JP2005002279A - ポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ポリオレフィン系樹脂と、(B)下記の(1)〜(5)の要件を満足するプロピレン系重合体を、質量比20:80〜99:1の割合で含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体である。
(1)プロピレン50〜100モル%とプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン0〜50モル%からなる
(2)135℃テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.5dl/g
(3)立体規則性分率[mm]が50〜90モル%
(4)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(TmD)が0〜120℃
(5)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なポリオレフィン系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、押出成形や熱成形、射出成形などに適し、各種工業材料、自動車のバンパー、各種トリム及びインストロメントパネルなどの自動車の内外装品、包装用フィルムやシート、建材用シート、粘着シート・フィルム、カーペット裏打ち材、繊維、容器、電気及び電子機器部品、ハウジングなどの家電部品及び中空容器等広い分野で使用されるポリオレフィン系樹脂組成物に関する。特に軟質塩化ビニル樹脂を代替するに好適なポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源、省エネルギーの観点から、軽量化が重要な課題となっており、各種部品の金属から樹脂への代替が積極的に進められている。なかでも、ポリオレフィン系樹脂は、安価で、成形性に優れ、軽量で、機械的強度や耐久性に優れることから種々の産業分野、中でも自動車分野と家電分野を中心に、ポリオレフィン系樹脂それぞれの物性や経済的価値に応じて用途を拡大している。
また、これらのポリオレフィン系樹脂に対する市場の要求性能が多様化し、単独のポリオレフィン系樹脂では対応しきれないため、複数のポリオレフィン系樹脂を組み合わせる、所謂、ポリマーアロイの手法が広く用いられている。さらには、ポリオレフィン系樹脂に各種の強化剤を添加して強度、剛性を高める試みも行われている。例えば、プロピレンのホモポリマーあるいは共重合体等のポリプロピレン系樹脂は軽量であり、かつ機械的強度、耐化学薬品性及び耐候性等に優れているので、各種の分野に広く利用されている。
【0003】
一方、軟質な材料として広範に用いられている塩化ビニル系樹脂は、その燃焼過程において有害な物質を発生させることが知られており、代替品の開発が望まれている.
しかし、このようなポリプロピレンにおいては成形性と物性のバランスのとれた樹脂組成物を得るのが難しい。例えば、溶融時の流動性を上げ、且つ、軟質化しようとする際には、非晶性ポリα−オレフィン樹脂などの軟質な低分子量体を配合するという手法が用いられる。しかし、その効果を上げるため添加量を増加させると、得られる樹脂組成物成形体表面に多量の低分子量体がブリードし、べたつく(ブロッキング)という問題がある。これは、添加した低分子量体の分子量分布や組成分布が広いため、低分子量低融点成分を多く含むためである。非晶性ポリα−オレフィン樹脂に特殊な処理を施すことにより、ブロッキングを低減させる試みがなされている(特許文献1参照)。しかしながら、この処理は温度の制御が肝要で、生産性の低下をもたらすなどの欠点がある。また、低分子量低融点成分をそのまま含むものであるため、ブロッキングの低減は不十分なものであった。さらに、フィルムやシートに成形した場合、この成分が透明性を低下させるという問題もある。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−316222号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下でなされたもので、軟質で透明性に優れ、べたつきもなく、かつ、溶融時流動性にも優れ成形性が向上したポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、組成物の一成分として、特定の物性を有するプロピレン系重合体を使用することにより、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.(A)ポリオレフィン系樹脂と、(B)下記の(1)〜(5)の要件を満足するプロピレン系重合体を、質量比20:80〜99:1の割合で含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
(1)プロピレン50〜100モル%とプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン0〜50モル%からなる
(2)135℃テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.5dl/g
(3)立体規則性指数[mm]が50〜90モル%
(4)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(TmD)が0〜120℃
(5)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
2.(A)成分のポリオレフィン系樹脂が下記の(1’)の要件を満足するプロピレン系重合体である上記1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(1’)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(TmD)が120℃以上3.(B)成分のプロピレン系重合体がプロピレン単独重合体である上記1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
4.(B)成分のプロピレン系重合体がメタロセン触媒を使用して製造したものである上記1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
5.(B)成分のプロピレン系重合体が、(a)下記一般式(I)
【0007】
【化2】
【0008】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E1及びE2はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造を形成しており、またそれらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E1,E2又はXと架橋していてもよく、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(b)有機ホウ素化合物を含有する重合用触媒の存在下、プロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを重合させることにより得られるものである請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
6.上記1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
7.成形体がシート又はフィルムである上記6記載の成形体。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本願の第一発明は、前記(A)成分のポリオレフィン系樹脂と特定の要件を満足する前記(B)成分のプロピレン系重合体を含有するポリオレフィン系樹脂組成物であり、順に説明する。
(A)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂として、オレフィンの単独重合体または二種以上のオレフィンの共重合体が挙げられる。具体例として、ホモポリプロピレン,プロピレン・α−オレフィン・ランダム共重合体,プロピレン・α−オレフィン・ブロック共重合体などの結晶性ポリプロピレン(ポリプロピレン系樹脂)、高中密度ポリエチレン,高圧法低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,極低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリブテン−1 、ポリ−4 −メチルペンテン−1などが挙げられる。ここでα−オレフィンとして具体的には、エチレン,プロピレン,1−ブテン,1−ペンテン,1−ヘキセン,4−メチル−1−ペンテン,3−メチル−1−ペンテン,1−オクテン,3−メチル−1−ブテン,1−デセン,1−ドデセン,1−テトラデセン,1−ヘキサデセン,1−オクタデセン,1−エイコセンなどの炭素数が2 〜20のα−オレフィン;シクロペンテン,シクロヘプテン,ノルボルネン,5−エチル−2−ノルボルネン,テトラシクロドデセン,2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどの炭素数が3〜20の環状オレフィンが挙げられる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンなどを挙げることもできる。
【0010】
中でも、炭素数が2〜6のオレフィンを主な構成単位とする重合体であることが好ましく、さらにプロピレン単位を主な構成単位とする重合体(プロピレン系重合体)であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン系重合体である場合には、プロピレンから誘導される構成単位を通常80〜100モル%、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは92〜100モル%の割合で含有し、エチレンから誘導される構成単位を通常0〜10モル%、好ましくは0〜8モル%、より好ましくは0〜6モル%の割合で含有し、炭素数4〜12のオレフィンより選ばれるオレフィンから誘導される構成単位が通常0〜15モル%、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%の割合で含有する重合体である。なお、プロピレンから誘導される構成単位以外のオレフィン単位を含む場合、ランダムでもブロックでもよい。また、ポリオレフィン系樹脂がプロピレン系重合体である場合には、融点(TmD)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。さらに、ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン系重合体である場合には、プロピレン連鎖部の立体規則性指数[mm]が80モル%より大きく、GPC法で測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000であることが望ましい。[mm]については、より好ましくは85モル%以上である。また、Mwについては、より好ましくは50,000〜800,000であり、さらに好ましくは100,000〜600,000である。なお、TmD、[mm]、Mwの測定法については後で述べる。
【0011】
以上のポリオレフィン樹脂の230℃(荷重;21.18N)におけるメルトインデックス(MI)は通常0.1〜200(g/10分)であり、好ましくは1〜40(g/10分)、より好ましくは2〜20(g/10分)である。また、このようなポリオレフィン系樹脂の135℃テトラリン中で測定した極限粘度[η](ポリプロピレン換算)は通常0 .5 〜10dl/g 、好ましくは1 .5 〜3 .5dl/g の範囲である。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂は、上記のようなオレフィンから誘導される構成単位以外に、3−メチル−1−ブテン,3−メチル−1−ペンテン,3−エチル−1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,4−メチル−1−ヘキセン,4,4−ジメチル−1−ヘキセン,4,4−ジメチル−1−ペンテン,4−エチル−1−ヘキセン,3−エチル−1−ヘキセン,アリルナフタレン,アリルノルボルナン,スチレン,ジメチルスチレン類,ビニルナフタレン類,アリルトルエン類,アリルベンゼン,ビニルシクロヘキサン,ビニルシクロペンタン,ビニルシクロヘプタンなどの分岐構造を有するオレフィンから誘導される構成単位;1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエン,1,4−ペンタジエン,1,3−ヘキサジエン,1,4−ヘキサジエン,1,5−ヘキサジエン,4−メチル−1,4−ヘキサジエン,5−メチル−1,4−ヘキサジエン,6−メチル−1,6−オクタジエン,7−メチル−1,6−オクタジエン,6−エチル−1,6−オクタジエン,6−プロピル−1,6−オクタジエン,6−ブチル−1,6−オクタジエン,6−メチル−1,6−ノナジエン,7−メチル−1,6−ノナジエン,6−エチル−1,6−ノナジエン,7−エチル−1,6−ノナジエン,6−メチル−1,6−デカジエン,7−メチル−1,6−デカジエン,6−メチル−1,6−ウンデカジエン,1,7−オクタジエン,1,9−デカジエン,イソプレン,ブタジエン,エチリデンノルボルネン,ビニルノルボルネン,ジシクロペンタジエンなどの炭素数4 〜20のジエン化合物から誘導される構成単位を5モル%以下の割合で含有していてもよい。また、このポリオレフィン系樹脂は以下のエラストマーを包含する。該エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなど、ゴム弾性的な性質を持つ物質を挙げることができる。
【0013】
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン,プロピレン,1−ブテン,1−ペンテン,1−オクテンなどのα−オレフィンが共重合してなるエラストマーあるいはこれらと環状オレフィン、スチレン系モノマー、非共役ジエンとが共重合してなるエラストマーやプラストマーと呼ばれているものなどが挙げられる。一般的には密度が0.91g/cm3以下をプラストマーやエラストマーと呼ばれているが、ゴム弾性的な性質を持つものであれば密度には制限されず、化学的架橋されているものでも化学的架橋されていないものでもよい。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン,1,4−ヘキサジエン,ジシクロオクタジエン,メチレンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどを挙げることができる。このようなオレフィン系エラストマーとしては、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー,エチレン・1−ブテン共重合体エラストマー,エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー,エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマー,エチレン・1−オクテン共重合体エラストマー,エチレン・スチレン共重合体エラストマー,エチレン・ノルボルネン共重合体エラストマー,プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー,エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体エラストマー,エチレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー,エチレン・プロピレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマーなどのオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体を挙げることができる。これらのなかでも、炭素原子数が2〜8のオレフィンを主な構成単位とする重合体であることが好ましく、さらにエチレン単位を主な構成単位とする共重合体であることが好ましい。上記のようなオレフィン系エラストマーの230℃(荷重;21.18N)で測定されるMIは、0 .01 〜50g/10分、好ましくは0 .01 〜10g/10分、さらに好ましくは0 .01 〜5g/10分であることが望ましい。
【0014】
またスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体およびその水添体が挙げられる。このスチレン系化合物としては、スチレン,α−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−t−ブチルスチレンなどのアルキルスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。共役ジエン化合物としては、ブタジエン,イソプレン,ピペリレン,メチルペンタジエン,フェニルブタジエン,3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどが挙げられる。これらの中でもブタジエン、イソプレンが好ましい。またこのスチレン系熱可塑性エラストマーの分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状またこれらの組み合わせなどいずれであってもよい。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的に、スチレン・ブタジエンジブロック共重合体,スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体,スチレン・イソプレンジブロック共重合体,スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体,スチレン・ブタジエンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。上記のエラストマーとしては、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(B)プロピレン系重合体
本発明の構成成分であるプロピレン系重合体は、以下の要件を備えている。
(1)プロピレン50〜100モル%とプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン0〜50モル%からなる
好ましくはプロピレン70〜100モル%とプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン0〜30モル%からなり、より好ましくはプロピレン90〜100モル%とプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン0〜10モル%からなる。
(2)135℃テトラリン中で測定した極限粘度 [η]が0.01〜0.5dl/g、好ましくは0.1〜0.5dl/g、より好ましくは0.2〜0.4dl/gである。
測定法は、VMR−053型自動粘度計(離合社製)により、溶媒をテトラリン、測定温度を135℃とした。
[η]が0.01未満では、ポリオレフィン系樹脂組成物の強度低下やべたつきの原因になることがある。また、[η]が0.5を超えると、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性が改善されないことがある。
【0016】
(3)立体規則性指数 [mm]が50〜90モル%
好ましくは55〜90モル%、さらに好ましくは55〜80モル%、特に好ましくは55〜70モル%である。
立体規則性はエイ・ザンベリ(A.Zambelli)らにより報告された、「Macromolecules,6,925(1973)」及び「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に準拠して求めた。
なお、測定は下記の装置、条件で行った。
装置:日本電子社製 JNM−EX400型 13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン=90/10混合溶媒(容量比)
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10,000回
プロピレン系重合体はアイソタクチック構造が好適で、アタクチック構造や、シンジオタクチック構造では、非晶性もしくは、結晶性が低下し、表面特性の悪化、特にべたつき、強度低下につながることがある。
[mm]が50モル%未満以下では、ポリオレフィン系樹脂組成物にべたつきが生じる可能性がある。[mm]が90モル%を超えるとポリオレフィン系樹脂の軟質化が効率的に行われないことがある。
また、メソペンタッド分率[mmmm]が20〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは30〜55モル%、特に好ましくは30〜45モル%である。メソペンタッド分率[mmmm]は上記と同様の13C−NMRの測定により求めた。[mmmm]が20モル%未満では、ポリオレフィン系樹脂組成物にべたつきが生じる可能性がある。[mmmm]が80モル%を超えるとポリオレフィン系樹脂の軟質化が効率的に行われないことがある。また、ペンタッド分率[rmrm]が2.5モル%を超えることが好ましい。[rmrm]が2.5モル%を超えると、ランダム性が増し、透明性が向上する。
【0017】
(4)DSCで測定した融点(TmD)が0〜120℃
好ましくは0〜100℃、よりに好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは45〜90℃である。
測定については、示差走査型熱量計(DSC)(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下、−10℃で5分間保持した後、220℃まで10℃/分で昇温させることにより実施される。得られた融解吸熱カーブから観測されるピークのもっとも高温側に観測されるピークトップをTmDと定義する。TmDが0℃未満では、ポリオレフィン系樹脂組成物にべたつきが発生することがある。また。TmDが120℃を超えると、ポリオレフィン系樹脂の軟質化が効率的に行われない。
【0018】
(5)GPC法で測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下
好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.3以下である。Mw/Mnが4.0を超えると、低分子量体の増加によりべたつきの原因となることがある。
以上の測定法については下記の装置および条件で実施した。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、プロピレンホモポリマー換算値を用いた。
カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
測定温度:145℃
溶媒:1,2,4−トリクロルベンゼン
試料濃度:2.2mg/ミリリットル
検量線:Universal Calibration(標準物質:ポリスチレン)
また、Mwは、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは10,000〜80,000、さらに好ましくは10,000〜50,000、特に好ましくは20,000〜40,000である。Mwが10,000未満では、低分子量体の増加によりべたつきが見られることがある。また、Mwが100,000を超えると、ポリオレフィン系樹脂組成物の溶融時粘度が効率的に低下せず、成形性が改善されないことがある。
【0019】
次に、(B)成分のプロピレン系重合体の好ましい製造方法について述べる。
本発明における(B)成分の製造方法としては、メタロセン触媒と呼ばれる触媒を用いてプロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを重合させる方法が挙げられる。メタロセン触媒としては、特開昭58−19309号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−300887号公報、特開平4−211694号公報、特表平1−502036号公報等に記載されているようなシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個配位子とする遷移金属化合物、及び該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られる触媒が挙げられる。
【0020】
本発明においては、メタロセン触媒のなかでも、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物からなる場合が好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン触媒を用いてプロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを重合させる方法がさらに好ましい。最も好ましいメタロセン触媒系を使用する方法について、具体的に例示すれば、
(a)一般式(I)
【0021】
【化3】
【0022】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E1及びE2はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造を形成しており、またそれらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E1,E2又はXと架橋していてもよく、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(b)有機ホウ素化合物を含有する重合用触媒の存在下、プロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを重合させる方法が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属などが挙げられるが、これらの中ではオレフィン重合活性などの点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適である。
E1及びE2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及び珪素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A1及びA2を介して架橋構造を形成している。また、E1及びE2はたがいに同一でも異なっていてもよい。このE1及びE2としては、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。
【0024】
また、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。該Xの具体例としては、ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアミド基,炭素数1〜20の珪素含有基,炭素数1〜20のホスフィド基,炭素数1〜20のスルフィド基,炭素数1〜20のアシル基などが挙げられる。一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1,E2又はXと架橋していてもよい。該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類,チオエーテル類などを挙げることができる。
【0025】
次に、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。このような架橋基としては、例えば一般式
【0026】
【化4】
【0027】
(Dは炭素、ケイ素又はスズ、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、またたがいに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基などを挙げることができる。これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)
【0028】
【化5】
【0029】
で表される二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物が好ましい。
上記一般式(II)において、M,A1,A2,q及びrは前記と同じである。X1はσ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。Y1はルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。R4 〜R9はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基,珪素含有基又はヘテロ原子含有基を示すが、その少なくとも一つは水素原子でないことが必要である。また、R4〜R9はたがいに同一でも異なっていてもよく、隣接する基同士がたがいに結合して環を形成していてもよい。なかでも、R6とR7は環を形成していること及びR8とR9は環を形成していることが好ましい。R4及びR5としては、酸素、ハロゲン、珪素等のヘテロ原子を含有する基が重合活性が高くなり好ましい。
【0030】
この二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物は、配位子間の架橋基にケイ素を含むものが好ましい。
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,7−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジ−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1 ,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチル−4−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−i−プロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−i−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2’−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルメチルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレンインデニル) (2,2’−ジイソプロピルシリレン−3−トリメチルメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリドなど及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができる。もちろんこれらに限定されるものではない。また、他の族又はランタノイド系列の金属元素の類似化合物であってもよい。また、上記化合物において、(1,1’−)(2,2’−)が(1,2’−)(2,1’−)であってもよく、(1,2’−)(2,1’−)が(1,1’−)(2,2’−)であってもよい。
【0031】
(b)有機ホウ素化合物として、複数の基が金属に結合したアニオンとカチオンとからなる配位錯化合物又はルイス酸を挙げることができる。
複数の基が金属に結合したアニオンとカチオンとからなる配位錯化合物としては様々なものがあるが、例えば、下記一般式(III)又は(IV)で表される化合物を好適に使用することができる。
([L1−H]s+)t([M2Z2Z3・・・Zn](n−m)−)1・・・(III)
([L2]s+)t([M3Z2Z3・・・Zn](n−m)−)1・・・(IV)
〔式(III)又は(IV)中、L2は後述のM4,R10R11M5又はR12 3Cであり、L1はルイス塩基、M2及びM3はホウ素、M4は周期律表の1族及び8族〜12族から選ばれる金属、M5は周期律表の8族〜10族から選ばれる金属、Z2〜Znはそれぞれ水素原子,ジアルキルアミノ基,アルコキシ基,アリールオキシ基,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基,アリールアルキル基,置換アルキル基,有機メタロイド基又はハロゲン原子を示す。
R10及びR11はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R12はアルキル基を示す。
mはM2,M3の原子価で1〜7の整数、nは2〜8の整数、sはL1−H,L2のイオン価数で1〜7の整数、tは1以上の整数,l=t×s/(n−m)である。〕
【0032】
M2及びM3はホウ素原子、M4は周期律表の1族及び8族〜12族から選ばれる金属、具体例としてはAg,Cu,Na,Liなどの各原子、M5は周期律表の8族〜10族から選ばれる金属、具体例としてはFe,Co,Niなどの各原子が挙げられる。
Z2〜Znの具体例としては、例えば、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基など、アルコキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基等、アリールオキシ基としてフェノキシ基,2,6−ジメチルフェノキシ基,ナフチルオキシ基等、炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,n−オクチル基,2−エチルヘキシル基等、炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基,p−トリル基,ベンジル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基,4−ターシャリ−ブチルフェニル基,2,6−ジメチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基,2,4−ジメチルフェニル基,1,2−ジメチルフェニル基等、ハロゲンとしてF,Cl,Br,I、有機メタロイド基としてテトラメチルアンチモン基,トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素基等が挙げられる。
R10及びR11のそれぞれで表される置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、メチルシクロペンタジエニル基,ブチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基等が挙げられる。
【0033】
本発明において、複数の基が金属に結合したアニオンとしては、具体的には、B(C6F5)4 −,B(C6HF4)4 −,B(C6H2F3)4 −,B(C6H3F2)4 −,B(C6H4F)4 −,B(C6CF3F4)4 −,B(C6H5)4 −,BF4 −等が挙げられる。
又、金属カチオンとしては、Cp2Fe+,(MeCp)2Fe+,(tBuCp)2Fe+,(Me2Cp)2Fe+,(Me3Cp)2Fe+,(Me4Cp)2Fe+,(Me5Cp)2Fe+,Ag+, Na+,Li+等が挙げられ、又、その他カチオンとしては、ピリジニウム,2,4−ジニトロ−N,N−ジエチルアニリニウム,ジフェニルアンモニウム,p−ニトロアニリニウム,2,5−ジクロロアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリニウム,キノリニウム,N,N−ジメチルアニリニウム,N,N−ジエチルアニリニウム等の窒素含有化合物、トリフェニルカルベニウム,トリ(4−メチルフェニル)カルベニウム,トリ(4−メトキシフェニル)カルベニウム等のカルベニウム化合物、CH3PH3 +,C2H5PH3 +,C3H7PH3 +,(CH3)2PH2 +,(C2H5)2PH2 +,(C3H7)2PH2 +,(CH3)3PH+,(C2H5)3PH+,(C3H7)3PH+,(CF3)3PH+,(CH3)4P+,(C2H5)4P+,(C3H7)4P+等のアルキルフォスフォニウムイオン,及びC6H5PH3 +,(C6H5)2PH2 +,(C6H5)3PH+,(C6H5)4P+,(C2H5)2(C6H5)PH+,(CH3)(C6H5)PH2 +,(CH3)2(C6H5)PH+,(C2H5)2(C6H5)2P+等のアリールフォスフォニウムイオン等が挙げられる。
本発明においては、上記金属カチオンとアニオンの任意の組み合わせによる配位錯化合物が挙げられる。
【0034】
一般式(III)及び(IV)の化合物の中で、具体的には、下記のものを特に好適に使用できる。
一般式(III)の化合物としては、例えば、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム,ヘキサフルオロ砒素酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ピロリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸N,N−ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム等が挙げられる。
一方、一般式(IV)の化合物としては、例えば、テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アセチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ホルミルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸シアノフェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀,テトラフェニル硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラフルオロ硼酸銀等が挙げられる。
好適な配位錯化合物としては非配位性アニオンと置換トリアリールカルベニウムとからなるものであって、該非配位性アニオンとしては、例えば、一般式(V)
(M1Z1Z2・・・Zn)(n−m)− ・・・(V)
[式中、M1はホウ素、Z1〜Znはそれぞれ水素原子,ジアルキルアミノ基,アルコキシ基,アリールオキシ基,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む),アルキルアリール基,アリールアルキル基,置換アルキル基及び有機メタロイド基又はハロゲン原子を示し、mはM1の原子価で1あり、nは2〜8の整数である。]
で表されるものを挙げることができる。
【0035】
又、一般にカルボランと呼ばれる化合物も非配位性アニオンである。
一方、置換トリアリールカルベニウムとしては、例えば一般式(VI)
〔CR13R14R15〕+・・・(VI)
で表わされるものを挙げることができる。
上記一般式(VI)におけるR13,R14及びR15は、それぞれフェニル基,置換フェニル基,ナフチル基及びアントラセニル基等のアリール基であって、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよいが、その中の少なくとも一つは、置換フェニル基,ナフチル基又はアントラセニル基である。
【0036】
該置換フェニル基は、例えば、一般式(VII)
C6H5−kR16 k・・・(VII)
で表わすことができる。
一般式(V11)におけるR16は、炭素数1〜10のヒドロカルビル基,アルコキシ基,アリーロキシ基,チオアルコキシ基,チオアリーロキシ基,アミノ基,アミド基,カルボキシル基及びハロゲン原子を示し、kは1〜5の整数である。kが2以上の場合、複数のR16は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
上記一般式(V)で表される非配位性アニオンの具体例としては、テトラ(フルオロフェニル)ボレート,テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート,テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート,テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート,テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート,テトラ(トルイル)ボレート,テトラ(キシリル)ボレート,(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート,〔トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル〕ボレート,トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等を挙げることができる。
【0038】
一方、上記一般式(VI)で表される置換トリアリールカルベニウムの具体例としては、トリ(トルイル)カルベニウム,トリ(メトキシフェニル)カルベニウム,トリ(クロロフェニル)カルベニウム,トリ(フルオロフェニル)カルベニウム,トリ(キシリル)カルベニウム,〔ジ(トルイル),フェニル〕カルベニウム,〔ジ(メトキシフェニル),フェニル〕カルベニウム,〔ジ(クロロフェニル),フェニル〕カルベニウム,〔トルイル,ジ(フェニル)〕カルベニウム,〔メトキシフェニル,ジ(フェニル)〕カルベニウム,〔クロロフェニル,ジ(フェニル)〕カルベニウム等が挙げられる。
【0039】
又、本発明で使用される触媒の(b)成分である有機ホウ素化合物としては、下記一般式
(VIII)
BR17R18R19・・・(VIII)
〔式中、R17、R18及びR19は、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である。〕
で表される化合物を挙げることもでき、ホウ素に置換基としてアルキル基又はアリール基が結合したホウ素化合物であれば特に制限されるものではなく、いずれのものでも使用できる。
ここで、アルキル基としては、ハロゲン置換アルキル基をも包含し、又アリール基としてはハロゲン置換アリール基,アルキル置換アリール基をも包含するものである。
【0040】
上記一般式(VIII)中のR17、R18及びR19は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、具体例には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,アミル基,イソアミル基,イソブチル基,オクチル基,2−エチルヘキシル基などのアルキル基あるいはフェニル基,フルオロフェニル基,トリル基,キシリル基,ベンジル基等のアリール基である。尚、ここでR17〜R19は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
このような一般式(VIII)で表される有機ホウ素化合物の具体例としては、トリフェニルホウ素,トリ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,4,6−トリフルオロフェニル)ホウ素,トリ(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,3,4−トリフルオロフェニル)ホウ素,トリ(3,4,6−トリフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,3−ジフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,6−ジフルオロフェニル)ホウ素,トリ(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2,5−ジフルオロフェニル)ホウ素,トリ(2−フルオロフェニル)ホウ素,トリ(3−フルオロフェニル)ホウ素,トリ(4−フルオロフェニル)ホウ素,トリ〔3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕ホウ素,トリ〔(4−フルオロメチル)フェニル〕ホウ素,ジエチルホウ素,ジエチルブチルホウ素,トリメチルホウ素,トリエチルホウ素,トリ(n−ブチル)ホウ素,トリ(トリフルオロメチル)ホウ素,トリ(ペンタフルオロエチル)ホウ素,トリ(ノナフルオロブチル)ホウ素,トリ(2,4,6−トリフルオロフェニル)ホウ素,トリ(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素,ジ(ペンタフルオロフェニル)フルオロホウ素,ジフェニルフルオロホウ素,ジ(ペンタフルオロフェニル)クロロホウ素,ジメチルフルオロホウ素,ジエチルフルオロホウ素,ジ(n−ブチル)フルオロホウ素,(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロホウ素,フェニルフルオロホウ素,(ペンタフルオロフェニル)ジクロロホウ素,メチルジフルオロホウ素,エチルジフルオロホウ素,(n−ブチル)ジフルオロホウ素等が挙げられる。
これらの中では、トリ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素が特に好ましい。
(a)成分と(b)成分との使用割合は、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは1:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲を逸脱する場合は、単位質量ポリマー当りの触媒コストが高くなり、実用的でない。
【0042】
本発明で使用される重合用触媒は、上記(a)成分及び(b)成分に加えて(c)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。
ここで、(c)成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式(IX)
R20 vAlJ3−v ・・・(IX)
〔式中、R20は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
で示される化合物が用いられる。
前記一般式(IX)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド及びエチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
【0043】
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
本発明においては、上述した(a)成分、(b)成分及び(c)成分を用いて予備接触を行なうこともできる。
予備接触は、(a)成分に、例えば、(b)成分を接触させることにより行なうことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
これら予備接触により触媒活性の向上や、助触媒である(b)成分の使用割合の低減等、触媒コストの低減に効果的である。
又、更に、(a)成分と(b)成分を接触させることにより、上記効果と共に、分子量向上効果も見られる。
又、予備接触温度は、通常−20℃〜200℃、好ましくは−10℃〜150℃、より好ましくは、0℃〜80℃である。
予備接触においては、溶媒の不活性炭化水素として、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素等を用いることができる。
これらの中で特に好ましいものは、脂肪族炭化水素である。
【0044】
前記(a)触媒成分と(c)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10,000、より好ましくは1:5〜1:2,500の範囲が望ましい。該(c)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
本発明においては、触媒成分の少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。
該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ以外の無機担体が好ましい。
担体に担持することによって、工業的に有利な高い嵩密度と優れた粒径分布を有する重合体を得ることができる。
【0045】
本発明で使用されるプロピレン系重合体は、上述した重合用触媒を用いて、プロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンとを重合させることにより製造される。
炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,1−デセン,1−ドデセン,1−テトラデセン,1−ヘキサデセン,1−オクタデセン及び1−エイコセン等が挙げられ、本発明においては、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。
本発明において、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法,気相重合法,塊状重合法,溶液重合法及び懸濁重合法等のいずれの方法を用いてもよい。
【0046】
重合条件については、重合温度は通常−100〜250℃、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。
又、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(a)成分(モル比)が好ましくは1〜108、特に100〜105となることが好ましい。
更に、重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜20MPa(gauge)、更に好ましくは常圧〜10MPa(gauge)である。
【0047】
重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類,使用量及び重合温度の選択、更には、水素存在下での重合等がある。
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム及びジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。
これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。
又、α−オレフィン等のモノマーを溶媒として用いてもよい。
尚、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0048】
重合に際しては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。
予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、前記に例示したものと同様のもの、例えばエチレン、炭素数4〜20のα−オレフィン、又はこれらの混合物等を挙げることができるが、該重合において用いるオレフィンと同じオレフィンを用いることが有利である。
【0049】
又、予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。
予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素及びモノマー等を用いることができる。
これらの中で特に好ましいのは脂肪族炭化水素である。
又、予備重合は無溶媒で行ってもよい。
予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度[η](135℃デカリン中で測定)が0.2デシリットル/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10,000g、特に10〜1,000gとなるように条件を調整することが望ましい。
【0050】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分を、質量比で20:80〜99:1の割合で含有してなるものである。(B)成分が1未満であると、(A)成分の改良効果が低く、80を超えると、得られるポリオレフィン系組成物の耐熱性が悪化する。好ましくは、50:50〜97:3、より好ましくは、70:30〜95:5である。
【0051】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を調製する方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
▲1▼(A)成分と(B)成分を溶融混練する方法。
▲2▼少なくとも2種の触媒の存在下で、(A)成分と(B)成分を重合工程で製造する方法。
▲3▼(A)成分と(B)成分を共通の溶媒に溶解しブレンドする方法。
各成分を溶融混練する方法が好ましく、従来公知の方法を広く採用することができる。溶融混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機を用いることができる。
【0052】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、必要に応じて、さらに従来から公知の無機充填剤、有機充填剤、などの充填剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
用いられる無機充填剤や有機充填剤の形状については特に制限はなく、粒状,板状,棒状,繊維状,ウイスカー状など、いずれの形状のものも使用することができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ,ケイ藻土,バリウムフェライト,アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム,軽石,軽石バルーンなどの酸化物;水酸化アルミニルム,水酸化マグネシウム,塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物;炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,ドロマイト,ドーソナイトなどの炭酸塩;硫酸カルシウム,硫酸バリウム,硫酸アンモニウム,亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩又は亜硫酸塩;タルク,クレー,マイカ,アスベスト,ガラス繊維,ガラスフレーク、ガラスバルーン,ガラスビーズ,ケイ酸カルシウム,さらにはモンモリロナイト,ベントナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;ケイ酸塩およびその有機化物(有機化クレー);カーボンブラック,グラファイト,炭素繊維,炭素中空球などの炭素類;硫化モリブデン,ボロン繊維,ホウ酸亜鉛,メタホウ酸バリウム,ホウ酸カルシウム,ホウ酸ナトリウム,マグネシウムオキシサルフェイト,各種金属繊維などを挙げることができる。
【0053】
一方、有機充填剤としては、例えばモミ殻などの殻繊維、木粉,木綿,ジュート,紙細片,セロハン片,芳香族ポリアミド繊維,セルロース繊維,ナイロン繊維,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維,熱硬化性樹脂粉末などを挙げることができる。
これらの無機充填剤や有機充填剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。射出成形においては、これらの中で、タルク,マイカ,炭酸カルシウム,ガラス繊維が好ましく、特にタルクが好ましい。このタルクの大きさとしては、得られる成形体の剛性、耐衝撃性、耐傷付き白化性、ウエルド外観、光沢ムラなどの物性の点から、平均粒径1〜8μmで、平均アスペクト比が4以上のものが好適である。特に加工粉砕法により得られたものが、物性、剛性などの点でとりわけ好ましい。
【0054】
該無機充填剤や有機充填剤の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して、1〜100質量部の範囲であるのが好ましい。この配合量が1質量部未満では得られる成形体の剛性が不充分であり、100質量部超えると得られる成形体のウエルド外観や光沢ムラなどの外観不良が生じるとともに、耐衝撃性や耐傷付き白化性が低下する恐れがある。成形体の外観,剛性,耐衝撃性,耐傷付き白化性などの面から、より好ましい無機充填剤や有機充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して3〜60質量部の範囲であり、特に5〜40質量部の範囲が好適である。
【0055】
さらに必要に応じて、従来公知の結晶核剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤,耐熱安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、合成油、ワックス、電気的性質改良剤、スリップ防止剤、アンチブロックング剤、粘度調整剤、着色防止剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、塩素捕捉剤,酸化防止剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。上記の添加剤は、一種単独でも用いることができ、二種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ポリオレフィン系樹脂組成物100質量部に対して通常10質量部以下である。
また、着色剤も配合でき、該着色剤の好ましい配合量は、樹脂成分と無機充填剤や有機充填剤との合計100質量部に対して、5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。この配合量が5質量部を超えると得られる成形体は高温時の剛性が低下することがあり、かつコスト高となる可能性がある。
さらに、安定剤としては、フェノール系安定剤、有機フォスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤および高級脂肪酸の金属塩、が挙げられ、樹脂組成物100質量部に対して0.001〜10質量部の量で配合するのが好ましい。
【0056】
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂組成物に、無機充填剤、有機充填剤又は所望成分である各種添加剤を配合する方法としては、例えば一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダ、ロールなどを使用して溶融混練造粒する方法などを用いることができる。
本願第一発明のポリオレフィン系樹脂組成物を必須成分として、熱成形、押出成形、異型押出成形、射出成形、圧縮成形、発泡成形、中空成形、粉末成形、カレンダー成形、練加工、インフレーション成形などの成形方法により成形体を得ることができる。
【0057】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、通常の空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、T−ダイフィルム成形、水冷インフレーション成形等で加工することにより、フィルムやシートを得ることができる。このようにして成形されたフィルムは、透明性、柔軟性、表面特性に優れている。
Tダイ成形においては無延伸の状態の物をそのまま用いてもよいし、積層体からなる原反フィルムを成形し、次いで該フィルムをその縦、横、両方向に二軸延伸することにより、成形してもよい。延伸の順序は縦と横、いずれが先でも構わないし、縦、横同時延伸でもよい。延伸倍率は、好ましくは縦、横両方向にそれぞれ延伸倍率2〜5倍、より好ましくは2.5〜4.5倍に二軸延伸する。該延伸倍率が2倍未満ではフィルムのカット性が不十分である場合があり、また5倍より大きいと延伸性が低下し、破断もしくはフィルムに延伸ムラができる場合があるので好ましくない。また必要に応じて延伸後に熱固定を行ってもよい。
【0058】
本発明の押出フィルムは、その他のフィルム、例えばポリプロピレン二軸延伸フィルム、未延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、紙類等とドライラミネート、または押出ラミネート等の公知の方法によって形成される複合フィルム、またはTダイ法或いはインフレーション法等による共押出複合フィルムにして使用が可能であり、このような目的の場合も未延伸フィルム層の厚みは特に限定しないが、5〜150μmが好ましく、より好ましくは15〜100μmである。
【0059】
共押出法による積層フィルムの場合は、例えば、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を中間層とし、両表面層に他のポリオレフィン系樹脂を重ねることが挙げられる。積層するポリオレフィン系樹脂材料としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(エチレンとα−オレフィンとの共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、エチレン−アルキルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、プロピレン系エラストマー材料などが好ましい。
【0060】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1
▲1▼触媒調製
(1)2−クロロジメチルシリルインデンの製造
窒素気流下、1リットルの三つ口フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルとマグネシウム2.5g(41ミリモル)を加え、ここに1,2−ジブロモエタン0.1ミリリットルを加えて30分間攪拌し、マグネシウムを活性化した。攪拌後、溶媒を抜き出し、新たにTHF50ミリリットルを添加した。ここに2−ブロモインデン5.0g(25.6ミリモル)のTHF(200ミリリットル)溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温において2時間攪拌した後、−78℃に冷却し、ジクロロジメチルシラン3.1ミリリットル(25.6ミリモル)のTHF(100ミリリットル)溶液を1時間かけて滴下し、15時間攪拌した後、溶媒を留去した。残渣をヘキサン200ミリリットルで抽出した後、溶媒を留去することにより、2−クロロジメチルシリルインデン6.6g(24.2ミリリモル)を得た(収率94%)。
【0061】
(2)(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)の製造
窒素気流下、1リットルの三つ口フラスコにTHF400ミリリットルと2−クロロジメチルシリルインデン8gを加え、−78℃に冷却した。この溶液へ、LiN(SiMe3 )2 のTHF溶液(1.0モル/リットル)を38.5ミリリットル(38.5ミリモル)滴下した。室温において15時間攪拌した後、溶媒を留去し、ヘキサン300ミリリットルで抽出した。溶媒を留去することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)を2.0g(6.4ミリモル)得た(収率33.4%)。
【0062】
(3)(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの製造
窒素気流下、200ミリリットルのシュレンク瓶に(2)で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)‐ビス(インデン)2.5g(7.2ミリモル)とジエチルエーテル100ミリリットルを加えた。−78℃に冷却しn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.6モル/リットル)を9.0ミリリットル(14.8ミリモル)加えた後、室温で12時間攪拌した。溶媒を留去し得られた固体をn−ヘキサン20ミリリットルで洗浄し減圧乾燥することによりリチウム塩を白色固体として定量的に得た。
シュレンク瓶中、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデン)のリチウム塩(6.97ミリモル)をTHF50ミリリットルに溶解し、室温でヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2ミリモル)をゆっくりと滴下し12時間攪拌した。溶媒を留去しジエチルエーテル50ミリリットルを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。分液後、有機相を乾燥し、溶媒を除去することにより(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04グラム(5.9ミリモル)得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に前記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.9ミリモル)とジエチルエーテル50ミリリットルを入れた。−78℃に冷却しn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.6モル/リットル)を7.4ミリリットル(11.8ミリモル)を加えた後、室温で12時間攪拌する。溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン40ミリリットルで洗浄することによりリチウム塩をジエチルエーテル付加体として3.06g得た。
1H−NMR(90MHz,THF−d8)による測定の結果は、:δ 0.04(s,−SiMe3,18H),0.48(s,−Me2Si−,12H),1.10(t,−CH3,6H),2.59(s,−CH2−,4H),3.38(q,−CH2−,4H),6.2−7.7(m,Ar−H,8H)であった。
窒素気流下、前記で得られたリチウム塩3.06gをトルエン50ミリリットルに懸濁させた。−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下した。滴下後、室温で6時間攪拌した。その反応溶液の溶媒を留去した。得られた残渣をジクロロメタンより再結晶化することにより(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの黄色微結晶0.9g(1.33ミリモル)を得た(収率26%)。
1H−NMR(90MHz,CDCl3)による測定の結果は、:δ 0.0(s,―SiMe3−,18H),1.02,1.12(s,−Me2Si−,12H),2.51(dd,−CH2−,4H),7.1−7.6(m,Ar−H,8H)であった。
【0063】
▲2▼重合
加熱乾燥した10リットルオートクレーブにヘプタン4,000ミリリットルを入れ、脱気した後、水素0.05MPaを導入し、さらに、プロピレンを導入し、重合温度80℃、全圧0.8MPaまで昇温、昇圧した。トリイソブチルアルミニウム5ミリモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート5マイクロモル、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1マイクロモル加え、45分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、プロピレン系重合体1.5kgを得た。
【0064】
製造例2
▲1▼重合
加熱乾燥した10リットルオートクレーブにn−ヘプタン4,000ミリリットルを入れ、脱気した後、水素0.2MPaを導入し、さらに、プロピレンを導入し、重合温度80℃、全圧0.8MPaまで昇温、昇圧した。トリイソブチルアルミニウム5ミリモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート5マイクロモル、製造例1で得た(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1マイクロモル加え、60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、プロピレン系重合体1.4kgを得た。
【0065】
製造例3
▲1▼重合
攪拌機付き、内容積0.25m3のステンレス製反応機に、n−ヘプタンを20リットル/h、トリイソブチルアルミニウムを16ミリモル/h、メチルアルミノキサンを15ミリモル/h、更に、製造例1で得た(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを15マイクロモル/h、で連続供給した。重合温度60℃で気相部水素濃度を54モル%、反応器内の全圧を0.75MPa・Gに保つようプロピレンと水素を連続供給した。重合溶液は連続的に抜き出し、得られた重合溶液に以下の添加剤を処方し、ジャケット温度200℃にて、溶媒を除去した。
*添加剤処方:イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):500ppm
【0066】
製造例4
▲1▼ 触媒調製
0.5リットル三つ口シュレンクにn−ヘプタン200ミリリットル、チタン担持型塩化マグネシウム触媒(C−162)(東邦キャタリスト社製、チタン量2.8質量%)2gを窒素下投入した。これにトリイソブチルアルミニウム5.9ミリリットル、ジシクロペンチルジメトキシシラン5.4ミリリットルを投入し、50℃に昇温した後、プロピレンフィードを開始した。1時間定流量でプロピレンをフィードした後、フィードを停止、氷浴下反応を停止させて予備重合触媒を得た。反応後の触媒分析から、生成したポリプロピレンは、3.7g/g−触媒であった。
▲2▼ 重合
加熱乾燥した10リットルオートクレーブにn−ヘプタン6,000ミリリットル、トリエチルアルミニウム30ミリモルを加え、水素0.7MPa・G導入した。攪拌しながら温度を80℃にした後、上記予備重合触媒0.15ミリモル加え全圧を0.8MPa・Gに保つようプロピレンを連続供給し180分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下、乾燥することにより、プロピレン重合体2,600gを得た。
以上の製造例1〜4で得られたプロピレン重合体の物性を第1表に纏めた。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1〜4及び比較例1〜3
第2表に示す組成でポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。調製はプラストミル二軸押出機(東洋精機社製)を用い230℃で溶融混練することで行った。得られたポリオレフィン系樹脂組成物を230℃における熱プレス成形により厚さ1mmのシートを作成し、以下の要領で特性の測定を行った。その結果を第2表に示す。
▲1▼引張試験(弾性率、破断伸び)
シートより、JIS2号1/2ダンベルの型により打ち抜き測定試料とした。引張速度は100mm/分、チャック間距離を40mmとして行った。
▲2▼ヘイズ測定(内部ヘイズ)
JIS K 7105に従い測定した。ガラス板の片面にシリコーンオイルを塗布し、塗布面で試料を挟み測定した。測定値は試料を挟まないで測定したブランク値で補正した。
▲3▼ゼロ剪断粘度
測定は動的粘弾性測定機(レオロジカ社製、VAR・DAR型)により測定した。厚さ1mmのサンプルシートをプレス成形機にて成形した後、動的粘弾性測定器のコーンプレート間に挟んで所定温度にまで昇温し、歪みを5%とし、角周波数ω[rad/sec]を変化させて動的粘弾性測定を行ない、得られる粘度をη(ω)[Pa・秒]とした。η(ω)とωの関係から、下記(1)式にて近似を行い、ゼロ剪断粘度η0を求めた。
η(ω)= η0/(1+bωn) ・・・(1)
【0069】
【表2】
【0070】
製造例1、3のプロピレン系重合体を添加することにより、効率的に弾性率を下げ軟質化され、かつ、ゼロ剪断粘度が低下し、溶融時流動性が上がっていることがわかる。また、内部ヘイズが低下し、透明性が向上していることがわかる。また、破断時の伸びの低下は見られていない。
【0071】
実施例5,6及び比較例4
第3表に示す組成でポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。調製はプラストミル二軸押出機(東洋精機社製)を用い230℃で溶融混練することで行った。得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用い、フィルム成形機(塚田樹機製作所社製、TLC35−20型)にて厚さ50μmのフィルムを作成した。なおTダイ温度は235℃、チルロール温度を30℃とした。得られたフィルムを40℃にて24時間アニールした後、以下の要領で特性の測定を行った。その結果を第3表に示す。
▲1▼引張試験(弾性率)
JIS K 7127に準拠し、引張速度を500mm/分にて行った。
▲2▼ヘイズ測定(内部ヘイズ)
JIS K 7105に従い測定した。ガラス板の片面にシリコーンオイルを塗布し、塗布面で試料を挟み測定した。測定値は試料を挟まないで測定したブランク値で補正した。
▲3▼静摩擦係数
摩擦係数測定機(東洋精機製作所社製)を用いて測定した。傾斜板とブロック(スレッド)それぞれにフィルムサンプルを取りつけ、フィルム面同士が接するよう傾斜板にブロックを載せた。次に、傾斜板の傾斜角を一定速度で広げていった時の、斜面をブロックが滑りはじめる角度を測定し、静摩擦係数を評価した。静摩擦係数が小さいほど、フィルム表面のべたつきがないことを示す。なお、試験条件は、以下の通り。
ブロックの質量:1kg
ブロックの断面積:65cm2
ブロックのフィルムとの接触面の材質:スポンジ(東洋精機製作所社製)
傾斜板の傾斜速度:2.7度/秒
【0072】
【表3】
【0073】
製造例2の重合体を添加したものは、比較例4のものに比べて内部ヘイズが低く、また、静摩擦係数が低いことから、フィルムのべたつきが小さいことがわかる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、軟質で透明性に優れ、べたつきもなく、かつ、溶融時流動性にも優れ成形性が向上したポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体を提供することができる。
Claims (7)
- (A)ポリオレフィン系樹脂と、(B)下記の(1)〜(5)の要件を満足するプロピレン系重合体を、質量比20:80〜99:1の割合で含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
(1)プロピレン50〜100モル%とプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン0〜50モル%からなる
(2)135℃テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.5dl/g
(3)立体規則性指数[mm]が50〜90モル%
(4)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(TmD)が0〜120℃
(5)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下 - (A)成分のポリオレフィン系樹脂が下記の(1’)の要件を満足するプロピレン系重合体である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(1’)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(TmD)が120℃以上 - (B)成分のプロピレン系重合体がプロピレン単独重合体である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- (B)成分のプロピレン系重合体がメタロセン触媒を使用して製造したものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- (B)成分のプロピレン系重合体が、(a)下記一般式(I)
で表される遷移金属化合物、及び(b)有機ホウ素化合物を含有する重合用触媒の存在下、プロピレン及び、必要に応じてプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを重合させることにより得られるものである請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
- 成形体がシート又はフィルムである請求項6記載の成形体。
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