JP2004342610A - 高分子電解質材、高分子電解質膜、膜電極複合体およびそれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 メタノール水溶液に浸漬し、取り出した直後のプロトン伝導度が、該メタノール水溶液の濃度が増加しても実質的に低下しない高分子電解質である。また、メタノール水溶液の濃度の増加に対して、メタノール透過率が実質的に直線的に増加するか、または実質的に上に凸のカーブを描いて増加する高分子電解質材である。
【選択図】 なし
Description
高分子電解質材を膜状に成形した高分子電解質膜のサンプル(5mm角程度の大きさ)を、25℃の純水に24時間以上浸漬した後、取り出し、表面の水滴をガーゼで軽く拭き取る。次いですみやかに25℃の所定濃度のメタノール水溶液(前記の各種濃度のメタノール水溶液の中から選ばれる)に浸漬し12時間放置する。次いでサンプルを25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、すみやか(3分以内)にサンプルを図1に示したステンレス製セルにセットする(有効電極面積0.0314cm2)。ここでステンレス製バネ(5)は、サンプルが無い状態で図1のステンレス製セルを組み立てたときに、1kgの荷重を与えるものである。また図1中の四フッ化エチレン樹脂製スペーサー(7)の厚み(t1)は3.0mm、ステンレス製電極(6)の突起部の長さ(t2)は3.1mmであり、ステンレス製電極(6)の突起部は四フッ化エチレン樹脂製スペーサー(7)の底面から0.1mm下方に突出している。サンプル(9)と電極とが接触する界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布する。
高分子電解質材を膜状に成形した高分子電解質膜のサンプル(幅10mm程度、長さ10〜30mm程度の大きさ)を、25℃の純水に24時間以上浸漬した後、取り出し、表面の水滴をガーゼで軽く拭き取る。次いですみやかに25℃の所定濃度のメタノール水溶液(前記の各種濃度のメタノール水溶液の中から選ばれる)に浸漬し12時間放置する。次いでサンプルを25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、すみやか(3分以内)に図3のようにセットし、クリップで固定する。電極(11)として直径100μmの白金線(2本)を使用する。電極(11)はサンプル膜(9)の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置する。電極間距離は5mm〜30mmとする。
高分子電解質材を膜状に成形した高分子電解質膜のサンプル(30mm角の大きさ)を25℃の純水に24時間浸漬した後、取り出して、図4に示すように、アクリル樹脂製H型セル間に高分子電解質膜を挟み、一方のセルには純水(60mL)(14)を入れ、他方のセルには所定濃度のメタノール水溶液(60mL)(15)を入れる。セルの容量は各80mLである。また、セル間の開口部は直径1.5cmの円形であり、有効膜面積は1.77cm2である。20℃において両方のセル内の液体を攪拌子(13)でもって撹拌する。0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)(商品名)で測定し定量する。グラフの傾きから単位時間、単位面積あたりのメタノール透過率を求める。グラフの傾きは最小二乗法によって求める。
y=ax2+bx+c
という二次多項式で近似する。このときx2の係数aの符号がマイナスであり、かつaの絶対値が0.01以上である場合に、メタノール濃度の増加に対してメタノール透過率が上に凸のカーブを描くと判断する。
膜厚ムラ(%)=100×(膜厚最大値−膜厚最小値)/膜厚平均値
例えばアクリル酸、メタアクリル酸、ビニル安息香酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどに代表されるアニオン性基を有するモノマーから得られる高分子が挙げられる。このようなアニオン性基を有するモノマーにアニオン性基を持たないモノマーを共重合させた高分子も好適である。アニオン性基を持たないモノマーとしては重合性官能基を有する化合物であれば特に限定なく用いることができる。好ましくは(メタ)アクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド系化合物、マレイミド系化合物等が挙げられる。本発明に用いる高分子(A)は架橋高分子であってもよい。高分子(A)が架橋高分子であれば燃料クロスオーバー抑制のためには有利である。アニオン性基を有するモノマーから得られる高分子を架橋させる場合には、(メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド系化合物、マレイミド系化合物等の中で重合性官能基を複数有するものを架橋剤として共重合させればよい。
これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそ1重量%くらいまでの量で使用される。
主鎖に芳香族環を含む高分子であってアニオン性基を有するものである。
主鎖構造は、特に限定されるものではないが、例えばエンジニアリングプラスチックとして使用されるような十分な機械強度を有する物が好ましい。
含フッ素系高分子であってアニオン性基を有するものである。
アニオン性基を有する無機高分子の例としては、アニオン性基を有するオルガノポリシロキサンを挙げることができる。アニオン性基を有するオルガノポリシロキサンは、アニオン性基を有するケイ素化合物から得ることできる。アニオン性基を有するケイ素化合物として好適なものの例を挙げれば下記式(c1)〜(c9)で表される化合物である。
これらのアニオン性基を有するケイ素化合物は、単独で使用してもよいが、アニオン性基を持たないケイ素化合物と併用してもよい。
本発明の高分子電解質膜は電極基材と電極触媒層とから構成される電極と組み合わせて膜電極複合体として燃料電池に用いられる。
(1)高分子電解質膜の作製
三角フラスコに、シクロヘキシルマレイミド(30.5g)、スチレン(41.4g)、エチレングリコールジメタクリレート(28.1g)、プロピレンカーボネート(25.0g)、及び、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(0.3g)を加え、マグネチックスターラーを使用して撹拌し均一に溶解させ、モノマー溶液とした。
得られた高分子電解質膜をメタノール水溶液に浸漬し、取り出した直後のプロトン伝導度を測定した。測定値を表1に示した。近似式の傾きは0.0048(mS/cm/重量%)であり、プロトン伝導度はメタノール水溶液の濃度が増加しても実質的に低下しなかった。純水に浸漬し、取り出した直後の25℃におけるプロトン伝導度は80.1mS/cmであり十分に高い値であった。
(1)高分子電解質材の作製
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Stark管を備えた500mL三口フラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(17.52g、0.05mol)、ヒドロキノン(5.50g、0.05mol)、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン(21.82g、0.10mol)、及び、炭酸カリウム(17.25g、0.125mol)を入れ、窒素置換後、N−メチル−2−ピロリドン(150mL)、及びトルエン(75mL)を追加した。この混合物を窒素雰囲気下、150℃で4h還流し、トルエンとの共沸により水を除去した。次いで165℃に昇温し、トルエンを除去後、そのまま165℃で6h反応させた。粘性ある緑色溶液を室温まで放冷後、クロロホルム(500mL)を加え希釈した。水(300mL)による抽出を3回繰り返し、塩を除去した。6Lのメタノール中に投じてポリマーを沈殿させ、メタノールで3回洗浄した。100℃で一晩真空乾燥した。
前記(1)で得られた高分子電解質材(10g)をN,N−ジメチルアセトアミド(40g)に室温で攪拌溶解させ、20重量%溶液とした。得られた高分子電解質溶液をシリコーンゴムで囲いをしたガラス板上に流延塗付し(溶液厚み500μm)、室温で30分間放置した後、100℃、3時間加熱し、さらに酸素含有率1%の窒素ガス雰囲気下で280℃、20分間加熱した後、除冷した。その後、得られたフィルムをガラス板から剥離し、1M硫酸に1日浸漬後、洗浄液が中性になるまで十分水洗して高分子電解質膜を得た。膜厚ムラは3%であった。
得られた高分子電解質膜をメタノール水溶液に浸漬し、取り出した直後のプロトン伝導度を測定した。測定値を表1に示した。近似式の傾きは0.1607(mS/cm/重量%)であり、プロトン伝導度はメタノール水溶液の濃度が増加しても実質的に低下しなかった。純水に浸漬し、取り出した直後の25℃におけるプロトン伝導度は143mS/cmであり十分に高い値であった。
“ナフィオン”117膜(デュポン社製)をメタノール水溶液に浸漬し、取り出した直後のプロトン伝導度を測定した。測定値を表1に示した。近似式の傾きは−0.7594(mS/cm/重量%)であり、プロトン伝導度はメタノール水溶液の濃度が増加すると低下し、好ましい物性ではなかった。純水に浸漬し、取り出した直後の25℃におけるプロトン伝導度は115mS/cmであった。
(1)スルホン化ポリフェニレンオキシドの合成
攪拌装置を備えた反応器に窒素雰囲気下にて、三菱エンジニアリングプラスチック(株)社製ポリフェニレンオキシド(品番:YPX−100L)(100g)をクロロホルム(1000g)に室温で攪拌溶解させた後、攪拌を継続しながらクロロスルホン酸(34mL)を滴下し、滴下終了後室温で30分間攪拌を継続した。次に析出したポリマーを濾布を用いて濾別した。その後、ミルを用いて粉砕し、純水で十分に洗浄した後に真空乾燥を行った。
前記(1)で得られたスルホン化ポリフェニレンオキシド(10g)をN,N−ジメチルアセトアミド(40g)に室温で攪拌溶解させ、20重量%溶液とした。得られた高分子電解質溶液をシリコーンゴムで囲いをしたガラス板上に流延塗付し(溶液厚み500μm)、100℃、3時間加熱した。その後、得られたフィルムをガラス板から剥離して高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜をメタノール水溶液に浸漬し、取り出した直後のプロトン伝導度を測定した。測定値を表1に示した。該高分子電解質膜は、40重量%以上の高濃度メタノール水溶液に溶解してしまい、好ましい物性ではなかった。なお、濃度30重量%以下における近似式の傾きは−1.236(mS/cm/重量%)であり、プロトン伝導度はメタノール水溶液の濃度が増加すると低下し、好ましい物性ではなかった。純水に浸漬し、取り出した直後の25℃におけるプロトン伝導度は134mS/cmであった。
(1)スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの作製
ビクトレックス社製のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(3.0g)を濃硫酸(150mL)中に溶解させ、撹拌しながら室温で14日間反応を行った。得られた混合物を多量のエーテル中に投入し、白色沈殿を濾別し、洗浄した後、乾燥してスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを作製した。該スルホン化ポリエーテルエーテルケトンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、20重量%溶液とした。
前記ポリマー溶液をシリコーンゴムで囲いをしたガラス板上に流延塗付し(溶液厚み500μm)、100℃、3時間加熱した。その後、得られたフィルムをガラス板から剥離して高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜のメタノール水溶液に浸漬し、取り出した直後のプロトン伝導度の測定を試みたが、該高分子電解質膜は水にもメタノール溶液にも溶解してしまい、測定不能であった。また、メタノール透過率(MCO)も、同様に測定不能であり、高分子電解質膜として使用できないものであった。
実施例1の高分子電解質膜を用いて、次の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。また、比較として、市販の高分子電解質膜「“ナフィオン”117(デュポン社製)」を95℃熱水にて1時間処理を行ったものを用いて同様に燃料電池を作製し評価した(比較例4)。
エネルギー容量は、出力、MEAでのMCOを基に下記数式(n1)にて計算した。
出力:最大出力密度(mW/cm2)
容積:燃料の容積(本実施例では10mLとして計算した。)
濃度:燃料のメタノール濃度(%)
MCO:MEAでのMCO(μmol・min-1・cm-2)
電流密度:最大出力密度が得られるときの電流密度(mA/cm2)
実施例2の高分子電解質膜を用いて、実施例3と同様の方法で膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
実施例2の高分子電解質膜を使用して得られたMEAは、比較例4のMEAに比べ出力(mW/cm2)で2.0倍、エネルギー容量(Wh)で2.9倍の値を示し優れた特性を有していた。
実施例2の高分子電解質材および高分子電解質膜を用いて、次の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
高分子電解質膜の作製時にやや水平度の悪いオーブンを使用した以外は実施例2と全く同様に行って高分子電解質膜を作製した。平均膜厚243μm、膜厚ムラは8%であった。
プロトン伝導度は142mS/cm、近似式の傾きは0.1606であった。また、メタノール透過率は345nmol/cm/分、R2は0.9995であった。
またアノード側に10%メタノール水溶液、カソード側に空気を流して20℃においてMEAの評価を2000時間行った。2000時間経過後の出力は初期値の81%まで低下した。
2:シリコーンゴム製Oリング
3:電極端子
4:ステンレス製筐体(上部)
5:ステンレス製バネ
6:ステンレス製電極
7:四フッ化エチレン樹脂製スペーサー
8:ステンレス製電極兼筐体(下部)
9:サンプル(高分子電解質膜)
10:スライドグラス
11:電極線(白金線)
12:シリコーンゴム製パッキング
13:攪拌子
14:純水
15:メタノール水溶液
t1:四フッ化エチレン樹脂製スペーサー(7)の厚み
t2:ステンレス製電極(6)の突起部の長さ
Claims (12)
- メタノール水溶液に浸漬し取り出した直後のプロトン伝導度が、該メタノール水溶液の濃度が増加しても実質的に低下しないことを特徴とする高分子電解質材。
- 純水に浸漬し取り出した直後の25℃におけるプロトン伝導度が0.03S/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質材。
- メタノール水溶液の濃度の増加に対して、メタノール透過率が実質的に直線的に増加するか、または実質的に上に凸のカーブを描いて増加することを特徴とする高分子電解質材。
- 20℃において10重量%メタノール水溶液を用いて測定した場合のメタノール透過率が、600nmol/cm・分以下であることを特徴とする請求項3に記載の高分子電解質材。
- メタノール水溶液の濃度の増加に対して、メタノール透過率が実質的に直線的に増加するか、または実質的に上に凸のカーブを描いて増加することを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質材。
- 純水に浸漬し取り出した直後の25℃におけるプロトン伝導度が0.03S/cm以上であり、かつ、膜状に成形し、20℃において10重量%メタノール水溶液を用いて測定した場合のメタノール透過率が、600nmol/cm・分以下であることを特徴とする請求項5に記載の高分子電解質材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質材を用いて形成されたことを特徴とする高分子電解質膜。
- 膜厚ムラが5%以下であることを特徴とする請求項7に記載の高分子電解質膜。
- 請求項7または8に記載の高分子電解質膜を用いて形成されたことを特徴とする膜電極複合体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質材、請求項7または8に記載の高分子電解質膜および請求項9に記載の膜電極複合体から選ばれた少なくとも1つを用いて形成されたことを特徴とする燃料電池。
- 直接型燃料電池であることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池。
- 炭素数1〜6の有機化合物およびこれと水との混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料とする直接型燃料電池であることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池。
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