JP2004241292A - 冷陰極電界電子放出表示装置 - Google Patents

冷陰極電界電子放出表示装置 Download PDF

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Morikazu Konishi
守一 小西
Satoshi Okanami
聡 岡南
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Abstract

【課題】シールド電極15とアノード電極34との間で異常放電が発生した場合であっても、損傷が発生し難い構造を有する冷陰極電界電子放出表示装置を提供する。
【解決手段】カソードパネルCPとアノードパネルAPとがそれらの周縁部で接合されて成る表示部DP、アノード電極制御回路43、カソード電極制御回路40、ゲート電極制御回路41、及び、シールド電極制御回路42から構成された冷陰極電界電子放出表示装置は、アノード電極34とアノード電極制御回路43との間に抵抗値Rを有する第1の抵抗部材50が設けられ、シールド電極15とシールド電極制御回路42との間に抵抗値Rを有する第2の抵抗部材51が設けられており、アノード電極制御回路の出力電圧をVとしたとき、V×{R/(R+R)}≦100を満足する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷陰極電界電子放出表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン受像機や情報端末機器に用いられる表示装置の分野では、従来主流の陰極線管(CRT)から、薄型化、軽量化、大画面化、高精細化の要求に応え得る平面型(フラットパネル型)の表示装置への移行が検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)、冷陰極電界電子放出表示装置(FED:フィールドエミッションディスプレイ)を例示することができる。このなかでも、液晶表示装置は情報端末機器用の表示装置として広く普及しているが、据置き型のテレビジョン受像機に適用するには、高輝度化や大型化に未だ課題を残している。これに対して、冷陰極電界電子放出表示装置は、熱的励起によらず、量子トンネル効果に基づき固体から真空中に電子を放出することが可能な冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と呼ぶ場合がある)を利用しており、高輝度及び低消費電力の点から注目を集めている。
【0003】
このような電界放出素子の一例として、特開平9−90898の図2に開示された電界放出素子の模式的な一部端面図を図16に再掲する。
【0004】
この電界放出素子にあっては、基板1の上に絶縁層2が堆積されており、絶縁層2の上には金属薄膜の制御電極(ゲート電極)3が積層されている。絶縁層2と制御電極3には単数あるいは複数のキャビティ(開口部)が形成され、その中に円錐状のエミッタ(電子放出部)4が形成されている。制御電極3の上には絶縁層5、収束電極6がエミッタ4の付近を除いて積層されている。基板1、絶縁層2、制御電極3、エミッタ4、絶縁層5、収束電極6で微小冷陰極(電界放出素子)7が構成され、単数あるいは複数の微小冷陰極7で冷陰極15が構成される。実際には、エミッタ(電子放出部)4から放出された電子ビーム8は陽極(アノード電極)9に衝突し、正の電圧を発生する陽極電源(アノード電極制御回路)10に流れる。
【0005】
制御電極(ゲート電極)3に印加する電圧は制御電極電源(ゲート電極制御回路)17で発生され、収束電極6には制御電極3に印加する電圧を可変抵抗器14で分圧した電圧が印加される。この結果、制御電極3の電圧と収束電極6の電圧の比は可変抵抗器14で設定した値に常に保たれる。可変抵抗器14によってあるビーム電流量における収束状態を調節すれば、制御電極電源17の出力電圧によってエミッタ4から取り出す電子ビーム電流設定値を変えてもほぼ同じ収束状態が保持される。
【0006】
【特許文献1】特開平9−90898
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような表示装置においては、陽極(アノード電極)9と収束電極6との間の距離は高々1mm程度しかなく、陽極9と収束電極6との間で異常放電(真空アーク放電)が発生し易い。異常放電が発生すると、収束電極6や制御電極(ゲート電極)3の電位が異常に上昇し、表示品質が著しく損なわれるだけでなく、電界放出素子(制御電極3、エミッタ4)や、収束電極6、陽極(アノード電極)9に損傷が発生する。
【0008】
従って、本発明の目的は、例えば、収束電極として機能する電極とアノード電極との間で異常放電が発生した場合であっても、冷陰極電界電子放出表示装置を構成する部材に損傷が発生し難い構造を有する冷陰極電界電子放出表示装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置は、
カソードパネルとアノードパネルとがそれらの周縁部で接合されて成る表示部、アノード電極制御回路、カソード電極制御回路、ゲート電極制御回路、及び、シールド電極制御回路から構成された冷陰極電界電子放出表示装置であって、
該カソードパネルは、
(A)支持体、
(B)支持体上に形成され、それぞれがカソード電極制御回路に接続され、第1の方向に延びる複数のカソード電極、
(C)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層、
(D)絶縁層上に形成され、それぞれがゲート電極制御回路に接続され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数のゲート電極、
(E)カソード電極とゲート電極の重複する重複領域に位置するゲート電極及び絶縁層の部分に形成された少なくとも1つの開口部、
(F)各重複領域に設けられた開口部の底部に位置する電子放出領域、並びに、
(G)ゲート電極の上方に配設され、シールド電極制御回路に接続されたシールド電極、
から成り、
該アノードパネルには、
(H)蛍光体層、及び、
(I)アノード電極制御回路に接続されたアノード電極、
が設けられており、
(J)アノード電極とアノード電極制御回路との間には、抵抗値Rを有する第1の抵抗部材が設けられ、
(K)シールド電極とシールド電極制御回路との間には、抵抗値Rを有する第2の抵抗部材が設けられている。
【0010】
そして、本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置は、
アノード電極制御回路の出力電圧をVとしたとき、
×{R/(R+R)}≦100
好ましくは、
×{R/(R+R)}≦50
を満足することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置は、
アノード電極制御回路の出力電圧をVとし、
ゲート電極制御回路からゲート電極に印加される電圧Vとカソード電極制御回路からカソード電極に印加される電圧Vとの最大電位差をΔVMAXとし、
シールド電極とゲート電極全体との間の容量をCSGとし、
ゲート電極とカソード電極全体との間の容量をCGCとしたとき、
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦10ΔVMAX
好ましくは、
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦5ΔVMAX
一層好ましくは、
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦2ΔVMAX
を満足することを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置(以下、これらを総称して、単に、本発明の表示装置と呼ぶ場合がある)において、カソード電極制御回路、ゲート電極制御回路、アノード電極制御回路及びシールド電極制御回路は周知の回路から構成することができる。アノード電極制御回路の出力電圧Vは、通常、一定であり、例えば、5キロボルト〜10キロボルトとすることができる。一方、カソード電極に印加する電圧V及びゲート電極に印加する電圧Vに関しては、▲1▼カソード電極に印加する電圧Vを一定とし、ゲート電極に印加する電圧Vを変化させる方式、▲2▼カソード電極に印加する電圧Vを変化させ、ゲート電極に印加する電圧Vを一定とする方式、▲3▼カソード電極に印加する電圧Vを変化させ、且つ、ゲート電極に印加する電圧Vも変化させる方式がある。
【0013】
第1の抵抗部材及び第2の抵抗部材は、例えばチップ抵抗といったディスクリート部品から構成されていてもよいし、抵抗体薄膜(薄膜抵抗材料あるいは薄膜抵抗材料)から構成されていてもよい。抵抗体薄膜の構成材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料;SiN;酸化ルテニウム(RuO)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物;アモルファスシリコン等の半導体材料;ITOを例示することができるが、これらの材料に限定するものではない。
【0014】
第1の抵抗部材は、高真空状態とされた表示部の内部に設けられていてもよいし、表示部の外部に設けられていてもよいし、場合によっては、アノード電極制御回路内に設けられていてもよい。
【0015】
第2の抵抗部材は、表示部の内部に設けられていてもよいし、表示部の外部に設けられていてもよいし、場合によっては、シールド電極制御回路内に設けられていてもよい。
【0016】
シールド電極とゲート電極全体との間の容量(静電容量)CSGの値は、全てのゲート電極を短絡し、係る短絡されたゲート電極とシールド電極との間の容量(静電容量)を公知の方法で測定することで調べることができる。また、ゲート電極とカソード電極全体との間の容量(静電容量)CGCの値は、全てのゲート電極を短絡し、全てのカソード電極を短絡し、係る短絡されたゲート電極と短絡されたカソード電極との間の容量(静電容量)を公知の方法で測定することで調べることができる。
【0017】
本発明の表示装置において、シールド電極は、表示部の内部の有効領域(実際の表示部分として機能する領域)を覆う1枚のシート状の形状とすることが望ましい。尚、シールド電極には、電子放出領域あるいは電子放出部から放出された電子を通過させるための開口部が設けられている。この開口部は、後述する各冷陰極電界電子放出素子毎に設けられていてもよいし、各電子放出領域毎(各重複領域毎)に設けられていてもよい。シールド電極は、ゲート電極及び絶縁層上に絶縁膜を介して形成されていることが好ましい。シールド電極を、収束電極として機能させることができる。
【0018】
アノード電極は、表示部の内部の有効領域を覆う1枚のシート状の形状とすることもできるし、複数のアノード電極ユニットの集合体から構成することもできる。後者の場合、アノード電極制御回路に接続されたバスラインを表示部の内部の無効領域(有効領域を取り囲む領域)に設け、バスラインと各アノード電極ユニットとを第1の抵抗部材によって接続し、あるいは又、バスラインと各アノード電極ユニットとの接続部に第1の抵抗部材を配設すればよい。
【0019】
アノード電極ユニットの数(N)は2以上であればよく、例えば、直線状に配列された1サブピクセルを構成する単位蛍光体層(表示装置において1つの輝点を生成する蛍光体層)の列の総数をn列としたとき、N=nとし、あるいは、n=α・N(αは2以上の整数であり、好ましくは10≦α≦100、一層好ましくは20≦α≦50)としてもよいし、一定の間隔をもって配設されるスペーサの数に1を加えた数とすることができる。また、各アノード電極ユニットの大きさは、アノード電極ユニットの位置に拘わらず同じとしてもよいし、アノード電極ユニットの位置に依存して異ならせてもよい。
【0020】
本発明の表示装置において、冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と称する)は、
(a)支持体上に形成され、第1の方向に延びるカソード電極、
(b)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層、
(c)絶縁層上に形成され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるゲート電極、
(d)カソード電極とゲート電極の重複する重複領域に位置するゲート電極及び絶縁層の部分に形成された開口部、
(e)開口部の底部に位置する電子放出部、並びに、
(f)ゲート電極の上方に配設されたシールド電極の部分、
から構成されている。
【0021】
ここで、冷陰極電界電子放出素子として、
(1)円錐形の電子放出部が、開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられたスピント型電界放出素子
(2)多数の電子放出点を有する略平面状の電子放出部が開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられ、多数の電子放出点から電子を放出する扁平型電界放出素子
(3)王冠状の電子放出部が開口部の底部に位置するカソード電極上に設けられ、電子放出部の王冠状の部分(多数の電子放出点に相当する)から電子を放出するクラウン型電界放出素子
(4)平坦なカソード電極の表面の多数の電子放出点から電子を放出する平面型電界放出素子
(5)凹凸が形成されたカソード電極の表面の多数の凸部(電子放出点に相当する)から電子を放出するクレータ型電界放出素子
(6)カソード電極のエッジ部の多数点(電子放出点に相当する)から電子を放出するエッジ型電界放出素子
を例示することができる。
【0022】
尚、電界放出素子として、上述の各種の型式の他に、表面伝導型電子放出素子と通称される素子も知られており、本発明の表示装置に適用することができる。表面伝導型電子放出素子においては、例えばガラスから成る基板上に酸化錫(SnO)、金(Au)、酸化インジウム(In)/酸化錫(SnO)、カーボン、酸化パラジウム(PdO)等の材料から成り、微小面積を有する薄膜がマトリクス状に形成され、各薄膜は2つの薄膜片から成り、一方の薄膜片に行方向配線、他方の薄膜片に列方向配線が接続されている。一方の薄膜片と他方の薄膜片との間には数nmのギャップが設けられている。行方向配線と列方向配線とによって選択された薄膜においては、ギャップを介して薄膜から電子が放出される。
【0023】
ここで、各重複領域に設けられた1又は複数の電界放出素子を構成する電子放出部によって、電子放出領域が構成される。
【0024】
本発明の表示装置におけるアノードパネルを構成する基板として、ガラス基板、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができるが、製造コスト低減の観点からは、ガラス基板、あるいは、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板として、高歪点ガラス、ソーダガラス(NaO・CaO・SiO)、硼珪酸ガラス(NaO・B・SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、鉛ガラス(NaO・PbO・SiO)を例示することができる。カソードパネルを構成する支持体も、基板と同様の構成とすることができる。
【0025】
アノード電極、カソード電極、ゲート電極、シールド電極の構成材料として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の金属、これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi、MoSi、TiSi、TaSi等のシリサイド)、ITO(インジウム・錫酸化物)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物、あるいはシリコン(Si)等の半導体を例示することができる。これらを作製、形成するには、CVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気メッキ法、無電解メッキ法、スクリーン印刷法、レーザアブレーション法、ゾル−ゲル法等の公知の薄膜形成技術により、上述の構成材料から成る薄膜を被成膜体上に形成する。このとき、薄膜を被成膜体の全面に形成した場合には、公知のパターニング技術を用いて薄膜をパターニングし、各電極を形成する。また、薄膜を形成する前の被成膜体上に予めレジストパターンを形成しておけば、リフトオフ法による各電極の形成が可能である。更に、アノード電極ユニットや、カソード電極、ゲート電極、シールド電極の形状に応じた開口部を有するマスクを用いて蒸着を行ったり、かかる開口部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行えば、成膜後のパターニングは不要である。
【0026】
電界放出素子を構成する絶縁層や、絶縁膜の構成材料として、SiO、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiN、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO系材料、SiN、ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層や絶縁膜の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等の公知のプロセスが利用できる。
【0027】
電子放出部に関しては、後に詳しく説明する。
【0028】
アノード電極の構成材料は、表示部の構成によって適宜選択すればよい。即ち、表示部が透過型(アノードパネルが表示面に相当する)であって、且つ、アノードパネルを構成する基板上にアノード電極と蛍光体層がこの順に積層されている場合には、基板は元より、アノード電極自身も透明である必要があり、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いる。一方、表示部が反射型(カソードパネルが表示面に相当する)である場合、及び、透過型であっても基板上に蛍光体層とアノード電極とがこの順に積層されている場合には、ITOの他、アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)を用いることができる。アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)からアノード電極を構成する場合、アノード電極の厚さとして、具体的には、3×10−8m(30nm)乃至1.5×10−7m(150nm)、好ましくは5×10−8m(50nm)乃至1×10−7m(100nm)を例示することができる。アノード電極は、蒸着法やスパッタリング法にて形成することができる。
【0029】
蛍光体層は、単色の蛍光体粒子から構成されていても、3原色の蛍光体粒子から構成されていてもよい。また、蛍光体層の配列様式は、ドットマトリクス状であっても、ストライプ状であってもよい。尚、ドットマトリクス状やストライプ状の配列様式においては、隣り合う蛍光体層の間の隙間がコントラスト向上を目的としたブラックマトリックスで埋め込まれていてもよい。
【0030】
アノードパネルには、更に、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が他の蛍光体層に入射し、所謂光学的クロストーク(色濁り)が発生することを防止するための、あるいは又、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が隔壁を越えて他の蛍光体層に向かって侵入したとき、これらの電子が他の蛍光体層と衝突することを防止するための隔壁が、複数、設けられていることが好ましい。
【0031】
隔壁の平面形状として、格子形状(井桁形状)、即ち、1サブピクセルに相当する、例えば平面形状が略矩形(ドット状)の蛍光体層の四方を取り囲む形状を挙げることができ、あるいは、略矩形あるいはストライプ状の蛍光体層の対向する二辺と平行に延びる帯状形状あるいはストライプ形状を挙げることができる。隔壁を格子形状とする場合、1つの蛍光体層の領域の四方を連続的に取り囲む形状としてもよいし、不連続に取り囲む形状としてもよい。隔壁を帯状形状あるいはストライプ形状とする場合、連続した形状としてもよいし、不連続な形状としてもよい。隔壁を形成した後、隔壁を研磨し、隔壁の頂面の平坦化を図ってもよい。
【0032】
蛍光体層からの光を吸収するブラックマトリックスが蛍光体層と蛍光体層との間であって隔壁と基板との間に形成されていることが、表示画像のコントラスト向上といった観点から好ましい。ブラックマトリックスを構成する材料として、蛍光体層からの光を99%以上吸収する材料を選択することが好ましい。このような材料として、カーボン、金属薄膜(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等、あるいは、これらの合金)、金属酸化物(例えば、酸化クロム)、金属窒化物(例えば、窒化クロム)、耐熱性有機樹脂、ガラスペースト、黒色顔料や銀等の導電性粒子を含有するガラスペースト等の材料を挙げることができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。尚、酸化クロム/クロム積層膜においては、クロム膜が基板と接する。
【0033】
カソードパネルとアノードパネルとを周縁部において接合する場合、接合は接着層を用いて行ってもよいし、あるいは、ガラスやセラミックス等の絶縁剛性材料から成る枠体と接着層とを併用して行ってもよい。枠体と接着層とを併用する場合には、枠体の高さを適宜選択することにより、接着層のみを使用する場合に比べ、カソードパネルとアノードパネルとの間の対向距離をより長く設定することが可能である。尚、接着層の構成材料としては、フリットガラスが一般的であるが、融点が120〜400゜C程度の所謂低融点金属材料を用いてもよい。かかる低融点金属材料としては、In(インジウム:融点157゜C);インジウム−金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220〜370゜C)、Sn95Cu(融点227〜370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304〜365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;SnPb95(融点300〜314゜C)、SnPb98(融点316〜322゜C)等の錫−鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。
【0034】
基板と支持体と枠体の三者を接合する場合、三者同時接合を行ってもよいし、あるいは、第1段階で基板又は支持体のいずれか一方と枠体とを先に接合し、第2段階で基板又は支持体の他方と枠体とを接合してもよい。三者同時接合や第2段階における接合を高真空雰囲気中で行えば、基板と支持体と枠体と接着層とにより囲まれた空間は、接合と同時に真空となる。あるいは、三者の接合終了後、基板と支持体と枠体と接着層とによって囲まれた空間を排気し、真空とすることもできる。接合後に排気を行う場合、接合時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
【0035】
接合後に排気を行う場合、排気は、基板及び/又は支持体に予め接続されたチップ管を通じて行うことができる。チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、基板及び/又は支持体の無効領域(即ち、表示部分として機能する有効領域以外の領域)に設けられた貫通孔の周囲に、フリットガラス又は上述の低融点金属材料を用いて接合され、空間が所定の真空度に達した後、熱融着によって封じ切られる。尚、封じ切りを行う前に、表示部全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので好適である。
【0036】
表示部の内部は高真空状態となっており、表示部には大気圧が加わる。従って、大気圧によって表示部に損傷が発生しないように、表示部内部には、スペーサを配しておくことが好ましい。スペーサを構成する材料として、ガラスや、セラミックス(例えば、ムライトやアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミックス材料に、酸化チタンや酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等)を例示することができる。スペーサは、例えば、アノードパネルに設けられたスペーサ保持部、あるいは、隔壁によって、アノードパネルに固定することができる。
【0037】
本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置においては、第1の抵抗部材の抵抗値R、第2の抵抗部材の抵抗値R、及び、アノード電極制御回路の出力電圧Vの関係を規定することによって、アノード電極とシールド電極との間に異常放電が発生したときに、シールド電極の電位が異常に上昇することを防止することができる結果、冷陰極電界電子放出表示装置の表示部を構成する要素の損傷発生や、各種の電極制御回路の損傷発生を防止することができる。
【0038】
また、本発明の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置においては、第1の抵抗部材の抵抗値R、第2の抵抗部材の抵抗値R、アノード電極制御回路の出力電圧V、シールド電極とゲート電極全体との間の容量(静電容量)CSG、及び、ゲート電極とカソード電極全体との間の容量(静電容量)CGCの関係を規定することによって、アノード電極とシールド電極との間に異常放電が発生したときに、シールド電極の電位が異常に上昇することを防止することができる結果、冷陰極電界電子放出表示装置の表示部を構成する要素の損傷発生や、各種の電極制御回路の損傷発生を防止することができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態(以下、実施の形態と略称する)に基づき本発明を説明する。
【0040】
(実施の形態1)
実施の形態1は、本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置(以下、単に、表示装置と略称する)に関する。
【0041】
実施の形態1の表示装置の模式的な一部端面図を図1に示し、カソードパネルCPとアノードパネルAPを分解したときの模式的な部分的斜視図を図2に示し、電子放出領域を上から眺めた模式図を図3に示す。尚、図2においては、シールド電極、絶縁膜及び隔壁の図示を省略している。また、図3には、シールド電極15、及び、シールド電極15に設けられた第2開口部16が示されており、シールド電極15の下方に位置するゲート電極13を点線で表し、カソード電極11を一点鎖線で示す。
【0042】
実施の形態1の表示装置は、カソードパネルCPとアノードパネルAPとがそれらの周縁部で枠体35を介して接合されて成る表示部DP、アノード電極制御回路43、カソード電極制御回路40、ゲート電極制御回路41、及び、シールド電極制御回路42から構成されている。
【0043】
そして、カソードパネルCPは、
(A)支持体10、
(B)支持体10上に形成され、それぞれがカソード電極制御回路40に接続され、第1の方向に延びる複数のカソード電極11、
(C)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、
(D)絶縁層12上に形成され、それぞれがゲート電極制御回路41に接続され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数のゲート電極13、
(E)カソード電極11とゲート電極13の重複する重複領域に位置するゲート電極13及び絶縁層12の部分に形成された少なくとも1つの開口部17(ゲート電極13に形成された開口部17A、及び、絶縁層12に形成された開口部17B)、
(F)各重複領域に設けられた開口部17の底部に位置する電子放出領域18、並びに、
(G)ゲート電極13の上方に配設され、シールド電極制御回路42に接続されたシールド電極15、
から成る。
【0044】
シールド電極15は、より具体的には、ゲート電極13及び絶縁層12上に形成された絶縁膜14上に形成されており、表示部DPの有効領域全体を覆う1枚のシート状の形状を有する。シールド電極15及び絶縁膜14には第2開口部16が設けられており、この第2開口部16は開口部17に連通している。シールド電極15は、収束電極として機能する。
【0045】
カソード電極11とゲート電極13とは、これらの両電極の射影像が互いに直交する方向に各々ストライプ状に形成されており、これらの両電極の射影像が重複する重複領域が1サブピクセルに相当する領域である。この重複領域に、複数の冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と称する)が設けられている。更に、かかる重複領域が、表示部DPの有効領域内に、通常、2次元マトリックス状に配列されている。
【0046】
実施の形態1にあっては、電界放出素子は、
(a)支持体10上に形成され、第1の方向に延びるカソード電極11、
(b)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、
(c)絶縁層12上に形成され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるゲート電極13、
(d)カソード電極11とゲート電極13の重複する重複領域に位置するゲート電極13及び絶縁層12の部分に形成された開口部17、
(e)開口部17の底部に位置する電子放出部118、並びに、
(f)ゲート電極13の上方に配設されたシールド電極15の部分、
から構成されている。
【0047】
ここで、実施の形態1の電界放出素子は、円錐形の電子放出部118が開口部17の底部に位置するカソード電極11上に設けられた、スピント型電界放出素子である。各重複領域に設けられた複数の電界放出素子を構成する電子放出部118によって、電子放出領域18が構成されている。また、シールド電極15は、ゲート電極13及び絶縁層12上に形成された絶縁膜14上に形成されており、シールド電極15及び絶縁膜14には第2開口部16が設けられており、この第2開口部16は開口部17に連通している。
【0048】
一方、アノードパネルAPは、基板30と、基板30上に形成され、所定のパターンを有する蛍光体層31(赤色発光蛍光体層31R,青色発光蛍光体層31B,緑色発光蛍光体層31G)と、その上に形成されたアノード電極34から構成されている。アノード電極34は、全体として、表示部DPの有効領域を覆う形状を有し、例えばアルミニウム薄膜から構成されており、アノード電極制御回路43に接続されている。蛍光体層31と蛍光体層31との間の基板30上には、隔壁33が形成されている。また、蛍光体層31と蛍光体層31との間であって、隔壁33と基板30との間にはブラックマトリックス32が形成されている。
【0049】
1サブピクセルは、カソードパネル側のカソード電極11とゲート電極13との重複領域に設けられた電界放出素子の一群と、これらの電界放出素子の一群に対面したアノードパネル側の蛍光体層31(1つの赤色発光単位蛍光体層、1つの緑色発光単位蛍光体層、あるいは、1つの青色発光単位蛍光体層の集合)とによって構成されている。1画素(1ピクセル)は3つのサブピクセルから構成され、各サブピクセルは、1つの赤色発光単位蛍光体層、1つの緑色発光単位蛍光体層、あるいは、1つの青色発光単位蛍光体層を備えている。そして、有効領域には、かかる画素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列されている。
【0050】
アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体35とによって囲まれた空間は真空となっている。アノードパネルAPとカソードパネルCPとを、電子放出領域と蛍光体層31とが対向するように配置し、周縁部において枠体35を介して接合することによって、表示部を作製することができる。有効領域を包囲し、画素を選択するための周辺回路が形成された無効領域には、真空排気用の貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔には真空排気後に封じ切られたチップ管(図示せず)が接続されている。尚、アノードパネルAP及びカソードパネルCPには大気によって圧力が加わる。そして、この圧力によって表示部が破損しないように、アノードパネルAPとカソードパネルCPとの間には、高さが例えば1mm程度のスペーサ(図示せず)が配置されている。隔壁33の一部は、スペーサを保持するためのスペーサ保持部としても機能する。
【0051】
更には、アノード電極34とアノード電極制御回路43との間にはチップ抵抗から成る抵抗値Rを有する第1の抵抗部材51が設けられ、シールド電極15とシールド電極制御回路42との間には抵抗値Rを有する第2の抵抗部材52が設けられている。より具体的には、アノード電極34とアノード電極制御回路43とは配線を介して接続され、この配線の途中であって、表示部DPの外側(枠体35の外側)に、第1の抵抗部材51が配置されている。一方、シールド電極15とシールド電極制御回路42とは配線を介して接続され、この配線の途中であって、表示部DPの外側(枠体35の外側)に、第2の抵抗部材52が配置されている。
【0052】
カソード電極11には相対的に負電圧Vがカソード電極制御回路40から印加され、ゲート電極13には相対的に正電圧Vがゲート電極制御回路41から印加され、アノード電極34にはゲート電極13よりも更に高い正電圧Vがアノード電極制御回路43から印加される。かかる表示装置において表示を行う場合、例えば、カソード電極11にカソード電極制御回路40から走査信号を入力し、ゲート電極13にゲート電極制御回路41からビデオ信号を入力する。あるいは、これとは逆に、カソード電極11にカソード電極制御回路40からビデオ信号を入力し、ゲート電極13にゲート電極制御回路41から走査信号を入力してもよい。カソード電極11とゲート電極13との間に電圧を印加した際に生ずる電界により、量子トンネル効果に基づき電子放出部118から電子が放出され、この電子がアノード電極34に引き付けられ、蛍光体層31に衝突する。その結果、蛍光体層31が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。つまり、この表示装置の動作は、基本的に、ゲート電極13に印加される電圧、及びカソード電極11を通じて電子放出部118に印加される電圧によって制御される。
【0053】
以下、第2の抵抗部材52の抵抗値Rをパラメータとして各種のシミュレーションを行った結果を説明する。シールド電極15とアノード電極34との間で異常放電が発生したときの等価回路を図4に示す。
【0054】
シミュレーションにおいては、アノード電極制御回路43の出力電圧Vを10キロボルト、シールド電極15に印加される電圧(V)を0ボルト、第1の抵抗部材51の抵抗値Rを100キロΩとした。また、アノード電極34とシールド電極15との間の静電容量CASを70pFと仮定した。更には、ゲート電極制御回路41からゲート電極13に印加される電圧V=0ボルト、カソード電極制御回路40からカソード電極11に印加される電圧V=0ボルトとした。
【0055】
そして、第2の抵抗部材52の抵抗値Rを、1000Ω、100Ω、10Ωとしたときの放電電圧シミュレーション結果を、図5、図6及び図7にそれぞれ示す。
【0056】
図5〜図7から、シールド電極15の電位VS−SUTは、放電開始から数百ピコ秒経過後、R=1000Ωのとき約100ボルトになり(図5参照)、R=100Ωのとき約10ボルトになり(図6参照)、R=10Ωのとき約1ボルトとなる(図7参照)ことが判る。各々のV,Rを考慮すると、シールド電極15の電位VS−SUTは、或る時間が経過した後には、全て、以下の式(1)となっていることが判る。
【0057】
S−SUT=V×{R/(R+R)} (1)
【0058】
アノード電極34とシールド電極15との間の放電によって、シールド電極15の電位は、元々の値である0ボルトからVS−SUTへと上昇する。シールド電極15の電位の上昇によって、ゲート電極13の電位も上昇し、その結果、ゲート電極13と電子放出部118との間の放電、あるいは、ゲート電極13とカソード電極11との間の放電が誘発される。しかしながら、アノード電極34とシールド電極15との間の放電に起因して上昇したゲート電極13の電位が所定の値(ΔV)以下であれば、ゲート電極13と電子放出部118との間の放電、あるいは、ゲート電極13とカソード電極11との間の放電発生を抑制することができる。即ち、最悪、放電に起因して上昇したゲート電極13の電位がVS−SUTであっても、ゲート電極13の電位が所定の値(ΔV)以下であれば、ゲート電極13と電子放出部118との間の放電、あるいは、ゲート電極13とカソード電極11との間の放電発生を抑制することができる。
【0059】
各種の試験の結果、上記の所定の値(ΔV)は約100ボルト、好ましくは約50ボルトであることが判明した。従って、
×{R/(R+R)}≦100
好ましくは、
×{R/(R+R)}≦50
を満足すれば、アノード電極34とシールド電極15との間の放電によって、シールド電極15の電位が上昇しても、ゲート電極13と電子放出部118との間の放電、あるいは、ゲート電極13とカソード電極11との間の放電が誘発されることを抑制することができる。
【0060】
尚、アノード電極34とシールド電極15との間の静電容量CASを70pFと仮定したが、上述したシミュレーション結果は、この静電容量CASの値に依存しない。
【0061】
第2の抵抗部材52の抵抗値Rの値が低い程、上記の式(1)の値は小さくなるが、第2の抵抗部材52の抵抗値Rが余りに低すぎると、アノード電極34とシールド電極15との間に異常放電が発生したとき、第2の抵抗部材52に流れる電流によって第2の抵抗部材52に損傷が発生したり、シールド電極15に過剰な電流が流れることでシールド電極15やシールド電極制御回路42に損傷が発生する虞がある。従って、第2の抵抗部材52の抵抗値Rの下限値は、第2の抵抗部材52に損傷が発生したり、シールド電極15やシールド電極制御回路42に損傷が発生しないような値とすることが必要とされ、具体的には1Ω程度である。
【0062】
アノード電極制御回路の出力電圧Vを10キロボルトとし、第1の抵抗部材51の抵抗値Rを100キロΩとし、第2の抵抗部材52の抵抗値Rを100Ωとした表示装置を作製し、動作試験を行ったが、アノード電極34とシールド電極15との間の異常放電に基づくシールド電極15の電位の異常上昇は認められなかった。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態2は、本発明の第2の態様に係る表示装置に関する。実施の形態2の表示装置の構成、構造は、実施の形態1の表示装置の構成、構造と同じとすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
実施の形態1においては、第2の抵抗部材52の抵抗値Rをパラメータとして各種のシミュレーションを行った。そして、このシミュレーションにおいては、シールド電極15とゲート電極13全体との間に存在する静電容量、ゲート電極13とカソード電極11全体との間に存在する静電容量を無視して行った。このような条件においても、実施の形態1におけるシミュレーション結果は十分に有効であるが、実施の形態2においては、シールド電極15とゲート電極13全体との間に存在する容量(静電容量)CSG、及び、ゲート電極13とカソード電極11全体との間に存在する容量(静電容量)CGCを考慮した。
【0065】
実施の形態2において、シールド電極15とアノード電極34との間で異常放電が発生したときの等価回路を図8に示す。尚、以下の説明において、シールド電極制御回路42からシールド電極15に印加される電圧V=0ボルト、カソード電極制御回路40からカソード電極11に印加される電圧V=0ボルトとした。
【0066】
アノード電極34とシールド電極15との間の放電によって、シールド電極15の電位は、元々の値である0ボルトからVS−SUTへと上昇する。シールド電極15の電位の上昇によって、ゲート電極13の電位も上昇する。このときのゲート電極13の電位V’は、以下の式(2)で求められる。
【0067】
V’=VS−SUT×{CSG/(CSG+CGC)} (2)
【0068】
更には、式(1)のVS−SUTを式(2)に代入すると、以下の式(3)が得られる。
【0069】
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)} (3)
【0070】
ここで、ゲート電極13の電位V’が、実施の形態1における議論と同様に、所定の値(ΔV’)以下であれば、ゲート電極13と電子放出部118との間の放電、あるいは、ゲート電極13とカソード電極11との間の放電発生を抑制することができる。
【0071】
ゲート電極制御回路からゲート電極に印加される電圧Vとカソード電極制御回路からカソード電極に印加される電圧Vとの最大電位差をΔVMAXとしたとき、ΔVMAXの値は10ボルト乃至50ボルト程度である。また、実施の形態1で述べたとおり、各種の試験の結果、所定の値(ΔV)は約100ボルト、好ましくは約50ボルトであることが判明した。従って、上述した所定の値(ΔV’)が、10ΔVMAX以下、好ましくは5ΔVMAX以下、一層好ましくは2ΔVMAX以下であれば、即ち、
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦10ΔVMAX
好ましくは、
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦5ΔVMAX
一層好ましくは、
×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦2ΔVMAX
であれば、アノード電極34とシールド電極15との間の放電によって、シールド電極15の電位が上昇しても、ゲート電極13と電子放出部118との間の放電、あるいは、ゲート電極13とカソード電極11との間の放電が誘発されることを確実に抑制することができる。
【0072】
アノード電極制御回路の出力電圧Vを10キロボルトとし、第1の抵抗部材51の抵抗値Rを100キロΩとし、第2の抵抗部材52の抵抗値Rを100Ωとした表示装置を作製し、ΔVMAXを10キロボルトとした動作試験を行ったが、アノード電極34とシールド電極15との間の異常放電に基づくシールド電極15の電位の異常上昇は認められなかった。尚、この表示装置におけるシールド電極15とゲート電極13全体との間に存在する容量(静電容量)CSGは30nF、ゲート電極13とカソード電極11全体との間に存在する容量(静電容量)CGCは300nFであった。
【0073】
(各種の電界放出素子に関して)
以下、各種の電界放出素子及びその製造方法を説明する。
【0074】
実施の形態においては、電界放出素子として、スピント型(円錐形の電子放出部が、開口部17の底部に位置するカソード電極11上に設けられた電界放出素子)を説明したが、その他、例えば、扁平型(略平面状の電子放出部が、開口部17の底部に位置するカソード電極11上に設けられた電界放出素子)とすることもできる。尚、これらの電界放出素子を、第1の構造を有する電界放出素子と呼ぶ。
【0075】
あるいは又、
(a)支持体上に設けられた、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極と、
(b)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(c)絶縁層上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極と、
(d)ゲート電極及び絶縁層に設けられた開口部と、
(e)ゲート電極13の上方に配設されたシールド電極15の部分、
から成り、
開口部の底部に露出したカソード電極の部分が電子放出部に相当し、かかる開口部の底部に露出したカソード電極の部分から電子を放出する構造を有する電界放出素子とすることもできる。尚、シールド電極15は、ゲート電極13及び絶縁層12上に形成された絶縁膜14上に形成されており、シールド電極15及び絶縁膜14には第2開口部16が設けられており、この第2開口部16は開口部17に連通している。
【0076】
このような構造を有する電界放出素子として、平坦なカソード電極の表面から電子を放出する平面型電界放出素子を挙げることができる。尚、この電界放出素子を第2の構造を有する電界放出素子と呼ぶ。
【0077】
スピント型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金、クロム、クロム合金、及び、不純物を含有するシリコン(ポリシリコンやアモルファスシリコン)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。スピント型電界放出素子の電子放出部は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法によって形成することができる。
【0078】
扁平型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、カソード電極を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極を構成する材料の仕事関数、ゲート電極とカソード電極との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。電界放出素子におけるカソード電極を構成する代表的な材料として、タングステン(Φ=4.55eV)、ニオブ(Φ=4.02〜4.87eV)、モリブデン(Φ=4.53〜4.95eV)、アルミニウム(Φ=4.28eV)、銅(Φ=4.6eV)、タンタル(Φ=4.3eV)、クロム(Φ=4.5eV)、シリコン(Φ=4.9eV)を例示することができる。電子放出部は、これらの材料よりも小さい仕事関数Φを有していることが好ましく、その値は概ね3eV以下であることが好ましい。かかる材料として、炭素(Φ<1eV)、セシウム(Φ=2.14eV)、LaB(Φ=2.66〜2.76eV)、BaO(Φ=1.6〜2.7eV)、SrO(Φ=1.25〜1.6eV)、Y(Φ=2.0eV)、CaO(Φ=1.6〜1.86eV)、BaS(Φ=2.05eV)、TiN(Φ=2.92eV)、ZrN(Φ=2.92eV)を例示することができる。仕事関数Φが2eV以下である材料から電子放出部を構成することが、一層好ましい。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0079】
あるいは又、扁平型電界放出素子において、電子放出部を構成する材料として、かかる材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料から適宜選択してもよい。即ち、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)等の金属;シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体;炭素やダイヤモンド等の無機単体;及び酸化アルミニウム(Al)、酸化バリウム(BaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化錫(SnO)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化カルシウム(CaF)等の化合物の中から、適宜選択することができる。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0080】
扁平型電界放出素子にあっては、特に好ましい電子放出部の構成材料として、炭素、より具体的にはダイヤモンドやグラファイト、カーボン・ナノチューブ構造体を挙げることができる。電子放出部をこれらから構成する場合、5×10V/m以下の電界強度にて、表示装置に必要な放出電子電流密度を得ることができる。また、ダイヤモンドは電気抵抗体であるため、各電子放出部から得られる放出電子電流を均一化することができ、よって、表示装置に組み込まれた場合の輝度ばらつきの抑制が可能となる。更に、これらの材料は、表示装置内の残留ガスのイオンによるスパッタ作用に対して極めて高い耐性を有するので、電界放出素子の長寿命化を図ることができる。
【0081】
カーボン・ナノチューブ構造体として、具体的には、カーボン・ナノチューブ及び/又はカーボン・ナノファイバーを挙げることができる。より具体的には、カーボン・ナノチューブから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノファイバーから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノチューブとカーボン・ナノファイバーの混合物から電子放出部を構成してもよい。カーボン・ナノチューブやカーボン・ナノファイバーは、巨視的には、粉末状であってもよいし、薄膜状であってもよいし、場合によっては、カーボン・ナノチューブ構造体は円錐状の形状を有していてもよい。カーボン・ナノチューブやカーボン・ナノファイバーは、周知のアーク放電法やレーザアブレーション法といったPVD法、プラズマCVD法やレーザCVD法、熱CVD法、気相合成法、気相成長法といった各種のCVD法によって製造、形成することができる。
【0082】
扁平型電界放出素子を、バインダー材料にカーボン・ナノチューブ構造体を分散させたものをカソード電極の所望の領域に例えば塗布した後、バインダー材料の焼成あるいは硬化を行う方法(より具体的には、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の有機系バインダー材料や銀ペースト、水ガラス等の無機系バインダー材料にカーボン・ナノチューブ構造体を分散したものを、カソード電極の所望の領域に例えば塗布した後、溶媒の除去、バインダー材料の焼成・硬化を行う方法)によって製造することもできる。尚、このような方法を、カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法と呼ぶ。塗布方法として、スクリーン印刷法を例示することができる。
【0083】
あるいは又、扁平型電界放出素子を、カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布した後、金属化合物を焼成する方法によって製造することもでき、これによって、金属化合物に由来した金属原子を含むマトリックスにてカーボン・ナノチューブ構造体がカソード電極表面に固定される。尚、このような方法を、カーボン・ナノチューブ構造体の第2の形成方法と呼ぶ。マトリックスは、導電性を有する金属酸化物から成ることが好ましく、より具体的には、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム−錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、又は、酸化アンチモン−錫から構成することが好ましい。焼成後、各カーボン・ナノチューブ構造体の一部分がマトリックスに埋め込まれている状態を得ることもできるし、各カーボン・ナノチューブ構造体の全体がマトリックスに埋め込まれている状態を得ることもできる。マトリックスの体積抵抗率は、1×10−9Ω・m乃至5×10−6Ω・mであることが望ましい。
【0084】
金属化合物溶液を構成する金属化合物として、例えば、有機金属化合物、有機酸金属化合物、又は、金属塩(例えば、塩化物、硝酸塩、酢酸塩)を挙げることができる。有機酸金属化合物溶液として、有機錫化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を酸(例えば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解し、これを有機溶媒(例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール)で希釈したものを挙げることができる。また、有機金属化合物溶液として、有機錫化合物、有機インジウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物を有機溶媒(例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール)に溶解したものを例示することができる。溶液を100重量部としたとき、カーボン・ナノチューブ構造体が0.001〜20重量部、金属化合物が0.1〜10重量部、含まれた組成とすることが好ましい。溶液には、分散剤や界面活性剤が含まれていてもよい。また、マトリックスの厚さを増加させるといった観点から、金属化合物溶液に、例えばカーボンブラック等の添加物を添加してもよい。また、場合によっては、有機溶媒の代わりに水を溶媒として用いることもできる。
【0085】
カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布する方法として、スプレー法、スピンコーティング法、ディッピング法、ダイクォーター法、スクリーン印刷法を例示することができるが、中でもスプレー法を採用することが塗布の容易性といった観点から好ましい。
【0086】
カーボン・ナノチューブ構造体が分散された金属化合物溶液をカソード電極上に塗布した後、金属化合物溶液を乾燥させて金属化合物層を形成し、次いで、カソード電極上の金属化合物層の不要部分を除去した後、金属化合物を焼成してもよいし、金属化合物を焼成した後、カソード電極上の不要部分を除去してもよいし、カソード電極の所望の領域上にのみ金属化合物溶液を塗布してもよい。
【0087】
金属化合物の焼成温度は、例えば、金属塩が酸化されて導電性を有する金属酸化物となるような温度、あるいは又、有機金属化合物や有機酸金属化合物が分解して、有機金属化合物や有機酸金属化合物に由来した金属原子を含むマトリックス(例えば、導電性を有する金属酸化物)が形成できる温度であればよく、例えば、300゜C以上とすることが好ましい。焼成温度の上限は、電界放出素子あるいはカソードパネルの構成要素に熱的な損傷等が発生しない温度とすればよい。
【0088】
カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法あるいは第2の形成方法にあっては、電子放出部の形成後、電子放出部の表面の一種の活性化処理(洗浄処理)を行うことが、電子放出部からの電子の放出効率の一層の向上といった観点から好ましい。このような処理として、水素ガス、アンモニアガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、メタンガス、エチレンガス、アセチレンガス、窒素ガス等のガス雰囲気中でのプラズマ処理を挙げることができる。
【0089】
カーボン・ナノチューブ構造体の第1の形成方法あるいは第2の形成方法にあっては、電子放出部は、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面に形成されていればよく、開口部の底部に位置するカソード電極の部分から開口部の底部以外のカソード電極の部分の表面に延在するように形成されていてもよい。また、電子放出部は、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面の全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。
【0090】
第1の構造あるいは第2の構造を有する電界放出素子においては、電界放出素子の構造に依存するが、ゲート電極及び絶縁層に設けられた1つの開口部内に1つの電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極及び絶縁層に設けられた1つの開口部内に複数の電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極に複数の開口部を設け、かかる開口部と連通する1つの開口部を絶縁層に設け、絶縁層に設けられた1つの開口部内に1又は複数の電子放出部が存在してもよい。
【0091】
開口部あるいは第2開口部の平面形状(支持体表面と平行な仮想平面で開口部を切断したときの形状)は、円形、楕円形、矩形、多角形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた多角形等、任意の形状とすることができる。開口部の形成は、例えば、等方性エッチング、異方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができ、あるいは又、ゲート電極の形成方法に依っては、開口部を直接形成することもできる。第2開口部の形成も、例えば、等方性エッチング、異方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができる。
【0092】
第1の構造を有する電界放出素子において、カソード電極と電子放出部との間に抵抗体層を設けてもよい。あるいは又、カソード電極の表面が電子放出部に相当している場合(即ち、第2の構造を有する電界放出素子においては)、カソード電極を導電材料層、抵抗体層、電子放出部に相当する電子放出層の3層構成としてもよい。抵抗体層を設けることによって、電界放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化を図ることができる。抵抗体層を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料、SiN、アモルファスシリコン等の半導体材料、酸化ルテニウム(RuO)、酸化タンタル、窒化タンタル等の高融点金属酸化物を例示することができる。抵抗体層の形成方法として、スパッタリング法や、CVD法やスクリーン印刷法を例示することができる。抵抗値は、概ね1×10〜1×10Ω、好ましくは数MΩとすればよい。
【0093】
[スピント型電界放出素子]
スピント型電界放出素子は、基本的には、先に説明したように、
(a)支持体10上に設けられ、第1の方向に延びるストライプ状のカソード電極11と、
(b)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(c)絶縁層12上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるストライプ状のゲート電極13と、
(d)ゲート電極13及び絶縁層12に設けられた開口部(ゲート電極に設けられた開口部17A、及び、絶縁層12に設けられた開口部17B)と、
(e)開口部17Bの底部に位置するカソード電極11上に設けられた電子放出部118と、
(f)ゲート電極13の上方に配設されたシールド電極15の部分、
から成り、
開口部17Bの底部に露出した円錐形の電子放出部118から電子が放出される構造を有する。
【0094】
以下、スピント型電界放出素子の製造方法を、カソードパネルを構成する支持体10等の模式的な一部端面図である図9の(A)、(B)及び図10の(A)、(B)を参照して説明する。
【0095】
尚、このスピント型電界放出素子は、基本的には、円錐形の電子放出部118を金属材料の垂直蒸着により形成する方法によって得ることができる。即ち、シールド電極15に設けられた第2開口部16に対して蒸着粒子は垂直に入射するが、第2開口部16の開口端付近に形成されるオーバーハング状の堆積物による遮蔽効果を利用して、開口部17Bの底部に到達する蒸着粒子の量を漸減させ、円錐形の堆積物である電子放出部118を自己整合的に形成する。ここでは、不要なオーバーハング状の堆積物の除去を容易とするために、シールド電極15上に剥離層19Aを予め形成しておく方法について説明する。尚、電界放出素子の製造方法を説明するための図面においては、1つの電界放出素子のみを図示した。
【0096】
[工程−A0]
先ず、例えばガラス基板から成る支持体10の上に、例えばポリシリコンから成るカソード電極用導電材料層をプラズマCVD法にて成膜した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングして、ストライプ状のカソード電極11を形成する。その後、全面にSiOから成る絶縁層12をCVD法にて形成する。
【0097】
[工程−A1]
次に、絶縁層12上に、ゲート電極用導電材料層(例えば、TiN層)をスパッタ法にて成膜し、次いで、ゲート電極用導電材料層をリソグラフィ技術及びドライエッチング技術にてパターニングすることによって、ストライプ状のゲート電極13を得ることができる。ストライプ状のカソード電極11は、図面の紙面左右方向に延び、ストライプ状のゲート電極13は、図面の紙面垂直方向に延びている。
【0098】
尚、ゲート電極13を、真空蒸着法等のPVD法、CVD法、電気メッキ法や無電解メッキ法といったメッキ法、スクリーン印刷法、レーザアブレーション法、ゾル−ゲル法、リフトオフ法等の公知の薄膜形成と、必要に応じてエッチング技術との組合せによって形成してもよい。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、例えばストライプ状のゲート電極を形成することが可能である。
【0099】
[工程−A2]
その後、全面に絶縁膜14を形成し、更に、絶縁膜14の上にシールド電極15を形成する。
【0100】
[工程−A3]
その後、再びレジスト層を形成し、エッチングによってシールド電極15及び絶縁膜14に第2開口部16を形成し、更に、ゲート電極13に開口部17Aを形成し、更に、絶縁層に開口部17Bを形成し、開口部17Bの底部にカソード電極11を露出させた後、レジスト層を除去する。こうして、図9の(A)に示す構造を得ることができる。
【0101】
[工程−A4]
次に、支持体10を回転させながらシールド電極15上にニッケル(Ni)を斜め蒸着することにより、剥離層19Aを形成する(図9の(B)参照)。このとき、支持体10の法線に対する蒸着粒子の入射角を十分に大きく選択することにより(例えば、入射角65度〜85度)、開口部17Bの底部にニッケルを殆ど堆積させることなく、シールド電極15の上に剥離層19Aを形成することができる。剥離層19Aは、第2開口部16の開口端から庇状に張り出しており、これによって第2開口部16が実質的に縮径される。
【0102】
[工程−A5]
次に、全面に例えば導電材料としてモリブデン(Mo)を垂直蒸着する(入射角3度〜10度)。このとき、図10の(A)に示すように、剥離層19A上でオーバーハング形状を有する導電材料層19Bが成長するに伴い、第2開口部16の実質的な直径が次第に縮小されるので、開口部17Bの底部において堆積に寄与する蒸着粒子は、次第に第2開口部16の中央付近を通過するものに限られるようになる。その結果、開口部17Bの底部には円錐形の堆積物が形成され、この円錐形の堆積物が電子放出部118となる。
【0103】
[工程−A6]
その後、リフトオフ法にて剥離層19Aをシールド電極15の表面から剥離し、シールド電極15の上方の導電材料層19Bを除去する。その後、絶縁層12に設けられた開口部17Bの側壁面を等方的なエッチングによって後退させることが、ゲート電極13の開口端部を露出させるといった観点から、好ましい。尚、等方的なエッチングは、ケミカルドライエッチングのようにラジカルを主エッチング種として利用するドライエッチング、あるいはエッチング液を利用するウェットエッチングにより行うことができる。エッチング液としては、例えば49%フッ酸水溶液と純水の1:100(容積比)混合液を用いることができる。こうして、図10の(B)に示す電界放出素子を完成することができる。
【0104】
[扁平型電界放出素子(その1)]
扁平型電界放出素子は、基本的には、
(a)支持体10上に設けられ、第1の方向に延びるカソード電極11と、
(b)支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、
(c)絶縁層12上に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるゲート電極13と、
(d)ゲート電極13及び絶縁層12に設けられた開口部17(ゲート電極13に設けられた開口部17A、及び、絶縁層12に設けられた開口部17B)と、
(e)開口部17Bの底部に位置するカソード電極11上に設けられた扁平状の電子放出部118Aと、
(f)ゲート電極13の上方に配設されたシールド電極15の部分、
から成り、
開口部17Bの底部に露出した電子放出部118Aから電子が放出される構造を有する。
【0105】
電子放出部118Aは、マトリックス20、及び、先端部が突出した状態でマトリックス20中に埋め込まれたカーボン・ナノチューブ構造体(具体的には、カーボン・ナノチューブ21)から成り、マトリックス20は、導電性を有する金属酸化物(具体的には、酸化インジウム−錫、ITO)から成る。
【0106】
以下、電界放出素子の製造方法を、図11の(A)、(B)及び図12の(A)、(B)を参照して説明する。
【0107】
[工程−B0]
先ず、例えばガラス基板から成る支持体10上に、例えばスパッタリング法及びエッチング技術により形成された厚さ約0.2μmのクロム(Cr)層から成るストライプ状のカソード電極11を形成する。
【0108】
[工程−B1]
次に、カーボン・ナノチューブ構造体が分散された有機酸金属化合物から成る金属化合物溶液をカソード電極11上に、例えばスプレー法にて塗布する。具体的には、以下の表1に例示する金属化合物溶液を用いる。尚、金属化合物溶液中にあっては、有機錫化合物及び有機インジウム化合物は酸(例えば、塩酸、硝酸、あるいは硫酸)に溶解された状態にある。カーボン・ナノチューブはアーク放電法にて製造され、平均直径30nm、平均長さ1μmである。塗布に際しては、支持体10を70〜150゜Cに加熱しておく。塗布雰囲気を大気雰囲気とする。塗布後、5〜30分間、支持体10を加熱し、酢酸ブチルを十分に蒸発させる。このように、塗布時、支持体10を加熱することによって、カソード電極11の表面に対してカーボン・ナノチューブが水平に近づく方向にセルフレベリングする前に塗布溶液の乾燥が始まる結果、カーボン・ナノチューブが水平にはならない状態でカソード電極11の表面にカーボン・ナノチューブを配置することができる。即ち、カーボン・ナノチューブの先端部がアノード電極の方向を向くような状態、言い換えれば、カーボン・ナノチューブを、支持体10の法線方向に近づく方向に配向させることができる。尚、予め、表1に示す組成の金属化合物溶液を調製しておいてもよいし、カーボン・ナノチューブを添加していない金属化合物溶液を調製しておき、塗布前に、カーボン・ナノチューブと金属化合物溶液とを混合してもよい。また、カーボン・ナノチューブの分散性向上のため、金属化合物溶液の調製時、超音波を照射してもよい。
【0109】
[表1]
有機錫化合物及び有機インジウム化合物:0.1〜10重量部
分散剤(ドデシル硫酸ナトリウム) :0.1〜5 重量部
カーボン・ナノチューブ :0.1〜20重量部
酢酸ブチル :残余
【0110】
尚、有機酸金属化合物溶液として、有機錫化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化錫が得られ、有機インジウム化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化インジウムが得られ、有機亜鉛化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化亜鉛が得られ、有機アンチモン化合物を酸に溶解したものを用いれば、マトリックスとして酸化アンチモンが得られ、有機アンチモン化合物及び有機錫化合物を酸に溶解したもの用いれば、マトリックスとして酸化アンチモン−錫が得られる。また、有機金属化合物溶液として、有機錫化合物を用いれば、マトリックスとして酸化錫が得られ、有機インジウム化合物を用いれば、マトリックスとして酸化インジウムが得られ、有機亜鉛化合物を用いれば、マトリックスとして酸化亜鉛が得られ、有機アンチモン化合物を用いれば、マトリックスとして酸化アンチモンが得られ、有機アンチモン化合物及び有機錫化合物を用いれば、マトリックスとして酸化アンチモン−錫が得られる。あるいは又、金属の塩化物の溶液(例えば、塩化錫、塩化インジウム)を用いてもよい。
【0111】
場合によっては、金属化合物溶液を乾燥した後の金属化合物層の表面に著しい凹凸が形成されている場合がある。このような場合には、金属化合物層の上に、支持体を加熱することなく、再び、金属化合物溶液を塗布することが望ましい。
【0112】
[工程−B2]
その後、有機酸金属化合物から成る金属化合物を焼成することによって、有機酸金属化合物に由来した金属原子(具体的には、In及びSn)を含むマトリックス(具体的には、金属酸化物であり、より一層具体的にはITO)20にてカーボン・ナノチューブ21がカソード電極11の表面に固定された電子放出部118Aを得る。焼成を、大気雰囲気中で、350゜C、20分の条件にて行う。こうして、得られたマトリックス20の体積抵抗率は、5×10−7Ω・mであった。有機酸金属化合物を出発物質として用いることにより、焼成温度350゜Cといった低温においても、ITOから成るマトリックス20を形成することができる。尚、有機酸金属化合物溶液の代わりに、有機金属化合物溶液を用いてもよいし、金属の塩化物の溶液(例えば、塩化錫、塩化インジウム)を用いた場合、焼成によって塩化錫、塩化インジウムが酸化されつつ、ITOから成るマトリックス20が形成される。
【0113】
[工程−B3]
次いで、全面にレジスト層を形成し、カソード電極11の所望の領域の上方に、例えば直径10μmの円形のレジスト層を残す。そして、10〜60゜Cの塩酸を用いて、1〜30分間、マトリックス20をエッチングして、電子放出部の不要部分を除去する。更に、所望の領域以外にカーボン・ナノチューブが未だ存在する場合には、以下の表2に例示する条件の酸素プラズマエッチング処理によってカーボン・ナノチューブをエッチングする。尚、バイアスパワーは0Wでもよいが、即ち、直流としてもよいが、バイアスパワーを加えることが望ましい。また、支持体を、例えば80゜C程度に加熱してもよい。
【0114】
[表2]
使用装置 :RIE装置
導入ガス :酸素を含むガス
プラズマ励起パワー:500W
バイアスパワー :0〜150W
処理時間 :10秒以上
【0115】
あるいは又、表3に例示する条件のウェットエッチング処理によってカーボン・ナノチューブをエッチングしてもよい。
【0116】
[表3]
使用溶液:KMnO
温度 :20〜120゜C
処理時間:10秒〜20分
【0117】
その後、レジスト層を除去することによって、図11の(A)に示す構造を得ることができる。尚、直径10μmの円形の電子放出部118Aを残すことに限定されない。例えば、電子放出部118Aをカソード電極11上に残してもよい。
【0118】
尚、[工程−B1]、[工程−B3]、[工程−B2]の順に実行してもよい。
【0119】
[工程−B4]
次に、電子放出部118A、支持体10及びカソード電極11上に絶縁層12を形成する。具体的には、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)を原料ガスとして使用するCVD法により、全面に、厚さ約1μmの絶縁層12を形成する。
【0120】
[工程−B5]
その後、絶縁層12上にストライプ状のゲート電極13を形成し、更に、絶縁層12及びゲート電極13上に絶縁膜14を形成し、絶縁膜14上にシールド電極15を形成する。次いで、シールド電極15上にマスク層22を設けた後、シールド電極15及び絶縁膜14に第2開口部16を形成し、更に、ゲート電極13に開口部17Aを形成し、更に、ゲート電極13に形成された開口部17Aに連通する開口部17Bを絶縁層12に形成する(図11の(B)参照)。尚、マトリックス20を金属酸化物、例えばITOから構成する場合、絶縁層12をエッチングするとき、マトリックス20がエッチングされることはない。即ち、絶縁層12とマトリックス20とのエッチング選択比はほぼ無限大である。従って、絶縁層12のエッチングによってカーボン・ナノチューブ21に損傷が発生することはない。
【0121】
[工程−B6]
次いで、以下の表4に例示する条件にて、マトリックス20の一部を除去し、マトリックス20から先端部が突出した状態のカーボン・ナノチューブ21を得ることが好ましい。こうして、図12の(A)に示す構造の電子放出部118Aを得ることができる。
【0122】
[表4]
エッチング溶液:塩酸
エッチング時間:10秒〜30秒
エッチング温度:10〜60゜C
【0123】
マトリックス20のエッチングによって一部あるいは全てのカーボン・ナノチューブ21の表面状態が変化し(例えば、その表面に酸素原子や酸素分子、フッ素原子が吸着し)、電界放出に関して不活性となっている場合がある。それ故、その後、電子放出部118Aに対して水素ガス雰囲気中でのプラズマ処理を行うことが好ましく、これによって、電子放出部118Aが活性化し、電子放出部118Aからの電子の放出効率の一層の向上させることができる。プラズマ処理の条件を、以下の表5に例示する。
【0124】
[表5]
使用ガス :H=100sccm
電源パワー :1000W
支持体印加電力:50V
反応圧力 :0.1Pa
支持体温度 :300゜C
【0125】
その後、カーボン・ナノチューブ21からガスを放出させるために、加熱処理や各種のプラズマ処理を施してもよいし、カーボン・ナノチューブ21の表面に意図的に吸着物を吸着させるために吸着させたい物質を含むガスにカーボン・ナノチューブ21を晒してもよい。また、カーボン・ナノチューブ21を精製するために、酸素プラズマ処理やフッ素プラズマ処理を行ってもよい。
【0126】
[工程−B7]
その後、絶縁層12に設けられた開口部17Bの側壁面を等方的なエッチングによって後退させることが、ゲート電極13の開口端部を露出させるといった観点から、好ましい。次いで、マスク層22を除去する。こうして、図12の(B)に示す電界放出素子を完成することができる。
【0127】
尚、[工程−B5]の後、[工程−B7]、[工程−B6]の順に実行してもよい。
【0128】
[扁平型電界放出素子(その2)]
扁平型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図13の(A)に示す。この扁平型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体10上に形成されたカソード電極11、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成されたゲート電極13、ゲート電極13及び絶縁層12上に形成された絶縁膜14、絶縁膜14上に形成されたシールド電極15の部分、シールド電極15及び絶縁膜14に形成された第2開口部16、ゲート電極13及び絶縁層12を貫通し、第2開口部16と連通する開口部17(ゲート電極13に設けられた開口部7A及び絶縁層12に設けられた開口部17B)、並びに、開口部17の底部に位置するカソード電極11の部分の上に設けられた扁平の電子放出部(電子放出層118B)から成る。ここで、電子放出層118Bは、図面の紙面垂直方向に延びたストライプ状のカソード電極11上に形成されている。また、ゲート電極13は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極11及びゲート電極13はクロムから成る。電子放出層118Bは、具体的には、グラファイト粉末から成る薄層から構成されている。図13の(A)に示した扁平型電界放出素子においては、カソード電極11の表面の全域に亙って、電子放出層118Bが形成されているが、このような構造に限定するものではなく、要は、少なくとも開口部17の底部に電子放出層118Bが設けられていればよい。
【0129】
[平面型電界放出素子]
平面型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図13の(B)に示す。この平面型電界放出素子は、例えばガラスから成る支持体10上に形成されたストライプ状のカソード電極11、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12、絶縁層12上に形成されたストライプ状のゲート電極13、ゲート電極13及び絶縁層12上に形成された絶縁膜14、絶縁膜14上に形成されたシールド電極15の部分、シールド電極15及び絶縁膜14に形成された第2開口部16、ゲート電極13及び絶縁層12を貫通し、第2開口部16と連通する開口部17(ゲート電極13に設けられた開口部7A及び絶縁層12に設けられた開口部17B)から成る。開口部17の底部にはカソード電極11が露出している。カソード電極11は、図面の紙面垂直方向に延び、ゲート電極13は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極11及びゲート電極13はクロム(Cr)から成り、絶縁層12はSiOから成る。ここで、開口部17の底部に露出したカソード電極11の部分が電子放出部118Cに相当する。
【0130】
以上、本発明を、発明の実施の形態に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。発明の実施の形態にて説明したアノードパネルやカソードパネル、表示装置や電界放出素子の構成、構造は例示であり、適宜変更することができるし、アノードパネルやカソードパネル、表示装置や電界放出素子の製造方法も例示であり、適宜変更することができる。更には、アノードパネルやカソードパネルの製造において使用した各種材料も例示であり、適宜変更することができる。表示装置においては、専らカラー表示を例にとり説明したが、単色表示とすることもできる。
【0131】
実施の形態における電界放出素子においては、専ら1つの開口部に1つの電子放出部が対応する形態を説明したが、電界放出素子の構造に依っては、1つの開口部に複数の電子放出部が対応した形態、あるいは、複数の開口部に1つの電子放出部が対応する形態とすることもできる。あるいは又、ゲート電極に複数の開口部を設け、絶縁層にかかる複数の開口部に連通した1つの開口部を設け、1又は複数の電子放出部を設ける形態とすることもできる。
【0132】
実施の形態における電界放出素子においては、専ら1つの第2開口部16に1つの開口部17が対応する形態を説明したが、電界放出素子の構造に依っては、1つの第2開口部16に複数の開口部16が対応した形態とすることができる。図14及び図15に、このような形態を図示する。尚、図14は、このような表示装置の模式的な一部端面図である。また、図15は、シールド電極15、シールド電極15に設けられた第2開口部16、ゲート電極13に設けられた開口部17Aの配置状態を示す図であり、表示装置を構成する電子放出領域を上から眺めた模式図である。図15において、シールド電極15の下方に位置するゲート電極13を点線で表し、カソード電極11を一点鎖線で示す。尚、電界放出素子として、スピント型電界放出素子を示したが、その他の構成を有する電界放出素子を適用することもできる。
【0133】
シールド電極は、実施の形態にて説明した方法にて形成するだけでなく、例えば、厚さ数十μmの42%Ni−Feアロイから成る金属板の両面に、例えばSiOから成る絶縁膜を形成した後、各画素に対応した領域にパンチングやエッチングすることによって第2開口部を形成することでシールド電極を作製することもできる。そして、カソードパネル、金属板、アノードパネルを積み重ね、両パネルの外周部に枠体を配置し、加熱処理を施すことによって、金属板の一方の面に形成された絶縁膜と絶縁層12とを接着させ、金属板の他方の面に形成された絶縁膜とアノードパネルとを接着し、これらの部材を一体化させ、その後、真空封入することで、表示部を完成させることもできる。
【0134】
ゲート電極を、有効領域を1枚のシート状の導電材料(開口部を有する)で被覆した形式のゲート電極とすることもできる。この場合には、かかるゲート電極に正の電圧を印加する。そして、各画素を構成するカソード電極とカソード電極制御回路との間に、例えば、TFTから成るスイッチング素子を設け、かかるスイッチング素子の作動によって、各画素を構成する電子放出部への印加状態を制御し、画素の発光状態を制御する。
【0135】
あるいは又、カソード電極を、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式のカソード電極とすることもできる。この場合には、かかるカソード電極に電圧を印加する。そして、各画素を構成する電子放出部とゲート電極制御回路との間に、例えば、TFTから成るスイッチング素子を設け、かかるスイッチング素子の作動によって、各画素を構成するゲート電極への印加状態を制御し、画素の発光状態を制御する。
【0136】
【発明の効果】
本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置においては、第1の抵抗部材の抵抗値R、第2の抵抗部材の抵抗値R、及び、アノード電極制御回路の出力電圧Vの関係を規定することによって、また、本発明の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置においては、第1の抵抗部材の抵抗値R、第2の抵抗部材の抵抗値R、アノード電極制御回路の出力電圧V、シールド電極とゲート電極全体との間の容量CSG、及び、ゲート電極とカソード電極全体との間の容量CGCの関係を規定することによって、アノード電極とシールド電極との間に異常放電が発生したときに、シールド電極の電位が異常に上昇することを防止することができる。その結果、冷陰極電界電子放出表示装置の表示部を構成する要素の損傷発生や、カソード電極制御回路、ゲート電極制御回路、シールド電極制御回路等の各種の電極制御回路の損傷発生を防止することができ、冷陰極電界電子放出表示装置の長寿命化を達成することができる。また、表示品質が損なわれることがなくなり、動作の安定性や信頼性に優れた冷陰極電界電子放出表示装置を得ることができる。
【0137】
また、通常、完成直後の冷陰極電界電子放出表示装置にエージング処理を行っている。このエージング処理は、電子放出領域から徐々に電子を放出させ、電子放出領域の表面を電子が放出し易い状態とする処理である。具体的には、カソード電極、ゲート電極、アノード電極に印加する電圧を徐々に、実際の冷陰極電界電子放出表示装置の動作電圧に近づけていく。このようなエージング処理によって、カソードパネルやアノードパネルを構成する各要素から徐々に残留ガスを放出させることができ、これらの要素から一度に多量の残留ガスが放出されることを防止し得る。このようなエージング処理時、アノード電極とシールド電極との間に異常放電が発生し易い。本発明の冷陰極電界電子放出表示装置にあっては、このエージング処理時におけるアノード電極とシールド電極との間での異常放電によって、冷陰極電界電子放出表示装置の表示部を構成する要素の損傷発生や各種の電極制御回路の損傷発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、発明の実施の形態1の冷陰極電界電子放出表示装置の模式的な一部端面図である。
【図2】図2は、発明の実施の形態1の冷陰極電界電子放出表示装置の表示部を構成するカソードパネルとアノードパネルを分解したときの模式的な部分的斜視図である。
【図3】図3は、発明の実施の形態1の冷陰極電界電子放出表示装置を構成する電子放出領域を上から眺めた模式図である。
【図4】図4は、発明の実施の形態1の冷陰極電界電子放出表示装置において、シールド電極とアノード電極との間で異常放電が発生したときの等価回路である。
【図5】図5は、発明の実施の形態1において、第2の抵抗部材の抵抗値Rを、1000Ωとしたときの、放電電圧シミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】図6は、発明の実施の形態1において、第2の抵抗部材の抵抗値Rを、100Ωとしたときの、放電電圧シミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】図7は、発明の実施の形態1において、第2の抵抗部材の抵抗値Rを、10Ωとしたときの、放電電圧シミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】図8は、発明の実施の形態2の冷陰極電界電子放出表示装置において、シールド電極とアノード電極との間で異常放電が発生したときの等価回路である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、スピント型冷陰極電界電子放出素子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図10】図10の(A)及び(B)は、図9の(B)に引き続き、スピント型冷陰極電界電子放出素子の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その1)の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、図11の(B)に引き続き、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その1)の製造方法を説明するための支持体等の模式的な一部断面図である。
【図13】図13の(A)及び(B)は、それぞれ、扁平型冷陰極電界電子放出素子(その2)の模式的な一部断面図、及び、平面型冷陰極電界電子放出素子の模式的な一部断面図である。
【図14】図14は、発明の実施の形態1の冷陰極電界電子放出表示装置の変形例の模式的な一部端面図である。
【図15】図15は、図14に示した冷陰極電界電子放出表示装置を構成する電子放出領域を上から眺めた模式図である。
【図16】図16は、特開平9−90898の図2に開示された電界放出素子を模式的な一部端面図である。
【符号の説明】
CP・・・カソードパネル、AP・・・アノードパネル、DP・・・表示部、10・・・支持体、11・・・カソード電極、12・・・絶縁層、13・・・ゲート電極、14・・・絶縁膜、15・・・シールド電極、16・・・第2開口部、17,17A,17B・・・開口部、18・・・電子放出領域、118・・・電子放出部、19A・・・剥離層、19B・・・導電材料層、20・・・マトリックス、21・・・カーボン・ナノチューブ、22・・・マスク層、30・・・基板、31・・・蛍光体層、32・・・ブラックマトリックス、33・・・隔壁、34・・・アノード電極、35・・・枠体、40・・・カソード電極制御回路、41・・・ゲート電極制御回路、42・・・シールド電極制御回路、43・・・アノード電極制御回路、51・・・第1の抵抗部材、52・・・第2の抵抗部材

Claims (5)

  1. カソードパネルとアノードパネルとがそれらの周縁部で接合されて成る表示部、アノード電極制御回路、カソード電極制御回路、ゲート電極制御回路、及び、シールド電極制御回路から構成された冷陰極電界電子放出表示装置であって、
    該カソードパネルは、
    (A)支持体、
    (B)支持体上に形成され、それぞれがカソード電極制御回路に接続され、第1の方向に延びる複数のカソード電極、
    (C)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層、
    (D)絶縁層上に形成され、それぞれがゲート電極制御回路に接続され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数のゲート電極、
    (E)カソード電極とゲート電極の重複する重複領域に位置するゲート電極及び絶縁層の部分に形成された少なくとも1つの開口部、
    (F)各重複領域に設けられた開口部の底部に位置する電子放出領域、並びに、
    (G)ゲート電極の上方に配設され、シールド電極制御回路に接続されたシールド電極、
    から成り、
    該アノードパネルには、
    (H)蛍光体層、及び、
    (I)アノード電極制御回路に接続されたアノード電極、
    が設けられており、
    (J)アノード電極とアノード電極制御回路との間には、抵抗値Rを有する第1の抵抗部材が設けられ、
    (K)シールド電極とシールド電極制御回路との間には、抵抗値Rを有する第2の抵抗部材が設けられており、
    アノード電極制御回路の出力電圧をVとしたとき、
    ×{R/(R+R)}≦100
    を満足することを特徴とする冷陰極電界電子放出表示装置。
  2. ×{R/(R+R)}≦50
    を満足することを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電界電子放出表示装置。
  3. カソードパネルとアノードパネルとがそれらの周縁部で接合されて成る表示部、アノード電極制御回路、カソード電極制御回路、ゲート電極制御回路、及び、シールド電極制御回路から構成された冷陰極電界電子放出表示装置であって、
    該カソードパネルは、
    (A)支持体、
    (B)支持体上に形成され、それぞれがカソード電極制御回路に接続され、第1の方向に延びる複数のカソード電極、
    (C)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層、
    (D)絶縁層上に形成され、それぞれがゲート電極制御回路に接続され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数のゲート電極、
    (E)カソード電極とゲート電極の重複する重複領域に位置するゲート電極及び絶縁層の部分に形成された少なくとも1つの開口部、
    (F)各重複領域に設けられた開口部の底部に位置する電子放出領域、並びに、
    (G)ゲート電極の上方に配設され、シールド電極制御回路に接続されたシールド電極、
    から成り、
    該アノードパネルには、
    (H)蛍光体層、及び、
    (I)アノード電極制御回路に接続されたアノード電極、
    が設けられており、
    (J)アノード電極とアノード電極制御回路との間には、抵抗値Rを有する第1の抵抗部材が設けられ、
    (K)シールド電極とシールド電極制御回路との間には、抵抗値Rを有する第2の抵抗部材が設けられており、
    アノード電極制御回路の出力電圧をVとし、
    ゲート電極制御回路からゲート電極に印加される電圧Vとカソード電極制御回路からカソード電極に印加される電圧Vとの最大電位差をΔVMAXとし、
    シールド電極とゲート電極全体との間の容量をCSGとし、
    ゲート電極とカソード電極全体との間の容量をCGCとしたとき、
    ×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦10ΔVMAX
    を満足することを特徴とする冷陰極電界電子放出表示装置。
  4. ×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦5ΔVMAX
    を満足することを特徴とする請求項3に記載の冷陰極電界電子放出表示装置。
  5. ×{R/(R+R)}×{CSG/(CSG+CGC)}≦2ΔVMAX
    を満足することを特徴とする請求項3に記載の冷陰極電界電子放出表示装置。
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