JP3895217B2 - 繊維製品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース繊維製品またはポリ乳酸系繊維製品、アクリレート系繊維等の改質に関する。さらに詳しくは、肌に優しい機能を付与した繊維製品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポーツシャツ、肌着、シャツ、ズボン、上着、靴下、シーツ、枕カバー、布団側地、布団カバー、おむつ等、日常使われる繊維製品は、肌と直接または間接的に接触することから、肌に優しい機能が求められている。
【0003】
人の皮膚に刺激の少ない肌にやさしい繊維として、セリシンを繊維表面に付与した繊維が提案されている。たとえば、セリシンを単に付着させる方法として、特許第2992802号公報には、セリンを20〜40%含有する蛋白質、好ましくはセリシンを繊維表面に付着させたスキンケア性繊維製品が提案されている。また、特開2002-13071号明細書には、アクリル系バインダーを用いてアルギニンを繊維表面に固着させる方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来の単に繊維表面に付着させる方法では、耐洗濯性に問題があり、洗濯を繰り返すとセリシンが脱落してしまうという問題があった。また、バインダーを使用する従来方法では、風合いが硬くなったり、バインダーそのものが皮膚に悪影響を与える可能性もあり、スキンケア製品として好適であるかは問題がある。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するため、さらにスキンケア性が高く、耐洗濯性も問題なく、しかも着用時の汗で徐々にアミノ酸が溶け出し、風合いも柔軟な繊維製品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の繊維製品は、繊維を構成する分子中に水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、イミノ基(>NH)およびアミノ基(−NH)から選ばれる少なくとも一つの基を含むかまたは繊維表面に導入した繊維の前記少なくとも一部の水酸基、カルボキシル基、イミノ基もしくはアミノ基にアミノ酸を共有結合させた繊維製品であり、前記アミノ酸が、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩であり、下記式(化5)または(化6)で示される反応によって繊維表面と共有結合していることを特徴とする。
【化5】
Figure 0003895217
【化6】
Figure 0003895217
【0007】
次に本発明の繊維製品の製造方法は、繊維を構成する分子中に水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、イミノ基(>NH)およびアミノ基(−NH2)から選ばれる少なくとも一つの基を含むかまたは繊維表面に導入した繊維製品を、アルカリ添加したアミノ酸溶液に浸漬(Padding)し、乾熱処理し、しかる後に有機酸溶液の中で冷液で洗浄することにより、前記アミノ酸を繊維製品に共有結合させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、繊維を構成する分子中に水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、イミノ基(>NH)およびアミノ基(−NH2)から選ばれる少なくとも一つの基(以下「活性水素を含む基」という。)を含むかまたは繊維表面に導入した繊維製品にアミノ酸を共有結合させる。共有結合は、例えば低分子脱離反応によって起こる。一例として、脱水反応、脱アルコール反応などである。このような反応を用いると、アミノ酸を直接繊維表面に化学結合できる。
【0009】
前記アミノ酸は、例えばL−アルギニンメルエステル塩酸塩を挙げることができる。L−アルギニンメルエステル塩酸塩を用いる場合は、記式(化5)または(化6)で示される反応によって繊維表面と結合している。
【0012】
前記繊維に対する前記一般式(化5)または(化6)で示されるアミノ酸の固着量は、0.01〜15質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜8質量%、とくに好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0013】
前記の分子中に水酸基(−OH)を含む繊維は、木綿繊維、麻繊維、再生セルロース、精製セルロース繊維、ポリ乳酸系繊維およびポリビニルアルコール繊維から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0014】
また繊維表面に活性水素を含む基を導入した繊維は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維、ポリオレフィン繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも一つの合成繊維である。前記活性水素を含む基は、架橋結合、加水分解、プラズマ処理、オゾン処理、コロナ放電処理またはエネルギー線照射処理により導入されていることが好ましい。
【0015】
例えば水分または酸素の存在する雰囲気中で電子線またはX線などのエネルギー線を照射するか、酸素プラズマ処理、UV/オゾン処理、コロナ処理、または濃硫酸と重クロム酸カリウムの混合溶液に浸漬する方法(クロム混酸液処理)等により水酸基(−OH)を導入できる。前記において、UV/オゾン処理の場合は、一例として、空気又は酸素雰囲気下、紫外線をエネルギー密度約100mJ/cm2で照射する。電子線の場合も約100mJ/cm2で照射する。プラズマ処理、オゾン処理、コロナ放電処理は、公知の手段を採用できる。窒素雰囲気で電子線、プラズマ処理、オゾン処理、またはコロナ放電処理をすると、イミノ基(>NH)またはアミノ基(−NH2)を導入できる。
【0016】
別の例は、アクリル系繊維をヒドラジンで処理して繊維構成分子を架橋させ、その後、加水分解することにより、繊維表面にカルボキシル基(−COOH)を導入することができる。
【0017】
繊維の構成分子中に水酸基(−OH)もしくはカルボキシル基(−COOH)を有する繊維製品にアミノ酸を化学結合させるには、一例として、前記繊維製品をアルカリ添加したアミノ酸溶液に浸漬(Padding)し、乾熱処理を行なう。しかる後に、有機酸溶液の中で15〜30℃の範囲の冷液で洗浄することによりアミノ酸を繊維製品に結合させる。15℃は通常の井戸水の温度であり、30℃は夏期の水道水の温度である。
【0018】
本発明でいう水酸基(−OH)を含む繊維製品とは、綿、麻等の天然繊維の他、湿式セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、ポリノジック繊維等)等の再生セルロース繊維、乾式セルロース繊維(例えばテンセル(商品名)、リヨセル(商品名)等)等の精製セルロース繊維、ポリ乳酸系繊維(例えばカネボウ社製、ラクトロン(商品名)、ユニチカ社製、テラマック(商品名))、ポリビニルアルコール繊維等の水酸基(−OH)を含む繊維製品である。例えばセルロース繊維を例に挙げると、セルロースの構成分子は(C6105nであり、下記式[化7](但し、nはくり返し単位を示す。)に示すように、反応性に富む水酸基をグルコース残基のC2,C3,C6の位置に持ち、下記式[化8]に示すように、これらの少なくとも一つの水酸基にアミノ酸を導入することができる。
【0019】
【化7】
Figure 0003895217
【0020】
【化8】
Figure 0003895217
【0021】
前記の水酸基(−OH)を含む繊維に、他の繊維を混合しても良い。例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維、ポリウレタン繊維、高架橋ポリアクリル系繊維等を混紡、混繊、交織、交編させても良い。混合割合は任意の範囲とすることができる。布帛の種類は、織物、編物、不織布等いかなるものであっても良い。
【0022】
本発明で用いるアミノ酸は、構成する分子内にアミノ基(−NH2)とカルボキシル基(−C00H)を含むかまたはこれらの誘導体であり、人工的に合成できる。例えば、L−アルギニン、グリシン、L−ヒスチジン、バリン、イソロイシン、ロイシン、トレオニン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン等またはその誘導体である。誘導体の一例は、カルボキシル基をエステル基に置換したもの、またはアミノ基に塩酸を付加したものなどを挙げることができる。
【0023】
これらのアミノ酸のうち、例えばL−アルギニンメチルエステル塩酸塩について説明する。L−アルギニンメチルエステル塩酸塩には、1分子あたり2個の塩化水素(HCl)が付加している。使用濃度範囲の溶液の好ましいpHは、3〜5の酸性溶液である。アルカリ中和剤を使用して、溶液のpHを7前後にしてセルロース繊維に結合させるのが好ましい。濃度は、0.5容量%(0.019mol/リットル、以下リットルを「L」で示す。)〜5.0容量%(0.19mol/L)の水溶液が好適である。
【0024】
L−アルギニンメチルエステル塩酸塩それ自体は、皮膚の角質層の保湿効果があり、化粧品、洗顔剤、洗髪剤等の基礎薬剤として使用されている。
【0025】
前記アルカリ中和剤は、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩の2個のHClのうち、1個のHClを中和するための薬剤である。アルカリ性が弱く、1個のHClのみ中和する無機のアルカリが好ましい。この用途に使用する無機のアルカリとしては、コスト、作業面、効果面からみて酸性炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)が特に好ましい。使用濃度は、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩に対して1/2倍モル〜2倍モルが好ましく、さらに好ましくは等モル前後が良好である。このときの溶液のpHは6.5〜7.0の範囲が好ましい。
【0026】
前記中和酸は、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩の1個のHClをアルカリ中和してPaddingした後、乾熱処理したものから、アルカリを中和して酸性塩にもどすものであり、また繊維製品に未反応のL−アルギニンメチルエステル塩酸塩を繊維製品より除去する作用を有する。中和酸としては一般の無機酸、または有機酸を示し、特に緩衝力の高い有機酸が好ましい。有機酸としては酢酸(CH3COOH)、ギ酸(HCOOH)、クエン酸[C3H4(OH)(COOH)3]、リンゴ酸[C2H3(OH)(COOH)2]、または角質層中の遊離アミノ酸である2−ピロリドン−5−カルボン酸等が挙げられる。
【0027】
この用途に使用する有機酸としては緩衝力を有し、中和効果の高い有機酸が好ましく、作業面、効果面から考えて、クエン酸または2−ピロリドン−5−カルボン酸が特に好ましい。クエン酸の場合、使用濃度としては、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩の処理濃度によっても異なるが、2.0g/L(0.01mol/L)〜20.0g/L(0.104mol/L)が好適である。2−ピロリドン−5−カルボン酸の場合、使用濃度としては、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩の処理濃度によっても異なるが、0.1g/L(0.0005mol/L)〜2..0g/L(0.01mol/L)が好適である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。下記の実施例において、単に「%」と表示しているのは「質量%」を示し、「%sol」は「容量%」を示す。
【0029】
(実施例1)
綿(コットン)100%の天竺の編物1反(約10kg)を液流染色機の中に浸漬させ、過酸化水素水(H22 35%品)5.0g/L、珪酸ナトリウム(Na2SiO3)0.5g/L、水酸化ナトリウム(NaOH 48%品)、2.0g/L、界面活性剤1.0g/Lを加えて、98℃の温度で30分間、過酸化処理を行い、水洗を行って、被処理物を準備した。
【0030】
この様にして前処理を行った被処理物を巾25cm、長さ50cmの大きさに裁断して試験試料とした。
【0031】
下記の[表1]に示したPadding溶液に浸漬し、試験マングル(巾30cm)を使用して、絞り率100%でPaddingを行い、100℃の温度で乾燥した。次いで試験乾熱処理機で下記[表2]に示した温度で2分間乾熱処理を行った。この処理で前記[化8]に示した様なL−アルギニンメチルエステル塩酸塩と構成分子の中に多数の水酸基(−OH)を有している綿セルロースに結合した。
【0032】
しかる後に、水洗を行い、下記[表3]に示したクエン酸の溶液に浸漬し、25℃の冷液で5分間処理し、その後十分に水洗して乾燥した。次いで、試験乾熱処理機で下記[表4]に示した温度で2分間乾熱処理を行い、アミノ酸の加工品を得た。綿(コットン)製品に対するアミノ酸の結合量は0.5〜2.0%であった。
【0033】
(実施例2)
ポリエステル繊維70%とベンベルグレーヨン(旭化成社製、アルカリセルロースを硫酸で凝固した湿式紡糸繊維)30%の混紡糸の編物1反(約12kg)を液流染色機の中に浸漬させ、界面活性剤1.0g/Lを加えて90℃の温度で30分間処理して精練を行い、水洗を行って被処理物を準備した。この様にして前処理を行った被処理物を巾25cm、長さ50cmの大きさに裁断して試験試料とした。この試料を(実施例1)と同様な加工方法でL−アルギニンメチルエステル塩酸塩との加工を行い、アミノ酸の加工品を得た。繊維製品に対するアミノ酸の結合量は0.2〜0.8%であった。
【0034】
(実施例3)
テンセル(旧英国コートルズ社商品名、木材パルプを溶剤に溶解した溶剤紡糸繊維)94%とポリウレタン繊維6%の混紡糸の編物1反(約10kg)を(実施例2)と同様な方法で前処理加工を行い、試験試料を作った。
【0035】
この試料を(実施例1)と同様な加工方法でL−アルギニンメチルエステル塩酸塩との加工を行い、アミノ酸の加工品を得た。繊維製品に対するアミノ酸の結合量は0.3〜1.0%であった。
【0036】
(実施例4)
ポリ乳酸系繊維(商品名「ラクトロン」、植物資源からつくられたデンプンを発酵してグルコースを経て乳酸とし、縮合反応して得られた繊維)の不織布1反(約6kg)をビーム管に巻き取ってビーム染色機の中に入れ、界面活性剤1.0g/Lを加えて90℃の温度で30分間処理して精練を行い、水洗を行って被処理物を準備した。この様にして前処理を行った被処理物を巾25cm、長さ50cmの大きさに裁断して試験試料とした。
【0037】
この試料を(実施例1)と同様な加工方法でL−アルギニンメチルエステル塩酸塩との加工を行い、アミノ酸の加工品を得た。但し、ポリ乳酸系繊維は融点が175℃と低く熱処理による脆化が大きいので、乾熱処理の温度は[表5]に示した様に(実施例1〜3)よりも低く設定した。繊維製品に対するアミノ酸の結合量は0.5〜2.0%であった。
【0038】
(実施例5)
ポリエステル繊維85%と美津濃社製商品名「ブレスサーモ」(アクリレート系繊維:アクリロニトリルを主成分とし、アクリル酸メチルを副成分として含むアクリル系繊維をヒドラジン架橋した後、加水分解して表面にカルボキシル基を導入した繊維)15%からなる混紡糸の編み物1反(約12kg)を、(実施例2)と同様な方法で前処理を行ない、試験試料とした。
【0039】
この試料を(実施例1)と同様な加工方法でL−アルギニンメチルエステル塩酸塩との加工を行い、アミノ酸の加工品を得た。繊維製品に対するアミノ酸の結合量は0.05〜0.2%であった。
【0040】
(洗濯試験)
(実施例1〜5)で得られた試料を下記条件で洗濯した。
(1)洗濯機 HITACHI PS−513
(2)洗濯方法 アタック0.7g/Lで10分間洗濯、水洗5分脱水の工程を1回の洗濯とする。
(3)洗濯回数 1回、3回、5回、10回
(4)ニンヒドリン・スプレーによる呈色反応
ニンヒドリンは遊離したアミノ基を少なくとも1個持つアミノ酸ポリペプチおよび蛋白質等と反応して青紫色に呈色する。
【0041】
(実施例1〜5)で得られた試料および1.3.5.10回の洗濯を行った試料につき、ニンヒドリンを噴霧して青紫色の呈色の度合いを調べた。呈色の度合いの強弱により、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩繊維製品の結合の強さの度合を調べた。
【0042】
いずれの繊維も構成分子の中に多数の水酸基(−OH)もしくはカルボキシル基(−COOH)を有しており、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩と反応する。
[表1]〜[表5]に示すL−アルギニンメチルエステル塩酸塩は「L・アルギニン」と省略して記す。以下の文章においても同様である。
【0043】
(1)Padding溶液の薬品濃度と溶液のpHとの関係
下記の[表1]はPadding溶液の薬品濃度と溶液のpHとの関係を示す。
【0044】
【表1】
Figure 0003895217
【0045】
[表1]から下記のことが明らかになった。
(a)L・アルギニンの量が増えれば、効果は増大するが黄味になる。
(b)0.5%sol溶液では効果は少なく、3.0%solでは黄変は大きい。
1.0%sol(0.038mol/L)〜2.0%sol(0.076mol/L)が好適である。L・アルギニンに添加するアルカリ剤(NaHCO3)の量はL・アルギニンとの比率が少なければ、繊維製品とL・アルギニンとの結合が悪くなり効果も少なくなる。比率が多くなりすぎると2個目のHClまでが中和されて効果が減少し黄味になる。
(c)L・アルギニンとの比率が10%以下では効果は少なく50%以上になれば黄変が大きくなる。
(d)L・アルギニンの30%〜40%の濃度(90〜120%モル比)が好適である。
【0046】
(2)Padding処理後の乾熱処理温度と黄変の程度と効果の発現
次に[表2]は、L・アルギニン溶液のPadding処理後の乾熱処理温度について、処理温度が高くなるにつれて効果は大きくなるが、黄変も大きくなることを示す。
【0047】
【表2】
Figure 0003895217
【0048】
以上の結果から、160℃の乾熱処理が出来る繊維製品はこの温度で乾熱処理を行うこととした。
【0049】
(3)クエン酸の洗浄テスト
次に[表3]には、クエン酸の洗浄テストをまとめている。
【0050】
【表3】
Figure 0003895217
【0051】
[表3]から明らかなとおり、クエン酸の量の少ないものは未反応のL・アルギニンの除去が不十分であり、また、酸中和が不十分であるので酸塩(クエン酸塩)が十分に出来ていないため効果は悪かった。また、クエン酸の量が多くなれば、繊維製品とL・アルギニンとの結合が切れて、アミノ酸効果は減少した。
【0052】
この結果、クエン酸の処理濃度はPaddingに使用したNaHCO3と同濃度(約1/2mol濃度)が良好であった。
【0053】
(4)クエン酸洗浄後の乾熱処理温度
次に[表4]はクエン酸洗浄後の乾熱処理温度を示す。
【0054】
【表4】
Figure 0003895217
【0055】
以上の結果、処理温度が高くなれば繊維製品とL・アルギニンとの結合が切れるのかアミノ酸効果は減少し、黄味が増大することがわかった。したがって、繊維製品の最終の乾熱処理の温度は出来る限り低い方が黄変も少なく効果も良好であり、140℃近辺の乾熱処理が好ましかった。
【0056】
(5)ポリ乳酸系繊維の乾熱処理
次に[表5]はポリ乳酸系繊維の乾熱処理を示す。ポリ乳酸系繊維は融点が175℃と低いので乾熱処理温度は低く設定した。
【0057】
【表5】
Figure 0003895217
【0058】
(6)耐洗濯性
(実施例1〜5)で得られた試料は全て洗濯を10回行なってもニンヒドリン反応の呈色の強度は低下しなかった。このことから多数の水酸基(−OH)を有している繊維製品は、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩と結合すれば洗濯では簡単に脱落しないことが確認できた。
【0059】
(7)スキンケア性
(実施例1〜5)で得られた試料を人体の皮膚に貼り付けてパッチテストを4週間続けたが、皮膚への異常は認められなかった。保湿効果が認められ、スキンケア繊維として好ましいことが確認できた。
【0060】
(8)徐放性
(実施例1〜5)で得られた生地を用いて、人体の発汗によりアミノ酸が徐々に肌に溶出することを確認する試験を行った。下記の汗試験は、JIS L 0848に準じた。
試験1)汗試験(酸、アルカリ)を1回、3回、5回、10回繰り返し行った生地でニンヒドリンの呈色反応を調べた。
試験2)汗試験→洗濯試験を1回、3回、5回、10回繰り返し行った生地でニンビトリンの呈色反応を調べた。
試験3)実施例1で肌着シャツを作成し、軽く発汗する軽運動→洗濯試験を1回、3回、5回、10回繰り返し行った生地でニンビトリンの呈色反応を調べた。
【0061】
以上の結果、汗試験を繰り返すほど相関的に呈色反応で薄くなった。汗試験をせずに単に洗濯試験を繰り返しても呈色反応は変化しなかったことから、アミノ酸は人体の汗によって溶け出すことが確認できた。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明のとおり、本発明は、繊維を構成する分子中に活性水素を含かまたは繊維表面に導入した繊維の前記少なくとも一部の水酸基もしくはカルボキシル基にアミノ酸を共有結合させたことにより、スキンケア性が高く、耐洗濯性も問題なく、風合いも柔軟な繊維製品およびその製造方法を提供できる。
【0063】
また、本発明の繊維製品は、アミノ酸の徐放性があり、着用時の汗でアミノ酸が溶出し、汗に溶け込んだアミノ酸が、素肌を薄く覆う。一般にL−アルギニンメチルエステル塩酸塩は、日焼け等の肌へのダメージを緩和したり、肌の角質層に潤いを持たす効能を有し、繊維製品を着用し、汗をかくことでスキンケア効果も同時に発揮することができ、さらに繊維自体の風合いもよりソフトで肌さわりが良い柔軟な繊維製品およびその製造方法を提供できる。

Claims (8)

  1. 繊維を構成する分子中に水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、イミノ基(>NH)およびアミノ基(−NH)から選ばれる少なくとも一つの基を含むかまたは繊維表面に導入した繊維の前記少なくとも一部の水酸基、カルボキシル基、イミノ基もしくはアミノ基にアミノ酸を共有結合させた繊維製品であり、
    前記アミノ酸が、L−アルギニンメチルエステル塩酸塩であり、下記式(化1)または(化2)で示される反応によって繊維表面と共有結合している繊維製品
    Figure 0003895217
    Figure 0003895217
  2. 前記繊維に対する前記一般式(化1)または(化2)で示されるアミノ酸の固着量が、0.01〜10質量%の範囲である請求項1に記載の繊維製品。
  3. 分子中に水酸基(−OH)を含む繊維が、木綿繊維、麻繊維、ポリエチレンビニルアルコール、再生セルロース、精製セルロース繊維、ポリ乳酸系繊維およびポリビニルアルコール繊維から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の繊維製品。
  4. 分子中にイミノ基(>NH)を含む繊維が、ポリアミド繊維である請求項1に記載の繊維製品。
  5. 繊維表面に水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、イミノ基(>NH)およびアミノ基(−NH)から選ばれる少なくとも一つの基を導入した繊維が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも一つの合成繊維であり、かつ架橋結合、加水分解、プラズマ処理、オゾン処理、コロナ放電処理またはエネルギー線照射処理により導入されている請求項1に記載の繊維製品。
  6. 繊維製品に共有結合させたアミノ酸が、着用時の発汗によってアミノ酸が徐々に溶出する請求項1または2に記載の繊維製品。
  7. 繊維を構成する分子中に水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、イミノ基(>NH)およびアミノ基(−NH)から選ばれる少なくとも一つの基を含むかまたは繊維表面に導入した繊維製品を、アルカリ添加したアミノ酸溶液に浸漬(Padding)し、乾熱処理し、しかる後に有機酸溶液の中で冷液で洗浄することにより、アミノ酸を繊維製品に共有結合させることを特徴とする繊維製品の製造方法。
  8. 前記アミノ酸が、L−アルギニンメルエステル塩酸塩であり、下記式(化3)または(化4)で示される反応によって繊維と共有結合させる請求項に記載の繊維製品の製造方法。
    Figure 0003895217
    Figure 0003895217
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