JP2004518287A5 - - Google Patents

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JP2004518287A5
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【書類名】明細書
【発明の名称】熱によるレーザ素子のチューニング
【特許請求の範囲】
【請求項1】基板と、導波路と、前記基板と導波路に挟まれた活性領域と、を有するダイオード・レーザーと、
所定の電位にされた上記基板上の電気接点と、
上記導波路と熱的に接触をしている金属層と、
上記金属層の上の第1の電気接点と、
上記金属層の上の第2の電気接点と、を含み、
上記第1の電気接点に第1の電位を印加することによって上記ダイオード・レーザーをレーザー発光させ、
上記第2の電気接点に第2の電位を印加することによって上記第1の電気接点と第2の電気接点との間に電流が流れて上記ダイオード・レーザーが加熱される、熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項2】誘電体が、上記第2の電気接点と上記導波路を隔てている、請求項1に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項3】上記誘電体が、上記金属層と上記導波路を、実質的に上記第1の電気接点の近傍以外の場所で隔てている、請求項2に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項4】上記導波路が、格子を含むリッジ付きのInPクラッド層に形成されている、請求項3に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項5】上記リッジ付きのInPクラッド層が上面を備え、上記金属層が前記上面と熱接触している、請求項4に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項6】上記基板と熱的に結合している熱電(TE)冷却器をさらに備える、請求項5に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項7】複数の導波路が活性領域によって上記基板から隔離されており、したがって上記光学装置がレーザー・アレイを形成している、請求項6に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項8】上記レーザー・アレイ内の少なくともいくつかのレーザー素子が異なる波長でレーザ光を発生する、請求項7に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項9】複数の金属層をさらに備え、前記の各金属層は、前記レーザー・アレイの中のレーザー素子の1つと熱的接触をしており、前記の各金属層ごとに、
前記金属層の上の第1の電気接点と、
前記金属層の上の第2の電気接点と、を含み、
上記第1の電気接点に第1の電位を印加することによって上記レーザー素子がレーザー発光し、
上記第2の電気接点に第2の電位を印加することによって上記第1の電気接点と第2の電気接点との間に電流が流れて上記レーザー素子が加熱される、請求項8に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項10】前記第2の電気接点が互いに同じ電位にされている、請求項9に記載の熱によりチューニングされる光学装置。
【請求項11】リッジ部同士がストライプ間領域によって分離されているリッジ付き導波路ダイオード・レーザー・アレイと、
前記各リッジ部の上に載っており、したがって上記レーザー・アレイ内の1つのレーザー素子に対応している金属接点と、
前記の各ストライプ間領域にあるストライプ間の金属化層と、を含み、
上記金属接点の1つが、対応する前記レーザー素子が光を放出するのに少なくとも十分な電位にされており、
前記金属接点の近傍で、ストライプ間領域にある少なくとも1つのストライプ間の金属化層が、前記金属接点を対応するレーザー素子が光を放出するのに少なくとも十分な電位にしたとき以外は、前記電位も低い電位にされている、熱によりチューニングされるレーザー・アレイ。
【請求項12】複数の前記ストライプ間の金属化層が同じ電位にされている、請求項11に記載の熱によりチューニングされるレーザー・アレイ。
【請求項13】前記リッジ部同士がストライプ間領域によって分離されているリッジ付き導波路ダイオード・レーザー・アレイと、
前記の各リッジ部の上に載っており、したがって上記レーザー・アレイ内の1つのレーザー素子に対応している金属接点と、
前記の各ストライプ間領域にあるストライプ間の金属化層と、
それぞれが1つのストライプ間の金属化層と1つのリッジ部との間にある、複数の絶縁用トレンチと、を備え、
上記金属接点の1つが、前記の対応するレーザー素子が光を放出するのに少なくとも十分な電位にされている、熱によりチューニングされるレーザー・アレイ。
【請求項14】ストライプ間の金属化層が、該ストライプ間の金属化層に電流を供給するための電流源に接続されている、請求項13に記載の熱によりチューニングされるレーザー・アレイ。
【請求項15】レーザー素子の上の金属層と基板とを有するダイオード・レーザーを熱によってチューニングする方法であって、
上記金属層の少なくとも一部を上記基板よりも高い電位にすることによって上記レーザー素子を順バイアスにして該レーザー素子に光を放出させ、
前記金属層の少なくとも第2の部分を上記基板よりも高い前記電位とは別の電位にすることによって前記金属層内に電流を発生させて前記金属層内に熱を生み出すことを含む方法。
【請求項16】上記基板が所定の基板電位にされており、該基板電位と該基板電位より高い前記電位との間の差が、前記基板より高い電位と、該基板より高い電位とは異なる電位との間の差よりも有意に大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】ダイオード・レーザー・アレイ中の1つのダイオード・レーザーを熱によってチューニングする方法であって、
前記レーザー・アレイの中からレーザー素子を1つ選択し、
前記選択されたレーザー素子にレーザ発光のための電流を供給し、
前記選択されたレーザー素子から放出された光を出力とカップリングさせ、
前記選択されたレーザー素子に隣接した1つのレーザー素子に加熱電流を供給することにより、前記隣接したレーザー素子に加熱電流で熱を発生させることを含む方法。
【請求項18】隣接した上記レーザー素子に加熱電流を供給することにより、該隣接したレーザー素子に順バイアスをかける、請求項17に記載の方法。
【請求項19】隣接した上記レーザー素子に加熱電流を供給することにより、該隣接したレーザー素子に逆バイアスをかける、請求項17に記載の方法。
【請求項20】共通した基板上にレーザーのアレイがあり、前記レーザーのアレイには熱電冷却器が接続され、前記のレーザーは、前記レーザーのアレイ上の少なくとも1つの接点に熱信号を供給するとともに、信号を前記熱電冷却器に供給することによってチューニング可能であるような前記レーザー・アレイ中の1つのダイオード・レーザーを熱によってチューニングする方法であって、
前記レーザー・アレイの中からレーザー素子を1つ選択し、
前記レーザー・アレイ上の1つの接点に上記熱信号を供給し、
上記熱電冷却器に上記信号を供給することを含む方法。
【請求項21】上記レーザー・アレイ上の接点への上記熱信号を取り除くことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】上記レーザー・アレイ上の接点への上記熱信号を取り除くことを所定の時間が経過した後に行なう、請求項21に記載の方法。
【請求項23】上記熱信号の大きさが、選択されたレーザー素子から放出される光の実際の波長と、前記選択されたレーザー素子から放出される光の所望の波長との差に基づいている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】上記レーザー・アレイ上の接点への上記熱信号を取り除くことを、前記熱信号の大きさが所定の大きさよりも小さくなったときに行なう、請求項23に記載の方法。
【請求項25】上記レーザー・アレイ上の接点への上記熱信号を取り除くことを、選択されたレーザー素子から放出される光の実際の波長と、前記選択されたレーザー素子から放出される光の所望の波長との差が、所定の大きさよりも小さくなったときに行なう、請求項23に記載の方法。
【請求項26】基板と、
前記基板の上に載ったn型クラッド領域と、
前記n型クラッド領域の上に載った活性領域と、
前記活性領域の上に載っており、リッジ部とわずかにドープされた領域とを有するp型クラッド層と、
前記リッジ部と前記わずかにドープされた領域の近傍にある金属化接点と、を含む、熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項27】わずかにドープされた上記領域が前記リッジ部を実質的に横断している、請求項26に記載の熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項28】上記金属化接点が上記リッジ部に沿って延びている、請求項27に記載の熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項29】上記金属化接点が、前記レーザー素子に対して逆バイアスにされている、請求項28に記載の熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項30】わずかにドープされた上記領域のドーピング・レベルが約1015/cmである、請求項26に記載の熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項31】わずかにドープされた上記領域が上記活性領域の近くにある、請求項26に記載の熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項32】わずかにドープされた上記領域と上記活性領域との間に、大量にドープされた領域をさらに含む、請求項31に記載の熱によりチューニングされるレーザー素子。
【請求項33】レーザー・アレイ中の熱によりチューニングされるレーザー素子であって、該レーザー素子が、
上面と下面とを有する基板と、
前記基板の前記下面に載った第1の接点と、
前記基板の前記上面に載ったn型クラッド層と、
前記n型クラッド層の上に載った活性領域と、
前記活性領域の上に載っており、上面を持ったリッジ部を有するp型クラッド層と、
前記リッジ部の上面に載った第2の接点と、
前記p型クラッド層の上に載っており、前記リッジ部の近傍に位置する第3の接点と、
前記p型クラッド層の上に載っており、前記リッジ部の近傍に位置する第4の接点と、を含むレーザー素子。
【請求項34】上記第3の接点が上記リッジ部の一方の側にあり、上記第4の接点が前記リッジ部の反対側にある、請求項33に記載のレーザー素子。
【請求項35】上記第3の接点が上記突起部の一方の側にあり、上記第4の接点が前記突起部の反対側にあり、前記の2つの接点の一部が前記リッジ部の一部に沿って存在している、請求項34に記載のレーザー素子。
【請求項36】上記n型クラッド層が、エピタキシャル成長させたn型InPの下側クラッド層である、請求項35に記載のレーザー素子。
【請求項37】上記活性領域が、ドープしていないInGaAsPの4元素の活性層である、請求項36に記載のレーザー素子。
【請求項38】上記p型クラッド層が、p型InPクラッド層である、請求項37に記載のレーザー素子。
【請求項39】レーザー・アレイ中にの熱によりチューニングされるレーザー素子であって、該レーザー素子が、
上面と下面とを有する基板と、
前記基板の前記下面に載った第1の接点と、
前記基板の前記上面に載ったn型クラッド層と、
前記n型クラッド層の上に載った活性領域と、
前記活性領域の上に載っており、上面を持ったリッジ部を有するp型クラッド層と、
前記リッジ部の前記上面に載った第2の接点と、
前記第2の接点の一端に載った第1の接点領域と、
前記第2の接点の他端に載った第2の接点領域と、
前記第1の接点領域を第2の接点領域に接続する接続要素と、
上記リッジ部と前記第2の接点領域との間、ならびに上記リッジ部と上記接続要素の一部との間に設けられた絶縁層と、を含むレーザー素子。
【請求項40】レーザー・アレイの中から所望の波長のレーザー素子を選択し、
前記第1のレーザー素子に近い第2のレーザー素子をアクティブにして、前記第2のレーザー素子上の熱負荷が前記第1のレーザー素子をチューニングするのに十分になるようにする、熱によるチューニング方法。
【請求項41】前記第2のレーザー素子を逆バイアスにして、該第2のレーザー素子が光を放出しないようにする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】基板上のレーザー・アレイと、
前記レーザー・アレイを構成するレーザー素子に駆動信号を供給する手段と、
前記レーザー・アレイを構成するレーザー素子に熱信号を供給する手段と、を含み、前記熱信号と駆動信号が合わさって、前記レーザー・アレイ中の1つのレーザー素子を加熱する、熱によりチューニングされるレーザー・アレイ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(背景)
本発明は、レーザーの波長のチューニングに関するものであり、さらに詳細には、レーザー素子の出力波長の熱によるチューニングに関する。
【0002】
チューニング可能なレーザー素子は、多波長通信リンクにおいて極めて望ましい。出力波長をチューニングできるさまざまな構成のレーザー素子が存在しているが、このような構造には一般に種々の欠点がある。例えば、出力パワーが低い、チューニング範囲が狭い、スペクトルの質が悪い、寿命が短いといった欠点である。チューニング可能なレーザー素子は、標準的な波長固定式分布帰還型(DFB)レーザー素子と比べると、波長をチューニング可能にするために必ずと言っていいほど何らかの機能を犠牲にしている。
【0003】
チューニング可能な単一のレーザー素子を使用することに代わる1つの方法は、多波長アレイの中から特定の1つのレーザー素子を選択するというものである。このような方法を実現するための構成には、1つのチップ上に作られた多波長レーザのアレイが含まれる。例えば、可動式ミラーなどの手段がアレイ中の特定のレーザー素子を出力ファイバーに接続する。レーザー素子は、所望の波長によって選択され、一度に1つのレーザー素子だけが作動する。
【0004】
レーザー素子の数を管理可能に保つために、レーザー素子間の波長の間隔は比較的広くし、チップの温度は、その温度を変えることによって調節される。高性能の半導体レーザー素子は通常は熱電(thermo−electric:TE)冷却器を用いて安定化させるため、温度はTE冷却器を用いて電気によって容易に調節することができる。1.55μm通信帯におけるDFBレーザー素子のチューニング率は約0.1nm/℃である。したがって、温度を約10℃から40℃にすると、装置の性能や寿命に大きな影響を与えることなく3nmのチューニングが可能になる。
【0005】
残念なことに、TE冷却器を用いて波長の微細なチューニングを行なう場合には、チューニング時間が比較的長い1秒のオーダーになる。SONET通信規格においていろいろな波長を用意するなど、多くの用途においてミリ秒オーダーというはるかに早いチューニング時間が望まれている。
(発明の要約)
本発明は、出力波長の微細なチューニングを迅速に行なうため、多波長半導体レーザー・アレイにおいて局所的に加熱を行なう多数の方法を記述している。電流を1つのレーザー・ストライプ(laser stripe)に沿って流すことができるため、別にヒーターを使う必要がなくなる。熱によるチューニング(thermal tuning)を行なうため、レーザー素子1つごとに接点を1つ付加する。別の方法として、レーザ光を発しているストライプに隣接した側方金属化層(lateral metallization)を設け、すべての側方金属化層を1つの接点と電気的に接続することもできる。この接点から活性ストライプに向けて電流を流すと、その活性素子が加熱される。この方法では、アレイ全体に対して1つの電気接点が付加される。別の方法では、アレイ内の少なくとも1つの隣接するレーザー素子に逆バイアスを印加し、表面部にあるドープされたクラッド(doped cladding)に電流が流れるようにする。このようにすると、光パワーの出力は無視できるくらいの影響しか受けないが、レーザー素子は加熱される。密な間隔のアレイでは、レーザー素子間の熱的クロストーク(thermal cross talk)も利用して波長をチューニングすることができる。このような設計では、選択されたレーザー素子だけが出力と光学的にカップルされ、したがって隣接したレーザー素子の活性化により光出力が直接的な影響を受けることはない。しかし隣接したレーザー素子から発生する熱により、光学的にカップルしたデバイスが熱的にチューニングされることになろう。光のクロストークが問題であるならば、隣接するレーザー素子が逆バイアスを印加されている場合、中でも強い逆バイアスが印加されている場合には、隣接するそのレーザー素子も光なしで熱を供給することができる。個別の薄膜ヒーターもアレイ内で使用することができる。個々の薄膜ヒーター、あるいはこの明細書に記載する他のヒーターは、一連の動作条件において、TE冷却器が応答するまでの間に、レーザー素子の波長を迅速にチューニングする。したがってこのヒーターはチューニング・サイクルの間の短時間しか使用されず、余分な電力はほとんど必要ない。
【0006】
本発明の一実施態様には、熱によりチューニングされる光学素子が含まれる。この光学デバイスは、基板と、導波路と、基板と導波路の間の活性領域とを有するダイオード・レーザーを備えている。この光学デバイスはさらに、ある基板電位(substrate potential)にされている基板上の電気接点と、導波路と熱接触をしている金属層と、第1の電気接点と、第2の電気接点とを備えている。第1の電気接点は上記の金属層の上に設けられていて、この第1の電気接点に第1の電位を印加するとダイオード層がレーザー発振する。第2の電気接点は上記の金属層の上に設けられていて、この第2の電気接点に第2の電位を印加すると、第1の電気接点と第2の電気接点との間に電流が流れ、それによってレーザー素子が加熱される。
【0007】
本発明の別の実施態様では、熱によりチューニングされるレーザー・アレイが含まれる。このアレイは、複数のリッジ導波路ダイオード・レーザー(ridge waveguide diode laser)からなるアレイを備えている。リッジ部(ridge)同士はストライプ間領域(interstripe area)によって分離されている。金属接点が各リッジ部上にあり、したがって各金属接点はレーザー・アレイ内の1つのレーザー素子に対応している。ストライプ間金属化層が、各ストライプ間領域内に存在している。金属接点のうちの1つが、対応するレーザー素子が光を放出するのに最低限必要な電位に設定される。この電位に設定される上記の金属接点のうちの1つの近傍にあるストライプ間領域の少なくとも1つのストライプ間金属化層は、この金属接点を上記の電位に設定することによってその電位になるとき以外はこの電位よりも低くなっている。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様には、熱によりダイオード・レーザーをチューニングする方法が含まれる。一実施態様では、この方法はレーザー・アレイの中から1つのレーザー素子を選択することを含んでいる。この方法はさらに、レーザー・アレイ上のある1つの接点に熱信号を供給し、熱電冷却器に信号を供給することを含んでいる。
【0009】
本発明のこれらの側面ならびに他の側面は、以下の詳細説明と以下に示す図面を合わせて参照するとさらに容易に理解できる。
(詳細説明)
図1は、半導体基板上に載った、複数の単一周波数のレーザー素子、例えば分布帰還型(distributed feedback:DFB)デバイスのアレイを示す。このレーザー・アレイは、独立にアドレス可能な多数のレーザー素子7を基板5上に備えている。一実施態様では、熱電(TE)冷却器21が基板に取りつけられていて、レーザー素子を熱によりチューニングする。各レーザー素子は個別の接点3を備えており、その接点から電流をレーザー素子に注入する。各レーザー素子は、異なるレーザ発光波長で作動するように設計されている。
【0010】
電流が例えば接点3を使用してレーザー素子に注入されると、そのレーザー素子は、矢印9で示したように、基板上の特定の位置から特定の波長を有する放射線を放出する。一実施態様では、どの波長を望むかに応じて1回に1つのレーザー素子が作動する。レーザー素子からの放射線すなわち光は、機械的マイクロスイッチ(micro−mechanical optical switch)つまりスイッチ素子11に送られる。このスイッチ素子は多数の状態を有する。一連の状態のうちの個々の状態において、入力光ビームの1つ、すなわちレーザー素子のうちの1つからの光が出力13に送られ、そして出力ファイバー17へと送られる。このアセンブリー全体は、1つのサブマウント(submount)19上にまとめてパッケージされている。一実施態様では、TE冷却器は、選択されたレーザー素子を熱によりチューニングするため、上記のサブマウントに取りつけられている。
【0011】
各レーザー素子に異なる波長を割り当てるにはいろいろな方法がある。例えば、電子ビーム・リソグラフィーで直接格子(grating)を書き込む方法、多重ホログラフィー露出の間にウインドウ・マスクをステッピング(stepping)にする方法、適切に作られた位相マスク(phase mask)を通して紫外線(UV)に露出する方法、あるいはレーザー素子のモードの実効屈折率(effective index)を変化させる方法などがある。一般に、安定な単一モード特性を得るためには、制御された位相シフトもレーザー素子に含めるか、あるいは格子で利得/損失カップリング(gain/loss coupling)を利用する。このようなレーザー素子の波長は、ストライプの幅や層の厚さといった寸法に関する変数によって正確に制御することができ、またアレイ内の位置によってそれを変えることができる。
【0012】
いくつかの実施態様では、個々のレーザー素子を個別に加熱して微細なチューニングを行なう。アレイの波長は、このアレイから特定の波長のレーザー素子を1つ選択することにより粗くチューニングされる。選択されたレーザー素子の波長は、加熱電流をデバイスに供給し、その結果としてレーザー素子を加熱することにより、微細にチューニングされる。一実施態様では、この加熱は、レーザー素子のp型ストライプを通じて長手方向に電流を流すことによりデバイスに対してモノリシックに行なわれ、一方注入された電流はストライプを垂直方向に流れる。別の実施態様では、選択されたレーザー素子に隣接したレーザー素子が、ファイバーに接続されていないが活性化され、従ってその隣接したレーザー素子によって発生した熱負荷が選択されたレーザー素子をチューニングする。さらに別の実施態様では、薄膜ヒーターがレーザー・キャビティの上またはそれに隣接して配設されている。ヒーターを用い、オン・チップ(on−chip)加熱を行なうこの明細書に記載した実施態様では、オン・チップ加熱は、最初にレーザー素子をチューニングするために行なわれ、その間にTE冷却器がよりゆっくりとした時間スケールで応答し、したがって連続的な電力消費が最小になる。
【0013】
本発明の上記の側面ならびにそれ以外の側面に従ういくつかの特別な例に移ることにすると、図2には、半導体導波路レーザー素子(semiconductor waveguide laser)が図示されている。このレーザー素子は単一リッジ導波路レーザー素子である。しかし別の実施態様では、埋込みヘテロ構造、埋込みリブ(buried rib)、あるいは別のタイプのレーザー素子が使用される。図2のレーザー素子では、レーザー・エピタキシャル層をn型InP基板161の上に成長させる。このレーザー素子の第1の層は、エピタキシャル成長させたn型InPの下側クラッド層163で、次にドープしていないInGaAsP4元素活性層165が来て、その次に上面のp型InPクラッド層167が来る。上面のp型InPクラッド層は、従来からあるフォトリソグラフィーを利用してエッチングすることによりリッジの形状にされる。DFBレーザー素子では、上記の成長を途中で止め、エッチングによりレーザー素子に格子を形成する(図示せず)。エッチングでリッジ部(ridge)を形成した後、そのウエハを窒化ケイ素などの絶縁性誘電体169で被覆する。この誘電体をリッジ部の上面から除去し、層169を形成する。
【0014】
リッジ部の上面に、要素1603として示してあるように金属化層を形成する。第2の金属化層形成ステップでは、ストライプの両端に接触領域1601、1605を設ける。接触領域はワイヤー1609と1607によって電気的に接続されている。基板の背面も金属化層が形成され、ワイヤー1611で電気的に接続される。
【0015】
動作中は、レーザー素子内をクラッド層167から基板の接触部1611へと垂直方向に電流が流れ、このレーザー素子にレーザ光を発生させる。接触パッド(contact pad)1601、1605をそれぞれ異なる電位にすると、電流が金属化層1603内を水平方向に流れる。この金属化層の抵抗値は、この金属化層の厚さによって決まる。
【0016】
レーザー・ダイオードの電気抵抗値は、一般に、上面のp型クラッド層167の垂直方向の電気伝導性(conduction)によって決まり、有利な設計により、レーザー発光モード(lasing mode)の光吸収を増加させるほどドーピング(doping)を増やさなくても抵抗値が最小になる。一般に、この垂直方向の抵抗値は標準的なレーザー素子では数オームである。レーザー素子へのキャリアの注入は比較的均一であることが望ましいため、ワイヤー1609と1607の間で測定した上面の金属化要素1603の電気抵抗値は、レーザー素子の垂直方向の抵抗値よりも小さいことが好ましい。上面金属化層の電気抵抗値は金属化層1603の厚さを変えることによって調節できるため、この電気抵抗値の大きさは、ダイオードに均一な注入ができるに十分なほど小さいが、ワイヤー1609と1607の間を通る電流がレーザ発光しているストライプ(lasing stripe)を抵抗加熱するのにリーゾナブルな値になるような大きな値にすることができる。
【0017】
図3は、垂直方向に駆動されるレーザー素子が水平方向の電流を用いて加熱されるというさらに別の実施態様を示す。図2におけるのと同様、図3には、n型InP基板161、基板161の上面のn型InPの下側クラッド層163、n型クラッド層163の上に載ったドープしていないInGaAsPの活性層165、及びリッジ付きのp型InPのクラッド層167を有するレーザー素子が図示されている。リッジ付のp型クラッド層は活性層165の上に載っており、DFBレーザー素子に対しては、そのレーザの途中に格子が含まれている。絶縁性誘電体169は、リッジ部の上面を除き、p型クラッド層を覆っている。上面の金属化層171が、リッジ部の長さ方向に沿って延びている。図3の実施態様では、この上面の金属化層を非常に薄くすることができる。というのも、この要素はもはや加熱用の抵抗器として使用されないからである。
【0018】
この金属化層を堆積させた後、またはメッキ形成(plating)した後、デバイスをさらに誘電体層で覆い、リソグラフィーでパターニングしてさらに別の誘電体層177を形成する。このさらに別の誘電体層は、最前面を除いてストライプのほぼ全体を覆っている。次のステップで接触パッド173、179を薄い接続層175とともに形成する。接触パッド173はストライプまたはリッジ部の前面に設け、金属化層と接触するようにする。接触パッド179は、図3の実施態様では、上記のさらに別の誘電体層の上で、かつストライプの後部に位置する。薄い接続層が接触パッド同士を接続している。
【0019】
それぞれが接触パッドに接続されたワイヤー1607、1609を用い、加熱電流を上記の接続層に供給する。更に別の誘電体層177を含むことによって、ワイヤー1607と1609の間に供給された加熱電流が、ワイヤー1609と1611の間に供給されたレーザー素子の注入電流とは完全に無関係になる。したがって、絶縁用の上記の更に別の誘電体層と、続く金属化層形成ステップとにより、ヒーターの抵抗値は均一な電荷注入とは無関係になって、より大きな抵抗値が可能となり、水平方向のヒーターによって加熱が可能となる。
【0020】
図2と図3には単一素子のデバイスが図示されている。さらに別の実施態様では、互いに隣接した多数の単一素子のデバイスを集積させることによって多波長アレイを形成する。多波長の動作は、例えば、図1を参照して説明したようにして行なう。接触部の配置によっては、金属化要素がデバイス同士をショートさせることのないようにするための追加の絶縁層が有効である。図3に示した実施態様は、アレイ内の各要素の接触部179を互いに接続できるため、アレイ用に特に適している。接点179と173の間の電気抵抗は極めて大きいため、非常に簡単な接触プロセスでレーザ発光素子同士が十分に絶縁される。選択されたレーザー素子のp接点ワイヤー1609と、一般的なn接点ワイヤー1611の間に電流を注入してレーザー素子をオンにする。次に、ヒーターの互いにショートさせたすべてのワイヤー1607と、選択されたp接点ワイヤー1609との間に加熱電流を印加する。このようなアレイでは、加熱素子用に接点を1つ付加するだけでよい。
【0021】
N本のレーザー・ストライプを有するレーザー・アレイの場合には、図2の実施態様に従う加熱素子を利用したデバイスは、2N個の上面接点と、共通する1つの背面接点とを有することになる。すでに説明したように、追加の金属化層を有する図3に示したケースでは、すべての加熱用接点179がまとめられて単一の金属化素子となっている。こうすると、チップに対して作られるべき電気的接続の数がN個のレーザー接点、基板、ヒーター接点に低減される。使用されていないレーザーの接点がフロートの状態である限りは、ヒーターの電圧がレーザー素子に順バイアスを与えることはなく(この電圧はヒーターの抵抗値の下限を与える)、作動中のレーザー素子だけが加熱される。
【0022】
アレイに適用するための上面の接点の数を少なくするための別の実施態様を図4A、図4B、図4Cに示す。図4Aは、3つのレーザー素子からなるアレイを有するそのようなチップの平面図である。図4Bは、図4Aのチップの断面図である。図4Aと図4Bに示した実施態様では、半導体チップを上に述べたようにして処理し、各リッジ部の上面に独立な接点183、185、187を設ける。これらの接点に加え、異なるレーザー素子のリッジ部の間のスペースに複数の接点181を設ける。これら接点181を互いにショートさせ、ワイヤーボンドと電気的に接続する。したがって、N個のレーザー素子からなるアレイでは、チップ全体でN+2個の接点がある。そのうちN個の接点は各レーザー・ストライプ用であり、1つの接点はレーザー素子間のスペースにあり、1つの接点は基板にある。
【0023】
レーザー素子はDFBであり、フィードバックは導波路に埋め込まれた格子から生じるため、レーザー・ストライプはチップの長さ全体にわたって延びている必要がない。したがってレーザー素子の背面のスペースは、金属化層ならびに接触パッドに使用することができる。また、レーザー素子をチップに沿って延長させ、多層金属を用いてワイヤーを接続するという方法もある。
【0024】
図4Bの断面図には、本発明のさらに別の側面も図示されている。図4Aにおけるのと同様、金属化要素185、183、及び187がレーザー素子のリッジ部の上面に接続されている。それと同時に、電気的に接続された金属化要素181がリッジ部の間を通っている。ワイヤー1801が中央リッジ部上の中央金属化要素と接続され、ワイヤー1803がストライプ間の金属化層と接続されている。ワイヤー1805が、基板の裏面に接続されている。中央のダイオードに通常の注入を行なうためには、電流をワイヤー1801と1805の間に供給してp−n接合を順バイアスにし、レーザー素子をアクティブにする。その一方で、ストライプ間の金属化層181はフロートの状態にする。例えば、一実施態様においては、基板接点1805をグラウンドに接続し、ワイヤー1801を約+2ボルトの順バイアスにする。こうした条件のもとでは、p型キャリアが接点へとドリフトし、ストライプ間の接合がわずかに順バイアスになることにより、ワイヤー1803で接続されたストライプ間金属化層に電圧が発生することになる。しかし、ストライプ間金属化層の電圧をフロート状態にすることが許されるならば、漏れ電流は金属化層がない場合よりも大きくならないはずである。
【0025】
選択されたデバイスの温度を上昇させるには、ストライプ間の金属化層の電圧をおそらくグラウンド・レベルよりも低くすることになる。すると活性なストライプ183から隣接するストライプ間の金属化層に向かう電界が発生する。この電界によって、キャリア1809がストライプ間の接点へとドリストする。レーザー・ストライプを通過し、基板に接続されたワイヤー1805から出ていく電流が維持されるのであれば、上面のワイヤー1801から注入された追加の電流は、単純に隣接するストライプ間の金属化層へと送られ、加熱を引き起こす。その結果、活性化されていないストライプ185と187が受ける影響は最小になる。両者の間の金属化層は逆バイアスにされるが、もしストライプ185と187がフロート状態であるならば、いかなる電流も過剰な熱も発生しない。
【0026】
一般に、レーザー素子の設計においては、バンド・ギャップの小さな材料、例えばInGaAsの薄い層をInPクラッド層の上に成長させ、上面の金属化層と良好なオーム性接触がなされるようにする。図4Aと図4Bにおいては、この薄い層はストライプ間の金属化層181のすべての実施態様において存在しない。というのも、この層はリッジ部を形成するためのエッチングされたものであるからである。こうすると金属化層181とp型InP層167の間により大きな電圧降下が起こるため、加熱プロセスにおいて実際的に有利である。さらに、最適化された構造では活性領域の近傍でドーピングのレベルも少なくなる。そのため抵抗がさらに増大し、電圧が上昇し、加熱が増大する。
【0027】
図4Cに示した別の実施態様では、ストライプ間の金属化層が使用されていない。隣接したレーザー素子が逆バイアスにされて、ほぼ同じ効果を実現している。ストライプ間のp型上面領域のドーピングと厚さは、隣接したレーザー・ダイオードの逆バイアスによってストライプ間のこの層が完全には空乏状態にならないよう、十分に大きな値にする必要がある。この層が完全に空乏状態になると、主レーザー素子の出力が小さくなる可能性がある。
【0028】
別の実施態様では、ストライプ間の金属化層を順バイアスにして用いる。このような実施態様では、p−n接合に電流を直接注入し、熱を発生させる。例えばドープ量が少ないかあるいはInPクラッド層の上にInGaAsを用いないことによって金属化層のオーム性接触が良好でないことは有利である。というのも、そうなると電圧が上昇し、したがって加熱されるからである。注入されたキャリアが光モードを乱すのであれば、絶縁トレンチを導波路の近くにエッチングで形成することができる。別の実施態様では、ドープされた接合部を層間金属化層の下に設ける。こうすると、接点に逆バイアスを印加するのに役立ち、空乏領域が主リッジ部の下へと広がるためにダイオードの抵抗値が実際に上昇する。
【0029】
密な間隔のアレイでは、ストライプ間にかなりの熱のクロストークがあるため、ストライプの近傍に電流を注入することによって熱による迅速なチューニングが実現される。おそらく、所望のレーザー素子だけが出力ファイバーに結合され、したがって隣接するストライプへの電流注入効果は熱のクロストークだけになろう。このようなシステムの一実施態様を図5に示す。パッケージ191には、独立にアドレス可能な多波長レーザー・アレイ193と、1:Nマイクロスイッチ1901が収容されている。マイクロスイッチは、特定のレーザー素子からの光ビームを選択し、その選択された光ビームを出力ファイバー1907に結合させる。図5では、スイッチが上から2番目のレーザー素子を選択し、このレーザー素子からの光を出力ファイバーに送るところが図示されている。他のレーザー素子からの光は、パッケージ内で失われる。接触パッド197が、この選択されたレーザー素子に付属している。隣接したレーザー素子の接点199および195は、それぞれ隣接したレーザー素子に付属している。2つの電流源もこのパッケージに付随している。選択されたレーザー素子の電流駆動源1903は接触パッド197に接続され、熱によるチューニング用の電流1905は、隣接したレーザー素子の接触パッド199および195に接続されている。スイッチ1901が別のレーザー素子を選択したときは、電流源の接続が再構成される。
【0030】
実際の実施態様によっては、光のクロストークがパッケージ内で問題になる可能性がある。もしスイッチの性能が十分でない場合には、隣接したレーザー素子からの光の幾らかがスイッチを通過してファイバー出力に接続され、システムに供給される光の純度に影響を与えることになる。この場合、隣接したレーザー素子に逆バイアスを与えることによって光を放出させることなく隣接したレーザー素子に熱を発生させることができる。アクティブなレーザー素子からの光子のいくらかは逆バイアス接合部に漏れていき、その光子が逆バイアス電圧の下で掃き出されるときに通常の漏れ電流と合わさって熱を発生させることになる。このような実施態様は、例えば、図5の実施態様を利用し、電流源48を逆バイアスの電圧源または電流源に変更することで実現できる。
【0031】
電力消費が問題の場合には、ここに説明する集積されたヒーターを用い、TE冷却器が応答するまでの間にレーザー素子の波長を迅速にチューニングすることになろう。例えば図6は、熱によってレーザー素子をチューニングするそのようなプロセスのフロー・チャートである。ブロック201では、プロセスは所望の波長を有するレーザー素子を選択する。一実施態様では、特定の波長を有するレーザー素子がルックアツテーブルを見て同定し、接点からその同定されたレーザー素子に電流を注入することによって、そのレーザー素子をレーザー・アレイの中から選択する。その結果、レーザー素子が光を放出する。ブロック203では、プロセスは選択されたレーザー・ストライプを熱で直接チューニングする。このレーザー素子は、一実施態様においてすでに説明したように、このレーザー素子を発光させるために注入した電流に対して実質的に垂直な電流を注入することにより、熱で直接的にチューニングされる。
【0032】
ブロック205では、熱電(TE)冷却器が作動状態にされ、このTE冷却器が、選択されたレーザー素子を熱によってチューニングするように調整される。TE冷却器は光学サブアセンブリの温度を変化させ、レーザー・チップをウォームアップし、直接加熱電流がそれに応じて減少するので、活性導波路の温度、したがって波長が同じに留まる。波長固定器(wavelength locker)からのフィードバックを利用して、直接加熱電流の減少が、TE冷却器によって生み出された増加熱と正確に釣り合うようにする。TE冷却器は応答するまでに幾分か時間がかかる可能性があるため、ブロック207では、TE冷却器が選択されたレーザー素子を熱によってチューニングするように動作しているかどうかと、直接加熱電流がゼロであるかどうかが判定される。ブロック207において、直接注入された加熱電流がまだ残っていることがわかった場合には、待機時間の後にこのプロセスが繰り返されることになり、ブロック205に戻り、TE冷却器の電流を増加させ、直接加熱電流をさらに減少させる。そうでない場合には、プロセスが進行してブロック209へと進み、熱によるチューニングが終了する。ここで最初に戻ることになる。一実施態様では、このプロセスは連続的である。TE冷却器は温度を上昇させるため、直接加熱電流はそれに応じて減少するので、レーザー・ストライプの温度と波長は同じに留まる。一実施態様では、波長固定器を用いることにより、このプロセスの実施が容易になる。というのも、波長を追跡するとレーザー発光しているストライプの温度に関する正確な情報が得られるからである。
【0033】
したがってヒーターは、チューニング・サイクルの間に短時間だけ使用されることになり、余分な電力はほとんど必要なくなるであろう。このアプローチの利点は、一般にTE冷却器が、デバイスを加熱するためのより効果的な手段となっていることである。多くの用途、例えばWDM送信機用のバックアップ・レーザー素子において、これは重要である可能性がある。というのも、最初にTEを低い温度に調節してレーザー素子を“スタンバイ”状態にすることができるため、任意の波長に非常に迅速に移ることができるからである。
【0034】
熱によるチューニングが短時間だけ行なわれる場合には、増加するレーザー電流が熱によってレーザー素子をチューニングするため、追加ヒーターは必要でない可能性がある。一定の光出力も、電流が大きいこうした期間の光カップリングを減らすことによって維持できる。多くの用途においては、単一振動数のレーザー素子を、光の質を低下させることなく、公称仕様よりもはるかに大きな電流で実際に動作させることができる。しかしレーザー素子は、十分な寿命を維持するため出力を下げて使用することがしばしばある。非常に短い時間、より大きな電流でレーザーを動作させる必要があるような場合のチューニングに応用する場合は、レーザー素子の寿命に対する影響は無視できるほど小さい。
【0035】
一実施態様では、レーザー・ダイオード上に、デバイス内で散逸される電力量を制御する第3の接点を設ける。図7は、ショットキー接点を利用してレーザー素子内で散逸される電力を調節するための一実施態様である。この断面図に示されているように、n型InPクラッド層61をn型InP基板(図示せず)の上に成長させている。ドープされていないInGaAsP活性層63がn型クラッド層の上に載っている。リッジ付きのp型InPクラッド層65がこの活性層の上に載っていて、このp型クラッド層には格子が含まれている。金属接点層67がこのリッジ部の上に載っており、基板の裏側の接点層との組み合わせでダイオードにバイアスをかけ、電流がレーザー素子に注入されるようにしてある。
【0036】
金属接点73は、p型クラッド層上でリッジ部の近傍に設けられている。これら金属接点は、図からわかるように、基板の裏側の接点または電極と、リッジ部上面の接点または電極との間に垂直方向にあるため、中間電極と見なすことができる。p型クラッド層の上に設けられた金属接点は、ショットキー接点を形成する。
【0037】
ショットキー接点は逆バイアスされて、わずかにドープされた層(低ドープ層)71を空乏状態にする。図7に示したように、わずかにドープされた層は、p型クラッド層によって形成されているリッジ部の一部を実質的に横断している。中間電極73は、一部がp型クラッド層のリッジ部の側部にかかるようにされる。中間電極を逆バイアスにするとわずかにドープされた層が空乏状態になる。印加する逆バイアス電圧の大きさを変化させることにより、ドープされた層の抵抗値を変えることができる。したがって、抵抗値を変えることにより、レーザー素子を横断して流れるバイアス電流が熱を発生させる。一実施態様では、逆バイアスを2ボルトにしてドープされた層を完全に空乏状態にするために、ストライプの幅が4μmのレーザー素子ではドーピングのレベルを約1015/cmにする。これはかなり低い値であり、実際には、このような層は、周囲のp型層にドープしておくことで真性にドーピングできる。p型クラッド層では、正の電圧をショットキー接点に印加して接合を逆バイアスにし、ストライプの下のキャリアを欠乏させる。
【0038】
別の方法として、(67における電圧と比べてマイナスの電圧を印加することにより)接合を順バイアスにし、ホール電流を幾分か取り出すことができる。67での電流がそれに応じて増加し、67と73の間を流れる余分な電流は、温度を上昇させる加熱電流だけになるであろう。
【0039】
図8は、側壁に金属化層を設けない別のタイプの空乏層(depletion layer)を利用して熱の散逸を制御する一実施態様である。この実施態様では、空乏層は活性領域の近傍に埋め込まれており、平坦な接点が用いられている。ドープされた材料からなる薄い層が、わずかにドープされた層が空乏状態になる前に空乏状態になる。この空乏は、わずかにドープされた層に続く横側から広がってレーザー素子をピンチオフ(pinch off)させ始める。この実施態様には、金属のパターニングに関する制約が緩やかになるという利点があり、活性層に隣接した低ドープ層が自由キャリアの吸収(free carrier absorption)を助けてくれる。
【0040】
しかしレーザー素子のモードのサイズはデバイスがピンチオフされるにつれて変化する可能性がある。また、わずかにドープされた層が活性領域にあまりに近いと、キャリアの漏れに関係する可能性がある。この問題は、活性領域の近傍にp型ドープされたスパイク(p−doped spike)を設けて電子がバリアを超えて逃げないようにすることによって幾分か解決することができる。これら接合に順バイアスをかけても、図4Bについて説明したのと同様にして熱が生ずる。
【0041】
上記の実施態様は、例えば単一基板上のDFBアレイで利用することができる。DFBアレイは、特定のDFBが故障したり過度に劣化したりしたときにアレイ内の別のDFBをバックアップとして使用できるという点で有利である。しかも、それぞれのDFBは異なる波長の光を発生させることができる。したがってこのアレイを利用すると、レーザー・パッケージの出力の波長選択またはチューニングが可能になる。
【0042】
一実施態様では、空乏層を利用してDFBアレイ内の互いに隣接したDFBをピンチオフさせる。互いに隣接したDFBをピンチオフさせるのは、DFBのレーザ発光を防ぐためと、選択された特定のDFBの出力を利用することで生じる可能性のある干渉を防ぐためである。しかし互いに隣接したDFBは熱を発生させ、DFBを形成するストライプが十分近くにあるのであれば、その熱が選択されたDFBの温度に影響を与える。別の方法として、あるいは追加の方法として、互いに隣接したDFBを逆バイアスにして互いに隣接したレーザー素子がブレークダウンし、熱が発生するようにすることができる。
【0043】
以上より、本発明によって、高速チューニングを目的としてレーザーセクション上の素子を加熱するためのシステムと方法が提供される。本発明を特定の実施態様について説明してきたが、当業者には、これ以外の多くの変更や変形が明らかであろう。したがって本発明は、この明細書で特に説明した以外の態様を実現することが可能である。それゆえ、ここに記した本発明の実施態様は、あらゆる点で単なる例示であり、本発明を限定するものではないと見なす必要がある。特許請求の範囲およびその等価物によって示される本発明の範囲は、上記の説明よりはむしろ明細書によってサポートされる。
【図1】
1:Nの機械的マイクロスイッチに直接接続されていて個別にアドレス可能な多波長レーザ・アレイを有する光伝送装置の一実施態様を示す図である。
【図2】
半導体導波路レーザ素子の一実施態様を示す図である。
【図3】
半導体導波路レーザ素子の別の実施態様を示す図である。
【図4A】
半導体導波路レーザ素子の別の実施態様の平面図である。
【図4B】
図4Aの半導体導波路レーザ素子の断面図である。
【図4C】
半導体導波路レーザ素子の別の実施態様の断面図である。
【図5】
さまざまな光伝送装置に対する熱クロストーク低減システムの一実施態様を示す図である。
【図6】
レーザ素子を熱でチューニングするプロセスの一実施態様のフロー・チャートを示す図である。
【図7】
ショットキー接点を利用して熱の散逸を制御する一実施態様を示す図である。
【図8】
別の空乏層を用いて熱の散逸を制御する一実施態様を示す図である。
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