JP2004352930A - 液晶組成物および液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用なネマティック液晶組成物および、これを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、電卓のディスプレイとして登場して以来、コンピューターの開発と歩みを同じくして、TN−LCD(捩れネマティック液晶表示装置)から、STN−LCDへと表示容量の拡大に対応してきた。STN−LCDは、シェファー(Scheffer)等[SID ’85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID ’86 Digest, 122頁(1986)]によって開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューターなどの高情報処理用の表示に広く普及されてきた。しかし最近ではTFT−LCDの台頭によってSTN−LCDは携帯電話やPDA、車載用途を中心とした中小型LCDへの使用が一般的となってきている。またSTN−LCDについては低コストを実現するために、動作電圧の温度補償回路を組み込まない設計や簡易的な補償のみの対応が一般的となり、液晶に対する温度特性の改善要求が強まっている。中でも携帯電話を中心とした携帯用端末 (Personal Digital Assistance)ではコントラストを損なわず高速応答化を実現し、より広い温度域で良好な表示特性を得ることが要求されている。この様な液晶材料としては、ネマティック液晶の立ち上がり特性の急峻性を維持し、低粘性かつ広い温度範囲に対して一定値を保持することや、あるいは種々の時分割に対応した周波数範囲で駆動電圧が変動しないことが要求されている。
【0003】
周囲の温度変化によるLCD表示品位低下の原因の一つに、捩れピッチの温度変化による動作電圧の変化がある。ピッチの動作電圧を広い温度範囲で一定に保つ方法としては、捩れピッチの温度依存性が異なる2種類のカイラル剤によって捩れピッチの温度依存性をコントロールする方法などが知られているが(特許文献1参照)、カイラル剤を2種類使用することによるコスト増や添加量増大による粘性増加、応答速度の悪化などの問題があった。一方、カイラル剤の代表的なものとしてコレステロール誘導体のコレステリルノナネートが知られているが(特許文献2参照)動作電圧の温度依存性についてはより改善が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−2893号公報
【特許文献2】
特開平9−302346号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、急峻性−レスポンスの関係に代表される液晶表示素子の表示特性を悪化させることなく、動作電圧の温度依存性を改善した液晶組成物を提供すること、また、この液晶組成物を使用した液晶表示素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、種々のカイラル添加剤を検討した結果、酢酸コレステロールをピッチ調整剤として使用することで、液晶表示素子の表示特性を悪化させることなく、動作電圧の温度依存性を改善させることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下に記載のネマティック液晶を提供する。
一般式(I)
【化8】
【0008】
で表される化合物を1種または2種以上含有し、一般式(II)
【化9】
(一般式(I)および一般式(II)において、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基または炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表し、A、B、C、DおよびEはそれぞれ独立的に1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、3−メチル−1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、フルオレン−2,7−ジイル基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、トランス−1,3ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基またはピリダジン−2,5−ジイル基を表し、これら環は更に1から3のフッ素原子により置換されていてもよくl、およびmはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表しZ1、Z2、Z3、およびZ4はそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−COO−、−C≡C−または−CH=N−N=CH−を表し、X2はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子または3,3,3−トリフルオロエトキシ基を表し、X1およびX3は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。)で表される化合物を1種または2種以上含有し、一般式(I)および一般式(II)で表される化合物の総数が少なくとも5種以上であり、さらに式(III)
【0009】
【化10】
で表される化合物を含有することを特徴とする液晶組成物。また当該液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に置いて、R1、R2およびR3はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基または3〜6のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基がより好ましく、アルケニル基としては以下の構造が好ましい。
【化11】
Z1、Z2、Z3およびZ4はそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−COO−、−C≡C−または−CH=N−N=CH−を表すが単結合、−COO−、−C≡C−または−CH=N−N=CH−が特に好ましい。
【0011】
X2はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子または3,3,3−トリフルオロエトキシ基を表すがシアノ基、フッ素原子がより好ましく、シアノ基が特に好ましい。
X1およびX3は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表すが水素原子またはフッ素原子が好ましい。
【0012】
一般式(I)で表される化合物は具体的には以下の一般式(I−1)〜(I−24)
【化12】
【0013】
【化13】
【0014】
(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8アルコキシル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基または炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる化合物が好ましく、一般式(I−1)、一般式(I−3)、一般式(I−4)、一般式(I−8)、一般式(I−10)、一般式(I−11)、一般式(I−13)、一般式(I−14)および一般式(I−22)で表される化合物がさらに好ましく、一般式(I−1)、一般式(I−3)、一般式(I−4)、一般式(I−10)、一般式(I−11)、一般式(I−13)、一般式(I−14)および一般式(I−22)で表される化合物が特に好ましい。
【0015】
一般式(II)で表される化合物は具体的には以下の一般式(II−1)〜(II−30)
【化14】
【0016】
【化15】
【0017】
(式中、R4は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8アルコキシル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基または炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる化合物が好ましく、一般式(II−1)、一般式(II−2)、一般式(II−4)、一般式(II−5)、一般式(II−7)、一般式(II−9)、一般式(II−12)、一般式(II−14)、一般式(II−17)、一般式(II−21)、一般式(II−22)および一般式(II−23)で表される化合物がさらに好ましく、一般式(II−9)、一般式(II−12)、一般式(II−21)、一般式(II−22)および一般式(II−23)で表される化合物が特に好ましい。
【0018】
動作電圧、屈折率異方性、液晶相転移温度などを調整したホスト液晶が、動作電圧を一定に保ちながらより高いコントラストと高速応答を実現する上で、これら選択された好ましい化合物を適切な割合で含有することが好ましい。
【0019】
一般式(I)および一般式(II)で表される化合物の総数は5種類以上であるが、5〜20種類が好ましく、7〜20種類がより好ましく、9〜20種類が特に好ましい。
【0020】
式(III)で表される化合物の含有量は、180°〜250°ツイストのSTNセルにおいてd/Pが0.2〜0.8の範囲となるような含有量が好ましく、d/Pが0.3〜0.7が好ましく、0.4〜0.6がさらに好ましい。尚、dはセル厚(μm)を表し、Pは液晶の固有らせんピッチ長(μm)を表す。式(III)で表される化合物の含有量は一般的には0.05〜5%含有することが好ましい。
【0021】
d/Pが0.2〜0.8の範囲となるような含有量において低次元ドメインおよびストライプドメインの発生を抑えることができる。
【0022】
具体的には、一般式(I)で表される化合物を5〜94%含有し、一般式(II)で表される化合物を5〜94%含有し、式(III)で表される化合物を0.05〜5%含有することが好ましく、一般式(I)で表される化合物を10〜90%含有し、一般式(II)で表される化合物を9〜70%含有し、式(III)で表される化合物を0.05〜5%含有することがさらに好ましく、一般式(I)で表される化合物を20〜85%含有し、一般式(II)で表される化合物を14〜60%含有し、式(III)で表される化合物を0.05〜5%含有することが特に好ましい。
【0023】
本発明の液晶組成物は、液晶相転移温度は70〜150℃が好ましく、80〜130℃が特に好ましい。また複屈折率Δnは0.08〜0.22が好ましく、0.09〜0.20が特に好ましい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例および比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0025】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
Tni :ネマティック相―等方性液体相転移温度(℃)
Vth :セル厚5.7μmの240°STN−LCDに注入した時のしきい値電圧(V)
γ :1KHzにおけるV90/V10(Vth)
τ :セル厚5.7μmの240°STN−LCDに注入した時の応答速度(ms)
Δn :複屈折率
STN−LCD表示素子の作製は以下のように行った。ネマティック液晶組成物にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調整し、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成したツイスト角240度のSTN−LCD表示用セルに注入した。なお、カイラル物質はカイラル物質の添加による混合液晶の固有らせんピッチPと表示用セルのセル厚dが、Δn・d=0.85、d/p=0.50となるように添加した。
【0026】
化合物記載に下記の略号を使用する.
側鎖
−n(数字) :CnH2n+1 (アルキル側鎖は数字、代表するときはRとする。)
−On :−O CnH2n+1
−ndm :−(CnH2n+1−CH=CH−(CH2)m − 1)
ndm− :CnH2n+1−CH=CH−(CH2)m − 1−
−nOm :−(CH2)nOCmH2m+1
nOm− :(CH2)nOCmH2m+1−
−Od(m)n :−O(CnH2n+1−CH=CH−(CH2)m − 2)
Od(m)n− :O(CnH2n+1−CH=CH−(CH2)m − 2)−
連結基
−VO− : −COO−
−T− : −C≡C−
置換基
−CN :−C≡N −F :−F −OCFFF :−OCF3
環
Ph : 1,4フェニレン基
Ph1 : 3−フルオロ−1,4−フェニレン基
Ph2 : 3,5ジフルオロ1,4フェニレン基
Cy : 1,4シクロヘキシレン基
【0027】
(実施例1、比較例1および2)
ネマティック液晶組成物 M1
【化16】
を調整しピッチ12.4μmにカイラル剤を添加したときの電気光学特性を表1に示す。
【0028】
カイラル剤は本願発明を構成する式(III)で表される化合物以外に比較例として、コレステリルノナネート(DCH−01)および以下の式で表される
【化17】
製品名S−811を用いて同様にして組成物を調整した。
【0029】
【表1】
表1に示すように、実施例1の液晶組成物は、汎用されているカイラル剤S−811を使用した比較例2の液晶組成物およびコレステリルノナエイト(DCH−01)を使用した比較例3の液晶組成物と比較し、25℃での動作電圧基準に見た場合の低温側および高温側の動作電圧の温度シフトが改善された。
【0030】
(実施例2、比較例3および4)
表2の組成比の液晶組成物M2を調整し実施例1と同様にして液晶組成物を調整した。
【表2】
【0031】
M2にカイラル剤をピッチが11.7μmになるように添加したときの電気光学特性を表3に示す。
【表3】
実施例2の液晶組成物も又、比較例よりしきい値電圧の温度依存性に優れることが解る。
【0032】
【発明の効果】
本発明により応答速度、急峻性を大きく悪化させることなく閾値電圧の温度依存性を改善することができる液晶組成物を提供することが可能となった。またこの液晶組成物を液晶表示素子として用いた場合、広い温度範囲で高いコントラストを維持できた。この液晶ディスプレイはTNおよびSTN−LCDとして非常に実用的である。
Claims (6)
- 一般式(I)
- 式(III)で表される化合物を0.05〜5%含有する請求項1または2記載の液晶組成物。
- 一般式(I)で表される化合物を5〜94%含有し、一般式(II)で表される化合物を5〜94%含有し、式(III)で表される化合物を0.05〜5%含有する請求項1記載の液晶組成物。
- ネマティック相―等方性液体相転移温度が60〜160℃で複屈折率Δnが0.07〜0.25であり、セル厚d(μm)と液晶の固有らせんピッチ長P(μm)の比がd/p=0.2〜0.8である請求項1〜4記載の液晶組成物。
- 請求項1〜5記載の液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子。
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JPN6009045577, H. Kozawaguchi et al., ""Helical Twisting Power in Cholesteric Liquid Crystal Mixtures. I. Experimental Results"", Japanese Journal of Applied Physics, 1975, Vol.14, No.5, p.651−655 * |
JPN6009047516, M. Hibert et al., ""Helical Twisting Powers of Steroidal Molecules in Aromatic Nematic Liquid Crystals"", Molecular Crystals and Liquid Crystals, 1981, Vol.64, No.7−8, p.211−216 * |
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