JP2004505970A - チアゾリジンジオン誘導体の酒石酸塩 - Google Patents
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Abstract
新規医薬化合物である5−[4−2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物、かかる化合物の製造方法、かかる化合物を含む医薬組成物、およびかかる化合物の医薬における使用。
Description
【0001】
本発明は、新規薬剤、該薬剤の製造方法、および医薬における該薬剤の使用に関する。
【0002】
欧州特許出願、公開番号0,306,228は、血糖降下活性および脂質低下活性を有すると開示されているある種のチアゾリジンジオン誘導体に関するものである。EP 0,306,228の実施例30の化合物は、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(以下、「化合物(I)」とも記す)である。
【0003】
国際特許出願、公開番号 WO 94/05659 には、EP 0,306,228 の化合物のある種の塩が開示されており、そのうちの1つが酒石酸塩である。WO 94/05659 の好ましい塩は、マレイン酸塩である。
【0004】
この度、化合物(I)が新規酒石酸塩(以下、「DL−酒石酸塩」とも記す)を形成することが見出された。意外にも、DL−酒石酸塩の結晶構造は、D−酒石酸塩もしくはL−酒石酸塩またはD−酒石酸塩とL−酒石酸塩との固体混合物のいずれの結晶構造とも異なっている。
【0005】
新規DL−酒石酸塩は、安定な高融点結晶質であり、したがって、大量製造および大量処理に好適である。DL−酒石酸塩は、特に、熱を必要とするかまたは発生する製造過程における大規模製薬処理、例えば、微粉砕、流動層乾燥、スプレー乾燥、ホットメルト処理、およびオートクレーブ処理による滅菌を受け易い。DL−酒石酸塩は、また、特に、大規模製造に適した、効率的、経済的、かつ、再現性のあるプロセスにより製造することができる。
新規DL−酒石酸塩は、また、有用な製薬特性を有しており、特に、真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防に有用であることが示される。
【0006】
したがって、本発明は、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
適当には、当該DL−酒石酸塩は一酒石酸塩である。
一酒石酸塩は、また、アルカリ金属またはアンモニウム陽イオンのような別の一価の造塩イオンを含んでいてもよい。
【0007】
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、図1と実質的に一致する赤外スペクトルを提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、図2と実質的に一致するラマンスペクトルを提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、表1または図3と実質的に一致するX線粉末回折図形(XRPD)を提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、図4と実質的に一致する固体13C NMRスペクトルを提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、190〜195℃、例えば、190〜193℃の範囲の融点、例えば、191.7℃の融点を有する。
【0008】
好ましい態様において、本発明は、
(i) 図1と実質的に一致する赤外スペクトル;および
(ii) 図2と実質的に一致するラマンスペクトル;および
(iii) 表1または図3と実質的に一致するX線粉末回折図形(XRPD);および
(iv) 図4と実質的に一致する固体13C NMRスペクトル
を提供することを特徴とする5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩を提供する。
【0009】
本発明は、純粋な形態で単離されたかまたは他の物質と混合されている場合のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を包含する。かくして、一の態様において、単離形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物が提供される。
【0010】
さらなる態様において、精製形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物が提供される。
さらなる態様において、結晶形のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物が提供される。
【0011】
また、本発明は、特に、経口投与に適する場合の、固体投与剤形のような固体の医薬上許容される形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
さらにまた、本発明は、また、特に、熱を必要とするかまたは発生する製造過程における製薬処理、例えば、微粉砕;例えば、加熱乾燥、特に、流動層乾燥またはスプレー乾燥;例えば、ホットメルト処理;例えば、オートクレーブ処理のような加熱滅菌を行うことができる、医薬上許容される形態、特に、バルク形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0012】
さらにまた、本発明は、医薬上許容される形態、特に、バルク形態、特に、熱を必要とするかまたは発生する製造過程において処理された形態、例えば、微粉砕形態;例えば、加熱乾燥形態、特に、流動層乾燥形態またはスプレー乾燥形態;例えば、ホットメルト処理された形態;例えば、オートクレーブ処理によるような加熱滅菌処理された形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
適当な溶媒和物は水和物である。
【0013】
本発明は、また、好ましくは、適当な溶媒に分散または溶解させた、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(化合物(I))またはその塩をDL−タルトレートイオンの供給源と反応させ、その後、要すれば、得られたDL−酒石酸塩の溶媒和物を製造し;該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を回収することを特徴とする当該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の製造方法を提供する。
【0014】
適当な反応溶媒は、アルカノール、例えば、プロパン−2−オール、またはトルエンのような炭化水素、アセトンのようなケトン、酢酸エチルのようなエステル、テトラヒドロフランのようなエーテル、アセトニトリルのようなニトリル、またはジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素、または水、または、酢酸のような有機酸;またはその混合液である。
【0015】
好都合には、DL−タルトレートイオンの供給源はDL−酒石酸である。該DL−酒石酸は、好ましくは、固体として添加されるか、または溶液、例えば、水またはメタノール、エタノールもしくはプロパン−2−オールのような低級アルコール、または溶媒混合液中にて添加される。DL−タルトレートイオンの別の供給源は、酒石酸の適当に可溶性の塩基性塩、例えば、酒石酸アンモニウム、または、アミン、例えば、エチルアミンまたはジエチルアミンの酒石酸塩により提供される。
【0016】
化合物(I)の濃度は、好ましくは、2〜25%重量/容量の範囲、より好ましくは、5〜20%の範囲である。酒石酸溶液の濃度は、好ましくは、4〜40%重量/容量の範囲である。
【0017】
反応は、通常、周囲温度または高温で、例えば、溶媒の還流温度で行われるが、所望の生成物が得られる好都合な温度を使用することができる。
DL−酒石酸塩の、水和物のような溶媒和物は、慣用の手法に従って製造される。
所望の化合物の回収は、一般に、通常、冷却により補助される、適当な溶媒、または溶媒混合液、好都合には、反応溶媒からの結晶化を含む。例えば、DL−酒石酸塩は、エタノールまたはアセトンのようなケトンまたは水またはその混合液から結晶化され得る。所望により、複数の段階で、溶媒をある程度または全て蒸発させることによるか、または、高温で結晶化し、次いで、制御冷却することにより、塩の収率が改良される。沈澱温度を注意深く制御して、生成物形態の再現性を改良することができる。
【0018】
結晶化は、また、DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の結晶をシード添加することにより開始することができるが、これは不可欠ではない。
【0019】
一酒石酸塩がアルカリ金属またはアンモニウム陽イオンのような別の一価の造塩イオンを含む場合、該イオンは、好都合には、一酒石酸塩と、選択された一価の造塩イオン、例えば、金属またはアンモニウムイオンの溶液とを反応させることにより形成される。別法として、化合物(I)を一価の造塩イオンを含む一酒石酸塩で処理することができる。
【0020】
化合物(I)は、EP 0,306,228 および WO 94/05659 に開示されている方法のような既知の方法に従って製造される。EP 0,306,228 および WO 94/05659 の開示内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0021】
DL−酒石酸は市販の化合物である。
本明細書で使用する場合、「Tonset」なる用語は、一般に、示差走査熱量測定により決定され、例えば、Pharmaceutical Thermal Analysis, Techniques and Applications”, Ford and Timmins, 1989 において「転移前基線と転移の外挿された前縁との交点に対応する温度」と表されているように当該技術分野において一般に理解される意味を有する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「真性糖尿病と付随している症状の予防」なる用語は、インスリン抵抗性、耐糖障害、高インスリン血症および妊娠糖尿病のような症状の治療を包含する。
真性糖尿病は、好ましくは、II型真性糖尿病を意味する。
【0023】
糖尿病と付随している症状としては、高血糖症およびインスリン抵抗性および肥満が挙げられる。糖尿病と付随しているさらなる症状としては、高血圧症、心臓血管疾患、特に、アテローム性動脈硬化症、ある種の摂食障害、特に、神経性食欲不振症のような過少摂食と付随している障害および肥満および神経性病的飢餓のような過剰摂食と付随している障害に罹患している対象における食欲および食物摂取量の調節を包含する。糖尿病と付随しているさらなる症状としては、多嚢胞性卵巣症候群およびステロイド誘発性インスリン抵抗性が挙げられる。
【0024】
本明細書に包含される真性糖尿病と付随している症状の合併症としては、腎疾患、特に、糖尿病性ネフロパシー、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症および末期腎疾患を包含する、II型糖尿病の発生と付随している腎疾患が挙げられる。
【0025】
上記したとおり、本発明の化合物は、有用な治療特性を有する。本発明は、したがって、活性な治療物質として使用するための当該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0026】
さらに詳しくは、本発明は、真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防において使用するためのDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0027】
当該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物は、それ自体で投与してもよく、または、好ましくは、医薬上許容される担体も含む医薬組成物として投与してもよい。DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の適当な製剤化方法は、一般に、上記刊行物において化合物(I)について記載されている方法である。
【0028】
したがって、本発明は、また、DL−酒石酸塩またはその溶媒和物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
DL−酒石酸塩またはその溶媒和物は、通常、単位投与剤形で投与される。
【0030】
当該活性化合物は、いずれもの経路によって投与されてもよいが、通常、経口経路または非経口経路により投与される。かかる使用のために、当該化合物は、通常、医薬担体、希釈剤および/または賦形剤と一緒に医薬組成物の形態で使用されるが、組成物の正確な形態は、当然、投与形態に依存する。
【0031】
組成物は、混合により調製され、好適には、経口投与、非経口投与または局所投与に適しており、例えば、錠剤、カプセル剤、経口液体製剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ剤、パスティル剤、復元用散剤、注射用および注入用液剤または懸濁剤、坐剤および経皮デバイスの剤形である。経口投与用組成物は、一般的な使用に好都合であるので好ましく、特に、造形された経口組成物が好ましい。
【0032】
経口投与用錠剤およびカプセル剤は、通常、単位投与量で提供され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤化剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー、および湿潤剤のような慣用的な賦形剤を含有する。錠剤は、当該技術分野でよく知られている方法に従って被覆され得る。
【0033】
使用するのに適当な充填剤としては、セルロース、マンニトール、ラクトースおよび他の類似の薬剤が挙げられる。適当な崩壊剤としては、デンプン、ポリビニルピロリドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムのようなデンプン誘導体が挙げられる。適当な滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。適当な医薬上許容される湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0034】
固体経口組成物は、ブレンド、充填、または錠剤化などの慣用的な方法により調製される。反復ブレンド操作を使用して、大量の充填剤を用いるこれらの組成物の全体にわたって活性薬剤を分布させることができる。かかる操作は、もちろん、当該技術分野において慣用的である。
【0035】
経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の剤形であってもよく、または、使用前に水または他の適当なビヒクルで復元するための乾燥薬物として提供されてもよい。かかる液体製剤は、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルもしくは硬化食用脂肪、乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を包含する)、例えば、扁桃油、分別ヤシ油、油性エステル、例えば、グリセリンのエステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸、および、所望により、慣用のフレーバーまたは着色剤などの慣用の添加剤を含有してもよい。
【0036】
非経口投与については、本発明の化合物および無菌ビヒクルを含有する流体単位投与剤形を調製する。当該化合物は、ビヒクルおよび濃度に依存して、懸濁または溶解のいずれかを行うことができる。非経口液剤は、通常、活性化合物をビヒクルに溶解し、濾過滅菌した後、適当なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することにより調製される。有利には、局所麻酔薬、保存剤および緩衝化剤のような補助剤もまたビヒクルに溶解する。安定性を増強するために、当該組成物をバイアルに充填した後に冷凍し、水分を真空除去することができる。
【0037】
非経口懸濁剤は、活性化合物を溶解するのではなくビヒクルに懸濁させ、無菌ビヒクルに懸濁させる前に酸化エチレンに暴露させることにより滅菌すること以外は、実質的に同様に調製される。有利には、当該組成物に界面活性剤または湿潤剤を含ませて活性化合物の均一な分布を促進する。
【0038】
一般に行われるように、当該組成物は、通常、関連医療処置における使用説明書を添付している。
本明細書で使用する場合、「医薬上許容される」なる用語は、ヒトおよび獣医学的使用のための化合物、組成物および成分を包含する。例えば、「医薬上許容される塩」は、獣医学上許容される塩を包含する。
【0039】
本発明は、さらに、ヒトまたは非ヒト哺乳動物における真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防方法であって、それを必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物に有効な非毒性量のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0040】
好都合には、活性成分は、上記定義の医薬組成物として投与でき、これは、本発明の特定の態様を形成する。
さらなる態様において、本発明は、真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防用薬物の製造のためのDL−酒石酸塩またはその溶媒和物の使用を提供する。
【0041】
真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防において、DL−酒石酸塩またはその溶媒和物は、EP 0,306,228、WO 94/05659 または WO 98/55122 に開示されるような、適当な用量の化合物(I)を提供するような量で投与される。
本発明の化合物について上記した処置において有害な毒物学的効果は示されない。
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、如何なる場合も限定するものではない。
【0042】
実施例
実施例1 5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩
5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(10g)およびエタノール(300ml)の混合物を撹拌し、加熱還流して透明な溶液を得た。(15分間加熱還流することにより製造した)DL−酒石酸(4.2g)のエタノール(80ml)中熱溶液を添加した。結晶化が観察されるまで、該溶液を還流下にて撹拌し、次いで、該混合物を21℃に冷却し、この温度で2.5時間撹拌した。濾過により生成物を集め、エタノール(100ml)で洗浄し、五酸化リンにて4時間真空乾燥させて、白色結晶質固体として5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩(14.2g)を得た。
1H−NMR(d6−DMSO):5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩と一致。
【0043】
実施例2 5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩
5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(3.0g)およびアセトン(50ml)の混合物を50分間撹拌しながら還流下にて加熱した。これにDL−酒石酸(1.27g)の水(6.0ml)中熱透明溶液を添加した。該反応混合物を還流下にて5分間加熱し、次いで、21℃に冷却した。濾過により白色固体を集め、アセトン(50ml)で洗浄し、次いで、21℃で1.8時間、減圧乾燥させて、白色結晶質固体として5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩(4.0g)を得た。
【0044】
実施例1の生成物について記録された特性決定データ
2cm−1分解能のNicolet 710 FT−IR分光光度計を使用して生成物の鉱油分散体の赤外吸収スペクトルを得た(図1)。データは、1cm−1間隔でデジタル化した。
3451、1751、1696、1639、1630、1610、1539、1513、1461、1414、1378、1352、1287、1269、1234、1208、1175、1155、1133、1076、1058、1000、922、902、839、750、713、673、600、525、508cm−1でバンドが見られた。
【0045】
万能ATR付属品を装備したPerkin−Elmer Spectrum One FT−IR分光光度計を使用して固体生成物の赤外スペクトルを記録した。
3457、3070、2785、1750、1694、1639、1628、1610、1543、1512、1462、1414、1352、1314、1287、1270、1233、1208、1185、1175、1153、1132、1075、1057、1039、 1001、983、922、902、838、827、775、749、712、668cm− 1でバンドが見られた。
【0046】
出力400mWのNd:V04レーザー(1064nm)からの励起を用いて4cm− 1分解能のNicolet 960 E.S.P. FT−ラマン分光光度計を使用してNMR管中の試料について生成物のラマンスペクトルを記録した(図2)。
3103、3046、2956、2924、2901、2859、1749、1712、1610、1584、1545、1463、1444、1384、1353、1333、1316、1292、1240、1208 1185、1174、1152、1112、1095、1039、984、922、902、828、778、742、667、637、622、601、540、471、422、401、347、282、108cm− 1でバンドが見られた。
【0047】
以下の獲得条件を使用して生成物のX線粉末回折図形を記録した(図3):チューブアノード:Cu、発電器電圧:40kV、発電器電流:40mA、始動角度:2.0°2θ、最終角度:35.0°2θ、ステップサイズ:0.02°2θ、ステップごとの時間:2.5秒。特徴的なXRPD角度および相対強度を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
90.55MHzで操作するBruker AMX360装置にて生成物の固体NMRスペクトルを記録した(図4):Kel−Fキャップを装備した4mmジルコニアMASローター中に固体を詰め、約10kHzでローターを回転させた。Hartmann−Hahn適合プロトンからの交差分極(CP接触時間3分、反復時間15秒)により13C MASスペクトルを捕捉し、獲得の間、二パルス位相変調(TPPM)複合系列を使用してプロトンをデカップリングさせた。化学シフトは、TMSと比較して176.4ppmのグリシンのカルボキシレートシグナルを外部基準とし、
177.9、176.7、174.6、169.9、156.3、147.9、137.5、132.5、126.3、117.1、116.1、112.6、111.1、109.8、107.2、74.2、72.3、65.9、55.7、49.5、40.2、38.3、35.1ppmで見られた。
【0050】
実施例1の生成物について記録したDL−酒石酸塩の特性
DL−酒石酸塩の固体安定性
当該物質約1.0gをガラスビン中にて、i)40℃/相対湿度(RH)75%で開放暴露して1ヶ月間、および、b)50℃で密閉して1ヶ月間、貯蔵することにより、当該薬物の固体安定性を決定した。両方のケースにおいて、最終含量および分解生成物について該物質をHPLCによりアッセイした。
a)40℃/RH75%:有意な分解は観察されなかった(HPLCアッセイ97%初期)。
b)50℃:有意な分解は観察されなかった(HPLCアッセイ99%初期)。
【0051】
DL−酒石酸塩の融点
Buchi 545融点測定器を使用して、米国薬局方 USP 23, 1995, <741> “Melting range or temperature、Procedure for Class Ia”に記載された方法に従ってDL−酒石酸塩の融点を決定した。
融点:191.7℃。
【0052】
DL−酒石酸塩のTonset
Perkin−Elmer DSC7装置を使用して、示差走査熱量測定により薬物のTonsetを決定した。
Tonset(10℃/分、密閉パン):202℃。
【0053】
DL−酒石酸塩の溶解度
薬物約100mgに、1〜1000mlのアリコートで水を、粉末が溶解してしまうまで添加することにより物質の溶解度を決定した。飽和溶液のHPLCアッセイにより目視溶解度を確認した。
溶解度:1mg/ml。
本発明は、新規薬剤、該薬剤の製造方法、および医薬における該薬剤の使用に関する。
【0002】
欧州特許出願、公開番号0,306,228は、血糖降下活性および脂質低下活性を有すると開示されているある種のチアゾリジンジオン誘導体に関するものである。EP 0,306,228の実施例30の化合物は、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(以下、「化合物(I)」とも記す)である。
【0003】
国際特許出願、公開番号 WO 94/05659 には、EP 0,306,228 の化合物のある種の塩が開示されており、そのうちの1つが酒石酸塩である。WO 94/05659 の好ましい塩は、マレイン酸塩である。
【0004】
この度、化合物(I)が新規酒石酸塩(以下、「DL−酒石酸塩」とも記す)を形成することが見出された。意外にも、DL−酒石酸塩の結晶構造は、D−酒石酸塩もしくはL−酒石酸塩またはD−酒石酸塩とL−酒石酸塩との固体混合物のいずれの結晶構造とも異なっている。
【0005】
新規DL−酒石酸塩は、安定な高融点結晶質であり、したがって、大量製造および大量処理に好適である。DL−酒石酸塩は、特に、熱を必要とするかまたは発生する製造過程における大規模製薬処理、例えば、微粉砕、流動層乾燥、スプレー乾燥、ホットメルト処理、およびオートクレーブ処理による滅菌を受け易い。DL−酒石酸塩は、また、特に、大規模製造に適した、効率的、経済的、かつ、再現性のあるプロセスにより製造することができる。
新規DL−酒石酸塩は、また、有用な製薬特性を有しており、特に、真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防に有用であることが示される。
【0006】
したがって、本発明は、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
適当には、当該DL−酒石酸塩は一酒石酸塩である。
一酒石酸塩は、また、アルカリ金属またはアンモニウム陽イオンのような別の一価の造塩イオンを含んでいてもよい。
【0007】
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、図1と実質的に一致する赤外スペクトルを提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、図2と実質的に一致するラマンスペクトルを提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、表1または図3と実質的に一致するX線粉末回折図形(XRPD)を提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、図4と実質的に一致する固体13C NMRスペクトルを提供する。
一の好ましい態様において、当該DL−酒石酸塩は、190〜195℃、例えば、190〜193℃の範囲の融点、例えば、191.7℃の融点を有する。
【0008】
好ましい態様において、本発明は、
(i) 図1と実質的に一致する赤外スペクトル;および
(ii) 図2と実質的に一致するラマンスペクトル;および
(iii) 表1または図3と実質的に一致するX線粉末回折図形(XRPD);および
(iv) 図4と実質的に一致する固体13C NMRスペクトル
を提供することを特徴とする5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩を提供する。
【0009】
本発明は、純粋な形態で単離されたかまたは他の物質と混合されている場合のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を包含する。かくして、一の態様において、単離形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物が提供される。
【0010】
さらなる態様において、精製形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物が提供される。
さらなる態様において、結晶形のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物が提供される。
【0011】
また、本発明は、特に、経口投与に適する場合の、固体投与剤形のような固体の医薬上許容される形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
さらにまた、本発明は、また、特に、熱を必要とするかまたは発生する製造過程における製薬処理、例えば、微粉砕;例えば、加熱乾燥、特に、流動層乾燥またはスプレー乾燥;例えば、ホットメルト処理;例えば、オートクレーブ処理のような加熱滅菌を行うことができる、医薬上許容される形態、特に、バルク形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0012】
さらにまた、本発明は、医薬上許容される形態、特に、バルク形態、特に、熱を必要とするかまたは発生する製造過程において処理された形態、例えば、微粉砕形態;例えば、加熱乾燥形態、特に、流動層乾燥形態またはスプレー乾燥形態;例えば、ホットメルト処理された形態;例えば、オートクレーブ処理によるような加熱滅菌処理された形態のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
適当な溶媒和物は水和物である。
【0013】
本発明は、また、好ましくは、適当な溶媒に分散または溶解させた、5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(化合物(I))またはその塩をDL−タルトレートイオンの供給源と反応させ、その後、要すれば、得られたDL−酒石酸塩の溶媒和物を製造し;該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を回収することを特徴とする当該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の製造方法を提供する。
【0014】
適当な反応溶媒は、アルカノール、例えば、プロパン−2−オール、またはトルエンのような炭化水素、アセトンのようなケトン、酢酸エチルのようなエステル、テトラヒドロフランのようなエーテル、アセトニトリルのようなニトリル、またはジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素、または水、または、酢酸のような有機酸;またはその混合液である。
【0015】
好都合には、DL−タルトレートイオンの供給源はDL−酒石酸である。該DL−酒石酸は、好ましくは、固体として添加されるか、または溶液、例えば、水またはメタノール、エタノールもしくはプロパン−2−オールのような低級アルコール、または溶媒混合液中にて添加される。DL−タルトレートイオンの別の供給源は、酒石酸の適当に可溶性の塩基性塩、例えば、酒石酸アンモニウム、または、アミン、例えば、エチルアミンまたはジエチルアミンの酒石酸塩により提供される。
【0016】
化合物(I)の濃度は、好ましくは、2〜25%重量/容量の範囲、より好ましくは、5〜20%の範囲である。酒石酸溶液の濃度は、好ましくは、4〜40%重量/容量の範囲である。
【0017】
反応は、通常、周囲温度または高温で、例えば、溶媒の還流温度で行われるが、所望の生成物が得られる好都合な温度を使用することができる。
DL−酒石酸塩の、水和物のような溶媒和物は、慣用の手法に従って製造される。
所望の化合物の回収は、一般に、通常、冷却により補助される、適当な溶媒、または溶媒混合液、好都合には、反応溶媒からの結晶化を含む。例えば、DL−酒石酸塩は、エタノールまたはアセトンのようなケトンまたは水またはその混合液から結晶化され得る。所望により、複数の段階で、溶媒をある程度または全て蒸発させることによるか、または、高温で結晶化し、次いで、制御冷却することにより、塩の収率が改良される。沈澱温度を注意深く制御して、生成物形態の再現性を改良することができる。
【0018】
結晶化は、また、DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の結晶をシード添加することにより開始することができるが、これは不可欠ではない。
【0019】
一酒石酸塩がアルカリ金属またはアンモニウム陽イオンのような別の一価の造塩イオンを含む場合、該イオンは、好都合には、一酒石酸塩と、選択された一価の造塩イオン、例えば、金属またはアンモニウムイオンの溶液とを反応させることにより形成される。別法として、化合物(I)を一価の造塩イオンを含む一酒石酸塩で処理することができる。
【0020】
化合物(I)は、EP 0,306,228 および WO 94/05659 に開示されている方法のような既知の方法に従って製造される。EP 0,306,228 および WO 94/05659 の開示内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0021】
DL−酒石酸は市販の化合物である。
本明細書で使用する場合、「Tonset」なる用語は、一般に、示差走査熱量測定により決定され、例えば、Pharmaceutical Thermal Analysis, Techniques and Applications”, Ford and Timmins, 1989 において「転移前基線と転移の外挿された前縁との交点に対応する温度」と表されているように当該技術分野において一般に理解される意味を有する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「真性糖尿病と付随している症状の予防」なる用語は、インスリン抵抗性、耐糖障害、高インスリン血症および妊娠糖尿病のような症状の治療を包含する。
真性糖尿病は、好ましくは、II型真性糖尿病を意味する。
【0023】
糖尿病と付随している症状としては、高血糖症およびインスリン抵抗性および肥満が挙げられる。糖尿病と付随しているさらなる症状としては、高血圧症、心臓血管疾患、特に、アテローム性動脈硬化症、ある種の摂食障害、特に、神経性食欲不振症のような過少摂食と付随している障害および肥満および神経性病的飢餓のような過剰摂食と付随している障害に罹患している対象における食欲および食物摂取量の調節を包含する。糖尿病と付随しているさらなる症状としては、多嚢胞性卵巣症候群およびステロイド誘発性インスリン抵抗性が挙げられる。
【0024】
本明細書に包含される真性糖尿病と付随している症状の合併症としては、腎疾患、特に、糖尿病性ネフロパシー、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症および末期腎疾患を包含する、II型糖尿病の発生と付随している腎疾患が挙げられる。
【0025】
上記したとおり、本発明の化合物は、有用な治療特性を有する。本発明は、したがって、活性な治療物質として使用するための当該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0026】
さらに詳しくは、本発明は、真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防において使用するためのDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0027】
当該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物は、それ自体で投与してもよく、または、好ましくは、医薬上許容される担体も含む医薬組成物として投与してもよい。DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の適当な製剤化方法は、一般に、上記刊行物において化合物(I)について記載されている方法である。
【0028】
したがって、本発明は、また、DL−酒石酸塩またはその溶媒和物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
DL−酒石酸塩またはその溶媒和物は、通常、単位投与剤形で投与される。
【0030】
当該活性化合物は、いずれもの経路によって投与されてもよいが、通常、経口経路または非経口経路により投与される。かかる使用のために、当該化合物は、通常、医薬担体、希釈剤および/または賦形剤と一緒に医薬組成物の形態で使用されるが、組成物の正確な形態は、当然、投与形態に依存する。
【0031】
組成物は、混合により調製され、好適には、経口投与、非経口投与または局所投与に適しており、例えば、錠剤、カプセル剤、経口液体製剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ剤、パスティル剤、復元用散剤、注射用および注入用液剤または懸濁剤、坐剤および経皮デバイスの剤形である。経口投与用組成物は、一般的な使用に好都合であるので好ましく、特に、造形された経口組成物が好ましい。
【0032】
経口投与用錠剤およびカプセル剤は、通常、単位投与量で提供され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤化剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー、および湿潤剤のような慣用的な賦形剤を含有する。錠剤は、当該技術分野でよく知られている方法に従って被覆され得る。
【0033】
使用するのに適当な充填剤としては、セルロース、マンニトール、ラクトースおよび他の類似の薬剤が挙げられる。適当な崩壊剤としては、デンプン、ポリビニルピロリドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムのようなデンプン誘導体が挙げられる。適当な滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。適当な医薬上許容される湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0034】
固体経口組成物は、ブレンド、充填、または錠剤化などの慣用的な方法により調製される。反復ブレンド操作を使用して、大量の充填剤を用いるこれらの組成物の全体にわたって活性薬剤を分布させることができる。かかる操作は、もちろん、当該技術分野において慣用的である。
【0035】
経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の剤形であってもよく、または、使用前に水または他の適当なビヒクルで復元するための乾燥薬物として提供されてもよい。かかる液体製剤は、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルもしくは硬化食用脂肪、乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を包含する)、例えば、扁桃油、分別ヤシ油、油性エステル、例えば、グリセリンのエステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸、および、所望により、慣用のフレーバーまたは着色剤などの慣用の添加剤を含有してもよい。
【0036】
非経口投与については、本発明の化合物および無菌ビヒクルを含有する流体単位投与剤形を調製する。当該化合物は、ビヒクルおよび濃度に依存して、懸濁または溶解のいずれかを行うことができる。非経口液剤は、通常、活性化合物をビヒクルに溶解し、濾過滅菌した後、適当なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することにより調製される。有利には、局所麻酔薬、保存剤および緩衝化剤のような補助剤もまたビヒクルに溶解する。安定性を増強するために、当該組成物をバイアルに充填した後に冷凍し、水分を真空除去することができる。
【0037】
非経口懸濁剤は、活性化合物を溶解するのではなくビヒクルに懸濁させ、無菌ビヒクルに懸濁させる前に酸化エチレンに暴露させることにより滅菌すること以外は、実質的に同様に調製される。有利には、当該組成物に界面活性剤または湿潤剤を含ませて活性化合物の均一な分布を促進する。
【0038】
一般に行われるように、当該組成物は、通常、関連医療処置における使用説明書を添付している。
本明細書で使用する場合、「医薬上許容される」なる用語は、ヒトおよび獣医学的使用のための化合物、組成物および成分を包含する。例えば、「医薬上許容される塩」は、獣医学上許容される塩を包含する。
【0039】
本発明は、さらに、ヒトまたは非ヒト哺乳動物における真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防方法であって、それを必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物に有効な非毒性量のDL−酒石酸塩またはその溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0040】
好都合には、活性成分は、上記定義の医薬組成物として投与でき、これは、本発明の特定の態様を形成する。
さらなる態様において、本発明は、真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防用薬物の製造のためのDL−酒石酸塩またはその溶媒和物の使用を提供する。
【0041】
真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防において、DL−酒石酸塩またはその溶媒和物は、EP 0,306,228、WO 94/05659 または WO 98/55122 に開示されるような、適当な用量の化合物(I)を提供するような量で投与される。
本発明の化合物について上記した処置において有害な毒物学的効果は示されない。
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、如何なる場合も限定するものではない。
【0042】
実施例
実施例1 5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩
5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(10g)およびエタノール(300ml)の混合物を撹拌し、加熱還流して透明な溶液を得た。(15分間加熱還流することにより製造した)DL−酒石酸(4.2g)のエタノール(80ml)中熱溶液を添加した。結晶化が観察されるまで、該溶液を還流下にて撹拌し、次いで、該混合物を21℃に冷却し、この温度で2.5時間撹拌した。濾過により生成物を集め、エタノール(100ml)で洗浄し、五酸化リンにて4時間真空乾燥させて、白色結晶質固体として5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩(14.2g)を得た。
1H−NMR(d6−DMSO):5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩と一致。
【0043】
実施例2 5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩
5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(3.0g)およびアセトン(50ml)の混合物を50分間撹拌しながら還流下にて加熱した。これにDL−酒石酸(1.27g)の水(6.0ml)中熱透明溶液を添加した。該反応混合物を還流下にて5分間加熱し、次いで、21℃に冷却した。濾過により白色固体を集め、アセトン(50ml)で洗浄し、次いで、21℃で1.8時間、減圧乾燥させて、白色結晶質固体として5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩(4.0g)を得た。
【0044】
実施例1の生成物について記録された特性決定データ
2cm−1分解能のNicolet 710 FT−IR分光光度計を使用して生成物の鉱油分散体の赤外吸収スペクトルを得た(図1)。データは、1cm−1間隔でデジタル化した。
3451、1751、1696、1639、1630、1610、1539、1513、1461、1414、1378、1352、1287、1269、1234、1208、1175、1155、1133、1076、1058、1000、922、902、839、750、713、673、600、525、508cm−1でバンドが見られた。
【0045】
万能ATR付属品を装備したPerkin−Elmer Spectrum One FT−IR分光光度計を使用して固体生成物の赤外スペクトルを記録した。
3457、3070、2785、1750、1694、1639、1628、1610、1543、1512、1462、1414、1352、1314、1287、1270、1233、1208、1185、1175、1153、1132、1075、1057、1039、 1001、983、922、902、838、827、775、749、712、668cm− 1でバンドが見られた。
【0046】
出力400mWのNd:V04レーザー(1064nm)からの励起を用いて4cm− 1分解能のNicolet 960 E.S.P. FT−ラマン分光光度計を使用してNMR管中の試料について生成物のラマンスペクトルを記録した(図2)。
3103、3046、2956、2924、2901、2859、1749、1712、1610、1584、1545、1463、1444、1384、1353、1333、1316、1292、1240、1208 1185、1174、1152、1112、1095、1039、984、922、902、828、778、742、667、637、622、601、540、471、422、401、347、282、108cm− 1でバンドが見られた。
【0047】
以下の獲得条件を使用して生成物のX線粉末回折図形を記録した(図3):チューブアノード:Cu、発電器電圧:40kV、発電器電流:40mA、始動角度:2.0°2θ、最終角度:35.0°2θ、ステップサイズ:0.02°2θ、ステップごとの時間:2.5秒。特徴的なXRPD角度および相対強度を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
90.55MHzで操作するBruker AMX360装置にて生成物の固体NMRスペクトルを記録した(図4):Kel−Fキャップを装備した4mmジルコニアMASローター中に固体を詰め、約10kHzでローターを回転させた。Hartmann−Hahn適合プロトンからの交差分極(CP接触時間3分、反復時間15秒)により13C MASスペクトルを捕捉し、獲得の間、二パルス位相変調(TPPM)複合系列を使用してプロトンをデカップリングさせた。化学シフトは、TMSと比較して176.4ppmのグリシンのカルボキシレートシグナルを外部基準とし、
177.9、176.7、174.6、169.9、156.3、147.9、137.5、132.5、126.3、117.1、116.1、112.6、111.1、109.8、107.2、74.2、72.3、65.9、55.7、49.5、40.2、38.3、35.1ppmで見られた。
【0050】
実施例1の生成物について記録したDL−酒石酸塩の特性
DL−酒石酸塩の固体安定性
当該物質約1.0gをガラスビン中にて、i)40℃/相対湿度(RH)75%で開放暴露して1ヶ月間、および、b)50℃で密閉して1ヶ月間、貯蔵することにより、当該薬物の固体安定性を決定した。両方のケースにおいて、最終含量および分解生成物について該物質をHPLCによりアッセイした。
a)40℃/RH75%:有意な分解は観察されなかった(HPLCアッセイ97%初期)。
b)50℃:有意な分解は観察されなかった(HPLCアッセイ99%初期)。
【0051】
DL−酒石酸塩の融点
Buchi 545融点測定器を使用して、米国薬局方 USP 23, 1995, <741> “Melting range or temperature、Procedure for Class Ia”に記載された方法に従ってDL−酒石酸塩の融点を決定した。
融点:191.7℃。
【0052】
DL−酒石酸塩のTonset
Perkin−Elmer DSC7装置を使用して、示差走査熱量測定により薬物のTonsetを決定した。
Tonset(10℃/分、密閉パン):202℃。
【0053】
DL−酒石酸塩の溶解度
薬物約100mgに、1〜1000mlのアリコートで水を、粉末が溶解してしまうまで添加することにより物質の溶解度を決定した。飽和溶液のHPLCアッセイにより目視溶解度を確認した。
溶解度:1mg/ml。
Claims (12)
- 化合物5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物。
- (i) 図1と実質的に一致する赤外スペクトル;
(ii) 図2と実質的に一致するラマンスペクトル;
(iii) 表1または図3と実質的に一致するX線粉末回折図形(XRPD);または
(iv) 図4と実質的に一致する固体13C NMRスペクトル
を提供することを特徴とする請求項1記載の化合物。 - (i) 図1と実質的に一致する赤外スペクトル;および
(ii) 図2と実質的に一致するラマンスペクトル;および
(iii) 表1または図3と実質的に一致するX線粉末回折図形(XRPD);および
(iv) 図4と実質的に一致する固体13C NMRスペクトル
のうち2つまたはそれ以上を提供することを特徴とする請求項1記載の化合物。 - 精製形態である請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
- 固体投与形態である請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
- 熱を必要とするかまたは発生する製造過程における製薬処理、例えば、微粉砕;例えば、加熱乾燥、特に、流動層乾燥またはスプレー乾燥;例えば、ホットメルト処理;例えば、オートクレーブ処理のような加熱滅菌を行うことができる形態である請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
- 熱を必要とするかまたは発生する製造過程において処理された形態、例えば、微粉砕形態;例えば、加熱乾燥形態、特に、流動層乾燥形態またはスプレー乾燥形態;例えば、ホットメルト処理された形態;例えば、オートクレーブ処理によるような加熱滅菌処理された形態である請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
- 良好な流動性を有する医薬上許容される形態である請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
- 5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(化合物(I))またはその塩をDLタルトレートイオンの供給源と反応させ、その後、要すれば、得られたDL−酒石酸塩の溶媒和物を製造し;該DL−酒石酸塩またはその溶媒和物を回収することを特徴とするDL−酒石酸塩またはその溶媒和物の製造方法。
- 5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
- 活性な治療物質として使用するための化合物5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物。
- 真性糖尿病、真性糖尿病と付随している症状およびそのある種の合併症の治療および/または予防用薬物の製造のための5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン・DL−酒石酸塩またはその溶媒和物の使用。
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