JP2004349434A - ナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、前記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る乾燥工程、及び前記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る焼成工程を含むことを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法などによって提供。
【選択図】 なし
【解決手段】炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、前記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る乾燥工程、及び前記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る焼成工程を含むことを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法などによって提供。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法に関し、さらに詳しくは、熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した配向性焼結体の製造方法に関する。本発明の配向性焼結体は、単結晶材料に代わって熱電変換材料用に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゼーベック効果を利用した熱発電に使用する熱電素子を製造するための熱電変換材料としては、例えばBi−Te系、Si−Ge系、Pb−Te系等が知られている。この中でBi−Te系の材料は、最も熱電特性が優れている材料として実用されているが、融点が低く、好適な熱電特性を示す作動温度域が狭いという特性上の課題と、構成材料が高価であり、毒性を有しているという問題があった。他のSi−Ge系、Pb−Te系等の熱電材料にも、材料が高価であったり、毒性を有している問題があった。このような技術的背景から、構成材料が安価で毒性が少なく、かつ高温度域でも好適な熱電特性を示す熱電変換材料が求められていた。
【0003】
この解決策として、複合金属酸化物が提案されており、代表的な熱電変換材料又は製造方法としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)複合酸化物は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれた3d遷移金属を含む複合酸化物(但し、該複合酸化物を構成する他の元素はLi、Na、Kからなる群から選ばれた元素、又は、Li、Na、Kからなる群から選ばれた元素及びMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Bi、Teからなる群から選ばれた元素である。)、特に化学式ACoxOy(式中、AはLi、Na又はKであり、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4である)で表されるものであり、製造方法は、炭酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物と酸化コバルト、炭酸コバルト等のコバルト化合物等を均一に混合し焼成する方法、また、コバルトを含む複合酸化物を単結晶として構成する場合には、その原料混合物を溶融し、その溶融物を徐冷しながら成長させる方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
(2)複合酸化物は、AxB2Oy(A:Na、Li、K、Ca、Sr、Ba、Bi、Y、La、B:Mn、Fe、Co、Ni、Cu、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有する複合酸化物であり、製造方法は、Mn、Fe、Co、Ni、Cuより選ばれた一種又は二種以上の元素の水酸化物又は酸化物の板状結晶とアルカリ金属塩とを混合し、この混合物を前記水酸化物又は酸化物粒子が一方向に配向するように成形し、この成形体を焼成することによりC軸方向が一方向に配向した焼結体を作製する方法である(例えば、特許文献2参照)。
(3)複合酸化物は、Bi−Te系材料と同等の高い熱電特性を有するNaCo2O4を代表とするアルカリ金属と遷移金属を含む酸化物であり、製造方法は、単結晶育成法である(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
これらの提案は、新たな熱電変換材料を提案しているが、それぞれ課題がある。例えば、単結晶育成法による製造方法で得られたNaCo2O4は、高い電子伝導度を有するCoO2ブロック層と絶縁層となるNa層がC軸方向に向かって交互に積層した層状構造であり、熱電特性に関して高い結晶異方性を持っており、有力な代替材料として注目されている。しかし、その製造方法は、工業的に高コストであり、かつ必要な大きさに成長させるのが難しいという問題があった。
【0006】
そこで、単結晶と同様の熱電変換性能を得ることが期待される、C軸方向に結晶配向性を持った多結晶の焼結体を得て、これを用いることがコスト低下の解決策として提案されている。前記の焼結体の製造方法として、アルカリ金属化合物等の粉末とコバルト化合物等の粉末を均一に混合し、焼成する方法が提案されているが、均一混合の度合が不十分であったり、さらに作製に長時間を要する板状形状のコバルト化合物が不可欠であるなどコスト上の問題があった。
以上の状況から、熱電変換材料用に好適なNaCo2O4単結晶材料を代替するため、C軸が一方向に配向した上記複合酸化物の製造方法が求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−321346号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献1】
特開2000−211971号公報(第1頁、第2頁)
【非特許文献1】
寺崎一郎、固体物理、1998年、第33巻、第3号、p.217−221
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した配向性焼結体の製造方法について、鋭意研究を重ねた結果、特定の条件でスラリーを形成する分散工程、混合粉を得る乾燥工程及び焼結体を得る焼成工程を含む製造方法を行ったところ、C軸が一方向に配向した配向性焼結体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した熱電変換材料用の配向性焼結体の製造方法において、
(1)炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、
(2)前記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る乾燥工程、及び
(3)前記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る焼成工程、を含むことを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記焼成工程において、700〜1000℃の温度で加熱処理することを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記遷移金属がコバルトであることを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法を詳細に説明する。
本発明のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法は、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した熱電変換材料用の配向性焼結体の製造方法において、所定のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、所定の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、スラリーを脱水して混合粉を得る乾燥工程、及び混合粉を加熱処理して焼結体を得る焼成工程を含む。
【0014】
本発明において、スラリーを形成する分散工程において、上記ナトリウム化合物を溶解させた水溶液に、水溶液中でこれと溶解及び反応しない上記遷移金属化合物粉末を分散させることが重要である。これによって、これに続く乾燥工程において、ナトリウム化合物が遷移金属化合物粉末を核として包み込んだ形態の混合粉が得られ、さらに焼成工程においてC軸方向に結晶配向性を持った粒子及び多結晶焼結体が得られる。この混合粉の分散の方法が、上記提案(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)と異なる。
【0015】
1.スラリーを形成する分散工程
本発明のスラリーを形成する分散工程は、炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を分散して、これらが均一に分散されたスラリーを形成する工程である。
【0016】
本発明に用いるナトリウム化合物は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である。ナトリウム化合物は、NaxA2Oy型複合酸化物のナトリウム元素を供給するが、最終生成物中に不純物を持ち込まないために、炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物を用いる。
【0017】
上記遷移金属化合物粉末は、上記ナトリウム化合物を溶解させた水溶液に溶解及び反応しない酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物粉末である。例えば、遷移金属がコバルトの場合、遷移金属化合物粉末としては、酸化コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルトのほかに、塩基性炭酸コバルトが用いられる。
【0018】
上記遷移金属としては、熱電変換材料用として特性が良好な、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられるが、この中で特にCoを用いるのが好ましい。
【0019】
上記遷移金属化合物粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、均一な組成の焼成粒子を得ることが困難となり、また加熱処理に長時間を要する。
上記遷移金属化合物粉末の粒子形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状の微粉末が用いられるが、この中で、特に板状であるものが層状結晶が得られ易いので望ましい。
【0020】
上記工程において、ナトリウム化合物と遷移金属化合物粉末の調合比は、特に限定されるものではなく、目標とするナトリウム含有金属酸化物の化学量論組成よりも過剰のナトリウム化合物を調合するのが好ましい。例えば、NaCo2O4の場合には、Na/Co(モル比)が0.5以上が好ましく、0.55〜0.70が特に好ましい。すなわち、Na/Co(モル比)が0.5未満では、加熱処理でのナトリウムの揮発にともなう化学量論組成(NaCo2O4のNa/Co=0.5)に対する不足が生じる。
【0021】
上記工程において、均一に分散されたスラリーを形成するため、上記微粉末を上記水溶液に投入しスラリーを形成して十分に撹拌を行う。この際、撹拌による分散操作だけではなく、超音波分散操作を行うのが効果的である。このための分散装置としては、特に限定されるものではないが、市販のソニファイアー(ブランソン社製)、T.K.ミクロマイザー(特殊機化工業製)、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等が用いられる。
【0022】
2.混合粉を得る乾燥工程
本発明の乾燥工程は、上記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る工程である。上記工程で使用するスラリーの乾燥装置としては、市販の噴霧乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、塗布掻き取り乾燥機、回転式乾燥機又は撹拌式乾燥機が好ましい。
上記工程で得られる混合粉は、均一に混合されて、ナトリウム化合物が遷移金属化合物粉末を核として包み込んだ形態になっている。
【0023】
3.焼結体を得る焼成工程
本発明の焼成工程は、上記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る工程である。
上記焼成工程における加熱処理の温度は、特に限定されるものではなく、700〜1000℃が好ましい。すなわち、温度が700℃未満では、配向性の高い複合酸化物の焼結体が得られない。一方、1000℃を超えると、複合酸化物の組成比の変動が大きくなり目的組成の焼結体が再現性良く得られない。
【0024】
上記焼成工程では、特に限定されるものではないが、前記混合粉をカ焼し得られたカ焼物を加圧成形する方法(A)、前記混合粉を成形し得られた成形体を焼成する方法(B)、又は前記混合粉を高温加圧成形する方法(C)のいずれかの焼成方法が用いられ、焼結体が得られる。
【0025】
上記工程の方法(A)で使用する加熱装置としては、特に限定されるものではないが、マッフル炉、ポット炉、管状炉、転動炉などが使用できる。
上記工程の方法(B)では、一軸加圧成形、静水圧成形、押出し成形、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード法などの成形法が用いられる。ここで、一軸加圧成形では、0.6〜6MPaの圧力で加圧成形することが好ましい。
【0026】
上記工程の方法(C)では、成形体に圧力を加えながら加熱することで、より緻密な焼結体を得ることができるホットプレス、HIP、放電プラズマ焼結装置などが用いられる。
以上、本発明の製造方法によって、特定の条件で均一に分散されたスラリーを形成する分散工程、混合粉を得る乾燥工程及び焼結体を得る焼成工程により、C軸が一方向に配向した配向性焼結体が得られる
【0027】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いたナトリウム含有コバルト酸化物(NaxCo2Oy)の結晶配向性の評価方法は、以下の通りである。
[結晶配向性の評価]
X線解析法で得た各面指数をJCPDSカード27−062の無配向のNaCo2O4のピークの相対強度と比較して、C軸方向の面指数(002)、(004)、(008)のピークの相対強度が30%以上大きく、他のピークの相対強度が50%以上小さくなっていることによって、C軸方向への配向度合を評価した。
【0028】
実施例1
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、濃度2モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液に、酸化コバルト粉末(平均粒径1μm、不規則形状)を投入し、超音波分散器を用いて30分間処理して均一なスラリーを調製した。ここで、Na/Co(モル比)を0.6となるように調合した。
次に、このスラリーを用いて、スプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して、水分含有率12重量%の混合粉を得た。次いで、得られた混合粉をセラミック製容器に入れ、空気雰囲気のマッフル炉中で、800℃で10時間保持してカ焼した。さらに、カ焼物を金型を用いて一軸加圧成形して焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。表1は、ナトリウム含有コバルト酸化物のX線解析ピーク相対強度を示す。また表中にJCPDSカード27−062の無配向NaCo2O4のピーク相対強度も示す。
【0029】
実施例2
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、濃度2モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液に、水酸化コバルト粉末(平均粒径3μm、板状)を投入し、超音波分散器を用いて30分間処理して均一なスラリーを調製した。ここで、Na/Co(モル比)を0.7となるように調合した。
次に、このスラリーを用いて、スプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して、水分含有率12重量%の混合粉を得た。次いで、得られた混合粉を乾燥機で水分含有率1重量%以下に乾燥した。さらに、カ焼物を到達温度950℃でホットプレスして焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、濃度2モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液に、水酸化コバルト粉末(平均粒径6μm、板状)を投入し、超音波分散器を用いて30分間処理して均一なスラリーを調製した。ここで、Na/Co(モル比)を0.65となるように調合した。
次に、このスラリーを用いて、スプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して、水分含有率12重量%のの混合粉を得た。次いで、得られた混合粉を金型を用いて一軸加圧成形した。さらに、得られた成形体を、酸素気流中880℃で20時間保持して焼成し焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、炭酸ナトリウム粉末(試薬1級、平均粒径1μm)と、酸化コバルト粉末(平均粒径1μm、不規則形状)を、V型乾式混合機で5時間処理して混合粉を得た。ここで、Na/Co(モル比)を0.6となるように調合した。次いで、得られた混合粉をセラミック製容器に入れ、空気雰囲気のマッフル炉中で、800℃で10時間保持してカ焼した。さらに、カ焼物を金型を用いて一軸加圧成形して焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1より、実施例1〜3では、混合粉の分散の方法で、本発明の方法に従って行われたので、面指数(002)、(004)及び(008)のピークの相対強度が強くなっており、C軸方向に配向していることが分かる。これに対して、比較例1では、混合粉の分散の方法がこれらの条件に合わないので、特定の方向に配向を示さないランダム配向であるので満足すべき結果が得られないことが分かる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法は、熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体を効率的に製造できる方法であり、その工業的価値は極めて大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法に関し、さらに詳しくは、熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した配向性焼結体の製造方法に関する。本発明の配向性焼結体は、単結晶材料に代わって熱電変換材料用に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゼーベック効果を利用した熱発電に使用する熱電素子を製造するための熱電変換材料としては、例えばBi−Te系、Si−Ge系、Pb−Te系等が知られている。この中でBi−Te系の材料は、最も熱電特性が優れている材料として実用されているが、融点が低く、好適な熱電特性を示す作動温度域が狭いという特性上の課題と、構成材料が高価であり、毒性を有しているという問題があった。他のSi−Ge系、Pb−Te系等の熱電材料にも、材料が高価であったり、毒性を有している問題があった。このような技術的背景から、構成材料が安価で毒性が少なく、かつ高温度域でも好適な熱電特性を示す熱電変換材料が求められていた。
【0003】
この解決策として、複合金属酸化物が提案されており、代表的な熱電変換材料又は製造方法としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)複合酸化物は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれた3d遷移金属を含む複合酸化物(但し、該複合酸化物を構成する他の元素はLi、Na、Kからなる群から選ばれた元素、又は、Li、Na、Kからなる群から選ばれた元素及びMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Bi、Teからなる群から選ばれた元素である。)、特に化学式ACoxOy(式中、AはLi、Na又はKであり、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4である)で表されるものであり、製造方法は、炭酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物と酸化コバルト、炭酸コバルト等のコバルト化合物等を均一に混合し焼成する方法、また、コバルトを含む複合酸化物を単結晶として構成する場合には、その原料混合物を溶融し、その溶融物を徐冷しながら成長させる方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
(2)複合酸化物は、AxB2Oy(A:Na、Li、K、Ca、Sr、Ba、Bi、Y、La、B:Mn、Fe、Co、Ni、Cu、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有する複合酸化物であり、製造方法は、Mn、Fe、Co、Ni、Cuより選ばれた一種又は二種以上の元素の水酸化物又は酸化物の板状結晶とアルカリ金属塩とを混合し、この混合物を前記水酸化物又は酸化物粒子が一方向に配向するように成形し、この成形体を焼成することによりC軸方向が一方向に配向した焼結体を作製する方法である(例えば、特許文献2参照)。
(3)複合酸化物は、Bi−Te系材料と同等の高い熱電特性を有するNaCo2O4を代表とするアルカリ金属と遷移金属を含む酸化物であり、製造方法は、単結晶育成法である(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
これらの提案は、新たな熱電変換材料を提案しているが、それぞれ課題がある。例えば、単結晶育成法による製造方法で得られたNaCo2O4は、高い電子伝導度を有するCoO2ブロック層と絶縁層となるNa層がC軸方向に向かって交互に積層した層状構造であり、熱電特性に関して高い結晶異方性を持っており、有力な代替材料として注目されている。しかし、その製造方法は、工業的に高コストであり、かつ必要な大きさに成長させるのが難しいという問題があった。
【0006】
そこで、単結晶と同様の熱電変換性能を得ることが期待される、C軸方向に結晶配向性を持った多結晶の焼結体を得て、これを用いることがコスト低下の解決策として提案されている。前記の焼結体の製造方法として、アルカリ金属化合物等の粉末とコバルト化合物等の粉末を均一に混合し、焼成する方法が提案されているが、均一混合の度合が不十分であったり、さらに作製に長時間を要する板状形状のコバルト化合物が不可欠であるなどコスト上の問題があった。
以上の状況から、熱電変換材料用に好適なNaCo2O4単結晶材料を代替するため、C軸が一方向に配向した上記複合酸化物の製造方法が求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−321346号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献1】
特開2000−211971号公報(第1頁、第2頁)
【非特許文献1】
寺崎一郎、固体物理、1998年、第33巻、第3号、p.217−221
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した配向性焼結体の製造方法について、鋭意研究を重ねた結果、特定の条件でスラリーを形成する分散工程、混合粉を得る乾燥工程及び焼結体を得る焼成工程を含む製造方法を行ったところ、C軸が一方向に配向した配向性焼結体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した熱電変換材料用の配向性焼結体の製造方法において、
(1)炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、
(2)前記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る乾燥工程、及び
(3)前記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る焼成工程、を含むことを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記焼成工程において、700〜1000℃の温度で加熱処理することを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記遷移金属がコバルトであることを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法を詳細に説明する。
本発明のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法は、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した熱電変換材料用の配向性焼結体の製造方法において、所定のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、所定の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、スラリーを脱水して混合粉を得る乾燥工程、及び混合粉を加熱処理して焼結体を得る焼成工程を含む。
【0014】
本発明において、スラリーを形成する分散工程において、上記ナトリウム化合物を溶解させた水溶液に、水溶液中でこれと溶解及び反応しない上記遷移金属化合物粉末を分散させることが重要である。これによって、これに続く乾燥工程において、ナトリウム化合物が遷移金属化合物粉末を核として包み込んだ形態の混合粉が得られ、さらに焼成工程においてC軸方向に結晶配向性を持った粒子及び多結晶焼結体が得られる。この混合粉の分散の方法が、上記提案(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)と異なる。
【0015】
1.スラリーを形成する分散工程
本発明のスラリーを形成する分散工程は、炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を分散して、これらが均一に分散されたスラリーを形成する工程である。
【0016】
本発明に用いるナトリウム化合物は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である。ナトリウム化合物は、NaxA2Oy型複合酸化物のナトリウム元素を供給するが、最終生成物中に不純物を持ち込まないために、炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物を用いる。
【0017】
上記遷移金属化合物粉末は、上記ナトリウム化合物を溶解させた水溶液に溶解及び反応しない酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物粉末である。例えば、遷移金属がコバルトの場合、遷移金属化合物粉末としては、酸化コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルトのほかに、塩基性炭酸コバルトが用いられる。
【0018】
上記遷移金属としては、熱電変換材料用として特性が良好な、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられるが、この中で特にCoを用いるのが好ましい。
【0019】
上記遷移金属化合物粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、均一な組成の焼成粒子を得ることが困難となり、また加熱処理に長時間を要する。
上記遷移金属化合物粉末の粒子形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状の微粉末が用いられるが、この中で、特に板状であるものが層状結晶が得られ易いので望ましい。
【0020】
上記工程において、ナトリウム化合物と遷移金属化合物粉末の調合比は、特に限定されるものではなく、目標とするナトリウム含有金属酸化物の化学量論組成よりも過剰のナトリウム化合物を調合するのが好ましい。例えば、NaCo2O4の場合には、Na/Co(モル比)が0.5以上が好ましく、0.55〜0.70が特に好ましい。すなわち、Na/Co(モル比)が0.5未満では、加熱処理でのナトリウムの揮発にともなう化学量論組成(NaCo2O4のNa/Co=0.5)に対する不足が生じる。
【0021】
上記工程において、均一に分散されたスラリーを形成するため、上記微粉末を上記水溶液に投入しスラリーを形成して十分に撹拌を行う。この際、撹拌による分散操作だけではなく、超音波分散操作を行うのが効果的である。このための分散装置としては、特に限定されるものではないが、市販のソニファイアー(ブランソン社製)、T.K.ミクロマイザー(特殊機化工業製)、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等が用いられる。
【0022】
2.混合粉を得る乾燥工程
本発明の乾燥工程は、上記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る工程である。上記工程で使用するスラリーの乾燥装置としては、市販の噴霧乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、塗布掻き取り乾燥機、回転式乾燥機又は撹拌式乾燥機が好ましい。
上記工程で得られる混合粉は、均一に混合されて、ナトリウム化合物が遷移金属化合物粉末を核として包み込んだ形態になっている。
【0023】
3.焼結体を得る焼成工程
本発明の焼成工程は、上記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る工程である。
上記焼成工程における加熱処理の温度は、特に限定されるものではなく、700〜1000℃が好ましい。すなわち、温度が700℃未満では、配向性の高い複合酸化物の焼結体が得られない。一方、1000℃を超えると、複合酸化物の組成比の変動が大きくなり目的組成の焼結体が再現性良く得られない。
【0024】
上記焼成工程では、特に限定されるものではないが、前記混合粉をカ焼し得られたカ焼物を加圧成形する方法(A)、前記混合粉を成形し得られた成形体を焼成する方法(B)、又は前記混合粉を高温加圧成形する方法(C)のいずれかの焼成方法が用いられ、焼結体が得られる。
【0025】
上記工程の方法(A)で使用する加熱装置としては、特に限定されるものではないが、マッフル炉、ポット炉、管状炉、転動炉などが使用できる。
上記工程の方法(B)では、一軸加圧成形、静水圧成形、押出し成形、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード法などの成形法が用いられる。ここで、一軸加圧成形では、0.6〜6MPaの圧力で加圧成形することが好ましい。
【0026】
上記工程の方法(C)では、成形体に圧力を加えながら加熱することで、より緻密な焼結体を得ることができるホットプレス、HIP、放電プラズマ焼結装置などが用いられる。
以上、本発明の製造方法によって、特定の条件で均一に分散されたスラリーを形成する分散工程、混合粉を得る乾燥工程及び焼結体を得る焼成工程により、C軸が一方向に配向した配向性焼結体が得られる
【0027】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いたナトリウム含有コバルト酸化物(NaxCo2Oy)の結晶配向性の評価方法は、以下の通りである。
[結晶配向性の評価]
X線解析法で得た各面指数をJCPDSカード27−062の無配向のNaCo2O4のピークの相対強度と比較して、C軸方向の面指数(002)、(004)、(008)のピークの相対強度が30%以上大きく、他のピークの相対強度が50%以上小さくなっていることによって、C軸方向への配向度合を評価した。
【0028】
実施例1
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、濃度2モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液に、酸化コバルト粉末(平均粒径1μm、不規則形状)を投入し、超音波分散器を用いて30分間処理して均一なスラリーを調製した。ここで、Na/Co(モル比)を0.6となるように調合した。
次に、このスラリーを用いて、スプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して、水分含有率12重量%の混合粉を得た。次いで、得られた混合粉をセラミック製容器に入れ、空気雰囲気のマッフル炉中で、800℃で10時間保持してカ焼した。さらに、カ焼物を金型を用いて一軸加圧成形して焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。表1は、ナトリウム含有コバルト酸化物のX線解析ピーク相対強度を示す。また表中にJCPDSカード27−062の無配向NaCo2O4のピーク相対強度も示す。
【0029】
実施例2
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、濃度2モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液に、水酸化コバルト粉末(平均粒径3μm、板状)を投入し、超音波分散器を用いて30分間処理して均一なスラリーを調製した。ここで、Na/Co(モル比)を0.7となるように調合した。
次に、このスラリーを用いて、スプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して、水分含有率12重量%の混合粉を得た。次いで、得られた混合粉を乾燥機で水分含有率1重量%以下に乾燥した。さらに、カ焼物を到達温度950℃でホットプレスして焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、濃度2モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液に、水酸化コバルト粉末(平均粒径6μm、板状)を投入し、超音波分散器を用いて30分間処理して均一なスラリーを調製した。ここで、Na/Co(モル比)を0.65となるように調合した。
次に、このスラリーを用いて、スプレードライヤーを使用して噴霧乾燥して、水分含有率12重量%のの混合粉を得た。次いで、得られた混合粉を金型を用いて一軸加圧成形した。さらに、得られた成形体を、酸素気流中880℃で20時間保持して焼成し焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
ナトリウム含有コバルト酸化物を合成して、結晶配向性を評価した。
まず、炭酸ナトリウム粉末(試薬1級、平均粒径1μm)と、酸化コバルト粉末(平均粒径1μm、不規則形状)を、V型乾式混合機で5時間処理して混合粉を得た。ここで、Na/Co(モル比)を0.6となるように調合した。次いで、得られた混合粉をセラミック製容器に入れ、空気雰囲気のマッフル炉中で、800℃で10時間保持してカ焼した。さらに、カ焼物を金型を用いて一軸加圧成形して焼結体を得た。その後、得られたナトリウム含有コバルト酸化物焼結体の結晶配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1より、実施例1〜3では、混合粉の分散の方法で、本発明の方法に従って行われたので、面指数(002)、(004)及び(008)のピークの相対強度が強くなっており、C軸方向に配向していることが分かる。これに対して、比較例1では、混合粉の分散の方法がこれらの条件に合わないので、特定の方向に配向を示さないランダム配向であるので満足すべき結果が得られないことが分かる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法は、熱電変換材料用に好適な、NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体を効率的に製造できる方法であり、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (3)
- NaxA2Oy(A:Co、Fe、Ni、Cu、Mn、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一方向に配向した熱電変換材料用の配向性焼結体の製造方法において、
(1)炭酸塩、重炭酸塩又は水酸化物から選ばれる少なくとも1種のナトリウム化合物を溶解させた水溶液中に、Co、Fe、Ni、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物、水酸化物又は炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物粉末を均一に分散して、スラリーを形成する分散工程、
(2)前記工程で得られるスラリーを脱水して、混合粉を得る乾燥工程、及び
(3)前記工程で得られる混合粉を加熱処理して、焼結体を得る焼成工程、を含むことを特徴とするナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法。 - 前記焼成工程において、700〜1000℃の温度で加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法。
- 前記遷移金属がコバルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナトリウム含有金属酸化物の配向性焼結体の製造方法。
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