JP2004346052A - 害虫忌避材および該資材を利用した害虫忌避方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】取り扱いが容易で、害虫の侵入する恐れのある場所の近辺に貼り付けるか置くだけで、害虫を効果的に忌避し、長時間にわたって効果を持続する、ヒノキチオールを有効成分とする害虫忌避材を提供する。
【解決手段】ヒノキチオールを保持した担体と該担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆したことを特徴とする害虫忌避材。
【選択図】 図1
【解決手段】ヒノキチオールを保持した担体と該担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆したことを特徴とする害虫忌避材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、害虫に対して忌避効果を有する薬剤を担体に保持させた害虫忌避材に関するものである。詳しくは、担体に保持させたシバンムシ等の害虫に忌避効果を有するヒノキチオールの揮散量を制御することにより、忌避効果を長期間にわたり持続させることのできる害虫忌避材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、貯蔵害虫、家屋害虫の駆除に対しては、燻煙剤や燻蒸剤などの殺虫剤が使用されている。
これらの殺虫剤は、安全性の他、環境への影響の点でも問題を抱えており、いずれの殺虫剤も使用場所、使用量、使用方法に制限がある。
【0003】
従来から、ヒノキチオールは、防蟻効果、抗菌・効黴作用を有することが知られている。さらに、本発明者は、ヒノキチオールがシバンムシに対して忌避効果を有することを報告している(特許文献1を参照されたい)。
【0004】
また、ヒノキチオールを有効成分とする防虫テープとして、支持体上に粘着剤、ヒノキチオールならびに、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンからなる群より選ばれる1種以上を含有する粘着剤層が形成されたテープが開示されている(特許文献2を参照されたい)。
【0005】
害虫を効果的に忌避させるためには、持続してヒノキチオールを揮散する必要があり、実用的には最低でも1〜2ヶ月程度の残効期間(揮散持続期間)を有していることが望まれていた。すなわち、実用的な忌避材を作成するには、支持体の単位面積あたりのヒノキチオール量をできるだけ多くする必要があった。
【0006】
しかし、粘着剤重量に対するヒノキチオール重量が多くなるとヒノキチオールが粘着性に悪影響を与えることから、多量のヒノキチオールを含有させられないという問題があった。
【0007】
さらにヒノキチオールは金属腐食性を有するため、粘着剤層にヒノキチオールが存在すると金属、特に鉄を腐食させる恐れがあるため、鉄材には貼り付けできないという問題点があった。
【0008】
また、ヒノキチオールは、常温では無色ないし淡黄色の結晶で融点が48〜52.5℃と比較的低い温度で液体となる固体で、常温でも液体状態を経ず直接気体となる昇華性を有する物質であり、長期間の忌避効果を持続させるには困難があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−72603号
【特許文献2】
特開平9−163909号
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のヒノキチオールを忌避剤とした害虫忌避材の問題点を解決し、害虫の侵入するおそれのある場所の近辺に貼り付けまたは置くだけで、害虫を効果的に忌避する、取扱いが容易でなおかつ長期間忌避効果を持続する害虫忌避材および該資材を使用した害虫忌避方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、透過性フィルム、特に低密度ポリエチレンフィルムがヒノキチオールの揮散量をコントロールすることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、ヒノキチオールを保持した担体と該担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆したことを特徴とする害虫忌避材と該資材を用いた害虫忌避方法を提供するものである。
【0013】
また、ヒノキチオールを保持した担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆した害虫忌避材の少なくとも一部に非透過性部材を設けたことを特徴とする害虫忌避材と該資材を用いた害虫忌避方法を提供する。
【0014】
さらにまた、前記非透過性部材の一部に接着層を設けたことを特徴とする害虫忌避材と該資材を用いた害虫忌避方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の害虫忌避材の構造を図面に基づいて説明する。なお、ここに示す図は一例であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一例は、図1に示すように、透過性フィルム2がヒノキチオール保持担体1の少なくとも一面を挟み込むように被覆されている。
また、第2図に示すように、ヒノキチオール保持担体1を被覆する透過性フィルム2の片面に非透過性部材4および/または接着部5が設けられている。
【0017】
本発明で使用される担体としては紙、布、不織布、合成樹脂などが挙げられるが、ヒノキチオールを保持できる素材であれば、これらに限定されるものではない。
担体にヒノキチオールを保持するためには、結晶ヒノキチオールを溶融していったん液体とした後に担体に染み込ませればよいが、結晶のまま使用することもできる。
【0018】
透過性フィルムは、ヒノキチオールが透過することのできるフィルム、例えばポリエチレンフィルムやエチレン‐酢酸ビニル共重合体フィルムなどの合成樹脂フィルム、紙製フィルムあるいは布製フィルムであればよいが、特に低密度ポリエチレンフィルムが好ましい。
【0019】
また、シバンムシの場合、ヒノキチオールの揮散量が1.6μg/cm2/h未満の場合、忌避効果が低減するため、透過性フィルムからのヒノキチオール揮散量を1.6μg/cm2/h以上とする必要がある。ヒノキチオール揮散量の上限は、持続期間との関係で決定されるものであるが、4μg/cm2/h以下が好ましい。
【0020】
ヒノキチオール揮散量を1.6μg/cm2/h以上4μg/cm2/h以下の範囲でコントロールするためには、例えば、低密度ポリエチレンフィルムの場合、厚さ30μm以上100μm以下のものであればよい。
【0021】
ヒノキチオールを保持した担体の透過性フィルムによる被覆は、ヒノキチオール揮散量の制御が可能であるように行なえばよい。すなわち、ヒノキチオールの揮散量の制御が可能であれば、どのように被覆してもよく、例えば、ヒノキオール保持担体の略大部分を被覆してもよく、該保持担体の全体を完全に覆ってヒートシール等の手段により周辺部を密封してもよい。ヒノキオール保持担体の略大部分を被覆した場合は、該保持担体の非被覆部をヒノキチオール非透過性部材で覆うことが望ましい。また、ヒノキオール保持担体の全体を被覆した場合は、被覆面の一部をヒノキチオール非透過性部材で覆ってもよい。具体的には、例えば片面を低密度ポリエチレンフィルムとし、他面を非透過性材、例えばアルミシートとしてヒノキチオールを挟み、ろ紙周縁部でポリエチレンフィルムとアルミシートを接着させ、アルミ面に両面テープを貼着して作製してもよい。
【0022】
なお、ヒノキチオール透過性フィルムは無色透明のものでもよいが、ヒノキチオールは光分解し易いため、フィルムをシルバーなど光を透過しにくい色にすることで、効果の安定性を向上させることもできる。
【0023】
ヒノキチオール非透過性材としては、アルミ材、PET材などが挙げられるが、昇華したヒノキチオールが透過しない素材であれば、これらに限定されるものではない。
【0024】
ヒノキチオール非透過性材の外面には、害虫忌避材を所定の場所に固定できるよう接着部を設けてもよい。接着部は、公知の接着手段をヒノキチオール非透過性部材の外側に配置することによって付与することが可能である。接着手段は、粘着性に優れ、剥離可能なものであれば、特に限定はない。例えば、両面粘着テープをあげることができる。
【0025】
なお、担体に保持するヒノキチオール量は、使用する環境条件、使用する透過性フィルムの素材および期待する持続期間により異なるが、低密度ポリエチレンフィルムで厚さ30〜100μmの場合、担体に保持させるヒノキチオールの含量は7.5mg/cm2以上、好ましくは、10mg/cm2以上である。
【0026】
ヒノキチオールを保持した担体の形態は、使用する状況に応じて決定すればよく、例えばテープ状に加工し、目的に応じた長さに裁断して使用することができる。
【0027】
本発明の害虫忌避材は、シバンムシ等の貯蔵害虫を対象とするものであるが、ヒノキチオールに対し、忌避を示す害虫、例えばタバコシバンムシ、ジンサンシバンムシ等は本発明の害虫忌避材の適用範囲内である。
【0028】
本発明の害虫忌避材は、害虫の侵入経路の周辺部に貼ることによって、その侵入を抑制することができ、特に害虫の侵入口となる隙間周囲に貼ることにより、その侵入を効果的に防ぐことができる。具体的には、貯蔵品を梱包している梱包材の隙間周囲、害虫の発生場所となるボックス構造のもの(配電盤、機械ボックス、ロッカー、収納容器、机の引き出しなど)の隙間周囲、施設・設備の隙間周囲、ドア・窓の周囲などに貼ることにより、害虫の侵入を効果的に防ぐことができる。
また、ボックス構造のものへの害虫の侵入を防ぐためには、本害虫忌避材をボックス内に設置してもよい。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を詳細に説明する。なお、実施例に示したものは一例であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0030】
1.害虫忌避材の作製
所定の含量になるように細かく砕いて粉末状にしたヒノキチオールをろ紙(ADVANTAC社製 No.2)上に均一にのせ、これを60℃に設定したオーブン(東京理化器械(株)製、EYELA、WINDY OVEN WFO−600SD)の中に7分間入れてヒノキチオールを溶融させ、ヒノキチオールをろ紙に均一に染み込ませた。
【0031】
このヒノキチオールを染み込ませたろ紙をオーブンより取り出し、室温(25±1℃)で8分間冷却固化させた後、所定の幅・長さのテープ状に裁断した。
【0032】
担体に含有させるヒノキチオールの含量は、担体の面積と溶融吸着させるヒノキチオールの量とで調整することにより所要量を決定した。
【0033】
この裁断したヒノキチオールを保持したろ紙を低密度ポリエチレンフィルムで挟み、ろ紙の周縁部で挟み込んだ上下の低密度ポリエチレンフィルムをヒートシーラー(太洋電機産業(株)製、HS−400)を用いてヒートシールした。
【0034】
この片面にアルミテープ(テープ厚:100μm、日東電工株式会社)を貼り、さらに、アルミテープ外面に両面テープ(日東電工株式会社 No.5013)を貼ることにより、害虫忌避材を作製した。
【0035】
上記の方法により、ろ紙の長さおよび幅、ヒノキチオール処理量、フィルム厚、フィルムカラーなどを変えた次に記載する害虫忌避材を作製した。
【0036】
実施例1
透過性フィルムの違いによるヒノキチオール揮散持続(保持)効果
前述の方法により作製した下記忌避材A−Dのヒノキチオールの透過性を調査した。なお、忌避材A−Dに使用したヒノキチオール含有ろ紙の長さは25cmとした。
【0037】
忌避材A (比較として作製、調査);
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:無被覆
忌避材B;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:高性能直鎖状低密度ポリエチレン ハーモレックス(登録商標)LL NF544N 日本ポリオレフィン株式会社製(フィルム厚さ:30μm、フィルムカラー:無色透明)
忌避材 C;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:自転車カバー 智工業株式会社製(フィルム厚:50μm、フィルムカラー:シルバー)
忌避材 D;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:ポリエチレンフィルム・シート軟質 WDHAEC43 株式会社サンプラテック製(フィルム厚:100μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0038】
また、使用した低密度ポリエチレンフィルムの23℃−0%RH時における酸素透過率および40℃−90%RH時における透湿度は次の通りである。
厚さ30μmフィルム:酸素透過率103000ml/(m2−d−MPa)、透湿度30.5g/(m2・d);
厚さ50μmフィルム:酸素透過率48000ml/(m2−d−MPa)、透湿度13.9g/(m2・d);
厚さ100μmフィルム:酸素透過率21000ml/(m2−d−MPa)、透湿度6.3g/(m2・d);
(PEフィルム分析結果報告書から抜粋)。
【0039】
上記により作製した害虫忌避材を用いてポリエチレンフィルムからの、ヒノキチオールの揮散量を測定した。
【0040】
作製した害虫忌避材は、日長条件が14L(明):10D(暗)の25±1℃の部屋に放置し、各調査日ごとに各害虫忌避材の重量減を測定することでヒノキチオールの減量を調査した。
【0041】
ヒノキチオールの減量を忌避材から揮散されたヒノキチオール量と換算した。なお、試験は各忌避材4反復ずつ行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように低密度ポリエチレンフィルムでヒノキチオール保持担体を被覆することでヒノキチオールを徐放することが確認された。
低密度ポリエチレンフィルムの種類、厚さを変えることで、揮散量の調節、即ち、徐放効果を調節できることが確認された。
【0044】
担体に保持した状態(無被覆)では、約50日、厚さ30μmフィルムの場合は、約70日、厚さ50μmフィルムの場合は、約130日、厚さ100μmフィルムの場合には、130日以上の担体でのヒノキチオール保持効果(担体からの揮散)があることが確認された。
【0045】
実施例2
タバコシバンムシに対する忌避効果1
前述の害虫忌避材の作製により次の害虫忌避材を作製した。
忌避材I;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:ポリエチレンフィルム・シート軟質 WDHAEC43 株式会社サンプラテック製(フィルム厚:100μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0046】
害虫忌避材を箱構造の隙間周囲に貼着することによる、タバコシバンムシの箱内への侵入抑制についての調査を行った。
【0047】
富士フレーバー(株)社製「ニューセリコ」に使用している食餌誘引剤71を箱内底部に載置した段ボール箱31(27×37×15.6 cm)の上部に隙間32(1×25 cm)を設け(図3参照)、その周囲に害虫忌避材33を貼着した段ボール箱(処理)と害虫忌避材と同型でヒノキチオールを処理していない資材を貼着した段ボール箱(対照)を作製して、処理同士、対照同士が対角線上に位置するように実験室内に設置した。(図4参照)
【0048】
処理区と処理区、対照区と対照区を結んだ交点を放飼位置とし、ここにタバコシバンムシ成虫3000頭を放飼し、40時間後に各段ボール箱内に侵入した虫数を調査した。
試験は暗条件下で4反復行い、反復ごとに処理区と対照区の位置を交換した。
【0049】
試験終了後は、残効性を調べるために害虫忌避材およびヒノキチオールを処理していない同型の資材は回収し、次の調査日まで25±1℃、14時間L(明):10時間D(暗)の部屋に放置した。
次の調査日には、放置した害虫忌避材33および新たな段ボール箱を用いて同様に調査を行った。
【0050】
忌避材Iでの結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示すように、害虫忌避材33をタバコシバンムシの侵入口となる隙間32の周囲に貼ることにより、その侵入を2ヶ月以上に渡って強く抑えられることが示唆された。また、忌避効果は放置3ヶ月後でも認められた。
実施例2の揮散量結果から、2μg/cm2/h以上の揮散量があれば効果的な忌避効果、1.6μg/cm2/h以上でもタバコシバンムシに対する忌避効果が認められることが示唆された。
【0053】
実施例3
タバコシバンムシに対する忌避効果2
前述の害虫忌避材の作製により作製した次の害虫忌避材を用いて、担体に保持される量の違いによるタバコシバンムシに対する忌避効果を調査した。
【0054】
作製した害虫忌避材
忌避材(1);
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:15mg/cm2、フィルム:高性能直鎖状低密度ポリエチレン ハーモレックス(登録商標)LL NF544N 日本ポリオレフィン株式会社製(フィルム厚さ:30μm、フィルムカラー:無色透明)
忌避材(2);
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:7.5mg/cm2、フィルム:高性能直鎖状低密度ポリエチレン ハーモレックス(登録商標)LL NF544N 日本ポリオレフィン株式会社製(フィルム厚さ:30μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0055】
調査は、昆虫飼育ケージ50(35×35×50cm)(図5参照)床面に本発明の害虫忌避材73を貼ったトラップ51(図6参照)を置き、トラップ51の周辺部にタバコシバンムシ成虫300頭を放飼した。1時間後、トラップに捕獲された虫数を計測した。トラップ51は富士フレーバー社製の「ニューセリコ」を用いた。トラップ51の底面にはタバコシバンムシ捕獲用の粘着層が設けられ、さらにトラップ51の中央部にはタバコシバンムシの誘引剤として、該トラップ(ニューセリコ)に使用している食餌誘引剤71とフェロモン剤72を使用し、害虫忌避材73は、トラップ51の虫の入口近辺となる天井突出部上下に貼着した(図6参照)。
【0056】
対照として、飼育ケージ50内のトラップにヒノキチオール処理していない同型の資材をつくり同様に貼着したものを使用した。
【0057】
調査終了後は、使用した害虫忌避材73を回収し、次の調査日まで、25±1℃、14時間L(明):10時間D(暗)の条件下にそのまま放置した。
次の調査日には、回収し、一定の条件下に放置した害虫忌避材73を用いて、新たなトラップに貼着して同様の調査を行った。
【0058】
タバコシバンムシの放飼1時間後にトラップに捕獲された頭数を計測した。
結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表に示すように、30μmの低密度ポリエチレンフィルムで被覆の場合、担体に保持させる量を増減することにより担体の保持量に対応した持続効果が得られた。
7.5mg/cm2の場合では約50日まで、15mg/cm2の場合には70日以上の忌避効果があることが示唆された。
【0061】
実施例4
タバコシバンムシに対する忌避効果3
前述の害虫忌避材の作製により次の害虫忌避材を作製した。
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:ポリエチレンフィルム・シート軟質 WDHAEC43 株式会社サンプラテック製(フィルム厚:100μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0062】
本発明の害虫忌避材を用いて、タバコシバンムシに対する忌避効果を調査した。
【0063】
昆虫飼育ケージ70(35×35×50cm)3個を連結させ、連結部の連結部分の周縁に枠の付いた網を扉とし、連結した部分に5mmの隙間を設けた。なお、ケージを連結した部分には、供試虫の逃亡を防止するためフィルムを貼り密閉した(図7参照)。
【0064】
中央の飼育ケージの一方の扉周縁部、周縁部と扉周囲の本体枠部に上記の害虫忌避材73を貼着し、他方には、ヒノキチオール処理していない同型の資材をつくり同様に貼着し、両側の飼育ケージの端には誘引剤として前記のトラップ51に使用している食餌誘引剤71とフェロモン剤72を載置した。(図8参照)
【0065】
この中央の飼育ケージ70にタバコシバンムシ成虫1000頭を放飼し、放飼したタバコシバンムシの中央飼育ケージから両端の飼育ゲージへの移動を46時間後に調査した。調査は、暗条件下で4反復行った。
【0066】
調査終了後は、使用した害虫忌避材を回収し、次の調査日まで、25±1℃、14時間L(明):10時間D(暗)の条件下にそのまま放置した。
次の調査日には、回収し、一定の条件下に放置した害虫忌避材を用いて、同様の調査を行った。
【0067】
結果を表4に示す。忌避効果の強さはEPI(Excess Proportion Index)で評価した。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示すように、害虫忌避材を入口周縁部あるいは入口周縁と枠部に貼ることにより、タバコシバンムシの侵入が約1ヶ月以上抑制され、約2ヶ月は忌避効果があることが示唆された。
【0070】
実施例5
タバコシバンムシに対する忌避効果4
光で分解し易いヒノキチオールを有色フィルムで被覆した効果を測定した。
【0071】
前述の方法により次の害虫忌避材を作製した。
忌避材II;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:自転車カバー 智工業株式会社製(フィルム厚:50μm、フィルムカラー:シルバー)。
【0072】
調査は実施例2と同様の方法で行った。
忌避材IIでの結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5に示すように、シルバーのポリエチレンフィルムをヒノキチオール透過性フィルムとして用いた場合も、約2ヶ月間タバコシバンムシに対する強い忌避効果を示した。
フィルムが無色透明の場合には、保持担体中のヒノキチオールは徐々に光分解し、黄色を呈するが、フィルムをシルバーとすることで保持担体中のヒノキチオールは光分解せず、黄色にならないことを確認した。
【0075】
【発明の効果】
本発明の害虫忌避材は、貯蔵害虫であるタバコシバンムシに対し、忌避効果を長期間持続し、害虫の侵入を防ぐことができる。
なおかつ、薬剤が保持された担体を密封したテープ状の形態であり、接着層を設けてあることから、目的とする場所への設置を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】害虫忌避材の構成を示す図である。
【図2】害虫忌避材の構成を示す図である。
【図3】実施例2の実験方法の概要を示す図である。
【図4】実施例2の実験方法の概要を示す図である。
【図5】実施例3の実験方法の概要を示す図である。
【図6】実施例3の実験方法の概要を示す図である。
【図7】実施例4の実験方法の概要を示す図である。
【図8】実施例4の実験方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 担体 2 透過性フィルム 3 周縁部 4 非透過性部
5 接着部
【発明の属する技術分野】
本発明は、害虫に対して忌避効果を有する薬剤を担体に保持させた害虫忌避材に関するものである。詳しくは、担体に保持させたシバンムシ等の害虫に忌避効果を有するヒノキチオールの揮散量を制御することにより、忌避効果を長期間にわたり持続させることのできる害虫忌避材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、貯蔵害虫、家屋害虫の駆除に対しては、燻煙剤や燻蒸剤などの殺虫剤が使用されている。
これらの殺虫剤は、安全性の他、環境への影響の点でも問題を抱えており、いずれの殺虫剤も使用場所、使用量、使用方法に制限がある。
【0003】
従来から、ヒノキチオールは、防蟻効果、抗菌・効黴作用を有することが知られている。さらに、本発明者は、ヒノキチオールがシバンムシに対して忌避効果を有することを報告している(特許文献1を参照されたい)。
【0004】
また、ヒノキチオールを有効成分とする防虫テープとして、支持体上に粘着剤、ヒノキチオールならびに、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンからなる群より選ばれる1種以上を含有する粘着剤層が形成されたテープが開示されている(特許文献2を参照されたい)。
【0005】
害虫を効果的に忌避させるためには、持続してヒノキチオールを揮散する必要があり、実用的には最低でも1〜2ヶ月程度の残効期間(揮散持続期間)を有していることが望まれていた。すなわち、実用的な忌避材を作成するには、支持体の単位面積あたりのヒノキチオール量をできるだけ多くする必要があった。
【0006】
しかし、粘着剤重量に対するヒノキチオール重量が多くなるとヒノキチオールが粘着性に悪影響を与えることから、多量のヒノキチオールを含有させられないという問題があった。
【0007】
さらにヒノキチオールは金属腐食性を有するため、粘着剤層にヒノキチオールが存在すると金属、特に鉄を腐食させる恐れがあるため、鉄材には貼り付けできないという問題点があった。
【0008】
また、ヒノキチオールは、常温では無色ないし淡黄色の結晶で融点が48〜52.5℃と比較的低い温度で液体となる固体で、常温でも液体状態を経ず直接気体となる昇華性を有する物質であり、長期間の忌避効果を持続させるには困難があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−72603号
【特許文献2】
特開平9−163909号
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のヒノキチオールを忌避剤とした害虫忌避材の問題点を解決し、害虫の侵入するおそれのある場所の近辺に貼り付けまたは置くだけで、害虫を効果的に忌避する、取扱いが容易でなおかつ長期間忌避効果を持続する害虫忌避材および該資材を使用した害虫忌避方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、透過性フィルム、特に低密度ポリエチレンフィルムがヒノキチオールの揮散量をコントロールすることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、ヒノキチオールを保持した担体と該担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆したことを特徴とする害虫忌避材と該資材を用いた害虫忌避方法を提供するものである。
【0013】
また、ヒノキチオールを保持した担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆した害虫忌避材の少なくとも一部に非透過性部材を設けたことを特徴とする害虫忌避材と該資材を用いた害虫忌避方法を提供する。
【0014】
さらにまた、前記非透過性部材の一部に接着層を設けたことを特徴とする害虫忌避材と該資材を用いた害虫忌避方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の害虫忌避材の構造を図面に基づいて説明する。なお、ここに示す図は一例であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一例は、図1に示すように、透過性フィルム2がヒノキチオール保持担体1の少なくとも一面を挟み込むように被覆されている。
また、第2図に示すように、ヒノキチオール保持担体1を被覆する透過性フィルム2の片面に非透過性部材4および/または接着部5が設けられている。
【0017】
本発明で使用される担体としては紙、布、不織布、合成樹脂などが挙げられるが、ヒノキチオールを保持できる素材であれば、これらに限定されるものではない。
担体にヒノキチオールを保持するためには、結晶ヒノキチオールを溶融していったん液体とした後に担体に染み込ませればよいが、結晶のまま使用することもできる。
【0018】
透過性フィルムは、ヒノキチオールが透過することのできるフィルム、例えばポリエチレンフィルムやエチレン‐酢酸ビニル共重合体フィルムなどの合成樹脂フィルム、紙製フィルムあるいは布製フィルムであればよいが、特に低密度ポリエチレンフィルムが好ましい。
【0019】
また、シバンムシの場合、ヒノキチオールの揮散量が1.6μg/cm2/h未満の場合、忌避効果が低減するため、透過性フィルムからのヒノキチオール揮散量を1.6μg/cm2/h以上とする必要がある。ヒノキチオール揮散量の上限は、持続期間との関係で決定されるものであるが、4μg/cm2/h以下が好ましい。
【0020】
ヒノキチオール揮散量を1.6μg/cm2/h以上4μg/cm2/h以下の範囲でコントロールするためには、例えば、低密度ポリエチレンフィルムの場合、厚さ30μm以上100μm以下のものであればよい。
【0021】
ヒノキチオールを保持した担体の透過性フィルムによる被覆は、ヒノキチオール揮散量の制御が可能であるように行なえばよい。すなわち、ヒノキチオールの揮散量の制御が可能であれば、どのように被覆してもよく、例えば、ヒノキオール保持担体の略大部分を被覆してもよく、該保持担体の全体を完全に覆ってヒートシール等の手段により周辺部を密封してもよい。ヒノキオール保持担体の略大部分を被覆した場合は、該保持担体の非被覆部をヒノキチオール非透過性部材で覆うことが望ましい。また、ヒノキオール保持担体の全体を被覆した場合は、被覆面の一部をヒノキチオール非透過性部材で覆ってもよい。具体的には、例えば片面を低密度ポリエチレンフィルムとし、他面を非透過性材、例えばアルミシートとしてヒノキチオールを挟み、ろ紙周縁部でポリエチレンフィルムとアルミシートを接着させ、アルミ面に両面テープを貼着して作製してもよい。
【0022】
なお、ヒノキチオール透過性フィルムは無色透明のものでもよいが、ヒノキチオールは光分解し易いため、フィルムをシルバーなど光を透過しにくい色にすることで、効果の安定性を向上させることもできる。
【0023】
ヒノキチオール非透過性材としては、アルミ材、PET材などが挙げられるが、昇華したヒノキチオールが透過しない素材であれば、これらに限定されるものではない。
【0024】
ヒノキチオール非透過性材の外面には、害虫忌避材を所定の場所に固定できるよう接着部を設けてもよい。接着部は、公知の接着手段をヒノキチオール非透過性部材の外側に配置することによって付与することが可能である。接着手段は、粘着性に優れ、剥離可能なものであれば、特に限定はない。例えば、両面粘着テープをあげることができる。
【0025】
なお、担体に保持するヒノキチオール量は、使用する環境条件、使用する透過性フィルムの素材および期待する持続期間により異なるが、低密度ポリエチレンフィルムで厚さ30〜100μmの場合、担体に保持させるヒノキチオールの含量は7.5mg/cm2以上、好ましくは、10mg/cm2以上である。
【0026】
ヒノキチオールを保持した担体の形態は、使用する状況に応じて決定すればよく、例えばテープ状に加工し、目的に応じた長さに裁断して使用することができる。
【0027】
本発明の害虫忌避材は、シバンムシ等の貯蔵害虫を対象とするものであるが、ヒノキチオールに対し、忌避を示す害虫、例えばタバコシバンムシ、ジンサンシバンムシ等は本発明の害虫忌避材の適用範囲内である。
【0028】
本発明の害虫忌避材は、害虫の侵入経路の周辺部に貼ることによって、その侵入を抑制することができ、特に害虫の侵入口となる隙間周囲に貼ることにより、その侵入を効果的に防ぐことができる。具体的には、貯蔵品を梱包している梱包材の隙間周囲、害虫の発生場所となるボックス構造のもの(配電盤、機械ボックス、ロッカー、収納容器、机の引き出しなど)の隙間周囲、施設・設備の隙間周囲、ドア・窓の周囲などに貼ることにより、害虫の侵入を効果的に防ぐことができる。
また、ボックス構造のものへの害虫の侵入を防ぐためには、本害虫忌避材をボックス内に設置してもよい。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を詳細に説明する。なお、実施例に示したものは一例であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0030】
1.害虫忌避材の作製
所定の含量になるように細かく砕いて粉末状にしたヒノキチオールをろ紙(ADVANTAC社製 No.2)上に均一にのせ、これを60℃に設定したオーブン(東京理化器械(株)製、EYELA、WINDY OVEN WFO−600SD)の中に7分間入れてヒノキチオールを溶融させ、ヒノキチオールをろ紙に均一に染み込ませた。
【0031】
このヒノキチオールを染み込ませたろ紙をオーブンより取り出し、室温(25±1℃)で8分間冷却固化させた後、所定の幅・長さのテープ状に裁断した。
【0032】
担体に含有させるヒノキチオールの含量は、担体の面積と溶融吸着させるヒノキチオールの量とで調整することにより所要量を決定した。
【0033】
この裁断したヒノキチオールを保持したろ紙を低密度ポリエチレンフィルムで挟み、ろ紙の周縁部で挟み込んだ上下の低密度ポリエチレンフィルムをヒートシーラー(太洋電機産業(株)製、HS−400)を用いてヒートシールした。
【0034】
この片面にアルミテープ(テープ厚:100μm、日東電工株式会社)を貼り、さらに、アルミテープ外面に両面テープ(日東電工株式会社 No.5013)を貼ることにより、害虫忌避材を作製した。
【0035】
上記の方法により、ろ紙の長さおよび幅、ヒノキチオール処理量、フィルム厚、フィルムカラーなどを変えた次に記載する害虫忌避材を作製した。
【0036】
実施例1
透過性フィルムの違いによるヒノキチオール揮散持続(保持)効果
前述の方法により作製した下記忌避材A−Dのヒノキチオールの透過性を調査した。なお、忌避材A−Dに使用したヒノキチオール含有ろ紙の長さは25cmとした。
【0037】
忌避材A (比較として作製、調査);
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:無被覆
忌避材B;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:高性能直鎖状低密度ポリエチレン ハーモレックス(登録商標)LL NF544N 日本ポリオレフィン株式会社製(フィルム厚さ:30μm、フィルムカラー:無色透明)
忌避材 C;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:自転車カバー 智工業株式会社製(フィルム厚:50μm、フィルムカラー:シルバー)
忌避材 D;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:ポリエチレンフィルム・シート軟質 WDHAEC43 株式会社サンプラテック製(フィルム厚:100μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0038】
また、使用した低密度ポリエチレンフィルムの23℃−0%RH時における酸素透過率および40℃−90%RH時における透湿度は次の通りである。
厚さ30μmフィルム:酸素透過率103000ml/(m2−d−MPa)、透湿度30.5g/(m2・d);
厚さ50μmフィルム:酸素透過率48000ml/(m2−d−MPa)、透湿度13.9g/(m2・d);
厚さ100μmフィルム:酸素透過率21000ml/(m2−d−MPa)、透湿度6.3g/(m2・d);
(PEフィルム分析結果報告書から抜粋)。
【0039】
上記により作製した害虫忌避材を用いてポリエチレンフィルムからの、ヒノキチオールの揮散量を測定した。
【0040】
作製した害虫忌避材は、日長条件が14L(明):10D(暗)の25±1℃の部屋に放置し、各調査日ごとに各害虫忌避材の重量減を測定することでヒノキチオールの減量を調査した。
【0041】
ヒノキチオールの減量を忌避材から揮散されたヒノキチオール量と換算した。なお、試験は各忌避材4反復ずつ行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように低密度ポリエチレンフィルムでヒノキチオール保持担体を被覆することでヒノキチオールを徐放することが確認された。
低密度ポリエチレンフィルムの種類、厚さを変えることで、揮散量の調節、即ち、徐放効果を調節できることが確認された。
【0044】
担体に保持した状態(無被覆)では、約50日、厚さ30μmフィルムの場合は、約70日、厚さ50μmフィルムの場合は、約130日、厚さ100μmフィルムの場合には、130日以上の担体でのヒノキチオール保持効果(担体からの揮散)があることが確認された。
【0045】
実施例2
タバコシバンムシに対する忌避効果1
前述の害虫忌避材の作製により次の害虫忌避材を作製した。
忌避材I;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:ポリエチレンフィルム・シート軟質 WDHAEC43 株式会社サンプラテック製(フィルム厚:100μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0046】
害虫忌避材を箱構造の隙間周囲に貼着することによる、タバコシバンムシの箱内への侵入抑制についての調査を行った。
【0047】
富士フレーバー(株)社製「ニューセリコ」に使用している食餌誘引剤71を箱内底部に載置した段ボール箱31(27×37×15.6 cm)の上部に隙間32(1×25 cm)を設け(図3参照)、その周囲に害虫忌避材33を貼着した段ボール箱(処理)と害虫忌避材と同型でヒノキチオールを処理していない資材を貼着した段ボール箱(対照)を作製して、処理同士、対照同士が対角線上に位置するように実験室内に設置した。(図4参照)
【0048】
処理区と処理区、対照区と対照区を結んだ交点を放飼位置とし、ここにタバコシバンムシ成虫3000頭を放飼し、40時間後に各段ボール箱内に侵入した虫数を調査した。
試験は暗条件下で4反復行い、反復ごとに処理区と対照区の位置を交換した。
【0049】
試験終了後は、残効性を調べるために害虫忌避材およびヒノキチオールを処理していない同型の資材は回収し、次の調査日まで25±1℃、14時間L(明):10時間D(暗)の部屋に放置した。
次の調査日には、放置した害虫忌避材33および新たな段ボール箱を用いて同様に調査を行った。
【0050】
忌避材Iでの結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示すように、害虫忌避材33をタバコシバンムシの侵入口となる隙間32の周囲に貼ることにより、その侵入を2ヶ月以上に渡って強く抑えられることが示唆された。また、忌避効果は放置3ヶ月後でも認められた。
実施例2の揮散量結果から、2μg/cm2/h以上の揮散量があれば効果的な忌避効果、1.6μg/cm2/h以上でもタバコシバンムシに対する忌避効果が認められることが示唆された。
【0053】
実施例3
タバコシバンムシに対する忌避効果2
前述の害虫忌避材の作製により作製した次の害虫忌避材を用いて、担体に保持される量の違いによるタバコシバンムシに対する忌避効果を調査した。
【0054】
作製した害虫忌避材
忌避材(1);
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:15mg/cm2、フィルム:高性能直鎖状低密度ポリエチレン ハーモレックス(登録商標)LL NF544N 日本ポリオレフィン株式会社製(フィルム厚さ:30μm、フィルムカラー:無色透明)
忌避材(2);
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:7.5mg/cm2、フィルム:高性能直鎖状低密度ポリエチレン ハーモレックス(登録商標)LL NF544N 日本ポリオレフィン株式会社製(フィルム厚さ:30μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0055】
調査は、昆虫飼育ケージ50(35×35×50cm)(図5参照)床面に本発明の害虫忌避材73を貼ったトラップ51(図6参照)を置き、トラップ51の周辺部にタバコシバンムシ成虫300頭を放飼した。1時間後、トラップに捕獲された虫数を計測した。トラップ51は富士フレーバー社製の「ニューセリコ」を用いた。トラップ51の底面にはタバコシバンムシ捕獲用の粘着層が設けられ、さらにトラップ51の中央部にはタバコシバンムシの誘引剤として、該トラップ(ニューセリコ)に使用している食餌誘引剤71とフェロモン剤72を使用し、害虫忌避材73は、トラップ51の虫の入口近辺となる天井突出部上下に貼着した(図6参照)。
【0056】
対照として、飼育ケージ50内のトラップにヒノキチオール処理していない同型の資材をつくり同様に貼着したものを使用した。
【0057】
調査終了後は、使用した害虫忌避材73を回収し、次の調査日まで、25±1℃、14時間L(明):10時間D(暗)の条件下にそのまま放置した。
次の調査日には、回収し、一定の条件下に放置した害虫忌避材73を用いて、新たなトラップに貼着して同様の調査を行った。
【0058】
タバコシバンムシの放飼1時間後にトラップに捕獲された頭数を計測した。
結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表に示すように、30μmの低密度ポリエチレンフィルムで被覆の場合、担体に保持させる量を増減することにより担体の保持量に対応した持続効果が得られた。
7.5mg/cm2の場合では約50日まで、15mg/cm2の場合には70日以上の忌避効果があることが示唆された。
【0061】
実施例4
タバコシバンムシに対する忌避効果3
前述の害虫忌避材の作製により次の害虫忌避材を作製した。
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:ポリエチレンフィルム・シート軟質 WDHAEC43 株式会社サンプラテック製(フィルム厚:100μm、フィルムカラー:無色透明)。
【0062】
本発明の害虫忌避材を用いて、タバコシバンムシに対する忌避効果を調査した。
【0063】
昆虫飼育ケージ70(35×35×50cm)3個を連結させ、連結部の連結部分の周縁に枠の付いた網を扉とし、連結した部分に5mmの隙間を設けた。なお、ケージを連結した部分には、供試虫の逃亡を防止するためフィルムを貼り密閉した(図7参照)。
【0064】
中央の飼育ケージの一方の扉周縁部、周縁部と扉周囲の本体枠部に上記の害虫忌避材73を貼着し、他方には、ヒノキチオール処理していない同型の資材をつくり同様に貼着し、両側の飼育ケージの端には誘引剤として前記のトラップ51に使用している食餌誘引剤71とフェロモン剤72を載置した。(図8参照)
【0065】
この中央の飼育ケージ70にタバコシバンムシ成虫1000頭を放飼し、放飼したタバコシバンムシの中央飼育ケージから両端の飼育ゲージへの移動を46時間後に調査した。調査は、暗条件下で4反復行った。
【0066】
調査終了後は、使用した害虫忌避材を回収し、次の調査日まで、25±1℃、14時間L(明):10時間D(暗)の条件下にそのまま放置した。
次の調査日には、回収し、一定の条件下に放置した害虫忌避材を用いて、同様の調査を行った。
【0067】
結果を表4に示す。忌避効果の強さはEPI(Excess Proportion Index)で評価した。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示すように、害虫忌避材を入口周縁部あるいは入口周縁と枠部に貼ることにより、タバコシバンムシの侵入が約1ヶ月以上抑制され、約2ヶ月は忌避効果があることが示唆された。
【0070】
実施例5
タバコシバンムシに対する忌避効果4
光で分解し易いヒノキチオールを有色フィルムで被覆した効果を測定した。
【0071】
前述の方法により次の害虫忌避材を作製した。
忌避材II;
ろ紙幅:1cm、ヒノキチオール処理量:10mg/cm2、フィルム:自転車カバー 智工業株式会社製(フィルム厚:50μm、フィルムカラー:シルバー)。
【0072】
調査は実施例2と同様の方法で行った。
忌避材IIでの結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5に示すように、シルバーのポリエチレンフィルムをヒノキチオール透過性フィルムとして用いた場合も、約2ヶ月間タバコシバンムシに対する強い忌避効果を示した。
フィルムが無色透明の場合には、保持担体中のヒノキチオールは徐々に光分解し、黄色を呈するが、フィルムをシルバーとすることで保持担体中のヒノキチオールは光分解せず、黄色にならないことを確認した。
【0075】
【発明の効果】
本発明の害虫忌避材は、貯蔵害虫であるタバコシバンムシに対し、忌避効果を長期間持続し、害虫の侵入を防ぐことができる。
なおかつ、薬剤が保持された担体を密封したテープ状の形態であり、接着層を設けてあることから、目的とする場所への設置を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】害虫忌避材の構成を示す図である。
【図2】害虫忌避材の構成を示す図である。
【図3】実施例2の実験方法の概要を示す図である。
【図4】実施例2の実験方法の概要を示す図である。
【図5】実施例3の実験方法の概要を示す図である。
【図6】実施例3の実験方法の概要を示す図である。
【図7】実施例4の実験方法の概要を示す図である。
【図8】実施例4の実験方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 担体 2 透過性フィルム 3 周縁部 4 非透過性部
5 接着部
Claims (6)
- ヒノキチオールを保持した担体と該担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆したことを特徴とする害虫忌避材。
- ヒノキチオールを保持した担体の少なくとも1面を透過性フィルムで被覆した害虫忌避材の少なくとも一部に非透過性部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避材。
- 非透過性部材の一部に接着部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の害虫忌避材。
- 透過性フィルムが低密度ポリエチレンフィルムからなることを特徴とする請求項1〜3記載の害虫忌避材。
- ヒノキチオールの揮散量が1.6μg/cm2/h以上である請求項1〜4記載の害虫忌避材。
- 担体に保持させたヒノキチオールの揮散量が2μg/cm2/h以上である請求項1〜4記載の害虫忌避材。
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JP2003148158A JP2004346052A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | 害虫忌避材および該資材を利用した害虫忌避方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006248962A (ja) * | 2005-03-10 | 2006-09-21 | Sumika Life Tech Co Ltd | 防虫・殺虫用品 |
-
2003
- 2003-05-26 JP JP2003148158A patent/JP2004346052A/ja not_active Withdrawn
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