JP2004347748A - 感光ドラム用基体及び感光ドラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂基材と導電材とを含む導電性樹脂組成物から形成される円筒状の感光ドラム用基体であって、該感光ドラム用基体の外周面の表面粗さとして、中心線平均粗さ(Ra)が0.2μmを超えて0.8μm未満であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8〜3.0μmであることを特徴とする感光ドラム用基体。
【効果】本発明の感光ドラムは、円筒状基体の表面粗さを、中心線平均粗さと最高高さという指標を用いて適正化したことにより、良好な印字性能を有するのみならず、優れた耐久性をも有する感光ドラムである。
【選択図】 図1
【効果】本発明の感光ドラムは、円筒状基体の表面粗さを、中心線平均粗さと最高高さという指標を用いて適正化したことにより、良好な印字性能を有するのみならず、優れた耐久性をも有する感光ドラムである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真装置に適した感光ドラム、及び、該感光ドラムを形成する際にその基体として好適な感光ドラム用基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファクシミリ、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光ドラムの表面を一様に帯電させ、この感光ドラム表面に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙,OHP,印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
このような静電記録プロセスに用いられる感光ドラムとしては、従来、図1に示した構造のものが一般に用いられている。
【0004】
即ち、良導電性を有する円筒状基体1の両端にフランジ2a,2bを嵌合固定すると共に、該円筒状基体1の外周面に感光層3を形成したものが一般に用いられており、通常、この感光ドラムは図1に示されているように、電子写真装置の本体aに設けられた支持軸4,4が両フランジ2a,2bに設けられた軸孔5,5に挿入されて回転自在に支持され、一方のフランジ2bに形成された駆動用ギア6にモータ等の駆動源と連結されたギア7を歯合させ、回転駆動されるようになっている。
【0005】
この場合、上記円筒状基体1を形成する材料としては、比較的軽量で機械加工性にも優れ、かつ良好な導電性を有することから、アルミニウム合金が従来から用いられている。
【0006】
しかしながら、アルミニウム合金からなる円筒状基体を用いる場合、厳しい寸法精度に対する要求や所定の表面粗さを満足するためには、個々に高精度の機械加工を施す必要があり、また両端に上記フランジ2a,2bを嵌合固定させるための加工を施す必要もあり、更に場合によっては表面の酸化などを防止するための加工を要する場合もある。このため、製造工数が多くなって製造コストが高くなる場合があるという点で、アルミニウム合金は感光ドラムを構成する円筒状基体用の材料として必ずしも満足し得るものではない。
【0007】
一方、樹脂基材にカーボンブラック等の導電材を混合分散させた導電性樹脂組成物を用いて、樹脂製の円筒状基体1を形成することも提案されており、例えば特許文献1:特開2001−249473号公報には、非常に表面平滑性に優れるため(中心線平均粗さ(Ra)が0.2μm以下であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8μm以下と規定。)、感光層を塗工形成する際の塗工性に優れ、良好な印字性能を有する感光ドラムが開示されている。
【0008】
しかしながら、このような非常に表面平滑性に優れた円筒状基体上に形成された感光層は、耐久性という観点からはなお改善の余地を有する。即ち、円筒状基体の外周面が非常に平滑であるために感光層との密着性が不十分となる場合があり、長時間使用する場合には感光層の剥離が発生したり、何らかの原因で異物が混入して感光ドラムに傷が発生した場合には、その傷を起点に感光層が広範囲に亘り剥離したりする場合があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−249473号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な印字性能を有し、且つ優れた耐久性を有する感光ドラム、及び、該感光ドラムを与える感光ドラム用基体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、導電性樹脂組成物からなる円筒状基体の外周面に感光層を塗工形成して感光ドラムを作成するに際し、該円筒状基体の外周面の中心線平均粗さ(Ra)値及び最高高さ(Rmax)値を、非常に限定された特定の範囲内に設定することによって、感光ドラムの良好な印字性能が損なわれることなく、円筒状基体の外周面の表面積増大効果やアンカー効果が発現され、感光層との接着性が大幅に改良される結果、感光ドラムの耐久性を大きく改善することが可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の感光ドラム用基体及び感光ドラムを提供する。
請求項1:
樹脂基材と導電材とを含む導電性樹脂組成物から形成される円筒状の感光ドラム用基体であって、該感光ドラム用基体の外周面の表面粗さとして、中心線平均粗さ(Ra)が0.2μmを超えて0.8μm未満であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8〜3.0μmであることを特徴とする感光ドラム用基体。
請求項2:
前記樹脂基材が、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主成分として含む請求項1記載の感光ドラム用基体。
請求項3:
前記導電材が、カーボンブラックを主成分として含む請求項1又は2記載の感光ドラム用基体。
請求項4:
前記導電材が、前記樹脂基材100重量部に対して10〜40重量部配合される請求項1,2又は3記載の感光ドラム用基体。
請求項5:
前記導電性樹脂組成物が、強化材として無機充填材を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光ドラム用基体。
請求項6:
前記無機充填材が、前記樹脂基材100重量部に対して15〜50重量部配合される請求項5記載の感光ドラム用基体。
請求項7:
請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光ドラム用基体の外周面に、感光層を形成してなる感光ドラム。
【0013】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明の感光ドラム用基体は、樹脂基材と導電材とを含む導電性樹脂組成物から形成される円筒状の感光ドラム用基体(以下、円筒状基体と略記することがある。)であって、該円筒状基体の外周面の表面粗さとして、中心線平均粗さ(Ra)が0.2μmを超えて0.8μm未満であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8〜3.0μmであることを特徴とする円筒状基体である。
【0014】
本発明における上記樹脂基材としては、円筒状基体を形成した際に、上記した範囲の表面粗さを達成し得るものであれば特に制限されないが、良好な耐薬品性及び機械的強度を有する観点から、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主成分(樹脂基材に占めるポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の割合が、50重量%以上であることを意味する。)として含むことが好ましい。
本発明における樹脂基材に占める、上記ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の割合としてより具体的には、通常50重量%以上、好ましくは55重量%以上、更に好ましくは60重量%以上である。上記ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂が樹脂基材に占める割合が50重量%未満であると、流動性が悪化し、成形が困難となる場合がある。
【0015】
上記ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合により得られるポリアミド樹脂、ジアミンとジカルボン酸の重縮合により得られるポリアミド樹脂が好適である。
このようなポリアミド樹脂としては、公知のものを使用することができ、例えばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミドMXD6、及びこれらの共重合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0016】
また、上記ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸とジオールとを主成分とする縮合反応により得られるポリエステル樹脂が好適である。
このようなポリエステル樹脂としては、公知のものを使用することができ、例えばPET、PTT、PBT、PEN、及びこれらの共重合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0017】
樹脂基材の主成分として、特にポリアミド樹脂を用いる場合には、樹脂基材自体、或いは、導電性樹脂組成物全体としての吸水率を低減する観点から、吸水率が0.3%以下の樹脂を配合することが好適である。導電性樹脂組成物全体としての吸水率が大きすぎると、高温高湿条件下において感光ドラムの寸法が大きく膨張する場合があり、感光体の機能に影響を与え、結果として画像品質に重大な影響を与える場合がある。より具体的には、導電性樹脂組成物全体としての吸水率は、0.4%以下とすることが好適である。
【0018】
上記吸水率が0.3%以下の樹脂(以下、ブレンド用樹脂という)としては、PP(ポリプロピレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)等を用いることができ、好ましくはPPS、PPEが、更に好ましくはPPEが用いられる。
【0019】
なお、上記ブレンド用樹脂を配合する場合、ブレンド用樹脂が樹脂基材中に占める割合としては、特に限定されるものではないが、通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。ブレンド用樹脂の配合量が少なすぎると、導電性樹脂組成物全体としての吸水率を低下させるという効果が得られない場合があり、一方ブレンド用樹脂の配合量が多すぎると、樹脂基材の有する良好な耐薬品性や機械的強度が損なわれる場合がある。
【0020】
本発明における樹脂基材に、上記のようなブレンド用樹脂を配合する場合、ブレンド用樹脂の分散性を高め、樹脂基材自体、或いは、導電性樹脂組成物全体としての強度などの機械特性や、吸水性、耐薬品性を向上させる観点から、樹脂基材とブレンド用樹脂の両方の樹脂成分に対して親和性の高い相溶化剤を適宜用いることが好ましい。このような相溶化剤としては、例えば、PA−PP系に対しては、マレイン酸変性ポリプロピレン(マレイン酸変性PP)、PA−PPS系やPA−PPE系に対しては、エポキシ変性ポリスチレン(エポキシ変性PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)共重合体などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。その使用量としても、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設定することができるが、樹脂基材中に占める割合として通常1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%程度とすることができる。
【0021】
本発明において、上記のような樹脂基材と共に導電性樹脂組成物に含まれる導電材としては、上記樹脂基材中に均一に分散することが可能なものであれば特に限定されないが、例えばカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉、導電性ガラス粉などが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用することも可能である。中でも、混練性、低コスト等の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。2種以上の導電材を併用する場合にも、低コスト等の観点から、カーボンブラックを主成分(導電材に占めるカーボンブラックの割合が、50重量%以上であることを意味する。)として含むことが好適である。
【0022】
上記導電材の配合量としては、特に制限されるものではないが、上記樹脂成分100重量部に対して通常10重量部以上、好ましくは15重量部以上、上限として通常40重量部以下、好ましくは35重量部以下である。樹脂基材100重量部に対する導電材の添加量が10重量部未満であると所望の導電性が得られない場合があり、一方40重量部を超えると、耐衝撃性、成形性が劣る場合がある。
【0023】
本発明における導電性樹脂組成物には、成形される円筒状基体の強度を向上させる観点から、無機充填材を配合することが好適である。この無機充填材としては、カーボン繊維、導電性ウィスカー、導電性ガラス繊維等の導電性繊維やウィスカー、ガラス繊維等の非導電性繊維などを用いることができる。この場合、上記導電性繊維は、導電材としても作用することができ、無機充填材として導電性繊維を用いることにより、上記導電材の使用量を低減することができる。また、このような無機充填材の形状としても特に限定されるものではないが、微小球状物質、フレーク状物質又はこれらの双方を用いることが可能である。このような充填材の添加により、表面平滑性を低下させることなく成形物の強度や剛性を効果的に向上させることができる。
【0024】
上記無機充填材の配合量としては、用いる充填材の種類や繊維の長さ、径などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、前記樹脂基材100重量部に対して通常15重量部以上、好ましくは20重量部以上、上限として通常50重量部以下、好ましくは45重量部以下である。樹脂基材100重量部に対する無機充填剤の添加量が15重量部未満であると機械的強度が劣る場合があり、一方50重量部を超えると、成形性が劣る場合がある。
【0025】
なお、本発明における導電性樹脂組成物には、必要に応じて上記導電材及び無機充填材の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、二硫化モリブデン(MoS2)、各種金属石鹸等の公知の添加剤を適量配合してもよい。また、通常用いられるシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを用いて、上記導電材や無機充填材に表面処理を施してもよい。
【0026】
本発明の感光ドラム用基体は、上記各成分により構成される導電性樹脂組成物によって円筒状基体を形成したものである。かかる導電性樹脂組成物により円筒状基体を成形する成形法としては、特に制限されるものではなく、射出成形法や押出成形法などの公知の方法を採用することができるが、通常は射出成形法が好ましく採用される。この場合、成形温度や射出圧力などの成形条件は、用いる材料などに応じた通常の条件とすることができる。
【0027】
上記円筒状基体の表面抵抗値としては、特に制限されるものではないが、好ましくは106Ω/□(オーム/スクエア)以下、より好ましくは105Ω/□以下、更に好ましくは104Ω/□以下である。
【0028】
本発明の感光ドラム用基体は、非常に限定された、特定の表面粗さを有するものであり、その表面粗さの指標として該円筒状基体の外周面の中心線平均粗さ(Ra)値としては、感光層の円筒状基体への良好な密着性を実現する観点から、0.2μmを超える値、好ましくは0.25μm以上、より好ましくは0.3μm以上、上限として0.8μm未満、好ましくは0.75μm以下、より好ましくは0.7μm以下である。
また、同じく表面粗さの指標として、該円筒状基体の外周面の最高高さ(Rmax)値としては、印字した際に黒点等の画像不良を発生させない観点から、3.0μm以下、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、下限として0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。
この様に円筒状基体の外周面の表面粗さを設定することにより、感光ドラムの良好な印字性能が損なわれることなく円筒状基体の外周面の表面積増大効果やアンカー効果が発現されて、感光層との接着性が大幅に改良される結果、作成される感光ドラムが耐久性に優れるものとなる。
【0029】
上記表面粗さの適正化の方法としては、特に制限されるものではないが、上記導電性樹脂組成物の組成の調整により行う方法が好ましく採用される。具体的には、用いる樹脂成分の種類や導電材の種類、無機充填剤を併用する場合にはその種類を適宜選択したり、これら各成分の混合割合を調節したりする方法が採用可能である。また、研磨処理等の機械的処理を行う方法、円筒状基体の射出成形を行う際の金型キャビティの表面粗さを変化させる方法等についても適宜採用することができる。
【0030】
本発明の感光ドラム用基体は、通常は図1に示されている円筒状基体1と同様に、両端面に別体に形成したフランジ2a,2bが嵌着固定されているが、フランジ2a,2bの少なくとも一方を感光ドラム用基体(円筒状基体1)と一体に成形することもできる。また、上記補強用の無機充填材を添加することにより、強度,剛性に優れた成形物を得ることができるので、フランジと共に、駆動用ギア6を一体に成形することもできる。
【0031】
本発明の感光ドラムは、図1に示すように、上記円筒状基体1に対応する本発明の感光ドラム用基体の外周面に感光層を形成したものであるが、感光層の形成方法としては、感光剤やバインダー成分をアルコールやクロロホルム、トルエンなどの有機溶媒に溶解した塗液を感光ドラム用基体の外周面に塗工し、加熱乾燥する方法を採用することができる。本発明の感光ドラム用基体の表面は上述のような特定の表面粗さを有し、実用上充分な平滑性を有すため、上記感光層形成の際には塗工性に優れ、欠陥のない良好な感光層を確実に形成することができる。また、このように作成された本発明の感光ドラムは優れた印字性能を有し、しかも感光層の密着性に優れるため、耐久性に優れた感光ドラムである。
なお、感光層を形成するための上記塗液としては、公知の組成の塗液を用いることができ、また、形成する感光層が複数層よりなる場合には、その層構成としても公知の構成とすることができる。
【0032】
本発明の感光ドラムは、図1に示された構成に限定されるものではなく、例えば両フランジ2a,2bに、軸孔5ではなく、外方へと突出する軸体(支持軸)を突設し、この軸体を用いて電子写真装置の本体に回転可能に取り付けることもできる。更に、各フランジ2a,2bの形状や感光ドラムの回転駆動方法など、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の感光ドラムは、円筒状基体の表面粗さを、中心線平均粗さと最高高さという指標を用いて適正化したことにより、良好な印字性能を有するのみならず、優れた耐久性をも有する感光ドラムである。
【0034】
【実施例】
以下、実施例,比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0035】
〔実施例1〜4、比較例1〜3〕
表1に示した配合組成で得た混合物を、バレル温度240℃に設定した31mm径の2軸押出機にて溶融混練して導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物を120℃で5時間乾燥した後、シリンダー温度240℃、金型温度110℃に設定した射出成型機により、外径30mm、長さ230mm、周壁の厚さ2mmの円筒状の感光ドラム用基体を成型した。なお、金型キャビティは鏡面加工したものを用い、いずれも同一の成型条件で成型を行った。
得られた感光ドラム用基体に140℃で2時間アニール処理を施し、常温にて冷却後、その外周面の表面粗さを測定した。
次に、この感光ドラム用基体に、下記の感光層形成用塗工液を浸漬塗工法により塗布し、各層とも120℃、60分間の条件で加熱乾燥させて感光層を形成し、感光ドラムを得た。
【0036】
感光層形成用塗工液
[第1層(UCL/下引き層)]
バインダー樹脂:N−メトキシメチル化ナイロン 6重量部
溶剤:ブタノール 100重量部
[第2層(CGL/電荷発生層)]
バインダー樹脂:ポリビニルブチラール 4重量部
感光剤(CGM):フタロシアニン 4重量部
溶剤:クロロホルム 100重量部
[第3層(CTL/電荷輸送層)]
バインダー樹脂:ポリカーボネート 10重量部
感光剤(CTM):ジフェニルヒドラゾン 8重量部
溶剤:クロロホルム 100重量部
【0037】
得られた感光ドラムを用いて、感光層の密着性、白色画像を印刷した際の黒点の有無を評価した。結果を表1に併記する。
【0038】
【表1】
PBT
ポリプラスチックス社製ポリエステル樹脂、「ジュラネックス2002」
PA612
デュポン社製ポリアミド樹脂、「ザイテル 151L」
C/B
旭カーボン社製カーボンブラック、「AX−015」
強化材A
川鉄鉱業社製無機充填剤、「ウォラストナイト PH−330」
強化材B
旭ファイバーグラス社製無機充填剤、「CS 03 MA FT740」
表面粗さ(μm)
感光ドラム用基体について、表面粗さ形状測定機「サーフコム」(東京精密社製)を用い、JIS B0601に準じて測定した。
密着性(剥がれたマス数)
JIS K 5400に従い、感光ドラム表面に2mm間隔で25マスの碁盤目を作成し、碁盤目テープ法で感光層の感光ドラム用基体に対する密着性を測定した。
黒点
感光ドラムを用いて白色画像を印刷し、黒点の有無を目視観察により調べた。
【0039】
表1の結果より、表面粗さとして中心線平均粗さと最高高さとが適正化された本発明の円筒状基体は感光層の密着性に優れ、該円筒状基体を用いて形成した感光ドラムは、白色画像を印刷した際に黒点を発生させることがなく、良好な印字性能を確実に発揮し得るものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】感光ドラムの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 円筒状基体
2a,2b フランジ
3 感光層
4 支持軸
5 軸孔
6 駆動用ギア
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真装置に適した感光ドラム、及び、該感光ドラムを形成する際にその基体として好適な感光ドラム用基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファクシミリ、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光ドラムの表面を一様に帯電させ、この感光ドラム表面に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙,OHP,印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
このような静電記録プロセスに用いられる感光ドラムとしては、従来、図1に示した構造のものが一般に用いられている。
【0004】
即ち、良導電性を有する円筒状基体1の両端にフランジ2a,2bを嵌合固定すると共に、該円筒状基体1の外周面に感光層3を形成したものが一般に用いられており、通常、この感光ドラムは図1に示されているように、電子写真装置の本体aに設けられた支持軸4,4が両フランジ2a,2bに設けられた軸孔5,5に挿入されて回転自在に支持され、一方のフランジ2bに形成された駆動用ギア6にモータ等の駆動源と連結されたギア7を歯合させ、回転駆動されるようになっている。
【0005】
この場合、上記円筒状基体1を形成する材料としては、比較的軽量で機械加工性にも優れ、かつ良好な導電性を有することから、アルミニウム合金が従来から用いられている。
【0006】
しかしながら、アルミニウム合金からなる円筒状基体を用いる場合、厳しい寸法精度に対する要求や所定の表面粗さを満足するためには、個々に高精度の機械加工を施す必要があり、また両端に上記フランジ2a,2bを嵌合固定させるための加工を施す必要もあり、更に場合によっては表面の酸化などを防止するための加工を要する場合もある。このため、製造工数が多くなって製造コストが高くなる場合があるという点で、アルミニウム合金は感光ドラムを構成する円筒状基体用の材料として必ずしも満足し得るものではない。
【0007】
一方、樹脂基材にカーボンブラック等の導電材を混合分散させた導電性樹脂組成物を用いて、樹脂製の円筒状基体1を形成することも提案されており、例えば特許文献1:特開2001−249473号公報には、非常に表面平滑性に優れるため(中心線平均粗さ(Ra)が0.2μm以下であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8μm以下と規定。)、感光層を塗工形成する際の塗工性に優れ、良好な印字性能を有する感光ドラムが開示されている。
【0008】
しかしながら、このような非常に表面平滑性に優れた円筒状基体上に形成された感光層は、耐久性という観点からはなお改善の余地を有する。即ち、円筒状基体の外周面が非常に平滑であるために感光層との密着性が不十分となる場合があり、長時間使用する場合には感光層の剥離が発生したり、何らかの原因で異物が混入して感光ドラムに傷が発生した場合には、その傷を起点に感光層が広範囲に亘り剥離したりする場合があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−249473号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な印字性能を有し、且つ優れた耐久性を有する感光ドラム、及び、該感光ドラムを与える感光ドラム用基体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、導電性樹脂組成物からなる円筒状基体の外周面に感光層を塗工形成して感光ドラムを作成するに際し、該円筒状基体の外周面の中心線平均粗さ(Ra)値及び最高高さ(Rmax)値を、非常に限定された特定の範囲内に設定することによって、感光ドラムの良好な印字性能が損なわれることなく、円筒状基体の外周面の表面積増大効果やアンカー効果が発現され、感光層との接着性が大幅に改良される結果、感光ドラムの耐久性を大きく改善することが可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の感光ドラム用基体及び感光ドラムを提供する。
請求項1:
樹脂基材と導電材とを含む導電性樹脂組成物から形成される円筒状の感光ドラム用基体であって、該感光ドラム用基体の外周面の表面粗さとして、中心線平均粗さ(Ra)が0.2μmを超えて0.8μm未満であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8〜3.0μmであることを特徴とする感光ドラム用基体。
請求項2:
前記樹脂基材が、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主成分として含む請求項1記載の感光ドラム用基体。
請求項3:
前記導電材が、カーボンブラックを主成分として含む請求項1又は2記載の感光ドラム用基体。
請求項4:
前記導電材が、前記樹脂基材100重量部に対して10〜40重量部配合される請求項1,2又は3記載の感光ドラム用基体。
請求項5:
前記導電性樹脂組成物が、強化材として無機充填材を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光ドラム用基体。
請求項6:
前記無機充填材が、前記樹脂基材100重量部に対して15〜50重量部配合される請求項5記載の感光ドラム用基体。
請求項7:
請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光ドラム用基体の外周面に、感光層を形成してなる感光ドラム。
【0013】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明の感光ドラム用基体は、樹脂基材と導電材とを含む導電性樹脂組成物から形成される円筒状の感光ドラム用基体(以下、円筒状基体と略記することがある。)であって、該円筒状基体の外周面の表面粗さとして、中心線平均粗さ(Ra)が0.2μmを超えて0.8μm未満であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8〜3.0μmであることを特徴とする円筒状基体である。
【0014】
本発明における上記樹脂基材としては、円筒状基体を形成した際に、上記した範囲の表面粗さを達成し得るものであれば特に制限されないが、良好な耐薬品性及び機械的強度を有する観点から、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主成分(樹脂基材に占めるポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の割合が、50重量%以上であることを意味する。)として含むことが好ましい。
本発明における樹脂基材に占める、上記ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の割合としてより具体的には、通常50重量%以上、好ましくは55重量%以上、更に好ましくは60重量%以上である。上記ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂が樹脂基材に占める割合が50重量%未満であると、流動性が悪化し、成形が困難となる場合がある。
【0015】
上記ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合により得られるポリアミド樹脂、ジアミンとジカルボン酸の重縮合により得られるポリアミド樹脂が好適である。
このようなポリアミド樹脂としては、公知のものを使用することができ、例えばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミドMXD6、及びこれらの共重合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0016】
また、上記ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸とジオールとを主成分とする縮合反応により得られるポリエステル樹脂が好適である。
このようなポリエステル樹脂としては、公知のものを使用することができ、例えばPET、PTT、PBT、PEN、及びこれらの共重合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0017】
樹脂基材の主成分として、特にポリアミド樹脂を用いる場合には、樹脂基材自体、或いは、導電性樹脂組成物全体としての吸水率を低減する観点から、吸水率が0.3%以下の樹脂を配合することが好適である。導電性樹脂組成物全体としての吸水率が大きすぎると、高温高湿条件下において感光ドラムの寸法が大きく膨張する場合があり、感光体の機能に影響を与え、結果として画像品質に重大な影響を与える場合がある。より具体的には、導電性樹脂組成物全体としての吸水率は、0.4%以下とすることが好適である。
【0018】
上記吸水率が0.3%以下の樹脂(以下、ブレンド用樹脂という)としては、PP(ポリプロピレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)等を用いることができ、好ましくはPPS、PPEが、更に好ましくはPPEが用いられる。
【0019】
なお、上記ブレンド用樹脂を配合する場合、ブレンド用樹脂が樹脂基材中に占める割合としては、特に限定されるものではないが、通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。ブレンド用樹脂の配合量が少なすぎると、導電性樹脂組成物全体としての吸水率を低下させるという効果が得られない場合があり、一方ブレンド用樹脂の配合量が多すぎると、樹脂基材の有する良好な耐薬品性や機械的強度が損なわれる場合がある。
【0020】
本発明における樹脂基材に、上記のようなブレンド用樹脂を配合する場合、ブレンド用樹脂の分散性を高め、樹脂基材自体、或いは、導電性樹脂組成物全体としての強度などの機械特性や、吸水性、耐薬品性を向上させる観点から、樹脂基材とブレンド用樹脂の両方の樹脂成分に対して親和性の高い相溶化剤を適宜用いることが好ましい。このような相溶化剤としては、例えば、PA−PP系に対しては、マレイン酸変性ポリプロピレン(マレイン酸変性PP)、PA−PPS系やPA−PPE系に対しては、エポキシ変性ポリスチレン(エポキシ変性PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)共重合体などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。その使用量としても、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設定することができるが、樹脂基材中に占める割合として通常1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%程度とすることができる。
【0021】
本発明において、上記のような樹脂基材と共に導電性樹脂組成物に含まれる導電材としては、上記樹脂基材中に均一に分散することが可能なものであれば特に限定されないが、例えばカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉、導電性ガラス粉などが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用することも可能である。中でも、混練性、低コスト等の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。2種以上の導電材を併用する場合にも、低コスト等の観点から、カーボンブラックを主成分(導電材に占めるカーボンブラックの割合が、50重量%以上であることを意味する。)として含むことが好適である。
【0022】
上記導電材の配合量としては、特に制限されるものではないが、上記樹脂成分100重量部に対して通常10重量部以上、好ましくは15重量部以上、上限として通常40重量部以下、好ましくは35重量部以下である。樹脂基材100重量部に対する導電材の添加量が10重量部未満であると所望の導電性が得られない場合があり、一方40重量部を超えると、耐衝撃性、成形性が劣る場合がある。
【0023】
本発明における導電性樹脂組成物には、成形される円筒状基体の強度を向上させる観点から、無機充填材を配合することが好適である。この無機充填材としては、カーボン繊維、導電性ウィスカー、導電性ガラス繊維等の導電性繊維やウィスカー、ガラス繊維等の非導電性繊維などを用いることができる。この場合、上記導電性繊維は、導電材としても作用することができ、無機充填材として導電性繊維を用いることにより、上記導電材の使用量を低減することができる。また、このような無機充填材の形状としても特に限定されるものではないが、微小球状物質、フレーク状物質又はこれらの双方を用いることが可能である。このような充填材の添加により、表面平滑性を低下させることなく成形物の強度や剛性を効果的に向上させることができる。
【0024】
上記無機充填材の配合量としては、用いる充填材の種類や繊維の長さ、径などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、前記樹脂基材100重量部に対して通常15重量部以上、好ましくは20重量部以上、上限として通常50重量部以下、好ましくは45重量部以下である。樹脂基材100重量部に対する無機充填剤の添加量が15重量部未満であると機械的強度が劣る場合があり、一方50重量部を超えると、成形性が劣る場合がある。
【0025】
なお、本発明における導電性樹脂組成物には、必要に応じて上記導電材及び無機充填材の他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、二硫化モリブデン(MoS2)、各種金属石鹸等の公知の添加剤を適量配合してもよい。また、通常用いられるシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを用いて、上記導電材や無機充填材に表面処理を施してもよい。
【0026】
本発明の感光ドラム用基体は、上記各成分により構成される導電性樹脂組成物によって円筒状基体を形成したものである。かかる導電性樹脂組成物により円筒状基体を成形する成形法としては、特に制限されるものではなく、射出成形法や押出成形法などの公知の方法を採用することができるが、通常は射出成形法が好ましく採用される。この場合、成形温度や射出圧力などの成形条件は、用いる材料などに応じた通常の条件とすることができる。
【0027】
上記円筒状基体の表面抵抗値としては、特に制限されるものではないが、好ましくは106Ω/□(オーム/スクエア)以下、より好ましくは105Ω/□以下、更に好ましくは104Ω/□以下である。
【0028】
本発明の感光ドラム用基体は、非常に限定された、特定の表面粗さを有するものであり、その表面粗さの指標として該円筒状基体の外周面の中心線平均粗さ(Ra)値としては、感光層の円筒状基体への良好な密着性を実現する観点から、0.2μmを超える値、好ましくは0.25μm以上、より好ましくは0.3μm以上、上限として0.8μm未満、好ましくは0.75μm以下、より好ましくは0.7μm以下である。
また、同じく表面粗さの指標として、該円筒状基体の外周面の最高高さ(Rmax)値としては、印字した際に黒点等の画像不良を発生させない観点から、3.0μm以下、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、下限として0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。
この様に円筒状基体の外周面の表面粗さを設定することにより、感光ドラムの良好な印字性能が損なわれることなく円筒状基体の外周面の表面積増大効果やアンカー効果が発現されて、感光層との接着性が大幅に改良される結果、作成される感光ドラムが耐久性に優れるものとなる。
【0029】
上記表面粗さの適正化の方法としては、特に制限されるものではないが、上記導電性樹脂組成物の組成の調整により行う方法が好ましく採用される。具体的には、用いる樹脂成分の種類や導電材の種類、無機充填剤を併用する場合にはその種類を適宜選択したり、これら各成分の混合割合を調節したりする方法が採用可能である。また、研磨処理等の機械的処理を行う方法、円筒状基体の射出成形を行う際の金型キャビティの表面粗さを変化させる方法等についても適宜採用することができる。
【0030】
本発明の感光ドラム用基体は、通常は図1に示されている円筒状基体1と同様に、両端面に別体に形成したフランジ2a,2bが嵌着固定されているが、フランジ2a,2bの少なくとも一方を感光ドラム用基体(円筒状基体1)と一体に成形することもできる。また、上記補強用の無機充填材を添加することにより、強度,剛性に優れた成形物を得ることができるので、フランジと共に、駆動用ギア6を一体に成形することもできる。
【0031】
本発明の感光ドラムは、図1に示すように、上記円筒状基体1に対応する本発明の感光ドラム用基体の外周面に感光層を形成したものであるが、感光層の形成方法としては、感光剤やバインダー成分をアルコールやクロロホルム、トルエンなどの有機溶媒に溶解した塗液を感光ドラム用基体の外周面に塗工し、加熱乾燥する方法を採用することができる。本発明の感光ドラム用基体の表面は上述のような特定の表面粗さを有し、実用上充分な平滑性を有すため、上記感光層形成の際には塗工性に優れ、欠陥のない良好な感光層を確実に形成することができる。また、このように作成された本発明の感光ドラムは優れた印字性能を有し、しかも感光層の密着性に優れるため、耐久性に優れた感光ドラムである。
なお、感光層を形成するための上記塗液としては、公知の組成の塗液を用いることができ、また、形成する感光層が複数層よりなる場合には、その層構成としても公知の構成とすることができる。
【0032】
本発明の感光ドラムは、図1に示された構成に限定されるものではなく、例えば両フランジ2a,2bに、軸孔5ではなく、外方へと突出する軸体(支持軸)を突設し、この軸体を用いて電子写真装置の本体に回転可能に取り付けることもできる。更に、各フランジ2a,2bの形状や感光ドラムの回転駆動方法など、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の感光ドラムは、円筒状基体の表面粗さを、中心線平均粗さと最高高さという指標を用いて適正化したことにより、良好な印字性能を有するのみならず、優れた耐久性をも有する感光ドラムである。
【0034】
【実施例】
以下、実施例,比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0035】
〔実施例1〜4、比較例1〜3〕
表1に示した配合組成で得た混合物を、バレル温度240℃に設定した31mm径の2軸押出機にて溶融混練して導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物を120℃で5時間乾燥した後、シリンダー温度240℃、金型温度110℃に設定した射出成型機により、外径30mm、長さ230mm、周壁の厚さ2mmの円筒状の感光ドラム用基体を成型した。なお、金型キャビティは鏡面加工したものを用い、いずれも同一の成型条件で成型を行った。
得られた感光ドラム用基体に140℃で2時間アニール処理を施し、常温にて冷却後、その外周面の表面粗さを測定した。
次に、この感光ドラム用基体に、下記の感光層形成用塗工液を浸漬塗工法により塗布し、各層とも120℃、60分間の条件で加熱乾燥させて感光層を形成し、感光ドラムを得た。
【0036】
感光層形成用塗工液
[第1層(UCL/下引き層)]
バインダー樹脂:N−メトキシメチル化ナイロン 6重量部
溶剤:ブタノール 100重量部
[第2層(CGL/電荷発生層)]
バインダー樹脂:ポリビニルブチラール 4重量部
感光剤(CGM):フタロシアニン 4重量部
溶剤:クロロホルム 100重量部
[第3層(CTL/電荷輸送層)]
バインダー樹脂:ポリカーボネート 10重量部
感光剤(CTM):ジフェニルヒドラゾン 8重量部
溶剤:クロロホルム 100重量部
【0037】
得られた感光ドラムを用いて、感光層の密着性、白色画像を印刷した際の黒点の有無を評価した。結果を表1に併記する。
【0038】
【表1】
PBT
ポリプラスチックス社製ポリエステル樹脂、「ジュラネックス2002」
PA612
デュポン社製ポリアミド樹脂、「ザイテル 151L」
C/B
旭カーボン社製カーボンブラック、「AX−015」
強化材A
川鉄鉱業社製無機充填剤、「ウォラストナイト PH−330」
強化材B
旭ファイバーグラス社製無機充填剤、「CS 03 MA FT740」
表面粗さ(μm)
感光ドラム用基体について、表面粗さ形状測定機「サーフコム」(東京精密社製)を用い、JIS B0601に準じて測定した。
密着性(剥がれたマス数)
JIS K 5400に従い、感光ドラム表面に2mm間隔で25マスの碁盤目を作成し、碁盤目テープ法で感光層の感光ドラム用基体に対する密着性を測定した。
黒点
感光ドラムを用いて白色画像を印刷し、黒点の有無を目視観察により調べた。
【0039】
表1の結果より、表面粗さとして中心線平均粗さと最高高さとが適正化された本発明の円筒状基体は感光層の密着性に優れ、該円筒状基体を用いて形成した感光ドラムは、白色画像を印刷した際に黒点を発生させることがなく、良好な印字性能を確実に発揮し得るものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】感光ドラムの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 円筒状基体
2a,2b フランジ
3 感光層
4 支持軸
5 軸孔
6 駆動用ギア
Claims (7)
- 樹脂基材と導電材とを含む導電性樹脂組成物から形成される円筒状の感光ドラム用基体であって、該感光ドラム用基体の外周面の表面粗さとして、中心線平均粗さ(Ra)が0.2μmを超えて0.8μm未満であり、かつ最高高さ(Rmax)が0.8〜3.0μmであることを特徴とする感光ドラム用基体。
- 前記樹脂基材が、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を主成分として含む請求項1記載の感光ドラム用基体。
- 前記導電材が、カーボンブラックを主成分として含む請求項1又は2記載の感光ドラム用基体。
- 前記導電材が、前記樹脂基材100重量部に対して10〜40重量部配合される請求項1,2又は3記載の感光ドラム用基体。
- 前記導電性樹脂組成物が、強化材として無機充填材を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光ドラム用基体。
- 前記無機充填材が、前記樹脂基材100重量部に対して15〜50重量部配合される請求項5記載の感光ドラム用基体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光ドラム用基体の外周面に、感光層を形成してなる感光ドラム。
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JP2020505553A (ja) * | 2017-01-24 | 2020-02-20 | エドワーズ リミテッド | ポンプシール |
-
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- 2003-05-21 JP JP2003142964A patent/JP2004347748A/ja active Pending
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