JP2004352181A - 小型車両用連動ブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動二輪車等の小型車両に用いられる連動ブレーキ装置において,前輪あるいは後輪ブレーキを単独で作動させる独立ブレーキ操作ケーブルが,1本のケーブルとして形成されるようにする。
【解決手段】前輪ブレーキを作動させる独立ブレーキ操作ケーブル5は,独立ブレーキレバーから前輪ブレーキに至るまで連続した1本のケーブルとされ,そのケーブル5には,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fに対して係合・離間可能な係合部材29が固定される。またイコライザレバー15の後輪ブレーキ操作端部15Rには,後輪ブレーキを作動させるリヤブレーキケーブル9が接続され,そのイコライザレバー15の中間部には,連動ブレーキレバーによって操作される連動ブレーキ操作ケーブル6が接続される。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,自動二輪車等の小型車両に用いられるブレーキ装置に関し,特に,前輪ブレーキ及び後輪ブレーキのいずれか一方を単独で作動させる独立ブレーキ操作系と,前輪ブレーキ及び後輪ブレーキの双方を連動して作動させる連動ブレーキ操作系とを備えた小型車両用連動ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動二輪車においては,操向ハンドルに設けられている右グリップ側の独立ブレーキレバーを操作したときには前輪ブレーキのみが作動するが,左グリップ側の連動ブレーキレバーを操作したときには,後輪ブレーキのみならず前輪ブレーキも連動して作動するようにされる。そのために,自動二輪車のブレーキ装置には,前輪ブレーキを作動させるフロントブレーキケーブルと後輪ブレーキを作動させるリヤブレーキケーブルとの間に,それらを連動させる連動装置が設けられている。
【0003】
そのような連動装置として従来知られているものには,特許文献1に記載されているようなものがある。その連動装置は,自動二輪車のヘッドパイプの近傍に設置されるイコライザケース内に,一端部が前輪ブレーキ操作端部,他端部が後輪ブレーキ操作端部とされたイコライザレバーを収容し,連動ブレーキレバーに連なる連動ブレーキ操作ケーブルをそのイコライザレバーの中間部に接続するとともに,前輪ブレーキを作動させるフロントブレーキケーブルと後輪ブレーキを作動させるリヤブレーキケーブルとをイコライザレバーの両端部にそれぞれ連接するようにしたものである。そのフロントブレーキケーブルには,独立ブレーキレバーに連なる独立ブレーキ操作ケーブルが,長孔を有するジョイント部材を介して連結される。イコライザレバーの前輪ブレーキ操作端部は,そのジョイント部材の長孔に,摺動及び回動可能に係合するようになっている。
【0004】
このような連動装置によれば,連動ブレーキレバーを操作して連動ブレーキ操作ケーブルを牽引すると,イコライザレバーの中間部が引かれ,それに伴ってリヤブレーキケーブルが牽引されるので,後輪ブレーキが作動する。そして,後輪ブレーキ側の負荷がある程度の大きさに達すると,フロントブレーキケーブルも牽引されるので,後輪ブレーキとともに前輪ブレーキも作動する。また,独立ブレーキレバーを操作して独立ブレーキ操作ケーブルを牽引すると,ジョイント部材を介してフロントブレーキケーブルが牽引されるので,前輪ブレーキが作動する。このときには,ジョイント部材の長孔に係合しているイコライザレバーには牽引力が作用しないので,リヤブレーキケーブルは何らの動作もしない。したがって,後輪ブレーキは作動せず,前輪ブレーキのみが単独で作動することになる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−309294号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記特許文献1に記載されているように,独立ブレーキレバーによって操作される独立ブレーキ操作ケーブルと前輪ブレーキを作動させるフロントブレーキケーブルとを,ジョイント部材を介して連結するようにしたものでは,ジョイント部材が必要となるばかりでなく,独立ブレーキ操作系のケーブルが2本に分割されることになるので,部品点数が増加し,その組み付け作業も複雑化するという問題がある。また,そのジョイント部材は,独立ブレーキ操作ケーブルの動作方向の長孔を設ける必要性から,どうしても長いものとなるので,そのジョイント部材を収容するイコライザケースも大形のものとなる。そのために,大きな設置スペースが必要となり,その連動装置の配置の自由度が限られてしまう。特に自動二輪車の場合には,配索上,このような連動装置はヘッドパイプの近傍に設けることが望まれるが,ヘッドパイプの近傍にそのように大形の連動装置が設置されるようにするためには,車体のレイアウトまで制約されることになる。
【0007】
本発明は,かかる事情に鑑みてなされたもので,構造が簡単で,コンパクトに構成することができる,配置の自由度の高い小型車両用連動ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,一端部が前輪ブレーキ操作端部,他端部が後輪ブレーキ操作端部とされたイコライザレバーの中間部に連動ブレーキ操作ケーブルを接続し,連動ブレーキ操作部材の操作により前記連動ブレーキ操作ケーブルを牽引したとき,前記イコライザレバーの前輪ブレーキ操作端部によって前輪ブレーキを作動させるフロントブレーキケーブルが牽引されるとともに,前記イコライザレバーの後輪ブレーキ操作端部によって後輪ブレーキを作動させるリヤブレーキケーブルが牽引されて,それら前輪ブレーキと後輪ブレーキとが連動して作動するようにした小型車両用連動ブレーキ装置において,前記フロントブレーキケーブル及びリヤブレーキケーブルのいずれか一方が,独立ブレーキ操作部材に接続された1本の独立ブレーキ操作ケーブルとして形成されており,その独立ブレーキ操作ケーブルに,前記イコライザレバーに対して係合・離間可能な係合部材が取り付けられ,前記連動ブレーキ操作部材の操作による連動ブレーキ操作ケーブルの牽引時には,前記イコライザレバーが前記係合部材と係合することによって前記独立ブレーキ操作ケーブルが牽引され,前記独立ブレーキ操作部材の操作により前記独立ブレーキ操作ケーブルを牽引したときには,前記係合部材が前記イコライザレバーから離間するようになっていることを第1の特徴とする。
【0009】
この第1の特徴によれば,連動ブレーキ操作部材を操作して連動ブレーキ操作ケーブルを牽引したときには,イコライザレバーの中間部が引かれ,そのイコライザレバーの一端部によって,フロントあるいはリヤブレーキケーブルが牽引される。同時に,イコライザレバーの他端部が,独立ブレーキ操作ケーブルに取り付けられている係合部材に係合するので,その独立ブレーキ操作ケーブルも牽引される。したがって,前輪ブレーキと後輪ブレーキとが連動して作動する。また,独立ブレーキ操作部材を操作して独立ブレーキ操作ケーブルを牽引したときには,その独立ブレーキ操作ケーブルによって操作される前輪ブレーキあるいは後輪ブレーキが作動する。このとき,その独立ブレーキ操作ケーブルに取り付けられている係合部材はイコライザレバーから離れるので,イコライザレバーには牽引力は作用しない。したがって,他方のブレーキは作動せず,一方のブレーキのみが単独で作動することになる。
【0010】
このようにして,独立ブレーキ操作ケーブルが連続した1本のものとされるので,長いジョイント部材は不要となり,部品点数を減らすことができる。そして,その独立ブレーキ操作ケーブルに,イコライザレバーに対して係合・離間可能な係合部材を取り付けるのみでよいので,その構造も極めて簡単となる。したがって,連動装置全体をコンパクト化することが可能となり,その配置の自由度を高めることができる。
【0011】
また,本発明は,第1の特徴に加えて,前記イコライザレバーに,前記独立ブレーキ操作ケーブルの動作方向に延びる突出部が一体に設けられており,その突出部に,同方向に延び前記係合部材を摺動及び相対回動可能に支持する長孔が形成されていることを第2の特徴とする。
【0012】
この第2の特徴によれば,係合部材がイコライザレバーの長孔によって案内されるようになるので,連動装置の安定した作動を確保することができる。そして,その長孔を,イコライザレバーと一体の突出部に形成するようにしているので,イコライザレバーの軽量小型化を図ることができる。
【0013】
さらに,本発明は,第1あるいは第2の特徴に加えて,前記各ケーブルが前記イコライザレバーの近傍においてほぼ平行に配置されており,それらのケーブルと前記イコライザレバーとの各連接部が,前記連動ブレーキ操作ケーブル及び独立ブレーキ操作ケーブルがともに非作動状態にあるとき,前記各ケーブルにほぼ直交する同一平面上に位置するようになっていることを第3の特徴とする。
【0014】
この第3の特徴によれば,各ケーブルがほぼ平行に配置されるので,操作力の伝達をスムーズに行わせることができる。そして,連動ブレーキ操作ケーブル及び独立ブレーキ操作ケーブルがともに非作動状態にあるとき,イコライザレバーと各ケーブルとの連接部が各ケーブルにほぼ直交する同一平面上に位置するようにすることにより,イコライザレバーを単純な形状のものとすることが可能となるので,連動装置を一層コンパクト化することができる。
【0015】
さらにまた,本発明は,第1ないし第3のいずれかの特徴に加えて,前記イコライザレバーの前輪ブレーキ操作端部を非作動位置に向けて押圧付勢する弾性体が設けられていることを第4の特徴とする。
【0016】
この第4の特徴によれば,連動ブレーキ操作ケーブルを牽引したとき,イコライザレバーが,まず,前輪ブレーキ操作端部の一点を中心として回動し,後輪ブレーキ操作端部によりリヤブレーキケーブルが牽引されて後輪ブレーキが作動した後,若干のタイムラグを持ってフロントブレーキケーブルが牽引されて前輪ブレーキが作動するようになるので,車両のピッチングを抑えた安定した制動を行わせることができる。
【0017】
また,本発明は,第1の特徴に加えて,前記イコライザレバーの後輪ブレーキ操作端部に,複数の後輪ブレーキをそれぞれ作動させる複数本のリヤブレーキケーブルがイコライザ手段を介して接続されていることを第5の特徴とする。
【0018】
尚,前記イコライザ手段は,後述する本発明の実施例中のリンクレバー36及び第2イコライザレバー37に対応する。
【0019】
この第5の特徴によれば,自動三輪車のように複数の後輪を有する車両の場合にも,その各後輪のブレーキをそれぞれ作動させることができるので,複数の後輪ブレーキ用の連動装置を別個に設ける必要がなくなり,設置スペースを最小限に抑えることができる。
【0020】
さらにまた,本発明は,第1ないし第5のいずれかの特徴に加えて,前記連動ブレーキ操作部材及び独立ブレーキ操作部材が,いずれも車体上部に設けられる操向ハンドルに軸支されたブレーキレバーであり,前記イコライザレバーが,前記操向ハンドルの下方に設けられるヘッドパイプの近傍に配置されていることを第6の特徴とする。
【0021】
この第6の特徴によれば,イコライザレバーが,操向ハンドルの両端部にそれぞれ設けられる連動ブレーキレバー及び独立ブレーキレバーからほぼ等距離の位置に配置されるようになるので,配索が容易となる。このように配索上有利なヘッドパイプの近傍に連動装置を設置することが可能となるのは,上述のように連動装置全体がコンパクト化されるからである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例に係る自動二輪車用連動ブレーキ装置の系統図,図2はその連動ブレーキ装置の要部の断面側面図,図3は図2の3−3線に沿う断面図,図4は図2の4−4線に沿う断面図,図5〜図7はそれぞれ異なる作動状態を示す,図2と同様の断面図,図8は第2実施例に係る自動三輪車用連動ブレーキ装置の系統図,図9はその連動ブレーキ装置の要部の断面側面図である。
【0024】
まず,図1〜図7に示す本発明の第1実施例について説明する。
【0025】
図1において,自動二輪車の車体1の上端部に設けられる操向ハンドル2には,右グリップ2aに隣接して,独立ブレーキ操作部材である独立ブレーキレバー3が軸支され,左グリップ2bに隣接して,連動ブレーキ操作部材である連動ブレーキレバー4が軸支されている。独立ブレーキレバー3には独立ブレーキ操作ケーブル5が接続され,独立ブレーキレバー3を操作することによってその独立ブレーキ操作ケーブル5が牽引されるようになっている。また,連動ブレーキレバー4には連動ブレーキ操作ケーブル6が接続され,連動ブレーキレバー4を操作することによってその連動ブレーキ操作ケーブル6が牽引されるようになっている。各ブレーキレバー3,4は,それぞれ戻しスプリング3a,4aによって非作動方向に付勢されている。
【0026】
一方,自動二輪車の前輪に装備されるドラム式前輪ブレーキBfの作動レバー7fにはフロントブレーキケーブル8が接続され,そのフロントブレーキケーブル8を牽引することによって前輪ブレーキBfが作動するようになっている。また,後輪に装備されるドラム式後輪ブレーキBrの作動レバー7rにはリヤブレーキケーブル9が接続され,そのリヤブレーキケーブル9を牽引することによって後輪ブレーキBrが作動するようになっている。各ブレーキBf,Brの作動レバー7f,7rは,それぞれ戻しスプリング10f,10rによって非作動方向に付勢されている。 独立ブレーキ操作ケーブル5及び連動ブレーキ操作ケーブル6と,フロントブレーキケーブル8及びリヤブレーキケーブル9との間には,連動装置11が設けられている。そして,その連動装置11により,後述するように,独立ブレーキレバー3を操作したときには前輪ブレーキBfが単独で作動し,連動ブレーキレバー4を操作したときには,前輪ブレーキBfと後輪ブレーキBrとが連動して作動するようになっている。
【0027】
連動装置11は,自動二輪車の車体1に取り付けられるイコライザケース12を備えている。図2ないし図4から明らかなように,そのイコライザケース12は背面側が開放された断面ほぼ矩形の容器状のもので,操向ハンドル2の下方に位置するヘッドパイプ1h近傍の車体側面にボルト13によって固着され,それによって車体1との間に収容空間14が形成されるようになっている。その収容空間14には,イコライザレバー15が,昇降及び回動可能な状態で収容されている。 イコライザレバー15は,1枚の金属板の両側部を上方に折り曲げて,間隔を置いて対向する一対の側壁15s,15sを形成した断面U字状(図4参照)のもので,非作動位置においてイコライザケース12の下壁12bに沿って延びる本体部15aと,その本体部15aに対してほぼ直角方向に延びる突出部15bとを一体に有している。その本体部15aの一端部(図2で左端部)は前輪ブレーキ操作端部15Fとされ,他端部(図2で右端部)は後輪ブレーキ操作端部15Rとされている。上記突出部15bは,その前輪ブレーキ操作端部15Fに設けられている。一対の側壁15s,15s間の間隔は,各ケーブル5,6;8,9の直径よりやや大きいものとされている。 イコライザレバー15の突出部15bには,その突出部15bに沿って延びる長孔16が形成されている。また,本体部15aには,その前輪ブレーキ操作端部15Fと後輪ブレーキ操作端部15Rとの間の中間部,及び後輪ブレーキ操作端部15Fに,それぞれ接続孔17,18が形成されている。それらの接続孔17,18と長孔16の下端部とは,ほぼ同一平面上に位置するように配置されている。
【0028】
イコライザケース12の上壁12aには,独立ブレーキ操作ケーブル5及び連動ブレーキ操作ケーブル6がそれぞれ貫通するボス19,20が一体に形成されており,それらのボス19,20に,ロックナット21,22付きの調節ボルト23,24が螺着されている。その調節ボルト23,24は,独立ブレーキ操作ケーブル5及び連動ブレーキ操作ケーブル6の各アウタケーシング5a,6aの端部をそれぞれ支承するものである。また,イコライザケース12の下壁12bには,フロントブレーキケーブル8及びリヤブレーキケーブル9がそれぞれ貫通するボス25,26が一体に形成されており,それらのボス25,26によって,フロントブレーキケーブル8及びリヤブレーキケーブル9の各アウタケーシング8a,9aの端部がそれぞれ支承されている。
【0029】
独立ブレーキ操作ケーブル5が貫通するボス19とフロントブレーキケーブル8が貫通するボス25とは,イコライザケース12の上壁12a及び下壁12bの一端側においてほぼ一直線上に位置するように設けられている。また,連動ブレーキ操作ケーブル6が貫通するボス20は,上壁12aのほぼ中央部に設けられ,リヤブレーキケーブル9が貫通するボス26は,下壁12bの他端側に設けられている。イコライザレバー15に設けられる上述の長孔16及び接続孔17,18は,イコライザレバー15が非作動位置にあるとき,その長孔16がボス19,25を結ぶ直線上に位置し,中央の接続孔17がボス20に,右端部の接続孔18がボス26に,それぞれ対向して位置するように配置されている。
【0030】
一端が独立ブレーキレバー3に接続された独立ブレーキ操作ケーブル5の他端には,円柱状の接続端子27が固着されている。一方,一端が前輪ブレーキBfの作動レバー7fに接続されたフロントブレーキケーブル8の他端には,周壁の上端部を除去した円筒状の樹脂カバー28が固着されている。そして,その樹脂カバー28に接続端子27が嵌合されている。こうして,フロントブレーキケーブル8は,樹脂カバー28及び接続端子27を介して独立ブレーキ操作ケーブル5に連結され,独立ブレーキレバー3と前輪ブレーキBfの作動レバー7fとを結ぶ1本の独立ブレーキ操作ケーブル5の一部(下側部分)とされている。
【0031】
その独立ブレーキ操作ケーブル5は,イコライザレバー15の一対の側壁15s,15s間を通って,イコライザレバー15の底壁を貫通するようになっている。そして,その独立ブレーキ操作ケーブル5に取り付けられている接続端子27及び樹脂カバー28が,イコライザレバー15の長孔16内に位置するようになっている。その樹脂カバー28の長さは,一対の側壁15s,15s間の間隔より大きくされている。また,その樹脂カバー28の外径は,長孔16に沿って摺動し得る大きさとされている。したがって,その樹脂カバー28は,イコライザレバー15の長孔16の下端に対して係合・離間可能で,イコライザレバー15に対して相対的に回動し得るようになっている。すなわち,この実施例では,独立ブレーキ操作ケーブル5の上側部分と下側部分とを連結する接続端子27及び樹脂カバー28によって,イコライザレバー15に対して係合・離間可能で,長孔16により摺動及び相対回動可能に支持される係合部材29が構成されている。
【0032】
一端が連動ブレーキレバー4に接続された連動ブレーキ操作ケーブル6の他端には,円柱状の接続端子30が固着されている。その連動ブレーキ操作ケーブル6は,イコライザレバー15の一対の側壁15s,15s間に挿通されている。一方,イコライザレバー15に設けられている中央の接続孔17には,周壁の上端部を除去した円筒状の樹脂カバー31が嵌合されている。そして,その樹脂カバー31に,連動ブレーキ操作ケーブル6の接続端子30が嵌合されている。こうして,連動ブレーキ操作ケーブル6は,イコライザレバー15の中間部に,相対回動可能に接続されている。
【0033】
また,一端が後輪ブレーキBrの作動レバー7rに接続されたリヤブレーキケーブル9の他端には,円柱状の接続端子32が固着されている。そのリヤブレーキケーブル9は,イコライザレバー15の底壁を貫通して一対の側壁15s,15s間に挿通されている。一方,イコライザレバー15に設けられている右端部の接続孔18には,周壁の下端部を除去した円筒状の樹脂カバー33が嵌合されている。そして,その樹脂カバー33に,リヤブレーキケーブル9の接続端子32が嵌合されている。こうして,リヤブレーキケーブル9は,イコライザレバー15の後輪ブレーキ操作端部15Rに,相対回動可能に接続されている。
【0034】
上述のようなイコライザレバー15の長孔16及び接続孔17,18とイコライザケース12の各ボス19,20;25,26との配置により,イコライザレバー15が非作動位置にあるときには,イコライザケース12内において,独立ブレーキ操作ケーブル5,連動ブレーキ操作ケーブル6,及びリヤブレーキケーブル9のいずれもが,互いに平行となる。そして,イコライザレバー15の本体部15aが,それらのケーブル5,6,9に直交する配置となる。樹脂カバー28,31,33は同径とされている。そして,独立ブレーキ操作ケーブル5が非作動状態にあるときには,後述するように,係合部材29がイコライザレバー15の長孔16の下端に係合している。したがって,そのときには,各ケーブル5,6,9とイコライザレバー15との連接部,すなわち接続端子27,30,32が各ケーブル5,6,9に直交する同一平面上に位置することになる。 イコライザケース12の上壁12aとイコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fとの間には,所定の圧縮荷重を加えた状態でセットスプリング34が設けられており,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fが非作動位置,すなわち下方に向けて押圧付勢されるようになっている。また,イコライザケース12の上壁12a下面には,イコライザレバー15の突出部15bに対向する位置に,ストッパ35が設けられている。
【0035】
次に,この第1実施例の作用について説明する。
【0036】
独立ブレーキ操作ケーブル5の下側部分であるフロントブレーキケーブル8及びリヤブレーキケーブル9は,前輪ブレーキBf及び後輪ブレーキBrにそれぞれ設けられている戻しスプリング10f,10rにより,非作動方向,すなわち図2で下方に付勢されている。また,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fには,セットスプリング34により下方に向けての付勢力が加えられている。したがって,独立ブレーキ操作ケーブル5及び連動ブレーキ操作ケーブル6がともに非作動状態にあるとき,すなわち独立ブレーキレバー3及び連動ブレーキレバー4のいずれにも操作力が加えられていないときには,図2に示すように,イコライザレバー15の底面がイコライザケース12の下壁12a上面に接触し,独立ブレーキ操作ケーブル5に取り付けられている係合部材29がイコライザレバー15の長孔16の下端に係合した状態で保持されている。 この状態で,独立ブレーキレバー3を操作して,独立ブレーキ操作ケーブル5を牽引すると,その牽引力が,独立ブレーキ操作ケーブル5の下側部分であるフロントブレーキケーブル8を介してそのまま前輪ブレーキBfの作動レバー7fに伝えられるので,前輪ブレーキBfが作動する。このとき,独立ブレーキ操作ケーブル5に取り付けられている係合部材29もそのケーブル5とともに移動することになるが,独立ブレーキ操作ケーブル5は,連動装置11の内部においてはイコライザレバー15の本体部15aに直交する方向,すなわち突出部15bの突出方向に形成されている長孔16に沿う方向に動作するようになっているので,そのケーブル5に取り付けられている係合部材29は,図5に示すように,イコライザレバー15の長孔16に沿って上昇するのみで,イコライザレバー15には何らの影響も及ぼさない。また,その係合部材29がイコライザレバー15の本体部15aから離間することにより,イコライザレバー15に作用していた前輪ブレーキBfの戻しスプリング10fによる付勢力が除かれることになるが,イコライザレバー15にはセットスプリング34の付勢力も加えられているので,イコライザレバー15は元の状態のまま,すなわち非作動位置で保持される。したがって,リヤブレーキケーブル9は何らの動作もしない。
【0037】
このようにして,独立ブレーキレバー3を操作したときには,後輪ブレーキBrは作動せず,前輪ブレーキBfのみが単独で作動するようにされる。独立ブレーキレバー3の操作力を解除すると,前輪ブレーキBfの作動レバー7fが戻しスプリング10fの付勢力によって当初の位置に復帰するので,前輪ブレーキBfは非作動状態となる。
【0038】
また,連動ブレーキレバー4を操作して,連動ブレーキ操作ケーブル6を牽引すると,その牽引力がイコライザレバー15の中間部に伝えられ,そのイコライザレバー15により,前輪ブレーキ操作端部15F及び後輪ブレーキ操作端部15Rに,そのレバー比に応じてそれぞれ配分される。しかしながら,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fには,セットスプリング34により下方に向けての付勢力が加えられているので,その前輪ブレーキ操作端部15Fに配分された牽引力が小さい間は,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fは下降限に保持される。したがって,イコライザレバー15は,当初,図6に示すように,前輪ブレーキ操作端部15Fとイコライザケース12の下壁12bとの接点Pを中心として反時計方向に回動することになる。その結果,後輪ブレーキ操作端部15Rに接続されているリヤブレーキケーブル9が牽引され,その牽引力が後輪ブレーキBrの作動レバー7rに伝えられるので,後輪ブレーキBrが作動する。このようにして,連動ブレーキレバー4を操作したときには,まず最初に後輪ブレーキBrが作動する。
【0039】
この状態で,連動ブレーキレバー4を引き続いて操作し,連動ブレーキ操作ケーブル6の牽引力を更に増大させると,やがて,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fに配分される牽引力がセットスプリング34の設定荷重を上回ることになる。すると,そのセットスプリング34が圧縮されるようになり,図7に示すように,イコライザレバー15全体が上昇する。その結果,リヤブレーキケーブル9が更に牽引されるとともに,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fに係合している係合部材29が押し上げられ,その係合部材29が固着されている独立ブレーキ操作ケーブル5が引き上げられる。したがって,前輪ブレーキBfが作動する。 そして,連動ブレーキレバー4の操作力が所定の大きさに達すると,イコライザレバー15の突出部15bの上端がイコライザケース12の上壁12a下面に設けられているストッパ35に当接し,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fのそれ以上の上昇が阻止される。したがって,前輪ブレーキBfの制動力がそれ以上に増加することはなく,以後は後輪ブレーキBrの制動力のみが増加することになる。
【0040】
このように,連動ブレーキレバー4を操作したときには,まず,後輪ブレーキBrが作動し,次いで,若干のタイムラグを持って前輪ブレーキBfが連動して作動する。それにより,車両のピッチングが防止されるようにしながら前後輪がほぼ同時に制動されることになるので,自動二輪車の安定した制動が行われる。
【0041】
連動ブレーキレバー4の操作力を解除すると,前輪ブレーキBf及び後輪ブレーキBrの各作動レバー7f,7rが戻しスプリング10f,10rの付勢力によって当初の位置に復帰するので,前輪ブレーキBf及び後輪ブレーキBrはともに非作動状態となる。そして,連動装置11も図2の状態に戻る。
【0042】
以上のように,本実施例によれば,連動ブレーキ操作ケーブル6をイコライザレバー15の中間部に接続するとともに,独立ブレーキ操作ケーブル5に,イコライザレバー15に対して係合・離間可能な係合部材29を取り付けて,独立ブレーキ操作ケーブル5を牽引したときにはその係合部材29がイコライザレバー15から離間し,連動ブレーキ操作ケーブル6の牽引によりイコライザレバー15を作動させたときには,イコライザレバー15がその係合部材29に係合することによって独立ブレーキ操作ケーブル5が牽引されるようにしているので,独立ブレーキ操作ケーブル5を,独立ブレーキレバー3から前輪ブレーキBfの作動レバー7fに至るまで連続する1本のものとしながら,前輪ブレーキBfの単独作動と,前後輪ブレーキBf,Brの連動作動とをそれぞれ行わせることができる。そして,そのように独立ブレーキ操作ケーブル5が連続した1本のものとされることにより,その独立ブレーキ操作ケーブル5全体が単一の部品となるので,部品点数を減らすことができる。また,その独立ブレーキ操作ケーブル5には,イコライザレバー15に対して係合・離間可能な係合部材29を取り付けるのみでよく,従来のもののような長いジョイント部材は不要となるので,イコライザレバー15を収容するイコライザケース12をコンパクト化することができる。したがって,そのイコライザケース12,すなわち連動装置11の配置の自由度を高めることができる。
【0043】
また,イコライザレバー15に,独立ブレーキ操作ケーブル5の動作方向に延びる突出部15bを設けて,その突出部15bに,その突出部15bと同方向に延び,独立ブレーキ操作ケーブル5に取り付けられている係合部材29を摺動及び回動可能に支持する長孔16を形成するようにしているので,独立ブレーキ操作ケーブル5の単独動作時,その係合部材29が長孔16によって案内されるようになる。その結果,係合部材29は,常にイコライザレバー15の一定の位置においてそのイコライザレバー15と係合することになるので,連動装置11の安定した作動を確保することができる。しかも,その長孔16は,独立ブレーキ操作ケーブル5の動作方向に形成されるので,その長孔16が形成される突出部15bをイコライザレバー15の本体部15aに対して回動可能とする必要もない。したがって,イコライザレバー15の軽量小型化を図ることができる。 さらに,独立ブレーキ操作ケーブル5,連動ブレーキ操作ケーブル6,及びリヤブレーキケーブル9が,イコライザレバー15の近傍において互いに平行に配置されるようにしているので,それらのケーブル5,6,9間においてイコライザレバー15を介して行われる操作力の伝達がスムーズとなり,連動装置11に安定した作動を行わせることができる。しかも,それらのケーブル5,6,9とイコライザレバー15との各連接部,すなわち接続端子27,30,32が,独立ブレーキ操作ケーブル5及び連動ブレーキ操作ケーブル6がともに非作動状態にあるとき,各ケーブル5,6,9に直交する同一平面上に位置するようにされることにより,イコライザレバー15は,ほぼ水平に延びる本体部15aと,それに直交する突出部15bとからなるほぼL字状のものとすればよいことになるので,そのイコライザレバー15を単純な形状のものとすることができ,連動装置11を一層コンパクト化することができる。
【0044】
さらにまた,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fを非作動位置に向けて押圧付勢するセットスプリング34を設けるようにしているので,連動ブレーキ操作ケーブル6を牽引したときには,イコライザレバー15が,まず,前輪ブレーキ操作端部15Fとイコライザケース12の下壁12bとの接点Pを中心として上方向に回動し,後輪ブレーキ操作端部15Rに接続されているリヤブレーキケーブル9が牽引されて,後輪ブレーキBrが作動した後,若干のタイムラグを持って独立ブレーキ操作ケーブル5が牽引されて,前輪ブレーキBfが作動するようになる。したがって,車両のピッチングを抑えた安定した制動を行わせることができる。
【0045】
次に,図8及び図9に示す本発明の第2実施例について説明する。
【0046】
この第2実施例は,本発明を自動三輪車用連動ブレーキ装置に適用したもので,イコライザレバー15の後輪ブレーキ操作端部15Rに接続される後輪ブレーキ操作系の構成が前記第1実施例と異なるのみで,その他の構成は前実施例と同様であるので,図中,前実施例との対応部分には同一の符号を付すことにより,その説明を省略する。
【0047】
図8に示すように,一対の後輪にそれぞれ装備される後輪ブレーキBr1,Br2の作動レバー7r1,7r2には,それぞれリヤブレーキケーブル91,92が接続され,そのリヤブレーキケーブル91,92を牽引することによって,後輪ブレーキBr1,Br2がそれぞれ作動するようになっている。各後輪ブレーキBr1,Br2の作動レバー7r1,7r2は,それぞれ戻しスプリング10r1,10r2によって非作動方向に付勢されている。
【0048】
一方,図9に示すように,連動ブレーキ操作ケーブル6が接続されるイコライザレバー15の後輪ブレーキ操作端部15Rには,その端部15Rに嵌合される接続端子32を介して,金属製のリンクレバー36の一端が回動自在に連結されている。そのリンクレバー36の他端は,第2イコライザレバー37の中央部37aに回動自在に連結されている。そして,その第2イコライザレバー37の両端部37b,37cに,上述のリヤブレーキケーブル91,92がそれぞれ接続されている。その第2イコライザレバー37の中央部37aから両端部37b,37cまでの距離は等しくされている。こうして,リンクレバー36が引き上げられたときには,その両端部に接続されたリヤブレーキケーブル91,92がともに同じ力で牽引され,一対の後輪ブレーキBr1,Br2が同時に作動するようになっている。
【0049】
これらリンクレバー36及び第2イコライザレバー37は,連動ブレーキ操作ケーブル6が接続されるイコライザレバー15とともに,共通のイコライザケース12S内に収容されている。そのイコライザケース12Sの下壁12Sbには,第2イコライザレバー37の両端部37b,37cに対向する位置に,それぞれリヤブレーキケーブル91,92が貫通するボス261,262が一体に形成されており,それらのボス261,262によって,リヤブレーキケーブル91,92の各アウタケーシング9a1,9a2の端部がそれぞれ支承されている。したがって,リヤブレーキケーブル91,92は,イコライザケース12S内において,独立ブレーキ操作ケーブル5及び連動ブレーキ操作ケーブル6とほぼ平行となるように配置される。また,リンクレバー36も,それらのケーブル5,6に対して平行となる。
【0050】
この第2実施例の場合にも,独立ブレーキレバー3を操作して独立ブレーキ操作ケーブル5を牽引すると,その牽引力が前輪ブレーキBfの作動レバー7fに伝えられ,前輪ブレーキBfが作動する。このとき,独立ブレーキ操作ケーブル5に取り付けられている係合部材29もそのケーブル5とともに移動するが,その係合部材29は,独立ブレーキ操作ケーブル5の動作方向に延びる長孔16に沿って移動するので,イコライザレバー15には何らの力も作用しない。したがって,後輪ブレーキBr1,Br2は作動せず,前輪ブレーキBfのみが単独で作動する。
【0051】
また,連動ブレーキレバー4を操作して連動ブレーキ操作ケーブル6を牽引すると,その牽引力により,イコライザレバー15の中間部が引き上げられる。このとき,イコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fには,セットスプリング34により下方に向けての荷重が加えられているので,イコライザレバー15は,まず,前輪ブレーキ操作端部15Fとイコライザケース12Sの下壁12Sbとの接点Pを中心として上方向に回動し,後輪ブレーキ操作端部15Rに連結されているリンクレバー36が引き上げられる。したがって,第2イコライザレバー37が引き上げられ,その第2イコライザレバー37の両端部37b,37cにそれぞれ接続されているリヤブレーキケーブル91,92が牽引されて,後輪ブレーキBr1,Br2が最初に作動する。そして,その後,若干のタイムラグを持って独立ブレーキ操作ケーブル5が牽引されて,前輪ブレーキBfが作動する。
【0052】
このようにして,この第2実施例においても,独立ブレーキレバー3を操作したときには,前輪ブレーキBfが単独で作動し,連動ブレーキレバー4を操作したときには,まず,一対の後輪ブレーキBr1,Br2が同時に作動した後,若干のタイムラグを持って前輪ブレーキBfが連動して作動するようになる。したがって,第1実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
そして,この第2実施例によれば,前輪ブレーキBfと後輪ブレーキBr1,Br2とを連動作動させるイコライザレバー15と,一対の後輪ブレーキBr1,Br2同士を連動作動させる第2イコライザレバー37とが共通のイコライザケース12S内に収容されるようになるので,一つの連動装置11によって,自動三輪車のように複数の後輪を有する車両の場合にも,その各後輪のブレーキBr1,Br2をそれぞれ作動させることが可能となる。したがって,複数の後輪ブレーキBr1,Br2用の連動装置を別個に設ける必要がなくなり,設置スペースを最小限に抑えることができる。しかも,二つのイコライザレバー15,37が,剛性を有するリンクレバー36によって連結されるようになるので,操作力伝達機構の剛性低下を防止することができる。
【0054】
また,上記第1及び第2実施例のいずれの場合にも,連動装置11が,操向ハンドル2の両端部にそれぞれ設けられる独立ブレーキレバー3及び連動ブレーキレバー4からほぼ等距離の位置で,しかも,その操向ハンドル2の下方に位置するヘッドパイプ1hの近傍に配置されるようになるので,各ケーブル5,6,9あるいは91,92の配索が容易となる。上述のような構成により連動装置11全体がコンパクト化されるので,このように配索上有利なヘッドパイプ1hの近傍に連動装置11を設置することが可能となる。
【0055】
以上,本発明の好適実施例について説明したが,本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,上記各実施例では,1本の独立ブレーキ操作ケーブル5によって前輪ブレーキBfが単独で作動するものとしているが,その独立ブレーキ操作ケーブル5によって後輪ブレーキBrあるいはBr1,Br2が作動し,連動ブレーキ操作ケーブル6によって前輪ブレーキBfが連動して作動するようにすることもできる。その場合にも,前輪ブレーキBfを作動させるフロントブレーキケーブル8が接続されるイコライザレバー15の前輪ブレーキ操作端部15Fに,セットスプリング34による荷重を加えるようにすることにより,連動ブレーキレバー4の操作時,後輪ブレーキBrあるいはBr1,Br2が前輪ブレーキBfよりも先に作動するようにすることができる。また,係合部材29としては,上記実施例のように独立ブレーキ操作ケーブル5の上側部分と下側部分とを連結する接続端子27及び樹脂カバー28を利用する代わりに,独立ブレーキ操作ケーブル5全体を完全に1本のケーブルとして,その独立ブレーキ操作ケーブル5に適宜の係合部材29を取り付けるようにすることもできる。その場合,その係合部材29の独立ブレーキ操作ケーブル5への取付け位置を調整できるようにすれば,連動装置11の設置位置を任意に設定することも可能となる。さらに,セットスプリング34としては,図示されているようなコイルスプリングのほか,ゴムなどの弾性体を用いることもできる。
【0056】
【発明の効果】
以上のように,本発明の第1の特徴によれば,連動ブレーキ操作部材の操作によって牽引される連動ブレーキ操作ケーブルをイコライザレバーの中間部に接続するとともに,独立ブレーキ操作部材によって牽引される独立ブレーキ操作ケーブルに,イコライザレバーに対して係合・離間可能な係合部材を取り付けて,連動ブレーキ操作ケーブルの牽引時には,イコライザレバーが作動してその係合部材に係合することにより独立ブレーキ操作ケーブルがともに牽引され,独立ブレーキ操作ケーブルを牽引したときには,その係合部材がイコライザレバーから離間するようにしているので,独立ブレーキ操作ケーブルを,独立ブレーキ操作部材から前輪あるいは後輪ブレーキの作動レバーに至るまで連続する1本のものとしながら,前輪あるいは後輪ブレーキの単独作動と,前後輪ブレーキの連動作動とをそれぞれ行わせることができる。したがって,独立ブレーキ操作ケーブル全体を単一の部品とすることができ,部品点数を減らすことができる。また,その独立ブレーキ操作ケーブルには,イコライザレバーに対して係合・離間可能な係合部材を取り付けるのみでよいので,連動装置をコンパクト化することができる。したがって,その連動装置の配置の自由度を高めることができる。
【0057】
また,本発明の第2の特徴によれば,イコライザレバーに,独立ブレーキ操作ケーブルの動作方向に延びる突出部を一体に設けて,その突出部に,その突出部と同方向に延び,独立ブレーキ操作ケーブルに取り付けられている係合部材を摺動及び回動可能に支持する長孔を形成するようにしているので,独立ブレーキ操作ケーブルの単独動作時には,その係合部材が長孔によって案内されるようになる。その結果,係合部材が,常にイコライザレバーの一定の位置においてそのイコライザレバーと係合することになるので,連動装置の安定した作動を確保することができる。しかも,その長孔は,独立ブレーキ操作ケーブルの動作方向に形成されるので,その長孔が形成される突出部をイコライザレバーと一体に形成することができ,イコライザレバーの軽量小型化を図ることができる。
【0058】
さらに,本発明の第3の特徴によれば,独立ブレーキ操作ケーブル,連動ブレーキ操作ケーブル,及びフロントあるいはリヤブレーキケーブルが,イコライザレバーの近傍においてほぼ平行に配置されるようにしているので,それらのケーブル間でイコライザレバーを介して行われる操作力の伝達がスムーズとなり,連動装置に安定した作動を行わせることができる。しかも,それらのケーブルとイコライザレバーとの各連接部が,独立ブレーキ操作ケーブル及び連動ブレーキ操作ケーブルがともに非作動状態にあるとき,各ケーブルにほぼ直交する同一平面上に位置するようにしているので,イコライザレバーを単純な形状のものとすることができ,連動装置を一層コンパクト化することができる。
【0059】
さらにまた,本発明の第4の特徴によれば,イコライザレバーの前輪ブレーキ操作端部を非作動位置に向けて押圧付勢する弾性体を設けるようにしているので,連動ブレーキ操作ケーブルを牽引したときには,イコライザレバーが,まず,前輪ブレーキ操作端部の一点を中心として回動し,後輪ブレーキ操作端部によりリヤブレーキケーブルが牽引されて,後輪ブレーキが作動した後,若干のタイムラグを持ってフロントブレーキケーブルが牽引されて,前輪ブレーキが作動するようになる。したがって,車両のピッチングを抑えた安定した制動を行わせることができる。
【0060】
また,本発明の第5の特徴によれば,イコライザレバーの後輪ブレーキ操作端部に,複数の後輪ブレーキをそれぞれ作動させる複数本のリヤブレーキケーブルをイコライザ手段を介して接続したので,自動三輪車のように複数の後輪を有する車両の場合にも,一つの連動装置によって,その各後輪のブレーキをそれぞれ作動させることができる。したがって,複数の後輪ブレーキ用の連動装置を別個に設ける必要がなくなり,連動ブレーキ装置の設置スペースを最小限に抑えることができる。
【0061】
さらに,本発明の第6の特徴によれば,連動ブレーキ操作部材及び独立ブレーキ操作部材を,いずれも車体上部に設けられる操向ハンドルに軸支されたブレーキレバーとし,イコライザレバーを,操向ハンドルの下方に設けられるヘッドパイプの近傍に配置するようにしているので,連動装置が,各ケーブルの配索上有利なヘッドパイプの近傍に設置されることになり,その配索を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る自動二輪車用連動ブレーキ装置の系統図。
【図2】上記連動ブレーキ装置の要部の断面側面図。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図。
【図4】図2の4−4線に沿う断面図。
【図5】独立ブレーキ操作ケーブルを牽引したときの作動状態を示す,図2と同様の断面図。
【図6】連動ブレーキ操作ケーブルを牽引したときの初期の作動状態を示す,図2と同様の断面図。
【図7】連動ブレーキ操作ケーブルを更に強く牽引したときの作動状態を示す,図2と同様の断面図。
【図8】本発明の第2実施例に係る自動三輪車用連動ブレーキ装置の系統図。
【図9】図8の連動ブレーキ装置の要部の断面側面図。
【符号の説明】
1・・・・・車体
1h・・・・ヘッドパイプ
2・・・・・操向ハンドル
3・・・・・独立ブレーキレバー(独立ブレーキ操作部材)
4・・・・・連動ブレーキレバー(連動ブレーキ操作部材)
5・・・・・独立ブレーキ操作ケーブル
6・・・・・連動ブレーキ操作ケーブル
8・・・・・フロントブレーキケーブル(独立ブレーキ操作ケーブルの一部)
9,91,92・・・・リヤブレーキケーブル
11・・・・・連動装置
12,12S・・・・・・イコライザケース
15・・・・・イコライザレバー
15a・・・・本体部
15b・・・・突出部
15F・・・・前輪ブレーキ操作端部
15R・・・・後輪ブレーキ操作端部
16・・・・・長孔
27・・・・・接続端子(連接部)
29・・・・・係合部材
30,32・・接続端子(連接部)
34・・・・・セットスプリング(弾性体)
36,37・・イコライザ手段(リンクレバー,第2イコライザレバー)
37a・・・・中央部
37b,37c・・・・両端部
Bf・・・・・前輪ブレーキ
Br,Br1,Br2・・・・後輪ブレーキ

Claims (6)

  1. 一端部が前輪ブレーキ操作端部(15F),他端部が後輪ブレーキ操作端部(15R)とされたイコライザレバー(15)の中間部に連動ブレーキ操作ケーブル(6)を接続し,連動ブレーキ操作部材(4)の操作により前記連動ブレーキ操作ケーブル(6)を牽引したとき,前記イコライザレバー(15)の前輪ブレーキ操作端部(15F)によって前輪ブレーキ(Bf)を作動させるフロントブレーキケーブル(8)が牽引されるとともに,前記イコライザレバー(15)の後輪ブレーキ操作端部(15R)によって後輪ブレーキ(Br)を作動させるリヤブレーキケーブル(9)が牽引されて,それら前輪ブレーキ(Bf)と後輪ブレーキ(Br)とが連動して作動するようにした小型車両用連動ブレーキ装置において,
    前記フロントブレーキケーブル(8)及びリヤブレーキケーブル(9)のいずれか一方が,独立ブレーキ操作部材(3)に接続された1本の独立ブレーキ操作ケーブル(5)として形成されており,
    その独立ブレーキ操作ケーブル(5)に,前記イコライザレバー(15)に対して係合・離間可能な係合部材(29)が取り付けられ,
    前記連動ブレーキ操作部材(4)の操作による連動ブレーキ操作ケーブル(6)の牽引時には,前記イコライザレバー(15)が前記係合部材(29)と係合することによって前記独立ブレーキ操作ケーブル(5)が牽引され,前記独立ブレーキ操作部材(3)の操作により前記独立ブレーキ操作ケーブル(5)を牽引したときには,前記係合部材(29)が前記イコライザレバー(15)から離間するようになっていることを特徴とする,小型車両用連動ブレーキ装置。
  2. 請求項1記載の小型車両用連動ブレーキ装置において,
    前記イコライザレバー(15)に,前記独立ブレーキ操作ケーブル(5)の動作方向に延びる突出部(15b)が一体に設けられており,その突出部(15b)に,同方向に延び前記係合部材(29)を摺動及び相対回動可能に支持する長孔(16)が形成されていることを特徴とする,小型車両用連動ブレーキ装置。
  3. 請求項1又は2記載の小型車両用連動ブレーキ装置において,
    前記各ケーブル(5,6,8,9)が前記イコライザレバー(15)の近傍においてほぼ平行に配置されており,それらのケーブル(5,6,8,9)と前記イコライザレバー(15)との各連接部(27,30,32)が,前記連動ブレーキ操作ケーブル(6)及び独立ブレーキ操作ケーブル(5)がともに非作動状態にあるとき,前記各ケーブル(5,6,8,9)にほぼ直交する同一平面上に位置するようになっていることを特徴とする,小型車両用連動ブレーキ装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか記載の小型車両用連動ブレーキ装置において,
    前記イコライザレバー(15)の前輪ブレーキ操作端部(15F)を非作動位置に向けて押圧付勢する弾性体(34)が設けられていることを特徴とする,小型車両用連動ブレーキ装置。
  5. 請求項1記載の小型車両用連動ブレーキ装置において,
    前記イコライザレバー(15)の後輪ブレーキ操作端部(15R)に,複数の後輪ブレーキ(Br1,Br2)をそれぞれ作動させる複数本のリヤブレーキケーブル(91,92)がイコライザ手段(36,37)を介して接続されていることを特徴とする,小型車両用連動ブレーキ装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか記載の小型車両用連動ブレーキ装置において,
    前記連動ブレーキ操作部材(4)及び独立ブレーキ操作部材(3)が,いずれも,車体上部に設けられる操向ハンドル(2)に軸支されたブレーキレバー(3,4)であり,前記イコライザレバー(15)が,前記操向ハンドル(2)の下方に設けられるヘッドパイプ(1h)の近傍に配置されていることを特徴とする,小型車両用連動ブレーキ装置。
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