JP5108434B2 - 光記録媒体の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光記録媒体の製造方法等に関し、より詳しくは、記録特性の良好な積層型多層光記録媒体を製造する方法及び製造装置に関する。
近年、長時間かつ高画質の動画等の大容量データを記録・再生するために、従来と比較してさらなる情報の高密度化が可能な光記録媒体の開発が望まれている。このような情報の高密度化が可能な光記録媒体としては、例えば、1枚の媒体に記録層を2層(デュアルレイヤ)設けた積層構造を有するDVD−ROM等の積層型多層光記録媒体が挙げられる。このような多層化の技術を用いれば、1層あたりの記録密度は変化させることなく容量を増大させることが可能である。
積層型多層光記録媒体は、通常、フォトポリメリゼーション法(Photo Polymerization:以下、「2P法」と記すことがある。)と呼ばれる製造方法により製造される。2P法によれば、例えば、記録トラック用の凹凸形状が形成された透明な第1基板上に第1記録層、第1反射層、記録トラック用の凹凸形状が形成された中間層、第2記録層、第2反射層をこの順に形成し、最後に第2基板を接着することにより2層構造の光記録媒体が製造される。
2P法の場合は、中間層は、通常、以下のようにして製造される。すなわち、まず、第1反射層上に、光(光としては、例えば紫外線等の放射線を挙げることができる。)により硬化する光硬化性樹脂原料等を塗布して樹脂原料層を形成した後、この上に転写用の凹凸形状(以下適宜、「転写用凹凸形状」という)を有するスタンパを載置する。次いで、上記光硬化性樹脂原料等を硬化させた後に、スタンパを剥離する。このようにして、光硬化性樹脂の表面にスタンパの転写用凹凸形状を転写させて、凹凸形状を有する中間層を硬化性樹脂の硬化物によって形成することができるようになっている。
したがって、2P法においては、光硬化性樹脂を硬化させた後のスタンパをスムーズに剥離することが望まれる。2P法により記録用トラック用の凹凸形状を有する中間層を形成する際には、光硬化性樹脂とスタンパとが剥離し難い、又は、剥離しても中間層の表面の均一性が低下する、等の製造上の課題が生じると、中間層にキズやはぎ取り等の欠陥が生じ、光記録媒体に安定して光による情報の記録・再生を行うことができなくなる可能性があるからである。
ところが、特にポリカーボネート系樹脂やアクリル樹脂で形成したスタンパを用いた場合には、紫外線硬化性樹脂等で形成された中間層とスタンパとの剥離が困難であるという現状がある(特許文献1,2)。
特許文献2には、アクリル樹脂製のスタンパに対して、無機系材料による表面コーティングを行うことが提案されている。そして、それにより、上記剥離を良好に行うことができるとされている。さらに、同文献においては、スタンパの溝/ピット(転写用凹凸形状に対応)の表面にSiO2誘電体膜が成膜されたアクリルスタンパを用いている。
一方、特許文献3には、スタンパの全体を環状ポリオレフィンまたはポリスチレン系樹脂から構成するか、スタンパの少なくとも母型パターン(転写用凹凸形状に相当)が形成されている表面を環状ポリオレフィンまたはポリスチレン系樹脂から構成することが提案されている。そして、それにより、放射線硬化型樹脂の硬化物からなる中間層に対するス
タンパの離型性を良好にすることができると記載されている。また、特許文献3においては、環状ポリオレフィンが、放射線硬化型樹脂の硬化物からなる中間層に対するスタンパの離型性を特に良好にするとしている。
国際公開第2005/048253号パンフレット(段落[0100]) 特開2002−279707号公報(段落[0021]、[0028]) 特開2003−85839号公報(段落[0006]、[0016]、[0046]〜[0055]等)
しかしながら、特許文献2,3のような方法によって中間層とスタンパとの剥離を容易にした場合であっても、中間層に形成された溝の表面が完全に硬化されていない場合には、記録用トラックの凹凸形状が変化する場合や、記録層を積層する際に凹部と凸部の比率が変化する場合があることが判明した。また、このような凹凸形状等の変化は、経時的にも起こることが判明した。これにより、光記録媒体への光による情報記録・再生特性が不安定になる可能性があった。
特にこのような課題は、記録層として有機色素材料を用いる方式の光記録媒体において顕著に発生することが判った。しかしながら従来は、どのようにすれば、スタンパに形成された溝形状が中間層に忠実に転写され、さらに記録層として再現することが可能であるかは明らかでなかった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、良好な凹凸形状を有し、光による情報の記録・再生が安定した光記録媒体を製造することができる、光記録媒体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、2P法による光記録媒体の製造方法において、中間層を硬化させた後にスタンパを剥離した後に、凹凸形状が転写された中間層に表面改質処理を施すという手法を見出した。そして、この手法を導入することにより、スムーズな剥離が困難であったポリカーボネート系樹脂でスタンパを形成した場合にも、良好な凹凸形状を有する中間層を得ることができるという知見を得た。さらに、この手法を導入することにより、スタンパの材質によらず、スタンパの凹凸形状が中間層に忠実に転写され、さらに記録層として再現できるという知見を得た。
即ち、本発明の要旨は、凹凸形状を有する中間層を備えた光記録媒体の製造方法であって、基板上に、直接又は他の層を介して、照射される光により情報が記録される第1記録層を形成する工程と、前記第1記録層上に、直接又は他の層を介して、樹脂原料層と前記凹凸形状に対応した転写用凹凸形状を有するスタンパとをこの順に載置した状態で、前記樹脂原料層を硬化させて、前記基板、前記第1記録層、前記樹脂原料層及び前記スタンパを備えた接着体を得る工程と、前記樹脂原料層から前記スタンパを剥離して前記樹脂原料層に前記転写用凹凸形状を転写した後に、前記転写用凹凸形状が転写された前記樹脂原料層の硬化を促進させる表面改質処理を施して前記中間層を形成する工程と、前記中間層上に、照射される光により情報が記録される第2記録層を形成する工程と、を有し、前記第2記録層が、有機色素材料を含有することを特徴とする、光記録媒体の製造方法に存する(請求項1)。
このとき、前記表面改質処理は、放射線照射処理及び/又は加熱処理であることが好ましい(請求項2)。
また、前記表面改質処理は、照射量50〜1000mJ/cm2の紫外線照射によることが好ましい(請求項3)。
また、前記表面改質処理は、加熱温度40〜120℃の加熱処理によることが好ましい(請求項4)。
さらに、前記接着体を得る工程における前記樹脂原料層の硬化は、半硬化状態までの硬化であることが好ましい(請求項5)。
た、前記スタンパは、ポリカーボネート系樹脂製であることが好ましい(請求項)。
さらに、前記樹脂原料層は複数の樹脂層から構成されていることが好ましい(請求項)。
また、前記樹脂原料層が複数の樹脂層から構成され、且つ、前記複数の樹脂層のうち最外樹脂層の硬化が、半硬化状態までの硬化であることが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、基板、第1記録層、第2記録層、及び、凹凸形状を有する中間層を少なくとも備えた光記録媒体の製造装置であって、前記基板上に、直接又は他の層を介して、有機色素材料を含有する前記記録層を形成する手段と、前記第1記録層上に、直接又は他の層を介して、樹脂原料層を形成する手段と、前記樹脂原料層上に、前記凹凸形状に対応した転写用凹凸形状を有するスタンパを載置した状態で、前記樹脂原料層を硬化させて、前記基板、前記第1記録層、前記樹脂原料層及び前記スタンパを備えた接着体を得る手段と、前記接着体から前記スタンパを剥離し、前記樹脂原料層に前記転写用凹凸形状を転写する手段とを備え、かつ、前記転写用凹凸形状が転写された前記樹脂原料層の硬化を促進させる表面改質処理を施す手段と、前記樹脂原料層上に、有機色素原料を含有する前記第2記録層を形成する手段と、を有することを特徴とする、光記録媒体の製造装置に存する(請求項9)。
本発明の光記録媒体の製造方法及び製造装置によれば、良好な凹凸形状を有し、光による情報の記録・再生が安定した光記録媒体を製造することができる。
以下、本発明の実施形態について詳述する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
[I.第一実施形態]
図1(a)〜(h)は、本発明の第一実施形態が適用される光記録媒体の製造方法の好ましい一例を説明するための模式図である。なお、図1(a)〜(h)には、積層型多層光記録媒体の製造方法の例として、有機色素を含む2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型の光記録媒体(片面2層DVD−R又は片面2層DVDレコーダブル・ディスク)の製造方法が示されている。
まず、本実施形態において製造しようとする光記録媒体の構成について簡単に説明する。図1(h)に示すように、片面2層DVD−Rに代表される片面2層の光記録媒体100は、ディスク状の光透過性の第1基板101を備えていて、この第1基板101上に、色素を含む第1記録層102と、半透明の第1反射層103と、紫外線硬化性樹脂からなる光透過性の中間層104と、色素を含む第2記録層105と、第2反射層106と、接着層107と、最外層を形成する第2基板108とが、順番に積層された構造を有している。
また、第1基板101及び中間層104上にはそれぞれ凹凸が形成され、これらの凹凸がそれぞれ記録トラックを構成している。即ち、第1基板101及び中間層104がそれぞれ表面に有する凹凸形状(即ち、上記の凹凸の形状)が、記録トラックの形状となっている。
さらに、光記録媒体100の光情報の記録・再生は、第1基板101側から第1記録層102及び第2記録層105に照射されたレーザ光109により行われるようになっている。即ち、第1記録層102及び第2記録層105は、照射されるレーザ光109により情報が記録及び再生されるようになっている。
なお、本実施の形態が適用される光記録媒体の製造方法において、「光透過性(又は透明)」とは、光情報を記録・再生するために照射される光の波長に対する光透過性を意味するものである。具体的には、光透過性とは、記録・再生のための光の波長について、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上の透過性があることを言う。一方、記録・再生のための光の波長に対する透過性は、理想的には100%であるが、通常は、99.9%以下の値となる。
続いて、本実施形態の光記録媒体の製造方法を説明する。
本実施形態の光記録媒体の製造方法は、第1記録層形成工程と、第1反射層形成工程と、樹脂原料層形成工程と、樹脂原料層硬化工程と、スタンパ剥離工程と、表面改質処理工程と、第2記録層形成工程と、第2反射層形成工程と、第2基板形成工程とを有する。
[1.基板の用意]
まず、第1基板101を用意する。第1基板101としては、図1(a)に示すように、表面に凹凸で、溝、ランド、及びプリピットが形成されたものを用意する。第1基板101は、例えばニッケル製スタンパ等を用いて射出成形等により作製することができる。
[2.第1記録層形成工程]
次に、第1記録層形成工程において、第1基板101上に第1記録層102を形成する。第1記録層102は、照射される光により情報が記録される層である。第1記録層102の形成方法に制限はないが、例えば以下の方法で形成することができる。即ち、有機色素を含有する塗布液を第1基板101の凹凸を有する側の表面にスピンコート等により塗布する。その後、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱等を行い、第1記録層102を成膜する。なお、本実施形態では、上記のように第1基板101上に直接第1記録層102を形成した例を示して説明するが、第1記録層102は、光記録媒体100の種類や構成などに応じて、第1基板101上に1層又は2層以上の他の層を介して形成するようにしてもよい。
[3.第1反射層形成工程]
第1記録層102を成膜した後、第1反射層形成工程において、第1記録層102上に第1反射層103を形成する。第1反射層103の形成方法に制限はないが、例えば、第1記録層102上にAg合金等をスパッタまたは蒸着することにより、第1記録層102上に第1反射層103を成膜することができる。
このように、第1基板101上に、第1記録層102及び第1反射層103を順に積層することによって、データ基板111を得る。なお、本実施の形態においては、データ基板111を透明にしているものとする。
[4.樹脂原料層形成工程]
続いて、樹脂原料層形成工程において、図1(b)に示すように、第1反射層103の表面(即ち、データ基板111の表面)全体に、樹脂原料層104aを形成する。即ち、第1記録層102上に、第1反射層103を介して樹脂原料層104aを形成する。
ここで形成する樹脂原料層104aは、光記録媒体100の完成時に中間層104を構成することになる層で、何らかの処理を施すことにより硬化しうる硬化性樹脂又はその前駆体により形成された層である。
上記硬化性樹脂としては光記録媒体に使用しうる硬化性樹脂を任意に用いることができる。硬化性樹脂の例としては、放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、中でも、放射線硬化性樹脂の一種である紫外線硬化性樹脂が好ましい。なお、本明細書においては、「放射線」を、電子線、紫外線、可視光、及び赤外線を含む意味で用いる。また、硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ただし、樹脂原料層104aはこの後でスタンパ110(後述)により表面に凹凸が成形されることになるため、樹脂原料層硬化工程において成形される前には、不定形な状態(通常は、所定の粘度を有する液体状態)となっている。
また、樹脂原料層104aの形成方法に制限はない。例えば、樹脂原料層104aは、硬化性樹脂の前駆体をスピンコート等により塗布することで形成することができる。本実施形態においては、放射線硬化性樹脂の一つである紫外線硬化性樹脂の前駆体をスピンコートにより塗布し、樹脂原料層(以下、説明の便宜から「紫外線硬化性樹脂原料層」と呼ぶ場合がある。)104aを形成したものとする。
ところで、本実施形態においては、上記のように第1記録層102上に第1反射層103を介して紫外線硬化性樹脂原料層104aを形成した例を示して説明するが、紫外線硬化性樹脂原料層104aは、光記録媒体100の種類や構成などに応じて、第1記録層102上に直接形成するようにしてもよく、また、第1反射層103以外の1層又は2層以上のその他の層を介して形成するようにしてもよい。
[5.樹脂原料層硬化工程]
次に、樹脂原料層硬化工程において、図1(c)に示すように、紫外線硬化性樹脂原料層104a上にスタンパ110を載置し、紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させる。つまり、第1記録層102とは反対側の紫外線硬化性樹脂原料層104aの表面にスタンパ110が載置された状態となる。
スタンパ110は、中間層104に形成されることになる凹凸の形状(凹凸形状)に対応した形状(転写用凹凸形状)の凹凸(転写用凹凸)を表面に有する型である。そして、スタンパ110が有する転写用凹凸の転写用凹凸形状が紫外線硬化性樹脂原料層104aに転写されることにより、中間層104に、所望の凹凸形状の凹凸が形成されるよう、転写用凹凸形状は設定されている。
また、スタンパ110の材料としては、光記録媒体100の製造コストを考慮して、通常は樹脂を用いる。後述する通り、紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させるための紫外線は、スタンパ110を介して照射することが好ましい。したがって、スタンパ110の材料として金属等の不透明材料を用いると、紫外線をスタンパ110を介して照射することが不可能となるが、そのような場合には紫外線により各層の劣化など悪影響を及ぼす可能性がある。
ところで、本実施形態においては、後述するように、樹脂原料層104aを半硬化状態に留めておくこと、及び、スタンパ110の剥離を加熱環境下で行うことにより、スタンパ110に用いる材料の自由度が大きく広がるという利点が発揮される。つまり、従来は、スタンパ110を形成したときの表面エネルギーを小さくする観点から、スタンパ110を形成する樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが好ましいとされてきた。そして、実際に実用化されているのは、非晶質環状ポリオレフィン樹脂(例えば、ゼオネックスおよびゼオノア(いずれも日本ゼオン社製))である。しかし、本実施形態においては、後述する表面改質処理工程を行うこと、及び、加熱環境下においてスタンパ110の剥離を行うことによって、上記のような高機能性の樹脂に限られず、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の汎用で低コストの樹脂を用いることができる。なお、表面改質処理工程を行うこと、及び、加熱環境下においてスタンパ110の剥離を行うことは、いずれか一方のみを行った場合でも両方を組み合わせて行った場合でも、スタンパ110の剥離を良好に行うことができ、スタンパ110に用いる材料の自由度を高めることは可能である。
上記利点を顕著に発揮させる観点から、スタンパ110の材料としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは、ポリカーボネート系樹脂である。なお、スタンパ110の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、スタンパ110は、通常、中央部に表裏を貫通する中心孔を形成された円板形状に形成される。本実施形態においても、スタンパ110は、表面に転写用凹凸形状を有し、中央部にセンターホール(図示省略)を形成された円板形状のものを用いているものとする。
なお、スタンパ110を作製する場合、その作製方法は任意であるが、例えば、スタンパ110を樹脂製スタンパとする場合には、スタンパ110が有する転写用凹凸形状の逆(ネガ)の凹凸パターンを有する金属製スタンパ(例えば、ニッケル製スタンパ)を用いて、射出成形等により作製することができる。
また、本実施の形態において使用されるスタンパ110の厚さは、形状安定性及びハンドリングの容易さの点で、通常0.3mm以上とするのが望ましい。但し、厚さは、通常、5mm以下である。スタンパ110の厚さがこの範囲であれば、十分な光透過性を有するため、後述するようにスタンパ110を介して紫外線を照射しても、紫外線硬化樹脂等を効率よく硬化させることが可能であり、生産性を向上させることが出来る。
さらに、スタンパ110の外径は、第1基板101の外径(通常は、光記録媒体100の外径に等しい)より大きくすることが好ましい。スタンパ110の外径を第1基板101の外径よりも予め大きく設計しておくと、射出成形でスタンパ110を製造する際に、スタンパ110の第1基板101の外径よりも外側の外周部にも余裕を持って転写用凹凸形状を形成することが可能となり、スタンパ110の全面にわたって良好な転写用凹凸形状を形成することが出来る。
また、第1基板101の外径よりもスタンパ110の外径を大きくすることにより、中間層104(及び、紫外線硬化性樹脂原料層104a)の外径よりもスタンパ110の外径が大きくなる。このようにすると、中間層104の端面の形状を良好にしやすくなる。つまり、仮にスタンパ110の外径を第1基板101の外径以下にした場合には、スタンパ110を紫外線硬化性樹脂原料層104a上に載置した際に、スタンパ110の外周端部に紫外線硬化性樹脂原料層104aの樹脂が付着することがある。この樹脂は、スタンパ110を剥離する際にバリとなる場合がある。したがって、中間層104(紫外線硬化性樹脂原料層104a)の外径よりもスタンパ110の外径が大きいと、バリとなりやすい紫外線硬化性樹脂原料層104aの端部に存在する樹脂が、中間層104の外径よりも外側に存在することとなる。その結果、バリが発生したとしても、バリ発生の部分を取り除くことによって、中間層104の端面の形状を良好とすることができる。
具体的には、スタンパ110の外径は、第1基板101の外径より、直径で通常1mm以上、好ましくは2mm以上大きくすることが好ましい。但し、スタンパ110の外径を第1基板101の外径より大きくする程度は、直径で通常15mm以下、好ましくは10mm以下であることが好ましい。
スタンパ110を載置する際は、通常、スタンパ110の凹凸が形成された面を紫外線硬化性樹脂原料層104aに押し付けるようにして載置するが、あらかじめスタンパ110の凹凸が形成された面にも、スピンコート等によって紫外線硬化性樹脂原料層104aと同じ原料を塗布しておき、塗布されたスタンパ110と紫外線硬化性樹脂原料層104aとを載置することもできる。紫外線硬化性樹脂原料層104aの膜厚が所定範囲になるようにするためには、例えば、載置する際の押し付ける力を調節してもよいし、スピンコート時に紫外線照射を行ったり、熱をかけたりする方法等が挙げられる。
そして、スタンパ110を紫外線硬化性樹脂原料層104aに載置した状態で、紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させる。紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させる
には、紫外線硬化性樹脂原料層104aに紫外線を照射すればよい。紫外線の照射方法は限定されず、スタンパ110を介して照射してもよいし、紫外線硬化性樹脂原料層104aの側面から照射してもよく、さらに、第1基板101側から照射するようにしてもよい。紫外線をスタンパ110側からの照射する場合には、スタンパ110として紫外線を透過しうるもの(光透過性のもの)を用いることが、工業的に好ましい。紫外線を第1基板101側から照射する場合には、紫外線の照射により第1記録層102がダメージを受けないようにすることが好ましい。紫外線の照射効率および紫外線による各層材料への悪影響軽減の観点から、紫外線はスタンパ110を介して照射することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂原料層104aに紫外線を照射する場合の紫外線波長は限定されず、紫外域にピークを有するものであればよいが、そのピーク波長は、通常250nm以上、好ましくは300nm以上であり、通常600nm以下、好ましくは500nm以下である。照射する紫外線のピーク波長が前記範囲未満であっても、前記範囲超過であっても、紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化が不十分となる可能性がある。
紫外線の照射量は、樹脂原料層104aの構成物質や組成等によって適宜最適化されるが、通常50mJ/cm2以上、好ましくは100mJ/cm2以上が望ましい。照射量が前記範囲未満の場合は樹脂の未硬化部分が多くなり、剥離時に溝が抜けるなど樹脂原料層104aへの(ひいては、中間層104への)凹凸の転写不良が起こる可能性がある。また、紫外線の照射量の上限に特に制限は無いが、後述するように樹脂原料層104aを半硬化状態まで硬化させるようにする場合には、通常500mJ/cm2以下、好ましくは400mJ/cm2以下が望ましい。照射量が前記範囲を超える場合は、樹脂が完全に硬化してしまい、スタンパ110の剥離が困難な状況となり、結果として、剥離傷や溝抜けなど樹脂原料層104aへの(ひいては、中間層104への)凹凸の転写不良が発生する場合がある。なお、紫外線の照射時間は、照射量が前記範囲となるように適宜調整される。
紫外線の照射強度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30mW/cm2以上、好ましくは40mW/cm2以上が望ましく、通常200mW/cm2以下、好ましくは150mW/cm2以下が望ましい。照射強度が前記範囲を超えるような強力な紫外線を短時間に照射する場合は、表面改質処理が不均一になったり、物理的な歪みを生じたりする場合がある。また、照射強度が前記範囲未満のような弱い紫外線を長時間照射する場合は、製造効率が低下するばかりか、十分な表面改質処理効果が得られない場合がある。
紫外線硬化性樹脂原料層104aに紫外線を照射する場合の照射方法や照射装置には限定はなく、公知の方法、装置を用いることができる。
さらに、本発明においては、紫外線硬化性樹脂原料層104aの紫外線による硬化を完結させずに、半硬化状態までの硬化とすることが好ましい。紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化を半硬化状態までの硬化とすることにより、スタンパ110と樹脂原料層104aとの密着力が低下するため、後述するスタンパ110の剥離を容易にすることができる。この方法によれば、スタンパ110の材質としてポリカーボネート系樹脂のような剥離が困難な材質を用いた場合であっても、良好にスタンパ110を剥離することが可能となる。したがって、スタンパの材質によらず良好な凹凸形状を有する樹脂原料層104aの形成が可能となり、ひいては良好な凹凸形状を有する中間層104を形成することが可能となる。
ここで、半硬化状態までの硬化とは、例えば、紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化度合いで判断することができる。具体的には、紫外線硬化性樹脂原料層104aに残存す
る二重結合の割合を赤外分光光度計(FT−IR)またはラマン分光法で測定することによって定量することができる。具体的には、未硬化の紫外線硬化性樹脂の二重結合の吸収位置をあらかじめ特定しておき、スタンパ上に設けられた紫外線硬化性樹脂の膜の表面の硬化前後における吸収を測定することにより、硬化前後の二重結合の量の比率を算出して得ることができる。
本発明において、半硬化状態とは、スタンパ上に設けられた紫外線硬化性樹脂表面の、硬化処理を行った後における二重結合の残存率が、通常90%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下であることが望ましい。
一方、紫外線硬化性樹脂原料層104aが半硬化しているか否かを定性的に判断する方法の一つとして、硬化処理を行った後において、紫外線硬化性樹脂原料層104aが粘性を有する状態を挙げることができる。具体的には、後述するスタンパ110の剥離を行った時点で、紫外線硬化性樹脂原料層104aの表面を指で触った場合に、べとつくような状態を挙げることができる。
このように、紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化を半硬化状態までの硬化とするためには、上述の紫外線照射の条件、即ち、照射量、照射強度及び照射時間を適宜最適化すればよい。
本実施形態では、スタンパ110を介して、スタンパ110側から紫外線硬化性樹脂原料層104aに紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂の前駆体を重合させることにより、紫外線硬化性樹脂原料層104aを半硬化状態まで硬化させたものとして説明を行う。
以上のようにして、前記樹脂原料層104aを硬化させて、データ基板111(即ち、第1基板101、第1記録層102及び第1反射層103)、紫外線硬化性樹脂原料層104a、並びに、スタンパ110を備えた接着体112が得られる。
[6.スタンパ剥離工程]
スタンパ剥離工程では、図1(d)に示すように、紫外線硬化性樹脂原料層104a(図1(c)参照)からスタンパ110を剥離させる。これにより、紫外線硬化性樹脂原料層104aにスタンパ110の転写用凹凸形状が転写される。そして、この転写された転写用凹凸形状に応じて凹凸形状が、中間層104に形成されることになる。なお、本明細書では、紫外線硬化性樹脂原料層104aとは、塗布後、硬化され、スタンパが剥離され、更に表面効果処理を施されるよりも以前のものを指す。また、中間層104とは、スタンパ110が剥離された後で表面効果処理を施された後のものを指す。したがって、紫外線硬化性樹脂原料層104a及び中間層104は同様の位置に形成された層を指すものであるが、その状態が異なるものである。
スタンパ110を剥離させる具体的方法に制限はないが、通常は、光記録媒体が円盤形状の場合には、内周を真空吸着して、光記録媒体の内周にナイフエッジを入れ、そこにエアーを吹き込みながらディスク(後述する光記録媒体用積層体113)とスタンパ110を引き離すという方法で剥離を行う。
ここで、上記のスタンパ110の剥離は、常温で行う等、温度制御せずに行っても、接着体112を加熱した状態において行ってもよいが、加熱した状態においてスタンパ110の剥離することで剥離が良好となり、良好な凹凸形状を有する樹脂原料層104aを得ることができ、ひいては良好な凹凸形状を有する中間層104が得られるので好ましい。加熱操作を行う時期は任意であり、例えば基板の用意、第1記録層形成工程、第1反射層形成工程、樹脂原料層形成工程、樹脂原料層硬化工程などのスタンパ剥離工程以前の時点から加熱を開始しても良いが、スタンパ剥離工程直前あるいは、スタンパ剥離工程中までに加熱を開始することが望ましい。中でも、通常は、樹脂原料層硬化工程後、すなわちスタンパ剥離工程において加熱操作を行うようにすることが好ましい。また、スタンパ110を剥離する時の接着体112の温度は任意であるが、通常、50℃以上が好ましく、また、樹脂原料層104aの(即ち、中間層104の)ガラス転移温度以下、かつスタンパ110のガラス転移温度以下とすることが好ましい。
なお、樹脂原料層硬化工程において樹脂原料層104aの硬化を完結させた場合であっても、スタンパ剥離工程において加熱した状態で剥離を行うようにすれば、スタンパ110の剥離を良好に行うことが可能である。また、本実施形態のように、樹脂原料層硬化工程において樹脂原料層104aを半硬化状態まで硬化させた場合にあっては、スタンパ剥離工程において加熱した状態で剥離を行うようにすれば、スタンパ110の剥離をより一層安定して行なうことが可能である。
なお、接着体112の温度は、非接触型の温度計(例えば、KEYENCE社製の非接触型温度計IT2−60)により測定することができる。
以上の操作を経て、紫外線硬化性樹脂原料層104aの表面にスタンパ110の転写用凹凸の形状(即ち、転写用凹凸形状)が転写された樹脂原料層104aを形成し、第1基板101、第1記録層102、第1反射層103及び樹脂原料層104aを備えた光記録媒体用積層体113を得ることができる(図1(d)参照)。
[7.表面改質処理工程]
本実施形態では、図1(e)に示すように、スタンパ110を剥離することによって樹脂原料層104aに転写用凹凸形状を転写した後で、樹脂原料層104aに表面改質処理を施す。これにより、樹脂原料層104aは硬化が進行し、中間層104が形成される。ここで、表面改質処理とは、樹脂原料層104aの硬化を促進する処理であれば限定されないが、放射線照射処理及び/又は加熱処理であることが好ましい。また、放射線の中でも、紫外線を用いることが好ましい。したがって、例えば樹脂原料層104aが紫外線硬化性樹脂で構成されている場合には、表面改質処理として紫外線照射及び加熱処理の何れを用いてもよいが、少なくとも紫外線照射を用いることが好ましい。また、例えば樹脂原料層104aが熱硬化性樹脂で構成されている場合にも、表面改質処理として紫外線照射及び加熱処理の何れを用いてもよいが、表面改質処理として、少なくとも加熱処理を用いることが好ましい。
このように、スタンパ110を剥離して樹脂原料層104aに転写用凹凸形状を転写した後、樹脂原料層104aに表面改質処理を施すことにより、樹脂原料層104aの硬化反応を促進して硬化を完結させ、中間層104を得ることが出来る。これにより、最早、スタンパ110を剥離した状態でデータ基板111を保持した場合でも、中間層104に転写された凹凸の形状は変化することがなくなり、後述する第2記録層の記録・再生を安定化させることが出来る。
前記の表面改質処理の利点は、樹脂原料層硬化工程において樹脂原料層104aの硬化を半硬化状態までに留めておいた場合だけでなく、樹脂原料層104aを更に硬化させていた場合であっても得られるものである。この点について説明すると、樹脂原料層硬化工程において樹脂原料層104aの硬化を半硬化状態から更に進行させた場合、例え樹脂原料層104aの硬化を完結させるように硬化を大きく進行させた場合であっても、何らかの理由により、非常に微細なサイズの未硬化部分が残ることがある。このような未硬化部分は、時間の経過と共に凹凸形状が変化する可能性があったり、また特に溶媒を用いて記録層を積層する場合に、溝部とランド部に積層される記録層の厚さ比率が変化することが多く、光記録媒体の記録・再生の安定性を低下させる一因となっていた。しかし、表面改質処理を行うことにより、このような未硬化部分を硬化させることができるので、スタンパ剥離後、第2記録層形成前にデータ基板111を保持した場合でも、樹脂原料層104aに転写された凹凸の形状は変化することを防止でき、光記録媒体の記録・再生を安定させることができるのである。
スタンパ110を剥離してから表面改質処理を行う迄の時間は本発明の効果が著しく損なわれない限り限定されないが、通常24時間以内、好ましくは12時間以内であることが望ましい。特に、スタンパ100を剥離して直ちに表面改質処理することが最適である。また、表面改質処理を複数回に分割して行うことも出来る。この場合も、初回の表面改質処理は前記の時期に行うことが望ましい。
表面改質処理を紫外線照射で行う場合の紫外線波長は限定されず、紫外域にピークを有するものであれば制限は無いが、そのピーク波長は、通常250nm以上、好ましくは300nm以上であり、通常600nm以下、好ましくは500nm以下である。照射する紫外線のピーク波長が前記範囲未満であっても、前記範囲超過であっても、紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化が不十分となる可能性がある。
紫外線の照射量は、樹脂原料層104aの構成物質や組成、前記の樹脂原料層硬化工程における硬化条件等によって適宜最適化されるが、通常50mJ/cm2以上、好ましくは100mJ/cm2以上、より好ましくは200mJ/cm2以上が望ましく、通常1000mJ/cm2以下、好ましくは800mJ/cm2以下、より好ましくは500mJ/cm2以下が望ましい。紫外線の照射量が前記範囲未満である場合は、十分な表面改質効果が得られない場合があり、前記範囲超過である場合は、収縮や媒体の温度上昇等の理由により媒体に物理的な歪みが生じる場合がある。
紫外線の照射強度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50mW/cm2以上、好ましくは200mW/cm2以上が望ましい。照射強度が前記範囲未満のような弱い紫外線を長時間照射する場合は、製造効率が低下するばかりか、反応速度が遅くなり十分な表面改質処理効果が得られない場合がある。
表面改質処理として紫外線照射する場合の照射方法や照射装置には限定はなく、前記の樹脂原料層硬化工程と同様、公知の方法、装置を用いることができる。
一方、表面改質処理として加熱を行う場合の加熱方法や加熱装置には限定は無いが、樹脂原料層104aの全面に亘って均一に加熱することが望ましい。その点では、オーブン式の加熱方法または赤外線ランプを使用した加熱方式が適している。
表面改質処理をオーブン等の熱源による加熱処理で行う場合の温度は、樹脂原料層104aの構成物質や組成、前記の樹脂原料層硬化工程における硬化条件等によって適宜最適化されるが、通常40℃以上、好ましくは50℃以上が望ましく、通常120℃以下、好ましくは100℃以下が望ましい。加熱温度が前記範囲未満である場合は、十分な表面改質効果が得られない場合があり、また十分な改質効果を得るためには長時間の加熱が必要となるため製造効率が低下する傾向にある。また、加熱温度が前記範囲超過である場合は、熱により基板に物理的な歪みを生じたり、記録層にダメージを与えてしまう可能性がある。
オーブン等の熱源によって加熱処理を行う場合の加熱時間は、通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上であり、通常3時間以下、好ましくは2時間以下である。加熱時間が前記範囲未満のような短時間に高温加熱を行うような場合は、表面改質処理が不均一になったり、物理的な歪みを生じたりする場合がある。また、低温の加熱を前記範囲超過のような長時間行うような場合は、製造効率が低下するばかりか、十分な表面改質処理効果が得られない場合がある。
また、加熱処理は、赤外線を用いた加熱方法も好ましい。赤外線を用いた加熱の場合は瞬時に加熱することが出来るため、数秒程度の加熱で十分な表面改質処理効果を得ることが出来る。このため、生産効率上、好ましい加熱方法である。
本実施形態では、表面改質処理により、半硬化状態であった樹脂原料層104aを十分に硬化されることになる。そして、この表面改質処理工程を経たことによって、光記録媒体用積層体113において、樹脂原料層104a(即ち、中間層104)の硬化を完結させ、次の工程(ここでは、第2記録層形成工程)までの間に光記録媒体用積層体113を保存した場合でも、中間層104が経時的に劣化することを抑制できるようになっている。
[8.第2記録層形成工程]
第2記録層形成工程では、図1(f)に示すように、中間層104上に第2記録層105を形成する。第2記録層105の形成方法に制限はないが、例えば以下の方法で形成することができる。即ち、有機色素を含む塗布液を、スピンコート等により中間層104表面に塗布する。そして、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱等を行い、第2記録層105を成膜する。[4.樹脂原料層形成工程]から[8.第2記録層形成工程]を繰り返すことによって、積層型多層光記録媒体を効率よく製造することができる。
なお、本実施形態は、第2記録層105を中間層104上に直接形成した例を示して説明するが、光記録媒体100の種類や構成などに応じて、1層又は2層以上の他の層(例えば保護層やバッファー層)を介して第2記録層105を形成してもよいことはいうまでもない。
[9.第2反射層形成工程]
第2反射層形成工程では、図1(g)に示すように、第2記録層105上に第2反射層106を形成する。第2反射層106の形成方法に制限はないが、例えば、Ag合金等をスパッタ蒸着することにより第2記録層105上に第2反射層106を成膜することができる。
[10.第2基板形成工程]
第2基板形成工程においては、図1(h)に示すように、第2反射層106上に第2基板108を形成する。第2基板108の形成方法に制限はないが、例えば、第2基板108を、接着層107を介して第2反射層106に貼り合わせて形成することができる。なお、第2基板108に制限はないが、ここでは、ポリカーボネートを射出成形して得られた鏡面基板を第2基板108として用いているものとする。
ここで、接着層107の構成は任意である。例えば、接着層107は、透明であっても不透明であってもよい。また、表面が多少粗くてもよい。さらに、遅延硬化型の接着剤であっても問題なく使用できる。また、例えば、第2反射層106上にスクリーン印刷等の方法で接着剤を塗布し、紫外線を照射してから第2基板108を載置し、押圧することにより接着層107を形成するようにしてもよい。また、第2反射層106と第2基板108との間に感圧式両面テープを挟んで押圧することにより接着層107を形成することも可能である。
以上のようにして、光記録媒体100の製造が完了する。本実施形態の光記録媒体の製造方法によれば、図1(h)に示すような層構成の光記録媒体100を得ることができる。また、本発明の光記録媒体の製造方法によれば、光による情報の記録・再生が安定した高品質の光記録媒体100を製造できる。さらに、本実施形態の光記録媒体の製造方法によれば、良好な凹凸形状を有する、欠陥の少ない中間層104を備える光記録媒体100
を安定的に製造することができる、スタンパ110の材質によらず、良好な凹凸形状を有する中間層104を備える光記録媒体100を製造することが可能である、などの利点も得ることができる。また、表面改質処理を行ったことにより、凹凸形状を有するデータ記録領域に対する記録・再生を安定化できるという効果のみならず、BCA(バーストカッティングエリア)と呼ばれる媒体識別信号を記録する領域に対しても、良好な信号記録特性が得られる。これは、表面処理を行うことで硬化反応が進み、中間層104の弾性率が高くなったためと考えられる。
なお、図1(h)に示した層構成はあくまで一例であり、例えば、本実施形態の光記録媒体の製造方法により、図1(h)に図示しない1層又は2層以上の他の層(例えば、第1基板101と第1記録層102との間に下地層を挿入する。)を有する光記録媒体を製造するようにしてもよい。また、上述した各工程の前、途中、後に、上述した工程以外の他の工程を行うようにしてもよい。
上述の工程は有機色素を含む2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型の光記録媒体を例にとって説明したが、例えばBlu−ray ディスク等(BD−ROM、BD−R、BD−RE等)のいわゆる膜面入射型の光記録媒体の製造においても、本発明の製造方法を適用することが出来る。その場合、記録レーザ光109が図1(h)の上側から照射されることになるため、中間層からみて上下に存在するそれぞれの層の形成工程において、記録層形成工程と反射層形成工程の工程順が逆になり、第2基板形成工程の代わりに、カバー層形成工程を有する。
[11.カバー層形成工程]
カバー層は、記録レーザ光に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、プラスチック板(以下適宜、「カバー層シート」という)を接着剤で貼り合せるか、液状の材料を塗布後に光、放射線、又は熱等により硬化して形成する。
カバー層の材料として用いられるプラスチックは、記録レーザ光に対して透明で複屈折の少ない材料である限り任意の材料を用いることが出来るが、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、接着には、例えば、光、放射線硬化、熱硬化樹脂や、感圧性の接着剤などを用いることが出来る。さらに、感圧性接着剤としては、例えば、アクリル系、メタクリレート系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系の各ポリマーからなる粘着剤を使用できる。なお、カバー層の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
カバー層シートを接着するための具体的方法も任意であるが、例えば、接着層を構成する光硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を記録層上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜上にポリカーボネートシートを重ね合わせる。その後、必要に応じて重ね合わせた状態で、媒体を回転させるなどして塗布液を更に延伸展開した後、UVランプで紫外線を照射して硬化させる。或いは、感圧性接着剤をあらかじめカバー層シートに塗布しておき、カバー層シートを記録層上に重ね合わせた後、適度な圧力で押さえつけて圧着することもできる。
前記粘着剤としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のポリマー粘着剤が好ましい。より具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−オクチルアクリレートなどを主成分モノマーとし、これらの主成分モノマーに、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の極性モノマーを共重合させて得られる粘着剤が好ましい。主成分モノマーの分子量調整、その短鎖成分の混合、アクリル酸による架橋点密度の調整により、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる。アクリル系ポリマーの溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が用いられる。上記粘着剤は、更に、ポリイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。なお、粘着剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
また、粘着剤としては前述のような材料を用いることができ、カバー層シートの記録層側に接する表面に粘着剤を所定量均一に塗布し、溶剤を乾燥させた後、記録層側表面(界面層を有する場合はその表面)に貼り合わせローラー等により圧力をかけて硬化させることができる。また、該粘着剤が塗布されたカバー層シートを、記録層を形成した記録媒体表面に接着する際には、空気を巻き込んで泡を形成しないように、真空中で貼り合せるのが好ましい。
また、離型フィルム上に上記粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバー層シートを貼り合わせ、更に離型フィルムを剥離してカバー層シートと粘着剤層を一体化した後、記録媒体と貼りあわせてもよい。
塗布によってカバー層を形成する場合には、例えば、スピンコート法、ディップ法等が用いられるが、特に、ディスク状媒体に対してはスピンコート法を用いることが好ましい。塗布によるカバー層を形成する際、カバー層の材料としてはウレタン、エポキシ、アクリル系の樹脂等を用い、塗布後、紫外線、電子線、放射線を照射し、ラジカル重合若しくはカチオン重合を促進して硬化させることができる。
[II.第二実施形態]
本発明の光記録媒体の製造方法においては、光記録媒体の反りや、中間層上に形成される記録層の記録特性等を考慮し、樹脂原料層を複数の樹脂層から形成してもよい。この場合、樹脂原料層を構成する複数の樹脂層のうち、スタンパにより凹凸形状を形成される樹脂層が最外樹脂層となる。
このように樹脂原料層を複数の樹脂層から構成する場合、樹脂原料層を構成する樹脂層の数は、特に制限されない。具体的には、上記樹脂層の数は、通常10層以下、好ましくは5層以下、より好ましくは4層以下とする。一方、上記樹脂層の数は、2層以上とする。但し、生産効率の観点からは、樹脂原料層を構成する樹脂層の数は、2層以上、5層以下とすることが好ましい。生産効率の観点から特に好ましいのは、樹脂原料層を構成する樹脂層の数を、2層又は3層構造とすることである。
以下、樹脂原料層を2層の樹脂層から構成する場合について、第二実施形態を示して説明する。なお、以下の第二実施形態では、第一実施形態に対して、樹脂原料層の形成方法、及び、スタンパの載置方法を変更したものである。また、樹脂原料層104を形成する樹脂としては、第一実施形態と同様に、紫外線硬化性樹脂を用いているものとして説明を行う。
本実施形態では、基板の用意、第1記録層形成工程、及び、第1反射層形成工程は、それぞれ第一実施形態と同様にして行い、その後、樹脂原料層形成工程を行う。
図2(a),(b)は、本発明の第二実施形態が適用される光記録媒体の製造方法の樹脂原料層形成工程について説明するための模式図である。なお、図2(a),(b)において、図1(a)〜(h)と同様の部位については、図1(a)〜(h)と同様の符号を付して説明する。
本実施形態の製造方法では、樹脂原料層形成工程において、図2(a),(b)に示すように、表面に第1樹脂層104a1を形成したデータ基板111上に、最外樹脂層である第2樹脂層104a2を形成したスタンパ110を載置し、第1樹脂層104a1と第2樹脂層104a2とから紫外線硬化性樹脂原料層104a(図3参照)を形成する。つまり、第1樹脂層104a1上に、最外樹脂層である第2樹脂層104a2を形成したスタンパ110を載置することによって、紫外線硬化性樹脂原料層104a上にスタンパ110が載置された状態となる。以下、この点に関して詳しく説明する。
即ち、紫外線硬化性樹脂原料層104aを形成するためには、図2(a)に示すように、第1基板101、第1記録層102及び第1反射層103から構成されるデータ基板111上に紫外線硬化樹脂を塗布し、例えばスピンコート等により第1樹脂層104a1を形成する。なお、データ基板111の製造方法は、第一実施形態と同様である。
ここで、第1樹脂層104a1を硬化させる程度は限定されず、第2樹脂層104a2を載置する段階において、十分に硬化を完結させておいてもよく、半硬化状態であってもよい。第2樹脂層104a2を載置する段階において第1樹脂層104a1を十分に硬化を完結させておけば、第1樹脂層104a1と第2樹脂層104a2とから形成される紫外線硬化性樹脂原料層104aの厚みを制御し易く、均一な膜厚にすることができる。また、第2樹脂層104a2を載置する段階において、第1樹脂層104a1を半硬化の状態としておけば、第1樹脂層104a1と第2樹脂層104a2との界面の親和性を向上させることができる。
一方、スタンパ110上には、図2(b)に示すように、転写用凹凸形状を有している側の表面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、例えばスピンコート等により、第2樹脂層104a2を形成する。なお、スタンパ110は、第一実施形態と同様のものを用いることができる。また、本実施形態においては、この第2樹脂層104a2に凹凸形状が形成されることになるため、第2樹脂層104a2は最外樹脂層として機能することになる。
また、第2樹脂層104a2の形成方法に制限はないが、例えば、スタンパ110の表面全体に、紫外線硬化性樹脂の前駆体をスピンコート等により塗布して成膜することができる。
次いで、第1樹脂層104a1と第2樹脂層104a2とを向かい合うようにして、第2樹脂層104a2が形成されたスタンパ110を、第1樹脂層104a1が形成されたデータ基板111と貼り合わせる。このとき、紫外線硬化性樹脂原料層104aの膜厚が所定範囲になるようにするには、例えば、スピンコート時に紫外線照射を行ったり、熱をかけたりする方法等が考えられる。これにより、データ基板111の表面(即ち、第1反射層103の表面)全体に、第1樹脂層104a1と第2樹脂層104a2とからなる紫外線硬化性樹脂原料層104aが形成される。即ち、第1記録層102上に、第1反射層103を介して紫外線硬化性樹脂原料層104aが形成される。そして、上記操作によって、紫外線硬化性樹脂原料層104a上に、転写用凹凸形状を有するスタンパ110を載置した状態を得ることができる。換言すれば、第1記録層102とは反対側の紫外線硬化性樹脂原料層104aの表面にスタンパ110が載置された状態となる。
樹脂原料層硬化工程としては、第一実施形態と同様に、図3に示すように、この状態でスタンパ110を介して、スタンパ110側から紫外線を照射して樹脂原料層104aを硬化させる。なお、図3は、本発明の第二実施形態が適用される光記録媒体の製造方法の樹脂原料層硬化工程について説明するための模式図である。図3において、図1(a)〜(h)及び図2(a),(b)と同様の部位については、図1(a)〜(h)及び図2(a),(b)と同様の符号を付して説明する。
本発明の第二実施形態においても、第一実施形態と同様に、紫外線硬化性樹脂原料層104aの紫外線による硬化を完結させずに、半硬化状態までの硬化とすることも好ましい。特に、最外樹脂層である第2樹脂層104a2を、半硬化状態までの硬化とすることが好ましい。このように紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化を半硬化状態までの硬化とすることにより、スタンパ110と樹脂原料層104aとの密着力が低下するため、後述するスタンパ110の剥離を容易にすることが出来る。また、この方法によれば、スタンパ110の材質としてポリカーボネート系樹脂のような剥離が困難な材質を用いた場合であっても、良好にスタンパ110を剥離することが可能となる。
紫外線硬化性樹脂原料層104aの硬化を半硬化状態までの硬化とするためには、第一実施形態と同様に、紫外線照射の条件を調節すればよい。
以上のようにして、データ基板111、紫外線硬化性樹脂原料層104a及びスタンパ110を備えた接着体112'が得られる。なお、本実施形態の接着体112'においては、第1樹脂層104a1及び第2樹脂層104a2はいずれも半硬化状態となっているものとして説明する。
このようにして樹脂原料層104aを硬化させた後、第一実施形態と同様にして、スタンパ110を硬化性樹脂層104aから剥離する。これにより、紫外線硬化性樹脂原料層104aにスタンパ110の転写用凹凸形状が転写される(図1(d)参照)。
第二実施形態においても、スタンパ110を剥離することによって樹脂原料層104aに転写用凹凸形状を転写した後、樹脂原料層104aに表面改質処理を施す表面改質処理工程を行う(図1(e)参照)。ここで、表面改質処理の方法、条件は、前記の第一実施形態と同様にして行うことができる。これにより、第1樹脂層104a1であった層部分と第2樹脂層104a2であった層部分との両方の硬化が十分に進行し、樹脂原料層104aの硬化が完結され、中間層104が得られる。
このように、第二実施形態においても、スタンパ110を剥離して樹脂原料層104aに転写用凹凸形状を転写した後、樹脂原料層104aに表面改質処理を施すことにより、樹脂原料層104aの硬化反応を促進し硬化を完結させ、中間層104を形成することが出来る。これにより、最早、スタンパ110を剥離した状態でデータ基板111を保持した場合でも、中間層104に転写された凹凸の形状は変化することがなくなり、後述する第2記録層の記録・再生を安定化させることが出来る。
その後、第2記録層形成工程、第2反射層形成工程、及び、第2基板形成工程は、それぞれ第一実施形態と同様にして行うようにすればよい。
以上のようにすれば、第一実施形態と同様に、良好な凹凸形状を有する、欠陥の少ない中間層104を備えた光記録媒体100(図1(g)参照)を製造することができる。また、本実施形態の光記録媒体の製造方法によれば、第一実施形態と同様の利点を得ることができる。
さらに、本実施形態によれば、中間層104の形成のために、紫外線硬化性樹脂原料層104aを複数の樹脂層(第1樹脂層104a1,第2樹脂層104a2)により構成するようにした。このため、第2記録層105の記録特性を良好にしやすい材料を最外樹脂層として用いることができる、第1反射層103との密着性がよい材料をデータ基板111に接する樹脂層に用いることができる、光記録媒体の反りの改善する材料をデータ基板111に接する樹脂層に用いることができる、という利点を得ることも可能である。
[III.本発明の光記録媒体の製造方法を適用しうる光記録媒体の説明]
上記の第一及び第二実施形態では、製造対象となる光記録媒体の例として、有機色素を含む2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面2層DVD−Rを例に挙げて説明したが、本発明の光記録媒体の製造方法を適用しうる光記録媒体はこれに限られるものではない。即ち、基板と、記録層と、凹凸形状を有する中間層とを有し、記録層上に、直接又は他の層を介して、樹脂原料層を形成し、樹脂原料層上に転写用凹凸形状を有するスタンパを載置し、樹脂原料層を硬化させた後、樹脂原料層からスタンパを剥離し、樹脂原料層にスタンパの転写用凹凸形状を転写して中間層を形成する工程を含む製造方法によって製造される光記録媒体又は光記録媒体用積層体であれば本発明を適用することができ、これにより、本発明の効果が良好に発揮される。したがって、追記型のDVD−Rのみならず、再生専用のDVD−ROM、書換可能型のDVD−RW、DVD−RAM等はもちろん、短波長青色レーザを用いることによって高密度記録を可能とするHD DVD−ROM、HD DVD−R、HD DVD−RW等にも好適に用いることが出来る。更に、上記いわゆる基板面入射型の光記録媒体のみならず、Blu−ray ディスク等(BD−ROM、BD−R、BD−RE等)のいわゆる膜面入射型の光記録媒体の製造においても、本発明の製造方法を適用することが出来る。
また、例えば、本発明の光記録媒体の製造方法は、記録層を1層のみ有する光記録媒体に適用することもできる。
さらに、例えば、本発明の光記録媒体の製造方法は、記録層を3層以上有し、中間層を2層以上有する光記録媒体に適用することもできる。この場合、2層以上の中間層のそれぞれを形成するために、上記実施形態で説明した中間層の形成方法を適用することができる。
また、本発明の光記録媒体の製造方法を適用しうる光記録媒体としては、一度の記録のみ可能な追記型媒体(CD−RやDVD−RなどのWrite Once媒体)や、記録消去を繰り返し行なえる書き換え型媒体(CD−RWやDVD−RWなどのReWritable媒体)が好適であるが、再生専用媒体(CD−ROMやDVD−ROMなどのROM媒体)を排除するものではない。特に、本発明の光記録媒体の製造方法は、追記型媒体に適用した場合に、安定した記録・再生特性を発現することが出来るため好ましい。
次に、図1(h)に示された片面2層DVD−Rを中心に、片面2層の光記録媒体100を構成する各層について説明する。
〔第1基板〕
第1基板101は、光透過性を有し、複屈折率が小さい等、光学特性に優れることが望ましい。一方、膜面入射型の構成の場合には、記録・再生用のレーザ光に対して透明性や複屈折に対する制限は無い。
第1基板101を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、適度な加工性と剛性を有する樹脂、金属、ガラス等を用いることができる。樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、第1基板101を構成する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
第1基板101の厚さは、特に制限されないが、通常2mm以下、好ましくは1.2mm以下である。対物レンズと記録層との距離が小さく、また、基板が薄いほどコマ収差が小さい傾向があり、記録密度を上げやすいためである。但し、光学特性、吸湿性、成形性、形状安定性を十分得るために、通常10μm以上、好ましくは30μm以上である。また、第1基板101によって記録媒体の強度を確保することが望ましい場合は、通常、0.5mm以上である。
第1基板101は、吸湿性が小さいことが望ましい。更に、第1基板101は、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えることが望ましい。
第1基板101には、通常、凹凸形状としてトラッキング用の案内溝が形成されている。トラッキング用の案内溝は、通常、同心円状又はスパイラル状の溝として第1基板101上に設けられる。案内溝のトラックピッチは、光記録媒体の記録再生に用いるレーザ光の波長によって異なる。具体的には、CD系の光記録媒体では、トラックピッチは通常1.5μm以上、1.6μm以下である。DVD系の光記録媒体では、トラックピッチは通常0.7μm以上、0.8μm以下、である。青色レーザ用の光記録媒体では、トラックピッチは通常0.1μm以上、0.6μm以下である。
一方、溝の深さも光記録媒体の記録再生に用いるレーザ光の波長によって異なる。具体的には、CD系の光記録媒体では、溝深さは通常10nm以上、300nm以下である。
DVD系の光記録媒体では、溝深さは通常10nm以上、250nm以下である。青色レーザ用の光記録媒体では、溝深さは通常10nm以上、200nm以下である。
また、第1基板101の表面に案内溝を形成する場合、案内溝の形成方法は任意である。例えば、以下のようにして形成することができる。具体的には、第1基板101の材料として金属やガラスを用いる場合には、通常、その表面に光硬化性や熱硬化性の薄い樹脂層を設け、そこに案内溝を形成することができる。この点、第1基板101の材料として樹脂を用いれば、射出成型によって表面に案内溝を形成することができるので好ましい。
なお、第1基板101としては、一般的に、中心にセンターホールを有する環形状のものを用いる。環形状は特に制限されず、円盤形状、楕円形状、多角形等、様々な形状を考えることができる。但し、第1基板101は通常、円盤形状とする。この場合、第1基板101の直径を80mm又は120mm程度とするのが通常である。
〔第1記録層〕
第1記録層102は、通常、CD−Rや片面型DVD−R等に用いられる光記録媒体に用いる記録層に比較して、より高感度であることが望ましい。例えば、上記の実施形態に適用する場合、光記録媒体100においては、通常、第1反射層103を半透明反射膜とする。このため、入射したレーザ光109の半分は第1反射層103を透過する。この結果、第1記録層102に入射するレーザ光109のパワーは半減することになる。したがって、入射したレーザ光の約半分のパワーで第1記録層102に対する記録が行われることになるために、第1記録層102は、特に感度が高いことが望ましい。
また、第1記録層102に使用される材料は限定されず、有機物質であっても無機物質であっても良いが、350〜900nm程度の可視光〜近赤外域に最大吸収波長λmaxを有し、青色〜近マイクロ波レーザでの記録に適する化合物が好ましい。通常、CD−Rに用いられるような波長770〜830nm程度の近赤外レーザでの記録に適する化合物、DVD−Rに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザでの記録に適する化合物、あるいは、波長410nmや515nm等のいわゆる青色レーザでの記録に適する化合物等がより好ましい。
第1記録層102に使用される具体的な化合物は、特に限定されないが、例えば、有機色素材料やアモルファス半導体などが挙げられ、特に有機色素材料を含有することが好ましい。
有機色素材料としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。なお、これらの色素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
一方、アモルファス半導体材料の具体例としては、SbTe系、GeTe系、GeSbTe系、InSbTe系、AgSbTe系、AgInSbTe系、GeSb系、GeSbSn系、InGeSbTe系、InGeSbSnTe系等の材料が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度を高めるために、Sbを主成分とする組成物を用いることが好ましい。なお、これらのアモルファス半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、第1記録層102の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されない。ただし、十分な変調度を得るために、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。また、光を透過させるためには、通常3μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
また、第1記録層102の形成方法としては、特に限定されないが、通常、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている薄膜形成法が挙げられる。成膜形成法は、量産性、コスト面からはスピンコート法等の湿式成膜法が好ましい。また、均一な記録層が得られるという点から、真空蒸着法が好ましい。
〔第1反射層〕
第1反射層103は、記録再生光の吸収が小さく、光透過率が通常40%以上あり、かつ、適度な光反射率を有することが望ましい。第1反射層103の具体的な構成の例としては、反射率の高い金属を薄く設けることにより適度な透過率を持たせた層が挙げられる。さらに、第1反射層103は、ある程度の耐食性があることが望ましい。また、第1反射層103の上層(上記の実施形態では中間層104)からの他の成分の浸み出しにより第1記録層102が影響されないような遮断性を持つことが望ましい。
また、第1反射層103を構成する材料としては、特に限定されないが、再生光の波長における反射率が適度に高いものが好ましい。第1反射層103を構成する材料の例を挙げると、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、希土類金属等の金属若しくは半金属を、単独あるいは合金にして用いることが可能である。また、第1反射層103を構成する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、第1反射層103の厚さは、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、更に好ましくは20nm以下である。上記範囲とすることにより、光透過率を40%以上としやすくなる。但し、第1反射層103の厚さは、第1記録層102が第1反射層103上に存在する層により影響されないために、通常3nm以上、好ましくは5nm以上である。
また、第1反射層103を形成する方法は任意であるが、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
〔中間層〕
中間層104は、透明、且つ、溝やピットの凹凸形状が形成可能であり、また、接着力が高い樹脂から構成される。さらに、硬化接着時の収縮率が小さい樹脂を用いると、媒体の形状安定性が高く好ましい。
また、中間層104は、第一実施形態のような単層膜としてもよく、第二実施形態のような多層膜にしてもよい。
また、中間層104は、第2記録層105にダメージを与えない材料からなることが望ましい。中間層104を構成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を挙げることができる。なお、中間層104の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中間層104の材料の中でも、放射線硬化性樹脂が好ましく、その中でも、紫外線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂の採用により、スタンパの凹凸形状の転写が行いやすくなる。
紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系(ラジカル重合型の)紫外線硬化性樹脂とカチオン系(カチオン重合型の)紫外線硬化性樹脂が挙げられ、いずれも使用することができる。
ラジカル系紫外線硬化性樹脂は、例えば、紫外線硬化性化合物(ラジカル系紫外線硬化性化合物)と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。ラジカル系紫外線硬化性化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、一種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、ここで、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
また、光重合開始剤に制限はないが、例えば、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好ましい。本発明においては、ラジカル重合型のアクリル酸エステルを主体とする未硬化の紫外線硬化樹脂前駆体を用いて、これを硬化させて中間層を得ることが好ましい。
一方、カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、遊離した塩素および塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量は、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
また、カチオン重合型の光開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。
また、中間層104の材料として放射線硬化性樹脂を使用する場合、20〜40℃において液状であるものを用いることが好ましい。樹脂原料層104aの形成時に、上記放射線硬化性樹脂を用いることにより溶媒を用いることなく塗布できるので、生産性が向上するためである。また、粘度は20〜4000mPa・sとなるように調製するのが好ましい。
さらに、中間層104には、凹凸形状が螺旋状又は同心円状に設けられる。そしてこの凹凸形状が、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2記録層105に情報が記録・再生される。本発明の光記録媒体の製造方法においては、通常記録トラックとして使用される上記凹凸形状を良好に形成することができるという利点を有しているため、欠陥の少ない中間層104を有する光記録媒体100を得ることが可能である。
なお、上記の溝幅は、通常50nm以上、好ましくは100nm以上、より好ましくは120nm以上である。また、その上限は、通常800nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下である。溝深さは、通常10nm以上、好ましくは12nm以上、より好ましくは14nm以上である。また、その上限は、通常300nm以下、好ましくは270nm以下、より好ましくは250nm以下である。また、記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは、通常0.1nm以上、好ましくは0.2nm以上、より好ましくは0.3nm以上である。また、その上限は、通常2.0nm以下、好ましくは1.5nm以下、より好ましくは1.0nm以下である。
さらに、中間層104の膜厚は、正確に制御されることが好ましく、通常5μm以上、好ましくは10μm以上が望ましい。但し、通常、100μm以下、好ましくは70μm以下である。
さらに、中間層104の形成方法に制限はなく任意であるが、通常は、以下のようにして形成される。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いた中間層104は、適当な溶剤に熱可塑性樹脂等を溶解して塗布液を調製する。この塗布液を塗布し、乾燥(加熱)することによって、中間層104を形成することができる。
一方、放射線硬化性樹脂を用いた中間層104は、そのまま若しくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製する。放射線硬化性樹脂を用いた中間層104は、この塗布液を塗布し、適当な放射線を照射して硬化させることによって形成することができる。
なお、塗布方法に制限はなく、例えばスピンコート法やキャスト法等の方法が用いられる。この中でも、スピンコート法が好ましい。特に、高粘度の樹脂を用いた中間層104は、スクリーン印刷等によっても塗布形成できる。
〔第2記録層〕
第2記録層105は、前述した第1記録層102の場合と同様に、通常CD−Rや片面型DVD−R等の光記録媒体に用いる記録層より高感度であることが望ましい。また、第2記録層105は、良好な記録・再生を実現するためには低発熱で高屈折率な色素であることが望ましい。更に、第2記録層105と第2反射層106との組合せにおいて、光の反射及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。
第2記録層105を構成する材料、成膜方法等については、第1記録層102と同様とすればよい。但し、第2記録層105の製膜方法は、湿式製膜法が好ましい。
なお、第1記録層102と第2記録層105とに用いる材料は、同じでも良いし、異なっていてもよい。
第2記録層105に使用される具体的な化合物は限定されず、第1記録層102と同様の化合物が好適に使用される。
一般に、アモルファス半導体材料で構成される記録層に較べ、有機色素材料で構成される記録層の方が案内溝が深い。このため、特に第2記録層105を有機色素材料を含有する層とする場合、中間層104に形成された深い溝形状を維持したまま第2記録層105を形成することは困難になる。しかしながら、本発明においては、第2記録層として有機色素材料を含有する場合であっても、中間層104との親和性が良好であるため、中間層104上に形成された凹凸形状を記録層の凹凸として良好に反映することが出来る。従って、本発明によれば、特に第2記録層105として有機色素材料を含有する場合において、その効果は顕著である。
また、第2記録層105の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、特に好ましくは50nm以上である。但し、適度な反射率を得るために、第2記録層105の膜厚は、通常3μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
〔第2反射層〕
第2反射層106は、高反射率、かつ高耐久性であることが望ましい。
第2反射層106を構成する材料としては、再生光の波長において反射率の十分高いものが好ましい。第2反射層106を構成する材料としては、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独または合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは反射率が高く、第2反射層106の材料として適している。また、これらの金属を主成分とする以外に他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例としては、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、希土類金属などの金属若しくは半金属を挙げることができる。なお、第2反射層106を形成する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、高反射率を確保するために、第2反射層106の厚さは、通常20nm以上、好ましくは30nm以上、更に好ましくは50nm以上である。但し、記録感度を上げるためには、通常400nm以下、好ましくは300nm以下である。
さらに、第2反射層106を形成する方法に制限はないが、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
また、第2反射層106の上下に反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために、公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
〔接着層〕
接着層107は、接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと、光記録媒体100の形状安定性が高くなり、好ましい。また、接着層107は、第2反射層106にダメージを与えない材料からなることが望ましい。さらに、ダメージを抑えるために第2反射層106,接着層107の間に公知の無機系または有機系の保護層を設けることもできる。
接着層107の材料は、中間層104の材料と同様のものを用いることができる。
また、接着層107の膜厚は、通常、2μm以上、好ましくは5μm以上である。但し、光記録媒体100をできるだけ薄くするために、また、硬化に時間を要して生産性が低下する等のことを抑制するために、接着層107の膜厚は、通常、100μm以下が好ましい。
なお、接着層107としては、感圧式両面テープ等も使用可能である。感圧式両面テープを第2反射層106と第2基板108との間に挟んで押圧することにより、接着層107を形成できる。
〔第2基板〕
第2基板108は、機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。また接着層107との接着性が高いことが望ましい。
このような第2基板108の材料としては、第1基板101に用いうる材料と同様のものを用いることができる。また、上記材料としては、例えば、Alを主成分としたAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分としたMg−Zn合金等のMg合金基板、シリコン、チタン、セラミックスのいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板等を用いることもできる。また、第2基板108の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、第2基板108の材料は、成形性等の高生産性、コスト、形状安定性等の点から、ポリカーボネートが好ましい。また、第2基板108の材料は、耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、第2基板108の材料は、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。
さらに、光記録媒体100に十分な剛性を持たせるために、第2基板108はある程度厚いことが好ましく、第2基板108の厚さは、0.3mm以上が好ましい。但し、通常3mm以下、好ましくは1.5mm以下である。
〔その他の層〕
光記録媒体100は、上記の積層構造において、必要に応じて1層又は2層以上の任意の他の層を挟んでもよい。或いは、光記録媒体100の最外面に1層又は2層以上の任意の他の層を設けてもよい。更に、光記録媒体100には、必要に応じて、記録光又は再生光の入射面ではない面に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、或いは各種筆記具にて記入(印刷)が可能な印刷受容層を設けてもよい。さらに、光記録媒体100を2枚、第1基板101を外側にして貼合わせてもよい。光記録媒体100を2枚貼り合わせることにより、記録層を4層有する大容量の媒体を得ることができる。
また、本発明の光記録媒体の製造方法を、相変化型の書き換え型コンパクトディスク(CD−RW、CD−Rewritable)又は、相変化型の書き換え型DVDに適用することもできる。相変化型の光記録媒体に適用する場合における記録層等の層構成については、公知のものを適宜使用することができる。相変化型のCD−RW又は書き換え型DVDは、相変化型記録材料から構成された記録層における非晶質状態と結晶状態との屈折率差によって生じる反射率差および位相差変化を利用して記録情報信号の検出が行われる。相変化型記録材料の具体例としては、例えば、SbTe系、GeTe系、GeSbTe系、InSbTe系、AgSbTe系、AgInSbTe系、GeSb系、GeSbSn系、InGeSbTe系、InGeSbSnTe系等の材料が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度を高めるために、記録層にSbを主成分とする組成を用いることが好ましい。
また、前述の通り、本発明の光記録媒体の製造方法をBlu−ray ディスクのような膜面入射型の光記録媒体に適用することも可能である。その場合、記録レーザ光109が図1(h)の上側から照射されることになるため、記録層と反射層の積層順が逆になり、第1反射層ではなく第2反射層に適度な光反射率が要求されることになる。また、第2基板の代わりに、カバー層が形成される。
カバー層は、記録レーザ光に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、カバー層シートを接着剤で貼り合せるか、液状の材料を塗布後に光、放射線、又は熱等により硬化して形成する。カバー層は、記録レーザ光の波長λにおいて透過率70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、透過率の上限は、100%である。カバー層は、更にその入射光側表面に耐擦傷性、耐指紋付着性といった機能を付与するために、表面に厚さ0.1μm以上、50μm以下程度の層を別途設けることもできる。カバー層の厚みは、記録レーザ光の波長λや対物レンズのNA(開口数)にもよるが、通常0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、また、通常0.3mm以下、好ましくは0.15mm以下の範囲であることが望ましい。接着層やハードコート層等の厚みを含む全体の厚みが、光学的に許容される厚み範囲となるようにするのが好ましい。例えば、いわゆるBlu−ray ディスクでは、100μm±3μm程度以下に制御するのが好ましい。
[IV.本発明の光記録媒体の製造装置]
このような本実施形態の光記録媒体の製造方法は、例えば、図4に示すような光記録媒体の製造装置1により行なうことができる。即ち、この製造装置1は、第1記録層形成工程の操作を行なう第1記録層形成装置2と、第1反射層形成工程の操作を行なう第1反射層形成装置3と、樹脂原料層形成工程の操作を行なう樹脂原料層形成装置4と、樹脂原料層硬化工程の操作を行なう樹脂原料層硬化装置5と、スタンパ剥離工程の操作を行なうスタンパ剥離装置6と、樹脂原料層の表面改質処理工程の操作を行う表面改質処理装置7と、第2記録層形成工程の操作を行なう第2記録層形成装置8と、第2反射層形成工程の操作を行なう第2反射層形成装置9と、第2基板形成工程の操作を行なう第2基板形成装置10と、光記録媒体100及びその製造途中の中間品をこれらの各装置2〜10の間で前記の順に搬送する搬送装置11とを備えて構成される。
よって、この製造装置1は、基板、記録層、及び、凹凸形状を有する中間層を少なくとも備えた光記録媒体の製造装置であって、第1基板101上に、直接又は他の層を介して、第1記録層102を形成する手段としての第1記録層形成装置2と、第1記録層102上に、直接又は他の層を介して、樹脂原料層104aを形成する手段としての樹脂原料層形成装置4と、樹脂原料層104a上に、前記凹凸形状に対応した転写用凹凸形状を有するスタンパ110を載置した状態で、樹脂原料層104aを硬化させて、第1基板101、第1記録層102、樹脂原料層104a及びスタンパ110を備えた接着体107を得る手段としての樹脂原料層硬化装置5と、接着体107からスタンパ110を剥離し、樹脂原料層104aに転写用凹凸形状を転写する手段としてのスタンパ剥離装置6とを備え、かつ、転写用凹凸形状が転写された前記樹脂原料層の硬化を促進させる表面改質処理を施す手段としての表面改質処理装置7を有することにより構成される。したがって、この製造装置1により上述した光記録媒体の製造方法を実施することで、良好な凹凸形状を有する欠陥の少ない中間層を備えた光記録媒体を安価に製造することができるのに加え、上述した作用・効果を得ることができる。
ただし、上述したように、ここで例示した製造装置1は上述した光記録媒体の製造方法を実施するための製造装置の一例であり、本発明の光記録媒体の製造装置はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更して実施することができる。例えば、装置2〜11は、製造しようとする光記録媒体の構成に応じて任意に組み合わせて構成できる。また、製造装置1は、ここで挙げていない別の装置と組み合わせて構成することもできる。さらに、装置2〜11は本例のように一つの製造装置1中に組み込まれていてもよく、それぞれ別々に構成された装置2〜11が全体として製造装置1を構成するようにしてもよい。
さらには、1つの装置が、製造装置1中の異なる装置の機能を兼ね備えていてもよい。このような例としては、第1記録層形成装置2と第2記録層形成装置8、或いは、第1反射層形成装置3と第2反射層形成装置9、樹脂原料層硬化装置5と表面改質処理装置7などが挙げられる。
ここで、上記装置1は基板面入射型のデュアルレイヤタイプの片面2層DVD−Rを製造する場合の例であるが、膜面入射型のBlu−ray ディスクの場合は、第1記録層形成装置と第1反射層形成装置との載置順番、及び第2記録層形成装置と第2反射層形成装置との載置順番をそれぞれ逆にし、第2基板形成装置の代わりにカバー層形成装置を配置することにより対応可能である。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]〔HD DVD−R−DLの例〕
本実施例はHD DVD−R−DL(2層媒体)の例であるが、本発明の効果を確認するため、第1記録層および第1反射層は省略して光記録媒体を作製し、評価した。第1記録層および第1反射層を省略した場合であっても、本発明の効果がHD DVD−R−DLに適用できることは、以下の実施例により十分検証することができる。
(1)光記録媒体の作製
(1−1)スタンパの用意
ポリカーボネート(PC)を材料として、射出成形法により、内径15mmの中心孔を有する、外径120mm、厚さ0.60mmの円盤状のスタンパ(以下、PC1スタンパという場合がある。)を形成した。射出成形は、トラックピッチ0.4μm、幅0.23μm、深さ65nmの案内溝を有するニッケル製原盤を使用した。なお、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により、PC1スタンパには、ニッケル製原盤の案内溝(凹凸)が正確に転写されたことが確認された。
(1−2)第1基板の形成
ニッケルスタンパを用いてポリカーボネートを射出成形し、トラックピッチ0.4μm、幅0.23μm、深さ60nmの溝が形成された、直径120mm、厚さ0.58mmの基板(第1基板)を得た。
(1−3)中間層の形成
次に、第1基板上に、第1樹脂層を形成するための紫外線硬化性樹脂(大日本インキ社製SD6036)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約18μmの膜(第1樹脂層)を形成した。一方、PC1スタンパの案内溝が形成された面に、第2樹脂層(最外樹脂層)を形成するための所定の紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製MPZ388)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約7μmの膜(第2樹脂層)を形成した。
次に、この第1樹脂層と第2樹脂層とが対向するように、第1基板とPC1スタンパとを貼り合わせた。続いて、PC1スタンパ側から紫外線を大気雰囲気下、常温で照射(光源:ハリソン東芝社製トスキュア751)して、第1樹脂層及び第2樹脂層を硬化させて、接着体を形成した。この際の紫外線の照射量は、90mJ/cm2とした。
接着体を形成後、接着体の外周部にナイフエッジを差し込んだ後、力を加えてPC1スタンパを第2樹脂層(最外樹脂層)から剥離させた。PC1スタンパと第2樹脂層(最外樹脂層)との界面で、全面にわたりムラ無く良好な状態で剥離を行うことができた。なお、PC1スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
PC1スタンパを剥離した後、直ちに第2樹脂層の上から紫外線を照射することによって表面改質処理を行い、中間層を形成した。この際の紫外線の照射量は、350mJ/cm2とした。
(1−4)第2記録層等の形成
第一基板上に中間層を設け、表面改質処理を施したものを、25℃、相対湿度42%のクリーンブース内で12時間放置した後、該中間層の上に、含金属アゾ色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1.0重量%)を滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し、第2記録層を形成した。なお、第2記録層は、波長470nmのレーザでOD値が0.15となるように塗布条件を調整した。
続いて、第2記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、スパッタリング法により厚さ100nmの第2反射層を成膜した。
さらに、第2反射層上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートして接着層を設けた。そして、この接着層上に直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を載置して第2基板とし、紫外線を照射し硬化接着させた。
このようにして、光記録媒体を製造した。
(2)光記録媒体のPush−Pull信号の測定
上記方法で製造した光記録媒体から得られるPush−Pull信号を測定した。数値が大きいほど、記録特性が良好である。なお、Push−Pull信号は下記式で定義される。
Figure 0005108434
式中、(I1−I2ppは、(I1−I2)信号の頂点間振幅である。(I1+I2max
、(I1+I2)信号の最大値である。(I1+I2minは(I1+I2)信号の最小値であ
る。また、(I1)は、光記録媒体からの再生信号を4分割フォトディテクタにより、4
分割されたディテクタ(PD1、PD2、PD3、PD4)として受光したとき、案内溝の仮想中心に対して左側に位置するPD1及びPD2の出力の和である(I1=PD1+
PD2)。(I2)は、案内溝の仮想中心に対して右側に位置するPD3及びPD4の出
力の和である(I2=PD3+PD4)。
なお、フォーカスサーボは第2記録層にかけ、トラッキングサーボはオープンループの状態にして、光記録媒体を600rpmで回転させた。通常、光ディスクには数十ミクロンの偏心が存在するので、再生ビームは案内溝とランドとを、1回転で数十回横断することになる。(I1−I2)信号及び(I1+I2)信号は正弦波状の出力を示すことになる。
Push−Pull信号は、パルステック工業社製ODU1000を使用し、波長405nmのレーザ光を用い、再生パワー0.4mWとした。光記録媒体上の半径位置40mmで測定したPush−Pull信号の測定結果を表1に示す。
[実施例2,3及び比較例1,2]
接着体形成時の紫外線照射量および表面改質処理時の紫外線照射量を表1に示す通りとした以外は実施例1と同様にして光記録媒体を製造した。なお、何れの製造においても、PC1スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べ
とつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
得られた光記録媒体を、実施例1と同様の方法にてPush−Pull信号の測定を行った。その結果を表1に示す。
[実施例4〜6及び比較例3,4]
PC1スタンパの代わりに非晶質ポリオレフィンを用いて実施例1と同様にしてスタンパを製造した(APO1スタンパという場合がある。)。このAPO1スタンパを用い、接着体形成時の紫外線照射量および表面改質処理時の紫外線照射量を表1に示す通りとした以外は実施例1と同様にして光記録媒体を製造した。なお、何れの製造においても、APO1スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
得られた光記録媒体を、実施例1と同様の方法にてPush−Pull信号の測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0005108434
表1から、表面改質処理を行った実施例1〜3及び実施例4〜6は、表面改質処理を行わなかった比較例1,2及び比較例3,4よりも、それぞれ、Push−Pull信号の値が大きい。このことから、比較例1〜4では、第2記録層の案内溝形状がスタンパ(PC1またはAPO1)の溝形状から変化している可能性が考えられる。これに対し、実施例1〜6ではこの変化を抑制し、良好な凹凸形状を有する第2記録層が形成できていることがわかる。
このことから、本発明の製造法によれば、光による情報の記録・再生が安定した光記録媒体を得られることが推察される。
[実施例7]〔DVDR−DL(120mm媒体)の例〕
(3)光記録媒体の作製
(3−1)スタンパの用意
ポリカーボネート(PC)を材料として、射出成形法により、内径15mmの中心孔を有する、外径120mm、厚さ0.60mmの円盤状のスタンパ(以下、PC2スタンパという場合がある。)を形成した。射出成形は、トラックピッチ0.74μm、幅0.32μm、深さ175nmの案内溝を有するニッケル製原盤を使用した。なお、原子間力顕微鏡により、PC2スタンパには、ニッケル製原盤の案内溝(凹凸)が正確に転写されたことが確認された。
(3−2)第1記録層等の形成
ニッケルスタンパを用いてポリカーボネートを射出成形し、トラックピッチ0.74μm、幅0.33μm、深さ160nmの溝が形成された、直径120mm、厚さ0.57mmの基板(第1基板)を得た。
次に、含金属アゾ色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度0.9重量%)を調製し、これを基板上に滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し、第1記録層を形成した。なお、第1記録層は、波長590nmのレーザでOD値が0.53となるように塗布条件を調整した。
さらに、第1記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、厚さ17nmの半透明の第1反射層をスパッタリング法により成膜した。
(3−3)中間層の形成
次に、第1反射層上に、第1樹脂層を形成するための紫外線硬化性樹脂(大日本インキ社製SD6036)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約35μmの膜(第1樹脂層)を形成した。一方、PC2スタンパの案内溝が形成された面に、第2樹脂層(最外樹脂層)を形成するための所定の紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製MPZ388)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約13μmの膜(第2樹脂層)を形成した。
次に、この第1樹脂層と第2樹脂層とが対向するように、第1基板とPC2スタンパとを貼り合わせた。続いて、PC2スタンパ側から紫外線を常温で照射して、第1樹脂層及び第2樹脂層を硬化させて、接着体を形成した。この際の紫外線の照射量は、200mJ/cm2とした。
実施例1と同様にしてPC2スタンパを剥離した後、直ちに第2樹脂層の上から紫外線を照射することによって表面改質処理を行い、中間層を形成した。この際の紫外線の照射量は、350mJ/cm2とした。なお、PC2スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最
外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
(3−4)第2記録層等の形成
基板の上に第1記録層、第1反射層及び中間層を設け、表面改質処理を施したものを、25℃、相対湿度42%のクリーンブース内で12時間放置した後、該中間層の上に、含金属アゾ色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1.1重量%)を滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し、第2の記録層を形成した。なお、第2記録層は、波長590nmのレーザでOD値が0.59となるように塗布条件を調整した。
続いて、第2記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、スパッタリング法により厚さ120nmの第2反射層を成膜した。
さらに、第2反射層上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートして接着層を設けた。次いで、この接着層上に直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を載置して第2基板とし、紫外線を照射し硬化接着させた。
このようにして、2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。
(4)光記録媒体のPush−Pull信号の測定
上記方法で製造した光記録媒体の第2記録層から得られるPush−Pull信号を測定した。数値が大きいほど、記録特性が良好である。なお、Push−Pull信号は、パルステック工業社製ODU1000を使用し、波長650nmのレーザ光を用い、再生パワー0.7mWとした。光記録媒体上の半径位置23mm、40mm、および58mmの位置でそれぞれ測定したPush−Pull信号の測定結果を表2に示す。
(5)記録層の溝形状の測定
上記方法で製造した光記録媒体について、第2記録層形成前後における案内溝の溝深さ及び溝幅を、半径位置25mm、40mm及び55mmでそれぞれ測定した。測定は、dr.schwab社製、UMDS argus plusを用いた。第2記録層形成前については、表面改質処理後の中間層表面を測定した。第2記録層形成後については、さらに第2反射層を形成した後、第2反射層表面を測定した。その結果を表3に示す。
[実施例8,9及び比較例5,6]
接着体形成時の紫外線照射量および表面改質処理時の紫外線照射量を表2に示す通りとした以外は実施例7と同様にして2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。なお、何れの製造においても、PC2スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
得られた光記録媒体を、実施例7と同様の方法にてPush−Pull信号の測定を行った。その結果を表2に示す。また、比較例5について、実施例7と同様の方法にて第2記録層形成前後の案内溝形状の測定を行った結果を表3に示す。
[実施例10,11及び比較例7,8]
PC2スタンパの代わりに非晶質ポリオレフィンを用いて実施例7と同様にしてスタンパを製造した(APO2スタンパという場合がある。)。APO2スタンパを用い、接着体形成時の紫外線照射量および表面改質処理時の紫外線照射量を表2に通りとした以外は実施例7と同様にして2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。なお、何れの製造においても、APO2スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
得られた光記録媒体を、実施例7と同様の方法にてPush−Pull信号の測定を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005108434
Figure 0005108434
表2から、表面改質処理を行った実施例7〜9及び実施例10,11は、いずれの測定位置においても、表面改質処理を行わなかった比較例5,6及び比較例7,8よりも、それぞれ、Push−Pull信号の値が大きい。このことから、比較例5〜8では、第2記録層の案内溝形状がスタンパ(PC2またはAPO2)の溝形状から変化している可能性が考えられる。これに対し、実施例7〜11ではこの変化を抑制し、良好な凹凸形状を有する第2記録層が形成できていることがわかる。
また、表3から、表面改質処理を行った実施例7は、表面改質処理を行わなかった比較例5よりも、第2記録層形成後において溝が深いことが確認された。このことは、表2に示したPush−Pull信号の結果を裏付けるものであり、実施例7では良好な凹凸形状を有する第2記録層が形成できていることがわかる。表3中、第2記録層形成前においては、実施例7と比較例5の溝形状に差異が見られないことから、表面改質処理を行うことによって中間層と第2記録層との親和性、換言すれば濡れ性が変化し、この結果、スタンパの案内溝を反映した凹凸形状が第2記録層として形成されたものと考えられる。表面改質処理を行わない場合は、中間層に形成された案内溝が、第2記録層の形成過程で埋まってしまうことが考えられる。
このことから、本発明の製造法によれば、光による情報の記録・再生が安定した光記録媒体を得られることが確認された。
[実施例12]〔DVDR−DL(80mm媒体)の例〕
(6)光記録媒体の作製
(6−1)スタンパの用意
非晶質ポリオレフィンを材料として、射出成形法により、内径15mmの中心孔を有する、外径80mm、厚さ0.60mmの円盤状のスタンパ(以下、APO3スタンパという場合がある。)を形成した。射出成形は、トラックピッチ0.74μm、幅0.32μm、深さ175nmの案内溝を有するニッケル製原盤を使用した。なお、原子間力顕微鏡により、APO3スタンパには、ニッケル製原盤の案内溝(凹凸)が正確に転写されたことが確認された。
(6−2)第1記録層等の形成
ニッケルスタンパを用いてポリカーボネートを射出成形し、トラックピッチ0.74μm、幅0.33μm、深さ160nmの溝が形成された、直径80mm、厚さ0.57mmの基板(第1基板)を得た。
次に、含金属アゾ色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度0.9重量%)を調製し、これを基板上に滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し、第1記録層を形成した。なお、第1記録層は、波長590nmのレーザでOD値が0.53となるように塗布条件を調整した。
さらに、第1記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用い
て、厚さ17nmの半透明の第1の反射層をスパッタリング法により成膜した。
(6−3)中間層の形成
次に、第1反射層上に、第1樹脂層を形成するための紫外線硬化性樹脂(大日本インキ社製SD6036)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約35μmの膜(第1樹脂層)を形成した。一方、APO3スタンパの案内溝が形成された面に、第2樹脂層(最外樹脂層)を形成するための所定の紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製MPZ388)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約13μmの膜(第2樹脂層)を形成した。
次に、この第1樹脂層と第2樹脂層とが対向するように、第1基板とAPO3スタンパとを貼り合わせた。続いて、APO3スタンパ側から紫外線を常温で照射して、第1樹脂層及び第2樹脂層を硬化させて、接着体を形成した。この際の紫外線の照射量は、100mJ/cm2とした。
実施例1と同様にしてAPO3スタンパを剥離した後、直ちに第2樹脂層の上から紫外線を照射することによって表面改質処理を行い、中間層を形成した。この際の紫外線の照射量は、400mJ/cm2とした。なお、APO3スタンパを剥離した後に第2樹脂層
(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。
(6−4)第2記録層等の形成
基板の上に第1記録層、第1の反射層及び中間層を設け、表面改質処理を施したものを、25℃、相対湿度42%のクリーンブース内に設置した後、直ちに、該中間層の上に、含金属アゾ色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1.1重量%)を滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し、第2の記録層を形成した。なお、第2記録層は、波長590nmのレーザでOD値が0.59となるように塗布条件を調整した。
続いて、第2記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、スパッタリング法により厚さ120nmの第2の反射層を成膜した。
さらに、第2の反射層上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートして接着層を設けた。そして、この接着層上に直径80mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を載置して第2基板とし、紫外線を照射し硬化接着させた。
このようにして、2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。
(7)光記録媒体のPush−Pull信号の測定
上記方法で製造した光記録媒体の第2記録層から得られるPush−Pull信号を測定した。数値が大きいほど、記録特性が良好である。
Push−Pull信号は、パルステック工業社製ODU1000を使用し、波長650nmのレーザ光を用い、再生パワー0.7mWとした。光記録媒体上の半径位置23mm、33mm、および38mmの位置でそれぞれ測定したPush−Pull信号の測定結果を表4に示す。
(8)光記録媒体の剥離キズの確認
上記方法で製造した光記録媒体について、周方向に起こり易い溝抜けや半径方向に起こり易い剥離キズの有無を、光学顕微鏡で観察した。
[実施例13〜15及び比較例9〜12]
接着体形成時の紫外線照射量および表面改質処理時の紫外線照射量を表4に示す通りとした以外は実施例12と同様にして2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した
。なお、実施例13、14、比較例9〜11の製造においては、APO3スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、べとつきがあり、半硬化状態であることが確認された。実施例15および比較例12の製造においては、APO3スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、ほとんどべとつきは感じられなかった。
得られた光記録媒体を、実施例12と同様の方法にて、Push−Pull信号の測定及び剥離キズの確認を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0005108434
表4から、表面改質処理を行った実施例12〜15は、いずれの測定位置においても、表面改質処理を行わなかった比較例9〜12よりもPush−Pull信号の値が大きい。このことから、比較例9〜12では、第2記録層の案内溝形状がスタンパ(APO3)の溝形状から変化している可能性が考えられる。これに対し、実施例12〜15ではこの変化を抑制し、良好な凹凸形状を有する第2記録層が形成できていることがわかる。
このことから、本発明の製造法によれば、光による情報の記録・再生が安定した光記録媒体を得られることが推察される。
また、接着体形成時に多量の紫外線を照射した実施例15及び比較例12では溝抜け/剥離キズが生じているのに対し、実施例12〜14及び比較例10,11では溝抜け/剥離キズが生じていないことから、良好な案内溝(即ち、凹凸形状)を形成するためには、スタンパの剥離前においては中間層(樹脂原料層)を半硬化状態にしておくことが好ましいことが確認された。
[実施例16]〔DVDR−DL(120mm媒体)の例〕
(9)光記録媒体の作製
(9−1)スタンパの用意
スタンパとしては、実施例7で用いたPC2スタンパと同様のスタンパを用いた。このスタンパを、以下適宜、PC3スタンパという。
(9−2)第1記録層等の形成
ニッケルスタンパを用いてポリカーボネートを射出成形し、トラックピッチ0.74μm、幅0.33μm、深さ160nmの溝が形成された、直径120mm、厚さ0.57mmの基板(第1基板)を得た。
次に、含金属アゾ色素のテトラフルオロロペンタノール溶液(濃度0.9重量%)を調製し、これを基板上に滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾
燥し、第1記録層を形成した。なお、第1記録層は、波長590nmのレーザでOD値が0.53となるように塗布条件を調整した。
さらに、第1記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、厚さ17nmの半透明の第1反射層をスパッタリング法により成膜した。
(9−3)中間層の形成
次に、第1反射層上に、第1樹脂層を形成するための紫外線硬化性樹脂(大日本インキ社製SD6036)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約35μmの膜(第1樹脂層)を形成した。一方、PC3スタンパの案内溝が形成された面に、第2樹脂層(最外樹脂層)を形成するための所定の紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製MPZ388)を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約13μmの膜(第2樹脂層)を形成した。
次に、この第1樹脂層と第2樹脂層とが対向するように、第1基板とPC3スタンパとを貼り合わせた。続いて、PC3スタンパ側から紫外線を常温で照射して、第1樹脂層及び第2樹脂層を硬化させて、接着体を形成した。この際の紫外線の照射量は、240mJ/cm2とした。
実施例1と同様にしてPC3スタンパを剥離した後、直ちに100℃で30分の加熱処理による表面改質処理を行い、中間層を形成した。なお、PC3スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったところ、ほとんどべとつきは感じられなかった。
(9−4)第2記録層等の形成
基板の上に第1記録層、第1反射層及び中間層を設け、表面改質処理を施したものを、25℃、相対湿度42%のクリーンブース内で12時間放置した後、該中間層の上に、含金属アゾ色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1.1重量%)を滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し、第2記録層を形成した。なお、第2記録層は、波長590nmのレーザでOD値が0.59となるように塗布条件を調整した。
続いて、第2記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、スパッタリング法により厚さ120nmの第2反射層を成膜した。
さらに、第2反射層上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートして接着層を設けた。そして、この接着層上に直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を載置して第2基板とし、紫外線を照射し硬化接着させた。
このようにして、2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。
(10)光記録媒体のPush−Pull信号の測定
上記方法で製造した光記録媒体の第2記録層から得られるPush−Pull信号を測定した。数値が大きいほど、記録特性が良好である。
Push−Pull信号は、パルステック工業社製ODU1000を使用し、波長650nmのレーザ光を用い、再生パワー0.7mWとした。光記録媒体上の半径位置23mm、40mm、および58mmの位置でそれぞれ測定したPush−Pull信号の測定結果を表5に示す。
[実施例17及び比較例13]
接着体形成時の紫外線照射量および表面改質処理時の加熱処理条件を表5に示す通りとした以外は実施例16と同様にして2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。なお、PC3スタンパを剥離した後に第2樹脂層(最外樹脂層)の表面を指で触ったと
ころ、何れも、ほとんどべとつきは感じられなかった。
得られた光記録媒体を、実施例16と同様の方法にてPush−Pull信号の測定を行った。その結果を表5に示す。
Figure 0005108434
表5から、表面改質処理を行った実施例16および17は、いずれの測定位置においても、表面改質処理を行わなかった比較例13よりも、Push−Pull信号の値が大きい。このことから、比較例13では、第2記録層の案内溝形状がスタンパ(PC3)の溝形状から変化している可能性が考えられる。これに対し、実施例16および17ではこの変化を抑制し、良好な凹凸形状を有する第2記録層が形成できていることがわかる。
このことから、本発明の製造法によれば、光による情報の記録・再生が安定した光記録媒体を得られることが推察される。
本発明は、光記録媒体にかかる任意の分野で広く用いることができ、特に、凹凸形状を有する中間層を有する光記録媒体の製造に用いる場合に好適である。具体例としては、CD、DVD、青色レーザ対応光記録媒体等などに用いて特に好適である。
(a)〜(h)は、いずれも、本発明の第一実施形態が適用される光記録媒体の製造方法の好ましい一例を説明するための模式図である。 (a),(b)は、いずれも、本発明の第二実施形態が適用される光記録媒体の製造方法の樹脂原料層形成工程について説明するための模式図である。 本発明の第二実施形態が適用される光記録媒体の製造方法の樹脂原料層硬化工程について説明するための模式図である。 本発明の光記録媒体を製造することが出来る製造装置のブロック図である。
符号の説明
1 製造装置
2 第1記録層形成装置
3 第1反射層形成装置
4 樹脂原料層形成装置
5 樹脂原料層硬化装置
6 スタンパ剥離装置
7 表面改質処理装置
8 第2記録層形成装置
9 第2反射層形成装置
10 第2基板形成装置
11 運搬装置
100 光記録媒体
101 第1基板
102 第1記録層
103 第1反射層
104 中間層
104a 樹脂原料層(紫外線硬化性樹脂原料層)
104a1 第1樹脂層
104a2 第2樹脂層(最外樹脂層)
105 第2記録層
106 第2反射層
107 接着層
108 第2基板
109 レーザ光
110 スタンパ
111 データ基板
112,112' 接着体
113 光記録媒体用積層体

Claims (9)

  1. 凹凸形状を有する中間層を備えた光記録媒体の製造方法であって、
    基板上に、直接又は他の層を介して、照射される光により情報が記録される第1記録層を形成する工程と、
    前記第1記録層上に、直接又は他の層を介して、樹脂原料層と前記凹凸形状に対応した転写用凹凸形状を有するスタンパとをこの順に載置した状態で、前記樹脂原料層を硬化させて、前記基板、前記第1記録層、前記樹脂原料層及び前記スタンパを備えた接着体を得る工程と、
    前記樹脂原料層から前記スタンパを剥離して前記樹脂原料層に前記転写用凹凸形状を転写した後に、前記転写用凹凸形状が転写された前記樹脂原料層の硬化を促進させる表面改質処理を施して前記中間層を形成する工程と
    前記中間層上に、照射される光により情報が記録される第2記録層を形成する工程と、を有し、
    前記第2記録層が、有機色素材料を含有する
    ことを特徴とする、光記録媒体の製造方法。
  2. 前記表面改質処理が、放射線照射処理及び/又は加熱処理である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の光記録媒体の製造方法。
  3. 前記表面改質処理が、照射量50〜1000mJ/cm2の紫外線照射による
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光記録媒体の製造方法。
  4. 前記表面改質処理が、加熱温度40〜120℃の加熱処理による
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光記録媒体の製造方法。
  5. 前記接着体を得る工程における前記樹脂原料層の硬化が、半硬化状態までの硬化であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
  6. 前記スタンパが、ポリカーボネート系樹脂製である
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
  7. 前記樹脂原料層が複数の樹脂層から構成されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
  8. 前記樹脂原料層が複数の樹脂層から構成され、且つ、
    前記複数の樹脂層のうち最外樹脂層の硬化が、半硬化状態までの硬化である
    ことを特徴とする、請求項5記載の光記録媒体の製造方法。
  9. 基板、第1記録層、第2記録層、及び、凹凸形状を有する中間層を少なくとも備えた光記録媒体の製造装置であって、
    前記基板上に、直接又は他の層を介して、前記第1記録層を形成する手段と、
    前記第1記録層上に、直接又は他の層を介して、樹脂原料層を形成する手段と、
    前記樹脂原料層上に、前記凹凸形状に対応した転写用凹凸形状を有するスタンパを載置した状態で、前記樹脂原料層を硬化させて、前記基板、前記第1記録層、前記樹脂原料層及び前記スタンパを備えた接着体を得る手段と、
    前記接着体から前記スタンパを剥離し、前記樹脂原料層に前記転写用凹凸形状を転写する手段とを備え、かつ、
    前記転写用凹凸形状が転写された前記樹脂原料層の硬化を促進させる表面改質処理を施す手段と、
    前記樹脂原料層上に、有機色素原料を含有する前記第2記録層を形成する手段と、を有する
    ことを特徴とする、光記録媒体の製造装置。
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