JP2004359794A - 空気入りタイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期に渡って動的入力を受けても、空気不透過性が低下しない空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と硫黄とからなる空気不透過性の気密部材6を備えた空気入りタイヤにおいて、前記気密部材6が、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層Aを少なくとも一層有することを特徴とする空気入りタイヤである。該空気入りタイヤは、ゴム成分と硫黄からなる保護層B(又はC)に金属を蒸着し、該保護層B(及びC)を成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形し、該生タイヤを加硫することで得られる。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤ及びその製造方法に関し、特に空気不透過性が高く、軽量化が可能な空気入りタイヤ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、空気入りタイヤとしては、チューブレスタイヤが主流となっており、該チューブレスタイヤの内面には、空気漏れを防止してタイヤの内圧を一定に保つために、空気不透過性の気密部材が配設されている。そして、該チューブレスタイヤの気密部材として、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴム等の空気透過性の低いゴム成分を主成分とするインナーライナーをタイヤの内面に設けることが主流となっている。ここで、該インナーライナーは、タイヤの空気漏れを防止すると共に、酸素及び水の影響を受けやすいタイヤ内部、例えば、酸化に弱いスチールコードや該コードとそのコーティングゴムとの間に形成される接着層を保護する役割も果たしている。
【0003】
ところで、近年、燃費向上と環境保護が優先課題となっており、更に軽量で且つヒステリシスの小さな気密部材をタイヤ内面に設けることが求められている。しかしながら、上記のブチルゴム等からなるインナーライナーは、その空気不透過性の観点から、1mm程度の厚さを要し、更に薄くすることが難しいため、前述の軽量化の要求に応えることができない。
【0004】
上記軽量化の要請に対し、良好な空気不透過性を維持しつつ気密部材の軽量化を達成するために、数多くの技術的対策が提案されている。これら提案の大多数は、本質的には、ブチルゴム等からなるインナーライナーの代わりに空気不透過性の非常に低い材料からなる気密部材を用いることを特徴としている。具体的には、一又は複数のバリヤ層から成る層状の複合部材を気密部材として用いることが提案されている。しかしながら、該提案には、前記複合部材を長期に渡りタイヤ内面に確実に接着するための接着剤の存在や、タイヤ製造時の該複合部材の安定的保持の点に問題があった(特許文献1〜7参照)。
【0005】
この問題に対し、バリヤ層として5μm以下の延性金属層を有する気密部材をタイヤ内部、具体的には、カーカス側及び/又はインナーライナー側に設けることによって、タイヤの内圧保持性と空気不透過性の向上に加え、懸案であった部材間の接着性の問題を解決したタイヤが提案されている(特許文献8参照)。ここで、該タイヤにおいては、タイヤの成形及び加硫の際にカーカスが受ける変形に対しても上記金属層が追随できるため、金属層の引き裂きが起こらないとされている。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第4874670号明細書
【特許文献2】
米国特許第5036113号明細書
【特許文献3】
特開平4−5104号公報
【特許文献4】
特開平4−5104号公報
【特許文献5】
特開平4−62009号公報
【特許文献6】
特開平4−212602号公報
【特許文献7】
特表平6−508308号公報
【特許文献8】
特表2001−509111号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献8に記載のタイヤといえども、長期に渡って動的入力を受ける間に上記金属層の性能が低下し、次第にバリヤ層としての機能を果たせなくなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、長期に渡って動的入力を受けても、空気不透過性が低下しない空気入りタイヤを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ナノサイズの超微粒子を高密度に含有する層をタイヤの内部に形成することで、長期に渡って動的入力を受けても、タイヤの空気不透過性が低下しないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の空気入りタイヤは、ゴム成分と硫黄とからなる空気不透過性の気密部材を備えた空気入りタイヤにおいて、前記気密部材が、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層を少なくとも一層有することを特徴とする。気密部材が金属サルファイド含有層を有することで、タイヤが長期に渡って動的入力を受けても、タイヤの空気不透過性の低下が防止される。ここで、該タイヤは、前記気密部材をタイヤ内面に具えるのが好ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤの好適例においては、前記金属サルファイド含有層の厚さが10μm以下である。ここで、該金属サルファイド含有層の厚さは、3μm以下であるのが更に好ましい。上記金属サルファイド含有層の厚さが10μmを超えると、金属サルファイド含有層自身の耐疲労性が低下し、タイヤが繰り返し動的入力を受ける間にクリープ破壊を起こしやすくなる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記金属サルファイドを構成する金属が、銅、コバルト、ニッケル及びブラスのいずれかである。これら金属のサルファイドは非化学量論的な組成をとり得るため、該金属サルファイドとマトリックスとなるゴム成分とが結合でき、タイヤの大変形にも追従でき、耐疲労性が向上する。
【0013】
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、(i)ゴム成分と硫黄からなる保護層に金属をコーティングする工程と、(ii)該保護層を成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形する工程と、(iii)該生タイヤの加硫中に、前記金属が前記保護層中に拡散し、該保護層中の硫黄と反応して金属サルファイドを生成することにより、気密部材としての金属サルファイド含有層を形成する工程とからなることを特徴とする。ここで、金属のコーティングは蒸着によるのが好ましく、蒸着により微粒子の金属が保護層上に形成されるため、加硫によりナノサイズの金属サルファイドが生成して、空気不透過性の高いタイヤを製造することができる。また、上記保護層は、延伸性に優れたゴム成分と硫黄とからなるのが好ましい。
【0014】
本発明の空気入りタイヤの製造方法の好適例においては、前記保護層が互いに異なる又は同一の保護層よりなり、これら保護層間に前記金属が蒸着されている。ここで、前記互いに異なる保護層の少なくとも一方が延伸性に優れたゴム成分と硫黄とからなるのが更に好ましい。
【0015】
本発明の空気入りタイヤの製造方法の他の好適例においては、前記保護層上の金属のコーティング厚さが60〜500nmである。金属コーティングの厚さが60nm未満では、加硫によって充分な厚さと密度を持つ金属サルファイド含有層が形成されず、500nmを超えると、金属サルファイド含有層の厚さが10μmを超える可能性があり、金属サルファイド含有層自身の耐疲労性が低下して、大変形時の歪に耐えられなくなり、結果的に、気密部材の空気不透過性が大きく低下する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の空気入りタイヤを詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤは、ゴム成分と硫黄とからなる空気不透過性の気密部材を備えた空気入りタイヤにおいて、前記気密部材が、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層を少なくとも一層有することを特徴とする。ここで、本発明のタイヤは、前記気密部材をタイヤ内面に具えるのが好ましい。また、本発明の空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0017】
上記特許文献8に記載のタイヤにおいては、長期に渡って動的入力を受けることで、金属層の空気不透過能が低下したが、上記金属サルファイド含有層は、長期に渡って動的入力を受けたり、タイヤが発熱しても、空気不透過性が低下することがない。また、上記金属サルファイド含有層を、タイヤ製造の加硫時にタイヤ内部に形成することで、タイヤ製造時の成形等の際にカーカスが変形しても、完成タイヤの空気不透過性に影響が及ばないようにすることができ、タイヤの空気不透過性の低下を防止することができる。
【0018】
本発明の空気入りタイヤは、本発明と異なる技術分野で採用されつつあるポリマー系ナノコンポジット化技術とタイヤ材料技術との新しい組み合わせにより、開発されたものであり、上記金属サルファイド含有層が、ナノサイズの金属サルファイドを高密度に含有する。ここで、該金属サルファイドの粒径は、2〜30nmであるのが好ましい。また、金属サルファイド含有層における金属サルファイドの密度は、金属サルファイド含有層1cm当り1.5〜2.7gであるのが好ましい。
【0019】
図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面図である。図1に示すタイヤは、一対のビード部1と、一対のサイド部2と、トレッド部3と、該ビード部1にそれぞれ埋設されたビードコア4間にトロイド状に延在させたカーカス5と、カーカス5のタイヤ半径方向内側に配設された気密部材6と、前記カーカス5のクラウン部でタイヤ半径方向外側に配した少なくとも二枚のベルト層からなるベルト7と、前記ビードコア4のタイヤ半径方向外側にそれぞれ配置したビードフィラー8とを具える。
【0020】
また、図2,3,4は、図1中のXで囲んだ部分の拡大図である。図2では、気密部材6は、金属サルファイド含有層Aと保護層Bとからなり、金属サルファイド含有層Aがカーカス5に隣接するように配設されている。図3では、気密部材6は、同一組成の二枚の保護層Bとその間に位置する金属サルファイド含有層Aとからなり、一方の保護層Bがカーカス5に隣接するように配設されている。図4では、気密部材6は、異なる組成の二枚の保護層B,Cとその間に位置する金属サルファイド含有層Aとからなり、保護層Cがカーカス5に隣接するように配設されている。ここで、金属サルファイド含有層Aの厚さは、10μm以下が好ましく、0.2〜3μmが更に好ましい。金属サルファイド含有層Aの厚さが10μmを超えると、金属サルファイド含有層自身の耐疲労性が低下し、タイヤが繰り返し動的入力を受けることでクリープ破壊を起こしやすくなり、結果として空気不透過性が低下するからである。また、0.2μm未満では、実質的に金属サルファイド含有層の密度が低く、効果が余り期待できない。
【0021】
次に、本発明のタイヤの製造方法を詳細に説明する。本発明のタイヤの製造方法は、(i)ゴム成分と硫黄からなる保護層に金属をコーティングする工程と、(ii)該保護層を成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形する工程と、(iii)該生タイヤの加硫中に、前記金属が前記保護層中に拡散し、該保護層中の硫黄と反応して金属サルファイドを生成することにより、気密部材としての金属サルファイド含有層を形成する工程とからなる。ここで、金属のコーティング方法としては、蒸着が好ましい。
【0022】
本発明のタイヤの製造方法では、(i)工程で、保護層に金属を蒸着することで、金属を微粒子の形態で保護層上に設けることができる。ここで、保護層は、互いに異なる又は同一の保護層よりなり、これら保護層間に前記金属が蒸着されているのが好ましい。
【0023】
次に、(ii)工程で、従来のインナーライナーに代えて、上記金属が蒸着等によりコーティングされた保護層を成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形する。更に、(iii)工程で、生タイヤを加硫して、微粒子状の金属を前記保護層中に拡散させ、該金属と保護層中の硫黄とを反応させてナノサイズの金属サルファイドを生成させ、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層を形成する。この工程で、前記金属が蒸着等でコーティングされた保護層は、金属サルファイド含有層を有する気密部材になる。なお、本発明の方法では、従来のインナーライナーに代えて、上記金属がコーティングされた保護層を成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形する以外は、従来と同様にしてタイヤを製造することができる。
【0024】
なお、図4のように、上記保護層が、互いに異なる保護層B,Cよりなる場合、保護層Bと保護層Cの成形ドラム上での貼り付けの順序は、特に制限されない。また、保護層Bと保護層Cの何れに金属をコーティングしてもよい。
【0025】
図5は、本発明の空気入りタイヤの加硫前の気密部材の一例の部分拡大図で、図6は、加硫後の気密部材の一例の部分拡大図である。図5では、気密部材6は、保護層B(又はC)及び保護層Bと、それらの間に設けられた金属層Dとからなる。金属層Dは、保護層B(又はC)上に蒸着により形成することができる。ここで、蒸着方法としては、真空蒸着やマグネトロンスパッター蒸着等が挙げられ、容易に保護層B(又はC)上に金属層Dを形成することができる。金属層Dを蒸着により形成した場合、金属が微粒子の形態をとるため、該金属が加硫により保護層中に拡散して、ナノサイズの金属サルファイドを形成し易い。
【0026】
上記金属層Dの厚さは、60〜500nmの範囲が好ましい。金属層Dの厚さが60nm未満では、充分な厚さと密度を持つ金属サルファイド含有層Aが形成されず、500nmを超えると、金属サルファイド含有層Aの厚さが10μmを超える可能性があり、金属サルファイド含有層自身の耐疲労性等の破壊特性が低下して、タイヤが繰り返し動的入力を受けることでクリープ破壊を起こしやすくなるからである。なお、金属層Dの厚さは、保護層B及びCの物性にも依存し、保護層B及びCの少なくとも一方は、延伸性に優れたゴム成分と硫黄とからなるのが好ましい。保護層B及びCの少なくとも一方に延伸性に優れたゴム成分を用いることで、タイヤの転動に伴いプライコードと保護層間に発生する歪を緩和して、保護層の割れを抑制できる。
【0027】
ここで、保護層B,Cに用いるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム等が挙げられ、延伸性に優れる点では、天然ゴムが好ましく、空気不透過性に優れる点では、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムが好ましい。保護層B,Cは、上記ゴム成分及び硫黄の他、カーボンブラック、芳香油、加硫促進剤、酸化亜鉛、老化防止剤、コバルト塩等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で含有することができる。
【0028】
本発明のタイヤの製造方法において、加硫前に存在する金属層Dは、タイヤの成形時の変形によって破壊されたり、微細な変形を起こし、空気不透過性が低下する。しかしながら、本発明の製造方法では、金属層Dを構成する微粒子状の金属が、加硫時の熱により、保護層B(及び/又はC)中に拡散し、保護層中の硫黄と反応して、ナノサイズの金属サルファイドが生成するため、タイヤの完成前に多少の破壊・変形があっても、完成後のタイヤの空気不透過性には影響がない。
【0029】
本発明のタイヤの製造方法で保護層のコーティングに用いる金属は、ナノサイズの超微細な金属サルファイドを形成できる金属であって、該金属としては、銅、コバルト、ニッケル及びブラス(Cu/Zn)が好ましい。これら金属のサルファイドは非化学量論的な組成をとり得るため、マトリックスとなるゴム成分と該金属サルファイドとが結合でき、その結果、タイヤの大変形にも追従することが可能となり、金属サルファイド含有層Aの耐疲労性が向上する。
【0030】
図6では、気密部材6は、保護層B(又はC)及び保護層Bと、それらの間に位置する金属サルファイド含有層Aとからなる。本発明の製造方法では、加硫時の熱により、ナノサイズの金属サルファイドが硫黄を含む保護層側に生成し、また、両保護層が硫黄を含む場合はその境界に生成し、その結果、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層Aが形成される。該金属サルファイド含有層Aは、金属の拡散と硫化により生成したナノサイズの金属サルファイドを高密度に含有した、ポリマー/金属サルファイド系のナノコンポジットであるため、高い空気不透過性を有する。また、金属サルファイド含有層Aは、金属層Dと異なり、長期に渡って動的入力を受けても、層の破壊による空気不透過性の低下がない。
【0031】
以上、図3及び図4の構造の気密部材を具えたタイヤの製造方法について詳述したが、本発明の方法は、これに限られるものではない。例えば、前述の図2に示す構造の気密部材を具えたタイヤを製造することもでき、その場合、金属層Dをカーカス5及び保護層Bの何れか、好ましくは保護層Bの側に設ける。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、 本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(試験例1)
表1に示す配合処方のゴム組成物からなる厚さ0.5mmの未加硫ゴムシート1と、表2に示す配合処方のゴム組成物からなる厚さ0.5mmの未加硫ゴムシート2とを作製し、表3に示す厚さのブラス(Cu/Zn=80/20)よりなる金属層を上記未加硫ゴムシート1上に蒸着により形成した。得られた未加硫ゴムシート1及び2を、未加硫ゴムシート1上の金属層が未加硫ゴムシート2に接触するように貼り合わせ、160℃で20分間加硫して、金属サルファイドが分散した金属サルファイド含有層を有するゴムシート3(貼り合わせゴムシート)を作製した。ここで、金属層及び金属サルファイド含有層の厚さは、金属層又は金属サルファイド含有層を挟んだ保護層をウルトラミクロトームを用いてカットして超薄切片を作製後、透過型電子顕微鏡で直接測定した。
【0034】
上記のようにして作製したゴムシート3の空気透過係数をJIS K7126に準拠して測定し、得られた空気透過係数を比較例1を100とした相対値に換算して表3に示す。相対空気透過係数が小さい程、空気不透過性に優れることを示す。
【0035】
【表1】
Figure 2004359794
【0036】
【表2】
Figure 2004359794
【0037】
【表3】
Figure 2004359794
【0038】
表3から、金属を蒸着して加硫することにより、ゴムシート3の空気不透過性が改善されることがわかる。また、蒸着により形成した金属層の厚さが厚くなるにしたがって、金属サルファイドが分散されてなる金属サルファイド含有層の厚さが厚くなり、ゴムシート3の空気不透過性が向上することが分かる。
【0039】
(試験例2)
図1及び図4に示す構造で、サイズ175/70R14の乗用車用タイヤを試作した。保護層Bは表1に示す配合処方のゴム組成物からなり、保護層Cは表2に示す配合処方のゴム組成物からなり、保護層C側に表4に示す厚さのブラス(Cu/Zn=80/20)よりなる金属層を蒸着により形成した。なお、保護層Bの厚さは0.5mmで、保護層Cの厚さは0.5mmである。次に、保護層B,Cを成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形し、該生タイヤを通常のタイヤ加硫条件で加硫した。得られたタイヤをリムに装着後、空気を充填してタイヤの内圧を2.3バール(bar)にし、60℃で28日間放置した後、タイヤの内圧を再び測定した。結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
Figure 2004359794
【0041】
表4から、気密部材が金属サルファイド含有層を有する実施例のタイヤは、比較例のタイヤよりも内圧の低下が抑制されており、内圧保持性が向上することが分かる。この結果から、内圧保持性を維持しつつ、気密部材の厚さを、ブチルゴムを主成分とした従来のインナーライナーに比べ10〜20%薄くすることが可能であり、タイヤの軽量化と発熱抑制が可能であるのことが分かる。
【0042】
(試験例3)
保護層Cの被着金属として、ゴム成分と結合できる非化学量論的なサルファイド組成をつくらない金属種(アルミニウム)を用いる以外は試験例2と同様の方法でサイズ175/70R14の乗用車用タイヤを製造し、比較例3とした。また、ブラスの蒸着厚さを700nmに増やす以外は試験例2と同様の方法でタイヤを製造し、比較例4とした。これらのタイヤ及び試験例2で製造したタイヤをそれぞれリムに装着し、空気を充填してタイヤの内圧を3.0バール(bar)に調整し、24時間放置後、内圧の再調整を行った。次に、該タイヤにJIS荷重の2倍の荷重を負荷して、直径3mのドラム上で速度60km/時で2万km走行させ、更に60℃で14日放置した後、タイヤの内圧を測定した。また、ドラム走行後のタイヤの内面を目視で観察し、クラックの発生の有無を確認した。結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
Figure 2004359794
【0044】
表5から、アルミニウムを蒸着した場合(比較例3)、走行による動的な入力を受けることで、結果的に比較例2と同じ空気圧まで低下することが分かる。これに対し、実施例4,5,6では、動的な入力を受けても内圧の低下が抑制されることが確認された。
【0045】
また、比較例4では、ドラム走行後、タイヤ内面にクラックが観察され、該クラックの起点は、金属被着側保護層Cと保護層Bとの境界、即ち、金属サルファイド含有層であった。また、結果として空気圧の低下も大きかった。この結果から、金属層の厚さが厚くなり過ぎると、金属サルファイド含有層の耐疲労性が低下するため、金属層の厚さは500nm以下が好ましいことが分かる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層を少なくとも一層有する気密部材を具えた、空気不透過性に優れ、且つ長期に渡って動的入力を受けても空気不透過性が低下しない空気入りタイヤを提供することができる。また、かかる空気入りタイヤの簡便な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面図である。
【図2】図1中のXで囲んだ部分の拡大図であって、本発明の空気入りタイヤの一実施態様を示す。
【図3】図1中のXで囲んだ部分の拡大図であって、本発明の空気入りタイヤの他の実施態様を示す。
【図4】図1中のXで囲んだ部分の拡大図であって、本発明の空気入りタイヤのその他の実施態様を示す。
【図5】本発明の空気入りタイヤの製造方法の一例における、加硫前の気密部材の部分拡大図である。
【図6】本発明の空気入りタイヤの製造方法の一例における、加硫後の気密部材の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 サイド部
3 トレッド部
4 ビードコア
5 カーカス
6 気密部材
7 ベルト
8 ビードフィラー
A 金属サルファイド含有層
B,C 保護層
D 金属層

Claims (9)

  1. ゴム成分と硫黄とからなる空気不透過性の気密部材を具えた空気入りタイヤにおいて、前記気密部材が、ゴム成分に金属サルファイドを分散させてなる金属サルファイド含有層を少なくとも一層有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記気密部材をタイヤ内面に具えることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記金属サルファイド含有層の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記金属サルファイドを構成する金属が、銅、コバルト、ニッケル及びブラスのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  5. ゴム成分と硫黄からなる保護層に金属をコーティングする工程と、
    該保護層を成形ドラム上に貼り付けて生タイヤを成形する工程と、
    該生タイヤの加硫中に、前記金属が前記保護層中に拡散し、該保護層中の硫黄と反応して金属サルファイドを生成することにより、気密部材としての金属サルファイド含有層を形成する工程と
    からなることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  6. 前記保護層が延伸性に優れたゴム成分と硫黄とからなることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  7. 前記保護層が互いに異なる又は同一の保護層よりなり、これら保護層間に前記金属が蒸着されていることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  8. 前記互いに異なる保護層の少なくとも一方が延伸性に優れたゴム成分と硫黄とからなることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  9. 前記保護層上の金属のコーティング厚さが60〜500nmであることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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Cited By (2)

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JP2011084143A (ja) * 2009-10-14 2011-04-28 Sumitomo Rubber Ind Ltd タイヤ・リム組立体
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