JP2004520213A - 付加的油圧ブーストを備えた空圧ブレーキブースタ及びそのようなブースタを使って制動をブーストするための方法 - Google Patents
付加的油圧ブーストを備えた空圧ブレーキブースタ及びそのようなブースタを使って制動をブーストするための方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【0001】
本発明の主題は、補助的、すなわち付加的油圧ブースト(additional hydraulic boosting)を備えた空圧ブレーキブースタ、及びそのようなブースタを使用して制動を高める、すなわちブーストするための方法である。本発明の目的は、付加的ブースト効果の作用をより信頼できるものとし、制動作用を制動命令(braking command)の関数として完全に線形化することである。本発明が適用できる分野は、より概括的には、車両の制動の全般的な制御である。
【背景技術】
【0002】
空圧ブレーキブースタは、原則的に、リヤチャンバから分離された容積可変のフロントチャンバと、これも容積可変のリヤチャンバと、これらを分離する密封された可撓性のダイヤフラムと剛体のスカートプレートで形成された隔壁とを備えている。この剛体のスカートは、プッシュロッドを介して、油圧ブレーキ回路のマスターシリンダ、通常はタンデムマスターシリンダのプライマリーピストン上の空圧ピストンベアリングを駆動する。マスターシリンダ側のフロントチャンバは、空圧的に真空源に接続されている。フロントチャンバの反対側のブレーキペダル側に配置されているリヤチャンバは、通常は大気圧の空気である駆動流体源に空圧的に弁で制御された形で接続されている。運転者がブレーキペダルを踏んでいない非作動時には、フロントチャンバとリヤチャンバは、互いに連通しており、リヤチャンバは大気圧から遮断されている。制動時には、先ず、フロントチャンバがリヤチャンバから遮断され、次に、リヤチャンバに空気が導入される。この空気を導入することによって、隔壁を駆動し、制動のための空圧ブーストを行うことができる。
【0003】
油圧制動ブースト効果は他では既知である。代表的には、電気モータが油圧ポンプに接続され、油圧ポンプはブレーキ回路が呼び出される(called upon)とブレーキ回路内に加圧流体を注入する。この電気モータの制御は、空圧ブレーキブースタのフロント及びリヤチャンバ内に生じる圧力を測定することにより行われる。即ち、2つの圧力検出器をこれらチャンバそれぞれに空圧的に接続して、圧力を測定する。これらの検出器は、これら圧力を表す電気信号を提供する。
付加的な油圧ブーストシステムは、知られているように、急制動下で車輪がロックしないようにするという主要な目的を有している。このようなシステムは、アンチロックブレーキシステム、即ちABSとして知られており、ブレーキ回路内の油圧が調整できるようにしている。このシステムは、付加的油圧を油圧回路に加える動作と加えない動作を交互に行い、加えられる圧力が、車輪がロックする限界圧力を超えたり超えなかったりするようにしている。
【0004】
これら付加的油圧ブーストブレーキ回路の改良は、車両重量の低減の要請により必要となってきた。つまり、この重量低減は、空圧ブレーキブースタの寸法、即ちフロント及びリヤチャンバの寸法低減に結びついている。寸法低減のため、並びに使用される高圧が大気圧(実用上は常に同じ)であるため、空圧ブーストにより供給できるブースト効果にも有効性の低下が見られる。従って、付加的な油圧ブーストの目的は、制動中の車両の車輪をロックさせるのに必要な油圧よりも高い油圧に到達できるように、油圧回路に高い油圧を掛けるのに役立つ付加的ブーストを提供することである。
実際に、空圧ブースト機能は、運転者が加える操作力を、ブレーキ回路の油圧即ち制動の有効性に線形にリンクさせている。しかしながら、この線形関係は、リヤチャンバに導入される高圧がブースト制動力を働かせることができる限りにおいてのみ達成される。実際に、ブレーキペダルの位置には中立(equilibrium)が生じる。この中立は、一方は空圧ブースト力に加えて運転者が加える操作力であり、他方はブレーキ回路の油圧反力による力の結果である。運転者の疲労を回避するために、空圧ブースト力とこの運転者が加える操作力の比は、通常5程度であるが、各種システム次第で他の値も取り得る。
【0005】
空圧ブースタのリヤチャンバが大気圧を受け(それ以上の高圧を受けることはできない)、フロントチャンバが真空ポンプの作り出せる最大減圧を受ける瞬間から、空圧ブーストはそれ以上の効果を発揮しなくなる。上記条件の下では、制動力の付加成分は、運転者によってしか提供されない。この現象が起きたときに油圧回路で得られる圧力は、飽和圧力として知られている。
従って、マスターシリンダ内の圧力と運転者が加える力との対応を示す曲線は、最初はブーストスロープと称する勾配に沿って上昇するが、この勾配は飽和圧力値まではかなり急である。次いで、運転者側による操作力のみとなるので、遙かに緩やかな勾配となる。
【0006】
空圧ブーストブレーキシステムが大きい場合、この飽和圧力は車両の車輪がロックする圧力よりも高かった。そのため、この別の問題の解決は、運転者に、或いはアンチロックブレーキシステムに委ねられていた。しかし、空圧ブースタの寸法低減により、現在では、車輪がロックする圧力に達する前に、油圧回路は飽和圧力に達してしまう。これに対処するため、付加的油圧ブースト回路、通常は油圧ポンプが、この空圧ブースト作用を引き継ぐ。
良好な運転性を保つため、この付加的ブーストは、それでもやはり運転者の加える操作力に連続して発生させなければならない。これは、運転者の加える操作力と車輪に働く油圧の間の比率が、付加的油圧ブーストが作動した時点で既に生じている比率と同じか又は同様でなければならないことを意味している。油圧回路内の飽和圧力に対応して、この飽和圧力に到達する飽和操作力と呼ばれる操作力がある。従って、運転者の加える操作力は、付加的油圧ブースト回路で測定され、飽和操作力が差し引かれ、その差に空圧ブーストの間に既に生じていた増幅係数が掛けられる。
【0007】
この手法を採用することにより、運転者が関わる限りにおいて、得られる結果は、それが元々空圧であるにしろ油圧であるにしろ、ブーストは常に同じ有効性を持って生じる。運転者は差に気づかない。飽和圧力又は飽和操作力を測定するために考えられるシステムは各種あるが、その原理は、飽和した時点で、フロントチャンバ、リヤチャンバ又は油圧回路の様々な地点で生じている圧力を互いに比較するというものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、或る特定の状況の下では、このような付加的油圧ブーストシステムは、動作に異常や問題が生じる。この異常又は問題のある動作状態は、制動中にフロントチャンバ内の真空状態が急激に上昇することに起因する。真空のこの急激な上昇は、例えば、変速装置を低速ギアに入れることにより発生する。この低速ギアは、それ自体エンジンの回転数を上げること(エンジンブレーキ)につながり、その結果吸気量が増え、従ってフロントチャンバ内により大きな減圧が発生することになる。
フロントチャンバ内におけるこのより大きな減圧の原因は、このフロントチャンバへの真空の吸気経路上にある逆止弁の作動の結果でもある。つまり、低い値、例えば毎秒1.5kPa(15ミリバール)の較正漏洩(calibrated leakage)が、フロントチャンバ内の圧力上昇を引き起こす。フロントチャンバ内の圧力は、この漏洩の結果、逆止弁の設定圧力を超えることもある。この様な条件の下で、フロントチャンバは再度真空にされることになる。この様な逆止弁の設定圧力は、2.5kPa(25ミリバール)程度である。その結果、2.5kPa(25ミリバール)程度の突発的な減圧がフロントチャンバに生じる。
【0009】
両方の現象、即ち、変速装置が低速ギアに入ることと、フロントチャンバ内の再真空状態とが同時に発生する場合、フロントチャンバが5.0kPa(50ミリバール)程度の追加的減圧を受けることもある。その場合、もし空圧ブースタが飽和領域にあれば、付加的油圧ブーストシステムの誤調整が生じる。この急激に加えられる減圧を、付加的油圧ブースト回路は、運転者が急な操作力を加えたもの解釈し、それに関わる様々なことが起きる。付加的油圧ブーストが提供する増幅現象は、車輪を瞬時にロックさせがちな過剰制動に結びつく。実際には、この現象はABSの介入により補正されるので、運転への悪影響が生じることはない。しかしながら、このような飽和が発生するかもしれない例外的な事例において、このような解決手法は賛同しかねるし満足のいくものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこの問題を打開しようとするものである。本発明において見出された解決手法は、ずれ、即ち油圧回路内の急激な再較正による空圧ブースト回路のヒステリシス誘発動作を補償することにある。このヒステリシス誘発動作を判定するために、本発明では、付加的油圧ブーストの実行前に、フロント及び/又はリヤチャンバ内、及び/又は油圧回路内で得られる圧力に関するパラメータを測定する。次いで、継続して、この付加的油圧ブーストが起動されたときに、これらパラメータの現在値を既に記録されているパラメータと比較する。仮に、これらの比較を通して、付加的油圧ブーストが実行された条件に対する修正が検知されると、この付加的油圧ブーストは不適当な誤調整、即ち、過剰制動、また更にはブレーキ解除までも回避すべく修正される。実際には、本発明では、付加的油圧ブースト回路の動作前にフロントチャンバ内で圧力が測定され、このフロントチャンバ内の圧力は、使用時には継続して繰り返し測定される。使用される飽和圧力の値は、フロントチャンバ内の減圧の(もし、あれば)変動の関数として修正される。この手法を採用することにより、ぎくしゃくした制動が回避される。
【0011】
本発明の主題は、従って、空圧ブレーキブースタであって、この空圧ブレーキブースタは、真空源に接続できるようになっているフロントチャンバと、高圧吸入口に接続できるようになっているリヤチャンバと、2つのチャンバの間の密封された可動隔壁と、前記可動隔壁に支承され油圧ブレーキ回路に接続されている可動伝達装置と、制動時に高圧流体を前記リヤチャンバに導入するための装置と、油圧アクチュエータを装備した付加的油圧ブースト手段と、を備えており、この付加的ブースト手段は更に電子回路を備えており、この電子回路は、付加的ブースト手段の作動に先立ち、一方のチャンバ内で得られる第1の圧力をメモリに記憶し、前記作動の間に前記一方のチャンバ内で得られる第2の圧力を測定し、この第1圧力と第2圧力の間の差の関数として前記アクチュエータを制御することを特徴とする空圧ブレーキブースタである。
【0012】
ある好適な実施形態では、この測定はフロントチャンバ内で行われる。
【0013】
本発明の別の主題は、空圧ブレーキブースタを使って制動をブーストするための方法であって、この方法は、空圧ブレーキブースト装置はブースタ内に装備され、油圧ブレーキブースト装置はブースタ内に追加的に装備され、油圧装置によるブーストの機能は、油圧装置の作動前の空圧装置内の第1減圧状態に従うものであり、更に、制動の間、油圧装置の作動の後、空圧装置内で第2減圧状態が測定され、油圧ブーストの機能は、この第1状態と第2状態の間の測定値の差の関数として修正される、ことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を参照すれば、よく理解頂けよう。但し、これらは、本発明を限定するものではない。
図1は、真空源2に接続することができるフロントチャンバ1を備えた、本発明に係る空圧ブレーキブースタを示す。通常、真空源2は、ガソリンエンジンの車両では、取り込まれる(trapped)吸入気(inlet gases)で構成されている。ディーゼルエンジン車の場合は、外部真空ポンプを真空源に使う。空圧ブレーキブースタは、更に、例えば概略図示した弁4を介して高圧吸入口5(通常は、大気圧Atmの周囲の空気)に接続できるリヤチャンバ3を備えている。空圧ブレーキブースタは、慣例的には剛体スカートと密封されたダイヤフラムを装備した可動隔壁6を更に備えている。ダイヤフラムは、2つのチャンバの間の空気的連通を防ぐ。ダイヤフラム6には、密封されたオリフィス7が開けられ、可動伝達装置8を通せるようになっている。伝達装置8は、機械的に、一方の側がブレーキペダル9に連結され、他方の側が油圧ブレーキ回路10に連結されている。このような空圧ブレーキブースタによって提供されるブースト作用の原理は以下の通りである。ペダル9が作動すると、可動伝達装置8はリヤチャンバ内に押し込まれ、弁4が開き、そこを通って周囲の空気がリヤチャンバ3内に導入される。この周囲の空気は隔壁6上に圧力を加え、隔壁6は、可動伝達装置8に固定された推力面11を介して、可動伝達装置8を、その一方の端部12が油圧ブレーキ回路10を作動させるように駆動する。
【0015】
更に、好適な実施例では、空圧ブレーキブースタは、螺旋状の可撓性ホース13を備えている。螺旋状の可撓性ホース13は、リヤチャンバ3を、フロントチャンバの前方に取り付けられた圧力検出器14に、密封された状態で接続できるようにしている。螺旋状の可撓性ホース13は、隔壁6を通して、パイプ15を介してリヤチャンバ3に開口している。別のパイプ16は、可撓性ホース13を検出器14に接続している。検出器14は、フロントチャンバの別のオリフィスにも面している。検出器14は、この様に、接続部17、18により電子制御回路19に送信される2つの信号を生成することができる。検出器14は、従って、接続部17により送信される、フロントチャンバ1内で得られる圧力Pfcに関係する圧力情報と、接続部18により送信される、リヤチャンバ3内で得られる圧力Prcに関係する圧力情報を検出する。
【0016】
空圧ブレーキブースタの付加的油圧ブーストのための手段は、原則的には、ポンプ22を駆動する電気モータ21を装備した油圧アクチュエータ20を備えている。継手23を介して、ポンプ22は、油圧流体を油圧回路10の導管24の1つに注入する。油圧ブースト20の作用は、導管24内の圧力上昇を補助する(又は、アンチロックブレーキシステムの場合には中立化(neutralizes)する)。
本発明では、付加的油圧ブースト手段は、電子回路19を更に備えているが、ここでは、制御,アドレス及びデータバス26により、プログラムメモリ27,データメモリ28,入力インターフェース29及び出力インターフェース30に接続されたマイクロプロセッサ25による従来のやり方で示されている。接続部17及び18は、油圧回路10のマスターシリンダ33内で得られる圧力Pcの検出器32からの接続部31と共に、インターフェース29に接続されている。実際には、電子回路19は、マイクロコントローラ(プログラムメモリが1つの同じ集積回路上に装備されたマイクロプロセッサ)を形成している。
【0017】
プログラムメモリ27は、インターフェース30により油圧ブースト装置20を制御するために利用される制御信号Aの生成を目的とした第1プログラム34を、既知のやり方で備えている。プログラムメモリ27は、更に、本発明によれば、別のプログラム35を備えており、その内容については後で説明する。実用面からみると、プログラム34及び35は、1つのプログラムに統合してもよく、そうすると、電気回路19を、プログラムされた遷移(transition)を伴う状態マシン(state machine)として捉えることができる。
図2は、空圧及び油圧ブースト装置を装備したシステムに関する制動ブーストの原理を示している。図中、横座標軸は、車両を制動するために車両の運転手が加える操作力Fを表す。縦座標軸は、操作力Fの結果生じるマスターシリンダ内の圧力Pcを表している。運転者がブレーキを掛けると、先ず、運転者の操作力はペダルの反力のみに対抗する。そして、操作力が所与の閾値Fsよりも高くなると、ブースト制動力が起動される。このブースト制動時、圧力Pcと操作力Fの間の対応を示す曲線は、ブーストラインと称する直線に概ね沿っており、マスターシリンダ内の圧力が、一方では操作力Fの結果であり、他方では空圧ブレーキブースタ1により供給されるブーストの結果であることを示している。
【0018】
この比例的関係は、操作力Fが飽和操作力と称する力Fsatに到る時点まであてはまる。Psatに等しいマスターシリンダ内の圧力は、力Fsatに対応している。PcがPsatに等しくなる点で、リヤチャンバ3の圧力は雰囲気圧力に等しくなり、弁4を更に開いても、もはやそれ以上の空圧ブースト力を提供することはできない。この場合、追加のブースト力がないので、対応する曲線は直線37に沿い、この直線37は、油圧回路10内の圧力を上昇させるための運転者の操作力だけに直接対応するものである。
【0019】
図2には、車両の車輪がロック(lock up)する圧力Pbを表す水平線38も示している。概略図示の例では、空圧ブレーキブースタの寸法が小さくなっているため、空圧ブーストは、足からペダル9へ相当な力を加えることなしには、この車輪ロック圧力を達成できるほど十分ではない。図2は、更に、矢印39により、回路19のプログラム34により提供される油圧増幅の効果を概略的に示している。原理的に、このプログラム34は、マスターシリンダ内の現在の圧力Pcと直線36に沿うブーストが終了する点の圧力Psatの間の圧力差を測定する。圧力差Pc−Psatには、プログラム34が乗法係数(multiplicative coefficient)を掛け、対応する命令Aがモータ21の入力部に送られ、油圧回路24内に生じる圧力が、圧力PcとPsatの差に比例する補完分だけ、現在の圧力Pcに上乗せして上昇するようにする。これは、ブーストライン36の連続部40により概略的に示される。
【0020】
フロントチャンバ1内の急激な減圧により発生する問題について、直線37に概ね平行で且つ僅かにその上に引かれた点線の曲線41により概略的に示している。この減圧の結果、フロントチャンバの圧力が急激に低下すると、運転者の足はその時点ではペダル上で動いていない(現象は非常に速い)ので、上記平衡が再度達成されるまでスカート6が移動する。一方、足による操作力と減圧によるブースト力の組合せが急激に増加すると、その結果、検出器32によって測定される現在の圧力Pcが急激に上昇する。ここで、補正項として現在の圧力Pc(急激な減圧前)−Psatの差を使用する代わりに、考慮される差は、それ以前の差に突発的な過剰圧力によって上昇した分を加えた大きさに等しくなる。これは、付加的油圧ブーストが、対応39に代えて、ブースト効果42を提供することを意味する。このブースト効果42は大きすぎるので、車輪に掛る力は車輪ロック圧力Pbを超える。この場合、車輪はロックし、アンチロックブレーキシステムが作動する。その結果、不快な運転を経験することになる。
【0021】
本発明では、この問題を克服するために、プログラム35の第2段階(Phase)43の間に、回路の様々な部分の1つ又は複数の圧力を実時間でチェックするために判断がなされるが、この判断は、空圧ブーストが飽和に達した時点でそれらの圧力が持っていた値と比較することにより行われる。段階43は、この同じプログラム35の段階44の後に続いている。この段階44については後に説明する。第2段階43は、リヤチャンバ内の圧力が大気圧よりも低いか否か、即ちPrcはPatmより低いか否かを判定するために測定が行われる第1のテスト45を含んでいる。つまり、この圧力Prcが大気圧よりも低ければ、空圧ブースタ1はアシスト力を提供できる能力をまだ備えているということである。この場合、テスト45は、高周波数、例えば1MHzで自身にループバックする。マイクロプロセッサ25全体は、より高速(少なくとも現時点では100MHz)で作動することになる。このような手法を採用すると、1マイクロ秒以内で、リヤチャンバ3内の圧力が大気圧に到達する正確な瞬間を検知することができる。必要なら、一時的な精度の考察を考慮するため、マイクロプロセッサ25のクロック周波数を変更してもよい。
【0022】
リヤチャンバ内の圧力が、もはや大気圧より低くない場合には、このテスト45の直後(次のマイクロ秒)に開始されるステップ46の間に、現在の圧力Pcが測定され、メモリ28の記録領域47内の値Psatとしてメモリに記憶される。フロントチャンバ内の圧力Pfcも測定され、変数Pmenの名の下に領域48のメモリ内に記憶される。これが終了すると、フロントチャンバ1内の減圧の増加の現象49を監視するのに重要な2つのパラメータが測定されたことになる。しかしながら、これらの現象49を検知するのは他の点の圧力を測定することによっても行えることを示すことができる。実際、全ての圧力値は互いに関連している。この目的で他の圧力を測定すれば、おそらく検出遅れが観察されるであろう。
ステップ46の直後に続くステップ50の間、例えばステップ46と同じマイクロ秒で、Pestimと称する変数は、Psat+α(Pfc−Pmem)と等しい値に置換される。これを行う際、PfcがPmemに等しい場合、得られる結果は、最初のPestimはPsatと等しいということである。他方では、フロントチャンバ内の現在の圧力Pfcに変化が生じると、ステップ50により提供される補正により、差を考慮にいれることができるということがはっきり分かる。これを行うに当り、プログラム34では、Pestimを基に命令Aの計算が行われる。従って、差があっても、ステップ50により中立化されるので、難なく容認される。
【0023】
一方では、フロントチャンバ内の減圧の急激な増加をどのように検知するか、及び付随的に係数αをどうやって計算するかを、決定することがまだ残っている。フロントチャンバ1内の急激な減圧を検知するために、テスト51(ステップ50の後)では、現在の圧力Pcを飽和圧力の補正された値Pestimと比較するようにしている。つまり、通常の状況では、現在の圧力Pcは、Pestim(開始時にはPsatに等しい)よりも高いのである。その場合には、ステップ50とテスト51は、ループに入れられる。ステップ50では、その都度新しいPfc値が考慮に入れられる。
ステップ50と、この圧力PcがPestimより大きい場合のテスト51の通常のループバックとが存在するだけで、このループバックの反復に等しい反復の周波数で、フロントチャンバ内の減圧の修正Pfcが直ちに考慮に入れられることになる。例えば、ステップ50及びテスト51のループバック周波数は、1MHz程度に等しくすることができる。このループバックは、1マイクロ秒に等しい程度の僅かな検知遅れの原因となる。しかしながら、モータ21、ポンプ22など制動上のつながりを忘れてはいけない各種関連機構には慣性があるため、エラーが有害な影響を及ぼす前に補正が行われる。
【0024】
他方、現在の圧力Pcが推定圧力Pestim未満に下がった場合、即ち実際にはPsat未満に下がった場合には、付加的な油圧ブーストはもはや不要となる。その場合、システムは第1段階44にループバックする。
実際には、この段階の間は、係数αの値が測定される。係数αの値は、極めて単純にいえば、ブーストライン36の勾配を表す。動作のきっかけとなる閾値Fsが存在すれば、段階44のテスト52の間に、センサ32により測定される現在の圧力がFsのジャンプの後に位置する低い学習圧力Plよりも高くなければ、勾配36を考慮に入れることを開始しない旨の決定が行われる。つまり、本発明では、この現在の圧力がこの低い学習圧力よりも高ければ、曲線36の対応部分は線形で、考慮に入れることができると見なしているのである。この場合、後のステップ53の間にαが計算される。αの値は常にフロントチャンバ内の圧力Pfcとリヤチャンバ内の圧力Prcの関数である。更に、この対応は、測定された現在の圧力Pcを使っても設定することができる。実際に、上記平衡が与えられると、これら3つの圧力は相互に干渉し特有の関係で結ばれる。そうする際、ステップ53の計算は、次のテスト54が、現在の油圧が高い方の学習閾値Phに達したことを示さない限り、繰り返される。この間、テスト52とステップ53は、ループ内で実行される。ステップ53の計算は、比例関係36と40の連続性を確保するために先行技術で行なわれた調整に相当する。しかしながら、本発明の特徴は、この計算が新たな制動動作毎に行われるという事実にある。その結果、装置の標準化された較正は必要なく、つまり、この較正は自動的に行われる。従って、装置の経年変化が考慮されることになる。
【0025】
この閾値Phに達すると、プログラム35は段階43に入る。ステップ52、53及び54のループバックは、テスト45とステップ50及び51のルーピングバックほど迅速である必要はない。しかしながら、一貫性の理由から、精査を、同じ周波数、例えば1MHzで行ってもよい。換言すると、第1段階44は、曲線が完全に線形である曲線36の部分でαを測定することを意図している。曲線36の始まりにずれが生じると、2つの連続した測定値(直線36の区間の終点と起点の間)に基づいて、係数α及びこの曲線の勾配を定式化する(formulate)ことが必要となる。この計算を単純化したい場合は、この直線がx軸及びy軸の原点を概ね通ると仮定して、勾配αの値を、テスト54の前に測定された最後の1点を使うだけで得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による、油圧制動をブーストするための空圧ブースタの概略図である。
【図2】運転者が加える操作力と、ブレーキマスターシリンダ内で得られる圧力との間の対応を、本発明の付加的油圧ブースト装置のある場合とない場合について示す図である。
Claims (9)
- 空圧ブレーキブースタにおいて、
真空源(2)に接続できるようになっているフロントチャンバ(1)と、
高圧吸入口(4)に接続できるようになっているリヤチャンバ(3)と、
前記2つのチャンバの間の密封された可動隔壁(6)と、
前記可動隔壁に支承され、油圧ブレーキ回路(10)に接続されている可動伝達装置(8)と、
制動時に前記リヤチャンバ内に高圧流体を導入するための装置(5)と、
油圧アクチュエータを装備した付加的油圧ブースト手段(19、20)と、を備えており、前記付加的ブースト手段は、更に、電子回路(19)を備え、
この電子回路(19)は、
前記付加的ブースト手段の作動前に、前記一方のチャンバ(1)で得られる第1圧力(Pmem)をメモリ(48)に記憶し、
前記作動の間に、前記各チャンバのうちの一方のチャンバ(1)で得られる第2圧力(Pfc)を測定し(14、17)、
前記第1圧力と前記第2圧力の間の差(Pestim)の関数(α)として前記アクチュエータを制御する(34、A)ことを特徴とするブースタ。 - 前記電子回路は、マイクロプロセッサ(25)と、記録されたプログラム(34、35)を保有しているプログラム可能メモリ(27)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のブースタ。
- 前記記録されたプログラムは、前記油圧アクチュエータに適用される信号(A)を生成するための工程を含んでおり、前記信号の値は、前記油圧回路内の一点の油圧である第3の圧力測定値(Pc)とこの油圧の推定値との間の差の関数であることを特徴とする請求項2に記載のブースタ。
- 前記油圧の推定値(Pestim)はこの油圧の現在値(Pc)と比較され、この推定圧力がこの現在圧力より低いときには補正される(50)ことを特徴とする請求項3に記載のブースタ。
- 前記第1及び第2圧力が測定される前記一方のチャンバは、前記フロントチャンバ(1)であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のブースタ。
- 空圧ブレーキブースタを使って制動をブーストするための方法において、
空圧ブレーキブースト装置(1−8)はブースタ内に装備されており、
油圧ブレーキブースト装置(19、20)は前記ブースタ内に追加して(23)装備されており、
前記油圧によるブーストの機能は、前記油圧装置の作動前の前記空圧装置内の第1減圧状態(Pmem)に従っており、更に、制動の間に、
前記油圧装置の作動後に、前記空圧装置内での第2減圧状態(Pfc)が測定され(14)、
前記油圧ブーストの機能は、前記第1状態と前記第2状態の間の測定値の差の関数として修正される(50)ことを特徴とする方法。 - 前記油圧ブーストの機能は、前記油圧装置の作動前の制動の第1段階(44)の間に確立されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記油圧ブーストを制御するための信号(A)が生成され(34)、この信号の値は、油圧ブースト回路内の一点の現在の油圧である第3の圧力測定値(Pc)とこの油圧の推定値(Pestim)の間の差に比例していることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
- 前記油圧の推定値はこの油圧の現在値と比較され、この推定圧力は、この推定圧力がこの現在圧力よりも低くなっている限りは補正されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
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