。また、スペーサ粒子の外形形状が球形以外の形状の場合には、スペーサ粒子の平均径とは、スペーサ粒子の外面の任意の2点を結んだ線分の内の最も長い線分の長さの、多数のスペーサ粒子における平均値である。
【0018】
本発明においては、枠体を構成する材料として、ガラスあるいはセラミックスを挙げることができる。枠体をセラミックスから構成する場合、セラミックスとして、ムライトやアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミックス材料、これらに、酸化チタンや酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等を例示することができる。尚、枠体は、フレーム状(枠状)に賦形された1つの部材から構成されていてもよいし、例えば、複数の棒状の部材の組立体から構成されていてもよい。
【0019】
本発明の平面型表示装置の組立方法において、未硬化封止層の硬化を高真空雰囲気中で行えば、第1パネルと第2パネルと枠体とによって囲まれた空間は、接合と同時に真空となる。あるいは、未硬化封止層の硬化完了後、第1パネルと第2パネルと枠体とによって囲まれた空間を排気し、高真空とすることもできる。未硬化封止層の硬化完了後に排気を行う場合、未硬化封止層の硬化時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
【0020】
未硬化封止層の硬化完了後に排気を行う場合、排気は、第1パネル及び/又は第2パネルに予め接続されたチップ管を通じて行うことができる。チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、第1パネル及び/又は第2パネルの無効領域に設けられた貫通部の周囲に、接着層を用いて接合され、空間が所定の真空度に達した後、熱融着によって封じ切られる。尚、封じ切りを行う前に、平面型表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので、好適である。
【0021】
本発明において、第1パネル及び第2パネルを構成する基板は、少なくとも表面が絶縁性部材から構成されていればよく、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、石英ガラス基板といった各種のガラス基板、表面に絶縁膜が形成された各種のガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができるが、製造コスト低減の観点からは、ガラス基板、あるいは、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の平面型表示装置の組立方法にあっては、第1パネルと枠体の第1面、及び、第2パネルと枠体の第2面との間に、未硬化封止層を配する際に、通常、第1パネルと第2パネルとを位置決めするが、係る工程は、例えば、枠体の第1面及び第2面に未硬化封止層が予め塗布された枠体を準備しておき、載置台(パネルステージ)上に載置された第2パネル上に枠体の第2面が接するように枠体を置き、第1パネル及び第2パネルに設けられたアライメントマークを光学的に読み取り、第2パネルに対する第1パネルの位置を調節しながら、例えば、未硬化封止層が予め塗布された枠体の第1面上に第1パネルを置く工程から構成することができる。
【0023】
本発明にあっては、平面型表示装置として、冷陰極電界電子放出表示装置あるいはプラズマ表示装置を挙げることができる。
【0024】
ここで、冷陰極電界電子放出表示装置から平面型表示装置を構成する場合、第1パネルは、アノード電極及び蛍光体層が形成されたアノードパネルから成り、第2パネルは、複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルから成る構成とすることができる。あるいは又、第1パネルは、複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルから成り、第2パネルは、アノード電極及び蛍光体層が形成されたアノードパネルから成る構成とすることができる。
【0025】
本発明において、平面型表示装置を冷陰極電界電子放出表示装置から構成する場合、枠体の高さとして、0.5mm乃至3.0mm、好ましくは、1mm乃至2mmを例示することができる。
【0026】
本発明において、平面型表示装置を冷陰極電界電子放出表示装置とする場合、カソードパネルを構成する冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と略称する)は如何なる形態の電界放出素子とすることもでき、例えば、円錐形の電子放出部を有する所謂スピント型電界放出素子、王冠型の電子放出部を有する所謂クラウン型電界放出素子、扁平な電子放出部を有する所謂扁平型電界放出素子、カソード電極から電子が放出される平面型電界放出素子やクレータ型電界放出素子、カソード電極に設けられたエッジ部から電子が放出されるエッジ型電界放出素子、表面伝導型電界放出素子を挙げることができる。冷陰極電界電子放出表示装置として、所謂3電極型(カソード電極、ゲート電極及びアノード電極を備えている)だけでなく、所謂2電極型(カソード電極及びアノード電極を備えている)を挙げることができる。
【0027】
アノードパネルにおいて、電界放出素子から放出された電子が先ず衝突する部位は、アノードパネルの構造に依るが、アノード電極であり、あるいは又、蛍光体層である。
【0028】
蛍光体層の平面形状(パターン)は、画素に対応して、ドット状であってもよいし、ストライプ状であってもよい。蛍光体層が隔壁の間に形成されている場合、隔壁で取り囲まれたアノードパネルを構成する基板の部分の上に蛍光体層が形成されている。
【0029】
隔壁は、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が他の蛍光体層に入射し、所謂光学的クロストーク(色濁り)が発生することを防止する機能を有する。あるいは又、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が隔壁を越えて他の蛍光体層に向かって侵入したとき、これらの電子が他の蛍光体層と衝突することを防止する機能を有する。
【0030】
隔壁の平面形状としては、格子形状(井桁形状)、即ち、1画素に相当する、例えば平面形状が略矩形(ドット状)の蛍光体層の四方を取り囲む形状を挙げることができ、あるいは、略矩形あるいはストライプ状の蛍光体層の対向する二辺と平行に延びる帯状形状あるいはストライプ形状を挙げることができる。隔壁を格子形状とする場合、1つの蛍光体層の領域の四方を連続的に取り囲む形状としてもよいし、不連続に取り囲む形状としてもよい。隔壁を帯状形状あるいはストライプ形状とする場合、連続した形状としてもよいし、不連続な形状としてもよい。隔壁を形成した後、隔壁を研磨し、隔壁の頂面の平坦化を図ってもよい。
【0031】
冷陰極電界電子放出表示装置にあっては、アノードパネルとカソードパネルと接着層とによって囲まれた空間が高真空となっているが故に、アノードパネルとカソードパネルとの間にスペーサを配しておかないと、大気圧によって表示装置が損傷を受けてしまう。係るスペーサは、例えばセラミックスから構成することができる。スペーサをセラミックスから構成する場合、セラミックスとして、ムライトやアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミックス材料、これらに、酸化チタンや酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等を例示することができる。この場合、所謂グリーンシートを成形して、グリーンシートを焼成し、かかるグリーンシート焼成品を切断することによってスペーサを製造することができる。また、スペーサの表面に、金属や合金から成る導電材料層を形成し、あるいは又、抵抗体層を形成してもよい。スペーサは、例えば、隔壁と隔壁との間に挟み込んで固定すればよく、あるいは又、例えば、アノードパネルにスペーサ保持部を形成し、スペーサ保持部とスペーサ保持部との間に挟み込んで固定すればよい。
【0032】
蛍光体層からの光を吸収する光吸収層が隔壁と基板との間に形成されていることが、表示画像のコントラスト向上といった観点から好ましい。ここで、光吸収層は、所謂ブラックマトリックスとして機能する。光吸収層を構成する材料として、蛍光体層からの光を99%以上吸収する材料を選択することが好ましい。このような材料として、カーボン、金属薄膜(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等、あるいは、これらの合金)、金属酸化物(例えば、酸化クロム)、金属窒化物(例えば、窒化クロム)、耐熱性有機樹脂、ガラスペースト、黒色顔料や銀等の導電性粒子を含有するガラスペースト等の材料を挙げることができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。尚、酸化クロム/クロム積層膜においては、クロム膜が基板と接する。光吸収層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法とエッチング法との組合せ、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコーティング法とリフトオフ法との組合せに、スクリーン印刷法、リソグラフィ技術等、使用する材料に依存して適宜選択された方法にて形成することができる。尚、スペーサ保持部や隔壁をアノード電極上に形成する場合、光吸収層を、基板とアノード電極との間に形成してもよいし、アノード電極とスペーサ保持部との間に形成してもよい。
【0033】
蛍光体層は、発光性結晶粒子(例えば、粒径5〜10nm程度の蛍光体粒子)から調製された発光性結晶粒子組成物を使用し、例えば、赤色の感光性の発光性結晶粒子組成物(赤色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、赤色発光蛍光体層を形成し、次いで、緑色の感光性の発光性結晶粒子組成物(緑色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、緑色発光蛍光体層を形成し、更に、青色の感光性の発光性結晶粒子組成物(青色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、青色発光蛍光体層を形成する方法にて形成することができる。
【0034】
発光性結晶粒子を構成する蛍光体材料としては、従来公知の蛍光体材料の中から適宜選択して用いることができる。カラー表示の場合、色純度がNTSCで規定される3原色に近く、3原色を混合した際の白バランスがとれ、残光時間が短く、3原色の残光時間がほぼ等しくなる蛍光体材料を組み合わせることが好ましい。赤色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(Y2O3:Eu)、(Y2O2S:Eu)、(Y3Al5O12:Eu)、(YBO3:Eu)、(YVO4:Eu)、(Y2SiO5:Eu)、(Y0.96P0.60V0.40O4:Eu0.04)、[(Y,Gd)BO3:Eu]、(GdBO3:Eu)、(ScBO3:Eu)、(3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)、(Zn3(PO4)2:Mn)、(LuBO3:Eu)、(SnO2:Eu)を例示することができる。緑色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(ZnSiO2:Mn)、(BaAl12O19:Mn)、(BaMg2Al16O27:Mn)、(MgGa2O4:Mn)、(YBO3:Tb)、(LuBO3:Tb)、(Sr4Si3O8Cl4:Eu)、(ZnS:Cu,Al)、(ZnS:Cu,Au,Al)、(ZnBaO4:Mn)、(GbBO3:Tb)、(Sr6SiO3Cl3:Eu)、(BaMgAl14O23:Mn)、(ScBO3:Tb)、(Zn2SiO4:Mn)、(ZnO:Zn)、(Gd2O2S:Tb)、(ZnGa2O4:Mn)を例示することができる。青色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(Y2SiO5:Ce)、(CaWO4:Pb)、CaWO4、YP0.85V0.15O4、(BaMgAl14O23:Eu)、(Sr2P2O7:Eu)、(Sr2P2O7:Sn)、(ZnS:Ag,Al)、(ZnS:Ag)、ZnMgO、ZnGaO4を例示することができる。
【0035】
アノード電極の構成材料は、冷陰極電界電子放出表示装置の構成によって適宜選択すればよい。即ち、冷陰極電界電子放出表示装置が透過型(アノードパネルが表示面に相当する)であって、且つ、アノードパネルを構成する基板上にアノード電極と蛍光体層がこの順に積層されている場合には、基板は元より、アノード電極自身も透明である必要があり、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いる。一方、冷陰極電界電子放出表示装置が反射型(カソードパネルが表示面に相当する)である場合、及び、透過型であっても基板上に蛍光体層とアノード電極とがこの順に積層されている場合には、ITOの他、アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)を用いることができる。アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)からアノード電極を構成する場合、アノード電極の厚さとして、具体的には、3×10−8m(30nm)乃至1.5×10−7m(150nm)、好ましくは5×10−8m(50nm)乃至1×10−7m(100nm)を例示することができる。アノード電極は、蒸着法やスパッタリング法にて形成することができる。尚、後者の場合、アノード電極は、蛍光体層からの発光を反射させる反射膜としての機能の他、蛍光体層から反跳した電子、あるいは放出された二次電子を反射させる反射膜としての機能、蛍光体層の帯電防止といった機能を有する。
【0036】
アノード電極と蛍光体層の構成例として、(1)基板上に、アノード電極を形成し、アノード電極の上に蛍光体層を形成する構成、(2)基板上に、蛍光体層を形成し、蛍光体層上にアノード電極を形成する構成、を挙げることができる。尚、(1)の構成において、蛍光体層の上に、アノード電極と導通した所謂メタルバック膜を形成してもよい。また、(2)の構成において、アノード電極の上にメタルバック膜を形成してもよい。
【0037】
本発明においては、封止層にスペーサ粒子が含まれているが故に、第1パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させ、第2パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させるとき、これらの未硬化封止層の流動状態や潰れ具合に差異が生じ難く、その結果、第1パネルと枠体との間の気密性不良、第2パネルと枠体との間の気密性不良が生じ難い。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態(以下、実施の形態と略称する)に基づき本発明を説明する。
【0039】
(実施の形態1)
実施の形態1は、本発明の平面型表示装置、及び、本発明の平面型表示装置の組立方法に関する。実施の形態1において、平面型表示装置は、冷陰極電界電子放出表示装置から構成されている。実施の形態1の所謂3電極型の冷陰極電界電子放出表示装置(以下、単に、表示装置と略称する)の模式的な一部端面図を図1に示し、表示装置の周縁部を拡大した模式的な一部断面図を図2の(A)に示す。尚、カソードパネルCPの模式的な部分的斜視図は、図4に示したとおりである。ここで、第1パネルは、複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルCPから成り、第2パネルは、アノード電極及び蛍光体層が形成されたアノードパネルAPから成る。
【0040】
実施の形態1の表示装置は、複数の冷陰極電界電子放出素子(電界放出素子と略称する)が設けられたカソードパネルCP(第1パネル)と、アノード電極24及び蛍光体層22(カラー表示の場合、赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)が形成されたアノードパネルAP(第2パネル)とが、それらの周縁部で枠体30を介して接合されて成る。そして、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体30とによって挟まれた空間は真空状態となっている。
【0041】
ここで、第1パネル(より具体的には、カソードパネルCPを構成する支持体10)と枠体30の第1面、及び、第2パネル(より具体的には、アノードパネルAPを構成する基板20)と枠体30の第2面とは、封止層31A,31Bによって接着されている。封止層31A,31Bは、封止剤32及びスペーサ粒子33から成る。より具体的には、封止剤32はフリットガラス焼成体から成り、スペーサ粒子33は、平均直径が0.15mmのガラス球体から成る。枠体30は、ガラスから成る。
【0042】
実施の形態1の表示装置においては、第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)との間の距離D0を2.0mmとし、枠体の高さH0を1.6mmとした。従って、スペーサ粒子の平均径D1(=0.15mm)であるが故に、
D1=α[(D0−H0)/2]
としたときのαの値は0.75である。
【0043】
カソードパネルCPは、
(a)支持体10と、
(b)支持体10上に形成され、第1の方向に延びる複数のカソード電極11と、
(c)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(d)絶縁層12上に形成され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数のゲート電極13と、
(e)カソード電極11とゲート電極13の重複する領域(電子放出領域EA)に位置するゲート電極13の部分に形成された第1開口部14Aと、
(f)絶縁層12に形成され、第1開口部14Aと連通した第2開口部14Bと、
(g)第2開口部14Bの底部に露出した電子放出部15、
から構成されている。
【0044】
尚、第1の方向と第2の方向とは直交している。また、カソード電極11及びゲート電極13は、それぞれ、ストライプ状である。
【0045】
一方、アノードパネルAPは、基板20、基板20上に形成された隔壁21と隔壁21との間の基板20上に形成され、多数の蛍光体粒子から成る蛍光体層22(赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)、及び、蛍光体層22上に形成されたアノード電極24を備えている。アノード電極24は、有効領域を覆う薄い1枚のシート状であり、アノード電極制御回路43に接続されている。アノード電極24は、厚さ約70nmのアルミニウムから成り、隔壁21を覆う状態で設けられている。蛍光体層22と蛍光体層22との間であって、隔壁21と基板20との間には、ブラックマトリックス23が形成されている。隔壁21とスペーサ25と蛍光体層22の配置状態の一例を模式的に図5あるいは図6に示す。図5に示す例においては、格子形状(井桁形状)の隔壁21が形成されており、蛍光体層22(赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)の形状はドット状である。一方、図6に示す例においては、隔壁21の平面形状は、略矩形の蛍光体層22の対向する二辺と平行に延びる帯状形状(ストライプ形状)を有する。尚、蛍光体層22を、図6の上下方向に延びるストライプ状とすることもできる。
【0046】
図1に示した例において、電子放出部15は、第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11の上に形成された円錐形のスピント型電界放出素子から構成されている。図4にカソードパネルCPの模式的な部分的斜視図を示すように、1画素分の領域に相当する電子放出領域EAが、カソードパネルCPの有効領域内に、2次元マトリクス状に配列されている。また、1画素は、カソードパネル側の電子放出領域EAと、この電子放出領域EAに対面したアノードパネル側の蛍光体層22とによって構成されている。有効領域には、かかる画素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列されている。
【0047】
この表示装置において表示を行う場合、カソード電極11には相対的な負電圧がカソード電極制御回路41から印加され、ゲート電極13には相対的な正電圧(数十ボルト〜数百ボルト)がゲート電極制御回路42から印加され、アノード電極24にはゲート電極13よりも更に高い正電圧(数百ボルト〜10キロボルト程度)がアノード電極制御回路43から印加される。かかる表示装置において表示を行う場合、例えば、カソード電極11にカソード電極制御回路41から走査信号を入力し、ゲート電極13にゲート電極制御回路42からビデオ信号を入力する。尚、これとは逆に、カソード電極11にカソード電極制御回路41からビデオ信号を入力し、ゲート電極13にゲート電極制御回路42から走査信号を入力してもよい。カソード電極11とゲート電極13との間に電圧を印加した際に生ずる電界により、量子トンネル効果に基づき電子放出部15から電子が放出され、この電子がアノード電極24に引き付けられ、アノード電極24を通過し、蛍光体層22に衝突する。その結果、蛍光体層22が励起されて発光し、所望の画像を基板20の外表面上に得ることができる。
【0048】
以下、実施の形態1の平面型表示装置(冷陰極電界電子放出表示装置)の組立方法を、図2の(A)、(B)及び図3の(A)、(B)を参照して説明する。
【0049】
[工程−100]
先ず、複数の電界放出素子が形成されたカソードパネルCP(第1パネル)、及び、アノード電極24や蛍光体層22等が形成されたアノードパネルAP(第2パネル)を準備する。更には、平均直径0.15mmのガラス球体から成るスペーサ粒子と、B2O3−PbO系フリットガラスから成るフリットガラスを主成分とする未焼成(未硬化)の封止剤から成るペースト状の未硬化封止材料を、枠体30の第1面及び第2面に塗布した状態で乾燥し、予備焼成(脱バインダーを目的として酸化雰囲気で焼成)することで、第1面上に未硬化封止層31aが形成され、第2面上に未硬化封止層31bが形成された枠体30(図2の(B)参照)を準備しておく。
【0050】
[工程−110]
そして、第1パネル(カソードパネルCP)と枠体30の第1面、及び、第2パネル(アノードパネルAP)と枠体30の第2面との間に、未硬化封止層31a,31bを配する。具体的には、図示しない載置台(パネルステージ)上に載置された第2パネル(アノードパネルAP)上に枠体30の第2面の未硬化封止層31bが接するように枠体30を置き(図3の(A)参照)、第1パネル(カソードパネルCP)及び第2パネル(アノードパネルAP)に設けられたアライメントマーク(図示せず)を光学的に読み取り、第2パネル(アノードパネルAP)に対する第1パネル(カソードパネルCP)の位置を調節しながら、未硬化封止層31aが予め塗布された枠体30の第1面上に第1パネル(カソードパネルCP)を置く(図3の(B)参照)。
【0051】
[工程−120]
その後、第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)との間で位置ずれが生じないように、第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)とを図示しない固定治具によって固定する。固定治具は、例えば、バネ付きの一種のクランプから成る。
【0052】
[工程−130]
次に、加熱処理を施すことで、未硬化封止層31a,31bを硬化させて封止層31A,31Bを得る(図2の(A)参照)。具体的には、このような第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)と枠体30との組立体を焼成炉内に搬入し、焼成炉内で加熱処理を施すことで未硬化封止層31a,31bを硬化させて、硬化後の封止層31A,31Bを得る。このとき、固定治具によって、アノードパネルAPを構成する基板20とカソードパネルCPとの間に圧力が加わった状態にある。具体的には、約390゜Cの温度にて約20分間、未硬化封止層31a,31bを焼成する。焼成時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
【0053】
[工程−140]
その後、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体30とによって囲まれた空間を、貫通孔(図示せず)及びチップ管(図示せず)を通じて排気し、空間の圧力が10−4Pa程度に達した時点でチップ管を加熱溶融により封じ切る。このようにして、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体30とに囲まれた空間を真空にすることができる。その後、必要な外部回路との配線接続を行い、表示装置を完成させる。
【0054】
尚、チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、カソードパネルCP及び/又はアノードパネルAPの無効領域に設けられた貫通部の周囲に、フリットガラス材料を用いて接着(接合)されている。尚、封じ切りを行う前に、表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので、好適である。
【0055】
カソードパネルCPとアノードパネルAPとをフリットガラスを構成成分とする封止層を用いて接合する場合、フリットガラスの焼成を高真空雰囲気中で行えば、カソードパネルCPとアノードパネルAPと枠体30とによって囲まれた空間を、接合と同時に真空とすることができる。
【0056】
未硬化封止層31a,31bの硬化時、固定治具によって加えられる圧力により、未硬化封止層31a,31bは、一種の流動状態となり、また、一種、潰れた状態となる。実施の形態1においては、封止層にはスペーサ粒子が含まれているが故に、第1パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させ、第2パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させるとき、これらの未硬化封止層の流動状態や潰れ具合に差異が生じ難く、その結果、第1パネルと枠体との間の気密性不良、第2パネルと枠体との間の気密性不良が生じ難い。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、各種の電界放出素子及びその製造方法を説明する。
【0058】
所謂3電極型の表示装置を構成する電界放出素子は、電子放出部の構造により、具体的には、例えば、以下の2つの範疇に分類することができる。即ち、第1の構造の電界放出素子は、
(イ)支持体上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極と、
(ロ)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ハ)絶縁層上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極と、
(ニ)ゲート電極に設けられた第1開口部、及び、絶縁層に設けられ、第1開口部と連通した第2開口部と、
(ホ)第2開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられた電子放出部、から成り、
第2開口部の底部に露出した電子放出部から電子が放出される構造を有する。
【0059】
このような第1の構造を有する電界放出素子として、上述したスピント型(円錐形の電子放出部が、第2開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられた電界放出素子)、扁平型(略平面状の電子放出部が、第2開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられた電界放出素子)を挙げることができる。
【0060】
第2の構造の電界放出素子は、
(イ)支持体上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極と、
(ロ)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ハ)絶縁層上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極と、
(ニ)ゲート電極に設けられた第1開口部、及び、絶縁層に設けられ、第1開口部と連通した第2開口部、
から成り、
第2開口部の底部に露出したカソード電極の部分が電子放出部に相当し、かかる第2開口部の底部に露出したカソード電極の部分から電子を放出する構造を有する。
【0061】
このような第2の構造を有する電界放出素子として、平坦なカソード電極の表面から電子を放出する平面型電界放出素子を挙げることができる。
【0062】
スピント型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金、クロム、クロム合金、及び、不純物を含有するシリコン(ポリシリコンやアモルファスシリコン)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。スピント型電界放出素子の電子放出部は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法によって形成することができる。
【0063】
扁平型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、カソード電極を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極を構成する材料の仕事関数、ゲート電極とカソード電極との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。電界放出素子におけるカソード電極を構成する代表的な材料として、タングステン(Φ=4.55eV)、ニオブ(Φ=4.02〜4.87eV)、モリブデン(Φ=4.53〜4.95eV)、アルミニウム(Φ=4.28eV)、銅(Φ=4.6eV)、タンタル(Φ=4.3eV)、クロム(Φ=4.5eV)、シリコン(Φ=4.9eV)を例示することができる。電子放出部は、これらの材料よりも小さな仕事関数Φを有していることが好ましく、その値は概ね3eV以下であることが好ましい。かかる材料として、炭素(Φ<1eV)、セシウム(Φ=2.14eV)、LaB6(Φ=2.66〜2.76eV)、BaO(Φ=1.6〜2.7eV)、SrO(Φ=1.25〜1.6eV)、Y2O3(Φ=2.0eV)、CaO(Φ=1.6〜1.86eV)、BaS(Φ=2.05eV)、TiN(Φ=2.92eV)、ZrN(Φ=2.92eV)を例示することができる。仕事関数Φが2eV以下である材料から電子放出部を構成することが、一層好ましい。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0064】
あるいは又、扁平型電界放出素子において、電子放出部を構成する材料として、かかる材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料から適宜選択してもよい。即ち、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)等の金属;シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体;炭素やダイヤモンド等の無機単体;及び酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化バリウム(BaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化錫(SnO2)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)等の化合物の中から、適宜選択することができる。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0065】
扁平型電界放出素子にあっては、特に好ましい電子放出部の構成材料として、炭素、より具体的にはダイヤモンドやグラファイト、カーボン・ナノチューブ構造体を挙げることができる。電子放出部をこれらから構成する場合、5×107V/m以下の電界強度にて、表示装置に必要な放出電子電流密度を得ることができる。また、ダイヤモンドは電気抵抗体であるため、各電子放出部から得られる放出電子電流を均一化することができ、よって、表示装置に組み込まれた場合の輝度ばらつきの抑制が可能となる。更に、これらの材料は、表示装置内の残留ガスのイオンによるスパッタ作用に対して極めて高い耐性を有するので、電界放出素子の長寿命化を図ることができる。
【0066】
カーボン・ナノチューブ構造体として、具体的には、カーボン・ナノチューブ及び/又はカーボン・ナノファイバーを挙げることができる。より具体的には、カーボン・ナノチューブから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノファイバーから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノチューブとカーボン・ナノファイバーの混合物から電子放出部を構成してもよい。カーボン・ナノチューブやカーボン・ナノファイバーは、巨視的には、粉末状であってもよいし、薄膜状であってもよいし、場合によっては、カーボン・ナノチューブ構造体は円錐状の形状を有していてもよい。カーボン・ナノチューブやカーボン・ナノファイバーは、周知のアーク放電法やレーザアブレーション法といったPVD法、プラズマCVD法やレーザCVD法、熱CVD法、気相合成法、気相成長法といった各種のCVD法によって製造、形成することができる。
【0067】
扁平型電界放出素子を、バインダ材料にカーボン・ナノチューブ構造体を分散させたものをカソード電極の所望の領域に例えば塗布した後、バインダ材料の焼成あるいは硬化を行う方法(より具体的には、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の有機系バインダ材料や水ガラス等の無機系バインダ材料にカーボン・ナノチューブ構造体を分散したものを、カソード電極の所望の領域に例えば塗布した後、溶媒の除去、バインダ材料の焼成・硬化を行う方法)によって製造することもできる。尚、このような方法を、カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法と呼ぶ。塗布方法として、スクリーン印刷法を例示することができる。
【0068】
あるいは又、扁平型電界放出素子を、カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布した後、金属化合物を焼成する方法によって製造することもでき、これによって、金属化合物を構成する金属原子を含むマトリックスにてカーボン・ナノチューブ構造体がカソード電極表面に固定される。尚、このような方法を、カーボン・ナノチューブ構造体の第2の形成方法と呼ぶ。マトリックスは、導電性を有する金属酸化物から成ることが好ましく、より具体的には、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム−錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、又は、酸化アンチモン−錫から構成することが好ましい。焼成後、各カーボン・ナノチューブ構造体の一部分がマトリックスに埋め込まれている状態を得ることもできるし、各カーボン・ナノチューブ構造体の全体がマトリックスに埋め込まれている状態を得ることもできる。マトリックスの体積抵抗率は、1×10−9Ω・m乃至5×10−6Ω・mであることが望ましい。
【0069】
金属化合物溶液を構成する金属化合物として、例えば、有機金属化合物、有機酸金属化合物、又は、金属塩(例えば、塩化物、硝酸塩、酢酸塩)を挙げることができる。有機酸金属化合物溶液として、有機錫化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を酸(例えば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解し、これを有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール)で希釈したものを挙げることができる。また、有機金属化合物溶液として、有機錫化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール)に溶解したものを例示することができる。溶液を100重量部としたとき、カーボン・ナノチューブ構造体が0.001〜20重量部、金属化合物が0.1〜10重量部、含まれた組成とすることが好ましい。溶液には、分散剤や界面活性剤が含まれていてもよい。また、マトリックスの厚さを増加させるといった観点から、金属化合物溶液に、例えばカーボンブラック等の添加物を添加してもよい。また、場合によっては、有機溶剤の代わりに水を溶媒として用いることもできる。
【0070】
カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布する方法として、スプレー法、スピンコーティング法、ディッピング法、ダイクォーター法、スクリーン印刷法を例示することができるが、中でもスプレー法を採用することが塗布の容易性といった観点から好ましい。
【0071】
カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布した後、金属化合物溶液を乾燥させて金属化合物層を形成し、次いで、カソード電極上の金属化合物層の不要部分を除去した後、金属化合物を焼成してもよいし、金属化合物を焼成した後、カソード電極上の不要部分を除去してもよいし、カソード電極の所望の領域上にのみ金属化合物溶液を塗布してもよい。
【0072】
金属化合物の焼成温度は、例えば、金属塩が酸化されて導電性を有する金属酸化物となるような温度、あるいは又、有機金属化合物や有機酸金属化合物が分解して、有機金属化合物や有機酸金属化合物を構成する金属原子を含むマトリックス(例えば、導電性を有する金属酸化物)が形成できる温度であればよく、例えば、300゜C以上とすることが好ましい。焼成温度の上限は、電界放出素子あるいはカソードパネルの構成要素に熱的な損傷等が発生しない温度とすればよい。
【0073】
カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法あるいは第2の形成方法にあっては、電子放出部の形成後、電子放出部の表面の一種の活性化処理(洗浄処理)を行うことが、電子放出部からの電子の放出効率の一層の向上といった観点から好ましい。このような処理として、水素ガス、アンモニアガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、メタンガス、エチレンガス、アセチレンガス、窒素ガス等のガス雰囲気中でのプラズマ処理を挙げることができる。
【0074】
カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法あるいは第2の形成方法にあっては、電子放出部は、第2開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面に形成されていればよく、第2開口部の底部に位置するカソード電極の部分から第2開口部の底部以外のカソード電極の部分の表面に延在するように形成されていてもよい。また、電子放出部は、第2開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面の全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。
【0075】
各種の電界放出素子におけるカソード電極を構成する材料として、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)等の金属;これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(インジウム・錫酸化物)を例示することができる。カソード電極の厚さは、おおよそ0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲とすることが望ましいが、かかる範囲に限定するものではない。
【0076】
各種の電界放出素子におけるゲート電極を構成する導電性材料として、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)及び亜鉛(Zn)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属;これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);あるいはシリコン(Si)等の半導体;ITO(インジウム錫酸化物)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。
【0077】
カソード電極やゲート電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ、スクリーン印刷法、メッキ法、リフトオフ法等を挙げることができる。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、例えばストライプ状のカソード電極を形成することが可能である。
【0078】
第1の構造あるいは第2の構造を有する電界放出素子においては、電界放出素子の構造に依存するが、ゲート電極及び絶縁層に設けられた1つの第1開口部及び第2開口部内に1つの電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極及び絶縁層に設けられた1つの第1開口部及び第2開口部内に複数の電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、かかる第1開口部と連通する1つの第2開口部を絶縁層に設け、絶縁層に設けられた1つの第2開口部内に1又は複数の電子放出部が存在してもよい。
【0079】
第1開口部あるいは第2開口部の平面形状(支持体表面と平行な仮想平面で開口部を切断したときの形状)は、円形、楕円形、矩形、多角形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた多角形等、任意の形状とすることができる。第1開口部の形成は、例えば、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができ、あるいは又、ゲート電極の形成方法に依っては、第1開口部を直接形成することもできる。第2開口部の形成も、例えば、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができる。
【0080】
第1の構造を有する電界放出素子において、カソード電極と電子放出部との間に抵抗体層を設けてもよい。あるいは又、カソード電極の表面が電子放出部に相当している場合(即ち、第2の構造を有する電界放出素子においては)、カソード電極を導電材料層、抵抗体層、電子放出部に相当する電子放出層の3層構成としてもよい。抵抗体層を設けることによって、電界放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化を図ることができる。抵抗体層を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料、SiN、アモルファスシリコン等の半導体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル等の高融点金属酸化物を例示することができる。抵抗体層の形成方法として、スパッタリング法や、CVD法やスクリーン印刷法を例示することができる。抵抗値は、概ね1×105〜1×107Ω、好ましくは数MΩとすればよい。
【0081】
絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiN、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料、SiN、ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等の公知のプロセスが利用できる。
【0082】
[スピント型電界放出素子]
スピント型電界放出素子は、
(イ)支持体10上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極11と、
(ロ)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(ハ)絶縁層12上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極13と、
(ニ)ゲート電極13に設けられた第1開口部14A、及び、絶縁層12に設けられ、第1開口部14Aと連通した第2開口部14Bと、
(ホ)第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11上に設けられた電子放出部15、
から成り、
第2開口部14Bの底部に露出した円錐形の電子放出部15から電子が放出される構造を有する。
【0083】
以下、スピント型電界放出素子の製造方法を、カソードパネルを構成する支持体10等の模式的な一部端面図である図7の(A)、(B)及び図8の(A)、(B)を参照して説明する。
【0084】
尚、このスピント型電界放出素子は、基本的には、円錐形の電子放出部15を金属材料の垂直蒸着により形成する方法によって得ることができる。即ち、ゲート電極13に設けられた第1開口部14Aに対して蒸着粒子は垂直に入射するが、第1開口部14Aの開口端付近に形成されるオーバーハング状の堆積物による遮蔽効果を利用して、第2開口部14Bの底部に到達する蒸着粒子の量を漸減させ、円錐形の堆積物である電子放出部15を自己整合的に形成する。ここでは、不要なオーバーハング状の堆積物の除去を容易とするために、ゲート電極13及び絶縁層12上に剥離層51を予め形成しておく方法について説明する。尚、図7〜図12においては、1つの電子放出部のみを図示した。
【0085】
[工程−A0]
先ず、例えばガラス基板から成る支持体10の上に、例えばポリシリコンから成るカソード電極用導電材料層をプラズマCVD法にて成膜した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングして、ストライプ状のカソード電極11を形成する。その後、全面にSiO2から成る絶縁層12をCVD法にて形成する。
【0086】
[工程−A1]
次に、絶縁層12上に、ゲート電極用導電材料層(例えば、TiN層)をスパッタ法にて成膜し、次いで、ゲート電極用導電材料層をリソグラフィ技術及びドライエッチング技術にてパターニングすることによって、ストライプ状のゲート電極13を得ることができる。ストライプ状のカソード電極11は、図面の紙面左右方向に延び、ストライプ状のゲート電極13は、図面の紙面垂直方向に延びている。
【0087】
尚、ゲート電極13を、真空蒸着法等のPVD法、CVD法、電気メッキ法や無電解メッキ法といったメッキ法、スクリーン印刷法、レーザアブレーション法、ゾル−ゲル法、リフトオフ法等の公知の薄膜形成技術と、必要に応じてエッチング技術との組合せによって形成してもよい。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、例えばストライプ状のゲート電極を形成することが可能である。
【0088】
[工程−A2]
その後、再びレジスト層を形成し、エッチングによってゲート電極13に第1開口部14Aを形成し、更に、絶縁層に第2開口部14Bを形成し、第2開口部14Bの底部にカソード電極11を露出させた後、レジスト層を除去する。こうして、図7の(A)に示す構造を得ることができる。
【0089】
[工程−A3]
次に、支持体10を回転させながらゲート電極13上を含む絶縁層12上にニッケル(Ni)を斜め蒸着することにより、剥離層51を形成する(図7の(B)参照)。このとき、支持体10の法線に対する蒸着粒子の入射角を十分に大きく選択することにより(例えば、入射角65度〜85度)、第2開口部14Bの底部にニッケルを殆ど堆積させることなく、ゲート電極13及び絶縁層12の上に剥離層51を形成することができる。剥離層51は、第1開口部14Aの開口端から庇状に張り出しており、これによって第1開口部14Aが実質的に縮径される。
【0090】
[工程−A4]
次に、全面に例えば導電材料としてモリブデン(Mo)を垂直蒸着する(入射角3度〜10度)。このとき、図8の(A)に示すように、剥離層51上でオーバーハング形状を有する導電材料層52が成長するに伴い、第1開口部14Aの実質的な直径が次第に縮小されるので、第2開口部14Bの底部において堆積に寄与する蒸着粒子は、次第に第1開口部14Aの中央付近を通過するものに限られるようになる。その結果、第2開口部14Bの底部には円錐形の堆積物が形成され、この円錐形の堆積物が電子放出部15となる。
【0091】
[工程−A5]
その後、図8の(B)に示すように、リフトオフ法にて剥離層51をゲート電極13及び絶縁層12の表面から剥離し、ゲート電極13及び絶縁層12の上方の導電材料層52を選択的に除去する。こうして、複数のスピント型電界放出素子が形成されたカソードパネルを得ることができる。
【0092】
[扁平型電界放出素子(その1)]
扁平型電界放出素子は、
(イ)支持体10上に設けられた、第1の方向に延びるカソード電極11と、(ロ)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(ハ)絶縁層12上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるゲート電極13と、
(ニ)ゲート電極13に設けられた第1開口部14A、及び、絶縁層12に設けられ、第1開口部14Aと連通した第2開口部14Bと、
(ホ)第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11上に設けられた扁平状の電子放出部15A、
から成り、
第2開口部14Bの底部に露出した電子放出部15Aから電子が放出される構造を有する。
【0093】
電子放出部15Aは、マトリックス61、及び、先端部が突出した状態でマトリックス61中に埋め込まれたカーボン・ナノチューブ構造体(具体的には、カーボン・ナノチューブ62)から成り、マトリックス61は、導電性を有する金属酸化物(具体的には、酸化インジウム−錫、ITO)から成る。
【0094】
以下、電界放出素子の製造方法を、図9の(A)、(B)及び図10の(A)、(B)を参照して説明する。
【0095】
[工程−B0]
先ず、例えばガラス基板から成る支持体10上に、例えばスパッタリング法及びエッチング技術により形成された厚さ約0.2μmのクロム(Cr)層から成るストライプ状のカソード電極11を形成する。
【0096】
[工程−B1]
次に、カーボン・ナノチューブ構造体が分散された有機酸金属化合物から成る金属化合物溶液をカソード電極11上に、例えばスプレー法にて塗布する。具体的には、以下の表1に例示する金属化合物溶液を用いる。尚、金属化合物溶液中にあっては、有機錫化合物及び有機インジウム化合物は酸(例えば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解された状態にある。カーボン・ナノチューブはアーク放電法にて製造され、平均直径30nm、平均長さ1μmである。塗布に際しては、支持体を70〜150゜Cに加熱しておく。塗布雰囲気を大気雰囲気とする。塗布後、5〜30分間、支持体を加熱し、酢酸ブチルを十分に蒸発させる。このように、塗布時、支持体を加熱することによって、カソード電極の表面に対してカーボン・ナノチューブが水平に近づく方向にセルフレベリングする前に塗布溶液の乾燥が始まる結果、カーボン・ナノチューブが水平にはならない状態でカソード電極の表面にカーボン・ナノチューブを配置することができる。即ち、カーボン・ナノチューブの先端部がアノード電極の方向を向くような状態、言い換えれば、カーボン・ナノチューブを、支持体の法線方向に近づく方向に配向させることができる。尚、予め、表1に示す組成の金属化合物溶液を調製しておいてもよいし、カーボン・ナノチューブを添加していない金属化合物溶液を調製しておき、塗布前に、カーボン・ナノチューブと金属化合物溶液とを混合してもよい。また、カーボン・ナノチューブの分散性向上のため、金属化合物溶液の調製時、超音波を照射してもよい。
【0097】
[表1]
有機錫化合物及び有機インジウム化合物:0.1〜10重量部
分散剤(ドデシル硫酸ナトリウム) :0.1〜5 重量部
カーボン・ナノチューブ :0.1〜20重量部
酢酸ブチル :残余
【0098】
尚、有機酸金属化合物溶液として、有機錫化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化錫が得られ、有機インジウム化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化インジウムが得られ、有機亜鉛化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化亜鉛が得られ、有機アンチモン化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化アンチモンが得られ、有機アンチモン化合物及び有機錫化合物を酸に溶解したもの用いれば、マトリックスとして酸化アンチモン−錫が得られる。また、有機金属化合物溶液として、有機錫化合物を用いれば、マトリックスとして酸化錫が得られ、有機インジウム化合物を用いれば、マトリックスとして酸化インジウムが得られ、有機亜鉛化合物を用いれば、マトリックスとして酸化亜鉛が得られ、有機アンチモン化合物を用いれば、マトリックスとして酸化アンチモンが得られ、有機アンチモン化合物及び有機錫化合物を用いれば、マトリックスとして酸化アンチモン−錫が得られる。あるいは又、金属の塩化物の溶液(例えば、塩化錫、塩化インジウム)を用いてもよい。
【0099】
場合によっては、金属化合物溶液を乾燥した後の金属化合物層の表面に著しい凹凸が形成されている場合がある。このような場合には、金属化合物層の上に、支持体を加熱することなく、再び、金属化合物溶液を塗布することが望ましい。
【0100】
[工程−B2]
その後、有機酸金属化合物から成る金属化合物を焼成することによって、有機酸金属化合物を構成する金属原子(具体的には、In及びSn)を含むマトリックス(具体的には、金属酸化物であり、より一層具体的にはITO)61にてカーボン・ナノチューブ62がカソード電極11の表面に固定された電子放出部15Aを得る。焼成を、大気雰囲気中で、350゜C、20分の条件にて行う。こうして、得られたマトリックス61の体積抵抗率は、5×10−7Ω・mであった。有機酸金属化合物を出発物質として用いることにより、焼成温度350゜Cといった低温においても、ITOから成るマトリックス61を形成することができる。尚、有機酸金属化合物溶液の代わりに、有機金属化合物溶液を用いてもよいし、金属の塩化物の溶液(例えば、塩化錫、塩化インジウム)を用いた場合、焼成によって塩化錫、塩化インジウムが酸化されつつ、ITOから成るマトリックス61が形成される。
【0101】
[工程−B3]
次いで、全面にレジスト層を形成し、カソード電極11の所望の領域の上方に、例えば直径10μmの円形のレジスト層を残す。そして、10〜60゜Cの塩酸を用いて、1〜30分間、マトリックス61をエッチングして、電子放出部の不要部分を除去する。更に、所望の領域以外にカーボン・ナノチューブが未だ存在する場合には、以下の表2に例示する条件の酸素プラズマエッチング処理によってカーボン・ナノチューブをエッチングする。尚、バイアスパワーは0Wでもよいが、即ち、直流としてもよいが、バイアスパワーを加えることが望ましい。また、支持体を、例えば80゜C程度に加熱してもよい。
【0102】
[表2]
使用装置 :RIE装置
導入ガス :酸素を含むガス
プラズマ励起パワー:500W
バイアスパワー :0〜150W
処理時間 :10秒以上
【0103】
あるいは又、表3に例示する条件のウェットエッチング処理によってカーボン・ナノチューブをエッチングしてもよい。
【0104】
[表3]
使用溶液:KMnO4
温度 :20〜120゜C
処理時間:10秒〜20分
【0105】
その後、レジスト層を除去することによって、図9の(A)に示す構造を得ることができる。尚、直径10μmの円形の電子放出部を残すことに限定されない。例えば、電子放出部をカソード電極11上に残してもよい。
【0106】
尚、[工程−B1]、[工程−B3]、[工程−B2]の順に実行してもよい。
【0107】
[工程−B4]
次に、電子放出部15A、支持体10及びカソード電極11上に絶縁層12を形成する。具体的には、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)を原料ガスとして使用するCVD法により、全面に、厚さ約1μmの絶縁層12を形成する。
【0108】
[工程−B5]
その後、絶縁層12上にストライプ状のゲート電極13を形成し、更に、絶縁層12及びゲート電極13上にマスク層63を設けた後、ゲート電極13に第1開口部14Aを形成し、更に、ゲート電極13に形成された第1開口部14Aに連通する第2開口部14Bを絶縁層12に形成する(図9の(B)参照)。尚、マトリックス61を金属酸化物、例えばITOから構成する場合、絶縁層12をエッチングするとき、マトリックス61がエッチングされることはない。即ち、絶縁層12とマトリックス61とのエッチング選択比はほぼ無限大である。従って、絶縁層12のエッチングによってカーボン・ナノチューブ62に損傷が発生することはない。
【0109】
[工程−B6]
次いで、以下の表4に例示する条件にて、マトリックス61の一部を除去し、マトリックス61から先端部が突出した状態のカーボン・ナノチューブ62を得ることが好ましい。こうして、図10の(A)に示す構造の電子放出部15Aを得ることができる。
【0110】
[表4]
エッチング溶液:塩酸
エッチング時間:10秒〜30秒
エッチング温度:10〜60゜C
【0111】
マトリックス61のエッチングによって一部あるいは全てのカーボン・ナノチューブ62の表面状態が変化し(例えば、その表面に酸素原子や酸素分子、フッ素原子が吸着し)、電界放出に関して不活性となっている場合がある。それ故、その後、電子放出部15Aに対して水素ガス雰囲気中でのプラズマ処理を行うことが好ましく、これによって、電子放出部15Aが活性化し、電子放出部15Aからの電子の放出効率の一層の向上させることができる。プラズマ処理の条件を、以下の表5に例示する。
【0112】
[表5]
使用ガス :H2=100sccm
電源パワー :1000W
支持体印加電力:50V
反応圧力 :0.1Pa
支持体温度 :300゜C
【0113】
その後、カーボン・ナノチューブ62からガスを放出させるために、加熱処理や各種のプラズマ処理を施してもよいし、カーボン・ナノチューブ62の表面に意図的に吸着物を吸着させるために吸着させたい物質を含むガスにカーボン・ナノチューブ62を晒してもよい。また、カーボン・ナノチューブ62を精製するために、酸素プラズマ処理やフッ素プラズマ処理を行ってもよい。
【0114】
[工程−B7]
その後、絶縁層12に設けられた第2開口部14Bの側壁面を等方的なエッチングによって後退させることが、ゲート電極13の開口端部を露出させるといった観点から、好ましい。尚、等方的なエッチングは、ケミカルドライエッチングのようにラジカルを主エッチング種として利用するドライエッチング、あるいはエッチング液を利用するウェットエッチングにより行うことができる。エッチング液としては、例えば49%フッ酸水溶液と純水の1:100(容積比)混合液を用いることができる。次いで、マスク層63を除去する。こうして、図10の(B)に示す電界放出素子を完成することができる。
【0115】
尚、[工程−B5]の後、[工程−B7]、[工程−B6]の順に実行してもよい。
【0116】
[扁平型電界放出素子(その2)]
扁平型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図11の(A)に示す。この扁平型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体10上に形成されたカソード電極11、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成されたゲート電極13、ゲート電極13及び絶縁層12を貫通する開口部14(ゲート電極13に設けられた第1開口部、及び、絶縁層12に設けられ、第1開口部と連通した第2開口部)、並びに、開口部14の底部に位置するカソード電極11の部分の上に設けられた扁平の電子放出部(電子放出層15B)から成る。ここで、電子放出層15Bは、図面の紙面垂直方向に延びたストライプ状のカソード電極11上に形成されている。また、ゲート電極13は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極11及びゲート電極13はクロムから成る。電子放出層15Bは、具体的には、グラファイト粉末から成る薄層から構成されている。図11の(A)に示した扁平型電界放出素子においては、カソード電極11の表面の全域に亙って、電子放出層15Bが形成されているが、このような構造に限定するものではなく、要は、少なくとも開口部14の底部に電子放出層15Bが設けられていればよい。
【0117】
[平面型電界放出素子]
平面型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図11の(B)に示す。この平面型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体10上に形成されたストライプ状のカソード電極11、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成されたストライプ状のゲート電極13、並びに、ゲート電極13及び絶縁層12を貫通する第1開口部及び第2開口部(開口部14)から成る。開口部14の底部にはカソード電極11が露出している。カソード電極11は、図面の紙面垂直方向に延び、ゲート電極13は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極11及びゲート電極13はクロム(Cr)から成り、絶縁層12はSiO2から成る。ここで、開口部14の底部に露出したカソード電極11の部分が電子放出部15Cに相当する。
【0118】
以上、本発明を、発明の実施の形態に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。発明の実施の形態にて説明したアノードパネルやカソードパネル、表示装置や電界放出素子の構成、構造は例示であり、適宜変更することができるし、アノードパネルやカソードパネル、表示装置や電界放出素子の製造方法も例示であり、適宜変更することができる。更には、アノードパネルやカソードパネルの製造において使用した各種材料も例示であり、適宜変更することができる。表示装置においては、専らカラー表示を例にとり説明したが、単色表示とすることもできる。また、実施の形態においては、平面型表示装置を専ら冷陰極電界電子放出表示装置としたが、平面型表示装置をプラズマ表示装置とすることもできる。
【0119】
本発明の平面型表示装置において、封止層を構成する封止剤を、融点が120〜400゜C程度の所謂低融点金属材料を用いてもよい。かかる低融点金属材料としては、In(インジウム:融点157゜C);インジウム−金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220〜370゜C)、Sn95Cu5(融点227〜370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304〜365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;Sn5Pb95(融点300〜314゜C)、Sn2Pb98(融点316〜322゜C)等の錫−鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。そして、この場合には、第1パネルと枠体の第1面、及び、第2パネルと枠体の第2面との間に、所謂低融点金属材料から成る封止剤及びスペーサ粒子から構成された、例えばシート状あるいは箔状の封止層を配した後、加熱処理を施すことで封止層を溶融させ、次いで、封止層を冷却することで、第1パネルと第2パネルとを、それらの周縁部において枠体を介して接合させることができる。
【0120】
実施の形態においては、第1パネルを複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルCPから構成し、第2パネルをアノード電極及び蛍光体層等が形成されたアノードパネルAPから構成したが、その代わりに、第2パネルを複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルCPから構成し、第1パネルをアノード電極及び蛍光体層等が形成されたアノードパネルAPから構成してもよい。
【0121】
アノード電極は、実施の形態にて説明したように有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式のアノード電極としてもよいし、1又は複数の電子放出部、あるいは、1又は複数の画素に対応するアノード電極ユニットが集合した形式のアノード電極としてもよい。アノード電極が前者の構成の場合、かかるアノード電極をアノード電極制御回路に接続すればよいし、アノード電極が後者の構成の場合、例えば、各アノード電極ユニットをアノード電極制御回路に接続すればよい。
【0122】
また、電界放出素子においては、専ら1つの開口部に1つの電子放出部が対応する形態を説明したが、電界放出素子の構造に依っては、1つの開口部に複数の電子放出部が対応した形態、あるいは、複数の開口部に1つの電子放出部が対応する形態とすることもできる。あるいは又、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、絶縁層にかかる複数の第1開口部に連通した複数の第2開口部を設け、1又は複数の電子放出部を設ける形態とすることもできる。
【0123】
電界放出素子において、ゲート電極13及び絶縁層12の上に更に第2の絶縁層72を設け、第2の絶縁層72上に収束電極73を設けてもよい。このような構造を有する電界放出素子の模式的な一部端面図を図12に示す。第2の絶縁層72には、第1開口部14Aに連通した第3開口部74が設けられている。収束電極73の形成は、例えば、[工程−A2]において、絶縁層12上にストライプ状のゲート電極13を形成した後、第2の絶縁層72を形成し、次いで、第2の絶縁層72上にパターニングされた収束電極73を形成した後、収束電極73、第2の絶縁層72に第3開口部74を設け、更に、ゲート電極13に第1開口部14Aを設ければよい。尚、収束電極のパターニングに依存して、1又は複数の電子放出部、あるいは、1又は複数の画素に対応する収束電極ユニットが集合した形式の収束電極とすることもでき、あるいは又、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式の収束電極とすることもできる。また、電子放出部として、実施の形態2にて説明した各種の電子放出部とすることができる。即ち、図12においては、スピント型電界放出素子を図示したが、その他の電界放出素子とすることもできることは云うまでもない。
【0124】
ゲート電極を、有効領域を1枚のシート状の導電材料(開口部を有する)で被覆した形式のゲート電極とすることもできる。この場合には、かかるゲート電極に正の電圧を印加する。そして、各画素を構成するカソード電極とカソード電極制御回路との間に、例えば、TFTから成るスイッチング素子を設け、かかるスイッチング素子の作動によって、各画素を構成する電子放出部への印加状態を制御し、画素の発光状態を制御する。
【0125】
あるいは又、カソード電極を、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式のカソード電極とすることもできる。この場合には、かかるカソード電極に電圧を印加する。そして、各画素を構成する電子放出部とゲート電極制御回路との間に、例えば、TFTから成るスイッチング素子を設け、かかるスイッチング素子の作動によって、各画素を構成するゲート電極への印加状態を制御し、画素の発光状態を制御する。
【0126】
冷陰極電界電子放出表示装置は、カソード電極、ゲート電極及びアノード電極から構成された所謂3電極型に限定されず、カソード電極及びアノード電極から構成された所謂2電極型とすることもできる。このような構造の表示装置の模式的な一部端面図を図13に示す。尚、図13においては、隔壁及びブラックマトリックスの図示を省略している。この表示装置における電界放出素子は、支持体10上に設けられたカソード電極11と、カソード電極11上に形成されたカーボン・ナノチューブ62から構成された電子放出部15Aから成る。アノードパネルAPを構成するアノード電極24Aはストライプ状である。尚、電子放出部の構造はカーボン・ナノチューブ構造体に限定されない。ストライプ状のカソード電極11の射影像とストライプ状のアノード電極24Aの射影像とは直交する。具体的には、ストライプ状のカソード電極11は図面の紙面垂直方向に延び、ストライプ状のアノード電極24Aは図面の紙面左右方向に延びている。この表示装置におけるカソードパネルCPにおいては、上述のような電界放出素子の複数から構成された電子放出領域EAが有効領域に2次元マトリクス状に多数形成されている。
【0127】
この表示装置においては、アノード電極24Aによって形成された電界に基づき、量子トンネル効果に基づき電子放出部15Aから電子が放出され、この電子がアノード電極24Aに引き付けられ、蛍光体層22に衝突する。即ち、アノード電極24Aの射影像とカソード電極11の射影像とが重複する領域(アノード電極/カソード電極重複領域)に位置する電子放出部15Aから電子が放出される、所謂単純マトリクス方式により、表示装置の駆動が行われる。具体的には、カソード電極制御回路41からカソード電極11に相対的に負の電圧を印加し、アノード電極制御回路43からアノード電極24Aに相対的に正の電圧を印加する。その結果、列選択されたカソード電極11と行選択されたアノード電極24A(あるいは、行選択されたカソード電極11と列選択されたアノード電極24A)とのアノード電極/カソード電極重複領域に位置する電子放出部15Aを構成するカーボン・ナノチューブ62から選択的に真空空間中へ電子が放出され、この電子がアノード電極24Aに引き付けられてアノードパネルAPを構成する蛍光体層22に衝突し、蛍光体層22を励起、発光させる。
【0128】
表面伝導型電界放出素子と通称される電界放出素子から電子放出領域EAを構成することもできる。この表面伝導型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体上に酸化錫(SnO2)、金(Au)、酸化インジウム(In2O3)/酸化錫(SnO2)、カーボン、酸化パラジウム(PdO)等の導電材料から成り、微小面積を有し、所定の間隔(ギャップ)を開けて配された一対の電極がマトリクス状に形成されて成る。それぞれの電極の上には炭素薄膜が形成されている。そして、一対の電極の内の一方の電極に行方向配線が接続され、一対の電極の内の他方の電極に列方向配線が接続された構成を有する。一対の電極に電圧を印加することによって、ギャップを挟んで向かい合った炭素薄膜に電界が加わり、炭素薄膜から電子が放出される。かかる電子をアノードパネル上の蛍光体層に衝突させることによって、蛍光体層が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。
【0129】
【発明の効果】
本発明においては、封止層にスペーサ粒子が含まれているが故に、第1パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させ、第2パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させるとき、これらの未硬化封止層の流動状態や潰れ具合に差異が生じ難い。それ故、第1パネルと枠体との間の気密性不良、第2パネルと枠体との間の気密性不良が生じ難く、高い信頼性を有する平面型表示装置を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、発明の実施の形態1の平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図2】図2の(A)は、発明の実施の形態1の平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の周縁部を拡大した模式的な一部断面図であり、図2の(B)は、第1面及び第2面上に未硬化封止層が形成された状態の枠体の模式的な断面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、発明の実施の形態1の平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の組立方法を説明するための枠体等の模式的な一部断面図である。
【図4】図4は、冷陰極電界電子放出表示装置におけるカソードパネルの模式的な部分的斜視図である。
【図5】図5は、アノードパネルにおける隔壁とスペーサと蛍光体層の配置状態の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、アノードパネルにおける隔壁とスペーサと蛍光体層の配置状態の一例を模式的に示す図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、スピント型冷陰極電界電子放出素子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、図7の(B)に引き続き、スピント型冷陰極電界電子放出素子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その1)の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図10】図10の(A)及び(B)は、図9の(B)に引き続き、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その1)の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その2)の模式的な一部断面図、及び、平面型冷陰極電界電子放出素子の模式的な一部断面図である。
【図12】図12は、収束電極を有するスピント型冷陰極電界電子放出素子の模式的な一部端面図である。
【図13】図13は、所謂2電極型の冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図14】図14は、従来の冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、従来の冷陰極電界電子放出表示装置を組み立てる際の問題点を説明するための、冷陰極電界電子放出表示装置の周縁部の模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
CP・・・カソードパネル、AP・・・アノードパネル、10・・・支持体、11・・・カソード電極、12・・・絶縁層、13・・・ゲート電極、14・・・開口部、14A・・・第1開口部、14B・・・第2開口部、15,15A,15B,15C・・・電子放出部、20・・・基板、21・・・隔壁、22,22R,22G,22B・・・蛍光体層、23・・・ブラックマトリックス、24・・・アノード電極、25・・・スペーサ、30・・・枠体、31A,31B・・・硬化後の封止層、31a,31b・・・未硬化封止層、32・・・封止剤、33・・・スペーサ粒子、41・・・カソード電極制御回路、42・・・ゲート電極制御回路、43・・・アノード電極制御回路、51・・・剥離層、52・・・導電材料層、61・・・マトリックス、62・・・カーボン・ナノチューブ、63・・・マスク層、72・・・第2の絶縁層、73・・・収束電極、74・・・第3開口部
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面型表示装置及びその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン受像機や情報端末機器に用いられる表示装置の分野では、従来主流の陰極線管(CRT)から、薄型化、軽量化、大画面化、高精細化の要求に応え得る平面型(フラットパネル型)の表示装置への移行が検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)、冷陰極電界電子放出表示装置(FED:フィールドエミッションディスプレイ)を例示することができる。このなかでも、液晶表示装置は情報端末機器用の表示装置として広く普及しているが、据置き型のテレビジョン受像機に適用するには、高輝度化や大型化に未だ課題を残している。これに対して、冷陰極電界電子放出表示装置は、熱的励起によらず、量子トンネル効果に基づき固体から真空中に電子を放出することが可能な冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と呼ぶ場合がある)を利用しており、高輝度及び低消費電力の点から注目を集めている。
【0003】
電界放出素子を利用した冷陰極電界電子放出表示装置(以下、単に、表示装置と呼ぶ場合がある)の模式的な一部端面図を図14に示し、カソードパネルCPの模式的な部分的斜視図を図4に示す。図示した電界放出素子は、円錐形の電子放出部15を有する、所謂スピント(Spindt)型電界放出素子と呼ばれるタイプの素子である。この電界放出素子は、支持体10上に形成されたカソード電極11と、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、絶縁層12上に形成されたゲート電極13と、ゲート電極13に設けられた第1開口部14Aと、絶縁層12に設けられ、第1開口部14Aに連通した第2開口部14Bと、第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11上に形成された円錐形の電子放出部15から構成されている。一般に、カソード電極11とゲート電極13とは、これらの両電極の射影像が互いに直交する方向に各々ストライプ状に形成されており、これらの両電極の射影像が重複する部分に相当する領域(1画素分の領域に相当する。この領域を、以下、電子放出領域EAと呼ぶ)に、通常、複数の電界放出素子が設けられている。更に、かかる電子放出領域EAが、カソードパネルCPの有効領域(実際の表示画面として機能する領域)内に、通常、2次元マトリクス状に配列されている。
【0004】
一方、アノードパネルAPは、基板20と、基板20上に形成され、所定のパターンを有する蛍光体層22(カラー表示の場合、赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)と、その上に形成された反射膜としても機能するアノード電極24から構成されている。
【0005】
1画素は、カソードパネル側のカソード電極11とゲート電極13とが重複した領域に設けられた電界放出素子の一群と、これらの電界放出素子の一群に対面したアノードパネル側の蛍光体層22とによって構成されている。実際の表示部分として機能する領域である有効領域には、かかる画素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列されている。尚、蛍光体層22と蛍光体層22との間の基板20上には隔壁21が形成されている。
【0006】
そして、アノードパネルAPとカソードパネルCPとを、電界放出素子と蛍光体層22とが対向するように配置し、周縁部においてガラス板から成る枠体130及びフリットガラス層131を用いて接合することによって、表示装置を作製することができる(例えば、特開平7−142015号公報の図8参照)。有効領域を包囲し、画素を選択するための周辺回路が形成された無効領域には、真空排気用の貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔には真空排気後に封じ切られたチップ管(図示せず)が接続されている。即ち、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体130とによって囲まれた空間は高真空となっている。そして、アノードパネルAP及びカソードパネルCPには大気によって圧力が加わるので、この圧力によって表示装置が破損しないように、アノードパネルAPとカソードパネルCPとの間には所謂スペーサ25(図5参照)が配置されている。尚、図14においては、スペーサの図示を省略した。
【0007】
また、上述した特開平7−142015号公報には、アノードパネルAPとカソードパネルCPとに間の距離が0.2mm程度と非常に狭い場合には、枠体を使用すること無く、粒状体若しくは棒状体が混入されたフリットガラスのみを用いてアノードパネルAPとカソードパネルCPとを接合する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−142015号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図14に示した構造を有する表示装置を組み立てる際、アノードパネルAPと枠体130との間に未焼成フリットガラス層131bを配し、カソードパネルCPを構成する支持体10と枠体130との間に未焼成フリットガラス層131aを配し、アノードパネルAPを構成する基板20とカソードパネルCPとの間に圧力を加えた状態で(図15の(A)の模式的な一部断面図を参照)、フリットガラス層131a,131bの焼成を行う。このとき、フリットガラス層131aの流動状態や潰れ具合とフリットガラス層131bの流動状態や潰れ具合との間に偏りが生じることが屡々有る(図15の(B)の模式的な一部断面図を参照)。そして、このような現象が生じると、気密性不良が発生する虞がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、第1パネルと第2パネルとがそれらの周縁部において枠体を介して接合されて成り、気密性不良が生じ難い構成、構造を有する平面型表示装置及びその組立方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の平面型表示装置は、第1パネルと第2パネルとが、それらの周縁部において枠体を介して接合されて成る平面型表示装置であって、
該第1パネルと該枠体の第1面、及び、該第2パネルと該枠体の第2面とは、それぞれ、封止層によって接着され、
封止層は、封止剤及びスペーサ粒子から成ることを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の平面型表示装置の組立方法は、第1パネルと第2パネルとが、それらの周縁部において枠体を介して接合されて成る平面型表示装置の組立方法であって、
該第1パネルと該枠体の第1面、及び、該第2パネルと該枠体の第2面との間に、それぞれ、未硬化封止層を配した後、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させて封止層を得る工程を具備し、
封止層は、封止剤及びスペーサ粒子から成ることを特徴とする。
【0013】
本発明の平面型表示装置の組立方法においては、第1パネルと枠体の第1面との間に未硬化封止層を配するが、未硬化封止層を配する具体的な方法として、枠体の第1面にペースト状の未硬化封止材料(未硬化の封止剤及びスペーサ粒子から成る)を塗布し乾燥する方法、第1パネルの所定の部位にペースト状の未硬化封止材料を塗布し乾燥する方法、枠体の第1面及び第1パネルの所定の部位にペースト状の未硬化封止材料を塗布し乾燥する方法、シート状の未硬化封止材料(未硬化の封止剤及びスペーサ粒子から成る)を予め作製しておき、第1パネルと枠体の第1面との間に係るシート状の未硬化封止材料を置く方法を例示することができる。第2パネルと枠体の第2面との間に未硬化封止層を配する方法も同様とすることができる。あるいは又、枠体の第1面及び第2面に未硬化封止材料を塗布した状態で乾燥し、予備焼成(脱バインダーを目的として酸化雰囲気で焼成)することで枠体の第1面上及び第2面上に未硬化封止層を形成し、第1パネルと第2パネルとの間に係る枠体を配置することで、第1パネルと枠体の第1面との間に未硬化封止層を配し、且つ、第2パネルと枠体の第2面との間に未硬化封止層を配してもよい。
【0014】
本発明の平面型表示装置、あるいは、本発明の平面型表示装置の組立方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、封止剤としてフリットガラス焼成体を挙げることができる。ここで、フリットガラスとして、B2O3−PbO系フリットガラスやSiO2−B2O3−PbO系フリットガラスを挙げることができる。そして、これらの場合、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させて封止層を得る工程は、具体的には、フリットガラス及びスペーサ粒子を主成分とする未硬化封止層を焼成することで、フリットガラス焼成体及びスペーサ粒子から成る硬化封止層を得る工程から構成することができる。
【0015】
一方、スペーサ粒子を構成する材料は、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させる際に、破損や変形等が生じない材料であればよく、ガラス、セラミックス、金属や合金を例示することができる。スペーサ粒子は中実構造を有していてもよいし、中空構造を有していてもよい。スペーサ粒子の外形形状は球形であることが好ましいが、これに限定するものではない。
【0016】
また、本発明においては、第1パネルと第2パネルとの間の距離をD0、枠体の高さをH0、スペーサ粒子の平均径をD1としたとき、好ましくは、
0.1[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2]
より好ましくは、
0.5[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2]
一層好ましくは、
0.7[(D0−H0)/2]≦D1≦0.85[(D0−H0)/2]
を満足することが望ましい。言い換えれば、
D1=α[(D0−H0)/2]
としたとき、0.1≦α≦0.9、より好ましくは0.5≦α≦0.9、一層好ましくは0.7≦α≦0.85を満足することが望ましい。一般に、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させるときの未硬化封止層の粘度が高い場合、小さなαを有するスペーサ粒子を用い、粘度が低い場合、大きなαを有するスペーサ粒子を用いることが好ましい。
【0017】
尚、スペーサ粒子の外形形状が球形の場合には、スペーサ粒子の平均径とは、スペーサ粒子の平均直径である。また、スペーサ粒子の外形形状が球形以外の形状の場合には、スペーサ粒子の平均径とは、スペーサ粒子の外面の任意の2点を結んだ線分の内の最も長い線分の長さの、多数のスペーサ粒子における平均値である。
【0018】
本発明においては、枠体を構成する材料として、ガラスあるいはセラミックスを挙げることができる。枠体をセラミックスから構成する場合、セラミックスとして、ムライトやアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミックス材料、これらに、酸化チタンや酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等を例示することができる。尚、枠体は、フレーム状(枠状)に賦形された1つの部材から構成されていてもよいし、例えば、複数の棒状の部材の組立体から構成されていてもよい。
【0019】
本発明の平面型表示装置の組立方法において、未硬化封止層の硬化を高真空雰囲気中で行えば、第1パネルと第2パネルと枠体とによって囲まれた空間は、接合と同時に真空となる。あるいは、未硬化封止層の硬化完了後、第1パネルと第2パネルと枠体とによって囲まれた空間を排気し、高真空とすることもできる。未硬化封止層の硬化完了後に排気を行う場合、未硬化封止層の硬化時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
【0020】
未硬化封止層の硬化完了後に排気を行う場合、排気は、第1パネル及び/又は第2パネルに予め接続されたチップ管を通じて行うことができる。チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、第1パネル及び/又は第2パネルの無効領域に設けられた貫通部の周囲に、接着層を用いて接合され、空間が所定の真空度に達した後、熱融着によって封じ切られる。尚、封じ切りを行う前に、平面型表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので、好適である。
【0021】
本発明において、第1パネル及び第2パネルを構成する基板は、少なくとも表面が絶縁性部材から構成されていればよく、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、石英ガラス基板といった各種のガラス基板、表面に絶縁膜が形成された各種のガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができるが、製造コスト低減の観点からは、ガラス基板、あるいは、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の平面型表示装置の組立方法にあっては、第1パネルと枠体の第1面、及び、第2パネルと枠体の第2面との間に、未硬化封止層を配する際に、通常、第1パネルと第2パネルとを位置決めするが、係る工程は、例えば、枠体の第1面及び第2面に未硬化封止層が予め塗布された枠体を準備しておき、載置台(パネルステージ)上に載置された第2パネル上に枠体の第2面が接するように枠体を置き、第1パネル及び第2パネルに設けられたアライメントマークを光学的に読み取り、第2パネルに対する第1パネルの位置を調節しながら、例えば、未硬化封止層が予め塗布された枠体の第1面上に第1パネルを置く工程から構成することができる。
【0023】
本発明にあっては、平面型表示装置として、冷陰極電界電子放出表示装置あるいはプラズマ表示装置を挙げることができる。
【0024】
ここで、冷陰極電界電子放出表示装置から平面型表示装置を構成する場合、第1パネルは、アノード電極及び蛍光体層が形成されたアノードパネルから成り、第2パネルは、複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルから成る構成とすることができる。あるいは又、第1パネルは、複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルから成り、第2パネルは、アノード電極及び蛍光体層が形成されたアノードパネルから成る構成とすることができる。
【0025】
本発明において、平面型表示装置を冷陰極電界電子放出表示装置から構成する場合、枠体の高さとして、0.5mm乃至3.0mm、好ましくは、1mm乃至2mmを例示することができる。
【0026】
本発明において、平面型表示装置を冷陰極電界電子放出表示装置とする場合、カソードパネルを構成する冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と略称する)は如何なる形態の電界放出素子とすることもでき、例えば、円錐形の電子放出部を有する所謂スピント型電界放出素子、王冠型の電子放出部を有する所謂クラウン型電界放出素子、扁平な電子放出部を有する所謂扁平型電界放出素子、カソード電極から電子が放出される平面型電界放出素子やクレータ型電界放出素子、カソード電極に設けられたエッジ部から電子が放出されるエッジ型電界放出素子、表面伝導型電界放出素子を挙げることができる。冷陰極電界電子放出表示装置として、所謂3電極型(カソード電極、ゲート電極及びアノード電極を備えている)だけでなく、所謂2電極型(カソード電極及びアノード電極を備えている)を挙げることができる。
【0027】
アノードパネルにおいて、電界放出素子から放出された電子が先ず衝突する部位は、アノードパネルの構造に依るが、アノード電極であり、あるいは又、蛍光体層である。
【0028】
蛍光体層の平面形状(パターン)は、画素に対応して、ドット状であってもよいし、ストライプ状であってもよい。蛍光体層が隔壁の間に形成されている場合、隔壁で取り囲まれたアノードパネルを構成する基板の部分の上に蛍光体層が形成されている。
【0029】
隔壁は、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が他の蛍光体層に入射し、所謂光学的クロストーク(色濁り)が発生することを防止する機能を有する。あるいは又、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が隔壁を越えて他の蛍光体層に向かって侵入したとき、これらの電子が他の蛍光体層と衝突することを防止する機能を有する。
【0030】
隔壁の平面形状としては、格子形状(井桁形状)、即ち、1画素に相当する、例えば平面形状が略矩形(ドット状)の蛍光体層の四方を取り囲む形状を挙げることができ、あるいは、略矩形あるいはストライプ状の蛍光体層の対向する二辺と平行に延びる帯状形状あるいはストライプ形状を挙げることができる。隔壁を格子形状とする場合、1つの蛍光体層の領域の四方を連続的に取り囲む形状としてもよいし、不連続に取り囲む形状としてもよい。隔壁を帯状形状あるいはストライプ形状とする場合、連続した形状としてもよいし、不連続な形状としてもよい。隔壁を形成した後、隔壁を研磨し、隔壁の頂面の平坦化を図ってもよい。
【0031】
冷陰極電界電子放出表示装置にあっては、アノードパネルとカソードパネルと接着層とによって囲まれた空間が高真空となっているが故に、アノードパネルとカソードパネルとの間にスペーサを配しておかないと、大気圧によって表示装置が損傷を受けてしまう。係るスペーサは、例えばセラミックスから構成することができる。スペーサをセラミックスから構成する場合、セラミックスとして、ムライトやアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミックス材料、これらに、酸化チタンや酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等を例示することができる。この場合、所謂グリーンシートを成形して、グリーンシートを焼成し、かかるグリーンシート焼成品を切断することによってスペーサを製造することができる。また、スペーサの表面に、金属や合金から成る導電材料層を形成し、あるいは又、抵抗体層を形成してもよい。スペーサは、例えば、隔壁と隔壁との間に挟み込んで固定すればよく、あるいは又、例えば、アノードパネルにスペーサ保持部を形成し、スペーサ保持部とスペーサ保持部との間に挟み込んで固定すればよい。
【0032】
蛍光体層からの光を吸収する光吸収層が隔壁と基板との間に形成されていることが、表示画像のコントラスト向上といった観点から好ましい。ここで、光吸収層は、所謂ブラックマトリックスとして機能する。光吸収層を構成する材料として、蛍光体層からの光を99%以上吸収する材料を選択することが好ましい。このような材料として、カーボン、金属薄膜(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等、あるいは、これらの合金)、金属酸化物(例えば、酸化クロム)、金属窒化物(例えば、窒化クロム)、耐熱性有機樹脂、ガラスペースト、黒色顔料や銀等の導電性粒子を含有するガラスペースト等の材料を挙げることができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。尚、酸化クロム/クロム積層膜においては、クロム膜が基板と接する。光吸収層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法とエッチング法との組合せ、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコーティング法とリフトオフ法との組合せに、スクリーン印刷法、リソグラフィ技術等、使用する材料に依存して適宜選択された方法にて形成することができる。尚、スペーサ保持部や隔壁をアノード電極上に形成する場合、光吸収層を、基板とアノード電極との間に形成してもよいし、アノード電極とスペーサ保持部との間に形成してもよい。
【0033】
蛍光体層は、発光性結晶粒子(例えば、粒径5〜10nm程度の蛍光体粒子)から調製された発光性結晶粒子組成物を使用し、例えば、赤色の感光性の発光性結晶粒子組成物(赤色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、赤色発光蛍光体層を形成し、次いで、緑色の感光性の発光性結晶粒子組成物(緑色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、緑色発光蛍光体層を形成し、更に、青色の感光性の発光性結晶粒子組成物(青色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、青色発光蛍光体層を形成する方法にて形成することができる。
【0034】
発光性結晶粒子を構成する蛍光体材料としては、従来公知の蛍光体材料の中から適宜選択して用いることができる。カラー表示の場合、色純度がNTSCで規定される3原色に近く、3原色を混合した際の白バランスがとれ、残光時間が短く、3原色の残光時間がほぼ等しくなる蛍光体材料を組み合わせることが好ましい。赤色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(Y2O3:Eu)、(Y2O2S:Eu)、(Y3Al5O12:Eu)、(YBO3:Eu)、(YVO4:Eu)、(Y2SiO5:Eu)、(Y0.96P0.60V0.40O4:Eu0.04)、[(Y,Gd)BO3:Eu]、(GdBO3:Eu)、(ScBO3:Eu)、(3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)、(Zn3(PO4)2:Mn)、(LuBO3:Eu)、(SnO2:Eu)を例示することができる。緑色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(ZnSiO2:Mn)、(BaAl12O19:Mn)、(BaMg2Al16O27:Mn)、(MgGa2O4:Mn)、(YBO3:Tb)、(LuBO3:Tb)、(Sr4Si3O8Cl4:Eu)、(ZnS:Cu,Al)、(ZnS:Cu,Au,Al)、(ZnBaO4:Mn)、(GbBO3:Tb)、(Sr6SiO3Cl3:Eu)、(BaMgAl14O23:Mn)、(ScBO3:Tb)、(Zn2SiO4:Mn)、(ZnO:Zn)、(Gd2O2S:Tb)、(ZnGa2O4:Mn)を例示することができる。青色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(Y2SiO5:Ce)、(CaWO4:Pb)、CaWO4、YP0.85V0.15O4、(BaMgAl14O23:Eu)、(Sr2P2O7:Eu)、(Sr2P2O7:Sn)、(ZnS:Ag,Al)、(ZnS:Ag)、ZnMgO、ZnGaO4を例示することができる。
【0035】
アノード電極の構成材料は、冷陰極電界電子放出表示装置の構成によって適宜選択すればよい。即ち、冷陰極電界電子放出表示装置が透過型(アノードパネルが表示面に相当する)であって、且つ、アノードパネルを構成する基板上にアノード電極と蛍光体層がこの順に積層されている場合には、基板は元より、アノード電極自身も透明である必要があり、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いる。一方、冷陰極電界電子放出表示装置が反射型(カソードパネルが表示面に相当する)である場合、及び、透過型であっても基板上に蛍光体層とアノード電極とがこの順に積層されている場合には、ITOの他、アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)を用いることができる。アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)からアノード電極を構成する場合、アノード電極の厚さとして、具体的には、3×10−8m(30nm)乃至1.5×10−7m(150nm)、好ましくは5×10−8m(50nm)乃至1×10−7m(100nm)を例示することができる。アノード電極は、蒸着法やスパッタリング法にて形成することができる。尚、後者の場合、アノード電極は、蛍光体層からの発光を反射させる反射膜としての機能の他、蛍光体層から反跳した電子、あるいは放出された二次電子を反射させる反射膜としての機能、蛍光体層の帯電防止といった機能を有する。
【0036】
アノード電極と蛍光体層の構成例として、(1)基板上に、アノード電極を形成し、アノード電極の上に蛍光体層を形成する構成、(2)基板上に、蛍光体層を形成し、蛍光体層上にアノード電極を形成する構成、を挙げることができる。尚、(1)の構成において、蛍光体層の上に、アノード電極と導通した所謂メタルバック膜を形成してもよい。また、(2)の構成において、アノード電極の上にメタルバック膜を形成してもよい。
【0037】
本発明においては、封止層にスペーサ粒子が含まれているが故に、第1パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させ、第2パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させるとき、これらの未硬化封止層の流動状態や潰れ具合に差異が生じ難く、その結果、第1パネルと枠体との間の気密性不良、第2パネルと枠体との間の気密性不良が生じ難い。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態(以下、実施の形態と略称する)に基づき本発明を説明する。
【0039】
(実施の形態1)
実施の形態1は、本発明の平面型表示装置、及び、本発明の平面型表示装置の組立方法に関する。実施の形態1において、平面型表示装置は、冷陰極電界電子放出表示装置から構成されている。実施の形態1の所謂3電極型の冷陰極電界電子放出表示装置(以下、単に、表示装置と略称する)の模式的な一部端面図を図1に示し、表示装置の周縁部を拡大した模式的な一部断面図を図2の(A)に示す。尚、カソードパネルCPの模式的な部分的斜視図は、図4に示したとおりである。ここで、第1パネルは、複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルCPから成り、第2パネルは、アノード電極及び蛍光体層が形成されたアノードパネルAPから成る。
【0040】
実施の形態1の表示装置は、複数の冷陰極電界電子放出素子(電界放出素子と略称する)が設けられたカソードパネルCP(第1パネル)と、アノード電極24及び蛍光体層22(カラー表示の場合、赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)が形成されたアノードパネルAP(第2パネル)とが、それらの周縁部で枠体30を介して接合されて成る。そして、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体30とによって挟まれた空間は真空状態となっている。
【0041】
ここで、第1パネル(より具体的には、カソードパネルCPを構成する支持体10)と枠体30の第1面、及び、第2パネル(より具体的には、アノードパネルAPを構成する基板20)と枠体30の第2面とは、封止層31A,31Bによって接着されている。封止層31A,31Bは、封止剤32及びスペーサ粒子33から成る。より具体的には、封止剤32はフリットガラス焼成体から成り、スペーサ粒子33は、平均直径が0.15mmのガラス球体から成る。枠体30は、ガラスから成る。
【0042】
実施の形態1の表示装置においては、第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)との間の距離D0を2.0mmとし、枠体の高さH0を1.6mmとした。従って、スペーサ粒子の平均径D1(=0.15mm)であるが故に、
D1=α[(D0−H0)/2]
としたときのαの値は0.75である。
【0043】
カソードパネルCPは、
(a)支持体10と、
(b)支持体10上に形成され、第1の方向に延びる複数のカソード電極11と、
(c)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(d)絶縁層12上に形成され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数のゲート電極13と、
(e)カソード電極11とゲート電極13の重複する領域(電子放出領域EA)に位置するゲート電極13の部分に形成された第1開口部14Aと、
(f)絶縁層12に形成され、第1開口部14Aと連通した第2開口部14Bと、
(g)第2開口部14Bの底部に露出した電子放出部15、
から構成されている。
【0044】
尚、第1の方向と第2の方向とは直交している。また、カソード電極11及びゲート電極13は、それぞれ、ストライプ状である。
【0045】
一方、アノードパネルAPは、基板20、基板20上に形成された隔壁21と隔壁21との間の基板20上に形成され、多数の蛍光体粒子から成る蛍光体層22(赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)、及び、蛍光体層22上に形成されたアノード電極24を備えている。アノード電極24は、有効領域を覆う薄い1枚のシート状であり、アノード電極制御回路43に接続されている。アノード電極24は、厚さ約70nmのアルミニウムから成り、隔壁21を覆う状態で設けられている。蛍光体層22と蛍光体層22との間であって、隔壁21と基板20との間には、ブラックマトリックス23が形成されている。隔壁21とスペーサ25と蛍光体層22の配置状態の一例を模式的に図5あるいは図6に示す。図5に示す例においては、格子形状(井桁形状)の隔壁21が形成されており、蛍光体層22(赤色発光蛍光体層22R、緑色発光蛍光体層22G、青色発光蛍光体層22B)の形状はドット状である。一方、図6に示す例においては、隔壁21の平面形状は、略矩形の蛍光体層22の対向する二辺と平行に延びる帯状形状(ストライプ形状)を有する。尚、蛍光体層22を、図6の上下方向に延びるストライプ状とすることもできる。
【0046】
図1に示した例において、電子放出部15は、第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11の上に形成された円錐形のスピント型電界放出素子から構成されている。図4にカソードパネルCPの模式的な部分的斜視図を示すように、1画素分の領域に相当する電子放出領域EAが、カソードパネルCPの有効領域内に、2次元マトリクス状に配列されている。また、1画素は、カソードパネル側の電子放出領域EAと、この電子放出領域EAに対面したアノードパネル側の蛍光体層22とによって構成されている。有効領域には、かかる画素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列されている。
【0047】
この表示装置において表示を行う場合、カソード電極11には相対的な負電圧がカソード電極制御回路41から印加され、ゲート電極13には相対的な正電圧(数十ボルト〜数百ボルト)がゲート電極制御回路42から印加され、アノード電極24にはゲート電極13よりも更に高い正電圧(数百ボルト〜10キロボルト程度)がアノード電極制御回路43から印加される。かかる表示装置において表示を行う場合、例えば、カソード電極11にカソード電極制御回路41から走査信号を入力し、ゲート電極13にゲート電極制御回路42からビデオ信号を入力する。尚、これとは逆に、カソード電極11にカソード電極制御回路41からビデオ信号を入力し、ゲート電極13にゲート電極制御回路42から走査信号を入力してもよい。カソード電極11とゲート電極13との間に電圧を印加した際に生ずる電界により、量子トンネル効果に基づき電子放出部15から電子が放出され、この電子がアノード電極24に引き付けられ、アノード電極24を通過し、蛍光体層22に衝突する。その結果、蛍光体層22が励起されて発光し、所望の画像を基板20の外表面上に得ることができる。
【0048】
以下、実施の形態1の平面型表示装置(冷陰極電界電子放出表示装置)の組立方法を、図2の(A)、(B)及び図3の(A)、(B)を参照して説明する。
【0049】
[工程−100]
先ず、複数の電界放出素子が形成されたカソードパネルCP(第1パネル)、及び、アノード電極24や蛍光体層22等が形成されたアノードパネルAP(第2パネル)を準備する。更には、平均直径0.15mmのガラス球体から成るスペーサ粒子と、B2O3−PbO系フリットガラスから成るフリットガラスを主成分とする未焼成(未硬化)の封止剤から成るペースト状の未硬化封止材料を、枠体30の第1面及び第2面に塗布した状態で乾燥し、予備焼成(脱バインダーを目的として酸化雰囲気で焼成)することで、第1面上に未硬化封止層31aが形成され、第2面上に未硬化封止層31bが形成された枠体30(図2の(B)参照)を準備しておく。
【0050】
[工程−110]
そして、第1パネル(カソードパネルCP)と枠体30の第1面、及び、第2パネル(アノードパネルAP)と枠体30の第2面との間に、未硬化封止層31a,31bを配する。具体的には、図示しない載置台(パネルステージ)上に載置された第2パネル(アノードパネルAP)上に枠体30の第2面の未硬化封止層31bが接するように枠体30を置き(図3の(A)参照)、第1パネル(カソードパネルCP)及び第2パネル(アノードパネルAP)に設けられたアライメントマーク(図示せず)を光学的に読み取り、第2パネル(アノードパネルAP)に対する第1パネル(カソードパネルCP)の位置を調節しながら、未硬化封止層31aが予め塗布された枠体30の第1面上に第1パネル(カソードパネルCP)を置く(図3の(B)参照)。
【0051】
[工程−120]
その後、第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)との間で位置ずれが生じないように、第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)とを図示しない固定治具によって固定する。固定治具は、例えば、バネ付きの一種のクランプから成る。
【0052】
[工程−130]
次に、加熱処理を施すことで、未硬化封止層31a,31bを硬化させて封止層31A,31Bを得る(図2の(A)参照)。具体的には、このような第1パネル(カソードパネルCP)と第2パネル(アノードパネルAP)と枠体30との組立体を焼成炉内に搬入し、焼成炉内で加熱処理を施すことで未硬化封止層31a,31bを硬化させて、硬化後の封止層31A,31Bを得る。このとき、固定治具によって、アノードパネルAPを構成する基板20とカソードパネルCPとの間に圧力が加わった状態にある。具体的には、約390゜Cの温度にて約20分間、未硬化封止層31a,31bを焼成する。焼成時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
【0053】
[工程−140]
その後、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体30とによって囲まれた空間を、貫通孔(図示せず)及びチップ管(図示せず)を通じて排気し、空間の圧力が10−4Pa程度に達した時点でチップ管を加熱溶融により封じ切る。このようにして、アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体30とに囲まれた空間を真空にすることができる。その後、必要な外部回路との配線接続を行い、表示装置を完成させる。
【0054】
尚、チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、カソードパネルCP及び/又はアノードパネルAPの無効領域に設けられた貫通部の周囲に、フリットガラス材料を用いて接着(接合)されている。尚、封じ切りを行う前に、表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので、好適である。
【0055】
カソードパネルCPとアノードパネルAPとをフリットガラスを構成成分とする封止層を用いて接合する場合、フリットガラスの焼成を高真空雰囲気中で行えば、カソードパネルCPとアノードパネルAPと枠体30とによって囲まれた空間を、接合と同時に真空とすることができる。
【0056】
未硬化封止層31a,31bの硬化時、固定治具によって加えられる圧力により、未硬化封止層31a,31bは、一種の流動状態となり、また、一種、潰れた状態となる。実施の形態1においては、封止層にはスペーサ粒子が含まれているが故に、第1パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させ、第2パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させるとき、これらの未硬化封止層の流動状態や潰れ具合に差異が生じ難く、その結果、第1パネルと枠体との間の気密性不良、第2パネルと枠体との間の気密性不良が生じ難い。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、各種の電界放出素子及びその製造方法を説明する。
【0058】
所謂3電極型の表示装置を構成する電界放出素子は、電子放出部の構造により、具体的には、例えば、以下の2つの範疇に分類することができる。即ち、第1の構造の電界放出素子は、
(イ)支持体上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極と、
(ロ)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ハ)絶縁層上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極と、
(ニ)ゲート電極に設けられた第1開口部、及び、絶縁層に設けられ、第1開口部と連通した第2開口部と、
(ホ)第2開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられた電子放出部、から成り、
第2開口部の底部に露出した電子放出部から電子が放出される構造を有する。
【0059】
このような第1の構造を有する電界放出素子として、上述したスピント型(円錐形の電子放出部が、第2開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられた電界放出素子)、扁平型(略平面状の電子放出部が、第2開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられた電界放出素子)を挙げることができる。
【0060】
第2の構造の電界放出素子は、
(イ)支持体上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極と、
(ロ)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ハ)絶縁層上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極と、
(ニ)ゲート電極に設けられた第1開口部、及び、絶縁層に設けられ、第1開口部と連通した第2開口部、
から成り、
第2開口部の底部に露出したカソード電極の部分が電子放出部に相当し、かかる第2開口部の底部に露出したカソード電極の部分から電子を放出する構造を有する。
【0061】
このような第2の構造を有する電界放出素子として、平坦なカソード電極の表面から電子を放出する平面型電界放出素子を挙げることができる。
【0062】
スピント型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金、クロム、クロム合金、及び、不純物を含有するシリコン(ポリシリコンやアモルファスシリコン)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。スピント型電界放出素子の電子放出部は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法によって形成することができる。
【0063】
扁平型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、カソード電極を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極を構成する材料の仕事関数、ゲート電極とカソード電極との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。電界放出素子におけるカソード電極を構成する代表的な材料として、タングステン(Φ=4.55eV)、ニオブ(Φ=4.02〜4.87eV)、モリブデン(Φ=4.53〜4.95eV)、アルミニウム(Φ=4.28eV)、銅(Φ=4.6eV)、タンタル(Φ=4.3eV)、クロム(Φ=4.5eV)、シリコン(Φ=4.9eV)を例示することができる。電子放出部は、これらの材料よりも小さな仕事関数Φを有していることが好ましく、その値は概ね3eV以下であることが好ましい。かかる材料として、炭素(Φ<1eV)、セシウム(Φ=2.14eV)、LaB6(Φ=2.66〜2.76eV)、BaO(Φ=1.6〜2.7eV)、SrO(Φ=1.25〜1.6eV)、Y2O3(Φ=2.0eV)、CaO(Φ=1.6〜1.86eV)、BaS(Φ=2.05eV)、TiN(Φ=2.92eV)、ZrN(Φ=2.92eV)を例示することができる。仕事関数Φが2eV以下である材料から電子放出部を構成することが、一層好ましい。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0064】
あるいは又、扁平型電界放出素子において、電子放出部を構成する材料として、かかる材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料から適宜選択してもよい。即ち、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)等の金属;シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体;炭素やダイヤモンド等の無機単体;及び酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化バリウム(BaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化錫(SnO2)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)等の化合物の中から、適宜選択することができる。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0065】
扁平型電界放出素子にあっては、特に好ましい電子放出部の構成材料として、炭素、より具体的にはダイヤモンドやグラファイト、カーボン・ナノチューブ構造体を挙げることができる。電子放出部をこれらから構成する場合、5×107V/m以下の電界強度にて、表示装置に必要な放出電子電流密度を得ることができる。また、ダイヤモンドは電気抵抗体であるため、各電子放出部から得られる放出電子電流を均一化することができ、よって、表示装置に組み込まれた場合の輝度ばらつきの抑制が可能となる。更に、これらの材料は、表示装置内の残留ガスのイオンによるスパッタ作用に対して極めて高い耐性を有するので、電界放出素子の長寿命化を図ることができる。
【0066】
カーボン・ナノチューブ構造体として、具体的には、カーボン・ナノチューブ及び/又はカーボン・ナノファイバーを挙げることができる。より具体的には、カーボン・ナノチューブから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノファイバーから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノチューブとカーボン・ナノファイバーの混合物から電子放出部を構成してもよい。カーボン・ナノチューブやカーボン・ナノファイバーは、巨視的には、粉末状であってもよいし、薄膜状であってもよいし、場合によっては、カーボン・ナノチューブ構造体は円錐状の形状を有していてもよい。カーボン・ナノチューブやカーボン・ナノファイバーは、周知のアーク放電法やレーザアブレーション法といったPVD法、プラズマCVD法やレーザCVD法、熱CVD法、気相合成法、気相成長法といった各種のCVD法によって製造、形成することができる。
【0067】
扁平型電界放出素子を、バインダ材料にカーボン・ナノチューブ構造体を分散させたものをカソード電極の所望の領域に例えば塗布した後、バインダ材料の焼成あるいは硬化を行う方法(より具体的には、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の有機系バインダ材料や水ガラス等の無機系バインダ材料にカーボン・ナノチューブ構造体を分散したものを、カソード電極の所望の領域に例えば塗布した後、溶媒の除去、バインダ材料の焼成・硬化を行う方法)によって製造することもできる。尚、このような方法を、カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法と呼ぶ。塗布方法として、スクリーン印刷法を例示することができる。
【0068】
あるいは又、扁平型電界放出素子を、カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布した後、金属化合物を焼成する方法によって製造することもでき、これによって、金属化合物を構成する金属原子を含むマトリックスにてカーボン・ナノチューブ構造体がカソード電極表面に固定される。尚、このような方法を、カーボン・ナノチューブ構造体の第2の形成方法と呼ぶ。マトリックスは、導電性を有する金属酸化物から成ることが好ましく、より具体的には、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム−錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、又は、酸化アンチモン−錫から構成することが好ましい。焼成後、各カーボン・ナノチューブ構造体の一部分がマトリックスに埋め込まれている状態を得ることもできるし、各カーボン・ナノチューブ構造体の全体がマトリックスに埋め込まれている状態を得ることもできる。マトリックスの体積抵抗率は、1×10−9Ω・m乃至5×10−6Ω・mであることが望ましい。
【0069】
金属化合物溶液を構成する金属化合物として、例えば、有機金属化合物、有機酸金属化合物、又は、金属塩(例えば、塩化物、硝酸塩、酢酸塩)を挙げることができる。有機酸金属化合物溶液として、有機錫化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を酸(例えば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解し、これを有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール)で希釈したものを挙げることができる。また、有機金属化合物溶液として、有機錫化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール)に溶解したものを例示することができる。溶液を100重量部としたとき、カーボン・ナノチューブ構造体が0.001〜20重量部、金属化合物が0.1〜10重量部、含まれた組成とすることが好ましい。溶液には、分散剤や界面活性剤が含まれていてもよい。また、マトリックスの厚さを増加させるといった観点から、金属化合物溶液に、例えばカーボンブラック等の添加物を添加してもよい。また、場合によっては、有機溶剤の代わりに水を溶媒として用いることもできる。
【0070】
カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布する方法として、スプレー法、スピンコーティング法、ディッピング法、ダイクォーター法、スクリーン印刷法を例示することができるが、中でもスプレー法を採用することが塗布の容易性といった観点から好ましい。
【0071】
カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布した後、金属化合物溶液を乾燥させて金属化合物層を形成し、次いで、カソード電極上の金属化合物層の不要部分を除去した後、金属化合物を焼成してもよいし、金属化合物を焼成した後、カソード電極上の不要部分を除去してもよいし、カソード電極の所望の領域上にのみ金属化合物溶液を塗布してもよい。
【0072】
金属化合物の焼成温度は、例えば、金属塩が酸化されて導電性を有する金属酸化物となるような温度、あるいは又、有機金属化合物や有機酸金属化合物が分解して、有機金属化合物や有機酸金属化合物を構成する金属原子を含むマトリックス(例えば、導電性を有する金属酸化物)が形成できる温度であればよく、例えば、300゜C以上とすることが好ましい。焼成温度の上限は、電界放出素子あるいはカソードパネルの構成要素に熱的な損傷等が発生しない温度とすればよい。
【0073】
カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法あるいは第2の形成方法にあっては、電子放出部の形成後、電子放出部の表面の一種の活性化処理(洗浄処理)を行うことが、電子放出部からの電子の放出効率の一層の向上といった観点から好ましい。このような処理として、水素ガス、アンモニアガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、メタンガス、エチレンガス、アセチレンガス、窒素ガス等のガス雰囲気中でのプラズマ処理を挙げることができる。
【0074】
カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法あるいは第2の形成方法にあっては、電子放出部は、第2開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面に形成されていればよく、第2開口部の底部に位置するカソード電極の部分から第2開口部の底部以外のカソード電極の部分の表面に延在するように形成されていてもよい。また、電子放出部は、第2開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面の全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。
【0075】
各種の電界放出素子におけるカソード電極を構成する材料として、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)等の金属;これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(インジウム・錫酸化物)を例示することができる。カソード電極の厚さは、おおよそ0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲とすることが望ましいが、かかる範囲に限定するものではない。
【0076】
各種の電界放出素子におけるゲート電極を構成する導電性材料として、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)及び亜鉛(Zn)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属;これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);あるいはシリコン(Si)等の半導体;ITO(インジウム錫酸化物)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。
【0077】
カソード電極やゲート電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ、スクリーン印刷法、メッキ法、リフトオフ法等を挙げることができる。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、例えばストライプ状のカソード電極を形成することが可能である。
【0078】
第1の構造あるいは第2の構造を有する電界放出素子においては、電界放出素子の構造に依存するが、ゲート電極及び絶縁層に設けられた1つの第1開口部及び第2開口部内に1つの電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極及び絶縁層に設けられた1つの第1開口部及び第2開口部内に複数の電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、かかる第1開口部と連通する1つの第2開口部を絶縁層に設け、絶縁層に設けられた1つの第2開口部内に1又は複数の電子放出部が存在してもよい。
【0079】
第1開口部あるいは第2開口部の平面形状(支持体表面と平行な仮想平面で開口部を切断したときの形状)は、円形、楕円形、矩形、多角形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた多角形等、任意の形状とすることができる。第1開口部の形成は、例えば、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができ、あるいは又、ゲート電極の形成方法に依っては、第1開口部を直接形成することもできる。第2開口部の形成も、例えば、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができる。
【0080】
第1の構造を有する電界放出素子において、カソード電極と電子放出部との間に抵抗体層を設けてもよい。あるいは又、カソード電極の表面が電子放出部に相当している場合(即ち、第2の構造を有する電界放出素子においては)、カソード電極を導電材料層、抵抗体層、電子放出部に相当する電子放出層の3層構成としてもよい。抵抗体層を設けることによって、電界放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化を図ることができる。抵抗体層を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料、SiN、アモルファスシリコン等の半導体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル等の高融点金属酸化物を例示することができる。抵抗体層の形成方法として、スパッタリング法や、CVD法やスクリーン印刷法を例示することができる。抵抗値は、概ね1×105〜1×107Ω、好ましくは数MΩとすればよい。
【0081】
絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiN、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料、SiN、ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等の公知のプロセスが利用できる。
【0082】
[スピント型電界放出素子]
スピント型電界放出素子は、
(イ)支持体10上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極11と、
(ロ)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(ハ)絶縁層12上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極13と、
(ニ)ゲート電極13に設けられた第1開口部14A、及び、絶縁層12に設けられ、第1開口部14Aと連通した第2開口部14Bと、
(ホ)第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11上に設けられた電子放出部15、
から成り、
第2開口部14Bの底部に露出した円錐形の電子放出部15から電子が放出される構造を有する。
【0083】
以下、スピント型電界放出素子の製造方法を、カソードパネルを構成する支持体10等の模式的な一部端面図である図7の(A)、(B)及び図8の(A)、(B)を参照して説明する。
【0084】
尚、このスピント型電界放出素子は、基本的には、円錐形の電子放出部15を金属材料の垂直蒸着により形成する方法によって得ることができる。即ち、ゲート電極13に設けられた第1開口部14Aに対して蒸着粒子は垂直に入射するが、第1開口部14Aの開口端付近に形成されるオーバーハング状の堆積物による遮蔽効果を利用して、第2開口部14Bの底部に到達する蒸着粒子の量を漸減させ、円錐形の堆積物である電子放出部15を自己整合的に形成する。ここでは、不要なオーバーハング状の堆積物の除去を容易とするために、ゲート電極13及び絶縁層12上に剥離層51を予め形成しておく方法について説明する。尚、図7〜図12においては、1つの電子放出部のみを図示した。
【0085】
[工程−A0]
先ず、例えばガラス基板から成る支持体10の上に、例えばポリシリコンから成るカソード電極用導電材料層をプラズマCVD法にて成膜した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングして、ストライプ状のカソード電極11を形成する。その後、全面にSiO2から成る絶縁層12をCVD法にて形成する。
【0086】
[工程−A1]
次に、絶縁層12上に、ゲート電極用導電材料層(例えば、TiN層)をスパッタ法にて成膜し、次いで、ゲート電極用導電材料層をリソグラフィ技術及びドライエッチング技術にてパターニングすることによって、ストライプ状のゲート電極13を得ることができる。ストライプ状のカソード電極11は、図面の紙面左右方向に延び、ストライプ状のゲート電極13は、図面の紙面垂直方向に延びている。
【0087】
尚、ゲート電極13を、真空蒸着法等のPVD法、CVD法、電気メッキ法や無電解メッキ法といったメッキ法、スクリーン印刷法、レーザアブレーション法、ゾル−ゲル法、リフトオフ法等の公知の薄膜形成技術と、必要に応じてエッチング技術との組合せによって形成してもよい。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、例えばストライプ状のゲート電極を形成することが可能である。
【0088】
[工程−A2]
その後、再びレジスト層を形成し、エッチングによってゲート電極13に第1開口部14Aを形成し、更に、絶縁層に第2開口部14Bを形成し、第2開口部14Bの底部にカソード電極11を露出させた後、レジスト層を除去する。こうして、図7の(A)に示す構造を得ることができる。
【0089】
[工程−A3]
次に、支持体10を回転させながらゲート電極13上を含む絶縁層12上にニッケル(Ni)を斜め蒸着することにより、剥離層51を形成する(図7の(B)参照)。このとき、支持体10の法線に対する蒸着粒子の入射角を十分に大きく選択することにより(例えば、入射角65度〜85度)、第2開口部14Bの底部にニッケルを殆ど堆積させることなく、ゲート電極13及び絶縁層12の上に剥離層51を形成することができる。剥離層51は、第1開口部14Aの開口端から庇状に張り出しており、これによって第1開口部14Aが実質的に縮径される。
【0090】
[工程−A4]
次に、全面に例えば導電材料としてモリブデン(Mo)を垂直蒸着する(入射角3度〜10度)。このとき、図8の(A)に示すように、剥離層51上でオーバーハング形状を有する導電材料層52が成長するに伴い、第1開口部14Aの実質的な直径が次第に縮小されるので、第2開口部14Bの底部において堆積に寄与する蒸着粒子は、次第に第1開口部14Aの中央付近を通過するものに限られるようになる。その結果、第2開口部14Bの底部には円錐形の堆積物が形成され、この円錐形の堆積物が電子放出部15となる。
【0091】
[工程−A5]
その後、図8の(B)に示すように、リフトオフ法にて剥離層51をゲート電極13及び絶縁層12の表面から剥離し、ゲート電極13及び絶縁層12の上方の導電材料層52を選択的に除去する。こうして、複数のスピント型電界放出素子が形成されたカソードパネルを得ることができる。
【0092】
[扁平型電界放出素子(その1)]
扁平型電界放出素子は、
(イ)支持体10上に設けられた、第1の方向に延びるカソード電極11と、(ロ)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(ハ)絶縁層12上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるゲート電極13と、
(ニ)ゲート電極13に設けられた第1開口部14A、及び、絶縁層12に設けられ、第1開口部14Aと連通した第2開口部14Bと、
(ホ)第2開口部14Bの底部に位置するカソード電極11上に設けられた扁平状の電子放出部15A、
から成り、
第2開口部14Bの底部に露出した電子放出部15Aから電子が放出される構造を有する。
【0093】
電子放出部15Aは、マトリックス61、及び、先端部が突出した状態でマトリックス61中に埋め込まれたカーボン・ナノチューブ構造体(具体的には、カーボン・ナノチューブ62)から成り、マトリックス61は、導電性を有する金属酸化物(具体的には、酸化インジウム−錫、ITO)から成る。
【0094】
以下、電界放出素子の製造方法を、図9の(A)、(B)及び図10の(A)、(B)を参照して説明する。
【0095】
[工程−B0]
先ず、例えばガラス基板から成る支持体10上に、例えばスパッタリング法及びエッチング技術により形成された厚さ約0.2μmのクロム(Cr)層から成るストライプ状のカソード電極11を形成する。
【0096】
[工程−B1]
次に、カーボン・ナノチューブ構造体が分散された有機酸金属化合物から成る金属化合物溶液をカソード電極11上に、例えばスプレー法にて塗布する。具体的には、以下の表1に例示する金属化合物溶液を用いる。尚、金属化合物溶液中にあっては、有機錫化合物及び有機インジウム化合物は酸(例えば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解された状態にある。カーボン・ナノチューブはアーク放電法にて製造され、平均直径30nm、平均長さ1μmである。塗布に際しては、支持体を70〜150゜Cに加熱しておく。塗布雰囲気を大気雰囲気とする。塗布後、5〜30分間、支持体を加熱し、酢酸ブチルを十分に蒸発させる。このように、塗布時、支持体を加熱することによって、カソード電極の表面に対してカーボン・ナノチューブが水平に近づく方向にセルフレベリングする前に塗布溶液の乾燥が始まる結果、カーボン・ナノチューブが水平にはならない状態でカソード電極の表面にカーボン・ナノチューブを配置することができる。即ち、カーボン・ナノチューブの先端部がアノード電極の方向を向くような状態、言い換えれば、カーボン・ナノチューブを、支持体の法線方向に近づく方向に配向させることができる。尚、予め、表1に示す組成の金属化合物溶液を調製しておいてもよいし、カーボン・ナノチューブを添加していない金属化合物溶液を調製しておき、塗布前に、カーボン・ナノチューブと金属化合物溶液とを混合してもよい。また、カーボン・ナノチューブの分散性向上のため、金属化合物溶液の調製時、超音波を照射してもよい。
【0097】
[表1]
有機錫化合物及び有機インジウム化合物:0.1〜10重量部
分散剤(ドデシル硫酸ナトリウム) :0.1〜5 重量部
カーボン・ナノチューブ :0.1〜20重量部
酢酸ブチル :残余
【0098】
尚、有機酸金属化合物溶液として、有機錫化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化錫が得られ、有機インジウム化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化インジウムが得られ、有機亜鉛化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化亜鉛が得られ、有機アンチモン化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化アンチモンが得られ、有機アンチモン化合物及び有機錫化合物を酸に溶解したもの用いれば、マトリックスとして酸化アンチモン−錫が得られる。また、有機金属化合物溶液として、有機錫化合物を用いれば、マトリックスとして酸化錫が得られ、有機インジウム化合物を用いれば、マトリックスとして酸化インジウムが得られ、有機亜鉛化合物を用いれば、マトリックスとして酸化亜鉛が得られ、有機アンチモン化合物を用いれば、マトリックスとして酸化アンチモンが得られ、有機アンチモン化合物及び有機錫化合物を用いれば、マトリックスとして酸化アンチモン−錫が得られる。あるいは又、金属の塩化物の溶液(例えば、塩化錫、塩化インジウム)を用いてもよい。
【0099】
場合によっては、金属化合物溶液を乾燥した後の金属化合物層の表面に著しい凹凸が形成されている場合がある。このような場合には、金属化合物層の上に、支持体を加熱することなく、再び、金属化合物溶液を塗布することが望ましい。
【0100】
[工程−B2]
その後、有機酸金属化合物から成る金属化合物を焼成することによって、有機酸金属化合物を構成する金属原子(具体的には、In及びSn)を含むマトリックス(具体的には、金属酸化物であり、より一層具体的にはITO)61にてカーボン・ナノチューブ62がカソード電極11の表面に固定された電子放出部15Aを得る。焼成を、大気雰囲気中で、350゜C、20分の条件にて行う。こうして、得られたマトリックス61の体積抵抗率は、5×10−7Ω・mであった。有機酸金属化合物を出発物質として用いることにより、焼成温度350゜Cといった低温においても、ITOから成るマトリックス61を形成することができる。尚、有機酸金属化合物溶液の代わりに、有機金属化合物溶液を用いてもよいし、金属の塩化物の溶液(例えば、塩化錫、塩化インジウム)を用いた場合、焼成によって塩化錫、塩化インジウムが酸化されつつ、ITOから成るマトリックス61が形成される。
【0101】
[工程−B3]
次いで、全面にレジスト層を形成し、カソード電極11の所望の領域の上方に、例えば直径10μmの円形のレジスト層を残す。そして、10〜60゜Cの塩酸を用いて、1〜30分間、マトリックス61をエッチングして、電子放出部の不要部分を除去する。更に、所望の領域以外にカーボン・ナノチューブが未だ存在する場合には、以下の表2に例示する条件の酸素プラズマエッチング処理によってカーボン・ナノチューブをエッチングする。尚、バイアスパワーは0Wでもよいが、即ち、直流としてもよいが、バイアスパワーを加えることが望ましい。また、支持体を、例えば80゜C程度に加熱してもよい。
【0102】
[表2]
使用装置 :RIE装置
導入ガス :酸素を含むガス
プラズマ励起パワー:500W
バイアスパワー :0〜150W
処理時間 :10秒以上
【0103】
あるいは又、表3に例示する条件のウェットエッチング処理によってカーボン・ナノチューブをエッチングしてもよい。
【0104】
[表3]
使用溶液:KMnO4
温度 :20〜120゜C
処理時間:10秒〜20分
【0105】
その後、レジスト層を除去することによって、図9の(A)に示す構造を得ることができる。尚、直径10μmの円形の電子放出部を残すことに限定されない。例えば、電子放出部をカソード電極11上に残してもよい。
【0106】
尚、[工程−B1]、[工程−B3]、[工程−B2]の順に実行してもよい。
【0107】
[工程−B4]
次に、電子放出部15A、支持体10及びカソード電極11上に絶縁層12を形成する。具体的には、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)を原料ガスとして使用するCVD法により、全面に、厚さ約1μmの絶縁層12を形成する。
【0108】
[工程−B5]
その後、絶縁層12上にストライプ状のゲート電極13を形成し、更に、絶縁層12及びゲート電極13上にマスク層63を設けた後、ゲート電極13に第1開口部14Aを形成し、更に、ゲート電極13に形成された第1開口部14Aに連通する第2開口部14Bを絶縁層12に形成する(図9の(B)参照)。尚、マトリックス61を金属酸化物、例えばITOから構成する場合、絶縁層12をエッチングするとき、マトリックス61がエッチングされることはない。即ち、絶縁層12とマトリックス61とのエッチング選択比はほぼ無限大である。従って、絶縁層12のエッチングによってカーボン・ナノチューブ62に損傷が発生することはない。
【0109】
[工程−B6]
次いで、以下の表4に例示する条件にて、マトリックス61の一部を除去し、マトリックス61から先端部が突出した状態のカーボン・ナノチューブ62を得ることが好ましい。こうして、図10の(A)に示す構造の電子放出部15Aを得ることができる。
【0110】
[表4]
エッチング溶液:塩酸
エッチング時間:10秒〜30秒
エッチング温度:10〜60゜C
【0111】
マトリックス61のエッチングによって一部あるいは全てのカーボン・ナノチューブ62の表面状態が変化し(例えば、その表面に酸素原子や酸素分子、フッ素原子が吸着し)、電界放出に関して不活性となっている場合がある。それ故、その後、電子放出部15Aに対して水素ガス雰囲気中でのプラズマ処理を行うことが好ましく、これによって、電子放出部15Aが活性化し、電子放出部15Aからの電子の放出効率の一層の向上させることができる。プラズマ処理の条件を、以下の表5に例示する。
【0112】
[表5]
使用ガス :H2=100sccm
電源パワー :1000W
支持体印加電力:50V
反応圧力 :0.1Pa
支持体温度 :300゜C
【0113】
その後、カーボン・ナノチューブ62からガスを放出させるために、加熱処理や各種のプラズマ処理を施してもよいし、カーボン・ナノチューブ62の表面に意図的に吸着物を吸着させるために吸着させたい物質を含むガスにカーボン・ナノチューブ62を晒してもよい。また、カーボン・ナノチューブ62を精製するために、酸素プラズマ処理やフッ素プラズマ処理を行ってもよい。
【0114】
[工程−B7]
その後、絶縁層12に設けられた第2開口部14Bの側壁面を等方的なエッチングによって後退させることが、ゲート電極13の開口端部を露出させるといった観点から、好ましい。尚、等方的なエッチングは、ケミカルドライエッチングのようにラジカルを主エッチング種として利用するドライエッチング、あるいはエッチング液を利用するウェットエッチングにより行うことができる。エッチング液としては、例えば49%フッ酸水溶液と純水の1:100(容積比)混合液を用いることができる。次いで、マスク層63を除去する。こうして、図10の(B)に示す電界放出素子を完成することができる。
【0115】
尚、[工程−B5]の後、[工程−B7]、[工程−B6]の順に実行してもよい。
【0116】
[扁平型電界放出素子(その2)]
扁平型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図11の(A)に示す。この扁平型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体10上に形成されたカソード電極11、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成されたゲート電極13、ゲート電極13及び絶縁層12を貫通する開口部14(ゲート電極13に設けられた第1開口部、及び、絶縁層12に設けられ、第1開口部と連通した第2開口部)、並びに、開口部14の底部に位置するカソード電極11の部分の上に設けられた扁平の電子放出部(電子放出層15B)から成る。ここで、電子放出層15Bは、図面の紙面垂直方向に延びたストライプ状のカソード電極11上に形成されている。また、ゲート電極13は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極11及びゲート電極13はクロムから成る。電子放出層15Bは、具体的には、グラファイト粉末から成る薄層から構成されている。図11の(A)に示した扁平型電界放出素子においては、カソード電極11の表面の全域に亙って、電子放出層15Bが形成されているが、このような構造に限定するものではなく、要は、少なくとも開口部14の底部に電子放出層15Bが設けられていればよい。
【0117】
[平面型電界放出素子]
平面型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図11の(B)に示す。この平面型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体10上に形成されたストライプ状のカソード電極11、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成されたストライプ状のゲート電極13、並びに、ゲート電極13及び絶縁層12を貫通する第1開口部及び第2開口部(開口部14)から成る。開口部14の底部にはカソード電極11が露出している。カソード電極11は、図面の紙面垂直方向に延び、ゲート電極13は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極11及びゲート電極13はクロム(Cr)から成り、絶縁層12はSiO2から成る。ここで、開口部14の底部に露出したカソード電極11の部分が電子放出部15Cに相当する。
【0118】
以上、本発明を、発明の実施の形態に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。発明の実施の形態にて説明したアノードパネルやカソードパネル、表示装置や電界放出素子の構成、構造は例示であり、適宜変更することができるし、アノードパネルやカソードパネル、表示装置や電界放出素子の製造方法も例示であり、適宜変更することができる。更には、アノードパネルやカソードパネルの製造において使用した各種材料も例示であり、適宜変更することができる。表示装置においては、専らカラー表示を例にとり説明したが、単色表示とすることもできる。また、実施の形態においては、平面型表示装置を専ら冷陰極電界電子放出表示装置としたが、平面型表示装置をプラズマ表示装置とすることもできる。
【0119】
本発明の平面型表示装置において、封止層を構成する封止剤を、融点が120〜400゜C程度の所謂低融点金属材料を用いてもよい。かかる低融点金属材料としては、In(インジウム:融点157゜C);インジウム−金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220〜370゜C)、Sn95Cu5(融点227〜370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304〜365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;Sn5Pb95(融点300〜314゜C)、Sn2Pb98(融点316〜322゜C)等の錫−鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。そして、この場合には、第1パネルと枠体の第1面、及び、第2パネルと枠体の第2面との間に、所謂低融点金属材料から成る封止剤及びスペーサ粒子から構成された、例えばシート状あるいは箔状の封止層を配した後、加熱処理を施すことで封止層を溶融させ、次いで、封止層を冷却することで、第1パネルと第2パネルとを、それらの周縁部において枠体を介して接合させることができる。
【0120】
実施の形態においては、第1パネルを複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルCPから構成し、第2パネルをアノード電極及び蛍光体層等が形成されたアノードパネルAPから構成したが、その代わりに、第2パネルを複数の冷陰極電界電子放出素子が形成されたカソードパネルCPから構成し、第1パネルをアノード電極及び蛍光体層等が形成されたアノードパネルAPから構成してもよい。
【0121】
アノード電極は、実施の形態にて説明したように有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式のアノード電極としてもよいし、1又は複数の電子放出部、あるいは、1又は複数の画素に対応するアノード電極ユニットが集合した形式のアノード電極としてもよい。アノード電極が前者の構成の場合、かかるアノード電極をアノード電極制御回路に接続すればよいし、アノード電極が後者の構成の場合、例えば、各アノード電極ユニットをアノード電極制御回路に接続すればよい。
【0122】
また、電界放出素子においては、専ら1つの開口部に1つの電子放出部が対応する形態を説明したが、電界放出素子の構造に依っては、1つの開口部に複数の電子放出部が対応した形態、あるいは、複数の開口部に1つの電子放出部が対応する形態とすることもできる。あるいは又、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、絶縁層にかかる複数の第1開口部に連通した複数の第2開口部を設け、1又は複数の電子放出部を設ける形態とすることもできる。
【0123】
電界放出素子において、ゲート電極13及び絶縁層12の上に更に第2の絶縁層72を設け、第2の絶縁層72上に収束電極73を設けてもよい。このような構造を有する電界放出素子の模式的な一部端面図を図12に示す。第2の絶縁層72には、第1開口部14Aに連通した第3開口部74が設けられている。収束電極73の形成は、例えば、[工程−A2]において、絶縁層12上にストライプ状のゲート電極13を形成した後、第2の絶縁層72を形成し、次いで、第2の絶縁層72上にパターニングされた収束電極73を形成した後、収束電極73、第2の絶縁層72に第3開口部74を設け、更に、ゲート電極13に第1開口部14Aを設ければよい。尚、収束電極のパターニングに依存して、1又は複数の電子放出部、あるいは、1又は複数の画素に対応する収束電極ユニットが集合した形式の収束電極とすることもでき、あるいは又、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式の収束電極とすることもできる。また、電子放出部として、実施の形態2にて説明した各種の電子放出部とすることができる。即ち、図12においては、スピント型電界放出素子を図示したが、その他の電界放出素子とすることもできることは云うまでもない。
【0124】
ゲート電極を、有効領域を1枚のシート状の導電材料(開口部を有する)で被覆した形式のゲート電極とすることもできる。この場合には、かかるゲート電極に正の電圧を印加する。そして、各画素を構成するカソード電極とカソード電極制御回路との間に、例えば、TFTから成るスイッチング素子を設け、かかるスイッチング素子の作動によって、各画素を構成する電子放出部への印加状態を制御し、画素の発光状態を制御する。
【0125】
あるいは又、カソード電極を、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式のカソード電極とすることもできる。この場合には、かかるカソード電極に電圧を印加する。そして、各画素を構成する電子放出部とゲート電極制御回路との間に、例えば、TFTから成るスイッチング素子を設け、かかるスイッチング素子の作動によって、各画素を構成するゲート電極への印加状態を制御し、画素の発光状態を制御する。
【0126】
冷陰極電界電子放出表示装置は、カソード電極、ゲート電極及びアノード電極から構成された所謂3電極型に限定されず、カソード電極及びアノード電極から構成された所謂2電極型とすることもできる。このような構造の表示装置の模式的な一部端面図を図13に示す。尚、図13においては、隔壁及びブラックマトリックスの図示を省略している。この表示装置における電界放出素子は、支持体10上に設けられたカソード電極11と、カソード電極11上に形成されたカーボン・ナノチューブ62から構成された電子放出部15Aから成る。アノードパネルAPを構成するアノード電極24Aはストライプ状である。尚、電子放出部の構造はカーボン・ナノチューブ構造体に限定されない。ストライプ状のカソード電極11の射影像とストライプ状のアノード電極24Aの射影像とは直交する。具体的には、ストライプ状のカソード電極11は図面の紙面垂直方向に延び、ストライプ状のアノード電極24Aは図面の紙面左右方向に延びている。この表示装置におけるカソードパネルCPにおいては、上述のような電界放出素子の複数から構成された電子放出領域EAが有効領域に2次元マトリクス状に多数形成されている。
【0127】
この表示装置においては、アノード電極24Aによって形成された電界に基づき、量子トンネル効果に基づき電子放出部15Aから電子が放出され、この電子がアノード電極24Aに引き付けられ、蛍光体層22に衝突する。即ち、アノード電極24Aの射影像とカソード電極11の射影像とが重複する領域(アノード電極/カソード電極重複領域)に位置する電子放出部15Aから電子が放出される、所謂単純マトリクス方式により、表示装置の駆動が行われる。具体的には、カソード電極制御回路41からカソード電極11に相対的に負の電圧を印加し、アノード電極制御回路43からアノード電極24Aに相対的に正の電圧を印加する。その結果、列選択されたカソード電極11と行選択されたアノード電極24A(あるいは、行選択されたカソード電極11と列選択されたアノード電極24A)とのアノード電極/カソード電極重複領域に位置する電子放出部15Aを構成するカーボン・ナノチューブ62から選択的に真空空間中へ電子が放出され、この電子がアノード電極24Aに引き付けられてアノードパネルAPを構成する蛍光体層22に衝突し、蛍光体層22を励起、発光させる。
【0128】
表面伝導型電界放出素子と通称される電界放出素子から電子放出領域EAを構成することもできる。この表面伝導型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体上に酸化錫(SnO2)、金(Au)、酸化インジウム(In2O3)/酸化錫(SnO2)、カーボン、酸化パラジウム(PdO)等の導電材料から成り、微小面積を有し、所定の間隔(ギャップ)を開けて配された一対の電極がマトリクス状に形成されて成る。それぞれの電極の上には炭素薄膜が形成されている。そして、一対の電極の内の一方の電極に行方向配線が接続され、一対の電極の内の他方の電極に列方向配線が接続された構成を有する。一対の電極に電圧を印加することによって、ギャップを挟んで向かい合った炭素薄膜に電界が加わり、炭素薄膜から電子が放出される。かかる電子をアノードパネル上の蛍光体層に衝突させることによって、蛍光体層が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。
【0129】
【発明の効果】
本発明においては、封止層にスペーサ粒子が含まれているが故に、第1パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させ、第2パネルと枠体との間の未硬化封止層を硬化させるとき、これらの未硬化封止層の流動状態や潰れ具合に差異が生じ難い。それ故、第1パネルと枠体との間の気密性不良、第2パネルと枠体との間の気密性不良が生じ難く、高い信頼性を有する平面型表示装置を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、発明の実施の形態1の平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図2】図2の(A)は、発明の実施の形態1の平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の周縁部を拡大した模式的な一部断面図であり、図2の(B)は、第1面及び第2面上に未硬化封止層が形成された状態の枠体の模式的な断面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、発明の実施の形態1の平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の組立方法を説明するための枠体等の模式的な一部断面図である。
【図4】図4は、冷陰極電界電子放出表示装置におけるカソードパネルの模式的な部分的斜視図である。
【図5】図5は、アノードパネルにおける隔壁とスペーサと蛍光体層の配置状態の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、アノードパネルにおける隔壁とスペーサと蛍光体層の配置状態の一例を模式的に示す図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、スピント型冷陰極電界電子放出素子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、図7の(B)に引き続き、スピント型冷陰極電界電子放出素子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その1)の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図10】図10の(A)及び(B)は、図9の(B)に引き続き、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その1)の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その2)の模式的な一部断面図、及び、平面型冷陰極電界電子放出素子の模式的な一部断面図である。
【図12】図12は、収束電極を有するスピント型冷陰極電界電子放出素子の模式的な一部端面図である。
【図13】図13は、所謂2電極型の冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図14】図14は、従来の冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、従来の冷陰極電界電子放出表示装置を組み立てる際の問題点を説明するための、冷陰極電界電子放出表示装置の周縁部の模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
CP・・・カソードパネル、AP・・・アノードパネル、10・・・支持体、11・・・カソード電極、12・・・絶縁層、13・・・ゲート電極、14・・・開口部、14A・・・第1開口部、14B・・・第2開口部、15,15A,15B,15C・・・電子放出部、20・・・基板、21・・・隔壁、22,22R,22G,22B・・・蛍光体層、23・・・ブラックマトリックス、24・・・アノード電極、25・・・スペーサ、30・・・枠体、31A,31B・・・硬化後の封止層、31a,31b・・・未硬化封止層、32・・・封止剤、33・・・スペーサ粒子、41・・・カソード電極制御回路、42・・・ゲート電極制御回路、43・・・アノード電極制御回路、51・・・剥離層、52・・・導電材料層、61・・・マトリックス、62・・・カーボン・ナノチューブ、63・・・マスク層、72・・・第2の絶縁層、73・・・収束電極、74・・・第3開口部
Claims (10)
- 第1パネルと第2パネルとが、それらの周縁部において枠体を介して接合されて成る平面型表示装置であって、
該第1パネルと該枠体の第1面、及び、該第2パネルと該枠体の第2面とは、それぞれ、封止層によって接着され、
封止層は、封止剤及びスペーサ粒子から成ることを特徴とする平面型表示装置。 - 封止剤はフリットガラス焼成体から成り、スペーサ粒子はガラスから成ることを特徴とする請求項1に記載の平面型表示装置。
- 第1パネルと第2パネルとの間の距離をD0、枠体の高さをH0、スペーサ粒子の平均径をD1としたとき、以下の式を満足することを特徴とする請求項1に記載の平面型表示装置。
0.1[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2] - 以下の式を満足することを特徴とする請求項3に記載の平面型表示装置。
0.5[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2] - 平面型表示装置は冷陰極電界電子放出表示装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平面型表示装置。
- 第1パネルと第2パネルとが、それらの周縁部において枠体を介して接合されて成る平面型表示装置の組立方法であって、
該第1パネルと該枠体の第1面、及び、該第2パネルと該枠体の第2面との間に、それぞれ、未硬化封止層を配した後、加熱処理を施すことで未硬化封止層を硬化させて封止層を得る工程を具備し、
封止層は、封止剤及びスペーサ粒子から成ることを特徴とする平面型表示装置の組立方法。 - 封止剤はフリットガラス焼成体から成り、スペーサ粒子はガラスから成ることを特徴とする請求項6に記載の平面型表示装置の組立方法。
- 第1パネルと第2パネルとの間の距離をD0、枠体の高さをH0、スペーサ粒子の平均径をD1としたとき、以下の式を満足することを特徴とする請求項6に記載の平面型表示装置の組立方法。
0.1[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2] - 以下の式を満足することを特徴とする請求項8に記載の平面型表示装置の組立方法。
0.5[(D0−H0)/2]≦D1≦0.9[(D0−H0)/2] - 平面型表示装置は冷陰極電界電子放出表示装置であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の平面型表示装置の組立方法。
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-
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- 2003-06-09 JP JP2003163697A patent/JP2005004971A/ja active Pending
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