JP2004352793A - ポリアミド系エラストマー - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明のポリアミド系エラストマーは、耐屈曲疲労性、耐加水分解性などに優れたポリアミド系エラストマーに関し、特にポリアミドをハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミド系エラストマーに関する。さらに詳しくは、脂肪族ポリアミドをハードセグメント、ABA型トリブロックポリエーテルをソフトセグメントとする耐屈曲疲労性、耐加水分解性などに優れた脂肪族ポリアミド系エラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド系エラストマーとして、脂肪族ポリアミドをハードセグメント、脂肪族ポリエーテルをソフトセグメントとし、脂肪族ジカルボン酸を鎖延長剤とするコポリマーが開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、両末端にカルボキシル基又はアミノ基を有するポリアミド又はそれらのオリゴマーと両末端にアミノ基又はカルボキシル基を有するポリエーテル又はそれらのオリゴマーとを溶融状態で重合させて得られるポリエーテルアミドブロックポリマーの製造法が開示されている。
特許文献2には、特定のポリエーテルブロックを有するジアミンをソフトセグメントとし、これとほぼ当量のジカルボン酸及びハードセグメントを形成するポリアミド形成性化合物との重合によって得られるポリエーテルアミドの製法が開示されている。
特許文献3には、ポリアミド形成性モノマーと炭素数14〜48の脂肪族ジカルボン酸との重縮合によって得られる両末端にカルボキシル基を有するポリアミド、及び特定の末端アミノポリオキシアルキレンを重縮合させることを特徴とするブロックポリエーテルアミドの製法が開示されている。
特許文献4には、熱溶融接着剤として有用なポリアミドとして、6〜12個の炭素原子を含有するアルカンジカルボン酸及び非置換又はC1−C4アルキル置換ベンゼンジカルボン酸から選択される二塩基酸、ポリ(オキシテトラメチレン)ジアミン及び内部に2級アミノ基、末端に1級アミンを含有するポリ(オキシテトラメチレン)オリゴマーから得られるポリエーテルアミドが開示されている。
【0004】
特許文献5及び特許文献6には、ポリエーテルアミドが開示されている。
特許文献7及び特許文献8には、エチレンオキシドを含むポリエーテル構造含むポリエーテルアミドが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭45−7559号公報
【特許文献2】特公昭62−50495号公報
【特許文献3】特公平2−48021号公報
【特許文献4】特許第3199797号
【特許文献5】特開平3−237131号公報
【特許文献6】特開平4−91128号公報
【特許文献7】特開平9−118750号公報
【特許文献8】特開2000−7780号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ポリエーテルアミドにはポリエーテルとして両末端にアミノ基又はカルボキシル基を有するポリオキシエチレン、両末端にアミノ基を有するポリオキシプロピレン及びポリオキシテトラメチレンが用いられている。ポリエーテルとして、両末端にアミノ基又はカルボキシル基を有するポリオキシエチレンを用いた場合には、吸湿性及び帯電防止性などが向上したポリエーテルアミドが、ポリエーテルとして、両末端にアミノ基を有するポリオキシプロピレンを用いた場合には、柔軟性、透明性、耐水性、可とう性、ゴム弾性などに優れたポリエーテルアミドが、ポリエーテルとして両末端にアミノ基を有するポリオキシテトラメチレンを用いた場合には柔軟性、反ぱつ弾性、耐衝撃性、切り欠き靭性などに優れたポリエーテルアミドが得られる。しかしながら、それぞれのポリエーテルアミドの特性は、一長一短があり、エラストマーとしてバランスの優れた物が望まれている。
【0007】
本発明は、熱可塑性エラストマーの実用的な材料物性として重要な耐屈曲疲労性に優れ、かつ耐加水分解性に優れるポリアミド系エラストマーを提供することを目的とする。特に、本発明は、耐屈曲疲労性及び耐加水分解性に優れる脂肪族系のポリアミド系エラストマーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、強靭性、耐屈曲疲労性、反ぱつ弾性、耐加水分解性などに優れた新規なポリアミド系エラストマーとして、特定のABA型トリブロックポリエーテルをソフトセグメントとするポリエーテルアミドを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、下記ポリエーテルアミドエラストマー(X)を含み、
硬度(ショアD)が20〜70の範囲であり、
下記式(1)で算出する80℃熱水に2000時間浸漬した後の引張破断伸び保持率が90%以上であることを特徴とするポリアミド系エラストマー。
【数3】
・ポリエーテルアミドエラストマー(X):
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)を重合して得られる重合体である。
【化4】
(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
【0010】
本発明の好ましい態様を次に挙げる。
1:ポリアミド系エラストマーの伸長回復率(%)と硬度(ショアD)が、式(2)の関係であること。
【数4】
2:ポリアミド系エラストマーが、ポリエーテルアミドエラストマー(X)50重量%以上を含むこと。
3:ポリアミド系エラストマーが、脂肪族ポリアミド系エラストマーである。
【0011】
4:ジカルボン酸化合物(C)が、下記式(2)で表される。
【化5】
(但し、R1は炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
5:ポリアミド形成性モノマー(B)が、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むもの。
6:ポリアミド形成性モノマー(B)が、式(3)及び/又は式(4)で表される。
【化6】
(但し、R2は炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【化7】
(但し、R3は炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
7:ジカルボン酸化合物(C)が、脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は脂環族ジカルボン酸化合物である。
8:式(2)のmが1で、R1が炭素原子数1〜20のアルキレン基を含む。
9:式(3)のR2が、炭素原子数2〜20のアルキレン基を含む。
10:式(4)のR3が、炭素原子数3〜20のアルキレン基を含む。
11:ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、式(1)の単位を15〜80重量%含む。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミド系エラストマーは、硬度(ショアD)が、20〜70の範囲で、好ましくは25〜70の範囲で、さらに好ましくは30〜70の範囲で、より好ましくは35〜70の範囲で、特に好ましくは35〜65の範囲である。
【0013】
本発明のポリアミド系エラストマーは、伸長回復率(%)と硬度(ショアD)とが、式(2)の関係を有することが好ましい。
【数5】
【0014】
本発明のポリアミド系エラストマーは、下記式(1)で算出する80℃熱水に2000時間浸漬した後の引張破断伸び保持率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは100%以上である。
【数6】
【0015】
本発明のポリアミド系エラストマーは、下記ポリエーテルアミドエラストマー(X)を含むポリアミド系エラストマーである。
・ポリエーテルアミドエラストマー(X):
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)を重合して得られる重合体である。
【化8】
(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
【0016】
式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)において、x及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12であり、
yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましくは8〜30である。
【0017】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)に含まれる末端のカルボン酸及び/又はカルボキシル基と、末端のアミノ基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0018】
特にポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ポリアミド形成性モノマー(B)の一方の末端がアミノ基で、他方の末端がカルボン酸及び/又はカルボキシル基の場合、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)のアミノ基と、ジカルボン酸化合物(C)のカルボン酸及び/又はカルボキシル基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0019】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)は、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端に、プロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることが出来る。
【0020】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)において、式(1)のx及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12であり、
yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましくは8〜30である。
【0021】
ポリアミド形成性モノマー(B)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むものを使用できる。
特に、ポリアミド形成性モノマー(B)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、或いは脂環族からなるものが好ましい。
【0022】
アミノカルボン酸化合物は、アミノ基と、カルボン酸或いはカルボキシル基を有する化合物を用いることが出来る。アミノカルボン酸化合物は、ω−アミノカルボン酸化合物が好ましく、さらに、式(3)で表される化合物が好ましい。
【0023】
式(3)で表される化合物において、
R2は、炭素原子数2〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0024】
アミノカルボン酸化合物の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のような炭素原子数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることが出来る。
【0025】
ラクタム化合物は、式(4)で表される化合物などを用いることが出来る。
式(4)で表される化合物において、R3は、炭素原子数3〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0026】
ラクタム化合物の具体例としては、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタムのような炭素原子数5〜20の脂肪族ラクタム化合物などを挙げることが出来る。
【0027】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミン、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物などを挙げることが出来、
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることが出来る。
特にジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、脂肪族ジアミン化合物と脂肪族カルボン酸化合物の組み合わせが好ましい。
【0028】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとジカルボン酸のモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.9〜1.1の範囲が好ましく、0.93〜1.07の範囲がさらに好ましく、0.95〜1.05の範囲がより好ましく、0.97〜1.03の範囲が特に好ましい。この範囲から外れると高分子量化しにくくなる場合がある。
【0029】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩において、ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素原子数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることが出来る。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のような炭素原子数2〜20の脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸化合物(C)を挙げることが出来る。
【0030】
ジカルボン酸化合物(C)としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることが出来る。
ジカルボン酸化合物(C)としては、式(2)で表されるジカルボン酸化合物を用いることができる。ジカルボン酸化合物(C)は、脂肪族或いは脂環族のジカルボン酸化合物が好ましい。
【0031】
ジカルボン酸化合物(C)としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数2〜500の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸及び、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることが出来る。
ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることが出来る。
【0032】
式(2)で表される化合物において、mは0又は1を示し、mが1の場合、R1は炭素原子数1〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数1〜12を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数2〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜12を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜12を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数4〜10の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜10を有するアルキレン基を示す。
【0033】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)のジアミンの割合は、式(1)からジアミン基を除く単位を好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは15〜75重量%、より好ましくは18〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%が好ましい。
【0034】
ポリアミド系エラストマー及びポリエーテルアミドエラストマー(X)は、相対粘度(ηr)が1.2〜3.5(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)が好ましい。
【0035】
本発明のポリアミド系エラストマーは、破断伸びが600%以上が好ましい。
本発明のポリアミド系エラストマーは、亀裂発生屈曲回数が70000回以上、さらに90000回以上が好ましい。
本発明のポリアミド系エラストマーは、曲げ弾性率が300MPa以下、さらに280MPa以下、特に250MPa以下が好ましい。
本発明のポリアミド系エラストマーは、反ぱつ弾性が30%以上、さらに35%以上、特に40%以上が好ましい。
【0036】
本発明のポリアミド系エラストマーは、その特性が阻害されない範囲で、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材などを添加することができる。
【0037】
本発明のポリアミド系エラストマーは、スポーツシューズ材、スキー板の表面材、機械・電気精密機器のギア・コネクタ・シール、自動車用モール、シール材、各種チューブ・ホース、シート、フィルム、モノフィラメント、自動車用ミラーブーツ、等速ジョイントブーツなどに用いることができる。
【0038】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
特性値は次のようにして測定した。
【0039】
1)相対粘度(ηr)(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃):
試薬特級品のm−クレゾールを溶媒として、5g/dm3の濃度で、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
【0040】
2)引張物性:
厚さ約100μmのフィルムから切り出した長さ100mm、幅10mmの短冊を試料とし、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分で破断まで引張り試験を行い、破断伸びを測定した。測定は、温度23℃で行った。
【0041】
3)曲げ試験:
試験片寸法6.35mm×12.7mm×127mmの試験片を用いてASTM D790に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
【0042】
4)硬度:
ASTM・D2240に準拠してショアDを測定した。圧縮成形又は射出成形により成形した厚さ1mmのシートを厚さ5mmのナイロン12(UBENYLON 3030U、宇部興産社製)の板の上に置いて測定した。測定は、温度23℃で行った。
【0043】
5)反ぱつ弾性:
射出成形により成形した100mm×100×厚さ6mmの板から直径29mmの円形の板を切り出し、これを2枚重ねたものを試験片とし、JIS K6301に準拠して測定した。試験は4回行って平均を取った。
【0044】
6)耐屈曲疲労性(亀裂発生屈曲回数):
射出成形により成形した厚さ3mmのシートを25mm×150mmの短冊状に切り出し、これを試験片とし、JIS K6260を参考に、つかみ間最大距離75mm、最小距離19mm、屈曲回数300回/分の条件でデマチャ法による屈曲試験を行った。き裂を入れていない試料を使用し、き裂が発生する最低の屈曲回数を測定し、耐屈曲疲労性を評価した。試験は3回行って平均を取った。
【0045】
7)耐加水分解性:
射出成形により成形した100mm×300×厚さ2mmの板からJIS3号ダンベルを用いて切り出した試料を重ならないように、容量5リットルのステンレス容器に入れ、約2リットルの蒸留水を入れてふたをして密閉状態にした後80℃の湯浴中に入れた。2000時間処理後に試験片を取り出し表面の水分を除去した後、引張試験機のチャックにチャック間距離50mmで挟み、500mm/minの速度で引張試験を行い、引張破断伸びを測定した。加水分解処理していない試験片の測定を行い、下記(1)式より引張破断伸びの保持率を計算した。
【数7】
【0046】
8)伸長回復率:
厚さ約100μmのフィルムからJIS3号ダンベルを用いて切り出した試料を引張試験機のチャックにチャック間距離50mmで挟み、100mm/minの速度で延伸し、試料中央部直線部分の20%に当たる4mmを延伸したところで直ちに同じ速度で元に戻し、応力が0になった時のチャック間距離r(mm)を測定し、式(3)により伸長回復率を求めた。伸長回復率が大きいほどゴム弾性に優れる。測定は、温度23℃で行った。
【数8】
【0047】
[実施例1]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸13.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)6.128kg及びアジピン酸0.872kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.18であった。
【0048】
[実施例2]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸11.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)7.787kg及びアジピン酸1.122kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.14であった。
【0049】
[実施例3]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸7.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)11.380kg及びアジピン酸1.620kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.14であった。
【0050】
[比較例1]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)14.000kg、ポリオキシプロピレンジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:ジェファーミンD−2000、全アミン:1.06meq/g)2.800kg、水添ダイマー酸(ユニケマ社製プリポール1009、酸価:196mgKOH/g)2.738kg、メタキシリレンジアミン0.462kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。4時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で10時間重合を行った。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=1.69であった。
【0051】
[比較例2]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)10.000kg、ポリオキシプロピレンジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:ジェファーミンD−2000、全アミン:1.06meq/g)4.660kg、水添ダイマー酸(ユニケマ社製プリポール1009、酸価:196mgKOH/g)4.570kg、メタキシリレンジアミン0.770kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。4時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で10時間重合を行った。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=1.69であった。
【0052】
[比較例3]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)15.600kg及びアジピン酸0.561kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1000)3.840kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=2.07であった。
【0053】
[比較例4]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)12.600kg及びアジピン酸0.944kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1000)6.457kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=2.09であった。
【0054】
[比較例5]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)9.800kg及びアジピン酸0.766kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1800)9.434kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーは、ポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=1.96であった。
【0055】
実施例1〜3及び比較例1〜5で得たポリアミド系エラストマーについて、各種評価を行い結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
本発明のポリアミド系エラストマーは、ポリアミドをハードセグメント、ABA型トリブロックポリエーテルジアミンをソフトセグメントとする、強靭性、溶融成形性、低温柔軟性、伸長回復性、耐屈曲疲労性、反ぱつ弾性及び透明性などに優れ、かつ耐加水分解性に優れる熱可塑性ポリアミド系エラストマーを提供することができる。
更に、本発明のポリアミド系エラストマーは、脂肪族ポリアミドをハードセグメント、ABA型トリブロックポリエーテルジアミンをソフトセグメントとする、強靭性、溶融成形性、低温柔軟性、伸長回復性、耐屈曲疲労性、反ぱつ弾性及び透明性などに優れ、かつ耐加水分解性に優れる熱可塑性の脂肪族ポリアミド系エラストマーを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明のポリアミド系エラストマーは、耐屈曲疲労性、耐加水分解性などに優れたポリアミド系エラストマーに関し、特にポリアミドをハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミド系エラストマーに関する。さらに詳しくは、脂肪族ポリアミドをハードセグメント、ABA型トリブロックポリエーテルをソフトセグメントとする耐屈曲疲労性、耐加水分解性などに優れた脂肪族ポリアミド系エラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド系エラストマーとして、脂肪族ポリアミドをハードセグメント、脂肪族ポリエーテルをソフトセグメントとし、脂肪族ジカルボン酸を鎖延長剤とするコポリマーが開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、両末端にカルボキシル基又はアミノ基を有するポリアミド又はそれらのオリゴマーと両末端にアミノ基又はカルボキシル基を有するポリエーテル又はそれらのオリゴマーとを溶融状態で重合させて得られるポリエーテルアミドブロックポリマーの製造法が開示されている。
特許文献2には、特定のポリエーテルブロックを有するジアミンをソフトセグメントとし、これとほぼ当量のジカルボン酸及びハードセグメントを形成するポリアミド形成性化合物との重合によって得られるポリエーテルアミドの製法が開示されている。
特許文献3には、ポリアミド形成性モノマーと炭素数14〜48の脂肪族ジカルボン酸との重縮合によって得られる両末端にカルボキシル基を有するポリアミド、及び特定の末端アミノポリオキシアルキレンを重縮合させることを特徴とするブロックポリエーテルアミドの製法が開示されている。
特許文献4には、熱溶融接着剤として有用なポリアミドとして、6〜12個の炭素原子を含有するアルカンジカルボン酸及び非置換又はC1−C4アルキル置換ベンゼンジカルボン酸から選択される二塩基酸、ポリ(オキシテトラメチレン)ジアミン及び内部に2級アミノ基、末端に1級アミンを含有するポリ(オキシテトラメチレン)オリゴマーから得られるポリエーテルアミドが開示されている。
【0004】
特許文献5及び特許文献6には、ポリエーテルアミドが開示されている。
特許文献7及び特許文献8には、エチレンオキシドを含むポリエーテル構造含むポリエーテルアミドが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭45−7559号公報
【特許文献2】特公昭62−50495号公報
【特許文献3】特公平2−48021号公報
【特許文献4】特許第3199797号
【特許文献5】特開平3−237131号公報
【特許文献6】特開平4−91128号公報
【特許文献7】特開平9−118750号公報
【特許文献8】特開2000−7780号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ポリエーテルアミドにはポリエーテルとして両末端にアミノ基又はカルボキシル基を有するポリオキシエチレン、両末端にアミノ基を有するポリオキシプロピレン及びポリオキシテトラメチレンが用いられている。ポリエーテルとして、両末端にアミノ基又はカルボキシル基を有するポリオキシエチレンを用いた場合には、吸湿性及び帯電防止性などが向上したポリエーテルアミドが、ポリエーテルとして、両末端にアミノ基を有するポリオキシプロピレンを用いた場合には、柔軟性、透明性、耐水性、可とう性、ゴム弾性などに優れたポリエーテルアミドが、ポリエーテルとして両末端にアミノ基を有するポリオキシテトラメチレンを用いた場合には柔軟性、反ぱつ弾性、耐衝撃性、切り欠き靭性などに優れたポリエーテルアミドが得られる。しかしながら、それぞれのポリエーテルアミドの特性は、一長一短があり、エラストマーとしてバランスの優れた物が望まれている。
【0007】
本発明は、熱可塑性エラストマーの実用的な材料物性として重要な耐屈曲疲労性に優れ、かつ耐加水分解性に優れるポリアミド系エラストマーを提供することを目的とする。特に、本発明は、耐屈曲疲労性及び耐加水分解性に優れる脂肪族系のポリアミド系エラストマーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、強靭性、耐屈曲疲労性、反ぱつ弾性、耐加水分解性などに優れた新規なポリアミド系エラストマーとして、特定のABA型トリブロックポリエーテルをソフトセグメントとするポリエーテルアミドを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、下記ポリエーテルアミドエラストマー(X)を含み、
硬度(ショアD)が20〜70の範囲であり、
下記式(1)で算出する80℃熱水に2000時間浸漬した後の引張破断伸び保持率が90%以上であることを特徴とするポリアミド系エラストマー。
【数3】
・ポリエーテルアミドエラストマー(X):
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)を重合して得られる重合体である。
【化4】
(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
【0010】
本発明の好ましい態様を次に挙げる。
1:ポリアミド系エラストマーの伸長回復率(%)と硬度(ショアD)が、式(2)の関係であること。
【数4】
2:ポリアミド系エラストマーが、ポリエーテルアミドエラストマー(X)50重量%以上を含むこと。
3:ポリアミド系エラストマーが、脂肪族ポリアミド系エラストマーである。
【0011】
4:ジカルボン酸化合物(C)が、下記式(2)で表される。
【化5】
(但し、R1は炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
5:ポリアミド形成性モノマー(B)が、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むもの。
6:ポリアミド形成性モノマー(B)が、式(3)及び/又は式(4)で表される。
【化6】
(但し、R2は炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【化7】
(但し、R3は炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
7:ジカルボン酸化合物(C)が、脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は脂環族ジカルボン酸化合物である。
8:式(2)のmが1で、R1が炭素原子数1〜20のアルキレン基を含む。
9:式(3)のR2が、炭素原子数2〜20のアルキレン基を含む。
10:式(4)のR3が、炭素原子数3〜20のアルキレン基を含む。
11:ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、式(1)の単位を15〜80重量%含む。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミド系エラストマーは、硬度(ショアD)が、20〜70の範囲で、好ましくは25〜70の範囲で、さらに好ましくは30〜70の範囲で、より好ましくは35〜70の範囲で、特に好ましくは35〜65の範囲である。
【0013】
本発明のポリアミド系エラストマーは、伸長回復率(%)と硬度(ショアD)とが、式(2)の関係を有することが好ましい。
【数5】
【0014】
本発明のポリアミド系エラストマーは、下記式(1)で算出する80℃熱水に2000時間浸漬した後の引張破断伸び保持率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは100%以上である。
【数6】
【0015】
本発明のポリアミド系エラストマーは、下記ポリエーテルアミドエラストマー(X)を含むポリアミド系エラストマーである。
・ポリエーテルアミドエラストマー(X):
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)を重合して得られる重合体である。
【化8】
(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
【0016】
式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)において、x及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12であり、
yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましくは8〜30である。
【0017】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)に含まれる末端のカルボン酸及び/又はカルボキシル基と、末端のアミノ基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0018】
特にポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ポリアミド形成性モノマー(B)の一方の末端がアミノ基で、他方の末端がカルボン酸及び/又はカルボキシル基の場合、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)のアミノ基と、ジカルボン酸化合物(C)のカルボン酸及び/又はカルボキシル基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0019】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)は、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端に、プロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることが出来る。
【0020】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)において、式(1)のx及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12であり、
yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましくは8〜30である。
【0021】
ポリアミド形成性モノマー(B)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むものを使用できる。
特に、ポリアミド形成性モノマー(B)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、或いは脂環族からなるものが好ましい。
【0022】
アミノカルボン酸化合物は、アミノ基と、カルボン酸或いはカルボキシル基を有する化合物を用いることが出来る。アミノカルボン酸化合物は、ω−アミノカルボン酸化合物が好ましく、さらに、式(3)で表される化合物が好ましい。
【0023】
式(3)で表される化合物において、
R2は、炭素原子数2〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0024】
アミノカルボン酸化合物の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のような炭素原子数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることが出来る。
【0025】
ラクタム化合物は、式(4)で表される化合物などを用いることが出来る。
式(4)で表される化合物において、R3は、炭素原子数3〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0026】
ラクタム化合物の具体例としては、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタムのような炭素原子数5〜20の脂肪族ラクタム化合物などを挙げることが出来る。
【0027】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミン、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物などを挙げることが出来、
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることが出来る。
特にジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、脂肪族ジアミン化合物と脂肪族カルボン酸化合物の組み合わせが好ましい。
【0028】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとジカルボン酸のモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.9〜1.1の範囲が好ましく、0.93〜1.07の範囲がさらに好ましく、0.95〜1.05の範囲がより好ましく、0.97〜1.03の範囲が特に好ましい。この範囲から外れると高分子量化しにくくなる場合がある。
【0029】
ジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩において、ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素原子数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることが出来る。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のような炭素原子数2〜20の脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸化合物(C)を挙げることが出来る。
【0030】
ジカルボン酸化合物(C)としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることが出来る。
ジカルボン酸化合物(C)としては、式(2)で表されるジカルボン酸化合物を用いることができる。ジカルボン酸化合物(C)は、脂肪族或いは脂環族のジカルボン酸化合物が好ましい。
【0031】
ジカルボン酸化合物(C)としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数2〜500の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸及び、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることが出来る。
ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることが出来る。
【0032】
式(2)で表される化合物において、mは0又は1を示し、mが1の場合、R1は炭素原子数1〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数1〜12を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数2〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜12を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜12を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数4〜10の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜10を有するアルキレン基を示す。
【0033】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)のジアミンの割合は、式(1)からジアミン基を除く単位を好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは15〜75重量%、より好ましくは18〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%が好ましい。
【0034】
ポリアミド系エラストマー及びポリエーテルアミドエラストマー(X)は、相対粘度(ηr)が1.2〜3.5(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)が好ましい。
【0035】
本発明のポリアミド系エラストマーは、破断伸びが600%以上が好ましい。
本発明のポリアミド系エラストマーは、亀裂発生屈曲回数が70000回以上、さらに90000回以上が好ましい。
本発明のポリアミド系エラストマーは、曲げ弾性率が300MPa以下、さらに280MPa以下、特に250MPa以下が好ましい。
本発明のポリアミド系エラストマーは、反ぱつ弾性が30%以上、さらに35%以上、特に40%以上が好ましい。
【0036】
本発明のポリアミド系エラストマーは、その特性が阻害されない範囲で、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材などを添加することができる。
【0037】
本発明のポリアミド系エラストマーは、スポーツシューズ材、スキー板の表面材、機械・電気精密機器のギア・コネクタ・シール、自動車用モール、シール材、各種チューブ・ホース、シート、フィルム、モノフィラメント、自動車用ミラーブーツ、等速ジョイントブーツなどに用いることができる。
【0038】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
特性値は次のようにして測定した。
【0039】
1)相対粘度(ηr)(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃):
試薬特級品のm−クレゾールを溶媒として、5g/dm3の濃度で、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
【0040】
2)引張物性:
厚さ約100μmのフィルムから切り出した長さ100mm、幅10mmの短冊を試料とし、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分で破断まで引張り試験を行い、破断伸びを測定した。測定は、温度23℃で行った。
【0041】
3)曲げ試験:
試験片寸法6.35mm×12.7mm×127mmの試験片を用いてASTM D790に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
【0042】
4)硬度:
ASTM・D2240に準拠してショアDを測定した。圧縮成形又は射出成形により成形した厚さ1mmのシートを厚さ5mmのナイロン12(UBENYLON 3030U、宇部興産社製)の板の上に置いて測定した。測定は、温度23℃で行った。
【0043】
5)反ぱつ弾性:
射出成形により成形した100mm×100×厚さ6mmの板から直径29mmの円形の板を切り出し、これを2枚重ねたものを試験片とし、JIS K6301に準拠して測定した。試験は4回行って平均を取った。
【0044】
6)耐屈曲疲労性(亀裂発生屈曲回数):
射出成形により成形した厚さ3mmのシートを25mm×150mmの短冊状に切り出し、これを試験片とし、JIS K6260を参考に、つかみ間最大距離75mm、最小距離19mm、屈曲回数300回/分の条件でデマチャ法による屈曲試験を行った。き裂を入れていない試料を使用し、き裂が発生する最低の屈曲回数を測定し、耐屈曲疲労性を評価した。試験は3回行って平均を取った。
【0045】
7)耐加水分解性:
射出成形により成形した100mm×300×厚さ2mmの板からJIS3号ダンベルを用いて切り出した試料を重ならないように、容量5リットルのステンレス容器に入れ、約2リットルの蒸留水を入れてふたをして密閉状態にした後80℃の湯浴中に入れた。2000時間処理後に試験片を取り出し表面の水分を除去した後、引張試験機のチャックにチャック間距離50mmで挟み、500mm/minの速度で引張試験を行い、引張破断伸びを測定した。加水分解処理していない試験片の測定を行い、下記(1)式より引張破断伸びの保持率を計算した。
【数7】
【0046】
8)伸長回復率:
厚さ約100μmのフィルムからJIS3号ダンベルを用いて切り出した試料を引張試験機のチャックにチャック間距離50mmで挟み、100mm/minの速度で延伸し、試料中央部直線部分の20%に当たる4mmを延伸したところで直ちに同じ速度で元に戻し、応力が0になった時のチャック間距離r(mm)を測定し、式(3)により伸長回復率を求めた。伸長回復率が大きいほどゴム弾性に優れる。測定は、温度23℃で行った。
【数8】
【0047】
[実施例1]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸13.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)6.128kg及びアジピン酸0.872kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.18であった。
【0048】
[実施例2]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸11.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)7.787kg及びアジピン酸1.122kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.14であった。
【0049】
[実施例3]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸7.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)11.380kg及びアジピン酸1.620kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.14であった。
【0050】
[比較例1]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)14.000kg、ポリオキシプロピレンジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:ジェファーミンD−2000、全アミン:1.06meq/g)2.800kg、水添ダイマー酸(ユニケマ社製プリポール1009、酸価:196mgKOH/g)2.738kg、メタキシリレンジアミン0.462kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。4時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で10時間重合を行った。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=1.69であった。
【0051】
[比較例2]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)10.000kg、ポリオキシプロピレンジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:ジェファーミンD−2000、全アミン:1.06meq/g)4.660kg、水添ダイマー酸(ユニケマ社製プリポール1009、酸価:196mgKOH/g)4.570kg、メタキシリレンジアミン0.770kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。4時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で10時間重合を行った。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=1.69であった。
【0052】
[比較例3]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)15.600kg及びアジピン酸0.561kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1000)3.840kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=2.07であった。
【0053】
[比較例4]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)12.600kg及びアジピン酸0.944kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1000)6.457kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=2.09であった。
【0054】
[比較例5]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)9.800kg及びアジピン酸0.766kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1800)9.434kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーは、ポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=1.96であった。
【0055】
実施例1〜3及び比較例1〜5で得たポリアミド系エラストマーについて、各種評価を行い結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
本発明のポリアミド系エラストマーは、ポリアミドをハードセグメント、ABA型トリブロックポリエーテルジアミンをソフトセグメントとする、強靭性、溶融成形性、低温柔軟性、伸長回復性、耐屈曲疲労性、反ぱつ弾性及び透明性などに優れ、かつ耐加水分解性に優れる熱可塑性ポリアミド系エラストマーを提供することができる。
更に、本発明のポリアミド系エラストマーは、脂肪族ポリアミドをハードセグメント、ABA型トリブロックポリエーテルジアミンをソフトセグメントとする、強靭性、溶融成形性、低温柔軟性、伸長回復性、耐屈曲疲労性、反ぱつ弾性及び透明性などに優れ、かつ耐加水分解性に優れる熱可塑性の脂肪族ポリアミド系エラストマーを提供することができる。
Claims (6)
- (A)ポリアミド形成性モノマーが、脂肪族ポリアミド形成性モノマーであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系エラストマー。
- (C)ジカルボン酸が脂肪族及び脂環族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系エラストマー。
- ポリアミド系エラストマーの相対粘度が1.2〜3.5(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド系エラストマー。
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