以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、感光層の膜厚評価に用いる基準電流が像担持体の使用開始後に更新される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
したがって、帯電部材は、帯電ローラ以外に、帯電ブラシ、帯電ベルト、磁気ブラシ、帯電ブレード等を採用でき、これらを像担持体に対して近接状態で配置して交流電圧を用いて電荷の授受を行う場合も含む。画像形成装置は、露光方式、現像方式、定着方式、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/記録材搬送型/枚葉搬送型の区別無く実施できる。本実施形態では、トナーを用いた画像形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図2は画像形成装置の制御系のブロック図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト31に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
画像形成部Paでは、感光ドラム11aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト31に転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム11bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト31に転写される。画像形成部Pc、Pdでは、感光ドラム11c、11dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト31に転写される。
中間転写ベルト31に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ二次転写される。記録材Pは、記録材カセット20からピックアップローラ21によって引き出され、分離ローラ22で1枚ずつに分離してレジストローラ23へ給送される。レジストローラ23は、中間転写ベルト31のトナー像にタイミングを合わせて二次転写部T2へ記録材Pを送り込む。
四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、中間転写ベルト31から曲率分離して定着装置40へ送り込まれる。定着装置40は、内部にハロゲンヒータの熱源を備えた定着ローラ41aに下方から加圧ローラ41bを圧接して記録材の加熱ニップを形成する。定着装置40は、トナー像を担持した記録材Pを加熱ニップで加熱加圧して、記録材Pの表面に画像を定着させる。その後、記録材Pが排出ローラ63から機体外のトレイ64へ排出される。
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれの現像装置14a、14b、14c、14dで用いるトナーの色が異なる以外は、実質的に同一に構成される。そのため、以下では、構成部材に付した符号末尾のa、b、c、dを除いて、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを一般的に画像形成部Pとして説明する。
画像形成部Pは、感光ドラム11を囲んで、帯電ローラ12、露光装置13、現像装置14、一次転写ローラ35、ドラムクリーニング装置15を配置している。感光ドラム11は、所定のプロセススピードで矢印方向に回転する。帯電ローラ12は、感光ドラム11を一様な負極性の暗部電位VDに帯電させる。露光装置13は、各色の分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム11の表面に画像の静電像を書き込む。現像装置14は、トナーを感光ドラム11に供給して静電像をトナー像に現像する。
一次転写ローラ35は、中間転写ベルト31を押圧して、感光ドラム11と中間転写ベルト31との間に一次転写部を形成する。一次転写ローラ35に直流電圧が印加されることにより、感光ドラム11に担持されたトナー像が、中間転写ベルト31へ転写される。
ドラムクリーニング装置15は、感光ドラム11にクリーニングブレードを摺擦させて、一次転写部を通過した感光ドラム11の表面に付着した転写残トナーを回収する。ドラムクリーニング装置15は、カウンターブレード方式を用い、クリーニングブレードの自由長は8mmである。クリーニングブレードはウレタンを主体とした弾性ブレードで、感光ドラム11に対して、線圧にて約35g/cmの押圧力で当接している。
中間転写ベルト31は、テンションローラ33、対向ローラ34、及び駆動ローラ32に掛け渡して支持され、駆動ローラ32に駆動されて矢印R2方向に回転する。二次転写部T2は、対向ローラ34に支持された中間転写ベルト31に二次転写ローラ36を当接して構成される。二次転写ローラ36に直流電圧が印加されることで、中間転写ベルト31に担持されたトナー像は、二次転写部T2を搬送される記録材Pへ二次転写される。ベルトクリーニング装置37は、中間転写ベルト31の表面にクリーニングブレードを当接させて転写残トナーや紙粉を回収する。
感光ドラム11、帯電ローラ12、及びドラムクリーニング装置15は、装置本体に対して一体に着脱可能なプロセスカートリッジに組み立てられている。プロセスカートリッジを交換することによって、感光ドラム11、帯電ローラ12、及びドラムクリーニング装置15を消耗品として一括で交換できる。プロセスカートリッジの形態は、サービスマンが交換するものからユーザーが自ら交換できるものまで様々である。ここでは、装置本体に設置されているディスプレイ上に表示される交換の手順に従って、ユーザーが自ら交換できる仕組みである。
図2に示すように、制御部201は、各ユニットの動作を監視、制御しつつ、各ユニット間の命令系統を統括することで、画像形成装置100全体の動作を取りまとめて、画像形成を実行する。
制御部201は、各ユニット内の機構の動作を制御するための制御基板やモータドライブ基板(不図示)などから成る。また、環境センサ50は、装置内で熱源となる定着装置40などの影響を受けずに装置周囲の環境温度、湿度が正確に測定できる位置に配置され、制御部201は、環境センサ50の温度湿度出力に基づいて様々な制御を実行する。
<感光ドラム>
図3は感光ドラムの感光層の構成の説明図である。図3に示すように、感光ドラム11は、アルミニウム製シリンダの支持体Aの外周面に帯電極性が負極性のOPC感光体層Eを形成している。感光体層Eは、アゾ顔料を用いたキャリア発生層の上にヒドラゾンと樹脂を混合したキャリア輸送層を29μmの厚さに積層した負極性有機半導体層(OPC層)である。
OPC感光体層は、支持体Aの上に、下引き層B、電荷発生層C、電荷輸送層Dの順で積層構成された有機感光体である。支持体Aとしては、導電性を示すものであって硬度の測定に影響を与えない範囲内のものであれば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレスなどの金属や合金をドラム状に成形したものなどが、特に制限なく使用できる。
下引き層Bは、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、または感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層Bの材料の例は、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロンである。膠およびゼラチンを用いる場合もある。これらを適当な溶剤に溶解し、支持体A上に塗布する。下引き層Bの膜厚は、0.1μm〜2μmが好ましい。
電荷発生層Cと電荷輸送層Dとを機能分離して積層させた積層型感光層を形成する場合、下引き層Bの上に電荷発生層C、電荷輸送層Dの順で積層して感光層を形成する。電荷発生層Cに用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料を挙げることができる。また、各種の中心金属および結晶系、より具体的には例えばα、β、γ、εおよびX型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料を挙げることができる。モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンおよび特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコーンなども挙げられる。ここでは、高画質を実現するために感度を高くできるフタロシアニン化合物を用いた電荷発生層Cを用いた。
積層型感光層の場合、電荷発生層Cは、上記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライターおよびロールミルなどの方法を用いて分散させる。電荷発生層Cは、該分散液を下引き層上に塗布し乾燥させることにより形成させるか、または上記電荷発生物質の単独組成からなる膜を蒸着法などを用いることにより下引き層B上に形成させる。電荷発生層Cの膜厚は5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
上記結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、などのビニル化合物の重合体および共重合体を用いることができる。ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂も可能である。
電荷輸送層Dは以下のようにして形成する。適当な電荷輸送物質として、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリスチリルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物が挙げられる。また、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールなどの複素環化合物も可能である。トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体も考えられる。トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物も考えられる。これらを適当な結着樹脂(上述した電荷発生層の箇所で説明したのと同様な樹脂が適用できる)とともに、溶剤に分散/溶解して用いることができる。
電荷輸送層Dは、該溶液を上述の公知の方法を用いて電荷発生層C上に塗布し乾燥させることにより形成する。この場合の電荷輸送物質と結着樹脂の比率は、両者の全重量を100とした場合に電荷輸送物質の重量は20〜100であると好ましく、より好ましくは30〜100である。電荷輸送物質の量がそれ以下であると、電荷輸送能が低下し、感度低下および残留電位の上昇などの問題が生ずる。保護層が形成された積層型感光体における電荷輸送層Dの膜厚は1〜50μmが好ましく、より好ましくは3〜30μmである。ここでは、電荷輸送層Dは29μmの膜厚である。
<帯電ローラ>
図4は帯電ローラに帯電電圧を印加する構成の説明図である。図4に示すように、帯電ローラ12は、芯金121の周面に弾性層124を設けている。弾性層124は、中層と呼ばれる電気抵抗調整層122と、現像剤などの汚染から保護するための表面層123との2層で形成されている。
電気抵抗調整層122は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層122の体積固有抵抗は、好ましくは、106〜109Ωcmである。109Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまう。また、106Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光ドラム11全体への電流集中によるリークが生じてしまう。
電気抵抗調整層122は、好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、及び、それらの共重合体(AS、ABS)、ポリアミド、ポリカーボーネート(PC)等の熱可塑性樹脂で構成される。これらの熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。
ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。
また、帯電ローラ12として、高い印加電圧を掛ける際には、電子伝導系導電剤の場合、局所的に電気の流れ易い経路が形成されるので、感光ドラム11へのリーク電流が発生し、帯電ローラ12の場合、異常画像である白・黒ポチ画像が発生する。ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が20〜70重量%、高分子型イオン導電剤が80〜20重量%とする必要がある。
さらに、抵抗値を調整するために、電解質(塩類)を添加することも可能である。塩類としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩、リチウムビスイミド、リチウムトリスメチド等のリチウムイミド塩が挙げられる。エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩も挙げられる。導電剤は、物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。
導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるためには、相溶化剤を添加することにより、帯電材料におけるミクロ分散が可能になるので、相溶化剤を適宜使用しても構わない。相溶化剤としては、反応基であるグリシジルメタクリレート基を有するものが挙げられる。その他、物性を損なわない範囲において、酸化防止剤等の添加剤を使用しても構わない。樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料を混合し二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。また、電気抵抗調整層としての導電性支持体(芯金)上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体に前記、導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
本発明においては、表面層の体積固有抵抗は、電気抵抗調整層の体積固有抵抗より大きくしている。このように、表面層の体積固有抵抗を電気抵抗調整層の体積固有抵抗より大きくしていると、像担持体11の欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。ただし、表面層の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力が不足してしまうので、表面層と電気抵抗調整層との電気抵抗値の差を103Ωcm以下にすることが好ましい。
表面層を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、クリーニング性の面で好ましい。また、表面層の電気抵抗調整層上への形成は、前記表面層の構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行う。その膜厚は、好ましくは、10〜30μmである。
表面層の材料は、一液性、二液性どちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する二液性塗料にすることにより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることができる。2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかし、電気抵抗調整層は、熱可塑性樹脂で構成されているので、高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることが有効である。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好である。
帯電部材(帯電ローラ12)は、電気特性(電気抵抗値)が重要であるので、表面層を導電性にする必要がある。絶縁材料の表面層を導電性にする方法には、表面層を構成する樹脂材料中に導電性付与剤を分散する方法がある。導電性付与剤は、特に、制約を受けるものではないが、例えば、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンが挙げられる。酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、及び、金属酸化物も挙げられる。ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等も挙げられる。
また、導電性付与剤は、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレートがある。テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質もある。
<電圧印加回路>
図4に示すように、直流電圧Vdcに周波数fの交流電圧Vacを重畳した振動電圧が電源S1から芯金121を介して帯電ローラ12に印加されることで、回転する感光ドラム11の周面が所定の電位に帯電処理される。電源S1は、直流(DC)電源101と交流(AC)電源102を有している。
制御部201は、電源S1のDC電源101とAC電源102をオン・オフ制御して、帯電ローラ12に直流電圧と交流電圧のどちらか、若しくはその両方を重畳した振動電圧を印加することが可能である。制御部201は、DC電源101から帯電ローラ12に印加する直流電圧Vdcの直流電圧値と、AC電源102から帯電ローラ12に印加する交流電圧Vacのピーク間電圧値Vppを制御する。
環境センサ50は、画像形成装置100が設置されている環境の温度湿度を検知するセンサである。環境センサ50で測定された環境情報は、制御部201に入力する。制御部201に入力される環境情報は、温度情報と相対湿度情報である。
制御部201は、入力された温度湿度情報から絶対水分量を算出し、算出した絶対水分量に基づいて、帯電電圧条件の設定、現像電圧条件の設定、転写電圧条件の設定等を行う。帯電電圧条件の設定とは、振動電圧の直流電圧値の設定と、振動電圧の交流電圧のピーク間電圧Vppの設定とである。
交流電流測定回路211は、感光ドラム11を介して帯電ローラ12に流れる交流電流値を測定する。交流電流測定回路211で測定された交流電流値情報は、制御部201に入力する。制御部201は、画像形成中に印加する振動電圧の交流電圧のピーク間電圧Vppを環境条件に応じて変更することにより、本体の置かれている環境条件に適した帯電条件を決定する。制御部201は、交流電流測定回路211から入力される交流電流値情報、更には環境センサ50から入力される環境情報に基づいて、画像形成時に帯電ローラ12に印加される交流電圧の適切なピーク間電圧Vppを設定する演算・決定プログラムを実行する。
なお、上述のようなAC定電圧制御に代えて、帯電ローラ12から感光ドラム11へ流れる総電流量Iacを一定に制御するAC定電流制御方式を採用してもよい。総電流量Iacは、ニップ電流R・Vppと放電電流量ΔIacの和である。しかし、AC定電流制御方式は、実際に感光ドラム11を帯電させるために必要な電流である放電電流量ΔIacだけでなく、ニップ電流R・Vppも含めた総電流量Iacが制御されるため、放電電流量ΔIacは制御できていない。同じ総電流量Iacで定電流制御していても、帯電ローラ12の材料の抵抗が低下するとニップ電流R・Vppが多くなって、放電電流量ΔIacが減ってしまう。このため、放電電流量ΔIacの増減を抑制することは定電圧制御の場合と同じく不可能であり、感光ドラム11の長寿命を目指したとき、感光ドラム11の削れと帯電均一性の両立を実現することは困難である。
<交流電圧の制御方法>
図5は帯電ローラに印加する交流電圧と交流電流の関係の説明図である。帯電部材に振動電圧を印加して感光ドラムを帯電させるAC帯電方式では、直流電圧に交流電圧を重畳するので、帯電部材と感光ドラムとの間にプラス側への放電とマイナス側への放電とが交互に起こり、感光ドラム表面を均一に帯電させる。通常の画像形成時の帯電直流高圧は、画像濃度制御などで決定した条件によって決定されるため、温度湿度、累積画像形成枚数などによって、ランダムに変化する。通常の画像形成時の帯電交流電圧は、感光ドラム電位を安定化させるために帯電直流電圧の約2倍以上に設定することが望ましく、定期的に放電電流制御を行って設定される。
AC帯電方式では、帯電ローラに印加する交流電圧の電圧値Vcと帯電ローラに流れる交流電流の電流値Icの関係は、常に一定ではなく、感光ドラムの感光層の膜厚、帯電ローラの通電累積時間、環境温度湿度などにより変化する。感光ドラムが摩耗して感光層の膜厚が薄くなると同一の交流電圧に対して交流電流は増加する傾向となる。帯電ローラを長期間使用し続けると、帯電ローラの抵抗値が上昇するため、同一の交流電圧に対して交流電流は減少する傾向となる。
また、低温低湿環境(L/L)下においては、帯電ローラの材料が乾燥して放電し難くなるため、均一な帯電を得るために、交流電圧のピーク間電圧Vpp(振幅)を大きくする必要がある。逆に、高温高湿環境(H/H)下においては、帯電ローラの材料が吸湿して放電電流が過剰とならないために、交流電圧のピーク間電圧Vppを小さくする必要がある。したがって、長期にわたって高品質な画像を安定して供給するためには、過剰放電を避けて均一な帯電を行うように、帯電ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧Vppおよび帯電ローラに流れる直流電流の電流値を調整し続ける必要がある。
図4に示すように、画像形成装置100では、複数段階の交流電圧を帯電ローラ12に印加した際の交流電流を測定して、画像形成時に所望の放電電流量を得るために必要な交流電圧のピーク間電圧Vppを決定する放電電流制御を実行する。
図5に示すように、ピーク間電圧Vppに対して交流電流Iacは、放電開始電圧Vth×2(V)未満の未放電領域では、ほぼ線形の関係にある。しかし、放電開始電圧Vth×2(V)以上の放電領域では、徐々に交流電流Iacが未放電領域の直線関係よりも増加方向にずれる。
ここで、放電の発生しない真空中で同様の実験を行うと、未放電領域の直線関係が放電領域でも保たれるため、未放電領域の直線関係からの差分量ΔIacは、放電に関与している電流の増分とみなせる。よって、未放電領域の直線関係の傾き(ピーク間電圧Vpp/交流電流Iac)をRとしたとき、帯電ローラ12の接触部へ流れるニップ電流はR・Vppとなる。そして、測定される総電流量Iacとニップ電流R・Vppとの差分電流を放電電流量ΔIacと定義する。
ΔIac=Iac−R・Vpp・・・式1
放電電流量ΔIacは、実際のAC放電の量を代用的に示し、感光ドラムの削れ、画像流れ、帯電均一性と強い相関関係がある。放電電流量ΔIacは、温度湿度の変化に伴って変化する。放電電流量ΔIacは、画像形成の累積に伴って変化する。交流電流のピーク間電圧Vppと放電電流量ΔIacの関係、及び交流電流値Iacと放電電流量ΔIacの関係は、温度湿度の変化及び画像形成の累積に伴って変動する。
そして、放電電流量ΔIacが過小の場合、帯電ムラが発生して、ハーフトーンムラ、砂地画像、白地かぶり画像といった帯電不良画像が発生し易くなる。また、放電電流量ΔIacが過剰の場合、放電生成物に起因して静電像が漏電する画像流れが発生し易くなる。
このため、画像形成装置100では、前多回転制御ごとに、画像形成時に所定の放電電流量Dを得るために必要な交流電圧のピーク間電圧Vppを実験的に求めている。そして、画像形成時には、実験的に求めたピーク間電圧Vppで、交流電圧を定電圧制御して帯電ローラ12に印加している。これにより、帯電ローラ12の製造時の特性差や材料の環境変動に起因する抵抗値のばらつきや、電源102の出力のばらつきを吸収する。
さらに、連続画像形成時には、画像形成中の交流電流値と、感光ドラム11の画像間隔で帯電ローラ12に未放電領域であるピーク間電圧Vppを印加した時の交流電流を測定し、次の画像形成で印加する交流電圧のピーク間電圧を補正する。これにより、連続画像形成中の帯電ローラ12の抵抗値変動に対しても、一枚ごとに補正を入れることで、確実に所望の放電電流量ΔIacを維持することが可能である。
また、制御部201は、環境センサ50で測定した温度湿度情報によって、本体内部の大気の絶対水分量を算出し、絶対水分量に応じて、放電電流量ΔIacの設定を変更している。絶対水分量の多い環境においては、画像流れが発生し易いが、帯電不良は発生しづらいため、放電電流量ΔIacは、著しく小さく設定される。これに対して、絶対水分量の少ない環境においては、画像流れが発生し難いが、帯電不良は発生し易いため、放電電流量ΔIacは、少し大きく設定される。これにより、画像流れの発生を抑制しつつ、帯電不良画像の発生を防止している。
しかし、適正な放電電流量ΔIacの設定を行っていても、トナー消費量が少ない画像形成が連続した場合や、スリープモード復帰時の前多回転では、クリーニングブレードに供給される現像剤(研磨剤として機能する)の供給量が少なくなる。このため、クリーニングブレードが感光ドラムに付着した放電生成物を除去する能力が低下して、画像流れが発生しやすい状況となる。
<膜厚検知制御>
図6は帯電時の直流電流と感光層の膜厚との関係の説明図である。図7は膜厚検知制御のタイムチャートである。
図1に示すように、ドラムクリーニング装置15は、感光ドラム11に付着した放電生成物を速やかに除去するために、クリーニングブレードで感光ドラム11の表面をクリーニングする際に、感光層のごくわずかの厚みとともに放電生成物を削り取っている。また、画像形成中の感光層の表面は、交流電圧の放電に晒されて、微小量ずつ蒸発又はスパッタリングされている。帯電ローラ12と感光ドラム11の放電により、感光層が削られるなどして感光ドラム11の劣化が促進される。このため、感光ドラム11の表面は、帯電時の放電およびクリーニングブレードの摺擦を通じて削られ、画像形成の累積に連れて感光層の膜厚が薄くなっていく。
図2に示すように、制御部201は、感光ドラム11の感光層の膜厚を、感光ドラム11を帯電する際に流れる直流電流を測定することで検知している。制御部201は、検知した感光層の膜厚から感光ドラム11の残寿命を計算して操作部212に表示するとともに、感光層の膜厚に応じて画像形成条件を変更する。
感光ドラム11の感光層の膜厚が薄くなると、感光ドラム11の表面の静電容量が増加し、感光ドラム11が除電された状態から所定の帯電電位まで帯電するために必要な直流電流が大きくなる。このため、帯電時の直流電流を測定すれば感光層の膜厚の減少度合いが検知できる。
感光ドラム11の感光層の膜厚が薄くなると、感光ドラム11の削れによるスジやムラといった画像不良が発生し易くなるため、制御部201は、感光層の膜厚から感光ドラム11の寿命の到達時期を予測して、操作部212のディスプレイ上に表示する。
図4に示すように、帯電ローラ12は、感光ドラム11に接触して、電源S1から直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加される。感光ドラム11の感光層の膜厚検知は、感光ドラム11の表面を所定の電位差に帯電させる際に帯電ローラ12から感光ドラム11へ流れ込む直流電流量を検出して行われる。
感光ドラム11と接地電位との間に、感光ドラム11の膜厚を検出するための直流電流測定回路104を設けている。直流電流測定回路104は、帯電ローラ12から感光ドラム11に流れる直流電流を測定するための抵抗Rと、交流電流をバイパスするコンデンサCと増幅回路Aを含む。
制御部201は、抵抗Rの端子間電圧を測定し、測定値に基づいて感光ドラム11の感光層の現在の膜厚を判断する。
図6に示すように、感光ドラム11の感光層が摩耗して膜厚が薄くなるに連れて、直流電流測定回路104により検知される直流電流量が上昇する。感光層の膜厚の減少に伴って感光ドラム11に流れる直流電流が増加する性質は、感光ドラム11の膜厚評価を用いた寿命算出において一般的に利用されている。感光ドラム11の膜厚変化を測定することで、感光ドラム11を含むプロセスカートリッジが画像不良に至る限界を正確に判断できる。
図7に示すように、画像形成装置100における感光層の膜厚検知制御は、メイン電源ON後に画像形成装置100を立ち上げる準備段階で実行される前多回転制御の最後に実行される。画像形成装置100の立ち上がり後は、所定枚数(1000枚)の画像形成ごとに画像間隔を拡大して割り込むように実行される。ただし、生産性などの観点から、前多回転制御の最後のみで実行してもよく、所定枚数を各種条件に応じて変動させて、制御があまり頻繁に入らないようにする工夫をしてもよい。
感光ドラム11の感光層の膜厚と直流電流値との関係は、感光ドラム11の材質、帯電前の電位、感光ドラム11の周速度(プロセススピード)等によって異なるため、膜厚検知制御は、これらの条件を揃えて実行する。感光ドラム11の電位が変化すると、直流電流が大きく変化するため、帯電直流電圧を一定の値にして、感光ドラム11の電位を一定に制御する必要がある。
感光ドラム11の帯電前の電位を揃えるために、制御部201は、通常の画像形成時に静電像を消去するために用いられる前露光装置16の出力を、画像形成時よりも高くして、除電された電位を揃えている。前露光装置16は、発光の強いものを選択し、充分に感光ドラム11の電位を除電できるように設定している。一般的には露光強度10〜50μWが好ましいとされ、ここでは、30μWに選択した。
前露光装置16で除電を行わない場合は、一次転写ローラ(35:図1)に正極性の電圧を印加して除電することも可能である。しかし、いずれにせよ、帯電ローラ12に到達する前の時点で感光ドラム11の電位が除電されていない場合、安定した直流電流の検出ができなくなる。感光ドラム11の表面電位が0Vに低下するくらいまで、前露光を行うことで直流電流は安定化する。
また、直流電流を測定する条件を揃えるために、制御部201は、膜厚検知制御において、帯電ローラ12に印加する帯電直流高圧を、通常の画像形成時の電圧とは異なって一定の電圧に設定する。帯電直流電圧に重畳される帯電交流電圧も、通常の画像形成時とは異なって一定の電圧に設定する。
図7に示すように、制御部201は、膜厚検知制御の開始前に、帯電直流高圧、帯電交流高圧、現像高圧、一次転写高圧を順番にOFFする。制御部201は、全ての高圧がOFFされた後に、一次転写高圧、帯電直流高圧及び帯電交流電圧、現像高圧を順番に印加する。帯電直流高圧と帯電交流電圧は重畳されてはじめて、所定の帯電電位を保持可能になるため、ほぼ同時のタイミングで印加する。前露光装置16による前露光除電は、膜厚検知制御中、ONとしている。
現像高圧は、帯電直流高圧及び帯電交流高圧とほぼ同時に印加している。感光ドラム11の電位と現像スリーブ(14s:図1)の電位差を画像形成時と同じ電位差に保って、不必要な現像剤が感光ドラム11へ付着することを防止するためである。感光ドラム11の非露光部と現像スリーブ14sの電位差であるかぶり取りコントラストVbackが大きくなり過ぎると、現像剤内のキャリアが感光ドラム11に付着するからである。なお、現像スリーブ14sの回転を停止状態に保って現像高圧を印加しないことでも、感光ドラム11へのキャリア付着は、ある程度は防止可能である。
なお、図4に示すように、直流電流測定回路104は、感光ドラム11と接地電位との間に配置する例には限らない。直流電流測定回路104は、帯電ローラ12と電源S1との間、若しくは電源S1と接地電位との間に配置してもよい。
<比較例1>
図8は比較例1の膜厚検知制御のフローチャートである。比較例1は、特許文献1に記載される従来の膜厚検知制御である。
図4を参照して図8に示すように、制御部201は、電源S1を制御して、所定の直流電圧に所定のピーク間電圧を重畳した振動電圧を帯電ローラ12に印加する(H1)。そして、制御部201は、直流電流測定回路104の出力を取り込んで帯電ローラ12から感光ドラム11に流れ込む直流電流量を測定する(H2)。制御部201は、測定した直流電流量で図に示す直流電流量/膜厚の変換テーブルを参照することにより、現状の感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する(H3)。制御部201は、推定した膜厚に応じて画像形成条件へのフィードバックを実行し、ドラムカートリッジの残寿命の表示更新を実行する(H4)。
一般的に、感光ドラムの膜厚が減少すると、現像性は良化するため、帯電直流高圧や、レーザー光量などによって決まる感光ドラム上の明電位と暗電位の差分、いわゆる潜像コントラストを小さくすることが望ましい。そのため、帯電直流電圧を下げたり、露光出力を下げたりすることが多い。
また、感光ドラムの膜厚が減少すると、帯電交流高圧がそのままだと交流電流が過剰になり易く、過電流の状態が続くと感光ドラム11の摩耗が促進される。このため、帯電交流電圧は、感光ドラムの膜厚に応じて小さくすることが望ましい。一次転写高圧に関しても、同じく、感光ドラム11の膜厚の減少に応じて、電圧を下げることが好ましいとされている。
比較例1の膜厚検知制御では、検出された直流電流から単純に感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する。この方法では、直流電流を検出している時の画像形成装置100の温度湿度環境や、帯電ローラ12の抵抗のばらつき等を無視して、感光ドラム11の感光層の膜厚を絶対評価している。このため、温度湿度環境が前回と大きく違っている場合や、抵抗の高い帯電ローラ12や抵抗の低い帯電ローラ12がランダムにドラムカートリッジに組み込まれている場合、測定される直流電流量が振れ易く、感光ドラム11の膜厚を誤検知し易い。
<比較例2>
図9は比較例2の膜厚検知制御のフローチャートである。図10は差分電流量と感光層の膜厚の実測値との関係の説明図である。図11は各回の膜厚検知制御における直流電流の測定結果の説明図である。
比較例2は、感光ドラム11の感光層の膜厚の変化を比較例1よりも正確に追跡するために、感光ドラム11の初期状態からの直流電流の相対変化を評価する。感光ドラム11の感光層の膜厚の推定精度を上げるために、ドラムカートリッジ新品状態で測定した基準電流αとその後の膜厚検知制御で測定した直流電流量βとの差分電流γに基づいて感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する。
ドラムカートリッジの使用、未使用を検出するために、ドラムカートリッジ側面には新旧を判断するためのヒューズが取り付けられている。装置本体にドラムカートリッジを装着して画像形成装置100のメイン電源をONすると、ヒューズに電流が流れ、数秒の時間を置いてヒューズが切れる仕組みになっている。制御部201は、ヒューズが切れた信号を検知して、ドラムカートリッジが初期状態であることを認識する。
なお、ドラムカートリッジの新品状態を検出する方法は、ヒューズに限定されない。操作部212に存在する「ドラムカートリッジに初期のイニシャライズ動作を促すスイッチ」をサービスマンが押すことによって、制御部201は、ドラムカートリッジが初期状態であることを認識してもよい。
図4を参照して図9に示すように、制御部201は、感光ドラムの膜厚検知制御が指令されると(A1)、感光ドラム11が所定電位に帯電されるように、帯電直流高圧及び帯電交流高圧を設定して、帯電ローラ12に所定の振動電圧を印加する(A2)。感光ドラム11の感光層の膜厚を検出電流に正確に反映させるために、基準電流αを求める初回の膜厚検知制御と2回目以降の直流電流量βを求める膜厚検知制御とで、感光ドラム11の電位条件は同じである。
制御部201は、直流電流測定回路104によって、帯電ローラ12から感光ドラム11に流れ込む直流電流量を検出する(A3)。制御部201は、直流電流を検出した後、ドラムカートリッジが未使用の初期状態であるか、使用中のものであるかを判断する(A4)。
制御部201は、ヒューズが切れていなかった場合(A4のYes)、制御部201は、ドラムカートリッジが初期状態であると判断して、1回目の膜厚検知制御を実行して、基準電流αを測定する。帯電ローラ12から感光ドラム11に流れ込む直流電流量を初期基準電流αとしてメモリ202に記憶して(A5)、膜厚検知制御を終了する(A10)。制御部201は、必要に応じて、感光ドラム11が初期状態であることを認識し、画像制御条件やドラムカートリッジの寿命表示などを初期状態にリセットする。
制御部201は、既にヒューズが事前に切れていて、ヒューズが切れた信号を検知できない場合(A4のNo)、使用中のドラムカートリッジだと判断して、2回目以降の膜厚検知制御を実行する。ヒューズが切れていた場合、帯電ローラ12から感光ドラム11に流れる直流電流量をβとして、メモリ202に記憶する(A6)。
制御部201は、ドラムカートリッジが初期状態である際にメモリ202に記憶しておいた初期基準電流αと検出した直流電流量βとの差分電流γを算出する(A7)。制御部201は、2回目以降の膜厚検知制御では、直流電流の基準電流αとその時々の直流電流量βの差分電流γを算出する。
図10に示すように、差分電流γと感光ドラム11の感光層の膜厚との相関関係が予め求められて制御部201に保持されている。制御部201は、2回目以降の膜厚検知制御で測定された直流電流量βと基準電流αとの差分電流γで図10の変換テーブルを参照して、感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する。制御部201は、算出した差分電流γと感光ドラム11の感光層の膜厚との関係から、ドラムカートリッジの感光ドラム11における感光層の膜厚を推定する(A8)。
制御部201は、推定した感光ドラムの膜厚を画像形成条件にフィードバックし、露光装置13、直流電源101、交流電源102、現像装置14の電源、及び一次転写の電源などの設定を変更する。さらに、カートリッジの寿命に関しても、差分電流γから算出した感光ドラムの膜厚に応じて、ドラムカートリッジ寿命を更新して、操作部212に表示する(A9)。このようにして、ドラムカートリッジが初期状態でなかった場合の膜厚検知制御は終了する(A10)。
比較例2では、ドラムカートリッジの新品状態で、帯電ローラ12から感光ドラム11に流れ込む電流値を初期基準電流αとして、初期基準電流αからの差分電流γに応じて、感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する。初期状態の帯電ローラから感光ドラムに流れる直流電流量を検出し、初期の直流電流量を基準電流αとして、測定した直流電流量βと基準電流αの差分電流から感光ドラム11の膜厚変化を算出する。このため、比較例1で誤検知要因となっていた装置本体の温度湿度環境要因や帯電ローラの抵抗バラツキ要因などを抑制できる。
ところで、昨今は、ドラムカートリッジにおいて、感光ドラム以外のパーツの寿命も長寿命化することが望まれており、その一環として、帯電ローラのゴム材料の導電性をイオン導電剤によって保持させるイオン導電剤ローラが採用されている。イオン導電剤ローラは、イオンが活発に材料内を移動しながら電荷を搬送しており、電荷の偏析が少ないため、長期間にわたって抵抗変動が少なく、カーボン分散系のローラに比べて長期安定した帯電性能を保持できるとされている。しかし、イオン導電剤ローラにおいて、比較例2の膜厚検知制御を実験したところ、問題が発生することが判明した。
基準電流αを帯電ローラ12の抵抗値が安定する前に決定すると、基準電流αが誤検知されてしまう。基準電流αを誤検知すると、その後に測定した直流電流量βとの差分電流γの算出も誤って、結果的に、感光ドラム11の膜厚変化の予測を誤ってしまう。感光ドラム11の膜厚に応じて制御を行っている濃度制御、高圧設定制御などへの不具合を発生したり、ドラムカートリッジの寿命の予測に誤差が生じたりしてしまう。
図11に示すように、帯電ローラ12の初期状態で検知した基準電流αと、その後の膜厚検知制御で順次取り込んだ1回目、2回目、3回目、・・・の直流電流量β1、β2、β3・・・とを比較する実験を行った。初期状態で直流電流量βを取り込んだ基準電流αから、2回目の直流電流量β1へ大きく低下した後、直流電流量β1、β2、β3、β4・・・は次第に増加していた。すなわち、感光ドラム11の感光層の摩耗に伴って徐々に大きくなるべき直流電流量β1が、直前回の膜厚検知制御時の直流電流(基準電流α)よりも低くなっていた。
比較例2では、初期状態の帯電ローラ12の抵抗値を前提として、基準電流αを求めるため、その後に、帯電ローラ12の抵抗値が変動すると感光層の膜厚の推定誤差が大きくなる。感光層の膜厚の推定誤差が大きくなると、画像形成条件へのフィードバックが不適切になり、ドラムカートリッジの残寿命の表示もでたらめな値になってしまう。
しかし、図11に示すように、一度、n回目の膜厚検知制御における直流電流量βnが前回の膜厚検知制御における直流電流量βn−1よりも大きい値になった後は、再び直流電流量βnが直流電流量βn−1よりも小さくなることはないことが判明した。
そこで、帯電ローラ12をドラムカートリッジに組み込む前に、通電を伴ったエージングを行って抵抗値を安定させることが提案された。しかし、帯電ローラ12の量産工程にエージングを組み入れると、無駄な電力消費が発生して省エネルギーに反し、製造コストが上昇する。エージングに必要な通電時間が長すぎるため、量産性にも欠ける。
また、帯電ローラ12の抵抗値を安定させるだけのために、ドラムカートリッジの交換後、感光ドラム11を空回転させて、帯電ローラ12に振動電圧を何時間も印加し続けることも、画像形成を待たせる点で現実的でない。画像形成装置100の設置時に、感光ドラム11を空回転させて帯電ローラ12に振動電圧を何時間も印加し続けることも現実的でない。連続通電によって帯電ローラ12の抵抗が安定するまでの時間は、帯電ローラ12によって約1時間〜6時間の範囲で大きくばらついているからである。
そこで、以下の実施例では、ドラムカートリッジの使用開始後の所定の期間において初期基準電流αを随時補正して、差分電流量γと感光層の膜厚とが精度良く対応する適正な初期基準電流αが最終的に設定される制御とした。具体的には、初期状態で膜厚検知制御を行って取得した1回目の基準電流α0を、その後の膜厚検知制御で基準電流α0よりも小さな直流電流βnが検出されると、基準電流α0を直流電流βnに等しい基準電流αnに置き換えている。
<実施例1>
図12は実施例1の膜厚検知制御のフローチャートである。図4に示すように、像担持体の一例である感光ドラム11と帯電部材の一例である帯電ローラ12とは、一体に交換されるドラムカートリッジに組み立てられている。帯電ローラ12は、感光ドラム11の感光層の表面に当接又は近接して電荷を授受する。帯電ローラ12はイオン導電剤を含有する弾性層を有する帯電ローラである。
除電手段の一例である前露光装置16は、帯電前の感光ドラム11の表面を所定の電位状態に除電する。電源S1は、感光ドラム11を帯電させるための電圧を帯電ローラ12に印加する。電源S1が帯電ローラ12に印加する感光ドラム11を帯電させるための電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧である。
検知手段の一例である直流電流測定回路104は、帯電前の感光ドラム11の表面を前露光装置16により所定の電位に保持した状態で電源S1が所定の電圧を帯電ローラ12に印加したときに流れる電流量を検知する。制御手段の一例である制御部201は、直流電流測定回路104が検知した電流量(β)と基準電流αnとの差分電流(γ)に基づいて感光層の膜厚に応じた制御を実行する。
制御手段の一例である制御部201は、感光ドラム11の使用開始後に検知された電流量が低下した場合には、当該低下した電流量からの電流量の上昇量に基づいて感光層の膜厚の減少に応じた制御を実行させる。感光ドラム11の使用開始後に発生する電流量(β)の低下に伴って基準電流αを低下させるように、直流電流測定回路104の出力に基づいて基準電流αを調整する。制御部201は、感光ドラム11の使用開始時を自動判別して初回の基準電流α0を設定する。制御部201は、感光ドラム11の使用開始後に基準電流α0よりも低い電流量βが検出されると、検知された低い電流量βでそれまでの基準電流α0を置き換える。
感光ドラム11の感光層の膜厚に応じた制御とは、(1)感光層の膜厚の表示、(2)感光ドラム11の残り寿命又は交換時期の表示とすることができる。また、(3)感光層の膜厚の減少に基づいて感光ドラム11を帯電させるための電圧を変更する制御、(4)感光層の膜厚の減少に基づいて感光ドラム11のトナー像を転写するための電圧を変更する制御とすることができる。
図4を参照して図12に示すように、制御部201は、膜厚検知制御の実行タイミングに該当すると感光ドラム11の膜厚検知制御を開始する(B1)。上述したように、実行タイミングは、画像形成装置100の立ち上がり時と、その後の1000枚の画像形成ごとのタイミングである。制御部201は、比較例2と同様に、帯電ローラ12に所定の振動電圧を印加して(B2)、直流電流測定回路104によって直流電流量βを検出する(B3)。
制御部201は、比較例2と同様に、ヒューズが切れていない場合をドラムカートリッジが未使用の初期状態と判断し、ヒューズが切れている場合をドラムカートリッジが使用中のものであると判断する(B4)。
制御部201は、ドラムカートリッジが未使用の初期状態の場合(B4のYes)、検出した直流電流量βを基準電流α0として設定し(B5)、画像制御条件及びドラムカートリッジの寿命表示を初期状態にリセットする(B12)。
制御部201は、ドラムカートリッジが使用中のものである場合(B4のNo)、検出した直流電流量βを取り込んで(B6)、基準電流α0と比較する(B7)。
制御部201は、直流電流量βが基準電流α0に満たない場合(B7のNo)、直流電流量βを基準電流α1として基準電流α0を置き換える(B11)。基準電流αよりも小さい直流電流量βを検知した場合、αn(=βn)として、基準電流αを更新し続ける。基準電流αnと今回検出した直流電流量βの関係がαn>βであった場合(B7のNo)、直流電流量βを以降の基準電流αnとして設定し直す(B11)。基準電流αnは、それよりも小さい直流電流量βを示した場合には、基準電流αnをより低い新たな基準電流αn(=βn)に置き換え、αn(=βn)として、基準電流αを更新し続ける。
制御部201は、基準電流αを更新した場合、ドラムカートリッジは新品の状態であると認識し、画像制御条件を初期条件にリセットし、ドラムカートリッジの寿命表示も初期状態にリセットする(B12)。このようにして、ドラムカートリッジが初期状態でなかった場合の感光ドラム11の膜厚検知制御を終了する(B13)。
制御部201は、直流電流量βが基準電流α0以上である場合(B7のYes)、基準電流α0と直流電流量βとの差分電流γを算出する(B8)。制御部201は、差分電流γで図10の変換テーブルを参照して、感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する(B9)。制御部201は、推定した感光ドラムの膜厚に基づいて比較例1で説明したように各種の画像形成条件を調整し、ドラムカートリッジの残寿命の表示を更新して(B10)、膜厚検知制御を終了する(B13)。
実施例1では、基準電流αとリアルタイムの直流電流量βとの差分電流γと感光ドラム11の膜厚の関係性を用いて、感光ドラム11の感光層の膜厚を把握する。このとき、膜厚検知制御で取得した直流電流βとの関係で基準電流αを正確な値に更新していくことによって、より正確に感光ドラム11の感光層の膜厚を把握できる。従って、感光ドラム11の感光層の膜厚に応じて実施している画像制御や、ドラムカートリッジ寿命の表示をより正確に実行できる。
実施例1では、イオン導電剤の活動が安定化する前のイオン導電剤ローラを搭載しているドラムカートリッジにおいて、非常に精度よく、感光ドラムの感光層の膜厚変化を予測できる。ドラムカートリッジの長寿化を図るために必須となっているイオン導電剤ローラを搭載する画像形成装置においても、非常に安価な方法で感光ドラムの膜厚変化を精度よく予測できる。従って、さらなる画像制御の安定化、画像品質の安定化、ドラムカートリッジ寿命の正確な予測、寿命予測精度の向上が実現した。
なお、帯電ローラ12の抵抗値が長期間に渡って低下し続ける場合、低下している期間もドラムカートリッジの使用累積時間としてカウントすることが望ましい。取得手段の一例である制御部201は、感光ドラム11の使用開始から最終的な基準電流が設定されるまでの画像形成の累積量を取得する。制御部201は、最終的な基準電流が設定されるまでの感光ドラム11の帯電累積量に、差分電流(γ)に応じた感光ドラム11の帯電累積量を加算した帯電累積量に基づいて制御を実行する。
<実施例2>
図13は振動電圧の交流電流と感光層の膜厚の実測値との関係の説明図である。図14は実施例2における膜厚検知制御のタイムチャートである。図15は実施例2の膜厚検知制御のフローチャートである。
実施例1では、帯電ローラ12から感光ドラム11に流れる直流電流を検出して膜厚検知制御を実行した。しかし、感光ドラム11の膜厚の判断は、帯電ローラ12から感光ドラム11へ流れる直流電流成分のみで行うことには限らない。
実施例2では、直流電圧に重畳されている交流電圧による交流電流を検出して膜厚検知制御を実行する。交流電流も感光ドラム11の感光層の膜厚によって、電流値が変化することは知られており、交流電流を検知することによっても、感光ドラム11の感光層の膜厚の変化を予測可能である。
図13に示すように、振動電圧を印加して感光ドラム11を帯電させる際に帯電ローラ12から感光ドラム11へ流れる交流電流は、感光ドラム11の感光層の膜厚に応じて変化する。
図4を参照して図14に示すように、制御部201は、前多回転制御時、及び通紙枚数1000枚ごとのタイミングで膜厚検知制御を開始する。制御部201は、帯電直流高圧、帯電交流高圧、現像高圧、一次転写高圧を順番にOFFした後、所定の帯電交流高圧のみが印加される。
画像形成時の帯電交流高圧は、画像濃度制御などで決定した条件によって決定されるため、温度湿度環境、累積画像形成枚数などによって、ランダムに変化する。しかし、膜厚検知制御では、感光ドラム11の感光層の膜厚に応じた交流電流量β’を再現性高く取得するために、交流電流量β’検出時の交流電圧条件は同じにしている。感光ドラムの膜厚検知を行う場合は、ドラム電位にあまり影響を受けないため、直流電圧は重畳していなくても良い。
感光ドラム11の帯電前の電位を揃えるために、制御部201は、通常の画像形成時に静電像を消去するために用いられる前露光装置16の出力を、画像形成時よりも高くして、除電された電位を揃えている。感光ドラム11の電位が不安定だと交流電流量β’の検出時に大きな誤差を生む可能性があるため、しっかりと除電することが望ましい。前露光装置16は、発光の強い30μWのものを選択し、充分に感光ドラム11の電位を除電できるように設定している。
図4を参照して図15に示すように、制御部201は、上記の実行タイミングに該当すると感光ドラム11の膜厚検知制御を開始する(C1)。制御部201は、帯電ローラ12に所定の帯電交流高圧を印加して(C2)、交流電流測定回路211によって交流電流量β’を検出する(C3)。
制御部201は、ドラムカートリッジが未使用の初期状態の場合(C4のYes)、検出した交流電流量β’を基準電流α0’として設定し(C5)、画像制御条件及びドラムカートリッジの寿命表示を初期状態にリセットする(C12)。
制御部201は、ドラムカートリッジが使用中のものである場合(C4のNo)、検出した交流電流量β’を取り込んで(C6)、基準電流α0’と比較する(C7)。
制御部201は、交流電流量β’が基準電流α0’に満たない場合(C7のNo)、交流電流量β’を基準電流α1’として基準電流α0’を置き換える(C11)。基準電流α’よりも小さい交流電流量β’を検知した場合、αn’(=βn’)として、基準電流α’を更新し続ける。
制御部201は、基準電流α0’を更新した場合、ドラムカートリッジは新品の状態であると認識し、画像制御条件を初期条件にリセットし、ドラムカートリッジの寿命表示も初期状態にリセットする(C12)。
制御部201は、交流電流量β’が基準電流α0’以上である場合(C7のYes)、基準電流α0’と交流電流量β’との差分電流γ’を算出する(C8)。制御部201は、差分電流γ’で図13の変換テーブルを参照して、感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する(C9)。
制御部201は、推定した感光ドラムの膜厚に基づいて比較例1で説明したように各種の画像形成条件を調整し、ドラムカートリッジの残寿命の表示を更新して(C10)、膜厚検知制御を終了する(C13)。
実施例2では、実施例1と同様に、基準電流α’とリアルタイムの交流電流量β’の差分電流γ’と感光ドラム11の感光層の膜厚との関係を用いて感光ドラム11の感光層の膜厚を把握する。このとき、膜厚検知制御で取得した交流電流β’との関係で基準となる交流電流α’を正確な値に更新していくことによって、より正確に感光ドラムの膜厚を把握できる。従って、感光ドラム11の感光層の膜厚に応じて実施している画像制御や、ドラムカートリッジ寿命の表示をより正確に実行できる。
<実施例3>
図16は実施例3の膜厚検知制御のフローチャートである。実施例1では、膜厚検知制御で取得した直流電流βとの関係で基準電流αを正確な値に更新していく期間に限定が無かった。これに対して、実施例3では、膜厚検知制御で取得した直流電流βとの関係で基準電流αを正確な値に更新していく期間を初期状態から画像形成枚数の累計がX枚になるまでに限定した。
図4に示すように、制御部201は、感光ドラム11の使用開始から所定期間が経過するまでに限って、所定枚数の画像形成ごとに基準電流αnの置き換えを判断して実行する。
図11に示すように、一度、直流電流量βnが基準電流αnよりも大きい値になった後は、その後の膜厚検知制御で取得した直流電流量βnが安定して、基準電流αnより小さくなることはない。しかし、これは、画像形成装置100において、同じドラムカートリッジが使用され続け、ドラムカートリッジの交換がされていない場合を想定している。同一の感光ドラム11において、感光層が摩耗して膜厚が次第に減少していく過程を前提としている。
しかし、ドラムカートリッジが別の中古のドラムカートリッジに交換された場合や、帯電ローラ12を残して感光ドラム11が交換された場合、交換前に比較して感光ドラム11の感光層の膜厚が増加する。この場合、帯電ローラ12は、既に十分な通電を経てイオン導電剤が組織内で既に安定した状態になっているため「αn>βn」を引き起こす要因とはなり得ないが、感光ドラム11の膜厚の増大によって「αn>βn」が引き起こされてしまう。
この場合、実施例1では、基準電流αnがうまく設定されているにも関わらず、基準電流αnとドラムカートリッジ投入後に検出した直流電流量βnの関係が、αn>βnとなると、基準電流αnが新しい基準電流αn+1(=βn)に更新されてしまう。実施例1は、感光ドラム11の感光層の膜厚が薄くなると静電容量が増えて帯電ローラ12から感光ドラム11に流れる直流電流量βが増えることに基づいて感光層の膜厚を推定しており、感光層の膜厚が突然増えることは想定していないからである。
制御部201は、付設されたヒューズが切れているか否かでドラムカートリッジの初期状態を判断するので、未使用のドラムカートリッジが投入された場合は、新たな基準電流α0が設定されて問題は発生しない。しかし、サービスマンが画像不良の要因解析等のために、暫定的に別の画像形成装置で使用されていたドラムカートリッジを、画像形成装置100に投入した場合、ドラムカートリッジに付設されたヒューズは既に切れてしまっている。このため、制御部201は、ドラムカートリッジが未使用状態であるとは判断せず、αn>βnの関係からαnを新しい基準電流のαn+1(=βn)に更新してしまう。
すると、その後に、元のドラムカートリッジが戻された場合に、差分電流量に大きな誤差が生じて、もはや感光層の膜厚を正確に評価することができなくなる。元のドラムカートリッジに戻されない場合でも、基準電流αnが更新されていなければ、感光層の膜厚の増加として評価されるので、基準電流αnが更新された場合に比較すれば、感光層の膜厚の評価誤差は小さくて済む。
そこで、実施例3は、別の中古のドラムカートリッジが投入された場合に基準電流αnを更新してしまう不具合を防止するために、ドラムカートリッジの未使用状態からの使用枚数積算値の換算値で規制を与えている。A4サイズ換算での積算枚数Xとしては、帯電ローラの抵抗値が安定する積算枚数であることが望ましく、通常は50000枚以下、好ましくは20000枚程度である。
図4を参照して図16に示すように、制御部201は、所定の実行タイミングに該当すると感光ドラム11の膜厚検知制御を開始する(D1)。制御部201は、帯電ローラ12に所定の振動電圧を印加して(D2)、直流電流量βを検出する(D3)。
制御部201は、ドラムカートリッジが未使用の初期状態の場合(D4のYes)、検出した直流電流量βを基準電流α0として設定し(D5)、画像制御条件及びドラムカートリッジの寿命表示を初期状態にリセットする(D14)。
制御部201は、ドラムカートリッジが使用中のものである場合(D4のNo)、検出した直流電流量βを取り込んで(D6)、基準電流α0と比較する(D7)。
制御部201は、直流電流量βが基準電流α0に満たない場合(D7のNo)、初期状態からの累積の通紙枚数を判断する(D11)。
制御部201は、通紙枚数がA4サイズ換算で積算X枚未満の場合(D11のNo)、直流電流量βを基準電流α1として基準電流α0を置き換える(D12)。それまでの基準電流αnを破棄して、今回の膜厚検知制御で取得した直流電流量βを以降の基準電流αnとして設定し直す(D12)。制御部201は、基準電流αを更新した場合、ドラムカートリッジは新品の状態であると認識し、画像制御条件を初期条件にリセットし、ドラムカートリッジの寿命表示も初期状態にリセットする(D14)。
制御部201は、通紙枚数がA4サイズ換算で積算X枚以上の場合(D11のYes)、基準電流α0をそのままの値で更新する。A4サイズ換算の積算枚数がXより大きい場合は、初期の基準電流α0は更新せずに、そのままの値でメモリに記憶する(D13)。積算枚数がX以上の場合も(D13)、基準電流αの更新を行うか否かの違いはあるが、積算枚数がX未満の場合(D12)と同様に、ドラムカートリッジは新品の状態であると認識する。このため、画像制御条件を初期条件にリセットし、ドラムカートリッジの寿命表示も初期状態にリセットする(D14)。このようにして、ドラムカートリッジが初期状態でなかった場合の感光ドラム11の膜厚検知制御を終了する(D15)。
制御部201は、直流電流量βが基準電流α0以上である場合(D7のYes)、基準電流α0と直流電流量βとの差分電流γを算出する(D8)。制御部201は、実施例1と同様に、差分電流γで図10の変換テーブルを参照して、感光ドラム11の感光層の膜厚を推定する(D9)。制御部201は、推定した感光ドラムの膜厚に基づいて各種の画像形成条件を調整し、ドラムカートリッジの残寿命の表示を更新して(D10)、膜厚検知制御を終了する(D15)。
実施例3では、ドラムカートリッジの使用累積状態によって、基準電流α0を更新するか否かを決定している。ドラムカートリッジの初期状態からの通紙枚数の積算値をA4サイズの記録材に換算して、その換算値がX枚以上であるか否かを判断している(D11)。換算値がXを超えていれば、α0>βであっても、基準電流α0の値はα1(=β)として更新せず、基準電流はそのままα0としてメモリに記憶しておく(D13)。
一方、換算値がX未満であり、且つ、α0>βであった場合、制御部201は、初期状態で設定した基準電流α0が、誤検知された電流値であると判断して、基準電流α0を新たな基準電流α1(=β)としてメモリに記憶し直す(D12)。
実施例3の膜厚検知制御でも、初期状態での基準電流α0を、使用開始後の直流電流量βの測定結果に基づいて正確な基準電流αnに更新していくことによって、正確に感光ドラム11の感光層の膜厚を評価できるようになった。加えて、ドラムカートリッジの使用積算枚数の制限を入れることによって、別の画像形成装置で使用されたドラムカートリッジが投入された場合の不具合も解消している。
なお、実施例3では、A4サイズ換算の積算枚数Xで規制を与えているが、画像形成の積算枚数だけではなく、感光ドラム11の使用状態を予測する方法として、感光ドラム11の積算走行距離X’で規制しても良い。下記の表に、積算枚数Xとドラムの積算走行距離X’によって規制した例を示す。
<実施例4>
図17は実施例4の膜厚検知制御のフローチャートである。実施例1では、ドラムカートリッジの初期状態から寿命末期まで、通紙の積算枚数がA4サイズ換算で1000枚ごとのタイミングで膜厚検知制御を実行した。これに対して、実施例4では、帯電ローラ12の抵抗値が確実に安定すると期待されるY枚までの期間はZ’枚ごとの高頻度で膜厚検知制御を実行し、その後はZ枚ごとの低頻度で膜厚検知制御を実行する。基準電流αと検出した直流電流量βの関係がα>βとなる可能性がある期間を通紙枚数から予測して、α>βとなる可能性がある期間は膜厚検知制御の実施頻度を高くし、α≦βとなることが確実な期間は膜厚検知制御の実施頻度を低くした。
図4に示すように、制御部201は、所定枚数の画像形成ごとに基準電流αの置き換えを判断して実行する。感光ドラム11の使用開始から所定期間が経過すると、所定枚数を増加させる。
図11に示すように、帯電ローラの抵抗値が安定した後は、検出した直流電流量βが、基準電流αよりも小さくなることはほとんどないため、細かく制御を行う必要はなく、生産性の向上のために、頻度を少なくすることが好ましい。通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がY枚以上の場合に設定される実施頻度Zは、好ましくは5000〜10000枚である。これに対して、帯電ローラ12の抵抗値が安定しないことがあるY枚未満の場合に設定される実施頻度Z’は、基準電流の更新を確実に行うために頻度を高めて、好ましくは500〜2000枚である。Y枚は、概ね10000枚〜100000枚である。
図4を参照して図17に示すように、本体メイン電源をONすると(E1)、制御部201は、ドラムカートリッジの初期状態からの通紙の積算枚数がA4サイズ換算で何枚相当かをメモリから呼び出す(E2)。
制御部201は、積算枚数のA4サイズ換算値がYよりも大きいか否かを判断して(E3)、積算枚数のA4サイズ換算値がY以上の場合(E3のYes)、感光ドラム11の膜厚検知制御の実施間隔をA4サイズ換算値でZ枚に設定する(E4)。
制御部201は、前回の膜厚検知制御後に積算した通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がZ枚以上か否かを判断し(E5)、通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がZ枚に達すると(E5のYes)、実施例1の制御(B1〜B13:図12)を実行する。
制御部201は、積算枚数のA4サイズ換算値がY未満の場合(E3のNo)、感光ドラム11の膜厚検知制御の実施間隔をA4サイズ換算値でZ’(<Z)枚に設定する(E6)。ドラムカートリッジの初期状態からの通紙枚数が小さい場合、膜厚検知制御を細かい頻度で実行するためである。ドラムカートリッジの使用初期においては、細かく基準電流αを更新していくことによって、基準電流αの理想状態を精度よく検出できる。
制御部201は、前回の膜厚検知制御後に積算した通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がZ’枚以上か否かを判断し(E7)、通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がZ’枚に達すると(E7のYes)、実施例1の制御(B1〜B13:図12)を実行する。
ここで、膜厚検知制御の頻度を変更するしきい値のY枚と、通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がY枚以上で適用される膜厚検知制御の実施頻度Z枚と、Y枚未満で適用される膜厚検知制御の実施頻度Z’枚とを変更して実施例4の膜厚検知制御を実験した。
表2に示すように、実施例4の膜厚検知制御を実施することで、基準電流αが確実に更新され、基準電流αに満たない直流電流量βによって差分電流γを求められなくなるエラーは発生しなくなった。これにより、感光ドラム11の感光層の膜厚を正確に把握することが可能となった。
<実施例5>
図18は実施例5の膜厚検知制御のフローチャートである。実施例4では、帯電ローラ12の抵抗値が確実に安定すると期待される期間を通紙の積算枚数のA4サイズ換算値で一律にY枚と見積もった。これに対して、実施例5では、膜厚検知制御において検知される直流電流量βに基づいて、帯電ローラ12の抵抗値が確実に安定すると期待される期間を帯電ローラ12ごとに個別に判断する。
図11に示すように、帯電ローラの抵抗値が安定した後は、検出した直流電流量βが、基準電流αよりも小さくなることはほとんどないため、細かく制御を行う必要はなく、生産性の向上のために、頻度を少なくすることが好ましい。そこで、膜厚検知制御において基準電流αと検出した直流電流量βの関係がα>β(上昇)となった場合には、次回の膜厚検知制御までの通紙枚数をW’枚に設定して基準電流αの更新頻度を高くした。一方、膜厚検知制御において基準電流αと検出した直流電流量βの関係がα≦β(下降)となった場合には、次回の膜厚検知制御まで通紙枚数をW枚に設定して基準電流αの更新頻度を低くした。
基準電流αと検出した直流電流量βの関係がα≦βの場合、帯電ローラの抵抗値が安定したことが期待されるため、設定される実施頻度Zは、好ましくは5000〜10000枚である。これに対して、基準電流αと検出した直流電流量βの関係がα>βの場合に設定される実施頻度Z’は、基準電流の更新を確実に行うために頻度を高めて、好ましくは500〜2000枚である。
図4を参照して図18に示すように、本体メイン電源をONすると(F1)、制御部201は、前回の膜厚検知制御で用いた基準電流αをメモリから呼び出す(F2)。
制御部201は、前回用いた基準電流αと、今回検出した直流電流量βの関係がα≦βか否かを判断して(F3)、α≦βの場合(F3のYes)、次回の膜厚検知制御までの実施間隔をA4サイズ換算値でW枚に設定する(F4)。
制御部201は、前回の膜厚検知制御後に積算した通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がW枚以上か否かを判断し(F5)、通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がW枚に達すると(F5のYes)、実施例1の制御(B1〜B13:図12)を実行する。
制御部201は、前回用いた基準電流αと、今回検出した直流電流量βの関係がα>βの場合(F3のNo)、次回の膜厚検知制御までの実施間隔をA4サイズ換算値でW’(<W)に設定する(F6)。
制御部201は、前回の膜厚検知制御後に積算した通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がW’枚以上か否かを判断し(F7)、通紙の積算枚数のA4サイズ換算値がW’枚に達すると(F7のYes)、実施例1の制御(B1〜B13:図12)を実行する。
ここで、α≦βの場合に適用される膜厚検知制御の実施頻度W枚と、α>βの場合に適用される膜厚検知制御の実施頻度W’枚とを変更して実施例5の膜厚検知制御を実験した。
表3に示すように、実施例5の膜厚検知制御を実施することで、基準電流αが確実に更新され、基準電流αに満たない直流電流量βによって差分電流γを求められなくなるエラーは発生しなくなった。これにより、感光ドラム11の感光層の膜厚を正確に把握することが可能となった。
<検知する直流電流βが基準電流αよりも低くなる理由>
イオン導電剤ローラは、時間経過に伴う抵抗変動が少ない半面、材料組織内のイオンの活動状況が温度湿度によって大きく左右されるため、温度湿度の変化に伴う抵抗の変化は、カーボン分散系のローラに比べてかなり大きい。カーボン分散系の帯電ローラは、使用開始後の抵抗変化や環境変化により、帯電ローラから感光ドラムへの放電の仕方が若干変化することが知られているが、それほど検出電流に大きな影響はないと考えられている。これに対して、イオン導電剤ローラは、短期間でも外的環境要因、通電による昇温などによって、抵抗が大きく変化する。
イオン導電剤ローラは、最初に材料の組織内に均一に拡散していたイオン導電剤が、高いピークツーピーク電圧の交流電界に応答して材料の組織内を活発に動き回って、組織内の安定した位置へ移動する。このため、次第に分布にミクロな偏りが発生し、イオン導電剤の分子間距離が増大して、最初の均一に分散した状態よりも帯電ローラの抵抗値が上昇すると考えられる。
イオン導電剤ローラは、イオン導電剤の配列が材料の組織内で安定化するまで、イオン導電剤が活発な動きをし続けて材料の抵抗値が安定しないと考えられる。そして、イオン導電剤の配列が材料の組織内で安定化すると、イオン導電剤の活動が抑制されて材料の抵抗値が最初よりも低い値で安定するので、帯電ローラから感光ドラムに流れる直流電流量も最初より低い値で安定すると考えられる。
このため、新品の帯電ローラに振動電圧を印加して感光ドラムを帯電させると、イオン導電剤の活動が安定化状態に入るまで帯電ローラの抵抗値が低下し続ける。帯電ローラの抵抗値が低下すると、一定の直流電圧に一定のピーク間電圧の交流電圧を重畳した振動電圧を印加した際に帯電ローラから感光ドラムに流れ込む直流電流量は、最初に測定した初期基準電流よりも低くなる。
一般的には、感光ドラム11の感光層が摩耗して膜厚が減少すると、感光ドラム11の感光層の静電容量が大きくなるため、帯電ローラ12から感光ドラム11に流れ込む直流電流量βは増加する。
しかし、帯電ローラ12として、イオン導電剤ローラを用いた場合、新品状態の帯電ローラは、イオンの配列が安定化状態に入るまでは、帯電ローラの抵抗値が下降し続ける。このため、感光層の膜厚に変化がなくても、感光層の膜厚検知制御において測定される直流電流が低下すると考えられる。
また、イオン導電剤が活発にローラ内部を活動する際に外部に異常放電を発生すると、イオンの配列が安定化状態に入るまでは、安定化状態になった後よりもかなり高い直流電流が帯電ローラ12から感光ドラム11に流れることが指摘されている。
膜厚検知制御において直流電流量を検出する場合、帯電ローラが新品の状態であると、帯電ローラ内部のイオン導電剤の配列が整うまで、帯電ローラ12から感光ドラム11に高い放電が発生して高い直流電流が測定されることが指摘されている。
イオン導電剤ローラの異常放電は、帯電ローラ12の抵抗の変化や環境変化による直流電流への影響よりも相当大きいため、この異常放電分の影響を最小限にとどめることが、感光ドラムの膜厚検知制御の精度を上げるうえで、非常に重要である。
図11において、αn>βnとなっている間は、帯電ローラ12から感光体11に流れる直流電流は正規の電流ではなく、異常放電により不安定な状態であると考えてよい。従って、基準電流αn≦βnとなるまでの基準電流αn−1は正規の基準電流として、参考にすべきではない。しかし、αn≦βnとなると、材料の組織内におけるイオン導電剤の配列が整ったことを表している。材料内のイオン導電剤の配列が整ったαnを基準電流として更新することがふさわしい。
感光ドラム膜厚検知時に発生する帯電ローラの異常放電による基準電流の誤検知は、比較的ドラムカートリッジ使用初期に発生しやすいためである。異常放電の発生しやすいドラムカートリッジ使用初期においては、より細かく基準電流αを更新していくことによって、基準電流αの理想状態を精度よく検出できることになる。