JP2004353136A - 新聞用紙の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレスパートにおけるロールからの湿紙の剥離性を改善して、表面強度低下を軽減するようにした新聞用紙の製造方法を提供する。
【解決手段】パルプ原料を抄紙、乾燥後、表面処理剤を塗工しカレンダー装置を通じて処理する新聞用紙の製造方法において、プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給し、湿紙の表裏でエア差を減少させるようにする。供給エアは、圧力が10〜500kPa、温度が5〜150℃、絶対湿度が250g/kg(乾燥空気)以下とする。
【選択図】 なし
【解決手段】パルプ原料を抄紙、乾燥後、表面処理剤を塗工しカレンダー装置を通じて処理する新聞用紙の製造方法において、プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給し、湿紙の表裏でエア差を減少させるようにする。供給エアは、圧力が10〜500kPa、温度が5〜150℃、絶対湿度が250g/kg(乾燥空気)以下とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新聞用紙の製造方法に関し、詳しくは、抄紙プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙が容易に剥離でき、表面強度の低下を生じさせないオフセット印刷用新聞用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、新聞印刷はオフセット印刷化、カラー化、および高速化が急速に進んでいる。それに付随して印刷媒体となる新聞用紙に対しては、より一層優れたカラー印刷適性や印刷作業性を有する用紙が求められている。
【0003】
従来より、新聞用紙にはメカニカルパルプや古紙パルプ(DIP)を主体とする用紙が使用され、最近では、特にゴミ増加等の環境問題や省資源の観点から、古紙の高率配合化や低米坪化が要請されるようになってきた。
【0004】
ところで、新聞用紙の製造に使用される古紙原料には、古新聞紙を主体とし、古新聞紙以外に非塗工紙、塗工紙などの広葉樹パルプを含有するチラシ等が数多く混入している。そして、そのような古紙を新聞用紙の抄紙原料として使用した場合、古紙パルプの配合量が多くなるに従い、広葉樹パルプ特有のベッセル(導管)が抄紙された新聞紙中に多く混入するようになる。その結果、新聞用紙の表面近くに散在しているベッセルが印刷時に紙表面から剥離することで、印刷画像の白抜け(ベッセルピック)が発生し、それが基因となりブランケットパイリング等の印刷トラブルを誘発したり、印刷品質を低下させるといった難点を抱えている。
【0005】
また、オフセット印刷は刷版に湿し水と印刷インキを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行う方法であり、従来の凸版印刷方式と比べて、比較的タックの強い印刷インキを使用するために、表面強度の強い用紙が求められる。
【0006】
表面強度が弱いと、紙剥け等により用紙から遊離した繊維や填料等が紙粉となりブランケットに堆積する、所謂ブランケットパイリングの問題や、それらがインキに混入することにより、紙面の印刷面に所謂カスレ等が生じ、印刷品質の低下や印刷作業性を落とすといったトラブルが起こる。特に、前記したベッセルピックのトラブルについては、紙粉や填料などによるブランケットパイリング、印面カスレ等に比べると、印刷の開始から比較的短時間の内に発生することから、ブランケットの頻繁な洗浄等を余儀なくさせられ、印刷作業性を著しく低下させるのみならず、印刷品質の低下といった問題を抱えている。
【0007】
上記のようなオフセット印刷時の表面強度低下に伴って発生する諸々の問題を解決する方法として、従来から新聞用紙の表面に澱粉、PVA、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を塗布することが一般に行われている。そして、紙の表層近くに散在する微細繊維や填料などに比較すると、はるかに粗大なベッセルが印刷時にピッキングを起こすことなく、紙表面に留まった状態を維持するためには、表面処理剤の使用量を増やし、ベッセルの欠落防止が図られるのが一般的な処方である。
【0008】
一方、上記した如き表面処理剤の使用量が増大すると、コスト高となるだけでなく、紙表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また、印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果としてシワや断紙といった走行性トラブルを誘発する虞れがあり好ましくない。また、これらの表面処理剤のうち、澱粉やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が高いために印刷時に湿し水中に容易に溶け出し、填料とともにブランケットに堆積し易く、所謂ブランケットパイリングが惹起され易いといった難点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面処理剤の使用量を増大させることなく、良好な表面強度が維持される新聞用紙の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、古紙パルプが高率配合されたにもかかわらず、表面強度低下が極力減少せしめられた新聞用紙の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、種々検討した結果、抄紙工程プレスパートにおける平滑硬化ロールから湿紙との間にエアを供給することで、湿紙の表裏で実質的エアの圧力差がなくなり、その結果、プレスパートにおける湿紙のドライヤーパート方向への移動は良好に行えることを見出した。本発明はこれに基づいてなされたものである。
【0011】
本発明によれば、下記(1)〜(4)が提供される。
(1)パルプ原料を抄紙、乾燥後、表面処理剤を塗工しカレンダー装置を通じて処理する新聞用紙の製造方法において、プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給し、湿紙の表裏でエア差を減少させることを特徴とする新聞用紙の製造方法。
【0012】
(2)パルプ原料に占める古紙パルプ配合率が40〜100重量%であることを特徴とする上記(1)記載の新聞用紙の製造方法。
【0013】
(3)表面処理剤は澱粉を主成分とし、その塗工量が表面、裏面それぞれ0.15〜3.0g/m2の範囲であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の新聞用紙の製造方法。
【0014】
(4)供給エアは、圧力が10〜500kPa、温度が5〜150℃、絶対湿度が250g/kg(乾燥空気)以下であることを特徴とする上記(1)、(2)又は(3)記載の新聞用紙の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
新聞用紙は、各種抄紙機にて抄造されるが、原料はワイヤーパートにて脱水後紙層形成され、プレスパートにて金属ロールとフェルトまたはフェルトとフェルトな挟まれて圧搾脱水が行われる。そのプレスパートの中で、湿紙をフェルトと平滑硬質ロール(花崗岩、金属ロール等)で圧搾脱水した湿紙は、平滑硬質ロールに貼り付く。
【0017】
平滑硬質ロールに貼り付いた湿紙は、通常運転中、次ぎの工程のロール、フェルト、カンバスと平滑硬質ロールとの間で速度差を設けて湿紙を引っ張ることにより、剥がされている。このため、平滑硬質ロールから湿紙を剥がす力が大きいほど表面強度の低下が大きく、逆に湿紙を剥がす力が小さいほど表面強度の低下が小さい。
【0018】
また、平滑硬質ロールは回転しているため、平滑硬質ロールから湿紙を剥がす箇所では負圧が発生する。このため、湿紙の表裏でエア圧力差が生じ、運転速度が上昇するに伴い圧力差が増加し、平滑硬質ロールから湿紙を剥がすのに必要な力が増加する。このため、高速で新聞用紙を製造した場合、新聞社の輪転機で紙粉トラブルを発生させる原因の一つとなっていた。
【0019】
これを解消するため、本発明では通常運転中において、平滑硬質ロールから湿紙を剥がす箇所にエアを供給する設備を設けることにより、湿紙表裏のエア圧力差を低減または平滑硬質ロールと接していた面を正圧にし、抄紙機の抄速に関係なく平滑硬質ロールから湿紙を剥がす力を大幅に軽減し、後工程での多量な表面処理剤の塗工も必要なく、オフセット新聞輪転機において紙粉によるトラブルがない、インキ着肉性に優れた新聞用紙の製造が可能となる。
【0020】
原紙を構成するパルプとしては、化学パルプ(漂白あるいは未漂白のNKPやLKP等)、機械パルプ(GP、CCP、RGP、PGW、TMP等)、古紙パルプ(DIP)等が、任意の比率で混合して使用される。特に古紙パルプの比率が40〜100重量%のものが好ましく使用される。なお、抄紙に際しては、紙料中に適宜ホワイトカーボン等の非晶質シリカ系無機顔料、焼成カオリン、構造化カオリン、および二酸化チタン、さらには尿素ホルムアルデヒド樹脂等の製紙用填料を必要に応じて適宜添加することができる。さらに、紙料中には、上記填料と共に硫酸バンド、紙力増強剤、歩留まり向上剤、強化ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤等のサイズ剤、耐水化剤、紫外線防止剤等の一般に公知公用の抄紙用薬が添加され、前述した抄紙機にて抄紙される。また、表面処理剤としては澱粉を主成分とするものが望ましく、その塗工量は表面、裏面それぞれ0.15〜3.0g/m2の範囲とするのがよい。なお、本発明の場合、原紙の坪量としては特に限定されるものではないが、通常は30〜45g/m2程度の範囲である。
【0021】
平滑硬質ロールから湿紙を剥がす箇所に供与されるエアの量はプレスパート全体で同一という訳ではなく、湿紙が剥がれにくい(湿紙の表裏でエア圧力差が大きい)ところではエア量を多く、これにより湿紙の表裏でのエア圧力差がなくなり、ドライヤーパート方向への湿紙の移行は容易となる。
【0022】
エア供給設備は、エアをある範囲の温度、湿度に維持でき、圧縮空気として送出できるものであればよい。一般には、プレスパートにおける前記供給されるエアは、圧力が10〜500kPa好ましくは50〜300kPaであり、温度が5〜150℃好ましくは20〜50℃であり、絶対湿度250g/kg(乾燥空気)以下、好ましくは1〜50g/kg(乾燥空気)以下である。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。ここでの部及び%はともに重量基準である。
【0024】
(実施例1)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)10部、サーモメカニカルパルプ(TMP)10部、新聞脱墨古紙パルプ(DIP)80部の比率構成になるパルプスラリを、リファイナーで叩解してフリーネス(CSF)が120mlのパルプスラリを調製した。かくして得られたパルプスラリに固形分対比で対パルプ−ロジンエマルジョンサイズ(品名:AL120 /日本PMC社 )0.3%、硫酸バンド2.5%、および填料としてホワイトカーボンを灰分で2.5%となるように添加し、混合して紙料を調製した。次いでギャップフォーマー型抄紙機を使用して抄紙を行い、米坪43 g/m2の原紙を得た。この時のプレスパートにおいては、平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間にエア(圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気))を供給するようにし、抄速1,600m/分(リール)で抄造した
表面処理剤として、熱水で加熱溶解した酸化澱粉(商品名:MS#3800/日本食品加工社 )を前記で得た原紙の両面に、ゲートロールコータを使用して、乾燥重量が片面あたり0.4g/m2となるように塗布、乾燥した後、カレンダーパートに通じて、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は良好であった。
【0025】
(実施例2)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、圧力のみを徐々に下げ、エア圧力50kPaで硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差を大きくしなければならず、エア圧力を10kPaにした時点で、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差が比較例と同じとなった。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は悪かった。
【0026】
(実施例3)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、圧力のみを徐々に上げ、エア圧力300kPaで紙のばたつきが出だし、エア圧力を500kPaにした時点で紙切れとなった。
【0027】
(実施例4)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、温度のみを徐々に下げ、20℃で硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差を大きくしなければならず、温度が5℃にした時点では、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差が比較例以上に悪化した。
この時、毛布および湿紙の温度が50℃から43℃に低下し、プレスの搾水量測定装置(商品名:エコフロー/ガイア(株))での数値が30リットル/分低下しており、毛布の温度の低下により搾水性が悪化したと考えられる。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は非常に悪かった。
【0028】
(実施例5)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、エアの絶対湿度のみを徐々に上げ、50 g/kg(乾燥空気)で硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差を大きくしなければならず、絶対湿度を260 g/kg(乾燥空気)にした時点では、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差が比較例以上に悪化した。
この時、湿紙の濃度を下げた(水分を付ける)ことにより、平滑硬度ロールからの湿紙の剥離性を悪化したと考えられる。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は非常に悪かった。
【0029】
(比較例1)
実施例1において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアの供給を行わず、実施例1と同様の条件で用紙の製造を行なったところ、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差は、実施例1より大きかった。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は悪かった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、抄紙工程プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給することにより、ロールからの湿紙の剥離性を改善し、表面強度低下を軽減する。このような製造方法を採用することにより、紙粉によるトラブルがない、インキ着肉性に優れたオフセット印刷用新聞用紙を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は新聞用紙の製造方法に関し、詳しくは、抄紙プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙が容易に剥離でき、表面強度の低下を生じさせないオフセット印刷用新聞用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、新聞印刷はオフセット印刷化、カラー化、および高速化が急速に進んでいる。それに付随して印刷媒体となる新聞用紙に対しては、より一層優れたカラー印刷適性や印刷作業性を有する用紙が求められている。
【0003】
従来より、新聞用紙にはメカニカルパルプや古紙パルプ(DIP)を主体とする用紙が使用され、最近では、特にゴミ増加等の環境問題や省資源の観点から、古紙の高率配合化や低米坪化が要請されるようになってきた。
【0004】
ところで、新聞用紙の製造に使用される古紙原料には、古新聞紙を主体とし、古新聞紙以外に非塗工紙、塗工紙などの広葉樹パルプを含有するチラシ等が数多く混入している。そして、そのような古紙を新聞用紙の抄紙原料として使用した場合、古紙パルプの配合量が多くなるに従い、広葉樹パルプ特有のベッセル(導管)が抄紙された新聞紙中に多く混入するようになる。その結果、新聞用紙の表面近くに散在しているベッセルが印刷時に紙表面から剥離することで、印刷画像の白抜け(ベッセルピック)が発生し、それが基因となりブランケットパイリング等の印刷トラブルを誘発したり、印刷品質を低下させるといった難点を抱えている。
【0005】
また、オフセット印刷は刷版に湿し水と印刷インキを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行う方法であり、従来の凸版印刷方式と比べて、比較的タックの強い印刷インキを使用するために、表面強度の強い用紙が求められる。
【0006】
表面強度が弱いと、紙剥け等により用紙から遊離した繊維や填料等が紙粉となりブランケットに堆積する、所謂ブランケットパイリングの問題や、それらがインキに混入することにより、紙面の印刷面に所謂カスレ等が生じ、印刷品質の低下や印刷作業性を落とすといったトラブルが起こる。特に、前記したベッセルピックのトラブルについては、紙粉や填料などによるブランケットパイリング、印面カスレ等に比べると、印刷の開始から比較的短時間の内に発生することから、ブランケットの頻繁な洗浄等を余儀なくさせられ、印刷作業性を著しく低下させるのみならず、印刷品質の低下といった問題を抱えている。
【0007】
上記のようなオフセット印刷時の表面強度低下に伴って発生する諸々の問題を解決する方法として、従来から新聞用紙の表面に澱粉、PVA、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を塗布することが一般に行われている。そして、紙の表層近くに散在する微細繊維や填料などに比較すると、はるかに粗大なベッセルが印刷時にピッキングを起こすことなく、紙表面に留まった状態を維持するためには、表面処理剤の使用量を増やし、ベッセルの欠落防止が図られるのが一般的な処方である。
【0008】
一方、上記した如き表面処理剤の使用量が増大すると、コスト高となるだけでなく、紙表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また、印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果としてシワや断紙といった走行性トラブルを誘発する虞れがあり好ましくない。また、これらの表面処理剤のうち、澱粉やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が高いために印刷時に湿し水中に容易に溶け出し、填料とともにブランケットに堆積し易く、所謂ブランケットパイリングが惹起され易いといった難点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面処理剤の使用量を増大させることなく、良好な表面強度が維持される新聞用紙の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、古紙パルプが高率配合されたにもかかわらず、表面強度低下が極力減少せしめられた新聞用紙の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、種々検討した結果、抄紙工程プレスパートにおける平滑硬化ロールから湿紙との間にエアを供給することで、湿紙の表裏で実質的エアの圧力差がなくなり、その結果、プレスパートにおける湿紙のドライヤーパート方向への移動は良好に行えることを見出した。本発明はこれに基づいてなされたものである。
【0011】
本発明によれば、下記(1)〜(4)が提供される。
(1)パルプ原料を抄紙、乾燥後、表面処理剤を塗工しカレンダー装置を通じて処理する新聞用紙の製造方法において、プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給し、湿紙の表裏でエア差を減少させることを特徴とする新聞用紙の製造方法。
【0012】
(2)パルプ原料に占める古紙パルプ配合率が40〜100重量%であることを特徴とする上記(1)記載の新聞用紙の製造方法。
【0013】
(3)表面処理剤は澱粉を主成分とし、その塗工量が表面、裏面それぞれ0.15〜3.0g/m2の範囲であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の新聞用紙の製造方法。
【0014】
(4)供給エアは、圧力が10〜500kPa、温度が5〜150℃、絶対湿度が250g/kg(乾燥空気)以下であることを特徴とする上記(1)、(2)又は(3)記載の新聞用紙の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
新聞用紙は、各種抄紙機にて抄造されるが、原料はワイヤーパートにて脱水後紙層形成され、プレスパートにて金属ロールとフェルトまたはフェルトとフェルトな挟まれて圧搾脱水が行われる。そのプレスパートの中で、湿紙をフェルトと平滑硬質ロール(花崗岩、金属ロール等)で圧搾脱水した湿紙は、平滑硬質ロールに貼り付く。
【0017】
平滑硬質ロールに貼り付いた湿紙は、通常運転中、次ぎの工程のロール、フェルト、カンバスと平滑硬質ロールとの間で速度差を設けて湿紙を引っ張ることにより、剥がされている。このため、平滑硬質ロールから湿紙を剥がす力が大きいほど表面強度の低下が大きく、逆に湿紙を剥がす力が小さいほど表面強度の低下が小さい。
【0018】
また、平滑硬質ロールは回転しているため、平滑硬質ロールから湿紙を剥がす箇所では負圧が発生する。このため、湿紙の表裏でエア圧力差が生じ、運転速度が上昇するに伴い圧力差が増加し、平滑硬質ロールから湿紙を剥がすのに必要な力が増加する。このため、高速で新聞用紙を製造した場合、新聞社の輪転機で紙粉トラブルを発生させる原因の一つとなっていた。
【0019】
これを解消するため、本発明では通常運転中において、平滑硬質ロールから湿紙を剥がす箇所にエアを供給する設備を設けることにより、湿紙表裏のエア圧力差を低減または平滑硬質ロールと接していた面を正圧にし、抄紙機の抄速に関係なく平滑硬質ロールから湿紙を剥がす力を大幅に軽減し、後工程での多量な表面処理剤の塗工も必要なく、オフセット新聞輪転機において紙粉によるトラブルがない、インキ着肉性に優れた新聞用紙の製造が可能となる。
【0020】
原紙を構成するパルプとしては、化学パルプ(漂白あるいは未漂白のNKPやLKP等)、機械パルプ(GP、CCP、RGP、PGW、TMP等)、古紙パルプ(DIP)等が、任意の比率で混合して使用される。特に古紙パルプの比率が40〜100重量%のものが好ましく使用される。なお、抄紙に際しては、紙料中に適宜ホワイトカーボン等の非晶質シリカ系無機顔料、焼成カオリン、構造化カオリン、および二酸化チタン、さらには尿素ホルムアルデヒド樹脂等の製紙用填料を必要に応じて適宜添加することができる。さらに、紙料中には、上記填料と共に硫酸バンド、紙力増強剤、歩留まり向上剤、強化ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤等のサイズ剤、耐水化剤、紫外線防止剤等の一般に公知公用の抄紙用薬が添加され、前述した抄紙機にて抄紙される。また、表面処理剤としては澱粉を主成分とするものが望ましく、その塗工量は表面、裏面それぞれ0.15〜3.0g/m2の範囲とするのがよい。なお、本発明の場合、原紙の坪量としては特に限定されるものではないが、通常は30〜45g/m2程度の範囲である。
【0021】
平滑硬質ロールから湿紙を剥がす箇所に供与されるエアの量はプレスパート全体で同一という訳ではなく、湿紙が剥がれにくい(湿紙の表裏でエア圧力差が大きい)ところではエア量を多く、これにより湿紙の表裏でのエア圧力差がなくなり、ドライヤーパート方向への湿紙の移行は容易となる。
【0022】
エア供給設備は、エアをある範囲の温度、湿度に維持でき、圧縮空気として送出できるものであればよい。一般には、プレスパートにおける前記供給されるエアは、圧力が10〜500kPa好ましくは50〜300kPaであり、温度が5〜150℃好ましくは20〜50℃であり、絶対湿度250g/kg(乾燥空気)以下、好ましくは1〜50g/kg(乾燥空気)以下である。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。ここでの部及び%はともに重量基準である。
【0024】
(実施例1)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)10部、サーモメカニカルパルプ(TMP)10部、新聞脱墨古紙パルプ(DIP)80部の比率構成になるパルプスラリを、リファイナーで叩解してフリーネス(CSF)が120mlのパルプスラリを調製した。かくして得られたパルプスラリに固形分対比で対パルプ−ロジンエマルジョンサイズ(品名:AL120 /日本PMC社 )0.3%、硫酸バンド2.5%、および填料としてホワイトカーボンを灰分で2.5%となるように添加し、混合して紙料を調製した。次いでギャップフォーマー型抄紙機を使用して抄紙を行い、米坪43 g/m2の原紙を得た。この時のプレスパートにおいては、平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間にエア(圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気))を供給するようにし、抄速1,600m/分(リール)で抄造した
表面処理剤として、熱水で加熱溶解した酸化澱粉(商品名:MS#3800/日本食品加工社 )を前記で得た原紙の両面に、ゲートロールコータを使用して、乾燥重量が片面あたり0.4g/m2となるように塗布、乾燥した後、カレンダーパートに通じて、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は良好であった。
【0025】
(実施例2)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、圧力のみを徐々に下げ、エア圧力50kPaで硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差を大きくしなければならず、エア圧力を10kPaにした時点で、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差が比較例と同じとなった。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は悪かった。
【0026】
(実施例3)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、圧力のみを徐々に上げ、エア圧力300kPaで紙のばたつきが出だし、エア圧力を500kPaにした時点で紙切れとなった。
【0027】
(実施例4)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、温度のみを徐々に下げ、20℃で硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差を大きくしなければならず、温度が5℃にした時点では、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差が比較例以上に悪化した。
この時、毛布および湿紙の温度が50℃から43℃に低下し、プレスの搾水量測定装置(商品名:エコフロー/ガイア(株))での数値が30リットル/分低下しており、毛布の温度の低下により搾水性が悪化したと考えられる。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は非常に悪かった。
【0028】
(実施例5)
実施例1の用紙製造において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアを圧力:200kPa、温度:25℃、絶対湿度:20g/kg(乾燥空気)から、エアの絶対湿度のみを徐々に上げ、50 g/kg(乾燥空気)で硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差を大きくしなければならず、絶対湿度を260 g/kg(乾燥空気)にした時点では、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差が比較例以上に悪化した。
この時、湿紙の濃度を下げた(水分を付ける)ことにより、平滑硬度ロールからの湿紙の剥離性を悪化したと考えられる。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は非常に悪かった。
【0029】
(比較例1)
実施例1において、プレスパートでの平滑硬度ロールから湿紙を剥離する空間に供給するエアの供給を行わず、実施例1と同様の条件で用紙の製造を行なったところ、硬質ロールから湿紙が剥離する位置を一定とするための硬質ロールからドライヤー間の速度差は、実施例1より大きかった。
この新聞用紙を印刷適性試験機(商品名:RI−2型印刷適性試験機/石川島産業機械(株))で、印面評価を行った結果は悪かった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、抄紙工程プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給することにより、ロールからの湿紙の剥離性を改善し、表面強度低下を軽減する。このような製造方法を採用することにより、紙粉によるトラブルがない、インキ着肉性に優れたオフセット印刷用新聞用紙を得ることができる。
Claims (4)
- パルプ原料を抄紙、乾燥後、表面処理剤を塗工しカレンダー装置を通じて処理する新聞用紙の製造方法において、プレスパートにおける平滑硬質ロールから湿紙を剥離する空間にエアを供給し、湿紙の表裏でエア圧力差を減少させることを特徴とする新聞用紙の製造方法。
- パルプ原料に占める古紙パルプ配合率が40〜100重量%であることを特徴とする請求項1記載の新聞用紙の製造方法。
- 表面処理剤は澱粉を主成分とし、その塗工量が表面、裏面それぞれ0.15〜3.0g/m2の範囲であることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の新聞用紙の製造方法。
- 供給エアは、圧力が10〜500kPa、温度が5〜150℃、絶対湿度が250g/kg(乾燥空気)以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の新聞用紙の製造方法。
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