JP2004504472A - 有機系ワニスまたはゲルコート、その製造および使用方法、およびそのようなワニスまたはゲルコートを含む基材 - Google Patents
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Abstract
高い耐摩耗性を有するコーティングを形成させうる、有機系で、好ましくは透明で光沢のあるラッカー/ワニスまたは有機系のゲルコート、およびそれを製造する方法で、前記のラッカー/ワニスまたはゲルコートは、粒径が主として1〜100nmの無機ポリマー粒子を調節した量で含み、その粒子はラッカーの有機ネットワークからは独立するか、または、そのネットワークに結合してもよい、三次元ネットワークを形成することができる。このポリマー粒子は典型的には、以下の群より選択したモノマー化合物の加水分解および縮合反応により得られる反応生成物である;i)M(OR)nまたはii)R’−M(OR)n、ここで、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの基の組み合わせから選択される有機基であり、R’=RまたはR−Xであって、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基であり、nは1から6までの整数である。それとは別にこのポリマー粒子は、天然または合成クレイからの粉体、またはそれらの粉体の組み合わせである。このラッカー/ワニスまたはゲルコートは、たとえば、アルミニウムまたは鉄鋼、好ましくはロール状のアルミニウムまたは鉄鋼の保護コーティングとして使用される。
Description
【0001】
本発明は請求項1および8の前段により定義される有機系ゲルコーティングの形状の有機系ラッカー/ワニスまたはコーティングに関する。本発明はさらに、請求項9、10、11および17の前段にそれぞれ定義されるラッカー/ワニスまたはコーティングの製造に関する。さらに本発明は、そのような有機系ラッカー/ワニスまたはそのようなコーティングを、アルミニウムまたは鉄鋼の表面、特にロール状のアルミニウムの表面の保護コーティングとして使用することに関する。最後に、本発明は、上記のタイプのコーティングを含む基材に関する。(以下において一般的に実用上の理由から、ラッカー/ワニスを単にラッカーとのみ称することとする。)
【0002】
(発明の背景)
乾燥させた形状では純粋に有機物であるラッカーの形態のコーティングを製造することは、従来から知られており、これらは無機物を含むラッカーよりも利点および特徴を有しており、また、これらはクリアラッカーとして著しく光沢のある表面を持つように、製造できることも知られていた。しかしながら、これらのラッカーおよびコーティングは、その外観を変化させてしまう可能性があるために通常のフィラーを加えることができないため、耐摩耗性が特に優れているというわけではなく不都合である。
【0003】
スウェーデン国特許出願第9603174〜5号(コンポピグメント社(Kompo Pigment Ltd.))には、ポリマーを含む水性ペイントおよびラッカーの製造法が示されており、そこでは、ペイントまたはラッカーの耐摩耗性を改良するために、SiO2粒子を添加しているが、その粒子は粒径が150nmまで、好ましくは100nm以下で、分散物の乾燥重量の最大65%の重量含量で使用されている。
【0004】
欧州特許A1第0555052号には、アクリルモノマー、シリカ粒子およびこの混合物を紫外線硬化させるための少なくとも1種の開始剤、さらには、紫外線照射によるこの混合物の分解を防止するための成分を含む、流体混合物が記載されている。前記の混合物でのシリカ粒子の径は典型的には、15〜30nmである。前記の混合物の目的は、耐摩耗性および耐候性が良好で透明な有機系コーティングを製造することである。この特許はその範囲として、1種の有機システム、すなわちアクリルだけに限定されており、それは基本的には、モノマーとシリカ粒子の混合物であって、有機樹脂は含まれない。
【0005】
特に欧州特許第0786499号により、耐摩耗性のコーティングが、多官能有機金属成分(A成分と呼ぶ)を、複数の官能基を有する有機モノマー(B成分と呼ぶ)と組み合わせたものからなる組成物から得ることができる、という事実が、公知となった。この公知の方法に関しては、重合/硬化に先だって有機金属成分と有機モノマーの間に強い結合ができていることが示されている(第4ページ、29〜30行参照)。次いで重合させると、AおよびB成分の組み合わせからなるネットワークが生成され、ここでは、無機成分は有機の重合体構造に化学的に結合し、単一の共同ネットワークとなっている。
【0006】
ドイツ国特許第19924644号からは、ナノ粒子を含むラッカーの製造方法が知られている。この方法に含まれているのは、金属酸化物の加水分解と縮合によって、その場(in−situ)で粒子を生成させるもので、いわゆるゾルゲル合成である。示唆されているようなその場での製造を実施する目的は、粒子径を制御することであって、それにより、凝集して所望よりも大きな粒子にならないようにしているのである。この公表文献は、マトリックスおよびナノ粒子の単純で、共通のネットワークを得るためのシステムにあまりにも偏りすぎている(たとえば、第2列、第63〜66行参照)。
【0007】
水性のペイントおよびラッカーは、適切なポリマーの分散体であり、溶媒(事実上の分散剤)が無くなると、保護層が形成されるということは注目に値する。このことは、そのポリマーが実際に溶液の形では存在していないことを意味している。水が蒸発し、ポリマーが表面に沈降する時に、多くの小さなポリマー粒子が「浮き集まって(float together)」、連続の保護コーティングを形成する。多くの用途に対しては十分な程度で、この現象が起きたとしても、水性のペイントおよびラッカーは、有機系ラッカーおよび溶媒を使用したものよりは、かなり弱い保護膜しか形成できない。有機系ラッカーおよび溶媒では、塗布される前のポリマーは完全に溶解されており、硬化の間に、ポリマーの単分子ベースで連続の保護層が形成される。
【0008】
上記のように、水系と有機系のラッカーおよびペイントの間には化学的な面での違いがあるので、前記のスウェーデン特許に記載されている方法を、有機溶媒系のラッカーに簡単に適用するというわけにはいかない。
【0009】
水系または有機系のラッカーシステムに、数マイクロメーター(μm)の径の無機粒子を添加することは知られている(いわゆる、フィラーまたは顔料)。この変性により摩耗性能にもいくらかは影響があるかもしれないが、むしろ、外観(たとえば色)を変化させたり、ラッカーの重量を増やしたりするために、用いられている。本発明の目的は、明度(brightness)および光沢(glossiness)などの他の性質を変えることなく、クリアラッカーシステムの耐摩耗性を改善することである。
【0010】
(発明の目的)
本発明の目的は、ラッカー/ゲルコートおよびコーティングのそれぞれ、およびそのようなラッカー/ゲルコートを製造する方法を提供することであり、このタイプの公知の光沢のあるラッカー/コーティングに比較して、著しく改良された耐摩耗性を持つ光沢のあるクリアラッカーまたは光沢のあるゲルコート表面として得ることができる。
【0011】
さらなる目的は、保護すべき表面の耐腐食性に寄与する性質を有するラッカー/ゲルコートの形のコーティングを提供することで、ここでは、その保護層がもろすぎるために簡単にクラックが入り、水分がしみこむようなことがないようにする。
【0012】
もう一つの目的は、ある程度まで難燃性に寄与することが期待できる保護層を提供することである。
【0013】
さらにもう一つの目的は、アルミニウムおよび/または鉄鋼の圧延した表面に硬く、耐摩耗性および耐候性があり、滑らかで、光沢があり、透明である保護層を施すのに適した、ラッカーおよびコーティングのそれぞれを提供することである。
【0014】
目的の最後にあげられるのは、公知の市販されている有機溶媒系のラッカーを、上記の目的が達成されるように、変性する方法を提供することである。
【0015】
(発明の開示)
さらに詳しくは、本発明は、最初に述べたようなタイプのラッカーまたはゲルコートを含み、その特徴は、請求項1の特徴を記した部分によって定義される特性である。本発明によるそのラッカーまたはそのゲルコートのさらなる、好ましい実施態様は請求項2〜7で定義されている。本発明はさらに、請求項8で定義した仕上げ硬化コーティングに関する。
【0016】
本発明はさらに、最初に述べたそのようなラッカーまたはそのようなゲルコートの製造方法の、また別の実施態様に関し、その実施態様の特徴は、請求項9、10、11および17のそれぞれの特徴を記した部分によって定義される特性である。本発明による方法の好ましい実施態様は、請求項12〜16によって定義されている。
【0017】
さらに本発明は、請求項18の特徴を記した部分で定義される、そのようなラッカーまたはそのようなゲルコートの使用に関する。本発明による使用の好ましい実施態様は、請求項19〜21によって定義されている。最後として本発明は、上記のタイプのコーティングを含む基材に関する。
【0018】
本発明の中核をなすものは、ナノサイズすなわち主として1〜100nmの範囲の粒径を持つ無機のポリマー粒子を含む、本発明に関わるある種のラッカーまたはコーティングを提供することだと表現することができる。このような粒子は、粒子そのものの形状として簡単に「添加」することは不可能で、この粒子を作るにはまた別の1種または複数の方法をとらねばならない。その方法とは、その場で化学反応を起こさせるか、あるいは、ラッカーのベース成分中に加える直前に粒子を形成させるような方法である。本発明による方法の3種の異なる実施態様を、請求項9、10および11のそれぞれで定義したが、以下においてはそれぞれ、モデル1、モデル2、モデル3と呼ぶことにする。しかしながら、請求項17に定義するように、これら3種の方法を組み合わせることも可能である。
【0019】
ここで重要なポイントは、当該のタイプと大きさをもつ粒子が、ラッカーマトリックスの中で個別の粒子として存在しているわけではない、ということである。これらの粒子はむしろ、それらだけからなる無機/有機のネットワークを形成し、それがラッカーの有機ネットワークに付加しようとしている。これらの2種のネットワークは、互いに独立した状態で隣り合いながら共存しているが、架橋結合によって互いに、多かれ少なかれ、結合されていてもよい。架橋結合の程度は、3種類の製造モデルの選択および粒子サイズによって、ある程度の影響を受けるが、理論に基づいて完全に予測できるというものではない。しかしながら本発明は、ネットワーク形成の特定の程度や、そのようなネットワークの特定な形成メカニズムに限定されるものではない。以下の記述において、ラッカー中の「粒子」に言及した場合には、これは、仕上げ硬化ラッカーまたは仕上げ硬化コーティング中に、そのような追加のネットワークが存在していることもさらに意味している。
【0020】
ラッカー/ゲルコートが生の状態(fresh form)にある時にすでに、前述の2種類のネットワークを各種の程度で含んでいることもあるだろうが、三次元的な架橋の程度は、仕上げ硬化コーティングにおける場合に比較してかなり低いものであろう。
【0021】
2種類の基本的には独立したネットワークが実用上意味しているのは、とりわけ、得られるコーティングの強度が高いだけでなく、それに加えて、ナノ粒子がラッカーの有機樹脂のネットワーク中に結合されているようなものも含めて、多くの他のラッカー/コーティングよりも柔軟性があるということである。柔軟性に乏しいコーティングでは、それ自体柔軟性/可動性のある材料の上に塗布した場合に、すぐにクラックが生じてしまう。巻き取って大きなコイル状とする圧延アルミニウムまたは鉄鋼は、その応用の典型的な例で、その場合には、金属の保護を長期間維持するためには、仕上げ硬化ラッカーが柔軟性を持っていることが必須である。
【0022】
本発明による方法の第1の実施態様(以下においてはモデル1と呼ぶ)においては、第1の粒子分散体(ゾル)を、先に述べたタイプの1種または複数のモノマー化合物を部分的に加水分解することによって得る。この目的のためには、変性の対象となるラッカーの溶媒と相溶性のある溶媒を使用する。次いで前記のゾルをそのラッカーに添加するが、この段階ではそのゾルには所望のサイズのナノ粒子が含まれている。そのような粒子の表面を処理して変性させておくのも好ましいが、そのような処理としては、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタネート、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせがある。
【0023】
本発明のいくつかの実施態様、モデル1および2においては、金属−有機化合物からゾルを調製するには、化学的には2段のステップがある。出発溶液としては、化学式がM(OR)nまたはR’−M(OR)nであるモノマー化合物を含む溶液を使用する。化学式M(OR)nにおいて、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの組み合わせから選択される有機基である。化学式R’−M(OR)nにおいて、R’=RまたはR’=R−Xであり、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基である。Rが炭素原子を1〜4個有する単純なアルキルであるのが好ましい。指数は1〜6の整数であって、金属イオンの価数によってきまる。
【0024】
第1のステップは金属アルコキシドの加水分解であり、ここでアルコキシド配位子がヒドロキシル基に置換される。
M−OR + H−OH → M−OH + ROH
第2のステップは縮合であって、ヒドロキシル基が他の金属のヒドロキシル基またはアルコキシル基のいずれとも反応することができ、M−O−M結合を形成するとともに、水またはアルコールを生じる。
M−OH + HO−M≡ → ≡M−O−M≡ + H2O
または
M−OR + HO−M≡ → ≡M−O−M≡ + ROH
化合物R’−M(OR)nから出発しても、反応の道筋はほとんど同じで、それは、R’基が加水分解や縮合反応に与らないからである。
【0025】
こうして得られる溶液には、溶媒に分散された無機ポリマー粒子が含まれている。
【0026】
好ましい変法としては、加水分解/縮合のステップで、たとえばブチルジグリコールまたはエチルヘキサノールのような、官能性のOH基を有する化合物を添加する方法もある。これにより、ラッカー/ゲルコートと相溶性のある安定なゾルが得られることがわかった。
【0027】
たとえばアクリル系ラッカーを変性する場合には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APS)の加水分解/縮合の間にブチルジグリコール(BDG)を添加するのが好ましい。BDG−分子はγ−APSのエトキシ基を置換することができる(−ODGB)。−OEtの場合に比較して、おそらく−ODGBでは、−OHによる置換がかなり困難になると考えられるが、それは、−ODGB置換基とSi原子の間に相互作用が存在する可能性があるからである。OEtとSi原子の間では、そのような相互作用は強くない。一般的に言って、より大きなアルコール残基は−OH基による置換を受けにくいことが予想されるが、これは、より大きなアルコール分子は、より小さなアルコール分子に比較して、加水分解されたとしてもその後で、シランの近傍により長い時間とどまるという事実があるからである。その結果、逆反応(≡Si−OHとEtOHが縮合して≡SiOR+H2Oになる)が、小さなアルコール分子よりも大きなアルコール分子で起きやすくなる。加水分解/縮合においてはSi原子上の2つのサイトだけしか使用されないということから、このことは粒子の形成には決定的な影響がある。3つまたは4つのサイトが加水分解/縮合に関わるような場合には、大きな凝集物が形成されるのが普通で、このものは通常有機溶媒には難溶である。分子内の触媒的加水分解/縮合に代わるものとして、分子間での変性も可能である。この場合、シラン分子のアミノ基が、近傍にある他のシラン分子に触媒的に働いて、後者のシラン分子の加水分解/縮合を促す。この方法で、アクリル系ラッカーと相溶性のあるナノ粒子が形成される。
【0028】
本発明による変法、モデル2では、前述のタイプの無機化合物の量を調節しながら、既存の市販クリアラッカーまたは既存の市販ゲルコートに添加する。その場で所望の粒径範囲をもつ粒子を形成させるためには、2種類の必要な反応、すなわち縮合反応と加水分解の反応速度のバランスがうまくとれるような、化学反応条件を決めてやる必要がある。縮合反応は、モノマー(単一)分子からポリマー鎖を形成させる(重合反応)のに利用されるのに対し、加水分解はラッカーの成分との接触により起きる、多結晶質沈殿またはオキソヒドロキシド沈殿をもたらす。アルコキシド基を強い配位子と置き換える(置換)際に組み合わせる無機化合物を適当に選択すれば、縮合反応に比較して加水分解反応の速度を低下させることができ、これにより、前記の鎖をあまり長く延ばさずに、しかも、本明細書においてオリゴマーとして定める範囲内に納まるようにすることができる。実用面から見ればこれは、その粒子が数nmの粒径、最も典型的には10nm未満になることを意味している。ラッカーの明度を維持させるには、粒子径を30nm未満とするのが好ましい。モデル1の場合と同様に、そのような粒子の表面を処理して変性させておくのも好ましいが、そのような処理としては、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタン、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせがある。
【0029】
本発明による第3の変法、モデル3では、前述のタイプの凝集した粒子の粉体を、まず形成させる。粉体の凝集物はその結合が弱いので、機械的処理、化学的処理あるいはそれらの処理の組み合わせによっって、ナノサイズの粒子に破砕することができる。このことは、クレイ系の材料を、モデル3のための代用物として使用できることを示唆している。モデル1の場合と同様に、そのような粒子の表面を処理して変性させておくのも好ましいが、そのような処理としては、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタン、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせがある。
【0030】
これら3種類の実施態様/変法に共通しているのは、既存のラッカー、好ましくは有機溶媒系の光沢のあるクリアラッカーを出発原料とすることが可能であり、そして、無機ポリマー粒子で処理する方法によりそれらの性質を変化させて、ラッカーにナノサイズの粒子が含まれるようにすることができる、ということである。先にも述べたように、これらの粒子は、ラッカーそれ自体の有機系ネットワークに加えて、三次元ネットワークを形成することができ、通常の有機系ラッカーに比較すると格段の耐摩耗性をラッカーに付与し、しかも、仕上げ硬化後のラッカーは依然として柔軟性を保持して、もろくなることはない。この無機粒子を含む追加のネットワークは、ラッカーの有機系ネットワークには基本的には無関係であるが、部分的に結合していてもよい。
【0031】
無機ポリマー粒子の量を調節しながら添加するということは、粒子が上述のようなネットワークを形成するに十分な量とすることを意味する。ここでの必要量は、粒子サイズ、粒子のタイプ、それにラッカーのタイプに応じて、ケースバイケースで決定されるべきものである。一般的には、無機粒子の量は、対象としているラッカーを基準にして、0.5〜50重量%の間に納まるであろう。前記の範囲の下限近くまたは下限以下の濃度だと、粒子は限られた程度でしか、ラッカーで所望の改善した性質を得るのに必要なネットワークを形成することができない。前記の上限を超える濃度では、ラッカーの外観に粒子による悪影響が出て、粒子を添加する前のような、光沢があって滑らかで透明な見かけにはならない。
【0032】
本発明における金属イオンMは、一連の金属類、たとえば、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素、マグネシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびその他から選択する。研究の結果、金属イオンがジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素またはそれらの組み合わせであるような化合物がこの目的にはきわめて適していて、したがって、これらの金属が、本発明による金属イオンとして好適な実施態様となることが、判明した。分子の有機部分であるRは、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの組み合わせであるが、実際的な面からはその大きさが、最大でも炭素原子を8個を含む基に制限される。しかしながら、Rは炭素原子が5以上ではないことが好ましく、さらに、それが単純なアルキル、たとえばメチル、エチル、プロピルまたはブチルのようなものであるのが、より好ましい。
【0033】
ベースになるラッカー/ゲルコートを変性するのに3種類の異なった方法の内の1つを選んで目的の用途に使用するのが普通であるが、請求項17に定義したように、2種類の方法、あるいは3種類全部の方法(あるいはこれらの方法の要素)を組み合わせることも可能である。
【0034】
一般にコーティングの厚みは、コーティング方法や基材の性質によって決まってくるが、1〜50μmの間である。本発明により作られるコーティングはその性質、たとえば高耐摩耗性、が改良されているために、コーティングの厚みは薄く、たとえば1〜10μmの範囲でよい。
【0035】
本発明の目的のためには、各種の有機系のラッカーが適しているが、そのタイプは主として使用領域によって決まる。最も重要なものをあげれば、アクリル系ラッカー、エポキシラッカー、ポリエステルラッカー、ポリウレタンラッカー、ポリアミドラッカーおよびポリカーボネートラッカーがあり、これらはすべて本発明のベースラッカーとして使用できる。
【0036】
ラッカーは、保護すべき表面に塗布されてそこに密着するのに対し、ゲルコートは、たとえばカートップボックス、プラスチックボート、プラスチック容器/タンク、車体構造を製造するために用いられ、これらいずれにおいても、ガラスファイバーなどの形状の補強材を含んでいてもよい。したがってゲルコートの加工ステップは、ゲルコートとラッカーの外層の化学的な原理がほとんど同じであるとはいうものの、ラッカーを塗布するのとは全く異なっている。製品をゲルコートしようとする場合には、目的の製品とは凹凸逆転させた(complementary)形状の型を、ゲルコートが強度を持って密着することがないような材料でまず作成する。ついでゲルコートを常用の技術を用いて型に塗布し、その上に所望の補強材をおき、通常はさらにもう1層のゲルコートを塗布する。この最初に塗布したゲルコート層が、製品の外層を構成することとなり、この点ではラッカーと同じ機能をはたすことになるが、見映えと強度を有する表面を形成するとともに、UV防御機能も呈して、トップ層の下では材料が分解されないようにする。
【0037】
以下において、本発明によるいくつかの製造方法のための、種々な試験例を使用して、本発明をさらに詳しく説明する。鉄鋼表面の使用例はあげていないが、鉄鋼とアルミニウムではその接着に対する性能や硬度が幾分違うとはいえ、鉄鋼の場合でもアルミニウムで示した例と原理的には同じであることを強調しておきたい。
実施例1
市販のクリアポリウレタンラッカー(DDラッカー、ノルウェーのスカノックス社(Scanox)製)をモデル2にしたがって変性し、寄せ木張り(床)に塗布した。
【0038】
このポリウレタンラッカーは2成分系ラッカーであって、一方の成分が樹脂(A成分)、もう一方の成分が硬化剤(B成分)である。
【0039】
変性:10mlのテトラマトキシ−オルトシラン(TMOS)(スイスのシグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)製)を、激しい撹拌下(800rpm)で、40mlのA成分中に、滴と滴の間隔を約5秒に保ちながら、滴下した。このプロセス全体に約40分かけた。この溶液に撹拌下で、20mlのB成分を添加した。
【0040】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーを2枚の寄せ木張りボードにブラシで塗布した。それぞれのボードでは2つの領域が分けてあり、その一方にはこの変性ラッカーを2層塗布したのに対し、もう一方の領域には非変性のラッカーを2層塗布した。
【0041】
試験:24時間後にはラッカーは完全に硬化していた。この厚みを測定すると約20μmであった。耐摩耗性は、エア/ビセリ社(Eyre/Biceri)製の万能摩耗試験機を用いて試験した。ラッカー塗布した一方のボードをスチールナイフを備えた機械に結わえ付けた。一定荷重をかけた可動部を、ボード上に置き、装置をスタートさせた。回転回数は自動的に計測させた。80回転後に、表面を観察した。非変性ラッカーを塗布した部分では、ラッカーのほとんど全部がすり減っていた。変性ラッカーを塗布した部分では、ラッカーがほんのわずか摩耗しただけであった。
【0042】
もう1枚のボードを少なくとも20秒間火焔にあててから、観察した。変性ラッカーを塗布した部分は白色に変化していたが、これは、薄い酸化物層が生成したためで、このものが燃焼を抑制していた。非変性ラッカーを塗布した部分は、完全に黒化しており、火焔に接触した直後から燃え始めた。
実施例2
市販のクリアエポキシラッカーVS150(米国、バルスパー社(Valspar)製)を、モデル2にしたがって変性し、アルミニウムシートのコーティングに使用した。このエポキシラッカーは1成分系ラッカーで、樹脂と架橋剤の両方を含んでいるものであった。
【0043】
変性:61gのテトラエトキシ−オルトシラン(TEOS)(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)、200gのブタノール、および121gのアルミニウムsec−ブトキシド(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)からなる混合物の20mlを、激しい撹拌下(800rpm)で、40mlのラッカー中に、滴と滴の間隔を約2秒に保ちながら、滴下した。このプロセス全体に約40分かけた。
【0044】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドナンバー26)。塗布後直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を250℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0045】
試験:耐摩耗性能を、ドイツのエリクセン(Erichsen)タイプのハードネスペン法によって試験した。この方法は、ハードネスペンを用いて引っ掻き傷を作らせるものである。かける力は、バネで調節する。力に関連づけたハードネス値を、ペンから読みとる。並行試験の結果では、変性ラッカーを塗布したシートでの力は1Nを超えたのに対し、非変性ラッカーを塗布したシートでの力は0.2N未満であった。
実施例3
市販のクリアアクリル系ラッカー(SZ−006、ドイツのレナニア社(Rhenania)製)を、モデル2にしたがって変性し、アルミニウムシートのコーティングに使用した。
【0046】
このアクリル系ラッカーは1成分系ラッカーで、樹脂と架橋剤の両方を含んでいるものであった。
【0047】
変性:4.7gのテトライソプロピルオルトチタネート(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で12.9gのメタクリル酸に添加した。この溶液を15分間撹拌してから、撹拌下で26.4gのラッカーに添加した。
【0048】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法を用いて塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0049】
試験:
耐摩耗性
耐摩耗性能は、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。ラッカー塗布したシートの1枚を機械に結わえ付けた。可動部にコットンポールを取り付け、ラッカー塗布したシートに上に588g(3x 荷重)の一定重量をかけて置き、装置をスタートさせた。回転回数は自動的に計測させた。20回転後に、シートの表面をメッキし、観察した。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイライン(die line)の数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは2の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0050】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、明度(brightness)を測定することによって定量化できる(RD/20)。変性ラッカーの明度の値は1793であったが、これは、非変性ラッカーの明度(1773)とは同等の数値であった。
実施例4
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートのコーティングに使用した。
【0051】
変性:11.34gのチタンプロポキシドのアルコレート溶液(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で、7.74gのヘキサン酸に添加した。次いで、1gの蒸留水を撹拌下で添加した。15分間撹拌をしてから、得られたゾルの10gを、撹拌下で、0.165gのγ−アミノプロピルトリエトキシシランに添加した。次いで、得られた混合物の1gを、撹拌下で10gのラッカーに添加した。
【0052】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0053】
分析および試験
ゾルの粒径
ゾルの粒径は、光散乱法の手段を用いて測定した。英国のマルベルン社(Malvern)からの市販機器「ゼータサイザー(zetasizer)3」を用いて、粒径分布を測定した。粒径分布はシャープで、その平均粒径は5nmであった。
【0054】
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3と同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は588g(3x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは2の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0055】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、拡散透過度を測定することによって定量化できる。これは、たとえば、ラッカーのための基材として透明なガラス板を使用して測定する。まず、ガラス板単独での拡散透過度を測定する。次いでそのガラス板にラッカーを塗布し、もう一度拡散透過を測定する。ラッカーを塗布した後での拡散透過度の変化は、ラッカーの透明性の良い尺度となる(ただし、ラッカーとガラス板の界面が光散乱に大きな影響を与えていないこと)。この測定は、DIN5036標準にしたがった装置によって行った。
【0056】
透明なガラス板の拡散透過度を測定すると0.5%であった。非変性ラッカーをこのガラス板に塗布した(コーティング層5μm)。次いで測定した拡散透過度は、1.5%であった。変性ラッカーでの拡散透過度を測定すると、6%未満であった。
実施例5
実施例3で用いた市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0057】
変性:4.7gのテトライソプロピルオルトチタネート(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で15.3gのペンタン酸(吉草酸)に添加した。次いで、0.45gの蒸留水を撹拌下で添加した。このゾルを15分間撹拌してから、撹拌下で、10gのゾルを10gのラッカーに添加した。
【0058】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0059】
分析および試験
ゾルの粒径
このゾルの粒径は、英国のマルベルン社からの「ゼータサイザー3」を用いて測定した。粒径分布はシャープで、その平均径は3nmであった。
【0060】
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3と同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は980g(5x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは3の値であり、非変性ラッカーでは6の値であった。
【0061】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、明度を測定することによって定量化できる(RD/20)。変性ラッカーの明度の値は1693であったが、これは、非変性ラッカーの明度(1773)に比肩しうるものであった。
実施例6
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル3にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0062】
変性:10gの市販酸化チタン(米国、ナノフェーズ社(Nanophase)製、チタニア粒子の平均径が20nm(有機溶媒中20重量%)を、撹拌下で、10gのラッカーに添加した。
【0063】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0064】
試験:耐摩耗性能を、実施例3と同様にして「テーバー摩耗試験機(taber abraser)」を用いて、試験した。非変性ラッカーでコーティングしたシートで測定した重量損失は、変性ラッカーでコーティングしたシートでの重量損失よりも明らかに多かった。
実施例7
市販のクリアゲルコートを、モデル1にしたがって変性し、ガラス繊維強化ポリエステル板の上に保護層を設けるために使用した。
【0065】
変性:スチレンに適合させたジルコニアゾルを製造するのに、40mlのZr(OPr)4溶液(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で、29.6mlのメタクリル酸と混合した。この組成物の温度が室温になってから、3.72mlの水を撹拌下にゆっくりと添加した。次いで、40mlのスチレンを添加した。この組成物に不飽和ポリエステルを添加して、ポリエステル70%とした。過酸化物を添加してから、その組成物をブラシで型に塗布し、ポリエステル/ガラス繊維で強化した。
【0066】
試験:耐摩耗性能を、ドイツのエリクセン社製のハードネスペンを用いて試験した。引っ掻き傷(ダイライン)は認められなかった。非変性のゲルコートに同じ力(1N)を加えると、ダイラインが多数観察された。
実施例8
市販のクリアエポキシラッカーを、モデル3にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0067】
このエポキシラッカーは1成分系ラッカーで、樹脂と架橋剤の両方を含んでいるものであった。
【0068】
変性:9gの市販のベーマイト(コンデア・ヘミ社(Condea Chemi)製)を、撹拌下で、20gのブタノールに添加した。次いで、撹拌下で、2.14gのメタクリル酸を添加した。15分間撹拌してから、得られたゾルを超音波処理し(300W、5分、50%パルス)、そのゾルを、撹拌下で、10gのラッカーに添加した。
【0069】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、PMTを250℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。
【0070】
試験:耐摩耗性能を、実施例3と同様にして「テーバー摩耗試験機」を用いて、試験し、試験前後のシート重量を測定した。非変性ラッカーでコーティングしたシートで測定した重量損失は、変性ラッカーでコーティングしたシートでの重量損失よりも明らかに多かった。
実施例9
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル3にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0071】
変性:3gの市販の酸化チタン粉体(英国、タイオキシド社(Tioxide)製)を、6gのブチルジグリコール(BDG)および8.33gの1−メトキシ−1−アセトキシプロパンに添加した。得られた分散体を次いで、17分間超音波処理した(200W、50%サイクル)。次いで、このラッカーの成分を、撹拌下で、以下の順で添加していった:0.0072gのPTSA溶液、7.2gのHMMMメラミン樹脂溶液、9gのブロックHDIイソシアナート樹脂溶液、および、29.4gのアクリル系樹脂溶液。
【0072】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、12μmであった。
【0073】
試験
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3におけるのと同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は588g(3x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは1の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0074】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、明度を測定することによって定量化できる(RD/20)。変性ラッカーの明度の値は1727であったが、これは、非変性ラッカーの明度(1693)に比肩しうるものであった。
実施例10
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0075】
変性:60gのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APS)を、13.2gのBDGおよび15.18gの蒸留水に添加した。このゾルを穏やかに12時間撹拌した。ついでそのゾルの5gを、穏やかな撹拌下で、1gのラッカーに添加した。
【0076】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。こうしてコーティングした層の厚みを測定すると、7μmであった。
【0077】
試験
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、ISO標準D 4060−95にしたがって、「テーバー摩耗試験機」を用いて測定した。この方法は、ラッカー塗布した表面を、その上でゴム車輪を回転させる手段により摩耗させるものである。回転数は自動的に記録され(1000回転)、かかる力は既知の重り(500g)によって決まる。このシートの重量を、試験前および後に測定する。非変性ラッカーによってコーティングしたシートでの重量損失は12.37mgであるのに対して、変性ラッカーによってコーティングしたシートでの重量損失は1.22mgであった。
【0078】
耐摩耗性能をさらに、実施例3におけるのと同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は980g(5x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは1の値であり、非変性ラッカーでは6の値であった。
実施例11
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0079】
変性:100gの市販のシリカゾル(日本の日産化学社(Nissan Chemical)製)を、22.4gのγ−APSに、ゆっくり撹拌しながら15分かけて添加した。この変性させたゾル10.2gを次いで、ゆっくりと撹拌しながら、3.3gのγ−APSおよび1.5gのBDGの混合物中に添加した。得られた組成物のうち5.1gを、ゆっくりと撹拌しながら、1gのラッカーに添加した。
【0080】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNo.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。こうしてコーティングした層の厚みを測定すると、7μmであった。
【0081】
試験
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3におけるのと同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は588g(3x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは1の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0082】
以下の表に、使用したラッカー/ワニスのタイプと、各種の硬度試験および明度試験の結果をまとめた。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
各種の試験結果から判るのは、本発明の方法の3種類の実施態様(のうちのいずれか)によって変性することによって、高い耐摩耗性を有するラッカーシステムを得ることができ、しかもそのラッカーの明度は維持される、ことである。
【0087】
ここで強調しておくが、本発明は既存の市販されているラッカー/ワニスまたはゲルコートを変性することに主として関連しているが、そのような製品だけに限定されているわけではない。したがって本発明は、その他のラッカー/ワニス、たとえば、これまでは市場で利用されていなかった特定のラッカーや、それ自体別途の発明を構成できるような新規なラッカーやワニスなど、にも応用できる。
【0088】
さらに我々は、記述を単純にするために、すぐにも使用できるようなラッカー/ワニスまたはゲルコートの変性について記載してきた。商業的見地からすれば、プロセスの別のステップとしてナノ粒子を導入して変性を実施する方が、最後の最後で導入するよりも、好都合であろう。
【0089】
またさらに我々は、ラッカー/ワニスにその都度、使用分野にふさわしい量の粒子を加えるという方法でこのプロセスを記述してきた。より高い濃度で粒子を添加することも可能であり、その場合には、使用者が塗布の直前にその濃厚物を標準のラッカー/ワニスで所望の濃度に稀釈することができ、さらに、摩耗強度や、それを塗布する基材などに応じて、変化させることも可能である。
【0090】
最後に、本発明によりラッカーを製造する方法に関連して言えば、これら3種類の置き換え可能な方法について、すべての実務的な場面で、それらを互いに排他的に採用することができ、そのため、もしモデル1を選択すれば、モデル2および3は自動的にその特定の用途からは排除されるかのように、記述してきた。しかしながら、これが正しいというわけではなく、これら3種類のモデルを組み合わせることには、何の問題もない。たとえば、微細に分散された粉体(モデル3)が添加されるようなシステムであるが、同時にモデル1によって粒子分散体から他の無機粒子を作ったり、あるいは、本発明のモデル2によってラッカー中でその場で生成させたりすることも可能である。
【0091】
前記のような変法もすべて本発明の範囲に包含され、これは、関連する使用領域に対して本発明の精神を応用しようとして当業者が導入する、すべてのその他の変更の場合についても同様である。
本発明は請求項1および8の前段により定義される有機系ゲルコーティングの形状の有機系ラッカー/ワニスまたはコーティングに関する。本発明はさらに、請求項9、10、11および17の前段にそれぞれ定義されるラッカー/ワニスまたはコーティングの製造に関する。さらに本発明は、そのような有機系ラッカー/ワニスまたはそのようなコーティングを、アルミニウムまたは鉄鋼の表面、特にロール状のアルミニウムの表面の保護コーティングとして使用することに関する。最後に、本発明は、上記のタイプのコーティングを含む基材に関する。(以下において一般的に実用上の理由から、ラッカー/ワニスを単にラッカーとのみ称することとする。)
【0002】
(発明の背景)
乾燥させた形状では純粋に有機物であるラッカーの形態のコーティングを製造することは、従来から知られており、これらは無機物を含むラッカーよりも利点および特徴を有しており、また、これらはクリアラッカーとして著しく光沢のある表面を持つように、製造できることも知られていた。しかしながら、これらのラッカーおよびコーティングは、その外観を変化させてしまう可能性があるために通常のフィラーを加えることができないため、耐摩耗性が特に優れているというわけではなく不都合である。
【0003】
スウェーデン国特許出願第9603174〜5号(コンポピグメント社(Kompo Pigment Ltd.))には、ポリマーを含む水性ペイントおよびラッカーの製造法が示されており、そこでは、ペイントまたはラッカーの耐摩耗性を改良するために、SiO2粒子を添加しているが、その粒子は粒径が150nmまで、好ましくは100nm以下で、分散物の乾燥重量の最大65%の重量含量で使用されている。
【0004】
欧州特許A1第0555052号には、アクリルモノマー、シリカ粒子およびこの混合物を紫外線硬化させるための少なくとも1種の開始剤、さらには、紫外線照射によるこの混合物の分解を防止するための成分を含む、流体混合物が記載されている。前記の混合物でのシリカ粒子の径は典型的には、15〜30nmである。前記の混合物の目的は、耐摩耗性および耐候性が良好で透明な有機系コーティングを製造することである。この特許はその範囲として、1種の有機システム、すなわちアクリルだけに限定されており、それは基本的には、モノマーとシリカ粒子の混合物であって、有機樹脂は含まれない。
【0005】
特に欧州特許第0786499号により、耐摩耗性のコーティングが、多官能有機金属成分(A成分と呼ぶ)を、複数の官能基を有する有機モノマー(B成分と呼ぶ)と組み合わせたものからなる組成物から得ることができる、という事実が、公知となった。この公知の方法に関しては、重合/硬化に先だって有機金属成分と有機モノマーの間に強い結合ができていることが示されている(第4ページ、29〜30行参照)。次いで重合させると、AおよびB成分の組み合わせからなるネットワークが生成され、ここでは、無機成分は有機の重合体構造に化学的に結合し、単一の共同ネットワークとなっている。
【0006】
ドイツ国特許第19924644号からは、ナノ粒子を含むラッカーの製造方法が知られている。この方法に含まれているのは、金属酸化物の加水分解と縮合によって、その場(in−situ)で粒子を生成させるもので、いわゆるゾルゲル合成である。示唆されているようなその場での製造を実施する目的は、粒子径を制御することであって、それにより、凝集して所望よりも大きな粒子にならないようにしているのである。この公表文献は、マトリックスおよびナノ粒子の単純で、共通のネットワークを得るためのシステムにあまりにも偏りすぎている(たとえば、第2列、第63〜66行参照)。
【0007】
水性のペイントおよびラッカーは、適切なポリマーの分散体であり、溶媒(事実上の分散剤)が無くなると、保護層が形成されるということは注目に値する。このことは、そのポリマーが実際に溶液の形では存在していないことを意味している。水が蒸発し、ポリマーが表面に沈降する時に、多くの小さなポリマー粒子が「浮き集まって(float together)」、連続の保護コーティングを形成する。多くの用途に対しては十分な程度で、この現象が起きたとしても、水性のペイントおよびラッカーは、有機系ラッカーおよび溶媒を使用したものよりは、かなり弱い保護膜しか形成できない。有機系ラッカーおよび溶媒では、塗布される前のポリマーは完全に溶解されており、硬化の間に、ポリマーの単分子ベースで連続の保護層が形成される。
【0008】
上記のように、水系と有機系のラッカーおよびペイントの間には化学的な面での違いがあるので、前記のスウェーデン特許に記載されている方法を、有機溶媒系のラッカーに簡単に適用するというわけにはいかない。
【0009】
水系または有機系のラッカーシステムに、数マイクロメーター(μm)の径の無機粒子を添加することは知られている(いわゆる、フィラーまたは顔料)。この変性により摩耗性能にもいくらかは影響があるかもしれないが、むしろ、外観(たとえば色)を変化させたり、ラッカーの重量を増やしたりするために、用いられている。本発明の目的は、明度(brightness)および光沢(glossiness)などの他の性質を変えることなく、クリアラッカーシステムの耐摩耗性を改善することである。
【0010】
(発明の目的)
本発明の目的は、ラッカー/ゲルコートおよびコーティングのそれぞれ、およびそのようなラッカー/ゲルコートを製造する方法を提供することであり、このタイプの公知の光沢のあるラッカー/コーティングに比較して、著しく改良された耐摩耗性を持つ光沢のあるクリアラッカーまたは光沢のあるゲルコート表面として得ることができる。
【0011】
さらなる目的は、保護すべき表面の耐腐食性に寄与する性質を有するラッカー/ゲルコートの形のコーティングを提供することで、ここでは、その保護層がもろすぎるために簡単にクラックが入り、水分がしみこむようなことがないようにする。
【0012】
もう一つの目的は、ある程度まで難燃性に寄与することが期待できる保護層を提供することである。
【0013】
さらにもう一つの目的は、アルミニウムおよび/または鉄鋼の圧延した表面に硬く、耐摩耗性および耐候性があり、滑らかで、光沢があり、透明である保護層を施すのに適した、ラッカーおよびコーティングのそれぞれを提供することである。
【0014】
目的の最後にあげられるのは、公知の市販されている有機溶媒系のラッカーを、上記の目的が達成されるように、変性する方法を提供することである。
【0015】
(発明の開示)
さらに詳しくは、本発明は、最初に述べたようなタイプのラッカーまたはゲルコートを含み、その特徴は、請求項1の特徴を記した部分によって定義される特性である。本発明によるそのラッカーまたはそのゲルコートのさらなる、好ましい実施態様は請求項2〜7で定義されている。本発明はさらに、請求項8で定義した仕上げ硬化コーティングに関する。
【0016】
本発明はさらに、最初に述べたそのようなラッカーまたはそのようなゲルコートの製造方法の、また別の実施態様に関し、その実施態様の特徴は、請求項9、10、11および17のそれぞれの特徴を記した部分によって定義される特性である。本発明による方法の好ましい実施態様は、請求項12〜16によって定義されている。
【0017】
さらに本発明は、請求項18の特徴を記した部分で定義される、そのようなラッカーまたはそのようなゲルコートの使用に関する。本発明による使用の好ましい実施態様は、請求項19〜21によって定義されている。最後として本発明は、上記のタイプのコーティングを含む基材に関する。
【0018】
本発明の中核をなすものは、ナノサイズすなわち主として1〜100nmの範囲の粒径を持つ無機のポリマー粒子を含む、本発明に関わるある種のラッカーまたはコーティングを提供することだと表現することができる。このような粒子は、粒子そのものの形状として簡単に「添加」することは不可能で、この粒子を作るにはまた別の1種または複数の方法をとらねばならない。その方法とは、その場で化学反応を起こさせるか、あるいは、ラッカーのベース成分中に加える直前に粒子を形成させるような方法である。本発明による方法の3種の異なる実施態様を、請求項9、10および11のそれぞれで定義したが、以下においてはそれぞれ、モデル1、モデル2、モデル3と呼ぶことにする。しかしながら、請求項17に定義するように、これら3種の方法を組み合わせることも可能である。
【0019】
ここで重要なポイントは、当該のタイプと大きさをもつ粒子が、ラッカーマトリックスの中で個別の粒子として存在しているわけではない、ということである。これらの粒子はむしろ、それらだけからなる無機/有機のネットワークを形成し、それがラッカーの有機ネットワークに付加しようとしている。これらの2種のネットワークは、互いに独立した状態で隣り合いながら共存しているが、架橋結合によって互いに、多かれ少なかれ、結合されていてもよい。架橋結合の程度は、3種類の製造モデルの選択および粒子サイズによって、ある程度の影響を受けるが、理論に基づいて完全に予測できるというものではない。しかしながら本発明は、ネットワーク形成の特定の程度や、そのようなネットワークの特定な形成メカニズムに限定されるものではない。以下の記述において、ラッカー中の「粒子」に言及した場合には、これは、仕上げ硬化ラッカーまたは仕上げ硬化コーティング中に、そのような追加のネットワークが存在していることもさらに意味している。
【0020】
ラッカー/ゲルコートが生の状態(fresh form)にある時にすでに、前述の2種類のネットワークを各種の程度で含んでいることもあるだろうが、三次元的な架橋の程度は、仕上げ硬化コーティングにおける場合に比較してかなり低いものであろう。
【0021】
2種類の基本的には独立したネットワークが実用上意味しているのは、とりわけ、得られるコーティングの強度が高いだけでなく、それに加えて、ナノ粒子がラッカーの有機樹脂のネットワーク中に結合されているようなものも含めて、多くの他のラッカー/コーティングよりも柔軟性があるということである。柔軟性に乏しいコーティングでは、それ自体柔軟性/可動性のある材料の上に塗布した場合に、すぐにクラックが生じてしまう。巻き取って大きなコイル状とする圧延アルミニウムまたは鉄鋼は、その応用の典型的な例で、その場合には、金属の保護を長期間維持するためには、仕上げ硬化ラッカーが柔軟性を持っていることが必須である。
【0022】
本発明による方法の第1の実施態様(以下においてはモデル1と呼ぶ)においては、第1の粒子分散体(ゾル)を、先に述べたタイプの1種または複数のモノマー化合物を部分的に加水分解することによって得る。この目的のためには、変性の対象となるラッカーの溶媒と相溶性のある溶媒を使用する。次いで前記のゾルをそのラッカーに添加するが、この段階ではそのゾルには所望のサイズのナノ粒子が含まれている。そのような粒子の表面を処理して変性させておくのも好ましいが、そのような処理としては、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタネート、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせがある。
【0023】
本発明のいくつかの実施態様、モデル1および2においては、金属−有機化合物からゾルを調製するには、化学的には2段のステップがある。出発溶液としては、化学式がM(OR)nまたはR’−M(OR)nであるモノマー化合物を含む溶液を使用する。化学式M(OR)nにおいて、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの組み合わせから選択される有機基である。化学式R’−M(OR)nにおいて、R’=RまたはR’=R−Xであり、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基である。Rが炭素原子を1〜4個有する単純なアルキルであるのが好ましい。指数は1〜6の整数であって、金属イオンの価数によってきまる。
【0024】
第1のステップは金属アルコキシドの加水分解であり、ここでアルコキシド配位子がヒドロキシル基に置換される。
M−OR + H−OH → M−OH + ROH
第2のステップは縮合であって、ヒドロキシル基が他の金属のヒドロキシル基またはアルコキシル基のいずれとも反応することができ、M−O−M結合を形成するとともに、水またはアルコールを生じる。
M−OH + HO−M≡ → ≡M−O−M≡ + H2O
または
M−OR + HO−M≡ → ≡M−O−M≡ + ROH
化合物R’−M(OR)nから出発しても、反応の道筋はほとんど同じで、それは、R’基が加水分解や縮合反応に与らないからである。
【0025】
こうして得られる溶液には、溶媒に分散された無機ポリマー粒子が含まれている。
【0026】
好ましい変法としては、加水分解/縮合のステップで、たとえばブチルジグリコールまたはエチルヘキサノールのような、官能性のOH基を有する化合物を添加する方法もある。これにより、ラッカー/ゲルコートと相溶性のある安定なゾルが得られることがわかった。
【0027】
たとえばアクリル系ラッカーを変性する場合には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APS)の加水分解/縮合の間にブチルジグリコール(BDG)を添加するのが好ましい。BDG−分子はγ−APSのエトキシ基を置換することができる(−ODGB)。−OEtの場合に比較して、おそらく−ODGBでは、−OHによる置換がかなり困難になると考えられるが、それは、−ODGB置換基とSi原子の間に相互作用が存在する可能性があるからである。OEtとSi原子の間では、そのような相互作用は強くない。一般的に言って、より大きなアルコール残基は−OH基による置換を受けにくいことが予想されるが、これは、より大きなアルコール分子は、より小さなアルコール分子に比較して、加水分解されたとしてもその後で、シランの近傍により長い時間とどまるという事実があるからである。その結果、逆反応(≡Si−OHとEtOHが縮合して≡SiOR+H2Oになる)が、小さなアルコール分子よりも大きなアルコール分子で起きやすくなる。加水分解/縮合においてはSi原子上の2つのサイトだけしか使用されないということから、このことは粒子の形成には決定的な影響がある。3つまたは4つのサイトが加水分解/縮合に関わるような場合には、大きな凝集物が形成されるのが普通で、このものは通常有機溶媒には難溶である。分子内の触媒的加水分解/縮合に代わるものとして、分子間での変性も可能である。この場合、シラン分子のアミノ基が、近傍にある他のシラン分子に触媒的に働いて、後者のシラン分子の加水分解/縮合を促す。この方法で、アクリル系ラッカーと相溶性のあるナノ粒子が形成される。
【0028】
本発明による変法、モデル2では、前述のタイプの無機化合物の量を調節しながら、既存の市販クリアラッカーまたは既存の市販ゲルコートに添加する。その場で所望の粒径範囲をもつ粒子を形成させるためには、2種類の必要な反応、すなわち縮合反応と加水分解の反応速度のバランスがうまくとれるような、化学反応条件を決めてやる必要がある。縮合反応は、モノマー(単一)分子からポリマー鎖を形成させる(重合反応)のに利用されるのに対し、加水分解はラッカーの成分との接触により起きる、多結晶質沈殿またはオキソヒドロキシド沈殿をもたらす。アルコキシド基を強い配位子と置き換える(置換)際に組み合わせる無機化合物を適当に選択すれば、縮合反応に比較して加水分解反応の速度を低下させることができ、これにより、前記の鎖をあまり長く延ばさずに、しかも、本明細書においてオリゴマーとして定める範囲内に納まるようにすることができる。実用面から見ればこれは、その粒子が数nmの粒径、最も典型的には10nm未満になることを意味している。ラッカーの明度を維持させるには、粒子径を30nm未満とするのが好ましい。モデル1の場合と同様に、そのような粒子の表面を処理して変性させておくのも好ましいが、そのような処理としては、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタン、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせがある。
【0029】
本発明による第3の変法、モデル3では、前述のタイプの凝集した粒子の粉体を、まず形成させる。粉体の凝集物はその結合が弱いので、機械的処理、化学的処理あるいはそれらの処理の組み合わせによっって、ナノサイズの粒子に破砕することができる。このことは、クレイ系の材料を、モデル3のための代用物として使用できることを示唆している。モデル1の場合と同様に、そのような粒子の表面を処理して変性させておくのも好ましいが、そのような処理としては、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタン、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせがある。
【0030】
これら3種類の実施態様/変法に共通しているのは、既存のラッカー、好ましくは有機溶媒系の光沢のあるクリアラッカーを出発原料とすることが可能であり、そして、無機ポリマー粒子で処理する方法によりそれらの性質を変化させて、ラッカーにナノサイズの粒子が含まれるようにすることができる、ということである。先にも述べたように、これらの粒子は、ラッカーそれ自体の有機系ネットワークに加えて、三次元ネットワークを形成することができ、通常の有機系ラッカーに比較すると格段の耐摩耗性をラッカーに付与し、しかも、仕上げ硬化後のラッカーは依然として柔軟性を保持して、もろくなることはない。この無機粒子を含む追加のネットワークは、ラッカーの有機系ネットワークには基本的には無関係であるが、部分的に結合していてもよい。
【0031】
無機ポリマー粒子の量を調節しながら添加するということは、粒子が上述のようなネットワークを形成するに十分な量とすることを意味する。ここでの必要量は、粒子サイズ、粒子のタイプ、それにラッカーのタイプに応じて、ケースバイケースで決定されるべきものである。一般的には、無機粒子の量は、対象としているラッカーを基準にして、0.5〜50重量%の間に納まるであろう。前記の範囲の下限近くまたは下限以下の濃度だと、粒子は限られた程度でしか、ラッカーで所望の改善した性質を得るのに必要なネットワークを形成することができない。前記の上限を超える濃度では、ラッカーの外観に粒子による悪影響が出て、粒子を添加する前のような、光沢があって滑らかで透明な見かけにはならない。
【0032】
本発明における金属イオンMは、一連の金属類、たとえば、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素、マグネシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、およびその他から選択する。研究の結果、金属イオンがジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素またはそれらの組み合わせであるような化合物がこの目的にはきわめて適していて、したがって、これらの金属が、本発明による金属イオンとして好適な実施態様となることが、判明した。分子の有機部分であるRは、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの組み合わせであるが、実際的な面からはその大きさが、最大でも炭素原子を8個を含む基に制限される。しかしながら、Rは炭素原子が5以上ではないことが好ましく、さらに、それが単純なアルキル、たとえばメチル、エチル、プロピルまたはブチルのようなものであるのが、より好ましい。
【0033】
ベースになるラッカー/ゲルコートを変性するのに3種類の異なった方法の内の1つを選んで目的の用途に使用するのが普通であるが、請求項17に定義したように、2種類の方法、あるいは3種類全部の方法(あるいはこれらの方法の要素)を組み合わせることも可能である。
【0034】
一般にコーティングの厚みは、コーティング方法や基材の性質によって決まってくるが、1〜50μmの間である。本発明により作られるコーティングはその性質、たとえば高耐摩耗性、が改良されているために、コーティングの厚みは薄く、たとえば1〜10μmの範囲でよい。
【0035】
本発明の目的のためには、各種の有機系のラッカーが適しているが、そのタイプは主として使用領域によって決まる。最も重要なものをあげれば、アクリル系ラッカー、エポキシラッカー、ポリエステルラッカー、ポリウレタンラッカー、ポリアミドラッカーおよびポリカーボネートラッカーがあり、これらはすべて本発明のベースラッカーとして使用できる。
【0036】
ラッカーは、保護すべき表面に塗布されてそこに密着するのに対し、ゲルコートは、たとえばカートップボックス、プラスチックボート、プラスチック容器/タンク、車体構造を製造するために用いられ、これらいずれにおいても、ガラスファイバーなどの形状の補強材を含んでいてもよい。したがってゲルコートの加工ステップは、ゲルコートとラッカーの外層の化学的な原理がほとんど同じであるとはいうものの、ラッカーを塗布するのとは全く異なっている。製品をゲルコートしようとする場合には、目的の製品とは凹凸逆転させた(complementary)形状の型を、ゲルコートが強度を持って密着することがないような材料でまず作成する。ついでゲルコートを常用の技術を用いて型に塗布し、その上に所望の補強材をおき、通常はさらにもう1層のゲルコートを塗布する。この最初に塗布したゲルコート層が、製品の外層を構成することとなり、この点ではラッカーと同じ機能をはたすことになるが、見映えと強度を有する表面を形成するとともに、UV防御機能も呈して、トップ層の下では材料が分解されないようにする。
【0037】
以下において、本発明によるいくつかの製造方法のための、種々な試験例を使用して、本発明をさらに詳しく説明する。鉄鋼表面の使用例はあげていないが、鉄鋼とアルミニウムではその接着に対する性能や硬度が幾分違うとはいえ、鉄鋼の場合でもアルミニウムで示した例と原理的には同じであることを強調しておきたい。
実施例1
市販のクリアポリウレタンラッカー(DDラッカー、ノルウェーのスカノックス社(Scanox)製)をモデル2にしたがって変性し、寄せ木張り(床)に塗布した。
【0038】
このポリウレタンラッカーは2成分系ラッカーであって、一方の成分が樹脂(A成分)、もう一方の成分が硬化剤(B成分)である。
【0039】
変性:10mlのテトラマトキシ−オルトシラン(TMOS)(スイスのシグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)製)を、激しい撹拌下(800rpm)で、40mlのA成分中に、滴と滴の間隔を約5秒に保ちながら、滴下した。このプロセス全体に約40分かけた。この溶液に撹拌下で、20mlのB成分を添加した。
【0040】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーを2枚の寄せ木張りボードにブラシで塗布した。それぞれのボードでは2つの領域が分けてあり、その一方にはこの変性ラッカーを2層塗布したのに対し、もう一方の領域には非変性のラッカーを2層塗布した。
【0041】
試験:24時間後にはラッカーは完全に硬化していた。この厚みを測定すると約20μmであった。耐摩耗性は、エア/ビセリ社(Eyre/Biceri)製の万能摩耗試験機を用いて試験した。ラッカー塗布した一方のボードをスチールナイフを備えた機械に結わえ付けた。一定荷重をかけた可動部を、ボード上に置き、装置をスタートさせた。回転回数は自動的に計測させた。80回転後に、表面を観察した。非変性ラッカーを塗布した部分では、ラッカーのほとんど全部がすり減っていた。変性ラッカーを塗布した部分では、ラッカーがほんのわずか摩耗しただけであった。
【0042】
もう1枚のボードを少なくとも20秒間火焔にあててから、観察した。変性ラッカーを塗布した部分は白色に変化していたが、これは、薄い酸化物層が生成したためで、このものが燃焼を抑制していた。非変性ラッカーを塗布した部分は、完全に黒化しており、火焔に接触した直後から燃え始めた。
実施例2
市販のクリアエポキシラッカーVS150(米国、バルスパー社(Valspar)製)を、モデル2にしたがって変性し、アルミニウムシートのコーティングに使用した。このエポキシラッカーは1成分系ラッカーで、樹脂と架橋剤の両方を含んでいるものであった。
【0043】
変性:61gのテトラエトキシ−オルトシラン(TEOS)(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)、200gのブタノール、および121gのアルミニウムsec−ブトキシド(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)からなる混合物の20mlを、激しい撹拌下(800rpm)で、40mlのラッカー中に、滴と滴の間隔を約2秒に保ちながら、滴下した。このプロセス全体に約40分かけた。
【0044】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドナンバー26)。塗布後直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を250℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0045】
試験:耐摩耗性能を、ドイツのエリクセン(Erichsen)タイプのハードネスペン法によって試験した。この方法は、ハードネスペンを用いて引っ掻き傷を作らせるものである。かける力は、バネで調節する。力に関連づけたハードネス値を、ペンから読みとる。並行試験の結果では、変性ラッカーを塗布したシートでの力は1Nを超えたのに対し、非変性ラッカーを塗布したシートでの力は0.2N未満であった。
実施例3
市販のクリアアクリル系ラッカー(SZ−006、ドイツのレナニア社(Rhenania)製)を、モデル2にしたがって変性し、アルミニウムシートのコーティングに使用した。
【0046】
このアクリル系ラッカーは1成分系ラッカーで、樹脂と架橋剤の両方を含んでいるものであった。
【0047】
変性:4.7gのテトライソプロピルオルトチタネート(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で12.9gのメタクリル酸に添加した。この溶液を15分間撹拌してから、撹拌下で26.4gのラッカーに添加した。
【0048】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法を用いて塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0049】
試験:
耐摩耗性
耐摩耗性能は、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。ラッカー塗布したシートの1枚を機械に結わえ付けた。可動部にコットンポールを取り付け、ラッカー塗布したシートに上に588g(3x 荷重)の一定重量をかけて置き、装置をスタートさせた。回転回数は自動的に計測させた。20回転後に、シートの表面をメッキし、観察した。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイライン(die line)の数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは2の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0050】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、明度(brightness)を測定することによって定量化できる(RD/20)。変性ラッカーの明度の値は1793であったが、これは、非変性ラッカーの明度(1773)とは同等の数値であった。
実施例4
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートのコーティングに使用した。
【0051】
変性:11.34gのチタンプロポキシドのアルコレート溶液(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で、7.74gのヘキサン酸に添加した。次いで、1gの蒸留水を撹拌下で添加した。15分間撹拌をしてから、得られたゾルの10gを、撹拌下で、0.165gのγ−アミノプロピルトリエトキシシランに添加した。次いで、得られた混合物の1gを、撹拌下で10gのラッカーに添加した。
【0052】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0053】
分析および試験
ゾルの粒径
ゾルの粒径は、光散乱法の手段を用いて測定した。英国のマルベルン社(Malvern)からの市販機器「ゼータサイザー(zetasizer)3」を用いて、粒径分布を測定した。粒径分布はシャープで、その平均粒径は5nmであった。
【0054】
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3と同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は588g(3x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは2の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0055】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、拡散透過度を測定することによって定量化できる。これは、たとえば、ラッカーのための基材として透明なガラス板を使用して測定する。まず、ガラス板単独での拡散透過度を測定する。次いでそのガラス板にラッカーを塗布し、もう一度拡散透過を測定する。ラッカーを塗布した後での拡散透過度の変化は、ラッカーの透明性の良い尺度となる(ただし、ラッカーとガラス板の界面が光散乱に大きな影響を与えていないこと)。この測定は、DIN5036標準にしたがった装置によって行った。
【0056】
透明なガラス板の拡散透過度を測定すると0.5%であった。非変性ラッカーをこのガラス板に塗布した(コーティング層5μm)。次いで測定した拡散透過度は、1.5%であった。変性ラッカーでの拡散透過度を測定すると、6%未満であった。
実施例5
実施例3で用いた市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0057】
変性:4.7gのテトライソプロピルオルトチタネート(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で15.3gのペンタン酸(吉草酸)に添加した。次いで、0.45gの蒸留水を撹拌下で添加した。このゾルを15分間撹拌してから、撹拌下で、10gのゾルを10gのラッカーに添加した。
【0058】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0059】
分析および試験
ゾルの粒径
このゾルの粒径は、英国のマルベルン社からの「ゼータサイザー3」を用いて測定した。粒径分布はシャープで、その平均径は3nmであった。
【0060】
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3と同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は980g(5x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは3の値であり、非変性ラッカーでは6の値であった。
【0061】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、明度を測定することによって定量化できる(RD/20)。変性ラッカーの明度の値は1693であったが、これは、非変性ラッカーの明度(1773)に比肩しうるものであった。
実施例6
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル3にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0062】
変性:10gの市販酸化チタン(米国、ナノフェーズ社(Nanophase)製、チタニア粒子の平均径が20nm(有機溶媒中20重量%)を、撹拌下で、10gのラッカーに添加した。
【0063】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、8μmであった。
【0064】
試験:耐摩耗性能を、実施例3と同様にして「テーバー摩耗試験機(taber abraser)」を用いて、試験した。非変性ラッカーでコーティングしたシートで測定した重量損失は、変性ラッカーでコーティングしたシートでの重量損失よりも明らかに多かった。
実施例7
市販のクリアゲルコートを、モデル1にしたがって変性し、ガラス繊維強化ポリエステル板の上に保護層を設けるために使用した。
【0065】
変性:スチレンに適合させたジルコニアゾルを製造するのに、40mlのZr(OPr)4溶液(スイスのシグマ・アルドリッチ社製)を、撹拌下で、29.6mlのメタクリル酸と混合した。この組成物の温度が室温になってから、3.72mlの水を撹拌下にゆっくりと添加した。次いで、40mlのスチレンを添加した。この組成物に不飽和ポリエステルを添加して、ポリエステル70%とした。過酸化物を添加してから、その組成物をブラシで型に塗布し、ポリエステル/ガラス繊維で強化した。
【0066】
試験:耐摩耗性能を、ドイツのエリクセン社製のハードネスペンを用いて試験した。引っ掻き傷(ダイライン)は認められなかった。非変性のゲルコートに同じ力(1N)を加えると、ダイラインが多数観察された。
実施例8
市販のクリアエポキシラッカーを、モデル3にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0067】
このエポキシラッカーは1成分系ラッカーで、樹脂と架橋剤の両方を含んでいるものであった。
【0068】
変性:9gの市販のベーマイト(コンデア・ヘミ社(Condea Chemi)製)を、撹拌下で、20gのブタノールに添加した。次いで、撹拌下で、2.14gのメタクリル酸を添加した。15分間撹拌してから、得られたゾルを超音波処理し(300W、5分、50%パルス)、そのゾルを、撹拌下で、10gのラッカーに添加した。
【0069】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、PMTを250℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。
【0070】
試験:耐摩耗性能を、実施例3と同様にして「テーバー摩耗試験機」を用いて、試験し、試験前後のシート重量を測定した。非変性ラッカーでコーティングしたシートで測定した重量損失は、変性ラッカーでコーティングしたシートでの重量損失よりも明らかに多かった。
実施例9
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル3にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0071】
変性:3gの市販の酸化チタン粉体(英国、タイオキシド社(Tioxide)製)を、6gのブチルジグリコール(BDG)および8.33gの1−メトキシ−1−アセトキシプロパンに添加した。得られた分散体を次いで、17分間超音波処理した(200W、50%サイクル)。次いで、このラッカーの成分を、撹拌下で、以下の順で添加していった:0.0072gのPTSA溶液、7.2gのHMMMメラミン樹脂溶液、9gのブロックHDIイソシアナート樹脂溶液、および、29.4gのアクリル系樹脂溶液。
【0072】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。このコート層の厚みを測定すると、12μmであった。
【0073】
試験
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3におけるのと同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は588g(3x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは1の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0074】
透明性
このラッカーは見たところ透明であった。ラッカーの透明性は、明度を測定することによって定量化できる(RD/20)。変性ラッカーの明度の値は1727であったが、これは、非変性ラッカーの明度(1693)に比肩しうるものであった。
実施例10
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0075】
変性:60gのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APS)を、13.2gのBDGおよび15.18gの蒸留水に添加した。このゾルを穏やかに12時間撹拌した。ついでそのゾルの5gを、穏やかな撹拌下で、1gのラッカーに添加した。
【0076】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNO.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。こうしてコーティングした層の厚みを測定すると、7μmであった。
【0077】
試験
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、ISO標準D 4060−95にしたがって、「テーバー摩耗試験機」を用いて測定した。この方法は、ラッカー塗布した表面を、その上でゴム車輪を回転させる手段により摩耗させるものである。回転数は自動的に記録され(1000回転)、かかる力は既知の重り(500g)によって決まる。このシートの重量を、試験前および後に測定する。非変性ラッカーによってコーティングしたシートでの重量損失は12.37mgであるのに対して、変性ラッカーによってコーティングしたシートでの重量損失は1.22mgであった。
【0078】
耐摩耗性能をさらに、実施例3におけるのと同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は980g(5x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは1の値であり、非変性ラッカーでは6の値であった。
実施例11
実施例3で用いたのと同じ市販のラッカーを、モデル1にしたがって変性し、アルミニウムシートに塗布した。
【0079】
変性:100gの市販のシリカゾル(日本の日産化学社(Nissan Chemical)製)を、22.4gのγ−APSに、ゆっくり撹拌しながら15分かけて添加した。この変性させたゾル10.2gを次いで、ゆっくりと撹拌しながら、3.3gのγ−APSおよび1.5gのBDGの混合物中に添加した。得られた組成物のうち5.1gを、ゆっくりと撹拌しながら、1gのラッカーに添加した。
【0080】
塗布:5分間撹拌してから、このラッカーをアルミニウムシート上に、「バーコーティング」法により塗布した(ロッドNo.26)。次いで直ちにこのシートを対流式オーブンに入れ、アルミニウムシートの温度(「ピークメタル温度」、PMT)を241℃に保った。次いでそのシートをオーブンから取り出し、冷水に浸けて冷却した。こうしてコーティングした層の厚みを測定すると、7μmであった。
【0081】
試験
耐摩耗性能
耐摩耗性能は、実施例3におけるのと同様にして、エア/ビセリ社製の万能摩耗試験機を用いて試験した。一定荷重は588g(3x 荷重)であった。非変性ラッカーでコーティングした部分でのダイラインの数は、比較的多かった。変性ラッカーでコーティングした部分ではダイラインがほとんど認められなかった。最善(ダイラインなし)を1、最悪(ダイライン多し)を6とする経験的な尺度では、変性ラッカーでは1の値であり、非変性ラッカーでは3の値であった。
【0082】
以下の表に、使用したラッカー/ワニスのタイプと、各種の硬度試験および明度試験の結果をまとめた。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
各種の試験結果から判るのは、本発明の方法の3種類の実施態様(のうちのいずれか)によって変性することによって、高い耐摩耗性を有するラッカーシステムを得ることができ、しかもそのラッカーの明度は維持される、ことである。
【0087】
ここで強調しておくが、本発明は既存の市販されているラッカー/ワニスまたはゲルコートを変性することに主として関連しているが、そのような製品だけに限定されているわけではない。したがって本発明は、その他のラッカー/ワニス、たとえば、これまでは市場で利用されていなかった特定のラッカーや、それ自体別途の発明を構成できるような新規なラッカーやワニスなど、にも応用できる。
【0088】
さらに我々は、記述を単純にするために、すぐにも使用できるようなラッカー/ワニスまたはゲルコートの変性について記載してきた。商業的見地からすれば、プロセスの別のステップとしてナノ粒子を導入して変性を実施する方が、最後の最後で導入するよりも、好都合であろう。
【0089】
またさらに我々は、ラッカー/ワニスにその都度、使用分野にふさわしい量の粒子を加えるという方法でこのプロセスを記述してきた。より高い濃度で粒子を添加することも可能であり、その場合には、使用者が塗布の直前にその濃厚物を標準のラッカー/ワニスで所望の濃度に稀釈することができ、さらに、摩耗強度や、それを塗布する基材などに応じて、変化させることも可能である。
【0090】
最後に、本発明によりラッカーを製造する方法に関連して言えば、これら3種類の置き換え可能な方法について、すべての実務的な場面で、それらを互いに排他的に採用することができ、そのため、もしモデル1を選択すれば、モデル2および3は自動的にその特定の用途からは排除されるかのように、記述してきた。しかしながら、これが正しいというわけではなく、これら3種類のモデルを組み合わせることには、何の問題もない。たとえば、微細に分散された粉体(モデル3)が添加されるようなシステムであるが、同時にモデル1によって粒子分散体から他の無機粒子を作ったり、あるいは、本発明のモデル2によってラッカー中でその場で生成させたりすることも可能である。
【0091】
前記のような変法もすべて本発明の範囲に包含され、これは、関連する使用領域に対して本発明の精神を応用しようとして当業者が導入する、すべてのその他の変更の場合についても同様である。
Claims (22)
- 有機系で好ましくは透明で艶のあるラッカー/ワニス、または、有機系のゲルコートであって、そのラッカー/ワニスまたはゲルコートが、粒径が主として1〜100nmの無機ポリマー粒子を調節した量で含み、その粒子がラッカーの有機ネットワークからは基本的に独立した三次元ネットワークを形成することができる、ことを特徴とする、有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。
- 前記の無機ポリマー粒子が、以下の群から選択されるモノマー化合物の加水分解および縮合反応から得られる反応生成物であり、
i)M(OR)nまたはii)R’−M(OR)n
ここで、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの組み合わせから選択される有機基であり、R’=RまたはR−Xであって、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基であり、nは1から6までの整数であることを特徴とする、請求項1に特許請求された有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。 - 前記の金属イオンMが、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素またはそれらの基の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項2に特許請求された有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。
- Rが、炭素原子数4までの基であって、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはそれらの基の組み合わせであることを特徴とする、請求項2に特許請求された有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。
- 前記の無機ポリマー粒子が、凝集した金属酸化物粒子を微粉化した天然または合成酸化物粉体、または天然または合成クレイ系の粉体、またはそのような粉体/粒子の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に特許請求された有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。
- 前記の無機ポリマー粒子の粒径が30nm未満であることを特徴とする、請求項1に特許請求された有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。
- 前記の無機ポリマー粒子が、非硬化のラッカー/ワニス中に0.5〜50重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に特許請求された有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコート。
- 前記の無機ポリマー粒子が、有機相により形成されたネットワークとは基本的に独立した三次元ネットワークを形成していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に特許請求された、透明で光沢のあるラッカー/ワニスまたはゲルコートに基づく柔軟性があり高い耐摩耗性を有するコーティング。
- ベースになるラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは既存の市販されている有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコートを変性することによって、請求項1に特許請求されたラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは光沢があって透明なラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法であって、以下のステップを含むことを特徴とするが:
(第1に)以下の群より選択する1種または複数の無機モノマー化合物を含む溶液の部分的な加水分解によりゾル(粒子分散物)を調製し;
i)M(OR)nまたはii)R’−M(OR)n、
ここで、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの組み合わせから選択される有機基であり、R’=RまたはR−Xであって、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基であり、nは1から6までの整数であり、
次いで、前記のゾルをベースのラッカー/ワニスまたはゲルコートと混合するが、その際には、それらの粒子が1〜100nmの粒径を有する粒子として分散され、しかも前記の粒子が縮合のプロセスの間にラッカー/ワニスまたはゲルコートのネットワークからは基本的に独立した三次元ネットワークを形成することが可能となるような、対象としているベースのラッカー/ワニスまたはゲルコートに応じた方法で混合される、ラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法。 - ベースになるラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは既存の市販されている有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコートを変性することによって、請求項1に特許請求されたラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは光沢があって透明なラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法であって、無機モノマー化合物の溶液の調節された量をベースのラッカー/ワニスまたはゲルコートに添加することを特徴とするが、前記の無機モノマー化合物が以下の群から選択され、:
i)M(OR)nまたはii)R’−M(OR)n、
ここで、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの基の組み合わせから選択される有機基であり、R’=RまたはR−Xであって、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基であり、nは1から6までの整数であり、
ここで、これらの化合物が加水分解および縮合反応の組み合わせにしたがって、ラッカー/ワニスまたはゲルコートのネットワークからは基本的に独立した三次元のネットワークをその場で形成することができ、そこで、組み合わせた加水分解と縮合の反応速度を、樹脂の種類、架橋剤および溶媒に応じて変化させながら、調節して、無機粒子がオリゴマーのサイズ、すなわち主として粒子径が1〜100nmの範囲になるようにする、ラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法。 - ベースになるラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは既存の市販されている有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコートを変性することによって、請求項1に特許請求されたラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは光沢があって透明なラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法であって、凝集させた金属酸化物粒子の酸化物粉体、天然または合成クレイからの粉体、またはそれらの粒子の組み合わせを、ベースになるラッカー/ワニスもしくはゲルコートまたはベースになるラッカー/ワニスもしくはゲルコートの一部に添加することを特徴とするが、前記の粒子はポリマーの吸着またはシラン、ジルコネートもしくはそれらの組み合わせとの反応によってその表面を変性されており、それによりまた対象となっているベースになるラッカー/ワニスまたはゲルコートに応じて、粒子がベースになるラッカー/ワニスまたはゲルコートに付加した後では1〜100nmの範囲の粒径を有する粒子として分散され、前記の粒子が縮合によって、ラッカー/ワニスまたはゲルコートのネットワークからは基本的に独立した三次元のネットワークを形成することが可能となるようにする、ラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法。
- 70を超える分子量で官能性のOH基を含む化合物、たとえば、ブチルジグリコールまたはエチルヘキサノールを添加するか、加水分解および縮合のプロセスによりその場で調製させる事を特徴とする、請求項9に特許請求されたラッカー/ワニスを製造する方法。
- 前記の粒子の表面を、ポリマーの吸着、シラン、ジルコネート、ジルコアルミネート、オルトチタン、アルミネートとの反応、あるいは、それらの処理の組み合わせを含む処理によって変性させることを特徴とする、請求項9または10に特許請求されたラッカー/ワニスを製造する方法。
- 前記の金属イオンMを、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素またはそれらの組み合わせからなる群より選択することを特徴とする、請求項9または10に特許請求されたラッカー/ワニスを製造する方法。
- Rが、炭素原子数4までの基であって、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはそれらの基の組み合わせであることを特徴とする、請求項9または10に特許請求されたラッカー/ワニスを製造する方法。
- 前記の無機ポリマー粒子がその粒子径が30nm未満になるように製造されるように、前記の反応条件を合わせることを特徴とする、請求項9または10に特許請求されたラッカー/ワニスを製造する方法。
- ベースになるラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは既存の市販されている有機系のラッカー/ワニスまたはゲルコートを変性することによって、請求項1に特許請求されたラッカー/ワニスまたはゲルコート、好ましくは光沢があって透明なラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法であって、前記の方法が請求項9〜11により定義される特徴のいずれか好適な組み合わせを含む、ラッカー/ワニスまたはゲルコートを製造する方法。
- 有機系で、好ましくは透明で光沢のあるラッカー/ワニス、またはゲルコートの使用であって、粒子径が主として1〜100nmの範囲の無機ポリマー粒子を調製した量で含み、前記の無機ポリマー粒子は以下の群より選択されるモノマー化合物の加水分解および縮合反応からの反応生成物:
i)M(OR)nまたはii)R’−M(OR)n、
ここで、Mは金属イオンであり、Rは1〜8個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アリールまたはそれらの基の組み合わせから選択される有機基であり、R’=RまたはR−Xであって、ここでXはたとえばアミン、カルボキシルまたはイソシアナートのような、有機基であり、nは1から6までの整数であり、
天然または合成クレイからの粉体、またはそれらの粒子の組み合わせを、アルミニウムまたは鉄鋼、好ましくはロール状のアルミニウムまたは鉄鋼の表面の表面保護コーティングとしての、使用。 - 前記の金属イオンMが、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、ケイ素またはこれらの金属の組み合わせである、請求項18に特許請求された使用。
- Rが好ましくは、炭素原子数4までの基であって、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはそれらの基の組み合わせである、請求項18に特許請求された使用。
- 前記の無機ポリマー粒子の粒径が30nm未満である、請求項18に特許請求された使用。
- 請求項8により定義された柔軟性があり高い耐摩耗性を有するコーティングを含むことを特徴とする、基材。
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