JPWO2006025395A1 - キャリアフリーの細胞増殖因子を用いた慢性閉塞性肺疾患に対する医薬および処置システム - Google Patents

キャリアフリーの細胞増殖因子を用いた慢性閉塞性肺疾患に対する医薬および処置システム Download PDF

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Abstract

肺疾患の根本的治療を行うこと。本発明は、キャリアフリーの細胞増殖因子を含む、肺疾患の処置のための医薬組成物を提供する。本発明はさらに、肺組織の予防または処置のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システムを提供する。本発明はまた、肺組織の処置のための物質をスクリーニングする方法であって、上記方法は以下の工程:A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;B)候補化合物を上記肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;およびC)上記被検体が治癒した場合、上記候補化合物は上記肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定する工程;を包含する、方法を提供する。

Description

本発明は、肺疾患の処置に関する。より詳細には、本発明は、肺気腫などの肺疾患に対するキャリアフリーの処置システムに関する。さらに具体的にいえば、本発明は、肺気腫、慢性気管支炎などの肺疾患により破壊された肺胞、血管系などを含む肺組織に対するキャリアフリーの医薬および処置システムに関する。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界の死亡原因の第4位にランクされる病気であるにもかかわらず、気付かないまま重症に陥る患者が多く、21世紀の重大な健康問題となっている。米国では、COPDによる死亡率は年齢とともに高まり、45歳以上の死亡原因においては、年齢層にもよるが第4位または第5位となっている。1965年から1998年の間に、他の疾患による死亡率は減少しているのに対し、COPDによる死亡率だけが著しく増加しており、その根本的解決が熱望されている。
COPDは近年患者数が増加しており、今後更に患者の増加が見込まれる疾患である。現状において治療方法は存在せず、社会的医療費の負担も大きい。本疾患は不可逆的な呼吸の気流制限により特徴付けられる病的状態である。気流制限は、通常進行性で、吸入された有害なガスの量や種類により程度は異なる。気流制限は吸入ガスに反応した末梢気道の炎症反応により生じる肺実質の破壊により起こる。世界保健機構と世界銀行が行った調査によると1990年の世界有病率は、人口千人当たり男性9.34人、女性7.33人である。現在増加傾向にあり1990年の死因の第6位から、2020年には第3位に上昇する予測である。日本においても、現在約5万人がこの疾患により在宅酸素療法を受けている。患者数は1996年の厚生省の統計では、22万人とされていたが、2001年に発表された肺疾患疫学調査研究会が行った調査によると、COPD患者の推定数は、日本において530万人である。また、COPDの有病率は40歳以上の8.5%と、世界的な水準に達している。これまで日本ではCOPDは少ないと考えられていたが、実際には多くの患者がいるにもかかわらず、診断を受けていないだけであり、実際の患者数に鑑みれば、その根本的治療に対する要望はますます高まっているといえる。
COPDとは、息をするときに空気の通り道となる「気道」に障害が起こって、ゆっくりと呼吸機能が低下する疾患である。COPDには、「肺気腫」、「慢性気管支炎」、「肺線維症」などが包含される。
肺気腫は、ありふれた症状で始まり、ゆっくりと進行するため、異常を感じて受診したときには重症に陥っている場合が多い「肺の生活習慣病」であるといえる。肺気腫は、重症になると息苦しさのために行動の自由が奪われたり、全身に障害があらわれるなど、たいへんな苦しみをともなう疾患であり、根本的治療の他、生活の質の改善という観点からの治療も待ち望まれている。
肺気腫などの肺疾患に対する治療は、現在対症療法および生活改善などの受動的手法しかなく、積極的にまたは根本的に治癒させる方法はまだない。例えば、喫煙などの肺気腫リスクの高い生活習慣を断つことなどが推奨されている。このほか、呼吸を楽にする薬物治療、リハビリテーション、酸素療法といった対症治療が行われている。呼吸器感染症を防ぐためのワクチン接種、合併症の治療なども行われている。最重症患者には、条件が揃えば外科手術が検討される場合もあるが、これも、根本的治療には程遠い。なぜなら、いずれの治療法でも生きた肺細胞が再生しているというわけではないから、肺機能は低いままであるからである。
このように、肺気腫は治療法として現在のところ有効なものはなく、この疾患の進行を有効に遅らせる手立てもないのが現状である。上述のように、今日においても、行われている治療は酸素吸入、対外式陽圧換気などの対症療法が行われているのみである。上述したように、場合によっては外科的に病変部の切除も試みられているが、長期予後に改善は認めないとの報告が多い。また薬剤としても気管支拡張剤、去痰剤などの投与が行われているが、効果は限定的である。このような気管支拡張剤として使用されるβ2−刺激薬、抗コリン薬等の気管支拡張作用を有する薬剤は、肺気腫の特徴であり、また臨床的にも最も重要な指標である「肺機能の低下」を長期に亘って改善する効果を有していない。
強力なサイトカイン産生抑制作用を有する薬剤であるステロイドを吸入剤として使用した場合の治療効果について複数の大規模臨床試験で検討されたが、ステロイドは肺機能の低下を長期に亘って改善できないとの報告もなされている(非特許文献1=Pauwels RA,et al.,N.Engl.J.Med.,l999(340),1948−1953;非特許文献2=Vestbo J,et al.,Lancet,1999(353),1819−1823;非特許文献3=Burge PS,et al.,TK,BMJ,2000(320),1297−1303参照)。
活性酸素産生抑制作用を有する薬剤の肺気腫への治療効果に関しては、信頼出来る臨床試験で未だ検討されていない。
N−アセチルシステインは、活性酸素産生抑制剤と同様の作用機序を有すると考えられる抗酸化剤であるけれども、このN−アセチルシステインは、その臨床試験において肺気腫の急性増悪の頻度を減少させ得ることが報告されている(非特許文献4=C.Stey,J.et al.,2000(16),253−262)。しかしながら、N−アセチルシステインは肺機能の低下を改善するとは記載されておらず、肺組織の再生については効果が無いと考えられる。
また、ホスホジエステラーゼIV阻害作用を有する薬剤を肺気腫の治療薬として用いることの検討がなされている。しかしながら、ホスホジエステラーゼIV阻害作用を有する薬剤は、吐き気、嘔吐、胃酸分泌作用等の副作用を有していることが報告されている(非特許文献5=Peter J.et al.,Engl.J.Med.,2000(343)No.4,269−280)。
細胞増殖因子前駆物質であるレチノイン酸および細胞間質金属結合蛋白阻害剤による肺気腫の組織再生を試みる報告(レチノイン酸(特許文献1=WO01/068081;非特許文献6=Massaro GF,Massado D,Nat.Med.1997,No,3,675−677)、マトリクスメタロプロテイナーゼ(非特許文献7=Selman M.et al.,Chest,2003,123,1633−1641))もあるが、現段階では動物実験の段階であり、まだこれからさまざまの検討がなされる必要性がある。
細胞増殖因子を投与して疾患を治癒させる試みは、いくつか行われている。しかし、細胞増殖因子は、安定性が悪く、投与することが困難であることから、複合体として投与されている(非特許文献9、10、11など)。特に、細胞増殖因子を水溶液として体内に投与する場合は、すぐに活性が低下してしまうことが観察されていることから、水溶液での投与は好ましくないと考えられてきた。
そこで、現在では、種々の増殖因子(例えば、上皮増殖細胞(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−β、骨形成タンパク質(BMP)類、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF))の送達には、ゼラチン、PEG縫合糸、PVAスポンジ、アルギネート、CMCゲル、フィブリン、キトサン−PLLAスキャフォールド、コラーゲンスポンジ、PLA、CaPチタンメッシュ、PLGスキャフォールド、ポリオキサマー、ヘパリン−アルギネート、EVAcマイクロスフェア、ヒドロゲルなどのキャリアが使用されている(非特許文献9、10、11、12)。
しかし、ゼラチンなどのキャリアとともに細胞増殖因子を投与すると、そのキャリアの副作用により、有害な反応が生体に起きる可能性がある。ゼラチンは、アレルギー反応などを起こすことが知られていることもあり、その汎用性は低い。他のキャリアにしても、アレルギー反応などの有害反応から完全に逃れられるとはいえない。特に、ゼラチンは、ウシの骨髄から調製されており、近年問題となっているウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy)の発生の危険を払拭しきれない。また、ゼラチンとして他の供給源を使用することは工業的には困難であり、ウシの骨髄から調製されるゼラチンを使用しないような投与方法の開発が望まれる。
従って、キャリアなしの形態で細胞増殖因子を投与することが好ましい。
しかし、上述のように、キャリアなしでの投与は、一般に、効果が持続せず、所望の治療または予防効果が現れないことが多いことから、細胞増殖因子の外的投与は行き詰まりを見せている。
WO01/068081 Pauwels RA,et al.,N.Engl.J.Med.,l999(340),1948−1953 Vestbo J,et al.,Lancet,1999(353),1819−1823 Burge PS,et al.,TK,BMJ,2000(320),1297−1303 C.Stey,J.et al.,2000(16),253−262 Peter J.et al.,Engl.J.Med.,2000(343)No.4,269−280 Massaro GF,Massado D,Nat.Med.1997,No,3,675−677 Selman M.et al.,Chest,2003,123,1633−1641 Lazarous DF et al.,Circulation 1995,91,145−153 Chen RR,et al.,Pharmaceutical Research,Vol.20,No.8,1103−1111、2003 Tabata Y., Tissue Engineering,Vol.9,Suppl.1, S5−S15,2003 Kushibiki T. and Tabata Y.,Current Druf Delivery,1,151−163,Jan.,2004 Ueda H.,et al.,J.of Controlled Release,88, 55−64,2003
肺気腫は、COPDの患者では、肺胞が破壊され、肺胞内圧が上昇し、肺血流の悪化(VQミスマッチ)を招く。
現在では不可能と考えられているが、もしも破壊された肺胞の再生を誘導することができれば、根本的な治療になると考えられる。既に、分化能力の高い骨髄由来細胞を用いた実験的治療が試みられている。しかし成人において一度壊れた肺胞の構造的、組織学的再生は難しく、組織学的に肺胞を再生した論文報告をレビュー的に再検討した論文ではこれらの論文の方法では肺胞の組織学的再生が得られないとの報告もある。
このような中、COPDの根本的治癒を図るための治療方法および医薬の開発が本発明の課題である。本発明はまた、肺組織を再生させるための方法および組成物を開発することも課題とする。
また、本発明は特に、生体に負担をかけずにCOPDなどを治癒させるまたは症状の軽減を行うことができる組成物を開発することも課題とする。
また、上記のような肺処置のためには、正確に薬剤を肺に投与でき、他の部位には投与されないようなシステムまたはデバイスを使用することが必要であり、このようなシステムまたはデバイスの提供もまた本発明の課題の一つである。
上記課題は、本発明者らが鋭意開発した結果、キャリアフリーの細胞増殖因子(例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子=bFGF)を効果的に肺組織に投与することによって、予想外に細胞増殖因子が肺にとどまり、治療効果を発揮し、結果として、肺組織における細胞の再生が促進されること、および肺線維症の処置後の状態または肺気腫の機能的改善により、肺線維症の処置後の状態または肺気腫の根本的処置が可能になったことによって解決された。
肺線維症の処置後の状態または肺気腫のもう一つの治療的方法として、キャリアフリーの細胞増殖因子を用いて肺組織の再生を誘導させ、VQミスマッチが改善されて、肺胞内圧の改善が引き起こされると考えられる。例えば、血管を新しく作り出す血管新生増殖因子を用いて血管新生を促せば、肺動脈圧は低下する。これは肺内の換気血流比を改善させ、ひいては換気効率の改善をもたらす。
本発明では、キャリアフリーの細胞増殖因子を肺線維症の処置後の状態または肺気腫の病変部位に安全に運搬し、そこにおいて破壊された肺胞、肺内微小毛細血管などの肺組織の修復を行う。それによって肺線維症の処置後の状態または肺気腫の治療を行う。
キャリアフリーの血管新生増殖因子の適切な投与は血管新生により病変部における血流増加を導き、肺組織の再生の鍵となる細胞をその部位に誘導することにつながる。増加した血流により再生に必要となる液性因子を破壊された肺組織に供給し、その結果として肺胞の再生を促進する。このように壊れた肺胞構造の組織学的再生を促進し肺線維症の処置後の状態または肺気腫の症状を改善させることが可能となると考えられる。
このような血管新生増殖因子の例としては、血管新生増殖因子の例としては、
塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)
肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)
他の塩基性線維芽細胞増殖因子
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)
血小板由来増殖因子(PDGF)
トランスホーミング増殖因子(TGF)
アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリンなどの細胞増殖因子
インターロイキン、ケモカインなどの生理活性タンパク質およびペプチド
プロスタグランジンなどの生理活性低分子物質
などが現在知られている。これらの細胞増殖因子は、本発明において、キャリアフリーで、特に水溶液で肺に投与することによって肺線維症の処置後の状態または肺気腫などの肺疾患の症状を改善するという効果が確認された。また、血管新生を促す作用をもつ薬物あるいは体内で血管新生因子の生産、分泌を高める作用をもつ薬物も同様に利用可能と考えられている。これらキャリアフリーの細胞増殖因子を効率的に肺組織の投与する方法が本発明に示される経気道的投与法である。
経気道的投与法とは、口腔、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、末梢細気管支などの外界から肺実質までの通路を使用し、薬物やタンパク質の投与を行うことであり、気管瘻孔や気管支瘻孔を有する症例では、そこからの投与も含まれる。
本発明では、塩基性線維芽細胞増殖因子などの細胞増殖因子は、キャリアフリーの形態として、水溶液またはドライパウダーを気管支鏡またはネブライザーや気化器など使い経気道的に細胞増殖因子を病変部に投与する。本発明では、キャリアフリーの細胞増殖因子を、気管支鏡を用いて直接に病変部に投与することができる。吸入による投与は、細胞増殖因子を、水溶液にするかラクトースまたはデンプン等の適当な粉末基剤とともに、ネブライザーからエアーゾルスプレイの形状で肺に輸送することにより投与を行うことができる。本発明製剤中の細胞増殖因子のうち塩基性線維芽細胞増殖因子の用量は、疾患の重篤度、患者の年齢、体重等により適宜調製することができるが、通常成人患者当たり約0.01〜約500μgの範囲、好ましくは、約0.1〜約200μgの範囲から投与量が選択される。また1回の投与で効果が不十分であった場合は、該投与を複数回行うことも可能である。
さらに、かなり進行した疾患に罹患する患者では、手術でも死亡率が高く、LVRSは、重篤な患者には適していない。非侵襲性の処置が重篤な肺気腫患者に所望されている。気管支鏡による肺容積減少(BLVR)は、安全でそれほど侵襲性ではない重篤な肺気腫の処置として実施され得る。BLVRの原理は、過剰膨脹した肺のほとんどの罹患部分の縮小および健常な部分の組織の拡大である。線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)は、線維形成を増強し血管新生を増強すると報告されており、肺の発達および分岐の形態形成において重要な役割を果たしているとされている。重篤な肺気腫は、微小血管における異常をもたらし、虚血性の肺実質の変化をもたらす(Nationalemphysema treatment trial research group. A randomized trial comparinglung-volume-reduction surgery with medical therapy for severe emphysema. N EnglJ Med 2003; 348: 2059-2073.)。側方の肺血管網の誘導は、呼吸困難、全身倦怠感および他の肺気腫の症状の有効な治療を提供する強力な方法である。本発明者らは、FGF-2のようなサイトカインを用いたBLVRが線維形成およびFGF-2のようなサイトカイン血管新生により血流の改善を伴う肺の容積減少を達成していると考え、これらの変化が肺機能の回復をもたらすと考えた。本発明の目的は、FGF-2のようなサイトカインを用いたBLVRが重篤な肺気腫に罹患するビーグル犬において用いることによって安全性を確保し、肺容積の減少能力を持ち、肺機能の回復を行うことができる処置システムを提供することに成功した。
従って、本発明は、以下を提供する。
(1)キャリアフリーの細胞増殖因子を含む、肺疾患の処置のための医薬組成物。
(2)上記肺疾患は、肺組織の破壊を伴う、項目1に記載の医薬組成物。
(3)上記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、項目1に記載の医薬組成物。
(4)上記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、項目1に記載の医薬組成物。
(5)上記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、項目1に記載の組成物。
(6)上記細胞増殖因子は、bFGFである、項目1に記載の組成物。
(7)上記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含むbFGFまたはその改変体である、項目1に記載の医薬組成物。
(8)上記細胞増殖因子は、ドライパウダー形態または水溶液の形態で提供される、項目1に記載の医薬組成物。
(9)上記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(10)肺組織の予防または処置のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システム。
(11)上記細胞増殖因子は、ドライパウダーまたは水溶液の形態で存在する、項目10に記載のシステム。
(12)上記肺投与のための手段は、吸入装置または気管支鏡を含む、項目10に記載のシステム。
(13)上記肺投与のための手段は、肺への選択的投与を可能にする、項目10に記載のシステム。
(14)上記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、項目10に記載のシステム。
(15)上記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、プケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、項目10に記載のシステム。
(16)上記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、項目10に記載のシステム。
(17)上記細胞増殖因子は、bFGFである、項目10に記載のシステム。
(18)上記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示す配列を含むbFGFまたはその改変体である、項目10に記載のシステム。
(19)上記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、項目10に記載のシステム。
(20)キャリアフリーの細胞増殖因子を含む、肺組織の再生のための医薬組成物。
(21)上記細胞増殖因子は、肺細胞の増殖に有効な濃度で存在する、項目20に記載の医薬組成物。
(22)上記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、項目20に記載の医薬組成物。
(23)上記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、項目20に記載の医薬組成物。
(24)上記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、項目20に記載の医薬組成物。
(25)上記細胞増殖因子は、bFGFである、項目20に記載の医薬組成物。
(26)上記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示す配列を含むbFGFまたはその改変体である、項目20に記載の医薬組成物。
(27)上記細胞増殖因子は、ドライパウダー形態または水溶液の形態で提供される、項目20に記載の医薬組成物。
(28)上記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、項目20に記載の医薬組成物。
(29)肺組織の再生のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システム。
(30)上記細胞増殖因子は、ドライパウダーまたは水溶液の形態で存在する、項目29に記載のシステム。
(31)上記肺投与のための手段は、吸入装置または気管支鏡を含む、項目29に記載のシステム。
(32)上記肺投与のための手段は、肺への選択的投与を可能にする、項目29に記載のシステム。
(33)上記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、項目29に記載のシステム。
(34)上記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、項目29に記載のシステム。
(35)上記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、項目29に記載のシステム。
(36)上記細胞増殖因子は、bFGFである、項目29に記載のシステム。
(37)上記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示す配列を含むbFGFまたはその改変体である、項目29に記載のシステム。
(38)上記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、項目29に記載のシステム。
(39)肺組織を処置するための方法であって、
(a)キャリアフリーの細胞増殖因子を、処置されるべき肺組織に投与する工程、
を包含する、方法。
(40)上記細胞増殖因子は、肺組織に選択的に投与される、項目39に記載の方法。
(41)上記細胞増殖因子は、肺組織以外には実質的に投与されない、項目39に記載の方法。
(42)肺組織を再生するための方法であって、
(a)キャリアフリーの細胞増殖因子を、肺組織に投与する工程、
を包含する、方法。
(43)上記細胞増殖因子は、肺組織に選択的に投与される、項目42に記載の方法。
(44)上記細胞増殖因子は、肺組織以外には実質的に投与されない、項目42に記載の方法。
(45)肺組織の処置のための物質をスクリーニングする方法であって、上記方法は以下の工程:
A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;
B)候補化合物を、上記肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;および
C)上記被検体が治癒した場合、上記候補化合物は上記肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定する工程;
を包含する、方法。
(46)上記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、項目45に記載の方法。
(47)上記候補化合物は、タンパク質、核酸、脂質、糖、有機低分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目45に記載の方法。
(48)上記候補化合物は、細胞増殖因子を含む、項目45に記載の方法。
(49)肺組織の処置のための物質をスクリーニングするためのシステムであって、上記システムは、以下:
A)肺投与に適した肺投与システム;および
B)候補化合物を投与して被検体が治癒した場合、上記候補化合物は上記肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定するための手段、
を備える、システム。
(50)上記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、項目49に記載のシステム。
(51)上記判定手段は、肺組織の治癒に関する既知情報が格納された記録媒体をさらに備える、項目49に記載のシステム。
(52)肺組織の再生のための物質をスクリーニングする方法であって、上記方法は以下の工程:
A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;
B)候補化合物を、上記肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;および
C)上記被検体において肺細胞が再生した場合、上記候補化合物は上記肺組織の再生のための物質であることの指標であると判定する工程;
を包含する、方法。
(53)上記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、項目52に記載の方法。
(54)上記候補化合物は、タンパク質、核酸、脂質、糖、有機低分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目52に記載の方法。
(55)上記候補化合物は、細胞増殖因子を含む、項目52に記載の方法。
(56)肺組織の再生のための物質をスクリーニングするためのシステムであって、上記システムは、以下:
A)肺投与に適した肺投与システム;および
B)候補化合物を投与して被検体における肺細胞が再生した場合、上記候補化合物は上記肺組織の再生のための物質であることの指標であると判定するための手段、
を備える、システム。
(57)上記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、項目52に記載のシステム。
(58)上記判定手段は、肺組織の再生に関する既知情報が格納された記録媒体をさらに備える、項目52に記載のシステム。
(59)細胞増殖因子の、肺疾患の処置のための医薬組成物の調製における使用。
(60)細胞増殖因子の、肺組織の再生のための医薬組成物の調製における使用。
(61)肺投与システムの、肺組織の処置のための医薬組成物のスクリーニングにおける使用。
(62)肺投与システムの、肺組織の再生のための医薬組成物のスクリーニングにおける使用。
(63)肺疾患の処置のデバイスであって、
A)キャリアフリーの薬剤を患者に供給するための投与手段、
を含む、デバイス。
(64)上記デバイスは、
近位端と、遠位端と、薬剤供給容器との連通のための薬剤チャネルと、圧縮空気供給器との連通のための圧縮空気チャネルとを有するカテーテル管;
上記カテーテルの遠位端に配置される噴射オリフィス;
を備え、
上記カテーテル内において、上記薬剤供給源から提供される薬剤が、上記圧縮空気チャネルを通って提供される圧縮空気と混合され、その結果、上記噴射オリフィスにおいて、上記薬剤が噴霧される、項目63に記載のデバイス。
このデバイスは、経口的に直接投与するデバイスとカテーテルにより経気道的または経口的に直接投与する。このデバイスは、肺投与システムまたは吸入装置とは、広義の吸入相地を、薬剤(例えば、bFGF)の使用のための一方弁とその自動開閉システムを含む。ここで、この装置は、例えば、ウルトラネブライザーを含む薬剤霧発生装置、一方弁(デマンドバルブ=吸気信号でONとなり、呼気信号でOFFとなるデマンドバルブ)およびマウスピースを備えることによって、家庭用の仕様とすることができる。
(65)キャリアフリーの細胞増殖因子を含む薬剤供給容器をさらに備える、項目63に記載のデバイス。
(66)圧縮空気供給器をさらに備える、項目63に記載のデバイス。
(67)上記薬剤は、水溶液として存在する、項目65に記載のデバイス。
(68)上記デバイスは、気管支鏡に装着されるように構成される、項目63に記載のデバイス。
(69)上記薬剤は、細胞増殖因子を含む、項目63に記載のデバイス。
(70)項目63〜69のいずれか1項に記載のデバイスと、気管支鏡とを備える、細胞増殖因子の投与システム。
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
本発明により、従来、ゼラチンなどのキャリアを用いた複雑なDDSシステムを使用しない限り治癒が困難とされていた、種々の肺疾患を治療することが可能になった。特に、不治の病とされていたCOPDを、水溶液などのキャリアフリーの組成物を使用することで治療することが可能になった。また、本発明により、肺の再生が可能になった。このように、塩基性繊維芽細胞増殖因子などの細胞増殖因子による治療システムの確立により、これまで有効な治療がなく現在も増え続けているCOPDに対し治療効果が期待できる。COPDによりひきおこされる諸症状の緩和、改善策が検討可能となる。
図1は、bFGF水溶液と、bFGFゼラチン粒子液の気道投与後の比較を示す。ひし形は、ゼラチン粒子液であり、白抜き四角は、水溶液である。この値は、表2に対応する。図1の下には、これを対数表示した図を示す。 エラスターゼ40mg投与の場合の、重度肺気腫モデルの写真を示す。左は、×40倍、右は、×100の拡大写真を示す。 図3は、重度の肺気腫モデル犬に対するβ−FGF投与前後のCT所見を示す。 図4は、bFGF水溶液投与群と、非投与群とを比較した、治療効果を示す(肺気量評価)。左から、正常犬、肺気腫犬、および治療後を示す。おのおのの群には、左側に非投与および右側に投与の群を示す。 図5は、bFGFゼラチン粒子液投与群と、非投与群とを比較した、治療効果を示す(肺気量評価)。左から、正常犬、肺気腫犬、および治療後を示す。おのおのの群には、左側に非投与および右側に投与の群を示す。 図6は、bFGF水溶液投与群および非投与群の治療効果を示す。ここでは、血液ガス分析評価を示す。ひし形はbFGF投与群を示し、四角は、非投与群を示す。 図7は、肺気腫モデルに対するbFGF水溶液の治療効果として肺容積の測定結果を示す。 図8は、肺気腫モデルに対するbFGFゼラチン粒子液の治療効果として肺容積の測定結果を示す。 図9は、肺気腫モデルに対するbFGF水溶液の治療効果として肺胞の平均の大きさを示す。 図10は、肺気腫モデルに対するbFGFゼラチン粒子液の治療効果として肺胞の平均の大きさを示す。 図11は、エラスターゼを用いた場合の実験モデルを示す。左パネルでは、右肺を正常肺と考え、左肺を疾患モデルと考えることができる。 図12は、エラスターゼ処理の前後、および塩基性線維芽細胞増殖因子での処置の後の左右肺のモデル図を示す。 図13は、正常犬における肺気量の分布を示す。 図14は、エラスターゼ投与群(40mgおよび80mg投与)における肺気量の分布を正常犬と対比して示す。 図15は、正常犬の同一個体における筋弛緩薬(マスキュラックス)による肺気量に対する影響を見たグラフである。 図16は、エラスターゼ投与量(なし=正常、40mg、80mg、および180mg)と肺気量 ( P40 cmH2O )との相関性を示す図である。 図17は、上段において、塩基性線維芽細胞増殖因子の水溶液で処置した肺と非処置肺とを比較した図である(左が非処置群、右が処置群)。下段において、同じモデル(左右が対応する)の組織顕微鏡写真を示す。組織は、ヘマトキシリンエオジン染色で染色した。 図18は、bFGF水溶液投与群と非投与群との治療効果の対比を血液ガス分析によって示す図である。 図19は、bFGF水溶液投与群と非投与群との治療効果の対比を肺気量評価によって示す図である。 図20は、肺気腫モデルに対するFGF水溶液の治療効果を、肺容積で見た結果である。 図21は、肺気腫モデルに対するFGF水溶液の治療効果を、平均肺胞数で見た結果である。 図22は、正常犬(左)およびエラスターゼ処理した犬(右)の肺のMRI写真である。 図23は、正常犬(左)およびエラスターゼ処理した犬を塩基性線維芽細胞増殖因子で処置したもの(右)の肺のMRI写真である。 図24は、図22の肺の連続写真を、示される秒数の時刻で示したものおよび面積をプロットしたものを示す。 図25は、図23のうち、塩基性線維芽細胞増殖因子で処置したものの肺の連続写真を、示される秒数の時刻で示したものおよび面積をプロットしたものを示す。 図25Aは、実施例8の動脈血O2分圧(PaO2)のデータを示す。 図25Bは気管支内腔を、異なる圧力(5〜70cmH2O)で膨脹させたときの呼気容量を示す。 図25Cは、実施例8にわたるFGF-2の肺容積のサイズに対する効果のまとめを示す。 図25Dは、生検において、エラスターゼによって生じる組織破壊には、生理的な変化が伴い、ガス交換について利用可能な表面積が顕著に減少したことを示す。 図26は、本発明の投与デバイス例である。右下には、薬剤(bFGFなど)の量および濃度を規定した粉末(bFGFなどの粉末)および溶解液別容器の例を示す。 図27Aは、電気回路を用いて制御する場合の本発明の投与デバイスの模式図(先止め)を示す。 図27Bは、電気回路を用いて制御する場合の本発明の投与デバイスの模式図(後止め)を示す。 図28は、カテーテルの近位末端における細部の説明を示す。 図29Aは、カテーテルの遠位端の拡大図(先止め)である。 図29Bは、カテーテルの遠位端の拡大図(後止め)である。 本発明のデバイスの全体構成例である。 本発明のデバイスの家庭用の仕様例である。
配列表の説明
配列番号1は、塩基性線維芽細胞増殖因子の核酸配列である。
配列番号2は、塩基性線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列である。
配列番号3は、短い塩基性線維芽細胞増殖因子の核酸配列である。
配列番号4は、短い塩基性線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列である。
配列番号5は、酸性線維芽細胞増殖因子の核酸配列である。
配列番号6は、酸性線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列である。
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(定義)
(疾患)
本明細書において「肺疾患」とは、肺に障害を与える任意の疾患を言う。
本明細書において「慢性閉塞性肺疾患」または「COPD」(Chronic(慢性) Obstructive(閉塞性) Pulmonary(肺) Disease(疾患)の略)とは、交換可能に使用され、肺への空気の出し入れが慢性的に悪くなり、ゆっくりと悪化していく疾患を総称して言う。これまで「慢性気管支炎」「肺気腫」と言われてきたものが実質的にすべて含まれる。COPDの症状としては、例えば、かぜでもないのにセキやタンが毎日のように続く症状、階段の上り下りなど体を動かしたときに息切れを感じる症状などが挙げられる。セキおよびタンがないのに同年代の人と同じペースで歩くのがつらくなって、息切れに気付く人もいるといわれる。ありふれた症状であるため、加齢によるものと勘違いされやすいが、セキ、タンおよび息切れなどが継続して出現しているなどの慢性的症状が特徴である。
COPDは、従来「慢性気管支炎」とされてきた気管支および細気管支の病変と、「肺気腫」とされてきた肺胞の病変とに大きく分類される。ほとんどの患者では、2つのタイプの病変が重なってみられる。慢性気管支炎であっても、必ずしもセキおよびタンが多くない場合もあることから、最近は「気道病変タイプ」と呼ぶようになっているが、本発明の治療対象にすべて含まれることが理解される。
気道病変タイプは、気道の表面が炎症を起こし、粘液の分泌が多くなる場合がほとんどといわれる。また、気道の壁が厚くなって気道が狭くなり、空気の通りが悪くことも多い。
肺気腫タイプは、慢性の炎症によって肺胞が破壊および融合し、肺に空気がたまって膨れ上がった状態になっているものをいう。肺の弾力がなくなって空気を出し入れがしにくくなるうえに、膨れ上がった肺組織が気道を押しつぶすため、空気の通りが悪くなる。
本明細書においては、これらの2つのタイプもいずれであっても、肺における細胞が崩壊しており、肺内の細胞を再生させること以外に、根本的治療が考えられない。本発明は、このような根本的治療を史上初めて提供したという点は特筆に価する。
COPDの診断は以下の通りに行う。
COPDの診断は、スパイロメーターという器械を使った簡単な呼吸機能検査(スパイロ検査)によって行う。スパイロ検査は、肺活量と、息を吐くときの空気の通りやすさを調べる検査である。
スパイロ検査で「努力肺活量(FVC:思い切り息を吸ってから強く吐き出したときの息の量)」と「1秒量(FEV1.0:最初の1秒間で吐き出せる息の量)」を測定し、FEV1.0値をFVC値で割った「1秒率(FEV1.0%)」の値が70%未満の場合、COPDの可能性がありとする。症状や喫煙の状況、生活環境、これまでかかった病気などを問診によってチェックし、必要に応じてほかの検査(その他の検査;例えば、他の呼吸器病の可能性がないか調べるための、胸部X線、CTなどの画像診断。体が酸 素不足になっていないか調べる血液ガス測定なども、行うことができる。これは、動脈から採血した血液を使ったり、パルスオキシメーターという小さな装置を指先につけて測定する。かぜなどの症状がある場合には、尿検査や血液検査、血圧測定など、全身状態を調べるための検査も必要に応じて行う)を行ったうえで、COPDの診断を行う。
1秒率(FEV1.0%)=1秒量/努力肺活量×100<70%
の場合、COPDと判断することができる。
COPDの重症度
COPD治療は、疾患の重症度に応じて行うことが好ましいことから、COPDの重症度を必要に応じて決定する。COPDの重症度は、スパイロ検査によってわかる%1秒量(%FEV1.0)に基づいて分類される。
(生化学)
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーおよびその改変体をいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得るものを包含する。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の組成物において使用される場合は、「タンパク質」は、その組成物が使用されるべき宿主において適合性のあるタンパク質であることが好ましいが、その宿主において適合するように処置され得る限り、どのようなタンパク質を用いてもよい。あるタンパク質が宿主に適合性があるかどうか、または宿主において適合するように処置され得るかどうかは、そのタンパク質をその宿主に移植して、必要に応じて免疫拒絶反応などの副反応を抑制することによりその宿主に定着するかどうかを観察することによって、判定することができる。代表的には、上述の適合性があるようなタンパク質としては、その宿主に由来するタンパク質を挙げることができるがそれに限定されない。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本発明において使用される生体分子は、生体から採取され得るほか、当業者に公知の方法によっ化学的に合成され得る。例えば、タンパク質であれば、自動固相ペプチド合成機を用いた合成方法は、以下により記載される:Stewart,J.M.et al.(1984).Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.;Grant,G.A.(1992).Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman;Bodanszky,M.(1993).Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Bodanszky,M.et al.(1994).The Practice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Fields,G.B.(1997).Phase Peptide Synthesis,Academic Press;Pennington,M.W.et al.(1994).Peptide Synthesis Protocols,Humana Press;Fields,G.B.(1997).Solid−Phase Peptide Synthesis,Academic Press。その他の分子もまた、当該分野において周知の技術を用いて合成することができる。
本明細書において生体分子(例えば、bFGFなどをコードする核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、比較可能な配列を有する場合、2以上の配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの配列の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の配列が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの配列を直接比較する場合、その配列間で配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、生体分子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。本発明では、このように同一性が高いものまたは類似性が高いものもまた、有用であり得る。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。あるいは、同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST2.2.9(2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
本明細書において使用される「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
本明細書において使用される「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
本明細書において使用される「アミノ酸改変体」とは、天然のアミノ酸ではないが、天然のアミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸改変体としては、例えば、フェニルアラニンのベンジル側鎖(パラ位、メタ位、オルト位など)にアルキル基、ハロ基、ニトロ基などが結合したもの、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。本発明では、アミノ酸改変体は、非天然アミノ酸およびアミノ酸模倣物を包含することがあることが理解される。
本明細書において使用される「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB BiochemicaLNomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギン又はアスパラギン酸
Glx グルタミン又はグルタミン酸
Xaa 不明又は他のアミノ酸。
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニン又はアデニンプリン
y チミン/ウラシル又はシトシンピリミジン
m アデニン又はシトシンアミノ基
k グアニン又はチミン/ウラシルケト基
s グアニン又はシトシン
w アデニン又はチミン/ウラシル
b グアニン又はシトシン又はチミン/ウラシル
d アデニン又はグアニン又はチミン/ウラシル
h アデニン又はシトシン又はチミン/ウラシル
v アデニン又はグアニン又はシトシン
n アデニン又はグアニン又はシトシン又はチミン/ウラシル、不明、または他の塩基。
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるポリヌクレオチドのアンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。本発明のペプチドの場合、ヒトの細胞増殖因子(例えば、FGF)における特定の配列が使用されるが、他の種の動物の細胞増殖因子における特定の配列において、本発明のペプチドに対応する部分が「対応するアミノ酸」に相当することが理解される。
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。例えば、マウス細胞増殖因子(例えば、bFGF)に対応する遺伝子は、ヒト細胞増殖因子(例えば、bFGF)である。
本明細書において使用される「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本発明では、生体分子としてポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどが使用される場合、所望の目的(例えば、細胞誘引効果など)が達成される限り、このようなフラグメントもまた、全長のものと同様に使用され得ることが理解される。
本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、本発明の細胞増殖因子として使用することができる。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、本発明の細胞増殖因子として使用することができる。
本明細書において「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、本発明の細胞増殖因子として使用することができる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
本明細書において使用される「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。本発明では、実施例に具体的に示されるような配列に代えて、その保存的置換体もまた使用することができることが理解される。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、血管新生、細胞再生など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子およびその集合体をいう。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。生体分子は、生体から抽出される分子およびその集合体を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子およびその集合体であれば生体分子の定義に入る。したがって、医薬品として利用され得る低分子(たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体への効果が意図され得るかぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子、およびその集合体(例えば、細胞外マトリクス、線維など)などが包含されるがそれらに限定されない。本明細書において、生体分子は、細胞増殖因子を含むことが意図される。
本発明において「血管新生」とは、血管が新たに形成されることおよびそのように形成する活性をいう。本明細書における「血管」は、当該分野において通常使用される意味で用いられ、通常の動脈、静脈などのほか、毛細管を含む。
本明細書において「血管新生分子」とは、血管を新生する能力を有する任意の分子をいう。本明細書においては、血管新生分子は、細胞増殖因子とその概念が重複する。
本明細書において「細胞生理活性物質」または「生理活性物質」(physiologically active substance)とは、細胞または組織に作用する物質をいう。そのような作用としては、例えば、その細胞または組織の制御、変化などが挙げられるがそれに限定されない。生理活性物質には、サイトカインおよび増殖因子が含まれる。生理活性物質は、天然に存在するものであっても、合成されたものでもよい。好ましくは、生理活性物質は、細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものであるが改変された作用を持つものであってもよい。本明細書では、生理活性物質はタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、細胞増殖因子は通常はタンパク質形態を意味する。
本明細書において用いられる「細胞増殖因子」または「増殖因子」とは、本明細書では互換的に用いられ、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態を意味する。
細胞増殖因子には、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類、細胞増殖因子などが含まれる。細胞増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
サイトカインおよび細胞増殖因子などの生理活性物質は一般に、機能重複現象(redundancy)があることから、他の名称および機能(例えば、細胞接着活性または細胞−基質間の接着活性など)で知られるサイトカインまたは増殖因子であっても、本発明に使用される生理活性物質の活性を有する限り、本発明において使用され得る。また、サイトカインまたは増殖因子は、本明細書における好ましい活性(例えば、宿主の細胞を呼び寄せる活性)を有してさえいれば、本発明の組織片または医薬の好ましい実施形態において使用することができる。また、サイトカインおよび細胞増殖因子は、本明細書において、特に言及しない限り、同じ意味で使用されることが理解される。
本発明の細胞増殖因子は、手動あるいは市販のペプチド合成機を用いる常法により容易に合成することができる。また、サイズの大きなペプチドは、常法により、遺伝子工学的に製造することができる。
本発明の細胞増殖因子は、単独で、または生理緩衝液中に溶解した注射液等の形態で、血管新生が望まれる組織に局所投与することができる。肺組織に本発明の組成物を、注射、塗布、噴霧等の方法により局所投与することにより、血管新生が促進され、肺障害の治癒が促進される。ここで、注射または塗布もしくは噴霧等に用いるペプチド溶液中のペプチド濃度は、特に限定されないが、通常、1〜10μg(マイクログラム)/mL程度である。また、投与量は、傷などの大きさや深さにより適宜選択できるが、傷全体がペプチド溶液で被覆される程度でよい。また、傷が治癒するまで、1日〜数日毎に1回〜数回投与することができる。また、注射液には、他の消毒剤や消炎鎮痛剤など、通常、傷の治療薬に含まれる種々の成分を含んでいてもよい。
本明細書において「キャリアフリー」とは、キャリアとして知られている物質を含まないことをいう。キャリアには、ゼラチンを含む。一般的に、キャリアを結合した場合、因子の活性の低下、アレルギー反応を起こす確率が上昇すると報告されている。しかし、従来は、キャリアフリーで細胞増殖因子を効果的に投与できることは知られておらず、むしろ、常識的には、活性がすぐになくなると考えられていた。
本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位置をいう。スクリーニングを行う場合、インビボでのスクリーニングを行うことができる。
本明細書において「インビトロ」(in vitro)とは、種々の研究目的のために生体の一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。インビボと対照をなす用語である。スクリーニングを行う場合、インビトロでのスクリーニングを行うことができる。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバントなどが挙げられるがそれらに限定されない。
さらに別の局面において、本発明は、肺疾患の処置のための医薬を製造するための使用に関する。この使用において、細胞増殖因子として好ましい実施形態は、本明細書において記載される任意の形態が使用され得る。
医薬を製造する方法は、当該分野において周知であり、本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s PharmaceuticaLSciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する細胞組成物とを混合することによって、凍結乾燥された状態で調製され保存され得るが、適切な保存液中に保存されることが好ましい。
本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。本発明において使用され得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、支持体およびペプチドまたはその改変体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、移植のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0〜8.5のTris緩衝剤またはpH4.0〜5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))。
好ましい実施形態において、本発明の医薬において用いられるペプチドまたはその改変体は、処置を目的とする生体に由来することが有利であるが、それに限定されない。このような宿主と同じ起源のペプチドまたはその改変体は、免疫反応等がほとんどないと考えられることから、有利であると考えられる。ただし、ペプチドまたはその改変体は、精製されたものであれば、免疫反応は通常起きないと考えられることから、特に起源を限定する必要はない。
好ましい実施形態において、本発明の処置方法では、細胞生理活性物質を投与する工程をさらに包含してもよい。そのような細胞生理活性物質としては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、multi−CSF(IL−3)、白血病抑制因子(LIF)、c−kitリガンド(SCF)、免疫グロブリンファミリー(CD2,CD4,CD8)血小板由来増殖因子(PDGF)、表皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択され得るがそれらに限定されない。
代替的実施形態において、本発明の吸入溶液は、次のように準備される:(1)ステンレス鋼調合タンクを底部排出管および混合のための3本のミキサーに嵌める。(2)18℃〜25℃の温度で必要量の約95%の米国薬局方(USP)浄化水のタンクを充填する。混ぜながら、(3)米国薬局方(USP)EDTA、塩酸、および少なくとも治療有効量の細胞増殖因子をタンクに加える。(4)全ての細胞増殖因子が融けるまで混ぜ続け る。(5)必要に応じて米国薬局方(USP)浄化水を添加して最終量を調整し、細胞増殖因子調合薬を完成させる。
細胞増殖因子調合薬は、調合タンクから清潔な供給ラインを通して形成−充填−密封(FFS)マシンに直接汲み出される。細胞増殖因子調合薬は、0.2ミクロンの滅菌カートリッジフィルターを通って貯蔵タンクに入り、第2の0.2ミクロンの滅菌カートリッジフィルターを通って既滅菌エアシャワー室内の充填ノズルに達した後、低密度ポリエチレン(LDPE)で形成された瓶に入れられる。
細胞増殖因子調合薬は、既滅菌の状態で瓶に充填され、各瓶は1単位用量の治療有効量のアルブテロールを含む。充填された瓶は、次 いで密封される。FFSマシンは、無菌状態の連続作業で瓶を形成、充填、密封することにより、既滅菌製品を完成させる。例えば、1枚が既充填瓶5本からなるシートが、自動包装機で上包装されて1個の保護ラミネート箔の袋になっていてもよい。次いで、このような袋6〜12個が1棚用カートンとして包装され、患者の COPD治療のための既包装治療システムを形成することができる。適切なラベルおよび指示書が棚カートン内に加えられてもよい。
また、本発明は、次のステップからなる単位用量噴霧器用溶液を形成する方法も対象としている:(1)治療有効量のアルブテロールおよび臭化イプラトロピウムを含む調合薬を、薬事上許容可能な担体内に準備する。調合薬は噴霧器での噴霧に適している。
別の実施形態において、本発明は、また、COPDに伴う症状を緩和する際に使用する装置を有する。このような装置は、ラベル、書面による指示をはじめ、表示を表面に組み込んだ他のあらゆる形をとることができる。この装置は、COPDに伴う症状に苦しむ患者を1瓶に入った単位用量の治療有効量の細胞増殖因子からなる少なくとも1つの既包装、既滅菌、既調合、既測量および/またはBAC非含有吸入溶液で治療することができることを示す表示を有していてもよい。吸入溶液は噴霧器での噴霧に適している。また、この装置は、患者の症状を治療するために吸入溶液を利用する上での指示を与える表示を有していてもよい。
本明細書において「診断」とは、被験体における疾患の種類、障害の種類と程度、身体状態などに関連する種々のパラメ−タを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状、薬物反応性予測、病態変化予測または原因を判定することをいう。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)とは、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状態が起こらないように処置することをいう。従って、ある疾患または障害について、そのような状態になることを防止、遅延など、および悪化を防ぐことを包含する。本発明の方法は、肺組織を再生することから、予防にも用いられることが理解される。
本明細書において「処置」とは、ある疾患、障害または状態に対して行う任意の医学的行為をいい、診断、治療、予防、予後などに資するために行う行為が包含される。好ましくは、処置は、医師、看護師など何らかの国家免許を所有する医療従事者によって行われるべきである。その行為が結果論敵にある疾患の経過を悪化させ、患者にとって不利益となる場合であっても、その行為そのものは「処置」であることには変わりはないことに留意すべきである。
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法または診断する方法などを医師、被検体など投与を行う人、診断する人(被検体本人であり得る)に対して記載したものである。指示書は、診断薬などがキットとして提供される場合、その使用方法を指示するために添付され得る。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インタ−ネットで提供されるホ−ムペ−ジ(ウェブサイト)、電子メ−ル、SMS、PDF文書など)のような形態でも提供され得る。
スプレーの形をしたエーロゾルシステムとしては、例えば推進剤を入れた容器が挙げられるが、推進剤がないエーロゾルシステムも開発されている。さらに、エーロゾルシステムは、例えば推進剤はラクトースのような従来の助剤と共に、活性成分を含んでいる。これらの成分から成る組成物は、エーロゾル吸入剤の特性、つまり、例えば粒径分布、送達速度、粘性などを決定する。
エーロゾルは、二相エーロゾル(気体および液体)または三相エーロゾル(気体、液体、および固体または液体)として得ることができる。二相エーロゾルは、液化推進剤に溶かした活性物質の溶液と、霧状推進剤とから成る。溶媒は、例えば、推進剤か、推進剤とアルコールやプロピレングリコール等の共溶媒との混合物を含む。ポリエチレングリコールは、活性物質の溶解度を改善するためによく使用される。
三相系は、霧状推進剤と共に、1または複数の活性成分の懸濁液またはエマルジョンをそれぞれ含む。懸濁液は、湿潤剤のような従来の助剤および/または滑石またはコロイドシリカのような固体担体を使用して、推進剤システムに分散した活性物質を含んでいる。可能な場合、推進剤は公知のものであり、オゾン層への損傷作用のない炭水化物を含むことができる。
吸入用の溶液が、1〜10μmの範囲のサイズの非常に小さな粒子に霧状にされる場合にのみ、吸入は可能である。細かく分散されたエーロゾルしか吸入することができない。従来のエーロゾルの場合には、吸入は禁忌である。エーロゾル吸入剤に関するさらに詳しい情報を得るには、例えば、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる米国薬局方を参照すること。
本発明において使用する細胞増殖因子(例えば、bFGF)をリポソーム状にする場合、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、カルジオリピンなどを使用することができる。このようにして特異的に構成されたリポソームを使用することで、肺胞マクロファージによる選択的取り込みが起こり、治療の特異性がより高くなり、副作用の減少に関連して治療有効量が減小する。さらに、ビタミンEまたは(+)−α−酢酸トコフェロール、(±)−α−酢酸トコフェロール、(±)−α−コハク酸トコフェロールなどのビタミンEの誘導体を加えても良い。
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の細胞増殖因子は核酸形態で投与することができる。このような核酸形態の細胞増殖因子は、水溶液の形態で投与され得る。この場合、遺伝子治療と呼ばれ、遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコ−ドされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、遺伝子治療の方法の一般的な概説書である、GoldspieLet al.,Clinical Pharmacy 12:488−505 (1993); Wu and Wu,Biotherapy 3:87−95 (1991); Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596 (1993); Mulligan,Science 260:926−932 (1993);ならびにMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217 (1993); May,TIBTECH 11(5):155−215 (1993)に記載されている。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY (1993); およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY (1990)に記載される。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物、細胞または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュ−タを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリ−を用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物、診断剤、治療薬などが提供されることも企図される。
(スクリーニングにおいて用いられ得る技術)
本発明のスクリーニング技術において、スクリーニングのヒットは、遺伝子技術を用いたアッセイなどによって確認することができる。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子(通常は、DNA形態)などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。別の実施形態では、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシング(例えば、リーダー配列切除)を受けたものであり得る。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、生物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(例えば、罹患部位などの特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。そのような特異的発現は、抗原提示細胞の特性を利用して実現することができる。従って、肺疾患の医薬のスクリーニングは、特定の指標の特異的発現を確認することによっても行うことができる。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、必要に応じてマイクロタイタープレートを用いる、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において「発現量」とは、対象となる細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノ−ザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
本明細書において「候補化合物」とは、目的とする疾患または障害を処置するために使用され得る化合物の候補をいう。したがって、ある化合物は、目的とする疾患または障害について効果があると予測される場合は、候補化合物と呼ばれ得る。
本明細書において「化合物種」とは、ある化合物の集合において、特定の目的とする活性を有するなど、所望の性質を有する1種の化合物についていう。例えば、活性を調節する化合物の集合において、化合物が特定される場合、そのような化合物は、化合物種と称され得る。本明細書では、単に化合物とも称される。
本明細書において「ライブラリー」とは、スクリーニングをするための化合物などの一定の集合をいう。ライブラリーは、同様の性質を有する化合物の集合であっても、ランダムな化合物の集合であってもよい。好ましくは、同様の性質を有すると予測される化合物の集合が使用されるが、それに限定されない。
(因子)
本明細書において肺疾患に対して「作用する」とは、本発明のスクリーニングにおいて、肺疾患の処置または予防において効果があるとされる任意の因子の性質をいう。
本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、エネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
(好ましい実施形態の説明)
1つの局面において、本発明は、キャリアフリーの細胞増殖因子を含む、肺疾患の処置のための医薬組成物を提供する。ここで、細胞増殖因子は、肺組織への投与に適した任意のキャリアフリーの形態で提供される。キャリアとは、ゼラチンが代表的であり、本発明では、好ましくは、ゼラチンフリーを意図する。従来は、キャリアフリーで細胞増殖因子を投与しても効力が発揮されないとされていた。これは、ほとんどの臓器または組織において無効とされていた。好ましくは、この組成物は、肺以外の組織へは投与されない形態で提供されることが有利である。本発明は、従来治療が困難とされていた肺疾患(特に、肺組織の破壊を伴うCOPDのような疾患)が、キャリアフリーの細胞増殖因子を投与することによって、治癒させることができることを見出したことにある。従来COPDのような疾患は、対症療法しかなく、根本的な治療を行うことは困難であった。従って、本発明は、このような難治性疾患を簡単に副作用の危険性を最小限にして根本的に治癒させることができるという点において有用であり、驚くべきことであるということが理解される。
従って、本発明が特に対象とするのは、肺疾患のうち、広汎な肺組織の破壊を伴う呼吸機能障害にいたるものであることが好ましいがそれに限定されない。COPD疾患としては、肺線維症の処置後の状態または肺気腫などを挙げることができるがそれらに限定されない。
本発明では、使用される細胞増殖因子としては、任意の因子を挙げることができるが、特に、血管新生作用を有するものであることが好ましい。従って、そのような因子であれば、天然型の細胞増殖因子のみならず、合成された因子(例えば、有機低分子)を使用することができることが理解される。
好ましい実施形態では、本発明の組成物において使用される細胞増殖因子としては、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカイン(CXCケモカインなど)、プロスタグランジン(例えば、プロスタサイクリンなど)などを挙げることができるがそれらに限定されない。そのような因子は、単独で使用されてもよく、複数使用されても良い。
より好ましくは、本発明において使用される細胞増殖因子は、bFGFである。特に、細胞増殖因子は、配列番号2および/または4に示す配列(配列番号2は、より長いbFGFおよび配列番号4は、より短いbFGFである)を含むbFGFまたはその改変体であることが好ましいがそれに限定されない。本発明において使用される細胞増殖因子は、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)(例えば、配列番号5および6)に記載される配列を有し得る。
好ましい実施形態では、キャリアフリーの細胞増殖因子は、ドライパウダー形態または水溶液の形態で提供される。ドライパウダーは、例えば、凍結乾燥によって製造することができる。
特定の実施形態では、本発明が対象とする肺疾患は、COPD、肺線維症などを含む。
別の局面では、本発明は、肺組織の予防または処置のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システムを提供する。このようなシステムは、キャリアフリーの細胞増殖因子の肺投与を実現するシステムであれば、どのような形態であっても良いことが理解される。そのような肺投与を実現する手段としては、例えば、吸入装置、気管支鏡などを挙げることができるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態では、使用されるキャリアフリーの細胞増殖因子は、ドライパウダー、水溶液の形態、ミストなどの任意のキャリアフリーの形態で使用することができる。好ましくは、細胞増殖因子は、ドライパウダーまたは水溶液の形態で使用される。
従って、本発明のシステムにおける好ましい肺投与のための手段は、吸入装置または気管支鏡を含み得る。好ましい肺投与のための手段は、肺への選択的投与を可能にする形態を採ることが有利である。そのような選択的投与は、吸入装置を用い患者の自発的な換気により水溶液、ドライパウダー、ミストなどの形態の細胞増殖因子を効果的に帰還しないに選択的に投与するか、または気管支鏡の側孔よりカテーテルを挿入し、目的の気管支を目視確認しながらカテーテルより散布することによって達成することができる。好ましくは、細胞増殖因子は気管支鏡を用いて散布する方法を選択する。
本発明のシステムに使用されるキャリアフリーの細胞増殖因子は、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意のキャリアフリーの形態を採ることができることが理解される。
本発明のシステムが対象とする疾患もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
別の局面において、本発明は、肺組織の再生のための医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、キャリアフリーの細胞増殖因子を含む。キャリアフリーの細胞増殖因子をインビボで肺に投与することによって、肺組織の再生が可能であることは、従来知られておらず、従って、本発明は、従来達成できなかった格別の効果を奏することが理解される。従って、再生という観点からは、本発明は、肺治療のみならず、肺の疾患からの予防、若返りなどの機能改善という点からも使用されることが理解されるべきである。しかも、キャリアフリーであるにもかかわらず、効果がゼラチンと同程度であったことから、副作用が生じる可能性が劇的に下がりつつ、しかも、治療または予防効果を達成できるという顕著な効果が奏される。
1つの実施形態において、本発明の組成物において使用されるキャリアフリーの細胞増殖因子は、肺細胞の増殖に有効な濃度で存在する。このような濃度は、インビトロの実験で簡単に決定することができる。そのような実験としては、例えば、放射性同位体(例えば、I125)で標識したbFGFをシンチグラムで確認する方法が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは臨床仕様のシンチグラムを使用することが有利である。イヌなどの大型動物での確認を行うことができるからである。
別の実施形態において、本発明の肺再生のための組成物に含まれるキャリアフリーの細胞増殖因子もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
本発明の肺再生のための組成物が対象とする肺の状態もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができ、これに加えて、健常な肺、疾患とは診断されていないが機能減退が見出されるような肺なども含まれることが理解される。
別の局面において、本発明は、肺組織の再生のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システムを提供する。
ここで、肺投与については、上記の本発明の治療システムにおいて使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
別の実施形態において、本発明の肺再生のためのシステムに含まれるキャリアフリーの細胞増殖因子もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
本発明の肺再生のためのシステムが対象とする肺の状態もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができ、これに加えて、健常な肺、疾患とは診断されていないが機能減退が見出されるような肺なども含まれることが理解される。
別の局面において、本発明は、肺組織を処置するための方法であって、(a)キャリアフリーの細胞増殖因子を、処置されるべき肺組織に投与する工程を包含する方法を提供する。
キャリアフリーの細胞増殖因子としては、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
好ましい実施形態では、使用されるキャリアフリーの細胞増殖因子は、肺組織に選択的に投与される。そのような選択的投与は、本発明のシステムにおける好ましい肺投与のための手段として記載される好ましい手段(例えば、吸入装置または気管支鏡)を用いて達成され得る。従って、より好ましくは、細胞増殖因子は、肺組織以外には実質的に投与されない。肺組織以外にキャリアフリーの細胞増殖因子が投与されると、予想外の事象が生じ得るからであり、副作用となって発現する可能性があるからである。
本発明の方法が対象とする疾患もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
別の局面において、本発明は、肺組織を再生するための方法であって、(a)キャリアフリーの細胞増殖因子を、肺組織に投与する工程、を包含する、方法を提供する。
ここで、肺投与については、上記の本発明の治療システムにおいて使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
別の実施形態において、本発明の肺再生のためのシステムに含まれるキャリアフリーの細胞増殖因子もまた、上記の本発明の医薬組成物において使用される任意の形態を採ることができることが理解される。
好ましい実施形態では、使用されるキャリアフリーの細胞増殖因子は、肺組織に選択的に投与される。そのような選択的投与は、本発明のシステムにおける好ましい肺投与のための手段として記載される好ましい手段(例えば、吸入装置または気管支鏡)を用いて達成され得る。従って、より好ましくは、細胞増殖因子は、肺組織以外には実質的に投与されない。肺組織以外に細胞増殖因子が投与されると、予想外の事象が生じ得るからであり、副作用となって発現する可能性があるからである。
別の局面において、本発明は、肺組織の処置のための物質をスクリーニングする方法であって、上記方法は以下の工程:A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;B)候補化合物を、上記肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;およびC)上記被検体が治癒した場合、上記候補化合物は上記肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定する工程;を包含する、方法を提供する。
ここで、肺投与システムとは、本発明のキャリアフリーの細胞増殖因子を肺に到達させることができる任意のシステムをいう。そのような肺投与システムとしては、吸入装置または気管支鏡が挙げられ、例えば、オリンパス株式会社から市販されている気管支鏡システムを用いることができる。
1つの実施形態では、本発明において使用される候補化合物は、タンパク質、核酸、脂質、糖、有機低分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施形態では、候補化合物は、細胞増殖因子を含む。このような細胞増殖因子は、改変されたものであっても良い。被検体の治癒は、例えば、スパイロ検査などを用いて判定することができる。
別の局面において、本発明は、肺組織の処置のための物質をスクリーニングするためのシステムであって、上記システムは、以下:A)肺投与に適した肺投与システム;およびB)候補化合物を投与して被検体が治癒した場合、上記候補化合物は上記肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定するための手段、を備える、システムを提供する。ここで、肺投与システムは、上記肺組織の処置のための物質をスクリーニングするための方法において説明した任意の形態を採ることができる。
好ましい実施形態では、判定手段は、肺組織の治癒に関する既知情報が格納された記録媒体をさらに備える。このような既知情報は、判定結果を算出する場合に利用され得る。そのような既知情報は、データベースから入手してもよく、個人で格納したものであっても良い。
別の局面において、本発明は、肺組織の再生のための物質をスクリーニングする方法であって、上記方法は以下の工程:A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;B)候補化合物を、上記肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;およびC)上記被検体において肺細胞が再生した場合、上記候補化合物は上記肺組織の再生のための物質であることの指標であると判定する工程;を包含する、方法を提供する。
ここで、肺投与システムとは、本発明の細胞増殖因子を肺に到達させることができる任意のシステムをいう。そのような肺投与システムとしては、原則的に、上記肺組織の処置のための物質をスクリーニングする方法において説明したものが使用され得るが、再生に適した別の形態を用いても良い。
1つの実施形態では、本発明において使用される候補化合物は、タンパク質、核酸、脂質、糖、有機低分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施形態では、候補化合物は、細胞増殖因子を含む。このような細胞増殖因子は、改変されたものであっても良い。被検体の治癒は、例えば、スパイロ検査などを用いて判定することができる。
別の局面において、本発明は、肺組織の再生のための物質をスクリーニングするためのシステムであって、上記システムは、以下:A)肺投与に適した肺投与システム;およびB)候補化合物を投与して被検体における肺細胞が再生した場合、上記候補化合物は上記肺組織の再生のための物質であることの指標であると判定するための手段、を備える、システムを提供する。ここで、肺投与システムは、上記肺組織の処置のための物質をスクリーニングするための方法において説明した任意の形態を採ることができる。
好ましい実施形態では、判定手段は、肺組織の再生に関する既知情報が格納された記録媒体をさらに備える。このような既知情報は、判定結果を算出する場合に利用され得る。そのような既知情報は、データベースから入手してもよく、個人で格納したものであっても良い。
別の局面において、本発明は、キャリアフリーの細胞増殖因子の、肺疾患の処置のための医薬組成物の調製における使用に関する。
他の局面において、本発明は、キャリアフリーの細胞増殖因子の、肺組織の再生のための医薬組成物の調製における使用に関する。
別の局面において、本発明は、肺投与システムの、肺組織の処置のための医薬組成物のスクリーニングにおける使用に関する。
他の局面において、本発明は、肺投与システムの、肺組織の再生のための医薬組成物のスクリーニングにおける使用に関する。
ここで、肺組織の状態、キャリアフリーの細胞増殖因子、肺投与システムに関しては、本明細書において、上記方法、システムおよび医薬組成物に関して記載される任意の形態を採ることが理解される。
他の局面において、本発明は、肺疾患の処置のデバイスであって、薬剤(例えば、キャリアフリーの細胞増殖因子)を患者に供給するための投与手段、を含む、デバイスを提供する。
1つの好ましい実施形態において、本発明の処置デバイスは、近位端と、遠位端と、薬剤供給容器との連通のための薬剤チャネルと、圧縮空気供給器との連通のための圧縮空気チャネルとを有するカテーテル管;該カテーテルの遠位端に配置される噴射オリフィス;
を備える。このカテーテル内において、該薬剤供給源から提供される薬剤が、該圧縮空気チャネルを通って提供される圧縮空気と混合され、その結果、該噴射オリフィスにおいて、該薬剤が噴霧される。
好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、薬剤(例えば、細胞増殖因子)を含む薬剤供給容器をさらに備える。本発明において、薬剤供給容器としては、どのようなものであっても使用することができる。そのような容器としては、例えば、シリンジ、チューブなどを挙げることができるがそれらに限定されない。このような細胞増殖因子を含む薬剤供給容器を備えることによって、本発明は、肺疾患を根本治療することおよび肺組織中の細胞を再生することを可能にした。
別の好ましい実施形態では、本発明のデバイスは、圧縮空気供給器をさらに備える。圧縮空気供給機は、どのようなものであっても使用することができる。そのような圧縮空気供給機しては、例えば、コンプレッサ、ポンプ(例えば、ブロワーポンプ)、手術場の圧縮空気(圧縮空気を入れたタンクなど)、酸素ボンベなどを挙げることができるがそれらに限定されない。現在好ましい実施形態では、手術場の圧縮空気を利用することが好ましい。あるいは、自宅での療法を望む場合は、酸素ボンベなどを利用することができる。
好ましい実施形態では、本発明のデバイスにおいて存在する細胞増殖因子は、水溶液として存在することが有利である。水溶液であれば、調製が簡単であること、脳血栓の可能性が激減すること、副作用が少ないこと、投与が楽であること、患者に対するストレスが劇的に下がること、ネブライザーを用いることにより末梢まで届くこと、拡散が十分に行われること、キャリアを用いたときの凝集が起きないこと、従って、送達途中にとどまらないこと(よって、副作用が軽減できる)、中枢気道で吸着されにくいことなどの効果が達成され得る。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、科研製薬株式会社(東京、日本)などから市販されているものを使用した。マウスなどは、清水実験材料株式会社(京都、日本)などから入手した。
(実施例1:塩基性線維芽細胞増殖因子をラットの経気道的投与後の肺組織内残存率の測定)
塩基性線維芽細胞増殖因子(ヒト塩基性フィブロブラスト成長因子、科研製薬株式会社から入手可能)を放射性同位元素(Iodine−125 Radionuclide(カタログ番号;NEZ033)、株式会社パーキンエルマージャパン(Perkin−Elmer Japan)、横浜、神奈川、日本)で陰イオン交換樹脂法によりラベル化し、ラットの気道内に投与し1日後と3日後の放射活性値を測定し、塩基性線維芽細胞増殖因子を経気道的に投与した場合にどの程度、体内に取り込まれるかを予測すべく、測定を行った。bFGFは、水溶液およびゼラチンと混合したものを使用した。ゼラチン混合物は、塩基性線維芽細胞増殖因子200μgをゼラチンマイクロ粒子(科研製薬、東京、日本から入手可能)に封じ込めたものを生理食塩水5mlに撹拌したものを使用した。
残存率(% )= 肺組織の放射活性値/投与量の放射活性値 で図表化した。
投与後の残存放射活性を100としたときの放射活性の変化を以下の表に示す。下欄には、投与後を1(変換後は0)として常用対数表示したものを示す。
塩基性線維芽細胞増殖因子を経気道的投与した場合1日後で30%以上、3日後までも放射活性が認められる。すなわち経気道的に投与された、塩基性線維芽細胞増殖因子は約72時間、投与部位周辺に残留することが可能であるとの実験結果である。
(実施例2:ビーグル犬モデルの作製)
ビーグル犬(体重9〜14kg)(清水実験材料)に動物用麻酔薬(セラクタール(バイエル)またはケタラール(=塩酸ケタミン、三共エール薬品)を皮下注射して全身麻酔した。気管内挿管行い気管支鏡を気管支に挿入した。豚膵エラスターゼ50mg(3750単位)(麻酔エラスターゼ、商品名「エラスターゼ」、ナカライテスク、京都、日本)を生理食塩水5mlに溶解し、噴霧カテーテル(オリンパス株式会社、東京、日本、「噴霧カテーテル」、製品番号」PW−6C−1)を末梢気管支までもって行き、10回に分けて左肺全体に散布した。散布後28日を経過したものをCOPDモデル肺として利用した。右肺を正常肺と考えて比較を行った(図11)。図2に、重度肺気腫モデル(40mg投与)の肺の拡大写真を示す。
(実施例3:ビーグル犬モデルへの塩基性線維芽細胞増殖因子の投与)
塩基性線維芽細胞増殖因子200μgを生理食塩水5mlに撹拌し、bFGF水溶液を調製した。
ビーグル犬(体重約10kg)にエラスターゼを経気道的に投与し、肺気腫モデルを作製した。犬には、気管内挿管を行い、経管的に気管支ファイバーを用いて、さらに経散布チューブ的に、ブタ膵臓エラスターゼ水溶液、およびbFGF水溶液を左肺のみにほぼ均一に、以下A)〜C)のように散布した。反対側の右側には、正常コントロールとして保存した。
A)ブタ膵エラスターゼ単独投与群
ブタ膵エラスターゼ10mg、20mgおよび40mgを、それぞれ10ml水溶液に希釈し、それぞれ2匹ずつに投与した。
その結果、投与量に相関して、いずれも左肺は、投与後4週間後に肺気腫となった。これは、当該分野において周知の技法を用いて肺コンピュータ断層撮影(CT)、犠牲死後の肺組織標本のミクロ的またはマクロ的な組織学的検討、経皮的動脈血酸素飽和度の運動時低下の程度、安静時または特に運動負荷後の喘鳴、活動度(PS)などによって確認した。これらのイヌは、投与後2ヶ月から1年程度またはそれ以上観察したが症状が自然寛解することはなかった。
特に、40mgを投与した2匹は羸痩が激しく、うち1匹は投与後43日後に死亡した。
B)bFGF単独投与群
bFGF200μgを10ml水溶液に希釈し、1匹に5日連続で、合計1mgを上記方法によって投与した。
このイヌは、1年以上生存し、犠牲死後の肺組織学的検討において、ミクロ的にもマクロ的にも異常所見は認めず、CTおよび上記他の検査において、通常のイヌと何の差異も見出せなかった。
C)エラスターゼおよびbFGF投与群
A)と同様に、40mgエラスターゼを雄イヌ1匹に投与した。4週間後には、A)と同様に肺気腫を発症した。エラスターゼ投与後63日後にB)と同様に200μg×5日間の合計1mgを追加投与した。
このイヌは、その後徐々に活動度が上がり、歩行のみならず、駆け足もできるようになった。経皮的動脈血酸素飽和度の運動時低下の程度も軽くなった。一旦進んだ羸痩も徐々に回復した。また、雌イヌと同じケージに入れると、性器を勃起させ、しきりに雌イヌにマウント行動を繰り返した。
CT検査で、FGF投与に比して肺気腫は改善傾向を読み取ることができ(図3)、犠牲死(bFGF投与後4ml)後の肺組織学的検討で、ミクロ的にもマクロ的にも肺気腫経口は残存したが、上記A)群の40mg投与群に比較して、明らかに軽微であった。
以上の実験から、bFGFの経気管的投与は、正常犬には毒性を示さず、他方、エラスターゼ肺気腫モデルには治療効果があることが確認された。
D)比較対照例
塩基性線維芽細胞増殖因子200μgをゼラチンマイクロ粒子(科研製薬、東京、日本から入手可能)に封じ込めたものを生理食塩水5mlに撹拌し、慢性閉塞性肺疾患モデル肺に、気管支鏡を使い左肺全体に10回に分けてびまん性に散布した。塩基性線維芽細胞増殖因子による治療の前後での変化を見るべく、種々の調査を上記A)〜C)と同様に行った。
(肺気量の評価)
次に、上記A〜Dの肺気量の評価を行った。A)〜C)の肺気量をまとめたものを図4に示す。D)における結果をまとめたものを図5に示す。図4は、bFGF水溶液投与群と、非投与群とを比較した、治療効果を示す(肺気量評価)。左から、正常犬、肺気腫犬、および治療後を示す。おのおのの群には、左側に非投与および右側に投与の群を示す。図5は、bFGFゼラチン粒子液投与群と、非投与群とを比較した、治療効果を示す(肺気量評価)。左から、正常犬、肺気腫犬、および治療後を示す。おのおのの群には、左側に非投与および右側に投与の群を示す。
図4および図5からも明らかなように、水溶液投与でもゼラチン投与に匹敵するか、むしろより良好な程度に肺気量が回復していることが明らかになった。
(血液ガス分析)
動脈血液ガス分析は、ビーグル犬を全身麻酔した後、人工呼吸器を装着し一定の呼吸条件下に行った。呼吸条件は、1回換気量18ml/kg、呼吸回数10/min、吸気中酸素分圧0.2(酸素:1L,笑気:4L)、吸気時間:呼気時間1:2、人工呼吸器装着後20分後に動脈血を採取した。上記A)〜D)について、塩基性繊維芽細胞増殖因子で治療した塩基性線維芽細胞増殖因子治療モデル犬では動脈血液内の酸素分圧が98.0mmHgと上昇しており改善していた。水溶液処置の群では、塩基性繊維芽細胞増殖因子による治療を行わなかった非塩基性線維芽細胞増殖因子治療モデル犬では酸素分圧が84.6 mmHgと改善していなかった(図6)。
(肺容積に対する影響)
次に、上記A)〜D)について、肺容積を測定して、改善結果を評価した。その結果を、図7および図8に示す。図7に示すように、水溶液での処置でも、肺容積は、正常状態に回復していることが明らかになった。これは、対照として用いたゼラチン粒子液での治療効果(図8)に匹敵するどころか、より良好な結果であるといえる。
(肺胞の大きさ)
次に、上記A)〜D)について、肺胞の大きさを調べた。これは、取り出した肺組織中の肺胞を顕微鏡下で計数することによって評価した。その結果を、図9(水溶液)および図10(ゼラチン溶液)に示す。示されるように、肺胞の大きさについても、bFGF水溶液がbFGFゼラチン溶液に匹敵する治療効果を示すことが明らかになった。
(MRIにおける比較結果)
MRIを使用し、ビーグル犬を全身麻酔した後、仰臥位で撮影する。右内頚動脈に静脈ルートを確保し、一般的な市販の造影剤を注入すると約3秒後より肺内血管が造影され、造影効果により、MRIの信号値が高くなる。MRIの信号値は血流量に比例するため、血流量が多い部位ほど信号値は高くなる。肺動脈の血流量には個体差があるため、その個体差をなくすべく、投薬した左肺を正常の右肺でわったMRI信号値の左右比で比較した。市販の造影剤3ml注入後MRIの撮影を開始した。造影剤を注入後約120秒にわたり、170枚の冠状断面を撮影し、肺実質の限局した区域の信号値を連続的に測定し、グラフ化する。これらのグラフより左右の信号値の比率を測定したところ、正常犬では左右の肺に血流の差がない0.99、COPDモデルでは左肺の血流が低下した0.69、塩基性線維芽細胞増殖因子治療モデルでは左肺の血流が改善し正常の状態に近づいた0.88であった。すなわち、塩基性線維芽細胞増殖因子を投与することにより、血流の有意な改善が認められた。なお、非治療モデルでは、0.69のままであった。
(実施例4:スクリーニング)
実施例2で作製したビーグル犬モデルを用いて、肺疾患の処置のための化合物および肺組織の再生のための化合物のスクリーニングを行う。
塩基性線維芽細胞増殖因子の代わりにスクリーニング対象となる候補化合物のライブラリーを用いる以外は実施例3と同じ手順でスクリーニングを行う。
スクリーニングの結果、血流の有意な改善が見られるなどの臨床効果がある場合、その因子は、肺疾患の処置のための化合物のリードとして報告される。
また、肺細胞の有意な増加が見られる場合は、肺組織の再生のための化合物のリードとして報告される。
肺気量(図13および図14)について分析したところ、エラスターゼ処理により、肺気量が顕著に増加していた。従って、肺気量も肺処置の評価の指標になることが分かった。
対照実験として、筋弛緩薬を用いたところ(図15)、一定圧力を超えると、筋弛緩使用により、肺気量が使用しない場合に比べて有意に増加していた。これは、気道内圧が40cmHOを超えたところの数値が生理学的に正常の状態とはかけ離れていくことを示す。従って、40cmHOの時点の数値を調べることが本明細書における指標の一例となることを示す。
また、エラスターゼ投与量と肺気量との関係を調べた(図16)ところ、エラスターゼの投与量と肺気量の増加は線形の関係にあるようであることが明らかになった。従って、肺気量の評価から定量的に肺処置の効果を評価することができることが示された。
(実施例5:別の動物での水溶液を使用した形態)
本実施例では、塩基性線維芽細胞増殖因子の水溶液形態での経気道的投与が、イヌ肺気腫モデルにおいて肺機能再生をひきおこすかについて検討を行った。
(方法)
ビーグル犬(体重9〜14kg) を用い、豚膵臓由来エラスターゼを、肺片側あたり3000単位を生理食塩水5mlに溶解し、気管支鏡施行下に散布チューブを使用し区域気管支末梢に散布し、イヌ左肺片側肺気腫モデルを作成した。28日後、血液ガス測定、呼吸機能測定、Dynamic contrast enhanced MRI における肺実質信号強度左右比を行った。コントロール群、bFGF治療群に分け、コントロール群には生理食塩水5mlの経気道的投与を行った。bFGF治療群にはbFGF200μgを生理食塩水5mlに溶解し経気道的投与を行った。bFGFの最終投与から28日後に血液ガス測定、呼吸機能測定、MRI 肺実質信号強度左右比を行いコントロール群と治療群で比較を行った。
(結果)
処置前後の肺の様子を図17に示す。
MRI における肺実質信号強度左右比において、bFGF治療群は肺気腫側肺の信号強度の上昇が認められた。この結果は、エラスターゼにより低下した肺血流の改善を示唆するものであった。血液ガス測定(図18)、呼吸機能測定(肺気量=図19)においても、肺機能の改善が認められた。肺容積についても、顕著に効果が見られた(図20および21)。
(考察)
bFGFの経気道的投与により、イヌエラスターゼ肺気腫モデルにおいて、損傷を受けた肺実質の血流改善が認められた。
(実施例6:肺実質細胞増殖因子(HGF))
本実施例では、HGFを用いて同様の効果が現れるか実証する。このHGFは、東洋紡などから販売されている製剤を使用する。
実験では、ビーグル犬10匹を用い、左肺にエラスターゼ50mg(3750U)を経気道的に気管支鏡を用いて散布する。散布後、28日経過したものを肺気腫モデルとする。肺気腫モデルをランダムに2群に分割する。
1)HGF50μgをゼラチンマイクロスフェアーで経気道的に徐放し治療したモデル群を治療群とする。
2)ゼラチンマイクロスフェアーのみで経気道的に徐放したモデル群を非治療群とする。治療後28日経過した時点において、血液ガス分析、スパイロメトリー、MRIで呼吸機能評価をする。機能評価後7日後に犠牲死させ、組織学的評価を行う。
(結果)
HGFでもbFGFと同様に、肺疾患を治癒させることが示される。
(実施例7:肺組織の再生の効果)
次に、実施例4と同様の実験を行い、肺組織の再生が生じているかどうかを実証した。本実施例では、FGFを用いる。
実験では、ビーグル犬10匹を用い、左肺にエラスターゼ50mg(3750U)を経気道的に気管支鏡を用いて10回に分けて散布した。散布後、28日経過したものを肺気腫モデルとする。肺気腫モデルをランダムに2群に分割した。
正常肺およびエラスターゼ処理肺、ならびにbFGF処理肺のMRIを撮影した。この撮影方法は以下の通りである。
MRIの撮影方法:
1.5 T Sonata MRIシステム(シーメンス、Erlangen,ドイツ)
TE 1.35ms
TR 350ms
flip angle 8°
readout bandwitdth:500Hz/pixel
section thickness:20mm
field of view:300−350mm×140−170mm
image matrix:110×256
voxel size:1.3×1.2×20.0mm
外頸動脈より中心静脈ルートを確保し、3mlのガドリニウム造影剤を1秒間で投与した。その後60秒にわたり170枚の冠状断を撮影した。
その結果を、図22および23に示す。
また、図24および25には、連続写真を示す。
このように、肺組織の再生の効果が、確認された。
(実施例8;別のビーグル犬モデルでの実証)
次に、別のビーグル犬モデルを用いて本発明の効果を実証した。
本実施例では、15匹のビーグル犬(体重9.2から14.9kg)をランダムに以下の軍に分けた:(1)コントロール;(2)FGF(−)群;および(3)FGF(+)群。本実施例でのプロトコールとしては、実質的に上記実施例と同じであり、京都大学の動物実験倫理委員会によって承認されたものを使用した。エラスターゼ誘導肺気腫モデルをFGF(−)群およびFGF(+)群で誘導した。すべての治療的介入および生理学的測定は、塩酸ケタミン(10mg/kg)およびキシラジン(30mg/kg)による全身麻酔により行い、気管内挿管行い気管支鏡を気管支に挿入した。9.0mm直径の気管内挿管チューブを、気管支鏡を使用して気管内に挿入し、機械換気器に接続した。連続モニターを行い、心電図、酸素飽和度(耳にクリップしたセンサを用いて反射酸素計測法により測定)、体温(直腸内プローブ)を測定した。気管支鏡(外径5mm、60cm作業長)を、留置気管内チューブを通じて導入し、左側気管支を進ませた。豚膵エラスターゼ50mg(3750単位)(麻酔エラスターゼ、商品名「エラスターゼ」、ナカライテスク、京都、日本)を生理食塩水5mlに溶解し、噴霧カテーテル(オリンパス株式会社、東京、日本、「噴霧カテーテル」、製品番号」PW−6C−1)を末梢気管支までもって行き、10回に分けて左肺全体に散布した。散布後28日を経過したものをCOPDモデル肺(合計で200mg投与)として利用した。右肺を正常肺と考えて比較を行った。
(動脈血液ガス測定およびPV関係)
肺機能およびMRIの評価は、エラスターゼ投与前(基底線)、エラスターゼ投与後4週間、および処置後4週間について行った。肺機能の評価のために、イヌを麻酔し、挿管し、そして3.0%ハロタンの下で維持した。動脈血pH、CO分圧およびO分圧ならびにO飽和%を測定した。機械的な換気を10呼吸/分の呼吸頻度に設定して行った。吸気時間は呼吸期間の33%に設定し、FiO2は0.2であった。一回換気量を18mL/kgに設定した。右の大腿肢動脈から、機械的換気を始めて15分後に動脈血液ガスサンプルを採取した。ABL-620血液ガスおよび酸塩基分析器(Radiometer,Copenhagen, Denmark)を用いて測定した。
P−V関係および呼吸器容量もまた、全身麻酔および挿管により測定した。気管内腔を膨脹させて、種々の圧力にし(5cmHO〜70cmHO)、次いで気管内チューブをきっちりクランプして留めた。プレチモスグラフ(血量計(HI-701Nihon Kohden, Tokyo, Japan)気管支内チューブに接続し、クランプを離し、次いで、呼吸器容量を測定した。圧力が40cmHO(呼吸器容量40)になるまで気管支内腔が膨脹したときの呼吸器容量を計算に用いた。
(FGF−2処置)
本実施例では、全身麻酔の下で気管支試験を行った。ヒト組み換えFGF-2は科研製薬(東京、日本)から入手した。FGF(+)群では、400μgのFGF−2を10mLの生理食塩水に溶解し、これを、噴霧注入カテーテルを用いて異なる領域において20の分割された用量により、肺全体のすべての気管支セグメントに噴霧した。機械的換気を、イヌを仰臥の姿勢に保ちつつ少なくとも2時間続け、抜管した。400μgのFGF-2の2回目の噴霧を4日後に肺全体に対して行った。400μgのFGF-2の3回目の噴霧を第一回目の噴霧から8日後に肺全体に対して行った。合計で1200μgのFGF-2をFGF(+)群のイヌ1匹当たりに投与した。FGF(-)群のイヌには、10mLの生理食塩水を同じ手順を用いてFGF-2なしで噴霧した。
(組織学的測定)
処置後4週間にて、各グループのイヌをペントバルビタールなトリウムの注射により屠殺した。肺組織および心臓を、気管支とともに一まとめに切除した。心臓および縦隔組織を取り出し、そして肺を気管支と共に秤量した。すぐに肺を10%中性緩衝化ホルマリン溶液を気管支カニューレを通して25cmH2Oで膨脹させ、胸膜が緊張させた。次いで、気管支を結紮し、肺をさらに、ホルマリン溶液に48時間浸すことによって固定した。膨脹した肺容積を、水置換法により測定し、左および右の肺を別個に測定した(DoiM, Nakano K, Hiramoto T, Kohno N: Significance of pulmonary artery pressure inemphysema patients with mild-to-moderate hypoxia. Respir Med. 2003; 97:915-920.)2cm×2cm×2cmのブロックを1匹当たり12個ランダムに肺全体の領域から切り分けた。次いで、このブロックを、パラフィンに包埋し、その後、3μの厚さの切片に切り分け、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。すべての切片を用いて、平均の線状切片(Lm)を測定した。これは、肺気腫における肺空気空間の拡大の立体解析的指標として一般に用いられる。これは、ScherleW: A simple method for volumetry of organs in quantitative stereology.Mikroskopie. 1970; 26: S57-60に記載されているように算出した。40倍にて1匹当たり6つの視野をランダムに選択してLmを測定した。
(統計学的分析)
データは、平均および標準偏差(SD)として表現する。データは、StatView for Windows(登録商標) version 5.0 (SAS Institute Inc., Cary, NC)を用いて分散分析(ANOVA)により分析した。群間の相違は、Scheffe検定により同定した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとみなした。
(結果)
(イヌ被験体での実験における肺機能試験)
体重は、FGF(-)群とFGF(+)群との間で相違が無かった(FGF(-)群:11.56±2.2kg、これに対してFGF (+) 群: 10.8±1.6 kg)。エラスターゼ投与後と処置後との間でも体重の有意差は無かった(FGF (-),、200 mgエラスターゼ投与後:11.02±2.1kg、処置後: 10.76±2.1kg; これに対してFGF (+) 200mgエラスターゼ投与後: 10.74±1.3、処置後: 10.66±1.1kg])。エラスターゼは、2群の間での体重を減少させる傾向を有していた。FGF-2投与後には、重篤な副作用の徴候は無かった。これには、血小板減少症、貧血または腎不全が含まれる。
動脈血O2分圧(PaO2)のデータを図25Aに示す。基底線とエラスターゼ投与後の2群の間のいずれのパラメータにおいても相違は見出されなかった(FGF(-)、基底線:101.6±6.5 mmHg, 200mgエラスターゼ処置後: 80.5±9.8 mmHg; これに対してFGF(+)、基底線: 97.7±7.3 mmHg,200mgエラスターゼ処置後: 81.5±5.0 mmHg)。エラスターゼにより誘導された肺気腫モデルは、エラスターゼ投与後4週間で基底線よりも有意に(P=0.015)低いPaO2値を示した。PaOの減少は、エラスターゼの用量に依存していた。処置後4週間で、FGF(+)群でのPaOはFGF(−)群よりも有意に高かった[FGF(-): 79.4±6.9;これに対してFGF (+): 94.8±4.3; P = 0.036)。この結果は、肺機能がFGF(+)群において回復していたことを示す。
気管支内腔を、異なる圧力(5〜70cmH2O)で膨脹させた。エラスターゼ誘導した肺気腫モデルにおいて、P-V曲線は、ベースラインに比べて上方にシフトしていた。上方への移動率は、エラスターゼの用量に依存していた。処置後、FGF(−)群の曲線は、上向きにシフトを続けていた(FGF(-),基底線: 0.92±0.16 L, 50mgエラスターゼ処置後: 0.97±0.14 L、100mgエラスターゼ処置後: 1.03±0.16 L, 200mgエラスターゼ処置後:1.09±0.12 L, 処置後: 1.11±0.14 L]。他方、FGF(+)群では、下方にシフトしていた[FGF(+), 基底線: 0.90±0.18L, 50mgエラスターゼ処置後: 0.91±0.18 L, 100mgエラスターゼ処置後: 0.95±0.20 L, 200mgエラスターゼ処置後:1.08±0.22 L, 処置後: 0.97±0.20 L] (図25B)。FGF(+)群は、FGF(−)群よりも、呼気容量でよりよい回復を示していた。
(肺容量および組織学的な知見)
本実施例にわたるFGF-2の肺容積のサイズに対する効果のまとめを図25Cに示す。FGF(−)群の動物において、肺容積は、コントロール群に比べて過剰に膨脹していた。左肺の容積(FGF(+)群)は、FGF(−)群よりも減少していた[コントロール:380.0±82.9 cm3; FGF (-): 442.9±50.4 cm3; FGF (+): 402.8±71.8cm3)。生検において、エラスターゼによって生じる組織破壊には、生理的な変化が伴い、ガス交換について利用可能な表面積が顕著に減少した(図25D)。FGF(+)群では、肺胞の平均サイズは、FGF(−)群のものよりもコントロールのものに近かった。3群の間では、右肺のLmレベルには有意な差異は存在しなかった。エラスターゼを受けた左肺は、コントロールに比べて、有意にLmが増加していた[コントロール:52.3±2.8 μm; FGF (-): 71.6±4.0μm; FGF (+): 63.5±3.2μm)。コントロールにおけるLmレベルと、FGF(−)群におけるLmレベルは、有意に異なっていた(P<0.001)。FGF(+)群についてのLmの値は、FGF(−)群におけるものよりもFGF(+)群の方がよりよい回復を示していることを実証する(p=0.02)。
(考察)
気腫の気管支肺容量の減少(BLVR)は、静かにかつあまり侵襲性にならずに発達する。なぜなら、肺容量の減少手術(LVRS)は、5%から10%という高い死亡率を伴うからである。LVRSとは、気腫性の過剰に膨脹した肺の除去をいう。これにより、残りの肺気腫および呼吸器筋肉がより効率よく機能することが可能となる。米国のNational Emphysema Treatment Trialによる報告(NEJM 2003;348:2134-2136)では、LVRSは、少数の重篤な肺気腫の患者のみに効果があり得るとされている。なぜなら、多くの肺気腫患者の死亡率が統計学的に有意な増加を見せているからである。LVRSは、生存率全体としては、運動能力および健康に関連する生命の質の改善などの機能以外には何ら顕著な利益をもたらさなかった。外科的アプローチに代わる気管支鏡アプローチは、それほど侵襲性ではないとの報告がされており、種々の人工材料を用いてBLVR弁の手法が用いられている。
BLVR弁移植は、これまで安全かつ有効に容量を減少させつつ実施できた。この手順は、深刻な合併症を伴っていた。合併症には気胸、肺炎、出血などがあった。弁置換手術の技術は、正確な配置が非常に困難である。気腫性[肺胞内]嚢胞(ブラ)の収縮のため、完全に密閉した状態が必要であり、崩壊が生じ得る場所において熟練した技能が必要である。崩壊が生じ得る場合、保持された分泌物および人工材料が術後感染を引き起こし得るからである。線維芽増殖因子(FGF-2)は、最も強力な血管生成性増殖因子の一つであり、血管形成の促進のための因子として評価されている。FGF-2は、生理学的に好ましい血液供給および肺血流量を提供し得る。微小血管の異常を拡散させ、末梢の実質虚血を改善させる。肺機能の改善は、統計学的に有意であった。特に、肺の血流量の回復は、O2の動脈血分圧を回復を誘導した。これまでの研究において、本発明者らは、FGF-2が改善MRIと比較して顕著な対照を、肺血流量の回復量において見出した。FGF-2を伴うBLVRは、熟練した技能を必要とせず、容積減少の影響が不適切である場合、反復して実施され得る。さらに、FGF-2の線維形成は、BLVRの気胸の合併のリスクを減少させ得る。本実施例での研究におけるFGF-2の投与後の感染症、アテレクターゼ、アレルギー、および出血などの重篤な合併症の祥子は無く、FGF-2に基づく非手術性BLVRシステムは、FGF-2を用いた安全なBLVRを提供することになる。FGF-2を用いたBLVRは、線維形成により過剰に膨脹した領域の容積減少を提供し、そしてFGF-2の血管形成を伴う肺末梢虚血の改善がもたらされる。従って、この研究でっは、肺機能の回復が実証された。気管支内FGF-2での処置は、完全に非侵襲性の投与とするために、ネブライザを用いることもできる。
FGF-2単独の導入によって実質の再生および肺胞の隔膜を達成することを試みるにおいていくつか困難が存在する。なぜなら、細胞外環境において、多くの増殖因子および生物学的レギュレーターが互いに相互作用し、実質の再生または肺胞隔壁を作製することができるからである(VenutaF, Giacomo TD, Rendina EA, Ciccone AM, Diso D, Perrone A, Parola D, Anile M,Coloni GF. Bronchoscopic lung-volume reduction with one-way valves in patientswith heterogenous emphysema Ann Thorac Surg 2005; 79: 411-417.;)。動脈Oガスデータにおける改善は、以下に説明され得る。FGF-2処置は、罹患していた肺における容積現象をもたらし、血流における改善をもたらし、その後、肺胞のガス圧も改善された。酸素の血流への取り込みは、肺胞および毛細管の酸素分圧(すなわちAaDO2)の相違の存在に依存することから、これらの改善は、V/Qシャントの改善、肺のガス交換能の改善をもたらす。実際、ほとんど低酸素減少症は、FGF-2処置後に見られ、そしてすべてのイヌの呼気の能力が改善されており、呼気の証拠が不十分である可能性がある増殖因子は、体内でのある変化を生じ得る。これらの変化を1つずつ見出すためには、より詳細な実験を行う必要があるが、必ずしも必要ではない。
結論として、FGF−2に基づくBLVRシステムは、安全なBLVRを提供し、FGF−2針なしで熟練した技能を必要とせず、反復して、用量現象の効率が不適切である場合反復して実施され得る。単純な気管支鏡アプローチによって、気腫性実質を選択的に減少させることができ、FGF-2の気管支内投与によって、肺血流量の顕著な増加を誘導し、肺機能の回復を誘導することができた。このようなことは、従来の技術では不可能であったことであり、その顕著性が注目される。
(本発明を実施するにおいて参酌され得る参考文献)
以下の文献は、本発明を実施するにおいて参酌され得るが、これらの文献は、本願発明に対して先行技術であることを認める趣旨ではないことに留意すべきである。
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(実施例8:肺投与デバイス)
次に、肺投与を実現するための手段として、正確に肺投与をすることができる薬物投与システムを開発した。この手段は、気管支鏡の側方から挿入可能であり、側方にチャネルを設けることにより、薬物と空気とが混合されるようにした。
上記実施例において実証されるような肺の再生を行うには、細胞増殖因子が有効であることが分かったが、細胞増殖因子は、発癌性または転移促進性などの副作用も考えられることから、その投与は正確に行うべきである。従来の気管支鏡はそのほとんどが正確さという点で使用に耐え得るものではなかった。
まず、カテーテル型の空気スプレーを用意した。このカテーテルは、市販のものを利用しても良いし、自己製作しても良い。いずれにしても、臨床医が気管支鏡の側方チャネルに接続できるような構造をしていることが好ましい。そのような例を図6に示す。
気管支鏡としては、例えば、OLYMPUSから販売されているものを使用することができる。気管支鏡の利点は、臨床医が気管支を観察しながら、空気スプレーされる箇所を正確に肺に配置することができる点にある。このようにして、投与されるべき場所が正確に決定されるべき細胞増殖因子の投与を正確に行うことができる。
図26を見ながら、本発明の投与デバイスを説明する。本発明の投与デバイスは、近位端(102)と、遠位端(104)と、薬剤供給容器(122)との連通のための薬剤チャネル(106)と、圧縮空気供給器(132)との連通のための圧縮空気チャネル(108)とを有するカテーテル管(110);カテーテルの遠位端(104)に配置される噴射オリフィス(112)を備えるように構成されている。ここでは、カテーテル管(110)内において、薬剤供給源(122)から提供される薬剤が、圧縮空気チャネル(108)を通って提供される圧縮空気と混合され、その結果、噴射オリフィス(112)において、薬剤が噴霧される。このカテーテルは、気管支鏡に装着可能である。
ここで、好ましい実施形態では、bFGFのような薬剤を含む薬剤セットは、内容に応じた薬剤(bFGFなど)の量および濃度を規定した粉末(bFGFなどの粉末)および溶解液別容器と、注入器のセットから構成される。薬剤溶液は、使用時に混合して注入器に入れ使用することができる(図26右下参照)。
このデバイスは、経口的に直接投与するデバイスとカテーテルにより経気道的または経口的に直接投与する。このデバイスは、肺投与システムまたは吸入装置とは、広義の吸入相地を、薬剤(例えば、bFGF)の使用のための一方弁とその自動開閉システムを含む。ここで、この装置は、例えば、ウルトラネブライザーを含む薬剤霧発生装置、一方弁(デマンドバルブ=吸気信号でONとなり、呼気信号でOFFとなるデマンドバルブ)およびマウスピースを備えることによって、家庭用の仕様とすることができる(図31)。
このような構成は、細胞増殖因子などの肺中に投与すべき薬物の正確な投与に適切である。従来使用されているネブライザーは吸入のためのミストを生成するが、ミストは、口腔粘膜に吸着したりして、副作用を起こす危険性が高い。従って、本実施例に示されるような気管支鏡を利用したデバイスはこのような副作用を軽減する効果がある。
本実施例において例示されるようなデバイスを用いることにより、処置されるべき部位のみに投与されるべき薬剤(例えば、細胞増殖因子)が正確に投与される。特に、本実施例のようなデバイスを利用すれば、細胞増殖因子が水溶液の形態でも容易に投与することができるようになった。
これは、従来のように静脈注射によって細胞増殖因子を投与したときに全身投与されることによって予測される副作用を回避し、超音波ネブライザーが使用されるときに、予測される細胞増殖因子の呼吸器系(例えば、口腔粘膜など)への沈着によって生じる副作用などを回避することにつながる。
本実施例において例示するように、気管支鏡を使用することによって、臨床医が気管支を観察しながら、好ましくはリアルタイムに、薬物を処置すべき部位(罹患部位など)にピンポイントに投与することができるようになった。
以下に、細胞増殖因子が気管支鏡を用いた場合にどのように投与されるかを説明する。気管支鏡は通常、側方チャネルが設けられており、このチャネルに、本実施例において例示されるようなカテーテル型の投与デバイスが装着される。この投与デバイスには、チャネルが少なくとも2つ設けられ、一方は薬剤供給容器に接続可能であり、他方は圧縮空気供給器と接続可能である。
カテーテル型の本発明のデバイスは、ディスポーザブルにできるがそれに限定されない。ディスポーザブルとするためには、例えば、ポリプロピレンなどの高分子材料を用いることができる。
本発明のデバイスは、近位末端付近に設けられる圧縮空気チャネル(108)を通じて圧縮空気供給器(エアコンプレッサ;132)と連通される。圧縮空気がカテーテルの先端にもたらされると、先端が開口し、空気またはカテーテル内にある任意の物質がジェット流として噴出され、カテーテルが気管支鏡により気管支または肺に配置されているときには、その配置場所に正確に送達される。
図26に示されているように、本発明の投与デバイスは、薬剤供給容器(122)との連通のための薬剤チャネル(106)と、圧縮空気供給器(132)との連通のための圧縮空気チャネル(108)という少なくとも2つのチャネルを備えている。薬剤と空気とがカテーテルの先端で混合されるとき、ジェットが形成される。薬物が投与システムに装填されているときには、水溶液の形態であってもよく、ゼラチン結合体などの粉末のような他の形態であっても良い。実施例5において説明したようにCOPDを処置する場合、薬物としては、塩基性線維芽細胞増殖因子などの細胞増殖因子が投与される。
薬物がシリンジ容器から押し出される場合、好ましくは同時に空気が圧縮される。この場合、気道を通じて逆流する可能性もあることから、一方向弁などを用いることによって行い、薬物が、カテーテルの近位に逆流しないように構成することもできる。
図26に示されるように、カテーテルは、薬物供給容器および圧縮空気供給器と接続されるように構成される。
次に、図27(AおよびB)を参照して、システム構成を行う場合の説明を行う。このうち、図27Aは、先止めの方式を記載する。図27Bには後止め方式も記載する。
図27には、電気回路を用いて制御する場合の本発明の投与デバイスの模式図が示されている。示されるように、薬剤および圧縮空気は別々に制御することが可能である。
図28は、カテーテルの近位末端における細部の説明を示す。図28に示されるように、本発明のカテーテルは、圧縮空気供給器(エアコンプレッサ)および薬物供給容器としてのシリンジに接続されている。示されるように、近位端は、薬物供給容器との連通のための薬剤チャネルをかねていても良い。
次に、図29(AおよびB)を用いて、カテーテルの遠位端を説明する。図29Aは、先止め方式の物を記載する。図29Bには後止め方式を記載する。
図29に示されるように、薬剤および圧縮空気が、例えば、カテーテルの先端において遭遇すると、ジェット流となり、適切に配置された噴射オリフィス(112)から、所望の部位(例えば、罹患した部位、気管支、肺など)に薬剤が送達される。
このような構成をとることによって、臨床医が正確に肺または気管支などに薬剤を正確に投与することができるようになる。特に、細胞増殖因子を罹患部位(例えば、肺)に正確に投与する場合、本発明の投与システムは特に有用である。
このような装置の全体図は、図30に示す。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明によって、肺疾患の処置および予防、ならびに肺組織の再生を行うことができる。したがって、本発明の産業上の利用は、例えば、医薬品業界において見出される。

Claims (70)

  1. キャリアフリーの細胞増殖因子を含む、肺疾患の処置のための医薬組成物。
  2. 前記肺疾患は、肺組織の破壊を伴う、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 前記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
  5. 前記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記細胞増殖因子は、bFGFである、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含むbFGFまたはその改変体である、請求項1に記載の医薬組成物。
  8. 前記細胞増殖因子は、ドライパウダー形態または水溶液の形態で提供される、請求項1に記載の医薬組成物。
  9. 前記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  10. 肺組織の予防または処置のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システム。
  11. 前記細胞増殖因子は、ドライパウダーまたは水溶液の形態で存在する、請求項10に記載のシステム。
  12. 前記肺投与のための手段は、吸入装置または気管支鏡を含む、請求項10に記載のシステム。
  13. 前記肺投与のための手段は、肺への選択的投与を可能にする、請求項10に記載のシステム。
  14. 前記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、請求項10に記載のシステム。
  15. 前記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、プケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、請求項10に記載のシステム。
  16. 前記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、請求項10に記載のシステム。
  17. 前記細胞増殖因子は、bFGFである、請求項10に記載のシステム。
  18. 前記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示す配列を含むbFGFまたはその改変体である、請求項10に記載のシステム。
  19. 前記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、請求項10に記載のシステム。
  20. キャリアフリーの細胞増殖因子を含む、肺組織の再生のための医薬組成物。
  21. 前記細胞増殖因子は、肺細胞の増殖に有効な濃度で存在する、請求項20に記載の医薬組成物。
  22. 前記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、請求項20に記載の医薬組成物。
  23. 前記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
  24. 前記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、請求項20に記載の医薬組成物。
  25. 前記細胞増殖因子は、bFGFである、請求項20に記載の医薬組成物。
  26. 前記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示す配列を含むbFGFまたはその改変体である、請求項20に記載の医薬組成物。
  27. 前記細胞増殖因子は、ドライパウダー形態または水溶液の形態で提供される、請求項20に記載の医薬組成物。
  28. 前記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
  29. 肺組織の再生のためのシステムであって、肺投与のための手段、およびキャリアフリーの細胞増殖因子を肺投与に適した形態で含む、システム。
  30. 前記細胞増殖因子は、ドライパウダーまたは水溶液の形態で存在する、請求項29に記載のシステム。
  31. 前記肺投与のための手段は、吸入装置または気管支鏡を含む、請求項29に記載のシステム。
  32. 前記肺投与のための手段は、肺への選択的投与を可能にする、請求項29に記載のシステム。
  33. 前記細胞増殖因子は、血管新生作用を有する、請求項29に記載のシステム。
  34. 前記細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、アドレノメジュリン、インターロイキン1〜17、一酸化窒素、レチノイン酸、ケモカインおよびプロスタグランジンからなる群より選択される、請求項29に記載のシステム。
  35. 前記細胞増殖因子は、血小板由来の血清または血漿の形態で提供される、請求項29に記載のシステム。
  36. 前記細胞増殖因子は、bFGFである、請求項29に記載のシステム。
  37. 前記細胞増殖因子は、配列番号2または4に示す配列を含むbFGFまたはその改変体である、請求項29に記載のシステム。
  38. 前記肺疾患は、肺線維症の処置後の状態または肺気腫を含む、請求項29に記載のシステム。
  39. 肺組織を処置するための方法であって、
    (a)キャリアフリーの細胞増殖因子を、処置されるべき肺組織に投与する工程、
    を包含する、方法。
  40. 前記細胞増殖因子は、肺組織に選択的に投与される、請求項39に記載の方法。
  41. 前記細胞増殖因子は、肺組織以外には実質的に投与されない、請求項39に記載の方法。
  42. 肺組織を再生するための方法であって、
    (a)キャリアフリーの細胞増殖因子を、肺組織に投与する工程、
    を包含する、方法。
  43. 前記細胞増殖因子は、肺組織に選択的に投与される、請求項42に記載の方法。
  44. 前記細胞増殖因子は、肺組織以外には実質的に投与されない、請求項42に記載の方法。
  45. 肺組織の処置のための物質をスクリーニングする方法であって、該方法は以下の工程:
    A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;
    B)候補化合物を、該肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;および
    C)該被検体が治癒した場合、該候補化合物は該肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定する工程;
    を包含する、方法。
  46. 前記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、請求項45に記載の方法。
  47. 前記候補化合物は、タンパク質、核酸、脂質、糖、有機低分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
  48. 前記候補化合物は、細胞増殖因子を含む、請求項45に記載の方法。
  49. 肺組織の処置のための物質をスクリーニングするためのシステムであって、該システムは、以下:
    A)肺投与に適した肺投与システム;および
    B)候補化合物を投与して被検体が治癒した場合、該候補化合物は該肺組織の処置のための物質であることの指標であると判定するための手段、
    を備える、システム。
  50. 前記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、請求項49に記載のシステム。
  51. 前記判定手段は、肺組織の治癒に関する既知情報が格納された記録媒体をさらに備える、請求項49に記載のシステム。
  52. 肺組織の再生のための物質をスクリーニングする方法であって、該方法は以下の工程:
    A)肺投与に適した肺投与システムを提供する工程;
    B)候補化合物を、該肺投与システムを用いて被検体に投与する工程;および
    C)該被検体において肺細胞が再生した場合、該候補化合物は該肺組織の再生のための物質であることの指標であると判定する工程;
    を包含する、方法。
  53. 前記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、請求項52に記載の方法。
  54. 前記候補化合物は、タンパク質、核酸、脂質、糖、有機低分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項52に記載の方法。
  55. 前記候補化合物は、細胞増殖因子を含む、請求項52に記載の方法。
  56. 肺組織の再生のための物質をスクリーニングするためのシステムであって、該システムは、以下:
    A)肺投与に適した肺投与システム;および
    B)候補化合物を投与して被検体における肺細胞が再生した場合、該候補化合物は該肺組織の再生のための物質であることの指標であると判定するための手段、
    を備える、システム。
  57. 前記肺投与システムは、吸入装置または気管支鏡を含む、請求項52に記載のシステム。
  58. 前記判定手段は、肺組織の再生に関する既知情報が格納された記録媒体をさらに備える、請求項52に記載のシステム。
  59. 細胞増殖因子の、肺疾患の処置のための医薬組成物の調製における使用。
  60. 細胞増殖因子の、肺組織の再生のための医薬組成物の調製における使用。
  61. 肺投与システムの、肺組織の処置のための医薬組成物のスクリーニングにおける使用。
  62. 肺投与システムの、肺組織の再生のための医薬組成物のスクリーニングにおける使用。
  63. 肺疾患の処置のデバイスであって、
    A)キャリアフリーの薬剤を患者に供給するための投与手段、
    を含む、デバイス。
  64. 前記デバイスは、
    近位端と、遠位端と、薬剤供給容器との連通のための薬剤チャネルと、圧縮空気供給器との連通のための圧縮空気チャネルとを有するカテーテル管;
    該カテーテルの遠位端に配置される噴射オリフィス;
    を備え、
    該カテーテル内において、該薬剤供給源から提供される薬剤が、該圧縮空気チャネルを通って提供される圧縮空気と混合され、その結果、該噴射オリフィスにおいて、該薬剤が噴霧される、請求項63に記載のデバイス。
  65. キャリアフリーの細胞増殖因子を含む薬剤供給容器をさらに備える、請求項63に記載のデバイス。
  66. 圧縮空気供給器をさらに備える、請求項63に記載のデバイス。
  67. 前記薬剤は、水溶液として存在する、請求項65に記載のデバイス。
  68. 前記デバイスは、気管支鏡に装着されるように構成される、請求項63に記載のデバイス。
  69. 前記薬剤は、細胞増殖因子を含む、請求項63に記載のデバイス。
  70. 請求項63〜69のいずれか1項に記載のデバイスと、気管支鏡とを備える、細胞増殖因子の投与システム。
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