図1は、機能性素子の一例として有機EL素子を考えた場合である。ここでは、モザイク状に区切られたITO(インジウムチンオキサイド)透明電極パターン4、および透明電極部分を囲む障壁3付きガラス基板5の当該電極上に、赤、緑、青に発色する有機EL材料を溶解した溶液2を各色モザイク状に配列するように、ノズル1より噴射付与する例を示している。溶液2の組成はたとえば、以下のとおりである。
溶液組成物
溶媒…ドデシルベンゼン/ジクロロベンゼン(1/1、体積比)
赤…ポリフルオレン /ペリレン染料(98/2、重量比)
緑…ポリフルオレン/クマリン染料(98.5/1.5、重量比)
青…ポリフルオレン
固形物の溶媒に対する割合は、たとえば、0.4%(重量/体積)とされる。ここで、このような溶液を付与された基板は、たとえば、100℃で加熱し、溶媒を除去してからこの基板上に適当な金属マスクをしアルミニウムを2000オングストローム蒸着し(図示せず)、ITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として素子が完成する。印加電圧は15ボルト程度で所定の形状で赤、緑、青色に発光する素子が得られる。
なお、先に基板上に電極を形成しておいて、後からこのような溶液の液滴を噴射付与し、溶液中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上に残留させることによって素子形成を行ってもよい。
そして、このような素子を構成した基板は、ガラスあるいはプラスチック等の透明カバープレートを対向配置、ケーシング(パッケージング)することにより、自発光型の有機ELディスプレイ等の画像表示装置とすることができる。
なお、ここでは、機能性素子の一例として有機EL素子を考えた場合であるが、必ずしもこのような素子、材料に限定されるものではない。たとえば、機能性素子として有機トランジスタなども本発明の手法を利用して好適に製作できる。また、上記例の障壁3を形成するためのレジスト材料なども本発明に使用する溶液として利用される。
ここで、このような機能性材料を含有した溶液を付与する手段として、本発明では、インクジェットの技術が適用される。以下に、その具体的方法を説明する。
図2は、本発明の機能性素子基板の製造装置の一実施例を説明するための図で、図中、11は吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12はキャリッジ、13は基板保持台、14は機能性素子を形成する基板、15は機能性材料を含有する溶液の供給チューブ、16は信号供給ケーブル、17は噴射ヘッドコントロールボックス、18はキャリッジ12のX方向スキャンモータ、19はキャリッジ12のY方向スキャンモータ、20はコンピュータ、21はコントロールボックス、22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)は基板位置決め/保持手段である。
図3は、本発明の機能性素子基板の製造に適用される液滴付与装置の構成を示す概略図、図4は、図3の液滴付与装置の吐出ヘッドユニットの要部概略構成図である。図3の構成は、図2の構成と異なり、基板14側を移動させて機能性素子群を基板に形成するものである。図3及び図4において、吐出ヘッドユニット31はヘッドアライメント制御機構、32は検出光学系、33はインクジェットヘッド、34はヘッドアライメント微動機構、35は制御コンピュータ、36は画像識別機構、37はXY方向走査機構、38は位置検出機構、39は位置補正制御機構、40はインクジェットヘッド駆動・制御機構、41は光軸、42は素子電極、43は液滴、44は液滴着弾位置である。吐出ヘッドユニット11の液滴付与装置(インクジェットヘッド33)としては、任意の液滴を定量吐出できるものであればいかなる機構でも良く、特に数〜数100pl程度の液滴を形成できるインクジェット方式の機構が望ましい。
インクジェット方式としては、たとえば、米国特許第3683212号明細書に開示されている方式(Zoltan方式)、米国特許第3747120号明細書に開示されている方式(Stemme方式)、米国特許第3946398号明細書に開示されている方式(Kyser方式)のようにピエゾ振動素子に、電気的信号を印加し、この電気的信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものがあり、通常、総称してドロップオンデマンド方式と呼ばれている。
他の方式として、米国特許第3596275号明細書、米国特許第3298030号明細書等に開示されている方式(Sweet方式)がある。これは連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小滴を、一様の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を行うものであり、通常、連続流方式、あるいは荷電制御方式と呼ばれている。
さらに、他の方式として、特公昭56−9429号公報に開示されている方式がある。これは液体中で気泡を発生せしめ、その気泡の作用力により微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものであり、サーマルインクジェット方式、あるいはバブルインクジェット方式と呼ばれている。
このように、液滴を噴射する方式は、ドロップオンデマンド方式、連続流方式、サーマルインクジェット方式等あるが、必要に応じて適宜その方式を選べばよい。本発明では、このような機能性素子基板の製造装置(図2)において、基板14は、この装置の基板位置決め/保持手段22によってその保持位置を調整して決められる。図2では簡略化しているが、基板位置決め/保持手段22は基板14の各辺に当接されるとともに、X方向およびそれに直交するY方向にμmオーダーで微調整できるようになっているとともに、噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、その位置決め情報および微調整変位情報等と、液滴付与の位置情報、タイミング等は、たえずフィードバックできるようになっている。
さらに、本発明の機能性素子基板の製造装置では、X、Y方向の位置調整機構の他に図示しない(基板14の下に位置するために見えない)、回転位置調整機構を有している。これに関連して、先に、本発明の機能性素子基板の形状および形成される機能性素子群の配列に関して説明する。
本発明の機能性素子基板は、石英ガラス、Na等の不純物含有量を低減させたガラス、青板ガラス、SiO2を表面に堆積させたガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板等が用いられる。また、軽量化あるいは可撓性を目的として、PETを始めとする各種プラスチック基板も好適に用いられる。いずれにしろ、その形状は、このような基板を経済的に生産、供給する、あるいは最終的に製作される機能性素子基板の用途から、Siウエハなどとは違って、矩形(直角4辺形)である。つまり、その矩形形状を構成する縦2辺、横2辺はそれぞれ、縦2辺が互いに平行、横2辺が互いに平行であり、かつ縦横の辺は直角をなすような基板である。
このような基板に対して、本発明では、形成される機能性素子群をマトリックス状に配列し、このマトリックスの互いに直交する2方向が、この基板の縦方向の辺あるいは横方向の辺の方向と平行であるように機能性素子群を配列する(図31〜図33参照)。このように機能性素子群をマトリックス状に配列する理由および、基板の縦横の辺をそのマトリックスの直交する2方向と平行になるようにする理由を以下に述べる。
図2あるいは図3に示したように、本発明では、最初に基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながら機能性素子群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、上記溶液(たとえば有機EL材料、あるいは導電性材料を溶解した溶液、レジスト材料など)の噴射を行う。つまり、このX方向及びY方向は互いに直交する2方向であり、基板の位置決めを行う際に、基板の縦辺あるいは横辺をそのY方向あるいはX方向と平行になるようにしておけば、形成される機能性素子群もそのマトリックス状配列の2方向がそれぞれ平行であるため、相対移動を行いつつ噴射する機構のみで高精度の素子群形成を行うことができる。言い換えるならば、本発明のような基板形状、機能性素子群のマトリックス状配列、直交するX、Yの2方向の相対移動装置にすれば、素子形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行えば、高精度な機能性素子群のマトリックス状配列が得られるということである。
ここで、先ほどの回転位置調整機構に戻って説明する。前述のように、本発明では、素子形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行い、XおよびY方向の相対移動のみを行い、他の制御を行わず、高精度な機能性素子群のマトリックス状配列を得ようというものである。その際、問題となるのは、最初に基板の位置決めを行う際の回転方向(X、Yの2方向で決定される平面に対して垂直方向の軸に対する回転方向)のズレである。この回転方向のズレを補正するために、本発明では、前述のように、図示しない(基板14の下に位置して見えない)、回転位置調整機構を有している。これにより、回転方向のズレも補正し、基板の辺を位置決めすると、本発明の装置では、XおよびY方向のみの相対移動で、高精度な機能性素子群のマトリックス状配列が得られる。
以上は、この回転位置調整機構を、図2の基板位置決め/保持手段で22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)とは別物の機構として説明した(基板14の下に位置して見えない)が、基板位置決め/保持手段22に回転位置調整機構を持たせることも可能である。例えば、基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようになっているが、基板位置決め/保持手段22の基板14の辺に当接される部分において、距離をおいて設けられた2本のネジが独立に動くようにしておけば、角度調整が可能である。なお、この回転位置制御情報も上記のX、Y方向の位置決め情報および微調整変位情報等と同様に噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、液滴付与の位置情報、タイミング等が、たえずフィードバックできるようになっている。
次に、本発明の位置決めの他の手段、構成について説明する。上記の説明は基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようにしたものであるが、ここでは、基板14の辺ではなく、基板上に互いに直交する2方向に帯状パターンを設けるようにした例について説明する。前述のように、本発明では、基板上に機能性素子群をマトリックス状に配列して形成されるが、ここでは、前記のような互いに直交する2方向の帯状パターンをこのマトリックスの互いに直交する2方向と平行になるように形成しておく。このようなパターンは、基板上にフォトファブリケーション技術によって容易に形成できる。
あるいは、上述のようなパターンをその目的のためだけに作成するのではなく、素子電極42(図4)や、各素子のX方向配線やY方向配線等の配線パターンを本発明の互いに直交する2方向の帯状パターンとみなしてもよい。このような帯状パターンを設けておけば、図4で後述するような、CCDカメラとレンズとを用いた検出光学系32によってパターン検出ができ、位置調整にフィードバックできる。
次に、上記X、Y方向に対して垂直方向であるZ方向であるが、本発明では、最初に、基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、機能性材料を含有する溶液の噴射を行うが、その噴射時には、吐出ヘッドユニット11のZ方向の位置制御は特に行わない。その理由は、噴射時にその制御を行うと、機構、制御システム等が複雑になるだけではなく、基板14への液滴付与による機能性素子の形成が遅くなり、生産性が著しく低下するからである。
かわりに、本発明では基板14の平面度やその基板14を保持する部分の装置の平面度、さらに吐出ヘッドユニット11をX、Y方向に相対移動を行わせるキャリッジ機構等の精度を高めるようにすることで、噴射時のZ方向制御を行わず、吐出ヘッドユニット11と基板14のX、Y方向の相対移動を高速で行い、生産性を高めている。一例をあげると、本発明の溶液付与時(噴射時)における基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離の変動は5mm以下におさえられている(基板14のサイズが200mm×200mm以上、4000mm×4000mm以下の場合で)。
なお、通常X、Y方向の2方向で決まる平面は、水平(鉛直方向に対して垂直な面)に維持されるように装置構成されるが、基板14が小さい場合(例えば500mm×500mm以下の場合)には、必ずしも、X、Y方向の2方向で決まる平面を水平にする必要はなく、その装置にとってもっとも効率的な基板14の配置の位置関係になるようにすればよい。
次に、本発明の他の実施例を説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。図3は、図2の場合と違い、吐出ヘッドユニット31と基板(機能性素子基板)14の相対移動を行う際に、機能性素子基板14側を移動させる例である。図4は、図3の装置の吐出ヘッドユニット11部を拡大して示した概略構成図である。まず、図3において、37はX、Y方向走査機構であり、その上に機能性素子基板14が載置してある。基板14上の機能性素子は、たとえば、図1のものと同じ構成であり、単素子としては、図1に示した構成と同様に、ガラス基板5(機能性素子基板14に相当する)、障壁3、ITO透明電極4よりなっている。この機能性素子基板14の上方に液滴を付与する吐出ヘッドユニット11が位置している。本実施例では、吐出ヘッドユニット11は固定で、機能性素子基板14がX、Y方向走査機構37により任意の位置に移動することで吐出ヘッドユニット11と機能性素子基板14との相対移動が実現される。
次に、図4により、吐出ヘッドユニット11の構成を説明する。図4において、32は基板14上の画像情報を取り込む検出光学系であり、液滴43を吐出させるインクジェットヘッド33に近接し、検出光学系32の光軸41および焦点位置と、インクジェットヘッド33による液滴43の着弾位置44とが一致するよう配置されている。この場合、図3に示す検出光学系32とインクジェットヘッド33との位置関係はヘッドアライメント微動機構34とヘッドアライメント制御機構31により精密に調整できるようになっている。また、検出光学系32には、CCDカメラとレンズとを用いている。
図3において、36は先の検出光学系32で取り込まれた画像情報を識別する画像識別機構であり、画像のコントラストを2値化し、2値化した特定コントラスト部分の重心位置を算出する機能を有したものである。具体的には、(株)キーエンス製の高精度画像認識装置、VX−4210を用いることができる。これによって得られた画像情報に機能性素子基板14上における位置情報を与える手段が位置検出機構38である。これには、X、Y方向走査機構37に設けられたリニアエンコーダ等の測長器を利用することができる。また、これらの画像情報と機能性素子基板14上での位置情報をもとに、位置補正を行うのが位置補正制御機構39であり、この機構によりX、Y方向走査機構37の動きに補正が加えられる。また、インクジェットヘッド制御・駆動機構40によってインクジェットヘッド33が駆動され、液滴が機能性素子基板14上に付与される。これまで述べた各制御機構は、制御用コンピュータ35により集中制御される。
なお、以上の説明は、吐出ヘッドユニット11は固定で、機能性素子基板14がX、Y方向走査機構37により任意の位置に移動することで吐出ヘッドユニット11と機能性素子基板14との相対移動を実現しているが、図2に示したように、機能性素子基板14を固定とし、吐出ヘッドユニット11がX、Y方向に走査するような構成としてもよいことはいうまでもない。特に、200mm×200mm程度の中型基板〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上の大型基板の製作に適用する場合には、後者のように機能性素子基板14を固定とし、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
また、逆に、たとえば、軽いプラスチック基板を使用する場合や、基板サイズが比較的小さい場合(100mm×100mm〜800mm×800mm程度)においては、インクジェットプリンターの紙搬送を行うようにすることも考えられる。つまり、キャリッジ12に搭載された吐出ヘッドユニット11が、X方向のみ(もしくはY方向のみ)に走査され、基板がY方向(もしくはX方向)に搬送される。その場合は、生産性が著しく向上する。
基板サイズが200mm×200mm程度以下の場合には、液滴付与のための吐出ヘッドユニットを200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプとし、吐出ヘッドユニットと基板の相対移動を直交する2方向(X方向、Y方向)に行うことなく、1方向のみ(例えばX方向のみ)に相対移動させて行うことも可能であり、また、量産性も高くすることができるが、基板サイズが200mm×200mm以上の場合には、そのような200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプの吐出ヘッドユニットを製作することは技術的/コスト的に実現困難であり、本発明のように、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
特に、最終的な基板としては、200mm×200mmより小さいものを製作する場合であっても、大きな基板から複数個取りして製作するような場合には、その元の基板は、400mm×400mm〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上のものを使用することになるので、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
液滴43の材料には、先に述べた有機EL材料の他に、例えば、ポリフェニレンビニレン系(ポリパラフェニリレンビニレン系誘導体)、ポリフェニレン系誘導体、その他、ベンゼン誘導体に可溶な低分子系有機EL材料、高分子系有機EL材料、ポリビニルカルバゾール等の材料を用いることができる。有機EL材料の具体例としては、ルブレン、ペリレン、9、10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。また、有機EL表示における周辺材料である電子輸送性、ホール輸送性材料も本発明の機能性素子を製作する機能材料として使用される。
本発明の機能性素子を製作する機能材料としては、この他に、半導体等に多用される層間絶縁膜のシリコンガラスの前駆物質であるか、シリカガラス形成材料を挙げることができる。かかる前駆物質として、ポリシラザン(例えば東燃製)、有機SOG材料等が挙げられる。また有機金属化合物を用いても良い。更に、他の例として、カラーフィルター用材料が挙げられる。具体的には、スミカレッドB(商品名、住友化学製染料)、カヤロンフアストイエローGL(商品名、日本化薬製染料)、ダイアセリンフアストブリリアンブルーB(商品名、三菱化成製染料)等の昇華染料等を用いることができる。
本発明の溶液組成物において、ベンゼン誘導体の沸点が150℃以上であることが好ましい。このような溶媒の具体例としては、O−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、1、2、3−トリクロロベンゼン、O−クロロトルエン、p−クロロトルエン、1−クロロナフタレン、ブロモベンゼン、O−ジブロモベンゼン、1−ジブロモナフタレン等が挙げられる。これらの溶媒を用いることにより、溶媒の揮散が防げるので好適である。これらの溶媒は芳香族化合物に対する溶解度が大きく好適である。また、本発明の溶液組成物ドデシルベンゼンを含むことが好ましい。ドデシルベンゼンとしてはn−ドデシルベンゼン単一でも良く、また異性体の混合物を用いることもできる。
この溶媒は、沸点300℃以上、粘度6cp以上(20℃)の特性を有し、この溶媒単一でももちろん良いが、他の溶媒に加えることにより、溶媒の揮散を効果的に防げ、好適である。また、上記溶媒のうちドデシルベンゼン以外は粘度が比較的小さいため、この溶媒を加えることにより粘度も調整できるため非常に好適である。本発明によれば、上述したような、溶液組成物を吐出装置により基板上に吐出により供給した後、基板を吐出時温度より高温で処理して膜化する機能膜形成法が提供される。吐出温度は室温であり、吐出後基板を加熱することが好ましい。このような処理をすることにより、吐出時溶媒の揮散、温度の低下により析出した内容物が再溶解され、均一、均質な機能膜を得ることができる。
上述の機能膜の作製法において、吐出組成物を吐出装置により基板上に供給後、基板を吐出時温度より高温に処理する際に、加圧しながら加熱することが好ましい。このように処理することにより、加熱時の溶媒の揮散を遅らすことができ、内容物の再溶解が更に促進される。その結果、均一、均質な機能膜を得ることができる。また、上述の機能膜の作製法において、前記基板を高温処理後直ちに減圧にし、溶媒を除去することが好ましい。このように処理することにより、溶媒の濃縮時の内容物の相分離を防ぐことができる。
いずれの材料、あるいは機能性素子においても、本発明は、溶液中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上に残留させることによって素子形成を行うものであり、この固形物がそれぞれの素子の機能を発生させるものであり、溶媒(揮発成分)はインクジェット原理で液滴を噴射付与するための手段(vehicle)である。
こうした液滴43を吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)11により所望の素子電極部に付与する際には、付与すべき位置を検出光学系32と画像識別装置36とで計測し、その計測データ、吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)11の吐出口面と機能性素子基板14の距離、キャリッジの移動速度に基づいて補正座標を生成し、この補正座標通りに機能性素子基板14前面を吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)11をX、Y方向に移動せしめながら液滴を付与する。検出光学系32としては、CCDカメラ等とレンズを組み合わせたものを用い、画像識別装置36としては、市販のもので画像を2値化しその重心位置を求めるもの等を用いることができる。
以上の説明より明らかなように、本発明の機能性素子基板は、機能性材料を含有する溶液をインクジェットの原理で空中を飛翔させ、基板上に液滴として付与して製作されるものである。
次に、本発明の他の特徴について説明する。ここでは、本発明の機能性素子基板の製造装置において製作される機能性素子基板の機能性素子を高精度に形成するために基板に要求される特性とさらに基板のハンドリングについて検討した結果について説明する。
高精度な機能性素子を形成するためには、液滴が基板上に付与された時点で、良好な素子形成が行われるように、付与後の液滴が基板上でにじんだり、流れたりすることなく、良好な丸いドットを形成し、鮮明かつ狙いどおりの寸法のドットが得られることが要求される。
通常、紙にインクを噴射し、記録を行うインクジェット記録技術においては、紙面上で、良好な丸いドットを形成し、鮮明かつ狙いどおりの寸法のドットを得るために、たとえば、紙の表面にシリカ等の物質をコートしたいわゆるコート紙と呼ばれるインクジェット記録専用紙が使用される。本発明は、紙ではなく機能性素子基板に関するものであり、インクジェット記録専用紙のような原理を採用することができない。
しかしながら、本発明者は、インクジェット記録専用紙にヒントを得て、本発明の機能性素子基板においては、機能性材料を含有する溶液をインクジェットの原理で付着させる前の基板の表面の状態が、良好な丸いドットを形成し、鮮明かつ狙いどおりの寸法のドットを得るために大きな作用を及ぼすのではないかと考えた。具体的には、基板の表面の粗さである。
本発明に使用される基板は、前述のように、ガラスあるいはセラミックスなどが用いられる。ここで、ガラス表面がすりガラスのような状態のものである場合、機能性材料を含有する溶液をインクジェットの原理で付着させた場合、毛管現象の原理で、基板上に付着した溶液はどんどん広がっていき、いわゆるにじみ状態になり、良好なドットとしての形状を維持できない。
本発明者は、この現象に注目し、本発明に使用する基板の表面の粗さをいろいろ変化させ、付着した溶液が広がらない、つまり、にじみ状態にならないようにするにはどのくらいの表面粗さにすればよいのかを実験的に検討した。以下に、その結果を示す。
実験に使用した基板は、石英ガラスとSiO2を表面に堆積させたアルミナ基板(以下、SiO2アルミナ基板と記す。)であり、前者(石英ガラス)の場合、表面粗さを鏡面状態からすりガラス状のものまで変えたものを準備した。また後者(SiO2アルミナ基板)の場合は、アルミナ基板の表面をできうる限りその表面粗さをなめらかにし、スパッタリングによって堆積させるSiO2の体積条件を変化させ、SiO2面の表面粗さを変化させたものを準備した。なお、表面粗さはデックタック製の接触型表面粗さ計で測定した。
これらの基板は図2に示した装置を用い、機能性材料を含有する溶液をインクジェットの原理で付着させ、良好なドットの形成状況を調べたものである。
以下に実際の実験に使用した溶液、噴射ヘッドの条件等を示す。
使用した溶液は、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.1重量パーセント混合した溶液である。
使用した噴射ヘッドは、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッド(図41、図42参照)で、ノズル径はΦ23μmで、ピエゾ素子への入力電圧を27Vとし、駆動周波数は、12kHzとした。その際ジェット初速度として、8m/sを得ており、1滴の質量は5plである。キャリッジ走査速度(X方向)は、5m/sとした。なお噴射ヘッドノズルと基板間の距離は3mmとした。
また、滴飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(本発明例では3mm)にほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた。なお、完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御し、その直径の3倍以内の長さにした。また、その際、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。
その後、この上にアルミニウムをスパッタし、素子形成を行った。ITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として10Vの電圧を印加したところ、表1に示すような結果が得られた。ここでは、基板上の素子形成状況および素子性能を評価したものである。
ここで、基板上のドットの形成状況(にじみ状況)は、良好に形成でき(にじみのない鮮明なドット)機能性素子が良好に形成できるレベルのものを○、溶液が流れ気味でにじんだドットとなり機能性素子が良好に形成できないレベルのものを×としている。素子性能が○は所定の形状で橙色に発光したものであり、×は発光しなかったり部分的に発光(素子としては実使用不可)したりしたものである。
以上の結果より、基板の種類とは関係なく、溶液が付着する領域の表面粗さによって、基板上のドット形成状況およびそれによる素子性能が決まることがわかる。つまり、基板の表面粗さが、0.5s以下であれば基板上のドット形成が良好になり、機能性素子(この場合、有機EL素子)が良好に形成でき(実用に供するレベル)、一方、それよりも表面粗さが粗くなると、基板上のドット形成が良好ではなくなり(溶液が流れ気味でにじんだドット)、機能性素子が良好に形成できなくなる(実用に供しないレベル)ことがわかる。
つまり、良好な機能性素子を形成するために基板の表面粗さを0.5s以下にすればよいことがわかるが、ここで少し問題がある。
第1の問題は、コストである。このように非常になめらかな面を得るには、基板を高精度に研摩する必要がある。あるいは、SiO2アルミナ基板のように、表面にSiO2をスパッタリングするような場合にも、表面のなめらかなSiO2面を得るには、時間をかけて丁寧に膜形成を行う必要があり、コスト高という問題が発生する。
ところで、本発明の機能性素子基板は、前述のように、基板の片面に機能性素子を形成する構造のものであることを考慮すると、機能性素子を形成する面のみ、なめらかな面となった基板を使用すればよいことがわかる。つまり、基板の表面(機能性素子群を形成する面)のみ、前述のような実験結果より得られた表面粗さとし、裏面はそれより粗い面にしても十分事足りる。言い換えるならば、本発明では、基板の機能性素子群を形成する面より裏面の表面粗さを粗くなるようにした基板を用いることにより、高精度な機能性素子群のパターンが形成できるとともに、基板製造コストを低くすることができるということである。
第2の問題は、機能性素子基板の製造プロセス時に基板裏面が製造装置に密着して、移動させることができなくなるという製造時の不具合である。上記第1の問題は、コスト面からの検討で、基板の機能性素子群を形成する面より裏面の表面粗さが粗い基板を用いることにより、基板材料の低コスト化を実現できたが、今回上記実験を図2に示したような機能性素子基板の製造装置を用いて行った際にわかったことであるが、基板が基板保持台3にくっついてはずしにくいという問題が発生することがわかった。
この問題は、ちょうどブロックゲージがその表面のなめらかさを利用して、2つのブロックゲージをくっつける(Ringingという。)原理とよく似ているが、基板の裏面があまりになめらか過ぎると、基板保持台13にくっついてはずしにくくなり、それをはずすのに余計な手間がかかり、生産の歩留まりが低下するという問題があることが判明した。そして、それを無理にはずそうとして、基板を破損させたり、作業者が怪我をするということもよく起きていた。
そこで、本発明者は、上記の実験で用いた基板(石英ガラスとPETフィルムとSiO2アルミナ基板)の裏面の表面粗さを変えて、その表面粗さがどの程度であれば、基板保持台13にくっつくことなく、基板の取り外し交換作業が、スムーズに行えるかを実験を通じて明らかにした。結果を表2に示す。
ここで、基板の取り外し交換作業容易性は、基板のくっつきがなく、簡単に基板保持台13からはずせた場合を○、そうでない場合を×としている。なお、基板保持台13はSUS304を砥石による研削仕上げとした面状態である。また、SiO2アルミナ基板は裏面にはSiO2がなくアルミナ面が裏面である。
以上の結果より、基板の種類とは関係なく、裏面の表面粗さを1s以上となるようにすることにより、機能性素子基板の製造プロセス時に基板裏面が製造装置に密着して、移動させることができなくなる(基板の取り外し交換作業がしにくくなる)という製造時の不具合を避けることができることがわかる。
次に、上記課題を、他の解決手段によって解決する例を以下に説明する。 この密着の原因は、基板裏面と基板保持台との間がある種の真空状態になることによって起きるものであり、例えば、精密測定に使用されるブロックゲージを2枚くっつける(Ringingという)場合と同じような原理である。これを避けるためには、基板裏面と基板保持台との間が真空状態にならないようにすればよい。図5は、その1例を示す図である。
図5(A)は機能性素子基板14の裏面平面図、図5(B)は、図5(A)のB−B線断面図で、この例では、基板14の機能性素子群が形成されている領域の面(表面)142の裏面141に物理的な線状形状14aを設けている。より具体的には、この線状形状14aは裏面平面141に対して落ち込んだ形状であるとともに、基板14の端部まで設けられている。ここでは、縦横それぞれ3本の落ち込んだ形状(凹状形状)の線状形状を設けた例を示している。つまり、このように落ち込んだ形状(凹状形状)の線状形状14aが、基板14の端部から空気導入チャネルの役割をなし、基板裏面141と機能性素子基板製造装置の基板保持台との間に空気を導入するので、両者の間に空気層を形成でき、真空状態にならないようにできる。
図6は他の例であり図6(A)は機能性素子基板14の裏面平面図、図6(B)は図6(A)のB−B線断面図で、上述のような落ち込んだ線状形状の断面をV字形状14bとしたものである。また、縦3本だけの線状形状である。本発明では、このような線状形状が基板の端部から空気導入チャネルの役割をなすものであればよく、断面形状は特に指定しない。
上述のような線状形状は、本発明の機能性素子基板製作用基板の裏面にダイシングソー等によって、2次的な加工によって形成され、その断面形状はダイシングブレードの形状によって、V字状、U字状、凹形状(矩形形状)など、任意に形成でき、いずれも適用可能である。さらに簡易的な2次的な加工法としては、ダイヤモンドカッター等の簡単な工具で、ライン状に溝加工を行うだけでもよい。
なお、上記のようなダイシングソー等による機械的な2次的な形成方法とは別に、例えば、基板としてガラスを使用する場合には、エッチングによって化学的な加工法により2次的に形成することも可能である。
本発明では、上述のように、基板の裏面に、落ち込んだ(凹状)形状の物理的な線状形状を設ける場合に、ダイヤモンドカッター等の簡単な工具、あるいは機械装置によって、ライン状に溝加工を行うだけ、あるいは化学的な2次的な加工法で簡単に実現できるので、加工コストが低く抑えられ、安価な機能性素子基板を製作できる。
本発明のさらに他の例として、例えば、基板材料としてAl2O3(アルミナ)、SiC等のセラミックスを使用する場合には、焼成前にあらかじめこのような溝ができるようにしておいて、それを焼成することによって、このような線状形状と基板を同時に形成することも可能である。また、このようなセラミックスだけではなく、上記のようなガラスを基板材料とする場合にも、基板外形のプレス形成時に同時にそのような物理的な線状形状を形成することもできる。すなわち、本発明では、基板を形成する際に同時加工(形成)によって、線状形状(溝)を設けるようにしたので、加工コストが低く抑えられ、安価な機能性素子基板を製作できる。
なお、上述のような線状形状は、1本だけでは効果が少なく、複数本設けることにより、その効果は大となる。より好適には、複数本設けるとともに、図5に示したように、互いに交差するように設けるようにするとよい。ただし、必ずしも直角に交差する必要はない。
また、図5、図6に示した例では、線状形状が基板外形線と平行である例を示しているが、これも必ずしもそのように平行にする必要はなく、外形線に対してある角度を持ったものであってもよい。また、図5、図6に示した例では、すべて直線形状の線状形状としたが、これも曲線であってもよい。ただし、溝状の線状形状の場合(溝ではない例も後述する。)、その溝が空気導入チャネルとして効果的に作用するためには、溝状の線状形状の端部が基板の端部まで形成されていることは必須である。
なお、そのサイズであるが、深さ、幅とも、ほぼ同じ程度になるようにすればよい。しかし、あまり深さが浅すぎると空気導入チャネルの役割を果たしにくくなるので、注意が必要である。また、逆に深すぎる場合には、その部分で応力集中が起きるため、基板が破損しやすくなるので注意が必要である。
本発明では、上記の点に鑑み、溝深さを検討した。使用した基板は、パイレックス(登録商標)ガラスであり、裏面を0.05sのほぼ鏡面状態に仕上げ、その面にダイヤモンドカッターで、溝深さを変えた線状形状を製作した。基板保持台に相当する部分は0.05sのほぼ鏡面状態に仕上げられたSUS340の基板とし、その上での基板のセットしやすさ(設置時の滑りやすさ)を検討したものである。使用した基板は、厚さ2mm、4mm、10mmの3種類であり、それぞれ、420mm×300mm、1200mm×800mm、3500mm×1800mmの大きさとし、図5に示したように縦横とも各3本ずつの矩形溝をほぼ均等に配置するような形で形成した。以下に溝深さを変えて実験した結果を表3に示すが、溝幅は溝深さと同じとした。
評価結果で、○は、ガラス基板と擬似基板保持台であるSUS340の基板との密着が起こらなかった場合であり、×は、密着が発生したもの、又は、溝深さが深すぎて、ガラス基板の機械的強度が低下して、実験中のわずかの振動、運搬等により破損してしまった場合である。
以上の結果より、溝深さの下限については、溝深さdは、厚さtの50分の1までにすべきであり、それより小さいと、基板が密着してしまうことがわかる。 また、上限については、溝深さdは、厚さtの5分の1までにすべきであり、それより大きいと、基板が破損しやすくなって実用に供しないことがわかる。
次に、線状形状の他の例として、溝ではなく裏面平面に対して突き出した形状の例について、図7を参照して説明する。
図7において、図7(A)は基板14の裏面平面図、図7(B)は図7(A)のB−B線断面図で、この場合は、図示のように裏面平面141に対して突き出した形状14Cとすることにより、基板14を基板保持台13から浮かせる(間に薄い空気層を形成できる)ので、基板14が基板保持台13に密着してしまうという不具合は皆無である。この突き出した形状14Cのものについても、その断面形状が図7のように矩形であってもよいし、あるいは三角形状、半円形状などどのようなものでもよい。
また、上記の突き出した形状の線状形状14cを有する基板14は、前述の溝形状の線状形状を形成する場合の、基板を同時に形成する方法によって容易に形成できる。すなわち、基板材料としてAl2O3(アルミナ)、SiC等のセラミックスを使用する場合には、焼成前にあらかじめこのような突き出した形状ができるようにしておいて、それを焼成することによって、このような線状形状と基板を同時に形成することができる。また、このようなセラミックスだけではなくガラスを基板材料とする場合にも、基板外形のプレス形成時に同時にこのような突き出した形状ができるようにして形成することもできる。このような突き出した形状の線状形状の場合も、図5,図6に示した溝形状の線状形状を形成する場合と同様に、基板を形成する際に同時加工(形成)によって、線状形状を設けることができるので、加工コストが低く抑えられ、安価な機能性素子基板を製作できる。
以上の説明より、本発明の機能性素子基板は、その元になる基板の裏面に線状形状を設け、基板と基板保持台の間に薄い空気層を形成し、基板が基板保持台に密着してしまうことによる不具合を皆無とし、機能性素子基板製作時に機能性素子基板製造装置へ基板をセットしたり、はずしたりする際に、基板が機能性素子基板製造装置の基板保持台に密着して動かなくなってしまうというようなことをなくし、また、密着状態になることを回避できるので、機能性素子基板製造の効率向上、破損事故をなくすことが実現できるものである。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明の機能性素子基板は、前述のように、石英ガラス、Na等の不純物含有量を低減させたガラス、青板ガラス、SiO2を表面に堆積させたガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板であり、その形状は矩形(直角4辺形)である。つまり、その矩形形状を構成する縦2辺、横2辺はそれぞれ、縦2辺が互いに平行、横2辺が互いに平行であり、かつ縦横の辺は直角をなすような基板である。
ところ、でこのような矩形の基板は、その4角のコーナー部分が90°になっており、本発明では、その基板材料が、前述のように、ガラス、セラミックス等よりなっているため、機能性素子基板製造プロセス時に、作業者が怪我をするという不慮の事故がよく起こる。そこで、本発明では、図8に示すように、このような矩形基板14の4角にC1(図8(A))あるいはR1(図8(B))以上、もしくは、これらと同等の面取りを施している。こうすることにより、ガラス、セラミックス等の尖った部分(4角の90°部分)がなくなり、作業者が作業時(基板搬送時、交換時、製造装置への装着時等)に、怪我をすることはなくなる。なお、このような面取りは、カーボランダムやエメリー等の砥粒を含んだグラインダーによる研削加工によって容易に施すことが可能である。
次に、本発明の他の特徴について説明する。図9はその一例を示す平面図である。この例は、基板14の右下の角C1他の3つの角R1とは異なる形状としたもので、このようにすると、基板14を図2に示したような機能性素子基板の製造装置の基板保持台13に設置する際に基板の方向性を容易に決めることができる。すなわち、4角のうち少なくとも1つの角を他の角と識別できる程度に角部の形状を他の角と異ならせることにより、機能性素子基板の製造時に、作業者は、基板の方向を認識でき、基板の設置を確実に行うことが可能となる。たとえば、作業者が手で角部に触れるだけでその部分の形状が他の角部と異なるということが認識できる程度の大きさ、形状にすることで、基板の方向確認、基板の設置の作業効率、作業ミスの著しい低減を図ることができる。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。図10はその一例を示す平面図である。この例では、矩形基板14の4辺のうち少なくとも1つの辺に切り欠き部Lを設けており、基板14を図2に示したような機能性素子基板の製造装置の基板保持台13に設置する際に基板の方向性を容易に決めることができる。すなわち、4辺のうち少なくとも1つの辺に切り欠き部を設けることにより、機能性素子基板の製造時に作業者は、基板の方向を認識でき、基板の設置を確実に行うことが可能となる。たとえば、作業者が手でその切り欠き部に触れるだけで基板の方向確認、基板の設置の作業効率、作業ミスの著しい低減を図ることができる。さらに、図2には図示していないが、機能性素子基板の製造装置の基板保持台13に、この切り欠き部に対応して基板のストッパー部材を設けることにより、基板の確実な設置、あるいは正確な位置決めができるというメリットもある。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。ここでは、機能性素子基板製造時の作業者の安全性について検討した結果を説明する。
本発明の機能性素子基板は、前述のように、石英ガラス、Na等の不純物含有量を低減させたガラス、青板ガラス、SiO2を表面に堆積させたガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板、あるいはPETを始めとする各種プラスチック基板であるが、このような基板を図2あるいは図3に示した機能性素子基板製造装置に設置したり、あるいは運搬したり、後述するように画像表示装置としてアセンブルする際に、作業者が、手を切ったりするという不慮の事故が時々起こる。これは、材料がガラスやセラミックであり、基板の縁部分(機能性素子群が形成されている領域の面あるいはその裏面とそれらの面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域)が、鋭利な刃物のような作用をするからである。
図11は、その一例を示す図で、図11(A)は基板14の平面図、図11(B)は図11(A)のB−B線断面で、14は本発明に使用される機能性素子基板の機能性素子群が形成されている前の材料基板であり、例えば、ここではパイレックス(登録商標)ガラスである。図11(B)に示す断面図により、その厚さ領域ならびに本発明の特徴が明確に示されているが、本発明では、図11(B)の断面図に示したように、基板14の縁部分(機能性素子群が形成されている領域の面142あるいはその裏面141とそれらの面に垂直方向の厚さ方向の面143とが交差する稜線領域)に面取りを施している。図11(B)のCl(表)、Cr(表)、Cl(裏)、Cr(裏)がそれである。
ここでは、面取り形状として、図11(B)の断面図に示したコーナー部(稜線部)を機械製図で指定するc○○というような形状で面取りを施した形状としているが、本発明は、この形状に限定されるものではなく、例えば、r××という機械製図で指定する形状であってもよい。要は、この部分が基板切断時の形状である直角状になっていて、それが刃物作用をして、作業者がその部分に触れて、手などを切ったりしないように面取りされていればよいのである。
図12は、図11(A)のQ部を拡大したものであり、このQ部は、上記説明のように、機能性素子群が形成されている領域の面とこの面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りCを施した状態を示しており、縦方向と横方向の面取りされた稜線部分Dが直角を形成している。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明では、図12に示した面取りされた2つ(縦方向と横方向)の稜線部分が直角をなす部分Dにもさらに面取りEを施すようにしたものである。図13(A)に面取りEを示す。図13(B)は、さらに四辺形の基板14の4角にも面取りを施した基板を用い、それに、図13(A)に示すような面取りされた2つ(縦方向と横方向)の稜線部分が直角をなす部分に面取りFを施した例である。
本発明では、上述のように、基板14に面取りを施すことにより、作業者が機能性素子基板製作時(基板搬送時、交換時、製造装置への装着時等)に、基板の稜線部で手を切ったりするという不慮の事故を防ぐことができるようになった。また、図13に示したように、面取りされた2つ(縦方向と横方向)の稜線部分が直角をなす部分にも面取りを施したので、作業者が機能性素子基板製作時(基板搬送時、交換時、製造装置への装着時等)に、その直角部でけがをしたりするという不慮の事故も皆無となった。さらに、その直角部があらかじめ面取りされているので、全く面取りされていない状態でとがっている状態のものより、その直角部が何かにぶつかった場合に破損しにくく、基板製作の歩留まりも向上した。
次に、上述のような面取り加工法であるが、#100番〜#2000番のカーボランダム、エメリー等の研摩材を使用したり、あるいは、それらをバインダーで固めた砥石(グラインダー)により、簡単に面を落とす(面取りする)ことができる。なお、前述のように、例えば、r××という機械製図で指定する形状の場合には、あらかじめ砥石そのものを被加工物(基板の面取りされる部分)が所望の曲面形状となるように形状加工しておいて、その形状にならうようにして加工すれば容易に曲面加工も実現できる。
また、面取りされた加工部分の表面粗さであるが、これは、例えば機能性素子群が形成されている領域の面の表面粗さより粗くすることが望ましい。理由は、機能性素子群が形成されている領域の面は、そのような素子群を精密なパターンで形成するために鏡面加工がなされているが、この面取りする部分は、そのような精密パターンを形成する領域ではないので、必要以上に表面の加工精度を高くする必要がないからである。むしろ、機能性素子群が形成されている領域の面よりも表面粗さを粗くし、加工コストを下げることが望ましい。一般的には、この面取り部の表面粗さは0.5s〜5sとされ、加工コストを低減している。
以上の説明より明らかなように、本発明の機能性素子基板は、その元になる基板の、稜線部分を面取りしたり、コーナー部を面取りして、不慮の事故を防止したり、製造時の歩留まりを向上させたりしている。
なお、以上は、機能性素子基板製作時の説明として行ったが、前述のように、この機能性素子基板として表示素子を形成して、ディスプレイを構成する場合、機能性素子基板と同等の大きさのカバープレートが必要となるが、このカバープレートの取り扱いについても、作業時の不慮の事故を考慮する必要がある。このカバープレートは、ガラスあるいはプラスチック等によって形成されるが、本発明では、このカバープレートについても、機能性素子基板と同様に面取りを施すようにしている。
すなわち、カバープレートとなる基板の表面とその表面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りを施したり、カバープレートとなる基板の裏面とその裏面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りを施したりして、作業者が怪我をしないようにしている。また、その面取り部の表面粗さについても、カバープレート基板の表裏面の表面粗さより粗くして、不要なコストアップを回避している。
さらに、このカバープレートは、不慮の事故等によって、外部から衝撃が加わることがあるので、強度面からの考慮が必要である。本発明では、このカバープレートの厚さを機能性素子基板より厚くして、不慮の事故(ぶつかったりする外部からの衝撃など)から、機能性素子基板の破損を防ぐようにしている。また、さらに、他の例として、後述の強化ガラスとして、強度を上げることも好適な手段としてあげられる。
次に、図14により、本発明のさらに他の特徴について説明する。ここでは、本発明の機能性素子基板の製造装置において、製作される機能性素子基板14が機能性素子基板保持手段13の上に、溶液の液滴43が付与される面を上向きにして、かつほぼ水平(重力作用方向である鉛直方向に対してほぼ90°)に保持されることを示している。このような配置、構成にする理由は、溶液の液滴付与時の液滴の飛翔安定性および基板上への着弾精度を維持するためである。つまり、溶液の液滴が付与される面を上向きにし、噴射ヘッド11から噴射される溶液の噴射方向を重力作用方向と同じにして飛翔安定性を得、基板14上の狙いの位置に高精度に液滴43を付着するようにしている。
さらに、本発明では、溶液を基板上の狙いの位置に高精度に付着するために、本発明に使用される大画面用の基板の精度、ならびに機械的な強度も維持するようにしている。具体的には、本発明に使用される基板は、厚さを2mm以上のものを用いるようにしている。
前述のように、基板14としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を低減させたガラス、青板ガラス、SiO2を表面に堆積させたガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板等が用いられるが、一般に、これらの材料は、金属などと違ってもろく破損しやすい。よって、ある厚さ以上にしないと、基板搬送時に基板が破損するという不具合がある。
一般に、青板ガラスなどは、500kg/cm2程度の湾曲強度をもっているが、いわゆる風冷強化法と呼ばれるガラスの強化手段によって、1500kg/cm2程度の湾曲強度をもつ強化ガラスとし、それを基板にしようするのも一つの選択肢である。その際、通常、2mm〜15mmの厚さのものまでこの手法によって、上記のような1500kg/cm2程度の湾曲強度をもつものとすることができる。厚さが2mmより薄い場合には、風冷強化法では、上記のような1500kg/cm2という湾曲強度をもたせることはできないが、半強化ガラスとすることは可能である。なお、ガラスの強化法として、風冷強化法をあげたが、ガラス表面のイオンを置換することによって表面に圧縮歪みを与える化学強化法も有効な手段である。
本発明の機能性素子基板は高画質の画像表示装置に適用するために、溶液の液滴の基板上への高精度な着弾精度を必要としている。その際、高精度な着弾精度を得るためには、基板14の変形、たわみ等があってはならないし、また、それらに起因して高精度な搬送が行えなかったりするようなことがあってはならない。
本発明は、300mm×450mm程度の中画面〜2000mm×3000mm程度の大画面の画像表示装置に好適に適用されるものであるが、その際、上記のような破損、あるいは変形等に起因する電子源発生素子の精度低下があってはならず、本発明では、これらの点に鑑み、基板14の厚さを2mm以上、15mm以下としている。なお、この2mmという下限値は、前述のような強化ガラスが通常安定して製作できる値である。
さらに、機能性素子製作時の基板の変形を抑えるために、溶液43の液滴が付与される面を上向きにして基板14をほぼ水平(重力作用方向である鉛直方向に対してほぼ90°)に保持するようにしている。図15は、図14の機能性素子基板保持手段13の上に保持した機能性素子基板14を上から見た図(平面図、噴射ヘッドは省略)である。本発明では、機能性素子基板保持手段13で基板14を保持する際に、基板14を面で保持するようにしている。つまり、本発明では、機能性素子基板保持手段13で基板を保持する際に、基板14を垂直やあるいは傾斜をつけて立てかけたりするのではなく、溶液の液滴43が付与される面を上向きにして基板14をほぼ水平に保持し、かつ、機能性素子基板保持手段13で基板14を保持する際に、基板14を面で保持し、300mm×450mm程度の中画面〜2000mm×3000mm程度の大画面の画像表示装置に適用するような基板であっても、基板14の自重による変形をなくし、高精度な機能性素子基板を製作するようにしているのである。なお、基板厚さの上限であるが、基板製作コスト上、あるいは基板素材の製作のしやすさ、重量面からの搬送のしやすさ等から、最大15mm程度にしておくことが望ましい。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明では、前述のように、機能性素子部を形成するのに機能性材料を含有する溶液を液体噴射ヘッド11によって液滴を空中飛翔させ、基板14に付着させて形成する。このような方法によって形成する場合、考慮しなければならないことは、液滴43の空中飛翔時の安定性である。安定した空中飛翔が行われれば、その液滴の付着位置精度も良く、高精度の機能性素子が形成可能となる。一方で、その液滴の付着位置精度が悪ければ、良好な機能性素子は形成できない。そして、その空中飛翔時の安定性は、液滴が空中飛翔するという原理上、空気流等の外乱の影響を受けやすいので、その外乱をシャットアウトするかあるいは安定性が増すような強制力を作用させる、もしくはそれに類する構成とすることによって、空中飛翔時の安定性を確保しなければならない。
本発明は、このような点に鑑み、液滴43が空中を飛翔する際の方向性、あるいは液滴43が噴射ヘッド11から噴出してから基板14に付着するまでの距離Lをどの程度にしたら、安定性が確保でき、高精度な機能性素子が形成できるのかを実験的に見出した。前述のように、本発明では、図2に示したような構成の製造装置で噴射ヘッド11をキャリッジ走査しながら機能性材料を含有する溶液を液体噴射によって液滴を空中飛翔させ、基板に付着させて機能性素子基板を製作する。
図2の例は、たまたま製作される機能性素子基板14を水平に配置し、その上にキャリッジに搭載された噴射ヘッド11を配置し、液滴を上から下へ、ちょうど重力が作用する方向に噴射して形成する場合を示している。この場合には、重力が飛翔する液滴を安定飛翔させるように作用するので、比較的安定した液滴飛翔が行われる。
しかしながら、噴射ヘッド11の噴射口面から、基板までの距離Lを、遠くにとると液滴が空中を飛翔している時間が長くなり、外乱の影響も受けやすくなり、その距離もある範囲内にしなければならないと考えられる。本発明では、その点に鑑み、そのような場合に、噴射ヘッド11の噴射口面から基板までの距離をどのくらいにすれば液滴の安定した空中飛翔が得られ、高精度な機能性素子が形成できるのかを実験的に見出した。
以下に、その結果を示す。実験は図14に示したように、形成される機能性素子基板14の配置を、ほぼ水平にして、液滴43を上から下へ噴射させ、噴射ヘッド11の噴射口面から基板までの距離Lを変化させて、液滴の飛翔安定性を調べた。なお、飛翔安定性は直接見ることができないので、液滴飛翔の結果形成される機能性材料を含有する溶液の液滴の基板上での形状を評価した。
以下に、実際の実験に使用した溶液、噴射ヘッドの条件等を示す。
使用した溶液は、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.1重量パーセント混合した溶液である。
また、使用した噴射ヘッドは、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドで、ノズル径はΦ23μmで、ピエゾ素子への入力電圧を26Vとし、駆動周波数は、9.6kHzとした。その際、下向きに噴射した場合のジェット初速度として、6m/sを得ており、1滴の質量は5plである。キャリッジ走査速度(X方向)は、5m/sとした。なお、噴射ヘッドノズルと基板間の距離は3mmとした。
また、滴飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(本発明例では3mm)にほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた。なお、完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御し、その直径の3倍以内の長さにした。また、その際、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。
その後、この上にアルミニウムを蒸着し、素子形成を行った。ITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として10Vの電圧を印加したところ、表4に示すような結果が得られた。ここでは、噴射ヘッドの噴射口面から基板までの距離Lを変えて液滴噴射し、基板上の素子形成状況および素子性能を評価したものである。
ここで、基板上の素子形成状況が○は狙いの領域(ポリイミドで囲まれた障壁3内)に滴付与が行われたものであり、△は部分的にそこからはみ出たもの、×は完全にそこからはみ出て付与されたものである。素子性能が○は所定の形状で橙色に発光したものであり、×は発光しなかったり部分的に発光(素子としては実使用不可)したりしたものである。
以上の結果より、噴射ヘッドの噴射口面から基板までの距離Lが0.05mmの場合には、良好な素子形成ができなかった。これは噴射ヘッドの噴射口面から基板までの距離Lがあまりにも近すぎるため、液滴が噴射口端面から分離する前に基板に到達してしまうためと考えられる。
また、噴射ヘッドから溶液が上からほぼ下向きに噴射、付与し、噴射ヘッドの噴射口面から基板までの距離Lを0.1mm〜10mmの範囲にすると良好な素子形成が行えるが、それ以上距離Lを大きくすると、次第に良好な素子形成が行えないことがわかる。これは距離Lが大きくなることにより、空中飛翔距離が長くなり、その間に外乱の影響を受けやすくなるためである。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。前述のように、本発明では生産性低下を防止するためには、噴射ヘッド11を搭載したキャリッジの走査を止めることなく、キャリッジ走査しながら順次溶液の噴射を行うようにしている。その場合、その相対移動速度(例えば図2のキャリッジのX方向移動速度)は、単に生産性向上だけで決定されるべきではなく、高精度な素子群を形成するという観点からも検討されなければならない。
本発明では、この点に関して鋭意検討した結果、このような溶液の噴射を行う場合、その噴射速度を前記相対移動速度より速くすることが必要であることに気がついた。このように、吐出ヘッドユニット11を機能性素子基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、溶液の噴射を行い、機能性素子群を形成する場合には、溶液の液滴は前記相対速度と噴射速度の合成ベクトルの速度で機能性素子基板14上に付着、形成される。そして、その位置精度については、機能性素子基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離と、前記合成ベクトルの速度を考慮し、噴射のタイミングを適宜選ぶことにより、その狙いの位置に液滴を付着させることができる。
しかしながら、たとえ、狙いの位置に付着させることができたとしても、もし、前記相対速度が速すぎる場合には、その相対速度に引きずられて付着液滴が機能性素子基板14上で流れ、良好な形状で機能性素子群を形成できなくなる。本発明は、この点について検討したものである。以下に検討結果の一例を示す。この例は、図2のような装置を用い、キャリッジ12のX方向移動速度、ならびに吐出ヘッドユニット11の噴射速度を変えて、機能性素子基板14上で良好な液滴付着ができ、機能性素子として機能するかどうか調べたものである。
使用した基板14は、ITO透明電極付きガラス基板に、ポリイミドをフォトリソグラフィーによって土手(障壁)3を形成したものである。これに図2のような製造装置を用い、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.1重量パーセント混合した溶液をインクジェット原理で噴射速度を変えて付与した。噴射ヘッドノズルと基板間の距離は3mmとした。
使用したインクジェットヘッドは、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドで、ノズル径はΦ25μmで、噴射速度を変えるためにピエゾ素子への入力電圧を18Vから30Vまで変化させ、駆動周波数は、9.6kHzとした。なお、このようなピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドでは、ピエゾ素子への入力電圧を変えて噴射速度が変えられるが、同時に噴射滴の質量も変化するので、駆動波形(引き打ちも含めた立ち上がり波形ならびに立下がり波形)を制御して、噴射滴の質量がいつもほぼ一定(6plにした)になるようにし、噴射速度のみを変えるようにした。
また、液滴43飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(本発明例では3mm)に、図16に示すように、ほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた。なお、完全に丸い球状が得られず、図17に示すような、飛翔方向に伸びた柱状43であっても、駆動波形を制御するだけで容易にその直径の3倍以内の長さにはなる(l≦3d)ようにできた。また、その際、図18に示すような、飛翔滴43の後方に複数の微小な滴43′を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。
その後、この上にアルミニウムを蒸着し、素子形成を行った。ITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として10Vの電圧を印加したところ、表5に示すような結果が得られた。ここで、基板14上の素子形成状況が○は狙いの領域(ポリイミドで囲まれた障壁3内)に滴付与が行われたものであり、×はそこからはみ出て付与されたものである。素子性能が○は所定の形状で橙色に発光したものであり、×は発光しなかったり部分的に発光(素子としては実使用不可)したりしたものである。
以上の結果より、キャリッジのX方向移動速度が、噴射速度以上であると、良好な素子が形成できないことがわかる。言い換えるならば、本発明のように、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを利用した装置で機能性素子基板を製作する場合、噴射ヘッド11から噴射される液滴43の速度は、キャリッジ12のX方向移動速度より速くしなければならないことがわかる。また、この時の滴飛翔条件は、前述のように、飛翔滴43の後方に複数の微小な滴43′を伴うことのない駆動条件(駆動波形)としているので、これら複数の微小な滴43′が、不必要なところに付着するということが全くなく、大変良好な機能性素子および機能性素子基板が得られた。
次に、インクジェットヘッドとして、ヒューレット・パッカード社のDeskJet 970Cxiの商品名で知られているプリンターに使用されているモノクロヘッドを使用し、インクの代わりに、上記溶液をつめて噴射させ、上記と同様の機能性素子基板製作を行い、機能性素子として機能するかどうか調べた。このヘッドの場合も、噴射滴の質量はほぼ一定の6plであったが、滴飛翔時の滴の形状は、上記のピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドの場合と違い、図18に示したように、飛翔方向に非常に細長く伸びた柱状(l=10d〜20d)であった。また、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴ったような状態であった。
このヘッドの場合の液滴の噴射原理は、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドの場合と違い、液体中に瞬時に気泡を発生させ、その作用力で液滴を噴射するものであり、サーマルインクジェット方式と呼ばれているものである。気泡の主たる成長方向と同じ方向に液滴を噴射させるいわゆるサイドシューターと呼ばれるものと気泡の主たる成長方向とほぼ直角方向に液滴を噴射させるいわゆるエッジシューターと呼ばれるものがあり、ここで使用したヘッドは前者である。
しかしながら、いずれもピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドの場合と違い、ノズル出口近傍で気泡を発生させるのでその噴射作用力は強力であり、飛翔滴の形状は、図18に示したように、細長くまた微小滴を伴った飛翔形態をとる。
表6に上記のヘッドを用いた場合の検討結果を示す。なお、発熱体駆動電圧を22Vから23Vまで変化させて液滴の噴射速度を変えている。
以上の結果より、キャリッジのX方向移動速度が、噴射速度の1/3を超えると、良好な素子が形成できないことがわかる。
ここで、表5、表6の結果を比較検討してみると、以下のことがいえる。すなわち、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを利用して、液滴飛翔させた場合は、その噴射原理から、図18のような液柱が細長くまた微小滴を伴った飛翔形態ではなく、図16、図17のように丸い球状あるいは、飛翔方向に伸びた柱状であっても、その直径の3倍以内の長さになるような飛翔形態となり、液滴あるいはそれに伴って飛翔する微小滴の引きずりがないため、キャリッジ移動速度を、サーマルインクジェット方式の場合よりも早くしても良好な素子形成が行え、素子性能も良好なものが得られる。またその噴射原理は、ピエゾ素子の変位を直接あるいは振動板等を介してから、機械的に液体に伝達する(機械的変位による作用力で噴射する)という単純なものであり、サーマルインクジェット方式のように熱が作用するわけではないので、使用できる液体の選択肢が大変広いという利点がある。
つまり、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを利用して、機能性素子を形成する場合には、キャリッジの移動速度より速い噴射速度となるようにすれば、良好な素子が得られ、しかも、いろいろな液体が使用できるので、各種の機能性素子形成ができるということである。
さらに、飛翔液滴を、丸い球状あるいは、飛翔方向に伸びた柱状であってもその直径の3倍以内の長さになるような液滴とし、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴わないような条件を選ぶと不必要な微小滴の液体が周囲に付着しないので大変良好な機能性素子基板が得られる。
一方、サーマルインクジェット方式を利用した場合には、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを利用した場合のようなキャリッジの移動速度と噴射速度の関係では良好な素子を形成することができないが、それでも、キャリッジの移動速度を噴射速度の1/3以下にすれば、良好な素子を形成することができる。また耐熱性の液体を選べば、所望の機能性素子形成ができる。
なお、ここでは実験結果を省略するが、連続流方式の場合は、図16に示したような均一滴が得られるので、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを利用した場合と同じ条件でキャリッジ移動可能である。よって、キャリッジの移動速度を噴射される液滴の速度より遅くなるような条件とすればよい。
また、ドロップオンデマンド型インクジェットヘッドで、ピエゾ素子の変位ではなく、対向する電極間の静電力の蓄積/放出をその変位原理として振動板の機械的変位をおこすいわゆる静電型と呼ばれるものも、ピエゾ素子を利用した場合と同様な滴形成が得られるので、キャリッジの移動速度を噴射される液滴の速度より遅くなるような条件とすればよい。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。前述のように、本発明では、機能性材料を含有する溶液をインクジェットの原理で、ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板に液滴として噴射付与することにより、機能性素子群を形成する。その際、問題となるのが、素子電極42の間に液滴により形成されるドットの形状である。良好な丸いドットが形成されれば、最終的に形成される機能性素子部も高精度に形成でき、良好な機能性素子群を形成できるが、このドット形状が良好でない場合は、機能性素子部も高精度なものが得られない。例えば、形成されるドットが、良好な丸いドットとならず微小滴が飛散したような場合は、良好な機能性素子部を得ることができない。
一般に、インクジェットプリンターは、紙にインクを液滴として噴射付与し画像を得るが、紙の上に形成されるインク液滴のドットは、インク液滴が紙に付着すると同時に、紙の繊維中に速やかに吸収される。あるいは紙の表面に炭酸カルシウム等を主成分としたインク吸収部材がコートされているため、インク液滴が紙に付着すると同時にこのインク吸収部材に速やかに吸収されるようになっている。よって、先に形成されたドットに後続のドットが付着衝突しても、先のドットのインクはすでに紙に吸収されているので、衝突による微小インクの飛び散りはほとんど問題になることなく、また、良好な丸いドットが得られ、高画質な印字品質が得られる。
一方、本発明は、インクジェットの原理で液滴を噴射付与するが、紙に液滴を付与するのではなく、液体を吸収せず保持する表面特性を有する基板、たとえば、ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板、あるいはプラスチック基板に液滴を付与する。よって、付与された液滴は、インクジェットプリンターで紙に印字される場合と異なり、液滴が基板に衝突後瞬時に基板に吸収されるわけではなく、基板面に半球状(よりややフラットな形状ではあるが)に残っている。そして、この液滴内の揮発成分が揮発し、内容物が固化する前に後続のドットが付着衝突する。そして、それにより、微小液滴の飛散、飛び散りが発生し、良好な機能性素子部形成を阻害することがある。また、最初の液滴が付着する場合においても、本発明の基板は液体を吸収せず保持する表面特性を有する基板であるため、インクジェットプリンターのように、付着後すぐに紙の繊維内に液体が吸収されるというものではないので、最適な条件を選ばないと液滴の飛散、飛び散りが発生し、良好な機能性素子部形成を阻害することがある。ここがインクジェットプリンターと本発明の違いである。
つまり、本発明のように、液体を吸収せず保持する表面特性を有する基板、たとえばガラス基板、アルミナ等のセラミックス基板、あるいはプラスチック基板に液滴を付与する場合は、インクジェットプリンターによって紙にインク滴を噴射付与する場合と違い、条件を選ばないと液滴は基板面に衝突した場合に、微小液滴に飛散し良好な丸いドットが得られない場合があり、良好な機能性素子部を得ることができないことがある。本発明は、この点に鑑み、液滴が基板面に衝突し、ドットを形成する際に微小液滴に飛散することなく良好な丸いドットが形成される条件を実験的に見出したものである。表7に、その結果を示す。
実験は、機能性材料を含有する溶液を、インクジェットの原理で、表面を鏡面研摩した石英ガラス基板に噴射付与し、噴射時の液滴の噴射速度を変え、ドット形成状況(ドット着弾位置精度や形成されたドット形状)、微小液滴飛散状況(メインのドットのまわりに飛散した微小液滴の飛散状況)を調べるとともに、最終的に有機EL素子として良好な発光が得られるかどうかをチェックするため、アルミニウムをスパッタし、素子形成を行った。
なお、このような液滴およびドットを形成するための具体的な条件を以下のとおりである。
使用した溶液は、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.2重量パーセント混合した溶液である。
また、使用した噴射ヘッドは、エッジシューター型のサーマルインクジェット方式と同等の構造(図22参照。ただし、ノズル形状は矩形ではなく、流路先端部に丸形状のノズルを穿孔したノズルプレートを貼り付けたものとした。また、溶液はインクではなく、上記溶液を使用した。)とし、ノズル径はΦ25μm、発熱体サイズは25μm×90μm(抵抗値118Ω)のものを使用した。そして、駆動電圧を20〜24V、パルス幅を5〜7μsの範囲で適宜選び、噴射する液滴の噴射速度を、0.5〜12m/sの範囲で変化させ、それぞれの場合の液滴の着弾位置精度、ドット形状、微小液滴飛散状況を調べたのが、表7に示した結果である。なお、この場合キャリッジ走査が引き起こす噴射液滴の噴射不安定の因子を除くため、キャリッジ走査速度を0.1m/sにした(キャリッジ走査速度を液滴噴射速度より遅くし、キャリッジ走査が液滴の着弾位置精度低下を引き起こさないようにした)。
ここで、着弾位置精度の○は狙いの位置に対して1/2ドット径以内の場合、×はそれ以上の場合である。なお、その場合、今回は1〜5ドット径まで変化していた(実験No.1〜3)。ドット形状については、○は良好な丸いドット形状が得られたものである。全般的に、おおむね良好な丸い形状が得られたが、官能検査でやや丸形状がいびつに感じられたものを△とした。微小液滴飛散状況は、微小液滴飛散が生じなかったものを○、微小液滴飛散が生じたもの(メインのドットの周辺に小さい飛び散りが発生したもの)を×とした。
素子性能は、ITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として12Vの電圧を印加し、良好に橙色に発光させることができるかどうか調べたものである。○は所定の形状で橙色に発光したものであり、×は発光しなかったり部分的に発光(素子としては実使用不可)したりしたものである。
以上の結果より、着弾位置精度、ドット形状、微小液滴飛散状況から判断して、良好なドットを得、実用的な機能性素子(この場合は有機EL素子)を得るためには、液滴の噴射速度を3〜10m/sにする必要があることがわかる。つまり、液滴の噴射速度をこの範囲内にすることにより、噴射が安定し着弾位置精度が向上するとともに、先に付着しているドットに後から付着する液滴が、適切な飛翔速度で衝突するので、不必要な液滴ミストが発生して、周辺に付着するということがなく、非常に高精度な機能性素子のパターンが形成でき、その機能性素子の特性も各素子間でバラツキのない良好なものが得られるようになる。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。図4では、素子電極42の間に液滴43を1滴付着させるようなイメージを示した。そして、機能性素子部も丸いイメージで示した(図4では液滴着弾位置44として丸いイメージを示した)。つまり、それほど精度を要求しないような機能性素子を形成するのであれば、図19に示すように、素子電極42の間に大きな1滴の液滴43により大きな1つのドットパターン45でこの機能性素子部を形成すればよい。たとえば、素子電極42の距離が5〜10mmであり、1滴によるドット径もΦ8〜15mm程度の場合には、1滴付着させて機能性素子部を形成すればよい。この場合、それほど高精度の機能性素子は望めないが、単に機能する(発光素子であれば発光する、トランジスタであればトランジスタ機能がでる、電子放出素子であれば電子放出がおきる)という程度のものであればこの方が効率よくできる。
しかしながら、より高精度の機能性素子を形成するには、図20に示すように、この機能性素子部は複数滴によってドットパターン45を形成し、その輪郭がなめらかになるように形成すればよい。1つの好適な例をあげると、前述の素子電極42の距離は140μmである。そして、1滴だけ単独に付着させた場合のドット径は約Φ180μmである。この素子電極42の140μm間を埋めるパターンを形成するように、例えば図20に示すように、4滴の液滴wp打ち込む。この例の場合のように、4滴のドットパターンを重ねて付着させた場合の1つのドット径は約Φ65μmである。つまり、生産性あるいは目的とする機能性素子の精度によって、大きな1滴だけによってこの素子電極42の間を埋める、あるいは小さな複数滴(この場合4滴)の液滴により高精度なパターンを形成するかを、適宜選べばよい。なお、このような液滴およびドットを形成するための具体的な条件を以下に示す。
使用した溶液は、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.2重量パーセント混合した溶液である。
また、使用した噴射ヘッドは、エッジシューター型のサーマルインクジェット方式と同等の構造(ただしインクではなく、上記溶液を使用)とした。図20に示したような1つのドット径が約Φ65μmとなるようにした場合の噴射ヘッドは、ノズル径はΦ28μm、発熱体サイズは28μm×90μm(抵抗値121Ω)で、駆動電圧を24.6V、パルス幅を6μs、駆動周波数を10kHzで駆動し、1滴形成のエネルギーを約30μJとし、その時の液滴の噴射速度は約7m/sであった。
なお、以上の溶液および噴射の条件は、素子電極42の距離が140μmであり、そこに4滴付着させる場合の一例であり、本発明は、この条件に限定されるものではない。例えば、図21は同様に素子電極42の距離が140μmであるが、5滴×2列=10滴付着させて機能性素子を形成する場合である。この例ではドット径は約Φ45μmである。この場合、使用する噴射ヘッドはノズル径が、Φ20μmのものが使用され、また、それに対応して、発熱体サイズは20μm×60μm(抵抗値102Ω)としたものであり、駆動電圧を13.5V、パルス幅を4μs、駆動周波数を16kHzで駆動し、1滴形成のエネルギーを約7.1μJとして液滴を噴射させた。そして、その時の液滴の噴射速度は約6m/sであった。
また、素子電極42の距離も140μmに限定されるものではなく、より高精細な画像表示装置を製作するには機能性素子基板の機能性素子も高密度に配列させる必要があり、例えば、素子電極42の距離が50μmであるような場合もある。その場合も、使用する噴射ヘッドは、上記のようなノズル径がΦ20μmのものおよび発熱体サイズ、駆動条件等もそれに準じて適宜選ばれる。つまり、本発明では、素子電極42の距離および要求される機能性素子の精度に応じ、付着させる液滴数は、1〜30滴程度まで適宜選択し、最適な条件で機能性素子を形成するのであり、特別な条件に限定されるものではない。なお、付着させる液滴数は使用する噴射ヘッドのノズル径にも依存するが、最大30滴程度にとどめておくことが、生産性の面から望ましい(より微小な滴をより多く付着させることも可能であるが、生産性が低下しコスト面で不利になる)。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。前述の例であげた素子電極42の距離は140μmである。そして、1滴だけ単独に付着させた場合のドット径は約Φ180μmである。この場合、本発明では、10滴の液滴をこの素子電極42の140μm間を埋めるパターンを形成するように打ち込むようにしている(図21)。なお、図21では、各ドットの重なり具合を示すために、各ドットは輪郭線で示している。つまり、大きな1滴だけによって、この素子電極42の140μm間を埋める(図19)というラフな方法ではなく、小さな複数滴(この場合10滴)の液滴により高精度なパターンを形成し、高精度な機能性素子を形成している(図21)。この例の場合のように、10滴のドットパターンを重ねて付着させた場合の1つのドット径は約Φ45μmである。
図21に示した例では、斜め方向の隣接ドットの外周が互いに接するように打ち込まれている。別の表現をするならば、直交する2方向の隣接ドットにおいて、直交する2方向の中心間距離lx、lyが、ドットの直径の1/√2倍となるようにしている。この条件は、複数滴のドットを打ち込んだ際に、下地がすべてドットによって被覆される限界の条件である。つまり、本発明では、直交する2方向の隣接ドットにおいて、直交する2方向の中心間距離lx、lyが、ドットの直径の1/√2倍以内となるようにし、複数滴のドットを打ち込んだ際に、下地がすべてドットによって被覆されるようにし、下地が露出しないようにしているのである。
上述のように下地が露出しないようにして、機能性素子部を形成すると、機能性材料を含有する溶液の液滴がすべて機能性素子部をカバーするために、品質の安定した機能性素子部が形成できるとともに、複数滴のドットを重ねて打ち込むためにパターンもなめらかになり、高精度の機能性素子部形成することができる。
上述のような液滴およびドットを形成するための具体的な条件を以下に示す。
使用した溶液は、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.2重量パーセント混合した溶液である。
また、使用した噴射ヘッドは、エッジシューター型のサーマルインクジェット方式と同等の構造(ただしインクではなく、上記溶液を使用)とした。図21に示したような1つのドット径が約Φ45μmとなるようにした場合の噴射ヘッドは、ノズル径はΦ20μm、発熱体サイズは20μm×60μm(抵抗値102Ω)で、駆動電圧を13.5V、パルス幅を4μsで駆動し、1滴形成のエネルギーを約7.1μJとし、その時の液滴の噴射速度は約6m/sであった。
なお、以上の溶液および噴射の条件は、素子電極42の距離が140μmであり、そこに10滴付着させる場合の一例であり、本発明は、この条件に限定されるものではない。つまり、10滴に限らずもっと多くの滴数としてもよいし、また、図21に示したように、5滴×2列というように2列に限定されるものでもなく、3列、4列であってもよい。
また、素子電極42の距離も140μmに限定されるものではなく、より高精細な画像表示装置を製作するには機能性素子基板の機能性素子も高密度に配列させる必要があり、例えば、素子電極42の距離が50μmであるような場合もある。その場合も、使用する噴射ヘッドは、上記のようなノズル径がΦ20μmのものおよび発熱体サイズ、駆動条件等もそれに準じて適宜選ばれる。
つまり、本発明では、素子電極42の距離および要求される機能性素子の精度に応じ、付着させる液滴数は、2〜30滴程度まで適宜選択し、最適な条件で機能性素子を形成するのであり、特別な条件に限定されるものではない。要は、直交する2方向の隣接ドットにおいて、直交する2方向の中心間距離lx、lyが、ドットの直径の1/√2倍以内となるようにし、複数滴のドットを打ち込んだ際に、下地がすべてドットによって被覆されるようにし、下地が露出しないようにすることがポイントである。
次に、本発明に使用する噴射ヘッドについて、図22を用いて説明する。ここでは噴射ヘッドのノズル数を4個とした例を示している。この噴射ヘッドは、発熱体基板51と蓋基板52とを接合させることにより形成されており、発熱体基板51は、シリコン基板53上にウエハプロセスによって個別電極54と共通電極55とエネルギー作用部である発熱体56とを形成することによって構成されている。
一方、前記蓋基板52には、機能性材料を含有する溶液が導入される流路を形成するための溝57と、流路に導入される前記溶液を収容する共通液室(図示せず)を形成するための凹部領域58とが形成されており、これらの発熱体基板51と蓋基板52とを図22(A)に示すように接合させることにより、前記流路及び前記共通液室が形成される。なお、発熱体基板51と蓋基板52とを接合させた状態においては、前記流路の底面部に前記発熱体56が位置し、流路の端部にはこれらの流路に導入された溶液の一部を液滴として吐出させるためのノズル50が形成されている。また、前記蓋基板52には、供給手段(図示せず)によって前記供給液室内に溶液を供給するための溶液流入口59が形成されている。なお、図22(B)は、発熱体基板51と蓋基板52とを分解した時の斜視図、図22(C)は図22(B)に示した蓋基板52を裏側から見た図である。
なお、図22に示したの例では、溝57の端部がそのままノズル50となるような構成であるが、この端部に丸形状のノズルを穿孔したノズルプレートを設けてもよい。また、この例では、4ノズルの噴射ヘッドを示しているが、このようなマルチノズル型の噴射ヘッドを用いると大変効率的に機能性素子を形成することができる。なお、必ずしも4ノズルに限定されるものではなく、ノズル数が多ければ多いほど機能性素子の形成が効率的になることはいうまでもない。ただし、単純に多くすればよいということではなく、多くすれば噴射ヘッドも高価になり、また、噴射ノズルの目詰まりによる確率も高くなるので、それらも考慮し装置全体のバランス(装置コストと機能性素子の製作効率のバランス)を考えて決められる。
また、ノズル数だけではなく、ノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅)についても、同様の考えが必要である。すなわち、単純にノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅)を多くすればよいということではなく、これも装置全体のバランス(装置コストと機能性素子の製作効率のバランス)を考えて決められる。
一例をあげると、本発明では、マルチノズルのノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅)は、素子電極42間距離と同等もしくはそれより大となるようにノズルの数およびその配列密度を決めている。ただし、ここで、それより大となるようにするというのは、無制限に大ということではなく、素子電極42間距離より少し大ということである。つまり本発明の基本的な考え方は、素子電極42間距離と同等のノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅)を確保した噴射ヘッドとすることにより、噴射ヘッドのコストを最小限におさえ、かつ、素子電極42間距離と同等のノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅)とすることにより、効率的に機能性素子を製作しようというものである。
より具体的な数値を、上記のように4滴の液滴を素子電極42の140μm間を埋めるパターンを形成するように打ち込む場合で説明する。この場合、本発明では、図22に示した4ノズルのノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅、言い換えるならば、両端ノズル間距離)は、約127μm(素子電極42の140μm間とほぼ同等の長さとみなせる)とされ、各ノズル間距離は約42.3μmとしている。つまり、この場合、いわゆるインクジェットプリンターでいうところの600dpi(dot per inch)相当のノズル配列密度をもつ噴射ヘッドを使用したものである。
なお、以上は、図22に示した4ノズルの噴射ヘッドで説明したが、各ノズル間距離が約42.3μmの6ノズルの噴射ヘッドとすることも考えられる。この場合、6ノズルのノズル列配列長さ(噴射ヘッドの有効噴射幅、言い換えるならば、両端ノズル間距離)は、約212μm(素子電極42の140μm間より大とみなせる)とされ、素子電極42間距離をノズル列配列長さが余裕をもってカバーし、効率的に機能性素子を製作することができる。
図23は、上述のようにして製作されたマルチノズル型の液体噴射ヘッドをノズル50側から見た図を示している。本発明では、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを、図24に示すように、噴射する溶液ごとに設け、キャリッジ搭載される。図25は図24の斜視図である。
図24、図25には、それぞれのマルチノズル型の液体噴射ヘッドをA、B、C、Dと符号をつけているが、それぞれ各液体噴射ヘッドA、B、C、Dはノズル部分が各液体噴射ヘッドごとに離間して構成されるとともに各液体噴射ヘッドごとに異なる種類の機能性材料を含有した溶液を噴射する。あるいは、赤、緑、青等に発色する有機EL材料を溶解した溶液を各液体噴射ヘッドごとに充填し、各液体噴射ヘッドごとにそれらの溶液を噴射する。
図24、図25は、本発明のそれぞれのマルチノズル型の液体噴射ヘッドを一体型ヘッドユニットとして構成した例であるが、一体型ヘッドユニットとして構成する例として、図26に示すようなものも考えられる。図26に示した例は、共通の1枚のノズルプレート60を有する例(61はノズル)であるが、隣どうしで異なる溶液が共通の1枚のノズルプレート60の表面を伝わって混じり合い、その混じった溶液を噴射して本発明のような機能性素子を製作した場合には、機能発現が阻害されたり、品質の劣る素子ができたりするという不具合がある。
図26に示したような例は、インクジェットプリンター用ヘッドとして利用されているものであるが、インクジェットプリンターの場合には、仮に、隣どうしで異なるインクが共通の1枚のノズルプレートの表面を伝わって混じり合い、その混じったインクを噴射しても、画質が多少劣ることがあったとしても、それほど問題にはならない。それは、インクジェットの場合は、紙上に記録された画像は、本発明のように機能発現を行う機能性素子ではないからである。それゆえ、このような共通の1枚のノズルプレートを有する一体型ヘッドユニットが使用されているが、本発明には適用困難である。その理由は、本発明は、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを利用してそれぞれの液体噴射ヘッドで異なる種類の機能性材料を含有した溶液を噴射し、機能性素子基板を製作するものであるが、インクジェット記録と違って、最終的に製作される機能性素子基板は、たとえば、有機EL素子であったり、有機トランジスタであったりするように、それぞれ機能発現するものである。よって、形成される素子に不純物が混じると当然ではあるが素子性能が低下し、使用に耐えないものとなる。
上述のような点に鑑み、本発明では、図24、図25に示したように、それぞれの液体噴射ヘッドはノズル部分が各液体噴射ヘッドごとに離間して構成しているのである。つまり、本発明では、各液体噴射ヘッドを独立に形成し、その後、ユニットとしているが、ノズル部分が各液体噴射ヘッドごとに独立しているので、溶液が隣にいかないようになっている(図26のように、共通の1枚のノズルプレート構造の場合は、ノズルプレート表面を伝わって、溶液が隣に移動、付着、混入する危険性が大である)。
このような、本発明の考えをより効果的に実現するには、たとえば、図27に示すように、各液体噴射ヘッドを完全に分離した形でユニット化すればよい。
次に、本発明の他の特徴について説明する。図28は、図24に示した本発明のマルチノズル型の液体噴射ヘッドユニットをキャリッジ搭載して、機能性材料を含有した溶液を噴射しながらキャリッジ移動する際のキャリッジの移動方向とマルチノズル型噴射ヘッドのマルチノズルの配列方向との関係を説明するための図である。
図28(A)は、1種類の噴射ヘッドのマルチノズル配列方向をキャリッジ移動方向に対してほぼ垂直とした例、図28(B)はその垂直とした例に対してやや角度をつけた例である。
これに対して、図29、図30の例は、本発明とは異なり、マルチノズル配列方向をキャリッジの移動方向と平行にした場合であるが、このようにすると、ヘッドユニットのコンパクト性を阻害したり(図29)、噴射効率が悪い(図29、図30の場合、この例では、ある1種類の溶液は、4ノズル分ずつ群で打ち込むとともに、群単位でキャリッジ移動を行わなければならない。)という不具合がある。
本発明では、図28に示したように、マルチノズル型噴射ヘッドのマルチノズルの配列方向は、噴射しながらキャリッジ移動する際のキャリッジの移動方向と非平行になるように配列されている。こうすることにより、図29、図30の例に示したような不具合を解消でき、コンパクトなヘッドユニットが実現するとともに、キャリッジの連続的な移動に対して、ある1種類の溶液を噴射する1つの噴射ヘッドを適宜駆動して、必要に応じて噴射すればよく、上記のように群単位ごとの制御は必要としない。
なお、図28(B)に示したような例では、ノズル列配列密度以上に打ち込み密度を高くできるという利点もあり、ノズルの高密度配列ができない噴射ヘッド(たとえば、後述の図41、図42に示したようなピエゾ素子利用の液体噴射ヘッド)を利用する場合に効果的である。
次に、本発明の他の特徴について、図31を用いて説明する。前述(図2、図3)のように、本発明では、噴射ヘッドは基板(機能性素子基板)14と相対移動を行いながら、液滴を付与して、機能性素子群を形成する。図31は、基板(機能性素子基板)14に形成された素子電極42およびその素子電極42間に縦方向(副走査方向)に4滴の液滴付与によって形成された機能性素子群を示すとともに(図31(B)の拡大図参照)、噴射ヘッドをノズル面から見た図で示している(図3(C)参照)。横方向はここでは主走査方向と定義する。
説明を簡略化するために、今、ここでは、噴射ヘッドと基板(機能性素子基板)14の相対移動を図2の場合のように基板(機能性素子基板)14の前面に置かれ、キャリッジ搭載された噴射ヘッドが主走査方向ならびに副走査方向に移動しながら液滴を付与して、機能性素子群を形成する場合の例で説明する。
前述のように、図31では、素子電極42間に縦方向(副走査方向)に4滴の液滴付与によって形成された機能性素子群を示しているが、本発明では、このような基板(機能性素子基板)14に機能性素子群を形成するだけではなく、それ以外のパターンも同様の噴射ヘッドを利用して形成しようとするものである。そのため、図31に示したように、領域X、領域Yはそれぞれ主走査方向ならびに副走査方向の機能性素子群形成領域であるが、それら以外に領域Xa、領域Xb、領域Ya、領域Ybという具合に、機能性素子群形成領域の外側にも少しスペースを設け、キャリッジ搭載された噴射ヘッドが主走査方向ならびに副走査方向に移動しながら液滴を付与する場合も、これら領域Xa、領域Xb、領域Ya、領域Ybまでもキャリッジ走査が可能であるようにし、さらに、それらの領域においても、機能性素子群を形成するために噴射する溶液と同じ溶液を噴射付与できるような機能性素子基板製作装置としている。また、使用する基板(機能性素子基板)14も機能性素子群を形成するだけではなく、機能性素子群形成領域の外側にも少しスペースを設けたような基板としている。
このような機能性素子基板製作装置ならびに基板とすることにより、噴射ヘッドは単に機能性素子群を形成するためのパターン形成だけではなく、それ以外のパターン形成も行うことが可能となる。例えば、各基板ごとに他の基板と区別するためのパターン形成なども行うことができる。より具体的な1例として、図31では123と示したが、製造番号や製造年月日などを噴射ヘッドによって1枚1枚の基板に形成することができる。なお、いうまでもないが、このような数字、文字に限らず、1枚1枚を区別する、もしくは複数枚ずつを区別するためものであれば、記号、図柄のようなものでもよい。
通常、このような製造番号などは、完成した部品ユニットに銘板を貼ったり、刻印したりしているが、本発明のように、非常に高精度で、清浄度が要求されるような部品ユニット(機能性素子基板)の製作においては、後で銘板を貼ったり、刻印したりといった工程がはいると、その作業時の汚染あるいは空気中の塵埃等による汚染によって、機能性素子基板の本来の性能が維持できなくなることがある。しかしながら、本発明では、機能性素子群を形成する際に同時にこのような製造番号などを付与できるので、機能性素子群を形成する環境と同じ環境(通常、クラス100〜1000程度のクリーンルーム)を維持したままこのような工程(製造番号などの付与工程)を行うことができるので、製造される機能性素子基板は汚染等の問題もなく、非常に高性能な機能性素子基板が製作できる。また、従来のように後から別の装置で刻印したりする必要もないため、非常に効率がよく製造コストも下げることができる。
次に、本発明の他の特徴について説明する。図32は前述の図31と同様に、素子電極42間に縦方向(副走査方向)に4滴の液滴付与によって形成された機能性素子群を示しているが、この例では、機能性素子群形成領域である領域X、領域Y以外の領域Xa、領域Xb、領域Ya、領域Yb、つまり機能性素子群形成領域の外側にも少しスペースを設け、そこにも、同様な複数対の素子電極を形成するとともに、その素子電極間に機能性材料を含有する溶液の液滴を噴射付与することにより、機能性素子と同様の素子電極および機能性材料薄膜のパターンを形成したものである。この例では4ヵ所に設けた例を示している。
このように、機能性素子群形成領域の外側に機能性素子と同様の素子電極および機能性材料薄膜のパターンを形成することの理由は、機能性素子部を形成した際の素子の機能等のチェックをこのパターンを使って行うためである。形成された機能性素子を全数チェックすれば確実ではあるが、それには非常に時間がかかり、コスト的に大変高いものとなってしまう。しかしながら、本発明では、このようなチェック専用のパターンを設け、素子の全数チェックを行うのではなく、このパターンを用いてチェックを行うので、短時間にチェックが終了する。チェックの仕方としては、たとえば、機能性素子として有機EL素子を形成した場合、素子部にITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として電圧を印加し、発光の有無(良否)をチェックする。
なお、この例では、チェック用のパターンも機能性素子群と同じ素子の例として説明したが、必ずしも全く同じにする必要はなく、チェック専用のパターンとして、簡略化した形状のパターンであっても良い。また、その数も必ずしも4個にする必要はない。ただし、ある1ヵ所のみにチェックパターンを形成してチェックするよりは、この例のように、4隅にそのようなチェックパターンを形成しておいてチェックした方が、大面積の基板の性能チェックには有利である。特に、200mm×200mm程度より小さい機能性素子基板の場合は1ヵ所でもよいが、それより大きいものに関しては、広範囲にわたる基板全体の一定の品質を確保するうえで、複数個のチェック用パターンを分散して配置することが望ましい。なぜなら、そもそも、このようなチェックパターンを設ける目的は、広範囲に製作した複数個の素子が、場所によらず均一にできているかどうかをチェックするためだからである。
以上の説明より明らかなように、本発明の機能性素子基板は、基板上の複数対の各素子電極間に機能性材料を含有する溶液の液滴を噴射付与され製作されるが、機能性素子基板は機能性素子群が形成される領域よりも少し大きく構成され、その領域の外側にも、このような溶液の液滴を噴射付与し、いろいろなパターンを形成可能とした基板であり、また、それを製作する装置も、その領域の外側にも溶液の液滴噴射付与ができるようにした製作装置である。
次に、本発明のさらに別の特徴について説明する。本発明に使用される機能性素子基板は、前述のように、機能性素子群が形成される領域よりも広い(外側の)領域にも、機能性材料を含有する溶液の液滴を噴射付与され、機能性素子を形成できるようになっている。つまり、本来の機能性素子群の他にさらにその外側の領域に第2の機能性素子群を形成された機能性素子基板である。図33にその例を示したが、この例では、領域Yaに第2の機能性素子群が形成されている。
本発明では、たとえば、機能性素子として有機EL素子群を形成し、さらに、第2の有機EL素子群も形成することによって、このような機能性素子基板とこの機能性素子基板に対向して配置されたガラスあるいはプラスチック等の透明カバープレートをケーシング(パッケージング)することにより、自発光型の有機ELディスプレイ等の画像表示装置とすることができる。そして、この第2の有機EL素子群に信号情報を入力して駆動することにより、第2の有機EL素子群の領域においても画像表示を行うことができるようにしている。
よって、この第2の有機EL素子群への信号情報入力を、完成した画像表示装置ごとに異ならせ、例えば、製造番号などを各画像表示装置ごとに表示させるようにしたり、あるいは、製造ロットごとに表示色を変えるなどすることにより、製作後の画像表示装置が容易に区別できるようになる。特に製造番号を画像表示することにより、従来のように後から別の装置で刻印したりする必要もなく非常に効率がよい。
なお、以上の説明では、第2の機能性素子群(有機EL素子群)というように本来の機能性素子群(有機EL素子群)とはさらに別に設けた例を説明したが、それらを特に区別せず、機能性素子群(有機EL素子群)に、本来の表示信号と切り替えて、製造ロットごとに表示色を変える表示、製造番号などの表示を行う信号入力を行ってもよい。あるいは、その切り替えを行わず、本来の表示と同時に製造ロットごとに表示色を変える表示、製造番号などの表示を行ってもよい。
また、本発明では、液滴噴射付与領域が機能性素子群が形成される領域よりも広くしているので、上記のように、機能性素子群を形成する以外にチェックパターンや識別パターンを形成できるだけでなく、さらに噴射ヘッドの安定動作確認のために、機能性素子群形成領域以外、あるいは機能性素子基板からはずれた領域で噴射ヘッドのためし打ちなどを行うことができ、安定した性能を維持することが可能である。
次に、本発明の他の特徴について説明する。図34は、図2に示した本発明の製造装置の特徴を説明するために模式的に示したものであり、必ずしも全ての構成を示しているわけではない。図34において、11は吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12はキャリッジ、13は基板保持台、14は機能性素子を形成する基板、15は機能性材料を含有する溶液の供給チューブ、70は補助容器、71は液容器、72は容器保持部材、73は容器保持部材の縁、74はポンプである。
図34より明らかなように、本発明の機能性材料を含有する溶液の液容器71は基板保持台13に載せられた機能性素子を形成する基板14よりも下に配置している。こうすることによって、万が一、この液容器71から溶液があふれたり漏れたりしても、液容器71が基板14よりも下になるように配置されているので、基板14の機能性素子群形成面を漏れた溶液によって汚すという事故は皆無となる。また、その液容器71は容器保持部材72に載置される。よって、この場合も、不慮の事故によって、溶液が漏れるようなことがあっても、漏れたよう溶液は、まず最初に容器保持部材72上にとどまり、床にすぐ流れて床を汚したり、あるいは、近傍の電装系を濡らしたりするということがなく、大事に至る事故を誘発することがない。
しかしながら、大量に溶液が流れ出た場合などは、単なる平板上の容器保持部材の場合は、その容器保持部材から流れ出ることもある。本発明は、このような点も考慮し、容器保持部材72に、液容器71の外側をとり囲むような縁73を有するようにするとともに、その縁73の高さを、液容器71の溶液の最大液位(液面78)より高くなるように(大であるように)している(図37参照)。このような構成にすれば、溶液は絶対に縁73を超えて外へ流れ出るということはない。
また、他の構成として、容器保持部材72を、液容器71の外側をとり囲む縁を有するようにするとともに、縁73の高さを、その縁73の高さで決定される容器保持部材72の容積が、液容器71の液容量より大となる高さにすることも好適な例である。このような構成にすれば、不慮の事故によって液容器71の溶液が漏れたとしても、漏れた溶液を保持でき他への流出を食い止めることができるので、大事に至らないようにすることができる。以上2つの構成例を説明したが、このような構成にすることによって、万が一不慮の事故によって液容器71内の全部の溶液が漏れたとしても、容器保持部材72で、溶液の他への流出を阻止することができ、本発明の製造装置の電気系統の破損を皆無とすることができる。
次に、本発明の他の特徴について説明する。本発明では、上述のように、機能性材料を含有する溶液の液容器71は基板保持台13に載せられた機能性素子を形成する基板14よりも下に配置している。そして、その溶液は、基板保持台13あるいはそれに載せられた機能性素子を形成する基板14よりも上に位置する噴射ヘッド11まで、供給されなければならない。溶液の使用量が少なく、また、液滴として噴射する頻度も遅い(たとえば、1個のノズルあたり、数10Hz〜数100Hz)場合であれば、溶液供給チューブ15内を毛管現象の原理で自然供給しても事足りるが、ノズル数を複数個(数個〜数100個)有するような噴射ヘッド11を用い、かつ、液滴として噴射する頻度も大(たとえば1個のノズルあたり、数kHz〜数10kHz)の場合には、溶液の供給は自然供給ではなく、何らかの作用によって行う必要がある。特に、本発明の場合、液容器71は基板保持台13に載せられた機能性素子を形成する基板14よりも下に配置しているので、その水頭差を補償する意味でも、何らかの強制的な作用によって液供給することが必要である。
本発明では、図34に示したように、噴射ヘッド11と液容器71の間にポンプ74を介在させている。こうすることによって、たとえ、上記のような水頭差があっても、また大量にかつ高頻度で使用しても(噴射ヘッド11を高い駆動周波数で稼動させても)、溶液の供給能力不足による液滴の空噴射が生じて、機能性素子形成不良を生じさせることがない。
なお、本発明では、このポンプ74も、基板保持台13に載せられた機能性素子を形成する基板14よりも下に配置している。よって、上記液容器71の溶液漏れと同様に、仮に不慮の事故によってこのポンプ74から溶液漏れが起きた場合も、基板14の機能性素子群形成面を漏れた溶液によって汚すという事故は皆無となる。
また、図34には示さなかったが、本発明のポンプ74も、液容器71を保持する容器保持部材72のようなポンプ保持部材(図示せず)に載置し、漏れた溶液を他へ流出しないようにされる。
次に、このようなポンプ74によって、機能性材料を含有する溶液は、溶液の供給チューブ15を通って補助容器70〜噴射ヘッド11へと運ばれる。ここで、噴射ヘッド11は、キャリッジ12に搭載され、機能性素子を形成する基板14と対向する位置で、キャリッジ往復運動を行う。そのため、溶液の供給チューブ15には可撓性の材料が選ばれる。たとえば、ポリエチレンチューブ、ポリプロピレンチューブ、テフロン(登録商標)チューブなどが好適に使用される。また、使用する機能性材料を含有する溶液によっては、光を遮断する必要があるものもある。たとえば、感光性の樹脂であったり、光硬化型の接着剤であったりした場合などは、その材料が感光する波長の光を遮断する供給チューブ15を使用すればよい。
なお、供給される溶液は、噴射ヘッド11へ運ばれる前にいったん補助容器70に入る。補助容器70は溶液76を一時貯留する役割があるが、図34に示すように、補助容器70容量いっぱいに溶液76を貯留するのではなく、空気層77が存在するような形で貯留する。つまり、ポンプ74によって、供給された溶液はポンプ54の脈動があるため、いったん補助容器70に入れて、その空気層77を緩衝手段として脈動を除去し、その後毛管現象で噴射ヘッド11に供給される。このような溶液供給を行うことにより、噴射ヘッド11における液滴噴射性能は安定化し、良好な機能性素子群を形成することが可能となる。
図35〜図37は図34で概念的に示した液容器71および容器保持部材72のより具体的な一例を示す図である。図35はカートリッジ化された液容器71であり、使用前の状態を示している。なお、図35において、75は大気連通孔、76は溶液、78は液面、79は液流入部、80は閉止体である。このようなカートリッジ化された液容器71は、使用前は、たとえば、粘着性かつ気密性を維持できるテープ状の閉止体80で気密状態にされている。そして、使用直前に、テープ状の閉止体80を除去し、気密解除される(図36)とともに、容器保持部材72の方向(図36の矢印Y方向)に押し込まれる。そして、ゴム等の弾性部材で形成された液流入部79に注射針のような内部に液を流すことが可能な液流入針82を差し込み使用される(図37)。
図36の容器支持材81は、カートリッジ化された液容器71を保持する部材であり、ゴム等の弾性部材によって形成される。そして、液容器71を外側から支えるとともに、O−リングのようなシール部材としても機能し、不慮の事故により液流入部79から溶液が漏れるようなことがあったとしても、シールすることが可能となっている。
上記説明は、カートリッジ化構造の液容器71の一例であるが、このように、カートリッジ化することにより、使用者は手を汚すことなく、簡単に溶液の補給(カートリッジ交換による溶液補給)が可能となる。なお、本発明のカートリッジ化された液容器71は、図35あるいは図36に液面78を示すように、容器容量100%に溶液76を入れていない。また、大気連通孔75を形成している領域の天井高さを他の領域より高くしている。これらは、図36〜図37のように、閉止体80をはがして、液流入部79に液流入針82を差し込んで使用可能状態にする際に、大気連通孔75から溶液が溢れて、使用者の手を汚さないようにするための工夫である。蛇足ではあるが、図37の液面78が図35あるいは図36の液面78より低いのは、液流入部79に液流入針82を差し込んで使用可能状態にする際に、溶液が、液流入針82およびそれに連通する供給チューブ15側に移動するからである。
また、前述のように、この液面78は、容器保持部材72の液容器71の外側をとり囲むように設けられた縁73の高さより低く設定し、不慮の事故による溶液76の外部への流出を防止し、装置の電装の事故防止のみならず、周囲の汚染防止も行っている。
次に、本発明の他の特徴について説明する。図38は、図34に示した本発明の製造装置の変形例であり、図中、77は空気層、76は溶液、83はフィルターa、84はフィルターbである。
前述のように、本発明では、噴射ヘッド11と液容器71の間にポンプ74を介在させている。また、このようなポンプ74によって、機能性材料を含有する溶液は、液供給路85、溶液の供給チューブ15を通って補助容器70〜噴射ヘッド11へと運ばれるが、間にフィルター83、フィルター84を介在させている。噴射ヘッド11は、キャリッジ12に搭載され、機能性素子を形成する基板14と対向する位置で、キャリッジ往復運動を行う。そのため、溶液の供給チューブ15には可撓性の材料が選ばれる。たとえば、ポリエチレンチューブ、ポリプロピレンチューブ、テフロン(登録商標)チューブなどが好適に使用される。
図39は、本発明の溶液の流れの系統図(ポンプ74、補助容器70は省略)である。本発明では、液容器71より下流側に少なくとも2種類のフィルターを設けている(フィルター83、フィルター84)。これは、本発明ではインクジェット原理によって、微小なノズルから溶液を噴射するため、ノズルの目詰まりを生じさせないようにするためである。
ここで、フィルター83は、本発明の噴射システムのメインフィルターであり、たとえば、孔径(フィルターメッシュサイズ)0.45μmのメンブレンフィルター(0.45μm以上の異物を除去(トラップ)可能)が用いられる。フィルター材質は、ニトロセルロース、アセトセルロース、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)等よりなるが、これは使用する機能性材料を含有する溶液との適合性(compatibility)を考慮して適宜選ばれる。なお、これよりもっと孔径の小さい(たとえば0.2μm)のメンブレンフィルターも使用可能であるが、あまりに孔径が小さいと、フィルターがすぐにつまり、溶液の流れが悪くなり、交換を頻繁にしなければならなくなるので、交換頻度を考慮して、その孔径を決めるのがよい。ただし2μm以上のものは、本発明の噴射システムとしてはフィルター機能として役立たないのでそれ以下にしなければならない。
本発明では0.45μmのメンブレンフィルターを好適に使用するが、本発明の噴射システムにおいては、液容器71から噴射ヘッド11へ流れる溶液中のほとんどの異物をここでトラップする。よって、このフィルター83のフィルタートラップ容量(異物トラップ容量)、最下流のフィルター84よりはるかに大とされる。
図40は、本発明の溶液の流れの系統図の他の例である。この例も、液容器71より下流側に少なくとも2種類のフィルターを設けている(フィルター83、フィルター84)が、ここでは、フィルター84を噴射ヘッド11に組み込んだ例を示している。
上述のような構成の噴射ヘッド11およびフィルター84よりなる噴射ユニットの例を溶液の液滴噴射の原理とあわせて図41、図42に示す。この液体噴射ヘッド11は、溶液76が導入される流路90内にエネルギー作用部としてピエゾ素子91を設けたものである。ピエゾ素子91にパルス状の信号電圧を印加して図41(A)に示すようにピエゾ素子91を歪ませると、流路90の容積が減少すると共に圧力波が発生し、その圧力波によってノズル1から液滴43が吐出する。図41(B)はピエゾ素子91の歪がなくなって流路90の容積が増大した状態である。
ここで、ノズル1直前の流路90に導入される溶液76は、フィルター84を通過してきたものである。本発明では、このように、フィルター84を噴射ヘッド内に設け、ノズル1の最近傍にフィルター除去機能を持たせている。これは、前述のメインフィルター(フィルター83)で、ほとんど100%近い確率で、異物除去を行ってはいるものの、メインフィルター(フィルター83)交換時に混入する異物などは、メインフィルター(フィルター83)で除去できないので、このように、ノズル1の最近傍にフィルター84を設けているのである。よって、このフィルター84は、ノズル1の最近傍に設けるものであるため、着脱不可としている(これを着脱交換するとまたその作業にともなう異物混入が起きるため)。
しかしながら、本発明の噴射システムにおける異物除去の主体はメインフィルター(フィルター83)であり、このフィルター84はあくまでも補助的手段である。よって、前述のように確実に異物除去を行うために、メインフィルター(フィルター83)はそのフィルタートラップ容量をフィルター84よりはるかに大とするとともに、その孔径(フィルターメッシュサイズ)は、フィルター84より小さくする。つまり、フィルター84はフィルタートラップ容量を小さくし、その孔径(フィルターメッシュサイズ)をフィルター83よりも大とするような小型の簡易フィルターとすることによって、図42に示したように噴射ヘッド11内に組み込むことが可能となっている。そして、噴射ヘッド11そのものもコンパクト化を実現できている。
また、図39に示したように、噴射ヘッド11の外にフィルター84を設ける場合も、上記説明と同様に、小型の簡易フィルターとすることによって、図38に示したキャリッジ12上に搭載でき、キャリッジのコンパクト化が実現する。このようなフィルター84は、たとえば、ステンレスメッシュフィルターが好適に用いられ、その孔径(フィルターメッシュサイズ)は、2μm〜3μmとされる。このフィルター84はあくまでも補助の小型簡易フィルターであるため、前述のような小さいフィルターメッシュサイズを選ぶとすぐにフィルター詰まりを起こし(噴射ヘッド11内に組み込まれるような小型サイズであるためフィルタートラップ容量が小さいから)使用不可能になるので、フィルター83よりも大であるフィルターメッシュサイズとされる。
本発明のポイントは、液容器より下流側に少なくとも2種類のフィルターを設け、最下流に設けたフィルターは着脱不可に固定したものであり、上流側に設けたフィルターは複数あってもよい。
また、他のポイントは、最下流に設けたフィルターは、噴射ヘッド内に設けるとともにそれより上流側に設けたフィルターより、フィルターメッシュサイズが大としたことである。さらに、最下流に設けたフィルターは、噴射ヘッド内に設けるとともにそれより上流側に設けたフィルターより、フィルタートラップ容量が小としたことである。この内容(フィルターメッシュサイズおよびフィルタートラップ容量)を満足するものであれば、最下流に設けたフィルターより上流側に設けたフィルターは複数あってもよい。
次に、本発明の他の特徴について説明する。図43において、95は信頼性維持装置、12はキャリッジ、11は噴射ヘッドである。キャリッジ12に載置された噴射ヘッド11は、基板に向けて液滴を噴射して所望のパターン形成をする。また、信頼性維持装置95は、機能性素子基板設置領域以外に設けられるとともに、図の矢印Y方向に上下することにより、噴射ヘッド11の溶液噴射口面をキャップ、吸引するものである(図は非キャップ状態を示している)。
図43は、本発明の製造装置における信頼性維持装置95の位置関係を示した模式図であるが、このような信頼性維持装置95の溶液を吸引、排出、溶液噴射口面をキャップする機能、構造を、図44(A)、(B)により説明する。
図44,図45において、101はキャリッジ102に装着された噴射ヘッドであり、103は噴射ヘッド101の先端に取付けたノズルである。キャリッジ102の噴射ヘッド101側の左右の外壁(図44(A)では上下の外壁)に面取り部102aを設け、また噴射ヘッド101の先端部を切り欠いて凹部101aを設けている。104はキャップスライド、105はスライド104をキャリッジ102に向けて押し付ける電動レバーである。キャップスライド104のうち、噴射ヘッド101と対向するキャップ部分には、溶液吸収体106を充填した深孔107をあける。溶液吸収体106の中心部には通路106aを設ける。
キャップ部分の先端には、キャリッジ102に対向して、その面取り部102aを嵌合可能な凹部108を形成する。この凹部108の中央部には吸収体106を覆蓋して、噴射ヘッド101の凹部101aに圧接嵌合されるように形成した凸状弾性キャップ109を嵌着する。この弾性キャップ109の中心部には、通路106aに連通する孔109aをあけておく。
一方、キャップスライド104には、図44(A)に示すように、深孔107と平行に軸孔110をあけ、この軸孔110に軸111を嵌入する。軸111は、装置本体に取付けたキャップ固定板112にスナップリング113等で固定される。軸111の他端には、軸孔110内に係合してボス114を嵌挿して、軸111の他端部をスナップリング115によりボス114の先端部に固着する。
従って、キャップスライド104を記録ヘッド101に向けて移動させるときに、軸孔110が軸111の軸線方向にボス114に沿って摺動可能となる。そして、軸孔110とボス114との間には圧縮ばね116を装着し、かかる摺動時にキャップスライド104が固定板112に向けて偏倚されるようにする。117は電動レバー105が反時計方向に回動したときに、このレバー105をロックするためのばね性ロック部材である。140はノズル吸引装置の吸引ポンプ本体であり、135は通路106aとポンプ本体140とを連結する吸引管である。これらの吸引ポンプ本体140、吸引管135の詳細について、引続き図45により説明する。
図45は、本発明における信頼性維持装置95に設けたノズル吸引装置の一例を示し、ここで140は台座121に固着された円筒状の吸引ポンプ本体である。吸引ポンプ本体140は太径の吸引室122と、この吸引室122と隔てて上端部に設けた環状封止溝123とを有し、吸引ポンプ本体140のうち、この封止溝123の上方に開口120aをあけておく。この封止溝123には、Oリング124を嵌装する。ポンプ本体140内には、台座121に固着した軸125を封止溝123の先端付近まで上方に延在させる。141は吸引ポンプのピストンであり、このピストン141は開口120a及び封止溝123を嵌入して摺動可能な形状の細径部128を有し、その上端部を前述のレバー105に固着する。
ピストン141の下端部は吸引室122に嵌合する太径部127を有し、この太径部127のうち細径部128より張出している周縁部には、太径部127を軸方向に貫通する通路129をあけ、この通路129の吸引室122側の下端側には通路129の両端の開口部における圧力差変動に応動して開閉する弁130を装着する。また、太径部127の外壁にはOリング131を装着して、かかる外壁と吸引室122との間のシールを行う。更に、ピストン141の太径部127の吸引室側底面には、凹部132を切り欠いて、この凹部132と台座121との間に圧縮ばね133を取り付ける。この圧縮ばね133は、所要時に手動にてピストン141を下方に押し込んだ後に、ピストン141が上方に自動復帰するためのものである。
吸引室122の上部側壁には連通孔134をあけ、この連通孔134に吸引管135を接続する。吸引管135の他端は、図44(B)に示すように、溶液吸引体106の通路106aに連通している。従って、ピストン141を下方に押し下げたときに、ピストン141の太径部127とポンプ本体140の上端部との間に形成される負圧状態の空所136に対して、連通孔134から吸引管135を経由して通路106aが負圧状態に吸引される。更に、ポンプ本体140の下方部の一側壁(図45では左側壁)には、空所136が下方まで拡がったときにその空所66の負圧を逃し、しかも、溶液排出を行うことができる孔137をあけておく。
次に、以上のように構成したヘッド信頼性維持装置95の作動を、図46(A)、(B)及び図47を参照して説明する。図46(A)、(B)は、レバー105を電動で反時計方向(図44(A)の矢印方向)に回動させ、ロック部材117によりレバー105をロックした状態を示し、キャップスライド104の先端の弾性キャップ109が噴射ヘッド101に圧接されて、そのノズル103を密封する。それと共に、ノズル103は孔109aに嵌入してキャップ109の後方の溶液吸引体106と対向する。
そして、溶液を吸引排出する場合には、図47に示すように、ピストン141を下方へ押下げることにより、空所136内に負圧を発生させ、その負圧によりノズル103の先端を吸引して、溶液をノズル103から外方に吐出させる。そのためには、先ず、図46(A)、(B)に示すように、キャップスライド104の先端の弾性キャップ109を噴射ヘッド103に圧接させ、その状態でレバー105をキャップ固定板112とキャップスライド104との間を摺動させるようにして下方へ押下げて、ピストン141を押下げる。このとき、ピストン141の太径部127とポンプ本体140の上端部との間に形成される空所136は、ピストン141の押下げによる体積膨張により負圧になるから、この空所136に繋がる通路106a内も負圧となる。また、噴射ヘッド101に溶液を供給するタンク(図示せず)は常時大気開放型であるため、ノズル103内の溶液はノズル103の前後の圧力差により、ノズル103から外方へ吐出する。
次いで、ピストン141を離すと、圧縮ばね133によりピストン141は図47に矢印で示すように、上方へ復帰する。このとき、弁130は厚み数10μmのフイルムで構成されているので、上下の圧力差に変動に敏感に応動し、弁130は開放状態となり、空所136に吸い込まれた溶液は通路129を経てポンプ本体140の下方に設けた孔137から外部へ排出される。なお、通路129の管路抵抗を吸引管135の管路抵抗より小さくしておくことにより、空所136に溜まっている溶液を通路129から容易に排出することができる。
なお、キャリッジ102の先端の側壁102aを面取りし、これと当接するキャップスライド104にも凹部108を設け、弾性キャップ109にも凸状先端部を設けたから、キャリッジ102とスライド104との間に位置のずれが多少あっても、これらの凹凸部により、両者の位置関係のずれは修正されて、噴射ヘッド101はキャップスライド104により確実に密封される。
前述のように、本発明において、信頼性維持装置95は機能性素子基板設置領域以外に設けられる。これは、本発明においては、吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)11は機能性素子基板14に対して一定の距離(たとえば0.1mm〜10mm)を保ちながら平行にX方向(あるいはY方向、もしくはX、Yの2方向)にキャリッジ移動を行いつつ溶液の噴射を行い、機能性素子群を形成するため、噴射ヘッド11と機能性素子基板14の間に信頼性維持装置Aを設けることがはなはだ難しいからである。
信頼性維持装置95に噴射ヘッドの噴射ノズル面の単なるキャップとしての機能を持たせるだけであるならば、噴射ノズル面と機能性素子基板14の距離である0.1mm〜10mmという狭い範囲に薄い板状のキャップを挿入させることも不可能ではないが、それでも、高精度な薄い板状のキャップ挿入技術を必要とし、一歩間違えば噴射ノズル面を傷つけ、破損させてしまい、製造装置の機能性素子基板製造機能を損ねてしまうことになる。
仮に、機能性素子基板14の下、すなわち基板保持台13に内臓するような構造とすれば、可能ではあるが、キャップ、吸引を行うたびに、機能性素子基板14をはずしたり、移動させたりしなければならず、大変能率が悪い。また、機能性素子基板14を破損させたりする危険性もある。
本発明の信頼性維持装置95を機能性素子基板設置領域以外に設けた理由は、この点を考慮した結果である。本発明は、このように、信頼性維持装置95を機能性素子基板設置領域以外に設けることにより、このような製造装置の機能性素子基板製造機能を損ねたり、製造効率を低下させることなく、噴射ヘッドの目詰まりを防止し、安定した稼動できるようにすることができたものである。
次に、本発明の他の例について、図48を用いて説明する。この例では、信頼性維持装置95は、機能性素子基板設置領域、すなわち機能性素子形成のために液滴噴射を行う領域において、機能するようにしたものである。ただし、キャリッジに工夫を凝らし、図中、96にて示す回転軸を中心に噴射ヘッド等の向きを変えられるようにしている。そして、信頼性維持装置95を機能させるときは、図48の上図のように、通常の液滴噴射方向(機能性素子形成のために液滴噴射を行う方向)に対して、噴射ヘッドの向きを変えて行うようにした(図では、右側90度回転させた)ものである。
このような構造とすれば、信頼性維持装置95を機能性素子基板設置領域以外に設けなくても、装置構成を実現できるので、本発明の製造装置の床投影面積を小さくでき、コンパクト化が実現する。
ところで、本発明の製造装置における信頼性維持装置95による溶液の吸引量であるが、本発明では、図40あるいは図41に示したフィルター84、すなわち最下流に設けたフィルターより下流の領域の流路、噴射ヘッドの内容積分以上の溶液を吸引するようにしている。図42でいうならば、フィルター84より下流であってノズル1までの内容積分以上の溶液を吸引するようにしている。これは、本発明においては、このように最下流の位置にフィルター84を配し、そこで異物をトラップしているので、それ以降のヘッド液室内の溶液さえ、信頼性維持装置Aで吸引すれば、目詰まりは回避できるからである。
このように、本発明では、信頼性維持のための溶液の吸引量の必要最低限の量を明確にしたので、不必要に大量の溶液を吸引、廃棄することがなく、低コストかつ短時間で、噴射ヘッドの目詰まりがなく安定した稼動ができるようになった。
なお、上記説明はフィルター83とフィルター84の2つのフィルターを有する例で説明したが、本発明は必ずしも2つのフィルターに限定されるものではない。これら2つのフィルター以外に第3、第4のフィルターを設けてもよい。
次に、本発明の他の特徴について説明する。本発明では、前述のように、機能性素子群を形成するのに溶液を液体噴射によって液滴を空中飛翔させ、基板に付着させて形成する。その際、問題となるのは、このような機能性素子あるいはその機能性素子基板の製造上の歩留りである。前述のように、本発明の機能性素子基板は、インクジェット原理によって形成するため、比較的大型(200mm×200mm〜4000mm×4000mm)の機能性素子基板の製造に好適に適用されるものである。その際、問題となるのが、機能性素子を形成する部分に空気中に浮遊しているごみなどの異物が付着することによる不良素子(=素子製造上の歩留り低下)である。このようなごみの問題は、LSI製造分野でも問題になっており、それなりの対策がなされているが、本発明においては、LSI製造分野で使用されるSiウエハ(6〜8インチ)に比べて基板サイズが大きく、その分ごみ付着の確率が指数関数的に高くなり、不良素子の発生率が極めて高い。 さらに、本発明では、インクジェット原理を利用してキャリッジ搭載された噴射ヘッドが常時往復運動を行うため、浮遊ごみをたえず舞い上がらせているという悪環境を自ら作り出している。この点も、本発明固有の技術課題であり、歩留り低下の大要因の1つである。
図49は、本発明の一実施例を説明するための図である。本発明では、このような建物(部屋)および機能性材料を含有する溶液の液滴を噴射、付与する噴射装置も含めて機能性素子基板の製造装置として考えている。図49は建物の概念的な図で、図中、151は外天井、152は外側壁、153は内天井、154は内側壁、155は床、156は床155の支柱であるが、図49は、必ずしも、建物のすべての構成を示していないが、ポイントのみを示している。
図49において、天井にはHEPA158(High Efficiency Particulate Air Filter)を設置し、室内にはHEPAを通過した清浄化空気が天井から下に流れている。そして、床155には穴が開いており、空気が下に抜けるとともに、仮に何らかの原因によって室内にごみ等の異物が発生、あるいは存在したとしても、それらは清浄化空気とともに床下に排出されるようになっており、室内は絶えず清浄化環境におかれている。このような部屋に、本発明では、図2に示したような機能性素子基板の製造装置157(図49では説明を簡略化するために長方形の図で示した)を配置したシステムとしている。
このような、機能性素子基板の製造装置が配置されている周囲の環境は、たとえば、その清浄度の目安をあげると、本発明では、クラス100(1立方フィートあたり、直径0.3μm以上の塵埃が100個以下)に保たれている。これは、このような清浄化環境としていない一般の室内の環境に比べて100万倍もの清浄度である。
本発明では、意図的にこのような環境を作り出し、周囲の環境全体を清浄化することにより、液滴付与領域を清浄化状態にして、溶液の液滴付与を行うようにしている。よって、本発明では、前述のように、装置そのものがキャリッジ往復運動による浮遊ごみをたえず舞い上がらせているという悪環境を作り出しているにもかかわらず、それ以上の環境清浄化によって、液滴付与領域にごみを近づけることなく素子製作が行われる。これにより、本発明の環境下で製造される機能性素子のごみに起因する不良発生率は限りなく0%に近づけることが可能となった。
なお、以上は、図2に示したような機能性素子基板の製造装置を空気清浄化システムが作動している室内に配置した例を説明したが、他の例として、このように室内全体を清浄化しなくても、簡易的にあるエリアのみがそのように空気清浄化システムが作動するようにしてもよい。たとえば、通常の室内のある領域のみ、無塵カーテンで覆い、その天井部にHEPAを設置し、そのエリア内に図2に示したような機能性素子基板の製造装置を配置しても、フィルター交換頻度は高くなるものの同様の清浄度は確保できる。この場合、部屋全体を清浄化するよりもはるかに低コストで、そのような環境が作り出せる。
また、製作する機能性素子基板のサイズが小さく(200mm×200mm〜400mm×400mm)、図2に示したような製造装置もコンパクトになる場合は、大型のクリーンベンチの中にこの製造装置を配置しても同様の清浄度を確保できる。この場合も、部屋全体を清浄化するよりもはるかに低コストで、そのような環境が作り出せる。
次に、本発明のさらに他の例を説明する。図50は、本発明に好適に適用される噴射ヘッドを示したものであり、噴射ヘッド161の周囲には、清浄化気体付与ヘッド162を配している。なお、図では、噴射ヘッド161、清浄化気体付与ヘッド162ともに、それらに接続される液体供給チューブ、気体供給チューブ等は省略してある。この清浄化気体付与ヘッド162は、噴射ヘッド161と一体化され、キャリッジ搭載され、噴射ヘッドと161同じように往復運動される。つまり、噴射ヘッド161によって液滴付与される領域をたえず清浄化気体付与ヘッド162によって清浄化されるようにしたものである。ここで流される気体163としては、フィルターにより清浄化された空気の他にたとえば、フィルターにより清浄化された窒素ガスなども好適に使用される。
ところで、前述のHEPAを介して流される清浄化空気やこのような清浄化気体付与ヘッド162から流される気体は、基板14の表面を清浄化して良好な機能性素子を形成するためのものであって、決して基板上の液滴付与位置への液滴43の付着を阻害するものであってはならない。具体的には、この気体流163の影響を受けて液滴43の飛翔安定性が阻害され、液滴付与位置への液滴43の着弾精度が阻害されるものであってはならない。
図50の例で説明すると、清浄化気体163(下向き矢印でしめしたもの、下向きの速度ベクトル成分を持つ)が基板14にあたり、それが反射し、逆流したり、あるいは渦を形成したりして(下向き以外の速度ベクトル成分をもつ)、液滴43の飛翔(下向きの速度ベクトル成分を持つ)を妨げるようなことがあってはならない。
本発明では、この点に鑑み、図49に示したような装置を用い、清浄化気体163の流速と液滴43の噴射速度を変えて、機能性素子形成を行い、付着液滴が機能性素子基板に良好に付着し、良好な機能性素子が形成できる条件を調べた。
使用した基板は、ITO透明電極付きガラス基板に、ポリイミドをフォトリソグラフィーによって障壁3を形成したものである。これに図2に示したようなインクジェット原理を利用した製造装置を用い、O−ジクロロベンゼン/ドデシルベンゼンの混合溶液にポリヘキシルオキシフェニレンビニレンを0.1重量パーセント混合した溶液をインクジェット原理で噴射速度を変えて付与した。噴射ヘッドノズルと基板間の距離は3mmとした。
使用したインクジェットヘッドは、ピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドで、ノズル径はΦ23μmで、噴射速度を変えるためにピエゾ素子への入力電圧を16Vから28Vまで変化させ、駆動周波数は、9.6kHzとした。なお、このようなピエゾ素子を利用したドロップオンデマンド型インクジェットヘッドでは、ピエゾ素子への入力電圧を変えて噴射速度が変えられるが、同時に噴射滴の質量も変化するので、駆動波形(引き打ちも含めた立ち上がり波形ならびに立下がり波形)を制御して、噴射滴の質量がいつもほぼ一定(5plにした)になるようにし、噴射速度のみを変えるようにした。
また、滴飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(今本発明例では3mm)にほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた。なお完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御し、その直径の3倍以内の長さにした。また、その際、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。
その後、この上にアルミニウムを蒸着し、素子形成を行った。ITOとアルミニウムよりリード線を引き出し、ITOを陽極、アルミニウムを陰極として10Vの電圧を印加したところ、以下のような結果が得られた。
ここで、基板上の素子形成状況が○は狙いの領域(ポリイミド障壁3内)に滴付与が行われたものであり、△は部分的にそこからはみ出たもの、×はそこからはみ出て付与されたものである。素子性能が○は所定の形状で橙色に発光したものであり、×は発光しなかったり部分的に発光(素子としては実使用不可)したりしたものである。
以上の結果より、噴射速度が2m/sという具合に遅いと、基板上で良好な素子形成ができず、また、素子性能も良好なものが得られない(発光性能も実使用に適用できない)ことがわかる。一方、噴射速度が5m/s以上の場合のように速いと、基板上で良好な素子形成ができるようになるが、それでも清浄化気体流の流速が速いと素子形成が阻害されることがわかる。上記結果からは、液滴の噴射速度を清浄化気体流の流速よりも2m/s以上大となるようにすれば良好な素子形成ができ、また素子性能も良好なものが得られることがわかる。
次に本発明の他の特徴について説明する。
前述のように、本発明は、プラスチック基板あるいは高分子フィルムのような可撓性基板上に機能性材料を含有する溶液の液滴を噴射付与し、溶液中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上に残留させることによって機能性素子群を形成することによって各種の機能性素子基板を製作するというものである。その際、図2に示したように基板14は基板保持台13に設置され、溶液噴射による素子形成時は、平らな状態に設置されている。その完成後を示したものが図51である。
このような機能性素子基板は、その後、その用途に応じてディスプレイであったり、トランジスタ等の機能デバイスとして使用される。また大面積で製作した後、小さいサイズに切断して使用することもある。ここでは、たとえば有機ELディスプレイを製作する例で説明する。
図51は、図2に示したような装置によって製作された本発明の有機EL素子を形成したディスプレイ基板170を模式的に示したものである。図中、矢印の方向からこのディスプレイを見るものとする。まず、はじめに、図51に示したように、有機ELディスプレイ基板170が製作される。その後、基板の可撓性を利用して、たとえば、図52のように見る方向から見て凸になるように湾曲させた状態で使用する。あるいは図53のように、見る方向から見て凹になるように湾曲させた状態で使用する。
凸にするか凹にするかは、その用途によって決められ、たとえば、このような本発明の有機ELディスプレイ基板を広い場所における広告ボードとして使用する場合には、より広い方面から見えるようにするために、図52のように凸にして使用すればよい。
また、このようなディスプレイを大型化し、ある特定の領域に人を集め、その人たちが見やすいようにして使用する場合には、図53のように、凹にして使用すればよい。
いずれにしろ、本発明の機能性素子基板は製作時には、平板状で製作され、使用時はこのように湾曲させて使用する。
その際、もともと平板上の基板であるため湾曲させた状態で使用するためには、その基板を常時湾曲状態に保っておくための手段が必要である。本発明では、たとえば、本発明の機能性素子基板を保持する保持手段に設けられた湾曲維持ガイドによってその状態を保つことができる。
図54は、前述の湾曲維持ガイドを説明するための図であり、図54(A)は、ガイド部材180のガイド溝181に有機ELディスプレイ基板170を保持する前の状態を示し、図54(B)は、ガイド溝181に有機ELディスプレイ基板170を差し込んだ状態を示している。そして、このガイド溝181は、紙面に垂直方向(奥行き方向)にカーブしており、図52あるいは図53に示したような湾曲状態が得られるようになっている。
なお、図54の例では、簡略化のため、下部のみガイド部材を示しているが、実際には、下部および上部にこのようなガイド部材を設けて、湾曲状態を保つようにしている。また、この上下のガイド部材は、上下方向を支える左右の支持部材(図示せず)に連結され、フレーム構造を形成して本発明の有機ELディスプレイ基板の外周を取り囲み、支持して、このような湾曲状態を形成している。
他の湾曲状態形成方法としては、たとえば、本発明の有機ELディスプレイ基板の裏面に、支持体を設け、その支持体を湾曲させて、それに有機ELディスプレイ基板がならうようにすることが考えられる。
あるいは、壁を湾曲させて、それに本発明の有機ELディスプレイ基板170がならうように設置すればよい。どのような構造にしろ、本発明においては、基板170が可撓性を持っているので、簡単にその湾曲形状を実現できる。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。前述のように、本発明の機能性素子基板(たとえば有機ELディスプレイ基板)は、ガラスあるいはプラスチック等の透明カバープレートを対向配置、ケーシング(パッケージング)することにより、自発光型の画像表示装置とすることができる。
図55は、上述のカバープレートを示したものであり、図55(A)はディスプレイ170(たとえば、有機ELディスプレイ基板)を見る方向(図中矢印)から見て、カバープレート190を凸になるように湾曲させた例である。このようにすると、カバープレート面に反射するディスプレイにとっての不要光(太陽光、蛍光灯光、窓から差し込む不要反射光など)、不要反射像などを排除することはできないにしても、カバープレート面が凸になっているので、小さくすることができ、見やすいディスプレイとすることができる。
図55(B)は前述のように、本発明の基板の可撓性を利用して、湾曲させたディスプレイ170であり、カバープレート190もそれに応じて湾曲させた例である。
このような湾曲させたカバープレート190は、ガラスあるいはプラスチック等により形成されるが、あらかじめその曲率に湾曲した状態で、ガラスを成型したり、プラスチックを成型したりして製作される。
あるいは、本発明の機能性素子基板と同様に、PETを始めとする各種プラスチック基板や高分子フィルムを用い、その可撓性を利用して湾曲させてもよい。そのような場合、前述のような機能性素子基板を湾曲保持する湾曲維持ガイドによってその状態を保つことができる。すなわち、図54に示したガイド部材のガイド溝を2列とし、機能性素子基板(ディスプレイ基板)とカバープレートを保持すればよい。
なお、このガイド溝は必ずしも2列にする必要はなく、1列とし、機能性素子基板(ディスプレイ基板)とカバープレートを密着保持してもよい。あるいは両者の間にわずかな空隙ができるようにスペーサを介在させてもよい。
ところで、最初に、図1で障壁3の中に液滴を噴射付与する例を示しているが、本発明の機能性素子群を形成するに当たっては、必ずしも、図1に示したような障壁3は必要ではなく、平板上の基板に直接電極パターン形成や、液滴付与による機能性素子を形成していることをことわっておく。また、図4で液滴が基板面に斜めに噴射する図を示したが、これは検出光学系32と、噴射ヘッド33を併せて図示するためにこのように液滴が斜めに飛翔している図としたが、実際には基板に対してほぼ垂直に当たるように噴射付与することもことわっておく。
なお、以上の説明は、機能性素子として発光素子を形成した場合を中心に行っているが、形成された発光素子基板はその後、ガラスあるいはプラスチック等の透明カバープレートを対向配置、ケーシング(パッケージング)することにより、ディスプレイ装置して活用される。
また、単に、ディスプレイ装置に適用するのみならず、機能性素子として有機トランジスタなども本発明の手法を利用して好適に製作される。また、機能性素子群を大きな機能性素子基板上に製作して、小さなサイズの機能性素子基板としたり、小さなチップに切断して使用することも可能である。さらに、噴射溶液としてレジスト材料などを用いることによって、レジストパターンやレジスト材料による3次元構造体を形成する場合にも適用され、本発明でいうところの機能性素子とは、このようなレジスト材料のような樹脂材料によって形成される膜パターンあるいは3次元構造体も含むものである。
また、微小な(0.001μm〜1μm)Au、Agなどの金属微粒子を有機溶剤中に分散した溶液も本発明に好適に使用される機能性材料を含有する溶液である。このような溶液は、上記のような発光素子あるいは有機トランジスタなどの電極パターンを形成するのに好適に使用される。
1…(液体噴射ヘッド)ノズル、2…インクジェット法で吐出される有機EL材料、3…障壁、4…ITO透明電極、5…ガラス基板、11…吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12…キャリッジ、13…基板保持台、14…基板、15…機能性材料を含有する溶液の供給チューブ、16…信号供給ケーブル、17、21…コントロールボックス、18…X方向スキャンモータ、19…Y方向スキャンモータ、20…コンピュータ、22…基板位置決め/保持手段、31…ヘッドアライメント制御機構、32…検出光学系、33…インクジェットヘッド、34…ヘッドアライメント微動機構、35…制御コンピュータ、36…画像識別機構、37…XY方向走査機構、38…位置検出機構、39…位置補正制御機構、40…インクジェットヘッド駆動・制御機構、41…光軸、42…素子電極、43…液滴、44…液滴着弾位置、45…ドットパターン、50…ノズル、51…発熱体基板、52…蓋基板、53…シリコン基板、54…個別電極、55…共通電極、56…発熱体、57…溝、58…凹部領域、59…溶液流入口、60…ノズルプレート、61…ノズル、70…補助容器、71…液容器、72…容器保持部材、73…容器保持部材の縁、74…ポンプ、75…大気連通孔、76…液滴、77…空気層、78…液面、79…液流部、80…閉止体、81…容器支持材、82…液流入針、83…フィルターa、84…フィルターb、85…液供給路、90…流路、91…ピエゾ素子、95…信頼性維持装置、96…回転軸、101…噴射ヘッド、101a…凹部、102…キャリッジ、102a…面取り部、103…ノズル、104…キャップスライド、105…電動レバー、106…溶液吸収体、106a…通路、107…深孔、108…凹部、109…凸状弾性キャップ、109a…孔、110…軸孔、111…軸、112…キャップ固定板、113…スナップリング、114…ボス、115…スナップリング、116…圧縮ばね、117…ばね性ロック部材、120a…開口、121…台座、122…吸引室、123…環状封止溝、124…Oリング、125…軸、127…太径部、128…細径部、129…通路、130…弁、131…Oリング、132…凹部、133…圧縮ばね、134…連通孔、135…吸引管、136…空所、137…孔、140…吸引ポンプ本体、141…ピストン、151…外天井、152…外側壁、153…内天井、154…内側壁、155…床、156…床支柱、157…機能性素子基板製造装置、158…HEPA、161…噴射ヘッド、162…清浄化気体流付与ヘッド、167…流体、170…ディスプレイ基板、180…ガイド部材、181…ガイド溝、190…カバープレート。