JP5783806B2 - タイヤ及び該タイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして使用したタイヤ、及び該タイヤの製造方法に関する。
気体が充填されるタイヤの内面には、気体を遮断するガスバリヤ層としてインナーライナーが配置されている。近年、酸素の透過量が低く、すなわち、ガスバリア性が高く、従来のブチル系ゴムよりも軽量な熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、熱可塑性樹脂エラストマー組成物の層(熱可塑性樹脂フィルム)の貯蔵弾性率よりも、ジエン系ゴム組成物の層(カーカス)の貯蔵弾性率を小さく設定するとともに、両者を接着する粘接着剤の貯蔵弾性率がその中間の値になるように設定することにより、タイヤの変形に伴う熱可塑性樹脂フィルムへの応力集中を防ぎ、熱可塑性樹脂フィルムの低温耐久性を向上させている。
特開2007−099146号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたタイヤには、依然として改善の余地があった。すなわち、熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして使用したタイヤでは、例えば、−20℃以下の低温環境では、0℃付近に比べてタイヤの変形に対するインナーライナーの追従性が低下するため、インナーライナーとカーカスとの接着界面において、インナーライナーにかかる応力が一層シビアになり、インナーライナーの破断やクラックの発生確率が高まることが考えられる。
このため、例えば、−20℃以下の低温環境では、インナーライナーやカーカスの更なる柔軟化が必要であるが、カーカスを柔軟化しすぎるとタイヤ全体としての耐久性が低下してしまう問題があった。前記低温環境においても、タイヤの耐久性を犠牲にすることなくインナーライナーの破断やクラックの発生確率を低いところで維持できれば、性能を十分に発揮することができるタイヤを提供することができる。
そこで、本発明は、熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして使用したタイヤであって、低温環境におけるインナーライナーの破断やクラックに対する耐性を向上することが可能なタイヤ、及びこのタイヤの製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして使用したタイヤにおいて、カーカスとインナーライナーとの間に、動的貯蔵弾性率を特定の値に設定したゴム層を配置することによって、低温環境におけるインナーライナーの破断やクラックに対する耐性が高められることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の内容を含む。
[1]カーカスと、熱可塑性樹脂フィルムからなるインナーライナーと、該カーカスと該インナーライナーとの間に配置されるゴム層と、該インナーライナーと前記ゴム層とを接着する接着層と、を有するタイヤであって、前記ゴム層の−20℃における動的貯蔵弾性率E’が1.0×105〜1.0×107Paであるとともに、前記ゴム層の厚みが0.1〜1mmである。
本発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして使用したタイヤであって、低温環境におけるインナーライナーの破断やクラックに対する耐性を向上することが可能なタイヤ、及びこのタイヤの製造方法を提供できる。
本発明の実施形態として示すタイヤのトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面図である。 図1の領域Iを拡大して示す拡大断面図である。 本発明の実施形態として示すタイヤを製造する工程S1で使用されるフィルム貼付装置の構成図である。
以下、本発明について説明する。本発明は、カーカスと、熱可塑性樹脂フィルムからなるインナーライナーと、該カーカスと該インナーライナーとの間に配置されるゴム層と、該インナーライナーと前記ゴム層とを接着する接着層と、を有するタイヤであって、前記ゴム層の−20℃における動的貯蔵弾性率E’が1.0×105〜1.0×107Paであるとともに、前記ゴム層の厚みが0.1〜1mmである。
[タイヤ]
<タイヤの構造>
以下、本発明の実施形態に係るタイヤの構造について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態として示すタイヤのトレッド幅方向及びタイヤ径方向の断面図である。図2は、図1の領域Iを拡大した拡大断面図である。
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
タイヤ1は、一対のビードコア11,12と、ビードフィラー13,14と、カーカスプライを含むカーカス15を有する。また、タイヤ1は、熱可塑性樹脂フィルムからなるインナーライナー16と、カーカス15とインナーライナー16との間に配置されるゴム層17と、を有する。インナーライナー16は、カーカス15のタイヤ内側に配置されている。また、図2に示すように、タイヤ1は、インナーライナー16とゴム層17とを接着する接着層31(図1には不図示)を有する。
ビードフィラー13,14は、ビードコア11,12からタイヤ径方向外側に延在する。カーカス15は、ビードコア11,12において、ビードフィラー13,14のトレッド幅方向外側に折り返されて、馬蹄形のタイヤケースの骨格を形成する。カーカス15のタイヤ径方向外側には、複数のベルト層からなるベルト層18が配設されている。ベルト層18の更にタイヤ径方向外側には、ベルト補強層19が配設されている。ベルト補強層19のタイヤ径方向外側には、トレッド部用ゴムによってトレッド部21が配設されている。カーカス15のトレッド幅方向外側には、サイドウォール用ゴムによってサイドウォール部22が形成されている。
本発明の実施形態に係るタイヤ1には、空気、窒素などのガスが充填される。タイヤ1の構造は一例であって、図1の構造に限定されない。例えば、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤ、オフザロード用タイヤ、二輪車用タイヤ、航空機タイヤ、農業用タイヤなどが挙げられる。
また、本発明の実施形態において、−20℃における、インナーライナー16を構成する熱可塑性樹脂フィルムの動的貯蔵弾性率をE1’、ゴム層17の動的貯蔵弾性率をE2’、接着層31の動的貯蔵弾性率をE4’とする。
ゴム層17の−20℃における動的貯蔵弾性率E2’は、1.0×105〜1.0×107Paであるとともに、ゴム層17の厚みは、0.1〜1mmである。ゴム層17の詳細は、後述する。
実施形態において、弾性率とは、上島製作所(株)製スペクトロメータを用い、初期歪み10%、動歪0.1%、周波数15Hz、−20℃の条件で測定した動的貯蔵弾性率(E’)である。
<カーカス>
カーカス15は、1枚又は2枚以上のカーカスプライよりなっており、カーカスプライは、ポリエステルなどの繊維がコーティングゴムに包まれたものである。
このコーティングゴムの材料には特に制限はなく、例えばジエン系ゴムが用いられる。このジエン系ゴムとしては、具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンゴム(1,2BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
コーティングゴムには、上記ゴム成分の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、補強性充填材、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、ゴム用加硫促進剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
<インナーライナー>
インナーライナー16は、熱可塑性樹脂フィルムを有する。本実施形態では、インナーライナー16は、熱可塑性樹脂フィルムを含む複数の樹脂層から形成された多層構造体であってもよい。本実施形態において、熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂組成物からなるA層を構成する。
熱可塑性樹脂フィルムの−20℃における動的貯蔵弾性率E1’は、好ましくは1×108〜1×109Paであり、より好ましくは2×108〜8×108Paであり、更に好ましくは4×108〜6×108Paである。1×108Pa以上であると、気体透過性の低い熱可塑性樹脂フィルムを用いることができ、ガスバリア性を向上させることができる点で好ましい。
実施形態に係るタイヤにおけるインナーライナー16の構成としては、次のものが挙げられる。すなわち、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の単層よりなっていてもよく、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の2層以上の多層よりなっていてもよい。また、熱可塑性樹脂フィルム(A層)と他の層(B層)とを含む2層以上の多層よりなっていてもよい。他の層(B層)としては、延性の高いエラストマーを含む樹脂組成物からなる層であることが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の延性が低い場合でも、インナーライナー16の全体的な延性を高めることができる。
なお、インナーライナー16が積層体である場合には、熱可塑性樹脂フィルムの−20℃における動的貯蔵弾性率E1’は、熱可塑性樹脂フィルム(A層)全体の動的貯蔵弾性率のことである。
また、インナーライナー16の全体の厚さは、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.5μm以上750μm以下がより好ましく、1μm以上500μm以下がさらに好ましい。
《層構造(多層構造体)》
以下、インナーライナー16が多層構造体である場合の層構造、熱可塑性樹脂フィルム(A層)、エラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)、A層とB層との関係、及び多層構造体の製造方法について説明する。
本実施形態において、インナーライナー16を構成する多層構造体は、熱可塑性樹脂フィルム(A層)とエラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)とを合計2層以上備えていることが好ましい。一例として、多層構造体において、A層は、ガス透過性の低い層であり、B層は、延性の高い層とすることができる。多層構造体をこのように構成した場合には、インナーライナー16のガス透過性を低下させるとともに、インナーライナー16の低温環境におけるクラックに対する耐性(耐クラック性という)及び屈曲によって生じる損傷等に対する耐性(耐屈曲性)を向上させることができる。ガス透過性が低いことを低ガス透過性、或いはガスバリア性という場合もある。
低ガス透過性及び耐クラック性の観点と製造上の観点から、A層及びB層の合計の層数としては、3層以上が好ましく、7層以上がより好ましく、17層以上が更に好ましく、25層以上が特に好ましく、48層以上がとりわけ好ましく、65層以上が極めて好ましい。当該多層構造体は、さらに多層の構造体としてもよく、A層及びB層の合計の層数として、128層以上、256層以上、512層以上、1,024層以上とすることもできる。なお、この合計層数の上限は当該多層構造体の用途によって適宜選定される。
この多層構造体は、A層及びB層以外のC層等を有することも可能である。また、A層及びB層の積層順としては、例えば、
(1)A,B,A,B・・・A,B(つまり、(AB)n
(2)A,B,A,B・・・・・A(つまり、(AB)nA)
(3)B,A,B,A・・・・・B(つまり、(BA)nB)
(4)A,A,B,B・・・B,B(つまり、(AABB)n
等の積層順を採用することができる。また、その他のC層を有する場合、例えば、
(5)A,B,C・・・A,B,C(つまり、(ABC)n
等の積層順を採用することができる。ただし、nは、1以上の整数である。
特に、A層及びB層の積層順としては、上記(1)、(2)又は(3)のように、A層とB層とが交互に積層されていることが好ましい。このようにA層とB層とが交互に積層された積層体に、活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、積層される各層間の結合性が向上し高い接着性を発現することができる。その結果、当該多層構造体の層間接着性ひいては低ガス透過性、耐屈曲性等を格段に向上させることができる。また、A層とB層とを交互に積層することで、A層が両面からB層に挟まれるため、A層の延性がより向上される。
また、この多層構造体を構成可能なC層としては、特に限定されず、例えば、一般的な合成樹脂層、合成樹脂フィルム等も用いられる。
この多層構造体において、上記A層及びB層の一層の平均厚みは、それぞれ、好ましくは0.001〜10μmであり、より好ましくは0.001〜40μmである。A層及びB層の一層の平均厚みを上記範囲とすることで、多層構造体の全体の厚さが同じである場合でも数を増やすことができ、その結果、当該多層構造体の低ガス透過性、耐屈曲性等をさらに向上させることができる。
なお、当該多層構造体は、上記範囲の厚みを有するA層と共に、エラストマーを含む樹脂組成物からなるB層が積層されているため、ガスバリア性を有するA層の延性が低い場合でも、延性の低い樹脂組成物からなるA層の延性をより高めることができる。これは、延性に優れたB層に、延性の低い樹脂組成物からなるA層を薄く積層させることで、この延性の低い樹脂組成物が、延性の高い状態に転移するためと考えられる。本発明者は、上記事実に着目し、A層は一般に延性が低い材料からなるが、このように各層の厚みを非常に薄くすることで、インナーライナーに求められる低ガス透過性と耐屈曲性とを高度に両立できる。そのため、当該多層構造体は、屈曲などの変形をさせて使用する場合でも、低ガス透過性等の特性を維持することができる。
A層一層の平均厚みの下限としては、0.001μmであるが、0.005μmが好ましく、0.01μmがさらに好ましい。一方、A層一層の平均厚みの上限としては、10μmであるが、7μmが好ましく、5μmがさらに好ましく、3μmがさらに好ましく、1μmがさらに好ましく、0.5μmがさらに好ましく、0.2μmさらには0.1μmが特に好ましく、0.05μmが最も好ましい。
A層一層の平均厚みが上記下限より小さいと、均一な厚さで成形することが困難になり、当該多層構造体の低ガス透過性及びその耐屈曲性が低下するおそれがある。逆に、A層一層の平均厚みが上記上限を超えると、当該多層構造体全体の厚みが同じである場合、当該多層構造体の耐久性及び耐クラック性が低下するおそれがある。また、A層一層の平均厚みが上記上限を超えると、上述したA層の延性向上が十分に発現しないおそれがある。なお、A層の一層の平均厚みとは、当該多層構造体に含まれる全A層の厚みの合計をA層の層数で除した値をいう。
B層一層の平均厚みの下限としては、0.001μmであるが、A層と同様の理由により0.005μmが好ましく、0.01μmがさらに好ましい。一方、B層一層の平均厚みの上限としては、40μmであるが、30μmが好ましく、20μm以下がさらに好ましい。B層一層の平均厚みが上記上限を超えると、当該多層構造体全体の厚みが同じである場合、当該多層構造体の耐久性及び耐クラック性が低下するおそれがある。なお、B層の一層の平均厚みも、当該多層構造体に含まれる全B層の厚さの合計をB層の層数で除した値をいう。
なお、B層一層の平均厚みに関しては、B層一層の平均厚みのA層一層の平均厚みに対する比(B層/A層)が1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。また、上記比が1以上、すなわちB層一層の平均厚みがA層一層の平均厚みと同じ又はそれ以上であることがさらに好ましく、2以上であることが特に好ましい。A層とB層との厚みの比をこのようにすることで、当該多層構造体が全層破断に至るまでの屈曲疲労特性が向上する。
当該多層構造体の厚みとしては0.1μm以上1,000μm以下が好ましく、0.5μm以上750μm以下がより好ましく、1μm以上500μm以下がさらに好ましい。当該多層構造体の厚みを上記範囲とすることで、上記のA層及びB層の一層の平均厚みを上記範囲とすることと相まって、タイヤのインナーライナー等への適用性を維持しつつガスバリア性、耐屈曲性、耐クラック性、耐久性、延伸性などをさらに向上させることができる。ここで、多層構造体の厚みは、多層構造体の任意に選ばれた点での断面の厚みを測定することにより得られる。
《熱可塑性樹脂フィルム(A層)》
熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、熱可塑性樹脂(A1)からなるマトリクス中に、−20℃における動的貯蔵弾性率E’が熱可塑性樹脂(A1)よりも低い柔軟樹脂(A2)を分散させた樹脂組成物(A3)からなる層を少なくとも含んでいてもよい。
ここで、熱可塑性樹脂(A1)としては、−20℃における動的貯蔵弾性率E’が1×108Paを超えることが好ましく、具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系エラストマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂等が挙げられ、これらの中でもエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂が好ましい。かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂は、酸素の透過量が低く、低ガス透過性が非常に良好である。なお、これら熟可塑性樹脂(A1)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、柔軟樹脂(A2)としては、−20℃における動的貯蔵弾性率E’が上記熱可塑性樹脂(A1)よりも低いことを要し、1×108Pa以下であることが好ましく、1×108Pa以下であると、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の弾性率を低下させることができ、その結果、低温環境における耐クラック性及び耐屈曲性を向上させることができる。
また、上記柔軟樹脂(A2)は、水酸基と反応する官能基を有することが好ましい。上記柔軟樹脂(A2)が水酸基と反応する官能基を有することで、熱可塑性樹脂(A1)中に柔軟樹脂(A2)が均一に分散するようになる。ここで、水酸基と反応する官能基としては、無水マレイン酸残基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。かかる水酸基と反応する官能基を有する柔軟樹脂(A2)として、具体的には、無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸変性超低密度ポリエチレン等が挙げられる。
更に、上記柔軟樹脂(A2)は、平均粒径が2μm以下であることが好ましい。柔軟樹脂(A2)の平均粒径が2μmを超えてしまうと、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の耐屈曲性を十分に改善できないおそれがあり、ガスバリア性の低下、延いてはタイヤの内圧保持性の悪化をもたらすことがある。なお、熱可塑性樹脂フィルム(A層)中の柔軟樹脂(A2)の平均粒径は、例えば、サンプルを凍結し、該サンプルをミクロトームにより切片にして、透過電子顕微鏡(TEM)で観察する。
熱可塑性樹脂フィルム(A層)中における柔軟樹脂(A2)の含有率は、10〜30質量%の範囲であることが好ましい。柔軟樹脂(A2)の含有率が10質量%未満では、耐屈曲性を向上させる効果が小さく、一方、30質量%を超えると、ガス透過性が大きくなることがある。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体に、例えば、エポキシ化合物を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。かかる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、通常のエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べて弾性率が低いため、層曲時の耐破断性が高く、また低温環境における耐クラック性にも優れている。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量が25〜50モル%であることが好ましく、30〜48モル%であることが更に好ましく、35〜45モル%であることが一層好ましい。エチレン含有量が25モル%未満では、耐屈曲性、耐疲労性及び溶融成形性が悪化することがあり、一方、50モル%を超えると、ガスバリア性を十分に確保できないことがある。また、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ケン化度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが一層好ましい。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性及び成形時の熱安定性が不十分となることがある。更に、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、メルトフローレート(MFR)が190℃、2160g荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることが更に好ましい。
本発明において、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造方法は、特に限定されないが、エチレン−ビニルアルコール共重合体とエポキシ化合物とを溶液中で反応させる製造方法が好適に挙げられる。より詳しくは、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶液に、酸触媒又はアルカリ触媒存在下、好ましくは酸触媒存在下、エポキシ化合物を添加し、反応させることによって変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメクンスルホン酸、硫酸及び三フッ化ホウ素等が挙げられ、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。なお、触媒量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、0.0001〜10質量部の範囲が好ましい。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体に反応させるエポキシ化合物としては、一価のエポキシ化合物が好ましい。二価以上のエポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と架橋反応し、ゲル、ブツ等を発生して、インナーライナーの品質を低下させることがある。なお、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造容易性、ガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性の観点から、一価のエポキシ化合物の中でも、グリシドール及びエポキシプロパンが特に好ましい。また、上記エポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して1〜50質量部を反応させることが好ましく、2〜40質量部を反応させることが更に好ましく、5〜35質量部を反応させることが一層好ましい。
上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点から、メルトフローレート(MFR)が190℃、2160g荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることが更に好ましく、0.5〜20g/10分であることが一層好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、熟可塑性樹脂(A1)と柔軟樹脂(A2)とを混練して樹脂組成物(A3)を調製した後に、溶融成形、好ましくはTダイ法、インフレーション法等の押出成形により、好ましくは150〜270℃の溶融温度でフィルムやシート等に成形することができる。また、上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、樹脂組成物(A3)からなる層を含む限り、単層であっても、多層化されたものでもよい。ここで、多層化する方法としては、共押出する方法等が挙げられる。
また、上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、20℃、65%RHにおける酸素透過係数が3.0×10-12cm3/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、1.0×10-12cm3/cm2・sec・cmHg以下であることが更に好ましく、5.0×10-13cm3/cm2・sec・cmHg以下であることが一層好ましい。20℃、65%RHにおける酸素透過係数が3.0×10-12cm3/cm2・sec・cmHgを超えると、この熱可塑性樹脂フィルム(A層)をインナーライナーとして用いる際に、タイヤの内圧保特性を高めるために、熱可塑性樹脂フィルム(A層)を厚くせざるを得ず、タイヤの重量を十分に低減できなくなる。
更に、上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、架橋されていることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム(A層)が架橋されていない場合、タイヤの加硫工程で積層体(インナーライナー)が著しく変形して不均一となり、熱可塑性樹脂フィルム(A層)のガスバリア性、耐屈曲性、耐疲労性が悪化することがある。ここで、架橋方法としては、エネルギー線を照射する方法が好ましく、該エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、これらの中でも電子線が特に好ましい。電子線の照射は、熱可塑性樹脂フィルム(A層)をフィルムやシート等の成形体に加工した後に行うことが好ましい。ここで、電子線の線量は、10〜60Mradの範囲が好ましく、20〜50Mradの範囲が更に好ましい。電子線の線量が10Mrad未満では、架橋が進み難く、一方、60Mradを超えると、成形体の劣化が進み易くなる。また、熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、接着剤層との粘着性を向上させるために、酸化法や凹凸化法等によって表面処理を施してもよい。上記酸化法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熟風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの中でもコロナ放電処理が好ましい。
《エラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)》
インナーライナー16が多層構造体である場合には、耐水性及びゴムに対する密着性の観点から、更にエラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)を一層以上含むことが好ましい。このエラストマーとしては、溶融成形のためには熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
この熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びフッ素樹脂系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの中でも、成形容易性の観点から、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーがより好ましく用いられる。
ここで、上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ポリオ−ルと、イソシアネート化合物と、短鎖ジオールとの反応によって得られる。ポリオール及び短鎖ジオールは、イソシアネート化合物との付加反応により、直鎖状ポリウレタンを形成する。上記ポリオールは、熱可塑性ウレタン系エラストマーにおいて柔軟な部分となり、イソシアネート化合物及び短鎖ジオールは硬い部分となる。なお、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、原料の種類、配合量、重合条件等を変えることで、広範囲に性質を変えることができる。かかる熱可塑性ウレタン系エラストマーとしては、ポリエーテル系ウレタン等が好適に挙げられる。
本発明の積層体は、耐水性及びゴムに対する密着性の観点から、更に熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層を一層以上含んでいてもよい。ここで、上記熱可塑性ウレタン系エラストマーは、ポリオ−ルと、イソシアネート化合物と、短鎖ジオールとの反応によって得られる。ポリオール及び短鎖ジオールは、イソシアネート化合物との付加反応により、直鎖状ポリウレタンを形成する。上記ポリオールは、熱可塑性ウレタン系エラストマーにおいて柔軟な部分となり、イソシアネート化合物及び短鎖ジオールは硬い部分となる。なお、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、原料の種類、配合量、重合条件等を変えることで、広範囲に性質を変えることができる。かかる熱可塑性ウレタン系エラストマーとしては、ポリエーテル系ウレタン等が好適に挙げられる。
《A層とB層との関係》
上記多層構造体における、A層とB層との剥離抗力としては、180℃で15分間加熱後に、JIS−K6854に準拠し、23℃、50%RH雰囲気下、引張り速度50mm/分での測定において、好ましくは25N/25mm以上、より好ましくは27N/25mm以上、さらに好ましくは30N/25mm以上、特に好ましくは50N/25mm以上である。このように、A層とB層とは、非常に優れた層間接着性を有している。
当該多層構造体の層間関係に関しては、活性エネルギー線の照射によって、A層とB層との界面で分子間の架橋反応が生じ、強固に結合していると考えられ、高い層間接着性が発現される。
《多層構造体の製造方法》
上記多層構造体の製造方法は、A層とB層とが良好に積層・接着される方法であれば特に限定されるものではなく、例えば共押出し、はり合わせ、コーティング、ボンディング、付着などの公知の方法を採用することができる。当該多層構造体の製造方法としては、具体的には(1)A層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とを用い、多層共押出法によりA層及びB層を有する多層構造体を製造する方法や、(2)A層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とを用い、接着剤を介して複数の積層体を重ね合わせ、延伸することでA層及びB層を有する多層構造体を製造する方法などが例示される。この中でも、生産性が高く、層間接着性に優れる観点から、(1)のA層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とを用いた多層共押出法により成形する方法が好ましい。
多層共押出法においては、A層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とは加熱溶融され、異なる押出機やポンプからそれぞれの流路を通って押出ダイに供給され、押出ダイから多層に押し出された後に積層接着することで、当該多層構造体が形成される。この押出ダイとしては、例えばマルチマニホールドダイ、フィールドブロック、スタティックミキサーなどを用いることができる。
当該多層構造体においては、このようにして得られた多層積層体に、上述のように活性エネルギー線を照射して、架橋反応を促進させ、A層とB層との層間接着性をさらに向上させる。当該多層構造体は、このように活性エネルギー線が照射されてなるため、層間の接着性が高まる結果、ガスバリア性及び耐屈曲性を高めることができる。
上記活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、具体的には、紫外線、γ線、電子線などをいう。これらの活性エネルギー線の中でも、層間接着性の向上効果の観点から、電子線が好ましい。活性エネルギー線として電子線を用いることで、層間の架橋反応がより促進され、当該多層構造体の層間接着性をさらに向上させることができる。
電子線を照射する場合、電子線源として、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用い、通常加速電圧100〜500kVで、照射線量5〜600kGyの範囲で照射するのがよい。
また、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射するのがよい。紫外線源としては、特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
この多層構造体は、上述のように層間接着性に優れ、高いガスバリア性、延伸性、熱成形性及び耐久性を有している。
この多層構造体は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、A層及びB層以外に他の層を含んでいてもよい。この他の層を構成する樹脂組成物の種類は、特に限定されないが、A層及び/又はB層との間の接着性が高いものが好ましい。他の層としては、A層中の例えばEVOHの有する水酸基や、B層中の例えばTPUの分子鎖中のカーバメート基又はイソシアネート基と反応して、結合を生成する官能基を有する分子鎖を有しているものが特に好ましい。
<ゴム層>
《ゴム層の構造》
本実施形態に係るタイヤにおいて、ゴム層17を構成するゴム成分に特に制限はなく、例えば、ジエン系ゴムが用いられる。このジエン系ゴムとしては、具体的には、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンゴム(1,2BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
コーティングゴムには、上記ゴム成分の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、補強性充填材、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、ゴム用加硫促進剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
ゴム層17の−20℃における動的貯蔵弾性率E2’は、1.0×105〜1.0×107Paであるとともに、ゴム層17の厚みは、0.1〜1mmである。
ゴム層17の−20℃における動的貯蔵弾性率E2’は、1.0×105〜1.0×106Paであることが好ましく、1.0×105Pa〜5.0×105Paであることがより好ましい。動的貯蔵弾性率E2’が1.0×105Pa以上であると、練ゴムの作業性を十分に確保することができる。また、強度を損なうことなく、ゴム層17の厚みを0.1〜1mmの範囲まで薄くすることができる。動的貯蔵弾性率E2’が1.0×107Pa以下であると、カーカスの変形を緩和することができ、熱可塑性樹脂フィルムの変形を抑制し低温環境における耐クラック性が向上する。
また、ゴム層17の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.1〜0.4mmであることがより好ましい。ゴム層17の厚さが上記範囲にあると、−20℃において、カーカス15に対する追従性を保ちつつ、インナーライナー16を構成する熱可塑性樹脂フィルムに発生する応力を緩和し、熱可塑性樹脂フィルムの破断及びクラックの発生を抑制できる。また、熱可塑性樹脂フィルムの破断及びクラックが発生しても破断及びクラックの進展を抑制できる。
ゴム層17には、上記ゴム成分の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、充填材、粘着付与樹脂、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。ゴム層17は、各成分を、例えばバンバリーミキサーやロールなどを用いて混合することにより調製できる。このようにして得られたゴム層17は、インナーライナー16を構成する熱可塑性樹脂フィルムとカーカス15との間に配置される。
《軟化剤》
ゴム層17には、軟化剤が配合されている。軟化剤としては、鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤、及び合成軟化剤のいずれを使用することもできる。鉱物油系軟化剤には、石油系軟化剤とコールタール系軟化剤とがある。石油系軟化剤として、プロセス油、エクステンダー油、アスファルト系、パラフィン類、流動パラフィン、ワセリン、石油樹脂が挙げられる。コールタール系軟化剤として、コールタール、クマロンインデン樹脂が挙げられる。
植物油系軟化剤として、大豆油、パーム油、パイン油、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油、トール油などの脂肪油系軟化剤、ファクチス、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸が挙げられる。
合成軟化剤として、合成樹脂軟化剤、液状ゴム又はオリゴマー、低分子可塑剤、高分子可塑剤、反応性可塑剤が挙げられる。
合成樹脂軟化剤として、例えば、フェノールアルデヒド樹脂、スチレン樹脂、アタクチックポリプロピレン等が挙げられる。液状ゴム又はオリゴマーとして、例えば、ポリブテン、液状ブタジエンゴム、液状イソプレンゴム、液状アクリロニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。低分子可塑剤として、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート等が挙げられる。
また、上述した軟化剤は、ゴム層17を構成するゴム成分100質量部に対して5〜50質量部含まれることが好ましく、5〜40質量部含まれることがより好ましく。5〜30質量部含まれることが更に好ましい。
ゴム成分に対する配合量を上記範囲とすることにより、ゴム層17の、−20℃における動的貯蔵弾性率E’を1.0×105〜1.0×107Paとすることができる。軟化剤は、上述した軟化剤から選択される一つを用いることもできるし、複数を組み合わせて用いることもできる。
《加硫剤、加硫促進剤》
ゴム層17には、加硫剤、加硫促進剤が含有されていてもよい。上記加硫剤として、硫黄等が挙げられる。加硫剤として硫黄を使用する場合、その使用量は、全ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。
本実施形態において使用可能な加硫促進剤は、特に限定されないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアゾリルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
《充填材》
充填材としては、無機フィラー及び/又はカーボンブラックが用いられる。無機フィラーとしては特に制限はないが、例えば湿式法によるシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイト、マイカ、スメクタイト、有機化モンモリロナイト、有機化マイカ及び有機化スメクタイトなどを好ましく挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、カーボンブラックとしては、従来ゴムの補強用充填材などとして慣用されているものの中から任意のものを適宣選択して用いることができ、例えばFEF、SRF、HAF、ISAF、SAF、GPFなどが挙げられる。
この充填材の含有量は、ゴム成分100質量部当たり、タック性及び剥離抗力などの点から、カーボンブラックと共に、無機フィラー5質量部以上含むことが好ましい。
《粘着付与樹脂》
ゴム層17に粘着性を付与する機能をもつ粘着付与樹脂としては、例えばフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、C5、C9石油樹脂、キシレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられるが、これらの中で、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン樹脂及びロジン系樹脂が好適である。
フェノール系樹脂としては、例えばp−t−ブチルフェノールとアセチレンを触媒の存在下で縮合させた樹脂、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物などを挙げることができる。また、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂としては、例えばβ−ピネン樹脂やα−ピネン樹脂などのテルペン系樹脂、これらを水素添加してなる水添テルペン系樹脂、テルペンとフェノールをフリーデルクラフト型触媒で反応させたり、あるいはホルムアルデヒドと縮合させた変性テルペン系樹脂を挙げることができる。ロジン系樹脂としては、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化、ライム化などで変性したロジン誘導体などを挙げることができる。
これらの樹脂は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、特にフェノール系樹脂が好ましい。
この粘着付与樹脂は、ゴム成分100質量部に対し、5質量部以上用いることが好ましく、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の割合で用いられる。
<接着層>
本実施形態において、接着層31を構成する樹脂としては、インナーライナー16とゴム層17とを接着できる接着性樹脂であれば、特に限定されることはない。例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系の一液型硬化性接着剤、又は二液型硬化性接着剤が挙げられる。
本発明の実施形態に係るタイヤ1において、インナーライナー16を構成する熱可塑性樹脂フィルムの動的貯蔵弾性率をE1’、ゴム層17の動的貯蔵弾性率をE2’、接着層31の−20℃における動的貯蔵弾性率をE4’とすると、下記の関係を有することが好ましい。
1’>E4’>E2
このような関係を有することにより、隣接部材同士(すなわち、インナーライナー16(熱可塑性樹脂フィルム)と接着層31、接着層31とゴム層17の低温における動的貯蔵弾性率の差が小さくなる。この結果、低温において、タイヤの屈曲などのタイヤ形状の変化に対する追従性がよく、特に、熱可塑性樹脂フィルムの耐クラック性を向上させることができる。
接着層31のE4’とゴム層17のE2’との差は、好ましくは9.3×107〜3.1×108Paであり、より好ましくは9.3×107〜2.4×108Paであり、更に好ましくは9.3×107〜1.8×108Paである。9.3×107Pa以上であると、接着層31のE4’を熱可塑性樹脂フィルム(A層)のE1’に近づけることができるため、熱可塑性樹脂フィルム(A層)と接着層31との間の変形による歪みが生じにくくすることができ、耐クラック性を高めることができる。3.1×108Pa以下であると、接着層31のE4’とゴム層17のE2’との差が小さくなるため、低温環境における耐クラック性がより向上する。
[タイヤの製造方法]
<製造方法の概略>
本発明の実施形態に係るタイヤ1の製造方法について説明する。タイヤ1の製造方法は、2つの主要な工程S1,S2を有する。
工程S1は、ゴム層17に接着層31を介してインナーライナー16(熱可塑性樹脂フィルム)を貼り付けた積層体を形成する工程である。
工程S2は、工程S1において形成された積層体を、インナーライナー16側を成型ドラム側になるよう配置し、更にその上にカーカス15に配置する工程である。工程S2では、タイヤ成形用ドラム上において、工程S1で形成した積層体、未加硫ゴムからなるカーカス15、更に、このほか通常タイヤ製造に用いられる部材が重ねられ、互いに貼り合わされる。このとき、熱可塑性樹脂フィルムを有するインナーライナー16、接着層31、ゴム層17、カーカス15がタイヤ成形ドラムの周面から外側向けて、この順となるように巻き付ける。
更に、その上にベルト層4、トレッド部5を構成するゴム部材、サイドウォール部6を構成するゴム部材等を巻き重ねる。これにより、グリーンタイヤが形成される。次いで、このグリーンタイヤを、通常120℃以上、好ましくは125〜200℃、より好ましくは130〜180℃の温度で加熱・加硫することにより、タイヤ1が製造できる。
<工程S1の説明>
ゴム層17に接着層31を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けた積層体を形成する方法の一例を図面を参照して説明する。図3は、ゴム層17に接着層31を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けた積層体を形成するフィルム貼付装置100の構成図である。
フィルム貼付装置100は、供給コンベア101、樹脂フィルムロール支持軸102、裏打シート剥離手段としての裏打シート剥離治具103、裏打シート巻取ドラム104、押圧ローラ105、フィルム切断手段106を備える。
供給コンベア101は、上面に未加硫ゴムシート120を平坦姿勢で搬送する搬送面を有する。実施形態において、未加硫ゴムシート120は、ゴム層17の連続体である。供給コンベア101は、未加硫ゴムシート120の表面に熱可塑性樹脂フィルムが貼り付けられた積層体11を搬送方向下流側に配置されたタイヤ成型ドラム(図示省略)に供給する機能を有する。
樹脂フィルムロール支持軸102は、供給コンベア101により搬送される未加硫ゴムシート120に向けて送給する熱可塑性樹脂フィルムを保管するものであって、供給コンベア101の搬送面に対して上方位置に配置される。
樹脂フィルムロール107には、熱可塑性樹脂フィルムの連続体121が巻回されている。熱可塑性樹脂フィルムの連続体121は、隣接層間での密着防止や、連続体121の補強等の目的のため、例えば、PETフィルムなどで構成された裏打シート122によって裏打されている。
裏打シート剥離治具103は、樹脂フィルムロール107から引き出されて供給コンベア101へ向かう熱可塑性樹脂フィルムの連続体121に貼付された裏打シート122の流れ方向を転換するとともに、裏打シート122を熱可塑性樹脂フィルムの連続体121から剥離する。また、裏打シート巻取ドラム104は、熱可塑性樹脂フィルムから剥離された裏打シート122を巻き取るものである。
押圧ローラ105は、裏打シート122が剥離された熱可塑性樹脂フィルムの連続体121を未加硫ゴムシート120の表面に押し当てて、両部材を相互密着させるためのものである。さらにフィルム切断手段106は、熱可塑性樹脂フィルムを予め定めた所定の長さに切断するためのものであり、ナイフエッジ、剪断刃等とすることができる。
以上に述べたようなフィルム貼付装置100を用いて熱可塑性樹脂フィルムの連続体121を未加硫ゴムシート120に貼り付けるにあたって、熱可塑性樹脂フィルムの連続体121は、樹脂フィルムロール107から供給コンベア101の搬送面に向けて送り出される。熱可塑性樹脂フィルムの連続体121に貼付された裏打シート122は、搬送されながら連続体121から剥離されて裏打シート巻取ドラム104に巻き取られる。
次いで、裏打シート122が剥離された熱可塑性樹脂フィルムの連続体121は、供給コンベア101によって搬送される未加硫ゴムシート120に、所定の調整が施されながら重ねられる。続いて、押圧ローラ105の押圧作用によって、熱可塑性樹脂フィルムの連続体121が未加硫ゴムシート120の表面に順次接着される。このとき、熱可塑性樹脂フィルムの連続体121と未加硫ゴムシート120との間に、接着層が配置される。
次いで、未加硫ゴムシート120に貼り付けされた熱可塑性樹脂フィルムの連続体121は、フィルム切断手段106によって所定の長さに切断される。これにより、ゴム層17に接着層31を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けた積層体が形成される。つまり、ゴム層によって裏打ちされた熱可塑性樹脂フィルムを形成することができる。
<接着層をインナーライナーとゴム層との間に配置する方法>
接着層31をインナーライナー16とゴム層17との間に配置する方法としては、液状の接着層31をインナーライナー16とゴム層17との間に塗布してもよいし、シート状に形成された接着層31をインナーライナー16とゴム層17との間に配置してもよい。
液状の接着層31をインナーライナー16とゴム層17との間に塗布する方法では、接着層31組成物を良溶媒に溶解してなる塗工液を、インナーライナー16の外側表面(タイヤ成形ドラムに巻き付けたときに外側になる面)、及びカーカス15の内側表面(成形ドラムに巻き付けたときに内側になる面)の少なくとも一方に塗布する。次いで、タイヤ成形ドラムの周面上に、インナーライナー16、ゴム層17、カーカス15がタイヤ成形ドラムの周面から外側向けて、この順となるように巻き付ける。
良溶媒としては、ゴム成分の良溶媒であるヒルデブランド(Hilderand) 溶解性パラメーターδ値が14〜20MPa1/2 の範囲にある有機溶剤が好ましく用いられる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、n−へキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
このようにして調製された塗工液の固形分濃度は、塗工性や取り扱い性などを考慮して適宣選択されるが、通常5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲である。
シート状に形成された接着層31をインナーライナー16とゴム層17との間に配置する方法では、タイヤ成形ドラムの周面上に、インナーライナー16、シート状の接着層31,ゴム層17、カーカス15がタイヤ成形ドラムの周面から外側向けて、この順となるように巻き付ける。なお、この場合には、シート状の接着層31をインナーライナー16又はゴム層17のいずれか一方に先に貼り付けておいてもよい。
上述のように、インナーライナー16としての熱可塑性樹脂フィルムをゴム層17に、貼り付けた積層体を予め用意しておくことにより、熱可塑性樹脂フィルムの取り扱い性が向上するため、製造効率が向上するとともに、熱可塑性樹脂フィルムに皺が拠ったり、熱可塑性樹脂フィルムとゴム層17との間にエアが入ったりする製造上の不具合の発生を低減できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。まず、実施例に係るタイヤの評価方法について説明する。続いて、インナーライナーとして用いる熱可塑性樹脂フィルムの製造例、更に、タイヤの製造例について説明する。
後述する製造例に従ってインナーライナーとして用いる熱可塑性樹脂フィルムを製造した。また、製造した熱可塑性樹脂フィルムをインナーライナーとして用いてタイヤを製造し、下記の方法により、各タイヤの低温における耐性を評価した。
[評価方法]
<低温における耐性評価>
タイヤの低温(−20℃)における耐性は、以下のように評価した。すなわち、後述の製造例に従って製造したタイヤをJATMAに規定される標準リムに装着し、JATMAで規定される正規内圧及び正規荷重のもとでドラム走行試験を行った。
−20℃の雰囲気下、空気圧140kPaで80km/hの速度に相当する回転数のドラム上に荷重6kNで押し付けて、1,000km走行を実施した。
《ドラム走行試験後の亀裂の有無》
−20℃の温度条件下において、1,000km走行した後、インナーライナーを目視観察(光学顕微鏡観察)し、破断、クラック等の欠陥の有無を調べた。
《ドラム走行試験後のタイヤのガスバリア性》
タイヤ側面部を10cm×10cmの大きさに切り取り、20℃−65%RHで5日間調湿し、調湿済みのタイヤ側面部の切片のサンプルを2枚使用して、モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20型」を用い、20℃−65%RH条件下でJIS−K7126−2:2006(等圧法)に記載の方法に準じて、酸素透過速度を測定し、その平均値(単位:mL/m2・day・atm)を求めた。比較例4の多層構造体のサンプルの酸素透過速度の平均値を100として指数表示している。指数値が低いほど、ガスバリア性に優れることを意味する。
<タイヤ重量の評価>
後述する実施例及び比較例のタイヤの重量を測定した。比較例3の重量を100とする指数により表示している。指数値が低いほど、タイヤの重量が小さいことを意味する。
<インナーライナーの特性の評価>
実施例で用いるエチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量及びケン化度は、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした1H−NMR測定[日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用]で得られたスペクトルから算出した。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体のメルトフローレート(MFR)は、メルトインデクサーL244[宝工業株式会社製]の内径9.55mm、長さ162mmのシリンダにサンプルを充填し、190℃で溶融した後、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーを使用して均等に荷重をかけ、シリンダの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより単位時間あたりに押出される樹脂量(g/10分)から求めた。但し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の融点が190℃付近あるいは190℃を超える場合は、2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿して算出した値をメルトフローレート(MFR)とした。
<5層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体の作製>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[(株)クラレ製「E105」]と、熱可塑性ポリウレタン(TPU)[(株)クラレ製「クラミロン3190」]とを使用し、押出装置を用いて、共押出により3層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体(TPU層/EVOH層/TPU層/EVOH層/TPU層)を作製した。共押出の成形条件は、下記のとおりである。なお、各層の厚みは、TPU層(C1)2μm、EVOH層(C2)20μm、TPU層(C3)2μm、EVOH層(C4)20μm、TPU層(C5)10μmである。
各樹脂の押出温度 :C1/C2/C3/C4/C5/ダイ=170/170/170/220/220/220℃
各樹脂の押出機仕様
熱可塑性ポリウレタン:25mmφ押出機「P25−18AC」[大阪精機工作株式会社製]
EVOH :20mmφ押出機ラボ機ME型「CO−EXT」[株式会社東洋精機製]
Tダイ仕様 :500mm幅2種3層用[株式会社プラスチック工学研究所製]
冷却ロールの温度 :50℃
引き取り速度 :4m/分
<21層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体の作製>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[(株)クラレ製「E105」]と、熱可塑性ポリウレタン(TPU)[(株)クラレ製「クラミロン3190」]とを使用し、押出装置を用いて、共押出により、両端をTPU層としTPU層とEVOH層とが交互に繰り返される21層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体(TPU層/EVOH層/TPU層/…EVOH層/TPU層)を作製した。共押出の成形条件は、下記のとおりである。なお、TPU層の厚みは、2μm、EVOH層の厚みは、1μmである。
各樹脂の押出温度 :全て220℃
各樹脂の押出機仕様
熱可塑性ポリウレタン:25mmφ押出機「P25−18AC」[大阪精機工作株式会社製]
EVOH :20mmφ押出機ラボ機ME型「CO−EXT」[株式会社東洋精機製]
Tダイ仕様 :500mm幅2種7層用[株式会社プラスチック工学研究所製]
冷却ロールの温度 :50℃
引き取り速度 :4m/分
<インナーライナーの動的貯蔵弾性率>
また、インナーライナーの−20℃における動的貯蔵弾性率を測定したところ、動的貯蔵弾性率は、5.9×108であった。
<ゴム層の作製>
《製造例1》
下記の配合に基づいてゴム層aを得た。
天然ゴム…50質量部
SBR[JSR(株)製,SBR1712]…68.75質量部
GPF N−660(カーボンブラック)[旭カーボン(株)製,50S]…43質量部
軟化剤[TOP、大八化学工業(株)製]…50質量部
老化防止剤[Nocrac224−S、大内新興化学工業(株)製]…1.5質量部
ステアリン酸[旭電化工業(株)製]…1.5質量部
加硫促進剤[Accel M、川口化学工業(株)製]…0.5質量部
加硫促進剤[Accel CZ、川口化学工業(株)製]…1質量部
酸化亜鉛[ハイテック社 製]…4質量部
硫黄[軽井沢精錬所製]…2.66質量部
また、上記のゴム層aについて、上記測定方法にて−20℃における動的貯蔵弾性率を測定したところ、動的貯蔵弾性率は、2×105であった。
《製造例2》
下記の配合に基づいてゴム層bを得た。
天然ゴム…50質量部
SBR[JSR(株)製,SBR1712]…68.75質量部
GPF N−660(カーボンブラック)[旭カーボン(株)製,50S]…43質量部
軟化剤[TOP、大八化学工業(株)製]…25質量部
老化防止剤[Nocrac224−S、大内新興化学工業(株)製]…1.5質量部
ステアリン酸[旭電化工業(株)製]…1.5質量部
加硫促進剤[Accel M、川口化学工業(株)製]…0.5質量部
加硫促進剤[Accel CZ、川口化学工業(株)製]…1質量部
酸化亜鉛[ハイテック社 製]…4質量部
硫黄[軽井沢精錬所製]…2.66質量部
また、上記のゴム層bについて、上記測定方法にて−20℃における動的貯蔵弾性率を測定したところ、動的貯蔵弾性率は、2×106であった。
《製造例3》
下記の配合に基づいてゴム層cを得た。
天然ゴム…50質量部
SBR[JSR(株)製,SBR1712]…68.75質量部
GPF N−660(カーボンブラック)[旭カーボン(株)製,50S]…43質量部
軟化剤[TOP、大八化学工業(株)製]…10質量部
老化防止剤[Nocrac224−S、大内新興化学工業(株)製]…1.5質量部
ステアリン酸[旭電化工業(株)製]…1.5質量部
加硫促進剤[Accel M、川口化学工業(株)製]…0.5質量部
加硫促進剤[Accel CZ、川口化学工業(株)製]…1質量部
酸化亜鉛[ハイテック社 製]…4質量部
硫黄[軽井沢精錬所製]…2.66質量部
また、上記のゴム層cについて、上記測定方法にて−20℃における動的貯蔵弾性率を測定したところ、動的貯蔵弾性率は、9×106であった。
《比較製造例1》
下記の配合に基づいてゴム層dを得た。
天然ゴム…30質量部
SBR[JSR(株)製,SBR1712]…80質量部
GPF N−660(カーボンブラック)[旭カーボン(株)製,50S]…43質量部
軟化剤[TOP、大八化学工業(株)製]…3質量部
老化防止剤[Nocrac224−S、大内新興化学工業(株)製]…1.5質量部
ステアリン酸[旭電化工業(株)製]…1.5質量部
加硫促進剤[Accel M、川口化学工業(株)製]…0.5質量部
加硫促進剤[Accel CZ、川口化学工業(株)製]…1質量部
酸化亜鉛[ハイテック社 製]…4質量部
硫黄[軽井沢精錬所製]…2.66質量部
また、上記のゴム層dについて、上記測定方法にて−20℃における動的貯蔵弾性率を測定したところ、動的貯蔵弾性率は、4×107であった。
<試験用タイヤの製造 実施例1〜6、及び比較例1〜4>
《実施例1》
5層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。
製造例1によって作製されたゴム層aと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤAを製造した。ゴム層aと、上記インナーライナーとを接着する接着層として、エポキシ化天然ゴム(ENR)を用いた。ENRは、ENR25:エポキシ化天然ゴム(商品名:ENR25、RRIM社製、エポキシ化度(エポキシ化率)25%)を75質量部、ENR50:エポキシ化天然ゴム(商品名:ENR50、RRIM社製、エポキシ化度(エポキシ化率)50%)を25質量部配合したものを使用した。
《実施例2》
5層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。製造例2によって作製されたゴム層bと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤBを製造した。ゴム層bとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《実施例3》
5層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。製造例3によって作製されたゴム層cと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤCを製造した。ゴム層cとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《実施例4》
21層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。製造例1によって作製されたゴム層aと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤDを製造した。ゴム層aとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《実施例5》
21層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。製造例2によって作製されたゴム層bと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤEを製造した。ゴム層bとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した
《実施例6》
21層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。製造例3によって作製されたゴム層cと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤFを製造した。ゴム層cとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《比較例1》
5層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。比較製造例1によって作製されたゴム層dと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤGを製造した。ゴム層dとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《比較例2》
21層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。比較製造例1によって作製されたゴム層dと、上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤHを製造した。ゴム層dとインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《比較例3》
通常のブチルゴムからなるインナーライナーを用いた。製造例2によって作製されたゴム層bと、通常のインナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤIを製造した。ゴム層bとブチルゴムインナーライナーとを接着する接着層は、実施例1と同一のものを使用した。
《比較例4》
5層構造を有する熱可塑性樹脂フィルムの積層体をインナーライナーとして用いた。上記インナーライナーと、上記カーカスとを用いて常法によりタイヤJを製造した。すなわち、比較例4では、ゴム層を用いなかった。
[評価結果]
結果を表1に示す。
Figure 0005783806
表1に示されるように、ゴム層の動的貯蔵弾性率の値が1.0×105〜1.0×107Paの範囲を満たさないゴム層を用いたタイヤ(比較例1,2)、及びゴム層を用いないタイヤ(比較例4)は、−20℃における走行試験後にインナーライナーに破断、クラック等の欠陥が確認された。これに対して、実施例1〜6のタイヤは、−20℃における走行試験の後もインナーライナーに破断、クラック等の欠陥が確認されず、ガスバリア性も良好な指数であった。
1…タイヤ、 11,12…ビードコア、 13,14…ビードフィラー、 15…カーカス、 16…インナーライナー、 17…ゴム層、 18…ベルト層、 19…ベルト補強層、 21…トレッド部、 22…サイドウォール部、 31…接着層

Claims (8)

  1. カーカスと、
    熱可塑性樹脂フィルムを有するインナーライナーと、
    該カーカスと該インナーライナーとの間に配置されるゴム層と、
    該インナーライナーと前記ゴム層とを接着する接着層と、
    を有するタイヤであって、
    前記ゴム層が天然ゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムのみからなり、
    前記ゴム層の−20℃における動的貯蔵弾性率E’が1.0×10〜1.0×10Paであるとともに、前記ゴム層の厚みが0.1〜1mmであり、
    前記接着層がエポキシ化天然ゴムであり、
    前記インナーライナーを構成する熱可塑性樹脂フィルムの−20℃における動的貯蔵弾性率をE’、前記ゴム層の−20℃における動的貯蔵弾性率をE’、前記接着層の−20℃における動的貯蔵弾性率をE’とすると、下記の関係を有するタイヤ。
    ’>E’>E
  2. 前記ゴム層には、ゴム成分100質量部に対して軟化剤5〜50質量部が含まれる請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記インナーライナーは、
    熱可塑性樹脂からなるA層と、
    該A層に隣接し、エラストマーを含む樹脂組成物からなるB層と
    を含む複数の樹脂層が3層積層された多層構造体である請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記動的貯蔵弾性率E’は、1×10〜1×10Paである請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記動的貯蔵弾性率E’は、2×10〜8×10Paである請求項4に記載のイヤ。
  6. 前記動的貯蔵弾性率E’は、4×10〜6×10Paである請求項4に記載のタイヤ。
  7. 前記インナーライナーは、
    前記A層と前記B層とを含む複数の樹脂層が7層以上積層された多層構造体である請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. カーカスと、熱可塑性樹脂フィルムからなるインナーライナーと、該カーカスと該インナーライナーとの間に配置されるゴム層と、該インナーライナーと前記ゴム層を接着する接着層と、を有し、該ゴム層が天然ゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムのみからなるタイヤの製造方法であって、
    −20℃における動的貯蔵弾性率E’が1.0×10〜1.0×10Paであるとともに、厚みが0.1〜1mmである前記ゴム層に前記接着層を介して前記インナーライナーを貼り付けて積層体を形成する工程と、
    前記積層体における前記ゴム層とタイヤ成形ドラムに配置されたカーカスとが対向するように前記積層体を前記カーカスに配置する工程と、
    を含み、
    前記接着層がエポキシ化天然ゴムであり、
    前記インナーライナーを構成する熱可塑性樹脂フィルムの−20℃における動的貯蔵弾性率をE ’、前記ゴム層の−20℃における動的貯蔵弾性率をE ’、前記接着層の−20℃における動的貯蔵弾性率をE ’とするとき、
    ’>E ’>E
    の関係を有するタイヤの製造方法。
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