まず、この発明の画像形成装置が解決する課題は、上述したとおりであるが、さらに補足すると以下のとおりである。すなわち、近年、電子写真方式の画像形成装置に用いられる有機光導電体である有機感光体(organic photo conductor:OPCと略称される)においては、従来以上の耐久性が求められてきている。この有機感光体は、所定形状の支持体上に感光層を形成した構成とされ、画像形成装置では、この感光層を形成した有機感光体の表面に、順次、少なくとも、除電、帯電、露光、現像、転写からなる一連の処理を行なって、画像形成対象である転写材に対する1つの画像形成を完了している。この一連の処理を1周期とした画像形成プロセスを、画像形成装置は繰り返しており、前記のいずれかの処理が不充分で画質に影響を与えるほどに劣化するまで、有機感光体は、継続使用される。このような有機感光体を高耐久化するためには、耐摩耗性を改良する必要がある。この耐摩耗性の改良技術としては、(1)架橋型電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特開昭56−48637号公報参照)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特開昭64−1728号公参照)、(3)架橋型電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特開平4−281461号公報参照)等が挙げられる。
しかし、このような耐摩耗性改良によって、有機感光体は、従来よりも長期間使用できるようになったが、これに伴い従来見られなかったような現象が発生するようになってきた。その一つとして、有機感光体の1周目の帯電電位の低下という現象が現われるようになった。すなわち、所定に耐摩耗性が改良された有機感光体を、通常の画像成形条件下で用いた場合に、この画像成形を複数回繰り返して、なん周かに相当する時間経過中の有機感光体の表面電位の測定結果を、図3(a)のグラフに示す。このグラフから明らかなように、その1周目に相当する時間には、帯電処理された部分の表面電位が、通常の帯電電位よりも200V程度低い帯電電位が測定された。この有機感光体の1周目だけに帯電電位が低下するというこの現象は、従来の帯電立ち上がりの遅れ(いわゆるQi)に類似している。
すなわち、改良前の従来の有機感光体では、その経時使用による感光体の疲労現象として、図3(b)のグラフに示すように、該感光体の表面に与えた電荷の量と、該表面の電位の高さとは基本的に正比例の関係があるが、グラフ中のQi時間分だけ帯電電位の立ち上がりには遅れ時間が生じていた。つまり、帯電器で感光体の表面に電荷を与えても、このQi時間はその表面電位が上昇しない現象があった。このような感光体の静電疲労におけるQiの発生は、帯電の立ち上がり遅れ分に相当する電荷量(帯電極性は逆)が、感光層バルクにトラップされて蓄積されていることに起因する。
したがって、上記のQiの発生要因から、前記の耐摩耗性改良した有機感光体に特有な現象は、感光層バルク内に感光体の繰り返し使用により生じたトラップ電荷(ホール)が形成され、初回帯電つまり帯電1周目にこのトラップ電荷が放出され、これによって表面電荷がキャンセルされることにより生じると思われる。すなわち、帯電1周目だけに、前記の現象が現れるのは、トラップより放出されたホールのリカバリー(再トラップ)に時間が掛かるためと考えることができる。
有機感光体の起動時つまり初回の画像形成時における感光体の1周目の電位が極端に低い場合には、この1周目には画像形成できないことになり、たとえば複写機としてファーストコピーに遅れ時間が生じてしまう。すなわち、この場合には、感光体を用いた1周目の画像形成サイクルでは、少なくとも転写をキャンセルして、2周目の画像形成サイクルで、形成した画像を転写材に転写する。このように、上記の耐摩耗性改良した有機感光体を画像形成に用いた複写機では、コピースタートキーの押下後、コピーつまり画像が形成された転写材である用紙が排出されるまでの時間としてのファーストコピーが遅くなる。
また、ファーストコピーを遅らせたとしても、1周目の電位が低いまま現像器によりトナーが現像されてしまうような構成の場合には、感光体のクリーニング不良が発生し、2周目の画像にクリーニング不良が発生してしまう。特に、この場合、接触式転写装置を用いている場合には転写装置が汚れ、裏汚れが発生する。すなわち、転写装置側に、現像したトナーが移って、さらにこのトナーが、2周目の転写材の裏面に移って、裏汚れが生起してしまう。他方、本来消費する必要のないトナーを消費することになるので、トナー消費量が多くなる。これらのような、種々の問題が発生するという不具合があった。
他方、高耐久性を達成する手段として、従来よりも薄い感光体膜厚となるまで感光層が磨耗しても、感光体の使用を継続する方法もある。
通常有機感光体の表面電位を一定に保ち使用するため、感光体が削れるのに伴い電界強度が強くなり局部的に電荷がリークし地汚れのが発生して寿命となっていた。そのためより薄い膜厚まで使用できるよう、下引層を厚くしたり、あるいは2層構成にするなどして耐圧を高めることによって、より寿命延長を図っていた。
しかし、この場合も、耐摩耗性の改良で高寿命を達成した場合と同様に経時での1周目帯電電位が低いという課題が発生する。また、この方法を用いた構成の場合に、耐摩耗性を従来と同等に確保したときには、耐摩前後での膜厚変化の大きさが拡大する。このため、静電容量の変化も従来より大きくなることとあわさり、1周目帯電電位が低い現象が従来よりも発生しやすくなる。
そこでこの発明は、上記問題に対処して、耐摩耗性を改良したり、より薄い膜厚まで使用できるようにしたりして、高耐久化を確保した有機感光体に特有なその初回1周目の帯電電位が低いことに対処して、この初回1周目の帯電電位を所定に確保できる画像形成装置を提供するようにしている。
次に、この発明の第1の実施形態を図面により説明する。図1は、この第1の実施形態の高耐摩耗性を有した感光体および該感光体の周囲に配置された関連部材を示す概略断面図であり、図2は、従来構成の同感光体および該感光体の周囲に配置された関連部材を示す概略断面図である。
この第1の実施形態では、耐摩耗性を改良した感光体として、支持体上に、少なくとも、電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層からなる感光層を設け、該架橋型電荷輸送層は、少なくとも、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化して形成したものを用いている。
より詳細には、導電性支持体の外表面に、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層と、架橋型電荷輸送層とを、順次積層した構成の感光層を形成し、架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化して形成し、さらには該架橋型電荷輸送層の膜厚を、1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下に設定することにより、耐摩耗性、耐傷性が高く、かつ電気的特性が良好であるほか、特にクラックや膜剥がれが生じにくい感光体とした。
すなわち、電子写真感光体は、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の一連のプロセスが繰り返される条件下で使用され続け、この繰り返し過程で感光体が摩耗したり傷が発生したりして、形成する画像の劣化を引き起こし、画像形成の使用に堪えない時点で耐用寿命となる。この摩耗、傷をもたらす要因としては、(1)帯電、除電時の放電による感光体表面組成物の分解及び酸化性ガスによる化学的劣化の要因、(2)現像時におけるキャリア付着の要因、(3)転写時における紙が表面に摩擦接触する要因、(4)クリーニング時におけるクリーニングブラシやクリーニングブレード、及びこれらのクリーニング部材と感光体表面との間に介在するトナー、付着キャリアが表面に摩擦接触する要因などが挙げられる。これらの要因に強い感光体とするためには、表面層を高硬度、高弾性でかつ均一にすることが重要である。特に、この表面層を膜構造として診た観点からは、緻密でかつ均質な3次元網目構造を形成する方法が有望である。
そこで、この第1の実施形態の感光体は、その最外表面を占める架橋電荷輸送層を、3官能以上のラジカル重合性モノマーを硬化した架橋構造とし、3次元の網目構造を発達させたので、架橋密度が非常に高い高硬度、かつ高弾性の表面層が形成されることになり、感光体として高い耐摩耗性、耐傷性を確保できる。
すなわち、感光体表面の架橋密度つまり単位体積当たりの架橋結合数を増加させることが重要であるが、硬化反応において、瞬時に多数の結合を形成させているので、体積収縮による内部応力が発生する。この内部応力は、架橋層の膜厚が厚くなるほど増加する。このため電荷輸送層全層を硬化させると、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。これらのクラック現象や膜剥がれ現象は、初期的に発現しなくても、画像形成としての電子写真プロセスで繰り返し感光体が使用され続けて、帯電、現像、転写、クリーニングによる損傷要因や熱変動の影響を同感光体が受けるので、経時で発生しやすくなることもある。
これに対処する方法としては、(1)架橋層及び架橋構造に高分子成分を導入する、(2)1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーを多量に用いる、(3)柔軟性基を有する多官能モノマーを用いる、などの硬化樹脂層を柔らかくする、との3つの方法が挙げられる。しかし、これらのいずれの方法でも、架橋層の架橋密度が希薄となるので、飛躍的な耐摩耗性の向上は望めない。
そこで、さらにこの第1の実施形態の感光体では、電荷輸送層上に3次元の網目構造が発達した架橋密度の高い架橋型電荷輸送層を1μm以上、10μm以下の膜厚で設けたので、上記のクラックや膜剥がれを発生させず、かつ非常に高い耐摩耗性を確保できるようにした。すなわち、架橋型電荷輸送層を薄膜化したので、該輸送層自体の内部応力が大きくならず、しかも下層に電荷輸送層を有したので、その表面の架橋型電荷輸送層の内部応力を緩和できることなどによる。このため、架橋型電荷輸送層に高分子材料を多量に含有させる必要がなく、このようにしたときに生ずる、高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーや電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との不相溶が原因の傷やトナーフィルミングも起こりにくいことになる。
他方、電荷輸送層全層にわたる厚膜内部までを、光エネルギー照射して硬化する際には、電荷輸送性構造による吸収から、内深部への光透過が制限され、硬化反応が充分に進行しない現象が起こることがある。しかし、この感光体の架橋型電荷輸送層においては、10μm以下の薄膜としているので、その内深部まで均一にかつ同時的に硬化反応が進行して、内部に硬化ひずみによる残留応力を生成させずに済み、また表面と同様に内部の高い耐摩耗性を維持できる。すなわち、磨耗によって内部が露出しても、この露出した表面部分に高い耐摩耗性を確保できる。
また、この第1の実施形態の最表面層の形成においては、上記した3官能性ラジカル重合性モノマーに加え、さらに1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有させており、これが上記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。他方、このような官能基を有しない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合には、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する。また、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は、複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高くなるため、硬化樹脂構造の歪みが非常に大きくなり、架橋型電荷輸送層の内部応力が高まる原因となる。このため、上記のクラックや膜剥がれを抑制する効果が減少してしまう。これらに対して、第1の実施形態では、3官能性ラジカル重合性モノマーに、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有させたことにより、これが上記のようにその硬化時に架橋結合中に取り込まれるので、機械的強度を低下させる要因や、内部応力を高める要因を排除することができる。
このように構成した感光体では、良好な電気的特性を有して、長期間に渡り高画質化を維持できる。これは、架橋型電荷輸送層の構成材料として1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。すなわち、上記のように官能基を有しない電荷輸送物質を用いた場合には、この電荷輸送物質の析出、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇などのように繰り返し使用条件下における電気的特性の劣化が著しい。また2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合には、複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てなく、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすい。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細りなどの画像として明確に現れる。
これらに対して、この第1の実施形態の感光体は、その架橋型電荷輸送層において、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、架橋結合間にペンダント状に固定化されるので、電荷輸送物質としての析出、白濁現象を生起させずに済み、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保て、その画像形成に影響を及ぼす電気的特性を、長期間に渡り良好に維持できる。さらに、この第1の実施形態の感光体においては、下層の電荷輸送層として従来感光体よりも電荷トラップの少ない高移動度な設計が適用可能で、架橋電荷輸送層の電気的副作用を最小限に抑えることができる。
なお、電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーは、たとえばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつ、ラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指し、このラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば、いずれでもよい。
また、架橋型電荷輸送層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、たとえばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、かつ、1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。
このように構成した架橋型電荷輸送層の膜厚は、1μm以上、10μm以下、さらに好ましくは2μm以上、8μm以下とする。すなわち、10μmよりも厚い場合、上記のようにクラックや膜剥がれが発生しやすくなり、8μm以下ではその余裕度がさらに向上するため架橋密度を高くすることが可能であり、さらに耐摩耗性を高める材料選択や硬化条件の設定が可能となる。他方、ラジカル重合反応は、酸素阻害を受けやすく、つまり大気に接した表面では酸素によるラジカルトラップの影響で架橋が進まなかったり、不均一になりやすい。この現象が顕著に現れるのは表層1μm以下であり、このため、この1μm膜厚以下の架橋型電荷輸送層では耐摩耗性の低下や不均一な摩耗が起こりやすい。また、架橋型電荷輸送層を形成するためのその塗工工程においては、下層の電荷輸送層成分の混入が生ずる。このため、架橋型電荷輸送層の塗布膜厚が薄いと層全体に混入物が拡がり、硬化反応の阻害や架橋密度の低下をもたらす。したがって、これらの理由から、本発明の架橋型電荷輸送層は1μm以上の膜厚で良好な耐摩耗性、耐傷性を有するが、繰り返しの使用において局部的に下層の電荷輸送層まで削れた部分が生起するとこの部分の摩耗が増加し、帯電性や感度変動から中間調画像の濃度むらが発生しやすい。この結果、より長寿命、高画質化のためには、架橋型電荷輸送層の膜厚を2μm以上にすることが望ましい。
また、上記の支持体は、その外表面に感光層が形成される基体として、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を有した構成とされており、該基体を形成した材料が前記の値の導電性を有したり、非導電性材料の表面を導電性材料で被覆したりした構成とされている。すなわち、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの所定成分の金属材を、肉厚0.5乃至5.0mm程度で、所望の外径及び軸長を確保した円筒形状に押し出し加工等により成形し、この円筒形状の成形品を、必要に応じて表面研磨して、基体として用いている。あるいは、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属や、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したものを、基体として用いる。さらに、所定のエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも、導電性の支持体としての基体に用いることができる(特開昭52−36016号公報参照)。この他にも、所定形状の基体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工した構成としてもよく、この構成の場合には、たとえば適当な円筒基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブを被せて、導電性層を形成した構成を含むものとする。
上記のように構成された感光層を有した有機感光体は、その径がφ100の円筒形状の回転体とし、この外周表面の周速度としての線速を500mm/secと設定して、評価を行った。この感光体を、2つ目の帯電器を設けた実機の改造機に搭載して、評価した。すなわち、RICOH imagioNeo1050Proを改造した機械を使用して、評価を行った。
この第1の実施形態の2つの帯電器を設けた構成における有機感光体および有機感光体周囲を、図1に示し、従来の1つの帯電器を設けた構成における有機感光体および有機感光体周囲を、図2に示す。なお、同一の構成部材には、同じ符号を附して説明を簡略化する。
すなわち、この第1の実施形態は、電子写真方式の画像形成装置Aの主要部として、図1に示すように、上記の構成の有機感光体1の周囲に、2本ワイヤからなるスコロトロン(以降、主帯電器と称する)2と、シングルワイヤのスコロトロン(以降、副帯電器と称する)3との計2つの帯電器2,3を所定に設置した構成を主体にしている。
また第1の実施形態では、この感光体1と、少なくとも、この感光体1を帯電する帯電手段である主帯電器2および副帯電器3とを、所定形状の1つのケース内に収納してユニット化したプロセスカートリッジ100とされ、このプロセスカートリッジ100を、画像形成装置Aの図示しない画像形成装置本体内の所定箇所に着脱可能に構成されている。すなわち、感光体1は、ケース内に、その回転軸が、図示しない軸受け部材によって回転可能に軸支され、この回転軸に対して、駆動源として画像形成装置本体側に設けた図示しない駆動モータからの回転駆動力が伝達されて、所定の一定回転速度で安定的に図中の時計回り方向に回転駆動されるようになっている。そして、この感光体1の周囲には、その回転方向の上流側から下流側に向けて、除電手段としての除電ランプ4、副帯電器3、主帯電器2、現像手段としての図示しない現像器、クリーニング手段6が順次、配置されている。したがって、この感光体1の回転に伴い、該感光体1における外周表面上の所定部位は、前記の除電ランプ4、副帯電器3、主帯電器2、現像器、クリーニング手段6がそれぞれ形成した除電位置、副帯電位置、主帯電位置、現像位置、クリーニング位置を順次、通過し、再びに除電位置に復帰する。また、主帯電位置と現像位置との間には、図示しない露光装置によって露光位置が、現像位置とクリーニング位置との間には、感光体1と図示しない搬送手段とが接した位置である転写位置(転写部とも記す)が、それぞれ設定されている。
このように画像形成装置Aでは、感光体1を回転させて、この回転に伴い感光体1の外周表面の所定部位を、順次、上記の各位置を通過させ、これらの各位置での除電、副帯電、主帯電、露光、現像、転写、クリーニング、からなる画像形成サイクルを、1つの転写材に対して少なくとも1回以上行なっており、各転写材単位で繰り返している。すなわち、帯電の観点からは、初回起動時を基準にして、前記の所定部位が、帯電位置を通過する回数を1周目帯電、2周目帯電とカウントできる。
除電ランプ4は、クリーニング手段6により残留トナーを除去された感光体2表面の残留電荷を除電するための除電光源であり、この除電ランプ4は、除電用光強度や光量を所定に確保して前記の除電位置を照射する構成、たとえば複数個のLED(light emitting diode:発光ダイオード)を直線上に配列したLEDアレイの構成とされ、感光体2の軸方向(主走査方向)に沿って配設されている。
また、主帯電位置と現像位置との間には、露光位置が所定に設定されており、この露光位置に、画像形成装置本体側に設けた露光装置からのレーザ光Lが、所定に走査照射されて、静電潜像を形成するようにしている。
現像器は、たとえば感光体1表面に所定の微小間隔を設けて、感光体1に従動するようにその表面が回転するローラ外形状の現像スリーブを有し、この現像スリーブ上にトナーブラシを形成するように構成され、形成したブラシ状のトナーが感光体1表面の静電潜像に移動するようにしている。すなわち、現像スリーブの内側に磁石などの強磁性体を配置した構成により、または、図示しない電圧印加機構から現像スリーブに、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスを印加した構成により、現像スリーブの表面から放射状かつその外周面に一様な多数の電磁的または電気的な力線を突出した構成の磁気ブラシが形成され、この磁気ブラシに沿ってトナーが配列される。このように磁気的な作用で形成されたブラシ状のトナーは、そのトナー粒子のみが静電潜像に静電的に吸着する。したがって、感光体1表面上に生成された静電潜像は、現像器によってトナー像に可視像化される。
現像位置とクリーニング位置との間、つまり感光体1の外周における同図中の略直下位置には、転写位置が設定されており、この転写位置には、該感光体1の外周表面が、図示しない走行ベルトなどの搬送手段に接した構成の転写ニップが形成され、該搬送手段によって搬送されてくる転写材である用紙に、感光体1の外周表面上に形成したトナー像を、互いに同期した速度で接しさせて、用紙側に転写するようにしている。また、前記の転写位置での該外周(以降、転写部と称する)に、搬送手段を介して、対峙するように転写ローラなどが設けられ、走行ベルトを内周側から支えて転写ニップを安定化させるとともに、この転写ローラに前記のトナーとは逆極性(たとえばプラス極性)の転写バイアスを印加して、その転写ニップでの転写を確実化している。
クリーニング手段6は、転写位置を経た後の感光体1の表面から、該表面上に残留したトナーを除去してクリーニングするようにしており、このトナー除去手段として固定設置されて感光体1に対して摺動するクリーニングブレード7を設け、さらに回転方向におけるこのクリーニングブレード7の上流側に、感光体1に対して従動的に回転するファーブラシ8を設けた構成とされている。
すなわち、クリーニングブレード7は、合成ゴム製などの長板状弾性体とされたそのブレード本体の先端が、感光体1の外周表面に対して所定角度および所定圧を確保して接するように構成され、ブレード先端が外周表面に付着して運ばれてくる残留トナーを堰き止めて、掻き落とすようにしている。
ブラシ軸は、感光体1の回転軸と平行に、かつ、ブラシ毛の先端が所定に感光体1の外周表面に接するように配置されており、このブラシ軸は、感光体1の回転に同行するように、従動回転するか、所定に回転駆動されるか、のいずれかとされている。したがって、このように回転したファーブラシ8は、その回転に伴い、転写後の感光体1の外周表面がクリーニングブレード7に到達する前に、該外周表面を予備的にクリーニングするとともに、クリーニングブレード7が、掻き落として落下してくるトナーを受け止めかつすくい上げて、感光体1から離れたクリーニング手段6の内奥部に運び去る。
なお、11は、前記の内奥部に設けられた、回収トナー搬送手段としての回収コイルであり、この回収コイル11は、螺旋コイル形状の軸状部材とされ、その開始端が前記の内奥部の底部に配置され、その図示しない搬送経路およびこの搬送経路の末端が、画像形成装置本体側に設けた回収部か、現像装置かのいずれかに接続され、所定に回転駆動されており、この回転に伴いその螺旋が進む方向の末端に位置した、回収部か、現像装置かのいずれかに、クリーニング手段6内に回収したトナーを、運ぶように構成されている。
また、12は、前記の転写位置を通過しても感光体1の外周表面に付着して進んでくる転写材を剥離するための剥離爪12であり、この剥離爪12は、転写材の進行方向の先端と前記外周表面との間に差し込めるように、薄板状で鋭利な先端部を有し、この先端部を外周表面に接するように構成されている。したがって、この剥離爪12によって、転写材の先端を外周表面から分離して、これに後続した転写材の部分全体を感光体1の外周表面から剥離できるようにしている。さらに、13は、剥離爪12による剥離が不良で感光体1に転写材が巻き付いたことを検出するためのPセンサであり、14は、該センサ位置での感光体1の外周表面の帯電電位を非接触に検出する電位センサである。
主帯電器2は、感光体1側が開口された所定形状のケース内の略中央に、感光体1の軸長手方向に平行に、かつ感光体1の外周表面に対して並列的となるように2本の電導性ワイヤを互いに平行に配置して収納し、該ケースの開口には、グリッド状の電極が設けられるとともに、同開口とこの開口に対向した感光体1の外周表面との間には、所定の離間距離が確保されている。すなわち、主帯電器2は、コロナ放電によりこの感光体1の外表面に所定電位を付与するコロナワイヤとして2本のワイヤを主体にして、このワイヤを収納するシールド部材としてのアースされたケースと、このケースの開口にワイヤと感光体1との間に設けられ放電ムラを調整するグリッドワイヤとを有した構成のスコロトロン帯電装置とされている。
また、この主帯電器2の図示しない電気的な構成として、2本のワイヤに配線接続され所定電圧を印加可能に構成したメイン電源部と、グリッド電極に配線接続され所定電圧を印加可能に構成したグリッド電源部とが設けられ、これらの両電源部は、図示しない制御部に配線接続されて、この制御部によってそれぞれの印加動作が制御されている。すなわち、制御部は、電圧印加つまり放電の開始及び終了を指令する所定の信号を、それぞれの各電源部に送出し、この制御部からの信号に従って、各電源部は、所定電圧を出力して、接続された対象にそれぞれ所定電圧を印加するようにしている。
副帯電器3は、主帯電器2と同様に構成され、感光体1の近傍かつ該感光体1の回転方向における主帯電器2よりも上流側に配置されるとともに、1本の電導性ワイヤを設けたことだけが異なる。すなわち、感光体1側が開口された所定形状のケース内の略中央に、感光体1の軸長手方向に平行な1本の電導性ワイヤを収納し、該ケースの開口には、グリッド状の電極が設けられるとともに、同開口とこの開口に対向した感光体1の外周表面との間には、所定の離間距離が確保されている。またこの副帯電器3は、図示しない電気的な構成として、1本のワイヤに配線接続され所定電圧を印加可能に構成したメイン電源部と、グリッド電極に配線接続され所定電圧を印加可能に構成したグリッド電源部とが設けられ、これらの両電源部は、図示しない制御部に配線接続されて、この制御部によってそれぞれの印加動作が制御されている。
なお、副帯電器3および主帯電器2用の制御部は、これらに共通の1つの制御部を設け、この制御部によって、副帯電器3および主帯電器2の印加動作を制御してもよく、いずれにしても、両帯電器2,3は、連係して制御されるものとする。副帯電器3および主帯電器2用のそれぞれの両電源部、および制御部は、主帯電器2に付随してプロセスカートリッジ100内に設けられるか、画像形成装置本体内に設けられるか、のいずれかとされ、いずれにしても画像形成装置本体から電力が供給され、画像形成装置本体側に設けられた画像形成に関連した全体動作を制御する制御部からも、前記の印加動作の開始や完了タイミングなどのように、主帯電器2および副帯電器3の制御に必要な各種の情報を取得しているものとする。すなわち、全体動作を制御する制御部は、少なくとも、画像形成装置本体内の各部に設けられた画像形成に関連した各装置を制御しており、この制御に必要な各装置の動作状態や最終的な像転写対象である転写材の状態を、同様に各部に所定に設けられた各種のセンサ類からそれぞれが検知した情報として取得しているものとする。
また、主帯電の総電流は、−1800μA、副帯電の総電流は、−700μA、グリッド電圧は、初回起動時として毎朝の帯電電位が、−800Vになるように内蔵の電位センサを用いて調整している。さらに、この第1の実施形態では、主帯電器2および副帯電器3のいずれも、同時にON/OFFするように制御している。すなわち、両帯電器2,3には、同時に通電され、同時に該通電が停止されている。
図4に、この第1の実施形態の構成と従来構成とを対比した有機感光体の1周目帯電電位、3周目以後の帯電電位の変化をグラフを示す。
すなわち、主帯電のみで帯電した従来の構成例では、累積した通紙枚数の増加とともに、有機感光体1周目時の帯電電位が低下し、この1周目時の帯電電位と3周目時の帯電電位との差が大きくなっていくことが明確に示されている。そして、約2000K枚(約2000×千とした200万枚の累積枚数であり、以降、同様に表記する)通紙後には、1周目の帯電電位が−600Vまで低下している。結局、耐摩耗性を改良した感光体を、従来の主帯電だけで帯電した従来構成では、現像バイアスが−550Vとなる。帯電電位が絶対値で−680Vよりも低下した頃から、1周目の電位低下部分にトナーが現像され、つまり地汚れを含みトナー付着が多くなった。このため、初回画像形成結果としてのコピー1枚目が汚れたり、転写用ベルトが汚れるなどの異常が発生した。また、1500K枚通紙過ぎでは、2周目の帯電電位も低下していた。これらの汚れ等の不具合を解消するには、感光体3周目以後を、画像形成に使用しなくてはならず、画像形成装置Aが複写機の場合には、そのファーストコピーを大幅に遅らせて、使用するしかなかった。
これに対して、この第1の実施形態では、上記したように、主帯電器2に、副帯電器3を組合わせて用いることによって、図4中に△×で示すように、何ら問題はない状態になった。すなわち、1周目の帯電電位と3周目の帯電電位との間に生じる差は、1800K枚通紙時点でも、約20Vと小さいことが確認できた。
このため、感光体1周目から画像形成に使用できるようになり、ファーストコピータイムを遅らすことなく、高寿命の感光体を、使用できるようになった。
以上説明したように、この第1の実施形態によれば、感光層の耐摩耗性を改良した有機感光体を用いた電子写真方式の画像形成装置において、感光体の除電から露光までの間に、複数の帯電器を設けたので、経時で感光体1周目の帯電電位が低い現象が生じることを抑制できる。このため、装置として初回の画像形成動作を、遅延させることなく、もしくは、従来よりも速くできる。すなわち、画像形成装置が複写機の場合には、ファーストコピータイムを遅らすことなく、もしくは、従来よりも速くして、画像形成装置を使用できるようになる。このため、感光層の耐摩耗性を改良して高耐久化した有機感光体を用いたまま、この感光体を用いて、その初回の画像形成を高速化できる。この結果、感光体の損耗による交換頻度を抑制して、画像形成装置の運用コストを低減させながら、その初回の画像形成を高速化できるので、高性能化を図ることができる。特に、この第1の実施形態を、大量枚数を高速に画像形成処理できる業務用途などの画像形成装置に適用すれば、感光体の交換頻度を抑制したまま、該画像形成装置の処理能力を充分に発揮させることができ、しかも初回画像形成処理を迅速にできるので、使い勝手を向上できる。
次に、この発明の第2の実施形態を説明する。なお、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、この第2の実施形態では説明しない構成は、上記の第1実施形態と同一とする。
すなわち、たとえばRICOH社製のimagioNeo1050Proなどのように、現状の複写機で通常、使用している有機感光体層の構成は、支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層からなる3層構成のものとされている。この3層構成の有機感光体では、画像形成の進展に伴いその感光体膜厚が減少し、約800K枚数の通紙で寿命となっていた。この場合には、1周目の電位低下は20V以下と小さく問題ないレベルであった。
この第2の実施形態では、下引き層の下に、N−メトキシメチル化ナイロンからなる層を設け、さらに高寿命化を図った構成の有機感光体を用いた。すなわち、上記の支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層からなる3層構成において、さらに下引き層の下に、N−メトキシメチル化ナイロンからなる層を設けて、その初期静電容量C1と経時の静電容量C2との比C2/C1が、1.3以上に設定した有機感光体の構成とした。
この有機感光体を、従来の構成と、この第2の実施形態の構成とで、それぞれ画像形成つまり帯電させた場合の帯電状態を、対比して評価した結果を図5のグラフに示す。すなわち、図2に示した従来の有機感光体廻りの構成ままの帯電器が1つの構成である場合には、その測定値を図5のグラフ中に□の各プロット点で表した変化曲線から明らかなように、画像形成の枚数が進むにつれ1周目の帯電電位と3周目の帯電電位の差が大きくなり、1800K枚数時点では約200Vになる。上記の第1の実施形態で説明したように、この差として値が約70Vを越えたあたりから、不具合が発生する。従来通りの耐摩耗性の有機感光体においては、膜厚変化に伴う静電容量の変化が大きいこともあり、1周目電位低下の発生が避けられない。
これに対して、この第2の実施形態では、下引き層の下に、N−メトキシメチル化ナイロンからなる層を設けた有機感光体において、図1に示す帯電構成としたので、その測定値を図5のグラフ中に△の各プロット点で表した変化曲線から明らかなように、約1800K枚数の通紙でも、20V程度の帯電電位の差に押さえることができた。すなわち、前記のN−メトキシメチル化ナイロンの層を設けて、C2/C1の比が1.3以上となるように確保したので、1800K枚数程度の経時使用による磨耗で前記の層よりも上層が薄くなって、静電容量の変化が大きくなっても、前記の程度の帯電電位の差とすることができた。この結果、上記の第1の実施形態と同様に、感光体1周目から画像形成に使用できるようになり、ファーストコピータイムを遅延化することなく、高寿命の感光体が画像形成装置に使用できるようになった。
以上説明したように、この第2の実施形態によれば、有機感光体の初期静電容量C1と経時の静電容量C2の比C2/C1が1.35以上となる有機感光体を用いた電子写真装置において、除電から露光の間に複数の帯電器を有することによって、経時での1周目帯電電位が低い現象が抑制できる。したがって、画像形成装置が複写機の場合には、そのファーストコピータイムを遅らすことなく、もしくは、従来よりも速くして、使用できるようになる。このため、高耐久化した有機感光体を用いたまま、この感光体を用いて、その初回の画像形成を高速化できる。この結果、感光体の損耗による交換頻度を抑制して、画像形成装置の運用コストを低減させながら、その初回の画像形成を高速化できるので、高性能化を図ることができる。特に、この第2の実施形態を、大量枚数を高速に画像形成処理できる業務用途などの画像形成装置に適用すれば、感光体の交換頻度を抑制したまま、該画像形成装置の処理能力を充分に発揮させることができ、しかも初回画像形成処理を迅速にできるので、使い勝手を向上できる。
次に、この発明の第3の実施形態を説明する。なお、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、この第3の実施形態では説明しない構成は、上記の第1実施形態と同一とする。
すなわち、上記の第1,2の実施形態では、複数の帯電器を、その作像時には常時ONとしていた。このため、帯電器の個数が増えている分だけ、オゾンの発生量も増加している。このオゾン発生量の増加に伴い、オゾンフィルターの寿命が短くなる。また、第1の実施形態の構成による耐摩耗性を向上させた有機感光体においては、像流れ等の異常画像の発生を加速させることとなる。これらのため、副帯電器3の作動時間は、極力短い時間とした方がよいことになる。
すなわち、有機感光体起動時の1周目の帯電電位が低いのが問題であるから、少なくとも有機感光体起動時1周目には、副帯電器3を追加的に用いて帯電させることによって、1周目の電位低下を防止できると考えた。
そこでこの第3の実施形態は、上記の第1の実施形態か、第2の実施形態か、のいずれかの構成の高耐久性を確保した有機感光体を画像形成に用いた画像形成装置において、主帯電器2と副帯電器3との2つの帯電器を設けるとともに、有機感光体の起動時から有機感光体が2周目を経過するまでの期間中には、主帯電器2と副帯電器3との2つを用いて、それ以後は、主帯電器2のみの1つを用いて、感光体を帯電するように構成した。すなわち、主帯電器2および副帯電器3の帯電動作を制御する制御部は、帯電の周回回数をカウントして、このカウント数に基づき、主帯電器2および副帯電器3それぞれの帯電動作を、上記のように所定に制御する。
この結果、上記の図4に示した第1の実施形態とほぼ同じ結果が得られ、充分な効果があることが確認できた。したがって、このようにして、高寿命感光体においても、オゾンの発生の増加量をわずかな量に押さえ、なおかつ、ファーストコピータイムを遅速化することなく、画像形成装置として良好に使用することができる。
以上説明したように、この第3の実施形態によれば、該複数の帯電器の少なくとも一つは、少なくとも有機感光体起動時から有機感光体が1周する間以上、有機感光体を帯電するようにしているので、上記の第1の実施形態および第2の実施形態と比べて、オゾンの発生量が低減でき、フィルター寿命の向上、像流れの低減等の効果がある。すなわち、画像形成時には、常時、複数の帯電器すべてを帯電動作させた構成に比べて、感光体が1周するまでのように、その画像形成の起動時などの初期に、複数の帯電器による同時的な帯電動作を限定して、少なくとも、この初期以降は、1つの帯電器だけの帯電動作に切換えているので、帯電器から生じるオゾン発生量を削減できる。このため、発生したオゾンを除去するフィルターの耐久寿命の長期化が図れ、フィルター交換の手間が省けるとともに、消耗品としてのコストを低下できる。特に、第1の実施形態の耐摩耗性を確保した構成の有機感光体では、オゾン発生量の増加が像流れなどの異常画像の発生を促進するので、このようにオゾン発生量を削減すれば、像流れなどの異常画像の発生を抑制できる。このため、画質を安定化できる。
次に、この発明の第4の実施形態を説明する。なお、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、この第4の実施形態では説明しない構成は、上記の第1実施形態と同一とする。
画像形成装置が複写機の場合に、その両面コピー時には、画像形成対象としての転写紙の両面に順次、作像する、つまり転写紙の表面、次に裏面に作像するのが一般的である。すなわち、まず生成したトナー像を、転写紙の表面に、転写し定着した作像後に、転写紙を反転させて、同様にして裏面に作像するのが通常である。特に像形成の過程でデジタル処理を含んだデジタル機においては、一般的にインターリーフ機構が採用されており、ほぼ表面、裏面の順番に作像される。すなわち、転写部側から見て、該転写部側にその表面を向けた用紙と、その裏面を向けた用紙とが、交互に反復して繰り返し搬送されるように給紙され、該転写部を通過することになる。
このインターリーフ機構とは、デジタル機の構成上、用紙反転に時間がかかるような場合(1つ転写が終わって次の転写まで感光体が回転するのに要する時間よりも、用紙が反転機構を通って次の転写に入るまでの時間が極端に長い場合)、生産性を上げるインターリーフ手法を用いた機構であり、このインターリーフ手法では、基本的に、1枚の用紙の両面に対する作像を完了させてから、次の用紙の両面作像をするのではなく、ある用紙の反転を行っている間に、次の用紙を給紙して転写する方式である。すなわち、たとえばある用紙の表面に転写してこの用紙を反転操作する最中に、次の用紙を転写する、つまりこの用紙の転写に後続して転写する次の用紙として、既にその表面に作像され反転を完了した用紙を、給紙して転写するようにしている。また、転写部を通過するある用紙と、次の用紙との間には、該転写部の通過から数えて4,5枚程度の用紙が介在するのが一般的である。
裏面に作像する裏面印字時には、転写紙が一度定着されているので、転写紙自体の電気的な抵抗は、通常より高くなっている。このため、転写紙自体のエッジ部から感光体に回り込んで流れる電流が多くなる。この結果、転写紙外の位置した部分の有機感光体の表面がその転写時に、より帯電されやすくなっている。
この際に、通常のネガポジ方式の作像エンジンであれば、転写源となる有機感光体がマイナス帯電(以降、−帯電と記す)され、トナーが−帯電され、そして被転写側の部材に+の電流を流すことによって、感光体から転写紙にトナーを移動させた転写を行なっている。このため、この転写によって除電できない+電荷が、有機感光体に付与されることになる。通常ならば問題が生じないが、上記したように転写紙の抵抗が高い場合などには、転写によって過剰に有機感光体が+帯電してしまい、このため副作用が生じる場合がある。
すなわち、この副作用として、例えば、図6に示すように、表面転写時と裏面転写時との間で、有機感光体に対する用紙の通紙位置が、該有機感光体の長手方向に若干ズレが生じた場合に、つまり用紙を搬送移動させた通紙方向に対して直交する方向に若干ズレた状態で用紙が搬送された場合には、この用紙の裏面紙エッジに相対した感光体の外周表面部分が、転写により過剰に+帯電されてしまうので、次の用紙に対する帯電工程では、電位が充分上昇せずに、次の用紙上に地汚れが発生することがある。なお、同図6中に横一列に並べて示された各用紙は、上記のインターリーブ機構を介した用紙を含んでおり、たとえば同6中の最左側の1枚目の用紙はその表面に作像され、次の2枚目の用紙としては、1枚目の用紙に対して5枚先に表面作像されて先行した用紙の裏面に作像していること、つまり5枚先行して表面に作像され反転されて転写部側に向いた用紙の裏面に作像していることを表わしている。すなわち、同一の用紙を、表面作像の次にただちに後続して、裏面作像してない。
図7(a),(b)のグラフは、それぞれ図6中の感光体におけるW1位置とW2位置とでの帯電電位の測定結果である。
ズレた状態で用紙が搬送されても、この感光体における用紙がズレた側のW2位置では、図7(b)に示すように、帯電電位の変動が少なく、その電位差が通常よりも20V程度低いだけで、さほど影響を受けてないことが解かる。これに対して、図7(a)に示すように、感光体における用紙がズレて離れた側のW1位置での帯電電位が通常よりも大幅に100V程度低く、転写の電荷の影響を受けていることが解かる。したがって、このような場合には、帯電器の帯電能力を増強することによって、上記の転写の際の+の電荷の影響を減らすことができる。
すなわち、この第4の実施形態では、感光体1の外周表面において、その裏面部分に相当する部分が転写部を通過し、この通過した部分を帯電させる際には、主帯電器2に加えて副帯電器3によって帯電させるように構成した。このため、図7(c)のグラフに示すように、上記の条件下での感光体1の外周表面に対する、転写の+電荷による影響をほぼなくすことができた。
もちろん、上記の第1および第2の実施形態のように、画像形成の際には、常時、両帯電器2,3をONして両方を帯電動作させてもよいが、第3の実施形態に記したように、オゾン発生量の増加による副作用が発生する。このため、この第4の実施形態では、上記の問題に対処した必要最小限に副帯電器3を帯電動作させている。したがって、このように副帯電器3の作動時間を短くすることによって、オゾンフィルターの寿命が延び、また耐磨耗性を向上させた第1の実施形態のように構成された有機感光体での像流れ発生の防止に有利となる。
以上説明したように、この第4の実施形態によれば、該複数の帯電器の少なくとも一つは、両面印字時に、少なくとも有機感光体の裏面印字箇所が、転写部を通過して帯電される際に、有機感光体を帯電させているので、裏面時の転写の影響を受けずに良好な画像が得られる。すなわち、有機感光体の裏面印字箇所が、転写部を通過して帯電される際には、通常の帯電器に、他の帯電器を追加して、該裏面印字箇所に対する帯電力を増強しているので、前記の転写部で転写した際に被転写側からの電荷の影響を受けて、前記の裏面印字箇所で、帯電電位の上昇が不足することを回避できる。
他方、このように、裏面印字箇所が帯電位置を通過する期間にだけ、他の帯電器を帯電動作させているので、この他の帯電器の帯電動作によって追加的に発生するオゾン発生量を、必要最小限の量に留めることができる。このため、発生したオゾンを除去するフィルターの耐久寿命の長期化が図れ、フィルター交換の手間が省けるとともに、消耗品としてのコストを低下できる。
なお、上記の第1の実施形態ないし第3の実施形態については、これらの実施形態を、トナー像が一旦中間転写媒体上に転写され、この中間転写媒体上のトナー像を転写材に転写する構成の中間転写方式の画像形成装置に、適用してもよく、同様な効果が得られる。