JP2004505036A - 肺気腫の治療のための13−cis−レチノイン酸の使用 - Google Patents

肺気腫の治療のための13−cis−レチノイン酸の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、肺気腫の治療のための13−cis−レチノイン酸、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物の使用、肺気腫の治療に有用な13−cis−レチノイン酸、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物で肺気腫を治療する方法、及び13−cis−レチノイン酸の処方を肺気腫に罹患した哺乳動物の肺に送達する方法に関する。

Description

【0001】
本発明は、肺気腫の治療のための13−cis−レチノイン酸、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物の使用、肺気腫の治療に有用な13−cis−レチノイン酸、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物で肺気腫を治療する方法、及び13−cis−レチノイン酸の処方を肺気腫に罹患した哺乳動物の肺に送達する方法に関する。
【0002】
化学的には、13−cis−レチノイン酸は、(13Z)−レチノイン酸であり、下記構造を有する:
【0003】
【化1】
Figure 2004505036
【0004】
13−cis−レチノイン酸はまた、イソトレチノイン、AGN190013、ネオビタミンA酸、Ro−4−3780、13−cis−β−レチノイン酸及び13−cis−ビタミンA酸としても知られている。13−cis−レチノイン酸は、重症結節性ざ瘡の治療のために、アキュテイン(Accutane)(登録商標)、ロアキュタン(Roaccutan)(登録商標)及びロアキュテイン(Roaccutane)(登録商標)という商品名の下で販売されている(「医師用卓上参考書(Physicians’ Desk Reference)、第54版」, p. 2610, 2000;Peckら、N. Eng. J. Med.;Peckら、米国特許第5,698,593号)。13−cis−レチノイン酸はまた、精神分裂病のような精神病(Straw, 米国特許第4,808,630号)並びに頭部、頸部及び肺の癌(Tomasら、Annals of Oncology, 1999, 10, 95;Bennerら、Seminars in Hematology, 1994, 31, 26)の治療において有効であることも報告されている。13−cis−レチノイン酸は、現在数カ所でこれらの型の癌の治療に関して臨床試験を行っている(例えば、テキサス大学SW医療センター(University of Texas SW Medical Center)、ダラス、テキサス州;テキサス大学MDアンダーソン癌センター(University of Texas MD Anderson Cancer Center)、ヒューストン、テキサス州;復員軍人省医療センター(Department of Veteran Affairs Medical Center)、テンプル、テキサス州)。
【0005】
13−cis−レチノイン酸は、ビタミンAの構造的類似体であり、そして天然及び合成化合物の両方を含む、レチノイド分類の化合物の一員である。全transレチノイン酸(「ATRA」)、9−cis−レチノイン酸、trans−3,4−ジデヒドロレチノイン酸、4−オキソレチノイン酸及びレチノールのような天然のレチノイド化合物は、多数の炎症、免疫及び構造細胞に影響を及ぼす、多面発現性(pleiotropohic)調節化合物である。
【0006】
例えば、レチノイドは、上皮細胞増殖、肺における形態形成、及びステロイド/甲状腺ホルモン受容体スーパーファミリーに属する一連の核受容体による分化を調節する。肺組織以外の組織において、レチノイドは典型的には抗炎症作用を持ち、上皮細胞分化の進行を変更し、そして間質細胞マトリックス産生を阻害しうる。レチノイドのこれらの生物学的作用によって、乾癬、ざ瘡、及び肥厚性皮膚瘢痕のような皮膚科学的障害のための多くの局所用剤が開発されている。レチノイドの他の医薬応用は、急性前骨髄球性白血病、腺癌及び扁平上皮細胞癌並びに肝線維症の制御を含む。しかし、レチノイドはしばしば選択性を欠いており、その結果、治療上有効量で使用するとき、有害な多面発現性作用を発揮し、このため患者の死を招くこともある。即ち、癌以外の疾患におけるレチノイドの治療的使用は、毒性副作用によって限定されている。レチノイドの一般的総説は、GoodmanとGilmanの「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics), 第9版」(1996, McGraw−Hill), 63−64章に見い出すことができる。
【0007】
慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)は、正常な呼吸を妨げる肺疾患の広範な群を意味する。米国の人口のおよそ11%は、COPDであり、そして利用可能なデータは、COPDの発病が増加していることを示唆している。現在では、COPDは米国における第4番目の死因である。
【0008】
COPDは、肺が、喘息、肺気腫及び慢性気管支炎から選択される、少なくとも1つの疾患の存在により閉塞する疾患である。COPDという用語は、これらの症状が、しばしば同時に存在し、そして個々の症例において、どの疾患が肺の閉塞を引き起こす原因であるかを確認するのが難しいことがあるため、導入された(1987 メルクマニュアル(Merck Manual))。臨床的には、COPDは、数ヶ月にわたって一定であり、慢性気管支炎の症例では連続2年以上持続する、肺からの呼気流量の低下によって診断される。COPDの最も重篤な症状発現は、典型的には肺気腫に特徴的な症候を含む。
【0009】
肺気腫は、肺のガス交換構造(例えば、肺胞)が破壊される疾患であって、これにより廃疾や死に至ることがある不適切な酸素添加が起こる。解剖学的には、肺気腫は、呼吸の低下をもたらす、肺弾性の低下、肺胞表面積及びガス交換の減少並びに肺胞破壊を特徴とする、遠位から終末細気管支(例えば、呼吸管)にかけての永続性の気胞拡張により定義される。即ち、肺気腫の特徴的な生理学的異常は、ガス交換及び呼気ガス流量の低下である。
【0010】
喫煙は、肺気腫の最も平凡な原因であるが、他の環境毒素も肺胞破壊に寄与しうる。これら有害要因において存在する有害化合物は、例えば、肺に存在するプロテアーゼインヒビターのような正常な防御機序を圧倒する過剰量のプロテアーゼの放出を含む、破壊プロセスを活性化することができる。肺に存在するプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターの間の不均衡は、エラスチンマトリックス破壊、弾性収縮力消失、組織損傷、及び絶え間ない肺機能低下をもたらす。肺損傷の速度は、肺における毒素の量を減少させることにより(例えば、禁煙により)低下させることができる。しかし、損傷肺胞構造は修復されず、そして肺機能は回復しない。二次肺小葉におけるその位置によって、少なくとも4つの型の肺気腫が報告されている:汎小葉性肺気腫、中心小葉性肺気腫、遠位小葉性肺気腫及びパラ瘢痕性(paracicatricial)肺気腫。
【0011】
肺気腫の主要な症候は、慢性息切れである。肺気腫の他の重要な症候は、慢性咳、酸素の欠乏による皮膚の暗色化、身体活動最小時の息切れ及び喘鳴を含むが、これらに限定されない。肺気腫に伴うことのある追加の症候は、視覚異常、眩暈、呼吸の一時停止、不安、腫張、疲労、不眠及び記憶消失を含むが、これらに限定されない。肺気腫は、典型的には呼吸音の低下及び異常、喘鳴及び呼息の延長を示す、身体検査により診断される。肺機能試験、血液中の酸素レベルの低下及び胸部X線は、肺気腫の診断を確定するために使用することができる。
【0012】
肺気腫の臨床指標を反転させる有効な方法は、現在のところ当該分野には存在しない。幾つかの例では、吸入器又はネブライザーにより肺に送達された、気管支拡張薬、β−アゴニスト、テオフィリン、抗コリン作動薬、利尿薬及びコルチコステロイドのような医薬は、肺気腫により傷害された呼吸を改善しうる。酸素療法は、肺機能が重度に傷害されているため、空気から充分な酸素を吸収できない状況において、しばしば使用される。肺縮小手術を利用して、重篤な肺気腫の患者を治療してもよい。ここで、肺の損傷部分を除去することにより、肺の正常部分が充分に膨張することができ、そして曝気の増大により恩恵を受ける。最後に、肺移植は、肺気腫の個人に用意された別の外科的代替法であり、これにより生活の質は増進するが、期待余命は有意には改善しない。
【0013】
肺胞は、未成熟肺のガス交換要素を構成する小嚢の分裂により、発生中に形成される。隔膜の形成及びその間隔を支配する正確な機序は、霊長類では現在まで未知のままである。細胞外マトリックス代謝と正常上皮分化の両方を変性させうる、細胞挙動の多機能モジュレーターである、ATRAのようなレチノイドは、ラットのような哺乳動物において決定的に重要な調節的役割を有する。例えば、ATRAは、時間及び空間的に選択的に発現される特異的レチノイン酸受容体への結合を通して、肺分化の決定的に重要な側面を調節する。異なるレチノイン酸受容体サブタイプの協調活性化は、新生仔ラットにおいて、肺の分岐、肺胞化/隔膜区分及びトロポエラスチンの遺伝子活性化に関連している。
【0014】
肺胞隔膜区分の間に、レチノイン酸貯蔵顆粒は、肺胞壁を囲む線維芽細胞性間葉において増加(Liuら、Am. J. Physiol. 1993, 265, L430;McGowanら、Am. J. Physiol., 1995, 269, L463)し、肺におけるレチノイン酸受容体発現は、最高に達する(Ongら、Proc. Natl. Acad. of Sci., 1976, 73, 3976;Grummerら、Pediatr. Pulm. 1994, 17, 234)。新しいエラスチンマトリックスの沈着と隔膜区分は、これらのレチノイン酸貯蔵顆粒の涸渇と平行する。レチノイン酸の出生後投与は、ラットにおいて肺胞の数を増加させることが証明されており、このことは、ATRAが、肺胞形成を誘導するという考えを支持する(Massaroら、Am. J. Physiol., 270, L305, 1996)。新生仔ラットをグルココルチコステロイドであるデキサメサゾンで処理すると、隔膜区分を妨げ、レチノイン酸受容体の幾つかのサブタイプの発現を低下させる。補足量のATRAは、肺胞形成のデキサメサゾン阻害を防ぐことが証明されている。更に、ATRAは、デキサメサゾンが、発生期ラット肺におけるレチノイン酸受容体発現、及びこれに続く肺胞隔膜区分を減少させるのを防ぐ。
【0015】
ATRAは、肺気腫の動物モデルにおいて、新しい肺胞の形成を誘導し、肺における弾性収縮力を大体正常値まで戻すことが報告されている(Massaroら、Nature Med., 1997, 3, 675;「肺胞化を増大させる戦略」, National Heart, Lung, and Blood Institute, RFA: HL−98−011, 1998;Massaroら、米国特許第5,998,486号)。しかし、Massaroは、ATRAが新しい肺胞を発生させると報告しているが、これらの試験におけるATRAの作用の機序は不確定である。更に重要なことに、ATRAの使用は、幾つかの毒性又は有害作用の懸念を提示している。即ち、ATRAの毒性問題のない肺気腫の治療に有用な薬物が大いに望まれよう。
【0016】
よって本発明は、肺気腫の治療又は予防方法、肺気腫の治療又は予防に適した薬剤組成物及び肺気腫に罹患した哺乳動物の肺への処方の送達方法に関する。
【0017】
更に一般的には、本発明は、ある種の慢性閉塞性気道障害、特に、哺乳動物(特に現在又はかつての喫煙者(ヒト))における慢性気管支炎、肺気腫及び喘息を含む、慢性閉塞性肺疾患を治療又は予防するための、13−cis−レチノイン酸の使用を包含する。好ましい実施態様において、本発明は、非毒性で治療上有効量の13−cis−レチノイン酸を使用する、哺乳動物における汎小葉性肺気腫、中心小葉性肺気腫又は遠位小葉性肺気腫の治療又は予防を包含する。
【0018】
1つの実施態様において、本発明は、肺気腫の治療又は予防のための13−cis−レチノイン酸の使用を包含する。更に、本発明は、肺気腫を治療又は予防するための、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物の使用を包含する。更に、本発明は、肺気腫に罹患しているか、又は肺気腫のリスクのある哺乳動物の肺に、13−cis−レチノイン酸の処方を送達するための、電気流体力学的エーロゾル装置、エーロゾル装置及びネブライザーの使用を包含する。
【0019】
本発明は、13−cis−レチノイン酸の全身使用、更には局所使用、又は組合せた両方の使用を包含する。いずれか、又は両方とも、経口、粘膜内又は非経口様式の投与により達成することができる。上述のように、ネブライザー、吸入器又は他の既知の送達装置により、13−cis−レチノイン酸を肺に直接送達する手段は、本発明に包含される。
【0020】
13−cis−レチノイン酸を、禁煙(適宜)、気管支拡張薬、抗生物質、酸素療法などのような、1つ以上の追加の治療法と組合せることによる肺気腫の治療方法もまた、本発明に包含される。
【0021】
別の側面において、本発明は、肺気腫を予防するのに充分な量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの投与による、肺気腫のリスクのあるヒトにおける肺気腫の予防方法を包含する。最後の側面において、本発明は、薬剤学的に許容しうる担体中の肺気腫を予防するのに充分な量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの投与により、肺気腫のリスクのあるヒトにおいて肺気腫を予防するための薬剤組成物を包含する。
【0022】
本明細書において使用されるとき、「哺乳動物」という用語はヒトを含む。「ヒト」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0023】
本明細書において使用されるとき、「肺気腫を治療すること」という用語は、肺気腫の少なくとも1つの症候を緩和、改善、整復、又は軽減することを意味する。肺気腫の症候は、慢性咳、酸素の欠乏による皮膚の暗色化、身体活動最小時の息切れ、喘鳴、遠位から終末細気管支にかけての気胞の異常拡張及びその壁の破壊を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「薬剤学的に許容しうる塩」という用語は、薬剤学的に許容しうる非毒性の有機又は無機塩基から調製される塩を意味する。適切な有機塩基は、リシン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインを含むが、これらに限定されない。適切な無機塩基は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛のような、アルカリ及びアルカリ土類金属を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用されるとき、「プロドラッグ」とは、このような化合物が哺乳動物対象に投与されると、インビボで活性薬物を放出する、任意の化合物を意味する。プロドラッグは、例えば、親薬物の官能基修飾により調製することができる。官能基は、インビボで開裂して、活性な親薬物化合物を放出することができる。プロドラッグは、例えば、インビボで開裂される基が、活性薬物中のヒドロキシ、アミノ又はカルボキシル基に結合している化合物を含む。プロドラッグの例は、エステル(例えば、酢酸、メチル、エチル、ギ酸、及び安息香酸誘導体)、カルバマート、アミド及びエーテルを含むが、これらに限定されない。このようなプロドラッグの合成方法は、当業者には知られている。
【0026】
本発明の好ましい実施態様に関して、これから詳細に言及される。本発明は好ましい実施態様に関連して記述されるが、本発明がこれらの好ましい実施態様に限定されるものでないことは理解すべきである。それとは反対に、添付される請求の範囲により定義される本発明の精神と範囲内に含まれる、代替法、修飾法、及び同等法に及ぶことが意図されている。
【0027】
本発明の一部は、13−cis−レチノイン酸が、肺気腫及び関連障害を治療するために使用されるとき、その異性体のATRAよりも実質的に優れた治療プロフィールを有するという、予期しない発見に基づく(例えば、以下の実施例6を参照のこと)。即ち、本明細書に記載される発明は、より安全でより効力の高い肺気腫治療を包含する。
【0028】
本発明は、有効に肺気腫を治療するための13−cis−レチノイン酸の使用に関する。本発明は、治療レベルで使用するときATRAに付随した有害作用を低下又は回避しながら、肺気腫及び関連障害を治療することを包含する。治療レベルでのATRAに付随した有害作用は、頭痛、発熱、皮膚と膜の乾燥、骨痛、悪心及び嘔吐のようなビタミンA過剰症の毒性作用、精神障害並びに胃腸障害を含むが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の第1の側面は、治療上有効量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを、このような治療を必要とする哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物における肺気腫の治療方法を包含する。1つの実施態様において、肺気腫は、汎小葉性肺気腫、中心小葉性肺気腫又は遠位肺気腫である。
【0030】
好ましくは、13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの治療上有効量は、約0.1μgと約10.0mgの間、更に好ましくは約1.0μgと約1.0mgの間である。1つの実施態様において、特に経口投与のための、13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの治療上有効量は、約100.0μgと約300.0μgの間である。別の実施態様において、特に吸入による投与のための、13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの治療上有効量は、約1.0μgと約100.0μgの間、更に好ましくは約3.0μgと約30.0μgの間、最も好ましくは約5.0μgと約15.0μgの間である。
【0031】
本発明のこの側面は、哺乳動物の肺胞を修復することによる、哺乳動物の肺気腫の治療方法を包含する。好ましい実施態様において、哺乳動物はヒトである。好ましくは、このヒトはかつての又は現在の喫煙者である。別の好ましい実施態様において、治療上有効量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与するために、電気流体力学的エーロゾル装置又はネブライザー装置又はエーロゾル装置が使用される。
【0032】
本発明の第2の側面は、ある量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを、薬剤学的に許容しうる担体中に含むことを特徴とする、肺気腫に罹患した哺乳動物の治療のための薬剤組成物を包含する(ここで13−cis−レチノイン酸の量は、肺気腫の1つの症候を軽減するのに充分な量である)。1つの実施態様において、肺気腫は、汎小葉性肺気腫、中心小葉性肺気腫又は遠位肺気腫である。好ましい実施態様において、哺乳動物はヒトである。好ましくは、このヒトはかつての又は現在の喫煙者である。
【0033】
肺気腫の主要な症候は、慢性息切れ、慢性咳、酸素の欠乏による皮膚の暗色化、身体活動最小時の息切れ及び喘鳴を含むが、これらに限定されない。肺気腫に伴うことのある追加の症候は、視覚異常、眩暈、呼吸の一時停止、不安、腫張、疲労、不眠及び記憶消失を含むが、これらに限定されない。
【0034】
好ましくは、薬剤組成物中の、13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの量は、約0.1μgと約10.0mgの間、更に好ましくは約1.0μgと約1.0mgの間、最も好ましくは約100.0μgと約300.0μgの間である。
【0035】
1つの実施態様において、薬剤学的に許容しうる担体は、電気流体力学的エーロゾル装置、ネブライザー装置又はエーロゾル装置に適している。1つの好ましい実施態様において、薬剤学的に許容しうる担体は、水、アルコール、ポリエチレングリコール又はペルフルオロカーボンのような液体である。この好ましい実施態様における薬剤組成物中の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの量は、約1.0μgと約100.0μgの間、更に好ましくは約3.0μgと約30.0μgの間、最も好ましくは約5.0μgと約15.0μgの間である。
【0036】
本発明の第3の側面は、13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの処方を哺乳動物の肺に送達することによる、肺気腫及び関連障害の治療方法を包含する。好ましくは、哺乳動物はヒトであり、更に好ましくは、このヒトはかつての又は現在の喫煙者である。1つの実施態様において、処方は、ネブライザー装置で哺乳動物の肺に送達される。第2の実施態様において、処方は、エーロゾル装置で哺乳動物の肺に送達される。第3の実施態様において、処方は、電気流体力学的エーロゾル装置で哺乳動物の肺に送達される。
【0037】
典型的な実施態様において、この処方は、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物である。好ましくは、薬剤組成物中の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの量は、約1.0μgと約100.0μgの間、更に好ましくは約3.0μgと約30.0μgの間、最も好ましくは約5.0μgと約15.0μgの間である。1つの好ましい実施態様において、薬剤学的に許容しうるビヒクルは、水、アルコール、ポリエチレングリコール又はペルフルオロカーボンのような液体である。別の好ましい実施態様において、処方のエーロゾルの性質を変性させる物質が処方に添加される。好ましくは、この物質は、アルコール、グリコール、ポリグリコール又は脂肪酸である。
【0038】
第4の側面において、本発明は、13−cis−レチノイン酸の使用を、1つ以上の追加の治療法と組合せる、肺気腫の治療方法を包含する。追加の治療法は、禁煙、抗生物質、気管支拡張薬及び酸素療法を含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、13−cis−レチノイン酸の薬剤組成物は、他の治療法と組合せて使用される。
【0039】
第5の側面において、本発明は、肺気腫を予防するのに充分な量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与することによる、肺気腫のリスクのあるヒトにおける肺気腫の予防方法を提供する。好ましい実施態様において、ヒトはかつての又は現在の喫煙者である。
【0040】
最後の側面において、本発明は、肺気腫のリスクのあるヒトにおいて肺気腫を予防する、薬剤組成物を提供する。この組成物は、肺気腫を予防するのに充分な量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグ及び薬剤学的に許容しうる担体を含むことを特徴とする。
【0041】
13−cis−レチノイン酸の幾つかの合成方法が、文献に報告されている。これらは、遷移金属(即ち、Rh又はPd)触媒オレフィン異性化(Lucci, 米国特許第4,556,518号)及びハロゲン化ビニルマグネシウムの添加によって、ビニル−β−イオノールが得られ、ビニル−β−イオノールと4−ヒドロキシ−3−メチル−ブテノリドとをウィッティッヒ(Wittig)縮合し、生じたアルカリ金属塩を光化学的に異性化する(Magnoneら、ヨーロッパ特許第959069号)ことによる、4−ヒドロキシ−3−メチル−ブテノリドとウィッティッヒ塩の反応を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書に開示された13−cis−レチノイン酸を使用する治療方法は、損傷肺胞の修復及び肺胞の隔膜区分を促進するのに有用である。即ち、これらの方法は、肺気腫のような肺疾患を治療するのに利用することができる。
【0043】
肺気腫又は関連疾患を治療又は予防するために使用するとき、13−cis−レチノイン酸は、単体で、肺気腫を治療するのに有用な他の物質と組合せて、又は他の薬剤学的に活性な物質と組合せて、投与又は適用することができる。13−cis−レチノイン酸は、それ自体又は薬剤組成物として投与又は適用することができる。具体的な薬剤処方は、投与の所望の様式に依存し、そして当業者には明らかであろう。レチノイドの局所又は全身投与のための多数の組成物が当該分野において知られている。任意のこれらの組成物を13−cis−レチノイン酸により処方することができる。
【0044】
13−cis−レチノイン酸を含む薬剤組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封じ込め又は凍結乾燥プロセスの手段により製造することができる。薬剤組成物は、薬剤学的に使用できる製剤への13−cis−レチノイン酸の加工を促進する、1つ以上の生理学的に許容しうる担体、希釈剤、賦形剤又は助剤を用いて、従来法で処方することができる。適正な処方は、選択される投与の経路に依存する。
【0045】
局所投与には、13−cis−レチノイン酸は、当該分野において周知である、液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム、懸濁剤などとして処方することができる。
【0046】
全身処方は、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射)による投与用に立案されたもの、更には経皮、経粘膜、経口又は肺内投与用に立案されたものを含む。全身処方は、気道粘膜の粘膜毛様体クリアランスを改善させるか、又は粘膜の粘性を低下させる、更に別の活性剤と組合せて製造することができる。これらの活性剤は、ナトリウムチャネルブロッカー、抗生物質、N−アセチルシステイン、ホモシステイン及びリン脂質を含むが、これらに限定されない。
【0047】
注射には、13−cis−レチノイン酸は、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩緩衝液のような、生理学的に適合性の緩衝液中に処方することができる。この溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような、処方用物質を含んでもよい。
【0048】
あるいは、13−cis−レチノイン酸は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するために粉末の形状であってもよい。
【0049】
経粘膜投与には、障壁を透過させるのに適した浸透剤が処方中に使用される。このような浸透剤は、当該分野において一般に知られている。
【0050】
経口投与には、13−cis−レチノイン酸は、当該分野において周知の薬剤学的に許容しうる担体と組合せて、容易に処方することができる。このような担体によって、本発明の化合物は、治療すべき患者の経口摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして処方することができる。例えば、粉剤、カプセル剤及び錠剤のような経口固体処方には、適切な賦形剤は、糖類(乳糖、ショ糖、マンニトール及びソルビトールなど);セルロース製品(トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)など)のような増量剤;顆粒化剤及び結合剤を含む。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩などの崩壊剤を加えてもよい。所望であれば、固体投与剤形は、標準法を用いて、糖衣をかけても、又は腸溶性コーティングを行ってもよい。経口投与用に13−cis−レチノイン酸を処方する方法は、当該分野において周知である(例えば、アキュテイン(Accutane)(登録商標)の処方、「医師用卓上参考書(Physicians’ Desk Reference)、第54版」, p. 2610, 2000を参照のこと)。
【0051】
例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような経口液体調剤には、適切な担体、賦形剤又は希釈剤は、水、生理食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、油、アルコール、pH4とpH6の間の微酸性緩衝液(例えば、約5.0mM〜約50.0mMの間の酢酸、クエン酸、アスコルビン酸塩)などを含む。更に、着香剤、保存料、着色料、胆汁酸塩、アシルカルニチンなどを加えてもよい。
【0052】
口腔内投与には、組成物は、従来法で処方される、錠剤、トローチ剤などの剤形をとってよい。
【0053】
13−cis−レチノイン酸はまた、吸入により肺に直接投与することができる(例えば、Tongら、PCT出願、WO 97/39745;Clarkら、PCT出願、WO 99/47196を参照のこと、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。吸入による投与には、13−cis−レチノイン酸は、幾つかの異なる装置により、便利には肺に送達される。例えば、適切な低沸点噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガス)を含むキャニスターを利用する、定量噴露式吸入器(Metered Dose Inhaler)(「MDI」)によって、13−cis−レチノイン酸を肺に直接送達することができる。MDI装置は、3M社(3M Corporation)、アヴェンティス(Aventis)、ベーリンガー・インゲルハイム(Boehringer Ingelheim)、フォレスト・ラボラトリーズ(Forest Laboratories)、グラクソ−ウェルカム(Glaxo−Wellcome)、シェーリング・プラウ(Schering Plough)及びヴェクチュラ(Vectura)のような、幾つかの供給業者から入手できる。
【0054】
あるいは、粉末吸入器(Dry Powder Inhaler)(DPI)装置を使用して、13−cis−レチノイン酸を肺に投与してもよい(例えば、Raleighら、Proc. Amer. Assoc. Cancer Research Annual Meeting, 1999, 40, 397を参照のこと、これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。DPI装置は、典型的にはガスのバーストのような機序を利用して、容器の内側に乾燥粉末の雲状物を生成させ、次にこれが患者に吸入される。DPI装置もまた、当該分野において周知であり、例えば、ファイソンズ(Fisons)、グラクソ−ウェルカム(Glaxo−Wellcome)、吸入療法システムズ(Inhale Therapeutic Systems)、MLラボラトリーズ(ML Laboratories)、Qドーズ(Qdose)及びヴェクチュラ(Vectura)を含む、幾つかの販売会社から購入することができる。よくある変形は、多回投与用DPI(「MDDPI」)システムであり、これによって2回以上の治療用量の送達が可能になる。MDDPI装置は、アストラ・ゼネカ(Astra Zeneca)、グラクソ・ウェルカム(Glaxo Wellcome)、イヴァックス(IVAX)、シェーリング・プラウ(Schering Plough)、スカイ・ファーマ(SkyePharma)及びヴェクチュラ(Vectura)のような会社から入手できる。例えば、これらのシステムのための、化合物と適切な粉末基剤(乳糖又はデンプンなど)の粉末混合物を含む、吸入器又は注入器で使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを処方することができる。
【0055】
13−cis−レチノイン酸を肺に送達するために使用しうる別の型の装置は、例えば、アラダイム社(Aradigm Corporation)から供給される液体スプレー装置である。液体スプレーシステムは、極めて小さなノズル穴を使用して、液体薬物処方をエーロゾル化し、次にこれが肺に直接吸入される。
【0056】
好ましい実施態様において、13−cis−レチノイン酸を肺に送達するためにネブライザー装置が使用される。ネブライザーは、液体薬物処方から、例えば、超音波エネルギーを使用することにより、容易に吸入される微粒子を形成して、エーロゾルを作り出す(例えば、Verschoyleら、British J. Cancer, 1999, 80, Suppl 2, 96を参照のこと、これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。ネブライザーの例は、シェフィールド(Sheffield)/システミック・パルモナリー・デリバリー社(Systemic Pulmonary Delivery Ltd.)(Armerら、米国特許第5,954,047号;van der Lindenら、米国特許第5,950,619号;van der Lindenら、米国特許第5,970,974号を参照のこと、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)、アヴェンティス(Aventis)及びベーテル・パルモナリー・テラピューティクス(Batelle Pulmonary Therapeutics)により供給される装置を含む。ネブライザー装置により送達された、吸入13−cis−レチノイン酸は、気道(aerodigestive)癌(Engelkeら、Poster 342 at American Association of Cancer Research, サンフランシスコ, カリフォルニア州, April 1−5, 2000)及び肺癌(Dahlら、Poster 524 at American Association of Cancer Research, サンフランシスコ, カリフォルニア州, April 1−5, 2000)の治療法として現在試験中である。
【0057】
特に好ましい実施態様において、電気流体力学的(「EHD」)エーロゾル装置を使用して、13−cis−レチノイン酸を肺に送達する。EHDエーロゾル装置は、電気エネルギーを使用して、液体薬物溶液又は懸濁液をエーロゾル化する(例えば、Noakesら、米国特許第4,765,539号;Coffee, 米国特許第4,962,885号;Coffee, PCT出願, WO 94/12285;Coffee, PCT出願, WO 94/14543;Coffee, PCT出願, WO 95/26234;Coffee, PCT出願, WO 95/26235;Coffee, PCT出願, WO 95/32807を参照のこと、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。13−cis−レチノイン酸処方の電気化学的性質は、この薬物をEHDエーロゾル装置で肺に送達するとき、最適化するために重要なパラメーターであり、そしてこのような最適化は、当業者であれば日常的に実行している。EHDエーロゾル装置は、既存の肺送達法よりも効率的に薬物を肺に送達することができる。13−cis−レチノイン酸の肺内送達の他の方法は、当業者の知るところであろうし、そして本発明の範囲に含まれる。
【0058】
ネブライザー及び液体スプレー装置及びEHDエーロゾル装置での使用に適した液体薬物処方は、典型的には薬剤学的に許容しうる担体を伴う13−cis−レチノイン酸を含む。好ましくは、薬剤学的に許容しうる担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコール又はペルフルオロカーボンのような液体である。場合により、13−cis−レチノイン酸の溶液又は懸濁液のエーロゾル性質を変えるために、別の物質を加えることができる。好ましくは、この物質は、アルコール、グリコール、ポリグリコール又は脂肪酸のような液体である。エーロゾル装置で使用するのに適した液体薬物溶液又は懸濁液を処方する他の方法は、当業者には知られている(例えば、Biesalski, 米国特許第5,112,598号;Biesalski, 米国特許第5,556,611号を参照のこと、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0059】
13−cis−レチノイン酸はまた、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む、坐剤又は留置浣腸剤のような、直腸内又は膣内投与用組成物に処方することができる。
【0060】
前述の処方に加えて、13−cis−レチノイン酸はまた、デポー製剤として処方することができる。このような長時間作用性処方は、体内移植(例えば、皮下又は筋肉内に)又は筋肉内注入によって投与することができる。即ち、例えば、本化合物は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(例えば、許容しうる油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に、あるいはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として処方することができる。
【0061】
あるいは、他の薬剤送達システムを利用することができる。リポソーム及びエマルションは、13−cis−レチノイン酸を送達するために使用できる、送達ビヒクルの周知の例である。ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒もまた、利用することができるが、通常大きな毒性という犠牲を払う。13−cis−レチノイン酸はまた、放出制御システムで送達することができる。1つの実施態様において、ポンプが使用される(Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng., 1987, 14, 201;Buchwaldら、Surgery, 1980, 88, 507;Saudekら、N. Engl. J. Med., 1989, 321, 574)。別の実施態様において、ポリマー性物質を使用することができる(「放出制御の医療応用(Medical Applications of Controlled Release)」, LangerとWise(編), CRC Pres., ボカラトン, フロリダ州 (1974);「薬物の生物学的利用能の制御、薬物設計及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, SmolenとBall(編), Wiley, ニューヨーク (1984);RangerとPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem., 1983, 23, 61を参照のこと;また、Levyら、Science 1985, 228, 190;Duringら、Ann. Neurol., 1989, 25, 351;Howardら、1989, J. Neurosurg. 71, 105を参照のこと)。更に別の実施態様において、放出制御システムは、本発明の化合物の標的、例えば、肺に接近させることができ、これによって全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson, 上記「放出制御の医療応用」, vol. 2, pp. 115 (1984)を参照のこと)。他の放出制御システムを使用することができる(例えば、Langer, Science, 1990, 249, 1527を参照のこと)。
【0062】
13−cis−レチノイン酸は酸性であるため、上述の任意の処方に、遊離酸、薬剤学的に許容しうる塩、プロドラッグ、溶媒和物又は水和物として含まれてよい。薬剤学的に許容しうる塩は、実質的に遊離酸の活性を保持しており、そして塩基との反応によって調製することができる。薬剤学的に許容しうる塩は、哺乳動物への投与に関して当該分野で知られている、レチノイン酸の任意の既知の適切な塩を含む。薬剤学的塩は、対応する遊離酸の形態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒に易溶性である傾向がある。同様に、13−cis−レチノイン酸は、溶媒和物、水和物又はプロドラッグとして、任意の上述の処方に含まれてよい。好ましいプロドラッグは、芳香族エステル、ベンジルエステル及び低級アルキルエステル(エチル、シクロペンチルなど)のような、加水分解性エステル誘導体を含む。他のプロドラッグは、製剤の分野における当業者には知られている。
【0063】
本発明の13−cis−レチノイン酸、又はこれの組成物は、一般には意図する目的を達成するのに有効な量で使用される。当然ながら、使用される量は、投与の方法に依存することは理解すべきである。
【0064】
肺気腫を治療又は予防するための使用には、13−cis−レチノイン酸又はこれの組成物は、治療上有効量で投与又は適用される。治療上有効量とは、肺気腫の症候を改善するか、又は肺気腫を改善、治療又は予防するのに有効な量を意味する。全身投与のための13−cis−レチノイン酸の治療上有効量は、本明細書に提供される詳細な開示に見い出すことができる。
【0065】
13−cis−レチノイン酸の薬物動態プロフィールは、予想されるものであり、線形薬物動態理論を用いて記述することができる。重要なことに、ヒトにおける13−cis−レチノイン酸の薬物動態は、特に明確である。13−cis−レチノイン酸を単回経口投与後の標準薬物動態パラメーターの範囲は、当該分野において報告されている(例えば、Khooら、J. Clin. Pharm., 1982, 22, 395;Colburnら、J. Clin. Pharm., 1983, 23, 534;Colburnら、Eur. J. Clin. Pharm., 1983, 23, 689を参照のこと)。薬物動態パラメーターの類似値が、多回投与後に見い出されるが、このことは、このような状況下では13−cis−レチノイン酸の誘導又は蓄積が起こらないことを示している(Brazzelら、Eur. J. Clin. Pharm., 1983, 24, 695;Lucekら、Clin. Pharmacokinetics, 1985, 10, 38)。当業者であれば、動物モデルの用量データと共に既知の薬物動態パラメーターを用いて、哺乳動物(好ましくはヒト)において肺気腫を治療するのに必要な13−cis−レチノイン酸の適切な全身用量レベルを概算することができる。
【0066】
用量及び投与間隔は、治療効果を維持するのに充分な13−cis−レチノイン酸の血漿レベルを与えるために、個別に調整される。注射による投与のための通常の患者用量は、0.1μg〜約10.0mg、好ましくは約1.0μgと約1.0mgの間、更に好ましくは約100.0μgと約300.0μgの間の範囲である。治療上有効な血清レベルは、毎日、1日1回用量又は多回用量を投与することにより達成することができる。
【0067】
投与される13−cis−レチノイン酸の量は、当然ながら、数ある因子の中で、治療すべき対象、対象の体重、病気の重篤度、投与の様式及び診察する医師の判定に依存する。典型的には、経口用量範囲は、0.1μgと約10.0mgの間、好ましくは約1.0μgと約1.0mgの間、更に好ましくは約100.0μgと約300.0μgの間で変化する。肺薬物送達装置での肺への13−cis−レチノイン酸処方の投与は、約10倍と約100倍の間で、必要とする用量を減少させる。即ち、典型的には、エーロゾル用量範囲は、1.0μgと約100.0μgの間、好ましくは約3.0μgと約30μgの間、更に好ましくは約5μgと約15μgの間で変化する。例えば、用量は、薬剤組成物にして、単回投与により、多回適用又は放出制御により送達することができる。投与は、間欠的に反復することができ、単独又は他の薬物と組合せて提供することができ、そして肺気腫の有効な治療に必要なだけ長く続けられる。
【0068】
好ましくは、本明細書に記載される治療上有効用量の13−cis−レチノイン酸は、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療効果を提供する。13−cis−レチノイン酸の毒性は、標準的製剤学手順を用いて求められ、当業者ならば容易に確かめることができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数である。13−cis−レチノイン酸は、実施例6において証明されるように、ATRAと比較すると肺気腫を治療する際に、特に高い治療指数を示す。本明細書に記載される13−cis−レチノイン酸の用量は、ほとんど又は全然毒性を持たない有効用量を含む、循環濃度の範囲内にある。用量は、利用される剤形及び利用される投与の経路に依存して、この範囲内で変化してよい。厳密な処方、投与の経路及び用量は、患者の症状を考慮して個々の医師によって選択することができる(例えば、Finglら、1975, 「治療の薬理学的根拠(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」, Ch.1, p.1を参照のこと)。例えば、治療上有効用量の13−cis−レチノイン酸は、経口か、又は肺に直接投与することができる。
【0069】
本発明は、本発明の化合物及び組成物の調製法を詳細に記述する以下の実施例を参照することにより、更に明確にされる。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、物質と方法の両方に多くの改変を加えることができることは明らかであろう。
【0070】
実施例
実施例1:13−cis−レチノイン酸の経口処方
表1は、13−cis−レチノイン酸の錠剤の剤形のための成分を与える:
【0071】
【表1】
Figure 2004505036
【0072】
活性成分(即ち、13−cis−レチノイン酸)は、均一な混合物が生成するまで、乳糖と混合した。残りの成分は、乳糖混合物と完全に混合し、次に単刻み目の錠剤に打錠した。
【0073】
実施例2:13−cis−レチノイン酸の経口処方
肺気腫の治療に適した13−cis−レチノイン酸のカプセル剤は、表2に与えられる成分を用いて製造することができる:
【0074】
【表2】
Figure 2004505036
【0075】
上記成分は、完全に混合して、硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0076】
実施例3:13−cis−レチノイン酸の吸入処方
【0077】
【表3】
Figure 2004505036
【0078】
13−cis−レチノイン酸は、溶媒を蒸発させることなく、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン中に注意深く溶解し、得られた溶液は、濾過して密閉容器で貯蔵した。得られた溶液及び噴射剤ガスは、表3に示される百分率での分配のため、当業者には既知の方法を用いてエーロゾル缶に導入することができる。1回の噴射当たり100μgと300μgの間の噴出量に設計された計量バルブを利用して、正確な用量の13−cis−レチノイン酸を送達することができる。
【0079】
実施例4:13−cis−レチノイン酸の吸入処方
【0080】
【表4】
Figure 2004505036
【0081】
クレマホール(Cremaphor)RH40は、BASF社から購入することができる。他の乳化剤又は可溶化剤も当業者には既知であり、クレマホールRH40の代わりに水性溶媒に加えることができる。13−cis−レチノイン酸、乳化剤、1,2−プロピレングリコール及び水を一緒に混合して、溶液を形成した。上記液体処方は、例えば、適切な担体ガス(例えば、窒素又は二酸化炭素)を伴う加圧ガスエーロゾルとして使用することができる。
【0082】
実施例5:13−cis−レチノイン酸のEHD処方
【0083】
【表5】
Figure 2004505036
【0084】
13−cis−レチノイン酸、乳化剤、ポリエチレングリコール及び水を一緒に混合して、溶液を形成した。上記液体処方は、当該分野において知られている典型的なEHD装置で使用することができる。
【0085】
実施例6:ラット肺におけるATRAと13−cis−レチノイン酸の比較
全−trans−レチノイン酸(ATRA)及び13−cis−レチノイン酸を、エラスターゼ誘導肺気腫のラットモデルにおける肺胞修復に及ぼすその効果に関して評価した(Massaroら、Nature, 1997, Vol.3, No.6: 675;Massaroら、米国特許第5,998,486号)。ラットはおよそ8匹の処置群に分割した。肺炎症及び肺胞損傷は、オスのスプレーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットにおいて、約2U/グラム体重の膵エラスターゼ(ブタ由来、カルビオケム(Calbiochem))の単回点滴注入法により誘導した。
【0086】
表6に列挙される用量範囲でキャプマル(Capmul)中に調製されたATRA及び13−cis−レチノイン酸で処置したラットは、傷害の21日後から開始して1日1回経口投与した。対照群は、エラスターゼで攻撃して、21日後にビヒクル(キャプマル溶液)で14日間処置した。ラットは最後の投与の24時間後に、深麻酔下で全採血により屠殺した。血液は、全採血時に分析のために回収した。
【0087】
肺は、一定速度(1ml/グラム体重/分)での髄腔内点滴注入により10%中性ホルマリン緩衝液で膨張させた。肺を摘出して、処置前の24時間、固定液に液浸した。肺胞測定は、ラット1匹当たり肺の4つの領域で行った。平均値/処置群は、エラスターゼ+ビヒクル処置群に対して全8匹のラットについて平均面積/ラットを合計することにより求めた。幾つかの場合には、処置群内のラット間の変動が大きすぎて、群平均が統計的に有意にならなかった。標準法を利用して5μmパラフィン切片を調製した。切片は、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。コンピュータ形態計測分析(Computerized Morphometric analysis)を実施して、平均肺胞サイズと肺胞数を求めた。
【0088】
ラット血漿に含まれるトリグリセリドの定量は、契約臨床実験設備において確立した手順を用いて行った。簡単に述べると、血漿トリグリセリドは、トリグリセリド/GPOキット(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)、#1488872)の製造業者により記述された説明書にしたがい、血漿を順にリパーゼ及びグリセロキナーゼで処理することにより、ジヒドロキシアセトンと過酸化水素に変換した。過酸化水素は、ヒタチ911化学分析器(Hitachi 911 Chemistry Analyzer)で比色分析により定量した。ラットでは、正常トリグリセリドレベルは約75mg/dlと約175mg/dlの間である。
【0089】
【表6】
Figure 2004505036
【0090】
* エラスターゼ+ビヒクル対照に対して統計的に有意ではない。
【0091】
結果は、上の表6に示す。トリグリセリド値は、毒性の便利な尺度である。ATRAは一般に、10mg/kgと1mg/kgの間の用量レベルで正常範囲を超えるトリグリセリド値を持つ。0.3mg/kg及び0.1mg/kgの低い用量範囲では、ATRAのトリグリセリド値は、許容しうる範囲内である。対照的に、高(10.0mg/kg)と低(0.001mg/kg)範囲の両方の13−cis−レチノイン酸は、正常範囲内のトリグリセリド値を示す。即ち、13−cis−レチノイン酸のどの用量でも、トリグリセリドレベルは正常範囲内であるが、一方ATRAのトリグリセリドレベルは、低用量のときだけ正常範囲内である。更に、試験したどの用量レベルでも、13−cis−レチノイン酸で観測されたトリグリセリドレベルは、ATRAで観測されたレベルよりも低かった。
【0092】
表6に示される結果は、ATRAと13−cis−レチノイン酸の両方とも、高用量(例えば、10.0mg/kgと1.0mg/kgの間)では実質的な肺胞修復を誘導することを証明している。しかし、0.3mg/kg未満の用量では、ATRAによって果たされる肺胞修復の量は、エラスターゼ処置対照群に対して統計的に有意ではない。対照的に、13−cis−レチノイン酸は、10.0mg/kgから0.01mg/kgという低い用量範囲でも統計的に有意な肺胞修復を果たす。0.001mg/kgの用量のときだけは、13−cis−レチノイン酸によって果たされる肺胞修復の量は、統計的に有意にならない。よって、ATRAは、低用量での肺胞の修復において13−cis−レチノイン酸よりも実質的に有効ではない。即ち、ATRA及び13−cis−レチノイン酸の効力は、高用量では同様であるが、13−cis−レチノイン酸は、ATRAとは違って高用量でもトリグリセリドを上昇させないし、またATRAが無効な低用量でも効果があるため、ATRAよりも相当に安全である。即ち、肺気腫の治療の13−cis−レチノイン酸の治療指数は、ATRA治療の治療指数と比較すると驚くほど有望である。最後に、データはまた、ATRAが、13−cis−レチノイン酸とは違って、トリグリセリドレベルを正常範囲を超えるまでに上昇させない用量レベルでは、統計的に有意な治療効果がないことを示している。
【0093】
実施例7:エラスターゼ処置ラットにおける肺ガス交換量の測定
肺胞損傷患者は、典型的には肺におけるOへのCOの乏しい交換量を示す。この有害な作用を反転させる13−cis RA及びATRAの効力は、ラットエラスターゼモデルにおいて測定した。肺及び動脈血ガスは、エラスターゼ損傷ラット±レチノイド処置において試験の終了まで測定した。ラットをペントバルビタール(50mg/kg、腹腔内)を用いて深麻酔下に置き、気管カニューレ(PE240)を挿入した。ラットは、小動物用呼吸ポンプ(ハーバード(Harvard))を用いて人工呼吸させた(f=90、TV=およそ0.5ml/100g BW)。各ラットについて、ポンプパラメーターを調整することにより、30〜35torrの動脈COレベル(PCO)を確立した。動脈血試料(およそ0.2ml)を腹部大動脈から採血して、直ぐにpHOx血液ガスにより分析した。データは、mmHgとして表7に報告される。
【0094】
レチノイド汎アゴニストでのエラスターゼ損傷ラットの処置は、構造修復に及ぼす作用と一致してガス交換量を改善する。データは、13−cis RAが、エラスターゼ処置ラットにおける血液ガス交換を正常化するのに、ATRAよりも驚くほど有効であることを示している。
【0095】
【表7】
Figure 2004505036
【0096】
上述の本発明の実施態様は、単に例示を目的としており、当業者であれば、日常的な実験操作しか用いずに、本明細書に記載される具体的手順との多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。全てのこのような同等物は、本発明の範囲に入るものと考えられ、請求の範囲に包含される。

Claims (24)

  1. 肺気腫の処置のための、治療活性量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを含むことを特徴とする医薬の製造のための、このような化合物の使用。
  2. 治療活性量が、約0.1μgと約10.0mgの間である、請求項1記載の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの使用。
  3. 肺気腫が、中心小葉性肺気腫又は遠位小葉性肺気腫である、請求項1又は2記載の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの使用。
  4. 医薬が、電気流体力学的エーロゾル装置で投与される、請求項1、2又は3記載の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの使用。
  5. 哺乳動物における肺気腫の治療方法であって、このような治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与することを特徴とする方法。
  6. 13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの治療上有効量が、約0.1μgと約10.0mgの間である、請求項5記載の方法。
  7. 治療上有効量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグが、哺乳動物において肺胞を修復する、請求項5記載の方法。
  8. 肺気腫が、汎小葉性肺気腫、中心小葉性肺気腫又は遠位小葉性肺気腫である、請求項5記載の方法。
  9. 治療上有効量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグが、電気流体力学的エーロゾル装置で投与される、請求項5記載の方法。
  10. 肺気腫の1つの症候を軽減するのに充分である量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及び薬剤学的に許容しうる担体を含むことを特徴とする、肺気腫に罹患した哺乳動物を治療するのに適した薬剤組成物。
  11. 薬剤学的に許容しうる担体が、電気流体力学的エーロゾル装置、エーロゾル装置又はネブライザー装置に適している、請求項10記載の薬剤組成物。
  12. 13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの量が、約0.1μgと約10.0mgの間である、請求項10記載の薬剤組成物。
  13. 薬剤学的に許容しうる担体が、液体である、請求項11記載の薬剤組成物。
  14. 薬剤学的に許容しうる担体が、水、アルコール、ポリエチレングリコール及びペルフルオロカーボンよりなる群から選択される、請求項13記載の薬剤組成物。
  15. 13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの量が、約1.0μgと約100.0μgの間である、請求項13記載の薬剤組成物。
  16. 13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの処方を哺乳動物の肺に送達することを特徴とする、肺気腫及び関連障害の治療方法。
  17. 肺気腫が、汎小葉性肺気腫、中心小葉性肺気腫又は遠位小葉性肺気腫である、請求項16記載の方法。
  18. 処方が、ネブライザー装置で哺乳動物の肺に送達される、請求項16記載の方法。
  19. 処方が、エーロゾル装置で哺乳動物の肺に送達される、請求項16記載の方法。
  20. 処方が、電気流体力学的エーロゾル装置で哺乳動物の肺に送達される、請求項16記載の方法。
  21. 13−cis−レチノイン酸の使用と、1つ以上の追加の治療法を組合せることを特徴とする、肺気腫の治療方法。
  22. 追加の治療法が、禁煙、気管支拡張薬、抗生物質及び酸素療法よりなる群から選択される、請求項21記載の方法。
  23. 肺気腫のリスクのあるヒトにおける肺気腫の予防方法であって、肺気腫を予防するのに充分である量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグをヒトに投与することを特徴とする方法。
  24. 肺気腫のリスクのあるヒトにおける肺気腫を予防するのに適した薬剤組成物であって、肺気腫を予防するのに充分である量の13−cis−レチノイン酸、又はその薬剤学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグ及び薬剤学的に許容しうる担体を含むことを特徴とする組成物。
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