JP2004332789A - ヒンジ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1、第2ヒンジ部材の円滑な回動が損なわれることなく、第2ヒンジ部材を回動させるコイルばねの付勢力を大きくできるようにする。
【解決手段】第1ヒンジ部材20には、保持部材50を回動不能に連結する。
保持部材50には、その軸線方向に貫通する一対の収容孔52,52を形成する。各収容孔50には、球体80を回転(自転)可能に収容する。球体80の収容孔52から突出した一端部には、コイルばね70によって付勢された第1当接板61を押圧接触させる。球体80の収容孔52から突出した他端部をコイルばね70の付勢力によって第2ヒンジ部材30の一端面31に押圧接触させる。これにより、第1、第2ヒンジ部材20の回動時には、球体80を一端面31上及び当接板61との接触面上を転動させる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、携帯電話機やノートブック型パソコン等に用いるのに好適なヒンジ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のヒンジ装置は、ヒンジ軸を介して回動可能に連結された第1、第2ヒンジ部材と、この第1、第2ヒンジ部材間のヒンジ軸に回動可能に、かつヒンジ軸の長手方向へ移動可能に外挿された可動部材と、この可動部材を第2ヒンジ部材側へ付勢する付勢手段とを備えている。可動部材は、第1ヒンジ部材に回動不能に、かつ移動可能に連結されている。可動部材の第2ヒンジ部材と対向する端面には、収容凹部が形成されている。各収容凹部には、球体(転動体)がその一部を突出させた状態で回動可能に収容されており、付勢手段によって第2ヒンジ部材の第1ヒンジ部材との対向面に押し付けられている。したがって、第1、第2ヒンジ部材が相対回転すると、各球体は、収容凹部内において自転するとともに、第2ヒンジ部材の対向面上を転動する。第2ヒンジ部材の対向面には、複数のカム凹部が形成されている。各カム凹部は、第2ヒンジ部材が第1ヒンジ部材に対して所定角度範囲内に位置すると、各球体がカム凹部を区画する底面(カム面)に接触するように配置されている。カム凹部の底面のうちの球体が接触する部分は、第2ヒンジ部材の周方向へ向かって傾斜している。したがって、球体がカム凹部の底面に接触すると、付勢手段の付勢力が回動付勢力に変換される。
【0003】
上記構成のヒンジ装置が例えば携帯電話機に用いられる場合には、通常、二つのヒンジ装置が同時に用いられる。二つのヒンジ装置は、互いの軸線を一致させて携帯電話機の左右方向の一端部と他端部とに設けられ、携帯電話機を構成する送話部と受話部とを回動可能に連結する。しかも、ヒンジ装置は、受話部が送話部に対して折畳位置と通話位置との少なくとも一方の位置に回動すると、カム凹部の底面と球体とによって変換された付勢手段の回動付勢力によって当該一方の位置に維持される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−185158号公報(第3頁及び第8頁、並びに第1図及び第5図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のヒンジ装置においては、第1、第2ヒンジ部材が回動するとき、球体が、第2ヒンジ部材の対向面に対しては転動(転がり接触)するが、可動部材の収容凹部の底面に対しては滑り接触する。滑り接触は、転がり接触に対して摩擦抵抗が大幅に大きい。このため、第1、第2ヒンジ部材の回動の円滑さが損なわれるという問題があった。特に、最近の携帯電話機では、ヒンジ装置を左右方向の一端部にのみ使用し、他端部については軸体等によって単に回動可能に連結するようにしたものがある。そのような携帯電話機に用いられるヒンジ装置においては、その回動付勢力を二つのヒンジ装置の合計した回動付勢力と同等にするために、付勢手段の付勢力を従来のヒンジ装置における付勢手段の付勢力のほぼ2倍にしている。この結果、球体と収容凹部の底面との間に発生する滑り摩擦抵抗もほぼ2倍になり、第1、第2ヒンジ部材の回動の円滑さがより一層損なわれるという問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、回動軸線上に互いに対向して配置され、かつ上記回動軸線を中心として相対回動可能に連結された第1、第2ヒンジ部材と、上記第1ヒンジ部材に、上記回動軸線を中心とする周方向へは移動不能に、かつ上記回動軸線方向へは移動可能に連結された自転可能な複数の転動体と、この複数の転動体を上記第2ヒンジ部材の上記第1ヒンジ部材との対向面に押し付ける付勢手段とを備え、上記第1、第2ヒンジ部材の回動時には上記転動体が上記第2ヒンジ部材の上記対向面上を転動し、上記第2ヒンジ部材の上記対向面には、上記第2ヒンジ部材が上記第1ヒンジ部材に対して所定の回動角度範囲に位置しているときに上記複数の転動体にそれぞれ接触することにより、上記付勢手段の付勢力を、上記第2ヒンジ部材を上記第1ヒンジ部材に対して回動させる回動付勢力に変換する複数のカム面が形成されたヒンジ装置において、上記転動体に対し第2ヒンジ部材と逆側において隣接する箇所には、当接部材が上記回動軸線方向へ移動可能に配置され、この当接部材が上記付勢手段によって上記転動体側へ付勢されることによって、上記当接部材の一端面が上記転動体に押圧接触させられ、上記第1、第2ヒンジ部材の回動時には上記転動体が上記当接部材の上記一端面上を転動することを特徴としている。
この場合、上記第1ヒンジ部材には保持部材が回動不能に連結されており、この保持部材には、上記回動軸線方向へ上記保持部材を貫通し、かつ上記複数の転動体をそれぞれ自転可能に収容する複数の収容孔が形成され、上記転動体が、上記収容孔から突出した一端部において上記第2ヒンジ部材の上記対向面と押圧接触し、上記収容孔から突出した他側部において上記当接部材の上記一端面と押圧接触することが望ましい。
上記当接部材は、上記回動軸線上にこの回動軸線方向へ移動可能に配置された第1、第2当接板を有し、上記第1当接板が上記付勢手段によって上記転動体側へ直接付勢されて上記第2当接板に押圧接触し、上記第1当接板によって押圧された上記第2当接板が上記第1当接板と逆側の一端面において上記転動体に押圧接触し、上記第2当接板が上記回動軸線を中心として回動可能とされ、上記第1、第2当接板の互いに対向する端面の少なくとも一方の中央部には、上記第1、第2ヒンジ部材の回動時に他方に対して摺接する環状突出部が形成されていてもよい。
上記当接部材は、上記回転軸線上に互いに対向して配置された第1、第2軌道板と、この第1、第2軌道板間に配置され、両軌道板に対して転動する複数の回転体とを有し、上記第2軌道板が上記付勢手段によって上記転動体側へ付勢され、上記第1軌道板が上記第2軌道板と逆側の一端面において上記転動体に押圧接触していてもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図1〜図7を参照して説明する。
図1は、この発明に係るヒンジ装置10(図2及び図3参照)が用いられた携帯電話機1を示す。この携帯電話機1は、送話部2及び受話部3を備えている。
送話部2の受話部3側における一端部の左右両端部には、連結部2a,2aが形成されている。受話部3の送話部2側における一端部の左右両端部には、連結部3a,3aが形成されている。連結部2a,2aと連結部3a,3aとは、右側に配置されたものどうしが一組とされ、左側に配置されたものどうしが一組とされている。右側の一組の連結部2a,3aは、この発明に係るヒンジ装置10によって回動軸線Lを中心として回動可能に連結されている。左側の一組の連結部2a,3aは、軸体(図示せず)等によって可動軸線Lを中心として回動可能に連結されている。これにより、送話部2と受話部3とが回動軸線Lを中心として回動可能に連結されている。送話部2と受話部3との回動範囲は、両者の前面2b,3bが互いに突き当たった折畳位置と、両者の前面が折畳位置から所定の角度(この実施の形態では160°)だけ離れた図1(B)に示す使用位置との間に規制されている。
【0008】
この発明に係るヒンジ装置10は、図2〜図4に示すように、第1、第2ヒンジ部材20,30、ヒンジ軸40、保持部材50、当接部材60及びコイルばね(付勢手段)70を有している。
【0009】
第1ヒンジ部材20は、円筒状をなしており、その軸線を回動軸線Lと一致させた状態で連結部2aの内部に回動不能に嵌合されている。第1ヒンジ部材20の一端部(図1及び図3において右側の端部)には、底部21が形成されている。この底部21の中央部には、軸線を回動軸線Lと一致させた挿通孔22が形成されている。第1ヒンジ部材20の他端部には、その他端面から一端側へ向って延びる一対の係合溝23,23が形成されている。一対の係合溝23,23は、周方向に180°離れて配置されている。
【0010】
第2ヒンジ部材30は、長さの短い円柱状をなすものであり、その軸線を回動軸線Lと一致させた状態で連結部3aの内部に回動不能に嵌合されている。したがって、図3からも明かなように、第2ヒンジ部材30は、その一端面(対向面)31を第1ヒンジ部材20と対向させている。この一端面31は、回動軸線Lと直交する平面とされている。図5に示すように、一端面31には、一対の凹部32,32が形成されている。一対の凹部32,32は、回動軸線Lを中心とする円周上に180°離れて配置されている。凹部32の深さは、周方向における両端部から中央へ向うにしたがって深くなっている。これに対応して凹部32を区画する底面32aは、周方向における両端部から中央へ向うにしたがって軸線方向の他端側へ向うように傾斜しており、周方向の一端部から中央側へ向って下り勾配をなす第1傾斜面(カム面)32bと、周方向の他端部から中央側へ向って下り勾配をなす第2傾斜面(カム面)32cとを有している。第2ヒンジ部材30の中央部には、軸線を回動軸線Lと一致させた貫通孔33が形成されている。
【0011】
ヒンジ軸40は、互いの軸線を一致させて連設された、頭部41、嵌合軸部42、圧入軸部43及び小径軸部44を有している。ヒンジ軸40の小径軸部44、圧入軸部43及び嵌合軸部42は、第1ヒンジ部材20の挿通孔22に第1ヒンジ部材20の一端側(底部21側)から順次挿入されている。そして、嵌合軸部42が挿通孔22に回動可能に嵌合されている。ヒンジ軸40の頭部41は、底部21に突き当たっている。これにより、第1ヒンジ部材20がその他端側(第2ヒンジ部材30側)から一端側へ向う方向への移動が阻止され、ヒンジ軸40に対して抜け止めされている。挿通孔22を貫通したヒンジ軸40の小径軸部44及び圧入軸部43は、第2ヒンジ部材30の貫通孔33に第2ヒンジ部材30の一端側(第1ヒンジ部材20側)から順次挿入されている。圧入軸部43は、貫通孔33に回動不能に圧入されている。これにより、ヒンジ軸40が第2ヒンジ部材30と一体に回動するようになっている。ヒンジ軸40は、第2ヒンジ部材30に対して回動可能にしてもよい。その場合には、ヒンジ軸40を第1ヒンジ部材20に対して回動可能にしてもよく、回動不能にしてもよい。小径軸部44の先端部は、貫通孔33を貫通して第2ヒンジ部材30の他端側に突出している。そして、貫通孔33から突出した小径軸部44の先端部が図3において想像線で示すように加締められることにより、第2ヒンジ部材30のヒンジ軸40に対する一端側から他端側への移動が阻止され、同方向への抜け止めがなされている。特に、この実施の形態では、第2ヒンジ部材30の一端面31が嵌合軸部42の先端面に突き当たることにより、第2ヒンジ部材30は、他端側から一端側へ向う方向への移動も阻止されている。その結果、第2ヒンジ部材30は、ヒンジ軸40の先端部たる圧入軸部43及び小径軸部44に固定されている。
【0012】
嵌合軸部42の圧入軸部43に隣接する先端部には、円板状をなす保持部材50が回動可能に嵌合されている。この保持部材50の外周面には、一対の係合突出部51,51が周方向に180°離れて配置形成されている。この一対の係合突出部51,51は、第1ヒンジ部材20の一対の係合溝23,23に嵌り込んでいる。これにより、保持部材50が第1ヒンジ部材20と一体に回動するように構成されている。なお、保持部材50は、第1ヒンジ部材20に対して回動軸線L方向へ移動可能になっているが、移動不能にしてもよい。そこで、保持部材50については、第1ヒンジ部材20に一体に設けてもよい。
【0013】
保持部材50には、回動軸線L方向に貫通する一対の収容孔52,52が形成されている。一対の収容孔52,52は、回動軸線Lを中心とする円周上に配置されている。各収容孔52には、球体(転動体)80が回転(自転)可能に収容されている。球体80の外径は、収容孔52の内径とほぼ同一であり、保持部材50の厚さより大きく設定されている。したがって、回動軸線L方向における球体80の一端部と他端部とは、収容孔52から外部に突出している。収容孔52から突出した球体80の一端部は、第2ヒンジ部材30の一端面31に接触している。したがって、第1ヒンジ部材20及び保持部材50と第2ヒンジ部材30とが相対回動すると、球体80が一端面31上を転動する。球体80に代えて円錐台状をなすローラを用いてもよい。その場合には、球体80が転動する第2ヒンジ部材30の一端面31及び後述する第1当接板の61の一端面の少なくともローラが転動する箇所を、ローラの外周面に対応したテーパ面にする。
【0014】
ここで、一対の収容孔52,52は、第2ヒンジ部材30の一対の凹部32,32が配置された円周と同一の半径を有する円周上に配置されている。しかも、収容孔52,52は、周方向へ互いに180°離れて配置されている。したがって、第1、第2ヒンジ部材20,30が所定の位置に回動すると、収容孔52,52に収容された球体80,80は、凹部32,32にそれぞれ入り込み、凹部32,32の底面32a,32aにそれぞれ接触する。球体80は、この実施の形態のヒンジ装置10では、受話部3が折畳位置に回動すると、図5及び図6において実線で示すように、第1傾斜面32bに接触し、受話部3が通話位置に回動すると、図5及び図6において想像線で示すように、第2傾斜面32cに接触する。
【0015】
球体80を間にして第2ヒンジ部材30と逆側には、当接部材60が配置されている。当接部材60は、いずれも円板状をなす第1、第2当接板61,62によって構成されている。第1、第2当接板61,62は、その中央部をヒンジ軸40の嵌合軸部42によって回動可能に貫通されている。第1当接板61の一端面(図3において左端面)は、回動軸線Lと直交する平面とされており、球体80の収容孔52から突出した他端部に接触している。第1当接板61の他端面の中央部には、回動軸線Lを中心とする環状突出部61aが形成されている。この環状突出部61aの先端面には、第2当接板62が回動可能に接触している。
【0016】
第1ヒンジ部材20の内周面とヒンジ軸40の嵌合軸部42の外周面との間には、環状の空間が形成されており、この環状の空間には、軸線を回動軸線Lと一致させたコイルばね70が配置されている。このコイルばね70の一端部は、第1ヒンジ部材20の底部21に突き当たり、第1ヒンジ部材20をヒンジ軸40の頭部41に突き当てている。コイルばね70の他端部は、第2当接板62に突き当たってこれを第1当接板61側に付勢している。したがって、コイルばね70は、第2、第1当接板62,61を介して球体80,80を第2ヒンジ部材30側に付勢し、球体80を第2ヒンジ部材30の一端面31に押圧接触させている。この結果、第1,第2ヒンジ部材20,30、保持部材50、当接部材60及びコイルばね70がヒンジ軸40を介して一体化され、ひいてはヒンジ装置10全体がユニット化されている。
【0017】
上記構成のヒンジ装置10が用いられた携帯電話機1において、いま受話部3が折畳位置に位置しているものとする。このときには、一方の球体80が一方の凹部32の第1傾斜面32bに接触し、他方の球体80が他方の凹部32の第1傾斜面32bに接触している。この状態では、第1、第2当接板61,62を介して球体80に伝達されるコイルばね70の付勢力が第1傾斜面32bにより第2ヒンジ部材30を一方向へ回動させようとする回動付勢力に変換される。この回動付勢力によって、受話部3が使用位置側から折畳位置側へ回動付勢され、折畳位置に維持される。
【0018】
受話部3を回動付勢力に抗して折畳位置から使用位置側へ向って所定角度(この実施の形態では15°)だけ回動させると、球体80が凹部32から脱出する。その後、受話部3を使用位置の所定角度(この実施の形態では15°)だけ手前の位置まで回動させる間は、受話部3の回動に伴って球体80が一端面31上及び当接板61の端面上を転動する。受話部3が折畳位置と使用位置との間の所定角度範囲(160°−15°×2=130°)に位置しているときには、球体80と一端面31及び当接板61との間に作用する摩擦抵抗により、受話部3を任意の位置で停止させることができる。
【0019】
受話部3を使用位置側へさらに回動させて、一方の球体80が他方の凹部32に入り込むとともに、他方の球体80が一方の凹部32に入り込むと、各球体80が第2傾斜面32cに接触する。すると、コイルばね70の付勢力が第2ヒンジ部材30を他方向へ回動させようとする回動付勢力に変換される。この回動付勢力によって受話部3が折畳位置側から使用位置まで回動される。そして、受話部3は、使用位置に達した後はその位置に維持される。
【0020】
使用位置に位置している受話部3を折畳位置側へ回動させる場合において、受話部3を使用位置から折畳位置側へ向って所定角度だけ回動させると、各球体80が凹部32から脱出する。その後、受話部3が折畳位置の所定角度だけ手前の位置まで回動させる間は、球体80が受話部3の回動に伴って第2ヒンジ部材30の一端面31上及び第1当接板61の端面上を転動する。受話部3がさらに折畳位置側へ回動して各球体80が凹部32に入んで第1傾斜面32bに接触すると、コイルばね70の付勢力が第1傾斜面32bによって一方向への回動付勢力に変換される。この回動付勢力によって受話部3が折畳位置まで回動させられるとともに、折畳位置に維持される。
【0021】
ここで、上記構成のヒンジ装置10においては、球体80が一端面31上を転動するとき、球体80は収容孔52内において回転(自転)するが、球体80は収容孔52の内周面に単に接触するだけであり、コイルばね70の付勢力によって収容孔52の内周面に押圧接触させられることがない。したがって、球体80の外周面と収容孔52の内周面との間に作用する摩擦抵抗は小さい。また、コイルばね70の付勢力によって球体80が第1当接板61に押圧接触させられるが、球体80は第1当接板61に対して摺動することなく、転動する。したがって、球体80と第1当接板61との間に作用する摩擦抵抗も小さい。よって、このヒンジ装置10では、仮にコイルばね70の付勢力を従来のヒンジ装置のコイルばねの付勢力の2倍にしたとしても、第1、第2ヒンジ部材20,30を円滑に回動させることができる。
【0022】
特に、この実施の形態のヒンジ装置10においては、第1当接板61が第2当接板62に対して回動可能に接触しているから、第1当接板61と球体80との間に作用する転がり摩擦抵抗によって第1当接板61に球体80の転動方向と同方向を向く回動力が作用したとき、第1当接板61が第2当接板62に対して回動する。しかも、第1当接板61の中央部に環状突出部61aを形成することにより、第1当接板61の端面全体を第2当接板62に接触させる場合に比して接触部分の直径及び面積を小さくしているから、その分だけ摩擦抵抗が減少し、第1当接板61が第2当接板62に対してより軽く回動する。したがって、球体80を円滑に回転させることができ、ひいては第1、第2ヒンジ部材20,30をより一層円滑に回動させることができる。第1、第2ヒンジ部材20,30をさらに円滑に回動させるためには、環状突出部61aの先端面とこれに接触する第2当接板62の端面との少なくとも一方に摩擦抵抗を減少させるための表面処理を施すことが望ましい。なお、第2当接板62は、コイルばね70に直接接触しているので回転することはない。
【0023】
図7は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置10′においては、上記の実施の形態の当接部材60に代えて当接部材60′が用いられている。当接部材60′は、第1、第2軌道板63,64と、第1、第2軌道板63,64間に配置された回転球体(回転体)65とを有している。第1、第2軌道板63,64は、円板状をなし、それぞれの中央部が嵌合軸部42によって回動可能に貫通されている。第1、第2軌道板63,64の両端面は、回動軸線Lと直交する平面として形成されている。第1軌道板63は、その一端面において球体80に接触し、他端面において回転球体65に接触している。第2軌道板64は、その一端面においてコイルばね70と接触し、他端面において回転球体65に接触している。したがって、コイルばね70は、第2軌道板64、回転球体65及び第1軌道板63を介して球体80を第2ヒンジ部材30側へ付勢している。
【0024】
上記構成のヒンジ装置10′においては、第1軌道板63が回転球体65を介して第2軌道板64に接触しているので、第1、第2軌道板63,64間に作用する回転抵抗は上記のヒンジ装置10の第1、第2当接板61,62間に作用する回転抵抗より小さい。したがって、第1、第2ヒンジ部材20,30をさらに円滑に回動させることができる。
【0025】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、コイルばね70の付勢力を回動付勢力に変換するカム面として第1、第2傾斜面32b,32cの二つを設けているが、いずれか一方だけを設けるようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、第1、第2ヒンジ部材を従来のものに比して大幅に円滑に回動させることができ、その分だけコイルばね等の付勢手段の付勢力を大きくすることができる。換言すれば、仮に付勢手段の付勢力を2倍にしたとしても、第1、第2ヒンジ部材を従来のものと同等以上の円滑さをもって回動させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯電話機を示す図であって、図1(A)は受話部を使用位置に回動させた状態で示す正面図、図1(B)は図1(A)のB矢視図である。
【図2】この発明に係るヒンジ装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図3】同実施の形態の断面図である。
【図4】同実施の形態の分解斜視図である。
【図5】同実施の形態の凹部と球体との関係を示す図である。
【図6】図5のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図7】この発明に係るヒンジ装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
L 回動軸線
10 ヒンジ装置
10′ ヒンジ装置
20 第1ヒンジ部材
30 第2ヒンジ部材
31 一端面(対向面)
32b 第1傾斜面(カム面)
32c 第2傾斜面(カム面)
50 保持部材
52 収容孔
60 当接部材
60′ 当接部材
61 第1当接板
61a 環状突出部
62 第2当接板
63 第1軌道板
64 第2軌道板
65 回転球体(回転体)
70 コイルばね(付勢手段)

Claims (4)

  1. 回動軸線上に互いに対向して配置され、かつ上記回動軸線を中心として相対回動可能に連結された第1、第2ヒンジ部材と、上記第1ヒンジ部材に、上記回動軸線を中心とする周方向へは移動不能に、かつ上記回動軸線方向へは移動可能に連結された自転可能な複数の転動体と、この複数の転動体を上記第2ヒンジ部材の上記第1ヒンジ部材との対向面に押し付ける付勢手段とを備え、上記第1、第2ヒンジ部材の回動時には上記転動体が上記第2ヒンジ部材の上記対向面上を転動し、上記第2ヒンジ部材の上記対向面には、上記第2ヒンジ部材が上記第1ヒンジ部材に対して所定の回動角度範囲に位置しているときに上記複数の転動体にそれぞれ接触することにより、上記付勢手段の付勢力を、上記第2ヒンジ部材を上記第1ヒンジ部材に対して回動させる回動付勢力に変換する複数のカム面が形成されたヒンジ装置において、
    上記転動体に対し第2ヒンジ部材と逆側において隣接する箇所には、当接部材が上記回動軸線方向へ移動可能に配置され、この当接部材が上記付勢手段によって上記転動体側へ付勢されることによって、上記当接部材の一端面が上記転動体に押圧接触させられ、上記第1、第2ヒンジ部材の回動時には上記転動体が上記当接部材の上記一端面上を転動することを特徴とするヒンジ装置。
  2. 上記第1ヒンジ部材には保持部材が回動不能に連結されており、この保持部材には、上記回動軸線方向へ上記保持部材を貫通し、かつ上記複数の転動体をそれぞれ自転可能に収容する複数の収容孔が形成され、上記転動体が、上記収容孔から突出した一端部において上記第2ヒンジ部材の上記対向面と押圧接触し、上記収容孔から突出した他側部において上記当接部材の上記一端面と押圧接触することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
  3. 上記当接部材が、上記回動軸線上にこの回動軸線方向へ移動可能に配置された第1、第2当接板を有し、上記第1当接板が上記付勢手段によって上記転動体側へ直接付勢されて上記第2当接板に押圧接触し、上記第1当接板によって押圧された上記第2当接板が上記第1当接板と逆側の一端面において上記転動体に押圧接触し、上記第2当接板が上記回動軸線を中心として回動可能とされ、上記第1、第2当接板の互いに対向する端面の少なくとも一方の中央部には、上記第1、第2ヒンジ部材の回動時に他方に対して摺接する環状突出部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ装置。
  4. 上記当接部材が、上記回転軸線上に互いに対向して配置された第1、第2軌道板と、この第1、第2軌道板間に配置され、両軌道板に対して転動する複数の回転体とを有し、上記第2軌道板が上記付勢手段によって上記転動体側へ付勢され、上記第1軌道板が上記第2軌道板と逆側の一端面において上記転動体に押圧接触していることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ装置。
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