JP2004342785A - 半導体製造方法および半導体製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光源部12には、加熱源としての光を発する発光源120として、基板2上に製膜された半導体膜による吸収率が20%以上であって、かつ、基板2に対しての吸収率が20%以下となる波長範囲の光を発するものを使用する。たとえば、ガラス基板とシリコンを半導体部材とする組合せにおいては、波長範囲を350nm以上で480nm以下、特にGaNを活性層に持つ波長405nmの半導体レーザを発光源120に使用するとよい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造方法および装置に関する。より詳細には、薄膜トランジスタなどを製造する際に、半導体基板の表面にレーザ光などの所定の光を照射することで熱処理を施す、いわゆるアニール処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクティブマトリックス型液晶ディスプレイパネルや電流駆動方式を使用する有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下ELという)を利用した有機ELディスプレイパネルにはガラス基板上に形成された薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)がスイッチング素子などの駆動デバイスとして用いられている。これは、薄膜トランジスタのチャネル層に多結晶シリコン(以下ポリシリコンという)膜を用いた場合、薄膜トランジスタの電解移動度が非常に高くなるために、たとえば液晶ディスプレイなどの駆動回路として内蔵でき、ディスプレイの高精細化や小型化などを実現することができる点を利用するものである。また、チャネル層にポリシリコン膜を用いた薄膜トランジスタは、チャネル層に非晶質シリコン(以下アモルファスシリコンという)膜を用いた場合に比べて駆動電流が高いために、有機ELディスプレイの画素トランジスタに応用することができる。
【0003】
薄膜トランジスタは、ガラス基板上に半導体活性層であるアモルファスシリコンあるいはポリシリコン膜、ゲート絶縁膜、電極(ゲート、ソース、ドレイン)などを成膜、パターニングして作られている。ここで、薄膜トランジスタの電気特性はシリコン膜の膜質だけでなく絶縁膜の膜質やシリコン膜と絶縁膜との界面の状態に大きく左右される。絶縁膜には窒化シリコン(SiNxy)や酸化シリコン(SiO2)通常用いられているが、電気特性の安定性で勝る酸化シリコンが多く利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の半導体製造技術では、シリコン酸化膜などの絶縁膜の製造技術の側面と、結晶化や活性化の処理技術の側面において、依然として難点がある。
【0005】
先ず、絶縁膜(特にシリコン酸化膜)の製造技術の側面からの難点について説明すれば、以下の通りである。たとえば、シリコン酸化膜の製造技術については、熱酸化処理、高圧酸化処理、プラズマCVD法、あるいは減圧CVD法などが、非特許文献1に開示されている。
【0006】
【非特許文献1】
S.M.ジィー著,「半導体デバイス」,産業図書
【0007】
熱酸化処理は、たとえば1000℃付近の高温中でシリコン表面を酸素ガスや水蒸気で酸化するもので、良質な酸化膜を生成できるが、高温が必要であってガラス基板には使えない。
【0008】
また、高圧酸化処理は、高圧の水蒸気中でシリコン表面を酸化するもので、比較的低温で酸化膜を生成できるが、大型基板を取り扱う際には、温度均一性など装置構成上の制約がある。
【0009】
また、プラズマCVD法は、たとえばSiH4やO2ガスをプラズマ中で分解し、400℃前後の基板上に堆積させるもので、比較的低温で成膜できるが、膜密度が低く、欠陥が多い。
【0010】
また、減圧CVD法は、テトラエチルオルソシリケイト(TEOS)などを用いて、700℃程度の比較的高温で基板上にシリコン酸化膜を成膜するもので、膜質は比較的よいが、温度が高いために大型装置は構造上の制約がある。
【0011】
一方、結晶化や活性化の技術として、固相成長法(SPC法)、ラピッド・サーマル・アニール法(RTA法)、あるいはレーザアニール法などが知られている。
【0012】
固相成長法は、石英ガラス基板やシリコン基板上に成膜したアモルファスシリコン膜を基板ごと高温炉に入れ、700℃前後の温度で長時間保持して結晶化を行なうものであるが、通常のガラス基板は耐熱温度的に使えず、長時間が必要なために量産性が悪い。
【0013】
また、ラピッド・サーマル・アニール法は、ヒータからの輻射熱や高輝度のアークランプ照射によって比較的短時間だけシリコン膜の温度を上げ、シリコン膜の結晶化や膜中不純物の活性化を行なうことができるが、通常のガラス基板ではあまり高温まで上げられないために短時間では結晶化が進まない。
【0014】
レーザアニール法は、加熱源にレーザ光を用いた装置(レーザアニール装置という)を利用して、たとえばエキシマレーザなどの紫外波長のレーザ光をパルス出射し、パルス出射された紫外波長のレーザ光を、ガラスや石英などからなる絶縁基板の表面に成膜されたアモルファスシリコン膜に照射する。この際、エキシマレーザから出射されたレーザ光をたとえばビームホモジナイザなどによりアモルファスシリコン面に対する照射面を線状に整形し、この線状に整形されたレーザ光の照射面の長手方向と直交する方向に走査し、このレーザ光の照射領域を移動させながらアモルファスシリコンをポリシリコンに多結晶化させる。これにより、シリコン膜を加熱、溶融、再結晶化する(これら一連の処理を纏めてレーザアニール処理ということもある)ことでアモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に転換させるもので、特に、低温ポリシリコンプロセスとして今日、着目されている技術である。
【0015】
しかしながら、従来、光源として使用しているエキシマレーザは、たとえばXeClやKrFなどの励起ガスを励起させてレーザ光をパルス出射することから、これらの励起ガスの劣化に伴いレーザ光の出射が不安定になり易く、パルスごとのレーザ光の光強度がばらつき出力安定性に欠ける難点がある。光強度にばらつきが生じたレーザ光でアモルファスシリコン膜にレーザアニール処理を施すと、アモルファスシリコン膜の加熱溶融の状態にばらつきのあるレーザアニール処理を施してしまう。このような加熱溶融の状態にばらつきのあるアモルファスシリコン膜では、再結晶化されて得られたポリシリコン膜の結晶粒子の粒径にばらつきが生じ 均一なポリシリコン膜を得ることができないことから、ディスプレイ素子の画像にたとえば筋状や点状のむらが発生して、トランジスタ特性を劣化させてしまう。
【0016】
加えて、レーザの出力波長が短いために、光学部品の劣化が早く、装置全体の長期安定性に欠け、製造コストが嵩む問題もある。すなわち、エキシマレーザに用いる励起ガスの劣化に伴いガス交換を行なう工程が、生産性を低下させるとともに、薄膜トランジスタを製造する際にコストアップさせるといった問題を招く。さらに、励起ガスを充填させておく槽が必要であり、設備が大型であるために設置面積および消費電力が大きいことから、薄膜トランジスタを製造する際にコストアップさせる問題も招く。
【0017】
また、加熱源と使用しているレーザ光が、半導体膜を透過し、半導体膜が形成されているガラスや石英などからなる絶縁基板をも照射することで、半導体膜だけでなく絶縁基板をも加熱することがあり、基板が歪むなど、これら基板に対してダメージを与えるという問題もある。
【0018】
一方、低温ポリシリコンプロセスにおいて、レーザアニール装置を用いてアモルファスシリコン膜を加熱、融解、再結晶化してポリシリコン膜を生成する際に、アニールの雰囲気中に酸素が含まれていると、加熱時にシリコンが酸化してしまい、製造されたポリシリコンのキャリア移動度が低くなってしまう。そのため、低温ポリシリコンプロセスで用いられるレーザアニール装置は、ガラス基板が載置されるステージをチャンバ(ガスタンク)で覆い、チャンバ内の酸素濃度を低くしてアニール処理を行なう装置構成としている。
【0019】
また、チャンバ内の酸素濃度を低くするため、たとえば、ガラス基板の挿入後にチャンバ内を真空に脱気する、ガラス基板の挿入後にチャンバ内を真空に脱気してその後に窒素ガスを注入する、あるいは、真空脱気が可能でロードロック機構を有する予備室をチャンバ外に設けてガラス基板をその予備室からチャンバへ挿入する、といったことをしている。
【0020】
しかしながら、レーザアニール装置を真空に対応した装置構成とすると、装置全体の重量が増し、チャンバ内の部品を全て真空対応の特殊機器にしなければならず、非常にコストが高くなってしまう。
【0021】
このような問題の一部を改善する技術が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の技術は、ステージ全体をチャンバで覆い、チャンバ内に窒素ガスを注入し続けることで基板上の雰囲気を制御し、さらに、レーザ光の照射部分に対して窒素ガスをフローしてアニール部分へ異物が付着しないように制御するので、チャンバ内を真空としなくてもよいためコストが安くなる。
【0022】
【特許文献1】
特開平9−8316号公報
【0023】
しかしながら、処理速度を向上させるためには、真空脱気が可能でロードロック機構を有する予備室をチャンバ外に設けてガラス基板をその予備室からチャンバへ挿入する必要があるし、また、窒素ガスをフローすることにより気体の流れが不安定となり、製造特性がばらついてしまう、といった難点がある。
【0024】
このように、レーザアニール法は、低温ポリシリコンプロセスとして有力な技術ではあるものの、加熱源として使用する光源の特性や取扱いの側面で、依然として難点がある。加えて、安定した低酸素濃度の雰囲気を維持するためのチャンバの構成にも、依然として難点がある。
【0025】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、処理対象の半導体膜が形成されている基板に対してダメージを与えずに、また装置全体を大型化および特殊装置とすることなく、半導体膜に対して安定かつ効率良く熱処理を施すことができる半導体製造方法および装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る半導体製造方法および装置では、加熱源としての光の波長を、基板上に製膜される半導体膜による吸収率が予め定められている所定値よりも高く、かつ、基板に対しての吸収率が予め定められている所定値よりも低くなるように設定することとした。つまり、熱処理対象の半導体膜とこの半導体膜が形成されているガラスや石英などの基板の双方の吸収率のバランスを採る。
【0027】
双方の吸収率のバランスを如何様に採るかは、半導体膜に対する熱処理効率が高い一方で、その下地となる基板に対しては影響を与えないようなものであるものとするとよい。たとえば、加熱源としての光を発する発光源として、基板上に製膜された半導体膜による吸収率が20%以上であって、かつ、基板に対しての吸収率が20%以下となる波長範囲の光を発するものを使用するとよい。たとえば、ガラス基板とシリコンを半導体部材とする組合せにおいては、波長範囲を350nm以上で480nm以下とするとよい。こうすることで、基板にダメージを与えることなく、効率良く半導体膜に熱処理を施すことができる。
【0028】
また従属項に記載された発明は、本発明に係る前記のような波長範囲の光を用いることが好適な半導体製造方法および装置の具体的なものを規定する。
【0029】
たとえば、実質的にライン状の照射領域を形成可能な発光源を用いるとともに、このような発光源から出射されたライン状の光の半導体膜の表面に照射される光強度を均一化する均一化部を設ける。こうすることで、非照射面が線状となるように整形された照射光の照射面の長手方向と直交する方向に走査する際、光強度を均一化して半導体膜の表面に照射することで、半導体膜の加熱溶融や再結晶化を、安定した状態で施す。
【0030】
また、基板を保持するステージと、両側に光に対しての開口部分が設けられた中空構造を有するとともに側壁にガスを注入するためのガス注入口が設けられたガス保留部を具備した局所雰囲気形成部と、発光源から出射された光をガス保留部内を通過するように導光してステージに保持されている基板に対して照射する光学系とを設ける。
【0031】
なお、ガス保留部は、少なくとも最内部の側壁に囲まれた中央部分が空洞となった中空構造を有していればよく、このガス保留部の前記開口部分の形状は、円状や角状やあるいはその他の形状など任意のものとすることができる。ガス注入時の流路(スムーズに注入ガスが流れる)や中空部分を通過する光の光路(光の妨げとならない)などを総合的に考慮して、その形状を設定すればよい。
【0032】
こうすることで、ガス保留部の開口部分を基板に近接して配置することができる。このような状態で、所定のガスを注入しながら光をガス保留部の中空内を通過させて基板上に照射すると、基板とガス保留部との間の開口部の隙間から流出されるガスの流出量と、ガス保留部内に注入されるガスの注入量との関係から、注入したガスの濃度を制御することができる。
【0033】
たとえば、基板上に形成された半導体膜に対して加熱処理を行なう際に、ガス注入口から不活性ガスをガス保留部内に導入する。局所的な小さな領域のみに不活性ガスを導入することで、光が照射されている基板上の雰囲気の酸素濃度を低くすることができる。
【0034】
また、不活性ガスに代えて酸化性ガスをガス保留部内に導入すると、熱酸化処理を行なうことができる。こうすることで、たとえば酸化性雰囲気中でガラス基板上のシリコン膜に照射することによりシリコン酸化膜を生成することができ、薄膜トランジスタの製造が可能となる。
【0035】
また、ガス注入口から所定のガスをガス保留部内に導入する際に、加熱源としての光の照射光強度と、光の半導体膜に対しての照射位置の相対的な移動速度とを制御すると、半導体膜が到達する温度と時間を調整することができ、アニール処理の程度を自由に設定することができる。こうすることで、たとえばシリコンの結晶状態を制御することができる。
【0036】
また、ガス注入口から所定のガスをガス保留部内に導入する際に、加熱源としての光の照射光強度と、所定のガスの種類とを制御するようにしてもよい。こうすることで、照射光強度と照射雰囲気とを調整することができ、半導体膜のアニール処理(狭義の熱処理)、結晶化処理、活性化処理、あるいは熱酸化処理などの目的を自由に切り替えて使うことができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明に係る半導体製造装置の一実施形態の全体概要を示す図である。また、図2は、半導体製造装置1に設けられる光源部の一構成例を示す図である。また、図3は、半導体製造装置1に設けられる雰囲気調整容器20の一構成例を示す図である。
【0039】
この半導体製造装置1は、発熱源にレーザ光など所定波長の光を発する光源を用いて、平板状のアニール対象物である基板の表面にその光を照射し、照射した光により基板を熱処理するアニール装置として構成されている。本実施形態の半導体製造装置1における熱処理の目的としては、様々なものがあるが、たとえば、イオン注入された直後の電気的に不活性な不純物を活性化させるためだけでなく、結晶化や再結晶化の処理(纏めて結晶化処理ともいう)、あるいは熱酸化処理などにも利用することができる。
【0040】
この半導体製造装置1は、薄膜トランジスタの製造に用いて好適なもので、たとえば、液晶表示装置や有機EL表示装置のスイッチング素子となる薄膜トランジスタのチャネル層の形成時に用いられる。具体的には、ガラス基板上に成膜されたアモルファスシリコン膜に対して熱処理をしてポリシリコン膜を形成する際に用いられる。たとえば、薄膜トランジスタ(TFT)の製造工程中の非晶質シリコン(アモルファスシリコン)膜をレーザアニール処理により加熱溶融し、再結晶化して結晶質シリコン(ポリシリコン)膜に転換させる際のアモルファスシリコン膜に施すレーザアニール処理に用いられる。
【0041】
この薄膜トランジスタは、たとえばガラス基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁体、ポリシリコン膜(チャネル層)が下層から順次積層された構造を有している。すなわち、薄膜トランジスタは、チャネル層となるポリシリコン膜とガラス基板との間に、ゲート電極が形成されているボトムゲート構造を有している。以下、半導体製造装置1の構成や作用について、具体的に説明する。
【0042】
アニール処理を行なう半導体製造装置1は、図1に示すように、先ず、アニール対象物となる平板状のガラスや石英などからなる基板2を載置するステージ10と、レーザ光など所定波長の光を出射する光源部12とを備えている。光源部12には、当該光源部12に設けられている個々の光源の温度を一定温度に維持するための温度調節部14が組み込まれている。
【0043】
温度調節部14は、温度変化に起因する照射強度の経時変化を抑えるもので、このような機能をなすものであれば、その具体的手段は問わない。たとえば、温度調節部14は、ペルチェ素子を用いたもの、あるいは水冷式の温度調節器で支持台128を一定温度に保つものなどを使用することができる。
【0044】
光源部12の構造としては、たとえば、図2(A)に示すように、所定波長の光を発する発光源120が複数個、支持台(ベース)128上に所定の間隔で一列もしくは複数列に配置されたアレイ光源として構成されているものを使用する。各発光源120には、配線126を介して端子盤124から駆動用の制御信号や電源が供給されるようにする。この場合、光源部12全体としての照射領域は、個々の発光源120から発せられるレーザ光による略円状の照射領域を位置列に連結した状態となる。このような半導体レーザアレイ構造とすれば、トータルの光量を稼ぐことができる。
【0045】
あるいは、光源部12は、図2(B)に示すように、発光層部が横に広がったブロードストライプ型の構成されているものを使用してもよい。発光源120には、配線126を介して端子盤124から駆動用の制御信号や電源が供給されるようにする。この場合、光源部12全体としての照射領域は、所定幅を持つライン状となる。この場合にも、光量を稼ぐことができる。
【0046】
なお、これら何れの場合でも、基板2上の照射範囲においては、図2(C)に示すように、その強度分布が、均一(トップハット型)になるようなものであることが望ましい。また、照射領域の長手方向の長さは、アニール処理対象の照射エリアとほぼ等しいか、それよりも幅広であるとさらに望ましい。
【0047】
たとえば、個々の発光源120は、アモルファスシリコン膜にレーザアニール処理を施す光を出射する出射部122を有するレーザ光源を使用するとよい。レーザ光源を使用する場合、350nmから480nmの範囲内にある青色系が発光可能であるものを使用する。活性層にたとえばGaN、GaAsなどの化合物半導体を用いているものを使用するとよい。ただし、このレーザ光源は、活性層にGaN、GaAsなどの化合物半導体を用いたものに限定されることはなく、たとえばGa、Al、Inのうち何れか一種または複数種からなる化合物と、N、As、P、Zn、Se、Mg、Cd、Sのうち何れか一種または複数種からなる化合物とを合成することで得られる化合物半導体を用いてもよい。また、レーザ光源は、活性層としてSiCやダイヤモンドを主成分とする化合物半導体を用いてもよい。
【0048】
あるいは、発光パワーの面では半導体レーザよりも劣るものの、半導体レーザに代えて、発光層の主発光ピークが350nmから480nmの範囲内にある青色系が発光可能である発光ダイオードを用いることもできる。このような発光ダイオードとしては、たとえば、基板上にGaXAl1−XN(ただしXは0<X≦1の範囲である。)バッファ層と、その上にp型不純物がドープされたGaXAl1−XN(0≦X≦1)層と、その上にn型不純物がドープされたGaXAl1−XN(0≦X≦1)層とが、順に積層された構造を有するもの(たとえば特開平5−63236号参照)や、Crが含有されたアルミナ基板上に可視光が発光可能な窒化物系化合物半導体からなる半導体発光層を有する発光素子とイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とを有するもの(たとえば特開2001−156336号参照)などを用いることができる。
【0049】
このように、照射面上で実質的にライン状(線状)となるように、たとえば半導体レーザ素子や発光ダイオードなどの複数の発光素子を列状に配置したり、あるいは元々ブロードな(幅広の)照射領域を持つ発光素子を使用して光源部を構成し、さらに照射面上での強度が均一になるようにして、シリコン膜の表面に照射される光の光強度を均一化させてアニール処理を行なうようにすれば、物質の表面に照射される光の光強度が均一化されてシリコン膜の表面に照射することから、シリコン膜に対して安定したアニール処理を施すことができる。
【0050】
たとえば、非晶質シリコン膜に対して安定したアニール処理を施すことが可能なことから、非晶質シリコン膜の加熱溶融のばらつきを抑制でき、この非晶質シリコン膜を再結晶化した多結晶シリコン膜の結晶粒子の粒径が均一化され、この多結晶シリコン膜を活性層とする薄膜トランジスタのトランジスタ特性を向上させることができる。
【0051】
なお、発光源120から発せられる出力光の波長は、アニール対象の半導体に対する吸収特性と基板2に対する吸収特性とが考慮されたものとする。具体的には、各発光源120は、基板2上に製膜されるシリコン膜による吸収係数が高い領域の波長であって、かつ、基板2に対しての吸収係数が低い領域の波長の光を発するものとする。この点については、後で詳しく説明する。
【0052】
また、半導体製造装置1は、光源部12からの出力光が入射される整形光学部16と、整形光学部16とステージ2との間の光路中に設けられた雰囲気調整容器20と、雰囲気調整容器20の内部(中空構造のガス保留部22の内部)に不活性ガスとしての窒素(N2)ガスを供給するガス供給部30と、ガス保留部22内に酸素や水蒸気などの酸化性ガスを供給するガス供給部40と、余分なガスを排出するためのガス吸入部38とを備えている。整形光学部16と雰囲気調整容器20との間の光路上には、光学絞り18が配されている。
【0053】
ガス供給部30には制御弁32が、ガス供給部40には制御弁42が、それぞれ設けられ、この制御弁32,42には、雰囲気調整容器20に接続されたソフトチューブ34,36が取り付けられている。ソフトチューブ34はガスをガス保留部22内に導入する中間部材として、またソフトチューブ36は、余分なガスを(中間層23cから)外部のガス吸入部38に排出する中間部材として機能する。つまり、雰囲気調整容器20は、中空構造のガス保留部22を備え、このガス保留部22内に外部からガスを注入するためのガス注入口や余分なガスを外部に排出する排出口を有する局所雰囲気形成手段として機能する。ガス種の切替制御は、制御弁32,42を制御することでなされる。
【0054】
なお、本実施形態では、ガス供給部30から雰囲気調整容器20の内部空間に注入するガスとして窒素ガスを用いているが、たとえば、通常の状態では他の元素と反応し難い、いわゆる不活性ガスであれば、窒素ガス以外を用いてもよい。
【0055】
ガス導入ノズル26aは、アニール処理時には、ガス保留部22に接続されていない方の端部から、ソフトチューブ34を介して所定の流量で窒素ガスが不活性ガスとして注入される。また、制御弁32,42を制御してガス供給部40に切り替えることで、ガス導入ノズル26aは、不活性ガスをガス保留部22内に導入するだけでなく、その他のガス、たとえば酸素や水蒸気などの酸化性ガスをガス保留部22内に導入することもできる。
【0056】
さらに、半導体製造装置1は、当該半導体製造装置1の全体を制御する制御用コンピュータ50と、メイン電源部52と、駆動電源54とを備えている。制御用コンピュータ50は、たとえばステージ10の移動の制御や光源部12の個々の光源における光の出射(オン/オフ)や発光パワーの制御などを行なう。あるいは、雰囲気調整容器20内に供給されるガス種の切替えあるいはそのガスの導入や排出を制御する。メイン電源部25は、たとえば光源部12内の個々の光源が光を出射するための電力を駆動電源54に供給したり、制御用コンピュータ50を作動させるための電力を制御用コンピュータ50に供給したりなどする。
【0057】
ステージ10は、アニール処理が施されるアモルファスシリコン膜が成膜された基板2を載置する台であって、平板状の基板2が載せられる平坦な主面10aを有している。また、ステージ10は、基板2を載置する主面10aが高い平坦性を有し、載置された基板2をアニール処理が施される位置に移動させる図示しないXステージおよびYステージの機能と、基板2を固定する図示しない吸着機構を備えて構成されている。
【0058】
たとえば、ステージ10は、吸着機構により主面10a上に載せられた基板2をステージ10の主面10aに吸着することによって固定・保持しながら、ステージ10をその主面10aの面内方向(主面10aに平行な方向)で図中矢印X(紙面の左右方向)および矢印Y(紙面の奥行き方向)で示す方向に水平移動させ、このようにして載置された基板2を互いに略直交する方向に移動させてレーザアニール処理が施される位置へと導くようにする。
【0059】
こうしてステージ10を移動させることによって、基板2と照射光の照射スポットとの相対位置を移動させることができる。つまり、ステージ10を移動させることで、アニールが行なわれる基板2上の位置を制御することができる。なお、ステージ10の移動制御は、制御用コンピュータ50により行なわれる。
【0060】
整形光学部16は、光源部12から出射された光が入射される。たとえば、整形光学部16は、複数のレーザ光をビームスプリッタやミラーにより重ね合わせ、一束の光束のレーザ光に合成して出力する。あるいは、合成されたレーザ光の光軸に垂直な断面のエネルギ密度を平均化するとともに、ビーム径をたとえば矩形状に整形する。たとえば、個々の光源として使用される半導体レーザの配列(レーザアレイ)から出射したレーザ光をトップハット型の強度分布を持つビーム断面形状に整形する。光学絞り18は、このビーム周辺部にある光強度がダレている部分を除去して、雰囲気調整容器20内を経由して、基板2に成膜されたシリコン膜に、照明光が照射されるようにする。
【0061】
なお、図示した光学系の構成では、光源部12からの光を真上(Z軸方向)からステージ10に照射する構成としているが、必ずしもこのような構成である必要はない。アニール対象のアモルファスシリコン膜の表面に照射される光の光強度を均一化させることが可能な光学系であれば、如何様な構成をも採ることができる。
【0062】
たとえば、複数の発光源120を備えた光源部12をステージ10から遠隔した位置で支持しておき、光源部12から出射された光Lを通過させて所定のビーム形状に整形した後に光Lを反射させアモルファスシリコン膜の表面に導光する反射鏡を設ける構成としてもよい。
【0063】
雰囲気調整容器20は、基板2上における照射光照射部近傍の雰囲気を制御するもので、その下端は基板2から僅かに離れた位置になるように位置制御されている。この雰囲気調整容器20は、具体的には、図3にも示すように、中空構造をなす円筒状のガス保留部22と、ガス保留部22の一方の開口部分(光に対してのもの)に設けられた透明部材からなるウィンドウ24と、ガス保留部22の側面部に設けられた2つのガスノズル26とにより構成されている。
【0064】
ウィンドウ24と反対側には、光と気体の双方に対しての開口部分である開口部28が設けられている。この雰囲気調整容器20は、整形光学部16と基板2との間に配置され、かつ円筒状のガス保留部22の中心軸と、照明光の光軸LLとが一致した位置に配置される。また、雰囲気調整容器20の配置の方向は、ウィンドウ24が整形光学部16側、開口部28がステージ10側とされている。
【0065】
ガス保留部22は、内側の側壁23aと外側の側壁23bとを有する2重タンク構造となっている。一方のガスノズル26は、一方の開口部がガス保留部22の内側の側壁23aの側面部に設けられており、所定のガスをガス保留部22内に導入可能に構成されている。この一方のガスノズル26を、特にガス導入ノズル26aという。これに対して、他方のガスノズル26は、一方の開口部がガス保留部22の外の側壁23bの側面部に設けられており、2つの側壁23a,23bの間に形成される中間槽23c内に貯留しているガスを吸入可能に構成されている。この他方のガスノズル26を、特にガス吸入ノズル26bという。
【0066】
ガス導入ノズル26aは、アニール処理時には、ガス保留部22に接続されていない方の端部から、ソフトチューブ34を介して所定の流量で窒素ガスが不活性ガスとして注入される。また、制御弁32,42を制御してガス供給部40に切り替えることで、ガス導入ノズル26aは、不活性ガスをガス保留部22内に導入するだけでなく、その他のガス、たとえば酸素や水蒸気などの酸化性ガスをガス保留部22内に導入することもできる。
【0067】
円筒状の形状となっているガス保留部22は、図3(A)に示すように、円筒の一方(紙面の上部)の開口部分が透明な部材からなるウィンドウ24により密閉されている。円筒の他方(紙面の下部)の開口部分は、開口された状態のままとなっている。なお、ウィンドウ24が設けられてない方の開口部分のことを開口部28とする。ウィンドウ24は、たとえばガラスなどであるが、光源部12から出射された所定波長の光を透過すればどのような材質であってもよい。
【0068】
各ガスノズル26a,26bは、図3(B)に示すように、ガス保留部22の円筒の直径よりも十分に小さい直径の挿通孔27が形成された直線のパイプ状となっている。ガス導入ノズル26aは、その一端が、ガス保留部22の最内層の側壁23aに形成されているガス注入口23dに接続されている。また、ガス導入ノズル26aは、ガス保留部22に接続されていない方の端部が、ソフトチューブ34を介してガス供給部30に接続されている。一方、ガス吸入ノズル26bは、その一端が、ガス保留部22の外側の側壁23bに形成されているガス吸入口23eに接続されている。またガス吸入ノズル26bは、ガス保留部22に接続されていない方の端部が、ソフトチューブ36を介してガス供給部30に接続されている。
【0069】
たとえば、ガス導入ノズル26aは、ガス保留部22の側面のウィンドウ24側の端部に接続される。ガスノズル26の挿通孔27は、円筒状のガス保留部22の内部空間(側壁23aのガス注入口23d)に接続されている。したがって、アニール処理時に、ガス導入ノズル26aのガス保留部22に接続されていない方の端部から、このガス導入ノズル26aに向けてガス供給部30から所定の流量で窒素ガスを不活性ガスとして注入すれば、ガス保留部22の内部空間にまで窒素ガスが注入されることとなる。なお、ガス種を切り替えることで、ガス導入ノズル26aは、不活性ガスをガス保留部22内に導入するだけでなく、その他のガス、たとえば酸素や水蒸気などの酸化性ガスをガス保留部22内に導入することもできる。
【0070】
また、ガス導入ノズル26aは、円筒状のガス保留部22の中心軸と挿通孔27の形成方向とが垂直となり、かつ、ガス保留部22との接続位置におけるガス保留部22の内周の接線方向と挿通孔27の形成方向とが平行となるように配置される。すなわち、ガス導入ノズル26aは、ガスを注入した場合、ガス保留部22の内部空間の側壁に沿ってガスが注入されるように配置される。
【0071】
このような構成の雰囲気調整容器20は、ガス導入ノズル26aから所定の流量で内部空間に窒素ガスや酸化性ガスを注入した場合、これらのガスが側壁に沿って回転する対流を生じさせながら内部空間に充満し開口部28から外部に排出される。したがって、雰囲気調整容器20は、ガス導入ノズル26aからガスを注入した場合、内部空間で乱流が発生し難くなり、開口部28から外部ガスを吸引しなくなる。これにより、雰囲気調整容器20は、たとえばガス導入ノズル26aから窒素ガスが注入された場合、内部空間が酸素密度が少なく窒素ガスのみで満たされた状態の窒素雰囲気となる。また、酸化性ガスが注入された場合にも、内部空間が酸化性ガスのみで満たされた状態の雰囲気となる。
【0072】
ここで、雰囲気調整容器20は、図1に示すように、平板状の基板2に十分近接させた位置に配置されている。雰囲気調整容器20を基板2に対して十分に近接させた位置に配置した場合、基板2が障壁となって、雰囲気調整容器20の内部に充満しているガス(たとえば窒素ガス)が基板2に対して平行な方向に排出され、雰囲気調整容器20と基板2との間の空間(空間D)へ雰囲気調整容器20の外部のガスが流入しない。
【0073】
したがって、雰囲気調整容器20と基板2との間の空間Dもこれらのガスにより充満し、そのガスのみの雰囲気となる。たとえば窒素ガスを充満させると、特に、雰囲気調整容器20の内部空間は、窒素ガスの光軸LLを中心軸とした回転対流が生じているので、開口部28の全円周部分から均等に窒素ガスが排出され、乱流が発生し難くなり、外部ガスが流入しなくなる。これにより、たとえばガス導入ノズル26aから窒素ガスを導入すれば、基板2上の照射光照射部近傍が窒素雰囲気になり、シリコン膜は不活性雰囲気でアニール処理される。
【0074】
なお、円筒状のガス保留部22の半径は、整形光学部16からの照明光の光路中を、円筒状のガス保留部22の側面で遮らないように、十分大きく設定されている。つまり、基板2に対して照射される照明光は、ウィンドウ24から雰囲気調整容器20の内部空間へ入射され、屈折や反射をせずそのまま開口部28から基板2へ出力される。
【0075】
<アニール処理の手順>
以上のような構成の半導体製造装置1を用いてポリシリコン膜を形成する際は、先ず、ステージ10にアモルファスシリコン膜が成膜された基板2を載置する。次に、複数の発光源120の出力パワーを調節する。これにより、複数の発光源120から出射された光Lのアモルファスシリコン膜の表面に照射される光強度を所望の強度に調節することが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では、発光源120として、GaNを活性層に持つ波長405nmの半導体レーザのチップを多数個、同一の支持台128上に並べた半導体レーザアレイ構造の光源部12を使用する。発光源120は、メイン電源部25からの電力の供給を受けた駆動電源54の制御の元で、所定の発光パワーにて発光する。ここでは、GaNを活性層に持つ波長405nmの半導体レーザのチップを支持台128上に複数個並べてなる半導体レーザアレイ構造の光源部12であるものとする。
【0077】
この後、光源部12から光を出射するとともに、ステージ10を動作させて基板2のアニール処理を開始する。たとえば、複数の発光源120から出射された光Lを、アモルファスシリコン膜の表面に、光Lの光強度が均一化するように照射する。アモルファスシリコン膜の表面に照射する光Lの光強度を均一化させる条件(方法)としては、たとえば、複数の発光源120から同一な光強度の光Lを出射させることや、複数の発光源120の出射部122とアモルファスシリコン膜の表面との距離を一定にして複数の発光源120を支持台128に支持させることや、アモルファスシリコン膜の表面に照射された光Lにビームの重なりやビーム間に隙間が生じることがない間隔で複数の発光源120を支持台128に並べることなどが挙げられる。
【0078】
また、基板2上における強度を制御する方法としては、発光源120の発光パワーを制御することや、複数の発光源120の出射部122とアモルファスシリコン膜の表面との距離を制御する(たとえば光源部12を光軸Lに沿って移動)、などが挙げられる。
【0079】
次に、複数の発光源120から出射された光Lをアモルファスシリコン膜の表面に照射し、ステージ10をX軸方向もしくはY軸方向に移動させることによって、光Lの照射領域を移動させながらアモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に多結晶化させるレーザアニール処理を施す。このとき、半導体レーザアレイ構造をなす光源部12から出射したレーザ光を整形光学部16にてトップハット型の強度分布を持つビーム断面形状に整形した後、光学絞り18でビーム周辺部にある光強度がダレている部分を除去し(図2(C)参照)、ウィンドウ24を通過した後、基板2上に成膜されたシリコン膜に照射する。
【0080】
光源部12をライン状光源としているので、その長手方向の長さを、アニール処理対象の照射エリアとほぼ等しいか、それよりも幅広にすれば、長手方向をX軸方向もしくはY軸方向の何れかに揃えておくことで、ステージ10を複数の発光源120が直列に並んだ方向に対して略直交する方向に平行移動させることによって、光Lの照射領域を一方向にのみ移動させながらアモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に多結晶化させるレーザアニール処理を施すことができ、処理時間を短縮することができる。
【0081】
このようにして、半導体製造装置1では、複数の発光源120から出射された光Lのアモルファスシリコン膜の表面に照射される光強度が均一化され、安定した光強度の光Lをアモルファスシリコン膜に照射することから、アモルファスシリコン膜をばらつきなく加熱溶融することが可能となる。そして、アモルファスシリコン膜の表面に照射される光Lの光強度が均一化された光Lを、アモルファスシリコン膜の表面に照射するレーザアニール処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜の加熱溶融のばらつきが抑制され、再結晶化して得られた結晶粒子の粒径が均一化されたポリシリコン膜が形成される。
【0082】
また、半導体製造装置1は、アニール処理を行なっている最中に、ガス供給部30から所定の流量で窒素ガスを、雰囲気調整容器20の内部に注入する。雰囲気調整容器20の内部に窒素ガスを注入すると、雰囲気調整容器20の内部空間が窒素雰囲気となるとともに、雰囲気調整容器20と基板2との間の空間Dも窒素雰囲気となる。すなわち、照射光の照射位置の周辺の雰囲気が、窒素雰囲気となる。
【0083】
このように照射光の照射位置の周辺雰囲気が窒素雰囲気になると、雰囲気調整容器20の外部雰囲気に関わらず、その周辺雰囲気の酸素濃度が低下し、基板2が酸化することが抑制される。すなわち、雰囲気調整容器20の外部雰囲気が空気であっても、基板2の酸化を抑制することができる。したがって、本実施形態の半導体製造装置1では、アニール処理時における基板2の酸化防止のため、ステージ10全体をチャンバなどで囲んでチャンバ内をたとえば真空脱気などする必要がなくなる。
【0084】
これにより、半導体製造装置1の全体を、大型化および特殊装置とすることなく、安定した低酸素濃度の雰囲気中で基板に対して照明光を照射できる。よって、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。さらに、雰囲気調整容器20内の雰囲気の調整のみをすればよいので、雰囲気調整を行なうために必要とする時間が非常に短く、プロセスのスループットを向上させることができる。
【0085】
また、制御用コンピュータ50により、光源部12の発光源120から発せられるレーザ光の強度とステージ10の移動スピードを調整することによって、シリコン膜が到達する温度と時間をコントロールすることができ、アニールの程度を自由に設定することができる。
【0086】
たとえば、シリコン膜が融点以上になる条件でアニールすれば単結晶に近いポリシリコンを作ることができ、融点以下に留めると固相成長による微小粒界のポリシリコンを作ることができる。つまり、本実施形態の半導体製造装置1は、たとえばイオン注入された直後の電気的に不活性な不純物を活性化させるための熱処理に利用するだけでなく、結晶化処理にも利用することができる。
【0087】
また、ガス導入ノズル26aに酸素や水蒸気などの酸化性ガスを流した状態でレーザ光を照射すると、シリコン膜表面に熱酸化膜を生成することができる。酸化性ガスは雰囲気調整容器20の外側に位置した外周部の隙間からガス吸入ノズル26bで排気することで、雰囲気調整容器20の外部には漏れることがない。つまり、本実施形態の半導体製造装置1は、熱酸化処理にも利用することができる。
【0088】
なお、雰囲気調整容器20に透明部材であるウィンドウ24を設けて円筒状のガス保留部22の一端を密閉しているが、窒素ガスの注入方向や注入流量などを制御して、雰囲気調整容器20と基板2の間の空間を窒素雰囲気とすることができれば、ウィンドウ24を設けずに開放したままとしてもよい。
【0089】
また、雰囲気調整容器20を円筒状としているが、少なくとも雰囲気調整容器20が筒状となっていれば、円筒に限らずどのような形状であってもよい。たとえば、光源部12にエキシマレーザなどを用いた場合や、レーザ光偏向部15にポリゴンミラーなどを用いた場合、基板2上に照射されるレーザ光の照射スポット形状が、アスペクト比の高い線状ビームとなる。このような場合には、雰囲気調整容器20を、たとえば図6に示すような、よりビーム形状に近い直方体形状にする方が、内部空間の容積が小さくなり雰囲気の制御が容易になる。
【0090】
次に、以上のようにして形成されたポリシリコン膜上に、たとえば二酸化シリコンSiO2などの膜を成膜し、ゲート電極を形成した同様のパターニング方法などにより、二酸化シリコンの膜をパターニングしてゲート電極に対応する位置にストッパを形成したり、ポリシリコン膜にソース/ドレイン領域を形成するための不純物をイオンドーピングしたり、あるいは、配線などをパターニングするなどして、薄膜トランジスタを製造する。
【0091】
以上のような薄膜トランジスタの製造方法では、半導体製造装置1が、アモルファスシリコン膜の表面に照射される光Lの光強度が均一化された光Lを、アモルファスシリコン膜の表面に照射するレーザアニール処理を施すことから、アモルファスシリコン膜の加熱溶融のばらつきが抑制され、このアモルファスシリコン膜を再結晶化したポリシリコン膜の結晶粒子の粒径が均一化された薄膜トランジスタを得ることができる。このようにして得られた薄膜トランジスタでは、ポリシリコン膜の結晶粒子の粒径が均一化されていることから、ディスプレイ素子の画像にたとえば筋状、点状のむらなどが発生することを防止してトランジスタ特性を向上させることができる。
【0092】
また、上述した薄膜トランジスタの製造方法では、半導体製造装置1が、従来のエキシマレーザを用いたレーザアニール装置のように励起ガスを必要としないことから、励起ガスの劣化によって出射されるレーザ光の光強度が不安定になることがなく、安定した光強度の光Lをアモルファスシリコン膜の表面に照射することができる。したがって、安定した光強度の光Lによって加熱溶融のばらつきが抑制するレーザアニール処理を、アモルファスシリコン膜に施すことが可能となり、ポリシリコン膜を形成する際の歩留まりを向上させることができる。
【0093】
さらに、励起ガスを必要としないことから、劣化した励起ガスの交換といった工程がなく、薄膜トランジスタの生産性の向上を図ることができる。さらにまた、励起ガスをためておく槽が必要でなく、光Lを出射する発光源120が比較的小型であることから、設置面積を小面積化するとともに、使用される電力を抑えることが可能であり、薄膜トランジスタの製造コストを削減することができる。
【0094】
<熱処理用の光の波長について>
ここで、本実施形態の半導体製造装置1において、加熱用の光源部12としては、アニール対象の半導体基板に対する吸収特性と基板2に対する吸収特性の双方が考慮された所定波長の光を発する発光源120を使用している。具体的には、GaNを活性層に持つ波長405nmの半導体レーザを発光源120に使用している。次に、この波長の意義について説明する。
【0095】
シリコンのアニール処理を行なう際には、先ず、波長を200nm〜900nmの範囲とする光Lを出射することが好ましい。これは、シリコンのアニール処理を行なう際の光Lの波長を200nmより短波長にした場合、たとえば大気などに光Lが吸収されてしまい、アモルファスシリコン膜の表面を照射する光Lの光強度が小さくなくことから、アモルファスシリコン膜に対するレーザアニール処理の効率が低下してしまう可能性があるからである。
【0096】
一方、シリコンのレーザアニール処理を行なう際の光Lの波長を900nmより長波長にした場合、半導体製造装置1では、光Lに対するアモルファスシリコン膜の吸収係数が0.1以下と極端に小さくなることから、アモルファスシリコン膜に対してレーザアニール処理を施す効率が低下してしまう可能性がある。
【0097】
したがって、シリコンのアニール処理を行なう際に、発光源120が波長を200nm〜900nmの範囲とする光Lを出射してアモルファスシリコン膜の表面を照射することにより、効率良くアモルファスシリコン膜を加熱溶融するアニール処理を施すことができる。
【0098】
他方、半導体膜が形成される基板2に対するダメージを考慮すれば、基板2による吸収係数が低いものであることが好ましい。これを考慮すれば、200nm〜900nmの範囲よりもさらに狭い範囲が、発光源120から発せられる光の波長として適切になる。本実施形態では、この適正範囲を、350nm〜480nm、特に400nm近辺、より好ましくは405nmとした。以下、この適正範囲の規定手法について説明する。
【0099】
基板2としてガラスを用い、このガラス基板に成膜された厚さ100nmの酸化シリコン膜に対し吸収される光の割合の波長依存性を図4に示す。なお、このグラフでは、“Handbook of Optical Constants of Solid,Edited by Edward D. Palik,p555〜p569”に記載の文献値に基づくシリコンの吸収係数kを使用して、横軸に光の波長を示し、縦軸にポリシリコンの透過率T(単位%)を示すことで、透過率T(単位%)と波長との対応関係を示している。吸収の度合い(吸収率)は、“100%−透過率T”と考えればよい。
【0100】
この図4に示すグラフから、ポリシリコン膜自体の吸収率が比較的高い(たとえば吸収率>20%)波長は480nm以下であり、480nm以下の光を使えば、アニール処理には十分であると考えられる。よって、厚さ100nmのシリコン酸化膜に対しては、波長が480nm以下の光を使うことが好ましいことが分かる。
【0101】
次に、上記で用いたガラス基板に対し吸収される光の割合の波長依存性を図5に示す。なお、このグラフでは、実測によるもので、横軸に光の波長を示し、縦軸にガラスの透過率T(単位%)を示すことで、透過率T(単位%)と波長との対応関係を示している。吸収の度合いは、“100%−透過率T”と考えればよい。なお、透過率が長波長側で100%になっていないのは、表面反射が存在するためである。
【0102】
この図5に示すグラフから、ガラス自体の吸収率が比較的低い(たとえば透過率>80%)波長は350nm以上であり、350nm以上の光を使えば、アニール処理時に、下地のガラスを発熱させないためには十分であると考えられる。よって、下地のガラスに対しては、波長が350nm以上の光を使うことが好ましいことが分かる。
【0103】
以上のことから、発熱源としての光が処理対象の半導体(本例ではシリコン)によく吸収される効率的なアニール処理が可能であって、かつ、下地となる基板(本例ではガラス)を発熱させないようにするには、ガラス基板自体が光をあまり吸収しない350nm以上(透過率>80%)で、またポリシリコン膜自体の吸収率が比較的高い480nm以下(吸収率>20%)の波長範囲、すなわち波長350nm〜480nmに発光スペクトルを持つ光(半導体レーザ光あるいは発光ダイオード光など)が、適切であることが分かる。その略中心である400nm程度がより好適であることも分かる。発光パワーの面でも実用上十分なGaNを活性層に持つ波長405nmの半導体レーザが好適である。
【0104】
上記と同様にして、基板2としてガラスを用い、このガラス基板に成膜された厚さ100nmのアモルファス(非晶質)シリコン膜に対し吸収される光の割合の波長依存性を図6に示す。グラフの条件は、図4と同様であり、同様の文献p575〜p586”に記載の文献値に基づく。この図6に示すグラフから、アモルファスシリコン膜自体の吸収率は、780nm以下で比較的高いが(吸収率>20%)、上記のようにして設定した適正範囲である350nm〜480nmでは、極めて吸収のよいことが分かる。
【0105】
たとえば、上記実施形態で発光源120として用いた、GaNを活性層に持つ波長405nmの半導体レーザの場合、波長405nmでは図4に示したように、厚さ100nmのシリコン膜であっても、入射した光の70%を吸収(透過率30%)して効率よく昇温させることができる。なお、アモルファスシリコン膜の場合は、図6に示すように、この波長域での吸収率が極めて高い(透過率は略0%)。
【0106】
つまり、アモルファスシリコンは、レーザアニール処理に用いられる波長が400nm程度のレーザ光に対する吸収係数が十分であり、波長が400nm程度のレーザ光を効率良く吸収できることが分かる。さらに、ガラス基板の透過波長特性を図5に示したが、405nmの光はガラス基板に殆ど吸収されないため(透過率90%以上)、透過光によってガラス基板の温度が上がることがなく、基板に歪みが生じる可能性を排除でき、基板がダメージを受けることがない。
【0107】
加えて、シリコン膜の水素結合(水素化シリコン膜)の観点では、380nm近辺よりもさらに長波長側、すなわち380nm(好ましくは400nm)〜480nmであることが望ましい。従来、短波長のレーザ光をアニール処理に用いると、水素結合が切れて水素分子の抜けたシリコン膜になり膜質が低下する問題があった。これを解決するため、アニール処理後に水素プラズマ処理などで水素を再注入する処理がなされている。これに対して、380nm(好ましくは400nm)〜480nmの波長の光をアニール処理に用いることで、水素結合を密に維持した状態でアニール処理を行なうことができ、アニール処理後に水素を再注入する処理が不要になる利点も得られる。
【0108】
これにより、半導体製造装置1では、シリコンのレーザアニール処理を行なう際に、発光源120が波長を350nm〜480nmの範囲、好ましくは400nm程度(たとえば405nm)とする光Lを出射し、シリコン膜に照射することにより、たとえば大気やガラス基板などに光Lが吸収されることなく、光Lに対するシリコン膜の吸収係数が十分に大きいことから、ガラス基板を歪ませることなく効率良くシリコン膜を加熱溶融するレーザアニール処理を施すことができる。アモルファスシリコン膜を使えば、さらに高効率の熱処理が可能である。
【0109】
また、半導体製造装置1において、シリコンのアニール処理を行なう際の波長を400nm程度とする光Lは、アモルファスシリコン膜を加熱溶融して瞬間的にアモルファスシリコンとポリシリコンとが混在した場合でも、ポリシリコンにも微小ながら吸収されることから、これらのシリコンを同時に加熱溶融することが可能である。したがって、上記構成の半導体製造装置1では、シリコンのレーザアニール処理を行なう際の波長を400nm程度とする光Lを用いたレーザアニール処理によって、アモルファスシリコン膜が加熱溶融されて形成されたポリシリコン膜の結晶粒子の粒径を均一化することができる。
【0110】
以上説明したように、上記実施形態の半導体製造装置1を利用してアニール処理を行なうことで、良質なシリコン熱酸化膜をガラス基板上に作成することができるため、経時変化の少ない高特性の薄膜トランジスタを作ることができる。また、ガラス基板を歪ませるなどのダメージを与えることなく、ガラス基板上に高特性の薄膜トランジスタを作れるため、大型ディスプレイ用の薄膜トランジスタを安価に作ることができる。
【0111】
また、低温ポリシリコン薄膜トランジスタの製造プロセスにおいて、レーザアニール、シリコン酸化膜の成膜、不純物の活性化、脱水素アニールなどのプロセスを、上記構成の半導体製造装置を1台だけ使用して行なうことができ、薄膜トランジスタの低コスト化が可能となる。また、装置内に使用する光源として、小型、安価、長寿命な半導体レーザあるいは発光ダイオードを使用することができるため、装置自体も安価で、かつ高信頼性のものとなる。
【0112】
加えて、上述のような波長範囲の光を発する光源を1台だけ搭載し、さらに供給ガスを切り替えて使用することで、1台の半導体製造装置1にて、結晶化、活性化、熱酸化などの、複数の処理を行なわせることができる。たとえば、シリコン膜のアニールと熱酸化膜の生成を1台の装置で連続して行なえるため、チャネルと絶縁膜との界面を低欠陥で作ることができ、良好な電気特性を持つ薄膜トランジスタが得られる。
【0113】
一般的な熱酸化膜はシリコン基板を用いて1000℃程度の高温炉中で酸素ガスや水蒸気ガスを用いて酸化を行なうが、ガラス基板を用いた場合はガラス基板の耐熱性が劣るために600℃程度までしか温度を上げることができず、膜質が低下したり成膜速度が極端に低下してしまう。これに対して、上記実施形態の半導体製造装置1では、上述したように適切な波長範囲を設定することで、基板2にダメージを与えずにシリコン膜のみを高温まで上げることができるために、良質の酸化シリコン膜を早い成膜速度で生成することができる。
【0114】
また、1台の半導体製造装置1とすることに限らず、図1に示した半導体製造装置1を複数台搭載したシステムにすることもできる。たとえば、図7(A)に示すように、それぞれ同様の処理機能を備えた半導体製造装置1a,1bを複数台搭載してなるシステムとすれば(ステージ10は共用)、それぞれが結晶化、活性化、あるいは熱酸化などの複数の処理を実行する、いわゆる並列処理のシステムを構築することができる。こうすることで、スループットを向上させることができる。
【0115】
また、図7(B)に示すように、それぞれは異なる処理機能を備えた半導体製造装置1a,1bを複数台搭載してなるシステムとすれば(ステージ10は共用)、それぞれが異なる処理を連続して実行する、いわゆる縦続処理のシステムを構築することができる。たとえば、アニール処理(狭義の)と熱酸化とを別の装置にて連続して行なうことで、装置への出し入れによる不純物汚染の少ない良質な膜を高スループットで製造することができる。
【0116】
なお、上記実施形態では、加熱源に半導体レーザなどの光のみを用いているが、より処理速度を上げるために、補助加熱装置を付加することも有効である。具体的な補助加熱方法の例としては、たとえば、以下のようなものが考えられる。
(ア)ステージ10に、加熱用ヒータを設けて、ガラス基板全体を予熱する。
(イ)雰囲気調整容器20内に加熱用ヒータや加熱用ランプを設け、処理部近傍を予熱する。
(ウ)雰囲気調整容器20内に導入するガスをヒータなどによって加熱し、高温のガスをガス保留部22内に流すことによって、処理部近傍を予熱する。
(エ)雰囲気調整容器20を透光性の石英ガラスなどで作り、容器外部に設けた加熱用ヒータや加熱用ランプの光を容器を通して基板上に照射し、処理部近傍を予熱する。
【0117】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0118】
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0119】
たとえば、上記実施形態では、ガラス基板を用いる場合について詳細に説明したが、石英基板やプラスチック基板を用いる場合であっても、上記実施形態で示した技術的な思想を同様に適用することができる。たとえば、アニール処理における加熱源として用いる光は、基板上に製膜される半導体部材による吸収係数が高い(吸収率20%以上,透過率80%以下)領域の波長であって、かつ、基板に対しての吸収係数が低い(吸収率20%以下,透過率80%以上)領域の波長の光を発するものとすればよい。すなわち、アニール対象の半導体膜に対する吸収特性と基板に対する吸収特性とを考慮して、光源波長を設定すればよい。
【0120】
また上記実施形態では、複数の発光素子(たとえば半導体レーザ素子や発光ダイオードなど)をライン状に配置した光源部を用いて、シリコン膜の表面に照射される光の光強度を均一化させてアニール処理を行なうようにしていたが、必ずしも複数の光源をライン状に配置する構造の光源部でなくてもよく、照射面上でライン状(線状)となるような、元々ブロードな(幅広の)照射領域を持つ単一の発光素子を光源に用いるものであってもよい。この場合における、線状の照射領域の光強度を均一化させる条件(方法)としては、発光部から出射する光の発散角に対応したコリメートレンズと集光レンズを用いることで均一な強度を持つライン状の照射光を作ることなどが挙げられる。
【0121】
また上記実施形態では、小型、安価、長寿命という利点が得られる半導体レーザや発光ダイオードを使用することとしていたが、上記のような範囲の波長の光を発するものであればよく、小型、安価、長寿命という点を犠牲にするのであれば、その他のレーザ発振源を用いることもできる。たとえば、YAGレーザの第3高調波(355nm)のパルスレーザ光源、あるいはNd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Nd:ガラスファイバレーザ、Nd:YV04レーザ、Yb:YAGレーザなどの、上記のような範囲の波長の高調波を出力するレーザ発振源であってもよい。
【0122】
また上記実施形態では、このようにして、アニール対象の半導体膜に対する吸収特性と基板に対する吸収特性とが考慮された波長の光を発する光源を、中空構造のガス保留部22内に外部からガスを注入するためのガス注入口や開口部を有する雰囲気調整容器20を備えた構造の半導体製造装置1に適用した事例を示したが、上述のようにして波長範囲が適切に設定された光源を用いてアニール処理を行なう装置の構造は、必ずしも、上記実施形態で示したものに限定されない。
【0123】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、基板上に製膜される半導体部材による吸収率が高い領域の波長であって、かつ、基板に対しての吸収係数が低い領域の波長の光を発する光源を使用して熱処理を行なうようにしたので、処理対象の半導体膜が形成されている基板に対してダメージを与えずに、良質な半導体膜を基板上に形成することができる。
【0124】
また、複数の半導体レーザ素子や発光ダイオードなどを配置した光源部を用いることで、非晶質シリコン膜に対して安定したアニール処理を施すことが可能なことから、非晶質シリコン膜にアニール処理を施すことで得られる多結晶シリコン膜の製造歩留まりを向上させて、薄膜トランジスタの生産性の向上および薄膜トランジスタの製造コストの低減を図ることができる。
【0125】
また、半導体レーザや発光ダイオードを光源に使用することで、光源を小型、安価、長寿命にでき、この結果、装置全体を小型とすることができる。
【0126】
さらに、複数の半導体レーザや発光ダイオードを配置して半導体膜の表面に照射される光の光強度を均一化させるようにすれば、再結晶化されて得られた半導体膜の結晶粒径を均一化させ、この結晶粒径が均一化された膜を活性層とすることで、トランジスタの特性が向上した薄膜トランジスタを得ることができる。
【0127】
また、中空構造のガス保留部の開口部分を基板に近接して配置し、そのガス保留部内にたとえば窒素などの不活性なガスを注入しながら、光をガス保留部内を通過させて基板上に照射して、アニール処理を行なうようにすれば、基板とガス保留部との間の開口部の隙間から流出されるガスの流出量と、ガス保留部内に注入されるガスの注入量との関係を制御することによって、注入した不活性のガスの濃度を制御することができる。こうすることで、基板上の光が照射されている部分が、窒素などの不活性ガスの雰囲気となる。
【0128】
すなわち、レーザ光などの加熱源としての光が照射されている基板上の雰囲気の酸素濃度を低くすることができる。さらに、この、中空構造のガス保留部内部にのみ不活性ガスを注入すればよいので、局所的な小さな領域のみガスを注入すればよい。したがって、たとえばステージを含めた基板全体をチャンバなどで覆う従来のアニール装置と比べて、装置全体を大型化および特殊装置とすることなく、安定した低酸素濃度の雰囲気中で基板に対して光を照射することができる。
【0129】
また、不活性ガスと酸性化ガスとを切り替えて注入可能な構造とすれば、単純な熱処理だけでなく、結晶化や活性化あるいは熱酸化を1つの装置で処理できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る半導体製造装置の一実施形態の全体概要を示す図である。
【図2】図1に示した半導体製造装置に設けられる光源部の一構成例を示す図である。
【図3】図1に示した半導体製造装置に設けられる雰囲気調整容器の一構成例を示す図である。
【図4】シリコン膜(100nm厚)の透過率−波長特性を示す図である。
【図5】ガラス基板の透過率−波長特性を示す図である。
【図6】アモルファスシリコン膜(100nm厚)の透過率−波長特性を示す図である。
【図7】図1に示す半導体製造装置を複数台設けてなる製造システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…半導体製造装置、2…基板、10…ステージ、10a…主面、12…光源部、120…発光源、122…出射部、124…端子盤、126…配線、128…支持台、14…温度調節部、16…整形光学部、18…光学絞り、20…雰囲気調整容器、22…ガス保留部、23a,23b…側壁、23c…中間槽、23d…ガス注入口、23e…ガス吸入口、24…ウィンドウ、26…ガスノズル、26a…ガス導入ノズル、26b…ガス吸入ノズル、27…挿通孔、28…開口部、30,40…ガス供給部、32,42…制御弁、34,36…ソフトチューブ、38…ガス吸入部、50…制御用コンピュータ、52…メイン電源部、54…駆動電源
Claims (20)
- 基板上に形成された半導体膜に加熱源としての光を照射することで前記半導体膜を熱処理する半導体製造方法であって、
前記加熱源としての光の波長を、前記基板上に製膜される半導体膜による吸収率が予め定められている所定値よりも高く、かつ、前記基板に対しての吸収率が予め定められている所定値よりも低くなるように設定する
ことを特徴とする半導体製造方法。 - 前記加熱源としての光は、前記基板上に製膜された半導体膜による吸収率が略20%以上であって、かつ、基板に対しての吸収率が略20%以下となる、波長範囲のものである
ことを特徴とする請求項1記載の半導体製造方法。 - 前記基板は、ガラス基板であり、
前記半導体膜は、シリコンを半導体部材とするものであって、
前記波長範囲は、350nm以上で480nm以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体製造方法。 - 前記波長範囲は、略405nmである
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体製造方法。 - 実質的にライン状の照射領域を形成可能な発光源から発せられたライン状の光の光強度を均一化させて非晶質の前記半導体膜の表面に照射することにより、前記非晶質の半導体膜を加熱溶融し、再結晶化して、多結晶の前記半導体膜に転換させる
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。 - 両側に光に対しての開口部分が設けられた中空構造を有するとともに側壁にガスを注入するためのガス注入口が設けられたガス保留部内に、当該ガス保留部の一方の前記開口部分から前記加熱源としての光を通過させて他方の前記開口部分側に配置されている前記基板上に形成された前記半導体膜に対して加熱処理を行なう際に、前記ガス注入口から不活性ガスを前記ガス保留部内に導入する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。 - 両側に光に対しての開口部分が設けられた中空構造を有するとともに側壁にガスを注入するためのガス注入口が設けられたガス保留部内に、当該ガス保留部の一方の前記開口部分から前記加熱源としての光を通過させて他方の前記開口部分側に配置されている前記基板上に形成された前記半導体膜に対して照射しつつ、
前記ガス注入口から、酸化性ガスを前記ガス保留部内に導入する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。 - 両側に光に対しての開口部分が設けられた中空構造を有するとともに側壁にガスを注入するためのガス注入口が設けられたガス保留部内に、当該ガス保留部の一方の前記開口部分から照射光強度が制御された光を通過させて他方の前記開口部分側に配置されている前記基板上に形成された前記半導体膜に対して、その照射位置を相対的に移動させながら照射しつつ、前記ガス注入口から所定のガスを前記ガス保留部内に導入し、
この際に、前記加熱源としての光の照射光強度と、当該光の前記半導体膜に対しての照射位置の相対的な移動速度とを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。 - 両側に光に対しての開口部分が設けられた中空構造を有するとともに側壁にガスを注入するためのガス注入口が設けられたガス保留部内に、当該ガス保留部の一方の前記開口部分から照射光強度が制御された光を通過させて他方の前記開口部分側に配置されている前記基板上に形成された前記半導体膜に対して、その照射位置を相対的に移動させながら照射しつつ、前記ガス注入口から所定のガスを前記ガス保留部内に導入し、
この際に、前記加熱源としての光の照射光強度と、前記所定のガスの種類とを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。 - 基板上に形成された半導体膜に加熱源としての光を照射することで前記半導体膜を熱処理する半導体製造装置であって、
前記基板上に製膜された半導体膜による吸収率が20%以上であって、かつ、基板に対しての吸収率が20%以下となる波長範囲のものである、前記加熱源としての光を発する発光源を備えている
ことを特徴とする半導体製造装置。 - 前記基板は、ガラス基板、プラスチック基板または石英基板であり、
前記半導体膜は、シリコンを半導体部材とするものであって、
前記発光源は、350nm以上で、かつ480nm以下の波長範囲にある光を発するものである
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。 - 前記発光源は、波長が略405nmの光を発するものである
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。 - 前記発光源は、半導体レーザまたは発光ダイオードである
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。 - 前記発光源は、実質的にライン状の照射領域を形成可能なものであって、
前記発光源から出射された光の前記基板上に形成された半導体膜の表面に照射される光強度を均一化する均一化部
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。 - 前記基板を保持するステージと、
両側に光に対しての開口部分が設けられた中空構造を有するとともに側壁にガスを注入するためのガス注入口が設けられたガス保留部を具備した局所雰囲気形成部であって、前記光学系から前記基板までの前記光の光路が前記ガス保留部の一方の開口部分から他方の開口部分を通過するとともに、前記ガス保留部の他方の前記開口部分が前記ステージに対向する位置に配置されており、前記半導体膜に対して前記光を照射する際に、前記ガス注入口から所定のガスが前記ガス保留部内に導入される局所雰囲気形成部と、
前記発光源から出射された光を前記ガス保留部内を通過するように導光して前記ステージに保持されている前記基板に対して照射する光学系と、
前記基板上に形成された前記半導体膜に対して、前記光の照射位置を相対的に移動させながら照射させつつ、前記ガス注入口から所定のガスを前記ガス保留部内に導入させる制御部と
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。 - 前記局所雰囲気形成部は、前記光学系から前記基板までの前記光の光路が前記ガス保留部の一方の開口部分から他方の開口部分を通過するとともに、前記ガス保留部の他方の前記開口部分が前記ステージに対向する位置に配置されており、前記半導体膜に対して前記光を照射する際に、前記ガス注入口から不活性ガスが前記ガス保留部内に導入される
ことを特徴とする請求項15記載の半導体製造装置。 - 前記局所雰囲気形成部は、前記光学系から前記基板までの前記光の光路が前記ガス保留部の一方の開口部分から他方の開口部分を通過するとともに、前記ガス保留部の他方の前記開口部分が前記ステージに対向する位置に配置されており、前記半導体膜に対して前記光を照射する際に、前記ガス注入口から酸化性ガスが前記ガス保留部内に導入される
ことを特徴とする請求項15に記載の半導体製造装置。 - 前記加熱源としての光の照射光強度と、当該光の前記半導体膜に対しての照射位置の相対的な移動速度とを制御する制御部を備えた
ことを特徴とする請求項15に記載の半導体製造装置。 - 前記基板上に形成された前記半導体膜に対しての、前記光の照射位置を相対的に移動させながら照射させつつ、前記ガス注入口から所定のガスを前記ガス保留部内に導入させ、この際に、前記加熱源としての光の照射光強度と、前記所定のガスの種類とを制御する制御部を備えた
ことを特徴とする請求項15に記載の半導体製造装置。 - 前記局所雰囲気形成部は、
前記ガス保留部の外側に、側壁にガスを吸入するためのガス吸入口が設けられた中間槽を具備し、
前記半導体膜に対して前記光を照射する際に、前記ガス注入口から所定のガスが前記ガス保留部内に導入されるとともに、前記中間槽から前記ガス吸入口を介して前記所定のガスが排気される
ことを特徴とする請求項15に記載の半導体製造装置。
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