JP2004517274A - ベルト - Google Patents
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Abstract
Description
(技術分野)
本発明は請求項1の前文に特定された連続可変式トランスミッション用ベルトに関する。
【0002】
(背景技術)
“プッシュベルト”として一般に知られており、またこの特別なデザインにおいて単一パッケージプッシュベルトと称される、このようなベルトは一般に複数の刊行物により知られている。所謂単一パッケージベルトの一つの早期の刊行物は米国特許第3720113号明細書である。単一パッケージプッシュベルトはEP−A0000802のようなその後の刊行物により知られているような二重パッケージと較べて実用的な用途に高度に所望されるが、キャリヤ及びベルトの横要素を全体として保つため、換言すれば横要素がキャリヤから離れて落ちることを防止し、かつその構造コヒーレンスを維持するための別個の保持装置を具備する点でコストのかかる技術手段を問題としている。特に、ベルトの保全性のこの維持はベルトが運転中である間に問題であり、またベルト組立品の保全性を単に維持する際の考慮事項である。
【0003】
従来技術が上記問題を解決する幾つかの方法を示す。特に、横要素のキャリヤ受容くぼみの幾つかの型が示されている。これらの中に、一つ以上の軸方向(プーリの軸方向であり、以下特記が無い場合同様)に延びるスロットの具備、キャリヤをフックするための横要素部分の具備、及びキャリヤ受容くぼみをロックするための保持装置、例えば、クロージャーピンの具備がある。
【0004】
前記米国特許刊行物により開示されたベルトでは、横要素の半径方向(ここでは、環状ベルトがプーリに巻き掛けられた状態での該プーリの半径方向、つまりベルトの長さ方向及び幅方向に対し垂直な方向を意味し、以下特記が無い場合同様)に延びる肢部部分がくぼみに対し軸方向に内向きに曲げられ、それによりフックのような部分を生じ、その結果、キャリヤは、それがその横内面及びその半径方向の内面に沿って包囲されることに加えて、またその半径方向の外面に沿って少なくとも部分的に包囲される。横要素によるキャリヤのフックのこの構造はその比較的低重量のために好ましい。しかしながら、その構造は横要素の内向きの曲げが比較的複雑なブランキング形状を与える点及び組み立て時に特別な努力がキャリヤを横要素に対し所望の位置に挿入するのに必要とされる点で製造上の難点を問題としている。特に、キャリヤは自由に、即ち、その変形を生じないで挿入し得ない。このような変形は運転中に苛酷な引張負荷の下にある時にキャリヤ破壊の開始要因であり得る。このような種類の別の構造がEP−A0095257に開示されており、そのキャリヤは横要素との接触位置に比較的密にフックされる。
【0005】
後者の挿入問題を解決する構造がEP−A0135237により知られている。この既知の構造では、横要素が所謂スロットを示し、これは横要素の上部コーナーに向かって開口部を有する横要素中の横に配向されたくぼみである。キャリヤの半径方向の外面の少なくとも一部が半径方向の外部、又は上部の横要素部分により接触され、横要素が交互の順序で挿入されるべきである。このような横要素を含むベルトは比較的高い重量を有するようになり、こうして伝達可能なトルクに関する性能を制限する。また、交互の順序要件は横要素が交互に配置された、即ち、ベルトの長さ方向のまわりに鏡に映されたようなベルトに組み立てられる必要がある点で製造上の複雑化をもたらす。
【0006】
有利に一層簡単なスロット構造を示す同様に早期の構造がEP−A0073962により知られている。この書類は横要素の軸方向の面に向かって開口部を有する多少真っ直ぐなスロットを有する横要素を開示している。ベルトが運転中である間にキャリヤがプーリ面と接触するリスクを防止するために、この構造ではまた、横要素が鏡に映されたようにフィットされる必要がある。鏡に映されたような隣接する横要素の複雑さは2面テーパ付けで下部のテーパ付き横要素部分を製造することにより解消されると示唆され、その結果、予想されたように或る種の製造上の難点及びコストを犠牲にして、唯一の横要素配向が適用される必要がある。
【0007】
別の既知の単一パッケージデザインはベルトの運転時にベルト保全性を維持するためのセパレート要素型を示す。このような要素型はロック要素の形態の保持装置、例えば、ピン又はロックリング、これらの組み立て後のキャリヤ受容くぼみの密閉を備えている。このような構造は、運転中及びセパレート部分としての両方で、ベルトの保証された保全性を履行し得るが、重量及び製造コストのために比較的不利であるとともに、多くのデザインにおける強度は、例えば、自動車用途に典型的に必要とされるように、若干大きいトルクレベルが伝達されるべきである時に保証し得ない。このベルトデザインのうちの、一つのこのようなピン構造がEP−A0122064に開示されており、一つのこのようなリング構造が米国特許第5123880号に開示されている。
【0008】
本発明は専らではなく主として上記のコスト上昇の不利を生じないで単一パッケージベルトデザインを実現することを目的とし、これはベルトにより伝達可能なトルクの量を最大にするとともに、ベルトに対する種々の機能要求に良好な様式で依然として応答するように比較的複雑にされない形状及び比較的低い重量を有する、単一要素型のみを含む。このような本発明に係るベルトは請求項1の特徴的部分により実現される。
【0009】
いかなるキャリヤ保持手段も操作中に原則としては要求されないので、そのような請求項に記載された特徴を含むベルトは容易に生産され得る。驚いたことに、ベルト保全を維持する保持手段の機能は、揺動端部(つまり下要素部分の最大の厚さ)の位置での横要素の厚さに関連して上要素部分を厚くすることにより、達成される。このように、所謂猫背状円弧は、二つのプーリ間で整えられるようなベルトの押す部分で達成される。その後、側面図から観察した時、横要素は、それらの位置において楔止め(wedge)されるので、互いから、あるいはキャリヤから脱落しない。都合のよいことには、単一形式の要素は、この解決手段で要求され、それにより、好ましい生産および組立てを保証する。さらに、既知のベルトデザインと異なり、この種の横要素を備えたベルトは、トルクを伝達する容量および/または他の伝達特性の中で異なる様々な適用を網羅するために様々なキャリヤの形態で生産可能である。この横要素はキャリヤ用に、意図した位置の半径方向の外側での、横要素の幅に対して材料の不足により、重量において比較的低くされていてもよい。さらに、単一パッケージおよび二重パッケージ・ベルトデザインの両方に現在のデザイン的特徴はうまく適用され得ることが判明した。
【0010】
本発明によれば、このデザインについては、本発明が既知の技術に関して異なる要素の形状を適用することができるので、現在のデザイン的特徴は二重のパッケージ・ベルトデザインにうまく適用可能である。それはキャリヤと要素との間の半径方向の遊びを制限する役目をもはや果たさないので、T−形の上要素部分の横の幅は特に縮小されてもよい。さらにキャリヤがベルトの操作中に、より多く負荷を掛けられないので、その特徴はベルトの機能的な寿命を確実化するかまたは最適化することの助けとなる。そこに、例えば、もはやキャリヤの半径方向の外側と、要素との間の相互作用(それは既知の技術によるベルトにおいて要素がプーリを出る位置で生じる)である必要がない。この領域では、プーリの弾性の変形により、要素は、それらが滑車と共に回転し続ける傾向があるように、プーリの滑車間で非常に有効にクランプされる。既知のベルトでは、要素は、それらの構成要素に補足負荷を置いて、T−形の上要素部分あるいはロックピンのような保持する手段と相互作用するキャリヤによってプーリ滑車から引き離される。本発明によるベルトでは、ベルトの要素が、スラック(slackゆるい)軌道部分中でも接触してしっかりと維持される。その結果、プーリから要素を引き離すための力は一つの要素から他方へ伝達可能とされる。
【0011】
驚いたことに、本発明による寸法は、横要素とキャリヤとの間の相対的な半径方向の移動を積極的にあるいは直接的に制限することにより、ベルトの完全のための前述の手段の適用を回避する間にベルトの完全性を実現する。これは、半径方向の外向きに完全に開いているくぼみを適用すること、つまり、キャリヤ引っ掛け部分またはロック手段を省略することの可能性さえも提供する。この結果の達成のために、本発明によれば、小さいが顕著な量だけのテーパ付けが、半径方向に揺動端部を越えた上要素部分に要求される。この方法で好まし利点は、ベルトが著しく多くの横要素を組込み、かつこの種のベルトにおいて押し込み力が要素間に働かせられる状況の中で得られる。
【0012】
ここでの記述の情況では、循環的な形に位置した時、要素の高さは半径方向のベルトの寸法と一致すると想定され、要素の幅は横または軸の方向のベルトの寸法と一致し、また、要素の厚さはベルトの長さ方向のつまりベルトの周囲に沿った寸法と一致することはここに注目される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、上要素部分は、徐々に厚さが増加する。このように、楔止めする効果は、要素間の接触圧力を低下させることにより楔止め効果の保証を最適化して、要素上の最大の距離でなければ相当な距離に渡って達成される。
【0014】
より好ましくは、上要素部分をテーパ付けすることは、下要素部分および上要素部分の両本質的部分をカバーする平らな面を形成する要素の一つの長さ方向に面する側で達成される。このように、要素の技術的・経済的生産の問題は順調に解決され、例えば、要素の一つの長さ方向に面する側だけは、打抜加工による要素生産を許容して、輪郭が順調に描かれる。
【0015】
特に好ましい確実な効果は、ベルトの揺動端部の高さでの上要素部分と下要素部分との間の要素の厚さの名目上の差が、前記揺動端部での厚さの0.01倍と0.20倍の間にあり、好ましくは約0.04倍である場合に、本発明によって達成可能である。
【0016】
所謂単一パッケージ・ベルトの完全を維持する前述の問題は、前の解決手段に加えてここに組込まれ、しかし排他的に適用可能な特徴により、二者択一的に本発明によって解決される。この特徴は、ベルトの周囲長さに関しての横要素の上要素部分の臨界的な半径方向の高さの適合によって、トランスミッション中に少なくとも装着され、走行する時プーリ間におけるベルトの凹状に形作られるスラック軌道部分中の少なくとも二つの横要素の上要素部分間の相互の接触により、横要素間に存在する遊びの量が除去されることを伴う。本発明によって、そのような特徴は、安定した接触で要素を相互に維持することにおいて支援し、それにより操作中にベルトの完全を維持する。この後の解決手段は、トランスミッションに適用された時ベルトの軌道のプーリ間におけるゆるい部分で、横要素は、適切なベルト部品が凹状に形作られる安定した端部位置中で互いに閉鎖(block)するかもしれないという洞察に基づく。その解決手段は、そのようなスラック軌道部分が、プーリによるベルトに対する締付け動作の結果、半径方向の内側へ曲がる傾向を持っているという経験および洞察を考慮する。プーリは、プーリを出るベルトを妨害し、またプーリにおいて回転し続けるようベルトを促す傾向がある。
【0017】
この解決手段で、もし揺動端部の上の要素高さが十分に大きく作られれば、ベルトの要素間の長さ方向の遊びの合計である全端部遊びの合計の大きな値は、ベルトの組立てをそのように助けて、許容され得る。本発明は、これによって特に、ベルトの全端部遊びの合計の一部だけが、スラック軌道部分の中にいつでもあるという洞察を利用可能である。さらに、このスラック軌道部分中の端部遊びは、二つの隣接した要素間で一般に集中されないだろうが、多かれ少なかれ分配される傾向がある。従って、前述の要素高さは、最大のギャップのために、即ち例えば実際上確立される二つの隣接した要素間の操作中に生じると予想されるかもしれないつまり遊びのために、単に測定する必要があるだろう。この主要な解決手段の一層の苦心作では、その適応は、キャリヤの半径方向の内側の周囲の長さとして定義されて、ベルトの周囲長さの平方根から外れる。本発明による解決手段の特別の利点は、自由な状態中にある場合、つまり、トランスミッションの外部で可能である、循環的にそれを形作った、例えば、組立ての後に、ベルトの実際の端部遊びを考慮するだけでなく、操作中にキャリヤと要素の弾性の変形によって端部遊びの合計が部分的に決定されるか、または、装備およびトランスミッション内の操作によりその遊びがそれによりまだより大きくなるかの状況をさらにカバーすることである。
【0018】
更に特別には、本発明は上部分が揺動端部から外部に半径方向に延びる肢部を備えており、夫々の肢部がキャリヤ接触面(またサドル表面又は単にサドルと称される)の軸方向の端部に隣接し、くぼみの横境界を形成する横要素の横側部分付近に設けられている所謂単一パッケージベルトに関する。既知のベルトデザインと違って、この型のベルトは、例えば、トルク伝達能を異にする種々の用途をカバーするために種々のキャリヤ寸法で容易に製造し得る。記載された要素型は上部分中のキャリヤの幅の大部分にわたる材料の欠如のために比較的低い重量に保たれてもよい。
【0019】
本発明の別の特定の局面によれば、夫々のこのような肢部はサドル表面により横要素と接触される場合にキャリヤの半径方向の外側より上のレベルで主としてベルトの長さ方向に配向された突起を備えている。この構造では、突起が特にスラック軌道部分におけるベルトの保全性の維持を促進するとともに、比較的大きい全端部遊びを可能にする。このようなスラック軌道部分におけるベルトがベルトの中央に向かって曲げられ、即ち、凹形に曲げられる場合、横要素はその半径方向に外部により相互に接触する傾向がある。突起をこれらの外部付近に設けることは、本発明によれば、横要素が半径方向に互いに対して移動することを防止し、それ故、単一パッケージベルトを崩壊から防止することを意図されている。突起のこの機能は既知のベルト配置では見られず、そこではその代わりにそれがプーリ軌道部分間で横要素を軸方向に振動することを防止し、またベルトのアーク形プーリ軌道部分で横要素の安定な相互の配向を支持するという機能を有し、それ故、本発明の突起の異なる配置を必要とする。突起のこの新規な機能及び新規な配置それ自体が単一パッケージベルトデザインの適切な機能を可能にし、少なくとも増進するので、本発明はまた肢部がサドル表面により横要素と接触される場合にキャリヤから半径方向に外側部のレベルで主としてベルトの長さ方向に配向された突起を備えているベルトに関する。
【0020】
このような新規な配置では、突起は肢部の半径方向の寸法の上半分に完全に配置されることが好ましい。有利な実施態様において、突起はプーリにおける半径方向に内部境界を形成する主として軸方向に延びる下面を有し、それによりプーリ間軌道部分で隣接横要素間の軸方向の変位を防止する突起の機能、並びに横要素の製造可能性の両方を増進する。既知技術のように、ベルトの長さ方向に面する肢部の表面に位置する本発明の突起配備により、相当する穴が反対方向に面する肢部の表面に設けられる。新規な突起配備の機能性を最適に保証するために、本発明では突起が長さ方向で前方かつ半径方向で外向きの方向に延びる肢部の部分として部分的に製造される配置が好ましい。この様式では、突起が横要素厚さを上部分の半径方向の全長にわたって維持しながら実現され、それにより横要素がベルト軌道の直線部分でかなり押しやる力を吸収することを可能にする。この新規なデザインでは、突起が既知の突起の実施態様を形成するのに好ましい方法のように材料をせん断して突起及び穴を同時に形成するのではなく、肢部を曲げることにより製造されることが好ましい。この新規な突起デザインの更に有利な局面はそれがそれから半径方向に外側部に配置された肢部の部分に隣接して半径方向及び長さ方向の両方に延び、かつ前記肢部の部分より軸方向に下の肢部の部分に平行な半径方向に延びる肢部の部分により部分的に形成し得ることである。このような構造は突起部分の新規な機能性を維持しながら有利に製造し得る。
【0021】
本発明の単一パッケージデザインの更に特定の局面は、サドル表面のレベル付近での肢部部分に対し軸方向の肢部幅が増大される部分を含めるために、半径方向に外向き方向に端部を有する肢部を示す。この様式では、特にスラック軌道部分中の、横要素の良好な、即ち、安定かつ信頼できる相互接触が促進され、それにより前記保持装置のないベルト型又は、更に詳しくは、横要素のキャリヤ受容くぼみの横幅がその変形を生じないでキャリヤのくぼみに出入りする移動を可能にするベルト型の適用を増進する。本発明のこの局面の好ましい実施態様において、幅が増大された肢部の部分が突起から半径方向に外向きのその少なくとも大部分について、更に好ましくは肢部の上面又は半径方向に面する端面に直接隣接して、又は含んで配置される。即ち、図6を参照して、肢部の他の部分よりも幅が広い支部10;11の部分(つまり線25の部分よりも幅が広い線26の部分)は、半径方向の外側に位置し、つまり、突起21の上方、より好ましくはそのような幅の広い部分は肢部の端部例えば頂部または頂面に隣接する部分、に位置している。それにより肢部の相互接触の不全の機会を最小にする。なぜならば、特に本発明によれば、肢部がそうしないと最小の幅であることが求められるからである。
【0022】
製造されるのに有利な実施態様において、肢部の幅が増大された前記部分は、ベルトの長さ方向に見て直線に従って延び、好ましくは実質的に半径方向に延びる肢部の軸方向の面により形成される。このような実施態様において、肢部の前記上面は主として軸方向及び長さ方向に延びる平らな表面を備えていることが好ましく、その表面は、好ましくは約1mmの半径の、丸くされた遷移部分により肢部の軸方向の面とつながっている。
【0023】
キャリヤ受容くぼみがキャリヤ及び横要素の自由な相互移動を可能にする単一パッケージベルトの良好な機能を最適化するように、長さ方向から見た肢部は、少なくとも肢部の高さの主要部分について、横要素のプーリ接触面及びプーリの横要素接触面の両方が配向される角度、所謂フランク(flank側面)角度に少なくとも実質的に一致する角度で半径方向及び軸方向に延びる。この手段により、肢部は実際に軸方向に別々に、好ましくはプーリにより形成されたV字形の溝の閉じ込め内にできるだけ多く形成され、それによりその捩り及び軸方向の座屈に対するベルトの安定性を促進する。二つのプーリ間で横要素はプーリ滑車による側面支持がない。ベルトに作用する力及び振動の影響下でベルトは座屈またはその他の欠陥の原因となり得る捩じれまたは曲がりが生じる可能性がある。真っ直ぐに上に伸びる代わりに、多少V型になっている両肢部の特徴は、前記捩じれと曲がりによる欠陥のリスクを減らして、ベルトにさらなる機械的安定性を与える。本発明の突起を備えたこの後者の要素デザインの好ましい実施態様において、突起の軸方向に外向きに面する面の主要部分がまたフランク角度に少なくとも実質的に一致する角度で配向される。更に、軸方向に内向きに面する表面、即ち、反対肢部に設けられた突起の同表面に面する表面の主要部分がまたフランク角度に少なくとも実質的に一致する角度で配向されて、突起の寸法及び質量を最小にするとともに要素安定性を最適化し得る。
【0024】
本発明の先の特徴によれば、横要素の有利な実施態様はキャリヤ受容くぼみに面する肢部の軸方向に内向きに面する表面の相互の分離がキャリヤの軸方向の幅より大きいことに見られる。
【0025】
単一パッケージベルトの機能性を保証しながら、本発明はその重量を軽減しようとし、それによりベルトのトルク伝達能を最適化する。こうして、上記された手段及び特徴のいずれにもかかわらず、本発明は肢部の公称の軸方向の幅をキャリヤの幅に関して小さく保とうとする。これに関して、本発明によれば、サドル表面のそれに相当する半径方向のレベルにおける肢部の軸方向の幅の合計はこのような表面の軸方向の幅の1/3未満、好ましくは1/6未満であり、その間キャリヤを受け取るためのくぼみが半径方向に外向きに向けられ、少なくともキャリヤの軸方向の幅に一致する幅にわたって半径方向に外向きに開いている。この最適化デザインでは、プーリにおける肢部の半径方向の長さはプーリにおけるサドル表面の半径方向のレベル位置から測定する時にサドル表面のレベル位置での要素の厚さの少なくとも3倍を越えることが有利である。このような手段により、肢部は、横要素をプーリにおける半径方向でキャリヤから分離することを妨げるための、即ち、横要素とキャリヤの同時の相互回転を生じないフック形端部、又は、二重パッケージベルトの場合には、T字形である上部分を備える必要がなく、その結果、キャリヤが軸方向に平行に配向される場合でさえも、くぼみ中のキャリヤの自由な挿入が可能である。こうして、肢部、又は上部分は比較的小さい軸方向の幅を有して製造でき、それによりキャリヤ幅、即ち、前記トルク伝達能を決める幅とベルトの全幅の比を最適化する。肢部がベルト長さに沿った方向で見られるように前記レベル位置で四角い断面を有し、肢部幅はサドル表面のレベル位置で横要素厚さに実質的に一致して、ここでの肢部断面は正方形とするのが好ましい。
【0026】
それ自体で、また本発明の夫々の特徴と組み合わせて有利な好ましい実施態様において、横要素は軸方向に延びる揺動端部(また更に正確には傾斜ゾーンと称される)を示す。なぜならば、通常それは鋭い端部ではないが、横要素の幅のかなりの部分にわたって延びる半径方向に配向された凸形湾曲の形態の多少なめらかに湾曲した表面であるからである。揺動端部又は傾斜ゾーンはサドル表面から半径方向の内方に0.4mm〜0.6mmの距離に配置されることが好ましい。この様式では、比較的大きい接触圧力がベルト内の横要素間で受け取られ、その間揺動端部が運転中のキャリヤと横要素の間のベルト内の速度差を最小にするためにサドル表面近くに配置される。
【0027】
本発明の特に重要な局面は夫々の横端部における横要素がプーリと接触するためのプーリ接触表面(またフランクと称される)の形態の側面を備えているベルトデザインに関する。フランクは少なくともサドル表面と接触する時にキャリヤの上部境界を越えて半径方向に延びる。この様式では、横要素とプーリの間の接触圧力がかなり低下し得る。理論的考慮から、横要素は小さい半径方向の高さを有するフランクによりプーリのクランプ力を正確に受け得ることが計られてもよいが、大きいフランクがプーリに対する横要素の配向の安定性のため、またそれらの間の有利な潤滑状態の維持のための両方に有利である。理論的に許される接触圧力は横要素とプーリの間の摩擦接触で発生する熱の量の結果としての潤滑媒体の崩壊のために結局許されないかもしれないことが観察される。極端な場合、この熱はプーリと横要素の間に局所の微小溶接スポットを生じることがあり、ベルト使用寿命をひどく短縮する。
【0028】
好ましい実施態様において、フランクは揺動端部の上にその半径方向の高さの少なくとも1/3、しかしながら好ましくは約半分以下にわたって延び、それによりまたプーリ内の横要素安定性を改良する。なぜならば、横要素とプーリの間の摩擦力の適用の有効な半径方向のレベルがその後に揺動端部(そこで隣接横要素間の押しやる力が伝達される)の半径方向のレベル、又は少なくともその付近にされるからである。この様式では、前記力の力モーメントが最小にされ、それにより横要素はプーリ中にある間にベルトの軸のまわりで傾斜する傾向が最小にされる。これに関して、揺動端部を形成する軸方向に延びる湾曲の半径は約12mmまたはそれ以上である。前記半径は最小でフランクの半径方向の高さにより、また最大で公称の横要素幅により特定される値の範囲内にある。この範囲は本発明の特徴により特定される単一パッケージベルトデザインに関して特に好適であることがわかった。
【0029】
本発明の更に別の特別な局面はエンドレス要素の下面が凹形である半径方向に内側の端部で成形され、それにより内端部が少なくともサドル表面の幅にわたって軸方向に延びるベルトデザインに関する。凹形内端部の特徴は二重パッケージベルトデザインからそれ自体知られているが、それは市販のベルトデザインに適用されていなかった。しかしながら、新規な構造にすることとは別にして、単一パッケージベルトデザインにおけるその適用は、フランク高さを有利に増大するとともに、下部分の合計の体積及び重量を抑える。好ましい実施態様において、内端部は下部分の最大横幅の0.5〜1倍の範囲内の値を有する半径と少なくとも実質的に一致して湾曲される。この範囲は本発明の特徴により特定された単一パッケージベルトデザインに関して特に好適であることがわかった。
【0030】
本発明の後者の局面の有利な労作では、下部分は長さ方向において軸方向に延びるステップを備えていてもよく、その結果、このような位置で横要素の厚さが段階的に変化する。この様式では、横要素の重量が更に抑えられ得る。本発明によれば、ステップは、好ましくはそれを少なくとも一つの位置に交差して、横要素の内端部付近に設けられる。このデザイン特徴は横要素製造のための打ち抜き工程の正確さに顕著な効果を有し、更に打ち抜き中に適用される力を軽減する。本発明の好ましい実施態様によれば、ステップの半径方向の下側で、横要素は下部分の最大の長さ方向の厚さの0.75〜0.90倍の範囲の厚さを有する。このような範囲は本発明により、目的とされるクランプ力を吸収するための横要素強度と重量軽減の最適のバランスを与える。
【0031】
最後に、ベルトはサドル表面の軸方向の端部が図6に示すアーク形の小さいくぼみ33により、肢部となめらかにつながる有利なデザイン局面を特徴とし、それにより該くぼみが主としてアークのように成形される。この様式では、肢部とサドル表面の間の遷移が亀裂する傾向が少ない。更に、このようなデザインにより、フランクがサドル表面の半径方向のレベルより上のかなりのレベルまで延び得るとともに、上部フランク部分におけるクランプ力が依然として下部分に有利に案内し得る。これに関して最適化された実施態様において、アーク状の該くぼみの面と肢部の面とが、一つの連続した円滑な面を形成する。
【0032】
本発明の先に提案された実施態様及び局面は、それ自体で、又は組み合わせて、比較的薄い半径方向に組重ね(nest)されたエンドレスの平らな金属バンドの組を含むキャリヤと組み合わせて最も有利に作用する。
【0033】
以下の詳細な説明から明らかになる上記目的及びその他の目的とともに、本発明の可撓性ベルト型トランスミッション装置の好ましい実施態様が添付図面に示される。図1はそれ自体知られているベルト型トランスミッション装置の輪郭を示す立面図である。図2は図1のトランスミッション装置用のベルトの所謂単一パッケージ実施態様の従来技術の横要素を示す拡大正面図である。図3は図2の断面A−Aを示す図である。図4は本発明の所謂二重パッケージ要素実施態様の正面図である。図5は図4の断面B−Bを示す図である。図6は本発明の単一パッケージ要素実施態様の正面図であり、破線により正面図に関連付けした側面図を含む。図7は図1の立面図において、本発明の要素デザインの効果を示す概要図である。図8は図1の立面図において、それ自体適用された場合の本発明の別の局面の要素デザインの効果を示す立面図である。図9本発明に係る横要素の臨界高さ(HSE)に対する端部遊び修正(EPC)効果のプーリの軸の中心間の幾つかの距離(AV)に関するプロット図である。図10は図6の横要素を含むベルト部分の斜視図である。図11は図6の側面図に示された、別の横要素の実施態様に係る上部の部分図である。図12は図6の側面図に示された、第二の別の横要素の実施態様に係る上部の部分図である。図13は本発明の範囲内に入る横要素の実施態様に係る概略説明用図である。
【0034】
(発明を実施するための最良の形態)
図面中、相当する機能を行なう構造部分が同じ参照番号により参照される。図面が以下に更に詳しく説明される。
【0035】
図1はプーリのプーリに載っている間にプーリ1及び2の間で走行するベルト3を備えた、自動車用途に適するが、例えば、ウィンドミルのようなその他の用途に好適なベルト型トランスミッション装置(また連続可変式トランスミッション(CVT)と称される)を図示する。プーリ1,2の各組プーリ(組合わせた軸固定プーリと軸上可動プーリ)は、概してV字形のプーリ接触面15及び16(またベルト3のフランク15及び16と称される)を受け取るためのV字形溝を形成する。ベルト3は、両プーリ1,2の一方から他方に力を伝達し、その力は、例えば、車両のエンジンによりこのような一つのプーリ1,2に負荷されたトルクから生じる。ベルト3は、手動中間に中の第一ギヤ位置に匹敵する、所謂ロー位置付近の位置で示される。ベルト3(またプッシュベルト3と称される)は、組重ね(nest)されたエンドレスの薄い金属バンド7(それ以外にリング7と称される)の組の形態の、キャリヤ4(また支持体4又は引張手段4と称される)、及び多数のセパレート横要素5(それ以外にブロック5と称される)を含む。横要素5はエンドレスの、実質的に連続のアレイ中に前記キャリヤ4に沿って摺動自在に配置され、こうしてベルト3が所謂プッシュベルト3、即ち、隣接横要素5を二つのプーリ1と2の間で互いに対して押し付ける横要素5のアレイ内のプッシュ力により力を一つのプーリから別のプーリに伝達するためのベルト3として機能することができることを保証する。
【0036】
運転適用について、ベルト3は、プーリの軸からのいずれかの半径方向の距離でプーリの間を走行してもよく、こうしてステップのない可変トランスミッション比を生じる。ベルト3を組プーリの間にクランプするため、またベルト3の走行半径を変えるために、夫々のプーリ1,2の少なくとも一つのプーリは、それ自体知られている様式で、例えば、前記トルクを伝達するのに、又は夫々のプーリ1,2中でベルト3の走行半径をシフトするのに充分な力を前記の少なくとも一つのプーリに適用する油圧制御装置により軸方向に変位可能に設けられる。
【0037】
図中に示されるように、ベルト3の横要素5は前記プーリ1及び2のプーリを接触させるための傾斜プーリ接触面15及び16(またフランク15及び16と称される)を備えている。プーリ1,2のプーリの間に充分に強くクランプされた時に、このような力が前記フランク15及び16と夫々の組プーリのV字面の間の摩擦によりベルト3に伝達された後に、ベルト3は力を回転している両プーリ1,2の一方から他方に伝達することができる。プーリ1及び2の各組プーリにより形成されたV字形溝は横要素5の傾斜フランク15及び16が配向される角度、所謂フランク角度と少なくとも実質的にマッチするV角度を有する。フランク15及び16は横要素5と両プーリ1,2の接触中のトランスミッションオイルの如き冷媒の適切な存在を可能にするように、谷及び溝を設けることにより粗面化されてもよい。横要素5は、断面で見られるように、下要素部分(環状ベルト3における内側部分)を有することが好ましく、これは揺動端部(rocking edge)9のレベルから半径方向に内向きに配置された横要素5の部分及び揺動端部9それ自体を含む。次いで上要素部分(環状ベルト3における外側部分)はプーリにおける半径方向に外向きに、即ち、揺動端部9の上に配置された横要素5の部分として形成される。揺動端部9は、また傾斜ゾーン9と称され、普通6〜12mm付近の半径を有し、プーリの軸方向に配向された理論的に多数の接触ライン(それらに沿って横要素5が、例えば、プーリ1,2の各組プーリの間でアークのように曲げられた軌道BTにある間に、相互に接触し、揺動し得る)を保持する半径方向の湾曲を含む。
【0038】
少なくとも下要素部分の傾斜面19、即ち、図3の立面図中の側面は横要素5の同じ面で上要素部分に対し傾斜され、その結果、横要素5はプーリにおけるその半径方向の内面、即ち、ベルト3の内面に向けられた面に向かって一層薄くなる。更に、横要素5は概してわずかに凸形かつ半径方向に外向きに面するキャリヤ接触面8(またサドル表面8と称される)を備えている。キャリヤ接触面8はベルト3の運転中にキャリヤ4、特にその半径方向に最も内側のバンドと接触することが意図されている。このようなサドル表面8は、少なくともキャリヤ4と接触することが意図されているその部分について、側面図に見られるように概してまた凸形に成形される。
【0039】
ベルト3の各部分は、運転中、駆動プーリの回転により、所謂交差軌道CTU,CTL(また“プーリ間軌道部分”CTU,CTLと称される)が曲がった軌道BT(そこでベルト横要素5が夫々のプーリ1,2中でクランプされる)の間を通過し、その交差軌道中で、それは、主として延伸された性質の、上部及び下部、夫々交差軌道CTU及び交差軌道CTLを示す。プーリ1及び2の各組プーリの間でクランプされた時に、ベルト3は第一及び第二の典型的なアークのような曲がった軌道BTを示す。二つのプーリ間軌道部分CTU,CTLで、ベルト3は、引っ張られた一つの部分と、プッシュ軌道部分とがあり、即ち、横要素5が互いに対し強く押し付けられる。このような部分では、ベルト3は押し付け機能を行なう。反対のプーリ間軌道部分CTU,CTL、スラック軌道部分では、ベルト3は、若干緩和され、即ち、隣接横要素5が若干の遊び、即ち、最終の横要素5を組み立てで挿入するのに必要とされるベルト3の横要素5の間の全遊びの一部を示してもよく、この遊びは横要素5の磨耗又は運転中のベルト3中の変形から生じる。このような遊びはベルト3の全端部遊びEPと称される。プッシュ軌道部分及びスラック軌道部分は、運転中に、トランスミッション条件に応じて、上面、即ち、図7及び8中の交差軌道CTU、又は下面、即ち、トランスミッションの図7及び8中の交差軌道CTLに存在してもよい。両方の交差軌道CTU,CTL中で、キャリヤ4は横要素5を所望の相互配向に保つのに利用でき、少なくとも助け、それにより高い引張力にかけられてもよい。実際に、ベルト3は、プッシュ軌道部分中で、横要素5が互いに対し押し付けるために曲がる傾向を示し、それにより離れたスプラッシングの傾向を有する前記プーリ1及び2の間の金属ロッドを実質的に形成する。しかしながら、このような傾向はキャリヤ4、特にその中に行き渡っている引張力により相殺される。
【0040】
特に図2及び3を参照して、横要素5の既知の従来技術のデザインの実施態様が図示され、その記載はここではベルト3に関する横要素5の幾つかの基本的な機能及び構造の特徴を解明するのに利用でき、特に横要素5の所謂単一パッケージ実施態様が示される。横要素5のこのような型は組重ねされたリング7の組を含むキャリヤ4を受け取るための中央のくぼみ6(また開口部6と称される)を有する。開口部6は半径方向に外向きに延びる肢部10及び11のフック部分12及び13により半径方向に外向きの方向に境界を定められる。肢部10及び11は夫々横要素5の横側部付近で上向き(外向き)に、即ち、半径方向に外向きに延び、くぼみ6の横の境界を形成する。この従来技術の実施態様において、肢部10及び11はキャリヤが横要素5のサドル表面8と接触する時にキャリヤ4まで上向きに延び、それをわずかに超えて延びる。従来技術の肢部10及び11のフック部分12及び13は、ベルト3が一旦組み立てられるとくぼみ6中にキャリヤを含むように成形される。
【0041】
下部に、横要素5は、フランク15及び16、並びにベルト3がプーリ1,2中をアーク形の曲がった軌道部分BTに沿って通過することを可能にする先細りテーパ付けを与えられている。従来技術の実施態様において、揺動端部9はサドル表面8の若干下に、即ち、それから半径方向に内方に配置される。先細りテーパ付けは、軸方向に配向された揺動端部9の上に延びる主要な面部分に対し下向きかつ後向きに傾斜される下要素部分(これは揺動端部9の下面と上にリンクする)の傾斜面19により実現される。下要素部分はそうしないと軸方向に配向される実質的に真っ直ぐな下端を有する比較的高い剛性を有する中実の実質的に台形のブロックとして製造される。
【0042】
図4及び図5は図2及び図3に記載の実施態様の主要な特徴を含むが、リング7の二つの組の形態のキャリヤ4を受け入れるためにデザインされた、個人車両用に特に適したベルト3を形成する本発明の実施態様を示し、その目的のためにスロット6の形態の二つのリング受容くぼみ6が設けられる。夫々のくぼみ6はサドル表面8により半径方向に内向きに境界を定められ、また横要素5のT字形上要素部分14により半径方向に外向きに境界を定められる。本発明の横要素5中で、上要素部分14、即ち、揺動端部9の半径方向に上の部分は、わずかにテーパ付けされ、その結果、それはその半径方向の外端部付近に最も厚い部分を有する。その厚さは少なくとも300〜500個の単一ベルト3中の横要素5の典型的な個数について揺動端部9付近でその厚さの4%のオーダーの増分の量だけ半径方向に外向き方向に増大することが好ましい。しかしながら、これに関して有益な範囲は1%〜20%の間に及び、これらの値を含む。この方法では、一つの交差軌道CTU,CTLで、典型的な“ねこの背中”、即ち、図7に示された上部の、即ち、プッシュする交差軌道CTUの凸形が有利に得られる。本発明によれば、この形状は上部交差軌道CTU中のサドル表面8とキャリヤ4の接触を促進し、それによりまたその軌道のこの部分中の横要素5のセンタリングを有利に促進する。またその凸形はプーリ1,2からのベルト3の退出を促進する。
【0043】
図7(図中、Dは夫々のプーリ1,2の回転の方向を表す)は更にプーリ1,2が、ベルト3におけるクランプ力のその発揮のために、その組プーリの間にクランプされたベルトの横要素5を保つ、即ち、円形軌道中で移動している横要素5を保つことによりベルト3の前記退出を抑制する傾向がある。この特徴は、特に参照番号40で示された理論的な真っ直ぐの軌道と比較して、スラック軌道部分、ここでは下部交差軌道CTLにより示される。凹形をとるベルト3の得られる傾向はベルト3中の横要素5の間の遊びの合計量、即ち、全端部遊びEPに依存する。既知のベルト3の場合のように全端部遊びEPを厳密な制限内に保つことはベルト3の製造に負担をかける結果をもたらす。これは、本発明のベルト3では、横要素5の相互接触により横要素5の間の遊びの利用可能な量を減少する傾向があるという点で、増大された外部厚さの特徴により軽減し得る。また、本発明の構造は製造されたベルト3内の比較的大きい全端部遊びEPを可能にする。なぜならば、横要素5のわずかに増大する厚さがまた凹形スラック軌道部分中の遊びの利用可能な量の減少に影響するからである。更に、凹形スラック軌道部分中の遊びのこの減少はベルト3がこのような軌道部分中で曲がる傾向を同時に減少する。この効果により、ベルト3は一つのプーリ2からの出口の位置から別のプーリ1にある入口の位置まで完全に真っ直ぐに交差するベルト3の想像上の空間軌道40に関して、本発明に従って特定された凹形曲げの可能な量内に更に容易に保たれる。本発明の基礎となる識見によれば、側面図に見られるようなベルト3の凹形スラック軌道部分は、ベルト3による異常に高い力を避け、かつキャリヤ4がくぼみ6内にとどまることを実現するように、想像上の空間軌道40内に少なくとも部分的に留まるべきであることが特定される。図7に真っ直ぐな空間軌道40から内向きの少量の曲げで示されるが、本発明の特徴を有するベルト3は凹形スラック軌道部分が空間の真っ直ぐな軌道40と実質的に一致するように容易にデザインし得る。
【0044】
上要素部分を厚くする上記原理は本発明によれば、例えば、図2に記載の単一パッケージ実施態様に有利に適用し得る。このようなデザインでは、本発明の特徴が経済的かつ技術的な機能デザインを得るという問題の解決策として利用できる。特になぜならば、その特徴はまた上部交差軌道CTL中の横要素5が互いに、又はキャリヤ4から離れて落下することから防止され、即ち、ベルト3の保全性が維持されることに影響するからである。このような単一パッケージ実施態様の例が図6により示された構造中に用意される。図6の側面部分は、要素の半径方向に外向きに増大する厚さがわずかに前方に傾斜される上要素部分の前面20により実現される横要素5の好ましい実施態様を示す。このような前面20は揺動端部9及び下要素部分の傾斜面19が設けられる要素の面に配置されることが好ましく、その結果、ベルトの長さ方向に面する横要素の唯一の面が傾斜され、一方、前面20のような反対方向に面する更にベルトの長さ方向に面する面が平らであってもよい。
【0045】
図8は臨界半径方向の距離又は高さの特徴を明らかにし、それによりベルト幾何学的特徴における識見が新規なデザインにおいて有利に同定され、適用され、それにより通常の数学的法則を利用する。図7中の提示とは異なり、図8中では上部交差軌道CTUがスラック軌道部分に相当し、この場合、最悪の場合を考慮するために、全端部遊びEPはスラック軌道部分の正確に半分に配置される二つの隣接横要素5の間に集中される。図7のように、トランスミッションは中間トランスミッション状態、即ち、速度トランスファの比及びトルクトランスファの比が1である状態のベルト3で示される。矢印Aは、関係プーリ2に丁度入りつつあるベルト3の入口の位置における横要素5の揺動端部9の位置から始まる。つまりこれは、ベルトの回転中におけるフリーベルト軌道部分の組プーリ間で、クランプされていることから丁度外れるあたりであり、図8に示されように、ベルトがそこから内方へ移動し始める点である。中間トランスミッション状態では、矢印Aの長さは約(1/2)AVである。なぜならば、この位置における要素は組プーリ間にクランプされていないからである。一般に、上要素部分(これは比較的長い)はベルトがスラック軌道部分中のその中央に向かって曲がるそれ自体の傾向のもとに曲がり、即ち、崩壊するというリスクが強く軽減されるという利点を有する。図8に従って説明された特徴に関連して、実際に本発明によれば、除去されるべき端部遊びEPCの量、又は補正、修正もしくは吸収のためのベルト3の固有の可能性が今使用される。この可能性が本発明により認識され、利用可能にされ、上記の増大された厚さの解決策とは別に、又はそれに加えて、以下の概念(これはそれ自体で適用し得る)に従い、少なくともそれに由来する手段により実施に向けられる。
【0046】
このような別の解決策によれば、横要素5は上要素部分の一部である揺動端部9から始まって半径方向に測定して、比較的に長く延びている肢部10及び11を備えている。横要素5のこの特徴は図6に示されるような、上要素部分の上記の増大する厚さの特徴と組み合わせて適用されることが好ましいが、必ずしもそうではない。図6に記載の好ましい実施態様において、肢部10及び11は、本発明の一部と考えられる、臨界半径方向の距離、又は高さHSEを越えるレベルまで揺動端部9の上に延びる。揺動端部9の上の臨界半径方向の高さHSEは、除去されるべき端部遊びEPCの前もって特定された所望の量に依存する。除去されるべき前記端部遊びEPCは、また増大された厚さの解決策が適用される場合には、横要素5の間の全端部遊びEPの共有であることのみが必要とされる。記載されたように、このような全端部遊びEPは、ベルト3の製造を促進するために含まれてもよく、運転中のキャリヤ4の弾性伸び及び/又は横要素5の弾性圧縮のためであってもよく、又は運転中のベルト3の磨耗のためであってもよい。前記の臨界半径方向の高さHSEを含む本発明はスラック軌道部分の凹形曲げで、肢部10及び11の半径方向の外部が想像上の空間の真っ直ぐな部分40内に留まることを与え、その結果、曲げが避けられ、キャリヤ4が依然としてくぼみ6内に配置され、それによりベルト3の構造コヒーレンスを維持する。
【0047】
本発明によれば、スラック軌道部分中の端部遊びのこの修正又は除去がまた第一の解決策により実現され、この場合、要素上部が全体にテーパ付けされた形状を備えているが、それはそれ程延びるべきではない。これに関して、横要素5の有効な厚さは二つの相互に接触する横要素5の前面20の間の最小の、ベルトの長さ方向の距離と定義し得る。上要素部分のテーパ付けされた形状のために、このような有効な厚さは横要素5が相互に平行に配向される場合(これはプーリ1,2の間のスラック軌道部分中で起こる)に大きく、またそれらが上要素部分のテーパに一致する角度で配向される場合(これはプッシュ軌道部分又はベルト3の自由な状態の円形中で起こる)に小さいことが明らかであり、但し、少なくともテーパが比較的小さく、例えば、本発明により特定されるように、0.01〜0.2の上要素部分にわたる厚さの増大により形成されることを条件とする。最初の場合には、有効厚さが上要素部分の最大厚さに等しく、また後者の場合には、有効厚さが下要素部分の最大厚さに等しい。有効厚さのこのような差は、本発明によれば小さく、即ち、0.01〜0.20であるが、それはスラック軌道部分中に存在する隣接横要素5の全ての対について存在するであろう。この効果は、組み立て後、即ち、ベルト3が円形形状をとり得る時に存在して、運転中に消失するベルト3中の横要素5間のかなりの量の全遊びを生じる。これは前記の第一の解決策と同時に採用された場合に第二の解決策により除去すべき遊びの量を減少し、従って臨界距離HSEを減少する。
【0048】
示された単一パッケージ実施態様の機能に必須であるが、本発明の解決策及び本発明の基礎となる識見は、図4及び5に示された所謂二重パッケージ実施態様に同様に有利に適用し得ることが注目される。この場合、くぼみ6の上部境界を形成するT字形上要素部分14の定義は有利にはそれ程厳密ではなくなるかもしれない。なぜならば、運転中の半径方向のキャリヤ4及び横要素5の構造コヒーレンスを維持するという技術水準の横要素5中の前記の上部境界の機能が本発明のベルト3では最早必要とされないからである。これはT字形上要素部分14の軸方向の寸法の減少を可能にし、この場合、T字形の横延長が、例えば、ベルト3の組み立てを促進することのみに利用し得る。
【0049】
本発明の両方の解決策は同時に適用し得ることが更に注目され、その結果、これらの夫々の特徴、即ち、前記の増大された厚さ及び前記の臨界距離が夫々全端部遊びEPの共有である除去されるべき端部遊びEPCの前もって特定された量について寸法を決められることのみを必要とする。これに関して、揺動端部9のサイズ及び形状、そして特に自由状態の形状、即ち、製造中のベルト3の円形形状と比較した時の二つの曲げられた軌道BT中の前記接触ラインとサドル表面8の間の半径方向の距離が全端部遊びEPの合計量に影響することが更に述べられる。それ故、上記曲げに妥当な全端部遊びEPの合計量は実際には本発明の前記特徴を有しない駆動ベルト3の運転中に生じ得る全端部遊びEPの最大量と解されるかもしれない。
【0050】
上記識見に基いて、本発明は特に下記の式の規定に従ってデザインされたベルト3に関する。
【0051】
【数1】
式(1)の基準にマッチするベルトは、全端部遊びEPが要素の突起21の形状、長さ方向の突起及び位置から独立に選ばれてもよいという追加された利点を有する。それ以外に、本発明の本特徴は要素の突起21の成形及び位置決めにおけるデザイン自由度を改良する。特にそれは組重ねされたリング7の二重組を有する普通に知られているベルト型により教示され、また適用されるような円形突起21の長さ方向(ベルトの長さ方向)の突出量よりも大きい必要はない。本発明の上記基準は特に横要素5に対するキャリヤ4の半径方向に外の移動、例えば、T字形上要素部分14の横延長を制限するための装置を用いないでデザインされたベルト3を製造するのに有利に適用し得る。
【0052】
本発明によれば、ベルト3の周囲長さLが実際にプーリの一般に所望の最も近い相互配向の結果としての、トランスミッションのプーリ1及び2の軸、即ち、軸の中心間距離AVを示す時として更に好ましいパラメータに有益かつ自動車用途に充分なインジケータであることが判明している。特に乗客車両移動適用のための、ベルトの目標の自動車用途において、プーリの周囲間の距離、即ち図7に両プーリ1,2を示す二つの円の間の遊びはベルトの実際の周囲に関して無視できると考えられ、即ち、一般に約1%より小さい。実際に、これはプーリ1及び2が通常可能な最小の半径方向の距離に相互に配置されることを意味する。式(1)記載の高さHSEの端部遊び除去能はその後にベルト3に関するデザイン規則に変化し得る。
【0053】
この識見によれば、ベルトの周囲長さLはその中心間距離AVの2倍と、プーリを含むアーク形の曲げられた軌道BT内の両方のベルト部分の周方向長さとの和として表され、後者の軌道部分は中間トランスミッション状態、即ち、トランスミッション比1におけるベルト3の半径RMED、及び周辺の円の長さを計算するための定数により決定される。
【0054】
【数2】
ベルト3が中間RMED中を走行する半径は、ベルト3の最小走行半径及び最大走行半径、夫々RMIN及びRMAXの間の半分の距離として計算される。
【0055】
【数3】
ベルト3の目的とされる用途に関するデザイン規則を考慮して、ベルト3の最小走行半径(これはプーリの軸の半径により決められる)はプーリ直径の約0.2倍であり、後者は中心間距離AVにほぼ等しい。少なくとも、プーリ1及び2の周囲間の分離が無視し得る自動車用途では、RMEDは以下のように書き直される。
【0056】
【数4】
目的の用途について、式(2)に適用される場合に次の式(5)をもたらす。
【0057】
【数5】
式(1)に適用されると、除去すべき端部遊びEPCの所望の量に関する上要素部分の最小に必要とされる高さ、即ち、臨界の半径方向の高さHSEはこうして本発明によれば下記の表現によりベルトの長さLに関係しており、それによりその式の更に小さい項は無視される。
【0058】
【数6】
最大の保証及び安全性に関して、要素遊び値は本発明によれば弾性変形について1.5mm、そして磨耗作用について2mmと夫々安全に定められ、一方、ベルト3の組み立てられた自由状態の要素遊び値は1.5mmとされ、それの安全限界は現在の計算目的のために0.5mmと定められる。こうして、運転中の全端部遊びEPの最大量は理論上5.5mmの量になるであろう。その場合、全端部遊びEPは上要素部分の臨界高さHSEのみにより説明され、特に増大された厚さの効果又は先に説明される揺動端部9とサドル表面8の間の距離の効果によるものではなく、式(6)は必要とされる高さHSEがベルトの長さLの平方根の0.81倍の量になることを突きとめる。しかしながら実際には、全端部遊びEPのこのような最大量はめったに到達されず、大部分の時間で下要素部分遊び値はベルト3の組み立て時に生じることがあり、その間にベルト磨耗は過度ではない。なぜならば、ベルト3は250,000キロメートル以上と定義される無限の寿命時間まで運転されることがほとんどないからである。更に、本発明の基礎となる識見によれば、最大張力はトランスミッション中で常に到達されず、一方また組み立て時に、即ち、遊びが二つの隣接横要素5の間で集中されるようなキャリヤ4の上に互いに対し積み重ねられた横要素5で測定された理論的な要素遊びは、全要素遊びが隣接する横要素5の幾つかの対の間に多少分布される場合に、運転中に生じる要素遊びよりも通常大きい。こうして実際には、極めて低い除去されるべき端部遊びの量EPCは、一般に理論的な最大に基づいて予想し得るものよりも十分であろう。しかしながら、全端部遊びEPはその円形の自由状態の形状のベルト3中の初期の要素遊びよりも大きくされることが好ましい。
【0059】
本発明によれば、式(5)から上要素部分の臨界高さHSEはベルト3の周囲長さLの平方根の係数C倍により定められた条件を満足すべきであると結論され、この場合、Cは除去すべき端部遊びEPCの量の平方根の0.35倍以上の値である。
【0060】
更に有益な試験では、現在の識見は本発明により与えられる効果を得るために、揺動端部9の上に延びる横要素5の臨界高さHSEは、少なくとも9.5mmとせいぜい21mmの間に定められるべきであるデザイン規則として発生される。又は更に正確には、その高さHSEは350mmで始まり、850mmで終わる範囲の周囲長さLを有するベルトについて10mmから15mmで終わる範囲に定められるべきである。
【0061】
更に有益な試験では、除去すべき端部遊びEPCの量はベルト3が円形形状、又は自由状態形状に配置される場合には横要素5の間のほぼ初期のベルトの長さ方向の遊びである。本発明によれば、この場合の係数Cに適した範囲は初期のベルトの長さ方向の遊びの平方根の0.35×1.1倍で始まり、その値の0.35×3倍で終わる。この範囲はそれが前記遊びに関する小さい効果、例えば、ベルト3中の振動を考慮する0.1の安全係数を含むことにより始まり、それがベルト内のかなりの弾性変形及び正常な運転条件下で予想される最もひどい磨耗を考慮する値で終わるように選ばれる。
【0062】
更に有益な試験では、除去すべき端部遊びEPCの前記量は、テーパ付き形状を有する上要素部分の特徴によって、スラック軌道部分中で除去される遊びの量により、並びに揺動端部9の形状及び位置が端部遊びについて有する影響により、ベルトがその円形の自由状態の形状から曲げられた軌道及び真っ直ぐな軌道のそのトランスミッション形態に変形される場合に除去される遊びの量により減少され、ベルト3が円形の形状、又は自由状態形状に配置される場合の横要素5の間のほぼ初期のベルトの長さ方向の遊びである。ロートランスミッション状態は、通常ベルト3が運転中に最も高度に負荷される状態に相当するので、本発明では初期の遊びから減じられる遊びの量がこのトランスミッション状態について決められることが好ましい。驚くことに、これは減じられる遊びの両方の量が実際に中間トランスミッション状態で最小であるという概念と対照的である。しかしながら、本発明によれば、運転中に要素遊びを増大するベルトの弾性変形は、ロー状態で明らかに最大であり、初期の遊びから減じられる遊びの両方の量に関するトランスミッション状態の影響を実質的に超える。
【0063】
更に、横要素5が上要素部分中に少なくとも主として与えられるベルトの長さ方向に延びる突起21を備えている場合、ベルト3が円形の形状、又は自由状態の形状で配置される時の横要素5の間の初期の長さ方法の遊びは、突起21のベルトの長さ方向の突出量N1,N2の1倍〜2倍の範囲であることが好ましい。
【0064】
組み立ての容易さのために、ベルト3が円形の形状、又は自由状態の形状で配置される時の横要素5の間の前記の初期のベルトの長さ方向の遊びは横要素5の最大厚さの少なくとも3/4である。
【0065】
図7及び8に関して夫々記載された運転中のベルト3の保全性を維持するための両方の解決策は、横要素5及びキャリヤ4を一緒に保つための横要素5の一体部分として用意される既知のロック手段の使用を不要にする。このような既知のロック手段はそれらが運転中に負荷される時に崩壊することがあり、これらが通常製造し難く、しかもそれらが横要素5のデザインの自由度を制限するという欠点を有する。組み合わせると、本発明の解決策は上要素部分の厚さ増大の大きさ並びに肢部10及び11の高さの大きさが互いに対し交換され、こうしてデザインの自由度を生じ、ベルト3の機能性及び製造コストに著しく影響するという利点を有する。
【0066】
図9は揺動端部9と横要素5の半径方向に外部の境界の間の距離、臨界高さHSEについての特定された基準内の除去されるべき端部遊びEPCの量の例示プロットにより式(1)により示された関係を図示する。その中の幾つかの関係は普通に適用されたプーリ直径、即ち、プーリの軸の中心間距離AVに関し、特に自動車用途に適している。例えば、典型的なベルト3について、全端部遊びEPの1.2mmの比較的大きい量は、肢部10及び11が揺動端部9の上に延びる10mmの臨界半径方向の高さHSEにより、修正され、又は別途除去されてもよい。
【0067】
図6及び図10のベルト断面のその斜視図は本発明の幾つかの更なる独立の局面を示す本発明の実施態様を示す。
【0068】
最初に、キャリヤ4の横移動のための軸方向の境界を形成するその肢部10,11を含む単一パッケージデザインは、一面へのキャリヤ4の横移動が横要素5により拘束されず、プーリ1,2により拘束される二重パッケージデザインとは異なることが注目される。この相違は二重パッケージデザインの横要素5がプーリ1又は2のプーリの間でそのキャリヤ4がプーリ1,2から少なくとも部分的に半径方向に外向きに配置され、その間フランク15及び16がプーリの各組プーリの間に依然として部分的に配置されるように配置されることを可能にする。従って、同じプーリデザインにより、所定の長さLのベルト3で実現し得るトランスミッション比の範囲(トランスミッション比はプーリ1及び2中の曲げられた軌道部分BTの走行半径の商である)が二重パッケージデザインによるよりも単一パッケージベルトデザインで大きくてもよい。これは高度に望ましいと考えられる。なぜならば、同じ組み立て空間中で、トランスミッションの機能性が改良されるからである。キャリヤ4がプーリ1,2の半径方向に外側部に配置される状態で、またフランク15及び16がプーリ1,2の半径方向に外側部に部分的に配置され、それによりそこでの圧力を増大するが、これが本発明に従って可能にされ得るという識見が単一パッケージベルト3のこの特徴の基礎になっている。なぜならば、それはプーリ1,2の各組プーリの間の横要素5の数、そしてこうしてまた力を吸収するのに利用できる全表面積がいずれにしても比較的大きい場合の最大走行半径を有する曲げられた軌道部分BTでのみ生じるからである。
【0069】
本発明の横要素5は比較的薄く、即ち、1.5mm〜3.0mmであり、揺動端部9とベルト3の半径方向に見られる横要素の内端部24の間に延びる傾斜面19を含む下要素部分を有することが示される。側面図に見られる下要素部分の厚さは、アークのように曲げられた軌道BTをプーリ1及び2中に通す時にベルト3が曲げられるように、その内端部24に向かって減少する。リング7の半径方向に組重ねられた組内の運転張力のために、キャリヤ4、及び曲げられた軌道BTを通る少なくともその部分は示され、横要素5のサドル表面8と接触して押しやられると考えられる。内端部24は下要素部分の最小の半径方向の高さがベルト3の軸方向に見て横要素5の中央付近に得られるように凹形に湾曲される。傾斜面19は内端部24に向かって連続し、それとつながってもよいが、横要素5の有利な軽量実施態様では、傾斜面19がベルト3の長さ方向にステップ22中のくぼみ部分23に隣接する。図6中、ステップ22の深さがその詳細を明らかに示すために誇張された。実際には、ステップ22は揺動端部9の直ぐ上の横要素5の部分厚さの1/12〜3/12の範囲の深さ寸法を有する。ここに示されない横要素の好ましい実施態様において、ステップ22は揺動端部9と実質的に隣接し、その場合、傾斜面19が不在である。この様式では、特にくぼみ部分23が揺動端部9を成形する工程に先行する製造工程又は方法で実現される場合、横要素5が更に正確に製造し得る。なぜならば、切断端部の減少された表面積のために、少ない努力が横要素5をプレート又はストリップから打ち抜きするのに必要とされるからである。ステップ22を設けることについての機能上の理由は、フランク15及び16がプーリ1,2との最適の接触のためにかなりの高さ、即ち、ベルト3の半径方向の長さであることを可能にするとともに、横要素5の低重量の要件を依然として満たすためである。適切な接触を保証するために、ステップ22の深さは揺動端部9の直ぐ上の横要素5の厚さを越えるべきではない。サドル8に最も近い位置の内端部24は、ステップ22に結合し、又は少なくともそれに近く終端し、おそらくそれと交差しさえもするようにデザインされる。内端部24は図6に示される単一点でステップ22に交差することが好ましい。内端部24は、それが例えば0.3mmの小半径の丸みをつけることによりフランク15及び16と実質的につながるように始まり、半径方向に最も内側の横要素部分の直ぐ近くで夫々終わる凹形湾曲として成形し得る。このような凹形湾曲はそれと交差するステップ22により中断されることが可能とされ得るが、半径方向の湾曲の深さは揺動端部9の直ぐ上のベルト3の軸方向に横要素5の幅の1/6まで少なくとも延びることが好ましい。凹形湾曲はアーク形であり、又は場合によっては幾つかの隣接アークを含むことが好ましく、このような一つ以上のアークは前記下要素部分の幅の0.5〜1の範囲の曲率半径を有する。この様式では、接触面15及び16の下部に作用する力が横要素5に有利に伝達される。
【0070】
本発明の実施態様において、横要素5は前面20から長さ方向に突き出ている少なくとも一つの突起21を更に備えている。突起21は前面20の半径方向に外半分に設けられる。前面20の反対の長さ方向の横要素5のさらに長さ方向に面する面で、このような突起21は穴27、即ち、突起21にほぼ一致して成形されるくぼみ部分と一緒になる。示された実施態様において、突起21は肢部10及び11の夫々に設けられ、多少矩形に成形されて主として軸方向に配向された方向に延びる。半径方向の突起21の最大寸法は揺動端部9の直ぐ上の横要素5の厚さに実質的に一致することが好ましい。好ましい実施態様において、肢部10及び11の軸方向に面する側面は主としてフランク15及び16に実質的に平行に延び、それによりベルト3の運転安定性及びその組み立ての両方を促進する。突起21(また長さ方向の突起21と称される)は本デザインにおいて横要素5がスラック軌道部分にある時又はベルト3がクランプ力の不在下でどういうわけか引っ張られていない時に、横要素5がキャリヤ4から分離することを防止するためのバックアップ安全として利用できる。しかしながら、基本的なクランプ力は通常プーリ1又は2の少なくとも一つの移動可能なプーリに作用するばねにより与えられる。この理由のために、本ベルトデザインの組み立て後の初期における横要素遊びは突起21の部分の長さ方向(ベルトの長さ方向)の突出長さの2倍に定められることが好ましい。
【0071】
本発明の好ましい実施態様において、突起21は図11及び12の一つに従って成形される。図11及び12は夫々図6の側面図の上部断面を示す。ブランキングにより成形されるのではなく、突起21は肢部10及び11の曲げにより有利に製造し得る。これは肢部10,11の長さ方向の厚さそしてそれとともに強度がその半径方向の高さにわたって維持し得るという利点を有する。図11に記載の実施態様において、突起21は等しくないとしても合致する厚さの三つの肢部における部分29,30及び31により具体化される。ベルトの長さ方向の突出量N1は、このデザインにより穴27と相互作用することが意図されている突起21に関してかなり増大されてもよい。図11の実施態様において、肢部における部分29,30及び31の半径方向の寸法は、肢部10,11の長さにより制限されるが、その一方で肢部10,11と同じ厚さであってもよく、これは図6の側面図の穴27と相互作用することが意図されている突起21よりもかなり厚い。図12の実施態様において、肢部の部分29及び34のベルトの長さ方向の突出量は横要素5の局所厚さにマッチする。しかしながら、本発明によれば、長さ方向の突出量は原則として肢部の部分29の位置で横要素5の厚さの2倍の大きさにされていてもよい。図12に記載のデザインでは、突出量N2は有利にはN1よりも大きくされてもよい。なぜならば、肢部10,11の利用できる半径方向の長さの一部を使用する後に曲げ返された部分31が省かれるからである。両方のデザインにおいて、肢部の部分29は横要素5の前面又は裏面に面する軸方向かつ長さ方向に上向きに延びる表面を含む。横要素5の前面は揺動端部9が配置される横要素5の面を意味する。図12の実施態様の別の利点は半径方向に外側部の部分34が比較的長く更に容易に製造し得ることである。
【0072】
肢部における部分29,30,31及び29,34の長さ方向の比較的大きい突出量N1及びN2は、運転中のベルト3の保全性、又はコヒーレンスの維持並びにプーリ1,2を出るベルトの能力及び容易さの両方に著しく影響する。肢部における部分29及び31は、ベルト3の長さ方向に対し好ましくは45度以上、更に好ましくは50〜60度の範囲内の角度で延びる。
【0073】
本発明の実施態様において、フランク15及び16は、横要素5の半径方向に最も内側の部分付近からサドル表面8の充分に上に、好ましくは少なくともサドル表面8と接触する場合にはキャリヤ4まで、又は更にはキャリヤ4を越えて延びる。フランク15及び16は揺動端部9の上方(外方)にそれらの半径方向の長さの少なくとも1/3、更に好ましくは少なくとも半分にわたって延びることが好ましい。本発明の特別な実施態様において、フランク15及び16はキャリヤ4の上方(外方)にそれらの半径方向の全長の1/5にわたって延びる。フランク15及び16の半径方向の全長は横要素5の半径方向の高さの少なくともほぼ半分に一致する。この方法では、例えば、JP2000/213609に記載されたような曲げられた軌道BT中の横要素5に作用する力により実現されたモーメントがベルト3の軸のまわりの横要素5の傾斜に影響するのにはあまりにも小さいレベルに低下されることが得られるかもしれない。特に、プーリ1,2と横要素5の間の摩擦により生じる有効な力、サドル表面8とキャリヤ4の間の比較的小さい強さの摩擦力及び隣接する横要素5の間に揺動端部9により加えられたプッシュ力が前記モーメントに影響する。このような傾斜は横要素5とプーリ1,2の間のスリップにより伴われ、それによりトランスミッションの効率に悪影響する。横要素5がベルト3の軸のまわりに傾斜し、その結果、それがプーリ1,2中でクランプされる間に最早実質的に半径方向に配向されないという傾向は、本発明の本手段により有意に軽減される。それとともに、トルクがベルト3により伝達される効率は、サドル表面からかなりの半径方向の距離に配置される揺動端部9(これは図2〜5の既知の要素デザインに必要とされ、例えば、JP01/098733に記載されたようにキャリヤ4と横要素5の間の相対速度を増大することにより、ベルト3の機能に悪影響するであろう)を必要としないで有利に増大される。
【0074】
本発明のフランク15,16のデザインは、その半径方向の長さが有利に増大されることに更に影響し、これは通常ベルト3が所謂ロートランスミッション状態に一致する状態である時に、最小の走行半径(RMINに相当する)を有するアークのような曲げられた軌道である、運転中に最もきつく曲げられるベルト部分に特に有利である。この状態及び位置では、通常前記摩擦力及びクランプ力が運転中に最大であり、一方、このような力を吸収するのに利用できるプーリ1,2中の横要素5の数が最小である。更に、アークのように成形された内端部24はフランク15及び16がかなりの半径方向の長さであり、揺動端部9のレベルのかなり下に延伸することを可能にし、その間に前記力が横要素5により有利に吸収され、その本体にわたって分布される。フランク15,16の全長はサドル表面8と内端部24の間の横要素5の最小の半径方向の寸法の高さの少なくとも2倍、好ましくは最大で5倍である。このような範囲は挟む力の最適の受け取りを与えるとともに、充分な強度を横要素5に依然として与える。
【0075】
フランク15及び16の比較的大きい半径方向の長さはそれ以外は一定のクランプ力で横要素5とプーリ1,2の接触の低減された接触圧力に更に影響する。通常ヘルチアン接触圧力と称される、このような接触圧力と関連するストレスは、所定の材料特性及び理論分析から解されるように、一般に横要素5又はプーリ1,2の機械強度に重要と考えられないが、実際には前記接触に行き渡っている圧力が多くの型の圧油の性能に影響する。特に、冷媒及び/又はグリース媒体の局所崩壊は、局所消失される熱の量が低く保たれる場合、又は接触圧力が低く保たれ、即ち、従来技術により知られているものと比較して低下される場合に防止し得る。プーリ1,2と横要素5の間の接触における低いヘルチアン接触ストレスの維持は本発明によれば高度に実用的に重要である。なぜならば、冷媒の崩壊に続いてトランスミッションの機能の損失が迅速に生じ得るからである。
【0076】
図6は端部の軸方向の幅が半径方向に外向き方向にわずかに増大する端部を有する肢部10及び11を更に示す。この横要素における肢部の端部は、一つの軸方向の肢部側から反対の軸方向の肢部側に延び、例えば肢部10で言えばその最も幅広い断面26で開始する少なくとも部分的に湾曲された面28により形成される半径方向の上面を備えている。湾曲面28は、揺動端部9の位置で横要素5の長さ方向の厚さの半分のオーダーの曲率半径で少なくとも部分的に湾曲されることが好ましい。その好ましい実施態様は、軸方向及び長さ方向に延びる中央の平らな面部分を更に示す。端部の位置で肢部10及び11の増大する軸方向の幅は、ベルト3が内向きに湾曲されたスラック軌道部分を通過する間に、横要素5の安定な相互支持を可能にする。このような幅広化は、半径方向に、即ち、ベルト3の軸方向及び長さ方向に少なくとも実質的に垂直に延びる肢部10,11の軸方向の内面、即ち、くぼみ6に面する面で得られることが好ましい。また、例えば、プーリ1,2に面する肢部10,11の端部の軸方向の外面が図13に示されるように主として半径方向に延びる場合、前記幅広化は、軸方向の外面から離れて配向される軸方向の内面の一部で得られてもよい。
【0077】
図13は特許請求の範囲及び本発明の上記の記載の範囲内に入る横要素5の実施態様を図示する。四角形50はキャリヤ4がベルト3の組み立て時に横要素5のくぼみ6により受け入れられる方法を示す。図2に示された技術水準の要素デザインとは対照的に、肢部10及び11のフック形端部12及び13は、運転中にキャリヤ4及び横要素5を一緒にロック(lock)するが、隣接する横要素5の間の接触に利用できる表面積を増大し、それが運転ではない時にベルト3のコヒーレンスを維持することを助けるのに利用できず、又は実際にそれらの制限されたサイズのために利用できない。これにより、フック部分12及び13は、技術水準の横要素5の場合のように、キャリヤ4をくぼみ6中に有効にロックするのに充分に大きくないが、それらは軸方向に実質的に平行に配向された時にキャリヤ4がくぼみ6を出ることから抑制することを意味した。
【0078】
先に記載された本発明の夫々のデザイン特徴はそれ自体で、又は組み合わされると、横要素重量の減少が実現され、かつ/又は支持され、その減少はトランスミッション中での運転中のベルト3のトルク伝達能に有利であり、そのコスト価格及び/又は技術性能に著しく影響する。本発明は特許請求の範囲に記載のものに限定されないが、図面及びそれらに関する記載により開示された全ての特徴を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】それ自体知られているベルト型トランスミッション装置の輪郭を示す立面図である。
【図2】図1のトランスミッション装置用のベルトの所謂単一パッケージ実施態様の従来技術の横要素を示す拡大正面図である。
【図3】図2の断面A−Aを示す図である。
【図4】本発明の所謂二重パッケージ要素実施態様の正面図である。
【図5】図4の断面B−Bを示す図である。
【図6】本発明の単一パッケージ要素実施態様の正面図であり、破線により正面図に関連付けした側面図を含む。
【図7】図1の立面図において、本発明の要素デザインの効果を示す概要図である。
【図8】図1の立面図において、それ自体適用された場合の本発明の別の局面の要素デザインの効果を示す立面図である。
【図9】本発明に係る横要素の臨界高さ(HSE)に対する端部遊び修正(EPC)効果のプーリの軸の中心間の幾つかの距離(AV)に関するプロット図である。
【図10】図6の横要素を含むベルト部分の斜視図である。
【図11】図6の側面図に示された、別の横要素の実施態様に係る上部の部分図である。
【図12】図6の側面図に示された、第二の別の横要素の実施態様に係る上部の部分図である。
【図13】本発明の範囲内に入る横要素の実施態様に係る概略説明用図である。
Claims (7)
- ベルト(3)内の引張力を吸収するためのエンドレスキャリヤ(4)、及び前記キャリヤ(4)に沿って長さ方向に移動可能に設けられた複数の横要素(5)を含み、その横要素(5)がキャリヤ(4)と接触するための少なくとも一つのサドル表面(8)を備えており、そのサドル表面(8)が半径方向にベルト(3)内で互いに対して前記キャリヤ(4)と前記横要素(5)の極限相互位置を形成し、テーパ付き下要素部分が揺動端部(9)を含み、かつ少なくともキャリヤ(4)及びサドル表面(8)が相互接触している場合に、上要素部分(10,11;14)がキャリヤ(4)を越えて半径方向に延びる連続可変式トランスミッション用ベルト(3)において、
ベルト(3)の長さ方向における横要素(5)の大部分の上要素部分(10,11;14)の厚さは、テーパ付き下要素部分の最大の厚さより概念的に大きく、前述のベルト(3)内に互いに押されている要素(5)の列が、それらの上要素部分(10,11;14)を通じて相互に接触中である場合に、弧状の形を呈することを特徴とする連続可変式トランスミッション用ベルト(3)。 - 側面の高さで見られるように、横要素(5)の前記大部分の上要素部分(10,11;14)の厚さが、半径方向の外側における揺動端部(9)から徐々に増加することを特徴とする請求項1に記載のベルト(3)。
- 横要素(5)の前記大部分の上要素部分(10,11;14)の少なくとも一つの長さ方向に面する側面が、それぞれの下要素部分の少なくとも一つの長さ方向に面する側面とともに平面を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のベルト(3)。
- 横要素(5)の前記大部分の上要素部分(10,11;14)の名目上の厚さが、それぞれの下要素部分の最大の厚さの1.01〜1.20倍、好ましくは1.04倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルト(3)。
- ベルト(3)の周囲長さLに関して、ベルト(3)の要素(5)の少なくとも大部分の上要素部分(10,11;14)の臨界半径方向の高さHSEの適合によって、トランスミッション中に少なくとも装備され走行されたであろう時プーリ(1,2)間におけるベルト(3)の凹状に形作ったスラック軌道部分中の少なくとも二つの横要素(5)の上要素部分(10,11;14)間の相互の接触により、横要素(5)間に存在する遊び(EPC)の量が、除去されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルト(3)。
- 上要素部分(10,11;14)の臨界半径方向の高さHSEが、ベルト(3)の周囲長さLの平方根の係数C倍によって設定された条件を満たし、このCは、除去される端部遊びの量(EPC)の平方根に等しいか、またはその0.35倍のより大きい値であることを特徴とする請求項5に記載のベルト。
- 横要素(5)の前記大部分は、半径方向外側にて揺動端部(9)から伸びそしてくぼみ(6)を受容するキャリヤの側面の境界を限定する二つの肢部(10と11)を各々備え、それによって、前記サドル表面(8)が、肢部(10と11)間に位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のベルト。
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