JP2004143649A - 絹蛋白質を結合させた機能性繊維材料の製造法 - Google Patents

絹蛋白質を結合させた機能性繊維材料の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】セリシン及び/又は絹フィブロイン等の絹蛋白質と繊維材料とを結合させて、機能性を付与すると同時に形態安定加工することを特徴とする繊維材料の改質加工法を提供する。
【解決手段】繊維材料と絹蛋白質とを結合させることによって繊維材料を改質するに当って、第一工程として絹蛋白質を繊維材料に付与したあと、第二工程として水溶性のジクロルトリアジン系化合物並びに酸結合剤を付与して熱処理する事によって、絹蛋白質と繊維材料とを結合させると同時に形態安定加工することを特徴とする機能性繊維材料の製造法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維材料と絹蛋白質とを結合させることによって繊維材料を改質するに当って、第一工程として絹蛋白質を繊維材料に付与したあと、第二工程として水溶性のジクロルトリアジン系化合物、酸結合剤並びに必要に応じて結合助剤を付与して熱処理する事によって、絹蛋白質と繊維素材とを結合させると同時に形態安定加工することを特徴とする機能性繊維材料の製造法である。
更に詳しくは本発明は、繊維材料と絹蛋白質とを結合させることによって、繊維材料の保湿性、強度、風合い、寸法安定性等を改善するに当って、第一工程として絹蛋白質の水溶液を繊維材料に付与して乾燥したあと、第二工程として水溶性のジクロルトリアジン系化合物、酸結合剤並びに結合助剤の水溶液を付与して熱処理する事によって、セリシン及び/又は絹フィブロイン等の絹蛋白質と繊維材料とを結合させて機能性を付与すると同時に形態安定加工することを特徴とする繊維材料の改質加工法である。
【0002】
【従来の技術】
近年、生活の質の向上と環境・安全・健康問題への関心の高まりに伴って、形状記憶繊維、難燃・防炎繊維、紫外線遮蔽繊維、防虫・防ダニ繊維、抗菌・防虫繊維、消臭繊維、高質感・高風合繊維等の機能性繊維が次々と開発されており、繊維業界の注目を集めている。
その様な中で、絹蛋白質である絹フィブロイン或いはセリシンを繊維材料に付着させて、絹の特徴を持たせる加工、即ち、さらりとした風合いの良い肌ざわり感、保湿性、消臭性、静電気防止性、抗酸化性、紫外線遮蔽性、抗菌性等の機能を付与する加工が研究されており、一部は実用化されている。
しかるに従来の加工法は「染色工業」Vol.46 No.5 198頁にも記載があるように、主としてグリオキザール系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂を用いて樹脂加工と同時にセリシンや絹フィブロインを接着させたり、特許公報第2588445号公報に記載があるように固着剤を用いてセリシンや絹フィブロインを不溶化させたり、或いは特開平11−350352号公報に記載があるように熱時水溶性の高分子量セリシンを高温で繊維に吸収させて冷却する事によって不溶性となったセリシンを繊維に付着させる方法などが記載されている。
これら公知の方法によって加工された繊維材料の加工効果の耐久性を調べると、洗濯を繰り返すことによって、セリシンや絹フィブロインが脱落し易いという欠点がある。また、ホルマリンや各種樹脂加工用モノマーなど、健康上の問題や環境問題を起こす可能性のある薬剤を用いる点も問題点として指摘されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した絹蛋白質即ちセリシン或いは絹フィブロインを用いる公知加工法の欠点である加工効果の耐久性が不十分であること、加工薬剤に危険で有害な物質を使用すること等に着目して、経済性の優れた、環境問題適応性と安全性に優れた加工法の研究を行った。
また、京都府織物指導所 研究報告No.34(平成12年3月31日発行)第1頁に記載がある様に、絹蛋白質のセリシンは高価な生糸の4分の1を占めるにもかかわらず、現在の所、活用される用途に乏しいため、絹の精練の際に排出される排水中に含まれたまま廃棄される場合が多く、環境汚染物質となっている。しかし近年、このセリシン蛋白質は、アトピー性皮膚炎の抑制に効果が認められたり、その保湿性により化粧品の原料としても利用されたり、健康食品の一つとしても認められるなど、有益な動物性蛋白質の一つとして注目されるようになり、セリシンの回収・精製と有効利用技術の開発研究が盛んに行われている。
我々の目的は、絹の精練廃液を回収・濃縮或いは精製して得られるセリシンの水溶液或いはスプレードライ等でドライアップした粉状のセリシンを、繊維材料の高付加価値加工の原料として活用することによって新しい機能性繊維を開発することであるが、廃棄物の資源化を達成する事によって、排水負荷の削減をはかり、地球環境に優しい加工法を開発する事も重要な狙いである。
更に、繊維くずとして排出される絹フィブロインの再資源化の一環として加水分解して製造された水溶性絹フィブロインを耐久性のある加工法により有効利用することによって環境問題に貢献することも本発明の目的である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者はかかる経済性、環境・安全性の諸問題並びに品質上の諸問題を解決し、地球環境に優しい機能性繊維の開発研究を推進した結果、繊維材料と絹蛋白質とを結合させることによって繊維材料を改質するに当って、第一工程として水溶性の絹蛋白質を繊維材料に付与して乾燥したあと、第二工程として水溶性のジクロルトリアジン系化合物、酸結合剤並びに必要に応じて結合助剤を付与して熱処理する事によって、効果的に絹蛋白質と繊維材料とを結合させると同時に、優れた形態安定加工効果を付与する事が可能である事を見出した。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は水溶性のジクロルトリアジン系化合物を用いて絹蛋白質を繊維材料に強固に結合させる事によって繊維材料を改質する加工法であるが、水溶性のジクロルトリアジン系化合物を介して繊維に絹蛋白質を結合させると同時に形態安定効果を付与する加工法は、手順の異なる幾つかの方法が考えられる。
その内の一つは▲1▼第1工程として、ジクロルトリアジン系化合物と繊維材料をマイルドな条件で反応させてジクロルトリアジン中の1個の塩素を繊維に反応させておき、第2工程として絹蛋白質を添加して、残っている1個の反応基を使って絹蛋白質と繊維材料とを結合させるか、或いは架橋結合させる方法であり、
「2段階加工法」と呼ぶ事ができる方法である。二つ目は▲2▼ジクロルトリアジン系化合物と絹蛋白質と繊維材料の3者を共存させて同時に反応させる方法であり、「同時反応法」と呼ぶ事が出来る方法である。三つ目は▲3▼塩化シアヌルと絹蛋白質とを低温で事前に反応させて、塩化シアヌル中の1個の塩素と絹蛋白質が結合したジクロルトリアジン系化合物を合成しておき、次いでこれを繊維材料に付与して反応させる方法で、この方法を「絹蛋白質事前反応法」と呼ぶ事が出来るが、以上の3つの方法が考えられる。
【0006】それら3つの方法について検討した結果、これらの加工法は従来の樹脂加工法に比べて大いに改善されるが、いずれの方法にも欠点があり、強度低下が起こったり、機能性の付与効果が不充分である事がわかった。更に、高価な絹蛋白質を過剰に使用して廃棄しなければならないという問題がある。
即ち上記3つの方法はいずれの場合も高価な絹蛋白質の反応効率が悪く、反応に関与しない多量の絹蛋白質を用いる必要があり、かつ、一度使用した絹蛋白質は活性なジクロルトリアジン系化合物と混ざってしまうか、或いは次第に汚れてくるので、余剰分の保存がきかず、一度使用された余分な薬剤はその都度廃棄せざるをえない。また絹蛋白質の分子量は広く分布しているので、最適モル比などの反応条件の選定も難しいのが難点である。
本発明方法は▲1▼の方法の工程を逆にするという意味で「逆転法」と呼ぶ事が出来るが、この「逆転法」によると少量の絹蛋白質を効率よく使用でき、上記3つの方法より優れた機能性の付与と形態安定効果を容易確実に達成できる。
その理由は絹蛋白質を事前に純粋な状態で繊維に密着させる事ができるので効率良く架橋薬剤と反応すると考えられる。また、絹蛋白質水溶液を繊維材料に吸収させ乾燥させる事によって効率よく活用できるというメリットの他に、絹蛋白質の溶液を作りすぎて残った場合でも、純粋な溶液であるから保存がきくので、次回に全量消費できるので無駄が生じない。
【0007】本発明の実施形態をより詳しく説明する。
本発明方法は基本的にはパッデイング法が適している。即ち水溶性の絹蛋白質は繊維材料に対する吸着性が乏しい為、浸染法によって効率よく繊維材料に吸着させる事が困難であるからである。
パッデイング法の場合は、先ず第一工程として絹蛋白質の0.5%〜15%濃度の水溶液に繊維素材をパッドして絞り、室温〜180℃で数時間〜数秒間予備乾燥する。次いで第二工程として純度換算で0.5〜15%濃度のジクロルトリアジン系化合物の水溶液に、ジクロルトリアジンに対して2〜10モル比の酸結合剤と必要に応じて0.1〜1.0%濃度の浸透剤、その他の反応助剤を加えた浴にパッドしたあと絞り、80〜130℃で数分間〜数十分間スチーミングするか或いは120〜180℃で数分間乃至数秒間キュアリングする。次いで水洗、ソーピング、水洗したあと乾燥して仕上げる。
最後に必要に応じて柔軟処理しても良いし、加工中に柔軟剤を添加しても良い。絹蛋白質或いは架橋薬剤の繊維に対する付与法としてはパッデング法に代えてシャワリング法や塗布法或いは捺染法を採用しても良い。
【0008】繊維材料とセリシン或いは絹フィブロインの架橋結合薬剤として有利に使用できる水溶性のジクロルトリアジン系化合物の具体例をあげると次のような化合物をあげる事が出来るが、要は2個以上の反応性塩素原子を有する親水性のトリアジン系化合物であれば良いのであって、これらの具体例に制約されるものではない。
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−スルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2,4−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−カルボキシアニリノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−ウレイド−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−チオウレイド−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルフォフェニルチオ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンK塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンMg塩
2,6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4(3−オキシフェニルオキシ)−S−トリアジン
4,4−ビス(4,6−ジクロロ−S−トリアジン−2−イルアミノ)−スチルベン−2,2−ジスルフォニックアシッドNa塩等の単体或いは混合物である。
【0009】また、本発明で用いることができる絹蛋白質の内セリシンは、通常のアルカリ精錬廃液を回収したやや低分子量の絹蛋白質を含有する水溶液を使っても良いし、アルカリイオン水で精練した精練液を使用しても良い。無薬剤・高温高圧法精錬で回収した分子量のやや大きい絹蛋白質を含有するものを使用しても良い。分子量分布は一般的には数千から数十万のものが含まれる。また、精練廃液を各種の精製助剤を用いて精製したものでもよいし、限外濾過濃縮法等によって濃縮した液を使用してもよい。それらの水溶液をスプレードライ法等によってドライアップして粉体にしたものは経時変化性が少ないのでさらに好ましい。
更に、繊維くずとして排出される絹の再資源化の一環として製造された水溶性絹フィブロインを有効利用することもできる。Fragrance Journal 2000年4月号第23頁に記載のある様に、分子量を適度に調整した加水分解シルクを用いる事も可能であり、加水分解シルク誘導体を用いる事も可能である。
蛋白質としては絹蛋白質以外の動植物蛋白質、例えば大豆蛋白質、コラーゲン、ゼラチン、キトサン等を併用しても良い。
【0010】本発明で用いる事が出来る酸結合剤とは、一般的なアルカリ塩類であるが、例えばアルカリ金属類或いはアルカリ土類金属類の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、燐酸塩、酢酸塩などのアルカリ性物質、或いは弱アルカリ性物質、具体例をあげると炭酸ソーダ、炭酸カリ、重炭酸ソーダ、第2燐酸ソーダ、第3燐酸ソーダ、酢酸ソーダ、苛性ソーダ、水酸化マグネシューム、水酸化リチューム等であるが、珪酸ソーダ、硼酸ソーダ等のアルカリ性物質も使用可能である。
要は反応が進むに伴って発生する塩酸を中和できる物質であれば良い。
【0011】本発明の加工対象繊維材料とは、木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロース等のセルロース系繊維、羊毛、モヘア、アンゴラ、アルパカ、カシミア、獣毛、絹等の蛋白質系繊維材料を含み、ジクロルトリアジン系化合物と共有結合できる置換基、例えばアミノ基、水酸基、チオール基等を有する繊維であればよい。例えば天然繊維、再生繊維、半合成繊維などと呼ばれている繊維材料の単独或いは混紡・交織繊維をあげる事が出来る。
本発明方法によって加工・改質された繊維材料は従来の加工法に比べて、優れてシルクライクとなり、シルクの持つ様々な特徴、例えば暖かみのある風合い、保湿性、消臭性、抗酸化性、紫外線吸収性、抗菌性等が付与され、耐久性も優れている。
特に絹の精練工程で発生する廃液中に含まれる絹蛋白質であるセリシンを、実用的価値の高い方法で活用できる本発明方法は、排水負荷の削減につながると同時に、廃棄物を資源化するという一石二鳥の効果をもたらすものであって、21世紀環境問題対応型のエコ・フレンドリー繊維加工と言っても良いであろう。
【0012】
【実施例】
以下実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。なお、例中、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0013】
実施例1
水500部にセリシンパウダー10部と浸透剤マイネックスSO(明成化学工業株式会社製)を1.0部加えて溶解したパッディング浴に、ベンベルグニットを、浸漬して絞り、105℃で6〜8分間乾燥する。
次いで水187.5部に2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液を62.5部、重炭酸ソーダ5.6部、炭酸ソーダ7.1部、尿素12.5部、マイネックスSO0.5部、エレガノールFZ(明成化学工業株式会社製)5部を混合・溶解したパッディング浴に上記のニットを浸漬して絞り、105℃で6〜8分間乾燥したあと、140〜145℃で5 5分間キュアリングする。次いで水洗したあと、酢酸でPH調整して中性にした熱湯の中で、85〜95℃で10分間ソーピングして水洗して乾燥する。
このようにして得たベンベルグニットの破裂強度(JIS−L−1018A法)は未加工品とほぼ同等の値、約500kPAを示した。保湿性(20±2℃、65±5%RHでの平衡水分率)は9.7%で、風合いはソフトな肌さわり感を有していた。寸法変化率(JIS−L−1018 G法 家庭電気洗濯法、洗い方JIS−L−0217 103法)はタテ−0.8%、ヨコ0.0%であった。
未加工品の保湿性は8.8%、寸法変化率はタテ−2.5%、ヨコ−5.6%で、本発明方法の加工によっていずれも改善された。
比較のために上記の2種類のパッディング浴を全て混合したパッディング浴を作り、セリシンと架橋薬剤2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンNa塩を同時にパッドする一浴法で同様に処理した結果は、保湿性は9.4%、寸法変化率はタテ−1.4%、ヨコ−1.4%、破裂強度は489kPAで、全ての点で本発明方法に比べて劣っていた。
【0014】
実施例2
水392部にセリシンパウダー8部とマイネックスSOを0.8部加えて溶解したパッディング浴に、綿・麻交織織物(50:50)を、浸漬して絞り、105℃で10分間乾燥する。
次いで水384部に2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンNa塩の10%水溶液を96部、重炭酸ソーダ14.6部、ジエタノールアミン4部、マイネックスSO0.72部を混合溶解したパッディング浴に上記の生地を浸漬して絞り、105℃で10分間乾燥したあと、105℃で20分間スチーミングする。次いで水洗したあと、酢酸でPH調整して中性にした熱湯の中で、90〜95℃で10分間ソーピングして水洗して乾燥する。
このようにして得た綿・麻交織織物は引張り強度、引裂き強度共、未加工生地とほぼ同等であり、20±2℃、65±5%RHでの平衡水分率による保湿性は約10%改善され、風合いも未加工品に比べてソフトであった。また、JIS−L−0217 103法による寸法変化率はタテ・ヨコ共0.0%であったが、未加工品はタテ−3.0%、ヨコ−1.3%であった。
比較例としてセリシンハウダー、2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩、重炭酸ソーダ、マイネックスSOを上記実施例1と同濃度に溶解したパッディング浴を用いて一浴法で同じ生地を加工したところ、引張り強度、引裂き強度共に20〜30%低下した。保湿性の改善も約5%向上に留まった。
【0015】
実施例3
水500部にセリシンパウダー12.5部と浸透剤マイネックスSOを1.0部加えて溶解したパッディング浴に、シルクジョーゼット織物を浸漬して絞り、105℃で10分間乾燥する。
次いで水187.5部に2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−S−トリアジンNa塩の10%水溶液を62.5部、重炭酸ソーダ5.6部、炭酸ソーダ7.05部、尿素12.5部、マイネックスSO0.5部、エレガノールFZ5部を混合・溶解したパッディング浴に上記の生地を浸漬して絞り、105℃で10分間乾燥したあと、105℃で25分間スチーミングする。次いで水洗したあと、酢酸でPH4〜5の弱酸性にPH調整した熱湯の中で、80〜90℃で15分間ソーピングして水洗して乾燥する。
このようにして得たシルクジョーゼット織物の引裂き強度(JIS−L−1096ペンジュラム法)はタテ12.0、ヨコ13.6(N)であった。保湿性(20±2℃、65±5%RHでの平衡水分率)は10.6%で、風合いはソフトな肌さわり感を有していた。寸法変化率(JIS−L−1018 G法 家庭電気洗濯法、洗い方JIS−L−0217 103法)はタテ1.0%、ヨコ0.0%であった。未加工品の保湿性は9.3%、寸法変化率はタテ−3.9%、ヨコ−10%で、引裂き強度はタテ9.5、ヨコ12.2(N)で本発明方法によっていずれも大幅に改善された。
比較のために上記の2種類のパッディング浴を全て混合したパッディング浴を作り、セリシンと架橋薬剤2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンNa塩を同時にパッドする一浴法で同様に処理した結果は、保湿性、寸法変化率、引裂き強度とも本発明方法に比べて劣っていた。
【0016】
実施例4
実施例3における2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンNa塩の代わりに2,6−ジクロル−4−(2,5−ジスルフォアニリノ)−S−トリアジンを用いて同様に綿金巾生地を加工したところ、実施例2とほぼ同様な効果が得られ、保湿性、強度、風合いの優れた綿金巾生地が得られた。
【0017】
【発明の効果】
本発明によればセリシン及び/又は絹フィブロイン等の絹蛋白質を効率よく共有結合によって繊維材料に強固に結合させることが可能となるので、従来のように単に繊維にセリシンをコーティングしたり、樹脂化したり、不溶化することによって絹蛋白質を物理的に繊維に保持させる方法に比べると耐久性の優れた形態安定性の良いシルクライクの繊維素材が得られる。その結果、有機天然繊維素材を、風合いが良く、肌荒れ、かぶれ、アトピーなどの皮膚障害性が軽減された、肌に優しい機能性繊維素材に改質することができる。
特に本発明は高価な絹蛋白質の効率の良い使用という点で優れており、溶解した絹蛋白質を殆どロス無く利用できる点に特徴がある。残った絹蛋白質の溶解液は、他の薬剤や助剤が混ざらないので、純粋な状態で保存が可能となり、何回でも繰り返し使用できるので無駄に廃棄処分する必要がない。
現状では、絹セリシンは全国で年間約1800トン排出され、織物精練後の廃液と一緒に処分されているが、この廃棄物が資源として有効活用されることとなり、排水負荷の削減にもつながるので一石二鳥の環境対策となる点も本発明の重要な要素である。従って本発明は地球環境に優しいエコ・フレンドリー繊維加工商品の開発であると同時に、エコビジネスを育成することにつながる発明である。

Claims (5)

  1. 繊維材料と絹蛋白質とを結合させることによって繊維材料を改質するに当って、第一工程として絹蛋白質を繊維材料に付与したあと、第二工程として水溶性のジクロルトリアジン系化合物並びに酸結合剤を付与して熱処理する事によって、絹蛋白質と繊維材料とを結合させると同時に形態安定加工することを特徴とする機能性繊維材料の製造法。
  2. 請求項1における水溶性のジクロルトリアジン系化合物として、アミノ基・水酸基・チオール基等、塩化シアヌルと反応する事が可能な置換基を有すると同時に、反応して生成したジクロルトリアジン系化合物を水溶性にする事ができる置換基を有する化合物と、塩化シアヌルとを等モル比で反応させる事によって得られる水溶性のジクロルトリアジン系化合物を用いるか、或いは塩化シアヌルをアルカリ性物質共存下、塩化シアヌル中の1個の塩素を加水分解する事によって得られる水溶性のジクロルトリアジン系化合物を用いる事を特徴とする形態安定性と機能性に優れた繊維材料の製造法。
  3. 請求項1及び請求項2における絹蛋白質を付与する方法として、絹蛋白質の水溶液をパッヂング、塗布或いは吹きつけ方式によって繊維材料に付与して乾燥し、次いで水溶性のジクロルトリアジン系化合物、酸結合剤並びに必要に応じて反応助剤を付与して熱処理する事によって化学反応させて共有結合させることを特徴とする形態安定化された機能性繊維材料の製造法。
  4. 請求項1、請求項2及び請求項3において使用される絹蛋白質として、絹の通常の精練法によって得られるセリシン含有精練廃液及び/又は高温高圧精錬法によって得られるセリシン含有精練廃液をそのまま用いるか、或いは精製、濃縮或いは乾燥工程を経て使用するか、加水分解した水溶性の絹フィブロインを使用する事を特徴とする形態安定化された機能性繊維材料の製造法。
  5. 請求項1、請求項2、請求項3及び請求項4における加工対象繊維材料として木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、酢酸セルロース等のセルロース系繊維、羊毛、モヘア、アンゴラ、アルパカ、カシミア、獣毛、絹等の蛋白質系繊維材料を用いる事を特徴とする天然繊維、再生繊維及び/又は半合成繊維材料の改質加工法。
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