JP2004339471A - エマルション塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材との耐候劣化後の付着性に優れるエマルション塗料組成物を提供する。
【解決手段】モノマー混合液を乳化重合して得られるエマルション樹脂、および、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含み、かつ、上記エマルション樹脂固形分100質量部に対する、上記オキサゾリン基含有樹脂とカルボジイミド基含有化合物との固形分の和が0.3〜5質量部であることを特徴とするエマルション塗料組成物である。
【解決手段】モノマー混合液を乳化重合して得られるエマルション樹脂、および、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含み、かつ、上記エマルション樹脂固形分100質量部に対する、上記オキサゾリン基含有樹脂とカルボジイミド基含有化合物との固形分の和が0.3〜5質量部であることを特徴とするエマルション塗料組成物である。
Description
本発明は建築物の内外装に用いられるエマルション塗料組成物に関する。
建築物の内外装の中塗りまたは上塗りとして塗布される塗料としては、環境問題の観点から、エマルション樹脂を利用した水性塗料が用いられている。
このようなエマルション塗料に含まれるアクリルエマルション樹脂としては、エマルション樹脂の製造に用いるモノマー混合液のガラス転移温度(Tg)が−60〜−10℃、数平均分子量が5000〜200000および酸価が15〜50であるものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなエマルション塗料を基材に塗布する場合、基材がセメント系のように多孔質で塗料を吸い込むような基材である場合、その吸い込みを防ぎ、また、被塗装物表面と直上の中塗りまたは上塗り塗膜との付着性を高めるために、予め、プライマー、シーラーまたはサーフェーサーと呼ばれる下地調整用塗料が塗布されている。通常、この上に塗布される中塗りまたは上塗り塗料は、含有している有機溶剤の溶解力によってシーラーの表面をわずかに溶解させ、そのことによってシーラーと中塗りまたは上塗りとの付着性を確保することができている。
ところが、さらなる環境への配慮として、揮発性有機化合物(VOC)の含有量を1質量%以下とすることが切望されている。これに対応して、エマルション塗料に含まれるVOCを1質量%以下とした場合、有機溶剤の含有量がごく微量になるため、この付着メカニズムを利用することができず、得られる塗膜とシーラーとの付着性が不充分となり、特に、水分やアルカリ分による耐候劣化後の付着性が低下する恐れがあるという問題があった。
特開2002−47450号公報(第1頁〜第8頁)
本発明は、基材との耐候劣化後の付着性に優れるエマルション塗料組成物を提供することにある。
本発明は、モノマー混合液を乳化重合して得られるエマルション樹脂、および、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含み、かつ、上記エマルション樹脂固形分100質量部に対する、上記オキサゾリン基含有樹脂とカルボジイミド基含有化合物との固形分の和が0.3〜5質量部であることを特徴とするエマルション塗料組成物である。ここで、モノマー混合液は、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する架橋性モノマーと連鎖移動剤とを含んでいて、架橋性モノマーと連鎖移動剤との質量比が2/1〜30/1であり、モノマー混合液中に占める架橋性モノマーの含有率が1〜6質量%であることが好ましく、また、モノマー混合液は、カルボン酸基含有不飽和モノマーを含んでいて、モノマー混合液の酸価が5〜50であることが好ましい。
また、顔料体積濃度は10〜50%であることが好ましく、さらに、揮発性有機化合物の含有量が1質量%以下であることが好ましい。
また、本発明は、基材に対して、上記のエマルション塗料組成物を塗布することを特徴とする塗膜形成方法であり、基材の表面にシーラーが塗布されていてもよい。
本発明のエマルション塗料組成物は、エマルション樹脂、および、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含んでいるので、揮発性有機化合物の含有量が1質量%以下であっても、基材との水分やアルカリによる耐候劣化後の付着性に優れている。これは、極性基であるオキサゾリン基やカルボジイミド基と下地との間に何らかの相互作用が生じ、下地との付着性が確保されていると考えられる。また、下地が水性塗料から得られるカルボン酸基を有する塗膜である場合、このカルボン酸基と、オキサゾリン基またはカルボジイミド基とが反応して結合が生じていることがと考えられる。
さらに、エマルション樹脂を製造するためのモノマー混合液が、架橋性モノマーと連鎖移動剤とを所定の比率で含んでいる場合、造膜助剤となるような揮発性有機化合物の含有量が1質量%以下であっても、良好な低温造膜性を確保することができる。これは、通常高分子化させるために用いられる架橋性モノマーと低分子化させるために用いられる連鎖移動剤との、相反する2種の物質を含んだモノマー混合物から得られたエマルション樹脂の架橋構造、およびこれから得られる小さい分子量の分子鎖からなる分子構造によって成立していると考えられる。
本発明のエマルション塗料組成物は、モノマー混合液を乳化重合することによって得られるエマルション樹脂、および、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含むものである。
本発明のエマルション塗料組成物に含まれるエマルション樹脂は、モノマー混合液を乳化重合して得られるものである。上記モノマー混合液に含まれるモノマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ポリ[オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル)]、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸等のカルボン酸基含有不飽和モノマー;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のアミド基含有不飽和モノマー;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマー;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有エチレン性不飽和モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルエステル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;スチレン、メチルスチレンのビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル等を挙げることができる。モノマーは2種以上であってもよい。
また、上記モノマー混合液は、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する架橋性モノマーを含むことができる。上記架橋性モノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジアリルフタレート等を挙げることができる。
さらに、連鎖移動剤を含むことができる。上記連鎖移動剤としては、具体的には、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオグリコール酸−2−エチルへキシル、2−メチル−5−t−ブチルチオフェノール、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
得られる塗膜の低温造膜性およびタック性の観点から、上記架橋性モノマーと連鎖移動剤とは同時に含まれていることが好ましい。その場合の上記モノマー混合液に含まれる上記架橋性モノマーと上記連鎖移動剤との質量比は2/1以上、30/1以下であり、かつ、上記モノマー混合液に占める上記架橋性モノマーの含有率は1質量%以上、6質量%以下である。上記範囲外である場合、得られるエマルション樹脂の安定性および得られる低温造膜性が不充分になる。さらに、得られる塗膜のタック性および低温造膜性の観点から、上記モノマー混合液に占める上記連鎖移動剤の含有率は0.1質量%以上、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
上記モノマー混合液のガラス転移温度(Tg)は、含まれる各モノマーのTgから計算によって求められる値であり、−40℃以上、−5℃以下であることが好ましい。Tgが−40℃未満の場合は得られる塗膜のタック性が不充分になる恐れがあり、Tgが−5℃を超える場合は得られる塗膜の低温造膜性が不充分になる恐れがある。好ましくは、−10℃以下である。なお、上記モノマーのTgは個々のモノマーから得られるホモポリマーのTgを意味する。
また、得られるエマルション樹脂の安定性の観点から、上記モノマー混合液は上記カルボン酸基含有モノマーを含んでいて、上記モノマー混合液の酸価が5以上、50以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10以上、40以下である。なお、乳化重合を2段に分けて行う場合は、上記酸価は、1段目と2段目とのモノマー組成を合算したモノマー混合液から算出される数値となる。
本発明のエマルション塗料組成物に含まれるエマルション樹脂は、上記モノマー混合液を乳化重合して得ることができる。上記乳化重合としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤と上記開始剤のような酸化剤を組み合わせたもの等のレドックス開始剤;4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系化合物等の重合開始剤を上記モノマー混合液に対して0.1〜3質量%含有させて、当業者によってよく知られた方法を用いることができる。なお、上記モノマー混合液が上記架橋性モノマーと上記連鎖移動剤とを含む場合は、1段のみの乳化重合を行うことが好ましい。
得られたエマルション樹脂の体積平均粒子径は特に限定されず、例えば、10〜500nmである。上記体積平均粒子径は、光散乱法等、当業者によってよく知られている方法で決定することができる。
本発明のエマルション塗料組成物は、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含んでいる。上記オキサゾリン基含有樹脂としては特に限定されず、水分散あるいは水溶化されたものを挙げることができ、例えば、1分子中の側鎖に少なくとも1つのオキサゾリン基を有するものを挙げることができる。このようなオキサゾリン基含有樹脂は、例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合型オキサゾリン化合物と他のモノマーとを溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法およびバルク重合法等、当業者によってよく知られている方法により得ることができる。上記付加重合型オキサゾリン化合物としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、工業的な入手容易性から、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
上記他のモノマーとしては、具体的には、上記エマルション樹脂のところで述べたモノマー等を挙げることができる。
このようなオキサゾリン基含有樹脂で市販されているものとしては、例えば、水溶性タイプとしてエポクロスWS−700(日本触媒社製)等、水分散タイプとしてエポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E(いずれも日本触媒社製)等を挙げることができる。
上記カルボジイミド基含有化合物としては特に限定されず、水分散あるいは水溶化されたものを挙げることができ、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボジイミド基を有するものを挙げることができる。上記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水性化合物を付加することにより得ることができる。
上記有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートおよびこれらの混合物を挙げることでき、具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
また、上記親水性化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール等のジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩;3−ジメチルアミノ−n−プロピルアミン等のジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩;ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム等の反応性ヒドロキシル基を少なくとも1個有するアルキルスルホン酸塩;メトキシ基又はエトキシ基で末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)等のアルコキシ基で末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)又はポリ(エチレンオキサイド)とその他のポリ(プロピレンオキサイド)との混合物を挙げることができる。
上記有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応は、カルボジイミド化触媒の存在下に進行する。上記触媒としては、具体的には、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、および、これらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等を挙げることができる。なお、その際、得られる分子の重合度を制御するために、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート等の末端イソシアネート、その他−OH、−NH、−COOH、−SH、−NHアルキル末端を有する化合物を用いてもよい。このようなカルボジイミド基含有化合物で市販されているものとしては、具体的には、水溶液タイプとしてカルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトV−06(いずれも日清紡績社製)等、水分散タイプとしてカルボジライトE−01、カルボジライトE−02(いずれも日清紡績社製)等を挙げることができる。
本発明のエマルション塗料組成物は、上記エマルション樹脂固形分100質量部に対する上記オキサゾリン基含有樹脂およびカルボジイミド基含有化合物の固形分の和が0.3質量部以上、5質量部以下である。0.3質量部未満であると付着性が低下し、5質量部を超えると、それに見合う効果が得られず、経済的でない。好ましくは0.5質量部以上である。
本発明のエマルション塗料組成物は、上記エマルション樹脂の他に、必要に応じてその他の硬化剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤、造膜助剤等を含むことができる。
上記その他の硬化剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、アジピン酸ジヒドラジド等、上記エマルション樹脂の反応性官能基と架橋反応可能な、当業者によってよく知られているものを適宜選択することができる。これらは2種以上であってもよい。
上記着色顔料としては特に限定されず、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機顔料;アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機顔料等を挙げることができる。また、上記体質顔料は炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、タルク等を挙げることができる。
上記凍結防止剤および上記造膜助剤はVOCに該当するものが多く、環境に対する配慮の観点から、これらを含まないことが好ましい。なお、本発明のエマルション塗料組成物は、上記凍結防止剤および上記造膜助剤を含まなくても、充分な凍結防止性能および造膜性能に優れている。
なお、本発明のエマルション塗料組成物の顔料体積濃度は、10〜50%であることが好ましい。10%未満であるとタック性が低下する恐れがあり、50%を越えると低温造膜性が低下する恐れがある。
本発明のエマルション塗料組成物は、環境に対する配慮の観点から、VOCの含有量が1質量%以下であることが好ましい。上記VOCは常圧において揮発性を有する有機化合物であり、VOCの含有量を1質量%以下である場合は、本発明の効果がより発揮される。なお、エマルション塗料組成物中のVOCの含有量は、水素炎イオン化検出器(FID検出器)付きガスクロマトグラフィによる分析等、当業者によってよく知られた方法を用いて得ることができる。
本発明の塗膜形成方法は、基材に対して、上述のエマルション塗料組成物を塗布することを特徴とするものである。上記基材としては特に限定されず、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物の金属基材、セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等を挙げることができる。また、塗布する方法としては特に限定されず、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、ロールコーター、カーテンフローコート、スプレー塗装、ナイフエッジコート等を挙げることができる。塗布後、常温にて放置または強制的に加熱を行い乾燥させて塗膜を得ることができる。なお、塗布量、塗布膜厚および乾燥時間は、塗料の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができる。
なお、上記基材は、表面にシーラーが塗布されていてよい。上記シーラーは、一般に下地調整材として用いられるものであり、特に基材がセメント系基材のように多孔質である場合、基材と上塗りや中塗りとの付着性向上、上塗りや中塗り塗料の吸い込み防止、脆弱な下地の補強、下地からのアルカリ成分の溶出抑制、シミや汚れのブリード防止を目的として塗布されるものである。また、弾性シーラーや微弾性シーラーと呼ばれる、基材のひび割れを充填するパテの機能を併せ持ったもの等も存在する。このようなものとしては特に限定されず、アクリル系、塩化ビニル系およびエポキシ系等、当業者によってよく知られているものを挙げることができる。また、付着性の観点から、水酸基、カルボン酸基等の極性基を有しているものであることが好ましい。上記カルボン酸基は、オキサゾリン基と反応することができるので特に好ましい。形態は有機溶剤型、水性型いずれであってもよいが、環境への配慮から、水性型であることが好ましい。上記シーラーの塗布方法としては特に限定されず、具体的には、上記エマルション塗料組成物の塗布方法で述べた方法を挙げることができる。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下において「部」とあるのは「質量部」を意味する。
製造例1 エマルション樹脂1の製造
滴下漏斗、温度計、窒素導入管、還流冷却器および撹拌機を備えたセパラブルフラスコにイオン交換水34.5部、ペレックスSS−H(花王社製アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)0.3部を仕込み、窒素雰囲気のもとで80℃に昇温した。スチレン14部、2−エチルへキシルアクリレート57部、メチルメタクリレート22部、エチレングリコールジメタクリレート4部、ジアセトンアクリルアミド1部およびメタクリル酸2部からなる、Tgが−19℃、酸価が13であるモノマー混合液に、ドデシルメルカプタン0.6部を加えた後、これを、ペレックスSS−H1.2部をイオン交換水50部に溶解させた乳化剤水溶液中に加え、ミキサーを用いて乳化させてプレエマルジョンを調製した。なお、モノマー混合液のTgを計算するにあたって、エチレングリコールジメタクリレートのTgはメチルメタクリレートと同じ温度であることとした。
滴下漏斗、温度計、窒素導入管、還流冷却器および撹拌機を備えたセパラブルフラスコにイオン交換水34.5部、ペレックスSS−H(花王社製アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)0.3部を仕込み、窒素雰囲気のもとで80℃に昇温した。スチレン14部、2−エチルへキシルアクリレート57部、メチルメタクリレート22部、エチレングリコールジメタクリレート4部、ジアセトンアクリルアミド1部およびメタクリル酸2部からなる、Tgが−19℃、酸価が13であるモノマー混合液に、ドデシルメルカプタン0.6部を加えた後、これを、ペレックスSS−H1.2部をイオン交換水50部に溶解させた乳化剤水溶液中に加え、ミキサーを用いて乳化させてプレエマルジョンを調製した。なお、モノマー混合液のTgを計算するにあたって、エチレングリコールジメタクリレートのTgはメチルメタクリレートと同じ温度であることとした。
このようにして得られたプレエマルションと過硫酸アンモニウム0.3部をイオン交換水13部に溶解させた開始剤水溶液を別個の滴下漏斗から同時に滴下した。前者は120分間、後者は150分間にわたって均等に滴下を開始した。滴下終了後、同温度でさらに120分間反応を継続した。冷却後、用いたメタクリル酸の10モル%に相当するアンモニア水で中和した。中和物を200メッシュの金網で濾過し、固形分50%のエマルション樹脂1を得た。
製造例2 エマルション樹脂2の製造
スチレン30部、2−エチルへキシルアクリレート39部、メチルメタクリレート28部、ジアセトンアクリルアミド1部およびメタクリル酸2部からなる、Tgが10℃、酸価が13であるモノマー混合液を用いたこと以外は製造例1と同様にして、固形分50%のエマルション樹脂2を得た。
スチレン30部、2−エチルへキシルアクリレート39部、メチルメタクリレート28部、ジアセトンアクリルアミド1部およびメタクリル酸2部からなる、Tgが10℃、酸価が13であるモノマー混合液を用いたこと以外は製造例1と同様にして、固形分50%のエマルション樹脂2を得た。
製造例3 顔料分散ペーストの製造
タイペークCR−50(石原産業社製二酸化チタン)200部、SP−600N(ダイセル社製ヒドロキシセルロース系増粘剤)1部、SNデフォーマ1070(サンノプコ社製消泡剤)1部、ディスパービック−190(ビックケミー社製顔料分散剤)15部およびイオン交換水53部を混合した後、ガラスビーズを用いディスパーにて分散し、顔料分散ペーストを得た。
タイペークCR−50(石原産業社製二酸化チタン)200部、SP−600N(ダイセル社製ヒドロキシセルロース系増粘剤)1部、SNデフォーマ1070(サンノプコ社製消泡剤)1部、ディスパービック−190(ビックケミー社製顔料分散剤)15部およびイオン交換水53部を混合した後、ガラスビーズを用いディスパーにて分散し、顔料分散ペーストを得た。
製造例4 エマルション塗料材料1の製造
製造例1で得られたエマルション樹脂1を290部、製造例3で得られた顔料分散ペースト150部、SNデフォーマ1070を5部、アジピン酸ジヒドラジド5%水溶液14部、アデカノールUH−420(旭電化社製ウレタン系増粘剤)を6部およびイオン交換水35部を混合して、エマルション塗料材料1を得た。
製造例1で得られたエマルション樹脂1を290部、製造例3で得られた顔料分散ペースト150部、SNデフォーマ1070を5部、アジピン酸ジヒドラジド5%水溶液14部、アデカノールUH−420(旭電化社製ウレタン系増粘剤)を6部およびイオン交換水35部を混合して、エマルション塗料材料1を得た。
製造例5 エマルション塗料材料2の製造
製造例1で得られたエマルション樹脂1に代えて、製造例2で得られたエマルション樹脂2を用いたこと以外は製造例4と同様にして、エマルション塗料材料2を得た。
製造例1で得られたエマルション樹脂1に代えて、製造例2で得られたエマルション樹脂2を用いたこと以外は製造例4と同様にして、エマルション塗料材料2を得た。
実施例1
製造例4で得られたエマルション塗料材料1を500部およびエポクロスWS−700(日本触媒社製オキサゾリン基含有樹脂水溶液、固形分25%)15.0部を混合して、顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。この塗料に含まれるVOCの含有量をFID検出器付きHP−5890(ヒューレットパッカード社製ガスクロマトグラフィ)にて分析し、検出された揮発成分のピーク面積の合計を予め作成したトルエン標準サンプルの検量線式に代入して求めたところ、0.1質量%であった。
製造例4で得られたエマルション塗料材料1を500部およびエポクロスWS−700(日本触媒社製オキサゾリン基含有樹脂水溶液、固形分25%)15.0部を混合して、顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。この塗料に含まれるVOCの含有量をFID検出器付きHP−5890(ヒューレットパッカード社製ガスクロマトグラフィ)にて分析し、検出された揮発成分のピーク面積の合計を予め作成したトルエン標準サンプルの検量線式に代入して求めたところ、0.1質量%であった。
温度5℃の条件下でガラス板上にアプリケータを用いて乾燥膜厚150μmとなるように塗布した後、同条件下で24時間放置して低温造膜性評価板を形成した。
さらに、温度23℃湿度50%の条件下で、フレキシル板(JIS A 5403準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボン酸基を有するスチレン−アクリル樹脂系水性シーラー)を塗布量100g/m2でハケを用いて塗布して16時間放置した後、得られたエマルション塗料組成物を塗布量100g/m2でハケを用いてインターバルを2時間として2回塗り重ね塗布した。その後、20℃の恒温室で7日間養生して耐アルカリ性および耐水性試験板を形成した。
実施例2
製造例5で得られたこのエマルション塗料材料2を500部、エポクロスWS−700(日本触媒社製オキサゾリン基含有樹脂水溶液、固形分25%)15.0部および造膜助剤としてダワノールDPnB(ダウケミカル社製ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、沸点229℃)をエマルション樹脂固形分に対して3質量%となるように混合して、顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。この塗料に含まれるVOCの含有量を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィにて分析した。結果を表1に記載した。
その後、実施例1と同様にして、低温造膜性評価板および耐アルカリ性および耐水性試験板を形成した。
製造例5で得られたこのエマルション塗料材料2を500部、エポクロスWS−700(日本触媒社製オキサゾリン基含有樹脂水溶液、固形分25%)15.0部および造膜助剤としてダワノールDPnB(ダウケミカル社製ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、沸点229℃)をエマルション樹脂固形分に対して3質量%となるように混合して、顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。この塗料に含まれるVOCの含有量を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィにて分析した。結果を表1に記載した。
その後、実施例1と同様にして、低温造膜性評価板および耐アルカリ性および耐水性試験板を形成した。
実施例3〜5および比較例1〜3
表1の配合に従い、実施例1と同様にして顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。これらの塗料に含まれるVOCの含有量を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィにて分析した。結果を表1に記載した。さらに、実施例1と同様にして、低温造膜性評価板および耐アルカリ性および耐水性試験板を形成した。
表1の配合に従い、実施例1と同様にして顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。これらの塗料に含まれるVOCの含有量を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィにて分析した。結果を表1に記載した。さらに、実施例1と同様にして、低温造膜性評価板および耐アルカリ性および耐水性試験板を形成した。
実施例6〜8
エポクロスWS−700を15.0部に代えて、それぞれ、カルボジライトV−02(日清紡績社製カルボジイミド基含有化合物水溶液、固形分40%)8.5部、15.0部、カルボジライトV−04(日清紡績社製カルボジイミド基含有化合物、固形分40%)10.0部としたこと以外は、実施例1と同様にして顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。これらの塗料に含まれるVOCの含有量を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィにて分析した。結果を表1に記載した。
エポクロスWS−700を15.0部に代えて、それぞれ、カルボジライトV−02(日清紡績社製カルボジイミド基含有化合物水溶液、固形分40%)8.5部、15.0部、カルボジライトV−04(日清紡績社製カルボジイミド基含有化合物、固形分40%)10.0部としたこと以外は、実施例1と同様にして顔料体積濃度17%のエマルション塗料組成物を得た。これらの塗料に含まれるVOCの含有量を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィにて分析した。結果を表1に記載した。
さらに、実施例1と同様にして、低温造膜性評価板および耐アルカリ性および耐水性試験板を形成した。
評価試験
作成した各評価板を以下の通り試験し、評価した。なお、評価結果は表1に示した。
(1)低温造膜性
作成した低温造膜性評価板の塗膜表面状態を目視にて、以下の評価基準に従って評価した。
○ :塗膜の割れがない
× :塗膜の割れが確認できる
作成した各評価板を以下の通り試験し、評価した。なお、評価結果は表1に示した。
(1)低温造膜性
作成した低温造膜性評価板の塗膜表面状態を目視にて、以下の評価基準に従って評価した。
○ :塗膜の割れがない
× :塗膜の割れが確認できる
(2)耐アルカリ性
作成した耐アルカリ性評価板を板周囲にシーリングを施さずに20℃の水酸化ナトリウム3%水溶液に24時間没水した。取り出して水洗した後、30分以内に硬度HBの鉛筆で塗膜表面を引っ掻き、塗膜表面の状態を観察した。
○ :塗膜が剥がれない
× :塗膜の剥がれが確認できる
作成した耐アルカリ性評価板を板周囲にシーリングを施さずに20℃の水酸化ナトリウム3%水溶液に24時間没水した。取り出して水洗した後、30分以内に硬度HBの鉛筆で塗膜表面を引っ掻き、塗膜表面の状態を観察した。
○ :塗膜が剥がれない
× :塗膜の剥がれが確認できる
(3)耐水性
作成した耐水性評価板を板周囲にシーリングを施さずに20℃の水に24時間没水した。取り出して水洗した後、30分以内に塗膜表面の状態を観察した。
○ :塗膜に大きなフクレがない
× :塗膜に大きなフクレが確認できる
作成した耐水性評価板を板周囲にシーリングを施さずに20℃の水に24時間没水した。取り出して水洗した後、30分以内に塗膜表面の状態を観察した。
○ :塗膜に大きなフクレがない
× :塗膜に大きなフクレが確認できる
表1の結果から明らかなように、本発明に含まれるエマルション塗料組成物は、耐水性および耐アルカリ性試験後の付着性に優れている(実施例1〜7)。しかしながら、オキサゾリン基含有樹脂またはカルボジイミド基含有化合物を含まなかったり、所定の含有量を超えたエマルション塗料組成物である比較例1〜3は、耐水性および耐アルカリ性試験後の塗膜表面が不良であったり、低温造膜性に劣ることがわかった。
本発明のエマルション塗料組成物は、建築物の内外装に好適である。
Claims (7)
- モノマー混合液を乳化重合して得られるエマルション樹脂、および、オキサゾリン基含有樹脂および/またはカルボジイミド基含有化合物を含み、かつ、前記エマルション樹脂固形分100質量部に対する、前記オキサゾリン基含有樹脂とカルボジイミド基含有化合物との固形分の和が0.3〜5質量部であることを特徴とするエマルション塗料組成物。
- 前記モノマー混合液は、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する架橋性モノマーと連鎖移動剤とを含んでいて、前記架橋性モノマーと連鎖移動剤との質量比が2/1〜30/1であり、前記モノマー混合液中に占める前記架橋性モノマーの含有率が1〜6質量%である請求項1に記載のエマルション塗料組成物。
- 前記モノマー混合液は、カルボン酸基含有不飽和モノマーを含んでいて、前記モノマー混合液の酸価が5〜50である請求項1または2に記載のエマルション塗料組成物。
- 顔料体積濃度は10〜50%である請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載のエマルション塗料組成物。
- さらに、揮発性有機化合物の含有量が1質量%以下である請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のエマルション塗料組成物。
- 基材に対して、請求項1〜5のいずれか1つに記載のエマルション塗料組成物を塗布することを特徴とする塗膜形成方法。
- 前記基材の表面にシーラーが塗布されている請求項6に記載の塗膜形成方法。
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- 2004-01-20 JP JP2004011860A patent/JP2004339471A/ja active Pending
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