JP2004339617A - スエード調人工皮革 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエステル極細繊維からなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、少なくとも片面に該ポリエステル極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、高級な外観、タッチおよび柔軟な風合いを有し、マーチンデール磨耗試験後の表面状態においてピリングが発生しないスエード調人工皮革及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】単繊維繊度が0.2〜0.005dtexのポリエステル極細繊維束からなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、少なくとも片面に該極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、該ポリエステル極細繊維が、100nm以下の平均粒子径を有するシリカを0.5〜10質量%含有しており、かつ、該ポリエステル極細繊維の破断強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とするスエード調人工皮革。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極細繊維と弾性重合体からなるスエード調人工皮革に関する。よりくわしくは、本発明は、衣料、家具用途、車両シート用途に使用可能な抗ピル性を有し、引き裂き強力に優れた高級な外観およびタッチを有するスエード調人工皮革に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、極細繊維よりなるスエード調人工皮革はソフトなタッチ、風合い、高級な外観を有することから衣料用素材をはじめとして手袋用、靴用および家具用途などに高級素材として採用されている。特にポリエステル極細繊維を使用したスエード調人工皮革は、ソフトな風合いや高級な外観を有する上に、水洗い洗濯が可能などのイージーケア性を兼ね備えている点から幅広く使用されている。
【0003】
一般に、極細繊維と弾性重合体からなるスエード調人工皮革は、柔軟な風合いを有するためには該極細繊維と該弾性重合体の間に空間を必要とする。空間が大きいほどソフトな風合いとなるが、その分該極細繊維が該弾性重合体から素抜けやすくなり、ピリングを生じやすくなる。特に該極細繊維がポリエステル繊維である場合、その染色は一般的には分散染料による高温高圧染色が行われ、その後、還元剤やソーピング剤により該基材中の余剰染料の除去を行なうが、通常、還元処理の際、液を強アルカリ性とするためポリエステルの減量が生じ、弾性重合体との間のみならず極細繊維間にも空間を生じるため、よりピリングを生じやすい。これまで人工皮革を含むスエード調布帛または立毛布帛のピリング性を改良するために種々の方法が試みられてきた。大別して、機械的な処理により繊維表面に凹凸を付与する方法、樹脂変更により繊維強度を低下させる方法および繊維中に微粒子を添加する方法が提案されている。機械的な処理により繊維表面に凹凸を付与する方法としては、織物を粒度♯100〜800の無機粉末からなるセラミックロールに接触させる方法や、分割型複合ポリエステル短繊維よりなる布帛を割繊処理した後、布帛表面を、研磨フィルムを表面に設けた可撓性粗面材で叩打する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、繊維表面に機械的に凹凸を与える方法は一方で染色した後に繊維表面の乱反射により色の深みが出ないという問題がある。更に原反の強度を低下させる危険性がある。
【0004】
樹脂変更により繊維強度を低下させる方法は、低重合度の樹脂やリン酸エステル結合を含有するポリエステルを使用し繊維物性を低下させた繊維が提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、一般に溶融粘度が低いために紡糸が困難であり、又かろうじて紡糸しても繊維が弱すぎて延伸が不調となるなど製造上の欠点がある。また、原反の機械強度、特に引き裂き強力が著しく低下する問題がある。また、0.02〜0.2デニールの細繊維(A)と(A)の5分の1以下で0.02デニール未満の極細繊維よりなる繊維束からなるスエード調人工皮革が、また、−SC3M(Mはアルカリ金属)を有する化合物が共重合されているポリエチレンテレフタレート(A)のまわりにポリエチレングリコールを1〜13モル%混合したポリエチレンテレフタレート(B)を配してなる複合繊維を使用し織編物にした後成分Bの一部を溶解除去する方法が提案されている(たとえば、特許文献5、特許文献6参照)。しかしながら、いずれも繊維を構成する樹脂および紡糸ノズルに特殊なものを使用する必要があり、高コスト化が避けられない。
【0005】
また、繊維中に微粒子を添加する方法としては、粒子径10〜150ミクロンのシリカを、繊維を構成する重合体に対し0.05〜30質量%含有させる方法が提案されている(特許文献7参照)。しかしながら、上記粒子径範囲では目的とするスエード調人工皮革に使用する極細繊維に対し粒子径が大きく極細繊維を形成しにくい。更に、全エステル結合中0.1〜10%がリン酸エステル結合であり、粒子径80ミリミクロン以下のシリカを0.5〜10質量%含有した共重合ポリエステルであり紡糸、延伸後に熱水又は水蒸気処理および/または該ポリエステル繊維の可溶性あるいは分解性を有する溶媒での処理を行う抗ピル性を有するポリエステル繊維およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。しかし該方法は、リン酸エステル結合を有する特殊なポリエステルを用意する必要があり高コスト化につながるものである。また、繊度が0.005dtexより小さく、繊維自体の強度が小さいためピリングになりにくいものであるが、繊維が細いため充分な発色が得られないという欠点がある。また、従来濃色を出すために繊維にカーボンブラックを練り込んだものは公知であるが、白またはベージュやアイボリー等の淡色に染色できるものはこれまで提案されていない。上記のように、これまで特殊な設備や原料を必要とせず、風合いが柔軟で、淡色に染色可能な、家具用途や自動車シート材に使用可能な抗ピル性を有する極細繊維不織布と弾性重合体からなるスエード調人工皮革は提供できていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−097764号公報
【特許文献2】
特開平9−296355号公報
【特許文献3】
特公昭35−8562号公報
【特許文献4】
特開昭50−135331号公報
【特許文献5】
特開平7−173778号公報
【特許文献6】
特開平5−171567号公報
【特許文献7】
特公昭45−39055号公報
【特許文献8】
特開昭55−112313号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル極細繊維からなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、少なくとも片面に該極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、特別な原料や工程を必要とせずに、家具用途、車両シート用途に使用可能であり、淡色に染色可能な抗ピル性を有するスエード調人工皮革及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、ポリエステル極細繊維中に該極細繊維径に応じた特定の平均粒子径を持つシリカを適当量含有することにより、家具用途、車両シート用途に使用可能な抗ピル性を有するスエード調人工皮革が得られることを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、単繊維繊度が0.2〜0.005dtexのポリエステル極細繊維束からなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、少なくとも片面に該極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、該ポリエステル極細繊維が、100nm以下の平均粒子径を有するシリカを0.5〜10質量%含有しており、かつ、該ポリエステル極細繊維の破断強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とするスエード調人工皮革である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるスエード調人工皮革の基体は0.2〜0.005dtexのポリエステル極細繊維からなる不織布に弾性重合体が充填された構成のものである。繊維を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびそれらに5−スルホナトリウム−イソフタレート等の一般的に公知であるカチオン染色性を付与するための改質剤を共重合またはブレンドしたものであり、それら単独または2種以上をブレンドした極限粘度0.6〜0.7のものである。上記ポリエステル極細繊維の繊度は、0.2〜0.005dtex、好ましくは0.1〜0.01dtexのものである。繊度が0.2dtexより太いと、高級なスエード調の品位のある外観およびソフトな表面タッチは得られない。また、0.01dtexより細いと充分な発色性が得られにくい。
【0011】
また、本発明で用いられるポリエステル極細繊維の破断強度は2.0〜4.0cN/dtexでなければならない。2.0cN/dtexより低いと、スエード調人工皮革の機械強度、特に引き裂き強度において、実用上使用できないものとなる。また、4.0cN/dtexより大きいと繊維が強すぎ、磨耗時ピリングになりやすいものとなる。尚、該スエード調人工皮革中のポリエステル極細繊維の破断強度の測定は以下の通り行う。まず、該スエード調人工皮革から該スエード調人工皮革中の弾性重合体を溶解せしめる溶剤にて該弾性重合体を抽出、残ったポリエステル極細繊維からなる不織布を乾燥する。得られたポリエステル極細繊維からなる不織布からポリエステル極細繊維を採取し、破断強度を測定する。測定は20点行い、大小各3点の値を除いたものを平均し、その試料の破断強度とする。
【0012】
シリカを上記ポリエステル樹脂に含有せしめる方法としては、任意の粒子径を有するシリカ微粒子が単粒子状で存在するコロイダルシリカを、エステル交換法ではテレフタル酸とエチレングリコールのエステル化反応開始直前又は反応中の任意の段階で、直接エステル化法においてはテレフタル酸とエチレングリコールのエステル化反応開始直前又は反応中の任意の段階で加えればよい。最も好ましい添加方法としては、コロイダルシリカを、エステル化もしくはエステル化反応の前もしくは初期に急激な分散液の離散を防ぐようにして行うことである。なお、コロイダルシリカとはケイ素酸化物を主成分とする微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール類またはこれらの混合物を分散媒としたコロイドとして存在するものをいう。添加するシリカの粒子径は、繊維を0.2〜0.005dtexの繊度に形成する場合、平均粒子径が100nm以下である必要があり、好ましくは60nm以下である。平均粒子径が100nmより大きい場合は繊維強度の低下を招く。また、工業的に製造可能な範囲であれば特に限定はしないが0.1nm以上が好ましく1nm以上がより好ましい。ポリエステル中の含有量は0.5〜10質量%である必要があり、好ましくは0.8〜5質量%の範囲が良い。含有量が0.5質量%未満の場合、抗ピル性を発揮できず、10質量%より大きい場合、実用に供するレベルの繊維物性の確保が困難となる。
【0013】
単繊維繊度0.2〜0.005dtex以下のポリエステル極細繊維は、従来公知の方法で作られる。例えば、繊維断面において上記ポリエステルが島成分、そして上記ポリエステルに相溶性のない少なくとも1種類以上のポリマーが海成分となっている繊維断面が海島構造のポリエステル極細繊維発生型繊維から海成分ポリマーを溶解又は分解除去することにより、または上記ポリエステルと相溶性のない1種以上のポリマーが接合した断面形状を有する貼合わせ型のポリエステル極細繊維発生型繊維を機械的または化学的な処理により2成分の界面で剥離させることにより得ることができる。得られるポリエステル極細繊維束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.2dtex以下とするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いる方が工程上有利である。またメルトブローンなどのように直接極細繊維を製造する方法を用いてもよい。
【0014】
ポリエステル極細繊維発生型繊維中で溶解または分解除去される成分としては、ポリエステル極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、ポリエステル極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸条件下でポリエステル極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体などのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーである。
【0015】
上記ポリエステル極細繊維発生型繊維は、カードで解繊し、ウェッバーを通してウエブを形成し、得られた繊維ウエブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って三次元絡合不織布とする。ウエブには必要に応じて織編物等を積層することもできる。三次元絡合不織布は最終的に表面が毛羽立てられ、立毛表面が形成されることから、該不織布表面は極細繊維発生型繊維または極細繊維から構成されていることが必要であるが、得られるシートの風合いの点から不織布全体が極細繊維発生型繊維または極細繊維からなっている場合が好ましい。三次元絡合不織布は、表面平滑な基体層とするため、弾性重合体の含浸前に加熱プレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。得られる三次元絡合不織布の目付としては、150〜1000g/mの範囲が好ましい。150g/m未満の場合、弾性重合体の含浸以降の工程での伸び等形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残ったり面感不良を招く。また、1000g/mを越える場合、弾性重合体の含浸や凝固および上記極細繊維発生型繊維中の海成分を抽出する際の工程速度が遅くなり実用的でない。また、加熱プレス処理後の好ましい厚みとしては、1.0〜3.0mmの範囲が好ましく、1.0mm未満であればやはり弾性重合体の含浸以降の工程での伸び等形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残ったり面感不良を招く。3.0mmを越える場合では原反が厚いため巻き取る際、表面に折れしわを生じ易くなる。得られた三次元絡合不織布の密度は0.3g/cm〜0.55g/cmの範囲が耐磨耗性を向上させる点で好ましく、より好ましくは0.4g/cm〜0.5g/cmの範囲である。0.3g/cm 未満の場合には、繊維が素抜けやすくなり、実用に耐え得る耐磨耗性を確保することが困難であり、0.55g/cmを越える場合には、弾性重合体の比率が少なくなり、表面の起毛された極細繊維がやはり素抜け易くなる。
【0016】
上記三次元絡合ポリエステル極細繊維不織布に含浸する弾性重合体は、ポリウレタン、合成ゴム、アクリル酸エステル系重合体または共重合体およびそれらから選ばれた少なくとも1種類の弾性重合体を主体とした重合体が選択できるが、弾性回復性、スポンジ形成性等が良好なことよりポリウレタンがもっとも好ましく用いられる。弾性重合体の付与方法としては、特に制約は無く弾性重合体溶液中での浸漬しニップする方法や、不織布上に弾性重合体溶液を付与し高速回転するロールで摺り込む方法等が挙げられる。ポリウレタンの凝固方法としては、ポリウレタンの非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固するか、ゲル化させた後加熱乾燥する方法などが挙げられる。ここで含浸する弾性重合体は、従来から皮革様シートの製造に用いられているポリウレタン、合成ゴム、アクリル酸エステル系重合体または共重合体、可塑剤の使用によって弾性化した樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリアミド等の弾性重合体から選ばれた少なくとも1種類の弾性重合体を主体とした重合体を用いることが出来る。しかし、柔軟性、弾性回復性、スポンジ形成性等よりポリウレタンがもっとも好ましく用いられる。ポリウレタンとしては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等のポリマージオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、エチレンジアミン、4、4’ージアミノジフェニルメタン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンおよびその変性物が挙げられる。
【0017】
上記弾性重合体液には、必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配合する。繊維質基体に占める弾性重合体の比率は、基体に柔軟な風合いと弾性回復性を持たせるために、ポリエステル極細繊維絡合不織布と弾性重合体の質量比が90:10〜50:50、好ましくは90:10〜60:40の範囲で含有させるのがよい。弾性重合体の比率が90:10より小さい場合、緻密な弾性体スポンジ(多孔構造)が形成されず、基体表面を起毛する際に十分に極細繊維を固定できず、耐磨耗性が低下する傾向がある。また弾性体スポンジ自身が緻密で平滑でないために立毛面が十分な平滑面とならない。また50:50より大きい場合、染色後の表面に弾性重合体が目立ち粗末な毛羽感の、品位の低下したものとなる。
【0018】
次に、上記ポリエステル極細繊維発生型繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的若しくは化学的処理によりポリエステルを含む2成分の界面で剥離して極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理は弾性重合体の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後に弾性重合体を含浸、凝固すると、弾性重合体が極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため、弾性重合体付与後に極細繊維束に変性することが好ましい。弾性重合体付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維と弾性重合体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に弾性重合を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
また、得られた極細繊維は、シリカ平均粒子径/ポリエステル極細繊維直径の比率は0.01〜0.1であることが引き裂き強力と抗ピリング性を両立する上で好ましい。該比率が0.01未満の場合ピリングが発生し易くなる傾向があり、0.1を越えた場合には、引き裂き強力が低下する傾向がある。
【0019】
上記で得られたポリエステル極細繊維絡合不織布と弾性重合体からなるスエード調人工皮革基体はスライス、バフィング等により所望の厚みに調整した後、必要により該弾性重合体を溶解させる溶剤と非溶解性の溶剤の任意の割合の混液を表面に塗布することにより該弾性重合体を溶解させた後、サンドペーパー等による公知の方法でバフィングすることにより上記人工皮革基体表面のポリエステル極細繊維は起毛、整毛されスエード調人工皮革の染色前生地となる。
起毛された立毛長の平均長さは、ピリングを発生させにくい点で0.1〜1.5mmの範囲が好ましく、0.3〜1.0mmの範囲であることがより好ましい。また、立毛密度は、3000〜15000本/mが耐磨耗性の向上とライティング効果を両立させるため好ましい。
【0020】
得られたスエ―ド調人工皮革生地の染色は、分散染料、カチオン染料やその他反応性染料を用い、必要に応じ分散剤、pH調整剤および金属イオン封鎖剤等を用い、高温高圧染色機により行う。染色の際の浴比は生地質量に対し10〜40倍が適当である。また、染料濃度は、1%owf〜35%owfの範囲が好ましい。1%owf未満では、色目が薄く、35%owfを越えると染色摩擦堅牢度や洗濯堅牢度等実用物性上使用できないものとなる。染色温度は115〜150℃、好ましくは120〜140℃の温度範囲で行う。115℃未満の場合、ポリエステル中に分散染料が充分に拡散し得えない。150℃を越える場合、該基材中の主に弾性重合体の加水分解により基材の強度低下、毛羽脱落等が懸念される。
次いで、2〜10g/lの還元剤および還元剤と等量の還元助剤であるアルカリ剤存在下、50〜80℃の温度で該スエード調人工皮革中の過剰染料を還元分解、洗浄除去する。50℃未満の場合、弾性重合体中の余剰染料の洗浄が不十分であり、80℃を越えると繊維中の染料まで還元洗浄してしまうこととなる。還元剤は二酸化チオ尿素やハイドロサルファイト等のポリエステルの還元洗浄に一般的に用いられるものが使用できる。還元剤量が2g/lより少ない場合、充分に該基体の弾性重合体中の染料を分解、洗浄することが出来ず、色斑の発生や色目の再現性低下を引き起こす。また、10g/lを越える場合には染料の分解、洗浄効果は変わらずコスト的に不利となる。
次いで、酸化処理および適当量の酸を加え生地中に残存した還元工程でのアルカリ剤の中和操作を行う。
最後に、常温での水洗浄を行い染色工程を終え、乾燥、仕上げ工程を経てスエード調人工皮革とする。
【0021】
得られたスエード調人工皮革は、椅子貼り用途や車両シート用途において、長期間の着用に際し、同一部分が擦られるという点で荷重12kPa、磨耗回数5000回のマーチンデール磨耗試験後の表面がJIS L1076に規定するピリング判定標準写真1による判定基準において4級以上であることが好ましく、4−5級以上であることがより好ましい。
【0022】
【実施例】
以下本発明の実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部、%はすべて質量に関するものである。
また、実施例中に記載のマーチンデール磨耗試験は、JIS L1096に規定されている測定方法に準じたものであり、荷重12kPa、磨耗回数5000回の条件で行ったものである。
【0023】
実施例1〜4、比較例1、2
テレフタル酸83部、エチレングリコール62部、40〜50nmの粒子径分布を持つ濃度20質量%の水系シリカ、三酸化アンチモン0.038部をスラリー状にして反応器に仕込み、250℃、1.5kg/cm・Gで4時間エステル反応を行った後、徐々に減圧および昇温し、50分間で圧力1mmHg以下、温度280℃に達した後、2時間重縮合反応を行い、得られたポリエステルを反応器下方より押し出してポリエステルチップを得た。この時シリカの添加量を0.2質量%〜15質量%まで変え各ポリエステルチップを作成した。
島成分として上記ポリエステルを使用し、海成分がMFR=40の直鎖状低密度ポリエチレンの海島型複合繊維(海/島質量比=60/40、島数100、繊度10.5dtex)を作成した。通常の延伸、捲縮および切断を行い、繊度4.0dtex、繊維長51mm、捲縮数12山/inchの原綿を得た後、該原綿を使用して、厚み1.3mm、目付530g/m、密度0.41g/cmのニードルパンチ不織布を作成した。この不織布にポリエーテル系ポリウレタンの15%DMF溶液を含浸し、DMF水溶液により湿式凝固し、水洗した後85℃トルエンにより海成分のポリエチレンを抽出除去し、目付480g/m、ポリウレタンと不織布の質量比26.5:73.5で、繊度0.024dtex、厚み1.0mmの人工皮革基体を得た。
得られた人工皮革基体の片面を180番のサンドペーパーによりバフィングし、厚みを0.8mmとした後、反対側の面にDMF30部とアセトン70部の割合で混合した溶剤を200メッシュのグラビアロールを用いて8g/m塗布した後乾燥し、グラビア面を240番のサンドペーパーで2回および400番のサンドペーパーで2回順次バフィングし、平均立毛長500μm、平均立毛密度8000本/mのスエード調人工皮革の染色前生地を得た。
【0024】
次にこのスエード調人工皮革生地を90℃、10分間湯通しし熱水になじませると同時に生地をリラックスした後、高圧液流染色機を使用し、浴比1:15で、分散染料としてSumikaron Blue S−BBL 0.5%owf、Kayalon Polyester Red TL−SF 15.0%owf、Kiwalon Polyester Yellow BRF 1.2%owf、均染剤としてKP レベラー AUL(芳香族スルホン酸塩誘導体、日本化薬株式会社製)1.0g/l、pH調整剤としてニューバッファーK(ミテジマ化学株式会社製)1.8g/lおよび金属イオン封鎖剤としてスカルナーNT(高松油脂株式会社製)1.0g/lを用い135℃、60分間染色を行った。
次いで、二酸化チオ尿素7g/l、水酸化ナトリウム5g/lを加え65℃、30分間還元処理を行った。次いで、過酸化水素3g/l、ソーダ灰3g/lを加え70℃、20分間酸化処理を行った後、酢酸1g/lにて中和処理を行い、最後に常温の水で洗浄し染色を終了した。乾燥後、撥水処理および整毛処理を行った。
得られたスエード調人工皮革中はエンジ色であり、高級な外観とタッチを有し、風合いの良好なものであった。得られたスエード調人工皮革の本文中記載の方法で測定したポリエステル極細繊維の破断強度、引き裂き強力およびマーチンデール磨耗試験の結果を表1に示す。
シリカの含有量が0.5質量%未満のものは、マーチンデール磨耗試験において、ピリング状となり、10質量%より多いものは引き裂き強力において実用レベルに達し得ないものとなった。
【0025】
【表1】
Figure 2004339617
【0026】
実施例5〜7、比較例3、4
実施例2と同様にして人工皮革基体を得るに際し、ポリエステルの重合の際に添加するシリカの粒子径を20〜200nmの範囲の任意のものとしたこと以外は、実施例2と同様の工程、条件でスエード調人工皮革を作成した。得られたスエード調人工皮革の本文中記載の方法で測定したポリエステル極細繊維の破断強度、引き裂き強力およびマーチンデール磨耗試験の結果を表2に示す。
シリカの粒子径がポリエステル極細繊維の60分の1以下のものはマーチンデール磨耗試験においてピリング状になり、15分の1より大きいものは染色品の引き裂き強力が著しく低下しているものであった。
【0027】
【表2】
Figure 2004339617
【0028】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明の方法によれば、ポリエステル極細繊維からなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、少なくとも片面に該ポリエステル極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、高級な外観、タッチおよび柔軟な風合いを有し、マーチンデール磨耗試験後の表面状態においてピリングが発生しないスエード調人工皮革を得ることができる。

Claims (1)

  1. 単繊維繊度が0.2〜0.005dtexのポリエステル極細繊維束からなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体からなり、少なくとも片面に該極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、該ポリエステル極細繊維が、100nm以下の平均粒子径を有するシリカを0.5〜10質量%含有しており、かつ、該ポリエステル極細繊維の破断強度が2.0〜4.0cN/dtexであることを特徴とするスエード調人工皮革。
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