JP2005206485A - イソキノリンスルホンアミド誘導体を含有する医薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】 慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬、及び高い安全性と有効性を有する吸入剤の形態の医薬を提供する。
【解決手段】 慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬であって、下記の式(I):
【化1】
Figure 2005206485

(式中、R1は水素又は水酸基を示す。)
で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬、及び該化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む吸入剤の形態の医薬。

Description

本発明は、塩酸ファスジルなどのイソキノリンスルホンアミド誘導体を有効成分として含む慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬に関する。また、本発明は、該イソキノリンスルホンアミド誘導体を有効成分として含む吸入剤に関する。
下記の一般式(I)で表される化合物が血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧降下作用等を示し、血管拡張剤、脳循環改善剤、狭心症治療薬、血圧降下剤、脳心血管系の血栓症の予防及び治療剤、脳機能改善剤、抗喘息剤、心臓保護剤、抗炎症剤、炎症性サイトカイン産生抑制剤等に有効な物質であることは特許文献1又は2などの刊行物に記載されている。
Figure 2005206485
(式中、R1は水素又は水酸基を示す。)
特許文献3には、HA−1077(Fasudil)等のミオシンリン酸化酵素(MLCK)阻害剤がobstructive disorder等の呼吸器病の治療に有用であるとの示唆がある。同刊行物には、obstructive disorderとはbronchitis(気管支炎)、bronchiolitis(細気管支炎)、emphysema(肺気腫)等であり、特に慢性又は重症の場合であるとの説明がなされている。しかしながら、適用疾患として挙げられた上記の疾患については、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPDと略す)の重要な診断指標である「完全には可逆的でない気流閉塞(非特許文献1)」という病態に薬剤が有効であることは明らかになっていない。
上記一般式(I)で表される化合物を含む医薬組成物の剤形については、特許文献4には注射剤が、特許文献5には経口叙放性製剤がそれぞれ開示されている。また、上記特許文献3には、HA−1077(ファスジル:Fasudil)を経口又は吸入によって投与できるとの示唆はある。しかしながら、上記刊行物には、上記一般式(I)で表される化合物を含む吸入剤が、十分な薬効と安全性を持つための製剤化技術については全く開示されていない。
特開平03−258763号公報 特開平04−264030号公報 米国特許出願公開2003−125321号公報 特開平09−024085号公報 国際公開第00/09133号パンフレット 植木純ら、現代医療、Vol.34,No.9,pp.87−92, 2002
本発明の課題は、慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬を提供することにある。また、本発明の別の課題は、例えば慢性閉塞性肺疾患などに適用可能な吸入剤の形態の医薬であって、十分な薬効と安全性を有する医薬を提供することにある。
本発明者らは、式(I)で表される化合物の薬効について研究を重ねた結果、驚くべきことに、該化合物を有効成分とする医薬を慢性閉塞性肺疾患の病態モデルに投与すると、顕著な治療効果が得られることを見出した。また、該化合物を有効成分とする吸入剤の形態の医薬を調製して投与することにより、各種病態動物モデルにおいて副作用を起こすことなく症状を改善することを見出した。本発明は、上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明により、
(1) 慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬であって、下記の式(I):
Figure 2005206485
(式中、R1は水素又は水酸基を示す。)
で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬、
(2) β2アドレナリン受容体刺激剤、抗コリン剤、ステロイド剤、及びキサンチン誘導体からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤をさらに含む医薬組成物の形態の請求項1に記載の医薬、
(3) 吸入剤である(1)又は(2)に記載の医薬、
(4) 有効成分が塩酸ファスジルである(1)ないし(3)のいずれかに記載の医薬、
(5) 下記式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む吸入剤、
(6) 経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤である請求項5に記載の吸入剤、
(7) 有効成分を含有する医薬が固体又は液体である(5)又は(6)に記載の吸入剤、
(8) 有効成分を含有する医薬が液体である(6)に記載の吸入剤、
(9) 水溶液中の有効成分濃度が、水溶液全重量に対して0.005%ないし5重量%である(8)に記載の吸入剤、
(10) 吸入用粉末製剤である(7)に記載の吸入剤、
(11) 放出される微粒子の粒径が10μm以下である(5)ないし(10)のいずれかに記載の吸入剤、
(12) 慢性閉塞性肺疾患の治療剤及び/又は予防のために用いる(5)ないし(11)のいずれかに記載の吸入剤、及び
(13) 有効成分が塩酸ファスジルである(5)ないし(12)のいずれかに記載の吸入剤
が提供される。
別の観点からは、慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防方法であって、上記の式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩の治療及び/又は予防有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。また、上記の医薬の製造のための上記の式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩の使用も本発明により提供される。
さらに別の観点からは、本発明により、上記の式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む吸入剤の形態の医薬が提供される。この発明の好ましい態様によれば、経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤である上記の医薬;有効成分を含有する内容物が固体又は液体である上記の医薬;有効成分を含有する内容物が液体である上記の医薬;水溶液中の有効成分濃度が、内容物全重量に対して0.005%ないし5重量%である上記の医薬;吸入用粉末製剤である上記の医薬;放出される微粒子の粒径が10μm以下である上記の医薬;慢性閉塞性肺疾患の治療剤及び/又は予防のために用いる上記の医薬;β2アドレナリン受容体刺激剤、抗コリン剤、ステロイド剤、及びキサンチン誘導体からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤を内容物中に含む上記の医薬;有効成分が塩酸ファスジルである上記の医薬も提供される。
上記の式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む本発明の医薬は、慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬として有用である。また、上記の式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む吸入剤の形態の本発明の医薬は、副作用が軽減ないし回避されており、高い有効性を発揮できることから、慢性閉塞性肺疾患などの各種疾患の治療及び/又は予防のための医薬として極めて有用である。
上記式(I)で表される化合物は、具体的には以下の化合物である。
(A)1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン
(B)1−(1−ヒドロキシ−5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン
上記の化合物の薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸等の無機酸、又は酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸等の有機酸を挙げることができるが、これらに限定されることはない。さらに遊離形態の化合物又は薬理学的に許容されるその塩の任意の水和物又は溶媒和物も本発明の医薬の有効成分として用いることが可能である。式(I)で表される化合物は、公知の方法、例えば特開昭57−156463号公報等に記載方法により合成することができ、さらに公知の方法に従って各種の塩又は水和物を調製することができる。
上記式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む本発明の医薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療及び/又は予防に有用である。本明細書において、慢性閉塞性肺疾患とはGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)のガイドライン記載の定義を満たす疾患を意味し(植木純ら、現代医療、Vol.34,No.9,pp.87−92, 2002)、例えば完全には可逆性ではない気流制限を特徴とする疾患を挙げることができる。臨床的には、COPDは、咳や痰などの自覚症状やリスクファクター(喫煙によるタバコ煙の吸入、職業上の粉塵や化学物質等の吸入などが挙げられる)への曝露歴を考慮し、気流制限の程度を基に診断される。気流制限の程度は、例えばスパイロメトリーによって測定することができる。GOLDのガイドラインでは、FEV1.0(1秒量)値、及びFEV1.0値とFVC(努力性肺活量)値の比であるFEV1.0/FVC(1秒率)を診断指標に用いており、1秒量が予測値の80パーセント未満かつ、1秒率が70パーセント未満である場合に軽症以上の慢性閉塞性肺疾患と診断される。本発明の医薬が慢性閉塞性肺疾患の治療剤及び/又は予防に有効であることは、例えば、モルモットのタバコ煙暴露モデル等を用いて確認することができる。このモデルは、タバコ煙への曝露により、経時的に気流閉塞が進行することが報告されており、不可逆的な気流閉塞を有する病態モデルと考えられる。一方、LPS誘発気道炎症モデルやヒスタミン誘発気道収縮モデル、摘出気管支の収縮抑制モデルなどのような不可逆的な気流閉塞を伴わないモデルでは、薬物の慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防に有効であることは確認できない(Fuchigami,J.et al.,Jpn.J.Pharmacol.82,pp.247.(2000))。
本発明の医薬の投与方法は特に限定されず、経口投与又は非経口投与のいずれかの投与経路により投与することができる。本発明の医薬としては、有効成分である上記式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩をそのまま投与してもよいが、上記有効成分と1種又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが望ましい。経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、丸剤などを挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤(液剤、凍結乾燥製剤、懸濁剤等)、吸入剤などが挙げられる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療及び/又は予防のための本発明の医薬は、経口剤又は吸入剤であることが好ましい。特に好ましいのは吸入剤の形態である。例えば、上記の有効成分を溶剤に溶かし、又は懸濁した薬液を、そのまま吸入する又はアトマイザーやネブライザーなどの噴霧器を用いて霧状として吸入することができる。溶剤の例としては、水、生理食塩水、デキストロース、または類似の糖類溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。
これらの医薬組成物の調製には、当業界で通常用いられている製剤用添加物(例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、緩衝剤、コーティング剤、矯味剤、着香剤、乳化剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、粘稠剤、pH調節剤など)を用いて常法により製造することができる。具体的な添加物の例としては、ゼラチン;乳糖、グルコース等の糖類;小麦、米、とうもろこし澱粉等の澱粉類;ステアリン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩;タルク;植物油;ステアリンアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール;ガム;ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
上記医薬組成物中の有効成分の含有量は剤型に応じて適宜選択可能であるが、例えば、医薬組成物の全重量に対して下限は0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上であり、上限は100重量%以下、好ましくは50重量%以下である。本発明の医薬の投与量は、患者の年齢、体重、性別、疾患の種類、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、例えば1〜500mg程度、好ましくは1〜100mg程度、特に好ましくは1〜30mg程度が例示される。これらの投与量を1日あたり1回又は数回に分けて投与することができる。
有効成分である上記の式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を含み、慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のために用いられる本発明の医薬は、他の1つ以上の薬剤と適宜組み合わせて使用することができる(上記の一般式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩との組み合わせに用いられる薬剤を、以下、本明細書において「併用薬剤」と呼ぶ。)。併用薬剤の使用が好ましいか否かは、例えば前記の試験方法において、上記有効成分と併用薬剤とを組み合わせて投与した場合に、上記有効成分単独の投与と比較して好ましい成績を示すことにより理解される。
具体的には、まず、例えば1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン等の一般式(I)で表される化合物を前記の試験法にて評価した結果を以って、一般式(I)で表される化合物の慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防剤としての有用性が確認される。さらに、1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン等の一般式(I)で表される化合物に、例えば、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸フォルモテロール、キシナホ酸サルメテロールなどβアドレナリン受容体刺激剤、臭化チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウムなど抗コリン剤、テオフィリン、アミノフィリンなどキサンチン誘導体、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニドなどステロイド剤等の各併用薬剤を組み合わせて評価した結果をもって、組み合わせによる医薬の有用性がより高いことが確認される。
上記の組み合わせにあたっては、上記の一般式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩及び併用薬剤のそれぞれの投与時期は限定されない。両者が同時に投与される医薬、あるいは両者が互いの効果が期待される範囲の時間差をおいて投与される医薬であってもよく、これらの投与形態はともに本発明の範囲に含まれる。また、上記の一般式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩と併用薬剤とが別々の形態で調製されている医薬、あるいは両者が混合されて1つの医薬組成物の形態として調製されている医薬の投与形態も本発明の範囲に含まれる。また、上記の一般式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩と併用薬剤とが、同一の投与経路で投与される医薬である場合、あるいは別々の投与経路で投与される医薬である場合も本発明の範囲に含まれる。両者を含む医薬を調製する場合には、上記の一般式(I)で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩と併用薬剤両者との配合比、両者の混合後の形態等は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、物性、投与の容易性などに応じて適宜決定することができる。
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられる用量を基準として適宜選択することができる。併用薬剤は低分子化合物やペプチドであってもよく、また高分子のタンパク、ポリペプチド、核酸オリゴマー、ペプチド核酸(PNA)オリゴマー、抗体等であってもよく、あるいはワクチン等であってもよい。例えば投与対象がヒトである場合、一般式(I)で表される本発明化合物又は薬理学的に許容されるその塩の1重量部に対し、併用薬剤は0.01ないし100重量部用いることが好ましい。さらに詳細に説明すると、併用薬剤の添加の下限としては、特に本発明の効果を示す限り特に限定されないが、一般式(I)で表される本発明化合物又は薬理学的に許容されるその塩の1重量部に対し、併用薬剤は、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上、又は0.5重量部以上、又は1重量部以上、がそれぞれ挙げられる。また併用薬剤の添加の上限は特に限定されることはないが、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは25重量部以下、または10重量部以下がそれぞれ挙げられる。
式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と併用薬剤とが組み合わされた医薬は、さらに必要に応じて前述の製剤用添加物を適宜用いて、経口剤、注射剤、吸入剤などの好ましい形態で使用することができるが、吸入剤であることがより好ましく、経肺用吸入剤であることがさらに好ましい。式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、気管拡張作用及び/又は抗炎症作用を有する薬剤とを組み合わせた医薬がより好ましい。
気管拡張作用を有する薬剤としては、例えばβ2アドレナリン受容体刺激剤、NKアンタゴニスト、キサンチン誘導体、抗コリン剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤等を挙げることができ(一ノ瀬正和、呼吸器病New Approach8、閉塞性肺疾患、MEDICAL VIEW社、2002年)、これらのいずれか1つ又は2つ以上を用いることができる。式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、β2アドレナリン受容体刺激剤、NKアンタゴニスト、キサンチン誘導体、抗コリン剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤とが組み合わされていることが好ましい。
本明細書において、抗炎症作用とは慢性閉塞性肺疾患における炎症に対して改善作用を意味し、より具体的には、例えば、好中球や肥満細胞等白血球の肺への浸潤の抑制(Gizycki,ML.et al.,Thorax57(9),799−803.(2002))、組織のエラスチンやコラーゲン分解の抑制(Culpitt,SV.et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.165,1371−76(2002))、TNF−αやIL−8やGM−CSF等のサイトカイン産生抑制(Profita,M.et al.,Thorax 58(7),573−9.(2003))等の作用を含む概念である。抗炎症作用を有する薬剤としては、例えばステロイド剤、キサンチン誘導体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤等を挙げることができ、これらのいずれか1つ又は2つ以上を用いることができる。式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、ステロイド剤、キサンチン誘導体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、及びエラスターゼ阻害剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤とが組み合わされていることが好ましい。
また、気管拡張作用又は抗炎症作用のいずれか一方の作用を有する薬剤の他に、気管拡張作用と抗炎症作用とを併せ持つ薬剤も知られている。このような薬剤としては例えばキサンチン誘導体、ホスホジエステラーゼ阻害剤を挙げることができ、これらのいずれか1つ又は2つ以上を用いることができる。すなわち、気管拡張作用を有する薬剤及び/又は抗炎症作用を有する薬剤には、気管拡張作用を有する薬剤、抗炎症作用を有する薬剤、及び気管拡張作用と抗炎症作用とを併せ持つ薬剤が包含され、好ましくは、例えば、β2アドレナリン受容体刺激剤、NKアンタゴニスト、キサンチン誘導体、抗コリン剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ステロイド剤、及びエラスターゼ阻害剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤を用いることができる。β2アドレナリン受容体刺激剤、キサンチン誘導体、抗コリン剤、及びステロイド剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤を用いることがより好ましい。
好ましいβ2アドレナリン受容体刺激剤としては、例えば、サルブタモール、テルブタリン、フェノテロール、フォルモテロール、サルメテロール(国際公開95/01324号パンフレット)又はこれらの薬理学的に許容される塩が挙げられ、より好ましくは硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸フォルモテロール、キシナホ酸サルメテロールが挙げられる。好ましいNKアンタゴニストとしては、例えばタルネタント又はこれらの薬理学的に許容される塩等が挙げられ、より好ましくはタルネタント等が挙げられる(米国特許5811553号明細書)。
キサンチン誘導体とは、キサンチンの構造類縁体を指す。好ましいキサンチン誘導体としては、例えばテオフィリン、アミノフィリン又はこれらの薬理学的に許容される塩が挙げられ、さらに、テオフィリン、アミノフィリンがより好ましい例として挙げられる。抗コリン剤とは、ムスカリン受容体の3つのサブタイプ(M1,M2,M3)のうち、少なくともM3サブタイプに対してアンタゴニストとして作用し、気管拡張作用を現すものを意味する(一ノ瀬正和、呼吸器病New Approach8 閉塞性肺疾患、pp.68−76.2003,MedicalView社)。好ましい抗コリン剤としては、例えばチオトロピウム(米国特許5610163号明細書)、イプラトロピウム(米国特許3505337号明細書)、オキシトロピウム(Banholzer,VR.et al.,Arzneimittelforschung 35(1A)217−28.(1985))又はこれらの薬理学的に許容される塩が挙げられる。薬理学的に許容される塩としては、臭化チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム(Ba253)が例示される。
ステロイド剤としては、吸入剤の調製が可能なステロイド剤が好ましい。このようなステロイド剤としては、例えばベクロメタゾン、フルチカゾン(英国特許2088877号明細書)、ブデソニド(特開2000―128897号公報)又はこれらの薬理学的に許容される塩が好ましく、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニドがより好ましい。これらはいずれか1つも好ましく、いずれか2つ以上も好ましい。好ましいPDE阻害剤としては、例えばPDE4阻害剤が挙げられ、例えばシロミラスト(Griswold,DE.et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.287(2),705−11.(1998))、ロフルミラスト(Bundschuh,DS.et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.297(I),280−90.(2001))、アロフィリン(欧州特許出願公開0435811号明細書)又はこれらの薬理学的に許容される塩が好ましい例として挙げられる。さらに、シロミラスト、ロフルミラスト、アロフィリンがより好ましい例として挙げられる。好ましいエラスターゼ阻害剤としては、例えばシベレスタット(Kawabata,K.et al.,Biochem.Biophys.res.commun.177(2),814−20.(1991))、ミデステイン(MR889)(Baici,A.et al.,Biochem.Pharmacol.39(5),919−24.(1990))又はこれらの薬理学的に許容される塩等が挙げられる。より好ましくはシベレスタットナトリウム、ミデステインが挙げられる。
また、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、抗生物質とが組み合わされた医薬、あるいは式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、去痰剤とが組み合わされた医薬も好ましい。抗生物質としては、例えばマクロライド系抗生物質が好ましく、エリスロマイシン等がより好ましい例として挙げられる。以上に例示した併用薬剤は1種を用いてもよく、あるいは2種以上を適宜組合わせて用いることができる。
別の観点から提供される本発明の吸入剤は、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む吸入剤であり、血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧降下作用を発揮できる吸入剤である。より具体的には、本発明の吸入剤は、例えば、血管拡張剤、脳循環改善剤、狭心症治療薬、血圧降下剤、脳心血管系の血栓症の予防及び治療剤、脳機能改善剤、抗喘息剤、心臓保護剤、抗炎症剤、炎症性サイトカイン産生抑制剤として用いることができ、具体的には、脳梗塞、脳血栓、脳塞栓、脳出血、脳血管攣縮、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳動脈硬化症、頭部外傷、脳浮腫もしくは、これら疾患に基づく精神症状、神経症状、日常生活動作障害、健忘症、痴呆あるいは、脊髄損傷、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心筋梗塞合併症、心筋梗塞治療における再還流障害、心不全、骨粗鬆症、骨折、骨欠損、骨軟化症、骨減少症、歯周疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、肝炎、肝硬変、腎炎、腎不全、肺高血圧症、線維症、移植後の血管病変、糖尿病、アレルギー、喘息、ウィルス感染症、緑内障、網膜症、勃起不全、COPD等の治療及び/又は予防に用いることができる。また、本発明の吸入剤は、呼吸器疾患の治療及び/又は予防にも用いることができる。呼吸器疾患としては、例えば喘息、アレルギー、慢性閉塞性肺疾患などを挙げることができるが、慢性閉塞性肺疾患がより好ましい。特に好ましくは慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬として投与することができる。
上記一般式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む吸入剤は、例えば経肺用吸入剤として、例えば上記の各種疾患の治療及び/又は予防に用いることができるが、呼吸器疾患の治療及び/又は予防に用いることが好ましい。より好ましくは慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬として投与することができる。また、上記の吸入剤は、例えば経鼻用吸入剤として、鼻腔や咽頭の疾患、例えばアレルギー性鼻炎やアレルギー性咽頭炎等の治療及び/又は予防に用いることが好ましい。さらに、経鼻用吸入剤は、鼻腔や咽頭の疾患以外にも、上に例示した各種疾患の治療及び/又は予防に用いることが好ましい。
上記の各疾患に対する、経肺用吸入剤の治療剤及び/又は予防剤としての有効性は、例えば各疾患の病態モデル動物の吸気の間に薬剤を口から吸入投与し、口腔、気管を経て肺内に到達した薬剤の作用によって確認することができる。経肺用吸入剤の投与方法としては、例えば、病態モデル動物の口の部分を差込み、自発呼吸によって薬剤を吸入させるためのチャンバを備えた曝露装置を用いる方法や、病態モデル動物への薬剤の気管支注入法(Schanker,LS.et al.,Drug Metab.Dispos.14(1),pp.79−88.(1986)等が挙げられる)等を用いることができる。また経鼻用吸入剤の治療剤及び/又は予防剤としての有効性は、例えば各疾患の病態モデル動物の鼻での吸気の間に薬剤を点鼻投与し、鼻粘膜に沈着させ、その後、血液を介して肺へ到達した薬剤の作用によって確認できる。
上記の経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤が喘息、例えば気管支喘息の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用であることは、例えば気管支喘息モデル動物(例えばオブアルブミン抗原感作モデル;Iizuka,K.et al.,Eur.J.Pharmacol.406(2),pp.273−9.(2000)等が挙げられる)等に、例えば1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン等の一般式(I)で表される化合物を、上記の投与法によって投与することにより確認できる。また、上記の経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤がCOPDの治療剤及び/又は予防剤として有効であることは、例えばモルモットのタバコ煙暴露モデル等(Fuchigami,J.et al.,Jpn.J.Pharmacol.82,pp.247.(2000))に記載の方法に従って、例えば1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン等の一般式(I)で表される化合物を上記の投与法によって投与することにより確認できる。
本発明の吸入剤としては、例えば経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤等を挙げることができる。経肺用吸入剤とは、肺等へ薬剤を送達させて作用させる形態であり、例えば通常の形態の吸入剤を挙げることができる。また、経鼻用吸入剤とは、鼻粘膜等へ薬剤を送達させて作用させる形態であり、例えば点鼻剤等が挙げられる。本発明の吸入剤としては、経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤のいずれも好ましいが、経肺用吸入剤であることがより好ましい。
本発明の吸入剤は、公知の方法に従って調製できる。具体的には、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を含有する内容物を吸入用噴射剤及び/又は担体中に配合し、適当な吸入容器に充填することにより調製できる。式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩をそのまま内容物として吸入投与に用いてもよいが、必要に応じて1種以上の製剤用添加物を含む組成物の形態の内容物を調製して、ヒトおよびヒト以外の動物に吸入投与することができる。
本発明において、有効成分を含有する内容物は固体又は液体として調製でき、そのどちらも好ましいが、内容物が液体であることがより好ましい。固体の内容物としては、例えば粉末、造粒物、又はケーキ状の内容物を挙げることができる。造粒物とは、粉末の集合体であり、さらにくわしくは式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩の粉末の集合体、あるいは、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩の粉末と製剤用添加物とからなる粉末の集合体である。ケーキ状とは、例えば凍結乾燥法により製造した嵩高い固体状態のことである。また、液体の内容物としては、例えば溶液又は懸濁液などを挙げることができる。懸濁液は、例えば液状担体中に液状担体中に溶解しない粉末又は造粒物などが分散された状態を含む。
本発明の吸入剤は、上記の有効成分を含有する内容物を、例えばそのまま吸入するか、又はアトマイザーやネブライザーなどの噴霧器を用いて霧状として吸入する方法などにより吸入投与できる。噴霧器については、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩が固体の場合には、例えば通常の機械的粉末吸入器を用いることができ、液体の場合には、例えばエアゾール剤として、アトマイザーやネブライザーもしくは定量インヘラー(定量噴霧式吸入器;Metered dose inhaler; MDI)等の吸入器をそれぞれ使用することもできる。噴霧器からの噴霧用量は、定量供給が可能で、吸入時に咽ることなく吸入の行える量がよく、例えば、下限は1μL以上が好ましく、より好ましくは5μL以上、さらに好ましくは10μL以上であり、上限は400μL以下が好ましく、より好ましくは200μL以下、さらに好ましくは100μL以下である。式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を液状化するには、有効成分化合物を液状担体に溶解すればよく、液状担体としては、例えば水、生理食塩水等が挙げられる。
噴射剤としては、公知のものを広く使用することができ、フロン11、フロン12、フロン113、フロン114、フロン115、フロンC−318等の塩化フッ化炭素(CFC)や、フロン22、フロン123、フロン134a、フロン142、フロン152等の塩化フッ化炭化水素(HCFC)、やプロパン、イソブタン、n−ブタン等の炭化水素類やその混合物である液化天然ガス、ジエチルエーテル等のエーテル類、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガス等が挙げられる。
本発明の吸入剤には、さらに必要に応じて従来より使用されている賦形剤、結合剤、界面活性剤、緩衝剤、等張化剤、粘ちょう剤、保存剤、pH調節剤等の製剤用添加物を適宜配合することができる。製剤用添加物としては、気管、肺内に残留しない物質が好ましい。製剤用添加物は1種を用いてもよいが、2種以上を適宜組合わせて用いてもよい。内容物を液体として調製する場合には、例えば固体を液状担体中に溶解させればよく、適当な吸入容器による噴霧液滴の粒子径は、10μm以下であり、0.1μm以上10μm以下、特に0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
本発明の吸入剤の投与量は、患者の年齢、体重、性別、疾患の種類、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、有効成分の投与量として、下限は0.1μg以上が好ましく、より好ましくは0.2μg以上、さらに好ましくは0.5μg以上であり、上限は10mg以下が好ましく、より好ましくは5mg以下、さらに好ましくは1mg以下である。これらの投与量を1日あたり1回又は数回に分けて投与することができる。例えば、液体の内容物を噴霧器を用いて投与する場合、溶液中の有効成分の濃度は、上記の投与量が達成できる限り特に制限されないが、前記の通常の噴霧器の噴霧用量を参考として、有効成分の濃度は、内容物の全重量に対して、下限は0.005重量パーセント以上が好ましく、より好ましくは0.007重量パーセント以上、さらに好ましくは0.01重量パーセント以上であり、上限は5重量パーセント以下が好ましく、より好ましくは4重量パーセント以下、さらに好ましくは3.27重量パーセント以下である。
内容物を固体として調製する場合は、例えば粉末又は造粒物又はケーキ状としてそれぞれ下記に従って調製できるが、粉末であることがより好ましい。有効成分である式(I)の化合物又は薬理学上許容されるその塩を微粒子状に粉砕した後、製剤用添加物を混合して粉末を調製することができ、あるいは造粒により調製された造粒物を用いてもよい。有効成分である式(I)の化合物又は薬理学上許容されるその塩と製剤用添加物とを直接混合して微粒子状に混合粉砕したあと、造粒により粉末を調製してもよい。粉末を肺ないしは肺胞に確実に到達させるためには、粉末の粒子径を調整する必要があり、該薬物の平均粒子径が10μm以下であり、0.1μm以上10μm以下、特に0.5μm以上10μm以下であるのが好ましい。該薬物の粉砕には、通常の医薬品の製造に使用している粉砕機を用いることができ、所望の粒子サイズとした粉末とすることができる。また、該薬物を含む顆粒粒子とするために、造粒することができる。造粒する装置としては、医薬品製造に汎用される粉末造粒装置であればよく、湿式造粒の場合、流動層造粒乾燥機、攪拌造粒機、円筒押出造粒機、転動流動層造粒コーティング機、噴霧乾燥造粒機等が用いられる。また乾式造粒の場合は、例えばローラーコンパクター等の乾式造粒機を使用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
製剤例1
化合物A(1−(5−イソキノリンスルフォニル)ホモピペラジン)327mgを秤量し、生理食塩水100mLに投入し溶かし、0.327重量%(10mM)の製剤を得た。
製剤例2
化合物A 32.7mgを秤量し、生理食塩水100mLに投入して溶解し、0.0327重量%(1mM)の製剤を得た。
製剤例3
化合物A 3.27gを秤量し、生理食塩水100mLに投入して溶解し、3.27重量%(100mM)の製剤を得た。
薬理試験例1
吸入投与と静脈内投与において、薬効が現れる用量と副作用が現れる用量の比を求めた。薬効としては気道収縮弛緩作用、副作用としては血圧降下作用及び心拍数の変動を用いた。
4週齢のハートレー系モルモット(オス)腹腔内に、実験開始日に各個体に対し1mg、2日後に各個体に対し3mg、4日後に各個体に対し10mg、オブアルブミン(シグマ社、GradeV)を腹腔内投与して感作を行なった。
静脈投与の薬効評価は、最終感作の12〜14日後に次の方法にて行なった。オブアルブミン感作モルモットの腹腔にペントバルビタール(ソムノペンチル)を約40mg/kg投与して麻酔し、気管を摘出した。次いで、気管にカニューレ(夏目社、SP−110)を挿入して、一方の端を人工呼吸器(ハーバード社、Model−b83)に連結し、送気をキログラムあたり6ml、1分間あたり60回に設定した。さらに後肢静脈に薬剤投与用のカニューレ(JMS翼状針23G 3/4)を挿入した。後肢のカニューレから、ミオブロック(オルガノンテクニカ社)を0.5mg/kg投与し、自発呼吸を停止させてから2、3分後に、オブアルブミンを0.3mg/kg投与し、気道収縮を惹起させた。惹起から2分後の気道抵抗上昇値(測定器 日本光電社、圧トランスデューサー;TR−603T、Respiratoryアンプ;AR−601G、レコーダー;RTA−3100)が80cmH2O以上あることを確認した後に、後肢のカニューレから製剤例1ないし3に記載した各種濃度の化合物Aの組成物を投与して、その後15分間の気道抵抗値を継続的に測定して効果を判定した。気道抵抗値として、Pen−h値(BUXCO社 呼吸機能測定装置)を指標に用いた。
吸入投与の薬効評価は、最終感作の12〜14日後に次の方法にて行なった。ピリラミン(Sigma社)10mg/kg、インドメタシン(Wako社)5mg/kg、プロプラノロール(Sigma社)0.1mg/kgを腹腔内投与した30分後に、0.1%オブアルブミン水溶液を加圧式ネブライザー(PARI−IS2)で吸入させて気道収縮を惹起した。惹起から10分後に、各種濃度の化合物Aの組成物2mlを上記ネブライザーに充填し、5分間吸入投与した。ピリラミン等の投与以降、継続的にPen−h値(BUXCO社 呼吸機能測定装置)を測定して効果を判定した。
血圧・心拍数の測定は、静脈内投与と吸入投与の両方で無加温式非観式血圧計(MODEL MK−2000,室町機械)を用い、被験動物の右後肢を使って化合物Aの投与前から投与後30分間、約5分おきに測定を行なった。また、静脈内投与、吸入投与それぞれの化合物Aの血中濃度を投与後から経時的に測定した。
静脈内投与の場合、化合物Aの3mg/kgの投与で十分な気道収縮弛緩作用が見られたが、同時に心拍数が増加した。
吸入投与の場合、製剤例1又は製剤例2記載の溶液の吸入投与により気道収縮弛緩作用が見られたが、心拍数も血圧も変化は見られなかった。心拍数・血圧は、製剤例3記載の溶液を吸入投与しても変化しなかった。
以上の結果から、静脈内投与では、化合物Aの副作用の現れる用量は気道収縮弛緩作用が現れる用量とほぼ同じであったが、吸入投与では、気道収縮弛緩作用が現れる用量の10倍以上の濃度でも上記の副作用は見られず、式(I)で表される化合物を有効成分として含む吸入剤は十分な薬効と安全性を有することが確認された。
薬理試験例2
前記の渕上らの方法を参考として、喫煙暴露装置(M.I.P.S社)を用い、ハートレー系モルモット(5週齢、オス)に、タバコ(商品名:ハイライト、JT(株)製)の煙を一日30分間、4か月以上にわたって毎日暴露し続けてCOPDの病態モデルを作製した。気道抵抗値は、薬理試験例1記載のPen−h値を指標とした。
上記の方法で作製したモルモットのうち、Pen−h値が有意に上昇した個体を選び出して実験に用いた。タバコ煙の暴露の30分後に、製剤例1記載の組成物又はビークル(生理食塩水)を薬理試験例1記載の加圧式ネブライザーで吸入させて、吸入後のPen―h値を継続的に測定した。吸入は、化合物Aを含む組成物又はビークルを上記ネブライザーに2ml充填し、噴霧室に被験動物を入れて、5分間噴霧して吸入させた。
吸入後の各時点のPen−h値のタバコ煙暴露前のPen−h値に対する比を指標として、症状改善の強さと持続について効果を判定した。その結果、ビークルの吸入群では上記のPen−h値の比が変化しなかったが、製剤例1ないし3に記載の薬剤を含む各種濃度の化合物Aの吸入群では、上記のPen−h値の比が有意に低下し、症状改善が認められた。以上により、化合物Aを含む組成物は、COPDの治療剤及び/又は予防剤として有用であることが確認された。

Claims (13)

  1. 慢性閉塞性肺疾患の治療及び/又は予防のための医薬であって、下記の式(I):
    Figure 2005206485
    (式中、R1は水素又は水酸基を示す。)
    で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬。
  2. β2アドレナリン受容体刺激剤、抗コリン剤、ステロイド剤、及びキサンチン誘導体からなる群から選ばれる1又は2以上の薬剤をさらに含む医薬組成物の形態の請求項1に記載の医薬。
  3. 吸入剤である請求項1又は2に記載の医薬。
  4. 有効成分が塩酸ファスジルである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医薬。
  5. 下記の式(I):
    Figure 2005206485
    (式中、R1は水素又は水酸基を示す。)
    で表される化合物又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含む吸入剤。
  6. 経肺用吸入剤又は経鼻用吸入剤である請求項5に記載の吸入剤。
  7. 有効成分を含有する医薬が固体又は液体である請求項5又は6に記載の吸入剤。
  8. 有効成分を含有する医薬が液体である請求項6に記載の吸入剤。
  9. 水溶液中の有効成分濃度が、水溶液全重量に対して0.005%ないし5重量%である請求項8に記載の吸入剤。
  10. 吸入用粉末製剤である請求項7に記載の吸入剤。
  11. 放出される微粒子の粒径が10μm以下である請求項5ないし10のいずれか1項に記載の吸入剤。
  12. 慢性閉塞性肺疾患の治療剤及び/又は予防のために用いる請求項5ないし11のいずれか1項に記載の吸入剤。
  13. 有効成分が塩酸ファスジルである請求項5ないし12のいずれか1項に記載の吸入剤。
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