JP5767862B2 - タイヤ - Google Patents

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本発明は、樹脂フィルムをタイヤトレッドの溝底の少なくとも一部に配置してなるタイヤに関する。
自動車用タイヤには、原料ゴムとして、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムが用いられている。その酸素やオゾンによる老化、また経日や走行によるゴムの硬化による亀裂を防止する目的で、トレッドやサイドウォールには原料ゴムにアミン系の老化防止剤、パラフィン系のワックス等を配合したゴム組成物が用いられている。
特許文献1では、溝底ゴムが、ゴム成分100重量部中ブタジエンゴムを15〜50重量部含有し、且つゴム成分100重量部に対してアミン系老化防止剤を2.0 〜5.0重量部及びワックスを1.0 〜4.0重量部配合されてなることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤが開示されている。
また、特許文献2では、タイヤトレッドの少なくとも最外溝底の径内側でかつ周方向全周にわたり老化防止剤増量材を埋設したことを特徴とする空気入りタイヤが提案されている。
さらに、特許文献3では、トレッド表面のうち、溝底部を含む少なくとも一部に厚みが0.5〜2mmの表面ゴム層が形成されたタイヤであって、前記表面ゴム層は、ポリブタジエンゴムの30〜70質量部を含有するゴム成分の100質量部に対して老化防止剤が3〜6質量部配合されたゴム組成物によって形成されることを特徴とするタイヤが開示されている。
しかしながら、上記の手法ではタイヤ外側からの酸素侵入を防ぐことはできず、ベルト部の酸化劣化を防止するという視点も欠けていた。
特開平6−191221号公報 特開平11−278008号公報 特開2005−59834号公報
本発明は、このような状況下で、トレッドの酸素侵入防止特性を高めることにより、ベルトの酸化劣化を軽減し、ベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着耐久性を向上することを課題とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、特定のフィルムをタイヤトレッドの溝底の少なくとも一部に配置することにより、トレッドの酸素侵入防止特性を大幅に高め、ベルトの酸化劣化を軽減し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]トレッドの溝底から溝側部のウエアインジケーター部位までのみに、エチレン分30〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を含む酸素バリア性樹脂層を含む、少なくとも7層の樹脂フィルムが配置されたタイヤ、
[2]前記樹脂フィルムが、エラストマーを含む樹脂組成物からなる層を更に含むことを特徴とする上記[1]に記載のタイヤ、
[3]前記樹脂フィルムが少なくとも17層である上記[1]又は[2]に記載のタイヤ、及び
]前記樹脂フィルムの20℃、65%RHにおける酸素透過係数が、8×10−10cm・cm/cm・sec・cmHg以下である上記[1]〜[]のいずれかに記載のタイヤである。
[酸素透過係数の測定法: JIS K 7126 A法(差圧法)に準拠して、20℃、65%RHの条件下で、ガスとして酸素を用いて測定する。]
本発明によれば、トレッドの酸素侵入防止特性を高めることにより、ベルトの酸化劣化を軽減し、ベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着耐久性を向上することができる。これにより、耐久性の高いタイヤを提供できる。
さらに、トレッドの溝底の少なくとも一部に親水性樹脂層を含む樹脂フィルムを配置することにより、タイヤのウエット性能(湿順路に置ける制動性能)を高めることができる。
本発明タイヤの第1の実施態様を示すトレッドの部分断面図である。 本発明タイヤの第2の実施態様を示すトレッドの部分断面図である。 本発明タイヤの第3の実施態様を示すトレッドの部分断面図である。
以下、本発明タイヤについて詳細に説明する。本発明は、トレッドの溝底の少なくとも一部に酸素バリア性樹脂層を含む樹脂フィルムが配置されたタイヤである。
本発明タイヤ1のトレッド10は、ウエット性能(湿順路に置ける制動性能)を確保するために溝部20を有する。この溝部20は溝底21と溝側部22とからなる。
図1は本発明タイヤの第1の実施態様を示すトレッドの部分断面図である。図1に示す第1の実施態様では、本発明に係る樹脂フィルム30は溝底21に配置されている。図1においては、樹脂フィルム30は溝底21の全てに配置されているが、本発明においては、溝底21の一部に配置されていても良い。溝底21は最もベルトに近いので、この溝底21を酸素透過係数の低い樹脂フィルム30で覆うことによりトレッドの酸素侵入防止特性を高めることができ、ベルトの酸化劣化を軽減し、ベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着耐久性を向上する。
図2は本発明タイヤの第2の実施態様を示すトレッドの部分断面図である。図2に示す第2の実施態様では、本発明に係る樹脂フィルム30は溝底21から溝側部22のウエアインジケーター部位を示すX−X’線上まで延在して配置されている。樹脂フィルム30を溝底21から溝側部22のウエアインジケーター部位にまで延在させることにより、樹脂フィルム30にウエアインジケーターの機能をも付与することができる。
図3は本発明タイヤの第3の実施態様を示すトレッドの部分断面図である。図3に示す第3の実施態様では、本発明に係る樹脂フィルム30は溝底21から溝側部22全体にまで延在して配置されている。これにより、トレッドの酸素侵入防止特性は更に高まり、ベルトの酸化劣化を更に軽減して、ベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着耐久性をより向上することができる。
[樹脂フィルム]
本発明に係る樹脂フィルム30は、酸素透過係数の低い樹脂フィルムであれば良く、特に材質は制限されない。トレッドの酸素侵入防止特性を高めるためには、樹脂フィルム30の20℃、65%RHにおける酸素透過係数が、8×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、5×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましい。
ここで、酸素透過係数は、JIS K 7126 A法(差圧法)に準拠して、20℃、65%RHの条件下で、ガスとして酸素を用いて測定する。
本発明に係る樹脂フィルム30は単層フィルムでも良いが、多層フィルムであることが好ましい。本発明において多層フィルムとは複数層を有するフィルムをいい、2層あれば良く、層の数は限定されない。
以下、樹脂フィルム30が多層フィルムである場合の層構造、多層フィルムを構成する熱可塑性樹脂フィルム(A層)及びエラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)、A層とB層との関係、並びに多層フィルムの製造方法について説明する。
本発明において、樹脂フィルム30を構成する多層フィルムは、エラストマーを含む樹脂組成物からなる層を更に含むことが好ましく、熱可塑性樹脂フィルム(A層)とエラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)とを合計2層以上備えていることが好ましい。一例として、多層フィルムにおいて、A層は、酸素透過性の低い層であり、B層は、延性の高い層とすることができる。多層フィルムをこのように構成した場合には、樹脂フィルム30の酸素透過性を低下させるとともに、樹脂フィルム30の低温環境におけるクラックに対する耐性(耐クラック性という)及び屈曲によって生じる損傷等に対する耐性(耐屈曲性)を向上させることができる。酸素透過性が低い性質を酸素バリア性という場合もある。
酸素バリア性及び耐クラック性の観点と製造上の観点から、A層及びB層の合計の層数としては、3層以上が好ましく、7層以上がより好ましく、17層以上が更に好ましく、25層以上が特に好ましく、48層以上がとりわけ好ましく、65層以上が極めて好ましい。当該多層フィルムは、さらに多層の構造体としてもよく、A層及びB層の合計の層数として、128層以上、256層以上、512層以上、1,024層以上とすることもできる。なお、この合計層数の上限は当該多層フィルムを用いるタイヤ種によって適宜選定される。
この多層フィルムは、A層及びB層以外のC層等を有することも可能である。また、A層及びB層の積層順としては、例えば、
(1)A,B,A,B・・・A,B(つまり、(AB)n)
(2)A,B,A,B・・・・・A(つまり、(AB)nA)
(3)B,A,B,A・・・・・B(つまり、(BA)nB)
(4)A,A,B,B・・・B,B(つまり、(AABB)n)
等の積層順を採用することができる。また、その他のC層を有する場合、例えば、
(5)A,B,C・・・A,B,C(つまり、(ABC)n)
等の積層順を採用することができる。ただし、nは、1以上の整数である。
特に、A層及びB層の積層順としては、上記(1)、(2)又は(3)のように、A層とB層とが交互に積層されていることが好ましい。このようにA層とB層とが交互に積層された積層体に、活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、積層される各層間の結合性が向上し高い接着性を発現することができる。その結果、当該多層フィルムの層間接着性ひいては酸素バリア性、耐屈曲性等を格段に向上させることができる。また、A層とB層とを交互に積層することで、A層が両面からB層に挟まれるため、A層の延性がより向上される。
層状構造とすることで全層破断までの走行距離を伸ばすことができ、耐クラック性、走行後の内圧保持性を高めることができる。
また、この多層フィルムを構成可能なC層としては、特に限定されず、例えば、一般的な合成樹脂層、合成樹脂フィルム等も用いられる。
この多層フィルムにおいて、上記A層及びB層の一層の平均厚みは、それぞれ、好ましくは0.001〜10μmであり、より好ましくは0.001〜40μmである。A層及びB層の一層の平均厚みを上記範囲とすることで、多層フィルムの全体の厚さが同じである場合でも数を増やすことができ、その結果、当該多層フィルムの酸素バリア性、耐屈曲性等をさらに向上させることができる。
なお、当該多層フィルムは、上記範囲の厚みを有するA層と共に、エラストマーを含む樹脂組成物からなるB層が積層されているため、酸素バリア性を有するA層の延性が低い場合でも、延性の低い樹脂組成物からなるA層の延性をより高めることができる。これは、延性に優れたB層に、延性の低い樹脂組成物からなるA層を薄く積層させることで、この延性の低い樹脂組成物が、延性の高い状態に転移するためと考えられる。本発明者は、上記事実に着目し、A層は一般に延性が低い材料からなるが、このように各層の厚みを非常に薄くすることで、多層フィルムに求められる酸素バリア性と耐屈曲性とを高度に両立できる。そのため、当該多層フィルムは、屈曲などの変形をさせて使用する場合でも、酸素バリア性等の特性を維持することができる。
A層一層の平均厚みの下限としては、0.001μmであるが、0.005μmが好ましく、0.01μmがさらに好ましい。一方、A層一層の平均厚みの上限としては、10μmであるが、7μmが好ましく、5μmがさらに好ましく、3μmがさらに好ましく、1μmがさらに好ましく、0.5μmがさらに好ましく、0.2μmさらには0.1μmが特に好ましく、0.05μmが最も好ましい。
A層一層の平均厚みが上記下限より小さいと、均一な厚さで成形することが困難になり、当該多層フィルムの酸素バリア性及びその耐屈曲性が低下するおそれがある。逆に、A層一層の平均厚みが上記上限を超えると、当該多層フィルム全体の厚みが同じである場合、当該多層フィルムの耐久性及び耐クラック性が低下するおそれがある。また、A層一層の平均厚みが上記上限を超えると、上述したA層の延性向上が十分に発現しないおそれがある。なお、A層の一層の平均厚みとは、当該多層フィルムに含まれる全A層の厚みの合計をA層の層数で除した値をいう。
B層一層の平均厚みの下限としては、0.001μmであるが、A層と同様の理由により0.005μmが好ましく、0.01μmがさらに好ましい。一方、B層一層の平均厚みの上限としては、40μmであるが、30μmが好ましく、20μm以下がさらに好ましい。B層一層の平均厚みが40μm以下であれば、当該多層フィルム全体の厚みが同じである場合、当該多層フィルムの耐久性及び耐クラック性がより向上することとなる。なお、B層の一層の平均厚みも、当該多層フィルムに含まれる全B層の厚さの合計をB層の層数で除した値をいう。
なお、B層一層の平均厚みに関しては、B層一層の平均厚みのA層一層の平均厚みに対する比(B層/A層)が1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。また、上記比が1以上、すなわちB層一層の平均厚みがA層一層の平均厚みと同じ又はそれ以上であることがさらに好ましく、2以上であることが特に好ましい。A層とB層との厚みの比をこのようにすることで、当該多層フィルムが全層破断に至るまでの屈曲疲労特性が向上する。
当該多層フィルムの厚みとしては0.1μm以上1,000μm以下が好ましく、0.5μm以上750μm以下がより好ましく、1μm以上500μm以下がさらに好ましい。当該多層フィルムの厚みを上記範囲とすることで、上記のA層及びB層の一層の平均厚みを上記範囲とすることと相まって、タイヤの溝部20への適用性を維持しつつ酸素バリア性、耐屈曲性、耐クラック性、耐久性、延伸性などをさらに向上させることができる。ここで、多層フィルムの厚みは、多層フィルムの任意に選ばれた点での断面の厚みを測定することにより得られる。
《熱可塑性樹脂フィルム(A層)》
熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、熱可塑性樹脂(A1)からなるマトリクス中に、−20℃における動的貯蔵弾性率E’が熱可塑性樹脂(A1)よりも低い柔軟樹脂(A2)を分散させた樹脂組成物(A3)からなる層を含んでいても良い。
柔軟樹脂(A2)がマトリクスとなることは酸素透過性が急激に低下することから好ましくない。
ここで、熱可塑性樹脂(A1)としては、20℃、65%RHでの酸素透過係数が8×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgより小さいことが好ましく、具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂等が挙げられ、これらの中でもエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂が好ましい。かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂は、酸素透過量が低く、酸素バリア性が非常に良好である。なお、これら熟可塑性樹脂(A1)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、柔軟樹脂(A2)としては、−20℃における動的貯蔵弾性率E’が上記熱可塑性樹脂(A1)よりも低いことが好ましく、200MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であると、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の弾性率を低下させることができ、その結果、低温環境における耐クラック性及び耐屈曲性を向上させることができる。
また、上記柔軟樹脂(A2)は、水酸基と反応する官能基を有することが好ましい。上記柔軟樹脂(A2)が水酸基と反応する官能基を有することで、熱可塑性樹脂(A1)中に柔軟樹脂(A2)が均一に分散するようになる。ここで、水酸基と反応する官能基としては、無水カルボン酸残基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。かかる水酸基と反応する官能基を有する柔軟樹脂(A2)として、具体的には、無水マレイン酸変性水素添加エチレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸変性超低密度ポリエチレン等が挙げられる。
更に、上記柔軟樹脂(A2)は、平均粒径が2μm以下であることが好ましい。柔軟樹脂(A2)の平均粒径が2μmを超えてしまうと、熱可塑性樹脂フィルム(A層)のベルトの酸化劣化を十分に改善できないおそれがあり、延いてはベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着耐久性を十分向上できないことがある。
なお、本発明において、−20℃における動的貯蔵弾性率E’は動的粘弾性測定装置(株式会社上島製作所製、スペクトロメーター)を使用し、−20℃、、初期歪10%、動歪0.1%、周波数15Hzで測定する。熱可塑性樹脂フィルム(A層)中の柔軟樹脂(A2)の平均粒径は、例えば、サンプルを凍結し、該サンプルをミクロトームにより切片にして、透過電子顕微鏡(TEM)で観察する。
熱可塑性樹脂フィルム(A層)中における柔軟樹脂(A2)の含有率は、10〜60質量%の範囲であることが好ましい。柔軟樹脂(A2)の含有率が10質量%未満では、耐屈曲性を向上させる効果が小さく、一方、60質量%を超えると、酸素透過性が大きくなることがある。
上記熱可塑性樹脂(A1)としてのエチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略称することがある。)に、例えば、エポキシ化合物を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。かかる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、通常のエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べて弾性率が低いため、屈曲時の耐破断性が高く、また低温環境における耐クラック性にも優れている。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量が30〜60モル%であることが好ましく、32〜65モル%であることが更に好ましく、35〜50モル%であることが一層好ましい。エチレン含有量が30モル以上であれば、耐屈曲性、耐疲労性及び溶融成形性が向上し、一方、60モル%以下であれば、酸素バリア性をより十分に確保できることとなる。また、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ケン化度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが一層好ましい。ケン化度が90%以上であれば、酸素バリア性及び成形時の熱安定性がより向上する。更に、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、メルトフローレート(MFR)が190℃、2160g荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることが更に好ましい。
本発明において、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造方法は、特に限定されないが、エチレン−ビニルアルコール共重合体とエポキシ化合物とを溶液中で反応させる製造方法が好適に挙げられる。より詳しくは、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶液に、酸触媒又はアルカリ触媒存在下、好ましくは酸触媒存在下、エポキシ化合物を添加し、反応させることによって変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメクンスルホン酸、硫酸及び三フッ化ホウ素等が挙げられ、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。なお、触媒量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、0.0001〜10質量部の範囲が好ましい。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体に反応させるエポキシ化合物としては、一価のエポキシ化合物が好ましい。二価以上のエポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と架橋反応し、ゲル、ブツ等を発生して、インナーライナーの晶質を低下させることがある。なお、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造容易性、酸素バリア性、耐屈曲性及び耐疲労性の観点から、一価のエポキシ化合物の中でも、グリシドール及びエポキシプロパンが特に好ましい。また、上記エポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して1〜50質量部を反応させることが好ましく、2〜40質量部を反応させることが更に好ましく、5〜35質量部を反応させることが一層好ましい。
上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、酸素バリア性、耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点から、メルトフローレート(MFR)が190℃、2160g荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることが更に好ましく、0.5〜20g/10分であることが一層好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、熟可塑性樹脂(A1)と柔軟樹脂(A2)とを混練して樹脂組成物(A3)を調製した後に、溶融成形、好ましくはTダイ法、インフレーション法等の押出成形により、好ましくは150〜270℃の溶融温度でフィルムやシート等に成形することができる。また、上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、樹脂組成物(A3)からなる層を含む限り、単層であっても、多層化されたものでもよい。ここで、多層化する方法としては、共押出する方法等が挙げられる。
本発明に係る多層フィルムは、タイヤのウエット性能をさらに向上する観点から、路面側の表面層及び/又は表面近傍層に親水性樹脂層を一層以上含むことが好ましい。この親水性樹脂層は、水に可溶とならない程度の親水性を具備していれば良く、例えば、エチレン分20〜60モル%、好ましくは3〜15モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂からなる層が挙げられる。所望する親水性の程度により、エチレン分を増減すれば良い。
本発明に係る多層フィルムは、トレッドゴムに対する密着性の観点から、更に熱可塑性ウレタン系エラストマーからなる層をトレッドゴムと当接する表面に一層以上含むことが好ましい。ここで、上記熱可塑性ウレタン系エラストマーは、ポリオ−ルと、イソシアネート化合物と、短鎖ジオールとの反応によって得られる。ポリオール及び短鎖ジオールは、イソシアネート化合物との付加反応により、直鎖状ポリウレタンを形成する。上記ポリオールは、熱可塑性ウレタン系エラストマーにおいて柔軟な部分となり、イソシアネート化合物及び短鎖ジオールは硬い部分となる。なお、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、原料の種類、配合量、重合条件等を変えることで、広範囲に性質を変えることができる。かかる熱可塑性ウレタン系エラストマーとしては、ポリエーテル系ウレタン等が好適に挙げられる。
また、上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、20℃、65%RHにおける酸素透過係数が8.0×10-12cm3/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、5.0×10-12cm3/cm2・sec・cmHg以下であることが更に好ましく、4.0×10-13cm3/cm2・sec・cmHg以下であることが一層好ましい。20℃、65%RHにおける酸素透過係数が8.0×10-12cm3/cm2・sec・cmHgを超えると、この熱可塑性樹脂フィルム(A層)を有する多層フィルムを溝底に用いる際に、トレッドの酸素侵入防止特性を高めるために、熱可塑性樹脂フィルム(A層)を厚くせざるを得ず、溝底の耐クラック性を向上できなくなると共にタイヤの重量を十分に低減できなくなる。
更に、上記熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、架橋されていることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム(A層)が架橋されていない場合、タイヤの加硫工程で樹脂フィルム30が著しく変形して不均一となり、熱可塑性樹脂フィルム(A層)の酸素バリア性、耐屈曲性、耐疲労性が悪化することがある。ここで、架橋方法としては、エネルギー線を照射する方法が好ましく、該エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、これらの中でも電子線が特に好ましい。電子線の照射は、熱可塑性樹脂フィルム(A層)をフィルムやシート等の成形体に加工した後に行うことが好ましい。ここで、電子線の線量は、10〜400kGyの範囲が好ましく、15〜300kGyの範囲が更に好ましい。電子線の線量が10kGy未満では、架橋が進み難く、一方、400kGyを超えると、成形体の劣化が進み易くなる。また、熱可塑性樹脂フィルム(A層)は、接着剤層との粘着性を向上させるために、酸化法や凹凸化法等によって表面処理を施してもよい。上記酸化法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熟風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの中でもコロナ放電処理が好ましい。
《エラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)》
樹脂フィルム30が多層フィルムである場合には、耐水性及びゴムに対する密着性の観点から、更にエラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)を一層以上含むことが好ましい。このエラストマーとしては、溶融成形のためには熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
この熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びフッ素樹脂系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの中でも、成形容易性の観点から、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーがより好ましく用いられる。
ここで、上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ポリオ−ルと、イソシアネート化合物と、短鎖ジオールとの反応によって得られる。ポリオール及び短鎖ジオールは、イソシアネート化合物との付加反応により、直鎖状ポリウレタンを形成する。上記ポリオールは、熱可塑性ウレタン系エラストマーにおいて柔軟な部分となり、イソシアネート化合物及び短鎖ジオールは硬い部分となる。なお、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、原料の種類、配合量、重合条件等を変えることで、広範囲に性質を変えることができる。かかる熱可塑性ウレタン系エラストマー(以下、「熱可塑性ポリウレタン」ということがある。)としては、ポリエーテル系ウレタン等が好適に挙げられる。
《A層とB層との関係》
上記多層フィルムにおける、A層とB層との剥離抗力としては、180℃で15分間加熱後に、JIS−K6854に準拠し、23℃、50%RH雰囲気下、引張り速度50mm/分での測定において、好ましくは25N/25mm以上、より好ましくは27N/25mm以上、さらに好ましくは30N/25mm以上、特に好ましくは50N/25mm以上である。このように、A層とB層とは、非常に優れた層間接着性を有している。
当該多層フィルムの層間関係に関しては、活性エネルギー線の照射によって、A層とB層との界面で分子間の架橋反応が生じ、強固に結合していると考えられ、高い層間接着性が発現される。なお、例えば、上述のように金属塩の含有によりA層の樹脂組成物中のEVOH等と、B層の樹脂組成物中の熱可塑性ポリウレタン(以下、「TPU」と略称することがある。)等の間で結合生成反応(例えば、TPUのカーバメート基とEVOHの水酸基との間で起こる水酸基交換反応、TPU中の残存イソシアネート基へのEVOHの水酸基の付加反応など)を生じさせることで、より高い層間接着性が発揮され、当該多層フィルムの酸素バリア性、耐久性等をより向上させることができる。さらに、上述したように、A層及び/又はB層にラジカル架橋剤を含有させ、活性エネルギー線を照射することにより、架橋反応がより促進され、上記層間接着性をさらに向上させることができる。
《多層フィルムの製造方法》
上記多層フィルムの製造方法は、A層とB層とが良好に積層・接着される方法であれば特に限定されるものではなく、例えば共押出し、はり合わせ、コーティング、ボンディング、付着などの公知の方法を採用することができる。当該多層フィルムの製造方法としては、具体的には(1)A層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とを用い、多層共押出法によりA層及びB層を有する多層フィルムを製造する方法や、(2)A層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とを用い、接着剤を介して複数の積層体を重ね合わせ、延伸することでA層及びB層を有する多層フィルムを製造する方法などが例示される。この中でも、生産性が高く、層間接着性に優れる観点から、(1)のA層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とを用いた多層共押出法により成形する方法が好ましい。
多層共押出法においては、A層形成用の樹脂組成物とB層形成用の樹脂組成物とは加熱溶融され、異なる押出機やポンプからそれぞれの流路を通って押出ダイに供給され、押出ダイから多層に押し出された後に積層接着することで、当該多層フィルムが形成される。この押出ダイとしては、例えばマルチマニホールドダイ、フィールドブロック、スタティックミキサーなどを用いることができる。
当該多層フィルムにおいては、このようにして得られた多層積層体に、上述のように活性エネルギー線を照射して、架橋反応を促進させ、A層とB層との層間接着性をさらに向上させる。当該多層フィルムは、このように活性エネルギー線が照射されてなるため、層間の接着性が高まる結果、酸素バリア性及び耐屈曲性を高めることができる。
上記活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、具体的には、紫外線、γ線、電子線などをいう。これらの活性エネルギー線の中でも、層間接着性の向上効果の観点から、電子線が好ましい。活性エネルギー線として電子線を用いることで、層間の架橋反応がより促進され、当該多層フィルムの層間接着性をさらに向上させることができる。
電子線を照射する場合、電子線源として、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用い、通常加速電圧100〜500kVで、照射線量5〜600kGyの範囲で照射するのがよい。
また、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射するのがよい。紫外線源としては、特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
この多層フィルムは、上述のように層間接着性に優れ、高い酸素バリア性、延伸性、熱成形性及び耐久性を有している。そのため、当該多層フィルムは、高い酸素バリア性が要求される用途に使用することができ、例えば、レトルト容器、食品用及び医療用包装材料、空気入りタイヤのインナーライナー等に用いることができる。これらの中でも、特に高い酸素バリア性、延伸性、耐低温クラック性、耐久性等が要求される空気入りタイヤのインナーライナーに好適に使用される。
この多層フィルムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、A層及びB層以外に他の層を含んでいてもよい。この他の層を構成する樹脂組成物の種類は、特に限定されないが、A層及び/又はB層との間の接着性が高いものが好ましい。他の層としては、A層中の例えばEVOHの有する水酸基や、B層中の例えばTPUの分子鎖中のカーバメート基又はイソシアネート基と反応して、結合を生成する官能基を有する分子鎖を有しているものが特に好ましい。
[接着層]
本発明において、所望により、樹脂フィルム30とトレッドゴムとの間に接着層を介しても良い。この接着層を構成する樹脂としては、樹脂フィルム30とトレッドゴムとを接着できる接着性樹脂であれば、特に限定されることはない。例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系の一液型硬化性接着剤、又は二液型硬化性接着剤が挙げられる。
[タイヤの製造方法]
本発明に係る樹脂フィルム30の配設方法としては、(1)加硫後のタイヤのトレッドの溝部20又は溝底21に、上記の接着層を形成する接着剤を介して貼着する方法、(2)予め、タイヤトレッドパターンの溝部20又は溝底21に対応する生タイヤのトレッドの部位に、所望により上記の接着層を介して、樹脂フィルム30を貼着しておき、その後常法により生タイヤを加硫する方法、(2)予め、タイヤトレッドパターンの溝部20又は溝底21に対応する加硫金型の部位に、例えばポリビニルアルコール樹脂接着剤等の接着剤を介して貼着して、常法により生タイヤを加硫する方法、などが挙げられる。
本発明のタイヤ1には、空気、窒素などのガスが充填される。タイヤ1の構造は一例であって、図1〜3に示す樹脂フィルム30の配置に限定されない。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、ベルト接着性(ベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着性)、樹脂フィルムの酸素透過係数及びタイヤのウエット性能を下記の方法により評価した。
<ベルト接着性(ベルト金属コードとベルト被覆ゴムとの接着性)>
供試タイヤの第一ベルト層と第二ベルト層との層間を切り離した後、第二ベルト層の金属コードを第二ベルト層端部から第二ベルト層中心部に亘りピーリングし、金属コードに付着した被覆ゴムのゴム付を下記の基準で評価した。
A:金属コードに被覆ゴムが90%以上付着している。
B:金属コードに被覆ゴムが60%以上〜90%未満付着している。
C:金属コードに被覆ゴムが40%以上〜60%未満付着している。
D:金属コードに被覆ゴムが10%以上〜40%未満付着している。
E:金属コードに被覆ゴムが10%未満付着している。
<樹脂フィルムの酸素透過係数>
樹脂フィルムを20℃、65%RHで5日間調湿した。得られた調湿済みのフィルム2枚を使用して、JIS K 7126 A法(差圧法)に準拠して、GTRテック社製GTR−30X型を用い、20℃、65%RHの条件下で、ガスとして酸素を用いて、酸素透過係数を測定した。
<タイヤのウエット性能>
SUV用タイヤサイズ285/60R18の供試タイヤを試験車に装着し、湿潤路面での実車試験にて、操縦安定性をドライバーのフィーリング評点で表し、比較例1のタイヤを100として指数表示した。指数値が大きい程、湿潤路面での制動性が優れることを示す。
ウエット性能指数=(供試タイヤのフィーリング評点/比較例1のタイヤのフィーリング評点)×100
タイヤトレッドの酸素侵入促進試験は以下のように実施した。
SUV用タイヤサイズ285/60R18のタイヤを通常の方法で試作し、温度30±3℃、酸素雰囲気のドラム試験室内で、表面が平滑な鋼製で且つ直径1.707mのドラム試験機を使用して、空気圧220kPa、荷重6.5kNの条件の下で、速度120km/hで10万km連続走行した。
(合成例1:EVOH)
冷却装置及び攪拌機を有する重合槽に、酢酸ビニル20000質量部、メタノール1020質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)3.5質量部を仕込み、攪拌しながら窒素置換した後、エチレンを導入し、内温60℃、エチレン圧力5.9MPaに調節し、4時間その温度及び圧力を保持し、攪拌しながら重合を行った。次いで、ソルビン酸(SA)10質量部(仕込み酢酸ビニルに対して0.0005質量%)をメタノールに溶解して、1.5質量%ソルビン酸のメタノール溶液を調製し、これを添加した。重合率は、仕込み酢酸ビニルに対して30%であった。重合後に得られる共重合反応液を、ラシヒリングを充填した塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去し、その後、共重合体の40質量%のメタノール溶液を得た。該共重合体は、エチレン単位含有量が44モル%で、酢酸ビニル単位含有量が56モル%であった。
得られた共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に導入し、次いで水酸化ナトリウム/メタノール溶液(85g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対して0.5当量となるように添加し、更にメタノールを添加して、溶液中の共重合体濃度が15質量%になるように調整した。反応器内温度を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら5時間反応を行った。その後、反応溶液を酢酸で中和し、反応を停止させ、内容物を反応器より取り出し、常温にて放置したところ、粒子状のEVOHが析出した。析出後の粒子を遠心分離機で脱液し、更に大量の水を加え脱液するという操作を繰り返し行い、ケン化度99.5%のEVOHを得た。
得られたEVOHを、酢酸、リン酸及びオルトホウ酸(OBA)を含む水溶液(水溶液1L中、酢酸0.3g、リン酸0.06g、オルトホウ酸0.35gを溶解)により浴比20で処理し、乾燥後、押出機にてペレット化し、EVOHペレットを得た。EVOHペレットのMFRは4.6g/10分(190℃、21.18N荷重下)であった。また、ペレットの酢酸含有量は90質量ppm、リン酸化合物含有量はリン酸根換算で43質量ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算値で260質量ppmであった。
(合成例2:変性EVOH)
加圧反応層に、エチレン含量44モル%、ケン化度99.9%のエチレン−ビニルアルコール共重合体2重量部およびN−メチル−2−ピロリドン8重量部を仕込み、120℃で、2時間加熱攪拌することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体を完全に溶解させた。
これにエポキシ化合物としてエポキシプロパン0.4重量部を添加後、160℃で4時間加熱した。
加熱終了後、蒸留水100重量部に析出させ、多量の蒸留水で充分にN−メチル−2−ピロリドンおよび未反応のエポキシプロパンを洗浄し、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。
さらに、得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を粉砕機で粒子径2mm程度に細かくした後、再度大量の蒸留水で充分に洗浄した。
洗浄後の粒子を8時間室温で真空乾燥した後、2軸押出機を用いて200℃で溶融し、ペレット化した。
(EVOH単層樹脂フィルムの作製)
合成例1で得られたEVOHを用いて押出機により厚さ20μmの熱可塑性樹脂フィルム(A層)を得た。
(樹脂フィルム−1の作製)
合成例1で得られたEVOHと無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体[三井化学;タフマーMH7010]とを質量比(EVOH/無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体=60/40)で二軸押出機を用いて混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物と熱可塑性ポリウレタン(TPU)[クラレ;クラミロン3190]とを使用し、2種5層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で5層の樹脂フィルム−1を得た。
上記のようにして得られたキャスト樹脂フィルム−1は走査型電子顕微鏡(Keyence社製VE−8800)にて断面観察を行った結果、上記樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂フィルム層(A層)およびエラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)それぞれの厚さを求めたところ、A層、B層ともに20μmであった。
各樹脂の押出温度 :C1/C2/C3/C4/C5/ダイ=170/170/170/220/220/220℃
各樹脂の押出機仕様:熱可塑性ポリウレタン:25mmφ押出機「P25−18AC」[大阪精機工作株式会社製]
上記樹脂組成物 :20mmφ押出機ラボ機ME型「CO−EXT」[株式会社東洋精機製]
Tダイ仕様 :500mm幅2種3層用[株式会社プラスチック工学研究所製]
冷却ロールの温度 :50℃
引き取り速度 :4m/分
(樹脂フィルム−2の作製)
合成例1で得られたEVOHと熱可塑性ポリウレタン(TPU)[クラレ;クラミロン3190]を用い、それぞれペレットを構成する樹脂組成物によって交互に熱可塑性樹脂フィルム(A層)が8層、エラストマーを含む樹脂組成物からなる層(B層)が9層の多層構造帯が形成されるように、17層フィードブロックにて、共押出機に210℃の溶融状態として供給し、共押出を行い合流させることによって、多層の積層体とした。合流するEVOHペレットおよび熱可塑性ポリウレタンペレットの溶融物はフィードブロック内にて各層流路を表面側から中央側に向かうにつれ徐々に熱くなるように変化させることにより、押し出しされた多層構造体の各層の厚さが均一になるように押出された。このようにして得られた計17層からなる積層体を表面温度25℃に保たれ静電印加したキャスティングドラム上で急冷固化した。急冷固化して得られたキャスト樹脂フィルム−2を離型紙上に圧着し巻き取りをおこなった。なお、EVOH及び熱可塑性ポリウレタンの溶融物が合流してからキャスティングドラム上で急冷固化されるまでの時間が約4分となるように流路形状及び総吐出量を設定した。
上記のようにして得られたキャスト樹脂フィルム−2は走査型電子顕微鏡(KEYENCE社製;VE−8800)にて断面観察を行った結果、EVOHからなる熱可塑性樹脂フィルム層(A層)及び熱可塑性ポリウレタンからなる層(B層)の平均厚みを求めた。
(樹脂フィルム−3の作製)
樹脂フィルム−2のEVOHを変性EVOHに置換したほかは同様の製法で樹脂フィルム−3を得た。
(樹脂フィルム−4の作製)
樹脂フィルム−2の熱可塑性ポリウレタンを無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体[三井化学;MH7010]に置換したほかは同様の製法で樹脂フィルム−4を得た。
実施例1〜、参考例1〜12及び比較例1
SUV用タイヤサイズ285/60R18のタイヤを通常の方法で試作し、実施例1〜及び参考例1〜12において第1表に記載された通り、(EVOH単層樹脂フィルムの作製)及び(樹脂フィルム−1〜4の作製)で得られた5種類の樹脂フィルムを図1〜3に示す配置にポリウレタン接着剤(住友3M社製「590」)を使用して貼着した。比較例1のタイヤには樹脂フィルムを貼着しなかった。得られた16種類のタイヤの酸素侵入促進試験前後のベルト接着性、及びウエット性能を評価した。結果を第1表に示す。
Figure 0005767862
本発明のタイヤ1は、乗用車用タイヤ、軽乗用車用タイヤ、軽トラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、オフザロード用タイヤ、二輪車用タイヤ、航空機タイヤ、農業用タイヤなど各種タイヤとして好適に用いられる。
1…タイヤ、 10…トレッド、 20…溝部、 21…溝底、 22…溝側部、 30…樹脂フィルム

Claims (4)

  1. トレッドの溝底から溝側部のウエアインジケーター部位までのみに、エチレン分30〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を含む酸素バリア性樹脂層を含む、少なくとも7層の樹脂フィルムが配置されたタイヤ。
  2. 前記樹脂フィルムが、エラストマーを含む樹脂組成物からなる層を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記樹脂フィルムが少なくとも17層である請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記樹脂フィルムの20℃、65%RHにおける酸素透過係数が、8×10−10 cm・cm/cm・sec・cmHg以下である請求項1〜のいずれか一項に記載のタイヤ。
    [酸素透過係数の測定法: JIS K 7126 A法(差圧法)に準拠して、20℃、65%RHの条件下で、ガスとして酸素を用いて測定する。]
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