JP2004358662A - 凹凸模様及び押型の作成方法並びに押型 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて、基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)別の画像と合成した後、リピート画像から彫刻データを作成し、この彫刻データを基に彫刻機で押型材に凹凸模様を彫刻する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は皮等の表面の凹凸模様を、合成樹脂シート等の表面に立体的に彫刻して再現する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のダッシュボードやドアの内張りとして使用される合成樹脂シート等からなる内装材には、高級感を出すために皮革や織物様の凹凸模様を施したものが使用されている。これ等の凹凸模様は、手彫法、エッチング法、電鋳法、一本彫り電鋳法等の方法により作成されている。
【0003】
手彫法は、模様(柄)のある原稿を写真に撮り、そのフィルムをレジスト膜を塗布した鉄芯に巻きつけて焼付け後、タガネを用いて彫り、これをマザーロールとして大きな本ロールに転写し、この本ロールの表面をクロームメッキして完成品とする。
【0004】
一方、エッチング法は、例えば絞皮等の原稿を写真に撮り、レジスト膜を塗布した鉄芯に焼付け腐食液に漬けてエッチングし水洗してレジスト膜を除去し(この工程を複数回繰り返した後)最後にクロームメッキして絞ロールとする。
【0005】
また電鋳法は、例えば絞皮等の原稿の上にシリコンを流して絞が転写された樹脂型を作り、この表面を銅で電気メッキし、次に鉄でメッキして平板を作る。この平板の上に円筒状の鉄の棒を転がして絞を転写してミルとし、このミルを用いてロール状のダイスに絞を転写し、このダイスをマザーロールとして大きな本ロール(絞ロール)に転写し、その後本ロールの表面をクロームメッキする。
【0006】
さらに一本彫り電鋳法は、例えば絞皮等の原稿から絞が転写されたシリコン型を作り、この絞を樹脂型に転写した後、樹脂型を絞の面を内側にして円筒状に巻き、筒状のホルダー内に収納した後、樹脂型の内側を銅メッキして銅のパイプを作る。銅パイプから樹脂型及びホルダーを取り外し、銅パイプに鉄芯をはめ込み両者を鉛合金で固定しクロームメッキして絞ロールとする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれら従来の方法のうち、手彫法は比較的単純な模様にしか適さず、その他の方法も原稿の表面の凹凸模様がそれほど細かくない場合にはかなり忠実に再現できるが、例えばスエードやバックスキンのような表面の凹凸が細かく触感のよいものを再現することはできなかった。
【0008】
また例えば、図5のように従来の方法では、谷の部分2の形状が細かくできない(甘くなる)ため、山の部分1と谷の部分2との光の反射がほぼ同じ、即ちツヤが同じようになり、全体としてのっぺりとした立体感がないものとなってしまうという欠点がある。
【0009】
さらに従来の方法、特に電鋳法では、マザーロールから本ロールに凹凸模様を転写する際に、本ロールをバーナーで加熱し本ロールの表面に硝酸を塗布しながら、マザーロールを本ロールに押し付け転写する方法をとっている。これは本ロールの表面を酸化して転写しやすくする為である。しかしながら、酸化による劣化も大きく転写精度が低下するという欠点がある。
【0010】
また回転させながらロールに転写する方法では、歯車と同じ原理で、凹凸模様の縁の断面が勾配を持ったものでなければ転写できず、縁が深さ方向に垂直に切れ込んだ凹凸模様を再現することはできなかった。
【0011】
さらに従来の方法の大部分は、メッキ設備、廃液処理、その他の化学的設備を必要とし、各工程において高度に熟練した技術を要求されるので、コストアップとなり、品質の維持や、技術の継承などにおいて問題があった。
【0012】
また従来の方法では種々の複雑な工程を経るために、スタートから完成まで長期間(例えば3ヶ月)を要するのが通例であった。
【0013】
本発明は、スエードやバックスキンのような触感のよい凹凸模様を再現でき、工期も短くコストの低減や品質の均一化等に適応できる、凹凸模様及び押型の作成方法並びに押型を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の押型の作成方法は、原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて、基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)別の画像と合成した後、リピート画像から彫刻データを作成し、この彫刻データをもとに彫刻機で押型材に凹凸模様を彫刻することを特徴とする。
【0015】
補正は、模様のクセを修正する補正、継目が不自然とならないように修正する補正、飛び飛びにつないだり回転させる補正及び未彫刻部分がないようにグレースケールの色調レベルを調整する補正のうちの少なくとも1つであることができる。なお彫刻機はレーザー彫刻機を用いてもよい。
【0016】
また本発明の押型は、原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて、基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)別の画像と合成した後、リピート画像から彫刻データを作成し、この彫刻データを基に彫刻機で押型材に凹凸模様を彫刻してなることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の凹凸模様の作成方法は、原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、これを彫刻データとするか、若しくは画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)他の画像と合成した後、彫刻データとなし、この彫刻データを基に彫刻機で被彫刻物に彫刻することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明はまず表面に凹凸模様(例えば絞)を有する原稿の表面の全体若しくは一部分の表面の形状(深度)を測定して、原稿の表面測定データ(数値データ)を作成する。原稿としては織物、皮革、スエード、バックスキンなどその種類は問わない。
【0019】
原稿の表面の測定には例えば3次元表面粗さ計が使用される。3次元表面粗さ計は接触型のものでも非接触型のものでもよいが、スエードやバックスキンなどのように表面が柔らかいものの場合には非接触型のものを使用するのが好ましい。表面測定データは例えばデジタルデータとして得られる。
【0020】
次にこのようにして得られた表面測定データを、明度だけ即ち白黒の濃淡で色の階調を表現するグレースケールデータからなる画像データ(デジタルデータ)に変換する。表面形状はグレースケールデータで表すと、最も深い部分を白(0)、最も浅い部分を黒(255)とし中間の表面形状をグレーの濃淡とする最高256の階調で表される。
【0021】
画像データによる画像から任意の範囲を抽出して基本画像とする。基本画像としてはできるだけ模様のクセ(例えば他の部分と比較して極端に黒くなっていたり白くなっている箇所)やムラがなく、編集しやすい範囲を抽出するのが好ましい。
【0022】
基本画像の画像サイズや画像解像度は編集し易いように変えてもよい。また必要であればオリジナル(原稿)の模様を崩さないようにクセやムラを修正する補正を行ったり、次のリピート画像の作成の為に画像の周辺部をつなぎやすいように修正する補正をする。
【0023】
次に基本画像を上下及び(又は)左右につなぎ合わせて、リピート画像(リピートデータ)を作成し、継目が不自然でないようにさらに補正する。また飛び飛びにつないだり回転させる補正をしてもよい。なお必要がない場合にはリピート画像の作成を省略してもよい。
【0024】
さらに彫刻の際に未彫刻部分がないようにリピート画像の白黒の色調レベルを調整してもよい。色調レベルの調整は256階調をフルに活用し、ヒストグラムで確認しながら行うのが好ましい。
【0025】
なお、模様のクセやムラを取ったり、継目が不自然でないようにしたり、飛び飛びにつないだり回転させたり、色調レベルを調整する補正は、基本画像の段階又はリピート画像の段階のいずれか一方でのみ、若しくは両方の段階又はこの他の段階で行ってもよい。
【0026】
このようにして得られたリピート画像は画像サイズを調整された後に彫刻データとする。この彫刻データに基づいて彫刻機を用いてロール状や板状の押型材に彫刻して押型が作成される。なお彫刻機にはレーザー彫刻機を使用するのが好ましい。レーザー彫刻機はレーザー光の強弱により彫刻するもので繊細な彫刻に適している。
【0027】
なお絞ロールのような押型の作成の他に、本発明の方法を用いて、金属、木、合成樹脂、その他の材料からなる被彫刻物に凹凸模様を彫刻して機械部品や装飾材、装飾品を作成してもよい。
【0028】
【実施例】
<実施例1>
実施例1として以下に絞ロールの作成方法を示す。
【0029】
オレフィン樹脂製のシート(縦297mm、横210mm、厚さ1.2mm)にウレタンビーズ入りの表面処理剤を6μmの厚さに塗布してなる原稿(サンプル1)の任意の箇所(縦5mm、横5mm)の表面形状を3次元表面粗さ計(小坂研究所製サーフコーダ SE・21)で測定した。測定条件はX送り速さ0.5mm/s、Xピッチ2.0μm、Z測定倍率1000とした。得られた表面測定データ(数値データ)を3次元表面粗さ解析システム(小坂研究所製TDA・21)にて画像データ(グレースケールデータ)に変換した(図1)。なお図1中右下の欠損部分は極端な凹凸がある為、画像が欠損したものである。
【0030】
この画像データを画像編集機(ここではパーソナルコンピュータ)により画像編集ソフト(商品名Photoshop)を用いて彫刻データを作成した。即ち、まず画像データの画面から所望の範囲を基本画像として抽出し、欠損部分を補修したり、ムラやクセをとる等の画像編集を行った、その後、画像解像度を72dpiから1270dpiにアップした。
【0031】
さらに原稿の絞形状を崩さないように基本画像を上下左右に10個ずつつなぎ合わせ、各継目を補正し、リピート画像(リピートデータ)を作成した。なおその際、単純につなぐのではなく、飛び飛びや、回転させる等の補正を行った。
【0032】
次に彫刻の際に未彫刻部分が出ないように、256階調をフルに活用してグレースケールの色調レベルを調整し、画像サイズを調整して彫刻データとした。彫刻データは例えばPhotoshopデータ、JPEG、TIFF等の形式であることができる。
【0033】
この彫刻データを用いてレーザー彫刻機により、鉄ロールにシリコンゴムを巻いたロール(直径200mm、長さ1200mm)に彫刻して絞ロールを作成した。
【0034】
この絞ロールを用いて、ポリ塩化ビニル製のシート(厚さ0.5mm)に、圧力(線圧)800Kg/cm2、温度(ロール表面)120℃、速度5m/分の加工条件にて、押型してサンプル2を作成した。
【0035】
<比較例>
実施例1と同じ原稿を用いて、電鋳法により絞ロール(直径200mm、長さ1200mm)を作成し、この絞ロールを用いて、実施例1と同じ加工条件にて、ポリ塩化ビニル製のシート(厚さ0.5mm)に押型してサンプル3を作成した。
【0036】
サンプル1(原稿)、サンプル2(実施例1)、サンプル3(比較例)の表面粗さを表面粗さ計(小坂研究所製サーフコーダ SE・21)を用いて測定し波形として表したところ、それぞれ図2、図3、図4のようであった。なお測定条件はX送り速さ0.5mm/s、Xピッチ2.0μm、Z測定倍率1000とした。
【0037】
これ等から、実施例1の絞ロールを用いて押型されたシートの表面粗さの波形(図3)は、サンプル3(比較例)の波形(図4)よりも、サンプル1(原稿)の波形(図2)に極めて近く、実施例1の絞ロールを用いた押型されたシートが、比較例の絞ロールを用いて押型されたシートに比べて、凹凸模様の再現性が非常に優れていることがわかる。
【0038】
更にサンプル2、3の触感官能試験を行った。試験は被験者50人にサンプル2、3を手で触ってもらい、サンプル2(実施例1)及びサンプル3(比較例)のうち、感触がサンプル1(原稿)に近いものを選んでもらった。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
その結果、50人中45人(90%)がサンプル2(実施例1)を選び(○印)、サンプル2がサンプル3(比較例)より触感が優れていることがわかった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、非常に繊細で深い絞を表現できるので、従来不可能であった、スエードやバックスキンのような触感を再現することができる。
【0042】
また絞などの凹凸模様を画像データ、リピートデータ或いは彫刻データ等のデジタルデータとして保存、蓄積することができるので、同一品の再現が容易で、また複数のデータを合成することにより、新たな模様を容易に作リ出すことができる。これにより例えば意匠性の高い絞に触感のよい絞を複合することで商品力を高めたりすることができる。
【0043】
また図6のように谷の部分でも非常に繊細で深い絞を表現できることから、ツヤのコントロールが可能となり、ツヤ(山の部分)と消し(谷の部分)の組み合わせが可能となって見た目以上の立体感の表現が可能となる。
【0044】
さらに凹凸模様の縁が深さ方向に垂直に切れ込んだ凹凸模様を再現することができる。
【0045】
また、同じ彫刻データを用いることにより、例えば自動車のダッシュボードとドアの内張りのように工法や素材が異なっても、同じ触感の絞で統一することができる。
【0046】
さらに本発明では、化学設備等を必要とせず、また特別に高度に熟練した技術も必要としないので、コストを低減でき、また技術を標準化できる。
【0047】
また本発明によれば原稿の表面を測定してから彫刻データの作成まで極めて短時間で済み、またレーザー彫刻機は24時間自動稼動させることができるので工期を画期的に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像データを示す図
【図2】サンプル1(原稿)の表面粗さを示す波形
【図3】サンプル2(実施例1)の表面粗さを示す波形
【図4】サンプル3(比較例)の表面粗さを示す波形
【図5】従来方法による凹凸模様の断面を説明する図
【図6】本発明における凹凸模様の断面を説明する図
Claims (5)
- 原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて、基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)別の画像と合成した後、リピート画像から彫刻データを作成し、この彫刻データを基に彫刻機で押型材に凹凸模様を彫刻することを特徴とする押型の作成方法。
- 補正が、模様のクセを修正する補正、継目が不自然とならないように修正する補正、飛び飛びにつないだり回転させる補正及び未彫刻部分がないようにグレースケールの色調レベルを調整する補正のうちの少なくとも1つである請求項1に記載の押型の作成方法。
- 彫刻機がレーザー彫刻機である請求項1又は2に記載の押型の作成方法。
- 原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて、基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)別の画像と合成した後、リピート画像から彫刻データを作成し、この彫刻データを基に彫刻機で押型材に凹凸模様を彫刻してなることを特徴とする押型。
- 原稿の表面の凹凸模様の表面形状を測定して表面測定データを作成し、この表面測定データをグレースケール化された画像データに変換した後、これを彫刻データとするか、若しくは画像の任意の範囲を抽出して基本画像とし、この基本画像をつなぎ合わせてリピート画像を作成し、その際必要に応じて基本画像及び(又は)リピート画像を補正及び(又は)他の画像と合成した後、彫刻データとなし、この彫刻データを基に彫刻機で被彫刻物に彫刻することを特徴とする凹凸模様の作成方法。
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