JP2004338364A - ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法及び製造装置、並びに形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム - Google Patents

ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法及び製造装置、並びに形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 薄膜でありながら膜厚の均一性、熱収縮率及び機械的強度に優れたポリブチレンテレフタレートフィルムを製造する方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】 インフレーションダイから押し出した溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂のチューブを空気の注入により膨張させる空冷インフレーション法によりポリブチレンテレフタレートフィルムを製造する方法において、押出樹脂圧力を85〜140 kg/cm2 とし、かつ押出樹脂温度を上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点−15℃〜上記融点−5℃とする方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、薄膜でありながら膜厚の均一性、耐熱収縮性及び機械的強度に優れたポリブチレンテレフタレートフィルムを製造する方法及び装置、並びにそのポリブチレンテレフタレートフィルムを有する包装材として有用な形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムに関する。
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性、電気的性質等に優れているため、従来からエンジニアリング用プラスチックとして注目され、自動車部品、電気・電子部品等の射出品として使用されてきた。PBTはまたガスバリア性や保香性にも優れているので、膜厚の均一性や耐熱収縮性に優れた薄いPBTフィルム又はそれを含む積層フィルムができれば、包装材として有用である。しかしPBTには、(a) 結晶化した後に例えば長手方向に延伸すると、その後横方向への延伸ができず、(b) 溶融張力が低いため、急速な延伸ができず、(c) ガラス転移温度が常温に近いためフィルム皺が発生しやすいといった問題がある。そのため、ポリブチレンテレフタレート樹脂を10〜30μm程度で均一な厚さを有するきれいな包装用フィルムに成形するのは極めて困難である。
Tダイ法により作製した未延伸フィルムに二軸延伸を施してPBTフィルムを製造する方法として、特開昭49-80178号は所定の温度で未延伸フィルムを同時二軸延伸する方法を提案しており、特公昭51-40904号及び特開昭51-146572号は所定の温度と速度で未延伸フィルムを逐次二軸延伸する方法を提案している。しかしこれらの方法は、溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂を急冷することにより作製した未延伸フィルムを二軸延伸するために、加工工程が複雑であり、得られるフィルムの熱収縮率も大きかった。ポリブチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸を容易にするために、他の樹脂フィルムと積層する方法、ポリエチレン、ポリプロピレン等の相溶性の良い樹脂をブレンドする方法等が提案されているが、いずれの方法でも包装フィルムとして最適な10〜30μm程度の膜厚まで薄膜化するのは困難であった。
一般的にTダイ法に比較してインフレーション成形法は生産性が高く、薄いフィルムの製造に適している。しかしインフレーション成形法で製造したポリブチレンテレフタレートフィルムには、膜厚ムラが多く、熱収縮率が大きいという問題がある。例えば、特公平7-33048号(特許文献1)は、固有粘度が1.0以上のPBT樹脂を押出樹脂温度が下式:
融点(℃)<押出樹脂温度(℃)<融点−26+53×固有粘度(℃)
を満たすようにインフレーション成形法によりフィルム化する方法を提案している。しかしこの方法では、押出樹脂温度及び押出樹脂圧力の組合せの最適化がなされておらず、得られるPBTフィルムは比較的大きな熱収縮率を有する。
PBTはポリエステルの一種であるが、もう1つの代表的なポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)がある。PETフィルムは優れたガスバリア性、熱に対する寸法安定性、充填機適性(カールがないこと)等の特性を有するので、PETフィルムを含む積層フィルムは、例えば即席食品用容器の蓋材として使用されている。しかしながらPETフィルムは腰強度が大きいので、蓋体を開封した状態に維持する性質(デッドホールド性)に乏しい。そのため蓋体は開封後に簡単に閉じてしまい、熱湯が注ぎ難くいという問題がある。
即席麺用容器等に用いる蓋材を構成する積層フィルムには、容器にシールする時にカールしていないこと、及び容器から剥がした時にはカールした状態を維持する(デッドホールド性を有する)ことが求められる。通常蓋材は容器にヒートシールされるので、ヒートシール前はカールせず、ヒートシール時の熱によりカールする形状記憶性があれば、非常に有用である。
しかし形状記憶性を有する積層フィルムからなる包装材料は今まで知られていない。一般に形状記憶性を有する樹脂は、ガラス転移点前後での弾性率変化が大きい。形状記憶機構は、例えば(1) まず任意の形状Mに成形し、その形状Mの状態で加熱して結晶化(結晶部分の絡み合い)あるいは分子間架橋によって固定点を生じさせて形状を記憶させ、(2) 次いでガラス転移点以上で上記加熱温度未満の温度で外力を加えて形状Nに変形し、そのままガラス転移点未満の温度にすることにより形状Nに固定すると、(3) ガラス転移点以上に加熱することにより、外力を加えることなく形状Mに回復するというものである。PETは形状記憶性を有するものの、ガラス転移温度が約70〜80℃であるため、形状回復に要する温度が高過ぎる。
これに対して、PBTは約20〜45℃のガラス転移温度を有するので、実用的な温度での形状記憶性を利用できる包装材となり得る。例えば特開平2-123129号(特許文献2)は、PBTと脂肪族ポリラクトンとのブロック共重合体からなる形状記憶性樹脂を記載している。また特開平2-269735号(特許文献3)は、結晶融解エントロピーが3cal/g 以下となるように第3成分と共重合したポリエチレンテレフタレートからなる形状記憶性共重合ポリエステル成形体を記載している。さらに特開平2-240135号(特許文献4)は、PBTとポリエチレングリコールとのブロック共重合体からなる形状記憶性樹脂を記載している。しかしこれらの文献はいずれもPBT系形状記憶性樹脂をフィルム化していない。
特公平7-33048号公報 特開平2-123129号公報 特開平2-269735号公報 特開平2-240135号公報
従って、本発明の目的は、薄膜でありながら膜厚の均一性、耐熱収縮性及び機械的強度に優れたポリブチレンテレフタレートフィルムを製造する方法及び装置を提供することである。
本発明のもう1つの目的は、優れた形状記憶性と耐熱寸法安定性を有するポリブチレンテレフタレート積層フィルムを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は以下のことを発見した。
(A) ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を空冷インフレーション成形法によりフィルム化するPBTフィルムの製造方法において、押出樹脂温度をPBT樹脂の融点−15℃〜前記融点−5℃とし、かつ押出樹脂圧力を8.3〜13.7 MPaとすることにより、薄膜でありながら膜厚の均一性、耐熱収縮性及び機械的強度に優れたPBTフィルムを製造できる。
(B) (1) 上記PBTフィルムと他のフィルム又はフィルム積層体とを積層してなる積層フィルムを、第一の形状に保持しながらPBTフィルムのガラス転移温度Tg以下の温度T1で賦形処理し、(2) 得られた賦形積層体を、Tgを超える温度T2で第二の形状に変形加工し、(3) Tg以下の温度T3まで冷却することにより、優れた形状記憶性と耐熱寸法安定性を有するPBT積層フィルムが得られる。
(C) (1) (i) 上記PBTフィルムと他のフィルム又はフィルム積層体との積層フィルムを予め作製し、これを第一の形状に保持しながらTg超〜融点未満の温度T4で賦形処理するか、(ii) 上記PBTフィルムを第一の形状に保持しながら前記温度T4で賦形処理した後他のフィルム又はフィルム積層体と積層することにより第一の形状を有する積層フィルムを作製し、(2) 得られた賦形積層体をTg以下の温度T5まで冷却して第一の形状に固定し、(3) 次いで前記賦形積層体を、前記Tg超〜前記温度T4未満の温度T6で第二の形状に変形加工した後、(4) Tg以下の温度T7まで冷却して第二の形状に固定することにより、優れた形状記憶性と耐熱寸法安定性を有するPBT積層フィルムが得られる。
本発明はかかる発明に基づき完成したものである。
すなわち、本発明のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法は、空冷インフレーション法により環状ダイから押し出した溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂のチューブを空気の注入により膨張させるもので、押出樹脂温度を前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点−15℃〜前記融点−5℃とし、かつ押出樹脂圧力を8.3〜13.7 MPaとすることを特徴とする。
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は0.8〜1.5であるのが好ましい。前記ポリブチレンテレフタレート樹脂はポリオレフィン及び/又はエラストマーを5〜15質量%含むのが好ましい。ダイリップの間隙は0.8〜1.2 mmであるのが好ましく、ダイ径は120〜250 mmであるのが好ましい。ブローアップ比は2.0〜4.0であるのが好ましい。ブローアップ比を2.0〜4.0とすることによりバブルを長手方向及び横方向に同時にバランス良く延伸することができる。
本発明のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、(1) 前記環状ダイの付近に設けられた第一温風吹出装置から温風を噴出させることにより、前記バブルのネック部を前記融点−40℃〜前記融点−25℃に徐冷し、(2) 前記第一温風吹出装置の上方に設けられた第二温風吹出装置から温風を噴出させることにより、前記バブルの膨張部を前記融点−70℃〜前記融点−40℃に徐冷し、(3) 前記第二温風吹出装置の上方に設けられた第三温風吹出装置から温風を噴出させることにより、前記バブルのフロストライン領域を前記融点−130℃〜前記融点−90℃に徐冷し、(4) 前記フロストラインより上方のバブル領域の周囲に間隙をもって設けた隔壁により、前記バブル領域を外部雰囲気から遮断するとともに、前記第一〜第三温風吹出装置から噴出した温風を前記バブル領域の外面に沿って吹き上げるのが好ましい。
前記隔壁に複数の温風排出口を設けるとともに、前記第一〜第三温風吹出装置から噴出した温風を整流するために、前記隔壁の内側に整流板を設けるのが好ましい。前記第二温風吹出装置から噴出した温風により、前記バブルの膨張部は非晶質状態に保持されながら徐冷される。前記バブル領域を前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度Tg乃至Tg+65℃の温度に保持するために、前記隔壁に加熱手段を設けるのが好ましい。
前記バブルの横揺れを防止するために、前記バブル領域を円筒状ネットで包囲するのが好ましい。前記第一及び第二温風吹出装置から噴出させる温風の温度は25〜50℃であるのが好ましい。前記第三温風吹出装置から噴出させる温風の温度は前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度Tg乃至Tg+65℃の温度であるのが好ましい。
本発明の空冷インフレーション法により得られたフィルムは、結晶化度が35〜40%であり、長手方向及び幅方向の熱収縮率が0.4%以下である。
得られた空冷インフレーションフィルムはさらに一軸又は二軸に冷延伸してもよい。これにより膜厚の均一性及び透明性が一層向上する。冷延伸は前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度Tg乃至Tg+60℃の温度で行うのが好ましい。空冷インフレーション法によるチューブ状フィルムの形成と前記一軸又は二軸の冷延伸とは、連続的に行うのが好ましい。得られたチューブ状フィルムを二分割した後で一軸又は二軸に冷延伸しても良い。空冷インフレーション法によるチューブ状フィルムの形成、前記チューブ状フィルムの二分割、及び前記一軸又は二軸の冷延伸は連続的に行うのが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置は、(a) 溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂をチューブ状に押し出す環状ダイと、(b) 得られたポリブチレンテレフタレートチューブ内に空気を注入してバブルを形成する手段と、(c) 前記環状ダイの付近に設けられ、前記バブルのネック部を徐冷する第一温風吹出装置と、(d) 前記第一温風吹出装置の上方に設けられ、前記バブルの膨張部を徐冷する第二温風吹出装置と、(e) 前記第二温風吹出装置の上方に設けられ、前記バブルのフロストライン領域を徐冷する第三温風吹出装置と、(f) 前記第三温風吹出装置の上方で、かつ前記フロストラインより上方のバブル領域の周囲に設けられ、前記バブル領域を外部雰囲気から遮断するとともに、前記第一〜第三温風吹出装置より噴出した温風を前記バブル領域の外面に沿って吹き上げるための隔壁とを具備し、前記隔壁は複数の温風排出口を有することを特徴とする。
本発明の製造装置において、前記隔壁の内側に整流板が設けられているのが好ましい。前記バブルの横揺れを防止するために、前記隔壁の内側に前記バブル領域を包囲する円筒状ネットを設けるのが好ましい。前記第二温風吹出装置から噴出した温風により前記バブルの膨張部を非晶質状態で徐冷するのが好ましい。得られた空冷インフレーションフィルムを冷延伸する手段をさらに有するのが好ましい。
前記環状ダイ、前記空気注入手段、前記第一温風吹出装置、前記第二温風吹出装置、前記第三温風吹出装置及び前記隔壁を有する空冷インフレーション手段と、前記冷延伸手段とは、空冷インフレーションフィルムの流れに沿って連続的に配置されているのが好ましい。
本発明の製造装置は、前記空冷インフレーション手段により形成されたチューブ状フィルムを引き取るニップロールを具備するとともに、前記空冷インフレーション手段と前記冷延伸手段との間に、(a) 前記ニップロールにより引き取られたシート状の前記チューブ状フィルムの耳端位置(エッジポジション)を制御する装置と、(b) 前記耳端位置が制御された前記チューブ状フィルムを二分割する切断手段とをさらに有し、前記空冷インフレーション手段と、前記エッジ・ポジション制御装置と、前記切断手段と、前記冷延伸手段とがこの順に連続しているのが好ましい。
本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムは、(1) 本発明の製造方法により得られるポリブチレンテレフタレートフィルムと、(2) 紙シート、他の樹脂フィルム及び金属箔からなる群から選ばれた少なくとも一種からなる他のフィルム又はフィルム積層体とを有し、所定の温度域で第一の形状を記憶させたことを特徴とする。
本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムは、前記所定の温度域と異なる温度域で第二の形状に変形加工されても、前記第一の形状を記憶させた温度以上に曝されると、実質的に前記第一の形状に戻る。
本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムの好ましい例では、前記第一の形状に戻る温度は、前記ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度以下である。前記第一の形状に戻る温度は15〜25℃であるのがより好ましい。
本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムの別の好ましい例では、前記第一の形状に戻る温度は、前記ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度超〜融点未満である。前記第一の形状に戻る温度は75〜100℃であるのがより好ましい。
前記第一の形状はカール形状であるのが好ましく、前記第二の形状はほぼ平坦な形状又は逆カール形状であるのが好ましい。
前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの少なくとも一面に多数の実質的に平行な線状痕を全面的に形成するのが好ましく、これにより形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムを前記線状痕に沿って実質的に直線的に裂くことができる。前記線状痕の深さは前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの厚さの1〜40%であるのが好ましい。具体的には、前記線状痕の深さは0.1〜10μmであり、前記線状痕の幅は0.1〜10μmであり、かつ前記線状痕同士の間隔は10〜200μmであるのが好ましい。前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの少なくとも一面にセラミック又は金属を蒸着してもよい。
本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムの好ましい層構成の例は、順に、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムと、前記紙シートと、シーラントフィルムとを有するものである。本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムの好ましい層構成の別の例は、順に、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムと、前記紙シートと、剛性フィルムと、シーラントフィルムとを有するものである。本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムの好ましい層構成のさらに別の例は、順に、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムと、剛性フィルムと、シーラントフィルムとを有するものである。前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの前記紙シート側の面か、前記剛性フィルムの前記シーラントフィルム側の面に遮光性インク層を設けても良い。
本発明の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムは、包装材として有用であり、特に容器用蓋体を構成する包装材として有用である。
本発明の空冷インフレーション成形法によるポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法は、押出樹脂温度をPBT樹脂の融点−15℃〜前記融点−5℃とし、かつ押出樹脂圧力を8.3〜13.7 MPaとするので、得られるフィルムは、その結晶化度が高く、薄膜でありながら膜厚の均一性、熱収縮率及び機械的強度に優れる。このため本発明のポリブチレンテレフタレートフィルムは、各種包装材、包装袋、即席食品用容器の蓋材等の用途に好適である。
特に本発明の空冷インフレーション成形法により得られたポリブチレンテレフタレートフィルムと、紙シート、他の樹脂フィルム及び金属箔からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む他のフィルム又はフィルム積層体とを有し、所定の温度域で形状を記憶させた形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムは、優れた形状記憶性と耐熱寸法安定性を有し、即席食品用容器の蓋材用途に好適である。
[1] ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法
(I) 原料ポリブチレンテレフタレート樹脂
原料とするポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂に特に制限はないが、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とを構成成分とするホモポリマーからなるのが好ましい。但し形状記憶性、熱収縮性等の物性を損なわない範囲で、1,4-ブタンジオール以外のジオール成分、又はテレフタル酸以外のカンボン酸成分を共重合成分として含んでいてもよい。そのようなジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンメタノール等が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられる。好ましいPBT樹脂の具体例としては、例えば東レ(株)から商品名「トレコン」として市販されているホモPBT樹脂を挙げることができる。
PBT樹脂はPBTのみからなる場合に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲で目的に応じて他の熱可塑性樹脂を含有しても良い。他の熱可塑性樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリアミド(PA);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;エラストマー等を挙げることができる。特にPBT樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及び/又はエラストマーを含有していると、溶融粘度及びメルトテンションが高くなるので、フィルム製造時の成膜性が向上するとともに、得られるフィルムの機械的強度やヒートシール性が向上するので好ましい。中でもPBT樹脂はポリエチレンを含むのが好ましい。他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その割合はPBT樹脂全体を100質量%として、5〜15質量%であるのが好ましく、5〜10質量%であるのがより好ましい。従って、特に断りがない限り、本明細書において使用する用語「ポリブチレンテレフタレート樹脂」は、PBT単体、及びPBT+他の熱可塑性樹脂の組成物の両方を含むものと理解すべきである。
PBTフィルムの分子量は、比較的高いのが好ましい。分子量が高い程、環状ダイから押し出した溶融PBT樹脂のチューブを空気の注入により膨張させてバブルを形成した際に、バブルの膨張部を非晶質状態に保持しやすい。具体的には、PBTフィルムのIV値(極限粘度)は0.8〜1.5であるのが好ましい。
PBT樹脂には一般の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、すなわち可塑剤、酸化肪止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料や顔料等の着色剤、流動性の改善のための潤滑材、結晶化促進剤(核剤)、無機充填材等も要求性能に応じ適宜使用することができる。
(II) 空冷インフレーション成形
図1は、本発明の空冷インフレーション成形法によるPBTフィルムの製造方法の工程を示す。押出機12に取り付けられた環状ダイ1から押出したチューブ状フィルムは、空気注入管26から内部に空気を送り込むことにより急激に所定の幅のフィルムに膨張させ、引取り機ニップロール13に挟むことにより引き取り、巻き取りリール14により巻き取る。環状ダイ1は環状のダイヘッド10及びウェルド部11を有する。チューブ状フィルムに注入する空気を供給する空気注入手段に特に制限はなく、空気注入管26をブロワーに接続した構成の手段、空気注入管26を圧縮空気ボンベに接続した構成の手段等を挙げることができる。
PBTフィルムを製造するには、まずPBT樹脂及び所望の添加剤などの混練を行う。混練温度及び混練圧力を、後述する押出樹脂温度及び押出樹脂圧力が本発明の範囲となるように調整する。混練温度が必要以上に高くならないように、一軸押出機のような押出機中で混練を行う場合、発熱しないようなスクリュー構造を有するもの、又は適当な冷却装置を有するものを使用する。
PBT樹脂の押出樹脂温度はPBT樹脂の融点(以下特段の断りがない限り単に「融点」と呼ぶ)−15℃〜融点−5℃とし、好ましくは融点−10℃〜融点−5℃とする。なお押出樹脂温度は、押出機12の出口110とダイヘッド10の入口111とを結ぶウェルド部11の樹脂流路内に設けた温度検出器112(熱電対等)により測定したものである。樹脂の押出速度は非常に速いので、押出機12の出口110及びダイヘッド10の出口においてもほぼ融点−15℃〜融点−5℃の温度範囲内であると推定される。但しウェルド部11の構造は図示のものに限られない。例えばPBT樹脂がホモポリマーの場合、その融点は220℃であるので、押出樹脂温度は205〜215℃であり、好ましくは210〜215℃とする。押出樹脂温度を融点−15℃〜融点−5℃とすることにより、結晶化度が高く、かつ膜厚の均一性及び耐熱収縮性に優れたPBTフィルムが得られる。
押出樹脂圧力は8.3〜13.7 MPa(85〜140 kgf/cm2)とする。装置の構成上ダイヘッド10内の樹脂圧力を測定することができないので、押出機出口110に設けた圧力検出器121により測定した圧力を押出樹脂圧力とする。押出樹脂圧力を8.3〜13.7 MPaとすることにより、押出樹脂温度が融点−15℃〜融点−5℃であっても、バブルを形成するために十分な溶融粘度の樹脂を押し出すことができる。押出樹脂圧力は9.3〜11.8 MPa(95〜120 kgf/cm2)とするのが好ましい。押出樹脂圧力は、押出機中のスクリーンパック120のメッシュを変えたり、環状オリフィスの間隙を変えたりすることにより調節することができる。
ダイヘッド10のダイリップの外径は120〜250 mmであるのが好ましく、またダイリップの間隙は0.8〜1.2 mmであるのが好ましい。
環状ダイ1から押し出したバブル3は、冷却装置により徐冷しながらMD(長手方向)のみならずTD(横方向)にも延伸する。図2において、バブル冷却装置は、環状ダイ1の付近に設けられた第一温風吹出装置20と、第一温風吹出装置20の上方に設けられた第二温風吹出装置21と、第二温風吹出装置21の上方に設けられた第三温風吹出装置22と、第三温風吹出装置22の上方に設けられた隔壁23と、隔壁23の内側に設けられた加熱手段24と、隔壁23の内側(バブル3側)に設けられた円筒状ネット25とを有する。なお図2において、15は環状ダイ1の上方に設けられた断熱材を示し、16はガイドロールを示す。
以上の構成の装置において、各温風吹出装置20〜22及び隔壁23の配置は空冷インフレーション成形法により形成されるバブル3の温度コントロールにより決まるので、以下にバブル3の形状及び温度分布について説明する。
ダイ1の環状オリフィス100より溶融したPBT樹脂又はPBT樹脂組成物を押し出して、バブル3を形成するが、押し出した直後のバブル3は、溶融張力が低いために細径状となり、いわゆるネック部31を形成する。ネック部31において、バブル3は主としてMDに延伸される。次にバブル3を急激に膨張させ、所定のバブル径とする。この膨張部32において、バブル3はMD及びTDに同時に延伸される。膨張部32のほぼ上方付近にフロストライン34があり、ここでPBT樹脂は冷却固化状態となる。フロストライン34より上方のバブル領域33に設けられた隔壁23及び加熱手段24により、バブル3はさらに徐冷される。
本発明の如く空冷インフレーション成形法によりPBTフィルムを得るためには、バブル3の各部の温度を以下の通りコントロールする。
(a) 押出樹脂温度を融点−15℃〜融点−5℃に制御。
(b) ネック部31では融点−40℃〜融点−25℃に徐冷。
(c) 膨張部32では融点−70℃〜融点−40℃に徐冷。
(d) フロストライン34の領域では融点−130℃〜融点−90℃に徐冷。
(e) バブル領域33ではPBT樹脂のTg超〜Tg+65℃以下に保持。
上記条件(a)については、上述の通りであるが、条件(b)については、ネック部31で融点−40℃〜融点−25℃に徐冷しないと、次の膨張部32でMD及びTDへの同時二軸延伸を十分に達成することができない。すなわちネック部31で融点−40℃〜融点−25℃に徐冷することにより、膨張部32を融点−70℃〜融点−40℃に徐冷/保持することができる[条件(c)]。PBT樹脂がホモポリマーの場合、ネック部31を180〜195℃に徐冷するのが好ましい。膨張部32を融点−70℃〜融点−40℃に保持しないと、膨張部32で適度な溶融張力を有さず、MDの延伸が主となってしまい、薄膜化できない。膨張部32を融点−70℃未満としてしまうと、結晶化が進行するので、非晶質状態を保持できない。PBT樹脂がホモポリマーの場合、膨張部32を150〜180℃に徐冷するのが好ましい。
このような温度条件を満たすためには、ブローアップ比(バブル径/ダイ径)を2.0 〜4.0にするのが好ましい。特にブローアップ比は2.0 〜2.8にするのが望ましい。
条件(d)について、フロストライン34の領域でのバブル温度を融点−130℃〜融点−90℃に徐冷することにより、バブル3のMD及びTDへの同時二軸延伸を十分に達成することができる。フロストライン34の領域においてバブル温度が融点−130℃より低いと、フィルム皺が発生する恐れがある。PBT樹脂がホモポリマーの場合、フロストライン34の領域を90〜130℃に徐冷するのが好ましい。
条件(e)については、フロストライン34の上方でバブル3をPBT樹脂のTg超〜Tg+65℃以下に保持することにより、フィルム皺の発生を防止でき、かつ均一な薄いバブル3の形成を安定化することができる。好ましくはバブル領域33を90〜110℃に保持する。隔壁23及び加熱手段24を設けずに、バブル領域33の温度をTg以下に保つと、不均一な延伸が起こるおそれがあり、そのためバブル3全体が不安定となる。PBT樹脂のTgは、一般的に22 〜45℃である。TgはJIS K7121に準じて測定した。
本発明においては、図2に示すように、バブル領域33の外周を円筒状ネット25でさらに囲うのが好ましい。これによりバブル領域33の温度を一層安定化することができ、かつバブル3の横揺れを防止することができる。
以上のようなバブル3の温度コントロールを行うために、第一温風吹出装置20、第二温風吹出装置21、第三温風吹出装置22、隔壁23、加熱手段24、及び円筒状ネット25の配置は以下の通りである。
(i) 第一温風吹出装置20
環状ダイ1の直近に設け、ネック部31の温度が融点−40℃〜融点−25℃に徐冷されるように、温風を噴出させる。かかる温風の温度は25〜50℃であるのが好ましい。
(ii) 第二温風吹出装置21
膨張部32の直下に設け、膨張部32の温度が融点−70℃〜融点−40℃に徐冷されるように、温風を噴出させる。かかる温風の温度は25〜50℃であるのが好ましい。
(iii) 第三温風吹出装置22
フロストライン34の直下に設け、フロストライン34の領域の温度が融点−130℃〜融点−90℃に徐冷されるように、温風を噴出させる。かかる温風の温度は、PBT樹脂のTg超〜Tg+65℃以下であるのが好ましい。
(iv) 隔壁23及び加熱手段24
隔壁23は第三温風吹出装置22の上方の位置で、バブル領域33を包囲しかつ第一〜第三温風吹出装置より噴出した温風がバブル領域33の外面に沿って吹き上がるように設ける。加熱手段24は隔壁23の内側に設ける。隔壁23及び加熱手段24を設けることにより、バブル領域33を外部雰囲気(気温・温度等)の影響から遮断し、常にPBT樹脂のTg超〜Tg+65℃以下に保持することができる。
(v) 円筒状ネット25
隔壁23の内側で、バブル領域33を包囲するように設ける。
以上の方法において、第一〜第三温風吹出装置のそれぞれより噴出させるための温風を供給する手段に特に制限はなく、温度コントロール可能なブロワー等を挙げることができる。第一〜第三温風吹出装置のそれぞれより噴出させる温風の流量は、ネック部31、膨張部32及びフロストライン34の領域でのバブル温度がそれぞれ上記の温度範囲となるように適宜調節する。安定した徐冷効果が得られないとバブル3が不安定となるので、温風の温度はできるだけ変化しないようにコントロールする。
隔壁23の材質に特に制限はないが、隔壁23で包囲されたバブル領域33が観察できるようにアクリル樹脂であるのが好ましい。バブル領域33を四方から囲むことができれば隔壁23の形状に特に制限はなく、例えば円筒型構造のものや、直方体型構造のものが挙げられるが、円筒型構造であるのが好ましい。隔壁23の内側に設ける加熱手段24としては、例えば棒状やリボン状の電気ヒーターを挙げることができる。棒状の電気ヒーターは、複数設けるのが好ましい。隔壁23の内面にアルミニウム箔を張り付け、熱放射を遮断できる構成としてもよい。必要に応じて隔壁23の下部(第三温風吹出装置22の直上)に、室温程度の冷風を吹き上げる手段を設けてもよい。これにより隔壁23内側の温度調整が容易となるだけでなく、隔壁23内側の空気流量調整も容易となる。
図2に示すように、隔壁23の上部に温風排出口230を設けるのが好ましい。温風排出口230を設けることにより、第一〜第三温風吹出装置から噴出した温風を整流することができる。このため温風によるバブル3の横揺れを防止することができる。温風排出口230は2個以上設けるのが好ましく、2〜4個設けるのがより好ましい。図2に示す例では、隔壁23の側面231の上部に温風排出口230を設けているが、隔壁23の上面232に設けてもよい。但し温風排出口230の数及び口径は、隔壁23による保温性が損なわれない程度とする。
図2に示すように、隔壁23の内側上部にリング状の整流板28を設けるのが好ましい。整流板28を設けることにより、第一〜第三温風吹出装置から噴出した温風を整流する能力が向上し、バブル3の横揺れ防止性が一層向上する。図2に示すように、整流板28は円筒状ネット25の近傍から隔壁23の内側面近傍まで延在するのが好ましい。整流板28の構造に制限はなく、図2及び図3(a)に示すような一方向に並んだ板材により仕切られた構造のもの、図3(b)に示すような格子状に仕切られた構造のもの、図3(c)に示すような多数の丸孔が設けられたパンチングプレート状のもの、ネット状のもの等が挙げられる。整流板28の開孔率は40〜60%であるのが好ましい。整流板28を構成する材料に特に制限はなく、アルミニウム、合成樹脂等が挙げられる。整流板28の設置枚数にも特に制限はないが、通常は一枚設ければよい。
円筒状ネット25を構成する繊維としては、シルク、綿等の天然繊維、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等のプラスチック繊維、ステンレススチール、銅、黄銅、ニッケル等の金属繊維等を用いることができる。円筒状ネット25としてネット状のものを用いる場合、その網目が5〜20メッシュのものが好ましく、特に8〜10メッシュのものが好ましい。
本発明におけるPBT樹脂の空冷インフレーション成形法による製膜は以上の要件を保持することにより可能であり、他の条件はインフレーション方式の一般的な条件が適用できる。即ちクロスヘッドダイを用いて、上方又は下方にチューブ状溶融PBT樹脂を押出し、端をピンチロールで挟んでその中に空気を送り込んで所定のサイズに膨らませつつ連続的に巻き取り、この間ダイを回転又は反転して偏肉を防止する事もできる。
本発明の製造方法によれば、常にバブルの各部(押し出し直後、ネック部、膨張部、フロストライン領域、バブル領域)がそれぞれ所望の温度に維持されるので、品質が常に均一である。さらに高速製膜が可能である。
(III) 延伸工程
以上説明した空冷インフレーション成形により得られたPBTフィルム(インフレーションPBTフィルム)を、PBT樹脂のTg超〜Tg+60℃以下の温度で、さらに長手方向又は横方向に一軸冷延伸するか、長手方向及び横方向に逐次二軸冷延伸してもよい。これによりインフレーションPBTフィルムをさらに薄膜化でき、かつフィルムの膜厚の均一性及び透明性が向上する。好ましい冷延伸温度は55〜65℃である。かかる一軸冷延伸の延伸率は、長手方向又は横方向に2倍以上とするのが好ましく、2〜6倍とするのがより好ましい。一軸冷延伸を行う場合は、長手方向に行うのが好ましい。かかる逐次二軸冷延伸の延伸率は、面倍率で4倍以上とするのが好ましく、4〜16倍とするのがより好ましい。
一般的にPBTフィルムを、Tg+60℃超の温度で延伸すると、延伸方向に結晶が配向するので、配向方向における引張強度、弾性率、剛性等は大幅に向上する。しかし配向していない方向における強度が低下するので、Tg+60℃超の温度で逐次二軸延伸を行うとフィルムが裂けるといった問題がある。これに対して、PBT樹脂のTg超〜Tg+60℃以下の温度でPBTフィルムを冷延伸した場合、Tg+60℃超の温度で延伸した場合に比べて延伸方向への分子鎖の配向が少ない。このためTg超〜Tg+60℃以下の温度で、インフレーションPBTフィルムに対して逐次二軸延伸を行ってもフィルムは裂けない。しかもTg超〜Tg+60℃以下の温度で冷延伸することにより、一軸延伸を行った場合でも易裂性を生じない。またTg超〜Tg+60℃以下の温度で冷延伸することにより、結晶が破壊されて微小な球晶が生成するので、フィルムの透明性が向上する。
空冷インフレーション成形により得られたPBTフィルムはチューブ状なので、一軸冷延伸をロール法で行う場合、又は逐次二軸冷延伸をロール法及びテンター法で行う場合には、チューブ状のPBTフィルムを2つに切断した上で冷延伸を施す。チューブ状のインフレーションPBTフィルムを2つに切断するには、重ね折りされたシートの状態で、両端折部からシート面に対して水平にカッターで裂くか、横方向の両端耳部をスリッターで切り落とす。
(a) 空冷インフレーション成形、(b) チューブ状インフレーションPBTフィルムの切断及び(c) 冷延伸からなる工程は、空冷インフレーション成形後、2つに切断した各インフレーションPBTフィルムをそれぞれ一旦別の巻きフィルムとし、各巻きフィルムを順次巻き戻しながら冷延伸を行う逐次工程であってもよいが、上記(a)〜(c)の工程を一連のライン上で連続的に行うインライン工程であるのが好ましい。
図4(a)及び(b)は、空冷インフレーション成形により得られたPBTフィルムを予め2つに切断し、一旦巻きフィルムとした後、長手方向及び横方向に逐次二軸冷延伸する装置の一例を示す。
巻き出されたインフレーションPBTフィルム2は、長手方向延伸部4において遅駆動ロール41と、速駆動ロール42の間の加熱ロール43で長手方向に延伸する。長手方向に延伸したPBTフィルム2は、テンター5(横方向延伸部)に入れ、フィルム両端を保持したまま加熱し、横方向に延伸し、熱処理する。横方向にも延伸したPBTフィルム2は、冷却塔27で冷却空気を吹き付けることにより急冷する。
長手方向の延伸は、図5(a)に詳細に示すように、最前部の遅駆動ロール41と、最後部の速駆動ロール42の間に、回転自在である加熱ロール43を多数配置し、それらの間にインフレーションPBTフィルム2を通し、遅駆動ロール41と速駆動ロール42との周速比を適宜設定することにより達成する。加熱ロール43の温度は、インフレーションPBTフィルムの温度が、そのTg超〜Tg+60℃以下の温度となるように設定する。
図5(b)及び(c)は、長手方向延伸部4の別の例を示す。図5(b)はニップロール式の例を示し、(c)はクローバーロール式の例を示す。いずれの方式でもインフレーションPBTフィルム2を複数の予備加熱用ロール43で予備加熱し、その後それぞれ加熱した遅駆動ロール41と速駆動ロール42との間で加熱延伸し、次いで複数の冷却用ロール44で冷却する。
テンター5では、フィルムクリップローラー51を備えたチェーン(図示せず)がレール(図示せず)に沿ってエンドレスに循環する。テンター5は、予熱部、延伸部及び熱処理部の3部よりなる。長手方向に延伸されたPBTフィルム2は、予熱部、延伸部及び熱処理部のそれぞれにおいて、温風導入孔53から導入した温風を吹き付けることにより加熱する。図4において、52はギヤを示し、54は温風をPBTフィルム2に均一に吹き付けるためのフードを示す。予熱部、延伸部及び熱処理部において噴出させる温風の温度は、各部を通るPBTフィルム2の温度がそれぞれTg超〜Tg+60℃以下の温度に保持されるように設定する。冷却塔27による急冷は、延伸後のPBTフィルム2がガラス転移温度以下の温度となるようにする。
インフレーションPBTフィルム2を長手方向又は横方向に一軸冷延伸するのみの場合は、以上説明した長手方向延伸部4又は横方向延伸部5のみでインフレーションPBTフィルム2を延伸した後、急冷すればよい。
長手方向又は横方向への一軸冷延伸、並びに長手方向及び横方向への逐次二軸冷延伸は、図4に示すようなロール方式やテンター方式に限られるものではなく、チューブラー法等の方法も採用することができる。チューブラー法を採用する場合は、(a) 空冷インフレーション成形及び(b) 冷延伸からなる工程は、一連のライン上で連続的に行うインライン工程であるのが好ましい。
図6は、空冷インフレーション成形、チューブ状インフレーションPBTフィルムの切断及び冷延伸を一連のライン上で連続的に行うためのインライン装置の例を示す。引取り機ニップロール13により挟んで引き取ったチューブ状フィルム2は、折り畳まれたシートの状態で、カッター18により両端折部からシート面に対して水平に裂き、上下に分割した各インフレーションPBTフィルム2',2'のそれぞれに対して長手方向延伸部4,4において冷延伸する。図6に示すように、カッター18の前にエッジ・ポジション制御装置(EPC:Edge Position Control Unit)6を設けるのが好ましい。これによりカッター18で切断する際に、インフレーションPBTフィルムの耳端位置(エッジ・ポジション)を常に一定位置に制御しておくことができるので、常にチューブ状インフレーションPBTフィルム2を均一に分割することができる。図6に示すエッジ・ポジション制御装置6は、二本のガイドロール61,61と、ガイドロール61,61を連結する連結軸62と、センサー63とを有し、センサー63からの指令によりガイドロール61,61の傾斜度が変化し、インフレーションPBTフィルム2の耳端位置(エッジ・ポジション)を常に一定に制御することができる。エッジ・ポジション制御装置としては、図示のものに限らず公知の他の制御機構のものも使用可能である。
長手方向延伸部4,4では、加熱した遅駆動ロール45,45と、冷却した速駆動ロール46,46との間で、各インフレーションPBTフィルム2',2'を冷延伸する。遅駆動ロール45,45の温度は、インフレーションPBTフィルムの温度が、そのTg超〜Tg+60℃以下の温度となるように設定する。速駆動ロール46,46の温度は、インフレーションPBTのTg以下、好ましくはTg未満の温度に設定する。延伸率は、遅駆動ロール45,45と速駆動ロール46,46との周速比を適宜設定することにより調節すればよい。長手方向延伸部4,4の後に、図4に示すテンター5(横方向延伸部)を設け、さらに横方向への冷延伸ができる構成としてもよい。
図6に示すようにヒーター19を設け、ニップロール17,17で水平に保持しながら冷延伸後のフィルムを熱処理するのが好ましい。ヒーター19に代えて、ロール加熱により熱処理しても構わない。熱処理は、PBTのTg超〜融点−50℃以下で行うのが好ましい。冷延伸後の熱処理により、透明性、引張強度、耐熱収縮性及び膜厚の均一性が一層向上するとともに、皺の発生も抑制することができる。熱処理をTg+60℃以上〜融点−50℃以下で行うことにより、フィルムに直線的易裂性を付与することができる。フィルムに直線的易裂性を付与しない場合は、熱処理をTg超〜Tg+60℃未満で行えばよい。このように熱処理温度を変えることにより、フィルムの直線的易裂性及びそれに伴う引裂き強度を変化させることができる。
図6に示すインライン装置を用いることにより、(a) 空冷インフレーション成形、(b) チューブ状インフレーションPBTフィルムの切断及び(c) 冷延伸からなる一連の工程を効率化することができる。
[2] ポリブチレンテレフタレートフィルム
上記[1]で述べた空冷インフレーション成形法により製造されたPBTフィルムは、従来のインフレーション成形フィルムと比較して、結晶化度が高く、膜厚の均一性に優れておりかつ熱収縮率が低い。具体的には、平均膜厚8〜30μmのフィルムの膜厚のバラツキは±1〜3μmであり、熱収縮率はMD(長手方向)及びTD(幅方向)において0.4%以下である。本明細書において、膜厚のバラツキとは、PBTフィルムの幅方向における中心部及び両端部の厚さをそれぞれ2点ずつ計6点測定し、そのうちの最大値と最小値との差を算出した値である。この値が小さいほうが良好な結果であることを意味する。また熱収縮率とは、PBTフィルムを175℃で10分間暴露したときのMD及びTDの収縮率をそれぞれ測定した値である。]。このためムラの少ない印刷層や金属蒸着層を形成することができる。またヒートシール、印刷等の二次加工においてフィルム寸法の変化が少ない。
上記[1]で述べた空冷インフレーション成形法により製造されたPBTフィルムの熱収縮率が上述のように低いのは、バブルのネック部からフロストラインまでの領域を徐冷し、縦(MD)横(TD)方向にほぼ均一に延伸するとともに、バブル領域をTg超〜Tg+65℃以下に保持するので、生じたバブルに歪み(ストレス)が生じていないためと考えられる。
特に空冷インフレーション成形の後に、上記[1]で述べた冷延伸を施した平均膜厚3〜30μmのフィルムの膜厚のバラツキは1〜2μmであり、冷延伸方向の熱収縮率は1%以下である。しかも何れの方向にも易裂性がなく、機械的強度に優れている。
上記[1]で述べた空冷インフレーション成形法により製造されたPBTフィルムは、従来のインフレーション成形フィルムと比較して、結晶化度が高い。具体的には、本発明のインフレーションPBTフィルムのX線法により測定された結晶化度は、35〜40%である。このため上記[1]で述べた空冷インフレーション成形法により製造されたPBTフィルムは、機械的強度に優れている。これに対して、融点以上の押出樹脂温度でインフレーション成形されたPBTフィルムの結晶化度は通常30%以下である。なおキャスト法により成形されたPBTの結晶化度は通常8〜10%程度である。
冷延伸を施したPBTフィルムは、冷延伸方向に延在する多数の微細な線状皺を有する。すなわち冷延伸を施したPBTフィルムの表面凹凸をAFM(原子間力顕微鏡)により測定すると、凹凸の高低差は通常50 〜500 nmであり、凹凸の幅(線状皺の頂点同士の間隔)は通常500〜20000 nmである。但し長手方向及び横方向に逐次二軸冷延伸を行った場合には、先に行った冷延伸による線状皺は消失し、後に行った冷延伸による線状皺のみがPBTフィルムの表面に残る。よって逐次二軸冷延伸を行ってもPBTフィルムが有する線状皺の方向は一方向のみである。
冷延伸を施したPBTフィルムは、上述のような線状皺を有することにより、光を回折/散乱させる作用を有する。例えば線状皺を有するPBTフィルムを通して電球等の光源を見ると、線状皺の方向に対して直角方向に、光源を中心として光源とほぼ同じ幅の一本の光の筋が観察される。このため線状皺を有するPBTフィルムと光源とを組合せることにより、装飾用のイルミネーションライト等を作製することができる。線状皺を有するPBTフィルムを、線状皺の方向が互いに異なるように複数枚貼合わせた積層フィルムは、光の回折/散乱効果が大きい。そのような積層フィルムは、透明フィルム上に電磁波シールド層を積層してなる透明電磁波シールドフィルムの透明フィルムとして有用である可能性がある。さらに線状皺を有するPBTフィルムの積層フィルム自体が電磁波シールドフィルムとして利用できる可能性がある。特に線状皺を有するPBTフィルムを波板状に加工したものを複数枚貼合わせ、ハニカム構造体としたものは、光の回折/散乱効果が一層大きく、透明電磁波シールド性も高いと考えられる。そのようなハニカム構造体は防音材としても有用である可能性がある。
[3] 形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム
本発明の形状記憶PBT積層フィルムは、(a) 本発明の製造方法により得られるPBTフィルムからなる層と、(b) 紙シート、他の樹脂フィルム及び金属箔からなる群から選ばれた少なくとも一種(以下単に「他のフィルム又はフィルム積層体」という)とを有する。
(I) 層構成
(1) ポリブチレンテレフタレートフィルム
PBTフィルムは上記[1]で述べた製造方法により得られるものを用いる。PBTフィルムの厚さに特に制限はないが、実用的には約5〜50μmとするのが好適であり、約8〜30μmとするのがより好ましい。
(2) 他のフィルム又はフィルム積層体
(a) 紙シート
形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体に適用する場合、デッドホールド性付与層として紙シートからなる層も有するのが好ましい。紙シート層の紙の種類は限定されず、合成紙も含む。紙シート層の厚さは、約60〜110 g/m2とするのが好ましく、約75〜90 g/m2とするのがより好ましい。紙シートの厚さが約60 g/m2未満であると、紙シートの腰が弱すぎて、十分なデッドホールド性を付与することができない。一方、紙シートの厚さを約110 g/m2超にしても、コスト高になるだけで、さらなるデッドホールド性の向上は認められない。
(b) シーラントフィルム
形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体に適用する場合、容器本体の上端フランジ部に熱シールするシーラントフィルムを設ける。シーラントフィルムは、ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム等により形成することができる。また蓋体を容器本体から容易に剥離できるように、シーラントフィルムはイージーピール性を有するのが好ましい。そのために、シーラントフィルムは比較的弱い熱接着性を有するのが好ましい。また熱シール用材料として公知のホットメルトも用いることができる。
シーラントフィルムとして、例えば紙シート側のポリエチレンベースフィルムと、容器本体の上端フランジ部側の低分子量ポリエチレンフィルムとの積層フィルムを使用することができる。このポリエチレンベースフィルムの厚さは約10〜40μmが好ましく、約20〜30μmがより好ましい。また低分子量ポリエチレンフィルムの厚さは約5〜20μmが好ましく、約7〜15μmがより好ましい。このような積層ポリエチレンフィルムは、例えば760FD(東レ合成フィルム(株)製)として市販されている。またシーラントフィルムとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)とポリエチレンとの混合物からなるフィルムも使用することができる。この混合物からなるフィルムにおいて、ポリエチレンとしては線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。この混合物からなるフィルムの厚さも約10〜40μmが好ましく、約20〜30μmがより好ましい。またホットメルト層の厚さは10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
またシーラントフィルムとして、特願2002-183197号に開示のものを用いてもよい。特願2002-183197号に開示のシーラントフィルムは、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られ、密度(JIS K6922)が0.870〜0.910 g/cm3、MFR(JIS K6921、190℃、2.16kg荷重)が1〜100 g/10分である直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体及びポリスチレンを含む樹脂組成物からなるものである。これにより容器本体のシール面がポリエチレン又はポリスチレンのいずれであっても、本発明の蓋体を熱シールすることにより密封性と易開封性を両立できるマルチシーラント層を形成することができる。
(c) 剛性フィルム
形状記憶PBT積層フィルムの剛性を高めるために、剛性フィルムを設けることができる。剛性フィルムとしてはPETフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、ナイロンフィルム等が挙げられる。PETフィルムとして、一軸配向又は配向度が異なる二軸配向のPETフィルムを用いると、形状記憶PBT積層フィルムが易裂性を要する場合に有利である。一軸配向又は配向度が異なる二軸配向のPETフィルムとして、例えば「エンブレットPC」(ユニチカ(株))が挙げられる。
(d) 遮光性インク層
形状記憶PBT積層フィルムに遮光性が必要な場合、遮光性インク層又は金属箔層を設ける。遮光性インクは、例えばカーボンブラックのような黒色又は暗色の顔料又は染料を含むインクであれば、特に限定的ではない。遮光性インク層を用いる場合、焼却処理するときの環境への悪影響を回避できるとともに、形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体に適用した場合に、密封後に金属探知機による金属系異物の探知を行うことができる。これにより、即席食品の安全性をいっそう高めることができるのみならず、金属探知機を利用できるので、検査コストを著しく低減することができる。金属箔層を有する形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体に用いる場合、金属箔としてはアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔層を使用することにより、優れた遮光性の他にガスバリア性、保香性等も得られる。
遮光性インク層の厚さはインク中の黒色顔料又は染料の濃度に依存するが、一般に紫外線及び可視光線を十分に遮断できる程度であれば良い。またアルミニウム箔の厚さは3〜15μmであるのが好ましく、7〜12μmであるのがより好ましい。
(3) 層構成例
図7〜図10は、形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体用の包装材として用いる場合の層構成を例示する。図7に示す積層フィルム7は、基本構成としてPBTフィルム2と、紙シート71と、シーラントフィルム72を有する層構成を示す。PBTフィルム2と紙シート71との間には接着剤層74と押出ラミネーションされたポリエチレン層(I)73とからなる接着層(I)があり、紙シート71とシーラントフィルム72との間には接着剤層74'と押出ラミネーションされたポリエチレン層(II)73'とからなる接着層(II)がある。図7に示す層構成例の場合、PBTフィルム2及び接着層(I)(73及び74)からなる外側層と、接着層(II) (73'及び74')及びシーラントフィルム72からなる内側層との層厚比は、外側層/内側層=100/35〜100/100であるのが好ましい。これにより、PBTフィルム2のカール性及びデッドホールド性を有効に機能させることができる。ここで「外側」及び「内側」とは、形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器等の蓋体として用いた場合における容器に対する外側及び内側であることを意味する。
図8は、形状記憶PBT積層フィルムの剛性を高めるために紙シート層71とシーラントフィルム72との間に剛性フィルム75を設けた例を示す。なお図8において73''は押出ラミネーションされたポリエチレン層(III)を示し、74''は接着剤層(III)を示す。
図9は、良好な遮光性を付与するためにポリエチレンテレフタレート層7の内側面に遮光性インク層76を設けた例を示す。遮光性インク層76は、予めポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに印刷しておくのが好ましい。また遮光性インク層76を、PBTフィルム2の内側に設けたり、紙シート層71の一方の面(例えば紙シート層71の内側)に設けたりすることができる。図10に示す積層フィルムは、遮光性を付与する層として金属箔層77を有する。
図11及び図12は、形状記憶PBT積層フィルムを、ゼリー、プリン等の半固体状食品を収容する容器の蓋体用包装材として用いる場合の層構成を例示する。図11に示す積層フィルムは、基本構成としてPBTフィルム2と、剛性フィルム75と、シーラントフィルム72とを有する。PBTフィルム2と剛性フィルム75との間には接着剤層(例えばホットメルト層)74があり、紙シート71とシーラントフィルム72との間には接着剤層(例えばホットメルト層)74'がある。図12は、良好な遮光性を付与するために剛性フィルム75の内側面に遮光性インク層76を設けた例を示す。
半固体状食品を収容する容器に使用する蓋体は、即席食品用容器に用いる蓋体のように注湯後の再封性が要求されないので、デッドホールド性の強い紙シートやアルミニウム箔を有しないことが多い。但しPBTフィルムとポリエチレンフィルムの2層のみを接着して積層フィルムを構成すると、PBTフィルムが第一の形状を回復しようとしても、変形がポリエチレンフィルムに吸収され易くなるため、形状回復能が不十分となる恐れがある。よってPBTフィルムとポリエチレンフィルムとを有する形状記憶PBT積層フィルムを製造する場合は、PBTフィルムとポリエチレンフィルムとの間に上記剛性フィルムを設けるのが好ましい。
(II) 形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムの製造方法
以下形状記憶PBT積層フィルムの製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
(1) 第一の製造方法
形状記憶PBT積層フィルムの第一の製造方法は、(a) PBTフィルムと前記他のフィルム又はフィルム積層体とを接着し、得られた積層フィルムを、第一の形状に保持しながら前記PBTのTg以下の温度T1で賦形処理(冷間加工)し、(c) 得られた賦形積層フィルムを、前記Tgを超える温度T2で第二の形状に変形加工し、(c) Tg以下の温度T3まで冷却することにより第二の形状に固定する工程を含む。
以下、第一の形状としてカール形状、第二の形状として平坦な形状とする場合を例にとって説明する。図13は、形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置の一例を示す。PBTフィルム原反を巻いたリール80から巻き戻したPBTフィルム2は、ガイドロール130を経て、グラビアロール131,131により一方の面に接着剤(例えばホットメルト)74を塗布し、乾燥炉132で接着剤層を乾燥する。その後、圧力調整ロール133を経て、ダイ134より押出した溶融ポリエチレン73を介して、リール81から巻き戻した他のフィルム又はフィルム積層体82を接着剤層に重ねながら冷却ロール135とゴムロール135'との間を通す(押出ラミネーション)。得られた積層フィルムを、冷間加工ロール136で搬送しながらPBTのTg以下の温度T1で賦形処理する。これにより積層フィルムのPBTフィルムにカール性を付与することができる。カール性を付与した積層フィルム(カール性積層フィルム)78を、ヒーター138により、Tgを超える温度T2で急速に焼きなましながら、二つのニップロール間137,137'で平坦に変形加工し、次いで冷却ロール139と接触させることにより上記Tg以下の温度T3まで冷却する。これにより平坦な形状を固定することができる。その後カール性積層フィルムを、その逆カール向きにリールにより巻き取り、巻きフィルム83(形状記憶PBT積層フィルム7)とする。本明細書において、カール性とは、形状記憶PBT積層フィルム7を反らした時にその状態を維持できるデッドホールド性とは異なり、カール性を付与した温度以上に形状記憶PBT積層フィルム7を曝すことにより、カール性を付与した後に与えられた第二の形状(平坦な形状、逆カール形状等)からカール形状に戻る(形状記憶PBT積層フィルム7を反らすことができる)性質を意味する。
冷間加工温度T1は、PBTのTg以下であることを必須とするが、35℃以下であるのが好ましく、15〜25℃であるのがより好ましい。焼きなまし後のカール性積層フィルム78を冷却する温度T3は、上記Tg以下であることを必須とするが、15〜25℃であるのが好ましい。PBTフィルムは、一般に約20〜45℃のTgを有する。
Tgを超える温度T2で、カール性積層フィルムを平坦に変形加工する焼きなまし処理は、冷間加工により付与したカール性を消失しない程度に行う必要がある。このため温度T2は45℃超〜65℃以下であるのが好ましく、この温度範囲まで急速に加熱した上で変形加工し、30〜60秒間焼きなます。二つのニップロール間137,137'で平坦に保持するためにかける張力は5〜10kgf/m幅とする。また温度T2での焼きなまし処理の後、温度T3に急冷するのが好ましい。図13では、ヒーター138,138によりカール性積層フィルム78の両面から加熱しているが、カール性積層フィルム78のPBTフィルム側にのみヒーター138を設置してもよい。ヒーター138から出る加熱空気を、ノズルを用いてカール性積層フィルム78のPBTフィルムに吹き付けてもよい。
図13に示す例では、カール性積層フィルム78を温度T3まで冷却した後、その逆カール向きに(他のフィルム又はフィルム積層体層を内側として)巻き取っているが、冷間加工により付与したカール性を消失せず、かつカール形状の回復を極力抑制するために、巻き取る温度及び巻き取った状態で保管する温度はT1付近の温度であるのが好ましい。これにより形状記憶PBT積層フィルム7を平坦な状態に保持できるので、巻きフィルム83(形状記憶PBT積層フィルム7)を巻き戻した時のカール性積層フィルム78はほぼ平坦である。
形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器や半固体状食品用容器の蓋体に用いる場合、PBTフィルムに積層する他のフィルム又はフィルム積層体は、形状記憶PBT積層フィルムが上記[3](I)(3)で述べたような層構成となるように、予め作製しておく。他のフィルム又はフィルム積層体82は、押出ラミネーション法又はドライラミネーション法のいずれにより形成してもよいが、押出ラミネーション法により形成するのが好ましい。
冷間加工ロール136への積層フィルムの巻き掛け方については、図13に示すように積層フィルムの巻き込み方向と巻き解き方向とがなす角度θ1を45〜60°の範囲となるようにするのが好ましい。これによりPBTフィルム2に十分なカール性を付与することができる。角度θ1を所望の値にするには、冷間加工ロール136と圧力調整ロール133'との位置関係を適宜調整すればよい。冷間加工ロール136の直径は20〜80cmであるのが好ましい。これによりPBTフィルム2に十分なカール性を付与することができる。通常冷間加工ロール136の周速は30〜100 m/分とする。
PBTフィルム2と他のフィルム又はフィルム積層体82とを冷却ロール135,ゴムロール135'の間を通して接着する時、圧力調整ロール133により、PBTフィルム2に通常4kgf/m幅以上の張力をかけながら行う。特にPBTフィルム2に10〜20 kgf/m幅の張力をかけることにより、PBTフィルム2を弾性伸縮可能な伸度に、長手方向に延伸しながら他のフィルム又はフィルム積層体82に接着できる。これによりPBTフィルム2に弾性復元力を保持させた伸長状態で他のフィルム又はフィルム積層体82に接着することができる。弾性復元力を保持した伸長状態とは、PBTフィルム2の延伸を固定する力を解いた時に、PBTフィルム2が原型に収縮しようとする力を保持している状態のことである。このため形状記憶PBT積層フィルム7のカール性を一層向上することができる。弾性伸縮可能な伸度とは、一般的に延伸によりPBTフィルムに外観上皺が生じない程度に約1〜3%伸ばした伸度である。
図13に示す例では、PBTフィルム2の片面のみに他のフィルム又はフィルム積層体82を接着しているが、PBTフィルム2の両面に他のフィルム又はフィルム積層体82を接着した上で、カール性を付与することも可能である。
図14は、形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置の別の例を示す。なお図13に示す例と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この例においては、PBTフィルム2と他のフィルム又はフィルム積層体82とを、ドライラミネーション法により接着すること以外は図13に示す例と同じである。接着剤層を設けたPBTフィルム2は、圧力調整ロール133を経て、他のフィルム又はフィルム積層体82を接着剤層に重ねながら一対の加熱ロール140,140間に通す。但し強い接着強度を要する場合は、図13に示す押出ラミネーション法によりPBTフィルム2と他のフィルム又はフィルム積層体82とを接着するのが好ましい。
次に形状記憶PBT積層フィルムの第一の形状としてトレイ形状、第二の形状として平坦な形状とする場合の例を説明する。図15は、かかる形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置の一例を示す。なお図13に示す例と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。まずPBTフィルムと他のフィルム又はフィルム積層体とを押出ラミネーション法又はドライラミネーション法により接着し、PBTフィルムの片面又は両面に他のフィルム又はフィルム積層体を有する積層フィルムを形成する。得られた積層フィルム84を、圧力調整ロール133,133で送り出し、トレイ形状を付与する押し型141を押し当てながら上記温度T1で冷間加工し、押し型141の外形に沿った形を断続的に付与する。得られた賦形積層体85を、一対の焼きなまし用ロール142,142間に通し、上記温度T2で焼きなますことによりほぼ平坦化し、次いで冷却装置143,143により上記温度T3まで冷却する。ほぼ平坦化した変形積層フィルム85を、リール86から巻き戻したコート用フィルム87と積層化しながら、押し型141と同型の巻き取りロール144で巻き取り、巻きフィルムとする。これにより押し型141の外形に沿った変形は潜在化されて見かけ上変形のない積層フィルムとなる。PBTフィルム2に押し型141を押し当てながら行う温度T1での冷間加工は10〜60秒行えばよい。なお図15に示す例では、トレイ状の押し型141を用いているが、適宜形状記憶させたい所望の形状の押し型を用いることができる。
(2) 第二の製造方法
形状記憶PBT積層フィルムの第二の製造方法は、(a) (i) PBTフィルムを含む積層フィルムを第一の形状に保持しながらTg超〜融点未満の温度T4で賦形処理するか、(ii) PBTフィルムを第一の形状に保持しながら温度T4で賦形処理した後他のフィルム又はフィルム積層体と接着することにより第一の形状を有する積層フィルムを作製し、(b) 得られた賦形積層フィルムをTg以下の温度T5まで冷却して第一の形状に固定し、(c) 次いで前記賦形積層フィルムを、Tg超〜温度T4未満の温度T6で第二の形状に変形加工した後、(d) Tg以下の温度T7まで冷却して第二の形状に固定する工程を含む。
PBT樹脂のTgは22〜45℃と室温に近く、Tg以上への加熱、Tg未満への冷却操作が容易である。しかも融点が約230℃と高いので、Tgから融点までの温度範囲が広く、温度T4と温度T5の差を大きくできる。そのため上記(A)〜(D)の操作を容易に行うことができる。以下、第一の形状としてカール形状、第二の形状として平坦な形状とする場合を例にとって説明する。
図16は、形状記憶PBT積層フィルムを第二の製造方法により製造する装置の一例を示す。この例では予めカール性を付与した賦形PBTフィルムに他のフィルム又はフィルム積層体を接着する。PBTフィルム2の一面に接着剤74を塗布し、乾燥炉132で接着剤層を乾燥するまでの工程は、図13に示す例と同じである。図16に示すように、接着剤層を乾燥した後のPBTフィルム2を圧力調整ロール133で送り出し、接着層を有しない面を接触面として、賦形用の加熱ロール145で搬送しながら上記温度T4で処理することによりカール性を付与する。その後、他のフィルム又はフィルム積層体82をPBTフィルム2の接着層に重ねながら、加熱ロール145と、それに当接するロール145'との間を通すことにより両者を接着する。得られたカール性積層フィルム78を、冷却ロール139と接触させることにより上記Tg以下の温度T5まで冷却し、次いで逆カール向きにリールにより巻き取り、巻きフィルム83とする。得られた巻きフィルム83を、上記Tg超〜温度T4未満の温度T6で加熱処理し、次いで上記Tg以下の温度T7まで冷却することにより形状記憶PBT積層フィルム7を得る。巻きフィルム83とした上で、温度T6で加熱処理し、次いで温度T7まで冷却することにより上記積層フィルムのカール形状を潜在化し、見かけ上ほぼ平坦な積層フィルムとする。巻きフィルム83を加熱又は冷却する手段に限定はなく、例えば槽中に巻きフィルム83を入れ、槽の周囲をヒーターで加熱したり、冷却装置で冷却したりする方法が挙げられる。
加熱ロール145における加熱温度T4は、PBTのTg超〜融点未満の温度であることを必須とするが、75〜100℃であるのが好ましく、90〜100℃であるのがより好ましい。冷却ロール139における冷却温度T5は上記Tg以下の温度であることを必須とするが、40℃以下であるのが好ましい。カール性積層フィルム78の冷却は、冷却ロール139を用いる代わりに冷却空気を用いるものであってもよい。巻きフィルム83の加熱温度T6は、上記Tg超〜温度T4未満であることを必須とするが、45〜65℃であるのが好ましく、45〜50℃であるのがより好ましい。また温度T6での加熱処理は、24時間程度行うのが好ましい。巻きフィルム83を加熱処理した後の冷却温度T7は上記Tg以下であることを必須とするが、40℃以下であるのが好ましい。図16に示す例では第二の形状としてほぼ平坦な形状とするために、カール性積層フィルムの逆カール向きに(他のフィルム又はフィルム積層体層を内側として)巻き取っているが、これによりフィルムを効率的に平坦にすることができる。
加熱ロール145へのPBTフィルム2の巻き掛け方については、図16に示すPBTフィルム2の巻き込み方向と巻き解き方向とがなす角度θ2を45〜60°の範囲となるようにするのが好ましい。これによりPBTフィルム2に十分なカール性を付与することができる。角度θ2を所望の値にするには、加熱ロール145と圧力調整ロール133,133との位置関係を適宜調整すればよい。加熱ロール145の直径は60〜80 cmであるのが好ましい。これによりPBTフィルム2に十分なカール性を付与することができる。通常加熱ロール145の周速は30〜100 m/分とする。
上記(1)で第一の製造方法について説明したように、PBTフィルム2と他のフィルム又はフィルム積層体82とを加熱ロール145と、当接ロール145'との間を通すことにより接着する時、一対の圧力調整ロール133,133により、PBTフィルム2に通常4 kgf/m幅以上の張力をかけながら行う。第一の製造方法と同様に、PBTフィルム2に10〜20 kgf/m幅の張力をかけるのが好ましい。
図17は、形状記憶PBT積層フィルムを第二の製造方法により製造する装置の別の例を示す。なお図13に示す例と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この例では、PBTフィルムと他のフィルム又はフィルム積層体とを接着することにより予め積層フィルムを作製した後、そのPBTフィルムにカール性を付与する。PBTフィルム2と他のフィルム又はフィルム積層体82とを一対の加熱ロール140,140により接着するまでの工程は、図14に示す例と同じである。得られた積層フィルムを、加熱ロール145で搬送しながらPBTのTg超〜融点未満の温度T4で賦形する。これにより積層フィルムのPBTフィルムにカール性を付与することができる。得られたカール性積層フィルム78を、冷却ロール139と接触させることにより上記Tg以下の温度T5まで冷却し、次いで逆カール向きにリールにより巻き取り、巻きフィルム83とする。得られた巻きフィルム83を、上述のように上記Tg超〜温度T4未満の温度T6で加熱処理し、次いで上記Tg以下の温度T7まで冷却することにより形状記憶PBT積層フィルム7を得る。
図17に示す例において、温度T4〜T7に関する要件は図16に示す例と同じである。積層フィルム78の巻き込み方向と巻き解き方向とがなす角度θ3は45〜60°の範囲であるのが好ましい。図17に示す例では、PBTフィルム2の片面のみに他のフィルム又はフィルム積層体82を接着しているが、PBTフィルム2の両面に他のフィルム又はフィルム積層体82を接着した上で、カール性を付与することも可能である。
第二の製造方法によっても、第一の形状としてトレイ形状とし、第二の形状として平坦な形状とした形状記憶PBT積層フィルムを製造することができる。その場合の製造装置は図15に示すものと同じでよいので、図15により説明する。まずPBTフィルムと他のフィルム又はフィルム積層体とを接着し、PBTフィルムの片面又は両面に他のフィルム又はフィルム積層体を有するPBT積層フィルムを作製する。得られたフィルム積層体84は、一対の圧力調整ロール133,133を経て、トレイ形状を付与する押し型141を押し当てながらPBTのTg超〜融点未満の温度T4で加熱処理し、押し型141の外形に沿った形を断続的に付与する。得られた賦形積層体85を、押し型141の後段に設けた冷却用のトレイ状押し型又は冷却空気と接触させて上記Tg以下の温度T5まで冷却し、次いで一対の加熱ロール142,142間に通すことにより、上記Tg超〜温度T4未満の温度T6で加熱処理し、次いで冷却装置143,143により上記Tg以下の温度T7まで冷却することにより平坦化する。フィルム積層体84に押し型141を押し当てながら行う温度T4での加熱処理は、10〜60秒行えばよい。
(III) 形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム
上記第一の方法により得られる形状記憶PBT積層フィルムは、T1以上の温度で形状回復能により実質的に第一の形状を回復する。PBTフィルムが、上記焼きなまし及び冷却工程で第二の形状に固定されてもT1以上の温度で第一の形状を回復する理由は定かではないが、例えば温度T1での冷間加工で高分子鎖の絡み合いにひずみが保持され、このひずみの大部分は温度T2での短時間の焼きなましでは緩和されないので、T1以上の温度で第一の形状を回復すると考えられる。
上記第二の方法により得られる形状記憶PBT積層フィルムは、T4以上の温度で形状回復能により実質的に第一の形状を回復する。PBTフィルムが、上記加熱変形加工及び冷却工程で第二の形状に固定されても、T4以上の温度で第一の形状を回復する理由は定かではないが、例えば温度T4以上ではゴム状領域であるため容易に加熱賦形処理され、温度T5ではガラス状領域であるので変形が固定され、温度T6での加熱変形加工で温度T4での変形の一部が緩和されて第二の形状となるが、大部分の分子鎖の配向は変化しないので、T4以上の温度で第一の形状を回復すると考えられる。
第一の形状を回復することができる形状記憶PBT積層フィルムは各種包装材として有用である。特に上記(2)で述べた方法により製造されるカール形状を記憶した形状記憶PBT積層フィルムは、アルミニウム箔等の金属を用いなくても蓋体を十分にカールさせることができるので、即席食品用容器の蓋体に用いる包装材として好適である。即席食品用容器を製造する際は、形状記憶PBT積層フィルムを蓋材シール装置により打ち抜き加工し、得られた蓋体を直ちに容器にヒートシールする。ヒートシール時には、蓋体のシール部が蓋材シール装置のシールヘッドにより通常120〜160℃に加熱されるが、そのとき蓋体のシール部以外の部分にも熱が加わるため、蓋体はT1又はT4以上の温度条件下で処理される。そのため蓋体はカール形状を回復し、容器にシールされている間は平坦であるが、容器から剥離することによりカール形状を示す。特に上述のようにPBTフィルムの弾性復元力を保持した伸長状態で紙シートに接着すると、カール性が一層向上する。
[4] 形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム製蓋体を備えた容器の製造方法
以下形状記憶PBT積層フィルム製蓋体を備えた容器の製造方法について述べる。上記(2)に記載の方法により得られる形状記憶PBT積層フィルム7は、その製造工程において見かけ上ほぼ平坦とされ、さらに巻きフィルム83として保管されているので、これを巻き出す時には見かけ上ほぼ平坦である。しかし形状回復温度が比較的低い場合、保管が長期にわたる場合、夏場の高温期に室温で曝された場合等には、保管時に除々にカール形状が回復していたり、保管時の巻きにより形状記憶によるカール形状とは反対側に反る癖が付いていたりすることがある。
形状記憶PBT積層フィルム製蓋体を備えた容器は、カール形状を記憶させた形状記憶PBT積層フィルムを打ち抜き加工し、容器にヒートシールすることにより製造するが、形状記憶PBT積層フィルムを巻き出した時にほぼ平坦でないと、容器へのヒートシールができないか、できても蓋体がたわんだ不良品となってしまう。よって蓋体付き容器を製造するにあたり、巻き出した時に平坦でない形状記憶PBT積層フィルムを、ヒートシールする直前にほぼ平坦にする。
図18は、形状記憶PBT積層フィルム製蓋体を備えた容器を製造する装置の一例を示す。巻きフィルム83から巻き出された形状記憶PBT積層フィルム7を、ヒーター147,147を用いて、PBTのTgを超える温度T8で、二つのニップロール146,146'間で平坦に保持しながら焼きなまし、見かけ上ほぼ平坦とする。ほぼ平坦とした形状記憶PBT積層フィルム7を、シールヘッド151が上下動する蓋材シール装置150により打ち抜き加工し、直ちに容器170にヒートシールする。なお必要に応じて容器内に不活性ガスを吹込むことができる。
但し、温度T8での焼きなましは形状記憶PBT積層フィルムが記憶しているカール性を消失しない程度に行う。このため温度T8は80〜120℃であるのが好ましく、90〜100℃であるのがより好ましい。形状記憶PBT積層フィルムを温度T8まで急速に加熱し、平坦に保持した上で30〜60秒間焼きなます。二つのニップロール間146,146'で平坦に保持するためにかける張力は5〜10 kgf/m幅とする。通常形状記憶PBT積層フィルム7の走行速度は30〜100 m/分とする。図18では、ヒーター147,147により形状記憶PBT積層フィルム7の両面から加熱しているが、形状記憶PBT積層フィルム7が片面にのみPBTフィルムを有する場合、そのPBTフィルム側にのみヒーター147を設置してもよい。ヒーター147から出る加熱空気を、ノズルを用いて形状記憶PBT積層フィルム7のPBTフィルムに吹き付けてもよい。
蓋体の打ち抜き加工と容器170へのヒートシールは間欠的に行うため、形状記憶PBT積層フィルム7がガイドロール149と当接ロール152との間でたわまず、一定の張力に保たれるように、図18に示すように上下動自在のたわみ防止用ロール148を設けるのが好ましい。なお図18において、88は蓋体を打ち抜いた後の形状記憶PBT積層フィルム7からなる巻きフィルムを示す。
ヒートシール時には、蓋体のシール部が蓋材シール装置のシールヘッド151により通常120〜160℃に加熱されるが、そのとき蓋体のシール部以外の部分にも熱が加わるため、蓋体はT1又はT4以上の温度条件下で処理される。そのため蓋体はカール形状を回復し、容器にシールされている間は平坦であるが、容器から剥離することによりカール形状を示す。
[5] 食品用容器
上記[4]で述べた製造方法により得られる容器の蓋体は、容器から剥離することにより形状記憶によるカール形状を示す。例えば形状記憶PBT積層フィルムを、即席食品用容器の蓋体に適用する場合、図20に示すように、蓋体7のタブ部160を持って蓋体7を容器本体170からマーク161まで剥離すると、開封によりできたフラップ部は、アルミニウム層を有さなくても十分にカールしたままに保持される。特に上述のようにPBTフィルムの弾性復元力を保持した伸長状態で紙シートに接着してあると、カール性が一層向上する。形状記憶PBT積層フィルムを、即席食品用容器の蓋体に適用する場合、その層構成としては上記[3](I)(3)で述べた図7〜図10に示すものが好ましい。
後述する線状痕を形成したPBTフィルムを有する形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体に適用した場合、図20に示すように、切り口162,162をタブ部160の両側に設けることにより、蓋体7を容易に部分開封することができる。蓋体7のタブ部160を指で掴んで蓋体7の反対側に引っ張ると、切り口162,162から蓋体7は直線的に引き裂かれ、蓋体7に開口部163ができる。引裂によりできたフラップ部164は十分にカールしたままに保持される。従ってそのまま熱湯を開口部163に注げば良い。
熱湯を注いだ後、フラップ部164を元の位置に戻すと、フラップ部164の片側又は両側の外縁に紙のギザギザの破断部164a,164aがあるので、それが開口部163の紙のギザギザの破断部163a,163aと係合し、フラップ部164は持ち上がらなくなる。なおこの場合開口部163の面積が従来の全面開封式の開口部より小さいのみならず、フラップ部164が開口部163に係止した状態にあるので、容器本体170を誤って転倒させても、熱湯が漏れる量は低減される。なお図20において180は乾燥麺を示す。
容器本体170は、例えば紙、発泡スチロール等の合成樹脂により形成することができる。紙製容器本体の場合、焼却が容易であるのみならず、焼却時に環境に悪影響を及ぼすガスが発生しないという利点がある。また発泡スチロール製容器本体の場合、保温性に優れているという利点がある。容器本体170の形状は図示のものに限定されず、内容物の種類に応じて種々変更することができる。
図21及び図22は、形状記憶PBT積層フィルムを、ゼリー、プリン等の半固体状食品を収容する容器の蓋体に用いた例を示す。形状記憶PBT積層フィルムを、半固体状食品用容器の蓋体に適用する場合、その層構成としては上記[3](I)(3)で述べた図11及び図12に示すものが代表的である。図21に示すように、密封状態において、容器170にシールされている蓋体7は平坦である。しかし蓋体7は容器170にヒートシールされる時にカール形状を回復している(但し見かけ上は平坦である)ので、紙シートやアルミニウム箔を有しない形状記憶PBT積層フィルムからなる蓋体7は、容器170から剥離されることにより、図22に示すように形状記憶によって強くカールする。容器本体170は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂により形成することができる。容器本体170の形状は図示のものに限定されず、内容物の種類に応じて種々変更することができる。このような強いカール性を有する蓋体は、コーヒーミルク等のポーションパック用の蓋体等の用途にも好適である。
上記[3](II)で述べたトレイ形状を記憶させた形状記憶PBT積層フィルムを、平坦なまま各トレイ形状単位長さ毎にカットすることにより、食品用トレイとして使用することができる。例えば図23に示すように、得られた食品用トレイ153に即席冷凍食品154を乗せた後、包装用フィルム155により包装し、包装商品156とする。図23に示すように、包装商品156は食するために電子レンジ157等により加熱するが、この時上記温度T1又はT4以上の温度で適度な時間加熱処理することにより、食品用トレイ153は押し型141により形成されたトレイ形状を回復する。このように形状記憶PBT積層フィルムを食品用トレイ153に適用すると、包装商品156の状態ではほぼ平坦なので容積が小さく、輸送や陳列に便利であり、加熱処理によりトレイ形状を回復し、食し易い状態にできる便利さがある。
食品用トレイ153の包装用フィルム155には、後述する方法により、少なくとも一面に多数の実質的に平行な線状痕が形成されているのが好ましい。これにより包装用フィルム155は、その配向性に関わらず一方向への直線的易裂性を有し、任意の位置から線状痕に沿って直線的に裂くことができる。よって食する際に、包装用フィルム155を容易に部分開封することができる。かかる線状痕は、フィルムを貫通していないので、包装用フィルム155は線状痕形成後においてもガスバリア性に優れている。
[6] フィルムへの線状痕形成
形状記憶PBT積層フィルムに直線的易裂性を付与するために、PBTフィルム、剛性フィルム及びシーラントフィルムのうちの少なくとも一つの全面に対して、以下に述べる方法により多数の実質的に平行な線状痕を形成しておくのが好ましい。これにより形状記憶PBT積層フィルムを容易に直線的に裂くことができるので、例えば形状記憶PBT積層フィルムを即席食品用容器の蓋体用の包装材として用いた場合に蓋体を部分開封することが可能となる。かかる線状痕は、特にPBTフィルムに形成するのが好ましい。線状痕は、連続走行するフィルムを、多数の微細な突起を有する線状痕形成手段に摺接させることにより形成することができる。以下、線状痕の形成方法を、図面を参照して詳細に説明する。
(I) フィルムに進行方向の線状痕を形成する場合
図24は、フィルム301の進行方向に線状痕を形成する装置の一例を示す。図24は、表面に多数の微細な突起を有するロール(以下「パターン・ロール」という)302を線状痕形成手段として用い、フィルム押しつけ手段として空気を吹き付けることができるノズル303を用いた例を示す。フィルム原反を巻いたリール311から巻き戻されたフィルム301を、ニップロール312を経て、パターン・ロール302に摺接させることにより線状痕を形成し、得られた直線的易裂性フィルムはニップロール313、ガイドロール314及び315を経て、巻き取りリール316により巻き取る。
パターン・ロール302は、図25に示すようにその回転軸がフィルム301の幅方向と平行となるように定位置に固定されており、軸線方向長さがフィルム301の幅より長く、フィルム301の幅全体がパターン・ロールに摺接するようになっている。
張力調整ロールとしてニップロール312及び313をパターン・ロール302の前後に設けることよりパターン・ロール302を走行するフィルム301に張力を与えられるようになっている。さらに図25に示すように、フィルム301がパターン・ロール302に摺接する位置において、パターン・ロール302の反対側からノズル303により所定の風圧を伴った空気を吹き付けることにより、フィルム301がパターン・ロール302に摺接する面(以下特段の断りがない限り「ロール摺接面」と呼ぶ。)に均一な接触力をかけることができる。これによりフィルム面に均一な線状痕を形成することができる。ノズル303を用いてパターン・ロール302にフィルム301を押し付けることにより、ロール摺接面でのフィルム301の厚さむらによる接触不均一性を緩和することができる。
パターン・ロール302は、フィルム301の進行速度より遅い周速で、フィルム301の進行方向と逆方向に回転させるのが好ましい。これによりフィルム皺の発生を防止できるとともに、線状痕の形成に伴い発生する削り屑がパターン・ロール302の表面に溜まるのを防止できるので、適切な長さ及び深さの線状痕を形成することができる。本発明においてフィルム301の進行速度は10〜500 m/分とするのが好ましい。またパターン・ロール302の周速(フィルム301の進行方向と逆方向に回転させる速度)は、1〜50 m/分とするのが好ましい。
パターン・ロール302としては、例えば特開2002-59487号に記載のものを用いることができる。これは金属製ロール本体の表面に多数のモース硬度5以上の微粒子を電着法によるか、有機系もしくは無機系の結合剤により付着させた構造を有する。金属製ロール本体は、例えば鉄、鉄合金等から形成される。金属製ロール本体の表面をニッケルめっき層又はクロムめっき層により被覆するのが好ましい。モース硬度5以上の微粒子としては、例えばタングステンカーバイト等の超硬合金粒子、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、サファイア粒子、立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子、天然又は合成のダイヤモンド微粒子等を挙げることができる。特に硬度、強度等が大きい合成ダイヤモンド微粒子が望ましい。微粒子の粒径は形成する線状痕の深さあるいは幅に応じて適宜選択する。本発明において、微粒子の粒径は10〜100μmで、粒径のばらつきが5%以下のものが望ましい。ロール本体の表面に微粒子を付着させる程度は、形成する線状痕同士の間隔が所望の程度となるように、適宜選択する。均一な線状痕を得るために、微粒子はロール本体表面に50%以上付着させることが望ましい。パターン・ロール302の具体例としては、鉄製のロール本体表面に多数の合成ダイヤモンド微粒子が50%以上の面積率でニッケル系の電着層を介して結合・固定されているものが挙げられる。パターン・ロール302の外径は2〜20 cmであるのが好ましく、3〜10 cmであるのがより好ましい。
パターン・ロール302としては、金属製ロール本体の表面に金属製針が微小間隔で縦横に規則的に埋め込まれている針歯ロールを用いることもできる。また線状痕形成手段として、パターン・ロール302の他に、プレート状本体の表面に、上記のようなモース硬度が5以上の微粒子を表面に多数有するパターン・プレートを用いてもよい。
図26は、フィルム301がパターン・ロール302と摺接し、線状痕が形成される様子を示す。例えばパターン・ロール302の表面上の微粒子304のうち少なくとも一つの微粒子の角部がロール摺接面に切り込んでいくが、上述のようにフィルム301の進行速度はパターン・ロール302が逆回転する周速より速いので、切り込んだ微粒子304の角部がロール摺接面から離れるまで一本の長い線状痕が形成される。
空気吹き付け手段としては、図27(a)に示すように帯状の吹き出し口331を有するノズル(図24〜26に示すものと同じもの)に代えて、図27(b)に示すように複数の吹き出し口331を有するノズルを用いてもよい。また図27(c)に示すようにフード332を有するノズルを用いてパターン・ロール302を覆う形で圧縮空気を吹き付けると、吹き出し口331から吹き出す圧縮空気が、フィルム301とパターン・ロール302とが摺接する位置に到達するまでに拡散しにくいので、ロール摺接面におけるフィルム301とパターン・ロール302の接触力を一層均一にすることができる。このような空気吹き付け手段により吹き付ける圧縮空気流の圧力は、4.9〜490 kPa(0.05〜5 kgf/cm2)であるのが好ましい。これによりロール摺接面におけるフィルム301とパターン・ロール302の接触力を均一にすることができる。より好ましい圧縮空気流の圧力は9.8〜196 kPa(0.1〜2 kgf/cm2)である。また吹き出し口331からロール摺接面までの距離は10〜50 cmであるのが好ましい。圧縮空気は、少なくともロール摺接面をカバーする範囲に均一に当たればよい。しかし、必要以上にブロワー又はノズルの吹き出し口331を大きくすると、適切な風圧を得るために要する圧縮空気の量が多くなるため好ましくない。
定位置に固定したパターン・ロール302へのフィルム301の巻き掛け方については、図27(c)に示すフィルム301の巻き込み方向と巻き解き方向とがなす角度θを60〜170°の範囲となるようにするのが好ましい。これにより線状痕の長さ及び深さが調整し易くなる。角度θは90〜150°の範囲となるようにするのがより好ましい。角度θを所望の値にするには、パターン・ロール302の高さ位置を変更する等により、パターン・ロール302とニップロール312及び313との位置関係を適宜調整すればよい。またパターン・ロール302へのフィルム301の巻き掛け方及び外径に応じて、ニップロール312及び313によりフィルム301に与える張力とノズル303により与える風圧とを適宜調整し、所望の長さ及び深さの線状痕が得られるようにする。本発明において、ニップロール312及び313によりフィルムに掛ける張力(幅当りの張力)については、0.01〜5 kgf/cm幅の範囲となるようにするのが好ましい。
空気吹き付け手段に代えて、ロール摺接面の反対側の面にブラシを摺接させることにより、ロール摺接面に均一な接触力をかけることができる。ブラシの毛材は、ブラシとフィルム301との摺接面(以下特段の断りがない限り「ブラシ摺接面」と呼ぶ)において、フィルム301の進行速度より遅い速度で、フィルム301の進行方向と逆方向に移動可能であるのが好ましい。このためブラシとして、図28に示すように、ブラシ軸(回転軸)の周りに放射状に多数の毛材を配した回転ロールブラシ305を用い、その回転軸がフィルム301の幅方向と平行となるように定位置に固定し、軸線方向長さをフィルム301の幅より長くし、フィルム301の幅全体がブラシに摺接するようにするのが好ましい。
回転ロールブラシ305の外径は、5〜10 cmであるのが好ましい。回転ロールブラシ305の毛材351に関して、屈曲回復率は70%以上であるのが好ましく、直径は0.1〜1.8 mmであるのが好ましく、長さは1〜5 cmであるのが好ましい。回転ロールブラシ305の毛材351のブラシ摺接面における密度は100〜500本/cm2 であるのが好ましい。本明細書において、「屈曲回復率」とは、長さ約26 cmの毛材繊維を交差させた2本1組のチェーン状のループを作り、上方ループを止め金に固定し、下方ループに荷重(毛材繊維の繊度[デニール]の1/2の荷重[g]の重り)を3分間かけることにより、ループの交差点で形成された1対の松葉状に屈曲したサンプルを、長さ約3 cmにカットして採取し、60分間放置した後測定した開角度(θ4)から、式:θ4/180 × 100(%)に従って計算したものである。毛材351の先端の形状に特に制限はないが、略U字形状又はテーパ形状であるのが好ましい。毛材351の材質にも特に制限はないが、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリエチレン等の合成樹脂が好ましい。
回転ロールブラシ305は、ブラシ摺接面における圧力が1〜490 kPa(0.01〜5 kgf/cm2)となるようにフィルム301に摺接するのが好ましい。回転ロールブラシ305の周速(フィルム301の進行方向と逆方向に回転させる速度)は、1〜50 m/分とするのが好ましい。
線状痕の長さ及び深さは、所望の直線的易裂性の度合いを満たすように、フィルム301の走行速度、パターン・ロール302の周速、ダイヤモンド微粒子304の粒子径、パターン・ロールの外径、ノズル303の風圧、回転ロールブラシ305の圧力、ニップロール312及び313により与える張力等を適宜設定することにより調整する。
(II) フィルムに斜めの線状痕を形成する場合
図29は、フィルム301の進行方向に対して斜めの線状痕を形成する装置の一例を示す。図24と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。図29に示す装置は、線状痕形成手段として多数の小さなパターン・ロール321を接続したパターン・エンドレスベルト306を備えるとともに、フィルム押しつけ手段としてエンドレスベルトに多数の毛材371を配したエンドレスブラシ307を備えている。図30(a)は、図29に示す装置において、パターン・エンドレスベルト306をフィルム301の幅方向に回転させる様子を示す部分拡大平面図であり、図30(b)は図30(a)においてD方向から見た概略断面図である。
パターン・エンドレスベルト306を図30(a)及び(b)のようにフィルム301の幅方向に回転させ、小パターン・ロール321を連続的にフィルム301に摺接させることにより、フィルム301の進行方向に対して斜めの線状痕を形成することができる。パターン・エンドレスベルト306を構成するパターン・ロール321の数を多くし、パターン・ロール321の密度を高くするのが好ましい。小パターン・ロール321の軸線方向長さ及び外径は5〜10 cmであるのが好ましい。
斜め方向の線状痕のフィルム進行方向に対する角度は、パターン・エンドレスベルト306の周速とフィルム301の走行速度を適宜調整することにより変更可能である。通常パターン・エンドレスベルト306の周速を1〜100 m/分とする。小パターン・ロール321は、ロール摺接面においてパターン・エンドレスベルト306の進行方向に対して反対方向に回転させる。その周速は、上記(I)で述べたパターン・ロール302の場合と同じく1〜50 m/分である。
エンドレスブラシ307は、その毛材371がフィルム301に摺接しながら移動する方向と、パターン・エンドレスベルト306がフィルム301に摺接しながら移動する方向とが逆となるように回転させるのが好ましい。よって回転方向に関して、エンドレスブラシ307及びパターン・エンドレスベルト306を同じにする。エンドレスブラシ307の毛材371の長さは4〜8 cmであるのが好ましい。エンドレスブラシ307の毛材371の屈曲回復率、直径、ブラシ摺接面における密度、先端形状及び材質に関する好ましい要件は、上記(I)で述べた回転ロールブラシ305の場合と同じである。エンドレスブラシ307のブラシ摺接面における圧力は、上記(I)で述べた回転ロールブラシ305の場合と同じく1〜490 kPa(0.01〜5 kgf/cm2)である。エンドレスブラシ307をフィルム301に摺接させる圧力は、高さ調節ハンドル373を回転し、エンドレスブラシ307の上下位置を適宜設定することにより調節することができる。エンドレスブラシ307の周速は、1〜50 m/分とするのが好ましい。エンドレスブラシ307の周速は、モーター374の回転速度を適宜設定することにより調節することができる。
パターン・エンドレスベルト306及びエンドレスブラシ307は、進行方向長さをフィルム301の幅より長くし、フィルム301の幅全体がパターン・エンドレスベルト306及びエンドレスブラシ307に摺接するようにするのが好ましい。
図31は、フィルム301の進行方向に対して斜めの線状痕を形成する装置の別の例を示す。図24と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。図31に示す装置は、線状痕形成手段として、図32に示すように多数の小さなパターン・ロール322aがガイドレール381a(支持体)に並列に取り付けられてなるロールトレイン308a、及び多数の小さなパターン・ロール322bがガイドレール381b(支持体)に並列に取り付けられてなるロールトレイン308bを備えている。
パターン・ロール322a及び322bを支える支持軸391a及び391bは昇降自在であり、かつロールトレイン308a及び308bはそれぞれガイドレール381a及び381bに沿ってフィルム301の幅方向に直線的に移動できる。昇降自在の支持軸391a及び391b並びにガイドレール381a及び381bからなるガイド手段により、ロールトレイン308a及び308bはフィルム301の幅方向に独立して移動することができる。このためロールトレイン308a及び308bをフィルム301の一端側から他端側にフィルム301と摺接させながら移動させ、他端側に移動し終わった後にフィルム301から離隔して元の位置まで戻るサイクルを繰返させ、その際フィルム301の幅全体にいずれかのロールトレインが常に摺接するようにロールトレイン308a及び308bの移動を制御することにより、フィルムの進行方向に対して斜めの線状痕を形成することができる。ガイド手段としては、支持軸391a及び391bをガイドレール381a及び381bに対して昇降しないようにする代わりに、ガイドレール381a及び381bを昇降自在とする構成であってもよい。
パターン・ロール322a及び322bの軸線方向長さ及び外径は5〜10 cm程度でよい。パターン・ロール322a及び322bのパターン・ロール同士の隙間は、少なくともパターン・ロールのロール幅より狭くし、パターン・ロールの密度を高くするのが好ましい。ロールトレイン308a及び308bのそれぞれの長さはフィルム301の幅より長くする。
図31に示す装置には、フィルム押しつけ手段として、図29に示す装置が有するものと同じエンドレスブラシ307a及び307bが、フィルム301を挟んでロールトレイン308a及び308bに対してそれぞれ平行に設けられている。但しエンドレスブラシ307a及び307bを支える支持部材372,372は昇降自在である。このためエンドレスブラシ307aがロールトレイン308aと同時にフィルム301に摺接するように、その昇降を制御し、かつエンドレスブラシ307bがロールトレイン308bと同時にフィルム301に摺接するように、その昇降を制御することにより、ロール摺接面に常に一定の接触力を与えることができる。
エンドレスブラシ307a及び307bは、その毛材がフィルム301に摺接しながら移動する方向と、ロールトレイン308a及び308bがフィルム301に摺接しながら移動する方向とが逆となるように回転させるのが好ましい。エンドレスブラシ307a及び307bの毛材の屈曲回復率、直径、長さ、ブラシ摺接面における密度、先端形状及び材質に関する好ましい要件、並びにエンドレスブラシ307a及び307bのブラシ摺接面における圧力、エンドレスブラシ307a及び307bの周速は、図29に示す装置が有するエンドレスブラシ307の場合と同じである。
斜め方向の線状痕のフィルム進行方向に対する角度は、ロールトレイン308a及び308bを摺接させる速度とフィルム301の走行速度を適宜調整することにより変更可能である。またパターン・ロール322a及び322bは、ロール摺接面においてロールトレイン308a及び308bの進行に対して反対方向に回転させる。その周速は、上記(I)で述べたパターン・ロール302の場合と同じでよい。
図33(a)及び図33(b)はフィルム301の進行方向に対して斜めの線状痕を形成する装置の別の例を示す。この例では、軸線方向長さがフィルム301の幅より長い2つのパターン・ロール323a及び323bをフィルム301の進行方向において前後に平行に設置している。パターン・ロール323a及び323bの軸線方向長さはフィルム301の幅の2倍以上であるのが好ましい。
パターン・ロール323a及び323bを支える支持軸392a及び392bは昇降自在であり、かつパターン・ロール323a及び323bはそれぞれガイドレール382a及び382bに沿ってフィルム301の幅方向に直線的に移動できる。昇降自在の392a及び392b並びにガイドレール382a及び382bからなるガイド手段により、パターン・ロール323a及び323bはフィルム301の幅方向に独立して移動することができる。このためパターン・ロール323a及び323bをフィルム301の一端側から他端側にフィルム301と摺接させながら移動させ、他端側に移動し終わった後にフィルム301から離隔して元の位置まで戻るサイクルを繰返させ、その際フィルム301の幅全体にいずれかのパターン・ロールが常に摺接するようにパターン・ロール323a及び323bの移動を制御することにより、フィルムの進行方向に対して斜めの線状痕を形成することができる。斜め方向の線状痕のフィルム進行方向に対する角度は、パターン・ロール323a及び323bを摺接させる速度とフィルム301の走行速度を適宜調整することにより変更可能である。
図33に示す装置には、フィルム押しつけ手段として、図31に示す装置が有するものと同じく昇降自在のエンドレスブラシ307a及び307bが、フィルム301を挟んでパターン・ロール323a及び323bに対してそれぞれ平行に設けられている。
なお図29〜図33に示す装置では、フィルム押しつけ手段として、エンドレスブラシを備えているが、上記(I)で述べた空気吹き付け手段を備えてもよい。
(III) フィルムに幅方向の線状痕を形成する場合
図34は、フィルム301に幅方向の線状痕を形成する装置の一例を示す。図29と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。図34に示す装置は、パターン・エンドレスベルト306が、フィルムの進行方向に対して斜めに設けられている以外は、図29及び図30に示す装置と同じである(エンドレスブラシは図示せず)。図34に示す構成の装置を用いて、フィルム301の進行速度、フィルム301の進行方向に対するパターン・エンドレスベルト306の角度、パターン・エンドレスベルト306の周速等の運転条件を適宜設定することにより、フィルム301の幅方向への線状痕を形成することができる。
図35は、フィルム301に幅方向の線状痕を形成する装置の別の例を示す。この例では、多数の小さなパターン・ロール321aを接続したパターン・エンドレスベルト306a、及び多数の小さなパターン・ロール321bを接続したパターン・エンドレスベルト306bが、フィルム301の中心線317を対称軸として対称的に、かつフィルムの進行方向に対して斜めに設けられている。フィルム押しつけ手段として、図29に示す装置に関して述べたのと同じエンドレスブラシを、フィルム301を挟んでパターン・エンドレスベルト306a及び306bとそれぞれ平行に設けるのが好ましい(図示せず)。
図35に示す構成の装置を用いて、フィルム301の進行速度、フィルム301の中心線317に対するパターン・エンドレスベルト306a及び306bの角度、パターン・エンドレスベルト306a及び306bの周速等の運転条件を適宜設定することにより、フィルム301の幅方向への線状痕を形成することができる。
図36は、フィルム301の幅方向に線状痕を形成する装置の別の例を示す。図36に示す装置は、図32に示すロールトレイン308a及び308bが、フィルム301の幅方向に対して斜めに設けられている以外は、図32に示す装置と同じである(エンドレスブラシは図示せず)。図36に示す構成の装置を用いて、フィルム301の進行速度、フィルム301の進行方向に対するロールトレイン308a及び308bの角度、ロールトレイン308a及び308bの摺接速度等の運転条件を適宜設定することにより、フィルム301の幅方向への線状痕を形成することができる。
図37(a)及び図37(b)は、フィルム301の幅方向に線状痕を形成する装置の別の例を示す。図37(b)は図37(a)に示す装置の左側面を示す(図37(a)におけるF方向から見た図である)。この例では、フィルム301の進行方向に対して傾斜した軸線方向を有する2つのパターン・ロール324a及び324bを備えている。パターン・ロール324a及び324bの軸線方向長さは少なくともフィルム301の幅の2倍以上であるのが好ましい。
パターン・ロール324a及び324bを支える支持軸393a及び393bは昇降自在であり、かつパターン・ロール324a及び324bはそれぞれガイドレール383a及び383bに沿ってフィルム301の中心線317に対して所定の角度を保ちながら直線的に移動できる。昇降自在の393a及び393b並びにガイドレール383a及び383bからなるガイド手段により、パターン・ロール324a及び324bはフィルム301の中心線317に対して所定の角度を保ちながら独立して移動することができる。軸線方向長さについて、パターン・ロール324bはパターン・ロール324aより長いので、パターン・ロール324a及び324bは互いに逆方向への進行時にすれ違うことが可能である。このためパターン・ロール324a及び324bをフィルム301の一端側から他端側にフィルム301と摺接させながら移動させ、他端側に移動し終わった後にフィルム301から離隔して元の位置まで戻るサイクルを繰返させ、その際フィルム301の幅全体にいずれかのパターン・ロールが常に摺接するようにパターン・ロール324a及び324bの移動を制御することにより、フィルムの進行方向に対して幅方向の線状痕を形成することができる。
フィルム押しつけ手段として、図37(b)に示すように、昇降自在でかつ直線移動可能な支持軸352a及び352bにそれぞれ支持された回転ロールブラシ305a及び305bを設け、パターン・ロール383a及び383bのフィルム301とのロール摺接面の移動に合わせて移動させるようにする。また軸線方向長さについて、回転ロールブラシ305a及び305bの一方を他方より長くすることにより回転ロールブラシ305a及び305bは互いに逆方向への進行時にすれ違うことが可能である。これによりパターン・ロール383a又は383bのフィルム301とのロール摺接面に対して、常に接触力をかけることができる。回転ロールブラシ305a及び305bの毛材351の屈曲回復率、直径、長さ、ブラシ摺接面における密度、先端形状及び材質に関する好ましい要件は、上記(I)で述べた回転ロールブラシ305の場合と同じである。
なお図34〜図37に示す装置では、運転条件等の設定を適宜変更することにより、フィルム301の進行方向に対して斜めの線状痕を形成することもできる。また図34〜図37に示す装置に関しては、フィルム押しつけ手段として、エンドレスブラシを備えていることを述べたが、上記(I)で述べた空気吹き付け手段を備えてもよい。
以上述べた方法により製造される直線的易裂性を有するフィルムにおいて、上記線状痕の深さはフィルム厚さの1〜40%であるのが好ましい。これによりフィルム強度と良好な直線的易裂性を両立できる。線状痕は、その深さが0.1〜10μmであるのが好ましく、その幅が0.1〜10μmであるのが好ましく、線状痕同士の間隔は10〜200μmであるのが好ましい。
[7] フィルムへの微細孔加工
形状記憶PBT積層フィルムに直線的易裂性を付与するために、PBTフィルム、剛性フィルム及びシーラントフィルムのうちの少なくとも一つの全面に微細な貫通孔を形成してもよい。微細な貫通孔は、特にシーラントフィルムに形成するのが好ましい。微細孔は0.5〜100μmの平均開口径を有し、かつ分布密度は約500個/cm2以上であるのが好ましい。微細孔の分布密度が約500個/cm2未満であると、易裂性が不十分である。なお微細孔密度の上限は技術的に可能な限りいくらでも良く、特に制限されない。
フィルムに微細孔を形成するには、例えば日本国特許第2071842号や特開2002-059487号に開示の方法を採用することができる。例えば日本国特許第2071842号に開示の方法を利用すると、鋭い角部を有する多数のモース硬度5以上の粒子が表面に付着した第一ロール(上記[7]で説明したパターン・ロール302と同様のもの)と、表面が平滑な第二ロールとの間にフィルムを通過させるとともに、各ロール間を通過するフィルムへの押圧力を各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、第一ロール表面の多数の粒子の鋭い角部でフィルムに上記微細孔を多数形成することができる。第二ロールとしては、例えば鉄系ロール、表面にNiメッキ、Crメッキ等を施した鉄系ロール、ステンレス系ロール、特殊鋼ロール等を用いることができる。
[8] セラミック又は金属の蒸着
形状記憶PBT積層フィルムのガスバリア性向上を目的として、PBTフィルムには金属、セラミック等を蒸着したり、樹脂をコーティングしたりすることができる。蒸着するセラミックの具体例としてシリカ、アルミナ等が挙げられる。金属、セラミック等の蒸着は、公知の方法により行うことができる。
[9] 機能性ポリブチレンテレフタレートフィルム
本発明のPBTフィルムに、以下に述べる線状痕及び/又は微細孔を形成することにより、包装材として一層優れた機能を付与することができる。
(I) 直線的易裂性ポリブチレンテレフタレートフィルム
直線的易裂性PBTフィルムは、上記[6]で述べた方法に従ってPBTフィルムの少なくとも一面に多数の実質的に平行な線状痕が形成されたものである。このため原料フィルムの配向性に関わらず一方向への直線的易裂性を有し、任意の位置から線状痕に沿って直線的に裂くことができる。直線的易裂性PBTフィルムを用いて包装袋を製造すると、一定の幅を維持しながら先細りのない帯状に開封できる。また直線的易裂性PBTフィルムは線状痕が貫通していないので、ガスバリア性に優れている。
直線的易裂性PBTフィルムの線状痕の深さはフィルム厚さの1〜40 %であるのが好ましい。これによりフィルム強度と良好な直線的易裂性を両立できる。線状痕は、その深さが0.1〜10μmであるのが好ましく、その幅が0.1〜10μmであるのが好ましく、線状痕同士の間隔は10〜200μmであるのが好ましい。
直線的易裂性PBTフィルムの厚さは約5〜50μmであるのが好ましく、約10〜20μmであるのがより好ましく、例えば約12μmである。約5〜50μmの厚さであれば、十分な保香性及びガスバリア性を有するとともに、光沢性及び印刷特性も良好である。
また直線的易裂性PBTフィルムに金属、セラミック等を蒸着したり、樹脂をコーティングしたりすることができる。具体例としてシリカ、アルミナ等を蒸着することができる。このようなセラミックを蒸着することにより、直線的易裂性PBTフィルムのガスバリア性が向上する。金属、セラミック等の蒸着は、公知の方法により行うことができる。金属、セラミック等はフィルムの線状痕形成面又は非形成面のどちらに蒸着してもよい。本発明の製造方法により得られるPBTフィルムは、熱収縮率が小さいので、蒸着層を形成した場合に、蒸着層が安定する。
また直線的易裂性PBTフィルムは、汎用ポリオレフィン及び特殊ポリオレフィンからなる層を備えた積層フィルムとすることができる。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、アイオノマー(IO)等である。さらに防湿性、ガスバリア性を高める目的で中間層にアルミニウム箔、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム等を備えたものが好ましい。
また積層フィルムにする場合は、PBTフィルムに後述する線状痕を設ける加工を施した後、他のフィルムと積層化するか、上記中間層を介して他のフィルムと積層化することにより製造してもよい。積層化は、各層の間に接着層を設けて押出ラミネーションにより行う。接着層としてはポリエチレン層が好ましい。
フィルムの進行方向(長手方向)に線状痕を形成した直線的易裂性PBTフィルムの用途としては、スティック状お菓子用の包装袋がある。長手方向の線状痕を有する直線的易裂性PBTフィルムを用いることにより、一定の幅を維持しながら先細りのない帯状に開封できるので、お菓子が破損することはない。またおにぎりなどのOPPフィルムを用いた包装は、開封幅に合わせてカットテープ(ティアーテープ)が張り合わせてあるが、長手方向に線状痕を形成した直線的易裂性PBTフィルムは、開口幅を維持して開封できるので、ティアーテープを必要としない。
フィルムの進行方向に対して斜めの線状痕を形成した直線的易裂性PBTフィルムの用途としては、粉末状の薬用、弁当用調味料用等の包装袋がある。斜め方向の線状痕を有する直線的易裂性PBTフィルムを用いることにより、包装袋の角部を容易に斜めに裂くことができる。
フィルムの幅方向(横方向)に線状痕を形成した直線的易裂性PBTフィルムの用途としては、粉末状インスタント食品のスティック状包装袋がある。横方向の線状痕を有する直線的易裂性PBTフィルムを用いることにより、需要が増大しているスティック状包装袋を低コストで製造することができる。
直線的易裂性PBTフィルムには、上記[7]に記載の方法に従って、さらに多数の微細な貫通孔及び/又は未貫通孔を均一に形成することができる。これにより直線的易裂性が一層向上するだけでなく、線状痕方向以外にも易裂性を付与することができる。
(II) ポーラスポリブチレンテレフタレートフィルム
ポーラスPBTフィルムは、上記[7]に記載の方法に従って、PBTフィルムに多数の微細な貫通孔及び/又は未貫通孔を均一に形成したものである。このためポーラスPBTフィルムは、ひねり保持性が高く、ひねり時の裂けも発生せず、ひねり性が良好であり、かつ易裂性を有する。微細孔は0.5〜100μmの平均開口径を有し、かつ密度は約500個/cm2以上であるのが好ましい。微細孔の密度が約500個/cm2未満であると、ひねり保持性が不十分である。
ポーラスPBTフィルムは、PBTフィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好な引き裂き性とひねり性を具備した包装材として有用である。ただしポーラスPBTフィルムからなる包装材にガスバリア性が要求される場合は、微細孔が貫通していないものを用いる。
以上の通り、図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
図1に示す装置を用いて空冷インフレーション成形法によりPBTフィルムを作製した。PBT樹脂(商品名「トレコン1200S」、東レ(株)製、融点:220℃、極限粘度:1.2)を一軸押出機(スクリュー径:50 mm、押出量:50 kg/hr)に投入し、210℃で溶融混練し、押出機中で溶融樹脂を調製した。続いて押出機出口から、210℃の押出樹脂温度及び11.8 MPa(120 kgf/cm2)の押出樹脂圧力で溶融樹脂を押し出し、さらにダイヘッド(ダイ径:150 mm、ダイリップの間隙:0.9 mm)から溶融樹脂のチューブを押し出した。押し出した溶融樹脂のチューブを3.6のブローアップ比で膨張させるとともに、(1) 第一の温風吹出装置より温風(30℃)を噴出させることによりバブルのネック部を185℃に徐冷し、(2) 第二温風吹出装置から温風(30℃)を噴出させることによりバブルの膨張部を160℃に徐冷し、(3) 第三温風吹出装置から温風(50℃)を噴出させることによりフロストライン領域を125℃に徐冷し、(4) バブル領域を100℃に保持しながら20 m/分で引き取り、PBTフィルムを作製した。バブル領域を包囲する円筒状ネットはナイロン製のものとし、アクリル樹脂製の円筒型隔壁は、その上部側面に温風排出口が2箇所設けられており、内側に棒状ヒーターが設けられており、内部上部に開孔率60%の整流板が設けられたものを用いた。
実施例2
押出樹脂温度を205℃とし、押出樹脂圧力を12.7 MPa(130 kgf/cm2)とした以外は、実施例1と同様にしてPBTフィルムを作製した。
実施例3
押出樹脂温度を215℃とし、押出樹脂圧力を10.8 MPa(110 kgf/cm2)とした以外は、実施例1と同様にしてPBTフィルムを作製した。
比較例1
押出樹脂温度を230℃とし、押出樹脂圧力を8.8 MPa(90 kgf/cm2)とした以外は、実施例1と同様にしてPBTフィルムを作製した。
比較例2
整流板を使用しなかった以外は、比較例1と同様にしてPBTフィルムを作製した。
実施例1〜3及び比較例1,2で得られたPBTフィルムの物性を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
・平均膜厚:接触厚さ計により、シートの幅方向における中心部及び両端部の厚さをそれぞれ2点ずつ計6点の膜厚を測定した値を平均した。
・膜厚のバラツキ:PBTフィルムの幅方向における中心部及び両端部の厚さをそれぞれ2点ずつ計6点測定し、そのうちの最大値と最小値との差から求めた。
・引張破断強度:幅10 mm短冊状試験片の引張破断強度をASTM D882に準拠して測定。
・熱収縮率:PBTフィルムを175℃で10分間暴露したときのMD及びTDの収縮率をそれぞれ測定した。
・結晶化度:X線法により測定した。
Figure 2004338364
表1に示すように、本発明の方法により製造した実施例1〜3のPBTフィルムは、結晶化度が高く、膜厚の均一性及び引張破断強度に優れ、かつ熱収縮率が低いことが分かる。実施例1〜3では、PBTフィルムを作製中、バブルは横揺れせず、終始安定していた。これに対して比較例1は、押出樹脂温度をPBT樹脂の融点以上とするので、結晶化度が低く、引張破断強度が劣っていた。比較例2は、整流板を用いないので、フィルム作製中にバブルが横揺れを起こし、不安定であった。
本発明の空冷インフレーション成形法によるポリブチレンテレフタレートフィルムを製造する装置の一例を示す概略図である。 バブルを徐冷する装置の一例を示す概略断面図である。 図3(a)は整流板の一例を示す平面図であり、図3(b)は整流板の別の例を示す平面図であり、図3(c)は整流板のさらに別の例を示す平面図である。 図4(a)は空冷インフレーション成形法により製造したPBTフィルムを逐次二軸冷延伸する装置の一例を示す部分断面概略側面図であり、図4(b)は図4(a)の装置の概略平面図である。 図5(a)は空冷インフレーション成形法により製造したPBTフィルムを長手方向に冷延伸する装置の一例を示す概略側面図であり、図5(b)は空冷インフレーション成形法により製造したPBTフィルムを長手方向に冷延伸する装置の別の例を示す概略側面図であり、図5(c)は空冷インフレーション成形法により製造したPBTフィルムを長手方向に冷延伸する装置のさらに別の例を示す概略側面図である。 空冷インフレーション成形法により製造したPBTフィルムをインライン方式により冷延伸する装置の一例を示す概略図である。 形状記憶PBTフィルム積層体の層構成例を示す断面図である。 形状記憶PBT積層フィルムの別の層構成例を示す断面図である。 形状記憶PBT積層フィルムのさらに別の層構成例を示す断面図である。 形状記憶PBT積層フィルムのさらに別の層構成例を示す断面図である。 形状記憶PBT積層フィルムのさらに別の層構成例を示す断面図である。 形状記憶PBT積層フィルムのさらに別の層構成例を示す断面図である。 形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置の一例を示す概略図である。 形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置の別の例を示す概略図である。 形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置のさらに別の例を示す概略図である。 形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置のさらに別の例を示す概略図である。 形状記憶PBT積層フィルムを製造する装置のさらに別の例を示す概略図である。 蓋体付き容器を製造する装置の一例を示す概略図である。 注湯のために、本発明の形状記憶PBT積層フィルムからなる蓋体を開封した即席食品用容器を示す斜視図である。 注湯のために、本発明の形状記憶PBT積層フィルムからなる蓋体を部分的に破断して開封した即席食品用容器を示す斜視図である。 本発明の蓋体付き容器を半固体状食品用容器として用いた例を示す斜視図である。 図21の蓋体付き容器を開封した状態を示す斜視図である。 食品用トレイに用いられた形状記憶PBT積層フィルムが形状回復する様子を示す概略図である。 フィルムの進行方向に線状痕を形成する装置の一例を示す概略図である。 図24に示す装置において、フィルムがパターン・ロールと摺接する面に圧縮空気を吹き付ける様子を示す部分拡大図である。 図24に示す装置において、フィルムがパターン・ロールと摺接する様子を示す部分拡大横断面図である。 図27(a)はノズルの一例を示す正面図及び右側面図であり、図27(b)はノズルの別の例を示す正面図及び右側面図であり、図27(c)はフードを有するノズルを用いてパターン・ロールに圧縮空気を吹き付ける様子を示す概略図である。 フィルムの進行方向に線状痕を形成する装置の別の例を示す概略図である。 フィルムの進行方向に対して斜めの線状痕を形成する装置の一例を示す斜視図である。 図30(a)は、図29に示す装置においてフィルムがパターン・エンドレスベルトと摺接する様子を示す部分拡大平面図であり、図30(b)は図30(a)においてD方向から見た概略断面図である。 フィルムの進行方向に対して斜めの線状痕を形成する装置の別の例を示す概略図である。 図31に示す装置において、フィルムがロールトレインと摺接する様子を示す部分拡大平面図である。 図33(a)はフィルムの進行方向に対して斜めの線状痕を形成する装置の別の例を示す部分拡大平面図であり、図33(b)は図33(a)においてE方向から見た概略図である。 フィルムの進行方向に対して幅方向の線状痕を形成する装置の一例を示す部分拡大平面図である。 フィルムの進行方向に対して幅方向の線状痕を形成する装置の別の例を示す部分拡大平面図である。 フィルムの進行方向に対して幅方向の線状痕を形成する装置の別の例を示す部分拡大平面図である。 図37(a)はフィルムの進行方向に対して幅方向の線状痕を形成する装置の別の例を示す部分拡大平面図であり、図37(b)は図37(a)においてF方向から見た概略図である。
符号の説明
1・・・インフレーションダイ
10・・・ダイヘッド
100・・・環状オリフィス
11・・・ウェルド部
110・・・押出機出口
111・・・ダイヘッド入口
112・・・温度検出器
12・・・押出機
120・・・スクリーンパック
121・・・圧力検出器
13・・・引取り機ニップロール
14・・・巻き取りリール
15・・・断熱材
16・・・ガイドロール
17・・・ニップロール
18・・・カッター
19・・・ヒーター
2,2’・・・インフレーションPBTフィルム
20・・・第一温風吹出装置
21・・・第二温風吹出装置
22・・・第三温風吹出装置
23・・・隔壁
230・・・温風排出口
231・・・隔壁側面
232・・・隔壁上面
24・・・加熱手段
25・・・円筒状ネット
26・・・空気注入管
27・・・冷却塔
28・・・整流板
3・・・バブル
31・・・ネック部
32・・・膨張部
33・・・バブル領域
34・・・フロストライン
4・・・縦方向延伸部
41・・・遅駆動ロール
42・・・速駆動ロール
43・・・加熱ロール(予備加熱用ロール)
44・・・冷却用ロール
45・・・加熱遅駆動ロール
46・・・冷却速駆動ロール
5・・・テンター(横方向延伸部)
51・・・フィルムクリップローラー
52・・・ギヤ
53・・・温風導入孔
54・・・フード
6・・・エッジ・ポジション制御装置
61・・・ガイドロール
62・・・連結軸
63・・・センサー
7・・・形状記憶ポリブチレンテレフタレートフィルム積層体
71・・・紙シート
72・・・シーラントフィルム層
73・・・ポリエチレン(層)(I)
73’・・・ポリエチレン(層)(II)
73’’・・・ポリエチレン(層)(III)
74・・・接着剤(層)(I)
74’・・・接着剤(層)(II)
74’’・・・接着剤(層)(III)
75・・・剛性フィルム層
76・・・遮光性インク層
77・・・金属箔層
78・・・カール性積層フィルム
80・・・フィルム原反
81・・・他のフィルム又はフィルム積層体の原反
82・・・他のフィルム又はフィルム積層体
83・・・巻きフィルム
84・・・積層フィルム
85・・・賦形積層体
86・・・コート用フィルムの原反
87・・・コート用フィルム
88・・・打ち抜き後のPBTフィルム積層体からなる巻きフィルム
130・・・ガイドロール
131・・・グラビアロール
132・・・乾燥炉
133, 133'・・・圧力調整ロール
134・・・ダイ
135・・・冷却ロール
135’・・・ゴムロール
136・・・冷間加工ロール
137,137’・・・ニップロール
138・・・ヒーター
139・・・冷却ロール
140・・・加熱ロール
141・・・押し型
142・・・加熱ロール
143・・・冷却装置
144・・・巻き取りロール
145・・・加熱ロール
145’・・・当接ロール
146,146’・・・ニップロール
147・・・ヒーター
148・・・たわみ防止用ロール
149・・・ガイドロール
150・・・蓋材シール装置
151・・・シールヘッド
152・・・当接ロール
153・・・食品用トレイ
154・・・即席冷凍食品
155・・・包装用フィルム
156・・・包装商品
157・・・電子レンジ
160・・・タブ部
161・・・マーク
162・・・切り口
163・・・開口部
163a・・・破断部
164・・・フラップ部
164a・・・破断部
170・・・容器
180・・・乾燥麺
301・・・フィルム
302,321,321a,321b,322,322a,322b,323a,323b,324a,324b・・・パターン・ロール
303・・・ブロワー
331・・・吹き出し口
332・・・フード
304・・・ダイヤモンド微粒子
305,305a,305b・・・ロールブラシ
351・・・毛材
306,306a,306b・・・パターン・エンドレスベルト
307,307a,307b・・・エンドレスブラシ
371・・・毛材
308a,308b・・・ロールトレイン
311・・・リール
312,313・・・ニップロール
314,315・・・ガイドロール
316・・・巻き取りリール
317・・・フィルムの中心線
352a,352b・・・支持軸
372・・・支持部材
373・・・高さ調節ハンドル
374・・・モーター
381a,381b・・・ガイドレール
382a,382b・・・ガイドレール
383a,383b・・・ガイドレール
391a,391b・・・支持軸
392a,392b・・・支持軸
393a,393b・・・支持軸

Claims (42)

  1. 環状ダイから押し出した溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂のチューブを空気の注入により膨張させる空冷インフレーション法によりポリブチレンテレフタレートフィルムを製造する方法において、押出樹脂温度を前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点−15℃〜前記融点−5℃とし、かつ押出樹脂圧力を8.3〜13.7 MPaとすることを特徴とする方法。
  2. 請求項1に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は0.8〜1.5であることを特徴とする方法。
  3. 請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂はポリオレフィン及び/又はエラストマーを5〜15質量%含むことを特徴とする方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記環状ダイのリップの間隙は0.8〜1.2 mmであり、ダイ径は120〜250 mmであり、ブローアップ比は2.0〜4.0であることを特徴とする方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、(1) 前記環状ダイの付近に設けられた第一温風吹出装置から温風を噴出させることにより、前記バブルのネック部を前記融点−40℃〜前記融点−25℃に徐冷し、(2) 前記第一温風吹出装置の上方に設けられた第二温風吹出装置から温風を噴出させることにより、前記バブルの膨張部を前記融点−70℃〜前記融点−40℃に徐冷し、(3) 前記第二温風吹出装置の上方に設けられた第三温風吹出装置から温風を噴出させることにより、前記バブルのフロストライン領域を前記融点−130℃〜前記融点−90℃に徐冷し、(4) 前記フロストラインより上方のバブル領域の周囲に間隙をもって設けた隔壁により、前記バブル領域を外部雰囲気から遮断するとともに、前記第一〜第三温風吹出装置から噴出した温風を前記バブル領域の外面に沿って吹き上げることを特徴とする方法。
  6. 請求項5に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記隔壁に複数の温風排出口を設けるとともに、前記隔壁の内側に整流板を設けることにより、前記第一〜第三温風吹出装置から噴出した温風を整流することを特徴とする方法。
  7. 請求項5又は6に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記第二温風吹出装置から噴出した温風により、前記バブルの膨張部を非晶質状態に保持しながら徐冷することを特徴とする方法。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記隔壁は加熱手段を有し、もって前記バブル領域を前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度Tg乃至Tg+65℃の温度に保持することを特徴とする方法。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記バブル領域を円筒状ネットで包囲することにより、前記バブルの横揺れを防止することを特徴とする方法。
  10. 請求項5〜9のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記第一及び第二温風吹出装置から噴出する温風の温度は25〜50℃であり、前記第三温風吹出装置から噴出する温風の温度は前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度Tg乃至Tg+65℃の温度であることを特徴とする方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、得られた空冷インフレーションフィルムをさらに一軸又は二軸に冷延伸することを特徴とする方法。
  12. 請求項11に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記冷延伸を前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度Tg乃至Tg+60℃の温度で行うことを特徴とする方法。
  13. 請求項11又は12に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、空冷インフレーション法によるチューブ状フィルムの形成及び前記一軸又は二軸の冷延伸を連続的に行うことを特徴とする方法。
  14. 請求項11〜13のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、得られたチューブ状フィルムを二分割した後で一軸又は二軸に冷延伸することを特徴とする方法。
  15. 請求項11〜14のいずれかにに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、空冷インフレーション法によるチューブ状フィルムの形成、前記チューブ状フィルムの二分割、及び前記一軸又は二軸の冷延伸を連続的に行うことを特徴とする方法。
  16. 請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られたポリブチレンテレフタレートフィルムであって、結晶化度が35〜40%であり、長手方向及び幅方向の熱収縮率が0.4%以下であることを特徴とするポリブチレンテレフタレートフィルム。
  17. (a) 溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂をチューブ状に押し出す環状ダイと、(b) 得られたポリブチレンテレフタレートチューブ内に空気を注入してバブルを形成する手段と、(c) 前記環状ダイの付近に設けられ、前記バブルのネック部を徐冷する第一温風吹出装置と、(d) 前記第一温風吹出装置の上方に設けられ、前記バブルの膨張部を徐冷する第二温風吹出装置と、(e) 前記第二温風吹出装置の上方に設けられ、前記バブルのフロストライン領域を徐冷する第三温風吹出装置と、(f) 前記第三温風吹出装置の上方で、かつ前記フロストラインより上方のバブル領域の周囲に設けられ、前記バブル領域を外部雰囲気から遮断するとともに、前記第一〜第三温風吹出装置より噴出した温風を前記バブル領域の外面に沿って吹き上げるための隔壁とを具備し、前記隔壁は複数の温風排出口を有することを特徴とする装置。
  18. 請求項17に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、前記隔壁の内側に整流板が設けられていることを特徴とする装置。
  19. 請求項17又は18に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、前記隔壁の内側に加熱手段が設けられていることを特徴とする装置。
  20. 請求項17〜19のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、前記バブルの横揺れを防止するために、前記隔壁の内側に前記バブル領域を包囲する円筒状ネットを具備することを特徴とする装置。
  21. 請求項17〜20のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、前記第二温風吹出装置から噴出した温風により前記バブルの膨張部を非晶質状態で徐冷することを特徴とする装置。
  22. 請求項17〜21のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、得られた空冷インフレーションフィルムを冷延伸する手段をさらに有することを特徴とする装置。
  23. 請求項22に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、前記環状ダイ、前記空気注入手段、前記第一温風吹出装置、前記第二温風吹出装置、前記第三温風吹出装置及び前記隔壁を有する空冷インフレーション手段と、前記冷延伸手段とが前記フィルムの流れに沿って連続的に配置されていることを特徴とする装置。
  24. 請求項23に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造装置において、前記空冷インフレーション手段により形成されたチューブ状フィルムを引き取るニップロールを具備するとともに、前記空冷インフレーション手段と前記冷延伸手段との間に、(1) 前記ニップロールにより引き取られたシート状の前記チューブ状フィルムの耳端位置を一定に制御するエッジ・ポジション制御装置と、(2) 前記耳端位置が一定に制御された前記チューブ状フィルムを二分割する切断手段とをさらに有することを特徴とする装置。
  25. 請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られたポリブチレンテレフタレートフィルムと、紙シート、他の樹脂フィルム及び金属箔からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む他のフィルム又はフィルム積層体とを有し、所定の温度域で第一の形状を記憶させたことを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  26. 請求項25に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記所定の温度域と異なる温度域で第二の形状に変形加工されたことを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  27. 請求項26に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記第一の形状を記憶させた温度以上に曝されることにより、前記第二の形状から前記第一の形状に実質的に戻ることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  28. 請求項27に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記第一の形状に戻る温度は、前記ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度以下であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  29. 請求項28に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記第一の形状に戻る温度は15〜25℃であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  30. 請求項27に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記第一の形状に戻る温度は、前記ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度超〜融点未満であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  31. 請求項30に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記第一の形状に戻る温度は75〜100℃であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  32. 請求項26〜31のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記第一の形状はカール形状であり、前記第二の形状はほぼ平坦な形状又は逆カール形状であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  33. 請求項25〜32のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの少なくとも一面に多数の実質的に平行な線状痕が全面的に形成されており、もって任意の位置から前記線状痕に沿って実質的に直線的に裂くことができることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  34. 請求項33に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記線状痕の深さは前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの厚さの1〜40%であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  35. 請求項33又は34に記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記線状痕の深さは0.1〜10μmであり、前記線状痕の幅は0.1〜10μmであり、かつ前記線状痕同士の間隔は10〜200μmであることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  36. 請求項33〜35のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの少なくとも一面にセラミック又は金属が蒸着されていることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  37. 請求項25〜36のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、順に、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムと、前記紙シートと、シーラントフィルムとを有する層構成であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  38. 請求項25〜36のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、順に、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムと、前記紙シートと、剛性フィルムと、シーラントフィルムとを有する層構成であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  39. 請求項25〜36のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、順に、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムと、剛性フィルムと、シーラントフィルムとを有する層構成であることを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  40. 請求項27〜39のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムにおいて、前記ポリブチレンテレフタレートフィルムの前記紙シート側の面か、前記剛性フィルムの前記シーラントフィルム側の面に遮光性インク層を有することを特徴とする形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルム。
  41. 請求項25〜40のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムからなることを特徴とする包装材。
  42. 請求項25〜40のいずれかに記載の形状記憶ポリブチレンテレフタレート積層フィルムからなることを特徴とする容器用蓋体。

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