JP4161801B2 - ポリアミド樹脂組成物、樹脂磁石、樹脂磁石部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気特性、機械的強度に優れた特定の樹脂磁石用のポリアミドからなる樹脂組成物に関するものであり、さらに冬季の屋外における低温環境と、夏季の屋外及び/又は組み込まれている機器内での発熱による高温環境といった実使用環境下での温度変化の繰り返しによっても寸法変化や亀裂の発生を生じることなく、性能を維持することのできる樹脂磁石用のポリアミドからなる樹脂組成物に関するものであり、さらに磁気特性に優れ、かつ耐加水分解に優れる樹脂磁石用のポリアミドからなる樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
樹脂磁石は射出成形により製品形状に成形することができ、複雑な形状でも容易に成形できるため様々な分野で使用されている。樹脂磁石の磁気特性を上げるために磁性粉末の含量を高めること及び磁性粉末の配向を良くする必要がある。しかしながら、磁性粉末の含量を多くすると溶融時の流動性が低下し、磁性粉末の配向も悪くなるという問題点があった。
これらの問題を解決するために樹脂に可塑剤を添加し、ポリアミド樹脂の溶融時の流動性を上げる試みがなされている。
【0003】
特許文献1では、磁性粉末とポリアミド樹脂からなるポリアミド樹脂磁石であって、該ポリアミド樹脂は、該ポリアミド樹脂磁石全体に対して3〜20重量%の範囲を占め、融点280℃以上で吸水率0.3%未満の芳香族ポリアミドと、融点265℃以下で吸水率2.0%未満の脂肪族ポリアミドの混合物からなることを特徴とするポリアミド樹脂磁石を開示している。
【0004】
特許文献2では、(A)磁性粉末、(B)ポリアミド樹脂、および(C)該ポリアミド樹脂に基づいて3〜30mass%の次式R1−CONH−R3−NHCO−R2[式中、R1およびR2は二重結合を一つ以上有する不飽和炭化水素基を表し、そしてR3は炭化水素基を表す。]で表されるビス不飽和脂肪酸アミドを混練して得られることを特徴とする、ポリアミド系プラスチック磁性材料が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−270419公報
【特許文献2】
特開2003−041116公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂磁石の磁気特性を上げるために、磁性粉末の含量を高めること、磁性粉末の配向を良くすることが必要となる。しかしながら、磁性粉末の含量を多くすると溶融時の流動性が低下し、磁性粉末の配向も悪くなるという問題点があった。また、樹脂磁石の柔軟性を改良するためエラストマー成分を配合した樹脂磁石は、エラストマー成分の耐熱性や耐加水分解性が十分ではなく、高温や高温高湿環境下では使用に制限があった。
【0007】
これらの問題を解決するためにバインダー樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合、ポリアミド樹脂に可塑剤を添加し、樹脂の溶融時の流動性を上げる試みがなされている。ポリアミドに可塑剤を添加したバインダー樹脂を使用した樹脂磁石は磁性粉末の含量を上げることができ、更に磁性粉末の配向も良くなるため、磁気特性の優れた材料となるが、高温環境に曝された場合、可塑剤がブリードアウトし、製品の表面に移行するばかりでなく、寸法変化が大きくなり寸法安定性が要求される電気・電子機器部品で使用することができない。また、特に金属部品をインサートした樹脂磁石部品は、冬季の屋外における低温環境と、夏季の屋外及び/又は組み込まれている機器内での発熱による高温環境といった実使用環境下での温度変化の繰り返しによって、樹脂磁石部分に亀裂が発生し実用上問題があった。
また、
【0008】
本発明は、前記問題点を解決し、金属部品をインサートした樹脂磁石部品においても冬季の屋外における低温環境と、夏季の屋外及び/又は組み込まれている機器内での発熱による高温環境といった実使用環境下での温度変化の繰り返しによっても亀裂を発生せず、高温環境でも寸法変化の少ない樹脂磁石を提供することを目的とする。さらに、過酷な環境下、特に高温高湿下で加水分解によるバインダー樹脂の劣化による性能低下のない樹脂磁石を提供することを目的とする。
【0009】
【問題を解決するための手段】
本発明は、バインダー樹脂にポリアミド及び下記のポリエーテルアミドエラストマー(X)、さらにヒドロキシ安息香酸と側鎖を有する炭素数12〜22のアルコールとから誘導される化合物からなる可塑剤を用いることにより、高温環境でも寸法変化が少なく、冬季の屋外における低温環境と、夏季の屋外及び/又は組み込まれている機器内での発熱による高温環境といった実使用環境下での温度変化の繰り返しによっても、亀裂を発生することなく、磁気特性に優れた樹脂磁石が得られることを見出したものである。さらに、過酷な環境下、特に高温高湿下で加水分解によるバインダー樹脂の劣化による性能低下のない樹脂磁石が得られることを見出したものである。
【0010】
本発明は、磁性粉末80〜95重量%とバインダー樹脂20〜5重量%からなるポリアミド樹脂組成物において、
・バインダー樹脂が、樹脂組成物85〜95重量%及び可塑剤15〜5重量%であり、
・樹脂組成物が、ポリアミド系エラストマー0〜100重量%(0重量%を除く)及びポリアミド0〜100重量%(100重量%を除く)(ポリアミド系エラストマーとポリアミドの合計が100重量%である)の樹脂であり、
・ポリアミド系エラストマーが、下記のポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上含むポリアミド系エラストマーであり、
・可塑剤が、ヒドロキシ安息香酸と炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールから誘導される化合物を含む可塑剤であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
・ポリエーテルアミドエラストマー(X):
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)を重合して得られる重合体である。
【化5】
(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
【0011】
本発明の好ましい態様を次に挙げる。
1:ポリアミドが、脂肪族ポリアミドである。
2:ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン612から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドである。
3ポリアミド系エラストマーが、ポリエーテルアミドエラストマー(X)である。
【0012】
4:ジカルボン酸化合物(C)が、下記式(2)で表される。
【化6】
(但し、R1は炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
【0013】
5:ポリアミド形成性モノマー(B)が、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むもの。
6:ポリアミド形成性モノマー(B)が、式(3)及び/又は式(4)で表される。
【化7】
(但し、R2は炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【化8】
(但し、R3は炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
7:ジカルボン酸化合物(C)が、脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は脂環族ジカルボン酸化合物である。
8:式(2)のmが1で、R1が炭素原子数1〜20のアルキレン基を含む。
9:式(3)のR2が、炭素原子数2〜20のアルキレン基を含む。
10:式(4)のR3が、炭素原子数3〜20のアルキレン基を含む。
11:ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、式(1)からジアミン基を除く単位を15〜80重量%含む。
【0014】
本発明は、本発明のポリアミド樹脂組成物から得られる成形物である。
本発明は、本発明のポリアミド樹脂組成物と金属部品とを組み合わせた樹脂磁石部品である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、磁性粉末80〜95重量%とバインダー樹脂20〜5重量%であり、
好ましくは磁性粉末85〜95重量%とバインダー樹脂15〜5重量%であり、さらに好ましくは磁性粉90〜95重量%とバインダー樹脂10〜5重量%である(磁性粉末とバインダー樹脂の合計が100重量%である。)。
【0016】
バインダー樹脂は、樹脂組成物80〜95重量%及び可塑剤20〜5重量%であり、好ましくは樹脂組成物80〜10重量%及び可塑剤20〜10重量%である(樹脂組成物と可塑剤の合計が100重量%である。)。
【0017】
バインダー樹脂は、ポリアミド系エラストマー0〜100重量%(0重量%を除く)、及びポリアミド0〜100重量%(100重量%を除く)(ポリアミド系エラストマーとポリアミドの合計が100重量%である)である。
バインダー樹脂として、ポリアミド系エラストマーとポリアミドとを含む樹脂組成物を用いる場合、ポリアミド系エラストマー5〜30重量%とポリアミド95〜70重量%との樹脂組成物が好ましく、
さらにポリアミド系エラストマー10〜25重量%とポリアミド90〜75重量%との樹脂組成物が好ましいポリアミド系エラストマーとポリアミドの合計が100重量%である)。
【0018】
ポリアミド系エラストマーは、公知のポリアミドエラストマーを用いることが出来る。
ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドからなるポリアミドブロックと、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンから選ばれる少なくとも1種のポリエーテルブロックとから構成されるエラストマーなどを用いることが出来る。
【0019】
ポリアミドエラストマーは、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックからなる熱可塑性エラストマーであり、硬度(ショアD)は、好ましくは15〜70の範囲、さらに好ましくは18〜70の範囲、より好ましくは20〜70の範囲、特に好ましくは25〜70の範囲が好ましい。
【0020】
ポリアミドエラストマーは、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックからなる熱可塑性エラストマーであり、弾性率は好ましくは20〜450MPa、さらに好ましくは20〜400MPa、より好ましくは20〜350MPa、特に好ましくは20〜300MPaが好ましい。
【0021】
ポリアミドエラストマーは、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックからなる熱可塑性エラストマーであり、破断伸びは600%以上が好ましい。
【0022】
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含むポリアミド系エラストマーが、耐水性に優れ、溶融成形性に優れ、成形加工性に優れ、強靭性に優れ、耐屈曲疲労性に優れ、反ぱつ弾性に優れ、低比重性、低温柔軟性に優れ、低温耐衝撃性に優れ、伸長回復性に優れ、消音特性に優れ、ゴム的な性質及び透明性などに優れている。
特にポリアミド系エラストマーが、ポリエーテルアミドエラストマー(X)であることが好ましい。
【0023】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、及びジカルボン酸化合物(C)に含まれる末端のカルボン酸及び/又はカルボキシル基と、末端のアミノ基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
特にポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ポリアミド形成性モノマー(B)の一方の末端がアミノ基で、他方の末端がカルボン酸及び/又はカルボキシル基の場合、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)のアミノ基と、ジカルボン酸化合物(C)のカルボン酸及び/又はカルボキシル基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0024】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)は、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端に、プロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることが出来る。
【0025】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)において、式(1)のx及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12であり、
yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましくは8〜30である。
【0026】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ポリアミド形成性モノマー(B)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むものを使用できる。
特に、ポリアミド形成性モノマー(B)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、或いは脂環族からなるものが好ましい。
【0027】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、アミノカルボン酸化合物は、アミノ基と、カルボン酸或いはカルボキシル基を有する化合物を用いることが出来る。アミノカルボン酸化合物は、ω−アミノカルボン酸化合物が好ましく、さらに、式(3)で表される化合物が好ましい。
【0028】
式(3)で表される化合物において、
R2は、炭素原子数2〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0029】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、アミノカルボン酸化合物の具体例としては、6-アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のような炭素原子数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることが出来る。
【0030】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ラクタム化合物は、式(4)で表される化合物などを用いることが出来る。
式(4)で表される化合物において、R3は、炭素原子数3〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0031】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ラクタム化合物の具体例としては、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタムのような炭素原子数5〜20の脂肪族ラクタム化合物などを挙げることが出来る。
【0032】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)のジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミン、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物などを挙げることが出来、
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることが出来る。
特にジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、脂肪族ジアミン化合物と脂肪族カルボン酸化合物の組み合わせが好ましい。
【0033】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)のジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとジカルボン酸のモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.9〜1.1の範囲が好ましく、0.93〜1.07の範囲がさらに好ましく、0.95〜1.05の範囲がより好ましく、0.97〜1.03の範囲が特に好ましい。この範囲から外れると高分子量化しにくくなる場合がある。
【0034】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)のジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩において、
ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素原子数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることが出来る。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のような炭素原子数2〜20の脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸化合物(C)を挙げることが出来る。
【0035】
ジカルボン酸化合物(C)としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることが出来る。
ジカルボン酸化合物(C)としては、式(2)で表されるジカルボン酸化合物を用いることができる。ジカルボン酸化合物(C)は、脂肪族或いは脂環族のジカルボン酸化合物が好ましい。
【0036】
ジカルボン酸化合物(C)としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数2〜500の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸及び、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることが出来る。
ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることが出来る。
【0037】
式(2)で表される化合物において、mは0又は1を示し、mが1の場合、R1は炭素原子数1〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数1〜12を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数2〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜12を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜12を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数4〜10の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜10を有するアルキレン基を示す。
【0038】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)のジアミンの割合は、式(1)からジアミン基を除く単位を好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは15〜75重量%、より好ましくは18〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%が好ましい。
【0039】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造方法として、一例を挙げると、ポリアミド形成性モノマー(B)、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A)及びジカルボン酸化合物(C)の3成分を同時に、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、又は必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることが出来る。製造に当たり原料の仕込む方法に特に制限はないが、ポリアミド形成性モノマー(B)、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A)及びジカルボン酸化合物(C)の仕込み割合は、それぞれ全成分に対してポリアミド形成性モノマー(B)は10〜95重量%が好ましく、15〜90重量%が特に好ましい。原料のうち、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A)及びジカルボン酸化合物(C)は、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A)のアミノ基とジカルボン酸化合物(C)のカルボキシル基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。
【0040】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造は、重合温度が好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは160〜280℃、特に好ましくは180〜250℃で行うことが出来る。
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、ポリアミド形成性モノマー(B)としてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合での工程からなる方法で製造することができる。
一方、ポリアミド形成性モノマー(B)としてラクタム、又はジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩を用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。
【0041】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、回分式でも、連続式でも製造することができ、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは組み合わせて製造することができる。
【0042】
ポリアミド系エラストマー及びポリエーテルアミドエラストマー(X)は、相対粘度(ηr)が1.2〜3.5(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)が好ましい。
【0043】
ポリアミド系エラストマーは、ポリアミド系エラストマーを除く他のポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどを、本発明の特性に影響を及ぼさない範囲で含むことができる。
【0044】
ポリアミドは、主鎖中に酸アミド結合(−CONH−)を有するものであり、脂肪族、脂環族及び/又は芳香族から選ばれる少なくとも一種を含むもの、或いは少なくとも二種を含む共重合体を含むものを用いることが出来る。
ポリアミドは、主鎖中に酸アミド結合(−CONH−)を有するものであり、脂肪族及び脂環族から選ばれる少なくとも一種の成分から得られる重合体、或いは少なくとも二種の成分から得られる重合体などの脂肪族或いは脂環族のポリアミドが好ましい。
特にポリアミドは、脂肪族ポリアミドが好ましい。
またポリアミドは、成形温度が好ましくは300℃以下、さらに好ましくは290℃以下、特に好ましくは280℃以下のものが好ましい。
【0045】
ポリアミドは、脂肪族、脂環族及び/又は芳香族としては、ラクタム、アミノカルボン酸、またはジアミンとジカルボン酸との組合せから誘導されるポリアミドが挙げられる。
【0046】
ポリアミドにおいて、3員環以上のラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンなど、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンドデカン酸、12−アミノドデカン酸などを挙げることができる。
【0047】
ポリアミドにおいて、ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドの原料となるジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミンなどの脂環式ジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0048】
ポリアミドにおいて、ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドの原料となるジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4'−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4/1,8/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0049】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン−66)、ポリヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−610)、ポリヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−612)の如き重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ナイロン−6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/アミノドデカン二酸(ナイロン−6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン−6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−6/66/612)などの(共)重合体などの脂肪族ポリアミドなどを挙げることが出来る。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
熱可塑性樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン612から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0050】
ポリアミドにおいて、これらのポリアミドは、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。更に、2種以上の組合せからなる共重合ポリアミドを用いることもできる。
【0051】
ポリアミドは、特性を損なわない範囲でポリアミド以外のポリエチレン、ポリプロピレンなど又はこれらのマレイン酸などの変性物などのポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ASB樹脂などの樹脂を加えて用いることが出来る。
【0052】
ポリアミド及びポリアミド系エラストマー、或いはポリアミド樹脂組成物は、その特性が阻害されない範囲で、可塑剤、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材などを添加することができる。
【0053】
本発明で用いられる磁性粉末は、公知の粉末磁性材料を用いることが出来、例えばバリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなどのフェライト系磁性材料、サマリウム−コバルト系、ネオジウム−鉄−ボロン系などの希土類磁性材料などを挙げることができる。
【0054】
本発明で用いられる磁性粉末は、樹脂成分との混和性を改良するため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等で表面処理して用いることができる。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、バインダー樹脂と磁性粉末とを混練して又は溶融混練して製造することが出来る。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、押出成形などの成形方法により、成形することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形して成形物を得ることが出来る。この成形物は、樹脂磁石として使用できる。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、金属部品をインサートした樹脂磁石部品を製造することができる。例えば、80℃の熱水中に2000時間浸漬した後にも、加水分解によりバインダー樹脂の劣化がなく、樹脂磁石部品に亀裂を発生することなく、長期の使用にも耐えるものである。
【0057】
本発明のポリアミド樹脂組成物は図1に示すような円盤状金属部品1をインサート成形した樹脂磁石部品や図2に示すような棒状金属部品3をインサート成形したロール状の樹脂磁石部品などの金属部品と組み合わせた状態で使用される。
【0058】
可塑剤は、p−又はo−ヒドロキシ安息香酸と、炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールから誘導される化合物、例えばエステル化合物などを含む可塑剤であり、他の公知の可塑剤と併せて用いることが出来る。
可塑剤は、p−又はo−ヒドロキシ安息香酸と、炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールから誘導される化合物を好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含むことが好ましい。
可塑剤は、p−又はo−ヒドロキシ安息香酸と、炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールとから誘導されるエステル化合物が好ましい。
可塑剤は、単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0059】
炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールとしては、
2−オクチルオクタノール、2−オクチル−3−オクタノール、2−エチルドデシルアルコール、2−オクチルドデシルアルコール、2−デシルドデシルアルコール、2−デシルデカノール、2−ヘキシルデカノール、2−エチルデカノールなどを用いることが出来る。
【0060】
可塑剤として、p−又はo−ヒドロキシ安息香酸と、炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールとから誘導されるエステル化合物としては、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−オクチルオクタノールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−オクチル−3−オクタノールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−エチルドデシルアルコールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−オクチルドデシルアルコールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−デシルドデシルアルコールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−デシルデカノールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデカノールエステル、
p−又はo−ヒドロキシ安息香酸2−エチルデカノールエステルなどを挙げることが出来る。可塑剤は、単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0061】
バインダー樹脂は、▲1▼ポリアミド、ポリアミド系エラストマー及び可塑剤とを同時に溶融混練すること、▲2▼ポリアミドとポリアミド系エラストマーを溶融混練した後、さらに可塑剤を加えて混練すること等の方法で得ることが出来る。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、バインダー樹脂と磁性粉末とを混練して又は溶融混練して製造することが出来る。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、押出成形などの成形方法により、成形することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形して樹脂磁石を製造することができる。
【0062】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、金属部品をインサートした樹脂磁石部品を製造することができる。金属部品をインサートした樹脂磁石部品は、冬季の屋外といった低温環境から、夏季の屋外及び/又は機器の発熱による高温環境の温度変化の繰り返しに対しても樹脂磁石部分に亀裂を発生することなく長期の使用に耐えるものである。
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物には必要に応じて酸化防止剤、耐熱剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤を使用することができる。
【0064】
本発明のポリアミド樹脂組成物は図1に示すような円盤状金属部品1をインサート成形した樹脂磁石部品や図2に示すような棒状金属部品3をインサート成形したロール状の樹脂磁石部品などの金属部品と組み合わせた状態で使用される。
【0065】
本発明のポリアミド樹脂組成物及びこれらの成形品において、重量減少率は好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下、特に好ましくは0.25%以下である。
本発明のポリアミド樹脂組成物及びこれらの成形品において、寸法変化率は好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.15%以下である。
【0066】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
特性値は次のようにして測定した。
【0067】
1)相対粘度(ηr)(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃):
試薬特級品のm−クレゾールを溶媒として、5g/dm3の濃度で、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
【0068】
2)樹脂磁石組成物の重量変化率の測定
樹脂磁石ペレットを圧縮成形機にて厚さ1mmのシートを作成し、このシートから25mm×150mmのサイズに切り出し試験片とした。試験片を120℃の熱風循環式恒温槽に14日間保持し、その後試験片を室温に戻して、重量減少を測定した。
【0069】
3)樹脂磁石組成物の寸法変化率の測定
樹脂磁石ペレットを圧縮成形機にて厚さ1mmのシートを作成し、このシートから25mm×150mmのサイズに切り出し試験片とした。試験片を120℃の熱風循環式恒温槽に14日間保持し、その後試験片を室温に戻して、長さ方向の寸法変化を測定した。
4)樹脂磁石組成物の表面のべたつき
樹脂磁石ペレットを圧縮成形機にて厚さ1mmのシートを作成し、このシートから25mm×150mmのサイズに切り出し試験片とした。試験片を120℃の熱風循環式恒温槽に14日間保持し、試験片の表面を指で触り、判定した。
【0070】
5)樹脂磁石成形品の温度変化による亀裂の発生の評価
図1に示したように直径30mm、厚さ30mmの円柱形状の金属部品をインサートして、全体の直径が40mm樹脂磁石を成形し、樹脂磁石と金属部品を組み合わせた試験片を作成し、−20〜100℃の範囲で1000サイクルのヒートサイクル処理をした後に、樹脂磁石部分の亀裂の発生の有無を確認した。
6)樹脂磁石成形品の耐加水分解性評価
図1に示したように直径30mm、厚さ30mmの円柱形状の金属部品をインサートして、全体の直径が40mm樹脂磁石を成形し、樹脂磁石と金属部品を組み合わせた試験片を作成し、80℃の温水中に浸漬し、2000時間処理後に試験片を取り出し、亀裂の発生を確認した。
【0071】
[製造例1:PAE1の製造]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸11.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)7.787kg及びアジピン酸1.122kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr2.14であった。
【0072】
[製造例2:PAE2の製造]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)12.600kg及びアジピン酸0.944kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1000)6.457kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=2.09であった。
【0073】
[実施例1〜4、比較例1〜6]
表1に示す組成のナイロン12(宇部興産製3014U)及びポリアミド系熱可塑性エラストマーと、可塑剤とからなるバインダー樹脂成分10重量%と、アミノシランカップリング剤により処理されたフェライト粉末90重量%とをミキサーにより混合した後、混練機を使用して溶融混練し、樹脂磁石のペレットを得た。
得られたペレットの評価結果を表1に示す。また得られたペレットを成形し、得られた成形物は、磁石として使用できた。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
本発明の樹脂磁石用ポリアミド樹脂組成物を使用することにより、高温環境でも寸法変化が少なく、金属部品をインサートした樹脂磁石部品においても冬季の屋外における低温環境と、夏季の屋外及び/又は組み込まれている機器内での発熱による高温環境といった実使用環境下での温度変化の繰り返しによっても寸法変化や亀裂の発生しない優れた樹脂磁石部品を提供することができる。また、高温高湿下においても加水分解によるバインダー樹脂の劣化がなく、高温高湿下においても亀裂の発生しない樹脂磁石部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 棒状の金属部品をインサート成形した樹脂磁石部品の概略図である。
【図2】 円柱状の金属部品をインサート成形した樹脂磁石部品の概略図である。
【符号の説明】
1:金属部品、2:樹脂磁石、3:金属部品、4:樹脂磁石。
Claims (7)
- 磁性粉末80〜95重量%とバインダー樹脂20〜5重量%からなるポリアミド樹脂組成物において、
・バインダー樹脂が、樹脂組成物80〜95重量%及び可塑剤20〜5重量%であり、
・樹脂組成物が、ポリアミド系エラストマー0〜100重量%(0重量%を除く)及びポリアミド0〜100重量%(100重量%を除く)であり、
・ポリアミド系エラストマーが、下記のポリエーテルアミドエラストマー(X)を50重量%以上含むポリアミド系エラストマーであり、
・可塑剤が、ヒドロキシ安息香酸と炭素数12〜22の側鎖を有するアルコールから誘導される化合物を含む可塑剤であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
・ポリエーテルアミドエラストマー(X):
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A)、下記式(3)もしくは(4)で表わされるポリアミド形成性モノマー(B)、及び下記式(2)で表わされるジカルボン酸化合物(C)を重合して得られる重合体である。
- ポリアミドが、脂肪族ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン612から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミド系エラストマーが、ポリエーテルアミドエラストマー(X)であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ジカルボン酸化合物(C)が、脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は脂環族ジカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜5に記載のポリアミド樹脂組成物から得られる成形物。
- 請求項1〜5に記載のポリアミド樹脂組成物と金属部品とを組み合わせた樹脂磁石部品。
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