JP2004332184A - 風合いと耐久性に優れた天然繊維素材のプリーツ加工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のプリーツ加工法は加工操作が複雑であったり、耐久性が弱いという問題のほかに、製品の変色、繊維の損傷、風合いの硬化等の品質上の問題を生じやすい。更に高価で有害な薬剤を含めて多種類の薬剤を使用することによる経済性・安全性の問題があり、また高温で熱処理する場合が多いが、熱処理中に、架橋薬剤や架橋補助薬剤が気化して職場環境や設備を汚染したり、悪臭が発生するという問題もある。
【解決手段】親水性のジクロルトリアジン系化合物の単独或いは混合物を架橋薬剤として用いて加工する際に、酸結合剤と共に高濃度の尿素を繊維材料に付与して熱処理加工する新しいプリーツ加工法を見出した。この加工法は天然繊維材料に対して風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を、環境問題を生じない方法で容易確実に達成し、プリーツ加工製品の着用快適性を向上すると共に、より広い用途を開拓する事を目的とするものである。
【選択図】なし
【解決手段】親水性のジクロルトリアジン系化合物の単独或いは混合物を架橋薬剤として用いて加工する際に、酸結合剤と共に高濃度の尿素を繊維材料に付与して熱処理加工する新しいプリーツ加工法を見出した。この加工法は天然繊維材料に対して風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を、環境問題を生じない方法で容易確実に達成し、プリーツ加工製品の着用快適性を向上すると共に、より広い用途を開拓する事を目的とするものである。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は親水性置換基を有するジクロル−S−トリアジン系化合物と天然繊維材料とを架橋反応させてプリーツを形成させる際に、酸結合剤を共存させ、同時に、或いは別々に高濃度の尿素を繊維に付与して予備乾燥し、熱処理する事によってプリーツ加工する事を特徴とする天然繊維材料の風合いと耐久性に優れたプリーツ加工法である。
より具体的には、本発明は絹、羊毛、カシミア、アルパカ、アンゴラ、獣毛などの蛋白質系繊維材料、綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロースなどのセルロース系繊維材料の素材、編み物、織物、不織布などをプリーツ加工するに当たって、塩化シアヌルから誘導される親水性のジクロル−S−トリアジン誘導体水溶液の単独或いは混合物を使用し、理論量よりやや過剰量の酸結合剤を共存させ、同時に、或いは別々に高濃度の尿素水溶液を繊維に付与して予備乾燥し、熱処理する事によってプリーツ加工する事を特徴とする天然繊維材料の風合いと耐久性に優れたプリーツ加工法である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性を有する合成繊維類、例えばポリエステル繊維は単に高熱を加えるだけで耐久性のあるプリーツ加工ができるので、多くのプリーツ加工製品が販売されている。一方天然繊維素材は単に熱を加えるだけでは耐久性のあるプリーツがかかり難く、洗濯等の水処理中或いは着用中にプリーツが消滅してしまうので、架橋薬剤や加工樹脂等を用いる加工法が種々研究されている。
例えば綿の場合は、古くはパーマネントプレス加工といわれる加工法があるが、この方法はジメチロールジヒドロキシエチレン尿素をポストキュア方式で反応させ樹脂化させると共にプリーツを付与する方法である。同様に架橋薬剤としてグリシジルエーテル系化合物、グリオキザール系化合物及びエピクロルヒドリン等各種の薬剤を用いる樹脂加工系の方法が数多く研究されている。
最近では樹脂なしプリーツ加工法として、特開平10−259570号公報、特開平11−124768号公報、特開平11−131368号公報に記載がある様に、液体アンモニア加工の際に高温水処理或いはスチーミング処理する事によって、セルロースの結晶転換を行う方法が公開されている。
【0003】
羊毛の場合、有名な加工法はシロセット加工法がある。この場合はモノエタノールアミンサルフェート等の還元性水溶液を生地に噴霧して与え、高熱処理するという方法が知られている。この方法の改良法として特開平6−306762号公報に分子量10,000以下の低分子蛋白質、例えばシルクフィブロインや羊毛ケラチンを付与した後、130℃以下の温度で乾燥せしめ、ついで該布帛を縫製、プリーツ形成後、湿熱処理を施すプリーツ加工法が公開されている。
しかしながら、これら公知のプリーツ加工法はそれぞれ多くの問題点を抱えている。先ず、合成繊維の場合は、吸湿性、保湿性等の着用快適性という点で天然繊維に及ばないだけでなく、廃棄物となった時の生分解性に問題があり、環境上の問題を生じやすい。また合成繊維の原料である石油資源はいずれ枯渇するであろうし、近く生産のピークを迎え、一両年中に高騰すると予測されている。即ち、環境保護と循環型社会の構築という観点からも天然繊維の活用が望ましい。
綿の場合は樹脂形成薬剤を使う場合が多いが、その多くのものは高価で有毒な上に、悪臭を発したり繊維が変色する場合もあり、経済性・安全性・品質面から問題があるだけでなく、プリーツ加工効果も耐久性が乏しく、風合いも低下する場合が多い。特に樹脂加工法の場合は繊維表面上に硬い樹脂膜が形成されるため風合いが粗硬となり易い。
【0004】
プリーツ加工製品は少量多品種生産を必要とする場合も多く、中小企業向けの仕事も多いが、液体アンモニア法の様に設備投資に膨大な費用と敷地が必要となると、中小企業にとっては採用が困難な加工法であり、投資効率の面からも設備投資が困難と考えられる。
特開平6−306762号公報にも記載がある様に、従来の加工法は操作が複雑であったり、耐久性が弱いという問題のほかに、製品の変色、繊維の損傷、風合いの硬化等の品質上の問題がある。更に高価で有毒な薬剤を使用することによる経済性・安全性の問題があり、なお多くの解決を要する問題が残されている。特にプリーツ加工は高温で熱処理する場合が多いが、高熱処理中に、架橋薬剤や助剤等が気化して職場環境を汚染したり、悪臭に悩まされる場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記した通り天然繊維材料のプリーツ加工効果を改善するために多くの研究がなされているが、経済性・安全性・品質上・環境上の諸問題等、多かれ少なかれ、なお多くの解決を要する問題点が残されている。
石油資源から造られている合成繊維類のプリーツ加工製品は、繊維が熱可塑性を有する事もあって、さほど問題も無く実用化されているが、合成繊維素材は天然繊維素材に比べて、生分解性やリサイクル性が劣っており廃棄物問題などの環境問題を生じやすい上に、吸湿性が低い事が原因となって着用快適性も劣るので、天然繊維材料を対象とした経済性と風合い並びに耐久性の優れたプリーツ加工法の開発が渇望されていた。
本発明者等は塩化シアヌルから誘導される親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物の単独或いは混合物を用いる天然繊維材料の新しいプリーツ加工法を探索研究した結果、ノンホルマリン、ノン樹脂、ノンガス法と言ってよい地球環境並びに職場環境に優しく、プリーツ加工効果も大きい本発明方法を見出した。
即ち本発明は天然繊維材料のプリーツ加工効果を、環境問題を生じない工業的に有利な方法によって容易確実に高め、プリーツ加工製品の着用快適性を向上し、広範囲の用途を開拓する事を目的とするものであり、その目的にそった風合いと耐久性の優れたプリーツ加工製品を提供しようとするものである。
【0006】
我々は先に同様な加工目的を達成する為に、親水性の置換基を有するジハロゲノ−S−トリアジン系化合物と酸結合剤の水溶液を繊維材料に付与してから、一定の範囲内に水分が残る様に半乾燥した状態で、高温でプリーツをかける方法によって天然繊維材料に風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を施す事が可能であることを見出して特許出願したが、この方法は湿った状態の布を取り扱う必要がある為、少量の布を取り扱う場合はさほど問題ないが、大量の布を加工する場合は薬剤付与後の布の水分の管理と布の保存性、操作性等、工程中の湿った布の取り扱いに難点があった。
そこで引き続き研究を進めた結果、高濃度の尿素を付与してやれば、一定範囲の水分を残す為の半乾燥の必要性が無くなり、予備乾燥を充分行なう事が可能となった。その結果、布の取り扱いや保存性が極めて容易となり、大量の連続的加工が可能となっただけでなく、プリーツの強度と耐久性等の品質が一段と向上した。
【0007】
従来反応性染料等の捺染の際に、染料と共に尿素を加えて加工する方法が知られているが、この場合の尿素の添加濃度はせいぜい5〜10%程度に過ぎないが、この程度の濃度では我々のプリーツ加工の目的は達成できない。
前記した通り、我々の発明は、これほど高濃度の尿素を添加しても薬剤の溶解性、加工操作性及び乾燥性等に全く問題が無く、より優れた加工効果の元に目的が達成できる事を見出した点は驚くべき発見と言わなければならない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者はかかる経済性、安全性、品質上、或いは環境上の諸問題を解決し、地球環境に優しく、風合いと耐久性の優れた天然繊維素材のプリーツ加工法の実用化研究を重ねた結果、親水性の置換基を有するジクロル−S−トリアジン系化合物の単独或いは混合物と高濃度の尿素及び理論量よりもやや過剰量の酸結合剤を天然繊維材料に付与してから予備乾燥したあと、100〜230℃好ましくは130〜200℃の高温でプリーツをかけ、引き続き高圧或いは常圧で蒸気加熱或いは乾熱処理する事によって天然繊維材料に風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を施す事が可能であることを見出した。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロース等のセルロース系繊維材料或いは絹、羊毛、アルパカ、アンゴラ、獣毛等の蛋白質系繊維材料等、分子構造中にアルコール性水酸基、アミノ基、チオール基等を有する天然繊維材料或いは半合成繊維材料の単独或いは混紡、交織、複合系繊維或いは不織布にプリーツを付与するに当たって、親水性の置換基を有するジクロル−S−トリアジン系化合物と酸結合剤、並びに高濃度の尿素を含浸させ、更に必要に応じて浸透剤やアルカノールアミン類を付与して予備乾燥したあと、熱処理してプリーツを形成させ、更に必要に応じて引き続き湿熱処理或いは乾熱処理する事によって架橋結合を完結させる加工法によって、天然繊維材料に風合いと耐久性の優れたプリーツを付与する事を目的とするものである。
本発明の目的は高品質のプリーツ加工或いはしわ加工を施す事であるが、この加工法は同時に良質な形態安定加工を施す事にもつながっている。
【0010】
本発明で用いる事が出来る親水性の置換基を有するジクロル−S−トリアジン誘導体とは、具体的には、トリハロゲノ−S−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルを主原料として用い、カルボキシル基、水酸基、チオール基、スルファミノ基、スルフォン酸基等の水溶性或いは親水性置換基を有するアニリン類、フェノール類、チオフェノール類、アミノ酸類、トリアジン類等の単体或いは混合物を塩化シアヌルに対して1モル比を、酸結合剤を共存させ中性乃至弱アルカリ性で縮合させるか、或いは塩化シアヌルを重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、カセイソーダ、カセイカリ、水酸化マグネシューム、珪酸ソーダ等を用いて中性乃至弱アルカリ性で加水分解させる公知の方法によって得る事が出来る無色の化合物である。これらの化合物は純粋である必要はなく、2種類以上の混合物と塩化シアヌルを反応させたものであっても良いし、純粋に作られた物をあとから混合して多成分系として使用しても良い。
【0011】
トリハロゲノ−S−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルと反応させる事が出来る化合物とは具体的には次のような化合物である。
D−アラニン、β−アラニン、D−グルタミン酸、L−グルタミン酸、グリシルグリシン、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、γ−アミノ酪酸、L−アルギニン、L−シスチン、L−ロイシン、メタニル酸、スルファニル酸、2,5−ジスルファニル酸、ナフチオン酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、フェノールスルフォン酸、ジオキシクロルトリアジン、シアヌル酸、ピロカテキン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、アミドール、プロトカテキュ酸、C酸、G酸、J酸、γ酸、H酸、4,4−ジアミノスチルベン−2,2−ジスルフォン酸、サリチル酸、ジチオクロルトリアジン、アミノオキシクロルトリアジン、アミノジオキシトリアジン、エタノールアミン、プロパノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリメチル(2−ヒドロキシルエチル)アンモニュウムクロライド、チオサリチル酸、チオアセトアミド、チオカルボヒドラジド、チオグリコール酸、1−チオグリセロール、チオジグリコール、トリグリコールジメルカプタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ビス(2−メルカプトエチル)サルファイト、α−ヒドロキシイソ酪酸、尿素、チオ尿素、チオセミカルバジド、1−チオグリセロール、チオカルボヒドラジド、ヒドロキシルアミン、スルファミン酸、重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、苛性ソーダ、重炭酸カリ、炭酸カリ、苛性カリ、水酸化マグネシューム、水酸化リチウム等を挙げる事が出来る。
【0012】
これらの化合物が具備すべき条件は、塩化シアヌルと反応する置換基を有することと、同時に親水性の置換基を有するか或いは反応生成物に親水性を付与することができる化合物である。本発明で用いられる加工薬剤の出発原料、塩化シアヌルは水不溶性であるが、これらの親水性化合物と反応させた後、全体として親水性となれば良い。トリクロル−S−トリアジンとこれら親水性化合物とを反応させた生成物とは具体的には次のような化合物の単体或いは混合物を例として挙げることが出来る。
2,6−ジクロル−4−(α−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(γ−カルボキシプロピルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(α−カルボキシ−γ−カルボキシプロピルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−ヒドロキシプロピルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(カルボキシメチルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォ−4−オキシ−5−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−スルフォフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−スルフォフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3,6−スルフォ−8−オキシナフタレン−1−イルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4,8−スルフォナフタレン−2−イルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンK塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンLi塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンMg塩
2,6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−オキシ−6−クロル−S−トリアジン−2−イルオキシ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−チオ−6−クロル−S−トリアジン−2−イルチオ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4,6−ジオキシ−S−トリアジン−2−イルオキシ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(3,5−ジオキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4(3−オキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4(4−オキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4(4−カルボキシメトキシ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−スルフォエチルアミノ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−カルボキシメチルチオ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−スルフォニルオキシエチルアミノ)−S−トリアジンNa塩
4,4’−ビス(4,6−ジクロロ−S−トリアジン−2−イルアミノ)−スチルベン−2,2’−ジスルフォニックアシッドNa塩
2,6−ジクロル−4−カルバモイルアミノ−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−チオカルバモイルアミノ−S−トリアジン
親水性の置換基を有するジクロルトリアジン類は、この他にも数多くの有効な化合物が考えられるのであって、本発明はこれらの具体例に制約されるものではない。要は親水性置換基を有する化合物であることと、活性ハロゲン原子又はそれに類する反応基を2個以上有する事がポイントである。また、活性塩素を有する化合物としてはS−トリアジン系に限らず、ピリダジン系、ピリミジン系等の中で、活性塩素を2個以上有する化合物も有効である。尚、上記の化合物は全ての場合に水溶性置換基がアルカリ金属塩或いはアルカリ土類金属塩となっている場合も含まれている。
【0013】
本発明の構成要素の中でプリーツ加工の熱処理工程における繊維中の尿素含有量は極めて重要な構成要素の一つである。薬剤・助剤類を付与する方法としては架橋薬剤、尿素及び酸結合剤等、全薬剤・助剤類を同時に混合して繊維に付与する方法が可能であるが、尿素水溶液を架橋薬剤の付与とは別に付与する事も可能であり、架橋薬剤付与以前に或いは以後に尿素水溶液を単独で高濃度に溶解して付与する事も出来る。
この場合の好ましい尿素の濃度は、繊維材料と生地の種類によっても異なってくるが、架橋薬剤溶液に対して外数で15%から飽和濃度に至るまでの範囲内で加えると良い。
尿素の飽和濃度というのは水の場合、温度によって変化し、0℃で40%、10℃で45.7%、20℃で51.9%、30℃で57.2%、40℃で623%、50℃で67.2%溶解するので、薬剤と尿素を同時に溶解する場合にもこれらの値は参考となる。
薬剤を調整する温度を室温付近の温度或いはやや加温された温度で行なえば、水の場合は尿素を50〜60%まで溶解する事が可能であるので、薬剤が溶解している場合の最高濃度は、薬剤・助剤濃度によっても変化するが、尿素単独の場合よりもやや低めの値が採用される。
尿素を単独で水に溶解して繊維に付与する場合は、濃度は15%から飽和濃度、より好ましくは20%から飽和濃度(例えば液温30℃の場合は57.2%)までの範囲内の水溶液として含浸、噴霧、塗布等の手段で繊維に付与して予備乾燥すればよい。なお、尿素は吸熱溶解のため、予め高めの温水を使うか或いは加熱する事によって目的の水温に保つ事が出来る。
尿素濃度が低い状態、例えば10%以下の尿素濃度の水溶液で付与して予備乾燥して熱処理してもプリーツは弱くしかかからないか或いは耐久性が弱い。
【0014】
本発明において、水溶性ジクロルトリアジン系化合物を用いて、一定量の尿素含有率の元でプリーツ加工を施すに当たって、酸結合剤としてアルカリ金属或いはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、珪酸塩、水酸化物等のアルカリ性物質を共存させる事が必要であるが、それらの具体例を挙げると次のような化合物である。
重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、苛性ソーダ、水酸化マグネシューム、第3燐酸ソーダ、第2燐酸ソーダ、水酸化リチウム、炭酸カリ、苛性カリ、重炭酸カリ、酢酸ソーダ、酢酸カリ等を挙げる事が出来る。
これらの添加量は架橋薬剤から発生してくる酸を中和するに必要な理論量か或いはやや過剰量が好ましい。
更に繊維や糸の種類或いは前工程までの処理条件によっては繊維の水なじみ性が悪い場合があるので、市販のノニオン系浸透剤、例えば明成化学工業(株)製マイネックスSO等を0.05〜0.5%程度加えると薬剤溶液の繊維に対する湿潤性が改善され良い結果をもたらす。
また、繊維の強度を補強・維持する為にアルカノールアミン類を少量添加すると効果的である場合が多い。
【0015】
本発明でプリーツ加工される天然繊維素材は単品でも混紡、交織品でもよく、いわゆる合成繊維を含めた複合系繊維であってもよい。
具体的には木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロース等、分子構造中にアルコール性水酸基を有する繊維材料か、或いは絹、羊毛、カシミア、アルパカ、アンゴラ、獣毛等の蛋白質系繊維材料の単独或いは混合繊維を成分とする織物、編物、不織布等の繊維素材である。
これらの繊維素材は布帛の状態或いは織編み物製品にした後、或いは工程途中の半製品の段階で加工することも可能である。
これらの加工対象素材はポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン等石油系合成繊維素材との複合系であってもよい。
【0016】
本発明の加工薬剤ジクロルトリアジン類は、ドイツ公開公報2357252号、或いはアメリカ特許公報5601971号等に記載があるように、公知の合成法に準じて合成することが出来る。
【0017】
本発明の天然繊維材料の加工条件の概要を説明すると、加工薬剤ジクロルトリアジン類を加工目的に応じて純度換算1〜15%濃度の水溶液とし、無水炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、燐酸ソーダ、珪酸ソーダ或いはカセイソーダ等の酸結合剤を、ジクロルトリアジン類に対して1〜10モル比加えた水溶液を作り、その水溶液に対して外数で尿素を20〜60%加えて溶解し、更に必要に応じて市販の浸透剤を0.05〜0.5%及びアルカノールアミン類0.5〜5.0%を加えて溶解した溶液をパッディング液とする。
このパディング液に繊維材料を浸漬、噴霧或いはシャワリング等で付与し、生地の種類に従って絞り率50〜200%程度に絞ったあと予備乾燥に入る。
上記の場合は、1回の浸漬によって予備乾燥に入る場合であるが、尿素水溶液を別に作り、架橋薬剤を付与する前に或いは後に高濃度尿素水溶液を付与して予備乾燥する方法も可能である。
この時の予備乾燥条件は室温付近の温度で自然乾燥しても良いし、やや高めの温度で熱風乾燥してもよい。100℃前後の高温の乾燥機の中或いは高温プレス機などを用いて短時間で強制的に予備乾燥しても良い。
【0018】
次いでプリーツ加工機にかける。プリーツ加工機としては、サイドプリーツ機、クリスタルプリーツ機、プッシュアッププリーツ機、マジョリカプリーツ機或いは連続法しわつけ加工機等がある。その時の熱処理温度は100〜230℃で、熱処理滞留時間は高温の場合は短時間、低温の場合は長時間熱処理する。
実際は数秒間〜数分間でプリーツが形成される。プリーツが形成された布帛をプリーツをつけたまま巻き取り、真空、常圧或いは高圧蒸気加熱機の中で80〜160℃で3〜120分間蒸気加熱或いは乾熱加熱した後ソーピング、水洗して仕上げる。この場合も高温の場合は短時間、低温の場合は長時間熱処理すればよい。
これらの加工条件は天然繊維素材や織物の種類並びに加工目的に応じて上記の条件に制約されることなく、例えば加工効果をより強くするには薬剤の濃度を増加させ、熱処理温度を高温・長時間にするなど自由に変化させることが出来る。
【0019】
【実施例】
以下実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。なお、例中、%は重量%を、部は重量部を意味する。
【0020】
実施例1
45℃の温水6000部に重炭酸ソーダ400部と2,6−ジクロル−4−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液4000部とを加えて溶解し、その溶液に対して33.7%に相当する尿素3500部を加えて溶解した後、ジエタノールアミン200部と市販のノニオン系浸透剤10部を加えて室温で攪拌溶解する。
この浴に綿100%ブロードをパッドして絞った後、100℃で5〜10分間予備乾燥する。この乾燥布帛をプリーツ加工機にかけ、加熱処理温度160〜170℃で数十秒間熱処理しながらプリーツを形成させる。次いで生地をプリーツをかけた状態で巻き取り、真空・高圧蒸気加熱機に入れて、一旦真空にした後、蒸気加圧して、105℃で30分間蒸気加熱する。次いで温水で水洗した後、更に10分間熱水でソーピングして水洗した後、形を整えて乾燥する。
この様に加工して得た綿布のプリーツ保持性は、JIS家庭洗濯機法105法でテストすると5級の結果が得られた。また、5回及び10回洗濯を繰り返す耐久性試験結果によってもプリーツは殆ど変化なく保持されており、硬さがなく風合いも優れている事が証明された。強度も全く問題なく良好であった。
本実施例で尿素を無添加或いは10%以下に添加して同様に処理した場合、プリーツ保持性は2級であり、耐久性も劣っていた。
【0021】
実施例2
前記実施例1に於ける尿素3500部の代わりに尿素5000部を加える以外は同様に処理すると、ほぼ同様な良好な結果が得られ、プリーツ保持性は5級であり、良好なプリーツ耐久性と強度を示し、風合いも良好であった。
【0022】
実施例3
前記実施例1に於ける2,6−ジクロル−4−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液の代わりに2,6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジンNa塩の10%水溶液を用い、ジエタノールアミンの添加を省略する以外は同様にしてパディング液を作る。
このパディング液にシルク羽二重をパッドして絞り、95℃の温風ドライヤー中で数分間予備乾燥する。次いで160〜170℃で数十秒間熱処理しながらプリー形成させる。次いで生地を巻き取り、真空・高圧蒸気加熱機に入れて、一旦真空にした後、蒸気加圧して、105℃で30分間蒸気加熱する。
その後温水を用いて水洗した後、10分間ソーピングして水洗する。
この様に加工した羽二重のプリーツ保持性は、JIS家庭洗濯機法105法でテストすると5級の結果であり、風合いと耐久性が優秀である事が証明された。
【0023】
実施例4
室温の水300部に重炭酸ソーダ20部と、2,6−ジクロル−4−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液200部とを加えて溶解し、ジエタノールアミン10部と市販のノニオン系浸透剤0.5部を加えて室温で攪拌溶解する。
このパッディング浴に綿100%ブロードをパッドして絞った後、95℃で8〜10分間予備乾燥する。次いで45℃の温水70部に尿素30部を加えて溶解した水溶液を作り、この尿素水溶液を噴霧方式によって前記の予備乾燥した生地に付与して乾燥する。この後は実施例1と同様にしてプリーツ加工する。
この様に加工して得た綿布のプリーツ保持性は、JIS家庭洗濯機法105法でテストすると5級の結果が得られた。また、5回及び10回洗濯を繰り返す耐久性試験結果によってもプリーツは殆ど変化なく保持されており、硬さがなく風合いも優れている事が証明された。強度も全く問題なく良好であった。
本実施例で尿素を無添加或いは10%以下に添加して同様に処理した場合、プリーツ保持性は2級であり、耐久性も劣っていた。
【発明の効果】
本発明方法によって天然繊維素材を成分とする繊維材料に対して、高いプリーツ効果と耐久性を有する風合いの良いプリーツ加工或いはしわつけ加工を施すことができる。また、架橋薬剤と尿素を初めとする助剤類を繊維に付与した後、完全な予備乾燥が可能となったので連続法しわつけ加工機への適用も可能である。更に本発明方法の特徴は、樹脂、ホルマリン、有機溶剤などの有害で悪臭のある多種類の高価な薬剤を使用する必要が無く、安価で安全で環境適合性の優れた加工薬剤を用いて、風合いと耐久性に優れたプリーツ加工効果をあげる事が出来る。即ち本発明方法は優れた経済性と操作性の元で、従来、技術上多くの困難を伴っていた天然繊維材料に対して風合いと耐久性に優れたプリーツを付与できるので実用的価値が極めて高く、環境問題にも貢献する優れた加工技術である。
【発明の属する技術分野】
本発明は親水性置換基を有するジクロル−S−トリアジン系化合物と天然繊維材料とを架橋反応させてプリーツを形成させる際に、酸結合剤を共存させ、同時に、或いは別々に高濃度の尿素を繊維に付与して予備乾燥し、熱処理する事によってプリーツ加工する事を特徴とする天然繊維材料の風合いと耐久性に優れたプリーツ加工法である。
より具体的には、本発明は絹、羊毛、カシミア、アルパカ、アンゴラ、獣毛などの蛋白質系繊維材料、綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロースなどのセルロース系繊維材料の素材、編み物、織物、不織布などをプリーツ加工するに当たって、塩化シアヌルから誘導される親水性のジクロル−S−トリアジン誘導体水溶液の単独或いは混合物を使用し、理論量よりやや過剰量の酸結合剤を共存させ、同時に、或いは別々に高濃度の尿素水溶液を繊維に付与して予備乾燥し、熱処理する事によってプリーツ加工する事を特徴とする天然繊維材料の風合いと耐久性に優れたプリーツ加工法である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性を有する合成繊維類、例えばポリエステル繊維は単に高熱を加えるだけで耐久性のあるプリーツ加工ができるので、多くのプリーツ加工製品が販売されている。一方天然繊維素材は単に熱を加えるだけでは耐久性のあるプリーツがかかり難く、洗濯等の水処理中或いは着用中にプリーツが消滅してしまうので、架橋薬剤や加工樹脂等を用いる加工法が種々研究されている。
例えば綿の場合は、古くはパーマネントプレス加工といわれる加工法があるが、この方法はジメチロールジヒドロキシエチレン尿素をポストキュア方式で反応させ樹脂化させると共にプリーツを付与する方法である。同様に架橋薬剤としてグリシジルエーテル系化合物、グリオキザール系化合物及びエピクロルヒドリン等各種の薬剤を用いる樹脂加工系の方法が数多く研究されている。
最近では樹脂なしプリーツ加工法として、特開平10−259570号公報、特開平11−124768号公報、特開平11−131368号公報に記載がある様に、液体アンモニア加工の際に高温水処理或いはスチーミング処理する事によって、セルロースの結晶転換を行う方法が公開されている。
【0003】
羊毛の場合、有名な加工法はシロセット加工法がある。この場合はモノエタノールアミンサルフェート等の還元性水溶液を生地に噴霧して与え、高熱処理するという方法が知られている。この方法の改良法として特開平6−306762号公報に分子量10,000以下の低分子蛋白質、例えばシルクフィブロインや羊毛ケラチンを付与した後、130℃以下の温度で乾燥せしめ、ついで該布帛を縫製、プリーツ形成後、湿熱処理を施すプリーツ加工法が公開されている。
しかしながら、これら公知のプリーツ加工法はそれぞれ多くの問題点を抱えている。先ず、合成繊維の場合は、吸湿性、保湿性等の着用快適性という点で天然繊維に及ばないだけでなく、廃棄物となった時の生分解性に問題があり、環境上の問題を生じやすい。また合成繊維の原料である石油資源はいずれ枯渇するであろうし、近く生産のピークを迎え、一両年中に高騰すると予測されている。即ち、環境保護と循環型社会の構築という観点からも天然繊維の活用が望ましい。
綿の場合は樹脂形成薬剤を使う場合が多いが、その多くのものは高価で有毒な上に、悪臭を発したり繊維が変色する場合もあり、経済性・安全性・品質面から問題があるだけでなく、プリーツ加工効果も耐久性が乏しく、風合いも低下する場合が多い。特に樹脂加工法の場合は繊維表面上に硬い樹脂膜が形成されるため風合いが粗硬となり易い。
【0004】
プリーツ加工製品は少量多品種生産を必要とする場合も多く、中小企業向けの仕事も多いが、液体アンモニア法の様に設備投資に膨大な費用と敷地が必要となると、中小企業にとっては採用が困難な加工法であり、投資効率の面からも設備投資が困難と考えられる。
特開平6−306762号公報にも記載がある様に、従来の加工法は操作が複雑であったり、耐久性が弱いという問題のほかに、製品の変色、繊維の損傷、風合いの硬化等の品質上の問題がある。更に高価で有毒な薬剤を使用することによる経済性・安全性の問題があり、なお多くの解決を要する問題が残されている。特にプリーツ加工は高温で熱処理する場合が多いが、高熱処理中に、架橋薬剤や助剤等が気化して職場環境を汚染したり、悪臭に悩まされる場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記した通り天然繊維材料のプリーツ加工効果を改善するために多くの研究がなされているが、経済性・安全性・品質上・環境上の諸問題等、多かれ少なかれ、なお多くの解決を要する問題点が残されている。
石油資源から造られている合成繊維類のプリーツ加工製品は、繊維が熱可塑性を有する事もあって、さほど問題も無く実用化されているが、合成繊維素材は天然繊維素材に比べて、生分解性やリサイクル性が劣っており廃棄物問題などの環境問題を生じやすい上に、吸湿性が低い事が原因となって着用快適性も劣るので、天然繊維材料を対象とした経済性と風合い並びに耐久性の優れたプリーツ加工法の開発が渇望されていた。
本発明者等は塩化シアヌルから誘導される親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物の単独或いは混合物を用いる天然繊維材料の新しいプリーツ加工法を探索研究した結果、ノンホルマリン、ノン樹脂、ノンガス法と言ってよい地球環境並びに職場環境に優しく、プリーツ加工効果も大きい本発明方法を見出した。
即ち本発明は天然繊維材料のプリーツ加工効果を、環境問題を生じない工業的に有利な方法によって容易確実に高め、プリーツ加工製品の着用快適性を向上し、広範囲の用途を開拓する事を目的とするものであり、その目的にそった風合いと耐久性の優れたプリーツ加工製品を提供しようとするものである。
【0006】
我々は先に同様な加工目的を達成する為に、親水性の置換基を有するジハロゲノ−S−トリアジン系化合物と酸結合剤の水溶液を繊維材料に付与してから、一定の範囲内に水分が残る様に半乾燥した状態で、高温でプリーツをかける方法によって天然繊維材料に風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を施す事が可能であることを見出して特許出願したが、この方法は湿った状態の布を取り扱う必要がある為、少量の布を取り扱う場合はさほど問題ないが、大量の布を加工する場合は薬剤付与後の布の水分の管理と布の保存性、操作性等、工程中の湿った布の取り扱いに難点があった。
そこで引き続き研究を進めた結果、高濃度の尿素を付与してやれば、一定範囲の水分を残す為の半乾燥の必要性が無くなり、予備乾燥を充分行なう事が可能となった。その結果、布の取り扱いや保存性が極めて容易となり、大量の連続的加工が可能となっただけでなく、プリーツの強度と耐久性等の品質が一段と向上した。
【0007】
従来反応性染料等の捺染の際に、染料と共に尿素を加えて加工する方法が知られているが、この場合の尿素の添加濃度はせいぜい5〜10%程度に過ぎないが、この程度の濃度では我々のプリーツ加工の目的は達成できない。
前記した通り、我々の発明は、これほど高濃度の尿素を添加しても薬剤の溶解性、加工操作性及び乾燥性等に全く問題が無く、より優れた加工効果の元に目的が達成できる事を見出した点は驚くべき発見と言わなければならない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者はかかる経済性、安全性、品質上、或いは環境上の諸問題を解決し、地球環境に優しく、風合いと耐久性の優れた天然繊維素材のプリーツ加工法の実用化研究を重ねた結果、親水性の置換基を有するジクロル−S−トリアジン系化合物の単独或いは混合物と高濃度の尿素及び理論量よりもやや過剰量の酸結合剤を天然繊維材料に付与してから予備乾燥したあと、100〜230℃好ましくは130〜200℃の高温でプリーツをかけ、引き続き高圧或いは常圧で蒸気加熱或いは乾熱処理する事によって天然繊維材料に風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を施す事が可能であることを見出した。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロース等のセルロース系繊維材料或いは絹、羊毛、アルパカ、アンゴラ、獣毛等の蛋白質系繊維材料等、分子構造中にアルコール性水酸基、アミノ基、チオール基等を有する天然繊維材料或いは半合成繊維材料の単独或いは混紡、交織、複合系繊維或いは不織布にプリーツを付与するに当たって、親水性の置換基を有するジクロル−S−トリアジン系化合物と酸結合剤、並びに高濃度の尿素を含浸させ、更に必要に応じて浸透剤やアルカノールアミン類を付与して予備乾燥したあと、熱処理してプリーツを形成させ、更に必要に応じて引き続き湿熱処理或いは乾熱処理する事によって架橋結合を完結させる加工法によって、天然繊維材料に風合いと耐久性の優れたプリーツを付与する事を目的とするものである。
本発明の目的は高品質のプリーツ加工或いはしわ加工を施す事であるが、この加工法は同時に良質な形態安定加工を施す事にもつながっている。
【0010】
本発明で用いる事が出来る親水性の置換基を有するジクロル−S−トリアジン誘導体とは、具体的には、トリハロゲノ−S−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルを主原料として用い、カルボキシル基、水酸基、チオール基、スルファミノ基、スルフォン酸基等の水溶性或いは親水性置換基を有するアニリン類、フェノール類、チオフェノール類、アミノ酸類、トリアジン類等の単体或いは混合物を塩化シアヌルに対して1モル比を、酸結合剤を共存させ中性乃至弱アルカリ性で縮合させるか、或いは塩化シアヌルを重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、カセイソーダ、カセイカリ、水酸化マグネシューム、珪酸ソーダ等を用いて中性乃至弱アルカリ性で加水分解させる公知の方法によって得る事が出来る無色の化合物である。これらの化合物は純粋である必要はなく、2種類以上の混合物と塩化シアヌルを反応させたものであっても良いし、純粋に作られた物をあとから混合して多成分系として使用しても良い。
【0011】
トリハロゲノ−S−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルと反応させる事が出来る化合物とは具体的には次のような化合物である。
D−アラニン、β−アラニン、D−グルタミン酸、L−グルタミン酸、グリシルグリシン、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、γ−アミノ酪酸、L−アルギニン、L−シスチン、L−ロイシン、メタニル酸、スルファニル酸、2,5−ジスルファニル酸、ナフチオン酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、フェノールスルフォン酸、ジオキシクロルトリアジン、シアヌル酸、ピロカテキン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、アミドール、プロトカテキュ酸、C酸、G酸、J酸、γ酸、H酸、4,4−ジアミノスチルベン−2,2−ジスルフォン酸、サリチル酸、ジチオクロルトリアジン、アミノオキシクロルトリアジン、アミノジオキシトリアジン、エタノールアミン、プロパノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリメチル(2−ヒドロキシルエチル)アンモニュウムクロライド、チオサリチル酸、チオアセトアミド、チオカルボヒドラジド、チオグリコール酸、1−チオグリセロール、チオジグリコール、トリグリコールジメルカプタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ビス(2−メルカプトエチル)サルファイト、α−ヒドロキシイソ酪酸、尿素、チオ尿素、チオセミカルバジド、1−チオグリセロール、チオカルボヒドラジド、ヒドロキシルアミン、スルファミン酸、重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、苛性ソーダ、重炭酸カリ、炭酸カリ、苛性カリ、水酸化マグネシューム、水酸化リチウム等を挙げる事が出来る。
【0012】
これらの化合物が具備すべき条件は、塩化シアヌルと反応する置換基を有することと、同時に親水性の置換基を有するか或いは反応生成物に親水性を付与することができる化合物である。本発明で用いられる加工薬剤の出発原料、塩化シアヌルは水不溶性であるが、これらの親水性化合物と反応させた後、全体として親水性となれば良い。トリクロル−S−トリアジンとこれら親水性化合物とを反応させた生成物とは具体的には次のような化合物の単体或いは混合物を例として挙げることが出来る。
2,6−ジクロル−4−(α−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(γ−カルボキシプロピルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(α−カルボキシ−γ−カルボキシプロピルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−ヒドロキシプロピルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(カルボキシメチルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォ−4−オキシ−5−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−スルフォフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−スルフォフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3,6−スルフォ−8−オキシナフタレン−1−イルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4,8−スルフォナフタレン−2−イルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンK塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンLi塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンMg塩
2,6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−オキシ−6−クロル−S−トリアジン−2−イルオキシ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−チオ−6−クロル−S−トリアジン−2−イルチオ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4,6−ジオキシ−S−トリアジン−2−イルオキシ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(3,5−ジオキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4(3−オキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4(4−オキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4(4−カルボキシメトキシ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−スルフォエチルアミノ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−カルボキシメチルチオ)−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(4−スルフォニルオキシエチルアミノ)−S−トリアジンNa塩
4,4’−ビス(4,6−ジクロロ−S−トリアジン−2−イルアミノ)−スチルベン−2,2’−ジスルフォニックアシッドNa塩
2,6−ジクロル−4−カルバモイルアミノ−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−チオカルバモイルアミノ−S−トリアジン
親水性の置換基を有するジクロルトリアジン類は、この他にも数多くの有効な化合物が考えられるのであって、本発明はこれらの具体例に制約されるものではない。要は親水性置換基を有する化合物であることと、活性ハロゲン原子又はそれに類する反応基を2個以上有する事がポイントである。また、活性塩素を有する化合物としてはS−トリアジン系に限らず、ピリダジン系、ピリミジン系等の中で、活性塩素を2個以上有する化合物も有効である。尚、上記の化合物は全ての場合に水溶性置換基がアルカリ金属塩或いはアルカリ土類金属塩となっている場合も含まれている。
【0013】
本発明の構成要素の中でプリーツ加工の熱処理工程における繊維中の尿素含有量は極めて重要な構成要素の一つである。薬剤・助剤類を付与する方法としては架橋薬剤、尿素及び酸結合剤等、全薬剤・助剤類を同時に混合して繊維に付与する方法が可能であるが、尿素水溶液を架橋薬剤の付与とは別に付与する事も可能であり、架橋薬剤付与以前に或いは以後に尿素水溶液を単独で高濃度に溶解して付与する事も出来る。
この場合の好ましい尿素の濃度は、繊維材料と生地の種類によっても異なってくるが、架橋薬剤溶液に対して外数で15%から飽和濃度に至るまでの範囲内で加えると良い。
尿素の飽和濃度というのは水の場合、温度によって変化し、0℃で40%、10℃で45.7%、20℃で51.9%、30℃で57.2%、40℃で623%、50℃で67.2%溶解するので、薬剤と尿素を同時に溶解する場合にもこれらの値は参考となる。
薬剤を調整する温度を室温付近の温度或いはやや加温された温度で行なえば、水の場合は尿素を50〜60%まで溶解する事が可能であるので、薬剤が溶解している場合の最高濃度は、薬剤・助剤濃度によっても変化するが、尿素単独の場合よりもやや低めの値が採用される。
尿素を単独で水に溶解して繊維に付与する場合は、濃度は15%から飽和濃度、より好ましくは20%から飽和濃度(例えば液温30℃の場合は57.2%)までの範囲内の水溶液として含浸、噴霧、塗布等の手段で繊維に付与して予備乾燥すればよい。なお、尿素は吸熱溶解のため、予め高めの温水を使うか或いは加熱する事によって目的の水温に保つ事が出来る。
尿素濃度が低い状態、例えば10%以下の尿素濃度の水溶液で付与して予備乾燥して熱処理してもプリーツは弱くしかかからないか或いは耐久性が弱い。
【0014】
本発明において、水溶性ジクロルトリアジン系化合物を用いて、一定量の尿素含有率の元でプリーツ加工を施すに当たって、酸結合剤としてアルカリ金属或いはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、珪酸塩、水酸化物等のアルカリ性物質を共存させる事が必要であるが、それらの具体例を挙げると次のような化合物である。
重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、苛性ソーダ、水酸化マグネシューム、第3燐酸ソーダ、第2燐酸ソーダ、水酸化リチウム、炭酸カリ、苛性カリ、重炭酸カリ、酢酸ソーダ、酢酸カリ等を挙げる事が出来る。
これらの添加量は架橋薬剤から発生してくる酸を中和するに必要な理論量か或いはやや過剰量が好ましい。
更に繊維や糸の種類或いは前工程までの処理条件によっては繊維の水なじみ性が悪い場合があるので、市販のノニオン系浸透剤、例えば明成化学工業(株)製マイネックスSO等を0.05〜0.5%程度加えると薬剤溶液の繊維に対する湿潤性が改善され良い結果をもたらす。
また、繊維の強度を補強・維持する為にアルカノールアミン類を少量添加すると効果的である場合が多い。
【0015】
本発明でプリーツ加工される天然繊維素材は単品でも混紡、交織品でもよく、いわゆる合成繊維を含めた複合系繊維であってもよい。
具体的には木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロース等、分子構造中にアルコール性水酸基を有する繊維材料か、或いは絹、羊毛、カシミア、アルパカ、アンゴラ、獣毛等の蛋白質系繊維材料の単独或いは混合繊維を成分とする織物、編物、不織布等の繊維素材である。
これらの繊維素材は布帛の状態或いは織編み物製品にした後、或いは工程途中の半製品の段階で加工することも可能である。
これらの加工対象素材はポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン等石油系合成繊維素材との複合系であってもよい。
【0016】
本発明の加工薬剤ジクロルトリアジン類は、ドイツ公開公報2357252号、或いはアメリカ特許公報5601971号等に記載があるように、公知の合成法に準じて合成することが出来る。
【0017】
本発明の天然繊維材料の加工条件の概要を説明すると、加工薬剤ジクロルトリアジン類を加工目的に応じて純度換算1〜15%濃度の水溶液とし、無水炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、燐酸ソーダ、珪酸ソーダ或いはカセイソーダ等の酸結合剤を、ジクロルトリアジン類に対して1〜10モル比加えた水溶液を作り、その水溶液に対して外数で尿素を20〜60%加えて溶解し、更に必要に応じて市販の浸透剤を0.05〜0.5%及びアルカノールアミン類0.5〜5.0%を加えて溶解した溶液をパッディング液とする。
このパディング液に繊維材料を浸漬、噴霧或いはシャワリング等で付与し、生地の種類に従って絞り率50〜200%程度に絞ったあと予備乾燥に入る。
上記の場合は、1回の浸漬によって予備乾燥に入る場合であるが、尿素水溶液を別に作り、架橋薬剤を付与する前に或いは後に高濃度尿素水溶液を付与して予備乾燥する方法も可能である。
この時の予備乾燥条件は室温付近の温度で自然乾燥しても良いし、やや高めの温度で熱風乾燥してもよい。100℃前後の高温の乾燥機の中或いは高温プレス機などを用いて短時間で強制的に予備乾燥しても良い。
【0018】
次いでプリーツ加工機にかける。プリーツ加工機としては、サイドプリーツ機、クリスタルプリーツ機、プッシュアッププリーツ機、マジョリカプリーツ機或いは連続法しわつけ加工機等がある。その時の熱処理温度は100〜230℃で、熱処理滞留時間は高温の場合は短時間、低温の場合は長時間熱処理する。
実際は数秒間〜数分間でプリーツが形成される。プリーツが形成された布帛をプリーツをつけたまま巻き取り、真空、常圧或いは高圧蒸気加熱機の中で80〜160℃で3〜120分間蒸気加熱或いは乾熱加熱した後ソーピング、水洗して仕上げる。この場合も高温の場合は短時間、低温の場合は長時間熱処理すればよい。
これらの加工条件は天然繊維素材や織物の種類並びに加工目的に応じて上記の条件に制約されることなく、例えば加工効果をより強くするには薬剤の濃度を増加させ、熱処理温度を高温・長時間にするなど自由に変化させることが出来る。
【0019】
【実施例】
以下実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。なお、例中、%は重量%を、部は重量部を意味する。
【0020】
実施例1
45℃の温水6000部に重炭酸ソーダ400部と2,6−ジクロル−4−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液4000部とを加えて溶解し、その溶液に対して33.7%に相当する尿素3500部を加えて溶解した後、ジエタノールアミン200部と市販のノニオン系浸透剤10部を加えて室温で攪拌溶解する。
この浴に綿100%ブロードをパッドして絞った後、100℃で5〜10分間予備乾燥する。この乾燥布帛をプリーツ加工機にかけ、加熱処理温度160〜170℃で数十秒間熱処理しながらプリーツを形成させる。次いで生地をプリーツをかけた状態で巻き取り、真空・高圧蒸気加熱機に入れて、一旦真空にした後、蒸気加圧して、105℃で30分間蒸気加熱する。次いで温水で水洗した後、更に10分間熱水でソーピングして水洗した後、形を整えて乾燥する。
この様に加工して得た綿布のプリーツ保持性は、JIS家庭洗濯機法105法でテストすると5級の結果が得られた。また、5回及び10回洗濯を繰り返す耐久性試験結果によってもプリーツは殆ど変化なく保持されており、硬さがなく風合いも優れている事が証明された。強度も全く問題なく良好であった。
本実施例で尿素を無添加或いは10%以下に添加して同様に処理した場合、プリーツ保持性は2級であり、耐久性も劣っていた。
【0021】
実施例2
前記実施例1に於ける尿素3500部の代わりに尿素5000部を加える以外は同様に処理すると、ほぼ同様な良好な結果が得られ、プリーツ保持性は5級であり、良好なプリーツ耐久性と強度を示し、風合いも良好であった。
【0022】
実施例3
前記実施例1に於ける2,6−ジクロル−4−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液の代わりに2,6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジンNa塩の10%水溶液を用い、ジエタノールアミンの添加を省略する以外は同様にしてパディング液を作る。
このパディング液にシルク羽二重をパッドして絞り、95℃の温風ドライヤー中で数分間予備乾燥する。次いで160〜170℃で数十秒間熱処理しながらプリー形成させる。次いで生地を巻き取り、真空・高圧蒸気加熱機に入れて、一旦真空にした後、蒸気加圧して、105℃で30分間蒸気加熱する。
その後温水を用いて水洗した後、10分間ソーピングして水洗する。
この様に加工した羽二重のプリーツ保持性は、JIS家庭洗濯機法105法でテストすると5級の結果であり、風合いと耐久性が優秀である事が証明された。
【0023】
実施例4
室温の水300部に重炭酸ソーダ20部と、2,6−ジクロル−4−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液200部とを加えて溶解し、ジエタノールアミン10部と市販のノニオン系浸透剤0.5部を加えて室温で攪拌溶解する。
このパッディング浴に綿100%ブロードをパッドして絞った後、95℃で8〜10分間予備乾燥する。次いで45℃の温水70部に尿素30部を加えて溶解した水溶液を作り、この尿素水溶液を噴霧方式によって前記の予備乾燥した生地に付与して乾燥する。この後は実施例1と同様にしてプリーツ加工する。
この様に加工して得た綿布のプリーツ保持性は、JIS家庭洗濯機法105法でテストすると5級の結果が得られた。また、5回及び10回洗濯を繰り返す耐久性試験結果によってもプリーツは殆ど変化なく保持されており、硬さがなく風合いも優れている事が証明された。強度も全く問題なく良好であった。
本実施例で尿素を無添加或いは10%以下に添加して同様に処理した場合、プリーツ保持性は2級であり、耐久性も劣っていた。
【発明の効果】
本発明方法によって天然繊維素材を成分とする繊維材料に対して、高いプリーツ効果と耐久性を有する風合いの良いプリーツ加工或いはしわつけ加工を施すことができる。また、架橋薬剤と尿素を初めとする助剤類を繊維に付与した後、完全な予備乾燥が可能となったので連続法しわつけ加工機への適用も可能である。更に本発明方法の特徴は、樹脂、ホルマリン、有機溶剤などの有害で悪臭のある多種類の高価な薬剤を使用する必要が無く、安価で安全で環境適合性の優れた加工薬剤を用いて、風合いと耐久性に優れたプリーツ加工効果をあげる事が出来る。即ち本発明方法は優れた経済性と操作性の元で、従来、技術上多くの困難を伴っていた天然繊維材料に対して風合いと耐久性に優れたプリーツを付与できるので実用的価値が極めて高く、環境問題にも貢献する優れた加工技術である。
Claims (6)
- 天然繊維素材を構成成分とする繊維材料に対して、親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物の単独或いはその混合物を付与してプリーツ加工するに際して、高濃度の尿素と、酸結合剤を繊維材料に共に付与して熱処理する事を特徴とする、風合いと耐久性の優れたプリーツ加工法。
- 天然繊維材料に対して親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物の単独或いはその混合物を付与してプリーツ加工するに際して、高濃度の尿素と酸結合剤を繊維材料に共に付与して熱処理する事によって強いプリーツを形成させることを特徴とする、風合いと耐久性の優れたプリーツ加工を施された天然繊維材料。
- 請求項1から2における天然繊維材料として、綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロースなどのセルロース系繊維材料、絹、羊毛、カシミア、アルパカ、アンゴラ、獣毛などの蛋白質系繊維材料を対象としてプリーツ加工する事を特徴とする風合いと耐久性の優れたプリーツ加工法。
- 請求項1から3において天然繊維材料に対して薬剤類を付与する方法として、高濃度の尿素や酸結合剤を親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物と全部混合した溶液として同時に繊維材料に付与するか、或いは別々の水溶液として付与したあと予備乾燥して熱処理する事によって風合と耐久性の優れたプリーツを形成させる事を特徴とするプリーツ加工法。
- 請求項1から4において繊維に付与する際の尿素の濃度は、親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物の混合水溶液に対する添加量として15%からその液温における飽和濃度に至る範囲内で尿素を添加・混合した水溶液として繊維に付与するか、或いは15%からその水温における飽和濃度に至る範囲内の濃度の尿素水溶液を繊維に付与する事を特徴とする風合と耐久性の優れたプリーツ加工法。
- 請求項1から5において繊維に付与する親水性のジクロル−S−トリアジン系化合物水溶液と共に付与して使用される酸結合剤は、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、珪酸塩、水酸化物等、加工中に発生する酸を中和するに充分な量のアルカリ性物質であり、具体的には次のような化合物である。重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、苛性ソーダ、水酸化マグネシューム、第3燐酸ソーダ、第2燐酸ソーダ、水酸化リチウム、炭酸カリ、苛性カリ、重炭酸カリ、酢酸ソーダ、酢酸カリ等。
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JP2003168482A JP2004332184A (ja) | 2003-05-10 | 2003-05-10 | 風合いと耐久性に優れた天然繊維素材のプリーツ加工法 |
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Cited By (1)
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JP2008007879A (ja) * | 2006-06-28 | 2008-01-17 | Miyake Design Jimusho:Kk | プリーツ付布製品形成用布帛及びプリーツ付布製品の形成方法 |
-
2003
- 2003-05-10 JP JP2003168482A patent/JP2004332184A/ja active Pending
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