JP3924737B2 - 下塗り塗装無機基材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐透水性、耐透湿性、無機基材及び上塗り付着性等がすぐれた下塗り塗装基材に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、建物の無機外壁塗装材として、無機材料を板状に成形した後、一次養生、第一下塗り塗装、乾燥、オートクレーブ養生、切削加工、プレヒートを行った後、第二下塗り塗装、及び乾燥を行なって、下塗り塗装板を製造し、次いでこのものの表面に上塗り塗料を塗装することにより建材用塗装板を製造しているか、もしくは上記プレヒート後、上記第二下塗り塗装を行なわないで直接上塗り塗料を塗装し、次いで乾燥を行うことにより建材用塗装板を製造しているのが一般的である。
上記した第一下塗り塗膜は、耐エフロレッセンス性、基材付着性、第二下塗り又は上塗り塗膜との密着性等の性能が要求され、また、第二下塗り塗膜は、耐透水性、耐透湿性、耐ブロッキング性、第一下塗り及び上塗り塗膜との付着性等の性能が要求される。
【0003】
従来、下塗り塗料として水性タイプの塗料としては、例えば、アクリル酸モノマー等の酸モノマー、メチルメタクリレートモノマー、スチレン等の硬質モノマー、n−ブチルアクリレート等の軟質モノマーをラジカル共重合反応させてなる共重合体を水に分散した水性下塗り塗料が一般的に使用されている。しかしながら、該水性下塗り塗料は、耐透水性、耐透湿性等の性能が悪いといった問題点がある。
【0004】
また、下塗り塗料として、例えば、塩化ビニリデン系樹脂を使用した場合、耐透水性、耐透湿性等の性能は優れるが無機基材特に多孔質建材に塗装するとピンホールを発生し易く仕上がり外観やピンホールから水分が浸透し塗膜の耐久性が低下したり、また上塗り塗膜との付着性が低下したりするといった問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は従来の下塗り塗膜における上記の欠陥を解消することであり、鋭意研究の結果、無機建材用下塗り塗膜として、特定の塗膜を積層してなる複合塗膜が、目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
1、無機基材表面に、下塗り塗膜としてビニル系樹脂被膜(A)、ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)及びビニル系樹脂被膜(C)を順に積層してなる積層下塗り被膜を有することを特徴とする下塗り塗装無機基材、
2、上記積層下塗り被膜において、ビニル系樹脂被膜(A)及び/又はビニル系樹脂被膜(C)がこれらの各被膜中のビニル系樹脂100重量部に対して体質顔料を10〜200重量部含有する上記1に記載の下塗り塗装無機基材、
3、上記積層下塗り被膜において、ビニル系樹脂被膜(A)及び/又はビニル系樹脂被膜(C)がこれらの各被膜中のビニル系樹脂が該樹脂を構成するモノマー成分として、芳香族系ビニルモノマーを20〜80重量%含有する上記1又は2に記載の下塗り塗装無機基材、
4、塩化ビニリデン系樹脂被膜(B)が、該被膜中のハロゲン化ビニリデン系樹脂100重量部に対して二酸化チタン顔料を5〜70重量部含有する上記1乃至3に何れかに記載の下塗り塗装無機基材、
5、ビニル系樹脂被膜(A)が、ビニル系樹脂エマルションを含む塗料で形成される上記1乃至4の何れか1項に記載の下塗り塗装無機基材、
6、ビニル系樹脂被膜(B)が、ビニル系樹脂エマルションを含む塗料で形成される上記1乃至4の何れか1項に記載の下塗り塗装無機基材、
7、ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)が、ハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含む塗料で形成される上記1乃至6の何れか1項に記載の下塗り塗装無機基材に係わる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する積層被膜(A)〜(C)について以下に説明する。まずビニル系樹脂被膜(A)及びビニル系樹脂被膜(C)について以下に説明する。
【0008】
本発明で使用するビニル系樹脂被膜(A)及びビニル系樹脂被膜(C)は、共にビニル系樹脂エマルションにより形成される。該エマルションとしては、ビニル系樹脂を主な樹脂成分として含有するエマルションであり、ビニル系樹脂被膜(A)及びビニル系樹脂被膜(C)の少なくとも1種はビニル系樹脂が該樹脂を構成するモノマー成分として、特に芳香族系ビニルモノマーを20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%含有するエマルションを使用することが好ましい。該芳香族系ビニルモノマーの含有量が20重量%未満になると
耐透湿性が劣り、一方、80重量%を越えると造膜性、上塗付着性が劣る。
【0009】
該芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等が挙げられる。
【0010】
また、上記した芳香族系ビニルモノマーはその他のラジカル共重合性モノマーとラジカル共重合反応させられる。該その他のラジカル共重合性モノマーとしては、該芳香族系ビニルモノマーと実質的にラジカル共重合反応するものであれば、特に制限なしに従来から公知のその他のラジカル共重合性モノマーを使用することができる。具体的には、例えば、下記のモノマーを挙げることができる。
【0011】
また、ビニル系樹脂として芳香族系ビニルモノマーを20〜80重量%含有しないビニル系樹脂を製造するには、上記した芳香族系ビニルモノマーを20重量%未満とし、更に、下記その他のラジカル共重合性モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーを20重量%を越える量で配合しラジカル共重合反応させることにより得られる。該ビニル系樹脂としては、特にその他のラジカル共重合性モノマーとしては下記(a)のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18(1〜24)のアルキルエステル又はシクロアルキルエステルを主成分とする(共)重合体樹脂を使用することが好ましい。
【0012】
その他のラジカル共重合性モノマーとしては、下記したものが挙げられる。
(a)カルボキシル基含有不飽和単量体:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0013】
(b)アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数1〜20のモノアルコ−ルとのエステル化物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル(n−,i−,t−)、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル(n−,i−,tert−)、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18(1〜24)のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル:アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル等が挙げられる。
【0014】
(c)ビニルエステル:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バ−サチック酸ビニルなどが挙げられる。
【0015】
(d)シアン化ビニル:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0016】
(e)ハロゲン化ビニル:例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどが挙げられる。
【0017】
(f)アミド系不飽和化合物:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0018】
(g)エポキシ不飽和化合物:例えばグリシジルアクリレ−ト、グリシジルメタクリレ−トなどが挙げられる。
【0019】
(h)水酸基含有不飽和化合物:例えばヒドロキシエチルアクリレ−ト、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、ヒドロキシプロピルメタクリレ−トなどが挙げられる。
【0020】
(i)シリル基含有不飽和化合物:例えばビニルトリメトキシシラン、メタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピルなどが挙げられる。
【0021】
上記したその他のラジカル共重合性モノマーは1種もしくは2種以上組み合せて使用することができる。
上記したビニル系樹脂エマルションは、公知の方法にて得ることが出来る。例えば乳化剤の存在下で、上記モノマー成分を乳化重合させることで容易に得られる。乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などがあげられ、該乳化剤の1種又は2種以上の存在下で重合開始剤を使用して乳化重合する事が出来る。乳化重合以外にも公知の溶液重合方法や懸濁重合方法により製造することができる。
【0022】
また、上記ビニル系樹脂被膜(A)及びビニル系樹脂被膜(C)を形成するビニル系樹脂エマルションとしては、上記したビニル系樹脂エマルション以外にコア・シェル型ビニル系樹脂エマルションを使用することができる。
【0023】
該コア・シェル型ビニル系樹脂エマルションで使用するコア・シェル型ビニル系樹脂において、該樹脂のコア部を構成するモノマー成分として、芳香族系ビニルモノマーを20〜80重量%含有し、かつシェル部を構成するモノマー成分として、芳香族系ビニルモノマーを含まない樹脂か、もしくは該樹脂としてコア部及びシェル部を構成するモノマー成分として、芳香族系ビニルモノマーを含有する場合には、コア部を構成する芳香族系ビニルモノマーがシェル部を構成する芳香族系ビニルモノマーよりも多く含まれ、且つコア部及びシェル部の両者に含まれる芳香族系ビニルモノマーが20〜80重量%の範囲である樹脂が使用できる。
【0024】
また、シェル部とコア部との配合割合はこの両成分の合計重量を基準に、シェル部は0.05〜50%、特に0.5〜35%、コア部は99.95〜50%、特に99.5〜65%の範囲内が適している。
【0025】
また、コア・シェル型ビニル系樹脂エマルションにおいて、シェル部のガラス転移温度がシェル部のガラス転移温度よりも1℃以上高いことが好ましい。更に、コア部のガラス転移温度が−20〜50℃、特に0〜40℃、シェル部のガラス転移温度が40℃より高く、特に50〜105℃の範囲内であることが好ましい。
【0026】
コア・シェル型エマルションにおいて、コア部のガラス転移温度が−20℃より低くなると形成塗膜がブロッキングしやすくなり、一方、50℃より高くなると造膜性や低温物性(凍結融解試験)などが低下する。シェル部のガラス転移温度が40℃以下では形成塗膜がブロッキングしやすくなる。
【0027】
本明細書において、重合体のガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出することができる。
【0028】
1/Tg(゜K)=(W/T)+(W/T)+・・
Tg(℃)=Tg(゜K)−273
式中 W、W、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの重量%、T、T、・・はそれぞれ単量体のホモポリマ−のTg(゜K)を表わす。なお、T、T、・・は、Polymer Hand Book(Scond Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)による値である。
また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は、単離塗膜をバイブロン動的粘弾性装置 DAYNAMIC VISCO ELASTOMETER MODEL VIBRON DDV−IIEA型(TOYO BACDWIN CO. Ltd)を用いて、周波数110ヘルツ、昇温速度3℃/分において動的ガラス転移温度(℃)で測定した。試料はポリプロピレン板に塗装後、単離した塗膜で測定した。
【0029】
上記したコア・シェル型エマルションは、例えばコア部の水分散液を製造した後、該水分散液の存在下でシェル部を構成するモノマーを滴下してラジカル重合反応させることにより製造することができる。
【0030】
コア部は、これらを構成するモノマー混合物を水中で、通常の乳化重合法により重合することにより調製できる。重合触媒としては、水溶性または油溶性の過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、t−ブチルパ−オキシベンゾエ−ト、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などがあげられ、このうち特に水溶性のものが好適である。その使用量は、モノマー混合物の0.1〜1重量%が好ましい。さらに、重合速度の促進や低温重合を望むには、重亜硫酸ナトリウム、塩化第1鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤を併用することができる。さらに、それ自体既知の重合調整剤や界面活性剤なども必要に応じて使用できる。
【0031】
次に、かくして得られたコア部の水分散液に、シェル部を構成するモノマー混合物を加え、乳化重合してシェル部を形成することによりコア・シェル型エマルションが得られる。
【0032】
コア部及びシェル部を構成するモノマーは、該コア部及びシェル部が上記した性質を有するように適宜、上記芳香族系ビニルモノマーとその他のモノマー(a)〜(i)から適宜選択して使用される。
【0033】
本ビニル系樹脂塗料は上記したビニル系樹脂エマルションをそのまま使用することができるが、通常は必要に応じて着色顔料、体質顔料、有機溶剤、水溶性樹脂、コロイダルディスパージョン、可塑剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、表面張力調整剤、沈降防止剤、造膜助剤、防腐剤などを配合して使用する。
【0034】
上記した造膜助剤としては、沸点(BP)が100〜270℃のアルコ−ル成分から選ばれた1種もしくは2種以上が使用できる。かかるアルコ−ル成分として、具体的には、エチレングリコ−ルモノブチルエ−テル(ブチルセロソルブ、分子量118、BP171℃)、ジエチレングリコ−ルモノブチルエ−テル(ブチルカルビト−ル、分子量162、BP230℃)、ジエチレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト(ブチルカルビト−ルアセテ−ト、分子量206、BP246℃)、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル(分子量90、BP120℃)などがあげられる。さらに、(CH)CHCOOCHC(CH)C(OH)HCH(CH)で示される2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオ−ルモノイソブチレ−ト(テキサノ−ル、分子量216、BP248℃)も造膜助剤として有効である。
【0035】
アルコ−ル成分の沸点が100℃より低くなると塗膜の形成性(造膜性)が十分でなく、また沸点が270℃より高くなると塗膜中に残存しやすくなり耐水性、耐湿性などが低下するので好ましくない。
【0036】
造膜助剤の含有量は、特に制限されないが、エマルションの樹脂固形分100重量部あたり、0.1〜25重量部、好ましくは1〜20重量部の範囲内である。
【0037】
上記したビニル系樹脂被膜(A)及びビニル系樹脂被膜(C)は、カルボニル基含有樹脂を使用する場合、ポリヒドラジド化合物を配合することにより架橋塗膜を形成することができる。
上記ポリヒドラジド化合物は、1分子中にヒドラジド基(−CO−NH−NH2 )を2個以上含有する上記カルボニル基と反応して架橋構造を作る化合物である。
【0038】
ポリヒドラジド化合物の代表的な具体例としては、例えば、カルボジヒドラジド等のジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エイコ酸二酸ジヒドラジドなどのC2〜40個の脂肪族カルボン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、ピロメリト酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジドなどの芳香族ポリヒドラジド、及びマレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジヒドラジド、ビスセミカルバジド、ポリアクリル酸ポリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジ/カルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどのその他のポリヒドラジドなどが挙げられる。
【0039】
ポリヒドラジド化合物の配合割合は、樹脂の有するカルボニル基に対して0〜2当量、好ましくは0〜1当量の範囲である。
【0040】
上記ビニル系樹脂被膜(A)及びビニル系樹脂被膜(C)のいずれか一方の被膜もしくは両被膜には、体質顔料を含有することができる。該体質顔料としては、従来から公知のものを使用することができるが、特にタルク、マイカなどの偏平顔料を使用することが好ましい。該顔料を配合する場合には、ビニル系樹脂被膜(A)又はビニル系樹脂被膜(C)中に樹脂固形分100重量部当たり10〜200重量部、特に50〜170重量部の範囲が好ましい。該体質顔料を含有させることにより製品コストと被膜性能(特に耐透水性等)とのバランスに優れた被膜が形成できる。
【0041】
次に、本発明で使用するハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)について、以下に説明する。
ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)は、ハロゲン化ビニリデン系樹脂の水分散液を含む塗料により形成することができる。ハロゲン化ビニリデン系樹脂のエマルションとしては従来から公知のものを特に制限なしに使用することができる。該ハロゲン原子は、特に塩素、フッ素が好ましい。
【0042】
ハロゲン化ビニリデン系樹脂のエマルションとしては、例えば、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデンモノマー及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの酸モノマー及び必要に応じて(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル等の水酸基含有モノマーやアクリロニトリル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜C12)エステル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル及びスチレン等の不飽和化合物から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物と共に、乳化重合してコポリマーとし、残存するカルボン酸の一部又は全部を中和したポリハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションが包含される。
【0043】
ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)には、必要に応じて体質顔料、着色顔料等の顔料を含有することができる。該顔料の配合割合としては該被膜の樹脂100重量部に対して約70重量部以下、好ましくは約0〜60重量部の範囲が望ましい。また、顔料を配合する際には、特に二酸化チタン顔料を配合することが好ましく、特に顔料の全配合割合を基準に対して約50〜100重量%、特に約60〜100重量%の範囲が好ましい。
【0044】
本発明において、上記した積層下塗り被膜は、無機基材面方向から順にビニル系樹脂被膜(A)、ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)及びビニル系樹脂被膜(C)を順に積層してなる積層下塗り被膜である。
【0045】
また、本発明で使用する無機基材は、セメントを主成分とし、これにパルプやロックウールなどの補強繊維、珪砂等の珪酸質材料、、さらには無機質充填剤を配合した組成物を、抄造法あるいはプレス成形などの手段により成形して水硬化させてなる無機質硬化材(例えば、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板)などである。
【0046】
次に、無機基材に本発明の積層下塗り被膜を形成する一般的な方法について以下に説明する。
【0047】
本発明の下塗り積層被膜は特にオートクレーブ工程を含む第二下塗り積層被膜として適用することが好ましい。以下、好ましい塗装方法について説明する。
【0048】
本発明の下塗り積層被膜は、無機質多孔質基材の表面に第一下塗り塗料を塗布、乾燥した後、オートクレーブ養生し、次いで本発明のビニル系樹脂エマルションを含む塗料を塗装、乾燥してビニル系樹脂被膜(A)を形成し、次いで該被膜表面上にハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含む塗料を塗装、乾燥してハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)を形成し、次いで該被膜表面にビニル系樹脂エマルションを含む塗料を塗装、乾燥してビニル系樹脂被膜(C)を形成することにより得られる。
【0049】
第一下塗り被膜は従来から公知の下塗り塗料又は本発明の第二下塗り塗料を使用することにより形成することができる。
【0050】
ビニル系樹脂被膜(A)は、ビニル系樹脂エマルションを含む塗料を塗装、乾燥することにより形成できる。
【0051】
ビニル系樹脂エマルション(A)の塗布量(固形分換算)は、0.1〜100g/m2 、好ましくは10〜70g/m2 の範囲である。塗布量が0.1g/m2 未満になると基材付着性が低下し、一方100g/m2 を越えると耐ブロッキング性等が低下するので好ましくない。
【0052】
ビニル系樹脂エマルションを含む塗料(A)の塗装方法は、特に制限なしに従来から公知の塗装方法、例えば、ローラー、刷毛、スプレー、浸漬、フローコーター(カーテンフローコーターなど)等の方法で行うことができる。
ビニル系樹脂エマルションを含む塗料(A)の塗装被膜の乾燥は、例えば、通常の乾燥炉、熱風乾燥炉、ジェットヒーターなどで、雰囲気温度50℃〜200℃好ましくは70℃〜150℃で10秒〜30分好ましくは20秒〜20分、さらに好ましくは30秒〜10分程度乾燥させるのがよい。
【0053】
ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)は、ハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含む塗料(B)を塗装、乾燥することにより形成できる。
【0054】
ハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含む塗料(B)の塗布量(固形分換算)は、0.1〜100g/m2 、好ましくは10〜70g/m2 の範囲である。塗布量が0.1g/m2 未満になると耐透湿性が低下し、一方100g/m2 を越えると耐ブロッキング性等が低下するので好ましくない。
【0055】
ハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含む塗料(B)の塗装方法は、特に制限なしに従来から公知の塗装方法、例えば、ローラー、刷毛、スプレー、浸漬、フローコーター(カーテンフローコーターなど)等の方法で行うことができる。
【0056】
ハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含む塗料(B)の塗装被膜の乾燥は、例えば、通常の乾燥炉、熱風乾燥炉、ジェットヒーターなどで、雰囲気温度50℃〜200℃好ましくは70℃〜150℃で10秒〜30分好ましくは20秒〜20分、さらに好ましくは30秒〜10分程度乾燥させるのがよい。
【0057】
ビニル系樹脂エマルションを含む塗料(C)の塗布量(固形分換算)は、0.1〜100g/m2 、好ましくは10〜70g/m2 の範囲である。塗布量が0.1g/m2 未満になると上塗付着性が低下し、一方100g/m2 を越えると耐ブロッキング性等が低下するので好ましくない。
【0058】
ビニル系樹脂エマルションを含む塗料(C)の塗装方法は、特に制限なしに従来から公知の塗装方法、例えば、ローラー、刷毛、スプレー、浸漬、フローコーター(カーテンフローコーターなど)等の方法で行うことができる。
ビニル系樹脂エマルションを含む塗料(C)の塗装被膜の乾燥は、例えば、通常の乾燥炉、熱風乾燥炉、ジェットヒーターなどで、雰囲気温度50℃〜200℃好ましくは70℃〜150℃で10秒〜30分好ましくは20秒〜20分、さらに好ましくは30秒〜10分程度乾燥させるのがよい。
【0059】
また、ビニル系樹脂被膜(C)の表面に上塗り塗料が塗装されるが、塗装される上塗り塗料としては、従来から公知の上塗り塗料を特に制限なしに使用することができる。
【0060】
上塗り塗料としては、例えばアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、塩化ビニル樹脂系、繊維素樹脂系、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素樹脂系及びこれらの2種以上の変性樹脂やブレンド樹脂等を使用することができる。また、上塗り塗料はラッカータイプもしくは架橋タイプのものいずれにおいても使用することができる。また、上塗り塗料は水性、有機溶剤系、無溶剤系のいずれの塗料形態であっても構わない。
【0061】
【実施例】
次に、実施例を掲げて本発明を詳細に説明する。尚、実施例及び比較例中の部、%は重量基準である。
【0062】
1、エマルション製造例
アクリル共重合体エマルション1の製造例
還流冷却器、撹拌機、温度計を装備した容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水300部、Newcol 707SF(日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30%)8部を加え、窒素置換後85℃まで昇温した。
この中に過硫酸アンモニウム0.8部と下記組成をエマルション化してなるプレエマルションの3.5%を添加し、添加20分後から前述のプレエマルションを4時間掛けて滴下した。
脱イオン水 522.1部
スチレン 572 部
n−ブチルアクリレート 180 部
2−エチルヘキシルアクリレート 40 部
メタクリル酸 8 部
30% Newcol 707SF 44.9部
過硫酸アンモニウム 1.6部
滴下終了後30分を経てから、過硫酸アンモニウム0.8部を脱イオン水16部に溶解させた溶液を30分かけて滴下し、更に2時間85℃に保持した。その後40℃以下まで温度を下げ、アンモニア水でpH7〜8に調整し、不揮発分47.3%のアクリル共重合体エマルション1を得た。
【0063】
アクリル共重合体エマルション2の製造例
表1の配合で上記アクリル共重合体エマルション1に記載した製造方法と同様の方法で製造してアクリル共重合体エマルション2を得た。
【0064】
アクリル共重合体エマルション3の製造例
還流冷却器、撹拌機、温度計を装備した容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水300部、Newcol 707SF8部を加え、窒素置換後85℃まで昇温した。
この中に過硫酸アンモニウム0.8部と下記(A)組成をエマルション化してなるプレエマルションの3.5%を添加し、添加20分後から前述のプレエマルションを170分掛けて滴下した。
コア成分(A)
脱イオン水 365.5部
スチレン 392.4部
n−ブチルアクリレート 130 部
2−エチルヘキシルアクリレート 32 部
メタクリル酸 5.6部
30% Newcol 707SF 31.4部
過硫酸アンモニウム 1.12部
滴下終了後1時間熟成してから、下記(B)組成をエマルション化してなるプレエマルションを70分掛けて滴下した。
シェル成分(B)
脱イオン水 156.6部
スチレン 20部
n−ブチルアクリレート 50 部
2−エチルヘキシルアクリレート 50 部
メタクリル酸 2.4部
メチルメタクリレート 117.6 部
30% Newcol 707SF 13.5部
過硫酸アンモニウム 0.48部
滴下終了後30分経てから、過硫酸アンモニウム0.8部を脱イオン水16部に溶解させた溶液を30分かけて滴下し、更に2時間85℃に保持した。その後40℃以下まで温度を下げ、アンモニア水でpH7〜8に調整し、不揮発分47.6%のアクリル共重合体エマルション3を得た。
【0065】
【表1】
【0066】
2、塗料製造例
顔料ペースト1の製造例
水50部、チタン白(CR−97、石原産業(株)社製、商品名)50部、タルク(Sタルク、日本タルク(株)社製、商品名)50部、ノプコサントK(サンノプコ(株)社製、商品名)2部、ノプコスパース44C(サンノプコ(株)社製、商品名)2部をペイントシェーカーで分散して顔料ペースト1を製造した。
顔料ペースト2の製造例
水50部、チタン白(CR−97、石原産業(株)社製、商品名)100部、ノプコサントK(サンノプコ(株)社製、商品名)2部、ノプコスパース44C(サンノプコ(株)社製、商品名)2部をペイントシェーカーで分散して顔料ペースト2を製造した。
塗料1〜8の製造例
表2に示すエマルション、ブチルセロソルブ、顔料ペーストを配合して塗料1〜8を得た。
表2においてエマルションL411Aは旭化成株式会社製、商品名、サランラテックスL411A、塩化ビニリデンエマルション、固形分50重量%である。
【0067】
【表2】
【0068】
3、実施例1〜12
上記の塗料を用いて表3に記載のように基材側、中間層、上塗側の順に塗装して、試験板および試験用フリー塗膜を作成した。評価は下記のように行った。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
4、比較例1〜12
上記の塗料を用いて表4に記載のように基材側、中間層、上塗側の順に塗装して、試験板および試験用フリー塗膜を作成した。評価は下記のように行った。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
耐透水性: 上記塗料をスレート板に膜厚各30μm、合計90μmになるよう塗装して試験板を得た。この試験板を使用してJIS K 5400のロート法で耐透水性を評価した。1ml/24h以下を○、3ml/24h以下のものを△、3ml/24h以上のものを×とした。
【0073】
耐透湿性: 上記塗料をブリキ板に膜厚各30μm、合計90μmになるよう塗装したのち、アマルガムで塗膜をはがしてフリー塗膜を得た。このフリー塗膜を使用してJIS Z 0208の透湿試験を行った。透湿度が20g/m2・24h以下のものを◎、50g/m2・24h以下のものを○、100g/m2・24h以下のものを△、100g/m2・24h以上のものを×とした。
【0074】
基材付着性と層間付着性: 耐透水性試験と同様にして作成した試験板にカッターナイフで4mm間隔に5個×5個マスの碁盤目状に切れ目をいれセロテープを貼り付けて剥離した。剥離したマス目のないものを◎、カッターナイフの切れ目にそって少し剥離が見られる程度のものを○、2個マス以下の剥離のものを△、3個マス以上の剥離があるものを×とした。剥離箇所が基材と塗膜の間であるものは基材付着性、3層の塗膜の層間であるものは層間付着性をマイナス要因として評価した。
上塗付着性: 耐透水性試験と同様にして作成した試験板にアクリル系水性塗料IMコート5111(関西ペイント(株)社製、商品名)を膜厚50μmになるよう塗装した。この試験板にカッターナイフで4mm間隔に5個×5個マスの碁盤目状に切れ目をいれセロハンテープを貼り付けて剥離した。剥離したマス目のないものを◎、カッターナイフの切れ目にそって少し剥離が見られる程度のものを○、2個マス以下の剥離のものを△、3個マス以上の剥離があるものを×とした。
【0075】
【発明の効果】
本発明の水性シーラーは、上記した構成を有することから特に耐透水性、耐透湿性、耐ブロッキング性、付着性等の被膜性能に優れた効果を発揮するものである。
Claims (5)
- 無機基材表面に、下塗り塗膜として、コア・シェル型ビニル系樹脂エマルションを含有する塗料で形成されるビニル系樹脂被膜(A)、ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)及びコア・シェル型ビニル系樹脂エマルションを含有する塗料で形成されるビニル系樹脂被膜(C)を順に積層してなる積層下塗り被膜を有することを特徴とする下塗り塗装無機基材。
- 上記積層下塗り被膜において、ビニル系樹脂被膜(A)及び/又はビニル系樹脂被膜(C)がこれらの各被膜中のビニル系樹脂100重量部に対して体質顔料を10〜200重量部含有する請求項1に記載の下塗り塗装無機基材。
- 上記積層下塗り被膜において、ビニル系樹脂被膜(A)及び/又はビニル系樹脂被膜(C)がこれらの各被膜中のビニル系樹脂が該樹脂を構成するモノマー成分として、芳香族系ビニルモノマーを20〜80重量%含有する請求項1又は2に記載の下塗り塗装無機基材。
- 塩化ビニリデン系樹脂被膜(B)が、該被膜中のハロゲン化ビニリデン系樹脂100重量部に対して二酸化チタン顔料を5〜70重量部含有する請求項1乃至3の何れかに記載の下塗り塗装無機基材。
- ハロゲン化ビニリデン系樹脂被膜(B)が、ハロゲン化ビニリデン系樹脂エマルションを含有する塗料で形成される請求項1乃至4の何れか1項に記載の下塗り塗装無機基材。
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