JP2004339459A - 樹脂複合材料及びそれを被覆した絶縁電線 - Google Patents
樹脂複合材料及びそれを被覆した絶縁電線 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】(a)ポリオレフィン20〜80質量%、(b)エチレン系共重合体10〜40質量%及び(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー10〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対して、(d)有機化クレー4〜10質量部を含有させてなる樹脂複合材料。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィンの機械的特性、難燃性などを改良した樹脂複合材料に関し、さらに詳しくは、ポリプロピレン系樹脂の機械特性や難燃性、耐熱性、耐寒性などを改良した樹脂複合材料及びそれを被覆した絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、樹脂の諸特性を改良するために種々の無機充填剤を混合、混練することが行われており、近年、無機充填剤の1つである層状粘土鉱物を樹脂中に微分散させて、諸特性を改良した粘土複合材料とそれを使用した樹脂複合材料に関する提案がされている。
特許文献1には、エラストマー中に無機質フィラーをナノオーダーレベルで微細に分散させて高剛性と耐熱、耐衝撃性に優れた無機質フィラー含有のエラストマーの製造方法と耐衝撃性に優れた樹脂複合材料が記載されている。
特許文献2には、2種類以上のポリマーと有機化クレーとからなり、2種類以上のポリマーのうち、少なくとも1種類が官能基を有することを特徴する樹脂複合材料が記載されている。
2種類以上のポリマーが、互いに相容性を有するか、又は非相容性かによって、有機化クレーの分散状態が変わるということが記載されているが、2種類のポリマーが相容性を有する場合でも、相容性マトリックス中に有機化クレーが分子レベルで均一に分散しないことや、2種類のポリマーが非相容の場合、非相容性マトリックス中のミセルの分散粒径が大きいと層状粘土鉱物のクレーが微分散しているとはいえず、複合材料としての諸特性が改善されない。
【0003】
また、これまで提案、実用化されているノンハロゲン難燃性樹脂複合材料は、金属水和物を高充填したポリオレフィン系樹脂を使用することが一般的であるが、そのベースポリマーとしては、多量の金属水和物を配合しやすいエチレン系共重合体が主として用いられている。
しかし、このようなノンハロゲン難燃材料の機械的特性、耐熱性などは、PVCコンパウンドの特性と比較すると低いことが問題であり、PVCコンパウンド並の特性を有するノンハロゲン難燃材料の開発が待ち望まれている。
かかる問題を解決するため、エチレン系共重合体をベースポリマーとするノンハロゲン難燃組成材料を化学架橋や電子線架橋で架橋する方法や、機械特性や耐熱性に優れるポリプロピレンをベースポリマーに使用する方法が検討されているが、難燃性、機械的特性、耐熱性、耐寒性などにバランスのとれた材料は開発されていないのが現状である。
また、提案、実用化されているノンハロゲン材料を被覆した絶縁電線は、それらをPVCテープやPVC絶縁電線、ゴムグロメットなどの異種材料と接触させた場合、その耐熱寿命が低下するという問題が発生する場合がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−302025号公報
【特許文献2】
特開平11−92594号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題を解決した樹脂複合材料に関するものであり、ポリオレフィン、特に、ポリプロピレン系樹脂の機械特性、難燃性、耐熱性、耐寒性などを改良した樹脂複合材料を提供することを目的とする。
また、少量の金属水和物の添加で更に難燃性を付与することができ、機械特性、難燃性、耐熱性、耐寒性、他の部品との共存性等を改良した軽量で成形加工性の容易なポリオレフィン系樹脂複合材料及びそれを被覆したノンハロゲン難燃絶縁電線を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、有機化クレーの分散状態及び樹脂の相容状態に着目して鋭意検討を重ねた結果、有機化クレーを各々含有するエチレン系共重合体と酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを併用することにより、エチレン系共重合体と酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー中の有機化クレーの分散状態と、樹脂複合材料中のエチレン系共重合体と酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの分散状態を変化させることができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)(a)ポリオレフィン20〜80質量%、(b)エチレン系共重合体10〜40質量%及び(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー10〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対して、(d)有機化クレー4〜10質量部を含有させてなる樹脂複合材料、
(2)(a)ポリオレフィン20〜80質量%、(b)エチレン系共重合体10〜40質量%及び(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー10〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対して、(d)有機化クレー4〜10質量部及び(e)金属水和物40〜120質量部を含有させてなる樹脂複合材料、
(3)前記樹脂複合材料中の前記(b)エチレン系共重合体と前記(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの分散粒径が3μm以下であり、前記(d)有機化クレーの層間距離が4nm以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の樹脂複合材料、
(4)前記(a)ポリオレフィン20〜80質量部に、前記(b)エチレン系共重合体100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(I)10〜40質量部と、(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(II)10〜40質量部とを溶融混練することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の樹脂複合材料、
(5)前記(a)ポリオレフィンが(f)ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載の樹脂複合材料、
【0008】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の複合材料で導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線、
(7)前記(a)ポリオレフィン20〜80質量部に、前記(b)エチレン系共重合体100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(I)10〜40質量部と、(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(II)10〜40質量部とを溶融混練することを特徴とする請求項1〜5記載の樹脂複合材料の製造方法、及び
(8)前記(a)ポリオレフィンが(f)ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項7記載の樹脂複合材料の製造方法、
を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の樹脂複合材料に使用される各成分について説明する。
(a)ポリオレフィン
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを挙げることができるが、後述するポリプロピレン系樹脂が好ましい。
これらの樹脂は、単独でも、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0010】
(b)エチレン系共重合体
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などがあげられる。
エチレン系共重合体は、有機化クレーと併用することにより、樹脂複合材の難燃性を向上させる効果がある。
【0011】
このエチレン系共重合体の具体例としては、「ベイマック」、「ハイミラン」、「エバフレックス」、「ニュクレル」(いずれも商品名、三井・デュポン製)、「BORFLEX」(商品名、BOREALIS製)、「LOTADER」(商品名、ATOFINA製)、「LEVAPREN」(商品名、BAYER製)などがある。
これらのエチレン系共重合体は、単独でも、2種類以上を組み合わせてもよい。
本発明においては、これらのエチレン系共重合体は、樹脂複合材料を作成する場合の混練性を向上させる点から、JIS K 7210に規定されるメルトフローレイトが、30g/10min.(190℃、2.16kgf)以下であることが好ましい。
【0012】
(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー
酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン系熱可塑性エラストマーを不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性したものである。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などがあげられる。
【0013】
変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が、不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステルなどがある。
酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー中に共重合させる不飽和カルボン酸成分の量は好ましくは、0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%である。
【0014】
このような酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、「タフテックM1943」、「タフテックM1911」、「タフテックM1913」(いずれも商品名、旭化成製)、「クレイトンFG1901X」(商品名、クレイトンポリマー製)、「変性DYNARON」(商品名、JSR製)などがある。
これらの酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、単独でも、2種類以上を組み合わせてもよく、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン系熱可塑性エラストマーと組み合わせてもよい。
【0015】
本発明においては、これらの酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、樹脂複合材料を作成する場合の混練性を向上させる点から、JIS K 7210に規定されるメルトフローレイトが、30g/10min.(230℃、2.16kgf)以下であることが好ましい。
酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、有機化クレーと併用することにより、樹脂複合材料の難燃性を向上させる効果がある。
【0016】
(d)有機化クレー
本発明に用いられる有機化クレーとは、有機オニウムイオンを層間に導入したクレーであり、有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオンなどがあげられ、中でも、アンモニウムイオンが好ましい。
有機オニウムイオンの導入量はクレーの陽イオン交換容量の20%以上であり、より好ましくは40%以上である。
アンモニウムイオンとしては、ジアルキル(牛脂)ジメチルアンモニウムイオン、アルキル(牛脂)ジメチルベンジルアンモニウムイオン、アルキル(牛脂)メチルベンジルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルアルキル(硬化牛脂)メチルアンモニウムイオン、アルキル(硬化牛脂)ジメチルベンジルアンモニウムイオン、ジアルキル(硬化牛脂)ジメチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアルキル(硬化牛脂)ジメチルアンモニウムイオン、ジアルキル(硬化牛脂)メチルアンモニウムイオン、アルキル(牛脂)ジヒドロキシエチルメチルアンモニウムイオンなどがあげられる。
【0017】
クレーとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト系クレー、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカなどがあげられ、中でも、スメクタイト系クレーのモンモリロナイトを主成分とするものが好ましい。
このような有機化クレーとしては、「エスベン」(商品名、ホージュン製)、「Nanomer」(商品名、NANOCOR製)、「Cloisite」(商品名、SOUTHERN CLAY製)などがある。
これらの有機化クレーは、単独でも、2種類以上を組み合わせてもよい。
さらに、有機化クレーの端面をアルコキシシランなどのシランカップリング剤で処理したものの使用も可能である。
また、樹脂組成物中における分散性が向上することから、1000℃における強熱減量が35%以上のものが好ましい。
【0018】
(e)金属水和物
本発明の樹脂複合材料には、さらに金属水和物を加えてもよい。
金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物があげられ、単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
これらの金属水和物においては、0.3〜1.5μmの範囲の結晶粒径を有しているもので、凝集がほとんどないものが好ましく、樹脂との相容性が向上することから、シラン系、チタネート系カップリング剤や脂肪酸などで表面処理を施したものがさらに好ましい。
このようなものとしては、「ハイジライト」(昭和電工製)、「キスマ」(協和化学製)(いずれも商品名)などがある。
【0019】
(f)ポリプロピレン系樹脂
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンのほか、プロピレン単独重合やプロピレンとエチレンのランダム共重合に続いて、エチレンとα−オレフィンを共重合することにより製造される軟質ポリプロピレンなどがあげられる。特に、耐熱性が要求される部材や絶縁電線に使用される樹脂複合材料には、ブロックポリプロピレン、ホモポリプロピレンやプロピレン単独重合体をベースにした軟質ポリプロピレンが好ましい。
これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でも、2種類以上を組み合わせてもよい。
本発明においては、これらのポリプロピレン系樹脂は、樹脂複合材料の混練性を向上させる点から、JIS K 7210に規定されるメルトフローレイトが、30g/10min.(230℃、2.16kg)以下であることが好ましい。
【0020】
次に、本発明における各成分の配合量について説明する。
(a)ポリオレフィン及び(f)ポリプロピレン系樹脂
ポリオレフィンとしては、上述のようにポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などがあげられ、樹脂複合材料中におけるポリオレフィンの含有量は、樹脂複合材料中における樹脂成分の総量の20〜80質量%であり、好ましくは、40〜60質量%である。
この割合が少なすぎると、樹脂複合材料の機械特性や耐熱性が低下することがある。
【0021】
(b)エチレン系共重合体
本発明の樹脂複合材料中におけるエチレン系共重合体の含有量は、樹脂複合材料中における樹脂成分の総量の10〜40質量%であり、好ましくは、20〜30質量%である。
(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー
本発明の樹脂複合材料中における酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、樹脂複合材料中における樹脂成分の総量の10〜40質量%であり、好ましくは、20〜30質量%である。
また、これら2成分の総量の割合は、樹脂成分の総量の20〜80質量%であり、好ましくは20〜40質量%である。
この割合が少ないと、有機化クレーの分散が不完全であり、樹脂複合材料の難燃性が向上しないだけでなく、その凝集により、樹脂複合材料の機械特性や耐寒性が低下する。
逆に、多すぎると、樹脂複合材料の機械特性や耐熱性が低下する。
【0022】
(d)有機化クレー
本発明の樹脂複合材料中における有機化クレーの含有量は、樹脂複合材料中の樹脂成分の総量(100質量部)に対して、4〜10質量部であり、好ましくは、4〜8質量部である。
この有機化クレーの量が、少なすぎると、金属水和物と併用しても、樹脂複合材料の難燃性は向上せず、多すぎても、増量による難燃性の向上に大きな変化はみられない。
また、本発明の樹脂複合材料において、有機化クレーの添加は、樹脂複合材料が異種材料と接触した場合の耐熱寿命を向上させる効果がある。
(e)金属水和物
本発明の樹脂複合材料には、さらに金属水和物を配合させてもよい。
その場合、樹脂複合材料中における金属水和物の占める割合は、樹脂混合物100質量部に対して、40〜120質量部であり、好ましくは50〜80質量部である。
少な過ぎると、樹脂複合材料に十分な難燃性を付与することができず、多すぎると、樹脂複合材料の機械特性や耐寒性が低下し、比重が増加し好ましくない。
【0023】
次に、本発明の樹脂複合材料の製造方法について説明する。
本発明の樹脂複合材料の製造方法は、ポリオレフィンと、エチレン系共重合体と有機化クレーからなる樹脂組成物(I)、酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと有機化クレーからなる樹脂組成物(II)を溶融混練する方法で製造することが好ましい。
さらに金属水和物を加える場合は、ポリオレフィンと樹脂組成物(I)、樹脂組成物(II)の溶融混練物に、金属水和物を加え溶融混練する方法が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィンの一部と金属水和物とを別途溶融混練し加えてもよく、四者を同時に混練してもよい。
【0024】
樹脂組成物(I)
:(b)エチレン系共重合体及び(d)有機化クレー
エチレン系共重合体に有機化クレーを配合した樹脂組成物(I)を樹脂複合材料に使用することで、樹脂複合材料の難燃性を向上させることができる。
樹脂組成物(I)中における有機化クレーの配合量は、エチレン系共重合体100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜15質量部である。
有機化クレーの配合量が5質量部未満では、樹脂複合材料の難燃性の向上がみられず、20質量部をこえる配合も可能であるが、その効果にさらなる向上はみられず、機械特性(低温雰囲気での耐衝撃性)が低下する。
【0025】
樹脂組成物(II)
:(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー及び(d)有機化クレー
酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーに有機化クレーを配合した樹脂組成物(II)を樹脂複合材料に使用することで、樹脂複合材料の機械特性、難燃性を向上させることができる。
樹脂組成物(II)中における有機化クレーの配合量は、酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜15質量部である。
有機化クレーの配合量が少なすぎる場合は、樹脂複合材料の機械特性、難燃性の向上がみられず、多すぎる配合も可能であるが、その効果にさらなる向上がみられない。
【0026】
以下、本発明の樹脂複合材料について詳細に説明する。
本発明の樹脂複合材料の特徴は、有機化クレーを各々含有するエチレン系共重合体と酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを併用することで、エチレン系共重合体及び酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー中の有機化クレーの分散状態並びに、樹脂複合材料中のエチレン系共重合体及び酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの分散状態が変化することに基づく。
【0027】
本発明において、樹脂組成物中や樹脂複合材料中の有機化クレーの状態は、その層構造が消失し、単層で分散していることが好ましく、この状態では、有機化クレーによる補強効果が増加するため、樹脂組成物や樹脂複合材料の機械特性、難燃性などが向上する。
本発明において、樹脂組成物中や樹脂複合材料中における有機化クレーの状態は、X線回折、透過型電子顕微鏡などで観察することができる。
【0028】
図1は、本発明の樹脂複合材料の倍率1万の透過型電子顕微鏡写真を表す。写真中、黒く見える部分(島状部分)が、有機化クレー、エチレン系共重合体及び酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを表し、白っぽく見える部分(黒い部分以外の地の部分)が、ポリオレフィンを表す。
本発明の樹脂複合材料中の有機化クレーの層間距離は、図1に示した透過型電子顕微鏡による観察やX線回析などにより算出することができる。
X線回折の場合には、層間距離をdとした場合、2dsinθ=λにより算出することができる。
【0029】
本発明の樹脂複合材料中の有機化クレーの層間距離は4nm以上であることが好ましい。
また、樹脂複合材料中におけるエチレン系共重合体と酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの分散粒径は、透過型電子顕微鏡の観察から最大分散相の平均径{ (長径+短径)/2 }から算出することができる。
本発明の樹脂複合材料中のエチレン系共重合体と(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの分散粒径が3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0030】
本発明において、エチレン系共重合体と有機化クレーからなる樹脂組成物(I)中では、有機化クレーは、完全に単層で分散しておらず、部分的に凝集体が存在する。
このため、樹脂組成物(I)は、有機化クレーが配合されていないエチレン系共重合体と比較すると、難燃性の向上がみられるが、有機化クレーの配合量が増加した場合、機械特性(低温雰囲気での耐衝撃性)が低下する問題がある。
【0031】
これに対して、本発明における酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと有機化クレーからなる樹脂組成物(II)中では、有機化クレーは単層で分散しており、凝集体はみられない。
このため、樹脂組成物(II)は、有機化クレーが配合されていない酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと比較すると、難燃性、機械特性の向上がみられ、有機化クレーの配合量が増加した場合においても、樹脂組成物(I)のように、機械特性(低温雰囲気での耐衝撃性)が低下する問題はみられないが、樹脂組成物(I)と比較すると難燃性の点で劣っている。
【0032】
これら樹脂組成物(I)及び(II)を含有する樹脂複合材料は、含有樹脂および樹脂組成物が有する特性を示す傾向があるが、その特性は樹脂複合材料中における樹脂組成物の分散状態に大きく左右される。以下に、図面に従い説明する。
図2は、下記実施例の項に示した比較例5のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料の倍率1万の透過型電子顕微鏡写真である。写真中、黒く見える部分が、有機化クレー及びエチレン系共重合体を表し、白っぽく見える部分(黒い部分以外の地の部分)が、ポリプロピレンを表す。図2から、ポリプロピレン系樹脂中でエチレン系共重合体の分散相が連続していることがわかる。
【0033】
一般に、エチレン系共重合体に樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料では、樹脂組成物(I)が有する特性(難燃性の向上及び機械特性の低下)を示す。しかし、ポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料では、難燃性は向上するものの、機械特性は著しく低下する。
この樹脂複合材料(ポリプロピレン系樹脂+樹脂組成物(I))の難燃性の向上は、ポリプロピレン系樹脂に比べ難燃性が高いエチレン系共重合体を含有させた効果と、そのエチレン系共重合体が有機化クレーを含有している効果とが考えられる。機械特性の著しい低下は、図2からわかるように、ポリプロピレン系樹脂中におけるエチレン系共重合体の分散状態が低いことと、そのエチレン系共重合体が有機化クレーを含有していることが原因と考えられる。
【0034】
図3は、下記実施例の項に示した比較例6のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(II)を含有させた樹脂複合材料の倍率1万の透過型電子顕微鏡写真である。写真中、黒く見える部分(島状部分)が、有機化クレー及び酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを表し、白っぽく見える部分(黒い部分以外の地の部分)が、ポリプロピレンを表す。図3から、ポリプロピレン系樹脂中でスチレン系熱可塑性エラストマーの分散相が連続しているが、エチレン系共重合体ほどではないことが分かる。
したがって、上述のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料に対し、ポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(II)を含有させた樹脂複合材料では、難燃性の向上のほかに、機械特性の向上がみられる。
これは、図3から明らかなように、ポリプロピレン系樹脂中における樹脂組成物(II)の分散状態が向上している効果と、樹脂組成物(II)中において有機化クレーが単層で分散している効果が考えられる。
樹脂複合材料の難燃性については、下記実施例の項に示した比較例5及び6の比較から明らかなように、比較例6の酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーよりエチレン系共重合体の方が優れていることから、樹脂組成物(I)を含有させた材料の方が優れており、機械特性については、樹脂複合材料中における分散粒径の違いから、樹脂組成物(II)を含有させた材料の方が優れている。
【0035】
本発明の樹脂複合材料は、樹脂組成物(I)及び(II)を併用したもので、樹脂組成物(I)を単独で使用した場合にみられるような有機化クレーの凝集体はみられず、樹脂組成物(II)の分散粒径は樹脂組成物(II)を単独で使用した場合より小さくなり、その結果、樹脂複合材料の機械特性、難燃性が向上する。
前述の図1から明らかなように、ポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)及び(II)を添加した樹脂複合材料では、有機化クレーの凝集体はみられず、樹脂組成物(I)、(II)をそれぞれ単独でポリプロピレン系樹脂に添加した材料にみられた樹脂組成物(I)、(II)の分散相の連続もみられない。
樹脂組成物(I)、(II)の分散相の径も小さくなっていることから、樹脂複合材料の機械特性、難燃性が著しく向上する。
【0036】
通常、ポリプロピレン系樹脂中において、有機化クレーは単層で分散しないことから、本発明のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)及び(II)を添加した樹脂複合材料は、ポリプロピレン系樹脂に有機化クレーが単層で分散している樹脂組成物に非常に近い材料になっていると考えられる。この結果、優れた機械特性と難燃性を示す。
【0037】
本発明において、樹脂組成物又は樹脂複合材料は、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練装置で溶融混練することが可能である。
混練装置については、特に限定しないが、樹脂組成物の作成については、有機化クレーの分散性が向上することから、二軸押出機の使用が好ましく、樹脂複合材料の作成については、添加剤(難燃剤、難燃助剤、充填剤、酸化防止剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、架橋助剤、架橋剤、顔料など)の配合が容易であることから、バンバリーミキサー、ニーダーなどが好ましい。
また、本発明の樹脂複合材料は架橋することもできる。
架橋の方法は特に制限はなく、化学架橋法でも電子線架橋法でも行なうことができる。
【0038】
また、本発明の絶縁電線は、上記樹脂複合材料を、通常の電線製造用押出成形機を用いて導体周囲に押出被覆することにより製造することができる。
本発明の絶縁電線は、その絶縁体を架橋することもできる。
本発明の絶縁電線の導体径や導体の材質などは特に制限はなく、用途に応じて適宜定められる。
絶縁体の厚さも特に制限はなく、通常のものと同様でよい。
また、絶縁体と導体の間に中間層を設けるなど、絶縁体が多層構造のものであってもよい。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1及び比較例1〜7
樹脂組成物(I)及び(II)は、それぞれ日本製鋼所製の二軸押出機を用い、設定温度90〜140℃、押出量10kg/時間で樹脂と有機化クレーとを溶融混練することで得た。実施例1及び比較例1〜7の樹脂組成物及び樹脂複合材料は、森山製作所製の加圧双腕型ニーダーを用い、200℃で10分間樹脂及び樹脂組成物と酸化防止剤、滑剤とを溶融混練することで得た。
【0041】
表1及び2に実施例および各比較例の樹脂組成物及び樹脂複合材料の配合と物性を示す。なお、下記表1及び2では、樹脂組成物及び樹脂複合材料の各成分の配合量を質量部で示した。
各表(表3も含む)に示す成分として、以下のものを使用した。
(01)エチレン系共重合体
エバフレックスV527−4(商品名、三井・デュポン製)
MFR 0.7g/10min.(190℃、2.16kgf)
(02)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー
クレイトンFG1901X(商品名、クレイトンポリマー製)
MFR 6.4g/10min.(230℃、2.16kgf)
(03)有機化クレー
エスベンN400(商品名、ホージュン製)
1000℃強熱減量 39%
(04)有機化クレー
NanomerI.30TC(商品名、NANOCOR製)
1000℃強熱減量 35%
(05)ポリプロピレン
E−150GK(商品名、出光石油化学製)
MFR 0.6g/10min.(230℃、2.16kgf)
(06)ポリプロピレン
PS201A(商品名、サンアロマー製)
MFR 0.5g/10min.(230℃、2.16kgf)
(07)酸変性ポリプロピレン
アドテックスER313−E1(商品名、日本ポリオレフィン製)
MFR 1.8g/10min.(230℃、2.16kgf)
(08)金属水和物(水酸化マグネシウム)
キスマ5J(商品名、協和化学製)
(09)酸化防止剤
イルガノックス1010(商品名、チバガイギー製)
(10)滑剤
ネオワックスACL(商品名、ヤスハラケミカル製)
(11)滑剤
ステアリン酸カルシウム(日本油脂製)
【0042】
得られた樹脂組成物及び樹脂複合材料について、以下の試験を行なった。その結果を表2に示す。
○機械特性1(低温雰囲気での耐衝撃性)
厚さ2mmのプレスシートを作成し、JIS K7216に則り、破壊個数/試験個数が0/5となる最低温度を10℃間隔で調査した。当該最低温度が、高い方が一般に耐衝撃性に劣る。
○機械特性2(引張強度及び伸び)
比較例1〜4については、厚さ1mmのプレスシートを作成し、JIS K7113 2号ダンベルで打ち抜いた試料について、引張強度(MPa)及び伸び(%)を、標線25mm、引張速度200mm/min.で測定した。
実施例1及び比較例5〜7については、外径1.25mm、内径0.85mmのチューブを作成し、引張強度(MPa)及び伸び(%)を、標線 25mm、引張速度200mm/min.で測定した。
【0043】
○難燃性(酸素指数)
厚さ3mmのプレスシートを作成し、JIS K7201の酸素指数試験装置を使用して、酸素指数20.2(O2容量%)及び21.1(O2容量%)における50mm延焼時間を測定し、最小値と最大値を記した。
なお、サンプルが溶融せず、延焼時間の長い場合は、一般に難燃性が高い。
【0044】
○分散性1(XRD)
厚さ0.5mmのプレスシートを作成し、X線回折装置(理学電機製)を用い、X線回折により、樹脂複合材料中における有機化クレーの層間距離の変化を調査した。
有機化クレーの回折角度と樹脂組成物、樹脂複合材料の回折角度を比較して、樹脂組成物、樹脂複合材料の回折角度が低角側にシフトしているものを△、回折角度が消失しているものを○とした。
○分散性2(TEM)
樹脂複合材料について、透過型電子顕微鏡(日立製)の観察を行なった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
透過型電子顕微鏡の観察(分散性2)において、比較例5〜7については、それぞれ前述の図2〜4に示すような観察結果が得られ、分散相が連続していることから、分散粒径の算出は不可能であった。一方、実施例1は、前述の図1に示すような観察結果が得られ、分散粒径2.5μmであった。
表2の結果から明らかなように、比較例1のエチレン系共重合体と有機化クレーからなる樹脂組成物(I)は、比較例2の有機化クレーが配合されていないエチレン系共重合体と比較すると、難燃性の向上がみられたが、有機化クレーの配合量の増加により、機械特性(低温雰囲気での耐衝撃性)が低下した。
【0048】
一方、比較例3の酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと有機化クレーからなる樹脂組成物(II)は、比較例4の有機化クレーが配合されていない酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと比較すると、難燃性、機械特性の向上がみられ、有機化クレーの配合量の増加による、機械特性(低温雰囲気での耐衝撃性)が低下する問題はみられなかった。
比較例5のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料では、難燃性は向上するものの、機械特性は著しく低下していた。
比較例6のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(II)を含有させた樹脂複合材料では、難燃性、機械特性の向上がみられた。難燃性については、比較例5の樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料の方が優れており、機械特性については、比較例6の樹脂組成物(II)を含有させた樹脂複合材料の方が優れていた。
しかし、比較例1〜7はいずれも、本発明の樹脂複合材料に比べ、機械特性と難燃性のいずれか一方が劣る。これに対し、実施例1に示される本発明の樹脂複合材料は、機械特性と難燃性いずれにおいても優れていた。
【0049】
実施例2〜4及び比較例8〜12
次に、有機化クレー及び金属水和物を併用した場合の樹脂複合材料の実施例を示す。溶融混練装置や混練条件などは上記の実施例1で述べたのと同様に行なった。
実施例1と同様に樹脂組成物(I)及び(II)を調製した。続いて、実施例2〜4及び比較例8〜9の複合材料は、樹脂組成物及びポリプロピレンと金属水和物と酸化防止剤、滑剤とを実施例1と同様に溶融混練することで得た。ただし、実施例3の場合は、樹脂組成物(II)は酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に有機化クレー15質量部を配合したものであり、実施例4の場合は、樹脂組成物(I)、(II)は樹脂100質量部に有機化クレー20質量部を配合したものである。
【0050】
また、比較例10、11の複合材料は、樹脂組成物を調製しないで、樹脂複合材料を得たものである。比較例10の場合は、各樹脂と有機化クレー、金属水和物、酸化防止剤、滑剤とを溶融混練することで、比較例11の場合は、有機化クレーを配合しないで比較例10と同様にして樹脂複合材料を得たものである。
比較例12は各樹脂と有機化クレーを二軸押出機で溶融混練して調製した樹脂組成物と金属水和物、酸化防止剤、滑剤とを溶融混練することで得た。
表3に実施例2〜4、比較例8〜12の樹脂複合材料の成分とその配合量(質量部で示す)および次の試験によるその樹脂複合材料と絶縁電線の物性を示す。
【0051】
得られた樹脂複合材料のプレスシートについて、以下の試験を行なった。
○耐熱性(加熱変形)
厚さ2mmのプレスシートを作成し、JIS K6720に則り、試験温度160℃、試験荷重1kgfとして、変形率を調査した。
○機械特性1(低温雰囲気での耐衝撃性)
実施例1で述べたと同様に、厚さ2mmのプレスシートを作成し、JIS K7216に則り、破壊個数/試験個数が0/5となる最低温度を10℃間隔で調査した。
○難燃性(UL94)
厚さ3mmのプレスシートを作成し、UL94HBに則り、炎がサンプルの100mmの標識表示に達する前に消えるものを自消性とし、100mmを過ぎた場合を×とした。
【0052】
次に、得られた複合材料を汎用の電線製造用押出成形機で、導体径0.8mmφの軟銅線上に、厚み0.2mmで押出被覆して、絶縁電線を作成した。
得られた絶縁電線(ワイヤー)について、以下の試験をおこなった。
○引張特性
得られた絶縁電線の絶縁体の引張強度(MPa)、引張伸び(%)を、標線50mm、引張速度50mm/min.で測定した。
○難燃性(水平試験)
JIS C3005に規定される水平試験をおこない、15秒以内に炎が消えたものを合格とし、15秒以上燃えたもの不合格とした。
○共存性試験1
得られた絶縁電線1本の周囲にPVC電線5本を縦添えに接触させるようにテープで固定した状態で、140℃の恒温槽に投入し、96時間後に取り出した後、自己径(1.2mmφ)巻付試験を行い、クラックが発生しなかったものを合格とし、クラックが発生し、導体が露出したものを不合格とした。
○共存性試験2
得られた絶縁電線をゴムグロメット内部に挿入し、電線とゴムグロメットとを接触させるようにテープで固定した状態で、140℃の恒温槽に投入し、48時間後に取り出した後、自己径(1.2mmφ)巻付試験を行い、クラックが発生しなかったものを合格とし、クラックが発生し、導体が露出したものを不合格とした。
【0053】
【表3】
【0054】
表3の結果が示すように、比較例5、6に金属水和物(水酸化マグネシウム)を配合した比較例8、9よりも本発明の実施例2〜4に示される樹脂複合材料は、優れた耐熱性、機械特性を示し、難燃性も十分な樹脂複合材料である。
これらの樹脂複合材料で導体を被覆した絶縁電線は、優れた引張特性、難燃性を示し、PVC絶縁電線やゴムグロメットなど、異種材料からなる部品と共存させた場合の耐熱性にも優れている。
本発明の範囲外のものである比較例10では機械特性1(耐寒性)、引張特性及び難燃性、比較例11では難燃性に問題がある。また、比較例12では機械特性1(耐寒性)異種材料からなる部材と共存させた場合の耐熱性に問題がある。
【0055】
【発明の効果】
本発明の樹脂複合材料及び絶縁電線は、ポリオレフィンと、エチレン系共重合体と有機化クレーを配合した樹脂組成物、酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと有機化クレーを配合した樹脂組成物からなり、ポリオレフィン、特に、ポリプロピレン系樹脂の機械特性、難燃性などを改良した樹脂複合材料及び絶縁電線の提供が可能となる。
また、本発明の樹脂複合材料、絶縁電線は、ポリオレフィンを樹脂の主成分として使用していることから、従来のノンハロゲン難燃組成物、ノンハロゲン難燃電線と比較して、引張特性や耐熱性が優れている。
さらに、エチレン系共重合体、酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと有機化クレーを使用することにより、従来のノンハロゲン難燃組成物、ノンハロゲン難燃電線と比較して、少量の金属水和物の添加で難燃性を付与することが可能となり、多量の金属水和物を添加したノンハロゲン難燃組成物を使用した部材や絶縁電線の問題である軽量化や成形加工性の向上が可能となる。
また、本発明の樹脂複合材料、絶縁電線は、PVCテープやPVC絶縁電線、ゴムグロメットなどの異種材料と接触した状態での耐熱寿命に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の樹脂複合材料の倍率1万の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、比較例5のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(I)を含有させた樹脂複合材料の倍率1万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、比較例6のポリプロピレン系樹脂に樹脂組成物(II)を含有させた樹脂複合材料の倍率1万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、比較例7の有機化クレーを含有しない樹脂組成物の倍率1万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
Claims (8)
- (a)ポリオレフィン20〜80質量%、(b)エチレン系共重合体10〜40質量%及び(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー10〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対して、(d)有機化クレー4〜10質量部を含有させてなる樹脂複合材料。
- (a)ポリオレフィン20〜80質量%、(b)エチレン系共重合体10〜40質量%及び(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー10〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対して、(d)有機化クレー4〜10質量部及び(e)金属水和物40〜120質量部を含有させてなる樹脂複合材料。
- 前記樹脂複合材料中の前記(b)エチレン系共重合体と前記(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの分散粒径が3μm以下であり、前記(d)有機化クレーの層間距離が4nm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂複合材料。
- 前記(a)ポリオレフィン20〜80質量部に、前記(b)エチレン系共重合体100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(I)10〜40質量部と、(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(II)10〜40質量部とを溶融混練することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂複合材料。
- 前記(a)ポリオレフィンが(f)ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂複合材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の複合材料で導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線。
- 前記(a)ポリオレフィン20〜80質量部に、前記(b)エチレン系共重合体100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(I)10〜40質量部と、(c)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して(d)有機化クレー5〜20質量部配合した樹脂組成物(II)10〜40質量部とを溶融混練することを特徴とする請求項1〜5記載の樹脂複合材料の製造方法。
- 前記(a)ポリオレフィンが(f)ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項7記載の樹脂複合材料の製造方法。
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