JP2004355751A - 光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体を提供すること。
【解決手段】記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光情報の記録が行われるように形成されたトラッキング用のプリグルーブ105を有する基板101と、光吸収層102と、光反射層103及び保護層104とを有し、プリグルーブ105の深さ及び溝幅は、内周側のプリグルーブ105iの深さ(Di)よりも外周側のプリグルーブ105oの深さ(Do)が常に深く(Di<Do)、且つ、内周側のプリグルーブ105iの溝幅(Wi)よりも外周側のプリグルーブ105oの溝幅(Wo)が常に広く(Wi<Wo)なるように、基板101の中心部から外側に向かって、それぞれ増大するように形成されている光記録媒体100。
【選択図】 図2
【解決手段】記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光情報の記録が行われるように形成されたトラッキング用のプリグルーブ105を有する基板101と、光吸収層102と、光反射層103及び保護層104とを有し、プリグルーブ105の深さ及び溝幅は、内周側のプリグルーブ105iの深さ(Di)よりも外周側のプリグルーブ105oの深さ(Do)が常に深く(Di<Do)、且つ、内周側のプリグルーブ105iの溝幅(Wi)よりも外周側のプリグルーブ105oの溝幅(Wo)が常に広く(Wi<Wo)なるように、基板101の中心部から外側に向かって、それぞれ増大するように形成されている光記録媒体100。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体に関し、より詳しくは、高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度光記録媒体が実用化され、映像等の大量のデータを記録するため、記録再生用のレーザ光の短波長化及びビームスポット径の小径化が進められている。このような高密度光記録媒体として、追記型のDVD−R(デジタルヴァーサタイルディスクレコーダブル)(非特許文献1)が知られており、高密度化に対応するように、極めて短く形成されたプリグルーブのトラックピッチ及び最小記録ピットを用いて、波長が630nm〜660nmのレーザ光により光情報の記録再生が行われている。
【0003】
このようなDVD−Rに光情報を記録する場合は、予め基板に螺旋状又は同心円状に形成されているトラッキング用のプリグルーブに沿ってレーザ光を照射し、基板上に設けられた光吸収層を構成する有機色素を分解、爆発又は溶融させ、プリグルーブ内の光照射部分に記録ピットとして光吸収層の変質物を形成することにより行われる。一方、光情報の再生は、プリグルーブに沿って再生光を照射し、記録ピットとして形成された光吸収層の変質部と未変質部とで生じる反射率の差を利用して、光情報が読み出される。
【0004】
【非特許文献1】
「電子技術(1996年8月号)」、日刊工業新聞社、1996年8月、p.10
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、DVD−Rの基板上に設けられる光吸収層は、通常、有機色素を含有する溶液を基板上にスピンコート法により塗布して形成されている。このスピンコート法は、基板の略中心に滴下した溶液に高速回転による遠心力を負荷し、溶液の溶媒を飛散させるとともに有機色素の薄膜を形成させる方法である。高速回転により溶液に負荷される遠心力は、通常、基板の中心部付近に比べて外周側では大きくなる。このため、基板上に形成された有機色素の薄膜の厚さは、基板の中心部付近に比べて外周側では薄くなり、光吸収層の厚さの均一性が保てない場合が生じる。
【0006】
DVD−Rの光吸収層の厚さが、このように基板の外周側で薄い場合は、反射率で規格化した未記録状態のラジアルプッシュプル振幅(PPb)が、基板中心部近傍と外周側とで大きく異なることとなる。このため、例えば、記録線速度が28m/秒の高速において光情報を記録する場合は、トラッキング制御信号が変動する影響によりトラッキングサーボが不安定になり、記録マークのジッターが増大するという問題が生じている。
【0007】
本発明は、このようなスピンコート法により形成された光吸収層を有するDVD−Rに高速の記録線速度において光情報を記録する際に浮き彫りになった問題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するため、本発明においては、基板上に形成されたプリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の中心から外側に向かって増大する構成を採用している。即ち、本発明が適用される光記録媒体は、所定の深さ及び溝幅を有するプリグルーブが形成された基板と、この基板上に設けられ、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光照射により光情報の記録又は再生が行われる光吸収層と、を備え、基板に形成されたプリグルーブの深さ及び溝幅は、基板の内周側と比較して基板の外周側が増大していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明が適用される光記録媒体は、基板に形成されたプリグルーブは、その深さが、基板の内周側の深さ(Di)と外周側の深さ(Do)との比率(Di/Do)が0.85〜0.96の範囲内であり、且つ、プリグルーブの溝幅が、基板の内周側の溝幅(Wi)と外周側の溝幅(Wo)との比率(Wi/Wo)が0.89〜0.99である関係を満足する部分を有するように形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明が適用される光記録媒体は、基板に形成されたプリグルーブは、この基板の最内周側のプリグルーブの深さと最外周側の深さとの比率が0.85〜0.96の範囲であり、且つ、基板のプリグルーブの最内周側の溝幅と最外周側の溝幅との比率が0.89〜0.99であることを特徴とすることができる。
【0011】
さらに、本発明が適用される光記録媒体における基板は、半径距離が異なる任意の2本のプリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の内周側と比較して基板の外周側が常に増大しているように、プリグルーブが形成されていることが好ましく、光記録媒体全体において、高速記録時に安定したトラッキングサーボを行うことができる。
【0012】
一方、本発明は、内周側と比較して外周側の深さ及び溝幅が大きくなるように形成されたプリグルーブを有する基板と、この基板上に設けられ、光照射により光情報の記録又は再生が行われる光吸収層とを備え、この基板は、任意の記録線速度における未記録状態のラジアルプッシュプル信号の最大値と最小値との比率が1.0〜1.1であるように、プリグルーブの深さ及び溝幅が形成されることを特徴とする光記録媒体として捉えることができる。尚、基板は、3.5m/秒〜28m/秒の記録線速度で回転されることが好ましい。
【0013】
また、本発明が適用される光記録媒体においては、光吸収層が、光照射により光情報の記録又は再生が可能な有機色素を含有するものであることが好ましい。
さらに、この光吸収層の上に、接着層を介して、光照射により光情報の記録又は再生が行われる第2の光吸収層とプリグルーブが形成された第2の基板とが積層された貼合わせ型の光記録媒体とすることもできる。また、プリグルーブは、深さが130nm〜200nmであり、溝幅が270nm〜380nmであることが好ましく、トラックピッチが0.7μm〜0.8μmであり、最小記録ピットが0.40μm〜0.44μmであることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本実施の形態が適用される光記録媒体について詳述する。
図1は、本実施の形態が適用される光記録媒体を説明するための図である。図1に示された光記録媒体100は、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光情報の記録が行われるように、光透過性材料により形成された基板101と、この基板101上に順次積層された、光照射により光情報の高速記録が可能な光吸収層102と、光反射層103及び保護層104とを有する。基板101の上面には、複数のトラッキング用のプリグルーブ105が、基板101の中心部から外側に向い、螺旋状又は同心円状に形成されている。また、後述するように、プリグルーブ105の深さ及び溝幅は、基板101の中心部から外側に向かってそれぞれ増大するように形成されている。
【0015】
基板101は、基本的には光吸収層102に対する記録光及び再生光の波長に対して光透過性の材料により形成される。基板101を形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料、ガラス等の無機材料が挙げられる。特に、ポリカーボネート系樹脂は、光の透過性が高いので好ましい。
【0016】
基板101の表面には、後述するように、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光情報の記録が行われるように、記録位置を表す案内溝やピット等のトラッキング用のプリグルーブが形成される。トラッキング用のプリグルーブ105は、基板101上に同心円状又は螺旋状に形成され、例えば、プリフォーマットパターンを有するスタンパを装着した射出成形機を用いて成形される。また、レーザーカッティング法や2P法(Photo−Polymer法)により作製することもできる。基板101の厚さは、通常、0.5mm〜0.7mmであり、好ましくは、0.55mm〜0.65mmである。
【0017】
プリグルーブ105の、隣接する凸部間の間隔は、記録密度を増大するために、通常、0.7μm〜0.8μmであり、好ましくは、0.71μm〜0.77μmである。また、最小記録ピットは、通常、0.40μm〜0.44μm、好ましくは、0.40μm〜0.41μmである。更に、プリグルーブの深さ(D)は、光の干渉効果を利用して増幅した再生信号を得るために、通常、130nm〜200nm、好ましくは、150nm〜180nmである。プリグルーブの溝幅(W)は、通常、270nm〜380nm、好ましくは、290nm〜360nmである。
【0018】
図2は、光記録媒体100の基板101上に形成されたプリグルーブの形状を説明するための図である。図2(a)は、基板101に形成された任意の位置の2本のプリグルーブの中、内周側のプリグルーブ105iの形状を示し、この内周側のプリグルーブ105iは、深さDi及び溝幅Wiを有し、図2(b)は、基板101に形成された任意の位置の2本のプリグルーブの中、外周側のプリグルーブ105oの形状を示し、この外周側のプリグルーブ105oは、深さDo及び溝幅Woを有している。
【0019】
本実施の形態が適用される光記録媒体100の基板101上に形成されたプリグルーブ105の深さ及び溝幅は、基板101に形成された任意の位置の2本のプリグルーブにおいて、内周側のプリグルーブ105iの深さ(Di)よりも外周側のプリグルーブ105oの深さ(Do)が深く(Di<Do)、且つ、内周側のプリグルーブ105iの溝幅(Wi)よりも外周側のプリグルーブ105oの溝幅(Wo)が広く(Wi<Wo)なるように、基板101の中心部から外側に向かって、それぞれ増大するように形成されている。
【0020】
本実施の形態が適用される光記録媒体100においては、プリグルーブ105の深さ及び溝幅が、基板101の中心部から外側に向かって、それぞれ増大する範囲は、前述した(Di/Do)及び(Wi/Wo)と、光記録媒体100の面内の反射率により規格化した未記録状態のラジアルプッシュプル振幅(PPb)の最大値及び最小値の比率(最大値/最小値)との関係から決められる。
【0021】
即ち、光記録媒体100におけるPPbの面内変動が小さくなるように、具体的には、PPbの最大値及び最小値の比率(最大値/最小値)を1.0〜1.1の範囲内になるように、プリグルーブ105の深さは、(Di/Do)が、0.85〜0.96、好ましくは、0.90〜0.96の範囲内で漸増し、且つ、プリグルーブ105の溝幅は、(Wi/Wo)が、0.89〜0.99、好ましくは、0.90〜0.98の範囲内で漸増するように、それぞれ形成されている。
プリグルーブ105の深さ(D)及び溝幅(W)が、このような範囲を満たすように、それぞれ基板101の中心部から外側に向かって増大するように形成されていることにより、トラッキング制御信号の面内変動を低減することができる。
その結果、高速記録時においてもディスク全体にわたってトラッキングサーボが安定に掛かり、さらに、記録マークのジッターを低減することができる。
【0022】
光吸収層102は、光照射により光情報の記録又は再生が可能な有機色素により形成される。本実施の形態が適用される光記録媒体100は、このような有機色素により形成された光吸収層102を有することにより、光情報を1回だけ記録することが可能で書換が不可能な追記型光記録媒体として使用することができる。このような有機色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、スクワリリウム系色素、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、インドアニリン系色素等が挙げられる。これらの有機色素の中でも、シアニン系色素、アゾ系色素が好ましい。尚、シアニン系色素を使用する場合は、シアニン系色素の光劣化を防止するために、一重項酸素クエンチャー等を含有させてもよい。
【0023】
光吸収層102は、蒸着法又は有機色素の溶液によるスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート等の湿式製膜法により形成される。中でも、湿式製膜法が好ましく、湿式製膜法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法により光吸収層102を形成する場合の回転数は、通常、100rpm〜10,000rpm、好ましくは、100rpm〜3,000rpmである。スピンコート法において使用する溶液の溶媒としては、例えば、メチルアルコール等のアルキルアルコール溶媒;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒;テトロフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール溶媒;乳酸メチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエチル溶媒が好適に使用される。光吸収層102の厚さは、通常、20nm〜200nmであり、好ましくは、60nm〜140nmである。
【0024】
光反射層103は、光吸収層102の基板101とは反対側に設けられ、通常、基板101側から照射される光を基板101側に反射する機能を有する。光反射層103を形成するための材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いものが挙げられ、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは、反射率が高く光反射層103を形成する材料として好適である。
【0025】
光反射層103の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスパッタリング法が好ましい。また、光反射層103の厚さは、通常、0.02μm〜0.5μmであり、好ましくは、0.02μm〜0.25μmである。
【0026】
保護層104は、光反射層103上に設けられ、基板101と反対側から受ける物理的または機械的障害に対して光反射層103及び光吸収層102を保護する層である。このような保護層104は、耐衝撃性に優れた樹脂により形成されることが好ましい。保護層104を形成するために使用する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の紫外線又は電子線硬化性樹脂;エポキシ系樹脂等の光カチオン重合性樹脂;さらに、シリコーン樹脂等が挙げられる。保護層104の厚さは、通常、0.1μm〜100μmであり、好ましくは、4μm〜10μmである。
【0027】
保護層104を形成するこれらの樹脂は、単独の重合体、モノマー及びオリゴマーの混合物の重合体等のいずれも用いることができる。また、溶剤で希釈して塗布することも可能である。中でも作業性の点から紫外線硬化性樹脂が好ましい。保護層104を形成する方法は、通常、スピンコート、ディップコート、バーコート、スクリーン印刷等の方法で行われ、作業性の点からスピンコート法が好ましい。
【0028】
次に、光記録媒体100の製造方法について説明する。先ず、ガラス原盤にプリグルーブに相当する凹凸を形成し、これにニッケル電鋳を行うことにより作製したニッケル製スタンパを射出成形機の金型に装着し、この金型内にポリカーボネート樹脂等の光透過性樹脂を射出充填することにより基板101を作製する。
尚、ガラス原盤のプリグルーブに相当する凹凸は、例えば、研磨した平坦なガラス基板上に塗布したクレゾールノポラック樹脂と感光剤との混合物からなるフォトレジストにレーザ光を照射して所望の寸法のプリグルーブを露光し、次いで、露光部分を現像して形成する。
【0029】
基板101は、同心円状又は螺旋状に形成されたトラッキング用のプリグルーブ105を有している。次に、このようなプリグルーブ105が形成された基板101の表面上に、例えば、アゾ系色素溶液をスピンコート法により所定の厚さに塗布して光吸収層102を形成し、続いて、この光吸収層102上に、例えば、Agをスパッタ法により所定の厚さの光反射層103を成膜し、更に、光反射層103上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコート法により塗布し、紫外線を照射して所定の厚さの保護層104を形成して光記録媒体100を製造する。
【0030】
以上、本実施の形態が提供される光記録媒体100について詳述したが、本実施の形態は上記の態様に限定されるものではなく、必要に応じて各種の変形又は改良を含むものである。例えば、DVD−Rのように、基板上に光吸収層及び光反射層を有する2枚の積層体を、それぞれの積層体の基板が外側になるように貼り合わせた貼り合わせ型の追記型光記録媒体とすることができる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を示し、本実施の形態について更に詳細に説明する。尚、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(光記録媒体の作製)
ポリカーボネート樹脂製基板上に、予め、同心円状にトラッキング用のプリグルーブを形成した。プリグルーブの最内周半径は22mm、プリグルーブの最外周半径は58mm、プリグルーブのトラックピッチは0.74μmである。プリグルーブの深さ及び溝幅は、基板の中心部から外側に向かって増大するように形成され、半径位置25mmにおけるプリグルーブの深さは161nmであり、溝幅は325nmである。また、半径位置55mmにおけるプリグルーブの深さは174nmであり、溝幅は340nmである。
【0032】
次に、プリグルーブを形成した基板の表面に、アゾ系色素/テトラフルオロプロパノール溶液をスピンコート法により膜厚120nmで塗布し、光吸収層を形成した。続いて、この光吸収層上にスパッタ法により厚さ0.1μmのAg膜からなる光反射層を形成した。更に、この光反射層上に、スピンコート法により紫外線硬化性樹脂を厚さ5μmに塗布し、所定の光強度の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させて保護層を設けて、アゾ系色素からなる光吸収層を有する追記型光記録媒体を調製した。
【0033】
この追記型光記録媒体を線速28.0m/秒(CLV:Constant Linear Velocity)で回転させ、記録光として波長660nmのレーザ光をパワー24mWで照射し、画像データ情報を記録した。最小記録ピットは0.40μmである。その後、波長650nmのレーザ光をパワー0.5mWで照射して、記録した画像データ情報を再生した。
【0034】
更に、この追記型記録媒体を、線速3.5m/秒(CLV)で回転させ、波長660nmのレーザ光をパワー7mWで照射し、画像データ情報を記録し、その後、波長650nmのレーザ光をパワー0.5mWで照射して、記録した画像データ情報を再生した。この追記型光記録媒体の半径位置25mm及び55mmにおけるPPbの最大値/最小値、反射率、ジッター及びアシンメトリの測定結果を表1に示す。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同様な方法により、基板の半径位置25mm及び55mmにおけるプリグルーブの深さが168nmであり、基板の半径位置25mm及び55mmにおけるプリグルーブの溝幅が340nmの追記型記録媒体を調製し、実施例1と同様に、線速28.0m/秒で回転させて、画像データ情報を記録及び再生を行った。
【0036】
次に、この追記型記録媒体を、線速3.5m/秒(CLV)で回転させ、波長660nmのレーザ光をパワー7mWで照射し、画像データ情報を記録し、その後、波長650nmのレーザ光をパワー0.5mWで照射して、記録した画像データ情報を再生した。この追記型光記録媒体の半径位置25mm及び55mmにおけるPPbの最大値/最小値、反射率、ジッター及びアシンメトリの測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果から、プリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の中心部から外側に向かって増大するように形成された追記型光記録媒体(実施例1)は、半径位置25mm及び55mmにおけるPPb、反射率が同等な値を示し、PPbの面内変動が小さいことが分かる。また、線速28.0m/秒で回転させて、画像データ情報を記録及び再生を行った場合の半径位置25mm及び55mmにおけるジッター及びアシンメトリも同等な数値が得られることが分かる。半径位置25mm及び55mmにおけるジッター及びアシンメトリの数値は、線速3.5m/秒で回転させた場合も同様に同等な数値が得られた。
【0039】
一方、プリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の中心部から外側に向かってそれぞれ同一になるように形成された追記型光記録媒体(比較例1)は、半径位置25mm及び55mmにおけるPPbの最大値/最小値が異なり、PPbの面内変動が大きいことが分かる。また、反射率も異なっている。さらに、半径位置25mm及び55mmにおけるジッターの数値は、線速3.5m/秒(比較例2)で回転させた場合は、半径位置55mmにおいて増大し、線速28m/秒(比較例1)においてはさらに増大することが分かる。半径位置25mm及び55mmにおけるアシンメトリの数値は、線速3.5m/秒で回転させた場合は、半径位置55mmにおいて減少し、線速28m/秒においてはさらにその差が増大することが分かる。
【0040】
(実施例2、比較例2)
実施例1と同様な方法により、基板上にプリグルーブの深さ及び溝幅が基板の中心部から外側に向かって増大するように形成された4種類の追記型光記録媒体(A〜D)を調製し、線速28.0m/秒で回転させて、画像データ情報を記録及び再生を行い、それぞれ基板上に形成されたプリグルーブの任意の2本のプリグルーブの位置におけるPPbの最大値/最小値を測定した。また、比較例1と同様な方法により、プリグルーブの深さ及び溝幅が同一の追記型光記録媒体(E)を調製し、同様に、基板上に形成されたプリグルーブの任意の2本のプリグルーブの位置におけるPPbの最大値/最小値を測定した。PPbを測定した任意の2本のプリグルーブの位置におけるプリグルーブの深さの比率(Di/Do)及び溝幅(Wi/Wo)とPPbの最大値/最小値の測定結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示した結果から、プリグルーブの深さの比率(Di/Do)が0.86〜0.95の範囲であり、且つ、溝幅(Wi/Wo)が0.90〜0.98の範囲の場合、PPbの最大値/最小値が1.02〜1.08の範囲内に止まり、PPbの面内変動が極めて小さいことが分かる。一方、プリグルーブの深さ及び溝幅が同一(Di/Do=1.0、Wi/Wo=1.0)の場合は、PPbの最大値/最小値が1.29となり、PPbの面内変動が極めて大きいことが分かる。
【0043】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態が適用される光記録媒体を説明するための図である。
【図2】光記録媒体の基板上に形成された任意の位置の2本のプリグルーブの形状を説明するための図である。図2(a)は、内周側のプリグルーブの形状を示し、図2(b)は、外周側のプリグルーブの形状を示す。
【符号の説明】
100…光記録媒体、101…基板、102…光吸収層、103…光反射層、104…保護層、105…プリグルーブ、105i…内周側のプリグルーブ、105o…外周側のプリグルーブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体に関し、より詳しくは、高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度光記録媒体が実用化され、映像等の大量のデータを記録するため、記録再生用のレーザ光の短波長化及びビームスポット径の小径化が進められている。このような高密度光記録媒体として、追記型のDVD−R(デジタルヴァーサタイルディスクレコーダブル)(非特許文献1)が知られており、高密度化に対応するように、極めて短く形成されたプリグルーブのトラックピッチ及び最小記録ピットを用いて、波長が630nm〜660nmのレーザ光により光情報の記録再生が行われている。
【0003】
このようなDVD−Rに光情報を記録する場合は、予め基板に螺旋状又は同心円状に形成されているトラッキング用のプリグルーブに沿ってレーザ光を照射し、基板上に設けられた光吸収層を構成する有機色素を分解、爆発又は溶融させ、プリグルーブ内の光照射部分に記録ピットとして光吸収層の変質物を形成することにより行われる。一方、光情報の再生は、プリグルーブに沿って再生光を照射し、記録ピットとして形成された光吸収層の変質部と未変質部とで生じる反射率の差を利用して、光情報が読み出される。
【0004】
【非特許文献1】
「電子技術(1996年8月号)」、日刊工業新聞社、1996年8月、p.10
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、DVD−Rの基板上に設けられる光吸収層は、通常、有機色素を含有する溶液を基板上にスピンコート法により塗布して形成されている。このスピンコート法は、基板の略中心に滴下した溶液に高速回転による遠心力を負荷し、溶液の溶媒を飛散させるとともに有機色素の薄膜を形成させる方法である。高速回転により溶液に負荷される遠心力は、通常、基板の中心部付近に比べて外周側では大きくなる。このため、基板上に形成された有機色素の薄膜の厚さは、基板の中心部付近に比べて外周側では薄くなり、光吸収層の厚さの均一性が保てない場合が生じる。
【0006】
DVD−Rの光吸収層の厚さが、このように基板の外周側で薄い場合は、反射率で規格化した未記録状態のラジアルプッシュプル振幅(PPb)が、基板中心部近傍と外周側とで大きく異なることとなる。このため、例えば、記録線速度が28m/秒の高速において光情報を記録する場合は、トラッキング制御信号が変動する影響によりトラッキングサーボが不安定になり、記録マークのジッターが増大するという問題が生じている。
【0007】
本発明は、このようなスピンコート法により形成された光吸収層を有するDVD−Rに高速の記録線速度において光情報を記録する際に浮き彫りになった問題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するため、本発明においては、基板上に形成されたプリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の中心から外側に向かって増大する構成を採用している。即ち、本発明が適用される光記録媒体は、所定の深さ及び溝幅を有するプリグルーブが形成された基板と、この基板上に設けられ、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光照射により光情報の記録又は再生が行われる光吸収層と、を備え、基板に形成されたプリグルーブの深さ及び溝幅は、基板の内周側と比較して基板の外周側が増大していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明が適用される光記録媒体は、基板に形成されたプリグルーブは、その深さが、基板の内周側の深さ(Di)と外周側の深さ(Do)との比率(Di/Do)が0.85〜0.96の範囲内であり、且つ、プリグルーブの溝幅が、基板の内周側の溝幅(Wi)と外周側の溝幅(Wo)との比率(Wi/Wo)が0.89〜0.99である関係を満足する部分を有するように形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明が適用される光記録媒体は、基板に形成されたプリグルーブは、この基板の最内周側のプリグルーブの深さと最外周側の深さとの比率が0.85〜0.96の範囲であり、且つ、基板のプリグルーブの最内周側の溝幅と最外周側の溝幅との比率が0.89〜0.99であることを特徴とすることができる。
【0011】
さらに、本発明が適用される光記録媒体における基板は、半径距離が異なる任意の2本のプリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の内周側と比較して基板の外周側が常に増大しているように、プリグルーブが形成されていることが好ましく、光記録媒体全体において、高速記録時に安定したトラッキングサーボを行うことができる。
【0012】
一方、本発明は、内周側と比較して外周側の深さ及び溝幅が大きくなるように形成されたプリグルーブを有する基板と、この基板上に設けられ、光照射により光情報の記録又は再生が行われる光吸収層とを備え、この基板は、任意の記録線速度における未記録状態のラジアルプッシュプル信号の最大値と最小値との比率が1.0〜1.1であるように、プリグルーブの深さ及び溝幅が形成されることを特徴とする光記録媒体として捉えることができる。尚、基板は、3.5m/秒〜28m/秒の記録線速度で回転されることが好ましい。
【0013】
また、本発明が適用される光記録媒体においては、光吸収層が、光照射により光情報の記録又は再生が可能な有機色素を含有するものであることが好ましい。
さらに、この光吸収層の上に、接着層を介して、光照射により光情報の記録又は再生が行われる第2の光吸収層とプリグルーブが形成された第2の基板とが積層された貼合わせ型の光記録媒体とすることもできる。また、プリグルーブは、深さが130nm〜200nmであり、溝幅が270nm〜380nmであることが好ましく、トラックピッチが0.7μm〜0.8μmであり、最小記録ピットが0.40μm〜0.44μmであることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本実施の形態が適用される光記録媒体について詳述する。
図1は、本実施の形態が適用される光記録媒体を説明するための図である。図1に示された光記録媒体100は、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光情報の記録が行われるように、光透過性材料により形成された基板101と、この基板101上に順次積層された、光照射により光情報の高速記録が可能な光吸収層102と、光反射層103及び保護層104とを有する。基板101の上面には、複数のトラッキング用のプリグルーブ105が、基板101の中心部から外側に向い、螺旋状又は同心円状に形成されている。また、後述するように、プリグルーブ105の深さ及び溝幅は、基板101の中心部から外側に向かってそれぞれ増大するように形成されている。
【0015】
基板101は、基本的には光吸収層102に対する記録光及び再生光の波長に対して光透過性の材料により形成される。基板101を形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料、ガラス等の無機材料が挙げられる。特に、ポリカーボネート系樹脂は、光の透過性が高いので好ましい。
【0016】
基板101の表面には、後述するように、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光情報の記録が行われるように、記録位置を表す案内溝やピット等のトラッキング用のプリグルーブが形成される。トラッキング用のプリグルーブ105は、基板101上に同心円状又は螺旋状に形成され、例えば、プリフォーマットパターンを有するスタンパを装着した射出成形機を用いて成形される。また、レーザーカッティング法や2P法(Photo−Polymer法)により作製することもできる。基板101の厚さは、通常、0.5mm〜0.7mmであり、好ましくは、0.55mm〜0.65mmである。
【0017】
プリグルーブ105の、隣接する凸部間の間隔は、記録密度を増大するために、通常、0.7μm〜0.8μmであり、好ましくは、0.71μm〜0.77μmである。また、最小記録ピットは、通常、0.40μm〜0.44μm、好ましくは、0.40μm〜0.41μmである。更に、プリグルーブの深さ(D)は、光の干渉効果を利用して増幅した再生信号を得るために、通常、130nm〜200nm、好ましくは、150nm〜180nmである。プリグルーブの溝幅(W)は、通常、270nm〜380nm、好ましくは、290nm〜360nmである。
【0018】
図2は、光記録媒体100の基板101上に形成されたプリグルーブの形状を説明するための図である。図2(a)は、基板101に形成された任意の位置の2本のプリグルーブの中、内周側のプリグルーブ105iの形状を示し、この内周側のプリグルーブ105iは、深さDi及び溝幅Wiを有し、図2(b)は、基板101に形成された任意の位置の2本のプリグルーブの中、外周側のプリグルーブ105oの形状を示し、この外周側のプリグルーブ105oは、深さDo及び溝幅Woを有している。
【0019】
本実施の形態が適用される光記録媒体100の基板101上に形成されたプリグルーブ105の深さ及び溝幅は、基板101に形成された任意の位置の2本のプリグルーブにおいて、内周側のプリグルーブ105iの深さ(Di)よりも外周側のプリグルーブ105oの深さ(Do)が深く(Di<Do)、且つ、内周側のプリグルーブ105iの溝幅(Wi)よりも外周側のプリグルーブ105oの溝幅(Wo)が広く(Wi<Wo)なるように、基板101の中心部から外側に向かって、それぞれ増大するように形成されている。
【0020】
本実施の形態が適用される光記録媒体100においては、プリグルーブ105の深さ及び溝幅が、基板101の中心部から外側に向かって、それぞれ増大する範囲は、前述した(Di/Do)及び(Wi/Wo)と、光記録媒体100の面内の反射率により規格化した未記録状態のラジアルプッシュプル振幅(PPb)の最大値及び最小値の比率(最大値/最小値)との関係から決められる。
【0021】
即ち、光記録媒体100におけるPPbの面内変動が小さくなるように、具体的には、PPbの最大値及び最小値の比率(最大値/最小値)を1.0〜1.1の範囲内になるように、プリグルーブ105の深さは、(Di/Do)が、0.85〜0.96、好ましくは、0.90〜0.96の範囲内で漸増し、且つ、プリグルーブ105の溝幅は、(Wi/Wo)が、0.89〜0.99、好ましくは、0.90〜0.98の範囲内で漸増するように、それぞれ形成されている。
プリグルーブ105の深さ(D)及び溝幅(W)が、このような範囲を満たすように、それぞれ基板101の中心部から外側に向かって増大するように形成されていることにより、トラッキング制御信号の面内変動を低減することができる。
その結果、高速記録時においてもディスク全体にわたってトラッキングサーボが安定に掛かり、さらに、記録マークのジッターを低減することができる。
【0022】
光吸収層102は、光照射により光情報の記録又は再生が可能な有機色素により形成される。本実施の形態が適用される光記録媒体100は、このような有機色素により形成された光吸収層102を有することにより、光情報を1回だけ記録することが可能で書換が不可能な追記型光記録媒体として使用することができる。このような有機色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、スクワリリウム系色素、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、インドアニリン系色素等が挙げられる。これらの有機色素の中でも、シアニン系色素、アゾ系色素が好ましい。尚、シアニン系色素を使用する場合は、シアニン系色素の光劣化を防止するために、一重項酸素クエンチャー等を含有させてもよい。
【0023】
光吸収層102は、蒸着法又は有機色素の溶液によるスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート等の湿式製膜法により形成される。中でも、湿式製膜法が好ましく、湿式製膜法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法により光吸収層102を形成する場合の回転数は、通常、100rpm〜10,000rpm、好ましくは、100rpm〜3,000rpmである。スピンコート法において使用する溶液の溶媒としては、例えば、メチルアルコール等のアルキルアルコール溶媒;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒;テトロフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール溶媒;乳酸メチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエチル溶媒が好適に使用される。光吸収層102の厚さは、通常、20nm〜200nmであり、好ましくは、60nm〜140nmである。
【0024】
光反射層103は、光吸収層102の基板101とは反対側に設けられ、通常、基板101側から照射される光を基板101側に反射する機能を有する。光反射層103を形成するための材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いものが挙げられ、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは、反射率が高く光反射層103を形成する材料として好適である。
【0025】
光反射層103の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスパッタリング法が好ましい。また、光反射層103の厚さは、通常、0.02μm〜0.5μmであり、好ましくは、0.02μm〜0.25μmである。
【0026】
保護層104は、光反射層103上に設けられ、基板101と反対側から受ける物理的または機械的障害に対して光反射層103及び光吸収層102を保護する層である。このような保護層104は、耐衝撃性に優れた樹脂により形成されることが好ましい。保護層104を形成するために使用する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の紫外線又は電子線硬化性樹脂;エポキシ系樹脂等の光カチオン重合性樹脂;さらに、シリコーン樹脂等が挙げられる。保護層104の厚さは、通常、0.1μm〜100μmであり、好ましくは、4μm〜10μmである。
【0027】
保護層104を形成するこれらの樹脂は、単独の重合体、モノマー及びオリゴマーの混合物の重合体等のいずれも用いることができる。また、溶剤で希釈して塗布することも可能である。中でも作業性の点から紫外線硬化性樹脂が好ましい。保護層104を形成する方法は、通常、スピンコート、ディップコート、バーコート、スクリーン印刷等の方法で行われ、作業性の点からスピンコート法が好ましい。
【0028】
次に、光記録媒体100の製造方法について説明する。先ず、ガラス原盤にプリグルーブに相当する凹凸を形成し、これにニッケル電鋳を行うことにより作製したニッケル製スタンパを射出成形機の金型に装着し、この金型内にポリカーボネート樹脂等の光透過性樹脂を射出充填することにより基板101を作製する。
尚、ガラス原盤のプリグルーブに相当する凹凸は、例えば、研磨した平坦なガラス基板上に塗布したクレゾールノポラック樹脂と感光剤との混合物からなるフォトレジストにレーザ光を照射して所望の寸法のプリグルーブを露光し、次いで、露光部分を現像して形成する。
【0029】
基板101は、同心円状又は螺旋状に形成されたトラッキング用のプリグルーブ105を有している。次に、このようなプリグルーブ105が形成された基板101の表面上に、例えば、アゾ系色素溶液をスピンコート法により所定の厚さに塗布して光吸収層102を形成し、続いて、この光吸収層102上に、例えば、Agをスパッタ法により所定の厚さの光反射層103を成膜し、更に、光反射層103上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコート法により塗布し、紫外線を照射して所定の厚さの保護層104を形成して光記録媒体100を製造する。
【0030】
以上、本実施の形態が提供される光記録媒体100について詳述したが、本実施の形態は上記の態様に限定されるものではなく、必要に応じて各種の変形又は改良を含むものである。例えば、DVD−Rのように、基板上に光吸収層及び光反射層を有する2枚の積層体を、それぞれの積層体の基板が外側になるように貼り合わせた貼り合わせ型の追記型光記録媒体とすることができる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を示し、本実施の形態について更に詳細に説明する。尚、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(光記録媒体の作製)
ポリカーボネート樹脂製基板上に、予め、同心円状にトラッキング用のプリグルーブを形成した。プリグルーブの最内周半径は22mm、プリグルーブの最外周半径は58mm、プリグルーブのトラックピッチは0.74μmである。プリグルーブの深さ及び溝幅は、基板の中心部から外側に向かって増大するように形成され、半径位置25mmにおけるプリグルーブの深さは161nmであり、溝幅は325nmである。また、半径位置55mmにおけるプリグルーブの深さは174nmであり、溝幅は340nmである。
【0032】
次に、プリグルーブを形成した基板の表面に、アゾ系色素/テトラフルオロプロパノール溶液をスピンコート法により膜厚120nmで塗布し、光吸収層を形成した。続いて、この光吸収層上にスパッタ法により厚さ0.1μmのAg膜からなる光反射層を形成した。更に、この光反射層上に、スピンコート法により紫外線硬化性樹脂を厚さ5μmに塗布し、所定の光強度の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させて保護層を設けて、アゾ系色素からなる光吸収層を有する追記型光記録媒体を調製した。
【0033】
この追記型光記録媒体を線速28.0m/秒(CLV:Constant Linear Velocity)で回転させ、記録光として波長660nmのレーザ光をパワー24mWで照射し、画像データ情報を記録した。最小記録ピットは0.40μmである。その後、波長650nmのレーザ光をパワー0.5mWで照射して、記録した画像データ情報を再生した。
【0034】
更に、この追記型記録媒体を、線速3.5m/秒(CLV)で回転させ、波長660nmのレーザ光をパワー7mWで照射し、画像データ情報を記録し、その後、波長650nmのレーザ光をパワー0.5mWで照射して、記録した画像データ情報を再生した。この追記型光記録媒体の半径位置25mm及び55mmにおけるPPbの最大値/最小値、反射率、ジッター及びアシンメトリの測定結果を表1に示す。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同様な方法により、基板の半径位置25mm及び55mmにおけるプリグルーブの深さが168nmであり、基板の半径位置25mm及び55mmにおけるプリグルーブの溝幅が340nmの追記型記録媒体を調製し、実施例1と同様に、線速28.0m/秒で回転させて、画像データ情報を記録及び再生を行った。
【0036】
次に、この追記型記録媒体を、線速3.5m/秒(CLV)で回転させ、波長660nmのレーザ光をパワー7mWで照射し、画像データ情報を記録し、その後、波長650nmのレーザ光をパワー0.5mWで照射して、記録した画像データ情報を再生した。この追記型光記録媒体の半径位置25mm及び55mmにおけるPPbの最大値/最小値、反射率、ジッター及びアシンメトリの測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果から、プリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の中心部から外側に向かって増大するように形成された追記型光記録媒体(実施例1)は、半径位置25mm及び55mmにおけるPPb、反射率が同等な値を示し、PPbの面内変動が小さいことが分かる。また、線速28.0m/秒で回転させて、画像データ情報を記録及び再生を行った場合の半径位置25mm及び55mmにおけるジッター及びアシンメトリも同等な数値が得られることが分かる。半径位置25mm及び55mmにおけるジッター及びアシンメトリの数値は、線速3.5m/秒で回転させた場合も同様に同等な数値が得られた。
【0039】
一方、プリグルーブの深さ及び溝幅が、基板の中心部から外側に向かってそれぞれ同一になるように形成された追記型光記録媒体(比較例1)は、半径位置25mm及び55mmにおけるPPbの最大値/最小値が異なり、PPbの面内変動が大きいことが分かる。また、反射率も異なっている。さらに、半径位置25mm及び55mmにおけるジッターの数値は、線速3.5m/秒(比較例2)で回転させた場合は、半径位置55mmにおいて増大し、線速28m/秒(比較例1)においてはさらに増大することが分かる。半径位置25mm及び55mmにおけるアシンメトリの数値は、線速3.5m/秒で回転させた場合は、半径位置55mmにおいて減少し、線速28m/秒においてはさらにその差が増大することが分かる。
【0040】
(実施例2、比較例2)
実施例1と同様な方法により、基板上にプリグルーブの深さ及び溝幅が基板の中心部から外側に向かって増大するように形成された4種類の追記型光記録媒体(A〜D)を調製し、線速28.0m/秒で回転させて、画像データ情報を記録及び再生を行い、それぞれ基板上に形成されたプリグルーブの任意の2本のプリグルーブの位置におけるPPbの最大値/最小値を測定した。また、比較例1と同様な方法により、プリグルーブの深さ及び溝幅が同一の追記型光記録媒体(E)を調製し、同様に、基板上に形成されたプリグルーブの任意の2本のプリグルーブの位置におけるPPbの最大値/最小値を測定した。PPbを測定した任意の2本のプリグルーブの位置におけるプリグルーブの深さの比率(Di/Do)及び溝幅(Wi/Wo)とPPbの最大値/最小値の測定結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示した結果から、プリグルーブの深さの比率(Di/Do)が0.86〜0.95の範囲であり、且つ、溝幅(Wi/Wo)が0.90〜0.98の範囲の場合、PPbの最大値/最小値が1.02〜1.08の範囲内に止まり、PPbの面内変動が極めて小さいことが分かる。一方、プリグルーブの深さ及び溝幅が同一(Di/Do=1.0、Wi/Wo=1.0)の場合は、PPbの最大値/最小値が1.29となり、PPbの面内変動が極めて大きいことが分かる。
【0043】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、高速記録時において安定したトラッキングサーボが行える光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態が適用される光記録媒体を説明するための図である。
【図2】光記録媒体の基板上に形成された任意の位置の2本のプリグルーブの形状を説明するための図である。図2(a)は、内周側のプリグルーブの形状を示し、図2(b)は、外周側のプリグルーブの形状を示す。
【符号の説明】
100…光記録媒体、101…基板、102…光吸収層、103…光反射層、104…保護層、105…プリグルーブ、105i…内周側のプリグルーブ、105o…外周側のプリグルーブ
Claims (10)
- 所定の深さ及び溝幅を有するプリグルーブが形成された基板と、
前記基板上に設けられ、記録線速度3.5m/秒〜28m/秒において光照射により光情報の記録又は再生が行われる光吸収層と、を備え、
前記基板に形成された前記プリグルーブの前記深さ及び溝幅は、前記基板の内周側と比較して当該基板の外周側が増大していることを特徴とする光記録媒体。 - 前記基板は、前記プリグルーブの前記深さが、前記基板の内周側の深さ(Di)と外周側の深さ(Do)との比率(Di/Do)が0.85〜0.96の範囲であり、且つ、当該プリグルーブの前記溝幅が、当該基板の内周側の溝幅(Wi)と外周側の溝幅(Wo)との比率(Wi/Wo)が0.89〜0.99であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記基板は、前記基板の最内周側の前記プリグルーブの深さと最外周側の深さとの比率が0.85〜0.96の範囲であり、且つ、当該基板の当該プリグルーブの最内周側の溝幅と最外周側の溝幅との比率が0.89〜0.99であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記基板は、半径距離が異なる任意の2本の前記プリグルーブの前記深さ及び溝幅が、当該基板の内周側と比較して当該基板の外周側が常に増大していることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 内周側と比較して外周側の深さ及び溝幅が大きくなるように形成されたプリグルーブを有する基板と、
前記基板上に設けられ、光照射により光情報の記録又は再生が行われる光吸収層と、を備え、
前記基板は、任意の記録線速度における未記録状態のラジアルプッシュプル信号の最大値と最小値との比率が1.0〜1.1であるように、前記プリグルーブの前記深さ及び溝幅が形成されることを特徴とする光記録媒体。 - 前記基板は、3.5m/秒〜28m/秒の記録線速度で回転されることを特徴とする請求項5記載の光記録媒体。
- 前記光吸収層が、光照射により光情報の記録又は再生が可能な有機色素を含有することを特徴とする請求項1又は5記載の光記録媒体。
- 前記光吸収層の上に、さらに接着層を介して、光照射により光情報の記録又は再生が行われる第2の光吸収層と前記プリグルーブが形成された第2の基板とが積層されたことを特徴とする請求項1又は5記載の光記録媒体。
- 前記プリグルーブは、前記深さが130nm〜200nmであり、前記溝幅が270nm〜380nmであることを特徴とする請求項1又は5記載の光記録媒体。
- 前記プリグルーブは、トラックピッチが0.7μm〜0.8μmであり、最小記録ピットが0.40μm〜0.44μmであることを特徴とする請求項1又は5記載の光記録媒体。
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Date | Code | Title | Description |
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