JP2005001517A - ステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】適切なコラプスストロークを確保できるテレスコピックステアリング装置を提供する。
【解決手段】操作レバー20に連動したリンク部材33により制限部材34が傾動し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21g内へと引き込まれ、インナーコラム11に当接しないようになる。従って、二次衝突が生じた場合でも、インナーコラム11は、制限部材34に衝接することなく移動することが可能となるため、運転者の受ける負担を減少させることができる。一方、操作レバー20を緩めた時は、制限部材34が直立し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21gから内方へと突出し、それによりインナーコラム11が当接可能となる。従って、テレスコ調整時にインナーコラム11をアウタージャケット21側へと押しつけた時、その端部が制限部34aに当接し、それ以上の伸長方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。
【選択図】 図6
【解決手段】操作レバー20に連動したリンク部材33により制限部材34が傾動し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21g内へと引き込まれ、インナーコラム11に当接しないようになる。従って、二次衝突が生じた場合でも、インナーコラム11は、制限部材34に衝接することなく移動することが可能となるため、運転者の受ける負担を減少させることができる。一方、操作レバー20を緩めた時は、制限部材34が直立し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21gから内方へと突出し、それによりインナーコラム11が当接可能となる。従って、テレスコ調整時にインナーコラム11をアウタージャケット21側へと押しつけた時、その端部が制限部34aに当接し、それ以上の伸長方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次衝突時に縮むことで衝撃を吸収する衝撃吸収式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両が他の自動車や構造物に衝突した場合、運転者が慣性でステアリングホイールに衝突することがある。これを二次衝突と呼ぶ。二次衝突時における運転者の受傷を防止するべく、シートベルトやエアバッグ等とともに、衝撃吸収式ステアリング装置が広く採用されている。衝撃吸収式ステアリング装置に採用される衝撃吸収機構には種々の形式が存在するが、運転者が二次衝突した際にステアリングコラムがステアリングシャフトとともにコラプス(短縮)し、その際に衝突エネルギを吸収する二重管式のものが一般的である。
【0003】
この衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、例えば、車体側ブラケットに保持されたアウタージャケットと、アウタージャケットに摺動自在に嵌合したインナーコラムと、アウタージャケットとインナーコラムとの間に介装された衝撃エネルギ吸収手段とを備えており、所定値以上の軸方向荷重が作用したときにインナーコラムがアウタージャケット内に進入し、その際に衝撃エネルギ吸収手段により衝撃エネルギが吸収されるようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、車両のステアリング装置は、種々の運転者の使用(操舵)を想定し、個人の体格や運転姿勢等に対応してステアリングホイールの位置を調整できるようになっていることが望ましいといえる。この様な要望に応えるべく、乗用車に限らず貨物車等においても、ステアリングホイールを任意の位置に設定できるチルト機構やテレスコピック機構を備えたステアリング装置を採用することが多い(特許文献2参照)。
【特許文献1】
特開2001−130421号公報
【特許文献2】
特開2002−166835号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の衝撃吸収式ステアリング装置では、チルト機構やテレスコピック機構等が併設された場合、装置の大型化を図ることなく、いかにして衝撃吸収エネルギーを吸収するためのコラプスストロークを確保するかが問題となる。例えば、アウタージャケット内にインナーコラムを嵌装するタイプのテレスコピック機構を備えたものでは、コラプス機構とテレスコピック機構とが共に、インナーコラムのアウタージャケットに対する進退動により動作を行うようになっているため、車載の関係から装置を大きくできない場合には、テレスコピックストロークとコラプスストロークとがトレードオフの関係になり、十分なコラプスストロークを確保すると、十分なテレスコピックストロークを確保できなくなる恐れがある。
【0006】
これに対し、テレスコ作動範囲を制限するテレスコストッパのリングを、任意の荷重で離脱可能且つ衝撃吸収可能な構造とし、テレスコストロークを使い切った後はコラプスストローク領域として利用するようにし、このコラプスストローク領域において適切な衝撃吸収を行えるよう、リングの形状、リングの数量、リングが接しているインナーコラムの拡径等を定めたステアリング装置も提案されている。かかるステアリング装置は、テレスコストローク+コラプスストロークが限られている場合、ストロークエンドまでに二次衝突の衝撃吸収を完了させるという車両全体の安全思想に基づくものである。しかしながら、かかる構成であると、テレスコストッパとしてのリングを離脱させるための力が、スムーズなコラプスの障害となるといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、テレスコピック機構を備えているにもかかわらず、適切なコラプスストロークを確保できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明のステアリング装置は、
ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを軸線方向変位調整可能に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナーコラムと、
車体に対して、前記インナーコラムを、その軸線方向における変位調整可能状態と変位調整不能状態とのいずれかに設定する設定手段と、
前記インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するが、前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避する制限部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明のステアリング装置は、
ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを軸線方向変位調整可能に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナーコラムと、
車体に取り付けられ、前記ステアリングシャフトの軸線に対してそれぞれ対向する位置に配置された一対のブラケット部と、
前記一対のブラケット部の間に延設されたテンション部材と、
前記一対のブラケット部の外部から前記テンション部材を固定する2つの固定部材と、
前記テンション部材と前記固定部材との間に配設され、操作レバーの動作に連動して前記ブラケット部と前記固定部材との間に相対変位を付与する付与部材と、
前記テンション部材と前記ブラケット部と前記固定部材との連結によって車体に保持され、少なくとも前記一対のブラケット部間において、ブラケット部の相対変位によって外周が前記一対の両ブラケット部と接触する押圧部を持ち、かつ前記インナーコラムの外周を包持する内周面を持つアウタージャケットとを有し、
前記付与部材により付与された変位により、前記一対のブラケット部が接近し、それにより前記アウタージャケットの押圧部を介して前記インナーコラムに対して押圧力が付与され、且つ前記インナーコラムが前記アウタージャケットを介して前記ブラケット部に対して、その軸方向位置を保持されるようになっており、
更に、前記インナーコラムが軸線方向に変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するが、前記インナーコラムが軸線方向に変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避する制限部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
【作用】
第1及び第2の本発明のステアリング装置によれば、前記制限部材が、前記インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するので、前記インナーコラムのテレスコストッパとして機能し、更に前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避するので、二次衝突時におけるコラプス機能を阻害することがなく、それによりコラプスストローク長を確保できる。尚、「軸線方向変位調整可能に支持する」とは、いわゆるテレスコ調整可能に支持することをいう。
【0011】
図面を参照して、本発明の効果について説明する。図1〜3は、二次衝突時におけるステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。いずれの図においても、二次衝突時以降において、インナーコラムが移動を開始するまで、各部がたわむなどするためリニアに衝撃吸収荷重が立ち上がり、インナーコラムの静摩擦力を超えた時点(S1)以降は、衝撃吸収機構が所定の動摩擦力により衝撃を吸収し、最終的にはストロークエンド(S3)で荷重が増大することとなる。
【0012】
図1においては、インナーコラムがコラプス中に、例えばリング状のテレスコストッパに衝接し、更にテレスコストッパが抵抗になってコラプスした比較例1が示されている。かかる場合、テレスコストッパに衝接した時点(S2)から、ハッチングで示すように荷重が増大(ハッチング領域の面積がテレスコストッパの存在により増大した仕事量すなわち運転者がステアリングホイールから受ける負荷増加分)するため、運転者の負担は大きいものとなる。
【0013】
図2においては、インナーコラムがコラプス中に、せん断可能なピン等で固定されたテレスコストッパに衝接し、衝接によりピンがせん断した後はテレスコストッパが抵抗にならずにコラプスした比較例2が示されている。かかる場合、テレスコストッパに衝接した時点(S2)で増大する負荷(ハッチングで示す領域)自体は、図1に示す比較例1よりも小さいが、それでも負荷がパルス状に生じるため、運転者の負担が残る。
【0014】
図3に示す例は、本発明に対応するものであり、インナーコラムがコラプス中にテレスコストッパに衝接することがないため、一定の荷重でコラプスが実行されるようになっており、運転者の負担は最も少ないといえる。
【0015】
更に、前記インナーコラムは、車両の二次衝突時に、前記制限部材により制限される位置を超えて変位可能となると、小型化を図りつつ、コラプスストロークを長く確保できるので好ましい。すなわち、かかるステアリング装置は、インナーコラムが二次衝突時に軸線方向に移動するコラプス可能な構成を有するものである。
【0016】
更に、前記制限部材は、前記付与部材の動作に応じて、前記制限位置へと移動し、又は制限位置から退避すると、運転者の操作が軽減され好ましい。
【0017】
更に、前記制限部材と他の部材(例えばインナーコラム或いはストッパ等)とが衝接したときの衝撃を吸収する緩衝部材を設けると、不快な異音を抑制できるので好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置を図面を参照しつつ説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の分解図であるが、ステアリングシャフトは省略している。図5は、図4に示したステアリング装置を組み付けた状態でV−V線で切断して矢印方向に見た図である。図6は、図4に示したステアリング装置を組み付けた状態で側方から見た図である。
【0019】
図4で、取り付けブラケット12は、不図示の車体に対してボルトにより取り付けるための一対の車体取り付け孔12cを有し、且つ互いに平行に延在すると共に鉛直上下方向に延在する板状のブラケット部12a、12aを有している。各ブラケット部12aの板厚は同一であり、形状は垂直線に対して線対称となっている。各ブラケット部12aには、アウタージャケット21の枢動点を中心とした円弧の一部となるチルト溝12bが形成されている。
【0020】
ブラケット部12a、12aの間には、テンション部材13が配置されている。テンション部材13は、下部が開放してなる断面がコ字状の本体13aと、本体13aの両側壁下端間に架橋され、且つ内挿されたボルト14で本体13aに固定されるチューブ13bとからなり、アウタージャケット21の端部外周を挟むように取り付けられている。即ち、テンション部材13は、本体13aとチューブ13bとに分割可能であり実車搭載時における組付性に優れ、一方、ボルト14により固定された状態では、周方向に連続した環状となり剛性が高くなる。このような構成であれば部品点数が少なくて済み、又、ボルト14は標準品を用いることができ、更に、チューブ13bは、円管を所定長さに切断するだけで製造できるため、より低コスト化が図れる。尚、チューブ13bは、板材を丸めて溶接したものでも良い。
【0021】
アウタージャケット21は、車体に取り付けられた枢動点P(図6)によって車体に対して枢動可能に取り付けられた円筒部21aと、円筒部21aの端部外周において、軸線方向に隔置配置された一対の板状のフランジ部21c、21dとを有している。円筒部21aは、インナーコラム11を内包保持しており、不図示の枢動部により、不図示の車体に対して(図6で上下方向に)枢動可能に支持されている。押圧部としてのフランジ部21c、21dの間には、テンション部材13が配置される。尚、円筒部21aの最下部には、図1に示すように、その端部から軸線方向に延在するようにして、スリット21e(実際より誇張されている)が形成されている。これに代えて、或いはこれに加えて、円筒部21aの最上部にスリットを形成しても良い。
【0022】
図6に示すように、アウタージャケット21に内包される円筒状のインナーコラム11の中には、一端にステアリングホイール(不図示)を取り付けた第1ステアリングシャフトSが挿通され、軸受30を介してインナーコラム11に対して回転自在に支承されている。又、アウタージャケット21の中には、第1ステアリングシャフトSに対し、一端をセレーション結合され他端は不図示の操舵装置に連結された第2ステアリングシャフトS’が挿通され、軸受31を介してアウタージャケット21に対して回転自在に支承されている。第1ステアリングシャフトSと第2ステアリングシャフトS’とで、ステアリングシャフトを構成する。
【0023】
各ブラケット部12aには、アウタージャケット21の枢動点P(図6)を中心とした円弧の一部となるチルト溝12bが形成されている。図5から理解されるように、チルト溝12bは、取り付けブラケット12の車体取り付け孔12cに対して、インナーコラム11の軸線方向にずれている。チルト溝12bを貫通するようにして、図5の左側からは固定部材16が挿通され、図5の右側からは固定部材17が挿通されている。
【0024】
固定部材16は、図5で左側のチルト溝12bの幅よりも大径で工具係合孔を有する円盤状の頭部16aと、チルト溝12bに係合して案内される円筒状のチルト案内部16bと、テンション部材13の本体13aに形成されたネジ孔13cに螺合する雄ネジ部16cとを有している。
【0025】
これに対し、固定部材17は、工具を係合させる六角頭部17aと、第1ねじ部17bと、円筒状の軸部17cと、小フランジ17dと、第2ねじ部17eとを有している。第2ねじ部17eは、テンション部材13の本体13aに形成されたネジ孔13dに螺合することで、テンション部材13に取り付けられており、このとき小フランジ17dが本体13aの表面に当接するようになっている。軸部17cの周囲には、チルト溝12bの幅に係合するような略小判型断面のチルト案内部18a及びそれより大径の固定カム部18bを備えた固定カム18と、固定カム部18bに係合するカム面を有する可動カム部19と、可動カム部19と一体的に回動する操作レバー20と、スラストベアリング(転がり軸受でも滑り軸受でも良い)22が配置され、第1ねじ部17bに螺合するナット23により取り付けられている。尚、固定カム18と,可動カム19とが請求項の付与部材を構成し、固定部材17とナット23、及び固定部材16が請求項の固定部材を構成する。
【0026】
図6において、操作レバー20には、リンク部材33の一端が取り付けられ、リンク部材33の他端は、アウタージャケット21の円筒部21aの下面に枢動自在に取り付けられた制限部材34の下端に取り付けられている。制限部材34の上端に形成された制限部34aは、円筒部21aの下部に形成された開口21gを介して、円筒部21a内に侵入可能となっている。尚、本実施の形態の変形例としては、インナーコラム11に長孔を形成し、制限部材34が制限位置にある場合には、かかる長孔内に突出するような構成とすることもできる。
【0027】
更に、インナーコラム11の上部には、長孔11fが形成されており、図6に示すように組み付けられたとき、かかる長孔11f内に、アウタージャケット21の上部に螺合されたボルト35の先端が突出するように取り付けられている。
【0028】
次に、本実施の形態のステアリング装置の調整動作について説明する。操作者が操作レバー20を締付方向(図6の点線で示す位置)に回動させると、図5において、固定部材17における固定カム18の固定カム部18aの凸部と、可動カム19の凸部同士が係合しあい、互いに離隔する方向に力を発生する。このとき、固定カム18により押圧された図5で右側のブラケット部12aは、左方へ変位する。一方、可動カム19により右方に押圧された固定部材17は、テンション部材13を右方へと変位させる。それに伴って、固定部材16も右方へ移動するので、アウタージャケット21のフランジ部21c、21dの側部を、ブラケット部12aのチルト溝12bの両側に押し当て、適切な押圧力を付与するため、ブラケット部12aに対してアウタージャケット21は固定され、それによりインナーコラム11のチルト方向の変位も阻止されることとなる。
【0029】
一方、操作レバー20の締め付け方向への回動に基づき、固定カム18により押圧された図5で右側のブラケット部12aは、左方へ変位することで、フランジ部21c、21dの右半部に当接して、これらを同様に左方に変位させる。更に、テンション部材13に付与された力は、反対側の固定部材16に伝達され、それにより押圧された図5で左側のブラケット部12aは、右方へ変位する。左側のブラケット部12aが右方へ変位すると、フランジ部21c、21dの左半部に当接して、これらを同様に右方に変位させ、アウタージャケット21の外周面に押圧力を付与する。アウタージャケット21が両側から押圧されることで、スリット21eが閉じるように変形するため、アウタージャケット21の内径は縮径し、インナーコラム11を適切な力で保持することができる(軸線方向変位調整不能状態となる)。
【0030】
かかる状態では、図6の点線状態となり、リンク部材33により引っ張られた制限部材34が傾動し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21g外へと引き出され(すなわち制限位置より退避し)、インナーコラム11に当接しない位置(アウタジャケット21の内周面より半径方向外方)に移動する。従って、車両の衝突時に、運転者が不図示のステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合でも、インナーコラム11は、制限部材34に衝接することなく移動する(コラプス)することが可能となるため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。尚、インナーコラム11がアウタージャケット21との間の摩擦力に抗して軸線方向に変位したときの抵抗力に基づき、二次衝突時の衝撃吸収機能を発揮するようになっている(以下の実施の形態において同様)。
【0031】
更に、本実施の形態によれば、2つのブラケット部12aの形状・板厚が略等しく、すなわち曲げ弾性係数(従って剛性)が略等しくなっていることから、操作レバー20の締め付け操作によって、ブラケット部12aが互いに近接する方向に力を受け、略等しい量で変位するため、インナーコラム11は、フランジ部21c、21dにより、図4で左右両側から押圧力を受けて、ブラケット部12a間距離を2分する位置にその中心が一致するように固定され、それによりテレスコ方向の変位を阻止しながらも、ステアリングシャフトSの心ズレを抑制できることとなる。
【0032】
図7は、本実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置を組み付けた状態で図4の矢印VII方向に見た図である。本実施の形態においては、固定部材16,17の中心が、インナーコラム11の軸線と離隔している。より具体的には、固定部材16,17により与えられるインナーコラム11の保持に必要な押圧力をF1とした場合、固定部材16,17の中心を結ぶ線Rが、インナーコラム11の軸線Xより、図7で下方に距離Δだけシフトした本実施の形態における、固定部材16,17により与えられるインナーコラム11の保持に必要な押圧力F2は、
F2=(L1/(L1+Δ))・F1
{但しL1は、点P3からインナーコラム11の軸線Xまでの距離}
で表せる。ここで、L1<L1+Δであるから、本実施の形態によれば、てこの原理により、より小さな押圧力F2でインナーコラム11を保持することが可能となる。
【0033】
尚、スリット21eを上部のみに設けても良く、かかる場合には線Rが線Qの上方に位置するように、固定部材16,17を配置するのがよい。又、本実施の形態にこだわらず、固定部材16,17の中心が、インナーコラム11の軸線と交差するようにしても良い。
【0034】
これに対し、操作者が操作レバー20を緩め方向へ(図6の実線で示す位置に)回動すると、図4において、固定カム18と可動カム19の凸部同士が係脱し、両者は近接可能となるため、両ブラケット部12aは互いに離隔し、それによりアウタージャケット21は両ブラケット部12aに対してフリーな状態となるため、固定部材16,17のチルト案内部16b、17bをブラケット部12aのチルト溝12bに沿って案内されつつ変位させることができ、更にアウタージャケット21の締め付け力低下によりインナーコラム11の軸線方向変位が可能となる(軸線方向変位調整可能状態となる)ため、チルト方向及びテレスコ方向の調整を任意に行えるようになっている。
【0035】
かかる状態では、図6の実線のように、リンク部材33により押された制限部材34が直立し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21gから内方(即ちアウタジャケット21の内周面より半径方向内方)へと突出する(すなわち制限位置へと移動する)ので、それによりインナーコラム11が当接可能となる。従って、テレスコ調整時にインナーコラム11をアウタージャケット21側へと押しつけたとき、その端部が制限部34aに当接することで、それ以上の縮小方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。尚、テレスコ調整時にインナーコラム11をアウタージャケット21から離隔する方向に引っ張ったときには、インナーコラム11の長孔11fの端部が、アウタージャケット21に螺合されたボルト35に当接するので、それ以上の伸長方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能することとなる。又、ボルト35と長孔11fとの係合により、アウタージャケット21に対するインナーコラム11の回り止めも行うようになっている。
【0036】
更に、本実施の形態によれば、テンション部材13をアウタージャケット21及びインナーコラム11の径方向外側に設けたので、コンパクトで組付性の良い構成となっている。
【0037】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の図6と同様な図である。本実施の形態は、図4〜7に示す実施の形態に対して、制限部材の構成のみが異なるので、それ以外の共通する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
より具体的に異なる点について説明する。制限部材34の制限部34aのうち少なくともインナーコラム11と衝接する箇所の表面に、ゴム材もしくは樹脂材からなる緩衝材34bが被覆されている。従って、テレスコ調整時に、インナーコラム11がアウタージャケット21側へと勢いよく押しつけられ、その端部が制限部34aに衝接したとしても、緩衝材34bにより衝接音もしくは振動が緩和され、操作者に不快感を与えることが抑制される。又、アウタージャケット21の開口21g内にピン36を植設し、制限位置へと移動した制限部材34に当接させてストッパとして機能させるような場合において、ピン36に制限部材34が衝接したときでも、緩衝材34bにより衝接音もしくは振動が緩和され、同様に操作者に不快感を与えることが抑制される。
【0039】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。不図示の車体に、ブラケット112を介して取り付けられたアウタージャケット121内に、軸線方向に変位自在なインナーコラム111が配置され、更にインナーコラム111内にステアリングシャフトSが配置されている。ステアリングシャフトSの図9で右端には、ステアリングホイールHが取り付けられ、ステアリングシャフトSの図9で左端は、自在継手Uを介して中間シャフトMに連結され、中間シャフトMは、自在継手Uを介して操舵装置の入力シャフトIに連結されている。尚、アウタージャケット121内には、電動モータの補助動力をステアリングシャフトへ出力することで、操舵力をアシストするパワーユニットが内蔵されている。
【0040】
図10は、図9の構成における矢印Xの部分を拡大して示す図である。図11は、図10の構成をXI−XI線で切断して矢印方向に見た図である。図12は、図10の構成をXII−XII線で切断して矢印方向に見た図であるが、ステアリングシャフトは省略している。図11で、ブラケット112は、不図示の車体に対してボルトにより取り付けるための一対の車体取り付け孔(不図示)を有する取り付け部112c、112cと、それらから各々平行に且つ鉛直上下方向に延在する板状のブラケット部112a、112aとを一体的に形成してなる。ステアリングシャフトSの軸線を挟んで設けられた各ブラケット部112aの板厚は同一であり、形状は垂直線に対して線対称となっている。各ブラケット部112aには、アウタージャケット121の枢動点を中心とした円弧の一部となるチルト溝112bが形成されている。
【0041】
ブラケット部112a、112aの間には、アウタージャケット121が配置されている。アウタージャケット121は、下部に軸線方向に延在するスリット121eを形成し、且つスリット121eを横切るようにして貫通孔121fを形成している。ブラケット部112aのチルト溝112bに対し、図11の右側から挿通された固定部材117は、図11の右側のブラケット部112a及びアウタージャケット121の貫通孔121fを貫通し、反対側のチルト溝112bより突出し、ここに配置された締め付けナット140のねじ孔140aに螺合している。締め付けナット140の図11で左側には、締め付けナット140とテーパー嵌合した操作レバー120が取り付けられ、ねじ孔140aに螺合したボルト116により固定されている。尚、固定部材117,アウタージャケット121,締め付けナット114により設定手段を構成する。
【0042】
締め付けナット140の外周には、(はすば)歯車141が嵌合し一体的に回転するようになっている。歯車141は、アウタージャケット121に配置された一対の転がり軸受(滑り軸受でも良い)142、142により回転自在に支持された従動軸143のねじ部143aに螺合しており、歯車141の回転に応じて従動軸143は回転可能となっている。
【0043】
図12に示すように、インナーコラム111の外周を上下に挟むようにして、略環状のテレスコストッパ134が配置されている。制限部材であるテレスコストッパ134は、図12で右側を互いにピン結合された上半部134aと下半部134bとからなる。上半部134aと下半部134bの図12で左端は、コイルバネ135により連結され、閉じる方向に付勢されている。上半部134aと下半部134bとの間に、従動軸143のカム143bが配置されている。従動軸143のカム143bは、図12に示すように断面が楕円形となっている。
【0044】
次に、本実施の形態のステアリング装置の調整動作について説明する。操作者が操作レバー120を締付方向に回動させると、締め付けナット140が回転し、固定部材117がよりねじ込まれるので、ブラケット部112aを介してアウタージャケット121が、スリット121eの閉じる方向に付勢される。それにより、その内径が縮径してインナーコラム111を挟持するため、インナーコラム111のチルト方向の移動及びテレスコ方向への移動が阻止される(軸線方向変位調整不能状態となる)こととなる。
【0045】
かかる状態では、締め付けナット140の回動に応じて回転する従動軸143のカム143bは、図12(b)に示すように、その断面の長径がテレスコストッパ134の上半部134aと下半部134bとに接する位置へと移動する。それにより上半部134aと下半部134bは、コイルバネの付勢力に抗して離隔するように枢動する(制限位置から移動する)ので、テレスコストッパ134は、インナーコラム111の外周面に対してわずかな摩擦力だけでフリーな状態に維持される。車両の衝突時に、運転者が不図示のステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合には、インナーコラム111がアウタージャケット121に向かって滑動するが、テレスコストッパ134は、この動作を阻害することがないため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。
【0046】
一方、操作者が操作レバー120を緩め方向に回動させると、締め付けナット140が逆に回転し、固定部材117の頭部と締め付けナット140間の距離が広がるので、アウタージャケット121が、スリット121eの開く方向に変形するため、その内径が拡径し、インナーコラム111のテレスコ方向の移動を許容する(軸線方向変位調整可能状態となる)。又、ブラケット部112aとアウタージャケット121間の摩擦力も低下するため、インナーコラム111のチルト溝112bに沿ったチルト方向の移動も許容する。
【0047】
かかる状態では、締め付けナット140の回動に応じて回転する従動軸143のカム143bは、図12(a)に示すように、その断面の短径がテレスコストッパ134の上半部134aと下半部134bとに接する位置へと移動する。それにより上半部134aと下半部134bは、コイルバネの付勢力により近接するように枢動する(制限位置へ移動する)ので、テレスコストッパ134は、インナーコラム111の外周面に対して、強い摩擦力でしっかり固定される。
【0048】
テレスコ調整時にインナーコラム111をアウタージャケット121側へと押しつけたとき、従動軸143のカム143bに沿って、上半部134aと下半部134bとが滑動するので回り止めの機能も有し、且つテレスコストッパ134がアウタージャケット121の端部に当接したときに、それ以上の縮長方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。尚、従動軸143のカム134aの先端を曲げておけば、テレスコストッパ134が伸長方向へのテレスコストッパとして機能する。
【0049】
本実施の形態の変形例としては、インナーコラム111の外周面と、テレスコストッパ134の内周面との間に、緩衝部材として薄いゴム材又は樹脂材を配置することも考えられる。かかる緩衝部材により、テレスコストッパ134の動作音(衝接音)を緩和する効果が得られる。又、上述した実施の形態では、締め付けナット140の回転を、歯車141を介して従動軸143に伝達しているが、これに限らず締め付けナット140に取り付けたワイヤを巻き上げる或いは緩めることで、テレスコストッパ143の上半部143aと下半部143bとを閉じる或いは開く動作を行うようにしても良い。
【0050】
図13は、本発明の第4の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における図10と同様な図である。本実施の形態においては、ブラケット212にセンサ251が配置され、アウタージャケット221の上部には、制限部材であるストッパピン234aを進退自在な電動アクチュエータ234が取り付けられている。センサ251と電動アクチュエータ234は、不図示の制御装置に接続されている。チルト機能及びテレスコ機能を実現する構成は、図10、11に示す実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
操作者が操作レバー220を締め付け方向(図13で実線の位置)に回動させると、センサ251が、操作レバー220の突起220gの離隔をセンシングするので、不図示の制御装置は、ストッパピン234aを引っ込める(制限位置から退避する)ように電動アクチュエータ234を駆動する。車両の衝突時に、運転者が不図示のステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合には、インナーコラム211がアウタージャケット221の内周面に沿って滑動するが、ストッパピン234aが引き込まれているので、コラプス動作を阻害することがないため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。
【0052】
一方、操作者が操作レバー220を緩め方向(図13で点線の位置)に回動させると、センサ251が、操作レバー220の突起220gの近接をセンシングするので、不図示の制御装置は、ストッパピン234aを突き出す(制限位置へ移動する)ように電動アクチュエータ234を駆動する。ストッパピン234aは、テレスコ調整されるインナーコラム211の端部に当接し、それ以上の縮小方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。尚、センサ251としては、近接スイッチ、光学式スイッチ、磁気抵抗素子を用いた非接触式のものでも良いが、電気切片を用いた接触式のセンサであれば安価であるので好ましい。又、電動アクチュエータ234としては、ストッパピン234aの駆動源としてモータ、ピエゾ素子などを用いることも考えられるが、ソレノイドを駆動源とすると安価である。更に、電動アクチュエータ234は、インナーコラム211側に設け、テレスコ調整時に相対移動するアウタージャケット221に当接させても良い。尚、インナーコラム211の外周面に長孔を形成して、かかる長孔にストッパピン234を繰り出し可能な構成とすれば、ストッパピン234aをテレスコ伸長側及び縮小側の制限部材として用いることができる。
【0053】
更に、別な変形例として、車両に加速度センサを設け、車両の衝突(もしくは二次衝突)を検出した段階で、不図示の制御装置が、ストッパピン234aを引っ込める(制限位置から退避する)ように電動アクチュエータ234を駆動してもよい。
【0054】
図14は、本発明の第5の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。図15は、図14の構成における矢印XVの部分を拡大して示す図である。図16は、図15の構成をXVI−XVI線で切断して矢印方向に見た図である。図17は、図16の構成をXVII−XVII線で切断して矢印方向に見た図である。本実施の形態は、図9〜12の実施の形態に対してテレスコストッパの構成が主として異なるため、共通する構成については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0055】
図16で、ブラケット112は、不図示の車体に対してボルトにより取り付けるための一対の車体取り付け孔(不図示)を有する取り付け部312cと、それから各々平行に且つ鉛直上下方向に延在する板状のブラケット部312a、312aとを一体的に形成してなる。ステアリングシャフトSの軸線を挟んで設けられた各ブラケット部312aの板厚は同一であり、形状は垂直線に対して線対称となっている。各ブラケット部312aには、アウタージャケット321の枢動点を中心とした円弧の一部となるチルト溝312bが形成されている。
【0056】
ブラケット部312a、312aの間には、アウタージャケット321が配置されている。アウタージャケット321は、上部に軸線方向に延在するスリット321eを形成し、且つスリット121eを横切るようにして貫通孔321fを形成している。アウタージャケット321に内包されたインナーコラム311は、図15に示すように、上部に第1突起311a及び第2突起311bを形成している。第1突起311a及び第2突起311bは、アウタージャケット321のスリット321eに沿って、インナーコラム311と共に軸線方向に移動自在に配置されている。
【0057】
ブラケット部312aのチルト溝312bに対し、図16の左側から挿通されたボルト状の固定部材317は、アウタージャケット321の貫通孔321fを貫通し、反対側のチルト溝312bより突出し、ここでナット340に螺合している。固定部材317は、中央において半円筒部317h(断面を図17に図示)を有している。固定部材317の頭部にテーパー嵌合した操作レバー320が、ボルト316により固定されている。尚、固定部材317,アウタージャケット321,ナット340により設定手段を構成する。
【0058】
次に、本実施の形態のステアリング装置の調整動作について説明する。操作者が操作レバー320を締付方向(図17(a)の位置)に回動させると、固定部材317がナット340に、よりねじ込まれるので、ブラケット部312aを介してアウタージャケット321が、スリット321eの閉じる方向に付勢される。それにより、その内径が縮径してインナーコラム311を挟持するため、インナーコラム311のチルト方向の移動及びテレスコ方向への移動が阻止される(軸線方向変位調整不能状態となる)こととなる。
【0059】
かかる状態では、固定部材317の半円筒部317hは、その平面を図17で下方に向ける(制限位置から退避する)ため、インナーコラム311の第1突起311a及び第2突起311bは、その下方を通過自在となる。車両の衝突時に、運転者がステアリングホイールHに衝突する二次衝突が生じた場合には、インナーコラム311がアウタージャケット321に向かって滑動するが、半円頭部317hが図17(a)に示す位置となっているので、コラプス動作を阻害することがないため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。
【0060】
一方、操作者が操作レバー320を緩め方向に回動させると、固定部材317が逆に回転し、固定部材317とナット340間の距離が広がるので、アウタージャケット321が、スリット321eの開く方向に変形可能となるため、その内径が拡径し、インナーコラム311のテレスコ方向の移動を許容する(軸線方向変位調整可能状態となる)。又、ブラケット部312aとアウタージャケット321間の摩擦力も低下するため、インナーコラム311のチルト溝312bに沿ったチルト方向の移動も許容する。
【0061】
かかる状態では、図17(b)に示すように、半円頭部317hは平面を傾斜させる(制限位置へ移動する)ため、第1突起311a及び第2突起311bは、半円頭部317hにより当接可能となる。従って、第1突起311aは伸長側におけるテレスコストッパとして機能し、第2突起311bは縮長側におけるテレスコストッパとして機能する。尚、半円頭部317h又は突起311a、311bに、緩衝部材としてのゴム材又は樹脂材を被覆しても良い。
【0062】
図18は、本発明の第6の実施の形態を示すステアリング装置の上面図であり図19は、図18の構成をXIX−XIX線で切断して矢印方向に見た図である。
【0063】
図18及び図19において、本実施の形態のステアリング装置は、一端にステアリングホイール(図示なし)を取付けたステアリングシャフト410を回転自在に支持するインナーコラム403と、図示しない車体に固設され該ステアリングコラムを囲うようにして設けられたブラケット408と、ブラケット408に対し軸方向に固定的に支持され、インナーコラム403を軸方向に摺動可能に把持しているアウタージャケット404と、インナーコラム403の一部に係接するコラム係接位置と、インナーコラム403を釈放する釈放位置との間を移動可能にブラケット408に支持された係止機構と、該係止機構をコラム係接位置とコラム釈放位置との間に選択的に動かす操作機構と、前記係止機構とコラムとの係接する部分に設けられ、係止機構がコラム係接位置にある時、コラムの軸方向移動を禁止し、2次衝突に際してコラプスして衝撃エネルギーを吸収しつつ、当該コラムの移動を許す係止部材と、等から構成されている。
【0064】
ブラケット408は、車体に取付けられる車体取付部408cと、車体取付部408cに一体であり、車体取付部408cから鉛直上下方向に延びる前方側板408aと、前方側板408aの後方に一体的に取付けられ、車両後方にかつ鉛直上下方向に延びる後方側板408bとから成る。
【0065】
一対のブラケット408は、各々厚みが同一の板材をL字状に折り曲げて成る部材で、左右対称となるように成形及び配置されている。
【0066】
アウタージャケット404はコラム軸方向に延びておりインナーコラム403を内嵌する筒状孔部404dを有し、前方端部下方部分で車体側ブラケット408の前方側板408aに軸方向には移動不能に支持されている。本実施形態では、アウタージャケット404はこの前端部P(図18参照)において、軸方向に直交する方向で軸支されており、この軸支により軸方向には移動不能であるが、チルト調整のための揺動は自在である。アウタージャケット404の後部は、上下2本のすり割り(スリット)404bが形成されて、軸方向に左右に等分割して、左右2つの半体部404c、404cを形成している。アウタージャケット404の後部半体部404c、404cのそれぞれは軸方向に直角方向に延びる2つのフランジ部404e,404fを前後に離隔して有している。
【0067】
これら二組のフランジ部404e,404fはそれぞれ後方側板408b、408bに挟持され アウタージャケット404は、インナーコラム403を内嵌した際に、すり割り404bを形成した半体部404c、404cが後方側板408b、408bに押圧されて、弾性的に変形することによりインナーコラム403をがたなく圧接把持することができる。
【0068】
係止機構は、アウタージャケット404の2つのフランジ部404e,404f間に存在しており、両ブラケット間においてアウタージャケット404を包囲しているテンション部材402と、このテンション部材402に一体でその両側から後方ブラケットの両外側に突出する固定部材414,415とから構成されている。テンション部材402はアウタージャケット4の両側面外側で上下に延在する2つのテンション部402a,402aと、各々のテンション部402a,402aをアウタージャケット404の上下で円筒形状のスペーサ402b,402bを介して結合させる上下2本のボルト402c,402cと、から構成されている。テンション部材402はこれらスペーサ402b、402bでアウタージャケット404を上下に支持している。
【0069】
テンション部材402を組み込む時は、一方のテンション部402aを貫通させた1本のボルト402cの先端部を他方のテンション部402aに対してゆるめて、他方のテンション部402aとスペーサ402bに隙間が空くようにしておき、この状態でアウタージャケット404を囲い込むように組み込んだ後、2本目のボルト402cを締め付けて各部材を固定する。
【0070】
他方のテンション部402a(図19中左側)のアウタージャケット404側の面において固定部材414,415の軸心位置を略中央とする部位には凹部が形成され、この凹部にピン422が埋め込まれ固定されている。このピン422に対向するアウタージャケット404にはピン422を出し入れできる開口部404gが設けられている。開口部404gに露出するインナーコラム403の外周面には、軸方向に所定範囲にわたって直線状のピン溝403bが形成されている。ピン溝403bはインナーコラム403をアウタージャケット404に対してテレスコピック調整を行う範囲の軸方向長さを有しており、ピン422が嵌合した際に、インナーコラム403のテレスコピック位置を調整する際のストッパーの機能を有している。
【0071】
本実施形態をチルト位置調節可能なものとするために、一対のブラケット408の後方側板408b,408bには、各々円弧形状のチルト溝408d,408dが形成されており、後方側板408b,408bの両外側から、固定部材414,415が、このチルト溝408d、408dを貫通して、テンション部402a,402aにそれぞれ固定されている。固定部材414,415は、それぞれボルト414a,415aとナット414b,415bとから成り、同軸配置であって、その軸中心はステアリングシャフト410の軸中心を通るように配設されている。チルト溝408dは、固定部材414,415のボルト414a,415aがアウタージャケット404の軸支点Pを中心として揺動可能な円弧形状の長孔である。
【0072】
図19に示すように、図中左側の固定部材414のボルト414aには、チルトレバー406と、可動カム405a及び固定カム405bからなるカム405とが隣接配置した状態で取り付けられている。可動カム405aはチルトレバー406に結合し、一体的に回動するようになっている。一方、固定カム405bは、左側の後方側板408bのチルト溝408dに係合し、回動不能となっている。又、図中右側の固定部材415のボルト415aには、固定ギヤ407a及び可動ギヤ407bからなるチルト位置保持ギヤ407が取り付けられている。固定ギヤ407aは、図中右側の後方側板408bに固定されており、可動ギヤ407bはボルト415aに固定されている。固定ギヤ407aと可動ギヤ407bの接触面には、インナーコラム403の軸方向に延びる複数の歯面が形成されており、よって固定ギヤ407aと可動ギヤ407bとが噛合すると、両者の上下方向(チルト方向)の相対移動が抑制されることとなる。
【0073】
図18に示すように、チルト位置保持ギヤ407の外側の可動ギヤ407bには、一方が図で上方の後方側板408bに当接し、他方が可動ギア407bの内面側の面に当接された弾性部材であるバネ409が配置されており、このバネ409により可動ギヤ407b及びボルト415aは、引き離される方向に付勢されている。つまりアウタージャケット404に対して、テンション部材402が図19の右方へ移動する方向に付勢されている。
【0074】
上記構成における動作について説明する。図19に示すように、操作レバー406を締め付け方向に操作することにより、可動カム405aと固定カム405bの凸部同士が係合して、可動カム405aが固定カム405bから離れる方向に移動する。これにより、固定部材414のボルト414aに対して回転自在に固定された可動カム405aと共に、ボルト414aが図中左方向へ移動し、テンション部材402が左方向へ移動するので、図示するように、左側のテンション部402aのピン(制限部材)422が、インナーコラム403のピン溝403bから外れる(制限位置から移動する)。それと共に、右側のテンション部402aに固定されたボルト415aも、チルト位置保持ギヤ407の可動ギヤ407bと共に左側へ移動するので、可動ギヤ407bが固定ギヤ407aに押圧される。
【0075】
この際、可動ギヤ407bが固定ギヤ407aに係合して、インナーコラム403はチルト方向にも位置固定される。この時、後方側板408b、408bのうち一方は、チルト位置保持ギヤ407の噛合い後、さらに可動ギヤ407bが固定ギヤ407aを押すことにより、他方は可動カム405aと固定405bとが離隔するために互いにインナーコラム403に向かって押されるので、フランジ部404e,404fを介してアウタージャケット404の半体部404c、404cを弾性変形させて、インナーコラム403を所定の荷重で圧接抱持する。
【0076】
一方、チルトレバー406を反締め付け方向に操作することにより、固定カム405bと可動カム405aの凸部同士がずれて、可動カム405aが固定カム405bに近づく方向に移動する。これにより、固定部材414のボルト414aが図19中右方向へ移動し、テンション部材402が右方向へ移動するので、左側のテンション部402aのピン422がインナーコラム403のピン溝403bに嵌合する。この時のテンション部材402の右方向への移動は、バネ409の付勢力により支援されて、テンション部材102はアウタージャケット404の右側面から確実に離れることになる。
【0077】
このため、アウタージャケット404の半体部404c、404cは後方側板408b、408bからの締め付けから解放されて、インナーコラム403aは軸方向に摺動可能になるので、インナーコラム403の手動による任意の軸方向の長さ調整、即ちテレスコピック調整を行うことができる。この時、テンション部402aのピン422がインナーコラム403のピン溝403bに嵌合するようになる(制限位置へと移動する)ので、インナーコラム403はアウタージャケット404に対して移動可能な範囲が規制される。こうして、ピン422はテレスコ調整ストッパーとしての機能を果たすことになる。
【0078】
同時に、図19で右側のテンション部402aが右側に移動するのに伴って、ボルト415aに固定されたチルト位置保持ギヤ407の可動ギヤ407bも固定ギヤ407aとの噛み合いから離脱する。バネ409によりこの離脱は確実なものとされる。こうして、インナーコラム403はブラケット408に対する固定状態から開放される、即ちインナーコラム403のブラケット408に対するチルト位置保持力は無くなる。したがって、この状態で、ボルトをブラケット408のチルト溝408dの範囲で、支点P(図18参照)を中心として回動させることにより、任意にチルト調整を行うことができる。
【0079】
ところで、乗員の2次衝突時に、インナーコラム403が軸方向に力を受け、その力が所定以上に達すると、アウタージャケット404とインナーコラム403との間の摩擦力にうち勝って、インナーコラム403のコラプスが開始され、その際に衝撃力を吸収する。本実施の形態によれば、かかる場合、テンション部402aのピン422がインナーコラム403のピン溝403bから離脱(半径方向外方へ移動)しているので、コラプスを抑制することがない。
【0080】
以上、実施の形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、その趣旨を損ねない範囲で適宜変更、改良可能であることはもちろんである。
【0081】
【発明の効果】
本発明のステアリング装置によれば、制限部材が、インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するので、前記インナーコラムのテレスコストッパとして機能し、更に前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避するので、二次衝突時におけるコラプス機能を阻害することがなく、それによりコラプスストローク長を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1による二次衝突時のステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。
【図2】比較例2による二次衝突時のステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。
【図3】本発明による二次衝突時のステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の分解図である。
【図5】図4に示したステアリング装置を組み付けた状態でV−V線で切断して矢印方向に見た図である。
【図6】図4に示したステアリング装置を矢印VI方向に見た図である。である。
【図7】本実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置を組み付けた状態で図1の矢印VII方向に見た図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の図6と同様な図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。
【図10】図9の構成における矢印Xの部分を拡大して示す図である。
【図11】図10の構成をXI−XI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図12】図10の構成をXII−XII線で切断して矢印方向に見た図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における図10と同様な図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。
【図15】図14の構成における矢印XVの部分を拡大して示す図である。
【図16】図15の構成をXVI−XVI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図17】図16の構成をXVII−XVII線で切断して矢印方向に見た図である。
【図18】本発明の第6の実施の形態を示すステアリング装置の上面図である。
【図19】図18の構成をXIX−XIX線で切断して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
11、111,211,311、403 インナーコラム
12、112、212,312、408 取り付けブラケット
13、402 テンション部材
16,17、117、317 固定部材
20、120,220,320 操作レバー
21、121,221,321、404 アウタージャケット
S ステアリングシャフト
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次衝突時に縮むことで衝撃を吸収する衝撃吸収式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両が他の自動車や構造物に衝突した場合、運転者が慣性でステアリングホイールに衝突することがある。これを二次衝突と呼ぶ。二次衝突時における運転者の受傷を防止するべく、シートベルトやエアバッグ等とともに、衝撃吸収式ステアリング装置が広く採用されている。衝撃吸収式ステアリング装置に採用される衝撃吸収機構には種々の形式が存在するが、運転者が二次衝突した際にステアリングコラムがステアリングシャフトとともにコラプス(短縮)し、その際に衝突エネルギを吸収する二重管式のものが一般的である。
【0003】
この衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、例えば、車体側ブラケットに保持されたアウタージャケットと、アウタージャケットに摺動自在に嵌合したインナーコラムと、アウタージャケットとインナーコラムとの間に介装された衝撃エネルギ吸収手段とを備えており、所定値以上の軸方向荷重が作用したときにインナーコラムがアウタージャケット内に進入し、その際に衝撃エネルギ吸収手段により衝撃エネルギが吸収されるようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、車両のステアリング装置は、種々の運転者の使用(操舵)を想定し、個人の体格や運転姿勢等に対応してステアリングホイールの位置を調整できるようになっていることが望ましいといえる。この様な要望に応えるべく、乗用車に限らず貨物車等においても、ステアリングホイールを任意の位置に設定できるチルト機構やテレスコピック機構を備えたステアリング装置を採用することが多い(特許文献2参照)。
【特許文献1】
特開2001−130421号公報
【特許文献2】
特開2002−166835号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の衝撃吸収式ステアリング装置では、チルト機構やテレスコピック機構等が併設された場合、装置の大型化を図ることなく、いかにして衝撃吸収エネルギーを吸収するためのコラプスストロークを確保するかが問題となる。例えば、アウタージャケット内にインナーコラムを嵌装するタイプのテレスコピック機構を備えたものでは、コラプス機構とテレスコピック機構とが共に、インナーコラムのアウタージャケットに対する進退動により動作を行うようになっているため、車載の関係から装置を大きくできない場合には、テレスコピックストロークとコラプスストロークとがトレードオフの関係になり、十分なコラプスストロークを確保すると、十分なテレスコピックストロークを確保できなくなる恐れがある。
【0006】
これに対し、テレスコ作動範囲を制限するテレスコストッパのリングを、任意の荷重で離脱可能且つ衝撃吸収可能な構造とし、テレスコストロークを使い切った後はコラプスストローク領域として利用するようにし、このコラプスストローク領域において適切な衝撃吸収を行えるよう、リングの形状、リングの数量、リングが接しているインナーコラムの拡径等を定めたステアリング装置も提案されている。かかるステアリング装置は、テレスコストローク+コラプスストロークが限られている場合、ストロークエンドまでに二次衝突の衝撃吸収を完了させるという車両全体の安全思想に基づくものである。しかしながら、かかる構成であると、テレスコストッパとしてのリングを離脱させるための力が、スムーズなコラプスの障害となるといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、テレスコピック機構を備えているにもかかわらず、適切なコラプスストロークを確保できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明のステアリング装置は、
ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを軸線方向変位調整可能に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナーコラムと、
車体に対して、前記インナーコラムを、その軸線方向における変位調整可能状態と変位調整不能状態とのいずれかに設定する設定手段と、
前記インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するが、前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避する制限部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明のステアリング装置は、
ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを軸線方向変位調整可能に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナーコラムと、
車体に取り付けられ、前記ステアリングシャフトの軸線に対してそれぞれ対向する位置に配置された一対のブラケット部と、
前記一対のブラケット部の間に延設されたテンション部材と、
前記一対のブラケット部の外部から前記テンション部材を固定する2つの固定部材と、
前記テンション部材と前記固定部材との間に配設され、操作レバーの動作に連動して前記ブラケット部と前記固定部材との間に相対変位を付与する付与部材と、
前記テンション部材と前記ブラケット部と前記固定部材との連結によって車体に保持され、少なくとも前記一対のブラケット部間において、ブラケット部の相対変位によって外周が前記一対の両ブラケット部と接触する押圧部を持ち、かつ前記インナーコラムの外周を包持する内周面を持つアウタージャケットとを有し、
前記付与部材により付与された変位により、前記一対のブラケット部が接近し、それにより前記アウタージャケットの押圧部を介して前記インナーコラムに対して押圧力が付与され、且つ前記インナーコラムが前記アウタージャケットを介して前記ブラケット部に対して、その軸方向位置を保持されるようになっており、
更に、前記インナーコラムが軸線方向に変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するが、前記インナーコラムが軸線方向に変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避する制限部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
【作用】
第1及び第2の本発明のステアリング装置によれば、前記制限部材が、前記インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するので、前記インナーコラムのテレスコストッパとして機能し、更に前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避するので、二次衝突時におけるコラプス機能を阻害することがなく、それによりコラプスストローク長を確保できる。尚、「軸線方向変位調整可能に支持する」とは、いわゆるテレスコ調整可能に支持することをいう。
【0011】
図面を参照して、本発明の効果について説明する。図1〜3は、二次衝突時におけるステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。いずれの図においても、二次衝突時以降において、インナーコラムが移動を開始するまで、各部がたわむなどするためリニアに衝撃吸収荷重が立ち上がり、インナーコラムの静摩擦力を超えた時点(S1)以降は、衝撃吸収機構が所定の動摩擦力により衝撃を吸収し、最終的にはストロークエンド(S3)で荷重が増大することとなる。
【0012】
図1においては、インナーコラムがコラプス中に、例えばリング状のテレスコストッパに衝接し、更にテレスコストッパが抵抗になってコラプスした比較例1が示されている。かかる場合、テレスコストッパに衝接した時点(S2)から、ハッチングで示すように荷重が増大(ハッチング領域の面積がテレスコストッパの存在により増大した仕事量すなわち運転者がステアリングホイールから受ける負荷増加分)するため、運転者の負担は大きいものとなる。
【0013】
図2においては、インナーコラムがコラプス中に、せん断可能なピン等で固定されたテレスコストッパに衝接し、衝接によりピンがせん断した後はテレスコストッパが抵抗にならずにコラプスした比較例2が示されている。かかる場合、テレスコストッパに衝接した時点(S2)で増大する負荷(ハッチングで示す領域)自体は、図1に示す比較例1よりも小さいが、それでも負荷がパルス状に生じるため、運転者の負担が残る。
【0014】
図3に示す例は、本発明に対応するものであり、インナーコラムがコラプス中にテレスコストッパに衝接することがないため、一定の荷重でコラプスが実行されるようになっており、運転者の負担は最も少ないといえる。
【0015】
更に、前記インナーコラムは、車両の二次衝突時に、前記制限部材により制限される位置を超えて変位可能となると、小型化を図りつつ、コラプスストロークを長く確保できるので好ましい。すなわち、かかるステアリング装置は、インナーコラムが二次衝突時に軸線方向に移動するコラプス可能な構成を有するものである。
【0016】
更に、前記制限部材は、前記付与部材の動作に応じて、前記制限位置へと移動し、又は制限位置から退避すると、運転者の操作が軽減され好ましい。
【0017】
更に、前記制限部材と他の部材(例えばインナーコラム或いはストッパ等)とが衝接したときの衝撃を吸収する緩衝部材を設けると、不快な異音を抑制できるので好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置を図面を参照しつつ説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の分解図であるが、ステアリングシャフトは省略している。図5は、図4に示したステアリング装置を組み付けた状態でV−V線で切断して矢印方向に見た図である。図6は、図4に示したステアリング装置を組み付けた状態で側方から見た図である。
【0019】
図4で、取り付けブラケット12は、不図示の車体に対してボルトにより取り付けるための一対の車体取り付け孔12cを有し、且つ互いに平行に延在すると共に鉛直上下方向に延在する板状のブラケット部12a、12aを有している。各ブラケット部12aの板厚は同一であり、形状は垂直線に対して線対称となっている。各ブラケット部12aには、アウタージャケット21の枢動点を中心とした円弧の一部となるチルト溝12bが形成されている。
【0020】
ブラケット部12a、12aの間には、テンション部材13が配置されている。テンション部材13は、下部が開放してなる断面がコ字状の本体13aと、本体13aの両側壁下端間に架橋され、且つ内挿されたボルト14で本体13aに固定されるチューブ13bとからなり、アウタージャケット21の端部外周を挟むように取り付けられている。即ち、テンション部材13は、本体13aとチューブ13bとに分割可能であり実車搭載時における組付性に優れ、一方、ボルト14により固定された状態では、周方向に連続した環状となり剛性が高くなる。このような構成であれば部品点数が少なくて済み、又、ボルト14は標準品を用いることができ、更に、チューブ13bは、円管を所定長さに切断するだけで製造できるため、より低コスト化が図れる。尚、チューブ13bは、板材を丸めて溶接したものでも良い。
【0021】
アウタージャケット21は、車体に取り付けられた枢動点P(図6)によって車体に対して枢動可能に取り付けられた円筒部21aと、円筒部21aの端部外周において、軸線方向に隔置配置された一対の板状のフランジ部21c、21dとを有している。円筒部21aは、インナーコラム11を内包保持しており、不図示の枢動部により、不図示の車体に対して(図6で上下方向に)枢動可能に支持されている。押圧部としてのフランジ部21c、21dの間には、テンション部材13が配置される。尚、円筒部21aの最下部には、図1に示すように、その端部から軸線方向に延在するようにして、スリット21e(実際より誇張されている)が形成されている。これに代えて、或いはこれに加えて、円筒部21aの最上部にスリットを形成しても良い。
【0022】
図6に示すように、アウタージャケット21に内包される円筒状のインナーコラム11の中には、一端にステアリングホイール(不図示)を取り付けた第1ステアリングシャフトSが挿通され、軸受30を介してインナーコラム11に対して回転自在に支承されている。又、アウタージャケット21の中には、第1ステアリングシャフトSに対し、一端をセレーション結合され他端は不図示の操舵装置に連結された第2ステアリングシャフトS’が挿通され、軸受31を介してアウタージャケット21に対して回転自在に支承されている。第1ステアリングシャフトSと第2ステアリングシャフトS’とで、ステアリングシャフトを構成する。
【0023】
各ブラケット部12aには、アウタージャケット21の枢動点P(図6)を中心とした円弧の一部となるチルト溝12bが形成されている。図5から理解されるように、チルト溝12bは、取り付けブラケット12の車体取り付け孔12cに対して、インナーコラム11の軸線方向にずれている。チルト溝12bを貫通するようにして、図5の左側からは固定部材16が挿通され、図5の右側からは固定部材17が挿通されている。
【0024】
固定部材16は、図5で左側のチルト溝12bの幅よりも大径で工具係合孔を有する円盤状の頭部16aと、チルト溝12bに係合して案内される円筒状のチルト案内部16bと、テンション部材13の本体13aに形成されたネジ孔13cに螺合する雄ネジ部16cとを有している。
【0025】
これに対し、固定部材17は、工具を係合させる六角頭部17aと、第1ねじ部17bと、円筒状の軸部17cと、小フランジ17dと、第2ねじ部17eとを有している。第2ねじ部17eは、テンション部材13の本体13aに形成されたネジ孔13dに螺合することで、テンション部材13に取り付けられており、このとき小フランジ17dが本体13aの表面に当接するようになっている。軸部17cの周囲には、チルト溝12bの幅に係合するような略小判型断面のチルト案内部18a及びそれより大径の固定カム部18bを備えた固定カム18と、固定カム部18bに係合するカム面を有する可動カム部19と、可動カム部19と一体的に回動する操作レバー20と、スラストベアリング(転がり軸受でも滑り軸受でも良い)22が配置され、第1ねじ部17bに螺合するナット23により取り付けられている。尚、固定カム18と,可動カム19とが請求項の付与部材を構成し、固定部材17とナット23、及び固定部材16が請求項の固定部材を構成する。
【0026】
図6において、操作レバー20には、リンク部材33の一端が取り付けられ、リンク部材33の他端は、アウタージャケット21の円筒部21aの下面に枢動自在に取り付けられた制限部材34の下端に取り付けられている。制限部材34の上端に形成された制限部34aは、円筒部21aの下部に形成された開口21gを介して、円筒部21a内に侵入可能となっている。尚、本実施の形態の変形例としては、インナーコラム11に長孔を形成し、制限部材34が制限位置にある場合には、かかる長孔内に突出するような構成とすることもできる。
【0027】
更に、インナーコラム11の上部には、長孔11fが形成されており、図6に示すように組み付けられたとき、かかる長孔11f内に、アウタージャケット21の上部に螺合されたボルト35の先端が突出するように取り付けられている。
【0028】
次に、本実施の形態のステアリング装置の調整動作について説明する。操作者が操作レバー20を締付方向(図6の点線で示す位置)に回動させると、図5において、固定部材17における固定カム18の固定カム部18aの凸部と、可動カム19の凸部同士が係合しあい、互いに離隔する方向に力を発生する。このとき、固定カム18により押圧された図5で右側のブラケット部12aは、左方へ変位する。一方、可動カム19により右方に押圧された固定部材17は、テンション部材13を右方へと変位させる。それに伴って、固定部材16も右方へ移動するので、アウタージャケット21のフランジ部21c、21dの側部を、ブラケット部12aのチルト溝12bの両側に押し当て、適切な押圧力を付与するため、ブラケット部12aに対してアウタージャケット21は固定され、それによりインナーコラム11のチルト方向の変位も阻止されることとなる。
【0029】
一方、操作レバー20の締め付け方向への回動に基づき、固定カム18により押圧された図5で右側のブラケット部12aは、左方へ変位することで、フランジ部21c、21dの右半部に当接して、これらを同様に左方に変位させる。更に、テンション部材13に付与された力は、反対側の固定部材16に伝達され、それにより押圧された図5で左側のブラケット部12aは、右方へ変位する。左側のブラケット部12aが右方へ変位すると、フランジ部21c、21dの左半部に当接して、これらを同様に右方に変位させ、アウタージャケット21の外周面に押圧力を付与する。アウタージャケット21が両側から押圧されることで、スリット21eが閉じるように変形するため、アウタージャケット21の内径は縮径し、インナーコラム11を適切な力で保持することができる(軸線方向変位調整不能状態となる)。
【0030】
かかる状態では、図6の点線状態となり、リンク部材33により引っ張られた制限部材34が傾動し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21g外へと引き出され(すなわち制限位置より退避し)、インナーコラム11に当接しない位置(アウタジャケット21の内周面より半径方向外方)に移動する。従って、車両の衝突時に、運転者が不図示のステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合でも、インナーコラム11は、制限部材34に衝接することなく移動する(コラプス)することが可能となるため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。尚、インナーコラム11がアウタージャケット21との間の摩擦力に抗して軸線方向に変位したときの抵抗力に基づき、二次衝突時の衝撃吸収機能を発揮するようになっている(以下の実施の形態において同様)。
【0031】
更に、本実施の形態によれば、2つのブラケット部12aの形状・板厚が略等しく、すなわち曲げ弾性係数(従って剛性)が略等しくなっていることから、操作レバー20の締め付け操作によって、ブラケット部12aが互いに近接する方向に力を受け、略等しい量で変位するため、インナーコラム11は、フランジ部21c、21dにより、図4で左右両側から押圧力を受けて、ブラケット部12a間距離を2分する位置にその中心が一致するように固定され、それによりテレスコ方向の変位を阻止しながらも、ステアリングシャフトSの心ズレを抑制できることとなる。
【0032】
図7は、本実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置を組み付けた状態で図4の矢印VII方向に見た図である。本実施の形態においては、固定部材16,17の中心が、インナーコラム11の軸線と離隔している。より具体的には、固定部材16,17により与えられるインナーコラム11の保持に必要な押圧力をF1とした場合、固定部材16,17の中心を結ぶ線Rが、インナーコラム11の軸線Xより、図7で下方に距離Δだけシフトした本実施の形態における、固定部材16,17により与えられるインナーコラム11の保持に必要な押圧力F2は、
F2=(L1/(L1+Δ))・F1
{但しL1は、点P3からインナーコラム11の軸線Xまでの距離}
で表せる。ここで、L1<L1+Δであるから、本実施の形態によれば、てこの原理により、より小さな押圧力F2でインナーコラム11を保持することが可能となる。
【0033】
尚、スリット21eを上部のみに設けても良く、かかる場合には線Rが線Qの上方に位置するように、固定部材16,17を配置するのがよい。又、本実施の形態にこだわらず、固定部材16,17の中心が、インナーコラム11の軸線と交差するようにしても良い。
【0034】
これに対し、操作者が操作レバー20を緩め方向へ(図6の実線で示す位置に)回動すると、図4において、固定カム18と可動カム19の凸部同士が係脱し、両者は近接可能となるため、両ブラケット部12aは互いに離隔し、それによりアウタージャケット21は両ブラケット部12aに対してフリーな状態となるため、固定部材16,17のチルト案内部16b、17bをブラケット部12aのチルト溝12bに沿って案内されつつ変位させることができ、更にアウタージャケット21の締め付け力低下によりインナーコラム11の軸線方向変位が可能となる(軸線方向変位調整可能状態となる)ため、チルト方向及びテレスコ方向の調整を任意に行えるようになっている。
【0035】
かかる状態では、図6の実線のように、リンク部材33により押された制限部材34が直立し、その上端の制限部34がアウタージャケット21の開口21gから内方(即ちアウタジャケット21の内周面より半径方向内方)へと突出する(すなわち制限位置へと移動する)ので、それによりインナーコラム11が当接可能となる。従って、テレスコ調整時にインナーコラム11をアウタージャケット21側へと押しつけたとき、その端部が制限部34aに当接することで、それ以上の縮小方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。尚、テレスコ調整時にインナーコラム11をアウタージャケット21から離隔する方向に引っ張ったときには、インナーコラム11の長孔11fの端部が、アウタージャケット21に螺合されたボルト35に当接するので、それ以上の伸長方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能することとなる。又、ボルト35と長孔11fとの係合により、アウタージャケット21に対するインナーコラム11の回り止めも行うようになっている。
【0036】
更に、本実施の形態によれば、テンション部材13をアウタージャケット21及びインナーコラム11の径方向外側に設けたので、コンパクトで組付性の良い構成となっている。
【0037】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の図6と同様な図である。本実施の形態は、図4〜7に示す実施の形態に対して、制限部材の構成のみが異なるので、それ以外の共通する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
より具体的に異なる点について説明する。制限部材34の制限部34aのうち少なくともインナーコラム11と衝接する箇所の表面に、ゴム材もしくは樹脂材からなる緩衝材34bが被覆されている。従って、テレスコ調整時に、インナーコラム11がアウタージャケット21側へと勢いよく押しつけられ、その端部が制限部34aに衝接したとしても、緩衝材34bにより衝接音もしくは振動が緩和され、操作者に不快感を与えることが抑制される。又、アウタージャケット21の開口21g内にピン36を植設し、制限位置へと移動した制限部材34に当接させてストッパとして機能させるような場合において、ピン36に制限部材34が衝接したときでも、緩衝材34bにより衝接音もしくは振動が緩和され、同様に操作者に不快感を与えることが抑制される。
【0039】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。不図示の車体に、ブラケット112を介して取り付けられたアウタージャケット121内に、軸線方向に変位自在なインナーコラム111が配置され、更にインナーコラム111内にステアリングシャフトSが配置されている。ステアリングシャフトSの図9で右端には、ステアリングホイールHが取り付けられ、ステアリングシャフトSの図9で左端は、自在継手Uを介して中間シャフトMに連結され、中間シャフトMは、自在継手Uを介して操舵装置の入力シャフトIに連結されている。尚、アウタージャケット121内には、電動モータの補助動力をステアリングシャフトへ出力することで、操舵力をアシストするパワーユニットが内蔵されている。
【0040】
図10は、図9の構成における矢印Xの部分を拡大して示す図である。図11は、図10の構成をXI−XI線で切断して矢印方向に見た図である。図12は、図10の構成をXII−XII線で切断して矢印方向に見た図であるが、ステアリングシャフトは省略している。図11で、ブラケット112は、不図示の車体に対してボルトにより取り付けるための一対の車体取り付け孔(不図示)を有する取り付け部112c、112cと、それらから各々平行に且つ鉛直上下方向に延在する板状のブラケット部112a、112aとを一体的に形成してなる。ステアリングシャフトSの軸線を挟んで設けられた各ブラケット部112aの板厚は同一であり、形状は垂直線に対して線対称となっている。各ブラケット部112aには、アウタージャケット121の枢動点を中心とした円弧の一部となるチルト溝112bが形成されている。
【0041】
ブラケット部112a、112aの間には、アウタージャケット121が配置されている。アウタージャケット121は、下部に軸線方向に延在するスリット121eを形成し、且つスリット121eを横切るようにして貫通孔121fを形成している。ブラケット部112aのチルト溝112bに対し、図11の右側から挿通された固定部材117は、図11の右側のブラケット部112a及びアウタージャケット121の貫通孔121fを貫通し、反対側のチルト溝112bより突出し、ここに配置された締め付けナット140のねじ孔140aに螺合している。締め付けナット140の図11で左側には、締め付けナット140とテーパー嵌合した操作レバー120が取り付けられ、ねじ孔140aに螺合したボルト116により固定されている。尚、固定部材117,アウタージャケット121,締め付けナット114により設定手段を構成する。
【0042】
締め付けナット140の外周には、(はすば)歯車141が嵌合し一体的に回転するようになっている。歯車141は、アウタージャケット121に配置された一対の転がり軸受(滑り軸受でも良い)142、142により回転自在に支持された従動軸143のねじ部143aに螺合しており、歯車141の回転に応じて従動軸143は回転可能となっている。
【0043】
図12に示すように、インナーコラム111の外周を上下に挟むようにして、略環状のテレスコストッパ134が配置されている。制限部材であるテレスコストッパ134は、図12で右側を互いにピン結合された上半部134aと下半部134bとからなる。上半部134aと下半部134bの図12で左端は、コイルバネ135により連結され、閉じる方向に付勢されている。上半部134aと下半部134bとの間に、従動軸143のカム143bが配置されている。従動軸143のカム143bは、図12に示すように断面が楕円形となっている。
【0044】
次に、本実施の形態のステアリング装置の調整動作について説明する。操作者が操作レバー120を締付方向に回動させると、締め付けナット140が回転し、固定部材117がよりねじ込まれるので、ブラケット部112aを介してアウタージャケット121が、スリット121eの閉じる方向に付勢される。それにより、その内径が縮径してインナーコラム111を挟持するため、インナーコラム111のチルト方向の移動及びテレスコ方向への移動が阻止される(軸線方向変位調整不能状態となる)こととなる。
【0045】
かかる状態では、締め付けナット140の回動に応じて回転する従動軸143のカム143bは、図12(b)に示すように、その断面の長径がテレスコストッパ134の上半部134aと下半部134bとに接する位置へと移動する。それにより上半部134aと下半部134bは、コイルバネの付勢力に抗して離隔するように枢動する(制限位置から移動する)ので、テレスコストッパ134は、インナーコラム111の外周面に対してわずかな摩擦力だけでフリーな状態に維持される。車両の衝突時に、運転者が不図示のステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合には、インナーコラム111がアウタージャケット121に向かって滑動するが、テレスコストッパ134は、この動作を阻害することがないため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。
【0046】
一方、操作者が操作レバー120を緩め方向に回動させると、締め付けナット140が逆に回転し、固定部材117の頭部と締め付けナット140間の距離が広がるので、アウタージャケット121が、スリット121eの開く方向に変形するため、その内径が拡径し、インナーコラム111のテレスコ方向の移動を許容する(軸線方向変位調整可能状態となる)。又、ブラケット部112aとアウタージャケット121間の摩擦力も低下するため、インナーコラム111のチルト溝112bに沿ったチルト方向の移動も許容する。
【0047】
かかる状態では、締め付けナット140の回動に応じて回転する従動軸143のカム143bは、図12(a)に示すように、その断面の短径がテレスコストッパ134の上半部134aと下半部134bとに接する位置へと移動する。それにより上半部134aと下半部134bは、コイルバネの付勢力により近接するように枢動する(制限位置へ移動する)ので、テレスコストッパ134は、インナーコラム111の外周面に対して、強い摩擦力でしっかり固定される。
【0048】
テレスコ調整時にインナーコラム111をアウタージャケット121側へと押しつけたとき、従動軸143のカム143bに沿って、上半部134aと下半部134bとが滑動するので回り止めの機能も有し、且つテレスコストッパ134がアウタージャケット121の端部に当接したときに、それ以上の縮長方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。尚、従動軸143のカム134aの先端を曲げておけば、テレスコストッパ134が伸長方向へのテレスコストッパとして機能する。
【0049】
本実施の形態の変形例としては、インナーコラム111の外周面と、テレスコストッパ134の内周面との間に、緩衝部材として薄いゴム材又は樹脂材を配置することも考えられる。かかる緩衝部材により、テレスコストッパ134の動作音(衝接音)を緩和する効果が得られる。又、上述した実施の形態では、締め付けナット140の回転を、歯車141を介して従動軸143に伝達しているが、これに限らず締め付けナット140に取り付けたワイヤを巻き上げる或いは緩めることで、テレスコストッパ143の上半部143aと下半部143bとを閉じる或いは開く動作を行うようにしても良い。
【0050】
図13は、本発明の第4の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における図10と同様な図である。本実施の形態においては、ブラケット212にセンサ251が配置され、アウタージャケット221の上部には、制限部材であるストッパピン234aを進退自在な電動アクチュエータ234が取り付けられている。センサ251と電動アクチュエータ234は、不図示の制御装置に接続されている。チルト機能及びテレスコ機能を実現する構成は、図10、11に示す実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
操作者が操作レバー220を締め付け方向(図13で実線の位置)に回動させると、センサ251が、操作レバー220の突起220gの離隔をセンシングするので、不図示の制御装置は、ストッパピン234aを引っ込める(制限位置から退避する)ように電動アクチュエータ234を駆動する。車両の衝突時に、運転者が不図示のステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合には、インナーコラム211がアウタージャケット221の内周面に沿って滑動するが、ストッパピン234aが引き込まれているので、コラプス動作を阻害することがないため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。
【0052】
一方、操作者が操作レバー220を緩め方向(図13で点線の位置)に回動させると、センサ251が、操作レバー220の突起220gの近接をセンシングするので、不図示の制御装置は、ストッパピン234aを突き出す(制限位置へ移動する)ように電動アクチュエータ234を駆動する。ストッパピン234aは、テレスコ調整されるインナーコラム211の端部に当接し、それ以上の縮小方向の変位を阻止するテレスコストッパとして機能する。尚、センサ251としては、近接スイッチ、光学式スイッチ、磁気抵抗素子を用いた非接触式のものでも良いが、電気切片を用いた接触式のセンサであれば安価であるので好ましい。又、電動アクチュエータ234としては、ストッパピン234aの駆動源としてモータ、ピエゾ素子などを用いることも考えられるが、ソレノイドを駆動源とすると安価である。更に、電動アクチュエータ234は、インナーコラム211側に設け、テレスコ調整時に相対移動するアウタージャケット221に当接させても良い。尚、インナーコラム211の外周面に長孔を形成して、かかる長孔にストッパピン234を繰り出し可能な構成とすれば、ストッパピン234aをテレスコ伸長側及び縮小側の制限部材として用いることができる。
【0053】
更に、別な変形例として、車両に加速度センサを設け、車両の衝突(もしくは二次衝突)を検出した段階で、不図示の制御装置が、ストッパピン234aを引っ込める(制限位置から退避する)ように電動アクチュエータ234を駆動してもよい。
【0054】
図14は、本発明の第5の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。図15は、図14の構成における矢印XVの部分を拡大して示す図である。図16は、図15の構成をXVI−XVI線で切断して矢印方向に見た図である。図17は、図16の構成をXVII−XVII線で切断して矢印方向に見た図である。本実施の形態は、図9〜12の実施の形態に対してテレスコストッパの構成が主として異なるため、共通する構成については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0055】
図16で、ブラケット112は、不図示の車体に対してボルトにより取り付けるための一対の車体取り付け孔(不図示)を有する取り付け部312cと、それから各々平行に且つ鉛直上下方向に延在する板状のブラケット部312a、312aとを一体的に形成してなる。ステアリングシャフトSの軸線を挟んで設けられた各ブラケット部312aの板厚は同一であり、形状は垂直線に対して線対称となっている。各ブラケット部312aには、アウタージャケット321の枢動点を中心とした円弧の一部となるチルト溝312bが形成されている。
【0056】
ブラケット部312a、312aの間には、アウタージャケット321が配置されている。アウタージャケット321は、上部に軸線方向に延在するスリット321eを形成し、且つスリット121eを横切るようにして貫通孔321fを形成している。アウタージャケット321に内包されたインナーコラム311は、図15に示すように、上部に第1突起311a及び第2突起311bを形成している。第1突起311a及び第2突起311bは、アウタージャケット321のスリット321eに沿って、インナーコラム311と共に軸線方向に移動自在に配置されている。
【0057】
ブラケット部312aのチルト溝312bに対し、図16の左側から挿通されたボルト状の固定部材317は、アウタージャケット321の貫通孔321fを貫通し、反対側のチルト溝312bより突出し、ここでナット340に螺合している。固定部材317は、中央において半円筒部317h(断面を図17に図示)を有している。固定部材317の頭部にテーパー嵌合した操作レバー320が、ボルト316により固定されている。尚、固定部材317,アウタージャケット321,ナット340により設定手段を構成する。
【0058】
次に、本実施の形態のステアリング装置の調整動作について説明する。操作者が操作レバー320を締付方向(図17(a)の位置)に回動させると、固定部材317がナット340に、よりねじ込まれるので、ブラケット部312aを介してアウタージャケット321が、スリット321eの閉じる方向に付勢される。それにより、その内径が縮径してインナーコラム311を挟持するため、インナーコラム311のチルト方向の移動及びテレスコ方向への移動が阻止される(軸線方向変位調整不能状態となる)こととなる。
【0059】
かかる状態では、固定部材317の半円筒部317hは、その平面を図17で下方に向ける(制限位置から退避する)ため、インナーコラム311の第1突起311a及び第2突起311bは、その下方を通過自在となる。車両の衝突時に、運転者がステアリングホイールHに衝突する二次衝突が生じた場合には、インナーコラム311がアウタージャケット321に向かって滑動するが、半円頭部317hが図17(a)に示す位置となっているので、コラプス動作を阻害することがないため、図3に示すように運転者の受ける負担を減少させることができる。
【0060】
一方、操作者が操作レバー320を緩め方向に回動させると、固定部材317が逆に回転し、固定部材317とナット340間の距離が広がるので、アウタージャケット321が、スリット321eの開く方向に変形可能となるため、その内径が拡径し、インナーコラム311のテレスコ方向の移動を許容する(軸線方向変位調整可能状態となる)。又、ブラケット部312aとアウタージャケット321間の摩擦力も低下するため、インナーコラム311のチルト溝312bに沿ったチルト方向の移動も許容する。
【0061】
かかる状態では、図17(b)に示すように、半円頭部317hは平面を傾斜させる(制限位置へ移動する)ため、第1突起311a及び第2突起311bは、半円頭部317hにより当接可能となる。従って、第1突起311aは伸長側におけるテレスコストッパとして機能し、第2突起311bは縮長側におけるテレスコストッパとして機能する。尚、半円頭部317h又は突起311a、311bに、緩衝部材としてのゴム材又は樹脂材を被覆しても良い。
【0062】
図18は、本発明の第6の実施の形態を示すステアリング装置の上面図であり図19は、図18の構成をXIX−XIX線で切断して矢印方向に見た図である。
【0063】
図18及び図19において、本実施の形態のステアリング装置は、一端にステアリングホイール(図示なし)を取付けたステアリングシャフト410を回転自在に支持するインナーコラム403と、図示しない車体に固設され該ステアリングコラムを囲うようにして設けられたブラケット408と、ブラケット408に対し軸方向に固定的に支持され、インナーコラム403を軸方向に摺動可能に把持しているアウタージャケット404と、インナーコラム403の一部に係接するコラム係接位置と、インナーコラム403を釈放する釈放位置との間を移動可能にブラケット408に支持された係止機構と、該係止機構をコラム係接位置とコラム釈放位置との間に選択的に動かす操作機構と、前記係止機構とコラムとの係接する部分に設けられ、係止機構がコラム係接位置にある時、コラムの軸方向移動を禁止し、2次衝突に際してコラプスして衝撃エネルギーを吸収しつつ、当該コラムの移動を許す係止部材と、等から構成されている。
【0064】
ブラケット408は、車体に取付けられる車体取付部408cと、車体取付部408cに一体であり、車体取付部408cから鉛直上下方向に延びる前方側板408aと、前方側板408aの後方に一体的に取付けられ、車両後方にかつ鉛直上下方向に延びる後方側板408bとから成る。
【0065】
一対のブラケット408は、各々厚みが同一の板材をL字状に折り曲げて成る部材で、左右対称となるように成形及び配置されている。
【0066】
アウタージャケット404はコラム軸方向に延びておりインナーコラム403を内嵌する筒状孔部404dを有し、前方端部下方部分で車体側ブラケット408の前方側板408aに軸方向には移動不能に支持されている。本実施形態では、アウタージャケット404はこの前端部P(図18参照)において、軸方向に直交する方向で軸支されており、この軸支により軸方向には移動不能であるが、チルト調整のための揺動は自在である。アウタージャケット404の後部は、上下2本のすり割り(スリット)404bが形成されて、軸方向に左右に等分割して、左右2つの半体部404c、404cを形成している。アウタージャケット404の後部半体部404c、404cのそれぞれは軸方向に直角方向に延びる2つのフランジ部404e,404fを前後に離隔して有している。
【0067】
これら二組のフランジ部404e,404fはそれぞれ後方側板408b、408bに挟持され アウタージャケット404は、インナーコラム403を内嵌した際に、すり割り404bを形成した半体部404c、404cが後方側板408b、408bに押圧されて、弾性的に変形することによりインナーコラム403をがたなく圧接把持することができる。
【0068】
係止機構は、アウタージャケット404の2つのフランジ部404e,404f間に存在しており、両ブラケット間においてアウタージャケット404を包囲しているテンション部材402と、このテンション部材402に一体でその両側から後方ブラケットの両外側に突出する固定部材414,415とから構成されている。テンション部材402はアウタージャケット4の両側面外側で上下に延在する2つのテンション部402a,402aと、各々のテンション部402a,402aをアウタージャケット404の上下で円筒形状のスペーサ402b,402bを介して結合させる上下2本のボルト402c,402cと、から構成されている。テンション部材402はこれらスペーサ402b、402bでアウタージャケット404を上下に支持している。
【0069】
テンション部材402を組み込む時は、一方のテンション部402aを貫通させた1本のボルト402cの先端部を他方のテンション部402aに対してゆるめて、他方のテンション部402aとスペーサ402bに隙間が空くようにしておき、この状態でアウタージャケット404を囲い込むように組み込んだ後、2本目のボルト402cを締め付けて各部材を固定する。
【0070】
他方のテンション部402a(図19中左側)のアウタージャケット404側の面において固定部材414,415の軸心位置を略中央とする部位には凹部が形成され、この凹部にピン422が埋め込まれ固定されている。このピン422に対向するアウタージャケット404にはピン422を出し入れできる開口部404gが設けられている。開口部404gに露出するインナーコラム403の外周面には、軸方向に所定範囲にわたって直線状のピン溝403bが形成されている。ピン溝403bはインナーコラム403をアウタージャケット404に対してテレスコピック調整を行う範囲の軸方向長さを有しており、ピン422が嵌合した際に、インナーコラム403のテレスコピック位置を調整する際のストッパーの機能を有している。
【0071】
本実施形態をチルト位置調節可能なものとするために、一対のブラケット408の後方側板408b,408bには、各々円弧形状のチルト溝408d,408dが形成されており、後方側板408b,408bの両外側から、固定部材414,415が、このチルト溝408d、408dを貫通して、テンション部402a,402aにそれぞれ固定されている。固定部材414,415は、それぞれボルト414a,415aとナット414b,415bとから成り、同軸配置であって、その軸中心はステアリングシャフト410の軸中心を通るように配設されている。チルト溝408dは、固定部材414,415のボルト414a,415aがアウタージャケット404の軸支点Pを中心として揺動可能な円弧形状の長孔である。
【0072】
図19に示すように、図中左側の固定部材414のボルト414aには、チルトレバー406と、可動カム405a及び固定カム405bからなるカム405とが隣接配置した状態で取り付けられている。可動カム405aはチルトレバー406に結合し、一体的に回動するようになっている。一方、固定カム405bは、左側の後方側板408bのチルト溝408dに係合し、回動不能となっている。又、図中右側の固定部材415のボルト415aには、固定ギヤ407a及び可動ギヤ407bからなるチルト位置保持ギヤ407が取り付けられている。固定ギヤ407aは、図中右側の後方側板408bに固定されており、可動ギヤ407bはボルト415aに固定されている。固定ギヤ407aと可動ギヤ407bの接触面には、インナーコラム403の軸方向に延びる複数の歯面が形成されており、よって固定ギヤ407aと可動ギヤ407bとが噛合すると、両者の上下方向(チルト方向)の相対移動が抑制されることとなる。
【0073】
図18に示すように、チルト位置保持ギヤ407の外側の可動ギヤ407bには、一方が図で上方の後方側板408bに当接し、他方が可動ギア407bの内面側の面に当接された弾性部材であるバネ409が配置されており、このバネ409により可動ギヤ407b及びボルト415aは、引き離される方向に付勢されている。つまりアウタージャケット404に対して、テンション部材402が図19の右方へ移動する方向に付勢されている。
【0074】
上記構成における動作について説明する。図19に示すように、操作レバー406を締め付け方向に操作することにより、可動カム405aと固定カム405bの凸部同士が係合して、可動カム405aが固定カム405bから離れる方向に移動する。これにより、固定部材414のボルト414aに対して回転自在に固定された可動カム405aと共に、ボルト414aが図中左方向へ移動し、テンション部材402が左方向へ移動するので、図示するように、左側のテンション部402aのピン(制限部材)422が、インナーコラム403のピン溝403bから外れる(制限位置から移動する)。それと共に、右側のテンション部402aに固定されたボルト415aも、チルト位置保持ギヤ407の可動ギヤ407bと共に左側へ移動するので、可動ギヤ407bが固定ギヤ407aに押圧される。
【0075】
この際、可動ギヤ407bが固定ギヤ407aに係合して、インナーコラム403はチルト方向にも位置固定される。この時、後方側板408b、408bのうち一方は、チルト位置保持ギヤ407の噛合い後、さらに可動ギヤ407bが固定ギヤ407aを押すことにより、他方は可動カム405aと固定405bとが離隔するために互いにインナーコラム403に向かって押されるので、フランジ部404e,404fを介してアウタージャケット404の半体部404c、404cを弾性変形させて、インナーコラム403を所定の荷重で圧接抱持する。
【0076】
一方、チルトレバー406を反締め付け方向に操作することにより、固定カム405bと可動カム405aの凸部同士がずれて、可動カム405aが固定カム405bに近づく方向に移動する。これにより、固定部材414のボルト414aが図19中右方向へ移動し、テンション部材402が右方向へ移動するので、左側のテンション部402aのピン422がインナーコラム403のピン溝403bに嵌合する。この時のテンション部材402の右方向への移動は、バネ409の付勢力により支援されて、テンション部材102はアウタージャケット404の右側面から確実に離れることになる。
【0077】
このため、アウタージャケット404の半体部404c、404cは後方側板408b、408bからの締め付けから解放されて、インナーコラム403aは軸方向に摺動可能になるので、インナーコラム403の手動による任意の軸方向の長さ調整、即ちテレスコピック調整を行うことができる。この時、テンション部402aのピン422がインナーコラム403のピン溝403bに嵌合するようになる(制限位置へと移動する)ので、インナーコラム403はアウタージャケット404に対して移動可能な範囲が規制される。こうして、ピン422はテレスコ調整ストッパーとしての機能を果たすことになる。
【0078】
同時に、図19で右側のテンション部402aが右側に移動するのに伴って、ボルト415aに固定されたチルト位置保持ギヤ407の可動ギヤ407bも固定ギヤ407aとの噛み合いから離脱する。バネ409によりこの離脱は確実なものとされる。こうして、インナーコラム403はブラケット408に対する固定状態から開放される、即ちインナーコラム403のブラケット408に対するチルト位置保持力は無くなる。したがって、この状態で、ボルトをブラケット408のチルト溝408dの範囲で、支点P(図18参照)を中心として回動させることにより、任意にチルト調整を行うことができる。
【0079】
ところで、乗員の2次衝突時に、インナーコラム403が軸方向に力を受け、その力が所定以上に達すると、アウタージャケット404とインナーコラム403との間の摩擦力にうち勝って、インナーコラム403のコラプスが開始され、その際に衝撃力を吸収する。本実施の形態によれば、かかる場合、テンション部402aのピン422がインナーコラム403のピン溝403bから離脱(半径方向外方へ移動)しているので、コラプスを抑制することがない。
【0080】
以上、実施の形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、その趣旨を損ねない範囲で適宜変更、改良可能であることはもちろんである。
【0081】
【発明の効果】
本発明のステアリング装置によれば、制限部材が、インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するので、前記インナーコラムのテレスコストッパとして機能し、更に前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避するので、二次衝突時におけるコラプス機能を阻害することがなく、それによりコラプスストローク長を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1による二次衝突時のステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。
【図2】比較例2による二次衝突時のステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。
【図3】本発明による二次衝突時のステアリング装置の衝撃吸収荷重特性線図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の分解図である。
【図5】図4に示したステアリング装置を組み付けた状態でV−V線で切断して矢印方向に見た図である。
【図6】図4に示したステアリング装置を矢印VI方向に見た図である。である。
【図7】本実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置を組み付けた状態で図1の矢印VII方向に見た図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置の図6と同様な図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。
【図10】図9の構成における矢印Xの部分を拡大して示す図である。
【図11】図10の構成をXI−XI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図12】図10の構成をXII−XII線で切断して矢印方向に見た図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における図10と同様な図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係るチルト・テレスコピック式のステアリング装置における全体の概略側面図である。
【図15】図14の構成における矢印XVの部分を拡大して示す図である。
【図16】図15の構成をXVI−XVI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図17】図16の構成をXVII−XVII線で切断して矢印方向に見た図である。
【図18】本発明の第6の実施の形態を示すステアリング装置の上面図である。
【図19】図18の構成をXIX−XIX線で切断して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
11、111,211,311、403 インナーコラム
12、112、212,312、408 取り付けブラケット
13、402 テンション部材
16,17、117、317 固定部材
20、120,220,320 操作レバー
21、121,221,321、404 アウタージャケット
S ステアリングシャフト
Claims (5)
- ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを軸線方向変位調整可能に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナーコラムと、
車体に対して、前記インナーコラムを、その軸線方向における変位調整可能状態と変位調整不能状態とのいずれかに設定する設定手段と、
前記インナーコラムが変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するが、前記インナーコラムが変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避する制限部材と、を有することを特徴とするステアリング装置。 - ステアリングホイールを取り付けるステアリングシャフトを軸線方向変位調整可能に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナーコラムと、
車体に取り付けられ、前記ステアリングシャフトの軸線に対してそれぞれ対向する位置に配置された一対のブラケット部と、
前記一対のブラケット部の間に延設されたテンション部材と、
前記一対のブラケット部の外部から前記テンション部材を固定する2つの固定部材と、
前記テンション部材と前記固定部材との間に配設され、操作レバーの動作に連動して前記ブラケット部と前記固定部材との間に相対変位を付与する付与部材と、
前記テンション部材と前記ブラケット部と前記固定部材との連結によって車体に保持され、少なくとも前記一対のブラケット部間において、ブラケット部の相対変位によって外周が前記一対の両ブラケット部と接触する押圧部を持ち、かつ前記インナーコラムの外周を包持する内周面を持つアウタージャケットとを有し、
前記付与部材により付与された変位により、前記一対のブラケット部が接近し、それにより前記アウタージャケットの押圧部を介して前記インナーコラムに対して押圧力が付与され、且つ前記インナーコラムが前記アウタージャケットを介して前記ブラケット部に対して、その軸方向位置を保持されるようになっており、
更に、前記インナーコラムが軸線方向に変位調整可能状態になったときには、前記インナーコラムの軸線方向変位を制限する制限位置に移動するが、前記インナーコラムが軸線方向に変位調整不能状態になったときには、前記制限位置より退避する制限部材と、を有することを特徴とするステアリング装置。 - 前記インナーコラムは、車両の二次衝突時に、前記制限部材により制限される位置を超えて変位可能となることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリング装置。
- 前記制限部材は、前記付与部材の動作に応じて、前記制限位置へと移動し、又は制限位置から退避することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のステリング装置。
- 前記制限部材と他の部材とが衝接したときの衝撃を吸収する緩衝部材を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のステアリング装置。
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